(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179689
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】極端紫外光生成用チャンバ装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241219BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098729
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】植田 篤
(72)【発明者】
【氏名】スマン ゲオルグ
(72)【発明者】
【氏名】難波 愼一
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197AA10
2H197CA10
2H197DB16
2H197DC04
2H197DC12
2H197FA01
2H197FA02
2H197FB01
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA20
2H197GA24
2H197HA03
2H197JA18
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB19
4C092BD18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化を実現しつつ、極端紫外光の出力低減及び極端紫外光集光ミラーへのデブリの付着を抑制する。
【解決手段】極端紫外光生成用チャンバ装置は、レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含みプラズマ生成領域において極端紫外光が生成されるチャンバと、チャンバ内に配置され、極端紫外光を集光する集光ミラーと、超音速でガスを噴射し、プラズマ生成領域から集光ミラーに伝搬する極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、を備え、チャンバ内において、前記ガスカーテンよりも前記プラズマ生成領域側の空間であってプラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりもガスカーテンよりも集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含み前記プラズマ生成領域において極端紫外光が生成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記極端紫外光を集光する集光ミラーと、
超音速でガスを噴射し、前記プラズマ生成領域から前記集光ミラーに伝搬する前記極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、
前記チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、
前記チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、
を備え、
前記チャンバ内において、前記ガスカーテンよりも前記プラズマ生成領域側の空間であって前記プラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりも前記ガスカーテンよりも前記集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低い
極端紫外光生成用チャンバ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記ガスは、水素を含む。
【請求項3】
請求項2に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記ドロップレットターゲットは、スズを含む。
【請求項4】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第1空間を囲い、前記プラズマ生成領域から前記集光ミラーに伝搬する前記極端紫外光が通過し前記第2空間に連通する第1開口が設けられる筒状の第1隔壁を備え、
前記ガスカーテンは、前記第1開口の少なくとも一部を覆う。
【請求項5】
請求項4に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第1隔壁の外側の空間である第3空間と前記第2空間とを隔絶し、前記第1隔壁に接続される第2隔壁を備える。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記エッチングガス供給部は、
前記第1空間に前記エッチングガスを供給する第1エッチングガス供給部と、
前記第2空間に前記エッチングガスを供給する第2エッチングガス供給部と、
を備え、
前記ガス排気部は、
前記第1空間から前記残留ガスを排気する第1排気装置と、
前記第2空間から前記残留ガスを排気する第2排気装置と、
を備える。
【請求項7】
請求項6に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第1空間内の圧力を測定する第1圧力センサと、
前記第2空間内の圧力を測定する第2圧力センサと、
プロセッサと、
を更に備え、
前記ガス排気部は、
前記第1空間と前記第1排気装置とを繋げる配管に設けられる第1バルブと、
前記第2空間と前記第2排気装置とを繋げる配管に設けられる第2バルブと、
を備え、
前記プロセッサには、前記第1圧力センサが測定する圧力を示す信号と前記第2圧力センサが測定する圧力を示す信号とが入力し、
前記プロセッサは、前記第2空間内の圧力が前記第1空間内の圧力よりも低くなるように前記第1バルブと前記第2バルブとを制御する。
【請求項8】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記ガスカーテン形成装置は、前記ガスを噴射するガス噴射部と、前記ガスを回収するガス回収部と、を備え、
前記ガス噴射部は、
前記ガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部から供給される前記ガスが通過するラバルノズルと、
前記ラバルノズルを内部空間に含むシュラウドと、
前記シュラウドに、前記ガスが噴射される方向に向かって断面積が大きくなるように配置される第1スキマーと、
前記シュラウドから、前記第1スキマーから噴射されない前記ガスを排出する第3排気装置と、
を備え、
前記ガス回収部は、
前記第1スキマーから前記ガスが噴射される方向に進んだ位置に前記ガスが噴射される方向に向かって断面積が大きくなるように配置される第2スキマーと、
前記第2スキマーに流入した前記ガスを排出する第4排気装置と、
を備える。
【請求項9】
請求項8に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記エッチングガス供給部は、
前記第1空間に前記エッチングガスを供給する第1エッチングガス供給部と、
前記第2空間に前記エッチングガスを供給する第2エッチングガス供給部と、
を備え、
前記ガス排気部は、
前記第1空間から前記残留ガスを排気する第1排気装置と、
前記第2空間から前記残留ガスを排気する第2排気装置と、
を備える。
【請求項10】
請求項9に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第2排気装置は、前記第4排気装置を兼ねる。
【請求項11】
請求項10に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第2排気装置は、さらに前記第3排気装置を兼ねる。
【請求項12】
請求項9に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第1空間内の圧力を測定する第1圧力センサと、
前記第2空間内の圧力を測定する第2圧力センサと、
プロセッサと、
を更に備え、
前記ガス排気部は、
前記第1空間と前記第1排気装置とを繋げる配管に設けられる第1バルブと、
前記第2空間と前記第2排気装置とを繋げる配管に設けられる第2バルブと、
を備え、
前記プロセッサには、前記第1圧力センサが測定した圧力を示す信号と前記第2圧力センサが測定した圧力を示す信号が入力し、
前記プロセッサは、前記第2空間内の圧力が前記第1空間内の圧力よりも低くなるように前記第1バルブと前記第2バルブとを制御する。
【請求項13】
請求項12に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記第2スキマーの内部空間内の圧力を測定する第4圧力センサを更に備え、
前記ガス回収部は、前記第2スキマーの内部空間と前記第4排気装置とを繋げる配管に設けられる第4バルブを備え、
前記プロセッサには、前記第4圧力センサが測定した圧力を示す信号が入力し、
前記プロセッサは、前記第2スキマーの内部空間の圧力が前記第2空間内の圧力よりも小さくなるように前記第4バルブを制御する。
【請求項14】
請求項1に記載の極端紫外光生成用チャンバ装置であって、
前記チャンバの前記第2空間側の壁に前記レーザ光を透過するウィンドウを備え、
前記レーザ光は、前記ウィンドウから前記プラズマ生成領域を照射する。
【請求項15】
レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含み前記プラズマ生成領域において極端紫外光が生成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記極端紫外光を集光する集光ミラーと、
超音速でガスを噴射し、前記プラズマ生成領域から前記集光ミラーに伝搬する前記極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、
前記チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、
前記チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、
を備え、
前記チャンバ内において、前記ガスカーテンよりも前記プラズマ生成領域側の空間であって前記プラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりも前記ガスカーテンよりも前記集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低い極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含み前記プラズマ生成領域において極端紫外光が生成されるチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記極端紫外光を集光する集光ミラーと、
超音速でガスを噴射し、前記プラズマ生成領域から前記集光ミラーに伝搬する前記極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、
前記チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、
前記チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、
を備え、
前記チャンバ内において、前記ガスカーテンよりも前記プラズマ生成領域側の空間であって前記プラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりも前記ガスカーテンよりも前記集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低い極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成用チャンバ装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第2211594号明細書
【特許文献2】特開2005-353294号公報
【特許文献3】特許第5108367号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様による極端紫外光生成用チャンバ装置は、レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含みプラズマ生成領域から極端紫外光が生成されるチャンバと、チャンバ内に配置され、極端紫外光を集光する集光ミラーと、超音速でガスを噴射し、プラズマ生成領域から集光ミラーに伝搬する極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、を備え、チャンバ内において、プラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりもガスカーテンよりも集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低くてもよい。
【0006】
また、本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含みプラズマ生成領域から極端紫外光が生成されるチャンバと、チャンバ内に配置され、極端紫外光を集光する集光ミラーと、超音速でガスを噴射し、プラズマ生成領域から集光ミラーに伝搬する極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、を備え、チャンバ内において、プラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりもガスカーテンよりも集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低い極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含んでもよい。
【0007】
また、本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、レーザ光が照射されるドロップレットターゲットがプラズマ化するプラズマ生成領域を内部空間に含みプラズマ生成領域から極端紫外光が生成されるチャンバと、チャンバ内に配置され、極端紫外光を集光する集光ミラーと、超音速でガスを噴射し、プラズマ生成領域から集光ミラーに伝搬する極端紫外光の光路と交差するガスカーテンを形成するガスカーテン形成装置と、チャンバ内にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部と、チャンバ内の残留ガスを排気するガス排気部と、を備え、チャンバ内において、プラズマ生成領域を含む空間である第1空間内の圧力よりもガスカーテンよりも集光ミラー側の空間である第2空間内の圧力が低い極端紫外光生成用チャンバ装置を含む極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子デバイスの製造装置とは別の電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、比較例の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、比較例におけるドロップレットターゲットの軌道に垂直な断面における極端紫外光生成用チャンバ装置を示す模式図である。
【
図5】
図5は、比較例におけるドロップレットターゲットの軌道に沿った断面における極端紫外光生成用チャンバ装置を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態1における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態1における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図5と同様に示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図7におけるガスカーテン形成装置及びガス回収装置の拡大図である。
【
図9】
図9は、実施形態1におけるデブリの動きを示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例1における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図5と同様に示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例2における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図5と同様に示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例3における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図5と同様に示す模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態2における極端紫外光生成用チャンバ装置を
図4と同様に示す模式図である。
【実施形態】
【0009】
1.概要
2.電子デバイスの製造装置の説明
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
4.4 変形例1の説明
4.5 変形例2の説明
4.6 変形例3の説明
5.実施形態2の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
5.1 構成
5.2 作用・効果
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外(EUV)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造装置に関するものである。なお、以下では、極端紫外光をEUV光という場合がある。
【0011】
2.電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び露光装置200を含む。露光装置200は、反射光学系である複数のミラー211,212を含むマスク照射部210と、マスク照射部210の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー221,222を含むワークピース照射部220とを含む。マスク照射部210は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101によって、ミラー211,212を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部220は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光101を、ミラー221,222を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光101をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0012】
図2は、
図1に示す電子デバイス製造装置とは別の電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び検査装置300を含む。検査装置300は、反射光学系である複数のミラー311,313,315を含む照明光学系310と、照明光学系310の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー321,323、及び検出器325を含む検出光学系320とを含む。照明光学系310は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101をミラー311,313,315で反射して、マスクステージ331に配置されているマスク333を照射する。マスク333は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系320は、マスク333からのパターンを反映したEUV光101をミラー321,323で反射して検出器325の受光面に結像させる。EUV光101を受光した検出器325は、マスク333の画像を取得する。検出器325は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク333の画像により、マスク333の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置200を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0013】
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
比較例のEUV光生成装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。また、以下では、
図1に示すように次工程装置としての露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100を用いて説明する。なお、
図2に示すように次工程装置としての検査装置300にEUV光101を出射するEUV光生成装置100についても、同様の作用・効果を得ることができる。
【0014】
図3は、本例のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3に示すように、EUV光生成装置100は、EUV光生成用チャンバ装置150、レーザ装置LD、及びレーザ光デリバリ光学系30を主な構成として含む。また、EUV光生成用チャンバ装置150は、チャンバ10、プロセッサ120を主な構成として含む。
【0015】
チャンバ10は、密閉可能な容器である。チャンバ10はサブチャンバ11を含み、サブチャンバ11には、サブチャンバ11の壁を貫通するようにターゲット供給部40が取り付けられている。ターゲット供給部40は、タンク41、ノズル42、及び圧力調節器43を含み、ドロップレットターゲットDLをチャンバ10の内部空間に供給する。ドロップレットターゲットDLは、ドロップレットやターゲットと省略して呼ばれる場合がある。
【0016】
タンク41は、その内部にドロップレットターゲットDLとなるターゲット物質を貯蔵する。ターゲット物質は、スズを含む。タンク41の内部は、タンク41内の圧力を調節する圧力調節器43と連通している。タンク41には、ヒータ44及び温度センサ45が取り付けられている。ヒータ44は、ヒータ電源46から供給される電流により、タンク41を加熱する。この加熱により、タンク41内のターゲット物質は溶融する。温度センサ45は、タンク41を介してタンク41内のターゲット物質の温度を測定する。圧力調節器43、温度センサ45、及びヒータ電源46は、プロセッサ120に電気的に接続されている。
【0017】
ノズル42は、タンク41に取り付けられ、ターゲット物質を吐出する。ノズル42には、ピエゾ素子47が取り付けられている。ピエゾ素子47は、ピエゾ電源48に電気的に接続されており、ピエゾ電源48から印加される電圧で駆動される。ピエゾ電源48は、プロセッサ120に電気的に接続されている。ピエゾ素子47の動作により、ノズル42から吐出するターゲット物質はドロップレットターゲットDLにされる。
【0018】
チャンバ10は、ターゲット回収部14を含む。ターゲット回収部14は、チャンバ10に取り付けられる箱体であり、チャンバ10に設けられる開口14aを介してチャンバ10の内部空間に連通している。開口14aはノズル42の直下に設けられ、ターゲット回収部14は、開口14aを通過してターゲット回収部14に到達する不要なドロップレットターゲットDLを回収するドレインタンクである。
【0019】
チャンバ10には、チャンバ10に通じる少なくとも1つの貫通孔が設けられている。この貫通孔は、ウィンドウ12によって塞がれる。レーザ装置LDからのパルス状のレーザ光90は、ウィンドウ12を透過してチャンバ10内に入射する。
【0020】
また、チャンバ10の内部空間には、レーザ集光光学系13が配置されている。レーザ集光光学系13は、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを含む。レーザ光集光ミラー13Aは、ウィンドウ12を透過するレーザ光90を反射して集光する。高反射ミラー13Bは、レーザ光集光ミラー13Aが集光するレーザ光90を反射する。レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ10の内部空間でのレーザ光90の集光位置がプロセッサ120から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されており、レーザ光90が当該集光位置においてターゲット物質を照射すると、ターゲット物質からプラズマが生成されると共に、プラズマからEUV光101が放射される。プラズマが生成される領域をプラズマ生成領域ARと呼ぶことがある。プラズマ生成領域ARは、プラズマ点を中心に半径が例えば40mmの領域であり、チャンバ10の内部空間に位置する。
【0021】
チャンバ10の内部空間には、例えば、回転楕円面形状の反射面15aを含むEUV光集光ミラー15が配置される。EUV光集光ミラー15は、例えばシリコン層とモリブデン層とが交互に積層された多層膜を備え、当該多層膜によりEUV光101を反射する。EUV光集光ミラー15は、チャンバ10の内部空間におけるレーザ光90と重ならない位置に設けられている。反射面15aは、プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから放射されるEUV光101を反射する。反射面15aは、第1焦点及び第2焦点を含む。反射面15aは、例えば、第1焦点がプラズマ生成領域ARに位置し、第2焦点が中間集光点IFに位置するように配置されてもよい。
【0022】
EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間及び露光装置200の内部空間を連通させる接続部9を含む。接続部9には、アパーチャが設けられた壁が配置されている。この壁は、アパーチャが第2焦点に位置するように配置されることが好ましい。接続部9はチャンバ10におけるEUV光101の出射口でもあり、EUV光101は接続部9から出射されて露光装置200に入射する。
【0023】
また、EUV光生成装置100は、圧力センサ26及びターゲットセンサとしての検出部27を含む。圧力センサ26及び検出部27は、チャンバ10に取り付けられ、プロセッサ120に電気的に接続されている。圧力センサ26は、チャンバ10の内部空間の圧力を計測し、計測された圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。
【0024】
検出部27は、例えば撮像機能を含み、プロセッサ120からの指示によってノズル42のノズル孔から吐出するドロップレットターゲットDLの存在、軌跡、位置、流速等を検出する。検出部27は、チャンバ10の内部に配置されてもよいし、チャンバ10の外部に配置されてチャンバ10の壁に設けられる不図示のウィンドウを介してドロップレットターゲットDLを検出してもよい。検出部27は、不図示の受光光学系と、例えばCCD(Charge-Coupled Device)又はフォトダイオード等の不図示の撮像部とを含む。受光光学系は、ドロップレットターゲットDLの検出精度を向上させるために、ドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲における像を撮像部の受光面に結像する。検出部27の視野内のコントラストを向上させるために配置される不図示の光源による光の集光領域をドロップレットターゲットDLが通過するときに、撮像部は、ドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲を通る光の変化を検出する。撮像部は、検出した光の変化を、ドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号に変換する。撮像部は、変換された信号をプロセッサ120に出力する。
【0025】
レーザ装置LDは、バースト動作する光源であるマスターオシレータを含む。マスターオシレータは、バーストオン時にパルス状のレーザ光90を出射する。マスターオシレータは、例えば、ネオジム(Nd)やイッテルビウム(Yb)を添加したYAG結晶を励起する固体レーザ装置や、ヘリウムや窒素等が炭酸ガス中に混合される気体を放電によって励起することで、レーザ光90を出射するレーザ装置である。或いは、マスターオシレータは、量子カスケードレーザ装置でもよい。また、マスターオシレータは、Qスイッチ方式により、パルス状のレーザ光90を出射してもよい。また、マスターオシレータは、光スイッチや偏光子等を含んでもよい。なお、バースト動作とは、バーストオン時に連続するパルス状のレーザ光90を所定の繰り返し周波数で出射し、バーストオフ時にレーザ光90の出射を抑制する動作である。レーザ装置LDは、マスターオシレータが出射したレーザ光を増幅する増幅器を含んでもよい。
【0026】
レーザ装置LDは、ドロップレットターゲットDLをミスト化させるプリパルスレーザ光を出射するプリパルスレーザ装置と、ミスト化したドロップレットターゲットDLをプラズマ化させるメインパルスレーザ光を出射するメインパルスレーザ装置と、を含んでもよい。この場合、レーザ光90は、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを含む。例えば、プリパルスレーザ装置は、波長が1.06μmであるプリパルスレーザ光を出射するYAGレーザ装置である。また、例えば、メインパルスレーザ装置は、波長が1.06μmであるメインパルスレーザ光を出射するYAGレーザ装置、又は、波長が10.6μmであるメインパルスレーザ光を出射するCO2レーザ装置である。
【0027】
レーザ装置LDから出射するレーザ光90の進行方向は、レーザ光デリバリ光学系30によって調節される。レーザ光デリバリ光学系30は、レーザ光90の進行方向を調節する複数のミラー31,32を含む。ミラー31,32の少なくとも1つの位置は、不図示のアクチュエータで調節される。ミラー31,32の少なくとも1つの位置が調節されることで、レーザ光90がウィンドウ12から適切にチャンバ10の内部空間に伝搬し得る。
【0028】
本開示のプロセッサ120は、制御プログラムが記憶された記憶装置と、当該制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサ120は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされ、EUV光生成装置100全体を制御する。プロセッサ120には、圧力センサ26で計測されたチャンバ10の内部空間の圧力に係る信号や、検出部27によって撮像されたドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号や、露光装置200からバースト動作を指示するバースト信号等が入力される。プロセッサ120は、上記各種信号を処理し、例えば、ドロップレットターゲットDLが吐出されるタイミング、ドロップレットターゲットDLの吐出方向等を制御してもよい。また、プロセッサ120は、レーザ装置LDの出射タイミング、レーザ光90の進行方向や集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて後述のように他の制御が追加されてもよい。
【0029】
図4は、比較例におけるドロップレットターゲットDLの軌道に垂直なチャンバ10の断面を含む模式図であり、
図5は、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿ったチャンバ10の断面を含む模式図である。
図4では、図示の簡略化のために、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを省略し、ウィンドウ12からプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の進行経路を一点鎖線で図示している。以下では、ドロップレットターゲットDLの軌道に沿う方向をY方向、プラズマ生成領域ARから第1排気装置180に向かう方向でありY方向に直交する方向をX方向、Y方向及びX方向に直交する方向をZ方向として説明することがある。
【0030】
EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間からチャンバ10の外部空間に直線状に延在する筒状の第1隔壁18を備える。第1隔壁18は、例えば、ステンレス、金属モリブデン等で構成される。第1隔壁18は、プラズマ生成領域ARを囲っている。第1隔壁18の互いに向かい合う開口のうち、チャンバ10の内部空間に位置する開口は、第1開口21である。第1開口21は、EUV光101がプラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー15に伝搬する光路上に設けられる。チャンバ10の外部に位置する開口は、第1ガス排気口181である。
【0031】
また、EUV光生成装置100は、チャンバ10の内部空間に平面状の第2隔壁19を備える。第2隔壁19は、例えば、ステンレス、金属モリブデン等で構成される。第2隔壁19は、EUV光集光ミラー15側の領域と第1隔壁18の外側の領域との間に配置されている。第2隔壁19は、第1隔壁18のチャンバ10の内部空間に位置する端部に接続されている。また、第2隔壁19には、第1開口21と重なる位置に開口が設けられている。従って、第1開口21は、第1隔壁18と第2隔壁19とに設けられていると解することができる。なお、
図3では、第1隔壁18及び第2隔壁19の図示を省略している。
【0032】
本例では、チャンバ10の内部空間のうち、第2隔壁19よりもEUV光集光ミラー15側の空間を第2空間S2とし、第1隔壁18の内部空間を第1空間S1とする。また第2隔壁19よりもEUV光集光ミラー15とは反対側の空間であって、チャンバ10の第1隔壁18の外側の空間を第3空間S3とする。すなわち、第1隔壁18は、第1空間S1と第3空間S3とを隔絶し、第2隔壁19は、第2空間S2と第3空間S3とを隔絶する。
【0033】
プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから生成されるEUV光101は、第1空間S1から第1開口21を介して第2空間S2に配置されるEUV光集光ミラー15に入射可能である。
【0034】
第1開口21は、第1ガス排気口181に向かい合い、第1開口21と第1ガス排気口181との間にはプラズマ生成領域ARが位置する。従って、プラズマ生成領域ARは第1空間S1内に位置する。第1ガス排気口181は、配管182を介して、排気ポンプを含む第1排気装置180に接続されている。また、第1空間S1と第1排気装置180とを繋げる配管182には、開度が変更可能である第1バルブ183が設けられている。
【0035】
第1隔壁18の側面には、ドロップレット供給開口184、ドロップレット排出開口185、及び第2開口186が設けられている。第2開口186は、チャンバ10の内部空間におけるプラズマ生成領域ARへのレーザ光90が伝搬する光路上に設けられ、レーザ光90は、第3空間S3から第2開口186を介してプラズマ生成領域ARに入射する。ドロップレット供給開口184及びドロップレット排出開口185は、ドロップレットターゲットDLの軌道上に設けられ、互いに向かい合う。ドロップレットターゲットDLは、ターゲット供給部40からドロップレット供給開口184を介してプラズマ生成領域ARに供給される。ドロップレット排出開口185は、ターゲット回収部14に繋がる開口14aに向かい合い、プラズマ生成領域ARを通過したドロップレットターゲットDLは、ドロップレット排出開口185を介してターゲット回収部14内に侵入する。なお、本例では、ドロップレット供給開口184及びドロップレット排出開口185のそれぞれの面積は、互いに概ね同じであり、第2開口186の面積よりも大きい。第1隔壁18は、チャンバ10の内部空間におけるドロップレットターゲットDLの軌道上及び当該内部空間におけるプラズマ生成領域ARへのレーザ光90の光路上とプラズマ生成領域ARからのEUV光101の光路上以外においてプラズマ生成領域ARを囲う。
【0036】
また、ウィンドウ12は、チャンバ10の第3空間S3側の壁に設けられ、第3空間S3に通じる貫通孔を塞いでいる。レーザ光90は、ウィンドウ12から第2開口186を介してプラズマ生成領域ARを照射する。
【0037】
チャンバ10には、第1エッチングガス供給部17が接続されている。第1エッチングガス供給部17は、第3空間S3を介して第1空間S1にエッチングガスを供給する。第1エッチングガス供給部17は、第1ガス供給口170を含む。第1ガス供給口170は、チャンバ10の第3空間S3側の壁に設けられている。第1ガス供給口170からのエッチングガスは、第2開口186、ドロップレット供給開口184及びドロップレット排出開口185などを通じて第3空間S3から第1空間S1に供給される。エッチングガスには水素ガスが含まれ、本例のエッチングガスは、水素濃度が100%と見做せる水素ガスである。本例では、第1エッチングガス供給部17は、水素タンク171とガス配管172とを更に含む。第1エッチングガス供給部17は、ガス配管172を介して水素タンク171内の水素ガスを第1ガス供給口170から第3空間S3に供給する。ガス配管172には、バルブである不図示の供給ガス流量調節部が設けられてもよい。第1エッチングガス供給部17は、プロセッサ120に電気的に接続され、プロセッサ120によって制御される。例えば、供給ガス流量調節部が設けられる場合には、プロセッサ120が供給ガス流量調節部を制御して、第1空間S1に供給されるエッチングガスの流量が調整される。なお、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が3%程度のバランスガスでもよく、この場合、バランスガスには、例えば窒素(N2)ガスやアルゴン(Ar)ガスが含まれる。
【0038】
また、チャンバ10には、第2エッチングガス供給部16が接続されている。第2エッチングガス供給部16は、第2空間S2に第1エッチングガス供給部17が供給するエッチングガスと同様のエッチングガスを供給する。第2エッチングガス供給部16は、第2空間S2側のチャンバ10の壁に設けられている第2ガス供給口160を含む。ここでは、第2ガス供給口160は、EUV光101がEUV光集光ミラー15から露光装置200に伝搬する光路を囲う筒状部分に設けられている。第2ガス供給口160から供給されるエッチングガスは、EUV光101がEUV光集光ミラー15から露光装置200に入射する方向と逆方向に向かって第2空間S2内を流れる。本例では、第2エッチングガス供給部16は、水素タンク161とガス配管162とを更に含む。ガス配管162には、バルブである不図示の供給ガス流量調節部が設けられてもよい。第2エッチングガス供給部16は、プロセッサ120に電気的に接続され、プロセッサ120によって制御される。例えば、供給ガス流量調節部が設けられる場合には、プロセッサ120が供給ガス流量調節部を制御して、第2空間S2に供給されるエッチングガスの流量が調整される。
【0039】
上記のようにターゲット物質はスズであるため、ターゲット物質がプラズマ生成領域ARにおいてレーザ光90を照射されてプラズマ化すると、スズの微粒子及びスズの荷電粒子が生じる。また、エッチングガスに含まれる水素は、EUV光101のエネルギーにより水素ラジカルとなる。微粒子及び荷電粒子を構成するスズは、水素ラジカルと反応する。スズが水素ラジカルと反応すると、常温で気体のスタンナン(SnH4)を生成する。
図4及び
図5において、第2エッチングガス供給部16からEUV光集光ミラー15の反射面15aに供給されるエッチングガスの流れが矢印で示されている。第2エッチングガス供給部16から第2空間S2に供給されるエッチングガスの流量は、例えば、20nlm以上60nlm以下であることが望ましい。また、第1エッチングガス供給部17から第3空間S3に供給されるエッチングガスの流量は、例えば、20nlm以上60nlm以下であることが望ましい。nlmは、1分あたりに流れるエッチングガスの0℃、1気圧に換算した体積を示す。
【0040】
ターゲット物質がプラズマ生成領域ARでプラズマ化する際、排ガスとしての残留ガスが第1空間S1に生成される。残留ガスは、ターゲット物質のプラズマ化により生じたスズの微粒子及び荷電粒子と、それらがエッチングガスと反応したスタンナンと、未反応のエッチングガスとを含む。なお、荷電粒子の一部は中性化するが、この中性化した荷電粒子も残留ガスに含まれる。第1排気装置180は、第1空間S1内の残留ガスを、第2空間S2から第1空間S1に流れる残留ガスと共に、チャンバ10の外部に排気する。
【0041】
3.2 動作
次に、比較例のEUV光生成装置100の動作について説明する。
【0042】
EUV光生成装置100では、例えば、新規導入時やメンテナンス時等において、チャンバ10の内部空間の大気が排気される。その際、大気成分の排気のために、チャンバ10の内部空間のパージと排気とを繰り返してもよい。パージガスには、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが用いられることが好ましい。その後、チャンバ10の内部空間の圧力が所定の圧力以下になると、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部17の第1ガス供給口170を通じてチャンバ10の第1空間S1へのエッチングガスの導入を開始させると共に、第2エッチングガス供給部16の第2ガス供給口160を通じてチャンバ10の第2空間S2へのエッチングガスの導入を開始させる。このときプロセッサ120は、チャンバ10の内部空間の圧力が所定の圧力に維持されるように、第1エッチングガス供給部17や第2エッチングガス供給部16や第1排気装置180を制御してもよい。その後、プロセッサ120は、第1空間S1及び第2空間S2へのエッチングガスの導入開始から所定時間が経過するまで待機する。
【0043】
また、第1排気装置180は、チャンバ10の内部空間の気体を第1ガス排気口181から排気し、チャンバ10の内部空間の圧力を略一定に保つ。
【0044】
また、プロセッサ120は、タンク41内のターゲット物質を融点以上の所定温度に加熱及び維持するために、ヒータ電源46からヒータ44に電流を供給させ、ヒータ44を昇温させる。このとき、プロセッサ120は、温度センサ45からの出力に基づいて、ヒータ電源46からヒータ44へ供給される電流の値を調節し、ターゲット物質の温度を所定温度に制御する。なお、所定温度は、ターゲット物質がスズである場合、スズの融点231.93℃以上の温度であり、例えば240℃以上290℃以下である。こうしてドロップレットターゲットDLを吐出する準備が完了する。
【0045】
準備が完了すると、プロセッサ120は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が所定の流速で吐出するように、圧力調節器43によって、不図示のガス供給源から不活性ガスをタンク41内に供給し、タンク41内の圧力を調節する。この圧力下で、ターゲット物質は、ノズル42のノズル孔からチャンバ10の内部空間に吐出する。ノズル孔から吐出するターゲット物質は、ジェットの形態をとってもよい。このとき、プロセッサ120は、ドロップレットターゲットDLを生成するために、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に所定波形の電圧を印加する。ピエゾ電源48は、電圧値の波形が例えば正弦波状、矩形波状、或いはのこぎり波状となるように、電圧を印加する。ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットターゲットDLとなる。ドロップレットターゲットDLの直径は、概ね10μm以上30μm以下である。
【0046】
ドロップレットターゲットDLは、吐出されると、ドロップレット供給開口184を通過してプラズマ生成領域ARに進行する。検出部27は、チャンバ10の内部空間の所定位置を通過するドロップレットターゲットDLの通過タイミングを検出する。プロセッサ120は、ドロップレットターゲットDLにレーザ光90が照射されるように、検出部27からの信号に基づいて、レーザ装置LDからレーザ光90が出射するタイミングを制御するトリガ信号を出力する。プロセッサ120から出力されたトリガ信号は、レーザ装置LDに入力する。レーザ装置LDは、トリガ信号が入力されると、パルス状のレーザ光90を出射する。
【0047】
出射されたレーザ光90は、レーザ光デリバリ光学系30とウィンドウ12とを経由して、レーザ集光光学系13に入射する。レーザ光90は、レーザ集光光学系13から第2開口186を通過してプラズマ生成領域ARに向かって進行する。そして、レーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射される。このとき、プロセッサ120は、レーザ光90がプラズマ生成領域ARに集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。これにより、レーザ光集光ミラー13Aによって集光するレーザ光90は、プラズマ生成領域ARでドロップレットターゲットDLに照射される。当該照射によりプラズマが生成され、当該プラズマからEUV光101を含む光が放射される。
【0048】
プラズマ生成領域ARで発生したEUV光101を含む光のうち、一部のEUV光101は、第1開口21を通過してEUV光集光ミラー15に進行し、EUV光集光ミラー15によって中間集光点IFで集光された後、接続部9から露光装置200に入射する。
【0049】
上記のように、第1エッチングガス供給部17は、第1ガス供給口170を通じてチャンバ10の第1空間S1にエッチングガスを供給し、第2エッチングガス供給部16は、第2ガス供給口160を通じてチャンバ10の第2空間S2にエッチングガスを供給する。エッチングガスに含まれる水素は、EUV光101のエネルギーにより、水素ラジカルとされる。従って、スズが、EUV光集光ミラー15の反射面15a上や、第1隔壁18の内周面上等に堆積している場合、当該スズの少なくとも一部は水素ラジカルと反応してスタンナンとなり、反射面15a上や内周面上等から除去される。第2空間S2におけるエッチングガスやスタンナンは、主に第1開口21から第1空間S1に流入する。第1排気装置180は、第2空間S2から第1空間S1に流入したエッチングガス及びスタンナンを第1空間S1における残留ガスと共に、第1ガス排気口181を通じて吸引する。これにより、第1空間S1及び第2空間S2におけるガスは、チャンバ10の外部に排気される。第1排気装置180に吸引されたガスは、無害化等の所定の排気処理が施される。
【0050】
3.3 課題
ターゲット物質がレーザ光90の照射によりプラズマ化すると、スズの微粒子並びに荷電粒子、及び荷電粒子が中性化した中性粒子などが生じて飛散する。レーザ光90の照射によりドロップレットターゲットDLから飛散した、スズの微粒子並びに荷電粒子、及び荷電粒子が中性化した中性粒子等は、デブリと呼称される場合がある。
【0051】
デブリが反射面15aに付着すると、EUV光101の反射率が低下し、EUV光生成装置100から出射するEUV光101のパワーが低下する懸念がある。そこで、EUV光生成装置100は、エッチングガスの流れにより、エッチングガスの粒子とデブリとを衝突させデブリを減速又は停止させることで、デブリが第1空間S1から第2空間S2に拡散することを抑制している。単位距離当たりにおけるエッチングガスの粒子とデブリとの衝突数は、概ねエッチングガスの粒子の密度によって決定される。そのため、EUV光生成装置100は、エッチングガスの粒子とデブリとの衝突数を上昇させようとするとエッチングガスの圧力を高める必要がある。例えば、EUV光生成装置100は、プラズマ生成領域ARとEUV光集光ミラー15との間でデブリ粒子を停止させるためにチャンバ10内のエッチングガスの圧力を100Pa以上とする。
【0052】
しかし、プラズマ生成領域ARから生じるEUV光101は光路において水素に吸収されるため、エッチングガスの圧力が高まると、エッチングガスに含まれる水素に吸収されるEUV光101が増加する。従って、EUV光生成装置100から出射するEUV光101のパワーが低下する。また、エッチングガスの圧力を高めずに反射面15aにデブリが付着することを抑制しようとする場合、反射面15aへのデブリの付着を抑制するためにプラズマ生成領域ARとEUV光集光ミラー15との距離を長くすることが考えられる。しかし、その場合、EUV光生成装置100が大型化してしまう。
【0053】
そこで、以下の実施形態では、反射面15aへのデブリの付着の抑制とエッチングガスによるEUV光101の低減の抑制とを両立することで、EUV光生成装置100から出射するEUV光のパワーの低下を抑制し得るEUV光生成用チャンバ装置150が例示される。
【0054】
4.実施形態1の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0055】
4.1 構成
図6は、本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150を
図4と同様に示す模式図であり、
図7は、本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150を
図5と同様に示す模式図である。
【0056】
本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、第2排気装置190及びガスカーテン形成装置5を備える点において、比較例におけるEUV光生成用チャンバ装置150と主に異なる。
【0057】
本実施形態では、チャンバ10の第2空間S2側の壁に、第2ガス排気口191が設けられている。第2ガス排気口191は、配管192を介して、排気ポンプを含む第2排気装置190に接続されている。また、第2バルブ193は、第2空間S2と第2排気装置190とを繋げる配管192に設けられている。第2バルブ193は、開度を変更可能である。第2排気装置190は、配管192を介して、第2空間S2から残留ガスを排気する。
【0058】
第1排気装置180、第1ガス排気口181、配管182、第1バルブ183、第2排気装置190、第2ガス排気口191、配管192及び第2バルブ193は、チャンバ10から残留ガスを排気するガス排気部を構成する。
【0059】
また、第1エッチングガス供給部17及び第2エッチングガス供給部16は、チャンバ10にエッチングガスを供給するエッチングガス供給部を構成する。
【0060】
ガスカーテン形成装置5は、超音速でガスを噴射するガス噴射部400と、当該ガスを回収するガス回収部500と、を備える。
【0061】
ガス噴射部400は、ガスを噴射して、第1開口21の少なくとも一部を塞ぐガスカーテンGCを形成する。本実施形態では、ガス噴射部400は、ガスをY軸方向に噴射してガスカーテンGCを形成する。ガスカーテンGCは、プラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー15に伝搬するEUV光101の光路と交差する。また、本実施形態では、ガス噴射部400は、第2隔壁19のすぐ隣にガスカーテンGCを形成するため、第1空間S1は、ガスカーテンGCよりプラズマ生成領域AR側の空間となり、第2空間S2は、ガスカーテンGCよりEUV光集光ミラー15側の空間となる。
【0062】
ガス回収部500は、ガス噴射部400からガスが噴射される方向に進んだ位置に配置されている。ガス回収部500は、ガスカーテンGCを構成するガスを回収して外部に排出する。
【0063】
図8は、ガス噴射部400とガス回収部500との拡大図である。
図8に示すように、ガス噴射部400は、ガス供給部401、ラバルノズル402、第3排気装置403、配管404、第3バルブ405、シュラウド406及び第1スキマー407を主な構成として備える。
【0064】
ガス供給部401は、ガスカーテンGCを構成するガスを供給する。ガス供給部401は、供給されるガスの圧力を調整するレギュレータとガスを格納するボンベなどのガス源と含む。ガス供給部401は、プロセッサ120に電気的に接続されプロセッサ120によって制御される。プロセッサ120がレギュレータを制御して、ラバルノズル402の内部に供給されるガスの圧力が調整される。ガス供給部401は、ラバルノズル402に接続される。なお、ガス供給部401とラバルノズル402との間に配管が設けられてもよい。
【0065】
ガス供給部401が供給するガスは、水素を含む。ガス供給部401が供給するガスは、第1エッチングガス供給部17及び第2エッチングガス供給部16が供給するエッチングガスと同様のガスであってもよいし、異なるガスであってもよい。ただし、ガスは、ガスカーテンGCによるEUV光101の吸収を抑制する観点から、水素100%であることが望ましい。
【0066】
ラバルノズル402は、ラバルノズル402の長手方向に垂直な面すなわちXZ面での断面が非円形の流路を持つ。例えば、ラバルノズル402の長手方向に垂直な断面は、長方形、レーストラック形、又は楕円形等であるが、特定の形状に限定されない。ラバルノズル402の断面のXZ面での長手方向は、Z方向と概ね平行であり、第1開口21を塞ぐ仮想的な面と概ね平行である。第1開口21を塞ぐ仮想的な面がYZ平面に概ね平行であるとすると、ラバルノズル402のZ方向の長さは、例えば、第1開口21のZ方向の大きさと同程度以上であることが好ましい。ラバルノズル402は、ガスが噴射される方向に進むほどXZ面での断面積が縮小するガス圧縮部402aと、ガスが噴射される方向に進むほどXZ面での断面積が拡大するガス膨張部402cと、を含む。ガス圧縮部402aとガス膨張部402cとの間のスロート402bは、例えば、0.5mm以上1mm以下の幅を有する。
【0067】
シュラウド406は、チャンバ10の外部空間からチャンバ10の内部空間に直線状に延在している。シュラウド406のうちのチャンバ10の内部に位置する下端は、開放し、第2空間S2に突出している。また、シュラウド406の側面の一部は、第2隔壁19に接触してもよい。ラバルノズル402は、シュラウド406の内部空間に配置され、シュラウド406の内部の側壁とラバルノズル402との間には、隙間が形成されている。シュラウド406は、ラバルノズル402のガス膨張部402cの先端よりもガスが噴射される方向に向かって延在する。シュラウド406のうちのチャンバ10の外部に位置する部位は、ラバルノズル402が固定されている開口を有する。
【0068】
シュラウド406の内部において、ラバルノズル402からガスが噴射される方向に進む位置には、第1スキマー407が固定されている。本実施形態では、第1スキマー407は、シュラウド406のチャンバ10の内部空間内における端部に固定されている。第1スキマー407の開口は、ガスが噴射される方向に垂直な断面積すなわちXZ面に沿った断面積が、ガスが噴射される方向に進むほど拡大するよう構成されている。第1スキマー407は、XZ面での断面の形状が非円形である流路を有する。例えば、第1スキマー407のXZ面での断面の形状は、長方形、レーストラック形、又は楕円形などであるが、特定の形状に限定されない。第1スキマー407のXZ面での断面の長手方向は、第1開口21を通じてプラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー15に向かう方向に垂直な面と概ね平行である。従って、第1スキマー407のXZ面での断面の長手方向は、Z方向と概ね平行である。第1スキマー407のXZ面での断面の長手方向は、ラバルノズル402と概ね平行である。第1開口21を塞ぐ仮想的な面がYZ平面に概ね平行であるとすると、第1スキマー407のZ方向の長さは、第1開口21のZ方向の長さと同程度である。また、第1スキマー407の幅は、1mm程度である。
【0069】
シュラウド406の側壁には、第3ガス排気口408が設けられている。第3ガス排気口408は、ラバルノズル402の先端よりもガスが噴射される方向と逆側の位置に設けられている。第3ガス排気口408は、配管404を介して、排気ポンプを含む第3排気装置403に接続されている。
【0070】
第3バルブ405は、シュラウド406の内部空間と第3排気装置403とを繋げる配管404に設けられている。第3バルブ405は、開度を変更可能である。第3排気装置403は、第3バルブ405が開けられることで、配管404を介して、シュラウド406内から第1スキマー407を通過しなかったガスを排気する。
【0071】
ガス回収部500は、第4排気装置501、配管502、第4バルブ503及び第2スキマー504を主な構成として備える。
【0072】
第2スキマー504は、第2空間S2において、ガス噴射部400からガスが噴射される方向に進む位置に配置されている。第2スキマー504の開口は、ガスが噴射される方向に進むほどXZ面での断面積が拡大するよう構成されている。第2スキマー504は、XZ面での断面が非円形である流路を持つ。例えば、第2スキマー504のXZ面での断面の形状は、長方形、レーストラック形、又は楕円形などであるが、特定の形状に限定されない。また、第2スキマー504のXZ面での断面の形状は、第1スキマー407のXZ面での断面の形状と互いに同じであってもよく、互いに異なってもよい。第2スキマー504のXZ面での断面の長手方向は、第1スキマー407のXZ面での断面の長手方向と概ね平行である。第2スキマー504のXZ面での断面の長手方向の長さは、第1スキマー407のXZ面での断面の長手方向の長さと同程度である。
【0073】
第2スキマー504には、配管502が接続されている。配管502は、チャンバ10の内部空間からチャンバ10の外部空間に直線状に延在している。配管502のうちのチャンバ10の内部に位置する端部は、第2スキマー504に接続されている。配管502のうちのチャンバ10の外部に位置する端部は、排気ポンプを含む第4排気装置501に接続されている。
【0074】
第4バルブ503は、第2スキマー504の内部空間と第4排気装置501とを繋げる配管502に設けられている。第4バルブ503は、開度を変更可能である。第3排気装置403は、配管502を介して、第2スキマー504に進入したガスを排気する。
【0075】
なお、第2スキマー504のXZ面での断面積が小さい一端が第2空間S2に突出していればよく、他端は、チャンバ10の内壁と外壁との間に存在してもよいし、チャンバ10の外部に突出してもよい。
【0076】
4.2 動作
次に、本実施形態におけるEUV光生成装置100の動作について説明する。
【0077】
EUV光生成装置100では、例えば、新規導入時やメンテナンス時等において、比較例と同様に、プロセッサ120は、第1エッチングガス供給部17及び第2エッチングガス供給部16からチャンバ10の内部空間内にエッチングガスを導入する。
【0078】
また、ガス排気部は、第2空間S2内の圧力が第1空間S1内の圧力よりも低くなるように、第1空間S1及び第2空間S2からガスを排気する。例えば、第1バルブ183の開度及び第2バルブ193の開度は、第2空間S2内の圧力が第1空間S1内の圧力よりも低くなるように調整される。また、エッチングガス供給部は、第2空間S2内の圧力を第1空間S1の圧力よりも低くなるように、第1空間S1及び第2空間S2に供給するエッチングガスの流量を制御してもよい。また、エッチングガス供給部とガス排気部とは、第2空間S2内の圧力を第1空間S1の圧力よりも低くなるように、プロセッサ120によって連動されてもよい。
【0079】
また、プロセッサ120は、第1空間S1及び第2空間S2の排気後の圧力調整に先立って、ガス供給部401を制御して、ガス供給部401にラバルノズル402へガスを供給させる。ガス供給部401からラバルノズル402へのガスの供給圧力は、レギュレータによって調整され、例えば、1kPa以上である。なお、このとき、第3バルブ405及び第4バルブ503は、閉鎖していない。
【0080】
ガス供給部401からラバルノズル402へ供給されたガスは、ラバルノズル402のガス圧縮部402aで圧縮され、ガスの速度は、スロート402bで概ね音速になる。ガスは、スロート402bを経てガス膨張部402cへ進行し、ガスの速度は、ガス膨張部402cにおいて超音速になる。
【0081】
ここで、音速は、ガスが通過する空間における音速である。例えば、水素ガス中で、圧力10Pa、温度300Kである場合は、比熱比γ=1.4,気体定数R,一般気体定数R0=8314.5J/kmol・K,分子量M=2.016kg/kmol、温度T=300K、とすると、完全気体の音速aは次式で表され、1316m/sとなる。
【0082】
a=(γ×R×T)(1/2)
=(γ×(R0/M)×T)(1/2)
=1316(m/s)
速度が超音速となったガスは、Y軸方向への指向性を有した状態で、ラバルノズル402のガス膨張部402cからシュラウド406内に放出される。シュラウド406内に放出されたガスは、Y軸方向に進む。Y軸方向に進むガスは、第1スキマー407の開口によって一部を切り取られ、速度が超音速である状態で第2空間S2内に噴射される。
【0083】
第1スキマー407の開口から噴射されなかったガスは、シュラウド406内に残留する。第3排気装置403は、配管404を介して第3ガス排気口408からシュラウド406内に残留したガスを排気する。第3排気装置403は、プロセッサ120の制御により動作するものであってもよいし、オペレータなどの操作にしたがって動作するものであってもよい。
【0084】
なお、シュラウド406内に残留したガスは、ラバルノズル402から噴射された指向性を有するガスの攪乱を抑制するため、ガス密度が低い分子流であることが望ましい。例えば、シュラウド406内の圧力は、第3バルブ405により10Pa程度に維持される。
【0085】
第1スキマー407の開口から噴射されたガスは、第2空間S2においてY軸方向に進み、第1開口21の少なくとも一部を覆うガスカーテンGCを形成する。ガスカーテンGCは、第1開口21の少なくとも一部を覆うことで第1空間S1と第2空間S2との間で種々のガス、デブリなどが移動することを抑制する。また、ガスカーテンGCは、第1空間S1と第2空間S2との圧力差を維持し得る。なお、第1空間S1と第2空間S2との間における種々のガスやデブリ等の移動を抑制する観点から、ガスカーテンGCは、第1開口21の全体を覆うことが好ましい。
【0086】
第1スキマー407の開口から噴射され、第2空間S2においてY軸方向に進むガスは、第2スキマー504の開口から第2スキマー504の内部に進入する。第1スキマー407の開口から噴射したガスの速度が音速を超えているため、当該ガスの指向性が高い。そのため、当該ガスの多くが第2スキマー504の開口から第2スキマー504の内部に流入する。
【0087】
第4排気装置501は、配管502を介して第2スキマー504の内部に流入したガスを排気する。第4排気装置501は、プロセッサ120の制御により動作するものであってもよいし、オペレータなどの操作にしたがって動作するものであってもよい。
【0088】
例えば、第2スキマー504内の圧力は、第2スキマー504から第2空間S2にガスが逆流しないように、第2空間S2内の圧力以下に調整される。第2空間S2内の圧力が例えば30Paであれば、第2スキマー504内の圧力は、30Paより低く調整される。
【0089】
例えば、EUV光集光ミラー15から中間集光点IFまでの光路の長さが2.1mであり、EUV光101の減衰率が10%以下であることが望まれる場合、第2空間S2内の圧力は、例えば30Pa以下であり、第1空間S1内の圧力は例えば100Pa以上である。
【0090】
プロセッサ120は、第1空間S1及び第2空間S2へのエッチングガスの導入が開始され、ガスカーテン形成装置5によりガスカーテンGCが形成されてから所定時間が経過するまで待機する。その後、プロセッサ120は、比較例と同様に、プラズマ生成領域ARにおいてドロップレットターゲットDLにレーザ光90を照射させ、プラズマ生成領域ARからEUV光101を含む光が放射される。
【0091】
プラズマ生成領域ARで生成されたEUV光101を含む一部の光は、第1開口21を通過しガスカーテンGCを透過する。ガスカーテンGCを透過したEUV光101は、EUV光集光ミラー15に進行し、EUV光集光ミラー15によって中間集光点IFで集光された後、接続部9から露光装置200に入射する。
【0092】
また、プラズマ生成領域ARでは、レーザ光90の照射によりドロップレットターゲットDLからデブリが飛散する。
図9は、デブリDの動きを示す模式図である。なお、
図9は、ガスカーテンGC付近の拡大図である。
図9では、ガス噴射部400及びガス回収部500は、省略されている。また、
図9は、デブリDの速度を矢印で、デブリDの移動経路を破線で示す。
図9が示すように、プラズマ生成領域ARで発生したデブリDの一部は、第1開口21に向かって飛散する。第1開口21に向かって飛散するデブリDは、ガスカーテンGC内の水素分子の流れに流される。第1開口21に向かって飛翔するデブリDの一部は、ガスカーテンGCの水素分子と衝突して、プラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー15に向かう方向の運動エネルギーを失い、ガスカーテンGCのガスが流れる方向の運動エネルギーを得る。そのため、当該デブリDは、当該ガスの流れに沿って排除される。また、デブリDの他の一部は、水素分子との衝突により、プラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー15に向かう方向の運動エネルギーの一部を失い、当該ガスが流れる方向の運動エネルギーを得る。そのため、当該デブリDの軌道がガスカーテンGCで変わり、当該デブリDは、第1開口21から第2空間S2に進入するもののEUV光集光ミラー15に付着し難くなる。
【0093】
4.3 作用・効果
EUV光生成用チャンバ装置150では、第2空間S2内の圧力は、第1空間S1内の圧力よりも低い。そのため、EUV光生成用チャンバ装置150は、第2空間S2においてエッチングガスの密度が低下し、EUV光101がエッチングガスに吸収されることを抑制し得る。
【0094】
また、EUV光生成用チャンバ装置150は、プラズマ生成領域ARにおいてドロップレットターゲットDLから生じたデブリDの一部をガスカーテンGCに含まれるガスの分子と衝突させる。そのため、EUV光生成用チャンバ装置150は、デブリDをガスと共に排出し得、第2空間S2にデブリDが侵入することを抑制し得る。また、EUV光生成用チャンバ装置150は、ガスカーテンGCにより、デブリDの進行方向をEUV光集光ミラー15に向かう方向から他の方向へ変更し得る。従って、EUV光生成用チャンバ装置150は、デブリDがEUV光集光ミラー15に付着することを抑制し得る。
【0095】
よって、EUV光生成用チャンバ装置150は、第2空間S2においてエッチングガスの圧力が低くとも、ガスカーテンGCによりデブリDがEUV光集光ミラー15に付着することを抑制し得る。従って、EUV光生成用チャンバ装置150は、プラズマ生成領域と集光ミラーとの距離を長くしなくともデブリがEUV光集光ミラー15に付着することを抑制し得るため、小型化し得る。
【0096】
また、EUV光生成用チャンバ装置150では、第1空間S1におけるエッチングガスの圧力は、第2空間S2におけるエッチングガスの圧力よりも高い。そのため、EUV光生成用チャンバ装置150は、第1空間S1において飛散したスズとエッチングガスに含まれる水素とを反応させて飛散したスズを効果的に排除し得る。
【0097】
以上のように、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、小型化を実現しつつ、EUV光101の出力低減及びEUV光集光ミラー15へのデブリDの付着を抑制し得る。
【0098】
なお、EUV光生成用チャンバ装置150は、第2隔壁19を備えなくともよい。この場合、ガスカーテンGCのEUV光集光ミラー15側を第2空間S2とし、プラズマ生成領域AR側を第1空間S1としてもよい。ただし、デブリDの飛散を抑制する観点から第2隔壁19が設けられることが好ましい。
【0099】
4.4 変形例1の説明
次に、実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の変形例1について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0100】
図10は、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150を
図5と同様に示す模式図である。
図10が示すように、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、第2排気装置190が第4排気装置501を兼ねる点で実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。従って、本変形例では、ガス回収部500は、第4排気装置501を備えない。また、配管502のうちのチャンバ10の外部に位置する端は、第2排気装置190と第2バルブ193との間において配管192に接続されている。この構成により、第2排気装置190は、第4排気装置501を兼ねる。
【0101】
本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150によれば、第2排気装置190は、第2空間S2及び第2スキマー504内からガスを排気する。そのため、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、排気装置の個数を減らし得る。
【0102】
4.5 変形例2の説明
次に、実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の変形例2について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0103】
図11は、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150を
図5と同様に示す模式図である。
図11が示すように、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、第2排気装置190が、第3排気装置403をさらに兼ねる点で変形例1のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。従って、本変形例では、ガス噴射部400は、第3排気装置403を備えない。また、配管404の一端は、第3ガス排気口408に接続されている。また、配管404の他端は、第2排気装置190と第2バルブ193との間において配管192に接続されている。この構成により、第2排気装置190は、第3排気装置403を兼ねる。
【0104】
本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150によれば、第2排気装置190は、第2空間S2、第2スキマー504内、及びシュラウド406内からガスを排気する。そのため、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、排気装置の個数を減らし得る。
【0105】
4.6 変形例3の説明
次に、実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150の変形例3について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0106】
図12は、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150を
図5と同様に示す模式図である。
図11が示すように、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、第1圧力センサ601、第2圧力センサ602、第3圧力センサ603、第4圧力センサ604及び第5圧力センサ605を備える点で実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。第1圧力センサ601、第2圧力センサ602、第3圧力センサ603、第4圧力センサ604、及び第5圧力センサ605は、信号線などを介してプロセッサ120に電気的に接続されている。
【0107】
第1圧力センサ601は、第1空間S1内の圧力を測定し、測定された圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。第2圧力センサ602は、第2空間S2内の圧力を測定し、測定された圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。第3圧力センサ603は、シュラウド406内の圧力を測定し、測定された圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。第4圧力センサ604は、第2スキマー504内の圧力を測定し、測定された圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。なお、第4圧力センサ604は、配管502内の圧力を測定するものであってもよい。第5圧力センサ605は、第3空間S3内の圧力を測定し、第5圧力センサ605は、測定された圧力を示す信号をプロセッサ120に出力する。
【0108】
また、第1バルブ183、第2バルブ193、第3バルブ405、及び第4バルブ503は、信号線などを介してプロセッサ120に電気的に接続されている。第1バルブ183、第2バルブ193、第3バルブ405、及び第4バルブ503は、プロセッサ120により開度を調節される。なお、第1バルブ183、第2バルブ193、第3バルブ405、及び第4バルブ503は、弁と弁の開度を制御する駆動部とを含んでもよい。
【0109】
次に、本変形例におけるプロセッサ120の動作について説明する。プロセッサ120には、第1圧力センサ601、第2圧力センサ602、第3圧力センサ603、第4圧力センサ604、及び第5圧力センサ605からの信号が入力する。プロセッサ120は、当該信号が入力すると、入力された信号に基づいて第1バルブ183、第2バルブ193、第3バルブ405、及び第4バルブ503を制御する。
【0110】
プロセッサ120は、第2空間S2内の圧力が第1空間S1内の圧力よりも小さくなるように、第1バルブ183及び第2バルブ193を制御する。このとき、プロセッサ120は、第2空間S2内の圧力が30Pa以下となるように第2バルブ193を制御し、第1空間S1内の圧力が100Pa以上となるように第1バルブ183を制御してもよい。
【0111】
また、プロセッサ120は、シュラウド406内の圧力が10Pa程度となるように第3バルブ405を制御してもよい。
【0112】
また、プロセッサ120は、第2スキマー504内の圧力が30Pa以下となるように第4バルブ503を制御してもよい。また、プロセッサ120は、第2スキマー504内の圧力が第2空間S2内の圧力よりも小さくなるように、第2バルブ193及び第4バルブ503を制御してもよい。
【0113】
本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150によれば、プロセッサ120は、第1空間S1、第2空間S2、シュラウド406内、及び第2スキマー504内の圧力を制御し得る。そのため、本変形例のEUV光生成用チャンバ装置150は、第1空間S1、第2空間S2、シュラウド406内、及び、第2スキマー504内の圧力を自律的に制御し得るので、予期せぬ擾乱に対しても圧力分布を維持し易い。
【0114】
5.実施形態2の極端紫外光生成用チャンバ装置の説明
次に、実施形態2のEUV光生成用チャンバ装置150の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0115】
5.1 構成
図13は、本実施形態におけるEUV光生成用チャンバ装置150を
図4と同様に示す模式図である。
図13が示すように、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、レーザ装置LDからのレーザ光90が透過するウィンドウ12が第2空間S2側に配置されている点において、実施形態1のEUV光生成用チャンバ装置150と異なる。なお、
図13では、図が複雑化することを避けるため、プラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー15に伝搬するEUV光101を示す一点鎖線が僅かにずらされて記載されている。
【0116】
チャンバ10には、第2空間S2に通じる少なくとも1つの貫通孔が設けられており、この貫通孔は、ウィンドウ12によって塞がれる。ウィンドウ12は、チャンバ10の第2空間S2側の壁に設けられている。
【0117】
本実施形態では、レーザ装置LDからのレーザ光90は、ウィンドウ12からチャンバ10内に入射し、ガスカーテンGC及び第1開口21を介してプラズマ生成領域ARを照射する。
【0118】
5.2 作用・効果
本実施形態では、EUV光生成用チャンバ装置150では、チャンバ10の第2空間S2側にウィンドウ12が設けられている。上記のように、EUV光生成用チャンバ装置150は、ガスカーテンGCにより第2空間S2にデブリDが侵入することを抑制し得る。そのため、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、第2空間S2側に設けられているウィンドウ12の内面にデブリDが付着することを抑制し得る。
【0119】
また、本実施形態のEUV光生成用チャンバ装置150は、第3空間S3側にウィンドウ12が設けられている場合と比べて、第3空間S3側に設けられているウィンドウ12へのデブリDの付着を抑制するために第3空間S3に流していたエッチングガスを減らし得、第1空間S1の圧力を下げ得る。そのため、EUV光生成用チャンバ装置150は、プラズマ生成領域ARからガスカーテンGCまでの光路におけるEUV光101の水素への吸収を抑制し得る。
【0120】
なお、本実施形態では、第1隔壁18に第2開口186が設けられなくともよい。
【0121】
また、変形例1、2及び3において第2実施形態のようにウィンドウ12が第2空間S2側に設けられてもよい。
【0122】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。