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特開2024-21098基板処理装置、流体活性化装置、基板処理方法及び流体活性化方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021098
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】基板処理装置、流体活性化装置、基板処理方法及び流体活性化方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240208BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20240208BHJP
   C23C 16/452 20060101ALI20240208BHJP
   H01L 21/205 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
H05H1/46 B
C23C16/511
C23C16/452
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123673
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 八城
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 成則
(72)【発明者】
【氏名】山涌 純
(72)【発明者】
【氏名】進藤 崇央
(72)【発明者】
【氏名】山西 良樹
(72)【発明者】
【氏名】成島 正樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 将輝
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB12
2G084BB35
2G084CC06
2G084CC12
2G084CC14
2G084CC25
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD05
2G084DD15
2G084DD48
2G084FF15
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA17
4K030BA18
4K030BA29
4K030BA38
4K030CA04
4K030CA06
4K030CA12
4K030CA17
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030HA01
4K030KA17
4K030KA47
4K030LA15
4K030LA18
5F045AA09
5F045AB04
5F045AC01
5F045AC16
5F045AD08
5F045AE01
5F045AF03
5F045AF07
5F045BB07
5F045CA15
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EF05
5F045EH03
5F045EH05
5F045EH18
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】処理容器内の処理対象に処理流体を供給して処理を行うにあたり、大掛かりな装置構成となることを防ぐと共に処理対象の各部における処理状態を制御する。
【解決手段】本開示の装置は、処理容器内に設けられ、半導体製造用基板またはFPD製造用基板載置するステージと、処理容器に処理流体を供給する流体供給源と、処理容器に複数設けられる有底有蓋の円筒状で金属製の共振器と、各共振器の中心軸に沿って伸びて当該共振器を貫通すると共に処理流体が供給される流体流路を形成するように誘電体によって構成される管体と、基板の異なる位置に向けて開口するように処理容器に設けられ、各々異なる流体流路に接続される複数の吐出孔と、互いに異なる共振器にマイクロ波を各々供給し、各流体流路における共振器に囲まれた活性化領域において処理流体を活性化させるために複数設けられるマイクロ波供給源と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納する処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記基板を処理するために前記処理容器に処理流体を供給する流体供給源と、
前記処理容器に複数設けられる有底有蓋の円筒状で金属製の共振器と、
前記各共振器の中心軸に沿って伸びて当該共振器を貫通すると共に前記処理流体が供給される流体流路を形成するように誘電体によって構成される管体と、
前記基板の異なる位置に向けて開口するように前記処理容器に設けられ、各々異なる前記流体流路に接続される複数の吐出孔と、
互いに異なる前記共振器にマイクロ波を各々供給し、前記各流体流路における前記共振器に囲まれた活性化領域において前記処理流体を活性化させるために複数設けられるマイクロ波供給源と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記共振器及びマイクロ波供給源は、前記処理容器の天井部に設けられる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記マイクロ波供給源は、前記共振器毎に設けられる請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理容器において前記各流体流路の上流側に、当該各流体流路に共通の拡散空間が設けられ、前記流体供給源から当該拡散空間に前記処理流体が供給される請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記マイクロ波により、前記活性化領域において前記処理流体がプラズマ化され、
前記処理流体のプラズマを構成するイオン及び電子のうちの一方を選択的に前記基板に供給するために、直流電圧が印加される電極が設けられる請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記電極は前記管体における前記活性化領域の上流端側を塞ぐように設けられるリングであり、当該リングに設けられる孔は、前記流体供給源から供給された前記処理流体を、前記管体内の前記活性化領域に供給するための流路を形成する請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記マイクロ波により、前記活性化領域において前記処理流体がプラズマ化され、
当該プラズマ化を行うために、当該活性化領域に電子を供給する電子供給部が設けられる請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記電子供給部は、前記活性化領域よりも上流側に電界を形成し、前記処理流体から前記電子を発生させるための電極と、前記電界を形成するために当該電極に高周波を供給する高周波電源と、を含む請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記電子供給部は、前記活性化領域を形成する前記管体の内壁に設けられ、前記マイクロ波によって加熱される金属部により構成される請求項7記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記電子供給部は、前記活性化領域よりも上流側または当該活性化領域に光子を供給し、前記処理流体から電子を発生させる光子供給部である請求項7記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記マイクロ波供給源とは別に、前記ステージ上にプラズマを形成するためのプラズマ形成機構が設けられる請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項12】
半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納して処理を行う処理容器内に供給される流体を活性化する流体活性化機構において、
前記流体を供給する流体供給源と、
複数設けられる有底有蓋の円筒状で金属製の共振器と、
前記各共振器の中心軸に沿って伸びて当該共振器を貫通すると共に前記流体供給源から前記流体が供給される流体流路を形成するように誘電体によって構成される管体と、
前記処理容器内の異なる位置に向けて開口するように当該処理容器に設けられ、各々異なる前記流体流路に接続される複数の吐出孔と、
互いに異なる前記共振器にマイクロ波を各々供給し、前記各流体流路における前記共振器に囲まれた活性化領域において前記流体を活性化させるために複数設けられるマイクロ波供給源と、
を備える流体活性化機構。
【請求項13】
処理容器に半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納し、処理容器内に設けられるステージに当該基板を載置する工程と、
前記基板を処理するために流体供給源から前記処理容器に処理流体を供給する工程と、
誘電体によって構成される管体によって形成され、前記処理容器に複数設けられる有底有蓋の円筒状で金属製の共振器の中心軸に沿って伸びて当該共振器を貫通する流体流路に前記処理流体を供給する工程と、
前記基板の異なる位置に向けて開口するように前記処理容器に設けられ、各々異なる前記流体流路に接続される複数の吐出孔から、前記基板に前記処理流体を吐出する工程と、
前記各流体流路における前記共振器に囲まれた活性化領域において前記処理流体を活性化させるために複数設けられるマイクロ波供給源により、互いに異なる前記共振器にマイクロ波を各々供給する工程と、
を備える基板処理方法。
【請求項14】
半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納して処理を行う処理容器内に供給される流体を活性化する流体活性化方法において、
誘電体によって構成される管体によって形成され、前記処理容器に複数設けられる有底有蓋の円筒状で金属製の共振器の中心軸に沿って伸びて当該共振器を貫通する流体流路に流体供給源から流体を供給する工程と、
前記処理容器内の異なる位置に向けて開口するように前記処理容器に設けられ、各々異なる前記流体流路に接続される複数の吐出孔から、前記基板に前記流体を吐出する工程と、
前記各流体流路における前記共振器に囲まれた活性化領域において前記流体を活性化させるために複数設けられるマイクロ波供給源により、互いに異なる前記共振器にマイクロ波を各々供給する工程と、
を備える流体活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、流体活性化装置、基板処理方法及び流体活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)が、基板処理装置を構成する処理容器内に収納され、処理ガスが供給されることで成膜やエッチングなどの処理を受ける。その一方で、特許文献1にはマイクロ波を利用した加熱装置について示されている。この加熱装置は、円筒状の側壁と、当該側壁の軸方向両端に設けられる端部側壁(端壁)と、を備える金属製の空洞共振器を備えており、空洞共振器には円管が当該空洞共振器と同軸に設けられている。そして、円筒状側壁の軸方向の中間位置にマイクロ波導波管が接続されており、マイクロ波の供給によって反応管内の流体が加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4759668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納する処理容器内の処理対象に流体を供給して処理を行うにあたり、大掛かりな装置構成となることを防ぐと共に、処理対象の各部における処理状態を制御することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板処理装置は、半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納する処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記基板を載置するステージと、
前記基板を処理するために前記処理容器に処理流体を供給する流体供給源と、
前記処理容器に複数設けられる有底有蓋の円筒状で金属製の共振器と、
前記各共振器の中心軸に沿って伸びて当該共振器を貫通すると共に前記処理流体が供給される流体流路を形成するように誘電体によって構成される管体と、
前記基板の異なる位置に向けて開口するように前記処理容器に設けられ、各々異なる前記流体流路に接続される複数の吐出孔と、
互いに異なる前記共振器にマイクロ波を各々供給し、前記各流体流路における前記共振器に囲まれた活性化領域において前記処理流体を活性化させるために複数設けられるマイクロ波供給源と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、半導体製造用基板またはフラットパネルディスプレイ製造用基板である基板を収納する処理容器内の処理対象に流体を供給して処理を行うにあたり、大掛かりな装置構成となることを防ぐと共に、処理対象の各部における処理状態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1の実施形態である成膜装置の縦断側面図である。
図2】前記成膜装置に設けられるマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図3】前記マイクロ波リアクタの縦断斜視図である。
図4】前記第1の実施形態の成膜装置における処理を示す説明図である
図5】前記マイクロ波リアクタの他の構成を示す縦断側面図である。
図6】本開示の第2の実施形態である成膜装置の縦断側面図である。
図7】前記第2の実施形態の成膜装置における処理を示す説明図である
図8】本開示の第3の実施形態である成膜装置の縦断側面図である。
図9】前記第3の実施形態の成膜装置に設けられるマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図10】本開示の第4の実施形態である成膜装置の縦断側面図である。
図11】前記マイクロ波リアクタの他の構成を示す縦断側面図である。
図12】電極及び高周波電源を含む電子供給部が適用されたマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図13】電極及び高周波電源を含む電子供給部が適用されたマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図14】電極及び高周波電源を含む電子供給部が適用されたマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図15】電極及び高周波電源を含む電子供給部が適用されたマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図16】他の構成の電子供給部が適用されたマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図17】さらに他の構成の電子供給部が適用されたマイクロ波リアクタの縦断側面図である。
図18】評価試験の装置構成を示す説明図である。
図19】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図20】評価試験の装置構成を示す説明図である。
図21】評価試験の結果を示すグラフ図である。
図22】評価試験の装置構成を示す説明図である。
図23】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
本開示の基板処理装置の一実施形態である成膜装置1について、図1の縦断側面図を参照しながら説明する。成膜装置1は、円形の処理容器11を備えている。処理容器11の側壁には、ゲートバルブ12により開閉自在なウエハWの搬送口13が形成されている。処理容器11の例えば底部には排気口14が開口しており、排気口14は、排気管を介して排気機構15に接続されている。排気機構15は、真空ポンプ及び排気量を調整するためのバルブなどを含んでおり、当該排気機構15によって処理容器11内が所望の圧力の真空雰囲気となるように排気される。
【0009】
処理容器11内にはウエハWを水平に載置するステージ21が設けられており、ステージ21の内部には当該ウエハWを加熱するヒーター22が埋設されている。ステージ21には昇降ピン(不図示)が設けられ、当該昇降ピンにより、搬送口13を介して処理容器11の内外を移動する図示しないウエハWの搬送機構とステージ21との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0010】
続いて、処理容器11の天井部について説明する。処理容器11の天井部は、ウエハWにガスをシャワー状に供給する平面視円形のシャワーヘッド2として構成されている。シャワーヘッド2の平面視の中心部にはガス導入路23が垂直方向に形成されている。シャワーヘッド2には、ガス導入路23にガスを供給するガス供給管24の下流端が接続されており、ガス供給管24の上流側は、流体供給源であるガス供給源25に接続されている。ガス供給源25は各種のガスを貯留する貯留部と、バルブやマスフローコントローラなどを備えており、各ガスを個別にガス供給管24に供給する。そのように供給されるガスには、処理ガスである成膜ガスが含まれる。ガス供給管24は、供給するガス種毎に設けてもよい。
【0011】
シャワーヘッド2は例えば平面視円形で扁平に形成されたガスの拡散空間26を備えており、ガス導入路23の下流端は当該拡散空間26の上側の中心部に接続されている。そしてシャワーヘッド2において、拡散空間26の下方には、当該拡散空間26から供給されるガスをマイクロ波の作用によって活性化させるマイクロ波リアクタ3と、マイクロ波供給源41との組が多数、水平方向に分散して配設されている。シャワーヘッド2の下面における各マイクロ波リアクタ3の下方位置に吐出孔27が開口している。従って、吐出孔27は処理容器11内の異なる位置に向けて開口しており、当該吐出孔27によってウエハWの面内の異なる位置に、活性化されたガスが供給される。従って上記の拡散空間26は、各吐出孔27に共通して上流側に設けられた空間として構成されている。
【0012】
マイクロ波リアクタ3は、上記のようにガスを活性化させることができる。この活性化としては、加熱及びプラズマ化することが含まれる。以下、マイクロ波リアクタ3の構成について、図2の縦断側面図及び図3の縦断斜視図を参照しながら説明する。
【0013】
マイクロ波リアクタ3は、円形の共振器31と、円管である反応管35と、を備えている。共振器31は金属製であり、有底、有蓋の円筒として構成されている。つまり、当該共振器31は円筒をなす側周壁と、当該側周壁の一端部、他端部を各々塞ぐように設けられた2つの端壁と、を備えるように構成されている。なお、図3では二点鎖線で、切り欠かれた部分の共振器31の外形を示している。その軸方向が垂直方向に沿うように共振器31はシャワーヘッド2に設けられている。後述するようにマイクロ波は共振器31の側周壁から供給され、共振器31の各端壁は、当該マイクロ波のエネルギーを共振器31に囲まれる領域に閉じ込める役割を有する。
【0014】
管体である反応管35は誘電体例えば石英により構成されており、共振器31を軸方向に貫通すると共に共振器31と同軸に設けられている。反応管35内はガス流路36として構成される。従って当該ガス流路36は共振器31の中心軸に沿って伸び、当該共振器31を貫通して設けられる。ガス流路36の上端側は拡散空間26に接続され、当該拡散空間26からガスが供給される。ところで反応管35の外周と共振器31との間には環状の空間32が設けられており、従って、この例では共振器31はいわゆる空洞共振器として構成されている。ただし、後述するように空間32が設けられることには限られない。
【0015】
共振器31の側周壁において、共振器31の軸方向の中間位置に突起33が形成されており、当該突起33に設けられたコネクタ34を介して、共振器31とマイクロ波供給源41とが接続されている。従って、共振器31毎にマイクロ波供給源41が設けられており、共振器31の近傍にマイクロ波供給源41が位置している。マイクロ波供給源41は電圧制御発振器(VCO:Voltage-controlled oscillator)及び当該発振器の動作を制御するための回路を含んでいる。
【0016】
共振器31の大きさの一例を示しておくと、軸方向の長さH1は例えば5mm~100mmであり、外径L1は例えば20mm~100mmである。また、マイクロ波供給源41の各辺の長さのうちの最大の長さL2としては例えば10mm~300mmであり、共振器31の側周壁とマイクロ波供給源41の距離L3は、例えば1mm~5000mmである。各マイクロ波供給源41は、ケーブル42を介して例えば処理容器11の外部に設けられる電力供給部43に接続されている。あるいはケーブル42を用いず、共振器31内に電力供給用のアンテナを設け、アンテナと電力供給部43とを電気的に接続してもよい。電力供給部43は、マイクロ波供給源41毎に供給する電力を制御することができる。マイクロ波供給源41を冷却する必要が有る場合は、空冷ファンや水冷チューブ(図示せず)などをシャワーヘッド2に設けてもよい。
【0017】
電力が供給されることでマイクロ波供給源41から共振器31にマイクロ波、即ち周波数が300MHz~30GHzである電磁波が供給され、TM010モードと呼ばれる電場分布が形成される。この電場の分布を図3に模式的に一点鎖線で示しており、当該分布によれば共振器31内において反応管35の外側に比べて反応管35内におけるエネルギーが高くなる。つまり反応管35内のガス流路36のうちの共振器31に囲まれた領域にエネルギーが集中し、ガス流路36を通過するガスが高い効率で活性化される。そのようにガス流路36において共振器31に囲まれてガスが活性化される領域を、活性化領域37として示している。
【0018】
電力供給部43からマイクロ波供給源41に供給される電力が大きいほど当該マイクロ波供給源41から出力されるマイクロ波のパワーが大きく、活性化領域37におけるガスの活性化量が大きい。つまり、マイクロ波リアクタ3から放出されるガスの活性度が高くなる。上記のようにマイクロ波供給源41毎に供給される電力が制御されるので、各マイクロ波リアクタ3から吐出孔27に供給されるガスの活性度が制御される。従って、ウエハWの面内の各部に夫々所望の活性度の分布となるようにガスを供給することができる。この成膜装置1ではウエハWの面内で均一性高い膜厚となるように成膜がなされるようにする。そのために例えば実験を予め行い、マイクロ波供給源41毎に供給する電力の設定値を求めておく。その設定値で、各マイクロ波供給源41に電力を供給し、ウエハWに処理を行う。以上に述べた、マイクロ波リアクタ3を含むシャワーヘッド2、ガス供給管24、ガス供給源25及びマイクロ波供給源41は、流体活性化機構を構成する。
【0019】
図1に示すように成膜装置1には、コンピュータによって構成される制御部10が設けられており(図1参照)、制御部10はプログラムを備えている。このプログラムには、制御部10から成膜装置1の各部に制御信号を送り、後述する処理を実行することができるように命令(ステップ)が組み込まれている。具体的には、ステージ21のヒーター22によるウエハWの加熱温度、電力供給部43から各マイクロ波供給源41への電力供給、排気機構15の排気による処理容器11内の圧力、ガス供給源25からの各ガスの供給などが、上記のプログラムによって制御される。このプログラムは例えば、コンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード、DVDなどの記憶媒体に格納されて制御部10にインストールされる 。また、制御部10とは別に電力供給部43の動作を制御するための制御装置(図示せず)を別途用意してもよい。
【0020】
成膜装置1の処理動作について、ALD(Atomic layer Deposition)により、ウエハWにTiN(窒化チタン)膜を成膜する場合の動作を例に挙げて説明する。このTiN膜の成膜のために、ガス供給源25からは成膜ガスであるTiCl(四塩化チタン)ガス及びNH(アンモニア)ガスと、処理容器11内をパージするためのパージガスであるN(窒素)ガスと、が供給されるものとする。
【0021】
搬送機構によってウエハWが処理容器11内に搬送され、ステージ21に載置される。搬送機構が処理容器11から退出すると、ゲートバルブ12が閉鎖される。ヒーター22によってステージ21上のウエハWは予め設定された温度となるように加熱され、ウエハWの面内各部は概ね均一な温度となる。その一方で排気口14からの排気により、処理容器11内が予め設定された圧力の真空雰囲気となる。
【0022】
電力供給部43から各マイクロ波供給源41に、マイクロ波供給源41毎に設定された電力が供給され、各マイクロ波供給源41からそれに応じたパワーのマイクロ波が放射される。その一方で、ガス供給源25からTiClガスが供給され、拡散空間26から各マイクロ波リアクタ3の反応管35内のガス流路36へ流れ、当該ガス流路36の活性化領域37にて加熱されて、吐出孔27からウエハWに吐出される。
【0023】
各マイクロ波リアクタ3にて個別に活性化されることで、各吐出孔27から吐出されるTiClガスには温度差を生じさせることができる。図4は成膜装置1の模式図である。この例ではステージ21の周縁部の温度が中心部の温度よりも低かった場合に、ウエハWの中心部に温度が低いTiClガス、ウエハWの周縁部に温度が高いTiClガスが吐出されるものとして、各ガスの流れを異なる線種の矢印で示している。ヒーター22の加熱によるウエハWの面内各部における僅かな温度差が、TiClガスの温度分布によってキャンセルされ、ウエハWの面内における温度の均一性がさらに高まる。その結果、TiClガスはウエハWの面内各部に均一性高く吸着する。
【0024】
続いて、ガス供給源25からのTiClガスの供給が停止し、Nガスが供給される。各吐出孔27から吐出された当該Nガスにより、処理容器11内の余剰なTiClがパージされる。続いて、ガス供給源25からNHガスが供給される。このNHガスについても、TiClガスと同様にマイクロ波リアクタ3で個別に活性化されてウエハWに吐出され、ウエハWの面内各部に温度の均一性が高く吸着する。この結果として、ウエハW表面に均一性高くTiNの薄層が形成される。然る後、ガス供給源25からシャワーヘッド2へのNHガスの供給が停止し、Nガスが供給される。そして、当該Nガスが吐出孔27から吐出されて、処理容器11内に残留するNHガスがパージされる。
【0025】
以降、上記したウエハWへのTiClガスの供給、パージ、NHガスの供給、パージからなるサイクルが繰り返され、TiNの薄層が積層されてTiN膜となる。上記のようにTiN層はウエハWの面内各部で均一性高く形成されることで、ウエハWの面内各部におけるTiN膜の膜厚についてのばらつきが抑制される。TiN膜が所望の厚さになると、上記のサイクルが停止し、ウエハWは搬入時とは逆の動作で処理容器11内から搬出される。なお、パージガスの供給時には、マイクロ波リアクタ3へのマイクロ波の供給を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0026】
成膜装置1によれば、ウエハWの面内の異なる位置に成膜ガス(TiClガス及びNHガス)を供給するように多数のマイクロ波リアクタ3が設けられ、ウエハWの面内各部に供給される成膜ガスをマイクロ波リアクタ3毎に設けたマイクロ波供給源41により個別に活性化させる。このマイクロ波リアクタ3については、供給されるマイクロ波のエネルギーを反応管35内の活性化領域37に高い効率で集中させることができるので、その各部が例えば既述した大きさを有するように構成された、小型のものを用いることができる。そのため、上記のように多数を処理容器11に設けることができる。従って、ウエハWの各部において、成膜ガスとウエハWとの反応性を個別に制御することができる。それ故に、上記したように例えばウエハWの面内各部で均一性高い膜厚となるようにTiN膜を形成することができる。
【0027】
そのようにマイクロ波リアクタ3がエネルギーを高い効率で集中させることができるため、マイクロ波供給源41についても高出力であるものを用いる必要が無いので、既述したような比較的小さい形状とすることができる。従って、マイクロ波供給源41について、上記したようにマイクロ波リアクタ3と共に処理容器11の天井部に設け、マイクロ波リアクタ3の近傍に配置することができる。
【0028】
ところで例えばマイクロ波リアクタ3及びマイクロ波供給源41を設ける代りに、比較的高出力で大型のマイクロ波供給源を処理容器11の外部に配置すると共にこのマイクロ波供給源からマイクロ波を、処理容器11に設けられるガス流路に伝送して活性化させる装置構成とすることが考えられる。しかし、そのような構成とすれば、マイクロ波を処理容器外からガス流路に伝送するために装置に導波管を引き回すことになり、装置構成として大掛かりとなってしまう。従って上記の成膜装置1によれば、既述の構成の小型のマイクロ波リアクタ3を複数組み合わせることによって、そのような導波管の引き回しが不要となることで、装置構成が大掛かりなものとなることが防止されている。
【0029】
さらに、そのように導波管によって比較的遠くに位置する各マイクロ波リアクタ3に分配されるマイクロ波の強さを各々精度高く制御すること、例えば各マイクロ波リアクタ3に均等な強さでマイクロ波を分配することは難しい。つまり、導波管を引き回した装置構成では、ウエハWの面内各部におけるウエハWの処理を制御することが比較的難しい。従って、各マイクロ波供給源41がマイクロ波リアクタ3の近傍に位置し、当該マイクロ波リアクタ3と共に処理容器11の天井部に配置された成膜装置1の構成によれば、ウエハWの面内各部における処理の制御性を高くすることができるという利点が有る。なお、既述した特許文献1には、空洞共振器を備えたマイクロ波の加熱装置により流体を加熱することは記載されているが、この加熱装置を複数設けた装置を構成することや基板処理装置に適用することは記載されていない。
【0030】
ところでマイクロ波リアクタ3については、反応管35と共振器31との間に空間32が設けられるものとして説明したが、そのような構成とすることには限られない。図4に示す例では、反応管35を囲むように例えばセラミックスなどの誘電体からなるリング部材38が設けられており、このリング部材38を外側から被覆するように共振器31が形成されている。見方を変えれば既述の空間32に、気体の代わりに誘電体が充填された構成となっている。誘電体であるリング部材38の材質を適宜選定することで、当該リング部材38の誘電率の調整を行うことができる。この誘電率の調整により、ガス流路36に集中するエネルギーが変化する。つまりマイクロ波リアクタ3としては材質の選定を適切に行うことで、小型化を確実に行うこと、及びさらなる小型化を図ることができる。なお、図4の例では、反応管35とリング部材38とが互いに別体であるが、これらを同一の材質の誘電体として一体的に形成してもよい。
【0031】
また、共振器31の側壁において軸方向の長さの中心部にマイクロ波供給源41が接続され、当該中心部からマイクロ波が導入されるが、このマイクロ波の導入位置について軸方向の中心部からずれた位置であってもよい。ただし、活性化領域37にてより高くエネルギーを集中させるためには、上記のように軸方向の長さの中心部にマイクロ波供給源41が接続され、当該中心部からマイクロ波が導入されることが好ましい。
【0032】
上記の処理例では、マイクロ波リアクタ3の活性化領域37にて成膜ガスがプラズマ化されずに加熱されるものとしたが、供給するマイクロ波のパワーを比較的高くして放電を発生させて、プラズマ化も行われるようにしてもよい。つまり各マイクロ波リアクタ3に個別のパワーでマイクロ波を供給し、異なる強度の成膜ガスのプラズマを各活性化領域37に形成する。そのように異なる強度のプラズマの成分がウエハWに供給されることで、ウエハWの面内各部における各ガスとウエハWとの反応が制御され、当該面内各部の膜厚の制御を行うことができる。なお、このようにマイクロ波リアクタ3でプラズマを形成する場合は、活性化領域37はプラズマ形成領域に相当する。
【0033】
ところで、ウエハWの面内各部で均一な膜厚分布となるようにマイクロ波リアクタ3におけるガスの活性化が制御されることには限られない。即ち、ウエハWの面内各部で異なる膜厚となるように活性化量を制御してもよい。より具体的には例えば、ウエハWの周縁部及び中心部のうちの一方の膜厚が、他方の膜厚よりも大きくなるように各マイクロ波リアクタ3によるガスの活性化が行われてもよい。
【0034】
TiClガスの供給とNHガスの供給とを交互に行うALDプロセスについて記載したが、TiClガスの供給とNH3ガスの供給とを同時に行うCVDプロセスによるTiN膜の成膜を行ってもよい。また、ウエハWに行う処理としては成膜に限られず、マイクロ波リアクタ3にて処理ガスとしてエッチングガスを活性化させてウエハWに供給することで、エッチングを行ってもよい。一例としては、ガス供給源25からエッチングガスとしてClFガスを供給し、マイクロ波リアクタ3で活性化させてウエハWに供給し、当該ウエハW表面のSi膜をエッチングすることができる。このようにエッチングを行う場合においても、ウエハWの面内各部でエッチング量が均一になるようにガスを活性化することに限られず、例えばウエハWの周縁部及び中心部のうちの一方のエッチング量が、他方のエッチング量よりも大きくなるようにガスを活性化させてもよい。そのようにエッチングを行う場合、マイクロ波リアクタ3におけるガスの活性化としては、成膜を行う場合と同じく、加熱のみであってもよいし、プラズマ化を伴う活性化であってもよい。ところでTiN膜以外の成膜に成膜装置1を用いる例を説明しておく。ガス供給源25からSiH(シラン)ガスをマイクロ波リアクタ3に供給し、当該ガスをマイクロ波リアクタ3で例えば450℃以下の温度になるように加熱することでSi(ジシラン)ガスを生成させる。そして、そのSiガスがウエハWに供給されることで、CVDによるアモルファスシリコン膜の成膜が行われるようにする。プラズマCVDを実施可能な装置でアモルファスシリコン膜の成膜を行うにあたり、成膜原料ガスとしてSiHガスよりもSiガスを用いる方が、成膜レート(単位時間あたりの成膜量)が高くなると言われている。従って、上記のようにマイクロ波リアクタ3を用いてSiHガスをSiガスに変換してウエハWに供給することで、成膜レートを高くすることができるため好ましい。以降に説明する各実施形態の装置についても、そのようなアモルファスシリコン膜の成膜に適用することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
続いて第2の実施形態に係るプラズマ成膜装置5について、成膜装置1との差異点を中心に図6を参照して説明する。このプラズマ成膜装置5は成膜ガスの容量結合プラズマを形成し、当該プラズマにウエハWを曝して成膜処理を行う。この容量結合プラズマは、マイクロ波リアクタ3によるプラズマとは別の機構により形成される。
【0036】
その一方で各マイクロ波リアクタ3へは、例えば処理ガスとしてプラズマ形成用ガスが供給され、各マイクロ波リアクタ3で個別の強度のプラズマが形成される。このプラズマの成分が、上記の容量結合プラズマに供給される。このマイクロ波リアクタ3からのプラズマ化したガスの供給により、容量結合プラズマの各部の強度分布が調整される。それによって、ウエハWの面内各部における処理状態が制御され、膜厚分布が所望のものとされる。
【0037】
以下、プラズマ成膜装置5の具体的な構成について説明する。ステージ21には、電極51が埋設されており、シャワーヘッド2は、電極51に対向する電極の役割も果たす。つまり電極51とシャワーヘッド2とは、容量結合プラズマを形成するための平行平板電極を構成する。シャワーヘッド2には高周波電源52が接続され、高周波電力が供給される。この高周波電源52及び電極51はプラズマ形成機構に相当する。
【0038】
マイクロ波リアクタ3については、第1の実施形態と同様に構成されており、図6ではケーブル42及び電力供給部43について、図示の複雑化を避けるために省略している。シャワーヘッド2においては、例えばマイクロ波リアクタ3及びマイクロ波供給源41が設けられる領域の下方に、扁平で平面視円形のガスの拡散空間54が設けられている。そして、拡散空間54に接続される多数の吐出孔55が、シャワーヘッド2の下面に分散して開口している。拡散空間54の上部側の中心部には、シャワーヘッド2を上方へと伸びるように形成されるガス導入路56の下流端が接続されている。当該ガス導入路56の上流端はガス供給管57の下流端に接続され、ガス供給管57の上流端はガス供給源58に接続されている。
【0039】
ガス供給源58に接続される拡散空間54、ガス導入路56及び吐出孔55からなる流路は、第1の実施形態で述べたガス供給源25に接続されるシャワーヘッド2におけるガス導入路23、拡散空間26、マイクロ波リアクタ3及び吐出孔27からなる流路に対して区画されている。従って、ガス供給源58から供給されるガスと、ガス供給源25から供給されるガスとはシャワーヘッド2内では混合されずに、当該シャワーヘッド2から吐出される。
【0040】
プラズマ成膜装置5の処理動作について、CVD(Chemical Vapor Deposition)により、ウエハWにTi(チタン)膜を成膜する場合の動作を例に挙げて説明する。このTi膜の成膜のために、ガス供給源25からはプラズマ形成用のガスであるAr(アルゴン)ガスが供給され、ガス供給源58からはArガス、成膜ガスであるTiClガス及び還元ガスであるHガスが供給されるものとする。
【0041】
成膜装置1による成膜処理時と同様にステージ21のヒーター22によりウエハWが予め設定された温度に加熱されると共に、処理容器11内が予め設定された圧力の真空雰囲気となる。そして、ガス供給源58からTiClガス、Hガス及びArガスが供給され、これらのガスが図7中に点線の矢印で示すようにシャワーヘッド2の吐出孔55から吐出されると共に、高周波電源52から高周波電力がシャワーヘッド2に供給される。それにより、ウエハWの全面に亘って上記した容量結合プラズマであるプラズマP1が形成され、プラズマP1とウエハWとの反応が起きる。具体的には、TiClのウエハWへの堆積、TiClの還元によるTiの生成が起きる。
【0042】
その一方で、ガス供給源25から各マイクロ波リアクタ3にArガスが供給されると共に共振器31にマイクロ波が供給され、活性化領域37にてプラズマP2が形成される。そして図7中に実線の矢印で示すように、吐出孔27からプラズマP2の成分がプラズマP1に吐出され、上記したようにプラズマP1の各部の強度が調整される。そのように強度が調整されることで、ウエハWの各部におけるプラズマP1とウエハWとの反応性が制御され、上記したようにウエハWの面内に所望の膜厚分布を形成することができる。このようにプラズマ成膜装置5についても、成膜装置1と同様にウエハWの面内各部における処理状態を制御できる効果を奏する。また、マイクロ波リアクタ3を備えることで、成膜装置1と同様に装置が大掛かりなものとなることが防止される。
【0043】
この第2の実施形態で示すように、Arガスのようなプラズマを形成するガスも処理ガスに含まれる。また、この第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に成膜ガスの代わりにエッチングガスを供給してエッチングを行うことができる。つまり、エッチングガスによりプラズマP1を形成し、マイクロ波リアクタ3から供給するプラズマ化したガスにより、プラズマP1の強度分布を調整し、ウエハWの面内各部のエッチング量を制御することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
続いて第3の実施形態に係る成膜装置6について、第1の実施形態の成膜装置1との差異点を中心に図8を参照して説明する。この成膜装置6は、成膜装置1と同様にALDによってウエハWにTiN膜を形成する。従って、成膜装置6において、ガス供給源25からシャワーヘッド2に供給されるガスは、成膜装置1で供給される各ガスと同じである。ただしマイクロ波リアクタ3においては、TiClガス及びNHガスについてのプラズマ化が行われる。
【0045】
成膜装置6では、シャワーヘッド2の拡散空間26における各反応管35に重なる位置から下方に向けて多数の流路が伸びる。この流路を上流側流路61とすると、上流側流路61の下流端と反応管35のガス流路36の上流端とが、電極62に形成された流路63を介して互いに接続されている。電極62には直流電源64が接続されており、この例では電極62はカソードとされる。なお、処理容器11を介してシャワーヘッド2は接地されており、シャワーヘッド2の吐出孔27の周壁はアノードとなる。直流電源64は例えば図示しない電圧調整部を備え、電極62毎に印加する電圧を制御することができる。
【0046】
図9も参照しながら当該電極62の構成についてさらに説明する。電極62は円形のリングであると共に、反応管35の上端部内に設けられている。電極62と反応管35の内壁との間には絶縁体からなる筒部65が介在しており、筒部65の下端部に電極62が固定されている。そして、筒部65の上端部は外方へ広がり、共振器31の上端壁に支持されるフランジとして形成されている。従って、筒部65は電極62の側周を囲み、当該電極62と共振器31との間を絶縁するように設けられており、電極62は反応管35において共振器31に囲まれる活性化領域37の上流端側を塞ぐように設けられている。電極62の中心部に、当該電極62を厚さ方向に貫通する小径の貫通孔が形成されており、当該貫通孔が上記の流路63として構成される。
【0047】
成膜装置6では、成膜装置1と同様にTiClガス及びNHガスの供給とパージとからなるサイクルが繰り返されてウエハWに処理が行われる。このサイクルにおいて、各マイクロ波リアクタ3にTiClガス、NHガスが各々供給されるとき、反応管35のガス流路36の活性化領域37にプラズマP2が形成されるように、各マイクロ波供給源41から供給されるマイクロ波のパワーが制御される。
【0048】
そのようにTiClガスまたはNHガスのプラズマP2の形成中に、各電極62に直流電圧が印加される。プラズマP2を構成する電子P3は、そのように直流電圧が印加された電極62と反発することで、活性化領域37から吐出孔27へ向けて押し出され、ウエハWに供給される。また、プラズマP2を構成するラジカル(不図示)についても吐出孔27からウエハWに供給される。その一方で、プラズマP2を構成するイオンP4は電極62に引き寄せられるため、ウエハWへの供給が抑制される。従って、電子P3及びイオンP4のうち、電子P3が選択的にウエハWに供給される。従って成膜装置6によれば、成膜装置1が奏する効果に加えて、イオンP4が持つ比較的大きなエネルギーがウエハW表面に供給されることが抑制されるので、TiNの膜質の向上を図ることができる利点が有る。
【0049】
(第4の実施形態)
続いて第4の実施形態に係るプラズマ成膜装置7について、第2の実施形態のプラズマ成膜装置5との差異点を中心に、図10を参照して説明する。プラズマ成膜装置7においては、第3の実施形態の成膜装置6と同様に、拡散空間26に上流側が接続される上流側流路61の下流端と、反応管35のガス流路36の上流端とが、電極62に形成された流路63を介して互いに接続されている。電極62は直流電源64に接続され、カソードとされる。
【0050】
プラズマ成膜装置7では、プラズマ成膜装置5と同様にArガス、TiClガス及びHガスを、ガス供給源58からウエハWに供給して容量結合プラズマであるプラズマP1を形成する。その一方でマイクロ波リアクタ3ではガス供給源25から供給されたArガスによるプラズマP2が形成され、プラズマP1の強度分布が調整される。このプラズマP2の形成時に、第3の実施形態で述べたように電極62に直流電圧が印加され、プラズマP2を構成するイオンは電極62に引き込まれ、電子が選択的に吐出孔27から吐出される。従って、プラズマ成膜装置7によれば、プラズマ成膜装置5が奏する効果に加え、イオンによるTi膜の膜質の低下を抑制することができるという利点が有る。また、電極62に印加される直流電圧に応じて、イオンの引き込み量が変化し、電極62の下方のプラズマP1の強度を制御することができる。従ってプラズマ成膜装置7によれば、各マイクロ波リアクタ3に供給するマイクロ波のパワーに加え、各電極62に印加する当該直流電圧によってもプラズマP1の強度の分布を制御できる。従って、より確実にウエハWの面内各部における処理を制御できるため好ましい。
【0051】
図11は、直流電圧が印加される電極62が設けられるマイクロ波リアクタ3の他の構成例を示している。この例では絶縁体であるカバー66が反応管35の上端部を塞ぎ、共振器31の上端面に支持されている。カバー66は反応管35内に陥入し、その陥入した部位の上側に重なるように電極62が設けられている。従って、電極62はカバー66と共に反応管35について、活性化領域37の上流端側を塞ぐように設けられている。カバー66には、電極62の流路63と重なる位置に貫通孔67が設けられており、上流側流路61から供給されるガスは、流路63、貫通孔67を介して反応管35のガス流路36に供給される。なお、電極62としては反応管35内に電界を形成できればよいので、この図11及び図9で示したように、ガスの流路を形成する構成とすることには限られない。
【0052】
このように電極62へのイオンの引き込みを行う第3及び第4の実施形態においても、第1及び第2の実施形態で述べたように成膜ガスの代わりにエッチングガスを供給することで、エッチング装置として装置を運用してもよい。また、第3及び第4の実施形態において、各電極62に印加される直流電圧は電極62間で同じとなるように装置を構成してもよいが、上記のように個別の値の直流電圧を印加できるようにすることでウエハWの面内各部における処理を制御することができるため好ましい。
【0053】
また、電極62についてはアノードとなるように直流電源64に接続してもよい。従って、マイクロ波リアクタ3で発生したプラズマを構成する電子及びイオンのうち、イオンを選択的にウエハWに供給するようにしてもよい。例えば第3及び第4の実施形態で装置をエッチング装置として運用する。その場合に、そのようにイオンを選択的に供給することで、例えばエッチング処理を行う場合にウエハWに与えるエネルギーが大きくなるため、エッチングレートを高めて処理を早く完了することができる。
【0054】
なお、容量結合プラズマを形成する第2及び第4の実施形態において、高周波電源52についてはシャワーヘッド2に接続される代わりにステージ21の電極51に接続されることで、容量結合プラズマが形成される構成としてもよい。また、ステージ21とシャワーヘッド2との間に形成されるプラズマとしては、容量結合プラズマであることには限られない。例えばシャワーヘッド2にアンテナなどの導電部材を設けて高周波を供給することで、誘導結合プラズマが形成されるようにしてもよい。
【0055】
各マイクロ波供給源41に供給する電力の分布は処理毎に不変としてもよい。ただし、例えば成膜処理を行うにあたり、ウエハWへ処理を行う毎に処理容器11の内壁に付着する膜の厚さが変化し、処理容器11内の環境が変化する。その環境の変化の影響をキャンセルするために、処理毎に各マイクロ波供給源41へ供給する電力の分布を変更してもよい。
【0056】
また、1つのマイクロ波リアクタ3に対して1つのマイクロ波供給源41を設けることには限られない。複数のマイクロ波リアクタ3に1つのマイクロ波供給源41を接続し、この複数のマイクロ波リアクタ3及び1つのマイクロ波供給源41からなる組を、複数設けてもよい。さらに、マイクロ波リアクタ3及びマイクロ波供給源41の組は、処理容器11の天井部に設けることには限られない。例えばこれらの組を処理容器11の側壁に設け、この側壁からシャワーヘッド2に至るガス流路を介して、活性化されたガスがウエハWの面内各部に供給されるような構成であってもよい。
【0057】
ところで、マイクロ波リアクタ3の活性化領域37にて放電を発生させてプラズマを形成するにあたり、マイクロ波リアクタ3に供給されるガス種や処理容器11内の圧力によっては、比較的大きなマイクロ波のパワーを要する場合が有る。即ち、プラズマを形成することができるパワーの範囲が狭い場合が有る。マイクロ波のパワーが比較的低くても活性化領域37にてプラズマが形成されるように、当該活性化領域37にプラズマの形成を誘発させるための電子を供給する電子供給部を設けることができる。そのようにマイクロ波のパワーが比較的低くてもプラズマの形成を行うことができることは、反応管35に供給するガス流量や反応管35内の圧力などの各種のパラメータについての設定可能な範囲を広げたり、使用するガスの選択の幅を広げたりできるということである。
【0058】
上記の電子供給部は、既述した各実施形態の装置に適用することができる。以下、電子供給部の例を具体的に説明する。なお、以下に述べる図12図17における実線の矢印は、反応管35に供給される処理ガスの流れを示している。図12の構成例では、反応管35の外周に電極71が設けられている。より詳しくは電極71は、反応管35において活性化領域37に対して上流側の流路を形成する部位を囲むように設けられている。この電極71と共振器31とに高周波電源72が接続されている。高周波電源72及び電極71により、電子供給部が構成される。
【0059】
反応管35に処理ガスが供給されているときに、高周波電源72により電極71に高周波が供給され、反応管35のガス流路36において電極71に囲まれる部位に電界が形成されて放電が起こり、プラズマP5が形成される。なお、以降は説明の便宜上、このように活性化領域37よりも上流側における放電、プラズマを、夫々予備放電、予備放電プラズマと記載する場合が有る。この予備放電プラズマP5を構成する電子70が、活性化領域37へ供給される。
【0060】
上記の高周波電源72からの高周波の供給に並行して、既述の各実施形態で述べたようにマイクロ波リアクタ3へのマイクロ波の供給が行われる。マイクロ波により活性化領域37内での処理ガスのエネルギーが高まった状態で、電子70が当該活性化領域37に供給されることで、放電が誘発されて処理ガスがプラズマ化する。つまり、予備放電プラズマP5よりも高い強度のプラズマ(説明の便宜上、主プラズマと記載する場合が有る)が形成され、当該主プラズマを構成する成分が吐出孔27から吐出されてウエハWに処理が行われる。高周波電源72は各マイクロ波リアクタ3に共用としてもよいし、各マイクロ波リアクタ3について個別の高周波電源72を設けてもよい。
【0061】
図13は、予備放電プラズマP5を形成する他の構成例を示している。この図13の例では、反応管35の外周に電極71の代わりに電極73、74が設けられており、高周波電源72と共に電子供給部を構成する。電極73、74は、反応管35において活性化領域37よりも上流側の流路を形成する部位を挟むように設けられ、高周波電源72に各々接続されており、電極73、74及び高周波電源72が、電子供給部を構成する。高周波電源72からの高周波の供給により、反応管35のガス流路36の電極73、74に挟まれる領域に電界が形成されて予備放電が起こり、予備放電プラズマP5が形成される。この予備放電プラズマP5の電子70により、活性化領域37に主プラズマが形成される。
【0062】
続いて、予備放電を発生させる他の構成例を図14に示す。この図14に示す例では、反応管35内に針状の電極75が設けられている。電極71の代わりに電極75が設けられることを除いて、この図14の例は図12で説明した例と同様の構成である。従って、高周波電源72は電極75と共振器31とに接続されており、電極75の周囲にて予備放電が発生し、電子70が活性化領域37に供給される。また、図15に示す例では、反応管35内に針状の電極78、79が設けられている。電極73、74の代わりに電極78、79が、反応管35内の活性化領域37よりも上流側に設けられることを除いて、この図15の例は図13で説明した例と同様の構成である。従って、高周波電源72は電極78、79に各々接続されており、電極78、79間で予備放電が発生し、電子70が活性化領域37に供給される。
【0063】
ところで、電子供給部としては予備放電を発生させるものには限られず、また活性化領域37よりも上流側にて電子70を発生させる構成であることにも限られない。図16では反応管35の内壁の活性化領域37を形成する部位に、電子供給部として金属片(金属部)81が設けられた例を示している。マイクロ波供給源41からのマイクロ波の供給により金属片81が加熱されて電子70を放出し、活性化領域37にプラズマが形成される。従って金属片81は熱電子の供給源であり、そのように熱電子の放出が行われやすい金属、例えばタングステンなどにより構成される。
【0064】
また、図17に示した例では電子供給部として、光子供給部であるUV(ultra violet)ランプ82が、反応管35の外側に設けられている。UVランプ82から照射された、高エネルギーの光子を含む紫外線83が、反応管35を透過して活性化領域37に供給され、処理ガスの分子が励起されて電子70が発生し、プラズマが形成される。なお、紫外線83を照射して電子70を発生させる領域としては、活性化領域37よりも上流側であってもよい。
【0065】
図17ではUVランプ82がマイクロ波リアクタ3の近傍に位置するように示しているが、そのように配置することには限られない。例えばマイクロ波リアクタ3から比較的遠くに離れた処理容器11の天板上にUVランプ82を設け、光ファイバーなどの導光部材を介して活性化領域37やその近傍の上流側に紫外線83を照射してもよい。また、高エネルギーの光子を供給できればよいため、紫外線の代わりにX線、γ線などを供給してもよい。つまり光子供給部としては、共振器31に供給されるマイクロ波とは波長が異なる電磁波を供給して、電子を発生させるものを用いることができる。
【0066】
なお、上記した各電子供給部により活性化領域37の上流側で電子を発生させる場合、反応管35内、即ち誘電体によって囲まれる流路にて電子を発生させることには限られない。その他、活性化領域37にてプラズマ形成を容易にするための構成例として、反応管35内に例えばセラミックである誘電体部材を設けることが挙げられる。この誘電体部材は反応管35内を活性化領域37に向かって突出するように配置されて、電界分布に影響を与えるように例えば棒状に構成される。本構成については後に評価試験の説明と共に、さらに説明する。
【0067】
また、これまでに述べた装置で、基板としてはウエハWを処理するものとして述べてきたが、処理される基板としては、半導体製造用基板あるいはフラットパネルディスプレイ製造用基板である。半導体製造用基板はウエハWの他に、半導体製造工程で用いられる基板を含む。フラットパネルディスプレイ(FPD)製造用基板としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイあるいは電子ペーパである各種のFPD、及び当該FPDの製造工程で用いられる基板を含む。半導体製造工程で用いられる基板、FPD製造工程で用いられる基板は、夫々の製造工程中の露光処理に用いられるフォトマスクである基板、及び基板処理装置におけるテストや処理パラメータ設定を目的として処理がなされるダミー基板を含む。
【0068】
ところで共振器31の側壁にマイクロ波が導入されるとして説明してきたが、そのように側壁から導入されることには限られない。即ち、共振器31の底部をなす端壁あるいは蓋部をなす端壁にマイクロ波供給源41を接続し、いずれかの端壁からマイクロ波が導入されて、ガス流路36のうち共振器31に囲まれる領域にてガスの活性化が行われるようにしてもよい。
【0069】
マイクロ波リアクタ3についてはガス供給源25から供給されたガスを活性化するものとして述べてきたがそのような構成とすることには限られず、液体供給源からマイクロ波リアクタ3に液体が供給され、当該液体が活性化されて処理容器11内の基板に供給されて処理が行われるようにしてもよい。例えば液体供給源からマイクロ波リアクタ3に至る流路を加熱する加熱機構を設ける。上記の液体については当該加熱機構により加熱されることで、例えばミストの状態でマイクロ波リアクタ3に供給され、当該マイクロ波リアクタ3にて活性化される装置構成とすることができる。そのミストは、マイクロ波リアクタ3での活性化により、ガスあるいはプラズマとなって基板に供給されてもよいし、ミストのまま、活性化により温度が上昇した状態で基板に供給されてもよい。
【0070】
また、マイクロ波リアクタ3では基板に供給されて処理を行う処理流体(液体及びガス)を活性化するものとして説明してきたが、そのように基板を処理する処理流体を活性化することには限られない。例えば処理容器11内に、既述した半導体製造用基板及びFPD製造用基板が収納されていない状態で、ガス供給源25からクリーニングガスを供給し、マイクロ波リアクタ3で活性化させて処理容器11内に供給する。その活性化させたクリーニングガスにより、処理容器11内の壁面やステージ21などの装置の構成部材をクリーニングするようにしてもよい。なお、このように処理容器11内の各部をクリーニングするにあたってもウエハWを処理する場合と同様に、処理対象(この場合は処理容器11内の各部)へ供給されるガスを個別に活性化させることができる。そのため、処理容器11内での異物の堆積が多く見込まれる箇所などはガスの活性化の度合を大きくしつつ、他の箇所ではガスの活性化の度合を抑えることで、消費電力を抑えつつ確実なクリーニングを行うことができる。以上のように、活性化される流体としては基板を処理する処理流体以外の流体が含まれ、この流体の供給先としては半導体製造用基板及びFPD製造用基板が収納されて処理が行われる処理容器内であればよく、流体による処理対象としては基板以外のものが含まれる。
【0071】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【0072】
(評価試験)
本技術に関連する評価試験について説明する。評価試験1では、図18に示すように反応管35の上流側、下流側に夫々共振器31が設けられ、各共振器31に各々マイクロ波供給源41からマイクロ波が供給されるように装置を構成した。説明の便宜上、上流側の共振器、下流側の共振器を31A、31Bとする。上流側の共振器31Aは上記した予備放電プラズマP5の形成用の共振器であり、下流側の共振器31Bは主プラズマの形成用の共振器である。
【0073】
この評価試験1では、共振器31Aによる予備放電プラズマP5の有無による、共振器31Bにおける放電を起こすことが可能なマイクロ波のパワーの違いを調べるために、当該パワーの測定を行った。このパワーの測定は反応管35内の圧力を0kPaより高く15Paより低い範囲内で変化させ、当該圧力が異なる条件下で行った。予備放電プラズマP5を形成せずに行った測定を評価試験1-1とし、予備放電プラズマP5を形成して行った測定を評価試験1-2とする。測定条件として、反応管35へはArガスを30sccmで供給した。そして、評価試験1-2では、反応管35内のガス流路36の圧力を1.48kPaにした状態で放電を発生させ、その後、マイクロ波のパワーを50Wに設定して共振器31Aの活性化領域37における放電を維持した。
【0074】
図19はこの評価試験1の結果を示すグラフである。グラフの横軸、縦軸は、夫々反応管35内の圧力(単位:kPa)、マイクロ波のパワー(単位:W)を示している。グラフ中に評価試験1-1の結果を角形の点で、評価試験1-2の結果を円形の点で夫々示している。また、それら角形及び円形の点について、白抜きの点は測定値を示し、黒く塗りつぶした点は複数の測定値から算出された平均値を示している。
【0075】
グラフから明らかなように各圧力下において、評価試験1-1に比べて評価試験1-2の方が、放電が開始されるマイクロ波のパワーが小さい。従って、既述した電子供給部を設けることで、活性化領域37にてプラズマを形成するために必要な電力を小さくすることができる。既述したように、これは活性化領域37にプラズマを形成し得るためのガス流量や圧力などの各種の条件のパラメータについて、設定可能な範囲を広げられることでもある。さらにグラフに示されるように、評価試験1-1に比べると評価試験1-2の方が、測定値のばらつきが小さい。従ってこの評価試験1からは、電子供給部を設けることで放電を開始する電力の安定性も上昇することが確認された。
【0076】
(評価試験2-省スペース化)
本技術に関連するもう一つの評価試験である評価試験2について説明する。この評価試験2で用いた評価装置を図20に示す。この評価装置はマイクロ波リアクタ3をアレイ状に配置するために小型化を行う目的で、共振器31内に誘電体38として比誘電率9の酸化アルミニウムを充填したものである。これにより必要な共振器31の内径について、評価試験1で用いた装置では91mmであったが、本評価試験2の評価装置では45mmであり、マイクロ波リアクタ3の小型化がなされている。また本評価装置では、プラズマ形成を容易にするため予備放電プラズマP5を用いることに代り、セラミックからなる棒A3を反応管35内に挿入した。棒A3はガス流路36において誘電体38に囲まれる領域の上流側に設けられ、当該棒A3の下端部については活性化領域37に進入するが、誘電体38に囲まれる領域には進入しない配置とした。比較的細いセラミックの棒A3の下端面では電界分布が歪み、部分的な強電界部が形成されるため、プラズマが形成されやすくなる。また、マイクロ波の給電は同軸ケーブルA1を介し、共振器31内に設置したループアンテナA2により行った。
【0077】
図21は反応管35内を真空ポンプで減圧にしながら、上部よりArガスを8sccm、23sccm、47sccmの各条件で供給しながら、放電を発生させたときの放電開始に必要なマイクロ波電力(共振器3へ供給する電力)をプロットして示すグラフである。グラフ中にArガスの供給量が8sccm、23sccm、47sccmの結果を夫々四角形の点、円形の点、三角形の点で示している。また、それらの点について、白抜きの点は測定値を示し、黒く塗りつぶした点は複数の測定値から算出された平均値を示している。供給するマイクロ波周波数は、共振器31内にTM010モードの定在波が形成できる共振周波数となる、2.47GHzとした。グラフに示されるように、この評価試験2では最大100Wのマイクロ波照射条件(グラフ中に点線で表示)で、0.8Pa~3.5Paの範囲にて活性化領域37にプラズマを形成することができている。マイクロ波電力や供給ガス流量を変えること、予備放電プラズマの併用により、さらに広範囲の領域でプラズマの形成が可能である。また、供給するガス種がヘリウム、窒素、酸素である場合においてもプラズマの形成について同様の傾向を確認しており、活性化領域37で生成したい化学反応種に応じて供給ガスを選択することができる。
【0078】
誘電体38として、比誘電率40のセラミックを用いた場合、共振器31の内径を22mmとすることができ、共振器31を並べて配置したところ、反応管35の間隔を25mmで設置することができた。
【0079】
(評価試験3-成膜装置への取り付け)
成膜装置へマイクロ波リアクタ3を取り付けて行った評価試験3について説明する。マイクロ波リアクタ3には内径91mm、高さ10mmの共振器31を用いた。評価試験3では図22に示すように、マイクロ波リアクタ3を処理容器11の上部に取り付け、内径8mmの石英製の反応管35から噴出するプラズマガスが、ウエハWに吹き付けられる構成とした。処理容器11に設けられた排気口14にはバルブ、ターボ分子ポンプ及びロータリーポンプから構成される排気機構15を接続した。処理容器11内の圧力を10-2Paの真空度に維持した後、反応管35上部からArガスを7sccm~47sccmで供給したところ、当該反応管35内の圧力は0.31kPa~0.37kPaの範囲で調整可能であった。この状態でTM010モードの共振周波数に一致する2.49GHzのマイクロ波を同軸ケーブルA1から給電したところ、反応管35内にプラズマを形成できることを確認した。プラズマ形成時には、吐出孔27からは電離状体のAr原子が噴出されており、ウエハW表面に到達している。反応管35内の圧力に対し、プラズマが形成されるマイクロ波電力をプロットしたものを図23に示す。実験の範囲では圧力の上昇に伴い、必要なマイクロ波電力は減少している。なお、Arガスの供給量を増すなどして、反応管35内の圧力を上昇させれば、図19に示すように放電開始電力は上昇に転じると推測できる。
【符号の説明】
【0080】
1 成膜装置
21 ステージ
25 ガス供給源
31 共振器
27 吐出孔
41 マイクロ波供給源
図1
図2
図3
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