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特開2024-24341塩味増強剤、塩味調味料、飲食品、飲食品の製造方法、及び飲食品の減塩方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024024341
(43)【公開日】2024-02-22
(54)【発明の名称】塩味増強剤、塩味調味料、飲食品、飲食品の製造方法、及び飲食品の減塩方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20240215BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240215BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240215BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240215BHJP
   A23L 23/10 20160101ALN20240215BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L5/00 K
A23L2/52
A23L23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127114
(22)【出願日】2022-08-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度 国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「呈味性の優れた塩味増強物質の開発に向けた塩味センシング技術の創出と検証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 治之
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 富子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 啓子
(72)【発明者】
【氏名】笠原 洋一
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC08
4B035LE03
4B035LE15
4B035LG01
4B035LG35
4B035LK01
4B035LP01
4B035LP21
4B036LC01
4B036LC06
4B036LE05
4B036LF01
4B036LG04
4B036LH01
4B036LH04
4B036LH22
4B036LK01
4B036LP09
4B036LP11
4B036LP19
4B047LB01
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF02
4B047LF07
4B047LF08
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG03
4B047LG04
4B047LG41
4B047LG65
4B047LP02
4B047LP05
4B117LC02
4B117LC03
4B117LK01
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】塩化ナトリウム由来の塩味を増強するための塩味増強剤、食塩の代わりに使用し得る塩味調味料、塩味を増強した飲食品、飲食品の製造方法、及び飲食品の減塩方法を提供すること。
【解決手段】炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウム、又は、炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムを塩化ナトリウムとともに存在させることによって、塩化ナトリウムが有する塩味を増強する。塩化ナトリウムの重量に対する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムの合計重量の比率は0.1~75.0であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有する塩味増強剤。
【請求項2】
塩化ナトリウムと、
炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと、
塩化アンモニウムとを含有する塩味調味料。
【請求項3】
飲食品中の塩化ナトリウムの重量に対して、重量比率が0.1~75.0で飲食品に添加される、請求項1に記載の塩味増強剤。
【請求項4】
前記塩味調味料の塩化ナトリウムの重量に対する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムの合計重量の比率が0.1~75.0である、請求項2に記載の塩味調味料。
【請求項5】
液体である、請求項1に記載の塩味増強剤。
【請求項6】
液体である、請求項2に記載の塩味調味料。
【請求項7】
塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有する飲食品。
【請求項8】
前記飲食品が液体である請求項7に記載の飲食品。
【請求項9】
含有する塩化ナトリウムの重量に対する、含有する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと塩化アンモニウムの重量の比率が0.1~75.0である、請求項7又は8に記載の飲食品。
【請求項10】
塩化ナトリウムを含有する飲食品の製造工程において、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを飲食品に添加する、飲食品の製造方法。
【請求項11】
飲食品中の塩化ナトリウムの重量に対して、重量比率0.1~75.0で炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを飲食品に添加する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
塩化ナトリウムを含有する飲食品の喫食時に、飲食品に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有させる、飲食品の減塩方法。
【請求項13】
飲食品中の塩化ナトリウムの重量に対して、重量比率0.1~75.0で炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを飲食品に含有させる、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ナトリウムの有する塩味の塩味増強剤、塩味調味料、塩味を増強した飲食品、飲食品の製造方法、飲食品の減塩方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高血圧症や高血圧による合併症の予防等を目的に、食塩(ナトリウム分)の摂取量を抑制したいという要求が強い。しかし、食塩の量を削減すると、食品が味気ないものとなってしまうので、食塩の代わりに塩味を呈する、いわゆる代替塩及び塩味を増強する塩味増強剤が求められている。
【0003】
代替塩としては、塩化カリウムを用いることが最も一般的である。しかし、塩化カリウムは塩味以外に独特のエグ味及び苦味を有し、食塩の代わりとして充分な素材とはいえない。そこで、塩化カリウムの苦味をマスキングする、あるいは塩化ナトリウムが有している塩味を増強して、より食塩の味に近づけることが考えられる。
【0004】
例えば、塩化ナトリウムの有する塩味の塩味増強剤及び塩味増強方法に関する先行技術として、特許文献1が挙げられる。但し、特許文献1は、L-プロリンの使用を前提としており、L-プロリンの使用を前提とはしない他の塩化ナトリウム由来の塩味を増強する方法について検討する余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-158532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、塩化ナトリウム由来の塩味を増強するための塩味増強剤、食塩の代わりに使用し得る塩味調味料、塩味を増強した飲食品、飲食品の製造方法、及び飲食品の減塩方法の提供を目的とする。なお、本願は、令和3年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、委託研究「呈味性の優れた塩味増強物質の開発に向けた塩味センシング技術の創出と検証」の成果に関する特許出願である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等の鋭意研究の結果、塩化ナトリウムの存在下において、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有させることによって、飲食品の塩味を増強できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有する塩味増強剤に関する。
【0009】
また本発明は、
塩化ナトリウムと、
炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと、
塩化アンモニウムとを含有する塩味調味料に関する。
【0010】
前記塩味増強剤又は前記塩味調味料は、液体である飲食品に使用することが特に好ましいが、固体又は流動体である飲食品にも使用し得る。
【0011】
本発明の塩味増強剤は、飲食品中の塩化ナトリウムの重量に対して、重量比率0.1~75.0で飲食品に添加されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の塩味調味料は、塩化ナトリウムの重量に対する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムの合計重量の比率が0.1~75.0であることが好ましい。
【0013】
本発明の塩味増強剤又は塩味調味料は、液体であることが好ましい。
【0014】
また本発明は、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有する飲食品に関する。
【0015】
前記飲食品は、含有する塩化ナトリウムの重量に対する、含有する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと塩化アンモニウムの合計重量の比率が0.1~75.0であることが好ましい。
【0016】
本発明は、塩化ナトリウムを含有する飲食品の製造工程において、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを添加する、飲食品の製造方法にも関する。
【0017】
前記製造方法においては、飲食品中の塩化ナトリウムの重量に対して、重量比率0.1~75.0で炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを飲食品に添加することが好ましい。
【0018】
また本発明は、
塩化ナトリウムを含有する飲食品の喫食時に、飲食品に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム、及び塩化アンモニウムを含有させる、飲食品の減塩方法にも関する。
【0019】
前記減塩方法は、飲食品中の塩化ナトリウムの重量に対して、重量比率0.1~75.0で炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと塩化アンモニウムとを飲食品に含有させることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
【0021】
〇炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウムは、重曹、重炭酸ソーダ、重炭酸ナトリウム、NaHCO3
Sodium Bicarbonate、bicarbonate of soda、sodium、sodium hydrogen carbonateとも記載され、食品添加物として、飲食品にその使用が認められている。
〇炭酸ナトリウム
炭酸ナトリウムは、ソーダ灰、ナトリウム炭酸塩、洗濯ソーダ、炭酸Na、炭酸ソーダ、結晶ソーダ、Carbonic acid、disodium salt、Na2CO3、sal soda、soda ash、sodium carbonateとも記載され、食品添加物として、飲食品にその使用が認められている。
〇塩化アンモニウム
アンモニウムクロリド、塩安、Ammonium Chloride、NH4Cl、ammonium chlorideとも記載され、食品添加物として、飲食品にその使用が認められている。
〇塩化ナトリウム
塩化ナトリウムは、食塩、クロルナトリウム、ナトリウム塩化物、塩化Na、NaCl、Sodium Chlorideとも記載される。また、単に「塩」と記載される場合も多い。塩化ナトリウムは人体にとって必須のミネラルを含む。一方、近年、当該塩化ナトリウムの過剰摂取が高血圧等の疾病の原因になることが指摘されている。従って、塩化ナトリウムの摂取量を低減することが必要となってきている。
【0022】
〇塩味調味料中の塩化ナトリウムの重量に対する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムの合計重量比率
本発明においては 飲食品中の塩化ナトリウムの含有量に対して、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムとの合計含有量が少なすぎると、塩味増強効果が少なく、逆に多すぎると異味が大きくなる。このため、塩味調味量中の塩化ナトリウムの重量に対する炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムの合計重量の比率が0.1~75.0であることが好ましく、0.5~5.0であることがより好ましく、0.6~3.0であることがさらにより好ましい。
【0023】
─塩味増強剤─
本発明の塩味増強剤とは、使用する飲食品に対して当該飲食品が有する塩味を増強する製剤を意味し、溶液又は粉末のいずれの状態の製剤も含む。すなわち、本発明の塩味増強剤における「増強」とは、対象となる飲食品が塩味をすでに有している場合において、飲食品の塩味を増強させることを意味する。
【0024】
―塩味調味料―
本発明の塩味調味料とは、飲食品に対して食卓塩と同様に使用して塩味を付与する調味料であって、食卓塩よりも塩味が増強され、食卓塩よりも少ない使用量で同程度の塩味を飲食品に付与し得る製剤を意味し、溶液又は粉末のいずれの状態の製剤も含む。
【0025】
本発明の塩味増強剤又は塩味調味料は、任意成分として他の塩類、水分、各種油脂、香料、香辛料、着色剤、調味料等を含有してもよい。
【0026】
塩味増強剤又は塩味調味料の剤形は、特に限定されず、液体、粉状物、粒状物等であってよい。塩味増強剤の剤形態は、必ずしも所定の形式の容器等に収納されている場合のみならず、飲食品を製造又は喫食する際に、塩味の増強のために、少なくとも炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウム、又は、炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムを含む素材(溶液、粉状物、粒状物等の添加用の各種食材)が存在すればよく、当該炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウム、又は、炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムを飲食品の製造の際や喫食時に添加や混合する態様であれば、本発明にいう塩味増強剤に該当するものとする。
【0027】
本発明の塩味調味料は、例えば、液体又は粉末等として、喫食する飲食品(料理又はスープ等)に添加して利用し得る。
【0028】
─飲食品─
本発明にいう飲食品とは、喫食が可能なものであればあらゆる態様を含み、家庭内や飲食業界における各種料理又は飲料等が挙げられる。例えば、日本料理、西洋料理、中華料理等の種々の料理が該当し、漬物等の付け合わせも該当する。また、種々の食品産業における、各種加工食品も該当する。例えば、即席麺や即席カップライス等の種々の即席食品、レトルトカレー等のレトルト食品等が挙げられる。本発明は、特に、即席麺製品(即席カップ麺又は、袋麺)のスープに好適に利用し得る。醤油又はソースのような液体調味料に本発明の塩味増強剤又は塩味調味料を含有させてもよいし、喫食時に別途本発明の塩味増強剤又は塩味調味料を即席麺製品に添加してもよい。
【0029】
本発明は、スナック菓子のような菓子類にも使用し得る。例えば、ポテトチップのような塩分を含有するする菓子は、本発明を好適に利用し得る。
【0030】
本発明にいう飲食品は、飲食品の調理又は加工に利用される調味料又は添加物も含む。具体的には、醤油又はソースのような調味料、カレー又はシチューを家庭内で調理するための固形ルー又は濃縮パックも、本発明の飲食品に含まれる。また、醤油、ソース又はドレッシングのような調味料も含まれる。
【0031】
-飲食品の食塩濃度-
本発明における各種飲食品の食塩濃度(塩化ナトリウム濃度)は、特に限定されないが、食塩濃度が0.2~1.0重量%程度となるように、本発明の塩味増強剤又は塩味調味料を添加することが好ましい。
【0032】
─pH─
本発明の塩味増強剤又は塩味調味料を添加する飲食品飲食品が液体の場合、そのpHは、特に限定されないが、6~8程度であることが好ましい。飲食品を製造する際、必要に応じて飲食品のpHを調整してもよい。例えば、本発明の塩味増強剤又は塩味調味料を添加する際、酸又はアルカリを添加することによって飲食品pHを調整してもよい。
【0033】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0034】
[試験例1]
塩化ナトリウム(NaCl) 3.53g、炭酸水素ナトリウム(重曹)(NaHCO3) 0.98g、塩化アンモニウム(NH4Cl) 2.49gをビーカーに採取し、精製水を加えて1000mLとなるようにメスフラスコにメスアップした。使用されたこれら試薬は、すべて試薬特級品である。 この調製液1000mL(1リットル)に含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウムの重量を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
この試験例1の調製液のナトリウム濃度は72mMである。塩化ナトリウム濃度0~1.0(w/v)%の水溶液を調製し、その塩味強度を表2に示されるように「0」~「10」とした。
【0037】
【表2】
【0038】
─塩味の官能評価─
上記調製液の塩味を、熟練のスープ技術者5名をパネラーとする官能試験によって評価した。すなわち、パネラー5名が上記調製液を試飲し、その塩味の強さが、表2に示される塩味強度のいずれに該当するかを判断しその平均値を四捨五入した。
【0039】
その結果、試験例1の調製液は、塩味強度が「9」、すなわち、0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液と同じ塩味を呈することが判明した。すなわち、試験例1の調製液は、72mMのNa濃度で、154mMのNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈する水溶液であることが確認された。このように、水溶液を同じ塩味強度とした場合に、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムを併存させた状態とすることで、塩化ナトリウムのみの場合を比較して、大幅にナトリウム濃度を減らせることが確認された。
【0040】
[試験例2]
試験例1で示された配合以外の配合として、試験例1と同様に水溶液のナトリウム濃度は72mMとした状態で、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの配合比を変えた水溶液について種々検討した。
【0041】
─異味の官能評価─
水溶液中の炭酸水素ナトリウム又は塩化アンモニウムの含有量が増加してくると、異味が感じられたことから、異味についても官能評価した。ここで異味とは、苦み、えぐみ、後味の悪さ等、塩化ナトリウムのみの水溶液では感じられない塩味以外の味覚をいう。異味の官能評価は、塩味の官能評価と同様に、熟練のスープ技術者5名をパネラーとする官能試験を行い、評価の平均値を四捨五入した。異味の程度は、「0:塩味とは異なる味である、1:異味が少しある(許容範囲内)、2:異味が僅かにある、3:異味がほんの僅かにある、4:異味が無い」と段階分けし、0~4の五段階(0:悪い ⇔ 4:良い)で評価した。
【0042】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
いずれの試験区の調製液においても、塩味強度は6以上(Na濃度として103mM以上)であった。すなわち、試験区1~7の調製液は、72mMのNa濃度で、103mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。
【0045】
[試験例3]
試験例1及び2では、Na濃度72mMとした場合について検討したが、試験例3では、ナトリウム濃度60mMとした場合について試験した。
【0046】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
いずれの試験区の調製液においても、塩味強度は5以上(Na濃度として86mM以上)であった。すなわち、試験区1~11の調製液は、60mMのNa濃度で、86mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。
【0049】
[試験例4]
試験例4では、試験例3と同様にしながら、Na濃度48mMとした場合について試験した。
【0050】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
いずれの試験区の調製液においても、塩味強度は5以上(Na濃度として86mM以上)であった。すなわち、試験区1~14の調製液は、60mMのNa濃度で、86mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。但し、異味の官能評価が2であり、異味が感じられる試験区があった。
【0053】
[試験例5]
試験例5では、試験例3と同様にしながら、Na濃度36mMとした場合について試験した。
【0054】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
いずれの試験区においても、塩味強度5は以上(Na濃度として86mM以上)であった。すなわち、試験区1~9の調製液は、36mMのNa濃度で、86mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。但し、異味の官能評価が1又は2であり、異味が感じられる試験区があった。
【0057】
[試験例6]
試験例6では、試験例3と同様にしながら、Na濃度84mMとした場合について試験した。
【0058】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
いずれの試験区においても、塩味強度は6以上(Na濃度として103mM以上)であった。すなわち、試験区1~6の調製液は、84mMのNa濃度で、103mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。
【0061】
[試験例7]
試験例7では、試験例3と同様にしながら、Na濃度96mMとした場合について試験した。
【0062】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
いずれの試験区においても、塩味強度は6以上(Na濃度として103mM以上)であった。すなわち、試験区1~3の調製液は、84mMのNa濃度で、103mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。
【0065】
[試験例8]
試験例8では、試験例3と同様にしながら、Na濃度108mMとした場合について試験した。
【0066】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表9に示す。
【0067】
【表9】
【0068】
いずれの試験区においても、塩味強度は7以上(Na濃度として120mM以上)であった。すなわち、試験区1~3の調製液は、108mMのNa濃度で、120mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。
【0069】
[試験例9]
試験例1~8においては、炭酸水素ナトリウムを使用したが、試験例9では炭酸水素ナトリウムに代えて炭酸ナトリウムを使用すること以外、試験例2と同様にして、各試験区の調製液を官能評価した。
【0070】
各試験区における調製液1000mLに含有される塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムの重量と、各試験区における官能評価の結果を表10に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
いずれの試験区においても、塩味強度は6以上(Na濃度として103mM以上)であった。すなわち、試験区1~8の調製液は、72mMのNa濃度で、103mM以上のNa濃度の塩化ナトリウム水溶液に相当する塩味を呈することが確認された。尚、試験区1~3においては、異味がやや強く、官能評価が1であった。
【0073】
[試験例10]
本発明の塩味増強剤の即席麺における減塩効果(即席カップ麺に利用した場合の実際の効果)を、以下のようにして確認した。
【0074】
[比較例]
カップ麺(和風そばタイプ)を利用して、本発明の塩味増強剤の効果を調べた。そば粉を一部に含有する小麦粉より調製された和風のそば麺を蒸煮後、カット及びフライ処理することによって、即席麺用のそば麺塊を得た(72g)。当該そば麺塊に対する粉末スープとして、食塩を4g含有する和風そば用の粉末スープ(12g、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムのいずれも含有しないスープ)を調製した。
【0075】
ポリプロピレン製のカップ状容器に上記のそば麺塊及び粉末スープを収納し、熱湯420mLを注いで、上部に蓋をかぶせた状態で3分間保持した後、箸で容器内容物をよくかき混ぜて、調理を完了した。その後、調理後の当該即席和風そばを熟練の技術者5名がパネリストとして喫食し、スープの塩味強度を試験例2~9と同様に官能評価した。
【0076】
[実施例]
食塩4gの代わりに
食塩2g、炭酸水素ナトリウム0.55g及び塩化アンモニウム1.41gを含有する塩味調味料を使用すること以外、比較例と同様にして和風そば用の粉末スープを調製した。この粉末スープを使用し、比較例と同様にして即席和風そばを調理した。比較例と同様、5名のパネリストが即席和風そばを喫食し、スープの塩味強度を官能評価した。
【0077】
─官能評価結果─
5名のパネラー全員が、比較例及び実施例のスープの塩味に差が無いと判断した。また、5名のパネラー全員が、実施例のスープに異味を感じず、比較例のスープと同様の風味であると判断した。
【0078】
炭酸水素ナトリウム0.55gに含有されているナトリウム量は0.55×23/84=0.15gとなり、塩化ナトリウム量に換算すると0.15×58.4/23=0.38gなる。実施例のスープ中の塩化ナトリウム量は、2+0.38=2.38gに相当することになるので、塩化ナトリウム量4gを含有する比較例のスープに対し、(4-2.38)/4×100=40.5%の減塩が可能であった。