(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033784
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】腸内細菌叢改善用組成物、認知機能に関するバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/00 20060101AFI20240306BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240306BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240306BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240306BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240306BHJP
【FI】
C12Q1/00
A61P1/00
A61K35/747
A61P25/28
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137608
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】久恒 辰博
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 圭介
(72)【発明者】
【氏名】利光 孝之
(72)【発明者】
【氏名】指原 紀宏
【テーマコード(参考)】
4B063
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR32
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4C087AA01
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4C087BC56
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
(57)【要約】
【課題】認知機能の指標となる腸内バイオマーカーを提供する。Lactiplantibacillus属乳酸菌を含む、腸内菌叢改善用組成物を提供する。
【解決手段】Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌の摂取により、認知機能、その中でも特に記憶機能が改善し、一方で、腸内細菌叢におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌またはMonoglobus属細菌の存在比が低下する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オシリバクター(Oscillibacter)属細菌、ラクノクロストリジウム(Lachnoclostridium)属細菌、およびモノグロブス(Monoglobus)属細菌からなる群から選ばれるいずれかの、認知機能の指標としての使用。
【請求項2】
認知機能の指標としての使用が、認知機能の評価、認知機能の経過の予測、認知機能のモニタリング、特定の処置が認知機能に与える効果の予測、特定の処置のための対象者の選別、および対象者に適した処置の選別からなる群から選ばれるいずれかのための使用である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
腸内細菌叢におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの占有率を分析することを含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
ラクチプランティバチルス(Lactiplantibacillus)属に属する乳酸菌を含む、腸管におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの細菌の増殖制御用組成物。
【請求項5】
Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌がラクチプランティバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)に属する乳酸菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
Lactiplantibacillus plantarumに属する乳酸菌がLactiplantibacillus plantarum OLL2712株である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
乳酸菌が、配列番号:1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するものである、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
増殖制御が、増殖抑制である、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内細菌叢改善用組成物および認知機能に関する腸内バイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌には、種々の健康機能があることが知られている。特許文献1には、ラクトバチルス属に属する乳酸菌を含む、脳組織の炎症抑制用組成物が記載されている。またこの文献には、重度に肥満、高血糖を発現する2型糖尿病モデルであるKK-Ayマウスに、加熱処理した乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株を投与することにより、海馬におけるIL-1a、IL-6、IL-9、IL-12(p40)、IL-12(p70)、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、MCP-1、MIP-1a、MIP-1b、TNF-α等の炎症性サイトカインの量が減少することが記載されている。乳酸菌Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株は、腸管免疫系における抗炎症性サイトカインIL-10の産生を促進し、腸管および内臓脂肪組織における慢性炎症を抑制し、さらに全身性の炎症反応も抑制することも分かっている(非特許文献1、2)。
【0003】
また、VSL#3(Lactobacillus casei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve, Bifidobacterium infantisおよびStreptococcus salivariusの混合物)の経口投与(非特許文献3)またはSaccharomyces boulardii(Sb)のlavage(非特許文献4)により、アゾキシメタンおよびデキストラン硫酸ナトリウム(AOM/DSS)処置による潰瘍性大腸炎(UC)に伴う発癌モデルマウスの大腸組織におけるTNF-αおよびIL-6の増加が抑制されることが報告されている。さらに、非特許文献3、4においては、VSL#3の経口投与またはSbのlavageにより、UCに伴う発癌モデルマウスの糞便中細菌叢において増加するOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌の存在比が低下することが記載されている。
【0004】
一方で、脳と腸は神経やホルモンを介して相互に影響し合っており、プロバイオティクスによる腸内環境の改善が脳機能に対しプラスの影響を与えることが知られている。
特許文献2には、Bifidobacterium bifidumに属するビフィズス菌を有効成分として含んでなる、新生児向けの脳機能改善用組成物が記載されている。特許文献3には、Lactobacillus Johnsoniiであって、記憶力改善、密着結合性タンパク質発現誘導活性、抗酸化活性、リポ多糖類生成抑制活性またはβ-グルクロニダーゼ阻害活性を有する乳酸菌が記載されている。特許文献4には、Lactobacillus pentosus var. plantarum C29 KCCM11291P菌株を有効成分として含む、認知症の予防または治療用の薬学組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/131192号
【特許文献2】国際公開第2017/179602号
【特許文献3】特表2018-531595号公報
【特許文献4】特表2015-526085号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Toshimitsu T, Mochizuki J, Ikegami S, and Itou H. Identification of a Lactobacillus plantarum strain that ameliorates chronic inflammation and metabolic disorders in obese and type 2 diabetic mice. J. Dairy Sci., 99, 933-946 (2016).
【非特許文献2】Takano T, Endo R, Wang Y, Nakajima-Adachi H, and Hachimura S. Lactobacillus plantarum OLL2712 induces IL-10 production by intestinal dendritic cells. Biosci. Microbiota Food Health, 39, 39-44 (2020).
【非特許文献3】Chun-Sai-Er Wang et al. World J Gastroenterol. 2018 Oct 7; 24(37): 4254-4262. doi: 10.3748/wjg.v24.i37.4254
【非特許文献4】Chunsaier Wang et al. BMC Microbiology (2019) 19:246 https://doi.org/10.1186/s12866-019-1610-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、乳酸菌による腸内細菌の変化と認知機能の変化の関係に着目した。
本発明は、認知機能の指標となる腸内バイオマーカーを提供することを目的とする。
【0008】
さらに本発明は、Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌を含む、腸内菌叢改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株の加熱死菌体の摂取により、認知機能、その中でも特に記憶機能が改善し、一方で、腸内細菌叢におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌またはMonoglobus属細菌の存在比が低下することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの、認知機能の指標としての使用。
[2]認知機能の指標としての使用が、認知機能の評価、認知機能の経過の予測、認知機能のモニタリング、特定の処置が認知機能に与える効果の予測、特定の処置のための対象者の選別、および対象者に適した処置の選別からなる群から選ばれるいずれかのための使用である、[1]に記載の使用。
[3]腸内細菌叢におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの占有率を分析することを含む、[1]または[2]に記載の使用。
[4]Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌を含む、腸管におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの細菌の増殖制御用組成物。
[5]Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌がLactiplantibacillus plantarumに属する乳酸菌である、[4]に記載の組成物。
[6]Lactiplantibacillus plantarumに属する乳酸菌がLactiplantibacillus plantarum OLL2712株である、[5]に記載の組成物。
[7]乳酸菌が、配列番号:1で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する16S rRNA遺伝子を有するものである、[4]~[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8]増殖制御が、増殖抑制である、[4]~[7]のいずれか1項に記載の組成物。
【0011】
[9]Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌を含む、認知機能改善用組成物。
[10]認知機能改善が、記憶機能の改善である、[9]に記載の組成物。
[11]記憶機能が、視覚記憶機能である、[10]に記載の組成物。
[12]脂溶性ビタミンと併用するための、[9]~[11]のいずれか1項に記載の組成物。
[13]脂溶性ビタミンがビタミンKである、[12]に記載の組成物。
[14]コレステロール低減療法と併用するための、[9]~[13]のいずれか1項に記載の組成物。
[15]高齢者のための、[9]~[14]のいずれか1項に記載の組成物。
[16]腸管内の菌叢改善を介するものである、[9]~[15]のいずれか1項に記載の組成物。
[17]腸管内の菌叢改善が、Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの細菌の増殖制御である、[16]に記載の組成物。
[18]Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌がLactiplantibacillus plantarumに属する乳酸菌である、[9]~[17]のいずれか1項に記載の組成物。
[19]Lactiplantibacillus plantarumに属する乳酸菌がLactiplantibacillus plantarum OLL2712株である、[18]に記載の組成物。
[20]乳酸菌が、配列番号:1で表される塩基配列と90%以上の同一性を有する16S rRNA遺伝子を有するものである、[9]~[19]のいずれか1項に記載の組成物。
[21]増殖制御が、増殖抑制である、[17]~[20]のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、認知機能の指標となる腸内バイオマーカーが提供される。
また、本発明によれば、Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌の摂取により、腸内細菌叢におけるOscillibacter属、Lachnoclostridium属またはMonoglobus属に属する腸内細菌の存在比を低下させることができる。そのため、本発明によれば、腸内細菌叢を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は腸内細菌叢調査結果を示す。* p<0.05 (vs Placebo)、n=78(Active、Placebo各群)
【
図2】
図2はBDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)によるクラスター分析結果を示す。
【
図3】
図3はOLL2712(FERM BP-11262)の16S rRNA遺伝子の部分配列を示す。(配列番号:1)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(認知機能の指標)
本発明の一つの態様によれば、認知機能の指標となる、腸内細菌からなるバイオマーカーが提供される。
【0015】
《認知機能の指標としての使用》
認知機能は、例えば、理解、判断、論理などの知的機能と定義される。認知機能の検査としては、認知機能障害のスクリーニングに用いられるものとして代表的なミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)が知られる。また、軽度の認知症や軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)の場合には、日本語版MoCAやACE-R等の認知機能検査が用いられる。これらの他にも、日本語版COGNISTAT、ADAS、WMS-R、WAIS-III、Cognitrax等の認知機能検査も知られている。
一般的には、認知機能は、これらの検査によって評価できる機能をいう。
【0016】
認知機能の指標としての使用とは、例えば、認知機能の評価、認知機能の経過の予測、認知機能のモニタリング、特定の処置が認知機能に与える効果の予測、特定の処置のための対象者の選別、および対象者に適した処置の選別からなる群から選ばれるいずれかのために用いることをいう。
【0017】
指標を認知機能の評価のために使用する場合、例えば、次のように実施できる:
対象者から得た検体中の指標の量または変動を分析し、
分析結果に基づき、対象者の認知機能が健常であるか否か、または維持、向上または低下したか否かを判定する。
【0018】
指標を認知機能の経過の予測のために使用する場合、例えば、次のように実施できる:
対象者から得た検体中の指標の量または変動を分析し、
分析結果に基づき、対象者の認知機能が向上、維持、または低下するか否かを予測する。
【0019】
指標を認知機能のモニタリングのために使用する場合、例えば、次のように実施できる:
対象者から得た検体中の指標の量または変動を定期的に分析し、
分析結果に基づき、対象者の認知機能に関する情報を取得する。
【0020】
指標を特定の処置が認知機能に与える効果の予測のために使用する場合、例えば、次のように実施できる:
認知機能の向上のための特定の処置を適用した対象者から得た検体中の指標の量または変動を分析し、
分析結果に基づき、特定の処置により対象者の認知機能が向上するか否かを予測する。
【0021】
指標を特定の処置のための対象者の選別のために使用する場合、例えば、次のように実施できる:
対象者から得た検体中の指標の量または変動を分析し、
分析結果に基づき、特定の処置が対象者の認知機能の向上に有効であるか否かを判定し、有効と判定した対象者を選別する。
【0022】
指標を対象者に適した処置の選別のために使用する場合、例えば、次のように実施できる:
対象者から得た検体中の指標の量または変動を分析し、
分析結果に基づき、特定の処置が対象者の認知機能の向上に有効であるか否かを予測、判定し、有効と判定した処置を選別する。
【0023】
《バイオマーカーとなるもの》
本発明の一つの態様によれば、腸内細菌である、Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかを、認知機能の指標とする。
【0024】
本発明に関し、Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、またはMonoglobus属細菌というときは、16S rRNA遺伝子に基づく分子系統解析により、Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、またはMonoglobus属細菌であると同定される細菌をいう。16S rRNA遺伝子に基づく分子系統解析による属の判断基準は当業者にはよく知られている(Stackebrandt E, Ebers J. Taxonomic parameters revisited: tarnished gold standards. Microbiol Today 2006;33:152-155.)。
【0025】
Oscillibacter属細菌の例としては、Oscillibacter valericigenes等が挙げられる。Lachnoclostridium属細菌の例としては、Lachnoclostridium pacaense、Lachnoclostridium phytofermentans、Lachnoclostridium massiliosenegalense等が挙げられる。Monoglobus属細菌の例としては、Monoglobus pectinilyticus等が挙げられる。
【0026】
《占有率の分析》
認知機能の指標としての使用は、特に限定されないが、例えば、指標の量または変動を分析することを含んでもよい。指標の量または変動を分析することは、例えば、腸内細菌叢における、Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの腸内細菌叢における占有率を分析することを含む。
なお、腸内細菌につき「占有率」とは、腸内細菌叢において特定の細菌が占める割合をいい、存在比ということもある。
【0027】
腸内細菌叢における特定の腸内細菌の占有率は、対象者の糞便を適切な培地に添加し、必要に応じ一定期間培養した後、培養物中の特定の細菌の占有率を測定することにより分析することができる。
【0028】
腸内細菌叢に含まれる特定の細菌の占有率は、公知の方法により求めることができる。好ましい方法の一つは、培養物から抽出されたDNAについて16Sメタゲノム解析(16S rRNA遺伝子アンプリコンのシーケンス解析)を行うことである。16Sメタゲノム解析を実施する場合、DNAの抽出は市販のキットを用いて行うことができる。解析されるゲノム領域は、細菌を判定できる限り特に制限されないが、16S rRNA遺伝子のV3-V4領域を用いることができる。細菌の解析を行うためのプライマー、増幅条件、アンプリコンの精製等の方法も、当業者にはよく知られた方法を用いることができる。配列の解読は性能がより高い次世代シーケンサーで行うことが好ましい。得られたデータの解析にはQIIME 2TM等の次世代マイクロバイオーム・バイオインフォマティクス・プラットフォームを利用することができる。16Sメタゲノム解析について、当業者はSanschagrin S, Yergeau E. Next-generation sequencing of 16S ribosomal RNA gene amplicons. J Vis Exp. 2014;(90):51709. Published 2014 Aug 29. doi:10.3791/51709等の情報を参照することができる。
【0029】
本発明の一つの態様によれば、認知機能の指標の量または変動を分析するためのキットが提供される。キットは、例えば、検体からDNAを抽出し、16Sメタゲノム解析を行い、Oscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌のうち少なくとも1つの16S rRNA遺伝子を検出するための試薬を含み、必要に応じて器具等をさらに含み得る。試薬は、例えば、検体の希釈液、目的とする16S rRNA領域の配列を増幅するためのプライマー、糞便中の細菌のDNAを抽出するためのタンパク質分解酵素、RNase等を含む試薬等からなる。器具は、例えば、検体を採取するための器具、検体を収容する器具である。
【0030】
(組成物)
本発明の一つの態様によれば、乳酸菌を有効成分とする、特定の細菌の腸管内での増殖制御や認知機能改善等の用途に用いるための組成物が提供される。
【0031】
《有効成分》
組成物は、Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌を含む。
【0032】
「Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌」とは、Zheng J, Wittouck S, Salvetti E, Franz CMAP, Harris HMB, Mattarelli P, O'Toole PW, Pot B, Vandamme P, Walter J, Watanabe K, Wuyts S, Felis GE, Ganzle MG, Lebeer S.: A taxonomic note on the genus Lactobacillus: Description of 23 novel genera, emended description of the genus Lactobacillus Beijerinck 1901, and union of Lactobacillaceae and Leuconostocaceae. Int J Syst Evol Microbiol. 2020 Apr; 70(4): 2782-2858による再分類された分類における、Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌をいう。
【0033】
組成物に含まれるLactiplantibacillus属に属する乳酸菌の具体例としては、Lactiplantibacillus plantarum、Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum、
Lactiplantibacillus plantarum subsp. argentoratensis、Lactiplantibacillus daoliensis、Lactiplantibacillus daowaiensis、Lactiplantibacillus dongliensis、Lactiplantibacillus fabifermentans、Lactiplantibacillus herbarum、Lactiplantibacillus modestisalitolerans、Lactiplantibacillus mudanjiangensis、Lactiplantibacillus nangangensis、Lactiplantibacillus paraplantarum、Lactiplantibacillus pentosus、Lactiplantibacillus pingfangensis、Lactiplantibacillus plajomi、Lactiplantibacillus songbeiensis、Lactiplantibacillus xiangfangensis等が挙げられる。本発明の組成物には、これらのLactiplantibacillus属に属する乳酸菌のうち、好ましくはLactiplantibacillus plantarumに属する乳酸菌が用いられる。より好ましくはLactiplantibacillus plantarum OLL2712株、またはそれと同一の菌学的性質を有する菌株が用いられる。あるいは、Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株と分類学的に近縁の菌株、具体的には配列番号:1で表される塩基配列と90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上の同一性を有する16S rRNA遺伝子を有する菌株が用いられる。配列表には、配列番号:1として、OLL27128(FERM BP-11262)の16S rRNA遺伝子の配列を記載した。
【0034】
なお、本発明で塩基配列に関し「同一性」というときは、特に記載した場合を除き、いずれの塩基配列においても、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致したヌクレオチドまたはアミノ酸の個数の百分率を意味する。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出でき、市販されているアルゴリズムを用いて計算することができる。
【0035】
Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地l中央第6)に2010年7月2日付で国際寄託され、受託番号FERM BP-11262が付与されている。なお、Budapest Notification No.282(http://www.wipo.int/treaties/en/notifications/budapest/treaty_budapest_282.html)に記載されるとおり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD、AIST) は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(IPOD、NITE)へ、特許微生物寄託業務を承継したため、OLL2712は、現在は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(IPOD、NITE)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号 FERM BP-11262の下で寄託されている(寄託者:株式会社 明治)。Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株は、Zheng J, Wittouck S, Salvetti E, Franz CMAP, Harris HMB, Mattarelli P, O'Toole PW, Pot B, Vandamme P, Walter J, Watanabe K, Wuyts S, Felis GE, Ganzle MG, Lebeer S.: A taxonomic note on the genus Lactobacillus: Description of 23 novel genera, emended description of the genus Lactobacillus Beijerinck 1901, and union of Lactobacillaceae and Leuconostocaceae. Int J Syst Evol Microbiol. 2020 Apr; 70(4): 2782-2858による再分類がされる以前に寄託されているため、受託証においてはbasonymであるlactobacillus plantarumと表記されている。
【0036】
Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株の菌学的性質を以下に示す。
グラム染色:陽性、形態:桿菌、乳酸発酵形式:ホモ乳酸発酵、好気的発育:+、発育温度:15℃ +、45℃ -。
コロニーの形状 直径:1-2mm、色調:白色、形:円形、隆起状態:半球状、周縁:全縁、表面の形状:スムーズ、透明度:不透明、粘稠度:バター状。
【0037】
組成物に含まれる乳酸菌は、培養により製造することができる。培養条件としては、目的の効果が奏される限り特に限定されない。
【0038】
組成物において、乳酸菌は、目的の効果を発揮できる限り、どのような状態で含まれていてもよい。例えば、乳酸菌は、乳酸菌菌体そのものである場合のほか、乳酸菌の培養物(乳酸菌菌体と培養上清とからなる。)である場合がある。菌体は、目的の効果を発揮できる限り、生きた状態(生菌体)であってもよく、死んだ状態(死菌体)であってもよい。
【0039】
好ましい態様の一つにおいて、乳酸菌は、組成物に死菌体として含まれる。死菌体は乳酸菌を殺菌処理することにより得ることができる。殺菌処理は、目的の効果を発揮できる限り、特に限定されず、加熱、殺菌灯(UV)、オゾン、薬剤、高浸透圧等に拠ることができる。
【0040】
死菌体は、生菌体を加熱処理することにより得られる加熱処理死菌体であることが好ましい。加熱処理死菌体を得るための加熱処理は、目的の効果が奏される限り特に限定されず、用いる乳酸菌を死滅させるために十分な温度及び時間で実施される。このような条件は、用いる乳酸菌にもよるが、例えば55℃以上であり、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは65℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上であり、80℃以上としてもよく、90℃以上としてもよい。加熱処理温度の上限は、適宜とすることができ、例えば121℃以下であり、100℃以下としてもよく、90℃以下、80℃以下としてもよい。また加熱処理温度に応じて、加熱処理時間は1分間以上とすることができ、3分間以上としてもよく、10分間以上、15分間以上、30分間以上、45分間以上としてもよい。加熱処理時間の上限は、例えば120分間以下とすることができ、100分間以下であってもよく、90分間以下であってもよく、80分間以下であってもよい。
【0041】
組成物に含有させるための乳酸菌は、生菌体であるか死菌体であるかに関わらず、乾燥物、懸濁物、ペースト状、ゲル状等の形態として調製することができる。
【0042】
《用途》
増殖制御
本発明の一つの態様によれば、組成物は、腸管におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの細菌の増殖を制御することができる。増殖制御は、増殖促進と増殖抑制を含む。好ましい組成物は、増殖抑制用である。
【0043】
Oscillibacter属細菌の例としては、Oscillibacter valericigenes等が挙げられる。Lachnoclostridium属細菌の例としては、Lachnoclostridium pacaense、Lachnoclostridium phytofermentans、Lachnoclostridium massiliosenegalense等が挙げられる。Monoglobus属細菌の例としては、Monoglobus pectinilyticus等が挙げられる。
【0044】
ある成分が、腸管内の細菌叢における特定の細菌の増殖を制御するか否かは、上記の(認知機能の指標)の項において記載した、腸内細菌叢に含まれる特定の細菌の占有率を測定する方法と同様の方法により評価することができる。測定結果を、評価したい成分を加えなかった点でのみ異なるが他の点では同一の条件で培養した培養物についての測定結果と比較し、対照よりも占有率が高い場合は増殖が促進され、低い場合は増殖が抑制されたと判断することができる。
【0045】
認知機能改善
本発明の一つの態様によれば、組成物は、認知機能を改善することができる。
【0046】
認知機能改善とは、例えば、記憶機能、精神運動速度、処理速度、注意力、実行機能、認知適応性、持続注意力等の機能のうち、1つ以上を改善することをいう。また、認知機能改善とは、認知機能を向上させるだけでなく、認知機能を維持することおよび認知機能の低下を予防することを含む。
【0047】
Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株はIL-10産出誘導能が高い乳酸菌であり、IL-10は抗炎症、細胞生存を促進することから、中枢神経系において神経保護的な役割を果たし(非特許文献9)、アルツハイマー病においても、モデルマウスの脳におけるIL-10発現は、神経新生と認知機能を高めることが報告されている(非特許文献10)。
一方で、本発明の組成物によって増殖が制御されるLachnoclostridium属細菌とOscillibacter属細菌は、発がん誘導による炎症の亢進に伴い存在比が上がり、プロバイオティクスの投与による炎症抑制により存在比が下がることが知られている(非特許文献4)。また、Oscillibacter属細菌はヒトの腸内細菌叢において、日和見病原体としてはたらくことが知られている(非特許文献11)。
これらのことから、Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌の投与により、腸内環境が改善され、腸内の炎症が抑えられた結果、脳の神経炎症抑制に繋がり、健常な対象を含むあらゆる対象において、認知機能改善の効果が期待できる。
【0048】
認知機能改善は、例えば、MMSE、HDS-R、日本語版MoCA、ACE-R、N式老年者用精神状態評価尺度、日本語版COGNISTAT、日本語版Alzheimer病評価スケール、SIB日本語版、ADAS、WMS-R、WAIS-III、Cognitrax等の公知の認知機能検査によって評価することができる。
【0049】
一つの態様においては、組成物は、脂溶性ビタミンと併用することができる。脂溶性ビタミンの摂取は、総合記憶機能の変化に正の影響を与える。本発明の認知機能改善用組成物と併用する脂溶性ビタミンは、好ましくはビタミンKである。ここで、併用とは、本発明の認知機能改善用組成物中に脂溶性ビタミンを含む態様であってもよく、一方で同組成物中には脂溶性ビタミンを含まないが、脂溶性ビタミンを同組成物と同時にまたはこれと前後して摂取する態様であってもよい。
【0050】
一つの態様においては、組成物は、コレステロール低減療法と併用することができる。コレステロールの摂取は、総合記憶機能の変化に負の影響を与える。コレステロール低減療法は、食事療法、運動療法、薬物療法等を含む。食事療法においては、例えば、コレステロール摂取制限食が用いられ、コレステロール摂取制限食においては、例えば、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版にて、高LDL(低密度)コレステロール血症患者に対して推奨されるように、コレステロールが200mg/日以下に制限されている。運動療法の例としては、中等度強度(最大酸素摂取量の約50%)の有酸素運動を毎日30分以上続けること等が挙げられる。薬物療法には、血清/血漿LDLコレステロール低減作用を有する医薬、サプリメント等の投与等が含まれる。ここで、併用とは、対象がコレステロール低減療法を受けている期間内またはその前後において、本発明の組成物を摂取することをいう。
【0051】
過去のin vivo研究では、プレ・プロバイオティクスの投与が、血清/血漿総コレステロール(T-C)、LDL-C及びトリグリセリドの減少、または高密度(HDL)-Cの増加に有効であり(非特許文献6)、Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株の投与においても、HDL-Cが有意に増加し、脂質プロファイルを改善する効果があることが報告されている(非特許文献7)。コレステロールのアルツハイマー病への関与は、脳内の脂質代謝に関わるAPOE遺伝子の研究からも裏付けられており、メタアナリシス研究により、中年期のT-C値が高いと晩年期の認知機能低下のリスクが高まることが報告されている(非特許文献8)。さらに、メタアナリシス研究により食事によるコレステロール摂取量が増えるとT-Cが増加するという関係が証明されている(非特許文献9)。
【0052】
本発明の一つの態様によれば、腸管内の菌叢改善により改善される疾患または状態の処置のための組成物が提供される。好ましい態様によれば、腸管内の菌叢改善は、腸管におけるOscillibacter属細菌、Lachnoclostridium属細菌、およびMonoglobus属細菌からなる群から選ばれるいずれかの増殖制御である。増殖制御は、増殖促進と増殖抑制を含む。好ましい態様によれば、増殖制御は、増殖抑制である。
【0053】
腸管内の菌叢改善により改善される疾患または状態としては、加齢等による生理的健忘、病識やもの忘れの自覚症状等が保たれている健忘、軽度認知機能障害、せん妄、認知症や認知症様症状をきたす疾患等があり得る。認知症や認知症様症状をきたす主な疾患としては、中枢神経性変性疾患、血管性認知症、脳腫瘍、正常圧水頭症、頭部外傷、無酸素性・低酸素性脳症、神経感染症、臓器不全、内分泌機能異常症、中毒性疾患、代謝性疾患、自己免疫疾患、蓄積病、その他等があり得る。それぞれの例として、下記の疾患が挙げられる;
中枢神経性変性疾患:アルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、嗜銀顆粒性認知症、神経原線維変化型老年期認知症等
血管性認知症:多発梗塞性認知症、小血管病変性認知症等
脳腫瘍:原発性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、癌性髄膜症等
神経感染症:急性ウイルス性脳炎、HIV感染症、クロイツフェルト・ヤコブ病等
臓器不全:腎不全、透析脳症、肝不全、慢性心不全、慢性呼吸不全等
内分泌機能異常症:甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症等
中毒性疾患、代謝性疾患:アルコール依存症、一酸化炭素中毒、ビタミンB欠乏症、ビタミンD欠乏症、葉酸欠乏症、ナイアシン欠乏症、薬物中毒、金属中毒、ウィルソン病等
自己免疫疾患:多発性硬化症、ベーチェット病等
蓄積病:遅発性スフィンゴリピド病、副腎白質ジストロフィー、糖尿病等
その他:ミトコンドリア脳筋症、進行性筋ジストロフィー等。
【0054】
一つの態様によれば、腸管内の菌叢改善を介する、認知機能改善用組成物が提供される。
【0055】
Lactiplantibacillus plantarum OLL2712株はIL-10産出誘導能が高い乳酸菌であり、IL-10は抗炎症、細胞生存を促進することから、中枢神経系において神経保護的な役割を果たし(非特許文献10)、アルツハイマー病においても、モデルマウスの脳におけるIL-10発現は、神経新生と認知機能を高めることが報告されている(非特許文献11)。
一方で、腸管内におけるLachnoclostridium属細菌とOscillibacter属細菌は発がん誘導による炎症の亢進に伴い存在比が上がり、プロバイオティクスの投与による炎症抑制により存在比が下がることが知られている(非特許文献4)。また、Oscillibacter属細菌はヒトの腸内細菌叢において、日和見病原体としてはたらくことが知られている(非特許文献12)。
これらのことから、Lactiplantibacillus属に属する乳酸菌の投与により、腸内環境が改善され、腸内の炎症が抑えられた結果、脳の神経炎症抑制に繋がり、認知機能改善の効果が得られることが期待される。
【0056】
本発明に関し、疾患又は状態について処置というときは、発症リスクの低減、発症の遅延、予防、治療、進行の停止、遅延を含む。治療は、根治療法(原因を取り除く治療)、及び対症療法(症状を改善する治療)を含む。改善又は処置のための行為には、医師及び医師の指示を受けた看護師、助産師などが行う医療行為と、医師以外の者、例えば薬剤師、栄養士(管理栄養士、スポーツ栄養士を含む)、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、スポーツ指導員、医薬品製造者、医薬品販売者、食品製造者、食品販売者等が行う、非治療的行為を含む。さらに予防又は発症リスクの低減は、特定の食品の摂取の推奨、栄養指導(傷病者に対する療養のために必要な栄養の指導、及び健康の保持増進のための栄養の指導を含む)を含む。
【0057】
《対象》
本発明に関し、組成物が適用される対象は、本発明の効果が発揮される限り特に限定されないが、好ましくは認知症と診断されていないヒト、認知機能の低下が気になるヒト、加齢により認知機能が低下したヒト、一定の認知機能を有するヒト等である。一定の認知機能は、公知の認知機能検査によって評価することができ、例えば、簡易認知機能スケールあたまの健康チェック(登録商標)によってスコア化されるMPI(Memory Performance Index)が70以下、好ましくは65以下、より好ましくは60以下であり、10以上、好ましくは15以上、より好ましくは20以上であることを基準とすることができる。
【0058】
認知症とは、世界保健機関による国際疾病分類第10版では、通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等多数の高次脳機能の障害からなる症候群と定義される。また、進行的に認知症に至る、認知機能の変化から見れば正常な老化の過程と区別できる前駆的な期間が存在し、この期間における、広義には軽度に認知機能が低下した状態を軽度認知障害(MCI)という。
【0059】
本発明の一つの実施形態においては、組成物が適用される対象を、MCIを有するヒトとすることができ、好ましくは健忘性MCI(記憶障害を伴うMCI)を有するヒトとすることができる。認知症には未だ根治療法はないため、MCIを含む非認知症段階における認知機能低下を予防する介入法が求められている。
【0060】
本発明に関し、組成物が適用される対象の年齢は特に限定されないが、疾患の有無、認知機能の程度等によらず、好ましくは45歳以上、好ましくは50歳以上、より好ましくは55歳以上、さらに好ましくは60歳以上、特に好ましくは65歳以上とすることができる。世界保健機関の定義に従い、65歳以上のヒトを高齢者という。
【0061】
認知機能改善は、例えばCognitraxによって評価することができる。Cognitraxは、米CNS Vital Signs社が開発した認知機能検査である。Cognitraxによれば、記憶機能(言語記憶機能と視覚記憶機能)、精神運動速度、処理速度、注意力、実行機能、認知適応性、持続注意力等の認知機能領域を測定することができる。これらのうち、健忘性MCIを対象とする場合に高い感度/関連をもつのは、言語記憶機能と視覚記憶機能を含む総合記憶機能である。
【0062】
本発明の好ましい態様によれば、組成物を適用する対象において、少なくとも記憶機能を改善することができる。より好ましい態様においては、記憶機能のうち、少なくとも視覚記憶機能を改善することができる。
【0063】
《食品組成物または医薬組成物》
本発明に関し、組成物は、食品組成物または医薬組成物とすることができる。食品及び医薬品は、特に記載した場合を除き、ヒトのためのもののみならず、ヒト以外の動物のためのものを含む。食品は、特に記載した場合を除き、一般食品、機能性食品、栄養組成物を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、介護食、治療支援用食品を含む。食品は、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えば飲料、ドリンク剤、流動食、及びスープを含む。機能性食品とは、生体に所定の機能性を付与できる食品をいい、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)、機能性表示食品、栄養機能食品を含む保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル、液剤等の各種の剤型のもの)、美容食品(例えば、ダイエット食品)等の、健康食品の全般を包含している。また、本発明において「機能性食品」とは、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含している。
【0064】
《投与経路》
本発明に関し、組成物は、それを非経口的に、例えば経管的(胃瘻、腸瘻)に投与してもよいし、経鼻的に投与してもよいし、経口的に投与してもよいが、経口的に投与することが好ましい。
【0065】
《用量、含有量》
組成物における、乳酸菌の含有量は、目的の効果が発揮される量であればよい。組成物は、摂取・投与する対象の年齢、体重、症状等の種々の要因を考慮して、乳酸菌の含有量を適宜設定することができる。組成物の1単位は、1日または1回あたり(1日1回の投与・摂取としてもよいし、1日複数回、例えば3回の投与としてもよい。)に摂取・投与する量とすることができる。組成物の1単位あたりの乳酸菌の含有量は、例えば、1×105個以上とすることができ、1×106個としてもよく、1×107個以上することが好ましく、1×108個以上とすることがより好ましく、1×109個以上とすることがさらに好ましく、5×109個以上とすることが特に好ましい。上限値は適宜とすることができ、下限値がいずれの場合であっても、例えば、1×1014個以下としてもよく、1×1013個以下としてもよく、1×1012個以下としてもよい。
【0066】
また乳酸菌の含有量を上述のようにする場合は、いずれの場合も、1単位は、例えば0.1g以上とすることができ、0.5g以上、1g以上、5g以上、10g以上とすることができる。
【0067】
《他の成分》
組成物は、食品または医薬品として許容可能な他の有効成分や栄養成分を含んでいてもよい。そのような成分の例は、アミノ酸類(例えば、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、バリン)、糖質(グルコース、ショ糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、パラチノース、キシリトール、デキストリン)、電解質(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、葉酸、パントテン酸及びニコチン酸類)、ミネラル(例えば、銅、亜鉛、鉄、コバルト、マンガン)、抗生物質、食物繊維、タンパク質、脂質等である。
【0068】
《添加剤》
また組成物は、食品または医薬品として許容される添加物をさらに含んでいてもよい。そのような添加物の例は、不活性担体(固体や液体担体)、賦形剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、天然物である。より具体的には、水、他の水性溶媒、製薬上で許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、クエン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、リン酸、酢酸、果汁、野菜汁等である。
【0069】
《形態、剤型》
食品組成物は、固体、液体、混合物、懸濁液、粉末、顆粒、ペースト、ゼリー、ゲル、カプセル等の任意の形態に調製されたものであってよい。また、本発明に係る食品組成物は、乳製品、サプリメント、菓子、飲料、ドリンク剤、調味料、加工食品、惣菜、スープ等の任意の形態にすることができる。より具体的には、本発明の組成物は、発酵乳、乳酸菌飲料、乳性飲料、乳飲料、清涼飲料、アイスクリーム、タブレット、チーズ、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、冷凍食品、加工食品等の形態とすることができ、また飲料や食品に混合して摂取するための、顆粒、粉末、ペースト、濃厚液等の形態とすることができる。発酵乳とは、「乳および乳製品の成分規格等に関する省令(以下「乳等省令」と略する。)」で定義された発酵乳及び乳酸菌飲料である。乳等省令における発酵乳は、乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状もしくは液状にしたものまたはこれらを凍結したものである。
【0070】
医薬組成物は、経口投与に適した、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液体製剤、ジェル剤、エアロゾル剤等の任意の剤型にすることができる。
【実施例0071】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0072】
(1)試験食品の調製
脱脂粉乳の酵素分解物を主体とする培地で、ラクチプランティバチルス・プランタラムOLL2712株(受託番号:FERM BP-11262)を対数増殖期の後期まで培養し、培養液を25倍濃縮後に60℃10分間加熱した。同濃縮加熱菌液を噴霧乾燥して粉末化した後、TK-16AGデキストリン(松谷化学工業)に3.9%の添加率で配合して完全に均一になるまで混合した。同混合菌末を1g/包となるようにスティック充填し、被験食品として毎日1包を摂取させた。1g中のOLL2712菌数は、5×109個以上であった。一方、プラセボ群には、ラクチプランティバチルス・プランタラムOLL2712株を配合しないTK-16AGデキストリンを1g/包充填したスティックを同様に摂取させた。各試験食品は室温で保存した。
【0073】
(2)被験者の基本特性
被験者78名をアクティブ群(OLL2712株を含む試験食品を摂取する群)とプラセボ群(同乳酸菌を含まない対照試験食品を摂取する群)に分けた。各群の被験者の基本特性を下表に示す。
【0074】
被験者の選定(スクリーニング)
以下の選択基準Aおよび除外基準Bに基づき、乳酸菌の脳機能への影響の確認試験のための被験者を選定した。
【0075】
A:選択基準
ボランティアデータベースの中から千葉県柏市周辺に居住の以下基準に該当する者を募集した。
・65歳以上90歳以下の健康な男女に、スクリーニング検査として簡易認知機能スケールあたまの健康チェック(登録商標)を行い、MPI(Memory Performance Index)スコアとして表される認知機能の状態が60点以下の者で、かつ以下を満たす者を選定した。
・記憶機能に不安のある者
・認知症と診断されていない者
・重篤な全身疾患のない者
・乳製品アレルギーのない者
・本試験の目的、内容について十分な説明を受け、十分に理解した上で自由意思により志願し、文書で参加に同意した者
【0076】
B:除外基準
上記基準に基づいて80名の被験者を選定した。うち2名は認知症が疑われ、除外基準に抵触することから除外した。この2名は、外れ値検定によっても極端にMPIスコアが低いことが算出された。解析対象集団となった78名の対照群および被験群の被験者の年齢、性別、教育年数、BMIを表1に示す。
【0077】
【0078】
(3)試験食品の摂取
アクティブ群の被験者はOLL2712株を含む試験食品を、プラセボ群の被験者は同乳酸菌を含まない対照試験食品を、1日1包ずつ、12週間にわたり毎日、任意のタイミングで摂取した。
【0079】
[1.Cognitraxを用いた記憶機能評価]
Cognitraxは、CNS Vital Signs社によって開発され、コンピューターを使った7つの課題からなり、様々な認知領域をスコア化して測定することができる認知機能検査である。7つの課題は、言語記憶テスト、視覚記憶テスト、Finger Tapping Test(指叩きテスト)、Symbol Digit Coding、Stroop Test(ストループテスト)、Shifting Attention Test およびContinuous Performance Test(持続処理テスト)からなる。
本研究の対象者が含まれる健忘性MCI(MCI:Mild Cognitive Impairment)の症状に対して高い感度をもつ認知機能領域は、総合記憶力(言語記憶力と視覚記憶力のスコアの合計)、言語記憶力および視覚記憶力のみである。
言語記憶テストおよび視覚記憶テストの方法は、以下に示す通りである。
【0080】
言語記憶テスト:Verbal Memory(VBM)
言語記憶テストは、言葉の記憶機能を測定する。最初に画面に15の単語が2秒に一つずつ表示される。被験者は新たな15の単語に混ざって表示されるそれらの単語を見つける。(言語学習、単語の記憶、単語の認識、直後と遅延記憶)
【0081】
視覚記憶テスト:Visual Memory(VIM)
視覚記憶テストは、図形の記憶認知機能を測定する。最初に画面に15種類の図形が表示される。被験者は新たな15の図形の中から、先の図形を見つけ出す。(視覚的学習、幾何学形状の記憶、幾何学形状の認知、直後および遅延記憶)
【0082】
Cognitraxによる記憶能評価の結果を下表に示す。Cognitraxのスコア変化における群間の比較には両側検定のStudent’s t-testを使用した。
【0083】
【0084】
視覚記憶力スコアはアクティブ群において有意に改善し(p = 0.044)、総合記憶力スコアでもアクティブ群において改善傾向がみられた(p = 0.058)。
【0085】
本実施例において、記憶機能低下に対する改善効果は言語記憶力よりむしろ視覚機能において顕著に表れていた。
MCIのさらに前段階であるpre-MCIを対象とした先行研究では言語記憶ではなく視覚記憶力スコアが低いpre-MCI患者ほど、MCI段階への進行率が高いという結果が報告されている(非特許文献5)。すなわち、視覚記憶の低下はMCI進行の予測因子であり、臨床的なMCI発症の前に症状として現れることから、AD(アルツハイマー病)スペクトルの最も早い段階の症状であると言える。実際、Cognitraxでも単語のリストを想起するよりも図形のリストを想起することの方が、誤答率が高く、より困難な課題であると推測される。
これらの理由から、乳酸菌の投与により、最も難易度が高く、ADスペクトルの初期から変化が見られる症状である視覚記憶において特に顕著な介入効果が得られたと考えられる。
【0086】
[2.記憶能力の変化を目的変数とした重回帰分析結果]
OLL2712株の効果に対する普段の食事の影響を考慮するために、六大栄養素に含まれる主要な栄養素(たんぱく質、炭水化物、ミネラル、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、コレステロール、水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、総食物繊維)および、共変量(年齢、性別、教育年数、BMI)を説明変数として、ステップワイズ法により重回帰分析を行い、Cognitraxのスコア変化との比較を行った。目的変数である総合記憶力の変化値に対して、脂溶性ビタミンならびにコレステロールが説明変数として特定された。この重回帰分析の結果を下表に示す。
【0087】
【0088】
なお脂溶性ビタミンについては、4つの脂溶性ビタミンの値を正規化したのち、それぞれの値を足したものを基に計算を行った。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
総合記憶力の変化に対し、OLL2712株、脂溶性ビタミンの摂取は正の影響を与え、コレステロールは負の影響を与えていることが分かる。
【0094】
視覚記憶力の変化を目的変数とした重回帰分析結果を下表に示す。
【0095】
【0096】
日々の食事の摂取栄養素による補正後も、OLL2712株は視覚記憶力の変化に対し、正の影響を与えていることが分かる。
【0097】
OLL2712株による総合記憶力に対する介入効果は、日々の食生活におけるコレステロール摂取量が多い人ほど小さいという結果が得られた。
過去のin vivo研究では、プレ・プロバイオティクスの投与が、血清/血漿総コレステロール(T-C)、低密度(LDL)-C及びトリグリセリドの減少、または高密度(HDL)-Cの増加に有効であり(非特許文献6)、OLL2712の投与においても、HDL-Cが有意に増加し、脂質プロファイルを改善する効果があることが報告されている(非特許文献7)。コレステロールのADに対する関与は、脳内の脂質代謝に関わるAPOE遺伝子の研究からも裏付けられており、メタアナリシス研究により、中年期のT-C値が高いと晩年期の認知機能低下のリスクを高めることが報告されている(非特許文献8)。さらに、メタアナリシス研究により食事によるコレステロール摂取量が増えるとT-Cが増加するという関係が証明されている(非特許文献9)。
【0098】
[3.腸内細菌叢検査]
78名の研究対象者から提供された糞便からMaxwell(会社名:プロメガ)によりDNAを抽出し、MiSeq(会社名:イルミナ)によるV3-V4領域のアンプリコンシーケンスを行った。得られた.fastqファイルをQIIME2(https://qiime2.org/)により解析し、各腸内細菌の占有率を算出した。
【0099】
図1に腸内細菌叢調査の結果を示す。
腸内細菌叢の多様性について群間の有意差はなかった。属レベルの解析において、LachnoclostridiumとOscillibacterとMonoglobusの存在比がアクティブ群では有意に低かった(それぞれ、p = 0.033, p = 0.015, p = 0.016)。
【0100】
[4.BIS-11(Barratt衝動性スケール第11版)およびフレイルアンケート]
78名の被験者に対し、BIS-11(Barratt衝動性スケール第11版)およびフレイルアンケートを実施した。
【0101】
BIS-11
衝動性の指標として最も一般的に使用されている。30項目の質問からなり、注意、運動、非計画衝動性の二次因子が算出される。
【0102】
フレイルアンケート
フレイルの診断基準5つのうち、歩行速度と握力の測定以外の体重減少、主観的疲労感、日常生活活動量の減少の3つの項目のアンケートを実施した。
【0103】
BIS-11およびフレイルアンケートの結果を下表に示す。
【表9】
【0104】
BIS-11のスコアにおいては、群間の総合スコア、二次因子のスコアの変化に有意差はなかった。
フレイルスコアにおいては、群間のスコア(フレイル項目の該当数)に有意差はなかった。
【0105】
[5.BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)]
BDHQは個人ごとの栄養素摂取量、食品摂取量を推計するために設計された質問票であり、80の質問から構成され、58種類の食品と100種類以上の栄養素の推定摂取量が算出される。
BDHQによるクラスター分析結果を
図2、表10に示す。
【0106】
【0107】
介入前段階の摂取食品群に基づいて、k-means法によるクラスター分析を行った結果、肉・魚介類の摂取量が多いグループ1と穀物類の摂取量が多いグループ2に分かれた。
【0108】
本実施例では、記憶力が落ち始めている可能性がある高齢者に対するLactiplantibacillus plantarum OLL2712株の認知機能改善効果が示された。
OLL2712株はIL-10産出誘導能が高い乳酸菌であり、IL-10は抗炎症、細胞生存を促進することから、中枢神経系において神経保護的な役割を果たし(非特許文献10)、アルツハイマー病においても、モデルマウスの脳におけるIL-10発現は、神経新生と認知機能を高めることが報告されている(非特許文献11)。
また、アクティブ群の腸内細菌叢ではLachnoclostridiumとOscillibacterとMonoglobusの存在比が有意に低かったが、これらの2菌属は発がん誘導による炎症の亢進に伴い存在比が上がり、プロバイオティクスの投与による炎症抑制により存在比が下がることが知られている(非特許文献4)。また、Oscillibacterはヒトの腸内細菌叢において、日和見病原体としてはたらくことが知られている(非特許文献12)。
これらのことから、乳酸菌の投与により、腸内環境が改善され、腸内の炎症が抑えられた結果、脳の神経炎症抑制に繋がり、認知機能改善の効果が得られたと考えられる。
【0109】
本実施例の12週間の乳酸菌摂取後の認知機能検査の結果、総合記憶力と視覚記憶力に対して有意な改善効果が得られることが確認され、認知機能の中でも特に記憶機能に対して、有益な影響を与える可能性が示唆された。
MCIに対する有効な治療薬が確立されていない現状において、この結果はLactiplantibacillus plantarum OLL2712の継続的な摂取が日本人高齢者の記憶機能改善に対する一つの有効なアプローチであることを示唆している。
【0110】
(実施例で引用した文献)
非特許文献5:Seo, E.H.; Kim, H.; Choi, K.Y.; Lee, K.H.; Choo, I.H. Pre-Mild Cognitive Impairment: Can Visual Memory Predict Who Rapidly Convert to Mild Cognitive Impairment? Psychiatry Investig. 2018, 15, 869-875.
非特許文献6:Ooi, L.G.; Liong, M.T. Cholesterol-lowering effects of probiotics and prebiotics: a review of in vivo and in vitro findings. Int J Mol Sci. 2010, 11, 2499-2522.
非特許文献7:Takayuki Toshimitsu, Ayako Gotou, Toshihiro Sashihara, Keisuke Furuichi, Satoshi Hachimura, Nobuhiko Shioya, Satoru Suzuki, Yukio Asami Ingesting Yogurt Containing Lactobacillus plantarum OLL2712 Reduces Abdominal Fat Accumulation and Chronic Inflammation in Overweight Adults in a Randomized Placebo-Controlled Trial. Curr Dev Nutr 2021 Feb 3;5(2):nzab006.
非特許文献8:Anstey, K.J.; Ashby-Mitchell, K.; Peters, R. Updating the Evidence on the Association between Serum Cholesterol and Risk of Late-Life Dementia: Review and Meta-Analysis. J Alzheimers Dis. 2017, 56, 215-228.
非特許文献9:Berger, S.; Raman, G.; Vishwanathan, R.; Jacques, P.F.; Johnson, E.J. Dietary cholesterol and cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2015, 102, 276-294.
非特許文献10:Su, F.; Bai, F.; Zhang, Z. Inflammatory Cytokines and Alzheimer's Disease: A Review from the Perspective of Genetic Polymorphisms. Neurosci Bull. 2016, 32, 469-480.
非特許文献11:Kiyota, T.; Ingraham, K.L.; Swan, R.J.; Jacobsen, M.T.; Andrews, S.J.; Ikezu, T. AAV serotype 2/1-mediated gene delivery of anti-inflammatory interleukin-10 enhances neurogenesis and cognitive function in APP+PS1 mice. Gene Ther. 2012, 19, 724-733.
非特許文献12:Sydenham, T.V.; Arpi, M.; Klein, K.; Justesen, U.S. Four cases of bacteremia caused by Oscillibacter ruminantium, a newly described species. J Clin Microbiol. 2014, 52, 1304-1307.