(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024034735
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】食品検出装置および食品検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/032 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G01N29/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139196
(22)【出願日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 治幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智幸
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】村井 祐一
(72)【発明者】
【氏名】田坂 裕司
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047AA12
2G047AD16
2G047BA03
2G047BC03
2G047BC05
2G047GG17
2G047GG28
(57)【要約】
【課題】液体中の固体食品を検出することができる食品検出装置および食品検出方法を提供する。
【解決手段】食品検出装置1は、固体食品SFが混在する液体中に超音波を送信し、超音波の反射波を受信する超音波送受信手段20と、超音波送受信手段20で受信された反射波に基づいて、超音波のエコー強度分布を算出するエコー強度分布算出手段31と、エコー強度分布算出手段31で算出されたエコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ手段32と、フィルタ手段32でフィルタ処理が施されたエコー強度分布に基づいて、液体中の固体食品SFを検出する検出手段33とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段で受信された前記反射波に基づいて、前記超音波のエコー強度分布を算出するエコー強度分布算出手段と、
前記エコー強度分布算出手段で算出された前記エコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ手段と、
前記フィルタ手段で前記フィルタ処理が施された前記エコー強度分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出手段とを備えていることを特徴とする食品検出装置。
【請求項2】
前記ゾーベルフィルタ、前記ストライプフィルタ、および前記時間差分フィルタの中から、前記フィルタ手段で施すフィルタを選択するフィルタ選択手段を備え
前記フィルタ手段は、前記フィルタ選択手段による選択に応じて、前記エコー強度分布に前記ゾーベルフィルタ、前記ストライプフィルタ、および前記時間差分フィルタを選択的に施すことを特徴とする請求項1に記載の食品検出装置。
【請求項3】
前記フィルタ選択手段は、前記液体中に堆積している前記固体食品の検出が要求された場合、前記ストライプフィルタを選択することを特徴とする請求項2に記載の食品検出装置。
【請求項4】
前記フィルタ選択手段は、前記液体中に自由分散している前記固体食品の検出が要求された場合、前記時間差分フィルタを選択することを特徴とする請求項2に記載の食品検出装置。
【請求項5】
固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段で受信された前記反射波に基づいて、前記液体のドップラー流速分布を算出するドップラー流速分布算出手段と、
前記ドップラー流速分布算出手段で算出された前記ドップラー流速分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ手段と、
前記フィルタ手段で前記フィルタ処理が施された前記ドップラー流速分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出手段とを備えていることを特徴とする食品検出装置。
【請求項6】
前記液体は、配管内に収容され、
前記超音波送受信手段は、前記配管において縮径した縮径部に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の食品検出装置。
【請求項7】
固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信工程と、
前記超音波送受信工程で受信された前記反射波に基づいて、前記超音波のエコー強度分布を算出するエコー強度分布算出工程と、
前記エコー強度分布算出工程で算出された前記エコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ工程と、
前記フィルタ工程で前記フィルタ処理が施された前記エコー強度分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出工程とを実施することを特徴とする食品検出方法。
【請求項8】
固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信工程と、
前記超音波送受信工程で受信された前記反射波に基づいて、前記液体のドップラー流速分布を算出するドップラー流速分布算出工程と、
前記ドップラー流速分布算出工程で算出された前記ドップラー流速分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ工程と、
前記フィルタ工程で前記フィルタ処理が施された前記ドップラー流速分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出工程とを実施することを特徴とする食品検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品検出装置および食品検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流量計のように、流体中の粒子を検出する検出装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-097742号公報
【特許文献2】国際公開第2009/063896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたような従来の検出装置において、液体中の固体食品を検出する食品検出装置は存在しなかった。
【0005】
本発明の目的は、液体中の固体食品を検出することができる食品検出装置および食品検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の食品検出装置は、固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段で受信された前記反射波に基づいて、前記超音波のエコー強度分布を算出するエコー強度分布算出手段と、前記エコー強度分布算出手段で算出された前記エコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ手段と、前記フィルタ手段で前記フィルタ処理が施された前記エコー強度分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出手段とを備えている。
【0007】
本発明によれば、液体中に送信した超音波のエコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施すため、固体食品が混在する液体に適したフィルタ処理をエコー強度分布に施すことができ、液体中の固体食品を検出することができる。
【0008】
本発明の食品検出装置は、前記ゾーベルフィルタ、前記ストライプフィルタ、および前記時間差分フィルタの中から、前記フィルタ手段で施すフィルタを選択するフィルタ選択手段を備え、前記フィルタ手段は、前記フィルタ選択手段による選択に応じて、前記エコー強度分布に前記ゾーベルフィルタ、前記ストライプフィルタ、および前記時間差分フィルタを選択的に施してもよい。
【0009】
本発明によれば、エコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、および時間差分フィルタを選択的に施すため、状況に応じた柔軟なフィルタ処理を行うことができる。
【0010】
本発明の食品検出装置において、前記フィルタ選択手段は、前記液体中に堆積している前記固体食品の検出が要求された場合、前記ストライプフィルタを選択することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、液体中に堆積している固体食品の検出が要求された場合、ストライプフィルタが選択されるため、液体中の固体食品の状況に適したフィルタ処理をエコー強度分布に施すことができ、液体中の固体食品をより正確に検出することができる。
【0012】
本発明の食品検出装置において、前記フィルタ選択手段は、前記液体中に自由分散している前記固体食品の検出が要求された場合、前記時間差分フィルタを選択することが好ましい。
【0013】
本発明によれば、液体中に自由分散している固体食品の検出が要求された場合、時間差分フィルタが選択されるため、液体中の固体食品の状況に適したフィルタ処理をエコー強度分布に施すことができ、液体中の固体食品をより正確に検出することができる。
【0014】
本発明の食品検出装置は、固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段で受信された前記反射波に基づいて、前記液体のドップラー流速分布を算出するドップラー流速分布算出手段と、前記ドップラー流速分布算出手段で算出された前記ドップラー流速分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ手段と、前記フィルタ手段で前記フィルタ処理が施された前記ドップラー流速分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出手段とを備えている。
【0015】
本発明によれば、液体のドップラー流速分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すため、固体食品が混在する液体に適したフィルタ処理をドップラー流速分布に施すことができ、液体中の固体食品を検出することができる。
【0016】
本発明の食品検出装置において、前記液体は、配管内に収容され、前記超音波送受信手段は、前記配管において縮径した縮径部に設置されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、超音波送受信手段が配管の縮径部に設置されているため、配管内の液体による超音波の減衰を抑制することができる。
【0018】
本発明の食品検出方法は、固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信工程と、前記超音波送受信工程で受信された前記反射波に基づいて、前記超音波のエコー強度分布を算出するエコー強度分布算出工程と、前記エコー強度分布算出工程で算出された前記エコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ工程と、前記フィルタ工程で前記フィルタ処理が施された前記エコー強度分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出工程とを実施する。
【0019】
本発明の食品検出方法は、固体食品が混在する液体中に超音波を送信し、前記超音波の反射波を受信する超音波送受信工程と、前記超音波送受信工程で受信された前記反射波に基づいて、前記液体のドップラー流速分布を算出するドップラー流速分布算出工程と、前記ドップラー流速分布算出工程で算出された前記ドップラー流速分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すフィルタ工程と、前記フィルタ工程で前記フィルタ処理が施された前記ドップラー流速分布に基づいて、前記液体中の前記固体食品を検出する検出工程とを実施する。
【0020】
本発明によれば、上述した食品検出装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】第1実施形態に係る検出方法のフローチャート。
【
図4】ゾーベルフィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図5】第2実施形態に係る検出方法のフローチャート。
【
図6】ストライプフィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図7】ストライプフィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図8】ストライプフィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図9】ストライプフィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図10】第3実施形態に係る検出方法のフローチャート。
【
図11】時間差分フィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図12】時間差分フィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図13】時間差分フィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図14】時間差分フィルタ前後のエコー強度分布を示す図。
【
図16】第4実施形態に係る検出方法のフローチャート。
【
図18】ゾーベルフィルタ前後のドップラー流速分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の記載において方向を表す場合、食品検出装置1を
図1に示すように配置した状態を基準とする。
また、第2実施形態以降において、第1実施形態と同じ構成および同様な機能を有する構成については、説明を省略または簡略化する。
【0023】
[第1実施形態]
図1において、食品検出装置1は、配管P内を流れる液体中に混在する固体食品SFを検出する。食品検出装置1は、記憶手段10と、超音波送受信手段20と、処理手段30と、操作手段40と、出力手段50とを備えている。
【0024】
記憶手段10は、メモリやハードディスク等により構成され、食品検出装置1を制御する各種プログラムを記憶している。
【0025】
超音波送受信手段20は、任意の周波数の超音波を発生させる振動素子を有する超音波トランスデューサ21と、超音波トランスデューサ21を配管Pの周囲に保持するホルダ22と、残響超音波を吸収するゴムや樹脂等で形成された超音波吸収部材23と、超音波トランスデューサ21および処理手段30間で信号の送受信を行うケーブル24とを備えている。
【0026】
超音波トランスデューサ21は、振動素子で発生させた超音波を送信する送信部と、当該超音波の反射波(超音波エコーまたは単にエコーともいう)を受信する受信部とを備えている。本実施形態の場合、超音波トランスデューサ21は、
図1に示すように、配管Pの底部に設置されている。
【0027】
ホルダ22は、複数の超音波トランスデューサ21を配管P内の液体の流れ方向に対して共通の角度で傾斜させ、かつ配管Pの中心軸上の共通する一点に向けて保持するように構成されている。
【0028】
処理手段30は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置や、パーソナルコンピュータやサーバ等のコンピュータにより構成されている。処理手段30は、エコー強度分布算出手段31と、フィルタ手段32と、検出手段33とを備えている。
【0029】
エコー強度分布算出手段31は、超音波送受信手段20で受信された反射波に基づいて、超音波のエコー強度分布を算出する。エコー強度分布とは、超音波を送信した際に、媒体で反射して戻ってくる反射波の振幅の時間波形情報である。
【0030】
フィルタ手段32は、エコー強度分布算出手段31で算出されたエコー強度分布にフィルタ処理を施す。本実施形態の場合、フィルタ手段32は、エコー強度分布にゾーベルフィルタ(ソーベルフィルタともいう)によるフィルタ処理を施す。ゾーベルフィルタは、スパイク状の細かな音響ノイズの検知に使われる時空間2次元のフィルタであり、行列要素を計数とした3×3の微積分操作で定義される。ゾーベルフィルタは、時間方向(
図3の横方向)に拡散操作を、空間方向(
図3の縦方向)に中心差分操作を施すもので、時間方向の最短波長ノイズを低減しつつ、空間方向の変動を検知する。
【0031】
検出手段33は、フィルタ手段32でフィルタ処理が施されたエコー強度分布に基づいて、液体中の固体食品SFを検出する。
【0032】
操作手段40は、キーボード、操作パネル、タッチパネル、マウス、各種スイッチ、音声入力操作用のマイク等により構成され、各種操作による操作信号を食品検出装置1に入力可能とされている。
【0033】
出力手段50は、ディスプレイやパネル等の表示装置や、表示灯やスピーカー等の報知装置等により構成され、食品検出装置1による検出結果を画面に出力したり、点灯や音等で出力したりするようになっている。
【0034】
以上の食品検出装置1の場合を例として、
図2に示す以下の手順で実施される食品検出方法について、
図3、4を参照しつつ説明する。
先ず、食品検出装置1に対し、当該食品検出装置1の使用者(以下、単に「使用者」という)が、操作手段40を介して検知開始の信号を入力する。すると、超音波トランスデューサ21は、配管P内の液体中に超音波を送信し、当該超音波の反射波を受信する(ステップST11)。なお、受信した反射波のデータは、記憶手段10に記憶される。
【0035】
次いで、エコー強度分布算出手段31は、超音波トランスデューサ21で受信された反射波に基づいて、エコー強度分布を算出する(ステップST12)。エコー強度分布の一例を
図3に示す。
図3に示すエコー強度分布は、固体食品SFとしてのタピオカ粒子が体積率8%で混在する流体としてのヨーグルトを、内径24mmの配管内に流速0.12m/s、400L/hの流量で流した際のものである。また、
図3における色の濃淡は、エコー強度の強弱を示す。
【0036】
次に、フィルタ手段32は、エコー強度分布算出手段31で算出されたエコー強度分布に、ゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施す(ステップST13)。
図4中左側の図は、
図3と同じ条件下でのフィルタ処理前のエコー強度分布であり、このエコー強度分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施したものが、
図4中央の図である。
【0037】
その後、検出手段33は、フィルタ処理が施されたエコー強度分布に基づいて、液体中の固体食品SFを検出する(ステップST14)。本実施形態の場合、検出手段33は、フィルタ処理が施されたエコー強度分布に二値化処理を施し、その結果を基に固体食品SFを検出する。二値化の閾値は、例えば、最大相互分散法(判別分析法、大津の二値化法ともいう)、モード法、Pタイル法、動的閾値設定法、微分ヒストグラム法、ラプラシアンヒストグラム法、移動平均法、部分画像分割法等によって設定することができる。
【0038】
図4中右側の図は、同図中央に示すフィルタ処理後のエコー強度分布に二値化処理を施した図であり、この図に示す黒点がタピオカ粒子である。即ち、ヨーグルト中のタピオカ粒子が検出されている。なお、本実施形態をヨーグルトに適用する場合、配管Pの内径を8~25mm、ヨーグルトの流速を0.02~3.0m/sとすることが好ましい。
【0039】
以上のような実施形態によれば、液体中に送信した超音波のエコー強度分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すため、固体食品SFが混在する液体に適したフィルタ処理をエコー強度分布に施すことができ、液体中の固体食品SFを検出することができる。
【0040】
[第2実施形態]
本実施形態の食品検出装置1は、フィルタ手段32がゾーベルフィルタに代えて、ストライプフィルタによるフィルタ処理を施す点が、第1実施形態と相違する。
【0041】
ストライプフィルタは、時空間2次元のスカラー分布において、空間方向に値が周期的に変化する部分を抽出するフィルタであり、局所的に縞模様を形成する部分を抽出する。この縞模様は、超音波がその波長よりも大きな対象物の表面にあたり、かつ対象物と平面との間に液膜がある場合に、超音波パルスが対象物に多重反射することによって生じるものであり、液体中に堆積した固体食品SFが配管Pの底部を滑りながら移動する様子に近い。このため、ストライプフィルタを施すことにより、液体中に堆積している固体食品SFを精度良く検出できるようになる。
【0042】
以上の食品検出装置1の場合を例として、
図5に示す以下の手順で実施される食品検出方法について、
図6~9を参照しつつ説明する。なお、ステップST21、ST22、ST24は、ステップST11、ST12、ST14と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0043】
ステップST22の後、フィルタ手段32は、エコー強度分布算出手段31で算出されたエコー強度分布に、ストライプフィルタによるフィルタ処理を施す(ステップST23)。一例として、ストライプフィルタによるフィルタ処理前のエコー強度分布を
図6~9中の(A)に示し、フィルタ処理後のエコー強度分布を
図6~9中の(B)に示す。なお、
図6~9に示すエコー強度分布は、タピオカ粒子が混在するヨーグルトを内径48mmの配管中に流速0.057m/s、400L/hの流量で流した際のものである。また、ヨーグルトに対するタピオカ粒子の体積率は、
図6から
図9の順に1%、4%、6%、8%である。
【0044】
図6~9中の(B)には、タピオカ粒子を示す白抜けした部分が存在しており、ヨーグルト中のタピオカ粒子が検出されている。また、配管Pの底部を滑りながら移動するタピオカ粒子が、良く検出されている。なお、本実施形態をヨーグルトに適用する場合、配管Pの内径を8~80mm、ヨーグルトの流速を0.002~3.0m/sとすることが好ましい。
【0045】
以上のような実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、エコー強度分布にストライプフィルタを施すため、液体中に堆積している固体食品SFを精度良く検出することができる。
【0046】
[第3実施形態]
本実施形態の食品検出装置1は、フィルタ手段32がゾーベルフィルタに代えて、時間差分フィルタ(時間微分フィルタともいう)によるフィルタ処理を施す点が、第1実施形態と相違する。
【0047】
時間差分フィルタは、液体中を移動する固体粒子のパルス錯乱が時間変動する性質を利用するものであり、固体粒子が移動している限り大きな値として強調される処理を行う。この状況は、液体中に固体食品SFが自由分散して移動する様子に近いため、時間差分フィルタを施すことにより、液体中に自由分散している固体食品SFを精度良く検出できるようになる。
【0048】
以上の食品検出装置1の場合を例として、
図10に示す以下の手順で実施される食品検出方法について、
図11~14を参照しつつ説明する。なお、ステップST31、ST32、ST34は、ステップST11、ST12、ST14と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0049】
ステップST32の後、フィルタ手段32は、エコー強度分布算出手段31で算出されたエコー強度分布に時間差分フィルタによるフィルタ処理を施す(ステップST33)。一例として、時間差分フィルタによるフィルタ処理前のエコー強度分布を
図11~14中の(A)に示し、フィルタ処理後のエコー強度分布を
図11~14中の(B)に示す。なお、
図11~14に示すエコー強度分布は、タピオカ粒子が混在するヨーグルトを内径48mmの配管中に流速0.057m/s、400L/hの流量で流した際のものである。また、ヨーグルトに対するタピオカ粒子の体積率は、
図6から
図9の順に1%、4%、6%、8%である。
【0050】
図11~14中の(B)には、タピオカ粒子を示す白抜けした部分が存在しており、ヨーグルト中のタピオカ粒子が検出されている。また、ヨーグルト中に自由分散して移動するタピオカ粒が、良く検出されている。なお、本実施形態をヨーグルトに適用する場合、配管Pの内径を8~80mm、ヨーグルトの流速を0.002~3.0m/sとすることが好ましい。
【0051】
以上のような実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、エコー強度分布に時間差分フィルタを施すため、液体中に自由分散している固体食品SFを精度良く検出することができる。
【0052】
[第4実施形態]
本実施形態の食品検出装置1は、
図15に示すように、処理手段30がエコー強度分布算出手段31に代えて、ドップラー流速分布算出手段34を備えている点が、第1実施形態と相違する。
【0053】
ドップラー流速分布算出手段34は、超音波送受信手段20で受信された反射波に基づいて、ドップラー流速分布を算出する。ドップラー流速分布とは、超音波を送信した際に、媒体が流れていることによって、当該媒体で反射して戻ってくる反射波にドップラーシフト周波数が発生し、当該ドップラーシフト周波数に音速を乗じて流速とした場合の当該流速の時間波形情報である。ドップラー流速分布算出手段34は、超音波およびその反射波から得られたドップラー周波数から、超音波の送信方向における複数位置の流速を算出し、当該複数位置において時間方向に対して略連続する時空間流速分布を算出する。
【0054】
以上の食品検出装置1の場合を例として、
図16に示す以下の手順で実施される食品検出方法について、
図17、18を参照しつつ説明する。なお、ステップST41は、ステップST11と同じ処理であるため、説明を省略する。
【0055】
ステップST41の後、ドップラー流速分布算出手段34は、超音波トランスデューサ21で受信された反射波に基づいて、液体のドップラー流速分布を算出する(ステップST42)。ドップラー流速分布の一例を
図17に示す。
図17に示すドップラー流速分布は、タピオカ粒子が体積率8%で混在するヨーグルトを、内径24mmの配管中に流速0.12m/s、400L/hの流量で流した際のものである。また、
図17における色の濃淡は、ドップラー流速分布における速度の差を示す。
【0056】
次に、フィルタ手段32は、ドップラー流速分布算出手段34で算出されたドップラー流速分布に、ゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施す(ステップST43)。
図18中左側の図は、
図17と同じ条件下でのフィルタ処理前のドップラー流速分布であり、このドップラー流速分布にフィルタ処理を施したものが、
図18中央の図である。
【0057】
その後、検出手段33は、フィルタ処理が施されたドップラー流速分布に基づいて、液体中の固体食品SFを検出する(ステップST44)。本実施形態の場合、検出手段33は、フィルタ処理が施されたドップラー流速分布に二値化処理を施し、その結果を基に固体食品SFを検出する。
図18中右側の図は、同図中央に示すフィルタ処理後のドップラー流速分布に二値化処理を施した図であり、この図に示す黒点がタピオカ粒子である。即ち、ヨーグルト中のタピオカ粒子が検出されている。なお、本実施形態をヨーグルトに適用する場合、配管Pの内径を8~25mm、ヨーグルトの流速を0.02~3.0m/sとすることが好ましい。
【0058】
以上のような実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0059】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0060】
例えば、食品検出装置1は、配管P内を流れていない液体中に混在する固体食品SFを検出してもよいし、容器やタンク等に収容されている液体中に混在する固体食品SFを検出してもよい。
【0061】
記憶手段10は、処理手段30や食品検出装置1に内蔵または一体化されていてもよいし、処理手段30や食品検出装置1に外付けするタイプであってもよい。
【0062】
超音波送受信手段20は、配管Pにおいて他の部分よりも縮径した縮径部に設置されてもよい。
【0063】
超音波トランスデューサ21の形状、構造、配置、設置数等は特に限定されない。たとえば、超音波トランスデューサ21は、送信部と受信部とが一体になったものでもよいし、送信部と受信部とが別体になったものでもよいし、配管Pの上部または側部に設置されてもよいし、
図1中二点鎖線で示すように、配管Pの周囲に複数設置されてもよい。
【0064】
ホルダ22は、超音波トランスデューサ21を管の周囲に固定できるものであれば、形状、材質等は特に限定されない。
【0065】
超音波吸収部材23は、残響超音波を吸収可能なものであれば、形状、材質、配置、設置数等は特に限定されず、例えば、環状または管状のものでもよいし、シート状のものでもよいし、ジェル状のものでもよい。
【0066】
処理手段30は、
図19に示すように、ゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、および時間差分フィルタの中から、フィルタ手段32で施すフィルタを選択するフィルタ選択手段35を備え、フィルタ選択手段35による選択に応じて、フィルタ手段32でエコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、および時間差分フィルタを選択的に施すようにしてもよい。例えば、処理手段30は、液体や固体食品SFの種類や特性、液体の粘度や流量、固体食品SFの体積率、配管Pの径、配管P内の被検出領域等の環境因子を操作手段40から入力させ、フィルタ選択手段35が環境因子に適するフィルタをゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、および時間差分フィルタの中から選択するようにしてもよい。また、ゾーベルフィルタを施す第1モード、ストライプフィルタを施す第2モード、時間差分フィルタを施す第3モードを予め設定しておき、フィルタ選択手段35が、操作手段40の操作によって要求されたモードに対応するフィルタを選択するようにしてもよい。また、液体中に堆積している固体食品SFの検出を要求する第1モード、液体中に自由分散している固体食品SFの検出を要求する第2モード、液体中に堆積している固体食品SFおよび自由分散している固体食品SF両方の検出を要求する第3モードを予め設定しておき、操作手段40の操作によって第1モードが要求された場合はストライプフィルタを、第2モードが要求された場合は時間差分フィルタを、第3モードが要求された場合はストライプフィルタおよび時間差分フィルタの両方をフィルタ選択手段35が選択するようにしてもよい。フィルタ選択手段35でストライプフィルタおよび時間差分フィルタの両方が選択された場合、フィルタ手段32は、これらのフィルタを個別にエコー強度分布に施し、検出手段33は、ストライプフィルタが施されたエコー強度分布に基づいて、液体中に堆積している固体食品SFを検出するとともに、時間差分フィルタが施されたエコー強度分布に基づいて、液体中に自由分散している固体食品SFを検出してもよい。
【0067】
処理手段30は、エコー強度分布算出手段31およびドップラー流速分布算出手段34を備え、操作手段40の操作による要求に応じて、エコー強度分布算出手段31でエコー強度分布を算出するのか、ドップラー流速分布算出手段34でドップラー流速分布を算出するのかを選択するようにしてもよい。この際、処理手段30は、エコー強度分布を算出することを選択した場合は、フィルタ手段32でエコー強度分布にゾーベルフィルタ、ストライプフィルタ、または時間差分フィルタによるフィルタ処理を施し、ドップラー流速分布を算出することを選択した場合は、フィルタ手段32でドップラー流速分布にゾーベルフィルタによるフィルタ処理を施すようにしてもよい。
【0068】
検出手段33は、フィルタ処理が施されたエコー強度分布や、フィルタ処理が施されたドップラー流速分布に二値化処理を施さないで、液体中の固体食品SFを検出してもよい。この場合、例えば、フィルタ処理が施されたエコー強度分布またはドップラー流速分布と、実際の粒子の分布との間の実験的な較正式(キャリブレーション)を予め用意し、検出手段33で当該較正式を用いて液体中の固体食品SFを検出してもよい。
検出手段33は、固体食品SFの実際の分布α(x)に対して、分布β(x)の固体食品SFを検出した場合、下記数式1を数値的に解くことで、分布α(x)の固体食品SFを検出するようにしてもよい。
【0069】
【0070】
操作手段40は、食品検出装置1から分離可能に構成されていてもよいし、分離不能に構成されていてもよい。
【0071】
固体食品SFが混在する液体は、流動性を有するものであれば、種別、組成等は限定されず、例えば、牛乳、乳飲料、ジュース、お茶、水、アルコール飲料等の飲料、溶融状態のチーズ、マーガリン、バター、チョコレート等の溶融食品、ヨーグルト、ムース、ゼリー、クリーム等のゲル化食品、ジャム、マーマレード、フルーツソース等のゲル化しない食品でもよいし、アルコールや油等の食品以外の液体でもよい。
固体食品SFは、実施形態で示した以外の食品であってもよく、例えば、ナッツ、アーモンド、チョコレート、グミ、フルーツ、果肉、寒天、白玉等の固形食品、粒コショー、砂糖、塩等の粒状食品でもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…食品検出装置、20…超音波送受信手段、31…エコー強度分布算出手段、32…フィルタ手段、33…検出手段、34…ドップラー流速分布算出手段、35…フィルタ選択手段、P…配管、SF…固体食品。