(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024037479
(43)【公開日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光ケーブル及びこれを用いた形状センシング方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01B11/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142372
(22)【出願日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】村山 英晶
(72)【発明者】
【氏名】小林 真輝人
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065BB08
2F065BB12
2F065DD04
2F065DD11
2F065FF41
2F065JJ01
2F065LL02
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】本開示は、光ファイバのねじれに留意することなく形状センシングを可能にすることを目的とする。
【解決手段】本開示の形状センシング方法は、本開示の光ケーブルを用いた形状センシング方法であって、本開示の光ケーブルは、曲げ変形可能なパイプで前記光ケーブルの側面が覆われており、光センシング部が、前記光ケーブルに含まれる各コアでの光散乱特性を取得し、演算処理部が、前記光散乱特性を用いて前記光ケーブルの形状を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上の光ファイバを含む光ケーブルであって、
曲げ変形可能なパイプで前記光ケーブルの側面が覆われている、
光ケーブル。
【請求項2】
前記パイプ内が、液体又はゲルで満たされている、
請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバは、複数のコアを有するマルチコアファイバを含む、
請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の光ケーブルと、
前記光ケーブルに含まれる各光ファイバでの光散乱特性を取得する光センシング部と、
前記光散乱特性を用いて前記光ケーブルの形状を算出する演算処理部と、
を備える形状センシングシステム。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の光ケーブルを用いた形状センシング方法であって、
光センシング部が、前記光ケーブルに含まれる各光ファイバでの光散乱特性を取得し、
演算処理部が、前記光散乱特性を用いて前記光ケーブルの形状を算出する、
形状センシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバを用いた形状センシング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの形状を測定する形状センシング技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献1の形状センシングでは、複数のコアを有するマルチコア光ファイバ(以下、MCFと称する場合がある。)を用い、各コアの長手方向の歪み分布を測定し、同一地点における各コアの歪みから得られる断面内での歪み分布に基づいて、光ファイバのκ(曲率)とτ(捩率)を算出する。このような光ファイバを用いた形状センシングでは、光ファイバにねじれが発生すると、光ファイバの曲げ方向の推定が困難になる。このため、非特許文献1では、光ファイバがねじれないように留意する必要がある。
【0003】
コアを螺旋配置したMCFを用いることで、ねじりによって発生するせん断ひずみに対する感度を持たせることができるため、ねじれを補正することができる。しかし、螺旋状コア配置のMCFは一般的でなく、非常に製造が難しく、またコストも高い問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Shape sensing using multi-core fiber optic cable and parametric curve solution”, Optics Express, Vol.20, No.3, pp.2967-2973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、光ファイバのねじれに留意することなく形状センシングを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光ケーブルは、1本以上の光ファイバを含む光ケーブルであって、曲げ変形可能なパイプで前記光ケーブルの側面が覆われている。
【0007】
本開示の形状センシングシステムは、本開示の光ケーブルと、光センシング部と、演算処理部と、を備え、本開示の形状センシング方法を実行する。本開示の形状センシング方法は、光センシング部が、前記光ケーブルに含まれる各光ファイバでの光散乱特性を取得し、演算処理部が、前記光散乱特性を用いて前記光ケーブルの形状を算出する。
【0008】
前記パイプ内が、液体又はゲルで満たされていてもよい。また前記光ファイバは、複数のコアを有するマルチコアファイバを含んでいてもよい。
【0009】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の光ケーブルは光ファイバが捩れない構造を備える。このため、本開示によれば、光ファイバのねじれに留意することなく形状センシングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の形状センシングシステム構成例を示す。
【
図3】構造物に設置された光ケーブルの状態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0013】
図1に、本開示のシステム構成例を示す。本開示の形状センシングシステムは、光ケーブル91と、光ケーブル91に含まれる各光ファイバにおける光散乱特性を取得する光センシング部92と、光ケーブル91での光散乱特性を用いて光ケーブル91の形状を算出する演算処理部93と、を備える。
【0014】
本開示は、光ケーブル91の側面がパイプ81で覆われている。このように、本開示は、曲げ変形可能なパイプ81内に光ケーブル91を配置し、光ケーブル91をパイプ81内で自由に回転可能にする。これにより、本開示は、光ケーブル91の捩れを防ぐ。
【0015】
光ケーブル91は、1本以上の光ファイバを含む光ケーブルである。光ファイバは、形状センシングの可能な任意の光ファイバであり、1つのコアを有するシングルコアファイバであってもよいし、複数本のコアを有するMCFであってもよい。
【0016】
パイプ81は、中空部分に1本以上の光ケーブル91が配置可能であり、かつ中空部分を保ちつつ曲げ変形可能な任意の筒状体である。曲げ変形可能にするための構成は任意であり、例えば、パイプ81の一部の素材を柔軟なものにするほか、蛇腹状にするなどが例示できる。
【0017】
パイプ81内が液体82で満たされていてもよい。液体82はゲルでもよい。これにより、パイプ81内の空間が狭くなるのを防ぎ、パイプ81の内壁と光ケーブル91との摩擦を低減し、光ケーブル91のねじれをさらに機械的に抑制することができる。なお、パイプ81の端部から液体82が流出するのを防ぐ構成は任意である。また、パイプ81の内壁面に光ケーブル91との摩擦を低減するための液状又はゲル状等の摩擦防止層が形成されていてもよい。
【0018】
図2に、本開示に係る形状センシング方法の一例を示す。本開示の形状センシング方法は、光ケーブル91の挿入されているパイプ81を構造物90に配線し(S12)、光ケーブル91の形状を算出する(S13)。
【0019】
本開示の光ケーブルは、構造物90への取り付け時など、光ケーブル91が出荷された後に、光ケーブル91をパイプ81に挿入することで構成可能であってもよい。この場合、ステップS12の前に、光ケーブル91をパイプ81に挿入するステップを有する(S11)。
【0020】
ステップS13では、
図3に示すように、構造物90の形状に沿ってパイプ81を取り付けた状態で、光センシング部92が光ケーブル91に含まれる各光ファイバに光を入射し、光ファイバにおける散乱光を受光することで、光ケーブル91の長さ方向における各位置での光散乱特性を取得する。演算処理部93は、光センシング部92で得られた光散乱特性を用いて、光ケーブル91の形状センシングを行う。なお、図ではパイプ81内の光ケーブル91は省略している。
【0021】
光センシング部92は、光ファイバの歪を測定可能な任意の装置である。例えば、
図1に示すように、光ケーブル91の片側に接続され、各コアで反射又は散乱された光を受光する、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectmeter)又はOFDR(Optical Frequency Domain Reflectometer)が例示できる。また、光ケーブル91の両方に接続され、各コアを通過した連続光を受光する、BOTDA(Brillouin Optical Time Domain Analysis)であってもよい。
【0022】
光ケーブル91の形状の測定方法は任意であるが、例えば、非特許文献1で開示されているような、マルチコアファイバに含まれる各コアの長手方向の歪み分布を測定し、同一地点における各コアの歪みから得られる断面内での歪み分布に基づいて、光ファイバのκ(曲率)とτ(捩率)を算出する方法が例示できる。複数本のシングルコアファイバを用いても同様の方法で光ケーブル91の形状を測定することができる。
【0023】
具体的には、3次元空間の曲線の軌跡(光ケーブル91の長さ方向の各位置)は、解析的にはフレネ・セレの公式においてκ(曲率:どの方向にどれくらい曲がっているか)とτ(捩率:曲がり方向の基準となる初期座標(地球の天地を基準とした絶対座標)がどれくらい回転しているか)を求められれば定義することができる。
【0024】
求めたい光ケーブル軌跡ベクトルr(s)は次式で表される。
【数1】
T(s):光ケーブル91の弧長sでの位置ベクトル
s:弧長(経路上の距離)
r
0:初期位置
【0025】
ここで、位置ベクトルT(s)は次式で表される。
【数2】
T:単位接ベクトル
N:単位主法線ベクトル
B:単位従法線ベクトル
d/ds:単位弧長当たりの変化量(空間分解能)
【0026】
図4に、光ケーブル91の形状の測定結果の一例を示す。x軸方向は光ケーブル91の長さ方向を示し、y軸方向は光ケーブル91の長さ方向に垂直な方向を示す。光ケーブル91の形状はz方向の3次元方向を含む。このような形状センシングは、構造物90に限らず、形状センシングを行いたい任意の場所に光ケーブル91を取り付けることで行うことができる。
【0027】
本開示では、パイプ81がねじれても光ケーブル91はねじれないため、光ケーブル91を捩じれさせることなく、構造物90の捩れを測定することができる。したがって、本開示の光ケーブルを採用することで、構造物90への光ファイバの配線時において光ファイバがねじれないように留意する必要がなくなる。
【0028】
本開示の演算処理部93はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。本開示のプログラムは、本開示に係る演算処理部93に備わる各機能部としてコンピュータを実現させるためのプログラムであり、本開示に係る演算処理部93が実行する方法に備わる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0029】
81:パイプ
82:液体
90:構造物
91:光ケーブル
92:光センシング部
93:演算処理部