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特開2024-4036航空機制御装置、航空機制御システム、航空機制御方法、及び航空機制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004036
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】航空機制御装置、航空機制御システム、航空機制御方法、及び航空機制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/36 20240101AFI20240109BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240109BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20240109BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240109BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240109BHJP
【FI】
B64F1/36
B64D27/24
B64C27/04
H02J7/00 P
H02J7/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103471
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 豪
(72)【発明者】
【氏名】久田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 浩史
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 達哉
(72)【発明者】
【氏名】成末 義哲
(72)【発明者】
【氏名】小渕 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森川 博之
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CB16
5G503DA04
5G503FA06
5G503GC04
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD05
(57)【要約】
【課題】複数の航空機を効率よく稼働することが可能な航空機制御装置、航空機制御システム、航空機制御方法、及び航空機制御プログラムを提供する。
【解決手段】航空機1と通信する通信部23と、航空機1のバッテリ14に給電する給電装置24と、複数の航空機1の充電電力、及び消費電力を取得する取得部210と、各航空機1ごとに、充電電力と消費電力が一致するように、各航空機1の給電スケジュールを設定するスケジュール設定部213を備える。通信部23は、給電スケジュールを航空機1に送信する。給電スケジュールに基づいて航空機1に給電するように、給電装置24を制御する給電制御部214を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機と通信する通信部と、
前記航空機のバッテリに給電する給電装置と、
複数の航空機の充電電力、及び消費電力を取得する取得部と、
各航空機ごとに、充電電力と消費電力が一致するように、各航空機の給電スケジュールを設定するスケジュール設定部と、
を備え、
前記通信部は、前記給電スケジュールを前記航空機に送信し、
前記給電スケジュールに基づいて前記航空機に給電するように、前記給電装置を制御する給電制御部、
を備えた航空機制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、各航空機の飛行時間、及び前記給電装置による充電時間を取得し、
前記スケジュール設定部は、各航空機の飛行時間と充電時間が一致するように、前記給電スケジュールを設定する
請求項1に記載の航空機制御装置。
【請求項3】
複数の航空機及び前記航空機を制御する制御装置を含む航空機制御システムであって、
前記航空機は、前記制御装置及び他の航空機との間で通信を行う通信機と、
航空機を駆動する電力を蓄積するバッテリと、
を備え、
前記制御装置は、
各航空機と通信する通信部と、
前記航空機のバッテリに給電する給電装置と、
各航空機の充電電力、及び消費電力を取得する取得部と、
各航空機ごとに、の充電電力と消費電力が一致するように、各航空機の給電スケジュールを設定するスケジュール設定部と、
を備え、
前記通信部は、前記給電スケジュールを前記航空機に送信し、
前記給電スケジュールに基づいて前記航空機に給電するように、前記給電装置を制御する給電制御部、
を備えた航空機制御システム。
【請求項4】
各航空機の通信機は、それぞれの通信機どうしでの端末間通信が可能とされており、
一の航空機の通信機は、他の航空機の通信機を中継して、前記制御装置の通信部と通信する
請求項3に記載の航空機制御システム。
【請求項5】
前記端末間通信は、
周波数ホッピング、フレーム制御、及び端末空間密度制御のうちの少なくとも一つの通信方式を用いて伝送データの通信を行い、
前記航空機の数、通信状況、及び通信目的のうちの少なくとも一つに基づいて前記伝送データの通信効率が高まるように前記通信方式による制御を実行する
請求項4に記載の航空機制御システム。
【請求項6】
前記端末間通信は、
送信側の通信機にて、伝送データを構成するデータ列に含まれる情報単位の出現頻度、母集団、分布、周期性、ランダム性のうちの少なくとも一つの特徴量に基づいて、データ列を簡素化して送信し、
受信側の通信機にて、受信したデータ列を前記特徴量に基づいて復元する通信方式とする
請求項4に記載の航空機制御システム。
【請求項7】
航空機との通信により、複数の航空機の充電電力及び消費電力を取得するステップと、
各航空機ごとに、前記充電電力と消費電力が一致するように、各航空機の給電スケジュールを設定するステップと、
前記給電スケジュールを各航空機に送信するステップと、
前記給電スケジュールに基づいて各航空機に給電するように、給電装置を制御するステップと、
を備えた航空機制御方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の航空機制御装置としてコンピュータを機能させる航空機制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機制御装置、航空機制御システム、航空機制御方法、及び航空機制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上における環境をモニタリングするために、大気汚染の状況、人流、CO2濃度、温度、湿度等を定期的に観測することが行われている。また、ドローンなどの航空機を所望の観測地点まで飛行させ、各種のデータを収集することにより、人手による労力を軽減している。
【0003】
航空機を長時間に亘って自律的に稼働させるためには、航空機に搭載されるバッテリに対して自動で給電する仕組みが必要である。非特許文献1には、航空機を非接触給電する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】濱田浩,“ドローン給電のためのWPTシステム”, 電子情報通信学会誌,Vol. 103,No.10,pp.1037-1042,October 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1には、複数の航空機を効率良く稼働させるための給電スケジュールを設定することについて言及されていない。このため、複数の航空機を効率よく目的地まで飛行させて観測データを取得することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の航空機を効率よく稼働することが可能な航空機制御装置、航空機制御システム、航空機制御方法、及び航空機制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の航空機制御装置は、航空機と通信する通信部と、前記航空機のバッテリに給電する給電装置と、複数の航空機の充電電力、及び消費電力を取得する取得部と、各航空機ごとに、充電電力と消費電力が一致するように、各航空機の給電スケジュールを設定するスケジュール設定部と、を備え、前記通信部は、前記給電スケジュールを前記航空機に送信し、前記給電スケジュールに基づいて前記航空機に給電するように、前記給電装置を制御する給電制御部を備える。
【0008】
本発明の一態様の航空機制御システムは、複数の航空機及び前記航空機を制御する制御装置を含む航空機制御システムであって、前記航空機は、前記制御装置及び他の航空機との間で通信を行う通信機と、航空機を駆動する電力を蓄積するバッテリと、を備え、前記制御装置は、各航空機と通信する通信部と、前記航空機のバッテリに給電する給電装置と、各航空機の充電電力、及び消費電力を取得する取得部と、各航空機ごとに、の充電電力と消費電力が一致するように、各航空機の給電スケジュールを設定するスケジュール設定部と、を備え、前記通信部は、前記給電スケジュールを前記航空機に送信し、前記給電スケジュールに基づいて前記航空機に給電するように、前記給電装置を制御する給電制御部、を備える。
【0009】
本発明の一態様の航空機制御方法は、航空機との通信により、複数の航空機の充電電力及び消費電力を取得するステップと、各航空機ごとに、前記充電電力と消費電力が一致するように、各航空機の給電スケジュールを設定するステップと、前記給電スケジュールを各航空機に送信するステップと、前記給電スケジュールに基づいて各航空機に給電するように、給電装置を制御するステップと、を備える。
【0010】
本発明の一態様は、上記航空機制御装置としてコンピュータを機能させるための航空機制御プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の航空機を高効率で給電することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る航空機制御システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、航空機の構成を示すブロック図である。
図3図3は、制御装置(航空機制御装置)の構成を示すブロック図である。
図4図4は、スケジュール設定部にて設定された各航空機の給電スケジューを示す説明図である。
図5図5は、航空機の飛行速度に対する消費電力の変化を示すグラフである。
図6A図6Aは、充電電力Pp、及び消費電力PfとNHとの関係を示すグラフである。
図6B図6Bは、消費電力PfとNHの微分値との関係を示すグラフである。
図6C図6Cは、充電電力PpとNHの微分値との関係を示すグラフである。
図7図7は、第1実施形態に係る航空機制御システムの処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、航空機が給電ポートから離陸してから帰還するまでの様子を示す説明図である。
図9図9は、航空機1-1から送信された送信データを、航空機1-2にて中継して制御装置に送信する例を示す説明図である。
図10図10は、給電スケジュールの変更を示す説明図である。
図11A図11Aは、特徴を利用して信号列を分類する例を示す説明図である。
図11B図11Bは、伝送データを簡素化して送信する例を示す説明図である。
図12図12は、本実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態の説明]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に航空機制御システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る航空機制御システム100は、複数の航空機1-1、1-2、・・、1-Xと、各航空機を制御する制御装置2(航空機制御装置)と、プラットホーム3を備えている。「X」は航空機1の台数を示す。
【0014】
なお、以下では、複数の航空機1-1、1-2、・・、1-Xを特定して示す場合には、「航空機1-1」のようにサフィックスを付して記載し、特定しない場合及び総称して示す場合には、サフィックスを省略して「航空機1」と記載することにする。また、本実施形態では、航空機の一例としてドローンなどの無人で飛行する航空機を例に挙げて説明する。なお、本発明は、無人の航空機に限定されるものではなく、操作者が搭乗して飛行する有人の航空機についても採用することができる。
【0015】
プラットホーム3は、例えば海洋に浮かべられており、各航空機1が待機するスペースを有する。プラットホーム3は、航空機1に対して非接触で電力を給電する給電ポート4を備えている。給電ポート4は、例えば太陽光発電により発電した電力を一旦蓄積し、各航空機1のバッテリ14に給電する。また、太陽光発電は各バッテリ14が消費する電力よりも十分大きな電力を発電できることを前提としている。
【0016】
航空機1は、プラットホーム3を拠点として待機し、制御装置2の制御下で、プラットホーム3から離陸して目的地まで飛行する。目的地は、例えば気象情報の観測地点である。航空機1は、目的地において所望する観測データを取得し、その後プラットホーム3に帰還する。
【0017】
図2は、航空機1の構成を示すブロック図である。図2に示すように航空機1は、航空機制御部11と、GPS受信機12と、センサ13と、バッテリ14と、通信機15を備えている。
【0018】
GPS受信機12は、GPS衛星から送信される位置情報を受信する。
【0019】
センサ13は、IoTセンサを含む。IoTセンサは、温度センサ、湿度センサ、風速センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、光センサ、画像センサ、圧力センサのうちの少なくとも一つを含んでもよい。センサ13は、目的地における環境温度、湿度、風速などを測定する。
【0020】
バッテリ14は、航空機1を駆動する電力を蓄積し、航空機1に搭載される各機器に電力を供給する。バッテリ14は、プラットホーム3に設置された給電ポート4において、非接触による電力の充電が可能とされている。
【0021】
航空機制御部11は、飛行制御部111と、通信制御部112と、電力測定部113を備えている。
【0022】
飛行制御部111は、制御装置2により設定された目的地の位置情報(例えば、三次元位置情報)、GPS受信機12で受信される位置情報、高度測定器(図示省略)で測定される飛行高度の情報に基づいて、航空機1が目的地に到達するように航空機1の飛行を制御する。詳細な制御方法は、周知の技術であるため説明を省略する。
【0023】
通信制御部112は、通信機15による通信を制御する。
【0024】
電力測定部113は、バッテリ14の残量を測定する。電力測定部113は、バッテリ14の残量に基づいて航空機1の航続距離を算出してもよい。
【0025】
通信機15は、制御装置2との間で無線通信を行う。通信機15は、他の航空機に搭載される通信機との間での無線通信を行う。例えば、航空機1-1は、他の航空機1-2~1-Xのうちの少なくとも一つとの間で無線通信を行う。
【0026】
通信機15は、センサ13で測定された各種の情報、GPS受信機12で受信された航空機1の位置情報、及び電力測定部113で測定されたバッテリ14の残量の情報を、制御装置2に送信する。
【0027】
通信機15は、制御装置2から送信される目的地の情報を受信し、飛行制御部111に出力する。通信機15は、他の航空機の通信機15から送信された情報を受信して、制御装置2に送信する中継器としての機能を有する。通信機15により送信される情報には、航空機1の航続距離に関する情報が含まれていてもよい。
【0028】
図3は、制御装置2(航空機制御装置)の構成を示すブロック図である。図3に示すように制御装置2は、主制御部21と、入力部22と、通信部23と、給電装置24と、記憶部25と、提示部26を備えている。
【0029】
入力部22は、飛行可能な航空機1の台数、各航空機1の消費電力、飛行速度などの、個別情報の入力を受け付ける。即ち、操作者は入力部22を操作することにより、上記した各種の情報を入力することができる。
【0030】
通信部23は、各航空機1との間で伝送データの通信を行う。具体的に通信部23は、各航空機1から送信された観測データ、位置データ、バッテリ14の残量データを受信する。通信部23は、後述するスケジュール設定部213で設定された給電スケジュールに基づき、各航空機1に対して給電スケジュールを送信する。
【0031】
給電装置24は、給電ポート4(図1参照)に着陸した航空機1のバッテリ14に対して非接触で電力を給電する。具体的には、給電ポート4の床面に送電コイルが設置または埋設されており、航空機1が給電ポート4に着陸したときに、該航空機1の底面に搭載された受電コイルと対向する。この状態で送電コイルに電力を供給することにより、非接触で受電コイルに電力が伝達され、バッテリ14を充電することができる。
【0032】
主制御部21は、取得部210と、データ収集部211と、状態管理部212と、スケジュール設定部213と、給電制御部214を備えている。
【0033】
取得部210は、各航空機1の飛行に関する情報を取得する。具体的に取得部210は、各航空機1との通信により、飛行時間Tf、消費電力Pf、飛行距離H、飛行速度vを含む各種のデータを取得する。
【0034】
データ収集部211は、各航空機1より送信される気温、湿度、風速などの観測データを取得する。データ収集部211は、取得した観測データを記憶部25に記憶する。
【0035】
状態管理部212は、入力部22にて入力される各種のデータを管理する。入力部22にて入力されるデータは、各航空機1の測定頻度N、航空機1の台数X、各航空機1に搭載されるバッテリ14の電池容量W、充電電力Pp、各航空機1のバッテリ14を充電する際の充電時間Tp、2台の航空機1が飛行する際の重複時間TOLを含む。
【0036】
状態管理部212は、各航空機1の識別ID、位置情報、充電電力Pp、通信に用いる周波数、物理的な状態を管理する。物理的な状態とは、破損、塩害、摩擦、劣化などの質に関する状態を指す。状態管理部212は、各航空機1の充電電力Ppに基づき、各航空機1の航続距離を管理する。状態管理部212は、各航空機1に搭載されるバッテリ14の電池容量Wを取得し、各航空機1のバッテリ14が満充電であるときの航続距離(最大の航続距離)を算出する。
【0037】
スケジュール設定部213は、複数の航空機1の給電スケジュールを設定する。例えば、観測対象となる目的地までの距離、目的地の高度、飛行する空路の風向、風速、測定対象などの情報に基づいて、各航空機1に搭載されたバッテリ14への給電が効率良く行われるように給電スケジュールを設定する。
【0038】
スケジュール設定部213は、各航空機1ごとに、充電電力Ppと消費電力Pfが一致するように、各航空機1の給電スケジュールを設定する。また、スケジュール設定部213は、各航空機1の飛行時間Tfと充電時間Tpが一致するように、給電スケジュールを設定する。給電スケジュールの設定方法については後述する。
【0039】
給電制御部214は、スケジュール設定部213で設定された給電スケジュールに基づいて、各航空機1のバッテリ14への給電を制御する。即ち、給電制御部214は、給電スケジュールに基づいて航空機1に給電するように、給電装置24を制御する。
【0040】
記憶部25は、データ収集部211で取得された気温、湿度、風速など各種の観測データを記憶する。記憶部25は、状態管理部212で取得された各航空機1の電池容量W、充電電力Pp、航続距離のデータを記憶する。記憶部25は、スケジュール設定部213で設定された各航空機1の給電スケジュールを記憶する。
【0041】
提示部26は、例えばディスプレイであり、データ収集部211で取得された各種の観測データ、各航空機1の電池容量W、電力の残量充電電力Pp、航続距離、給電スケジュールなどを画面表示する。なお、提示部26は、ディスプレイなどの表示機器に限定されるものではなく、音声により操作者或いはその他のユーザに提示してもよい。
【0042】
本実施形態に係る制御装置2は、航空機1の台数X、測定頻度N、各航空機1の電池容量W、飛行距離H、飛行速度v、消費電力Pf、充電電力Pp、飛行時間Tf、充電時間Tpの、各パラメータに基づいて、各航空機1が効率良く目的地まで飛行して所望の観測データを収集できる給電スケジュールを設定する。
【0043】
なお、上述した測定頻度Nは、航空機1が一定期間内に観測を行う回数を示す。電池容量Wは、バッテリ14が満充電時の電力量である。消費電力Pfは、航空機1が飛行することにより消費する電力を示し、充電電力Ppは、バッテリ14を充電するときの電力を示す。
【0044】
<給電スケジュールの設定方法>
スケジュール設定部213において実施される給電スケジュールの設定方法について説明する。電池容量W、飛行速度v、消費電力PfのX台の航空機1が順番に充電電力Pp、充電時間Tpで充電された後に、プラットホーム3から離陸する。各航空機1は、飛行距離H、飛行時間Tfで飛行して目的地において観測を行い、プラットホーム3に帰還する。このように、各航空機1は、プラットホーム3から離陸→観測→帰還を繰り返す動作を行う。
【0045】
この動作で行われる単位時間当たりの測定回数は、測定頻度Nである。航空機1が順番に飛行する際に、隣り合う順番のドローンどうしの飛行時間の一部は重複している。その重複時間をTOL(図4参照)とする。各航空機1が一定の順序で飛行する場合を例に挙げて説明する。「一定の順序」とは、例えば航空機1-1が飛行して帰還し、その後航空機1-2が飛行して帰還し、更に航空機1-3、1-4の順に飛行することを意味する。
【0046】
従って、各航空機1の給電スケジュールは、図4に示すように設定することができる。図4において、斜線で示す時間帯が飛行時間を示し、空白で示す時間帯が充電時間を示している。このような条件下において、前述のように定義したパラメータを用いて、各航空機1と給電ポート4が満たすべき条件は、以下のように整理することができる。
【0047】
航空機1が継続して飛行する場合には、充電電力量Tp・Ppが消費電力量Tf・Pfを上回ることから、下記(1)式が得られる。
【0048】
Tf・Pf≦Tp・Pp …(1)
各航空機1が一定の順序で飛行することから、測定頻度Nは下記(2)式で求められる。
【0049】
N=X/(Tf+Tp) …(2)
電池容量Wは、消費電力量Pf・Tfを上回ることから、下記(3)式が得られる。
【0050】
W≧Pf・Tf …(3)
飛行距離Hは、下記(4)式で得られる。
【0051】
H=v・Tf …(4)
上述した(1)~(4)式を集約すると、下記(5)、(6)式が得られる。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
例えば、上記(5)、(6)式を用いて、予め設定されている条件を入力すると、求めたいパラメータの解の存在範囲を可視化することができる。従って、実際の状況に即してある条件を入力したときに出力される解の存在範囲の中で、目的に対する最適な条件を抽出することで最適な給電スケジュールを決定することができる。具体的に、各航空機1の状況に応じて目的関数は任意のものを設定することができ、その目的関数が最大、或いは最小となるようなパラメータの条件を探索していくことで、各航空機1の給電スケジュールが最適となる条件を抽出する。
【0055】
探索方法は、例えば局所探索法、ラグランジェ緩和法・双対問題、分枝限定法、焼きなまし法、遺伝アルゴリズムなどを採用することができる。以下では理論的に導出可能なケースを用いて最適な条件を抽出する。目的関数f=NHとすると、前述した(5)式から、下記(7)式が得られる。
【0056】
【数3】
【0057】
上記(7)式が成立するとき、即ち「Tf・Pf=Tp・Pp」のときにNHは最大となる。
【0058】
また、上記(7)式は、充電電力量「Tp・Pp」と消費電力量「Tf・Pf」が等しいことを示している。一方で上記(6)式は、電池容量Wが消費電力量に対して十分大きくなるように設定することに留意することで満たされると考えることができる。即ち、(6)式に示す条件に気を付けた上で、消費電力量と充電電力量に着目し、上記(7)式に示すNHが最大となるときの条件について考える。
【0059】
ここで(7)式を、消費電力Pf、充電電力Ppがそれぞれ単独の変数となる関数を考える。また、航空機1の飛行速度vは、消費電力Pfとの間で、図5のグラフに示す関係があることが知られている。図5は、飛行速度と消費電力との関係を示すグラフであり、曲線q1~q6は、それぞれ異なる航空機1を用いたときのデータを示している。図5のグラフから理解されるように、飛行速度ゼロ(例えば、ホバーリングの状態)から徐々に飛行速度を上昇させると、消費電力は一旦減少し、その後領域Q1において矢印Y1に示すように増加に転じる。この関係を二次関数として近似した場合、以下のように表すことができる。
【0060】
【数4】
【0061】
(8)式において、α’、β、γは係数である。(8)式を、曲線の片側のみを考えても一般性を失わないことに留意して、飛行速度vについて整理すると、下記(9)式が得られる。
【0062】
【数5】
【0063】
(9)式において、「α’=1/α」としている。また、上記の理由を考慮してβ=0としている。更に、(9)式において関数の挙動に関する本質のみに着目し議論するためγを省略すると、(7)式は、下記(10)式に書き換えられる。
【0064】
【数6】
【0065】
(10)式に示すPf、Ppの導関数は、それぞれ(11)、(12)式で示すことができる。
【0066】
【数7】
【0067】
【数8】
【0068】
(10)~(12)式をグラフ化したものを図6A図6B図6Cに示す。図6Aは(10)式を示すグラフ、図6Bは(11)式を示すグラフ、図6Cは(12)式を示すグラフである。
【0069】
図6Aに示すグラフから、NHは、充電電力Ppの変化に対して単調増加する傾向を示している。また、消費電力Pfの変化に対して、最大値を取ることが理解される。この関数の場合は、Pf=Ppである。即ち、最適な消費電力が存在することになる。なお、実際の運用ではβとγの影響を受けた形の関数から導出した最適値となるため、上記の値とは若干異なっていることに留意する必要がある。
【0070】
従って、できるだけ大きな充電電力とした上で、消費電力が充電電力に依存する一定値に近づくように運用することでNHが最大になることが理解される。上記により求められた消費電力と充電電力の関係式(例:Pf=Pp)とNH=(NH)maxとなる条件(Tf・Pf=Tp・Pp)より、充電時間Tpと飛行時間Tfに関する条件も同時に求まる。即ち、この問題を解くことで航空機1を効率よく稼働させるための充電電力Pp、及び充電時間Tpを求めることができる。
【0071】
次に、第1実施形態に係る航空機制御システム100の処理手順を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。図7に示す処理は、図3に示した主制御部21により実行される。
【0072】
初めにステップS11において、主制御部21は、各航空機1に搭載された通信機15と制御装置2に搭載された通信部23との間で通信を行う。取得部210は、通信により各航空機1の電池容量W、飛行時間Tf、消費電力Pf、飛行距離H、飛行速度v、を取得する。取得部210は、取得した各データを記憶部25に記憶する。
【0073】
ステップS12において、主制御部21は、操作者による入力部22からの操作入力を受け付ける。取得部210は、操作者により入力される航空機1の台数X、各航空機1による測定頻度N、充電電力Pp及び重複時間TOLを取得する。重複時間TOLは任意の時間を設定することができる。取得部210は、取得した各データを記憶部25に記憶する。
【0074】
ステップS13において、状態管理部212は、各航空機1に搭載されているバッテリ14の残量に基づき、各航空機1の航続距離を算出する。
【0075】
ステップS14において、スケジュール設定部213は、各航空機1の飛行情報に基づいて、各航空機1の給電スケジュールを設定する。上述したように、NH(測定頻度Nと飛行距離との積)が最大となるように、各航空機1の充電時間Tp、充電開始時刻、飛行時間Tfを設定する。その結果、例えば図4に示したように、X台の各航空機1-1~1-Xに対して、所定の重複時間TOLを有する給電スケジュールが設定される。
【0076】
例えば、スケジュール設定部213は、観測要件が時間経過に伴って動的に変化するような状況下において、各航空機1の消費電力を予測する。スケジュール設定部213は、各航空機1が電力不足にならないように、各航空機1の給電スケジュールを設定する。
【0077】
具体的に、ある目的地において平常時には60分間隔で気温、風速などを観測しており、その後(例えば、1時間後)に10分間隔で観測する必要が発生した場合には、この目的地に複数の航空機1を連続して向かわせる必要が生じる。これに対応するため、スケジュール設定部213は、全ての航空機1を満充電とて10分間隔での観測が可能となるように給電スケジュールを設定する。
【0078】
ステップS15において、スケジュール設定部213は、各航空機1の給電スケジュールを記憶部25に記憶する。
【0079】
ステップS16において、スケジュール設定部213は、給電スケジュールを提示部26に提示する。例えば、提示部26がディスプレイを備えている場合には、図4に示した給電スケジュールをディスプレイに表示する。
【0080】
ステップS17において、データ収集部211は、各航空機1で観測された観測データ、即ち、温度、湿度、風速などのデータを各航空機1との間の通信により取得する。取得するデータには、各航空機1の識別ID、位置情報、充電電力、物理的な状態(破損、塩害、摩耗、劣化などの質に関するステータス)などが含まれもよい。
【0081】
ステップS18において、データ収集部211は、観測データを記憶する。
【0082】
図8は、航空機1による自律的な動作の流れを模式的に示す説明図である。本実施形態に係る航空機制御システム100の各航空機1は、スケジュール設定部213にて設定された給電スケジュールに基づいて充電、離陸、観測、帰還を繰り返す。
【0083】
具体的には図8に示すように、航空機1は給電ポート4に着陸してバッテリ14に充電する。バッテリ14の充電に要する電力は、例えば太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーによる発電機5から供給される。バッテリ14の充電が終了すると、航空機1は給電ポート4から離陸する。或いは、スケジュールの都合により待機する必要がある場合には、駐機場(図示省略)に一旦移動して所定の離陸時刻まで待機する。
【0084】
離陸した航空機1は目的地まで飛行する。航空機1は目的地に到達した後、気温、湿度、風速などの各種の観測データを取得する。航空機1は、観測データを取得した後、プラットホーム3(図1参照)に帰還し、給電ポート4に着陸してバッテリ14に充電する。複数の航空機1に対して、スケジュール設定部213にて設定された給電スケジュールに基づいて上記の動作を繰り返すことにより、操作者が介在することなく複数の航空機1を自律的に稼働させて、複数の目的地での観測データなどの有益な情報を収集することができる。
【0085】
このように、本実施形態に係るシステムは、航空機1と通信する通信部23と、航空機1のバッテリ14に給電する給電装置24と、複数の航空機1の充電電力Pp、及び消費電力Pfを取得する取得部210と、各航空機1ごとに、充電電力Ppと消費電力Pfが一致するように、各航空機1の給電スケジュールを設定するスケジュール設定部213と、を備え、通信部23は、給電スケジュールを航空機1に送信し、給電スケジュールに基づいて航空機1に給電するように、給電装置24を制御する給電制御部214を備える。
【0086】
本実施形態では、上述したNH(測定頻度Nと飛行距離との積)が最大となるように、各航空機1の給電スケジュールを設定する。このため、各航空機1が効率良く飛行して目的地に到達し、各航空機1による観測を行った後に、各航空機1をプラットホーム3に帰還させることが可能となる。
【0087】
即ち、従来においては、各航空機1が継続して飛行可能な航続距離、飛行する高度、測定頻度(一定時間内に測定可能な回数)を、制御装置2において把握し、総合的に各航空機1の給電を制御することが難しいという問題があった。本実施形態では、制御装置2は、通信部23にて各航空機1の飛行情報を取得する。制御装置2は、入力部22にて操作者が入力する各航空機1の情報を取得する。制御装置2は、これらの情報に基づいて、各航空機1が効率良く給電することが可能な給電スケジュールを設定することが可能になる。
【0088】
本実施形態に係る航空機制御システム100を、航空機1に搭載されるIoTセンサなどのセンサ13でから送信された情報と衛星データを組み合わせて連動させることで、高付加価値なモニタリング情報を創出することが可能になる。
【0089】
本実施形態では、複数の航空機1を操作者が介在することなく自律的に稼働することができるので、漁業、農業などの一次産業に採用することで、一次産業の従事者の高齢化、人手不足、技術継承に関する問題の解決に寄与する。
【0090】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態について説明する。前述した第1実施形態では、各航空機1に搭載されている通信機15と制御装置2に搭載された通信部23との間での通信を行う例について説明した。
【0091】
第2実施形態では、各航空機1の通信機15は、それぞれの通信機15どうしでの端末間通信が可能とされている。第2実施形態では、一の航空機1の通信機15は、他の航空機1の通信機15を中継して、制御装置2の通信部23と通信する。一の航空機1が制御装置2から遠く離れた目的地に飛行した場合であっても、他の航空機1を中継して通信することにより、リアルタイムでのデータ通信を可能とする。
【0092】
第2実施形態に係る航空機制御システムは、前述した図1図3と同様であるので、構成説明を省略する。
【0093】
図9は、複数の航空機1どうしで通信を行う様子を模式的に示す説明図である。図9に示すように、航空機1-1(以下、「第1の航空機1-1」という)は、所定の目的地に到着して観測データを取得する。
【0094】
また、第1の航空機1-1とプラットホーム3との間には、プラットホーム3に帰還するために飛行中の航空機1-2(以下、「第2の航空機1-2」という)が飛行している。
【0095】
このような場合において、第1の航空機1-1は第2の航空機1-2を中継して伝送データを制御装置2にリアルタイムで送信する。伝送データは、センサ13で観測した観測データ、航空機1の識別ID、三次元位置、バッテリ14の残量、その他の物理的な情報を含む。第1の航空機1-1と第2の航空機1-2の間の通信方法として、D2D通信(device to device)などの端末間通信を用いてもよい。
【0096】
D2D通信は、制御装置2による一元的な管理が不要であり、管理方式を予め統一しておけば、各航空機1どうしの通信によって情報伝達を行うことができる。
【0097】
第2実施形態では、D2D通信に使用するキャリアを、周波数、時間、空間のうち少なくとも一つのサブキャリアで分割する。具体的にD2D通信(端末間通信)は、端末空間密度制御、周波数ホッピング、フレーム制御のうちの少なくとも一つの通信方式を用いて伝送データの通信を行う。また、D2D通信は、航空機1の数、通信状況、及び通信目的のうちの少なくとも一つに基づいて伝送データの通信効率が高まるように上記の通信方式による制御を実行する。これにより、それぞれ機種、状態が異なる複数の航空機1を効率よく管理する。
【0098】
端末空間密度制御は、単位空間当たりの端末数をカウントし、カウント数によって通信の可否、通信量を制御する方式である。
【0099】
周波数ホッピング(FHSS;Frequency HoppingSpread Spectrum)は、使用する周波数帯を細かく分割し、そのサブキャリアの組み合わせを適宜変更して通信する方式である。例えば、周波数ホッピングにおいて、サブキャリアの組み合わせ方法は、サブキャリアの全体数をKとした場合に、Kが偶数ならK/2個、Kが奇数なら(K+1)/2個のサブキャリアを選択する方式をとると、サブキャリアの組み合わせは最大化される。従って、周波数ホッピングを採用し、且つサブキャリアの組み合わせを適宜設定することにより、大きな通信負荷を必要とせずに航空機1間での観測データの通信を行うことができる。
【0100】
フレーム制御は、時間領域で周期の中で送信データのフレーム分割を行い、時系列ごとに情報を管理する方式である。また、フレーム制御を実施することにより、周波数領域にて資源(リソース)が足りない場合であっても、資源を拡張することができる。資源の拡張方法として、周波数ホッピングと同様の方法を採用することができ、それ以外にも周波数と時間の領域を合算して最適化する方法を採用することができる。
【0101】
また、上述したサブキャリアの割り当て数と分割したフレームの割り当て数の合計数に対して、組み合わせを最大化することにより、データ通信の効率を高めることができる。
【0102】
例えば、サブキャリアの割り当て数を10個とし、フレームの割り当て数を10個とした場合には、上述した「サブキャリアの組み合わせ変更」及び「フレーム分割」を個別に適用した場合は、「10C5×10C5=252^2=63504通り」となる。なお、「10C5」は10個から任意の5個を選択するときの組み合わせ数を示す。一方、合計20個に対して10個を選択する組み合わせは、「20C10=184756通り」となる。このため、合算して適用する方が組み合わせが大きくなることが確認できる。
【0103】
即ち、複数の航空機1間における通信、及び航空機1と制御装置2との間の通信において、通信に使用する周波数帯域、伝送時間単位周期をそれぞれ複数のサブキャリアに分割し、分割されたサブキャリアの周波数、及び時間領域の資源を、航空機1の個数、必要とする通信速度、要求される情報の精度、伝搬チャネルなどの通信状況と通信目的に応じて最適となるように選択する。
【0104】
このように、第2実施形態に係る航空機制御システムでは、航空機1どうしで端末間通信を行い、更に、周波数、時間、空間の3つのサブキャリアうちの少なくとも一つのサブキャリアの組み合わせを変更する。
【0105】
このため、航空機1と制御装置2との間の通信効率を高めることができ、且つ、リアルタイムで通信することが可能になる。従って、飛行中の航空機1において、例えば気象条件の変動などの不可抗力が発生して観測時間の変更、或いは帰還予定時刻の変更が発生した場合には、これらの変更情報をリアルタイムで制御装置2に送信し、各航空機1による観測が効率よく実施されるように給電スケジュールを変更することができる。例えば、図10の符号y1に示すように、航空機1の飛行時間を変更することができる。
【0106】
第2実施形態では、第1の航空機1-1と制御装置2との間の通信を、第2の航空機1-2を中継して行う。これにより、第1の航空機1-1が制御装置2から遠く離れた目的地に飛行した場合であっても、第2の航空機1-2を中継することにより、リアルタイムで各種の伝送データの通信が可能になる。また、各航空機1の飛行範囲を広げることが可能になる。
【0107】
端末間通信としてD2D通信を行うことにより、各航空機1のステータスを更新することができる。当初のスケジュール通りに各航空機1を稼働させることが難しいと判断された場合は、リアルタイムでステータス情報を更新し、その都度スケジュールを最適化し修正することが可能になる。
【0108】
[第3実施形態の説明]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る航空機制御システムは、前述した図1図3と同様であるので構成説明を省略する。
【0109】
一つのプラットホーム3にて運用する複数の航空機1の機種、スペック、センサ計測データの種類などがそれぞれ異なる場合には、上述したD2D通信などの端末間通信において、通信負荷が増大する。第3実施形態では、伝送データを簡素化することにより、航空機1どうしの通信、及び航空機1と制御装置2との通信における通信負荷を軽減する。以下、詳細に説明する。
【0110】
第3実施形態では、各航空機1から送信される伝送データを、文字列、記号列、数字列の項目に分類することができる。従って、伝送データの種類、形式に関わらず、伝送データを一括して伝送し、この伝送データを受信した後に、各データ毎の特徴を比較、抽出することで、元の情報に復元することにより、データの伝送効率を向上させる。
【0111】
即ち、第3実施形態で使用するD2D通信(端末間通信)は、送信側の通信機15にて、伝送データを構成するデータ列(文字列、記号列、数字列など)に含まれる情報単位の出現頻度、母集団、分布、周期性、ランダム性のうちの少なくとも一つの特徴量に基づいて、データ列を簡素化して送信する。受信側の通信機15にて、受信したデータ列を特徴量に基づいて復元する。
【0112】
伝送データを、該伝送データに含まれる文字列、記号列、数字列で分類し、文字列、記号列、数字列に含まれる各情報単位の出現頻度、出現情報の分布、母集団、周期性、ランダム性などの特徴量に応じて、それぞれ符号を割り当てることにより、伝送データのデータ量を削減し、伝送効率を向上させることができる。
【0113】
図11Aは、伝送データに含まれる信号列の特徴を示す説明図である。例えば、図11Aに示すように識別IDが「D」から始まる記号列である場合には、伝送データには「D」が必ず出現することになるので、識別IDに対して最も短い符号を割り当てることで、伝送効率を向上させることができる。
【0114】
位置情報は3次元で示されるため、3つの数字列で表現される。電池残量は分数で示すので、分数表記の数字列で表現される。物理的な状態A~Cは、1つの記号列で表現される。上記のように数字列、或いは記号列を表現することにより、伝送データの伝送効率を向上させることができる。
【0115】
また、出現頻度のみならず、伝送データのデータ列における出現情報の分布、母集団のモデルを適用し、DFT/FFTなどの信号解析によって、分布からその母集団を推定することで、特徴量を効率よく抽出することができる。
【0116】
例えば、航空機1に搭載されているバッテリ14の電池残量は、満充電の状態から、約1回分の飛行に要する電力だけ差し引いた範囲(第1の充電量)で変化する。従って、伝送データに含まれる数字列の出現確率を考えた場合に、第1の充電量から満充電の間の数値、或いは特定の平均値を中心とする正規分布を取ると予想できる。
【0117】
従って、正規分布を設定し、この正規分布に従うものと予想して符号を割り当てることにより、データ量を削減することが可能になる。
【0118】
また、航空機1の位置情報についても給電ポート4の相対的な位置関係により、給電ポート4の位置に対して航空機1の平面方向の位置は、正規分布であると考えられ、更に、分散はそのときの風速から推定することができる。従って、この予測に基づいて符号を割り当てることにより、データ量を削減することが可能になる。
【0119】
また、航空機1を用いて目的地における気象データを収集する場合には、気象データは、周期的な測定を行うという性質に着目し、時間帯、信号列の出現順序、組み合わせを想定することができる。この想定結果に基づいて符号を割り当てることにより、データ量を削減することが可能になる。
【0120】
図11Bは、第3実施形態に係る航空機制御システム100により、伝送データの信号列を分類する方法を示す説明図である。
【0121】
前述した図11Aに示したように伝送データの割り当てを設定することによりデータ量を削減することにより、例えば、図11B(a)に示す伝送データに含まれる元の情報を、図11B(b)に示すようにデータ量を削減した情報に変換する。図11B(b)では、物理的な状態A~Cについての伝送データを一つのデータ列で表現している。
【0122】
この伝送データの送信先となる航空機1或いは制御装置2において、伝送データを復調することにより、図11B(c)に示すように、元のデータを取得することができる。
【0123】
このように、第3実施形態では、伝送データに含まれる特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて、データを削減することができる。このため、D2D通信などの端末間通信により伝送データを送信する場合に、データ量を削減でき、各航空機1で観測したデータを効率よく制御装置2に送信することができる。或いは、一の航空機1で観測したデータを他の航空機1を中継して、効率よく制御装置2に送信することができる。
【0124】
第1~第3実施形態で示した航空機1の制御システムの技術は、海洋における用途以外にも採用することができる。例えば、地上のIoTソリューションに採用することができ、例えば航空機1を活用した物流の自動化プラットホーム、将来的な空中タクシーサービス等の、自動運転技術にも適用することで、サステイナブルにシステムを強化することができる。また、第2、第3実施形態に示した情報通信技術を用いることで、自動運転や災害検知ネットワークなどの、他のプラットホームとの連携も容易になる。また、航空機1は、ドローンなどの無人の航空機以外にも、有人で飛行する航空機としてもよい。
【0125】
上記説明した本実施形態の制御装置2(航空機制御装置)には、図12に示すように例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:HardDisk Drive、SSD:SolidState Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、制御装置2の各機能が実現される。
【0126】
なお、制御装置2は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、制御装置2は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0127】
なお、制御装置2用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0128】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0129】
1(1-1~1-X) 航空機
2 制御装置
3 プラットホーム
4 給電ポート
5 発電機
11 航空機制御部
12 GPS受信機
13 センサ
14 バッテリ
15 通信機
21 主制御部
22 入力部
23 通信部
24 給電装置
25 記憶部
26 提示部
100 航空機制御システム
111 飛行制御部
112 通信制御部
113 電力測定部
210 取得部
211 データ収集部
212 状態管理部
213 スケジュール設定部
214 給電制御部
H 飛行距離
N 測定頻度
Pf 消費電力
Pp 充電電力
Tf 飛行時間
TOL 重複時間
Tp 充電時間
v 飛行速度
W 電池容量
X 航空機の台数
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12