(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046451
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ケトン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/00 20060101AFI20240327BHJP
C07C 49/784 20060101ALI20240327BHJP
C07C 45/61 20060101ALI20240327BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C07C45/00
C07C49/784
C07C45/61
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151851
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】劒 隼人
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 智哉
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006BA05
4H006BA32
4H006BC31
4H006BC34
4H006BC35
4H039CA62
4H039CD60
(57)【要約】
【課題】本発明は、チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩とを混合して、ケトン誘導体(I)を形成する工程を含むケトン誘導体(I)の製造方法であって、ケトン誘導体(I)の高収率を実現しつつ、銅塩の使用量の低減を実現することができるケトン誘導体(I)の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ケトン誘導体(I)を製造する方法であって、チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子とを混合して、ケトン誘導体(I)を形成する工程を含む、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式中、W
1及びW
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるケトン誘導体(I)を製造する方法であって、
下記式(II):
【化2】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
3は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるチオエステル誘導体(II)と、
下記式(IIIa):
【化3】
[式中、W
2は、前記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(IIIa)、及び、
下記式(IIIb):
【化4】
[式中、W
2及びXは、前記と同義である。]
で表されるグリニャール試薬(IIIb)
から選択されるグリニャール試薬(III)と、
銅塩と、
前記グリニャール試薬(III)中のMgに配位する多座配位子であって、酸素原子及び窒素原子から選択される2個以上のドナー原子を含む多座配位子と、
を混合して、前記ケトン誘導体(I)を形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記多座配位子が、
下記式(IV):
【化5】
[式中、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は、下記式(V):
【化6】
(式中、
R
100は、式:-[(Y
1)
a-Z
1]
b-(Y
1)
c-で表される2価の基を表し、
Y
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Z
1は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表し、
aは、1以上の整数を表し、
bは、0以上の整数を表し、
cは、1以上の整数を表す。)
で表される基を表し、
L
2は、式:-[(Y
2)
d-Z
2]
e-(Y
2)
f-で表される2価の基を表し、
Y
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Z
2は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表し、
dは、1以上の整数を表し、
eは、1以上の整数を表し、
fは、1以上の整数を表す。]
で表される多座配位子であるか、又は、
下記式(VI):
【化7】
[式中、
R
200は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
R
300は、式:-[(Y
3)
g-Z
3]
h-(Y
3)
i-で表される2価の基を表し、
Y
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Z
3は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表し、
gは、1以上の整数を表し、
hは、1以上の整数を表し、
iは、1以上の整数を表す。]
で表される多座配位子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記銅塩の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、0.001モル以上0.5モル以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記銅塩が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)及びシアン化銅(I)から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記多座配位子の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、1.0モル以上3.0モル以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記グリニャール試薬(III)の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、1.0モル以上1.5モル以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記工程において、溶媒の存在下、前記チオエステル誘導体(II)と、前記グリニャール試薬(III)と、前記銅塩と、前記多座配位子とを混合し、
前記溶媒の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1gに対して、3mL以上20mL以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケトン誘導体は、医農薬、化学素材、合成中間体等として有用な化合物である。ケトン誘導体の製造方法としては、福山反応が知られている(非特許文献1又は2参照)。福山反応は、ハロゲン化アルキル亜鉛等の亜鉛試薬と、チオエステル誘導体とを、パラジウム又はニッケル触媒存在下で接触させることにより、ケトン誘導体を得る反応である。
【0003】
ビオチンは、ビオチン欠乏症治療効果等が期待される医薬品、飼料添加物等に使用される水溶性ビタミンである。ビオチンの合成ルートにおいても、福山反応が利用されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters 43,2002,pp.1039-1042
【非特許文献2】Advanced Synthesis and Catalysis 349,2007,pp.2027-2038
【非特許文献3】Organic Syntheses 84,2007,pp.285-294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のケトン誘導体の製造方法では、ケトン誘導体を工業的なスケールで安定的に製造する観点から改善の余地があった。
【0006】
このような状況の下、本件特許出願人は、下記式(I):
【化1】
[式中、W
1及びW
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるケトン誘導体(I)を製造する方法であって、
下記式(II):
【化2】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
3は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるチオエステル誘導体(II)と、
下記式(IIIa):
【化3】
[式中、W
2は、前記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(IIIa)、及び、
下記式(IIIb):
【化4】
[式中、W
2及びXは、前記と同義である。]
で表されるグリニャール試薬(IIIb)
から選択されるグリニャール試薬(III)と、
銅塩と、
を混合して、前記ケトン誘導体(I)を形成する工程
を含む、前記方法について特許出願を行っている(特願2021-98285)。
【0007】
上記方法では、従前よりも緩和な条件下でケトン誘導体(I)を製造することができる。これにより、安価で効率的なケトン誘導体の工業的製造を可能となる。
【0008】
上記方法では、銅塩が使用される。銅塩は重金属塩であるため、銅塩の使用量は出来るだけ少ないことが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩とを混合して、ケトン誘導体(I)を形成する工程を含むケトン誘導体(I)の製造方法であって、ケトン誘導体(I)の高収率を実現しつつ、銅塩の使用量の低減を実現することができるケトン誘導体(I)の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]下記式(I):
【化5】
[式中、W
1及びW
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるケトン誘導体(I)を製造する方法であって、
下記式(II):
【化6】
[式中、W
1は、前記と同義であり、W
3は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるチオエステル誘導体(II)と、
下記式(IIIa):
【化7】
[式中、W
2は、前記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]
で表されるグリニャール試薬(IIIa)、及び、
下記式(IIIb):
【化8】
[式中、W
2及びXは、前記と同義である。]
で表されるグリニャール試薬(IIIb)
から選択されるグリニャール試薬(III)と、
銅塩と、
前記グリニャール試薬(III)中のMgに配位する多座配位子であって、酸素原子及び窒素原子から選択される2個以上のドナー原子を含む多座配位子と、
を混合して、前記ケトン誘導体(I)を形成する工程
を含む、前記方法。
[2]前記多座配位子が、
下記式(IV):
【化9】
[式中、
L
1及びL
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は、下記式(V):
【化10】
(式中、
R
100は、式:-[(Y
1)
a-Z
1]
b-(Y
1)
c-で表される2価の基を表し、
Y
1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Z
1は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表し、
aは、1以上の整数を表し、
bは、0以上の整数を表し、
cは、1以上の整数を表す。)
で表される基を表し、
L
2は、式:-[(Y
2)
d-Z
2]
e-(Y
2)
f-で表される2価の基を表し、
Y
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Z
2は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表し、
dは、1以上の整数を表し、
eは、1以上の整数を表し、
fは、1以上の整数を表す。]
で表される多座配位子であるか、又は、
下記式(VI):
【化11】
[式中、
R
200は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
R
300は、式:-[(Y
3)
g-Z
3]
h-(Y
3)
i-で表される2価の基を表し、
Y
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、
Z
3は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表し、
gは、1以上の整数を表し、
hは、1以上の整数を表し、
iは、1以上の整数を表す。]
で表される多座配位子である、[1]に記載の方法。
[3]前記銅塩の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、0.001モル以上0.5モル以下である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記銅塩が、塩化銅(I)、臭化銅(I)、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)及びシアン化銅(I)から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記多座配位子の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、1.0モル以上3.0モル以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記グリニャール試薬(III)の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、1.0モル以上1.5モル以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記工程において、溶媒の存在下、前記チオエステル誘導体(II)と、前記グリニャール試薬(III)と、前記銅塩と、前記多座配位子とを混合し、
前記溶媒の使用量が、前記チオエステル誘導体(II) 1gに対して、3mL以上20mL以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩とを混合して、ケトン誘導体(I)を形成する工程を含むケトン誘導体(I)の製造方法であって、ケトン誘導体(I)の高収率を実現しつつ、銅塩の使用量の低減を実現することができるケトン誘導体(I)の製造方法が提供される。
【0012】
本発明により実現されるケトン誘導体(I)の収率は、トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用してガスクロマトグラフィー(GC)分析により収率を算出した場合、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より一層好ましくは80%以上であり、トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した場合、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より一層好ましくは80%以上である。ガスクロマトグラフィー分析条件は、実施例に記載の通りである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。
【0014】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で用いられる用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。なお、「値A~値B」という表現は、別段規定される場合を除き、値A以上値B以下を意味する。
【0015】
有機溶媒
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0016】
ハロゲン原子
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
【0017】
アルキル基
アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12(例えば、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2)である。分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、例えば3~20、好ましくは3~15、より好ましくは3~12(例えば、3~10、3~8、3~6、3~5又は3~4)である。
【0018】
アルケニル基
アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素数は、例えば2~20、好ましくは2~15、より好ましくは2~12(例えば、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4又は2~3)である。分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は、例えば3~20、好ましくは3~15、より好ましくは3~12(例えば、3~10、3~8、3~6、3~5又は3~4)である。
【0019】
シクロアルキル基
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。
【0020】
ヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロシクロアルキル基の員数は、例えば3~8員、好ましくは4~7員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等が挙げられる。一実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基から選択される。
【0021】
アリール基
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~14、好ましくは6~14、より好ましくは6~10の芳香族炭化水素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。
【0022】
ヘテロアリール基
ヘテロアリール基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の芳香族複素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは4~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロアリール基は、好ましくは単環式又は二環式の4~10員、好ましくは5~10員の芳香族複素環基である。
【0023】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0024】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0025】
一実施形態において、ヘテロアリール基は、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基及びピリジル基から選択される。
【0026】
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基は、それぞれ、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基、ハロアリール基又はハロヘテロアリール基が有するハロゲン原子の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0027】
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0028】
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基は、それぞれ、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の基であり、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0029】
アリールアルキル基
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0030】
アリールアルケニル基
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0031】
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アルキル基及び式:-CO-アリール基で表される基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0032】
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基は、それぞれ、式:-O-アルキル基、式:-O-ハロアルキル基、式:-O-ヘテロシクロアルキル基及び式:-O-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0033】
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-アルキル基、式:-S-ハロアルキル基、式:-S-ヘテロシクロアルキル基及び式:-S-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0034】
アルキルオキシカルボニル基
アルキルオキシカルボニル基は、式:-CO-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0035】
アミノ基
アミノ基は、式:-NH2で表される基(1級アミノ基)である。
【0036】
モノアルキルアミノ基
モノアルキルアミノ基は、式:-NH(-Q1)[式中、Q1は、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q1で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0037】
ジアルキルアミノ基
ジアルキルアミノ基は、式:-N(-Q2)(-Q3)[式中、Q2及びQ3は、それぞれ独立して、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q2又はQ3で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0038】
脂環式アミノ基
脂環式アミノ基は、例えば、5又は6員環の脂環式アミノ基であり、5又は6員環の脂環式アミノ基としては、例えば、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジン-1-イル基、ピラゾリジン-1-イル基、イミダゾリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基等が挙げられる。脂環式アミノ基は、脂環式アミノ基の結合手を有する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択されるヘテロ原子(例えば、1個のヘテロ原子)を含んでいてもよい。脂環式アミノ基は、好ましくは、モルホリノ基である。
【0039】
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アミノ基、式:-CO-モノアルキルアミノ基、式:-CO-ジアルキルアミノ基及び式:-CO-脂環式アミノ基で表される基であり、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及び脂環式アミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0040】
置換基群α
置換基群αは、以下の置換基で構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)アルキルオキシ基
(α-16)ハロアルキルオキシ基
(α-17)アルキルチオ基
(α-18)ハロアルキルチオ基
(α-19)ヘテロシクロアルキルオキシ基
(α-20)ヘテロシクロアルキルチオ基
【0041】
以下、置換基群αについて説明する。
【0042】
(α-5)において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1~2である。
【0043】
(α-6)において、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1~2である。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、より一層好ましくは1である。
【0044】
(α-15)において、アルキルオキシ基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0045】
(α-16)において、ハロアルキルオキシ基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキルオキシ基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、より一層好ましくは1である。
【0046】
(α-17)において、アルキルチオ基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0047】
(α-18)において、ハロアルキルチオ基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキルチオ基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、より一層好ましくは1である。
【0048】
≪ケトン誘導体(I)≫
ケトン誘導体(I)は、下記式(I)で表される化合物である。
【化12】
【0049】
式(I)において、W1及びW2は、それぞれ独立して、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。W1及びW2がともに官能基(1)である場合、W1で表される官能基(1)と、W2で表される官能基(1)とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。W1及びW2がともに官能基(2)である場合、W1及びW2がともに官能基(3)である場合、W1及びW2がともに官能基(4)である場合、W1及びW2がともに官能基(5)である場合、W1及びW2がともに官能基(6)である場合、W1及びW2がともに官能基(7)である場合、並びに、W1及びW2がともに官能基(8)である場合についても同様である。
【0050】
以下、官能基(1)~(8)について説明する。
【0051】
官能基(1):置換基を有していてもよいアルキル基
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0052】
官能基(2):置換基を有していてもよいアルケニル基
アルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0053】
官能基(3):置換基を有していてもよいシクロアルキル基
シクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0054】
官能基(4):置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロシクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0055】
官能基(5):置換基を有していてもよいアリール基
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0056】
官能基(6):置換基を有していてもよいヘテロアリール基
ヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0057】
官能基(7):置換基を有していてもよいアリールアルキル基
アリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0058】
官能基(8):置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
アリールアルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0059】
一実施形態において、W1は、官能基(1)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0060】
別の実施形態において、W1は、官能基(2)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0061】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(3)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0062】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(4)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0063】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(5)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0064】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(6)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0065】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(7)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0066】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(8)であり、W2は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(5)~(8)のいずれか、より好ましくは官能基(5)、(7)及び(8)のいずれか、より一層好ましくは官能基(5)である。
【0067】
好ましい実施形態において、W1及びW2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基である。置換基を有していてもよいアリール基は、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0068】
W
1及びW
2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基であるケトン誘導体(I)の一例として、以下の化合物が挙げられる。
【化13】
【0069】
W1及びW2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基であるケトン誘導体(I)の別の例としては、以下の化合物が挙げられる。以下の化合物には、W1が、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、W2が、置換基を有していてもよいアリール基であるケトン誘導体(I)の例も含まれる。なお、「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「tBu」はtert-ブチル基、「Ph」はフェニル基を表す。
【0070】
【0071】
≪チオエステル誘導体(II)≫
チオエステル誘導体(II)は、下記式(II)で表される化合物である。
【化14】
【0072】
式(II)において、W1は、上記と同義であり、W3は、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
を表す。官能基(1)~(8)に関する説明は、上記の通りである。W1及びW3がともに官能基(1)である場合、W1で表される官能基(1)と、W3で表される官能基(1)とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。W1及びW3がともに官能基(2)である場合、W1及びW3がともに官能基(3)である場合、W1及びW3がともに官能基(4)である場合、W1及びW3がともに官能基(5)である場合、W1及びW3がともに官能基(6)である場合、W1及びW3がともに官能基(7)である場合、並びに、W1及びW3がともに官能基(8)である場合についても同様である。
【0073】
W3は、W2と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0074】
チオエステル誘導体(II)は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0075】
一実施形態において、W1は、官能基(1)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0076】
別の実施形態において、W1は、官能基(2)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0077】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(3)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0078】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(4)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0079】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(5)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0080】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(6)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0081】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(7)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0082】
さらに別の実施形態において、W1は、官能基(8)であり、W3は、官能基(1)~(8)のいずれか、好ましは官能基(1)~(4)のいずれか、より好ましくは官能基(1)~(3)のいずれか、より一層好ましくは官能基(1)である。
【0083】
好ましい実施形態において、W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W3は、置換基を有していてもよいアルキル基である。置換基を有していてもよいアリール基は、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基を有していてもよいアルキル基は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~16のアルキル基、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基である。
【0084】
W1は、置換基を有していてもよいアリール基であり、W3は、置換基を有していてもよいアルキル基であるチオエステル誘導体(II)の一例として、以下の化合物が挙げられる。
【0085】
【0086】
上記化合物において、W3に対応する-C12H25は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0087】
上記化合物において、W3に対応する-C12H25は、他のアルキル基に変更可能である。他のアルキル基としては、例えば、-C10H21、-C11H23等が挙げられる。他のアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0088】
≪チオエステル誘導体の製造方法≫
【0089】
チオエステル誘導体(II)は、常法に従って製造することができる。チオエステル誘導体(II)は、例えば、有機溶媒中、塩基及び脱水縮合剤の存在下、式:W1-COOHで表される化合物と、式:W3-SHで表される化合物と接触させることにより製造することができる。W1及びW3は、上記と同義である。式:W1-COOHで表される化合物及び式:W3-SHで表される化合物は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0090】
塩基としては、例えば、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジエチルアニリン等の有機アミンが挙げられる。
【0091】
脱水縮合剤としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCl)、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソブチル、ジフェニルクロロホスフェート等が挙げられる。
【0092】
有機溶媒の具体例は、上記の通りである。1種の有機溶媒を使用してもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて使用してもよい。有機溶媒は、好ましくは、DCM、THF、2-メチル-THF、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,4-ジオキサン、トルエン、1,2-ジメトキシエタン又はこれらの混合溶媒である。
【0093】
得られたチオエステル誘導体(II)は、以下の方法で単離することができる。
【0094】
先ず、反応液にクエンチ液(例えば、水、HCl水溶液等)を加えて、反応を停止させる。クエンチ液を加えた反応液を撹拌して、水層と有機層とに分離させる。有機層を抽出した後、水層に有機溶媒を加えて、有機層と水層とに再び分離させる。有機層を取り出し、先に抽出した有機層と合わせて総有機層を得る。総有機層を、洗浄液(例えば、水、HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液、食塩水等)で洗浄した後、硫酸ナトリウム等を用いて乾燥させて、チオエステル誘導体(II)を含む残渣を得る。
【0095】
水層に加えられる有機溶媒の具体例は、上記の通りである。1種の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒は、好ましくは、酢酸エチル、トルエン、t-ブチルメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒である。
【0096】
チオエステル誘導体(II)は、常法に従って精製することができる。チオエステル誘導体(II)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【0097】
≪グリニャール試薬(III)≫
グリニャール試薬(III)は、
下記式(IIIa):
【化16】
で表されるグリニャール試薬(IIIa)、及び、
下記式(IIIb):
【化17】
で表されるグリニャール試薬(IIIb)
から選択される。
【0098】
式(IIIa)及び(IIIb)において、W2は、上記と同義であり、Xは、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択することが好ましい。
【0099】
グリニャール試薬(III)として、グリニャール試薬(IIIa)及びグリニャール試薬(IIIb)の一方を選択してもよいし、両方を選択してもよい。両方を選択する場合、両者の混合物を反応系に添加してもよいし、両者を別々に反応系に添加してもよい。
【0100】
グリニャール試薬(IIIa)は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0101】
グリニャール試薬(III)は、反応速度を向上させる観点から、グリニャール試薬(IIIb)を含むことが好ましい。なお、グリニャール試薬(IIIb)は、ターボグリニャール試薬と呼ばれる。
【0102】
グリニャール試薬(IIIb)は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。グリニャール試薬(IIIb)は、例えば、不活性化ガス(例えば、窒素、アルゴン等)に置換した反応容器において、リチウム塩の存在下、マグネシウムと、式:W2X[式中、W2及びXは、上記と同義である。]で表されるハロゲン有機化合物とを、有機溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0103】
また、グリニャール試薬(IIIb)は、Angew Chem.Int.Ed2006,45,2958等に記載の公知の方法に従って、式:TMPMgX・LiY[式中、TMPは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを表す。]で表されるノッシェル・ハウザー塩基と、式:W
2-Hで表される化合物とを反応させることにより製造してもよい。
【化18】
【0104】
≪銅塩≫
銅塩は、1種の銅塩であってもよいし、2種以上の銅塩の混合物であってもよい。
【0105】
銅塩としては、例えば、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl2)、臭化銅(I)(CuBr)、臭化銅(II)(CuBr2)、シアン化銅(I)(CuCN)、3-メチルサリチル酸銅(I)、メシチレン銅(I)(MesCu)、イソプロポキシ銅(I)(iPrOCu)、ヨウ化銅(I)(CuI)、tert-ブトキシ銅(I)(CuOtBu)、ヨウ化銅(II)(CuI2)、酢酸銅(I)(CuOAc)、酢酸銅(II)(Cu(OAc)2)、硫酸銅(II)(CuSO4)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、ピバル酸銅(I)(CuOPiv)、ピバル酸銅(II)(Cu(OPiv)2)、硫黄(S)を含む銅塩等が挙げられる。硫黄(S)を含む銅塩としては、例えば、チオフェン-2-カルボン酸銅(I)(CuTC)等が挙げられる。銅塩に含まれる銅原子の価数は、通常、1価又は2価であるが、好ましくは、1価である。銅原子の価数が1価である銅塩は、触媒作用が優れており、ケトン誘導体(I)の高収率を実現することができる。銅原子の価数が1価である銅塩のうち、特にCuCl、CuBr、CuCN及びCuTCは、触媒作用が優れており、ケトン誘導体(I)の高収率を実現することができる。Sは、Cuとの親和性が高く、銅塩において、SがCuに配位し易い。この配位により、Cuが活性化され、ケトン誘導体(I)の高収率を実現することができる。
【0106】
≪多座配位子≫
グリニャール試薬(III)中のMgに配位する多座配位子は、酸素原子及び窒素原子から選択される2個以上のドナー原子を含む。
【0107】
ドナー原子は、配位原子とも呼ばれる。ドナー原子の数が2個である多座配位子は2座配位子、ドナー原子の数が3個である多座配位子は3座配位子、ドナー原子の数が4個である多座配位子は4座配位子、ドナー原子の数がn個である多座配位子はn座配位子と呼ばれる。
【0108】
多座配位子におけるドナー原子の数は、例えば2個以上10個以下である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、多座配位子におけるドナー原子の数は、好ましくは2個以上8個以下、より好ましくは2個以上6個以下、より一層好ましくは2個以上4個以下、最も好ましくは3個である。
【0109】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、多座配位子は、
下記式(IV):
【化19】
で表される多座配位子であるか、又は、
下記式(VI):
【化20】
で表される多座配位子であることが好ましく、式(IV)で表される多座配位子であることがより好ましい。
【0110】
以下、式(IV)で表される多座配位子について説明する。
【0111】
<式(IV)で表される多座配位子>
【0112】
式(IV)において、L
1及びL
3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、又は、下記式(V):
【化21】
で表される基を表す。
【0113】
以下、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基、及び、式(V)で表される基について説明する。
【0114】
置換基を有していてもよいアミノ基
置換基を有していてもよいアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基である。
【0115】
1級アミノ基は、式:-NH2で表される。2級アミノ基は、式:-NHR1で表される。3級アミノ基は、式:-NR1R2で表される。
【0116】
R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルキル基を表す。
【0117】
以下、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基を有していてもよいアリールアルキル基について説明する。
【0118】
[置換基を有していてもよいアルキル基]
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0119】
[置換基を有していてもよいシクロアルキル基]
シクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0120】
[置換基を有していてもよいアリール基]
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、好ましくはフェニル基である。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0121】
[置換基を有していてもよいアリールアルキル基]
アリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。アリールアルキル基に含まれるアリール基は、好ましくはフェニル基である。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0122】
2級アミノ基及び3級アミノ基は、脂肪族アミノ基であってもよいし、芳香族アミノ基であってもよいが、脂肪族アミノ基が好ましい。脂肪族アミノ基としては、例えば、R1が置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基である2級アミノ基、R1及びR2の両方が置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基である3級アミノ基等が挙げられる。芳香族アミノ基としては、例えば、R1が置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基である2級アミノ基、R1及びR2の少なくとも一方が置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基である3級アミノ基等が挙げられる。
【0123】
2級アミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-プロピルアミノ基、N-イソプロピルアミノ基等の脂肪族アミノ基、N-フェニルアミノ基(アニリノ基)等の芳香族アミノ基等が挙げられる。2級アミノ基は、モノアルキルアミノ基であることが好ましい。モノアルキルアミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0124】
3級アミノ基としては、例えば、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-メチルエチルアミノ基、N,N-ジプロピルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基等の脂肪族アミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基等の芳香族アミノ基等が挙げられる。3級アミノ基は、ジアルキルアミノ基であることが好ましい。ジアルキルアミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0125】
置換基を有していてもよいアミノ基は、好ましくは3級アミノ基、より好ましくはジアルキルアミノ基、より一層好ましくはジメチルアミノ基である。
【0126】
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基
アルキルオキシ基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシ基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。アルキルオキシ基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0127】
置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは炭素数1~6のアルキルオキシ基、より好ましくは炭素数1~4のアルキルオキシ基、より一層好ましくは炭素数1~3のアルキルオキシ基、最も好ましくはメチルオキシ基である。
【0128】
式(V)で表される基
式(V)において、R100は、式:-[(Y1)a-Z1]b-(Y1)c-で表される2価の基を表す。
【0129】
Y1は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表す。
【0130】
以下、置換基を有していてもよいメチレン基、及び、置換基を有していてもよいフェニレン基について説明する。
【0131】
[置換基を有していてもよいメチレン基]
メチレン基(-CH2-)は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0132】
[置換基を有していてもよいフェニレン基]
フェニレン基は、フェニル基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の基である。フェニレン基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0133】
式:-[(Y1)a-Z1]b-(Y1)c-に複数のY1が登場する場合(すなわち、bが1以上の整数であり、cが1以上の整数である場合、又は、bが0であり、cが2以上の整数である場合)、複数のY1は同一の基であってもよいし、異なる基であっていてもよい。
【0134】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y1はすべてメチレン基であることが好ましい。Y1がすべてメチレン基である場合、R100は、式:-[(CH2)a-Z1]b-(CH2)c-で表される2価の基である。
【0135】
式(V)において、Z1は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表す。
【0136】
以下、エーテル基、及び、置換基を有していてもよいイミノ基について説明する。
【0137】
[エーテル基]
エーテル基は、-O-で表される2価の基である。
【0138】
[置換基を有していてもよいイミノ基]
イミノ基は、-NH-で表される2価の基である。イミノ基は、置換基を有していてもよい。置換基の数は1である。置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0139】
式:-[(Y1)a-Z1]b-(Y1)c-に複数のZ1が登場する場合(すなわち、bが2以上である場合)、複数のZ1は同一の基であってもよいし、異なる基であっていてもよい。
【0140】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Z1はすべて、エーテル基であるか、又は、イミノ基であることが好ましく、エーテル基であることがより好ましい。
【0141】
Z1がすべてエーテル基である実施形態において、Y1はすべてメチレン基であることが好ましい。Y1がすべてメチレン基である場合、R100は、式:-[(CH2)a-O]b-(CH2)c-で表される2価の基である。
【0142】
Z1がすべてイミノ基である実施形態において、Y1はすべてメチレン基であることが好ましい。Y1がすべてメチレン基である場合、R100は、式:-[(CH2)a-NH]b-(CH2)c-で表される2価の基である。
【0143】
aは、1以上の整数を表す。aは、例えば1以上6以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、aは、好ましくは2以上5以下の整数、より好ましくは2以上4以下の整数、より一層好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0144】
bは、0以上の整数を表す。bは、例えば0以上5以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、bは、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上3以下の整数、より一層好ましくは1又は2、最も好ましくは1である。
【0145】
cは、1以上の整数を表す。cは、例えば1以上6以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、cは、好ましくは2以上5以下の整数、より好ましくは2以上4以下の整数、より一層好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0146】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、a及びcは、同一の整数であることが好ましく、ともに2であることがより好ましい。
【0147】
a及びcがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y1はすべてメチレン基であることが好ましい。Y1がすべてメチレン基である場合、R100は、式:-[(CH2)2-Z1]b-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0148】
Y1がメチレン基であり、a及びcがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Z1はすべて、エーテル基であるか、又は、イミノ基であることが好ましく、エーテル基であることがより好ましい。Z1がすべてエーテル基である場合、R100は、式:-[(CH2)2-O]b-(CH2)2-で表される2価の基である。Z1がすべてイミノ基である場合、R100は、式:-[(CH2)2-NH]b-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0149】
Y1がすべてメチレン基であり、Z1がすべてエーテル基であり、a及びcがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、bは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。bが1である場合、R100は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である。bが2である場合、R100は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0150】
Y1がすべてメチレン基であり、Z1がすべてイミノ基であり、a及びcがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、bは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。bが1である場合、R100は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基である。bが2である場合、R100は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0151】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、R100は、式:-[(CH2)2-O]b-(CH2)2-、又は、式:-[(CH2)2-NH]b-(CH2)2-で表される2価の基であることが好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基であることがより好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基であることがより一層好ましい。
【0152】
R100が、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である場合、式(V)で表される基は、モルホリノ基である。
【0153】
一実施形態において、L1及びL3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアミノ基である。置換基を有していてもよいアミノ基は、好ましくは3級アミノ基、より好ましくはジアルキルアミノ基、より一層好ましくはジメチルアミノ基である。
【0154】
別の実施形態において、L1及びL3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは炭素数1~6のアルキルオキシ基、より好ましくは炭素数1~4のアルキルオキシ基、より一層好ましくは炭素数1~3のアルキルオキシ基、最も好ましくはメチルオキシ基である。
【0155】
さらに別の実施形態において、L1及びL3は、それぞれ独立して、式(V)で表される基である。式(V)で表される基は、モルホリノ基であることが好ましい。
【0156】
式(IV)において、L2は、式:-[(Y2)d-Z2]e-(Y2)f-で表される2価の基を表す。
【0157】
以下、式:-[(Y2)d-Z2]e-(Y2)f-で表される2価の基について説明する。
【0158】
Y2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表す。置換基を有していてもよいメチレン基、及び、置換基を有していてもよいフェニレン基に関する説明は、Y1と同様である。Y1に関する説明は、別段規定される場合を除き、Y2にも適用される。
【0159】
式:-[(Y2)d-Z2]e-(Y2)f-に登場する複数のY2は同一の基であってもよいし、異なる基であっていてもよい。
【0160】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y2はすべてメチレン基であることが好ましい。Y2がすべてメチレン基である場合、L2は、式:-[(CH2)d-Z2]e-(CH2)f-で表される2価の基である。
【0161】
Z2は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表す。エーテル基、及び、置換基を有していてもよいイミノ基に関する説明は、Z1と同様である。Z1に関する説明は、別段規定される場合を除き、Z2にも適用される。
【0162】
式:-[(Y2)d-Z2]e-(Y2)f-に複数のZ2が登場する場合(すなわち、eが2以上である場合)、複数のZ2は同一の基であってもよいし、異なる基であっていてもよい。
【0163】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Z2はすべて、エーテル基であるか、又は、イミノ基であることが好ましく、エーテル基であることがより好ましい。
【0164】
Z2がすべてエーテル基である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y2はすべてメチレン基であることが好ましい。Y2がすべてメチレン基である場合、L2は、式:-[(CH2)d-O]e-(CH2)f-で表される2価の基である。
【0165】
Z2がすべてイミノ基である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y2はすべてメチレン基であることが好ましい。Y2がすべてメチレン基である場合、L2は、式:-[(CH2)d-NH]e-(CH2)f-で表される2価の基である。
【0166】
dは、1以上の整数を表す。dは、例えば1以上6以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、dは、好ましくは2以上5以下の整数、より好ましくは2以上4以下の整数、より一層好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0167】
eは、1以上の整数を表す。eは、例えば1以上5以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、eは、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上3以下の整数、より一層好ましくは1又は2、最も好ましくは1である。
【0168】
fは、1以上の整数を表す。fは、例えば1以上6以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、fは、好ましくは2以上5以下の整数、より好ましくは2以上4以下の整数、より一層好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0169】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、d及びfは、同一の整数であることが好ましく、ともに2であることがより好ましい。
【0170】
d及びfがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y2はすべてメチレン基であることが好ましい。Y2がすべてメチレン基である場合、L2は、式:-[(CH2)2-Z2]e-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0171】
Y2がすべてメチレン基であり、d及びfがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Z2はすべて、エーテル基であるか、又は、イミノ基であることが好ましく、エーテル基であることがより好ましい。Z2がすべてエーテル基である場合、L2は、式:-[(CH2)2-O]e-(CH2)2-で表される2価の基である。Z2がすべてイミノ基である場合、L2は、式:-[(CH2)2-NH]e-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0172】
Y2がすべてメチレン基であり、Z2がすべてエーテル基であり、d及びfがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、eは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。eが1である場合、L2は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である。eが2である場合、L2は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0173】
Y2がすべてメチレン基であり、Z2がすべてイミノ基であり、d及びfがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、eは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。eが1である場合、L2は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基である。eが2である場合、L2は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0174】
L1及びL3が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアミノ基(好ましくは3級アミノ基、より好ましくはジアルキルアミノ基、より一層好ましくはジメチルアミノ基)である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、L2は、式:-[(CH2)2-O]e-(CH2)2-、又は、式:-[(CH2)2-NH]e-(CH2)2-で表される2価の基であることが好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基であることがより好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基であることがより一層好ましい。
【0175】
L1及びL3が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルキルオキシ基、より好ましくは炭素数1~4のアルキルオキシ基、より一層好ましくは炭素数1~3のアルキルオキシ基、最も好ましくはメチルオキシ基)である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、L2は式:-[(CH2)2-O]e-(CH2)2-、又は、式:-[(CH2)2-NH]e-(CH2)2-で表される2価の基であることが好ましく、式:-[(CH2)2-O]e-(CH2)2-で表される2価の基であることがより好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基であることがより好ましい。
【0176】
L1及びL3が、それぞれ独立して、式(V)で表される基(好ましくはモルホリノ基)である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、L2は、式:-[(CH2)2-O]e-(CH2)2-、又は、式:-[(CH2)2-NH]e-(CH2)2-で表される2価の基であることが好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基であることがより好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基であることがより一層好ましい。
【0177】
以下、式(VI)で表される多座配位子について説明する。
【0178】
<式(VI)で表される多座配位子>
式(VI)において、R200は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0179】
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0180】
式(VI)において、R300は、式:-[(Y3)g-Z3]h-(Y3)i-で表される2価の基を表す。
【0181】
Y3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいメチレン基、又は、置換基を有していてもよいフェニレン基を表す。置換基を有していてもよいメチレン基、及び、置換基を有していてもよいフェニレン基に関する説明は、Y1と同様である。Y1に関する説明は、別段規定される場合を除き、Y3にも適用される。
【0182】
式:-[(Y3)g-Z3]h-(Y3)i-に登場する複数のY3は同一の基であってもよいし、異なる基であっていてもよい。
【0183】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y3はすべてメチレン基であることが好ましい。Y3がすべてメチレン基である場合、R300は、式:-[(CH2)g-Z3]h-(CH2)i-で表される2価の基である。
【0184】
Z3は、それぞれ独立して、エーテル基、又は、置換基を有していてもよいイミノ基を表す。エーテル基、及び、置換基を有していてもよいイミノ基に関する説明は、Z1と同様である。Z1に関する説明は、別段規定される場合を除き、Z3にも適用される。
【0185】
式:-[(Y3)g-Z3]h-(Y3)i-に複数のZ3が登場する場合(すなわち、hが2以上である場合)、複数のZ3は同一の基であってもよいし、異なる基であっていてもよい。
【0186】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Z3はすべて、エーテル基であるか、又は、イミノ基であることが好ましく、エーテル基であることがより好ましい。
【0187】
Z3がすべてエーテル基である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y3はすべてメチレン基であることが好ましい。Y3がすべてメチレン基である場合、R300は、式:-[(CH2)g-O]h-(CH2)i-で表される2価の基である。
【0188】
Z3がすべてイミノ基である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y3はすべてメチレン基であることが好ましい。Y3がすべてメチレン基である場合、R300は、式:-[(CH2)g-NH]h-(CH2)i-で表される2価の基である。
【0189】
gは、1以上の整数を表す。gは、例えば1以上6以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、gは、好ましくは2以上5以下の整数、より好ましくは2以上4以下の整数、より一層好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0190】
hは、1以上の整数を表す。hは、例えば1以上5以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、hは、好ましくは1以上4以下の整数、より好ましくは1以上3以下の整数、より一層好ましくは1又は2、最も好ましくは1である。
【0191】
iは、1以上の整数を表す。iは、例えば1以上6以下の整数である。ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、iは、好ましくは2以上5以下の整数、より好ましくは2以上4以下の整数、より一層好ましくは2又は3、最も好ましくは2である。
【0192】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、g及びiは、同一の整数であることが好ましく、ともに2であることがより好ましい。
【0193】
g及びiがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Y3はすべてメチレン基であることが好ましい。Y3がすべてメチレン基である場合、R300は、式:-[(CH2)2-Z3]h-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0194】
Y3がすべてメチレン基であり、g及びiがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、Z3はすべて、エーテル基であるか、又は、イミノ基であることが好ましく、エーテル基であることがより好ましい。Z3がすべてエーテル基である場合、R300は、式:-[(CH2)2-O]h-(CH2)2-で表される2価の基である。Z3がすべてイミノ基である場合、R300は、式:-[(CH2)2-NH]h-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0195】
Y3がすべてメチレン基であり、Z3がすべてエーテル基であり、g及びiがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、hは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。hが1である場合、R300は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である。hが2である場合、R300は、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0196】
Y3がすべてメチレン基であり、Z3がすべてイミノ基であり、g及びiがともに2である実施形態において、ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、hは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。hが1である場合、R300は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基である。hが2である場合、R300は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基である。
【0197】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、R200は、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがより一層好ましく、メチル基であることがより一層好ましく、R300は、式:-[(CH2)2-O]e-(CH2)2-、又は、式:-[(CH2)2-NH]e-(CH2)2-で表される2価の基であることが好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-、又は、式:-(CH2)2-NH-(CH2)2-NH-(CH2)2-で表される2価の基であることがより好ましく、式:-(CH2)2-O-(CH2)2-で表される2価の基であることがより一層好ましい。
【0198】
多座配位子の好ましい具体例は、以下の通りである。
【0199】
【0200】
配位子(A)~(E)は、式(IV)で表される多座配位子の具体例であり、配位子(F)は、式(VI)で表される多座配位子の具体例である。
【0201】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、配位子(A)~(E)のうち、配位子(A)~(D)が好ましく、配位子(A)及び(C)がより好ましく、配位子(A)がより一層好ましい。
【0202】
<ケトン誘導体(I)を製造する方法>
ケトン誘導体(I)を製造する方法は、チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、グリニャール試薬(III)中のMgに配位する多座配位子であって、酸素原子及び窒素原子から選択される2個以上のドナー原子を含む多座配位子と、を混合して、ケトン誘導体(I)を形成する工程を含む。以下、グリニャール試薬(III)中のMgに配位する多座配位子であって、酸素原子及び窒素原子から選択される2個以上のドナー原子を含む多座配位子を単に「多座配位子」という場合がある。
【0203】
チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子とを混合することにより、ケトン誘導体(I)の高収率を実現しつつ、銅塩の使用量を低減することができる。多座配位子がグリニャール試薬(III)の反応性を抑制することにより、副生成物であるアルコール(例えば、W1-C(-OH)(-W2)(-W2))の生成が抑制され、ケトン誘導体(I)の高収率を実現しつつ、銅塩の使用量を低減することができると考えられる。
【0204】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、多座配位子とグリニャール試薬(III)と銅塩とを混合した後、チオエステル誘導体(II)を混合することが好ましい。なお、多座配位子とグリニャール試薬(III)と銅塩とを混合すると、グリニャール試薬(III)及び銅塩により有機銅試薬が形成されると考えられる。
【0205】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、銅塩の使用量は、チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、好ましくは0.001モル以上0.5モル以下、より好ましくは0.002モル以上0.3モル以下、より一層好ましくは0.003モル以上0.2モル以下、より一層好ましくは0.005モル以上0.1モル以下、より一層好ましくは0.01モル以上0.1モル以下、より一層好ましくは0.03モル以上0.1モル以下、より一層好ましくは0.05モル以上0.1モル以下である。「銅塩の使用量」は、1種の銅塩が使用される場合には当該1種の銅塩の使用量を意味し、2種以上の銅塩が使用される場合には当該2種以上の銅塩の合計使用量を意味する。
【0206】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、銅塩は、CuCl、CuBr、CuTC及びCuCNから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0207】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、多座配位子の使用量は、チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、好ましくは1.0モル以上3.0モル以下、より好ましくは1.0モル以上2.5モル以下、より一層好ましくは1,0モル以上2.2モル以下、より一層好ましくは1.0モル以上2.1モル以下である。「多座配位子の使用量」は、1種の多座配位子が使用される場合には当該1種の多座配位子の使用量を意味し、2種以上の多座配位子が使用される場合には当該2種以上の多座配位子の合計使用量を意味する。
【0208】
ケトン誘導体(I)の高収率及び銅塩の使用量の低減をより効果的に実現する観点から、グリニャール試薬(III)の使用量は、チオエステル誘導体(II) 1モルに対して、好ましくは1.0モル以上3.0モル以下、より好ましくは1.0モル以上2.5モル以下、より一層好ましくは1.0モル以上2.0モル以下、より一層好ましくは1.0モル以上1.5モル以下である。「グリニャール試薬(III)の使用量」は、1種のグリニャール試薬(III)が使用される場合には当該1種のグリニャール試薬(III)の使用量を意味し、2種以上のグリニャール試薬(III)が使用される場合には当該2種以上のグリニャール試薬(III)の合計使用量を意味する。
【0209】
グリニャール試薬(III)として、グリニャール試薬(IIIa)及びグリニャール試薬(IIIb)の両方を選択する場合、グリニャール試薬(IIIb)の量は、例えば、グリニャール試薬(IIIa)及びグリニャール試薬(IIIb)の合計質量を基準として、10質量%以上90質量%以下である。
【0210】
チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子との混合は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。これにより、チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子とを効率よく混合することができる。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。有機溶媒の具体例は、上記の通りである。1種の有機溶媒を使用してもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて使用してもよい。有機溶媒は、好ましくは、THF、2-メチル-THF、t-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、ヘキサン、へプタン、塩化メチレン又はこれらの混合溶媒である。
【0211】
チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子とを効率よく混合する観点から、溶媒の使用量は、チオエステル誘導体(II) 1gに対して、好ましくは1mL以上1000mL以下、より好ましくは3mL以上50mL以下、より一層好ましくは5mL以上30mL以下、より一層好ましくは3mL以上20mL以下である。
【0212】
チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子とを混合する際の温度は、通常-10℃以上100℃以下の範囲内である。一実施形態に係る方法によると、グリニャール試薬(III)の使用により、比較的高い温度条件下でもケトン誘導体(I)を製造することができる。これにより、ケトン誘導体(I)の合成条件に-10℃より低い超低温を必要とする方法と比較して、温度管理に関連した設備コストを抑制し、ケトン誘導体(I)のより安価な工業的生産を実現することができる。混合の際の温度は、好ましくは10℃以上80℃以下、より好ましくは20℃以上60℃以下の範囲内である。この温度範囲内であると、ケトン誘導体(I)の収率がより高まる傾向にある。
【0213】
チオエステル誘導体(II)と、グリニャール試薬(III)と、銅塩と、多座配位子とを混合する際の時間は、通常0.5~72時間、好ましくは1~48時間である。
【0214】
得られたケトン誘導体(I)は、以下の方法で単離することができる。
【0215】
先ず、反応液にクエンチ液(例えば、水、HCl水溶液等)を加えて、反応を停止させる。クエンチ液を加えた反応液を撹拌して、水層と有機層とに分離させる。有機層を抽出した後、水層に有機溶媒を加えて、有機層と水層とに再び分離させる。有機層を取り出し、先に抽出した有機層と合わせて総有機層を得る。総有機層を、洗浄液(例えば、水、HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液、食塩水等)で洗浄した後、硫酸ナトリウム等を用いて乾燥させて、ケトン誘導体(I)を含む残渣を得る。
【0216】
水層に加えられる有機溶媒の具体例は、上記の通りである。1種の有機溶媒を使用してもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて使用してもよい。有機溶媒は、好ましくは、酢酸エチル、トルエン、t-ブチルメチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒である。
【0217】
ケトン誘導体(I)は、常法に従って精製することができる。ケトン誘導体(I)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【実施例0218】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において、グリニャール試薬として、市販のPhMgBr(シグマアルドリッチ社製)を使用した。
【0219】
<参考例1>
下記式で示される反応を行い、4-メチル安息香酸(化合物0)からS-ドデシル 4-メチルベンゾチオエエステル(化合物1)を製造した。下記式中、Rはメチル基を表す。
【0220】
【0221】
4-メチル安息香酸(2.10g,15.4mmol)、1-ドデカンチオール(3.36mL,14.0mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(184mg,0.140mmol)を含むジクロロメタン(DCM)溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(3.04g,14.7mmol)を0℃で加え、室温で15時間反応させた。反応終了後、DCMを使用してセライトでろ過し、溶媒留去を行った。生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=30/1)により精製した。S-ドデシル 4-メチルベンゾチオエエステル(化合物1)(2.95mg,9.20mmol)を収率66%で得た。こうして得られたS-ドデシル 4-メチルベンゾチオエエステル(化合物1)を以下の実施例で使用した。
【0222】
得られたS-ドデシル 4-メチルベンゾチオエエステル(化合物1)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、次の通りであった。
1H NMR(400MHz,CDCl3,30℃) δ 7.87(d,J=8.2Hz,2H),7.23(d,J=8.0Hz,2H),3.05(t,J=7.3Hz,2H),2.40(s,3H),1.66(quint,J=7.4Hz,2H),1.42(quint,J=7.1Hz,2H),1.34-1.26(m,16H),0.88(t,J=6.8Hz,3H).
【0223】
<実施例1>
下記式で示される反応を行い、S-ドデシル 4-メチルベンゾチオエエステル(化合物1)から4-メチルベンゾフェノン(化合物2)を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0224】
【0225】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(18.9μL,0.100mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(18.9μL,0.100mmol(1.00当量))に、PhMgBr(0.110mmol(1.10当量))のTHF溶液(0.50M,0.220mL)を加え、得られた混合溶液をCuTC(I)(3.81mg,0.0200mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2.5mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuTC-PhMgBr混合溶液を、化合物1(32.1mg,0.100mmol)を含むTHF溶液(2.5mL)に5分かけて室温で加え、30℃で3時間反応させた。塩酸(1M,1mL)を加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を加えてショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/0~50/1)により精製した。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用してガスクロマトグラフィー(GC)分析により収率を算出した。結果を表3に示す。実施例1において、化合物2の収率は62%、化合物3の収率は8%であった。
【0226】
ガスクロマトグラフィー分析条件は、次の通りである。
装置:Agilent Technologies製 7820A GC System
カラム:Agilent Technologies製 DB-1(長さ:30m,内径:0.25mm)
カラム温度:100-320℃
測定時間:20分
試料導入部(SPL1)温度:320℃
検出器温度:320℃
キャリアガス:He,1.1mL/min,スプリット 1:50
【0227】
得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、次の通りであった。
1H NMR (400MHz,CDCl3,30℃) δ 7.78(d,J=7.3Hz,2H),7.72(d,J=8.1Hz,2H),7.57(t,J=7.4Hz,1H),7.46(t,J=7.8Hz,2H),7.27(d,J=8.0Hz,2H),2.43(s,3H).
【0228】
<実施例2>
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(18.9μL,0.100mmol(1.00当量))に代えて、ビス(2-モルホリノエチル)エーテル(23.1μL,0.100mmol(1.00当量))を使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。実施例2において、化合物2の収率は48%、化合物3の収率は23%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0229】
<実施例3>
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(18.9μL,0.100mmol(1.00当量))に代えて、ペンタメチルジエチレントリアミン(20.9μL,0.100mmol(1.00当量))を使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。実施例3において、化合物2の収率は50%、化合物3の収率は16%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0230】
<実施例4>
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(18.9μL,0.100mmol(1.00当量))に代えて、ジエチレングリコールジメチルエーテル(14.1μL,0.100mmol(1.00当量))を使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。実施例4において、化合物2の収率は48%、化合物3の収率は22%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0231】
<実施例5>
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(18.9μL,0.100mmol(1.00当量))に代えて、トリエチレングリコールジメチルエーテル(18.0μL,0.100mmol(1.00当量))を使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。実施例5において、化合物2の収率は46%、化合物3の収率は22%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0232】
【0233】
<実施例6>
下記式で示される反応を行い、化合物1から化合物2を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0234】
【0235】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(49.4μL,0.263mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(49.4μL,0.263mmol(1.05当量))に、PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)を加え、得られた混合溶液をCuCl(I)(1.24mg,0.0125mmol(0.05当量))のTHF懸濁液(2mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuCl-PhMgBr混合溶液を、化合物1(80.2mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2mL)に5分かけて10℃で加え、10℃で24時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を使用してショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した。結果を表4に示す。実施例6において、化合物2の収率は47%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0236】
<実施例7>
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(49.4μL,0.263mmol(1.05当量))に代えて、4-メチルモルホリン(28.5μL,0.263mmol(1.05当量))を使用した点を除き、実施例6と同様の操作を行った。結果を表4に示す。実施例7において、化合物2の収率は44%、化合物3の収率は14%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0237】
【0238】
<実施例8>
下記式で示される反応を行い、化合物1から化合物2を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0239】
【0240】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol(1.20当量))に、PhMgBr(0.300mmol(1.20当量))のTHF溶液(0.50M,0.600mL)を加え、得られた混合溶液をCuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuCl-PhMgBr混合溶液を、化合物1(80.2mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2mL)に5分かけて室温で加え、30℃で3時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を使用してショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した。結果を表5に示す。実施例8において、化合物2の収率は72%、化合物3の収率は8%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0241】
<実施例9>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuBr(I)(7.17mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行った。結果を表5に示す。実施例9において、化合物2の収率は75%、化合物3の収率は8%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0242】
<実施例10>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuOAc(I)(6.13mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行った。結果を表5に示す。実施例10において、化合物2の収率は61%、化合物3の収率は13%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0243】
<実施例11>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuOtBu(I)(6.83mg,0.0125mmol(0.05当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行った。結果を表5に示す。実施例11において、化合物2の収率は68%、化合物3の収率は10%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0244】
<実施例12>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuTC(I)(9.54mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行った。結果を表5に示す。実施例11において、化合物2の収率は62%、化合物3の収率は20%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0245】
<実施例13>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuCN(I)(4.48mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行った。結果を表5に示す。実施例11において、化合物2の収率は40%、化合物3の収率は10%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0246】
【0247】
<実施例14>
下記式で示される反応を行い、化合物1から化合物2を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0248】
【0249】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol(1.20当量))に、PhMgBr(0.300mmol(1.20当量))のTHF溶液(0.50M,0.600mL)を加え、得られた混合溶液をCuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuCl-PhMgBr混合溶液を、化合物1(80.2mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2mL)にシリンジポンプを用いて1時間あたり1mLのペースで30℃で滴下し、滴下開始から30℃で計3時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を使用してショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した。実施例14において、化合物2の収率は65%、化合物3の収率は6%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0250】
<実施例15>
下記式で示される反応を行い、化合物1から化合物2を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0251】
【0252】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol(1.20当量))に、PhMgBr(0.300mmol(1.20当量))のTHF溶液(0.50M,0.600mL)を加え、得られた混合溶液をCuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuCl-PhMgBr混合溶液を、化合物1(80.2mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2mL)に5分かけて0℃で加え、0℃で24時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を使用してショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した。結果を表6に示す。実施例15において、化合物2の収率は78%、化合物3の収率は4%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0253】
<実施例16>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuCl(I)(1.24mg,0.0125mmol(0.05当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点、
PhMgBr(0.300mmol(1.20当量))のTHF溶液(0.50M,0.600mL)に代えて、PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)を使用した点、並びに、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol(1.20当量))に代えて、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(49.4μL,0.263mmol(1.05当量))を使用した点
を除き、実施例15と同様の操作を行った。結果を表6に示す。実施例16において、化合物2の収率は43%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0254】
<実施例17>
CuCl(I)(4.95mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に代えて、CuCl(I)(0.25mg,0.0025mmol(0.01当量))のTHF懸濁液(2mL)を使用した点、
PhMgBr(0.300mmol(1.20当量))のTHF溶液(0.50M,0.600mL)に代えて、PhMgBr(0.253mmol(1.01当量))のTHF溶液(0.50M,0.505mL)を使用した点、並びに、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol(1.20当量))に代えて、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(47.6μL,0.253mmol(1.01当量))を使用した点
を除き、実施例15と同様の操作を行った。結果を表6に示す。実施例16において、化合物2の収率は28%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0255】
【0256】
<実施例18>
下記式で示される反応を行い、化合物1から化合物2を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0257】
【0258】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(49.4μL,0.263mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(49.4μL,0.263mmol(1.05当量))に、PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)を加え、得られた混合溶液をCuCl(I)(1.24mg,0.0125mmol(0.05当量))のTHF懸濁液(2mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuCl-PhMgBr混合溶液を、化合物1(80.2mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2mL)に5分かけて0℃で加え、0℃で24時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を使用してショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した。結果を表7に示す。実施例18において、化合物2の収率は43%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0259】
<実施例19>
反応時間を24時間から48時間に変更した点を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例19において、化合物2の収率は63%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0260】
<実施例20>
反応温度を0℃から10℃に変更した点を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例20において、化合物2の収率は47%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0261】
<実施例21>
PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)に代えて、PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)とLiCl(11.2mg,0.263mmol(1.05当量))との混合液を使用した点を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例21において、化合物2の収率は68%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0262】
<実施例22>
反応温度を0℃から10℃に変更した点、
反応時間を24時間から48時間に変更した点、並びに、
PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)に代えて、PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)とLiCl(11.2mg,0.263mmol(1.05当量))との混合液を使用した点
を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例22において、化合物2の収率は66%、化合物3の収率は4%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0263】
<実施例23>
反応温度を0℃から10℃に変更した点、
反応時間を24時間から48時間に変更した点、
PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)に代えて、PhMgBr(0.263mmol(1.05当量))のTHF溶液(0.50M,0.525mL)とLiCl(11.2mg,0.263mmol(1.05当量))との混合液を使用した点、並びに、
CuClのTHF懸濁液の使用量を2mLから1mLに変更するとともに、化合物1を含むTHF溶液の使用量を2mLから1mLに変更した点
を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例23において、化合物2の収率は77%、化合物3の収率は8%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0264】
<実施例24>
PhMgBrの使用量を0.263mmol(1.05当量))から0.276mmol(1.10当量))に変更した点、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの使用量を0.263mmol(1.05当量))から0.276mmol(1.10当量))に変更した点、並びに、
CuClのTHF懸濁液の使用量を2mLから1mLに変更するとともに、化合物1を含むTHF溶液の使用量を2mLから1mLに変更した点
を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例24において、化合物2の収率は79%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0265】
<実施例25>
PhMgBrの使用量を0.263mmol(1.05当量))から0.276mmol(1.10当量))に変更した点、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの使用量を0.263mmol(1.05当量))から0.276mmol(1.10当量))に変更した点、
反応時間を24時間から48時間に変更した点、並びに、
CuClのTHF懸濁液の使用量を2mLから1mLに変更するとともに、化合物1を含むTHF溶液の使用量を2mLから1mLに変更した点
を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例25において、化合物2の収率は81%、化合物3の収率は3%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0266】
<実施例26>
PhMgBrの使用量を0.263mmol(1.05当量))から0.300mmol(1.20当量))に変更した点、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの使用量を0.263mmol(1.05当量))から0.500mmol(2.00当量))に変更した点、
反応時間を24時間から48時間に変更した点、並びに、
CuClのTHF懸濁液の使用量を2mLから1mLに変更するとともに、化合物1を含むTHF溶液の使用量を2mLから1mLに変更した点
を除き、実施例18と同様の操作を行った。結果を表7に示す。実施例26において、化合物2の収率は91%、化合物3の収率は痕跡量であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0267】
【0268】
<実施例27>
下記式で示される反応を行い、化合物1から化合物2を製造した。化合物1から化合物2を製造する際、化合物3が副生される。なお、「Ph」はフェニル基を表す。
【0269】
【0270】
PhMgBr中のMgに配位する配位子として、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol)を使用した。ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(56.4μL,0.300mmol(1.20当量))に、PhMgBr(0.300mmol(1.20当量))のTHF溶液(0.50M,0.600mL)を加え、得られた混合溶液をCuTC(I)(9.54mg,0.0500mmol(0.20当量))のTHF懸濁液(2mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuTC-PhMgBr混合溶液を、化合物1(80.2mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2mL)に5分かけて室温で加え、0℃で24時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を使用してショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用して1H NMR測定で得られたピークの面積比により収率を算出した。結果を表8に示す。実施例27において、化合物2の収率は79%、化合物3の収率は9%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0271】
<実施例28>
反応時間を24時間から6時間に変更した点を除き、実施例27と同様の操作を行った。結果を8に示す。実施例28において、化合物2の収率は75%、化合物3の収率は3%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0272】
<実施例29>
PhMgBrの使用量を0.300mmol(1.20当量)から0.350mmol(1.40当量)に変更した点、並びに、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの使用量を0.300mmol(1.20当量)から0.350mmol(1.40当量)に変更した点
を除き、実施例27と同様の操作を行った。結果を表8に示す。実施例29において、化合物2の収率は88%、化合物3の収率は12%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0273】
<実施例30>
PhMgBrの使用量を0.300mmol(1.20当量)から0.330mmol(1.30当量)に変更した点、並びに、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの使用量を0.300mmol(1.20当量)から0.330mmol(1.30当量)に変更した点
を除き、実施例27と同様の操作を行った。結果を表8に示す。実施例30において、化合物2の収率は87%、化合物3の収率は6%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0274】
<実施例31>
PhMgBrの使用量を0.300mmol(1.20当量)から0.330mmol(1.30当量)に変更した点、
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルの使用量を0.300mmol(1.20当量)から0.330mmol(1.30当量)に変更した点、並びに、
溶媒をTHFから、THFと1,4-ジオキサンとの混合溶媒に変更した点
を除き、実施例27と同様の操作を行った。結果を表8に示す。実施例31において、化合物2の収率は75%、化合物3の収率は21%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0275】
【0276】
<比較例1>
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルを使用しなかった点、並びに、CuTC(I)の使用量を0.0200mmol(0.20当量)から0.25mmol(1.00当量)に変更した点を除き、実施例1と同様の操作を行った。比較例1において、化合物2の収率は80%であった。得られた4-メチルベンゾフェノン(化合物2)の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、実施例1と同様であった。
【0277】
<比較例2>
下記式で示される反応を行い、化合物4から化合物5を製造した。化合物4から化合物5を製造する際、化合物6及び7が副生される。なお、「Et」はエチル基、「Ph」はフェニル基を表す。
【0278】
【0279】
PhMgBr(0.275mmol(1.10当量))のTHF溶液(0.50M,0.550mL)を、CuCl(I)(18.6mg,0.188mmol(0.75当量))のTHF懸濁液(2.0mL)に5分かけてゆっくり滴下し、室温で10分間攪拌した。得られたCuCl-PhMgBr混合溶液を、化合物4(94.6mg,0.250mmol)を含むTHF溶液(2.0mL)に5分かけて室温で加え、30℃で3時間反応させた。塩酸(1M)を1mL加えて反応を停止後、酢酸エチル(EtOAc)を加えてショートパッドシリカでろ過し、溶媒留去を行った。トリフェニルメタン(Ph3CH)を内部標準物質として使用してガスクロマトグラフィー(GC)分析により収率を算出した。ガスクロマトグラフィー分析条件は、実施例1と同様である。結果を表9に示す。比較例2において、化合物5の収率は56%、化合物6の収率は痕跡量、化合物7の収率は痕跡量であった。
【0280】
<比較例3>
PhMgBrの使用量を0.275mmol(1.10当量)から0.263mmol(1.05当量)に変更した点、並びに、CuCl(I)の使用量を0.188mmol(0.75当量)から0.213mmol(0.85当量)に変更した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例3において、化合物5の収率は58%、化合物6の収率は痕跡量、化合物7の収率はn.d.であった。
【0281】
<比較例4>
PhMgBrの使用量を0.275mmol(1.10当量)から0.263mmol(1.05当量)に変更した点、並びに、CuCl(I)の使用量を0.188mmol(0.75当量)から0.238mmol(0.95当量)に変更した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例4において、化合物5の収率は痕跡量、化合物6の収率はn.d.、化合物7の収率はn.d.であった。
【0282】
<比較例5>
PhMgBrの使用量を0.275mmol(1.10当量)から0.390mmol(1.56当量)に変更した点、並びに、CuCl(I)の使用量を0.188mmol(0.75当量)から0.250mmol(1.00当量)に変更した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例5において、化合物5の収率は59%、化合物6の収率は11%、化合物7の収率はn.d.であった。
【0283】
<比較例6>
PhMgBrの使用量を0.275mmol(1.10当量)から0.325mmol(1.30当量)に変更した点、並びに、CuCl(I)(18.6mg,0.188mmol(0.75当量))のTHF懸濁液(2.0mL)に代えて、CuBr(I)(35.9mg,0.250mmol(1.00当量))のTHF懸濁液(2.0mL)を使用した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例6において、化合物5の収率は71%、化合物6の収率は2%、化合物7の収率はn.d.であった。
【0284】
<比較例7>
PhMgBrの使用量を0.275mmol(1.10当量)から0.325mmol(1.30当量)に変更した点、並びに、CuCl(I)(18.6mg,0.188mmol(0.75当量))のTHF懸濁液(2.0mL)に代えて、CuOAc(I)(30.7mg,0.250mmol(1.00当量))のTHF懸濁液(2.0mL)を使用した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例7において、化合物5の収率は80%、化合物6の収率は痕跡量、化合物7の収率はn.d.であった。
【0285】
<比較例8>
PhMgBrの使用量を0.275mmol(1.10当量)から0.325mmol(1.30当量)に変更した点、並びに、CuCl(I)(18.6mg,0.188mmol(0.75当量))のTHF懸濁液(2.0mL)に代えて、CuTC(I)(47.7mg,0.250mmol(1.00当量))のTHF懸濁液(2.0mL)を使用した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例8において、化合物5の収率は87%、化合物6の収率は9%、化合物7の収率はn.d.であった。
【0286】
<比較例9>
CuCl(I)(18.6mg,0.188mmol(0.75当量))のTHF懸濁液(2.0mL)に代えて、CuTC(I)(47.7mg,0.250mmol(1.00当量))のTHF懸濁液(2.0mL)を使用した点、並びに、反応時間を3時間から1時間に変更した点を除き、比較例2と同様の操作を行った。結果を表9に示す。比較例9において、化合物5の収率は6%、化合物6の収率はn.d.、化合物7の収率はn.d.であった。
【0287】