(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057328
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】作業機械の異常判定装置及びこれを備えた作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240417BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
E02F9/20 H
E02F9/20 M
E02F9/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163988
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】小熊 尚太
(72)【発明者】
【氏名】大野 修一
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AC10
2D003BA07
2D015GB01
(57)【要約】
【課題】作業機械における異常を判定する場合において誤判定がなされることを抑制する。
【解決手段】異常判定装置101は、操作器40に与えられる操作の操作量を検出する操作検出器31と、作業機械100の動作を検出する動作検出器32と、操作の操作量の特性の基準としての基準操作特性を予め記憶するコントローラ70と、を備える。コントローラ70は、操作検出器31による操作の操作量の検出結果を用いて操作の操作量の実際の特性である実操作特性を取得し、実操作特性が基準操作特性に対応する場合には、動作検出器32による作業機械100の動作の検出結果を用いて作業機械100の異常を判定し、実操作特性が基準操作特性に対応しない場合には異常の判定を保留する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を動かすためにオペレータによって操作器に与えられる操作の操作量を検出する操作検出器と、
前記作業機械の動作を検出する動作検出器と、
前記操作の操作量の特性の基準としての基準操作特性を予め記憶するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記操作検出器による前記操作の操作量の検出結果を用いて前記操作の操作量の実際の特性である実操作特性を取得し、前記実操作特性が前記基準操作特性に対応する場合には、前記動作検出器による前記作業機械の動作の検出結果を用いて前記作業機械の異常を判定し、前記実操作特性が前記基準操作特性に対応しない場合には前記異常の判定を保留する、異常判定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記基準操作特性に対応する前記作業機械の動作の特性の基準としての基準動作特性を前記基準操作特性と関連付けて予め記憶し、
前記動作検出器による前記作業機械の動作の検出結果を用いて前記作業機械の動作の実際の特性である実動作特性を取得し、
前記実操作特性が前記基準操作特性に対応する場合には、前記実動作特性と前記基準動作特性とを比較することにより前記異常の判定を行う、請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記基準操作特性は、前記作業機械が行う作業であって予め定められた第1作業に関連づけられて前記コントローラに記憶された第1基準操作特性であり、
前記コントローラは、前記作業機械が行う作業であって前記第1作業とは異なる第2作業に関連付けられた第2基準操作特性をさらに記憶し、前記作業機械が行う作業が前記第1作業である場合には前記第1基準操作特性を用いて前記異常の判定を行い、前記作業機械が行う作業が前記第2作業である場合には前記第2基準操作特性を用いて前記異常の判定を行う、請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記動作検出器による前記作業機械の動作の検出結果を用いて前記作業機械が行う作業が前記第1作業及び前記第2作業の何れであるかを判定する、請求項3に記載の異常判定装置。
【請求項5】
前記基準動作特性は、前記作業機械が行う作業であって予め定められた第1作業に関連づけられて前記コントローラに記憶された第1基準動作特性であり、
前記コントローラは、前記作業機械が行う作業であって前記第1作業とは異なる第2作業に関連付けられた第2基準動作特性をさらに記憶し、前記作業機械が行う作業が前記第1作業である場合には前記第1基準動作特性を用いて前記異常の判定を行い、前記作業機械が行う作業が前記第2作業である場合には前記第2基準動作特性を用いて前記異常の判定を行う、請求項2に記載の異常判定装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記操作検出器により検出される前記操作の操作量と、前記基準操作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて前記基準操作特性を作成して記憶する、請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記動作検出器により検出される前記作業機械の動作と、前記基準動作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて前記基準動作特性を作成して記憶する、請求項2に記載の異常判定装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記基準操作特性を記憶する基準特性記憶部を備え、
前記基準特性記憶部は、前記作業機械から離れた位置に配置された管理装置に設けられ、
前記コントローラは、通信器をさらに備え、前記通信器は、前記基準特性記憶部と無線又は有線による通信によりデータの送受信を行うように構成されている、請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の異常判定装置を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械における異常を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、作業車両において油圧ポンプの異常を検知することを目的とする技術を開示している。この特許文献1の作業車両は、動作状態判定部と、異常判定部と、を備える。動作状態判定部は、複数の動作部の組み合わせによる動作状態を判定する。異常判定部は、動作状態判定部によって判定された動作状態に対応し、且つ予め設定された複数の油圧ポンプ間の吐出圧の関係である第1関係と、検出部によって検出された複数の油圧ポンプの間の吐出圧の関係である第2関係と、を比較し、第2関係が第1関係と異なる場合に、複数の油圧ポンプのうち少なくとも1つの油圧ポンプに異常が発生していると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、複数の操作レバーに与えられる操作に基づいて前記動作状態が判定され、この動作状態に対応する前記関係を用いて異常の判定が行われる。しかし、操作レバーに与えられる操作の具体的な特性は、オペレータによって異なることがあるため、複数の操作レバーに与えられる操作と、予め想定された動作状態と、が必ずしも対応しない場合もある。この場合、作業機械の構成要素に異常がないにもかかわらず、異常があると判定される場合、すなわち誤判定がなされる場合がある。
【0005】
本開示は、作業機械における異常を判定する場合において誤判定がなされることを抑制できる異常判定装置及びこれを備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提供される異常判定装置は、作業機械を動かすためにオペレータによって操作器に与えられる操作の操作量を検出する操作検出器と、前記作業機械の動作を検出する動作検出器と、前記操作の操作量の特性の基準としての基準操作特性を予め記憶するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記操作検出器による前記操作の操作量の検出結果を用いて前記操作の操作量の実際の特性である実操作特性を取得し、前記実操作特性が前記基準操作特性に対応する場合には、前記動作検出器による前記作業機械の動作の検出結果を用いて前記作業機械の異常を判定し、前記実操作特性が前記基準操作特性に対応しない場合には前記異常の判定を保留する。
【0007】
この異常判定装置では、基準操作特性が操作の操作量の特性の基準として予めコントローラに記憶されており、コントローラは、実操作特性が基準操作特性に対応する場合には作業機械の異常を判定する一方で、実操作特性が基準操作特性に対応しない場合、言い換えると、想定外の操作特性を有する操作が行われた場合には、異常の判定を保留するので、誤判定がなされることを抑制できる。
【0008】
前記コントローラは、前記基準操作特性に対応する前記作業機械の動作の特性の基準としての基準動作特性を前記基準操作特性と関連付けて予め記憶し、前記動作検出器による前記作業機械の動作の検出結果を用いて前記作業機械の動作の実際の特性である実動作特性を取得し、前記実操作特性が前記基準操作特性に対応する場合には、前記実動作特性と前記基準動作特性とを比較することにより前記異常の判定を行うことが好ましい。この構成では、実動作特性と比較される基準動作特性は、基準操作特性と関連付けて予め記憶されたものであり、基準操作特性を有する操作が行われた場合に想定される動作特性である。従って、この構成では、異常の判定が予め想定された範囲で適切に行われる。
【0009】
前記基準操作特性は、前記作業機械が行う作業であって予め定められた第1作業に関連づけられて前記コントローラに記憶された第1基準操作特性であり、前記コントローラは、前記作業機械が行う作業であって前記第1作業とは異なる第2作業に関連付けられた第2基準操作特性をさらに記憶し、前記作業機械が行う作業が前記第1作業である場合には前記第1基準操作特性を用いて前記異常の判定を行い、前記作業機械が行う作業が前記第2作業である場合には前記第2基準操作特性を用いて前記異常の判定を行ってもよい。この構成では、第1作業において想定される第1基準操作特性が第1作業に関連付けられて記憶され、第2作業において想定される第2基準操作特性が第2作業に関連付けられて記憶されている。そして、コントローラは、第1基準操作特性及び第2基準操作特性のうち実際の作業の内容に応じた基準操作特性を用いて、作業ごとに適切な異常の判定を行うことができる。
【0010】
前記コントローラは、前記動作検出器による前記作業機械の動作の検出結果を用いて前記作業機械が行う作業が前記第1作業及び前記第2作業の何れであるかを判定することが好ましい。この構成では、コントローラが動作検出器による検出結果を用いて自動的に作業を判別するので、例えばオペレータがコントローラに対して作業の内容を特定するための入力を行うことが不要になる。
【0011】
前記基準動作特性は、前記作業機械が行う作業であって予め定められた第1作業に関連づけられて前記コントローラに記憶された第1基準動作特性であり、前記コントローラは、前記作業機械が行う作業であって前記第1作業とは異なる第2作業に関連付けられた第2基準動作特性をさらに記憶し、前記作業機械が行う作業が前記第1作業である場合には前記第1基準動作特性を用いて前記異常の判定を行い、前記作業機械が行う作業が前記第2作業である場合には前記第2基準動作特性を用いて前記異常の判定を行うことが好ましい。この構成では、第1作業において想定される第1基準動作特性が第1作業に関連付けられて記憶され、第2作業において想定される第2基準動作特性が第2作業に関連付けられて記憶されている。そして、コントローラは、第1基準動作特性及び第2基準動作特性のうち実際の作業の内容に応じた基準動作特性を用いて、作業ごとに適切な異常の判定を行うことができる。
【0012】
前記コントローラは、前記操作検出器により検出される前記操作の操作量と、前記基準操作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて前記基準操作特性を作成して記憶していてもよい。この構成では、コントローラは、種々の動作に対応する多数の基準操作特性を予め記憶していなくても、操作検出器により検出される操作の操作量と前記モデルとを用いて、その都度、実際の操作の操作量に適した基準操作特性を作成し、作成した基準操作特性を記憶することができる。
【0013】
前記コントローラは、前記動作検出器により検出される前記作業機械の動作と、前記基準動作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて前記基準動作特性を作成して記憶していてもよい。この構成では、コントローラは、種々の動作に対応する多数の基準動作特性を予め記憶していなくても、動作検出器により検出される作業機械の動作と前記モデルとを用いて、その都度、作業機械の実際の動作に適した基準動作特性を作成し、作成した基準動作特性を記憶することができる。
【0014】
前記コントローラは、前記基準操作特性を記憶する基準特性記憶部を備え、前記基準特性記憶部は、前記作業機械から離れた位置に配置された管理装置に設けられ、前記コントローラは、通信器をさらに備え、前記通信器は、前記基準特性記憶部と無線又は有線による通信によりデータの送受信を行うように構成されていてもよい。この構成では、基準特性記憶部を作業機械に設ける必要がないので、作業機械の構成を簡素化することができる。
【0015】
提供される作業機械は、上述した異常判定装置を備えるので、作業機械における異常を判定する場合において誤判定がなされることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、作業機械における異常を判定する場合において誤判定がなされることを抑制できる異常判定装置及びこれを備えた作業機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
【
図2】前記作業機械の異常判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】前記作業機械が行う掘削作業、持ち上げ旋回作業、排土作業及び復帰旋回作業を示す図である。
【
図4】前記異常判定装置のコントローラが行う演算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】基準操作特性と実操作特性の一例を示すグラフである。
【
図6】基準動作特性と実動作特性の一例を示すグラフである。
【
図7】基準操作特性と実操作特性の他の例を示すグラフである。
【
図8】基準動作特性と実動作特性の他の例を示すグラフである。
【
図9】前記コントローラが行う演算処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図10】作業機械のバケットにおける土砂の収容量に応じた基準動作特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示す作業機械100は、油圧ショベルである。この作業機械100は、下部走行体1と、上部旋回体2と、作業装置3と、を備える。
【0019】
下部走行体1は、左右一対のクローラ走行装置と、これらのクローラ走行装置に支持される下部フレームと、を備える。上部旋回体2は、旋回軸Zの回りに旋回可能に下部走行体1に支持される。旋回軸Zは上下方向に沿って延びる軸である。上部旋回体2は、下部フレームに支持される上部フレームと、上部フレームの前部に支持されるキャブと、上部フレームの後部に支持されるカウンタウェイトと、を備える。
【0020】
作業装置3は、上部旋回体2に起伏可能に支持されるブーム4と、ブーム4に回動可能に支持されるアーム5と、アーム5に回動可能に支持される先端アタッチメントと、を含む。本実施形態では、先端アタッチメントはバケット6である。
【0021】
ブーム4は、上部旋回体2に回動可能に取り付けられたブーム基端部と、その反対側のブーム先端部と、を有する。アーム5は、ブーム先端部に回動可能に取り付けられたアーム基端部と、その反対側のアーム先端部と、を有する。バケット6は、アーム先端部に回動可能に取り付けられた基端部を有する。
【0022】
作業機械100は、エンジンなどの駆動源12と、油圧ポンプ13と、制御弁ユニット14と、複数のアクチュエータと、複数の操作器40(
図2参照)と、をさらに備える。
【0023】
油圧ポンプ13は、駆動源12によって駆動されることにより作動油を吐出する。油圧ポンプ13は、複数のアクチュエータに作動油を供給する。油圧ポンプ13は、後述するコントローラ70からのポンプ容量指令に応じて容量(ポンプ容量)を変えることが可能な可変容量型の油圧ポンプである。
【0024】
制御弁ユニット14は、油圧ポンプ13と複数のアクチュエータとの間に介在し、複数のアクチュエータに供給される作動油を配分する。
【0025】
複数のアクチュエータのそれぞれは、油圧ポンプ13からの作動油が供給されることにより作動する。複数の油圧アクチュエータは、ブーム4を起伏させるための油圧シリンダであるブームシリンダ7と、アーム5を回動させるための油圧シリンダであるアームシリンダ8と、バケット6を回動させるための油圧シリンダであるバケットシリンダ9と、上部旋回体2を旋回させるための油圧モータである旋回モータ10と、下部走行体1を走行させるための油圧モータである左右一対の走行モータ11と、を含む。
【0026】
複数の操作器40は、ブーム操作器40と、アーム操作器40と、バケット操作器40と、旋回操作器40と、左右一対の走行操作器40と、を含む。なお、
図2では、一つの操作器40のみが図示され、その他の操作器40の図示は省略されている。
【0027】
ブーム操作器40は、ブームシリンダ7を作動させるためのブーム操作がオペレータによって与えられる操作レバー41を有する。ブーム操作は、ブーム上げ操作又はブーム下げ操作である。ブーム上げ操作は、ブーム4にブーム上げ動作を行わせるための操作であり、ブーム下げ操作は、ブーム4にブーム下げ動作を行わせるための操作である。ブーム上げ動作は、ブーム4の先端部が地面から遠ざかるようにブーム4が上部旋回体2に対して回動する動作である。ブーム下げ動作は、ブーム4の先端部が地面に近づくようにブーム4が上部旋回体2に対して回動する動作である。
【0028】
アーム操作器40は、アームシリンダ8を作動させるためのアーム操作がオペレータによって与えられる操作レバー41を有する。アーム操作は、アーム引き操作又はアーム押し操作である。アーム引き操作は、アーム5にアーム引き動作を行わせるための操作であり、アーム押し操作は、アーム5にアーム押し動作を行わせるための操作である。アーム引き動作は、アーム5の先端部がブーム4に近づくようにブーム4に対してアーム5が回動する動作である。アーム押し動作は、アーム5の先端部がブーム4から遠ざかるようにブーム4に対してアーム5が回動する動作である。
【0029】
バケット操作器40は、バケットシリンダ9を作動させるためのバケット操作がオペレータによって与えられる操作レバー41を有する。バケット操作は、バケット引き操作又はバケット押し操作である。バケット引き操作は、バケット6にバケット引き動作を行わせるための操作であり、バケット押し操作は、バケット6にバケット押し動作を行わせるための操作である。バケット引き動作は、バケット6の先端部がアーム5に近づくようにバケット6がアーム5に対して回動する動作である。バケット押し動作は、バケット6の先端部がアーム5から遠ざかるようにバケット6がアーム5に対して回動する動作である。
【0030】
旋回操作器40は、旋回モータ10を作動させるための旋回操作がオペレータによって与えられる操作レバー41を有する。旋回操作は、右旋回操作又は左旋回操作である。
【0031】
一対の走行操作器40は、右の走行モータ11を作動させるための走行操作がオペレータによって与えられる操作レバー41を有する右の走行操作器40と、左の走行モータ11を作動させるための走行操作がオペレータによって与えられる操作レバー41を有する左の走行操作器40と、を含む。走行操作は、前進走行操作又は後進走行操作である。
【0032】
複数の操作器40のそれぞれは、操作レバー41に与えられる操作の操作量に応じた2次圧(パイロット圧)を出力するリモコン弁を有する操作器であってもよい。この場合、後述する操作検出器31は、リモコン弁の2次圧(パイロット圧)を検出する圧力センサを含み、検出結果をコントローラ70に入力する。リモコン弁の2次圧(パイロット圧)は、後述する制御弁のパイロットポートに供給される。
【0033】
また、複数の操作器40のそれぞれは、いわゆる電気レバータイプの操作器であってもよい。この場合、後述する操作検出器31は、操作レバー41に与えられる操作の方向及び操作量を検出するセンサを含み、検出結果をコントローラ70に入力する。そして、コントローラ70は、後述する制御弁のパイロットポートに操作量に応じたパイロット圧が供給されるように図略の電磁比例弁に制御指令を入力する。
【0034】
制御弁ユニット14は、ブーム制御弁と、アーム制御弁と、バケット制御弁と、旋回制御弁と、一対の走行制御弁と、を含む。各制御弁は、一対のパイロットポートを有し、パイロットポートに入力されるパイロット圧に応じて開閉作動する。
【0035】
ブーム制御弁は、油圧ポンプ13とブームシリンダ7との間に介在する。ブーム制御弁は、ブーム操作(ブーム上げ操作又はブーム下げ操作)の操作量に応じたパイロット圧がパイロットポートに入力されると、このパイロット圧に応じた流量の作動油がブームシリンダ7に供給されるように開弁する。
【0036】
アーム制御弁は、油圧ポンプ13とアームシリンダ8との間に介在する。アーム制御弁は、アーム操作(アーム引き操作又はアーム押し操作)の操作量に応じたパイロット圧がパイロットポートに入力されると、このパイロット圧に応じた流量の作動油がアームシリンダ8に供給されるように開弁する。
【0037】
バケット制御弁は、油圧ポンプ13とバケットシリンダ9との間に介在する。バケット制御弁は、バケット操作(バケット引き操作又はバケット押し操作)の操作量に応じたパイロット圧がパイロットポートに入力されると、このパイロット圧に応じた流量の作動油がバケットシリンダ9に供給されるように開弁する。
【0038】
旋回制御弁は、油圧ポンプ13と旋回モータ10との間に介在する。旋回制御弁は、旋回操作(右旋回操作又は左旋回操作)の操作量に応じたパイロット圧がパイロットポートに入力されると、このパイロット圧に応じた流量の作動油が旋回モータ10に供給されるように開弁する。
【0039】
一対の走行制御弁のそれぞれは、油圧ポンプ13と当該走行制御弁に対応する走行モータ11との間に介在する。一対の走行制御弁のそれぞれは、走行操作(前進走行操作又は後進走行操作)の操作量に応じたパイロット圧がパイロットポートに入力されると、このパイロット圧に応じた流量の作動油が走行モータ11に供給されるように開弁する。
【0040】
図2に示すように、作業機械100は、本開示の実施形態に係る異常判定装置101を備える。異常判定装置101は、複数の検出器と、コントローラ70と、報知器80と、を備える。
【0041】
複数の検出器は、複数の操作検出器31と、複数の動作検出器32と、を含む。複数の検出器のそれぞれは、検出結果をコントローラ70に入力する。
【0042】
複数の操作検出器31は、ブーム操作検出器31と、アーム操作検出器31と、バケット操作検出器31と、旋回操作検出器31と、一対の走行操作検出器31と、を含む。
【0043】
ブーム操作検出器31は、ブーム操作器40の操作レバー41に与えられるブーム操作の操作方向及び操作量を検出する。アーム操作検出器31は、アーム操作器40の操作レバー41に与えられるアーム操作の操作方向及び操作量を検出する。バケット操作検出器31は、バケット操作器40の操作レバー41に与えられるバケット操作の操作方向及び操作量を検出する。旋回操作検出器31は、旋回操作器40の操作レバー41に与えられる旋回操作の操作方向及び操作量を検出する。一対の走行操作検出器31は、右の走行操作器40の操作レバー41に与えられる走行操作の操作方向及び操作量を検出する走行操作検出器31と、左の走行操作器40の操作レバー41に与えられる走行操作の操作方向及び操作量を検出する走行操作検出器31と、を含む。
【0044】
複数の動作検出器32は、ブーム動作検出器32と、アーム動作検出器32と、バケット動作検出器32と、旋回動作検出器32と、一対の走行動作検出器32と、を含む。
【0045】
ブーム動作検出器32は、ブームシリンダ7の動作又はブーム4の動作を検出する。アーム動作検出器32は、アームシリンダ8の動作又はアーム5の動作を検出する。バケット動作検出器32は、バケットシリンダ9の動作又はバケット6の動作を検出する。旋回動作検出器32は、旋回モータ10の動作又は上部旋回体2の旋回動作を検出する。一対の走行動作検出器32は、右の走行モータ11の動作又は右の走行装置の動作を検出する走行動作検出器32と、左の走行モータ11の動作又は左の走行装置の動作を検出する走行動作検出器32と、を含む。
【0046】
具体的には、ブーム動作検出器32は、上部旋回体2に対するブーム4の角度を検出するブーム角度センサであってよく、水平面に対するブーム4の角度を検出するブーム角度センサであってよく、ブームシリンダ7の動作を検出するストロークセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。ブーム角度センサとしては、例えば、レゾルバ、ロータリーエンコーダ、ポテンショメータ、IMU(慣性計測装置)などを例示できる。ストロークセンサは、油圧シリンダのシリンダ長さを検出するものであってもよく、シリンダチューブに対するピストンロッドの位置を検出するものであってもよい。
【0047】
アーム動作検出器32は、ブーム4に対するアーム5の角度を検出するアーム角度センサであってもよく、水平面に対するアーム5の角度を検出するアーム角度センサであってよく、アームシリンダ8の動作を検出するストロークセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。バケット動作検出器32は、アーム5に対するバケット6の角度を検出するバケット角度センサであってもよく、水平面に対するバケット6の角度を検出するバケット角度センサであってよく、バケットシリンダ9の動作を検出するストロークセンサであってもよく、他のセンサであってもよい。アーム角度センサ及びバケット角度センサとしては、上述したブーム角度センサと同様のものを採用可能である。
【0048】
旋回動作検出器32は、旋回モータ10の回転動作を検出するセンサであってもよく、下部走行体1に対する上部旋回体2の旋回動作を検出するセンサであってもよい。走行動作検出器32は、走行モータ11の回転動作を検出するセンサであってもよい。これらのセンサは、例えば、ジャイロセンサであってもよく、レゾルバなどのロータリーエンコーダであってもよい。
【0049】
コントローラ70は、演算処理装置と、メモリと、を含むコンピュータを備える。コントローラ70は、操作器40に与えられる操作の操作量の特性の基準としての基準操作特性を予め記憶する。コントローラ70は、操作検出器31による操作の操作量の検出結果を用いて操作の操作量の実際の特性である実操作特性を取得し、実操作特性が基準操作特性に対応する場合には、動作検出器32による作業機械100の動作の検出結果を用いて作業機械100の異常を判定し、実操作特性が基準操作特性に対応しない場合には前記異常の判定を保留する。具体的には以下の通りである。
【0050】
コントローラ70は、基準特性記憶部71と、操作特性演算部72と、動作特性演算部73と、異常判定部74と、を備える。基準特性記憶部71、操作特性演算部72、動作特性演算部73、及び異常判定部74のそれぞれは、前記メモリに記憶された制御プログラムが実行されることにより実現される。
【0051】
基準特性記憶部71は、操作器40の操作レバー41に与えられる操作の操作量の特性の基準としての基準操作特性と、基準操作特性に対応する作業機械100の動作の特性の基準としての基準動作特性と、を予め記憶している。基準特性記憶部71は、基準動作特性を基準操作特性と関連付けて記憶している。基準操作特性は、例えば熟練したオペレータによる実際の操作データを用いて作成されたものであってもよい。基準動作特性は、例えば熟練したオペレータによる実際の操作に基づく作業機械100の動作データを用いて作成されたものであってもよい。
【0052】
操作特性演算部72は、操作検出器31からコントローラ70に入力される検出結果(操作検出信号)を用いて、操作器40の操作レバー41に実際に与えられた操作の特性である実操作特性を演算する。
【0053】
動作特性演算部73は、動作検出器32による作業機械100の動作の検出結果を用いて作業機械100の動作の実際の特性である実動作特性を取得する。具体的には、例えば、動作特性演算部73は、動作検出器32からコントローラ70に入力される検出結果(動作検出信号)を用いて、アクチュエータの実際の動作の特性である実動作特性を演算する。
【0054】
異常判定部74は、操作特性演算部72により演算される実操作特性が、基準特性記憶部71に記憶されている基準操作特性に対応しているか否かを判定する。異常判定部74は、実操作特性が基準操作特性に対応している場合には、作業機械100において異常があるか否かを判定する異常判定を行う。一方、異常判定部74は、実操作特性が基準操作特性に対応していない場合には、前記異常判定を保留する。すなわち、異常判定部74は、実操作特性が基準操作特性に対応していない場合には、前記異常判定を行わない。
【0055】
異常判定において、異常判定部74は、動作特性演算部73により演算される実動作特性が、基準特性記憶部71に記憶されている基準動作特性に対応しているか否かを判定する。異常判定部74は、実動作特性が基準動作特性に対応している場合には、作業機械100における実動作特性に関連する構成要素において異常がないと判定する。一方、異常判定部74は、実動作特性が基準動作特性に対応していない場合には、作業機械100における実動作特性に関連する構成要素において異常があると判定する。
【0056】
異常判定部74は、実動作特性に関連する構成要素において異常があると判定した場合、当該構成要素に異常があることをオペレータに伝えるための報知が行われるように報知器80の動作を制御する。また、異常判定部74は、実動作特性に関連する構成要素において異常がないと判定した場合にも、当該構成要素に異常がないことをオペレータに伝えるための報知が行われるように報知器80の動作を制御してもよい。
【0057】
報知器80は、前記構成要素の異常の有無をオペレータに伝えるための表示を行う表示器を含んでいてもよく、前記構成要素の異常の有無をオペレータに音声で伝えるための音響機器を含んでいてもよい。報知器80は、キャブ内に配置されていてもよい。
【0058】
図3は、作業機械100が行う掘削作業、持ち上げ旋回作業、排土作業及び復帰旋回作業を示す図である。
【0059】
図3の(A)に示すように、掘削作業は、バケット6の一部が土壌中に配置された状態でバケット6が下部走行体1に近づく方向に移動することによりバケット6内に土砂を収容するための作業である。この掘削作業は、アーム引き動作と、ブーム上げ動作と、を含む。アーム引き動作は、アーム5の先端部がブーム4に近づくようにブーム4に対してアーム5が回動する動作である。ブーム上げ動作は、ブーム4の先端部が地面から遠ざかるようにブーム4が上部旋回体2に対して回動する動作である。
【0060】
図3の(B)に示す持ち上げ旋回作業は、掘削作業の後に行われる作業である。持ち上げ旋回作業は、掘削作業においてバケット6に土砂が収容された状態で行われるブーム上げ動作と旋回動作とを含む。この持ち上げ旋回作業が行われることによりバケット6が土砂運搬車の荷台の真上に配置される。
【0061】
図3の(C)に示す排土作業は、持ち上げ旋回作業の後に行われる作業である。排土作業は、バケット6が土砂運搬車の荷台の真上に配置された状態でバケット6内の土砂を荷台に排出する作業である。この排土作業は、アーム押し動作を含む。このアーム押し動作は、アーム5の先端部がブーム4から遠ざかるようにブーム4に対してアーム5が回動する動作である。
【0062】
図3の(D)に示す復帰旋回作業は、排土作業の後に行われる作業である。復帰旋回作業は、ブーム下げ動作と旋回動作とを含む。ブーム下げ動作は、ブーム4の先端部が地面に近づくようにブーム4が上部旋回体2に対して回動する動作である。この復帰旋回作業が行われることによりバケット6が掘削対象の土壌の真上に配置される。
【0063】
次に、
図4のフローチャートを参照しながら、異常判定装置101のコントローラ70が行う演算処理の一例について説明する。以下では、例えば
図3の(C)に示す排土作業が行われる場合の演算処理が説明される。
図3の(C)に示す排土作業が行われる場合、オペレータは、アーム5がアーム押し動作を行うようにアーム操作器40の操作レバー41にアーム押し操作を与える。
【0064】
コントローラ70の基準特性記憶部71は、アーム押し操作の基準操作特性を予め記憶している。また、基準特性記憶部71は、アーム5のアーム押し動作の基準動作特性を予め記憶している。アーム押し操作の基準操作特性は、例えば
図5において破線で示されるような特性であってもよい。また、アーム押し動作の基準動作特性は、例えば
図6において破線で示されるような特性であってもよい。
【0065】
図5のグラフの横軸は時間であり、
図5のグラフの縦軸はパイロット圧である。このパイロット圧は、上述したように操作レバー41に与えられる操作の操作量に相関する値である。従って、
図5のグラフの縦軸は、操作の操作量であってもよい。
図5における基準操作特性は、アーム制御弁のパイロットポートに入力されるパイロット圧の時間変化を示しており、アーム操作器40の操作レバー41に与えられるアーム押し操作の操作量の時間変化を示している。
図5の具体例では、基準操作特性は、アーム操作器40の操作レバー41が中立位置から最大操作位置(フルレバー位置)まで
図5に示すような傾きで表される操作速度で操作され、その後、操作レバー41の位置が最大操作位置に保持されるような特性(操作量の時間変化)を有する。
【0066】
図6のグラフの横軸は時間であり、
図6のグラフの縦軸はアームシリンダ8の動作速度である。
図6における基準動作特性は、アームシリンダ8の動作速度(収縮速度)の時間変化を示している。
図6の具体例では、基準動作特性は、アームシリンダ8が停止している状態から
図6に示すような傾きで動作速度が大きくなり、その後、動作速度が一定値で保持されるような特性(動作速度の時間変化)を有する。なお、アームシリンダ8の動作速度は、アーム5の動作速度に相関する値であるので、
図6における基準動作特性は、アーム5の動作速度の時間変化を示すものであってもよい。
【0067】
ステップS11において、コントローラ70は、操作検出器31から操作器40に与えられる操作に関する情報を取得し、動作検出器32から作業機械100の動作に関する情報(動作情報)を取得する。
【0068】
具体的には、アーム操作器40の操作レバー41にアーム押し操作が与えられると、アーム操作検出器31は、アーム操作器40のリモコン弁の2次圧(パイロット圧)を検出し、その検出結果をコントローラ70に入力する(ステップS11)。また、アーム操作器40の操作レバー41にアーム押し操作が与えられると、アーム押し操作の操作量に応じてアームシリンダ8が作動する。アーム動作検出器32は、例えばアームシリンダ8の動作速度を検出し、検出結果をコントローラ70に入力する(ステップS11)。
【0069】
コントローラ70は、アーム操作検出器31から取得したアーム押し操作に関する情報を用いて、例えば
図5において実線で示すような実操作特性を演算する(ステップS12)。
図5の実操作特性は、アーム操作器40のリモコン弁の2次圧(パイロット圧)の時間変化、すなわち、オペレータが実際に行ったアーム押し操作の操作量の時間変化を表している。
図5の実操作特性は、アーム操作器40の操作レバー41が中立位置から最大操作位置(フルレバー位置)まで
図5において実線で示すような傾きで表される操作速度で操作され、その後、操作レバー41の位置が最大操作位置に保持されるような特性を有する。
【0070】
コントローラ70は、アーム動作検出器32から取得したアームシリンダ8の動作に関する情報、すなわち、アーム5のアーム押し動作に関する情報を用いて、例えば
図6において実線で示すような実動作特性を演算する(ステップS13)。
図6の具体例では、実動作特性は、アームシリンダ8が停止している状態から
図6において実線で示すような傾きで動作速度が大きくなり、その後、動作速度が時間の経過とともに少しずつ小さくなるような特性(動作速度の時間変化)を有する。
【0071】
次に、コントローラ70は、実操作特性が基準操作特性に対応するか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、例えば、コントローラ70は、実操作特性と基準操作特性との差を演算し、この差が予め設定された閾値以下である場合には、実操作特性が基準操作特性に対応すると判定し、前記差が前記閾値を超える場合には、実操作特性が基準操作特性に対応しないと判定してもよい。
【0072】
実操作特性が基準操作特性に対応しない場合(ステップS14においてNO)、コントローラ70は、ステップS15及びS16の処理を行わず、ステップS11の処理を行う。すなわち、この場合、コントローラ70は、作業機械100において異常があるか否かを判定するための異常判定を行わない。これにより、誤判定がなされることが抑制される。
【0073】
一方、実操作特性が基準操作特性に対応する場合(ステップS14においてYES)、コントローラ70は、実動作特性が基準動作特性に対応しないか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、例えば、コントローラ70は、実動作特性と基準動作特性との差を演算し、この差が予め設定された閾値以下である場合には、実動作特性が基準動作特性に対応すると判定し、前記差が前記閾値を超える場合には、実動作特性が基準動作特性に対応しないと判定してもよい。
【0074】
実動作特性が基準動作特性に対応する場合(ステップS15においてNO)、コントローラ70は、ステップS11の処理を行う。この場合、作業機械100のうち実動作特性に関連する構成要素には異常がない可能性が高い。当該構成要素としては、例えば、アームシリンダ8、油圧ポンプ13、アーム制御弁などが挙げられる。
【0075】
一方、実動作特性が基準動作特性に対応しない場合(ステップS15においてYES)、コントローラ70は、実動作特性に関連する構成要素に異常があると判定する。そして、コントローラ70は、実動作特性に関連する構成要素に異常があることをオペレータに伝えるための報知が行われるように報知器80の動作を制御する(ステップS16)。例えば
図6に示す具体例では、実動作特性と基準動作特性との差が時間の経過とともに次第に大きくなっており、前記差が前記閾値を超えた場合には、実動作特性が基準動作特性に対応しないと判定される。
【0076】
図7は、基準操作特性と実操作特性の他の例を示すグラフであり、
図8は、基準動作特性と実動作特性の他の例を示すグラフである。
図7及び
図8に示す具体例では、複数のアクチュエータのうちの第1アクチュエータを作動させるための第1操作と、複数のアクチュエータのうちの第2アクチュエータを作動させるための第2操作と、が同時に行われる。
図7及び
図8に示す具体例は、例えば
図3の(A)に示す掘削作業に関するものであってもよい。この掘削作業は、アーム引き動作とブーム上げ動作とを含む。この場合、第1アクチュエータはブームシリンダ7であり、第2アクチュエータはアームシリンダ8であり、第1操作はブーム上げ操作であり、第2操作はアーム引き操作である。
【0077】
コントローラ70の基準特性記憶部71は、
図7において破線で示されるブーム上げ操作の基準操作特性(第1基準操作特性)と、
図7において破線で示されるアーム引き操作の基準操作特性(第2基準操作特性)と、を予め記憶している。また、基準特性記憶部71は、
図8において破線で示されるブーム4のブーム上げ動作の基準動作特性(第1基準動作特性)と、
図8において破線で示されるアーム5のアーム引き動作の基準動作特性(第2基準動作特性)と、を予め記憶している。
【0078】
図4のステップS11において、コントローラ70は、操作検出器31から操作器40に与えられる操作に関する情報を取得し、動作検出器32から作業機械100の動作に関する情報を取得する。
【0079】
具体的には、ブーム操作器40の操作レバー41にブーム上げ操作が与えられると、ブーム操作検出器31は、ブーム操作器40のリモコン弁の2次圧(パイロット圧)を検出し、その検出結果をコントローラ70に入力する(ステップS11)。また、ブーム操作器40の操作レバー41にブーム上げ操作が与えられると、ブーム上げ操作の操作量に応じてブームシリンダ7が作動する。ブーム動作検出器32は、例えばブームシリンダ7の動作速度を検出し、検出結果をコントローラ70に入力する(ステップS11)。
【0080】
また、アーム操作器40の操作レバー41にアーム引き操作が与えられると、アーム操作検出器31は、アーム操作器40のリモコン弁の2次圧(パイロット圧)を検出し、その検出結果をコントローラ70に入力する(ステップS11)。また、アーム操作器40の操作レバー41にアーム引き操作が与えられると、アーム引き操作の操作量に応じてアームシリンダ8が作動する。アーム動作検出器32は、例えばアームシリンダ8の動作速度を検出し、検出結果をコントローラ70に入力する(ステップS11)。
【0081】
コントローラ70は、ブーム操作検出器31から取得したブーム上げ操作に関する情報を用いて、例えば
図7において実線で示すような実操作特性(第1実操作特性)を演算する(ステップS12)。また、コントローラ70は、アーム操作検出器31から取得したアーム引き操作に関する情報を用いて、例えば
図7において実線で示すような実操作特性(第2実操作特性)を演算する(ステップS12)。
図7の第1実操作特性は、ブーム操作器40のリモコン弁の2次圧(パイロット圧)の時間変化、すなわち、オペレータが実際に行ったブーム上げ操作の操作量の時間変化を表している。
図7の第2実操作特性は、アーム操作器40のリモコン弁の2次圧(パイロット圧)の時間変化、すなわち、オペレータが実際に行ったアーム引き操作の操作量の時間変化を表している。
図7の第1実操作特性は、ブーム操作器40の操作レバー41が中立位置から例えばハーフレバー位置まで
図7において実線で示すような傾きで表される操作速度で操作され、その後、操作レバー41の位置がハーフレバー位置に保持されるような特性を有する。
図7の第2実操作特性は、アーム操作器40の操作レバー41が中立位置から最大操作位置(フルレバー位置)まで
図7において実線で示すような傾きで表される操作速度で操作され、その後、操作レバー41の位置が最大操作位置に保持されるような特性を有する。
【0082】
コントローラ70は、ブーム動作検出器32から取得したブームシリンダ7の動作に関する情報、すなわち、ブーム4のブーム上げ動作に関する情報を用いて、例えば
図8において実線で示すような実動作特性(第1実動作特性)を演算する(ステップS13)。また、コントローラ70は、アーム動作検出器32から取得したアームシリンダ8の動作に関する情報、すなわち、アーム5のアーム引き動作に関する情報を用いて、例えば
図8において実線で示すような実動作特性(第2実動作特性)を演算する(ステップS13)。
図8の具体例では、第1実動作特性は、ブームシリンダ7が停止している状態から
図8において実線で示すような傾きで動作速度が大きくなり、その後、動作速度が時間の経過とともに少しずつ小さくなるような特性(動作速度の時間変化)を有する。第2実動作特性は、アームシリンダ8が停止している状態から
図8において実線で示すような傾きで動作速度が大きくなり、その後、動作速度が一時的に低下した後に再び上昇し、ほぼ一定値で保持されるような特性(動作速度の時間変化)を有する。
【0083】
次に、コントローラ70は、第1実操作特性が第1基準操作特性に対応するか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、例えば、コントローラ70は、第1実操作特性と第1基準操作特性との差を演算し、この差が予め設定された閾値以下である場合には、第1実操作特性が第1基準操作特性に対応すると判定し、前記差が前記閾値を超える場合には、第1実操作特性が第1基準操作特性に対応しないと判定してもよい。
【0084】
また、コントローラ70は、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応するか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、例えば、コントローラ70は、第2実操作特性と第2基準操作特性との差を演算し、この差が予め設定された閾値以下である場合には、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応すると判定し、前記差が前記閾値を超える場合には、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応しないと判定してもよい。
【0085】
第1実操作特性が第1基準操作特性に対応しない場合(ステップS14においてNO)、コントローラ70は、ステップS15及びS16の処理を行わず、ステップS11の処理を行う。また、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応しない場合(ステップS14においてNO)、コントローラ70は、ステップS15及びS16の処理を行わず、ステップS11の処理を行う。すなわち、これらの場合、コントローラ70は、作業機械100において異常があるか否かを判定するための異常判定を行わない。これにより、誤判定がなされることが抑制される。
【0086】
一方、第1実操作特性が第1基準操作特性に対応する場合で(ステップS14においてYES)、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応する場合には(ステップS14においてYES)、コントローラ70は、第1実動作特性が第1基準動作特性に対応しないか否かを判定するとともに、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応しないか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、例えば、コントローラ70は、第1実動作特性と第1基準動作特性との差を演算し、この差が予め設定された閾値以下である場合には、第1実動作特性が第1基準動作特性に対応すると判定し、前記差が前記閾値を超える場合には、第1実動作特性が第1基準動作特性に対応しないと判定してもよい。同様に、コントローラ70は、第2実動作特性と第2基準動作特性との差を演算し、この差が予め設定された閾値以下である場合には、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応すると判定し、前記差が前記閾値を超える場合には、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応しないと判定してもよい。
【0087】
第1実動作特性が第1基準動作特性に対応し、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応する場合(ステップS15においてNO)、コントローラ70は、ステップS11の処理を行う。この場合、作業機械100のうち第1実動作特性及び第2実動作特性に関連する構成要素には異常がない可能性が高い。第1実動作特性に関連する構成要素としては、例えば、ブームシリンダ7、油圧ポンプ13、ブーム制御弁などが挙げられる。第2実動作特性に関連する構成要素としては、例えば、アームシリンダ8、油圧ポンプ13、アーム制御弁などが挙げられる。
【0088】
一方、第1実動作特性が第1基準動作特性に対応しない場合(ステップS15においてYES)、コントローラ70は、第1実動作特性に関連する構成要素に異常があると判定する。そして、コントローラ70は、第1実動作特性に関連する構成要素に異常があることをオペレータに伝えるための報知が行われるように報知器80の動作を制御する(ステップS16)。また、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応しない場合(ステップS15においてYES)、コントローラ70は、第2実動作特性に関連する構成要素に異常があると判定する。そして、コントローラ70は、第2実動作特性に関連する構成要素に異常があることをオペレータに伝えるための報知が行われるように報知器80の動作を制御する(ステップS16)。例えば
図8に示す具体例では、第2実動作特性は、動作速度が一時的に低下した後に再び上昇するような時間帯を有し、この時間帯において第2実動作特性と第2基準動作特性との差が前記閾値を超えた場合には、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応しないと判定される。この時間帯における動作速度の低下は、例えば、油圧回路において負圧が発生することに起因する場合がある。
【0089】
なお、ステップS14において、第1実操作特性が第1基準操作特性に対応し、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応しない場合、コントローラ70は、第1実動作特性が第1基準動作特性に対応しないか否かの判定を行い、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応しないか否かの判定を行わないように構成されていてもよい。同様に、ステップS14において、第1実操作特性が第1基準操作特性に対応せず、第2実操作特性が第2基準操作特性に対応する場合、コントローラ70は、第1実動作特性が第1基準動作特性に対応しないか否かの判定を行わず、第2実動作特性が第2基準動作特性に対応しないか否かの判定を行うように構成されていてもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る異常判定装置101では、基準操作特性が操作の操作量の特性の基準として予めコントローラ70に記憶されており、コントローラ70は、実操作特性が基準操作特性に対応する場合には作業機械100の異常を判定する一方で、実操作特性が基準操作特性に対応しない場合、言い換えると、想定外の操作特性を有する操作が行われた場合には、異常の判定を保留するので、誤判定がなされることを抑制できる。なお、作業機械100の異常は、例えば、作業機械100に含まれる種々の装置、部品などの構成要素の経年劣化を原因とするものである場合、作業機械100による作業中の負荷、衝撃などを構成要素が受けたことを原因とするものである場合、など種々の原因が想定される。
【0091】
また、本実施形態では、コントローラ70は、基準操作特性に対応する作業機械100の動作の特性の基準としての基準動作特性を基準操作特性と関連付けて予め記憶し、動作検出器32による作業機械100の動作の検出結果を用いて作業機械100の動作の実際の特性である実動作特性を演算し、実操作特性が基準操作特性に対応する場合には、実動作特性と基準動作特性とを比較することにより異常の判定を行う。この場合、実動作特性と比較される基準動作特性は、基準操作特性と関連付けて予め記憶されたものであり、基準操作特性を有する操作が行われた場合に想定される動作特性である。従って、本実施形態では、異常の判定が予め想定された範囲で適切に行われる。
【0092】
本実施形態では、コントローラ70の基準特性記憶部71は、複数の基準操作特性を予め記憶している。複数の基準操作特性は、掘削作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準操作特性と、持ち上げ旋回作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準操作特性と、排土作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準操作特性と、復帰旋回作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準操作特性と、を含む。そして、コントローラ70は、作業機械100が行う作業が掘削作業である場合には、掘削作業に関連づけられた基準操作特性を用いて異常の判定を行い、作業機械100が行う作業が持ち上げ旋回作業である場合には、持ち上げ旋回作業に関連づけられた基準操作特性を用いて異常の判定を行い、作業機械100が行う作業が排土作業である場合には、排土作業に関連づけられた基準操作特性を用いて異常の判定を行い、作業機械100が行う作業が復帰旋回作業である場合には、復帰旋回作業に関連づけられた基準操作特性を用いて異常の判定を行う。これにより、コントローラ70は、実際の作業の内容に応じた基準操作特性を用いて、作業ごとに適切な異常の判定を行うことができる。なお、掘削作業、持ち上げ旋回作業、排土作業、及び復帰旋回作業のそれぞれは、本開示における第1作業の一例であり、本開示における第2作業の一例である。
【0093】
本実施形態では、コントローラ70は、動作検出器32による作業機械100の動作の検出結果を用いて作業機械100が行う作業が掘削作業、持ち上げ旋回作業、排土作業及び復帰旋回作業の何れであるかを判定することが好ましい。この場合、コントローラ70が動作検出器32による検出結果を用いて自動的に作業を判別するので、例えばオペレータがコントローラ70に対して作業の内容を特定するための入力を行うことが不要になる。
【0094】
本実施形態では、コントローラ70の基準特性記憶部71は、複数の基準動作特性を予め記憶している。複数の基準動作特性は、掘削作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準動作特性と、持ち上げ旋回作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準動作特性と、排土作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準動作特性と、復帰旋回作業に関連づけられて基準特性記憶部71に記憶された基準動作特性と、を含む。そして、コントローラ70は、作業機械100が行う作業が掘削作業である場合には、掘削作業に関連づけられた基準動作特性を用いて異常の判定を行い、作業機械100が行う作業が持ち上げ旋回作業である場合には、持ち上げ旋回作業に関連づけられた基準動作特性を用いて異常の判定を行い、作業機械100が行う作業が排土作業である場合には、排土作業に関連づけられた基準動作特性を用いて異常の判定を行い、作業機械100が行う作業が復帰旋回作業である場合には、復帰旋回作業に関連づけられた基準動作特性を用いて異常の判定を行う。この場合、コントローラ70は、実際の作業の内容に応じた基準動作特性を用いて、作業ごとに適切な異常の判定を行うことができる。なお、掘削作業、持ち上げ旋回作業、排土作業、及び復帰旋回作業のそれぞれは、本開示における第1作業の一例であり、本開示における第2作業の一例である。
【0095】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に係る異常判定装置及びこれを備えた作業機械について説明したが、本開示は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例を含む。
【0096】
(A)変形例1
図9は、コントローラ70が行う演算処理の他の例を示すフローチャートである。この
図9に示すフローチャートは、ステップS21及びS22の処理をさらに備える点で
図4に示すフローチャートと異なり、
図9におけるその他のステップS11~S16の処理は、
図4に示すステップS11~S16と同様である。
【0097】
この変形例1では、実動作特性が基準動作特性に対応しない場合であっても(ステップS15においてYES)、直ちにステップS16の処理を行うのではなく、異常発生回数(累積回数)をカウントし(ステップS21)、異常発生回数が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0098】
異常発生回数が予め設定された閾値未満である場合(ステップS22においてNO)、コントローラ70は、ステップS11の処理を行う。一方、異常発生回数が予め設定された閾値以上である場合(ステップS22においてYES)、コントローラ70は、実動作特性に関連する構成要素に異常があると判定する。そして、コントローラ70は、実動作特性に関連する構成要素に異常があることをオペレータに伝えるための報知が行われるように報知器80の動作を制御する(ステップS16)。コントローラ70は、実動作特性に関連する構成要素に異常があると判定した後、前記異常発生回数(累積回数)をリセットし、ステップS11の処理を行う。なお、異常発生回数は、例えば単位時間あたりの回数であってもよい。
【0099】
(B)変形例2
図10は、作業機械100のバケット6における土砂の収容量に応じた基準動作特性を示すグラフである。
図10に示すように、コントローラ70は、バケット6における土砂の収容量に応じた基準動作特性を用いて異常判定を行ってもよく、これにより、異常判定の精度をさらに高めることができる。
【0100】
コントローラ70の基準特性記憶部71は、例えば、
図10に示す収容量がゼロの場合の基準動作特性を予め記憶しており、収容量に関する情報を検出するための検出器から入力される検出結果を用いてバケット6における土砂の収容量を演算し、演算された収容量と予め設定された関係式とを用いて、収容量に応じた基準動作特性を演算してもよい。また、基準特性記憶部71は、1つの基準操作特性に関連付けられた複数の基準動作特性を予め記憶していてもよく、前記検出器から入力される検出結果を用いてバケット6における土砂の収容量を演算し、演算された収容量に最も近い基準動作特性を複数の基準動作特性から選択してもよい。そして、コントローラ70は、選択された基準動作特性を用いて異常の判定を行う。
【0101】
例えば
図10に示す具体例では、1つの基準操作特性に対して3つの基準動作特性が関連付けられて基準特性記憶部71に記憶されている。3つの基準動作特性は、バケット6における土砂の収容量がゼロである場合の基準動作特性と、収容量がゼロより大きいW1である場合の基準動作特性と、収容量がW1より大きいW2である場合の基準動作特性と、を含む。そして、コントローラ70は、前記検出器から入力される検出結果を用いてバケット6における土砂の収容量を演算し、演算された収容量が収容量ゼロ、収容量W1及び収容量W2のうちの何れに近いかを判定し、最も近い収容量に対応する基準動作特性を複数の基準動作特性から選択する。そして、コントローラ70は、選択された基準動作特性を用いて異常の判定を行う。なお、収容量に関する情報を検出するための前記検出器は、例えば、ブームシリンダ7のヘッド圧を検出する圧力センサであってもよく、バケット6の収容量を検出するロードセルであってもよい。
【0102】
(C)変形例3
コントローラ70は、作業装置3の姿勢に応じた基準動作特性を用いて異常判定を行ってもよく、これにより、異常判定の精度をさらに高めることができる。
【0103】
具体的には、例えば、作業装置3の姿勢は、上部旋回体2に対するブーム4の姿勢、ブーム4に対するアーム5の姿勢、及びアーム5に対するバケット6の姿勢に応じて変わる。アーム引き動作とブーム上げ動作とを含む掘削作業が行われる場合、作業装置3はブーム4の基端部(回動中心)を中心に上方に回動する。掘削作業の序盤には、作業装置3の重心と回動中心との距離は比較的大きいので慣性モーメントが大きいが、掘削作業の終盤には、作業装置3の重心と回動中心との距離は序盤に比べて小さくなるので、慣性モーメントが序盤に比べて小さくなる。
【0104】
従って、コントローラ70は、掘削作業において、動作検出器32から入力される検出結果を用いて作業装置3の重心を演算し、演算された重心と回動中心との距離を演算し、これらの演算結果を用いてその時点における慣性モーメントを演算してもよい。そして、コントローラ70は、基準特性記憶部71に予め記憶された基準動作特性と、演算される慣性モーメントと、を用いて、基準動作特性を補正し、補正された基準動作特性を用いて異常判定を行ってもよい。
【0105】
(D)基準操作特性について
コントローラ70は、操作検出器31により検出される操作の操作量と、基準操作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて基準操作特性を作成して記憶していてもよい。また、コントローラ70は、操作検出器31により検出される操作の操作量と、動作検出器32により検出される作業機械100の動作に関する情報である動作情報と、基準操作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて基準操作特性を作成して記憶していてもよい。これらの構成では、コントローラ70は、種々の動作に対応する多数の基準操作特性を予め記憶していなくても、操作検出器31により検出される操作の操作量と前記モデルとを用いて、又は、操作検出器31により検出される操作の操作量と動作検出器32により検出される動作情報と前記モデルとを用いて、その都度、実際の操作の操作量に適した基準操作特性を作成し、作成した基準操作特性を記憶することができる。これらの構成のそれぞれにおいて、前記モデルを用いた基準操作特性の作成には、例えば、機械学習、深層学習、人工知能などの手法が用いられてもよい。前記モデルは、判定モデルとして予め基準特性記憶部71に記憶されていてもよい。そして、実操作特性は、判定モデルに、操作検出器31により検出される操作量を入力し決定されてもよい。また、実操作特性は、判定モデルに、操作検出器31により検出される操作量と動作検出器32により検出される動作情報とを入力し決定されてもよい。コントローラ70は、基準操作特性を基準特性記憶部71に予め記憶する場合、実際の作業データを予め取得し、その実際の作業データを予め記憶してもよく、実際の作業データから算出したモデルのパラメータを予め記憶してもよい。また、実際の作業データからモデルを作成する場合、機械学習、深層学習、人工知能などの手法が用いられてもよい。
【0106】
(E)基準動作特性について
コントローラ70は、動作検出器32により検出される作業機械100の動作に関する情報である動作情報と、基準動作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて基準動作特性を作成して記憶していてもよい。また、コントローラ70は、動作検出器32により検出される作業機械100の動作に関する情報である動作情報と、操作検出器31により検出される操作の操作量と、基準動作特性を作成するために予め設定されたモデルと、を用いて基準動作特性を作成して記憶していてもよい。これらの構成では、コントローラ70は、種々の動作に対応する多数の基準動作特性を予め記憶していなくても、動作検出器32により検出される動作情報と前記モデルとを用いて、又は、動作検出器32により検出される動作情報と操作検出器31により検出される操作の操作量と前記モデルとを用いて、その都度、作業機械100の実際の動作に適した基準動作特性を作成し、作成した基準動作特性を記憶することができる。これらの構成のそれぞれにおいて、前記モデルを用いた基準動作特性の作成には、例えば、機械学習、深層学習、人工知能などの手法が用いられてもよい。前記モデルは、判定モデルとして予め基準特性記憶部71に記憶されていてもよい。そして、実動作特性は、判定モデルに、動作検出器32により検出される動作情報を入力し決定されてもよい。また、実動作特性は、判定モデルに、操作検出器31により検出される操作の操作量と動作検出器32により検出される動作情報とを入力し決定されてもよい。コントローラ70は、基準動作特性を基準特性記憶部71に予め記憶する場合、実際の作業データを予め取得し、その実際の作業データを予め記憶してもよく、実際の作業データから算出したモデルのパラメータを予め記憶してもよい。また、実際の作業データからモデルを作成する場合、機械学習、深層学習、人工知能などの手法が用いられてもよい。
【0107】
(F)基準特性記憶部について
基準特性記憶部71は、必ずしも作業機械100に搭載されていなくてもよく、例えば、作業機械100から離れた位置に配置されたサーバなどの管理装置に搭載されていてもよい。この場合、コントローラ70は、作業機械100に設けられた通信器をさらに備え、前記通信器は、基準特性記憶部71と無線又は有線による通信によりデータの送受信を行うように構成されていてもよい。この構成では、基準特性記憶部71を作業機械100に設ける必要がないので、作業機械100の構成を簡素化することができる。
【0108】
(G)前記実施形態では、作業機械が油圧ショベルであるが、本開示に係る作業機械は、油圧ショベルに限られず、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザなどの他の作業機械であってもよい。また、前記実施形態では、先端アタッチメントがバケット6であるが、本開示に係る作業機械の先端アタッチメントは、グラップル、フォーク、ニブラなどの他の装置であってもよい。
【0109】
(H)動作検出器32により検出される作業機械の動作に関する情報は、例えば、油圧ポンプの吐出圧(ポンプ圧)であってもよく、油圧ポンプのポンプ容量であってもよく、エンジンの回転数であってもよい。
【0110】
(I)報知器80は、作業機械100に設けられていてもよく、作業機械100から離れた位置に配置されていてもよい。
【0111】
(J)本開示に係る異常判定装置の操作検出器、動作検出器、及びコントローラの少なくとも一つは、作業機械100から離れた位置に配置されていてもよい。
【0112】
(K)コントローラ70は、作業機械100による作業において、操作検出器31により検出される操作の操作量と、動作検出器32により検出される作業機械100の動作に関する情報である動作情報と、に基づいて実操作特性を演算してもよい。これにより、コントローラ70は、作業機械100の実際の動作状況の変化を考慮した実操作特性を取得することができる。実際の動作状況の変化は、油圧シリンダ、油圧モータなどのアクチュエータに作用する負荷の変化であってもよい。前記負荷は、例えば、バケット6における土砂の収容量に応じて変化することがあり、また、作業装置3の姿勢に応じた前記慣性モーメントに応じて変化することがある。
【0113】
(L)コントローラ70は、作業機械100による作業において、操作検出器31により検出される操作の操作量と、動作検出器32により検出される作業機械100の動作に関する情報である動作情報と、に基づいて実動作特性を演算してもよい。これにより、コントローラ70は、動作情報だけでなく操作量も考慮した実動作特性を取得することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 :下部走行体
2 :上部旋回体
3 :作業装置
31 :操作検出器
32 :動作検出器
40 :操作器
41 :操作レバー
70 :コントローラ
80 :報知器
100 :作業機械
101 :異常判定装置