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特開2024-62807保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法
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  • 特開-保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法 図1
  • 特開-保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法 図2
  • 特開-保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062807
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/30 20060101AFI20240501BHJP
   C07H 7/04 20060101ALI20240501BHJP
   C07H 7/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C07D309/30 D CSP
C07H7/04
C07H7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170903
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】ムラニ シャヘーン カシム
(72)【発明者】
【氏名】タプキル サンジープ ラメシュラオ
(72)【発明者】
【氏名】ナディヴェードヒ マヘシュワラ レディ
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057BB02
4C057DD01
4C057EE04
4C057EE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記式(I):

[式中、Rは、下記式:

(式中、L、L及びLは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)で表される基である。]で表される保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式中、Rは、下記式(i):
【化2】
[式中、L、L及びLは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。]
で表される基を表す。]
で表される保護グルコノラクトン。
【請求項2】
下記式(II):
【化3】
[式中、
Xは、以下の(α-1)~(α-16):
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
からなる置換基群αから選択される置換基を表し、
Arは、下記式(ii):
【化4】
[式中、
10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表し、
cは、0又は1を表し、
10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。]
で表される基を表す。]
で表されるC-アリールヒドロキシグリコサイドを製造する方法であって、
塩基の存在下、
請求項1に記載の保護グルコノラクトンと、
下記式(III):
【化5】
[式中、X及びArは、前記と同義であり、Yは、臭素原子又はヨウ素原子を表す。]
で表されるアリールハライドと、
を接触させた後、酸で処理し、前記C-アリールヒドロキシグリコサイドを形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項3】
Arが、下記式(Ar-1)、(Ar-2)又は(Ar-3):
【化6】
[式中、
は、それぞれ独立して、前記置換基群αから選択される置換基、前記置換基群αから選択される置換基を有していてもよいアリール基、又は、前記置換基群αから選択される置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
pは、0~3の整数を表す。]
である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムクロリド・リチウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド・リチウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムクロリド・リチウムクロリド及びtert-ブチルマグネシウムブロミド・リチウムクロリドから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸が、クエン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、パラトルエンンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化アンモニウム、塩酸、硫酸、リン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム及びリン酸二水素カリウムから選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SGLT2阻害薬は、抗糖尿病薬として有用である。なお、「SGLT2」は、ナトリウム-グルコース共輸送担体-2を意味する。SGLT2阻害薬としては、例えば、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)等が知られている。
【0003】
SGLT2阻害薬の一般的な製造方法として、D-グルコノラクトンのヒドロキシ基をトリメチルシリル基(TMS基)で保護したものを出発原料として使用する方法が知られている(非特許文献1)。しかしながら、D-グルコノラクトンをTMS化する際、高価な試薬(TMSCl,N-メチルモルホリン)が必要であることに加えて、生成物であるTMS保護D-グルコノラクトンがオイル状の化合物であり、精製が困難であるため、この方法では、SGLT2阻害薬を工業的に安価で効率的に製造することが困難である(非特許文献1及び3)。
【0004】
一方、ヒドロキシ基の保護基として、2-メトキシプロピル基(MOP基)が知られている。ヒドロキシ基のMOP保護は、安価な2-メトキシプロペンを使用して高収率かつ簡便に行うことができることが知られている。また、MOP保護体は、強塩基条件に耐え得るとともに、反応後、弱酸で速やかに除去され得ることも知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Org.Process Res.Dev.2018,22,pp.467-488
【非特許文献2】ACS Omega 2018,3,pp.7875-7887
【非特許文献3】Org.Process Res.Dev.2019,23,pp.1458-1461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、D-グルコノラクトンのMOP保護体を使用したSGLT2阻害薬の製造方法について検討した結果、D-グルコノラクトンを2-メトキシプロペンと接触させることにより、新規化合物であるMOP保護D-グルコノラクトンを安定な結晶として得ることに成功した。また、塩基の存在下、MOP保護D-グルコノラクトンとアリールハライドとを接触させた後、酸で処理することにより、SGLT2阻害薬の合成中間体であるC-ヒドロキシアリールグリコキシドを結晶として得ることに成功した。C-ヒドロキシアリールグリコキシドは公知の化合物であるが、結晶化したのは本発明者らが最初である。なお、C-ヒドロキシアリールグリコキシドからSGLT2阻害薬(例えば、ダパグリフロジン)への誘導は公知である(非特許文献3)。
【0008】
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]下記式(I):
【化1】
[式中、Rは、下記式(i):
【化2】
[式中、L、L及びLは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。]
で表される基を表す。]
で表される保護グルコノラクトン。
[2]下記式(II):
【化3】
[式中、
Xは、以下の(α-1)~(α-16):
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
からなる置換基群αから選択される置換基を表し、
Arは、下記式(ii):
【化4】
[式中、
10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表し、
cは、0又は1を表し、
10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。]
で表される基を表す。]
で表されるC-アリールヒドロキシグリコサイドを製造する方法であって、
塩基の存在下、
[1]に記載の保護グルコノラクトンと、
下記式(III):
【化5】
[式中、X及びArは、前記と同義であり、Yは、臭素原子又はヨウ素原子を表す。]
で表されるアリールハライドと、
を接触させた後、酸で処理し、前記C-アリールヒドロキシグリコサイドを形成する工程
を含む、前記方法。
[3]Arが、下記式(Ar-1)、(Ar-2)又は(Ar-3):
【化6】
[式中、
は、それぞれ独立して、前記置換基群αから選択される置換基、前記置換基群αから選択される置換基を有していてもよいアリール基、又は、前記置換基群αから選択される置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
pは、0~3の整数を表す。]
である、[2]に記載の方法。
[4]前記塩基が、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムクロリド・リチウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド・リチウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムクロリド・リチウムクロリド及びtert-ブチルマグネシウムブロミド・リチウムクロリドから選択される、[2]又は[3]に記載の方法。
[5]前記酸が、クエン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、パラトルエンンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化アンモニウム、塩酸、硫酸、リン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム及びリン酸二水素カリウムから選択される、[2]~[4]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保護グルコノラクトン及び該保護グルコノラクトンを使用したC-アリールヒドロキシグリコサイドの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られた化合物2のH NMRデータを示す図である。
図2図2は、実施例1で得られた化合物2の13C NMRデータを示す図である。
図3図3は、実施例2で得られた化合物3のH NMRデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について説明する。
【0012】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で用いられる用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。なお、「値A~値B」という表現は、別段規定される場合を除き、値A以上値B以下を意味する。
【0013】
有機溶媒
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0014】
ハロゲン原子
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
【0015】
アルキル基
アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12(例えば、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2)である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上であり、分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上である。
【0016】
アルケニル基
アルケニル基の炭素数は、例えば2~20、好ましくは2~15、より好ましくは2~12(例えば、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4又は2~3)である。アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素数は2以上であり、分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は3以上である。
【0017】
シクロアルキル基
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。
【0018】
ヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロシクロアルキル基の員数は、例えば3~8員、好ましくは4~7員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等が挙げられる。
【0019】
一実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基から選択される。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは、テトラヒドロフラニル基である。
【0020】
アリール基
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~14、好ましくは6~14、より好ましくは6~10の芳香族炭化水素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。
【0021】
ヘテロアリール基
ヘテロアリール基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の芳香族複素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは4~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロアリール基は、好ましくは単環式又は二環式の4~10員、好ましくは5~10員の芳香族複素環基である。
【0022】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0023】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0024】
一実施形態において、ヘテロアリール基は、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基及びピリジル基から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは、チエニル基及びベンゾチオフェニル基から選択される。
【0025】
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基は、それぞれ、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基、ハロアリール基又はハロヘテロアリール基が有するハロゲン原子の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0026】
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0027】
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基は、それぞれ、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0028】
アリールアルキル基
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0029】
アリールアルケニル基
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0030】
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アルキル基及び式:-CO-アリール基で表される基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0031】
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基は、それぞれ、式:-O-アルキル基、式:-O-ハロアルキル基、式:-O-ヘテロシクロアルキル基及び式:-O-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0032】
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-アルキル基、式:-S-ハロアルキル基、式:-S-ヘテロシクロアルキル基及び式:-S-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0033】
アルキルオキシカルボニル基
アルキルオキシカルボニル基は、式:-CO-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0034】
アミノ基
アミノ基は、式:-NHで表される基(1級アミノ基)である。
【0035】
モノアルキルアミノ基
モノアルキルアミノ基は、式:-NH(-Q)[式中、Qは、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Qで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0036】
ジアルキルアミノ基
ジアルキルアミノ基は、式:-N(-Q)(-Q)[式中、Q及びQは、それぞれ独立して、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q又はQで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0037】
脂環式アミノ基
脂環式アミノ基は、例えば、5又は6員環の脂環式アミノ基であり、5又は6員環の脂環式アミノ基としては、例えば、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジン-1-イル基、ピラゾリジン-1-イル基、イミダゾリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基等が挙げられる。脂環式アミノ基は、脂環式アミノ基の結合手を有する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択されるヘテロ原子(例えば、1個のヘテロ原子)を含んでいてもよい。脂環式アミノ基は、好ましくは、モルホリノ基である。
【0038】
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アミノ基、式:-CO-モノアルキルアミノ基、式:-CO-ジアルキルアミノ基及び式:-CO-脂環式アミノ基で表される基であり、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及び脂環式アミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0039】
置換基群α
置換基群αは、以下の置換基で構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
【0040】
以下、置換基群αについて説明する。
【0041】
(α-5)において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0042】
(α-6)において、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、より一層好ましくは1である。
【0043】
保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
ヒドロキシ基保護基は、目的の反応を行う際にはヒドロキシ基を保護することができ、目的の反応の終了後にはヒドロキシ基から脱離させることができるものであることが好ましい。ヒドロキシ基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。
【0044】
アルキルカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基が挙げられる。置換基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4)のアルキルオキシ基、炭素数2~11(好ましくは炭素数2~9、より好ましくは炭素数2~7、より好ましくは炭素数2~5)のアルキルオキシカルボニル基等から選択することができる。1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。アルキルカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~5のアルキルカルボニル基、より好ましくは、アセチル基又はピバロイル基であり、より一層好ましくは、アセチル基である。
【0045】
アリールカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基等が挙げられる。
【0046】
アリールアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、トリチル基等が挙げられる。アリールアルキル型保護基は、好ましくは、ベンジル基である。
【0047】
アルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert-ブチル基であり、より一層好ましくは、メチル基である。
【0048】
アリールアルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数9~13のアリールアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数10~14のアリールアルキルオキシプロピル基等のアリールアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アリールアルキルオキシアルキル型保護基は、例えば、1以上の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はメチルオキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、より好ましくはベンジルオキシメチル基である。
【0049】
アルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数4~10のアルキルオキシプロピル基等のアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキルオキシアルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、より好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチルオキシ基又はエチルオキシ基を有していてもよい炭素数2~6のアルキルオキシメチル基、より一層好ましくは、メチルオキシメチル基である。
【0050】
シリル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。シリル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基、より好ましくは、炭素数1~5のアルキル基及びフェニル基から選択される官能基を有するシリル基、より一層好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0051】
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルケニルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。オキシカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~6のアルキルオキシカルボニル基、炭素数3~6のアルケニルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基、より好ましく、メチルオキシメチル基、アリルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0052】
アセタール型保護基としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0053】
アリール型保護基としては、例えば、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0054】
保護基で保護されたヒドロキシ基は、式:-O-Qで表される基であることが好ましい。Rは、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールアルキル基を表す。式:-O-Qで表される基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。Qは、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、エチル基、テトラヒドロフラニル基、アセチル基又はベンジル基であることがより好ましい。
【0055】
保護基で保護されていてもよいチオール基
チオール基保護基は、目的の反応を行う際にはチオール基を保護することができ、目的の反応の終了後にはチオール基から脱離させることができるものであることが好ましい。チオール基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。これらの保護基に関する説明は、上記の通りである。
【0056】
保護基で保護されたチオール基は、式:-S-Qで表される基であることが好ましい。Qに関する説明は、上記の通りである。
【0057】
≪保護グルコノラクトン(I)≫
保護グルコノラクトン(I)は、下記式(I)で表される。
【0058】
【化7】
【0059】
式(I)において、Rは、下記式(i)で表される基を表す。
【化8】
【0060】
式(i)において、L、L及びLは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。L、L及びLは、同一のアルキル基であってもよいし、異なるアルキル基であってもよい。アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3である。一実施形態において、L、L及びLはいずれもメチル基である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0061】
≪C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)≫
C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)は、下記式(II)で表される。
【0062】
【化9】
【0063】
式(II)において、Xは、置換基群αから選択される置換基を表す。置換基群αに関する説明は、上記の通りである。
【0064】
Xは、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましく、ハロゲン原子及び炭素数1~3のアルキル基から選択することがより一層好ましい。
【0065】
Xがハロゲン原子である場合、ハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、塩素原子である。
【0066】
式(II)において、Arは、下記式(ii)で表される基を表す。
【0067】
【化10】
【0068】
式(ii)において、W10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。W10は、ヘテロアリーレン基であることが好ましく、硫黄原子をヘテロ原子として含む5員環のヘテロアリーレン基であることがより好ましく、チエニレン基であることがより一層好ましい。
【0069】
式(ii)において、cは、0又は1を表す。cは、1であることが好ましい。
【0070】
式(ii)において、X10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。
【0071】
10で表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0072】
10は、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基又は酸素原子をヘテロ原子として含むヘテロシクロアルキルオキシ基を有するアリール基、或いは、非置換のヘテロアリール基であることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基又はテトラヒドロフラニルオキシ基を有するフェニル基、或いは、非置換のベンゾチオフェニル基であることがより一層好ましい。
【0073】
式(II)において、Arは、以下の式(Ar-1)、(Ar-2)又は(Ar-3)で表される基であることが好ましい。
【0074】
【化11】
【0075】
式(Ar-1)、(Ar-2)及び(Ar-3)において、pは、0~5の整数である。pは、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、より一層好ましくは0又は1である。
【0076】
式(Ar-1)、(Ar-2)及び(Ar-3)において、p個のRは、それぞれ独立して、置換基群α、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基から選択することができる。p個のRは、それぞれ独立して、置換基群α、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基から選択することが好ましい。置換基群αから選択される1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0077】
pが2以上である場合、p個のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
式(Ar-1)において、pは、好ましくは1であり、Rは、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有するフェニル基であり、より一層好ましくは、フッ素原子を有するフェニル基である。非置換又は置換のフェニル基が結合している位置は、好ましくは、チオフェン環の2位である。ハロゲン原子を有するフェニル基において、ハロゲン原子が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0079】
式(Ar-2)において、pは、好ましくは0である。
【0080】
式(Ar-3)において、pは、好ましくは1であり、Rは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~3のアルキルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基は、好ましくは、テトラヒドロフラニルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0081】
式(II)において、下記式(B):
【化12】
で表される基は、下記式(Ar’-1)、(Ar’-2)、(Ar’-3)又は(Ar’-4)で表される基であることが好ましい。なお、「Et」は、エチル基を表す。
【0082】
【化13】
【0083】
式(Ar’-1)において、Xは、ハロゲン原子及び炭素数1~3のアルキル基から選択することが好ましく、炭素数1~3のアルキル基から選択することがより好ましく、メチル基であることがより一層好ましい。
【0084】
式(Ar’-2)において、Xは、ハロゲン原子及び炭素数1~3のアルキル基から選択することが好ましく、ハロゲン原子から選択することがより好ましく、フッ素原子であることがより一層好ましい。
【0085】
式(Ar’-3)において、Xは、ハロゲン原子及び炭素数1~3のアルキル基から選択することが好ましく、ハロゲン原子から選択することがより好ましく、塩素原子であることがより一層好ましい。
【0086】
式(Ar’-4)において、Xは、ハロゲン原子及び炭素数1~3のアルキル基から選択することが好ましく、ハロゲン原子から選択することがより好ましく、塩素原子であることがより一層好ましい。
【0087】
≪アリールハライド(III)≫
アリールハライド(III)は、下記式(III)で表される。
【0088】
【化14】
【0089】
式(III)において、X及びArは、式(II)と同義である。
【0090】
式(III)において、Yは、臭素原子又はヨウ素原子を表す。Yは、好ましくは、臭素原子である。
【0091】
≪C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)を製造する方法≫
C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)は、塩基の存在下、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させた後、酸で処理し、C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)を形成する工程を含む方法(以下「本発明の方法」という。)により製造することができる。本発明の方法によれば、高純度のC-ヒドロキシアリールグリコキシド(II)を得ることができ、C-ヒドロキシアリールグリコキシド(II)が結晶化しやすくなる。このため、C-ヒドロキシアリールグリコキシド(II)を結晶として得ることができる。
【0092】
D-グルコノラクトンのヒドロキシ基をトリメチルシリル基(TMS基)で保護し、TMS保護D-グルコノラクトンを使用してC-ヒドロキシアリールグリコキシドを製造する従来法では、結晶性の中間体を得るため、ヒドロキシ基をエトキシ化する必要がある。これに対して、本発明の方法では、C-ヒドロキシアリールグリコキシドが結晶化するため、このような変換を必要としない。
【0093】
従来法では、TMS基を脱離させる際に、除去困難なシロキサン誘導体が生じ、生じたシロキサン誘導体が、目的物質の結晶化を妨げる。これに対して、本発明の方法では、保護グルコノラクトン(I)に含まれるヒドロキシ基保護基(Rで表される基)を脱離させる際、低沸点の2-メトキシプロペンが生じ、生じた2-メトキシプロペンは、濃縮により容易に除去可能である。このことが、C-ヒドロキシアリールグリコキシド(II)の結晶化が容易となる理由の一つと考えられる。
【0094】
保護グルコノラクトン(I)及びアリールハライド(III)は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0095】
保護グルコノラクトン(I)は、例えば、酸の存在下、下記式:
【化15】
で表されるD-グルコノラクトンと、2-メトキシプロペンとを接触させ、保護グルコノラクトン(I)を形成する工程を含む方法により製造することができる。この方法によれば、高純度の保護グルコノラクトン(I)を得ることができ、保護グルコノラクトン(I)が結晶化しやすくなる。このため、保護グルコノラクトン(I)を安定な結晶として得ることができる。
【0096】
D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとを接触させる際、2-メトキシプロペンの使用量は、D-グルコノラクトン 1モルに対して、例えば3モル以上20モル以下、好ましくは4モル以上10モル以下である。
【0097】
D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとの接触は、溶媒中で行われることが好ましい。D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとを溶媒中で混合することにより、D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとを接触させることができる。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。1種の溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。溶媒は、好ましくは、塩化メチレン、トルエン又はこれらの混合溶媒である。
【0098】
溶媒の使用量は、D-グルコノラクトン 1gに対して、例えば1mL以上100mL以下、好ましくは2mL以上20mL以下である。
【0099】
D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとの接触は、酸の存在下で行う。
【0100】
酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩(PPTS)等が挙げられる。1種の酸を単独で用いてもよいし、2種以上の酸を組み合わせて用いてもよい。酸は、好ましくは、クエン酸又はパラトルエンスルホン酸ピリジン塩(PPTS)である。
【0101】
酸の使用量は、D-グルコノラクトン 1モルに対して、例えば0.01モル以上1モル以下、好ましくは0.05モル以上0.2モル以下である。
【0102】
D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとの接触させる際、接触温度(反応温度)は、例えば-20℃以上40℃以下、好ましくは-10℃以上20℃以下であり、接触時間(反応時間)は、例えば0.5時間以上17時間以下、好ましくは1時間以上8時間以下である。
【0103】
得られた保護グルコノラクトン(I)は、以下の方法で単離することができる。
【0104】
先ず、反応液にクエンチ液(例えば、水、HCl水溶液等)を加えて、反応を停止させる。クエンチ液を加えた反応液を撹拌して、水層と有機層とに分離させる。有機層を抽出した後、水層に有機溶媒を加えて、有機層と水層とに再び分離させる。有機層を抽出し、先に抽出した有機層と合わせて総有機層を得る。総有機層を、洗浄液(例えば、水、HCl水溶液、飽和NaHCO水溶液、食塩水等)で洗浄した後、硫酸ナトリウム等を用いて乾燥させて、保護グルコノラクトン(I)を含む残渣を得る。
【0105】
水層に加えられる有機溶媒の具体例は、D-グルコノラクトンと2-メトキシプロペンとを接触させる際に使用される溶媒の具体例と同様である。1種の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒は、好ましくは、塩化メチレン、トルエン又はこれらの混合溶媒である。
【0106】
得られた保護グルコノラクトン(I)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離してもよいし、濃縮残渣として未精製のまま次工程で使用してもよい。
【0107】
保護グルコノラクトン(I)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【0108】
塩基の存在下、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させた後、酸で処理すると、保護グルコノラクトン(I)に含まれる=Oとアリールハライド(III)とが反応するとともに、保護グルコノラクトン(I)に含まれるヒドロキシ基保護基(Rで表される基)が脱離し、C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)が形成される。なお、酸は、反応を停止させるクエンチ液としても作用する。
【0109】
保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させる際、アリールハライド(III)の使用量は、保護グルコノラクトン(I) 1モルに対して、例えば0.5モル以上3モル以下、好ましくは0.5モル以上2モル以下である。
【0110】
保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを溶媒中で混合することにより、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させることができる。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、トルエン等が挙げられる。1種の溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。溶媒は、好ましくは、THF、2-メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン又はこれらの混合溶媒であり、より好ましくは、THF、2-メチル-THF、トルエン又はこれらの混合溶媒である。
【0111】
溶媒の使用量は、保護グルコノラクトン(I) 1gに対して、例えば3mL以上100mL以下、好ましくは4mL以上10mL以下である。
【0112】
保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)との接触は、塩基の存在下で行われる。
【0113】
塩基としては、例えば、アルキルリチウム、ターボグリニャール試薬等が挙げられる。アルキルリチウムとしては、例えば、n-ブチルリチウム(n-BuLi)、sec-ブチルリチウム(sec-BuLi)、tert-ブチルリチウム(tert-BuLi)等が挙げられる。ターボグリニャール試薬としては、例えば、イソプロピルマグネシウムクロリド・リチウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド・リチウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムクロリド・リチウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムブロミド・リチウムクロリド等が挙げられる。1種の塩基を単独で用いてもよいし、2種以上の塩基を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
塩基の使用量は、保護グルコノラクトン(I) 1モルに対して、例えば0.5モル以上5モル以下、好ましくは0.7モル以上3モル以下である。
【0115】
保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)との接触させる際、接触温度(反応温度)は、例えば-110℃以上0℃以下、好ましくは-90℃以上-50℃以下であり、接触時間(反応時間)は、例えば0.5時間以上10時間以下、好ましくは1時間以上5時間以下である。
【0116】
塩基の存在下、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させる際、保護グルコノラクトン(I)、アリールハライド(III)及び塩基を加える順序は特に限定されないが、保護グルコノラクトン(I)及びアリールハライド(III)を含む混合液に、塩基を加えることが好ましい。
【0117】
例えば、塩基がn-ブチルリチウム等のアルキルリチウムである場合、アリールハライド(III)がアルキルリチウムと反応して、アリールハライド(III)の臭素原子又はヨウ素原子(Yで表される基)がLiに置換されてアリールリチウムが生じ、生じたアリールリチウムが保護グルコノラクトン(I)と反応する。アリールリチウムは活性が高いため、アリールリチウムが生じた後、直ちに、保護グルコノラクトン(I)と反応させることが好ましい。このため、保護グルコノラクトン(I)及びアリールハライド(III)を含む混合液に、塩基を加えることが好ましい。
【0118】
塩基の存在下、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させた後、酸による処理を行う。酸による処理は、例えば、塩基の存在下、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを、溶媒中で接触させた後、該溶媒に酸を加えることにより行うことができる。酸としては、例えば、クエン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩、パラトルエンンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化アンモニウム、塩酸、硫酸、リン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。1種の酸を単独で用いてもよいし、2種以上の酸を組み合わせて用いてもよい。酸は、水を含んでいてもよい。酸は、好ましくは、TFA又は含水TFAである。
【0119】
酸の使用量は、保護グルコノラクトン(I) 1モルに対して、例えば0.5モル以上3モル以下、好ましくは1モル以上2モル以下である。
【0120】
水の使用量は、保護グルコノラクトン(I) 1gに対して、例えば0.5g以上3g以下、好ましくは0.8g以上2g以下である。
【0121】
酸で処理する際、処理温度は、例えば-50℃以上20℃以下、好ましくは-40℃以上10℃以下であり、処理時間は、例えば0.5時間以上48時間以下、好ましくは1時間以上12時間以下である。
【0122】
得られたC-アリールヒドロキシグリコサイド(II)は、以下の方法で単離することができる。
【0123】
先ず、反応液にクエンチ液(例えば、水、HCl水溶液等)を加えて、反応を停止させる。クエンチ液を加えた反応液を撹拌して、水層と有機層とに分離させる。有機層を抽出した後、水層に有機溶媒を加えて、有機層と水層とに再び分離させる。有機層を抽出し、先に抽出した有機層と合わせて総有機層を得る。総有機層を、洗浄液(例えば、水、HCl水溶液、飽和NaHCO水溶液、食塩水等)で洗浄した後、硫酸ナトリウム等を用いて乾燥させて、C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)を含む残渣を得る。
【0124】
水層に加えられる有機溶媒の具体例は、保護グルコノラクトン(I)とアリールハライド(III)とを接触させる際に使用される溶媒の具体例と同様である。1種の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒は、好ましくは、THF、2-メチル-THF、トルエン又はこれらの混合溶媒である。
【0125】
得られたC-アリールヒドロキシグリコサイド(II)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離してもよいし、濃縮残渣として未精製のまま次工程で使用してもよい。
【0126】
C-アリールヒドロキシグリコサイド(II)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【実施例0127】
〔実施例1〕
下記式で示される反応を行い、D-(+)-グルコノ-1,5-ラクトン(以下「化合物1」という場合がある。)から、(3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリス((2-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-6-(((2-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オン(以下「化合物2」という場合がある。)を製造した。
【0128】
【化16】
【0129】
2-メトキシプロペン(18.0mL,179mmol)を、D-(+)-グルコノ-1,5-ラクトン(5.0g,22.47mmol)のCHCl溶液(40mL)に、0℃で加えた。0℃に維持しながら、パラトルエンスルホン酸ピリジン塩(PPTS)(561mg,2.24mmol)を少しずつ加えた。同温で3時間攪拌し、反応の終了をTLCでモニタリングした後、トリエチルアミン(EtN)(4mL)を加えた。得られた混合物を室温(RT)で20分間撹拌した後、CHCl(250mL)で希釈した。有機層をHO(3×200mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1,1% EtN)で精製し、化合物2(8.0g,収率65%)を白色結晶として得た。
【0130】
得られた化合物2の融点及び赤外分光(IR)分析結果は、次の通りであった。
融点:115.7℃
IR:3000,2900,2850cm-1
【0131】
得られた化合物2の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、次の通りであった。詳細を図1及び2に示す。
H NMR(300MHz,CDCl,30℃):δ 4.74(ddd,J=8.1,5.9,2.4Hz,1H),4.50(dd,J=3.7,1.0Hz,1H),4.16(dd,J=3.7,1.2Hz,1H),3.99(d,J=8.1Hz,1H),3.72(dd,J=10.8,2.4Hz,1H),3.61(dd,J=10.8,5.9Hz,1H),3.29(s,3H),3.27(s,3H),3.26(s,6H),1.41(d,9H),1.40(s,6H),1.37(s,9H).
13C NMR(76MHz):δ 169.63,102.14,102.13,101.57,101.55,101.43,100.04,100.03,78.86,72.70,70.55,69.41,60.56,49.56,49.44,49.22,48.67,25.43,25.03,24.96,24.92,24.76,24.41,24.32.
【0132】
〔実施例2〕
下記式で示される反応を行い、化合物2から、(2S,3R,4S,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,4,5-テトラオール(以下「化合物3」という場合がある。)を製造した。
【0133】
【化17】
【0134】
4-(5-ブロモ-2-クロロベンジル)フェニルエチルエーテル(500mg,1.534mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(3mL)に0℃で加えた。得られた溶液を-80℃に冷却し、温度を-80℃に維持しながら、n-ブチルリチウム(n-BuLi)(0.6mL,1.996mmol,2.6Mのヘキサン溶液)で処理した。得られた混合物を30分間撹拌した。反応混合物の温度を-70℃未満に維持しながら、化合物2(1.07mg,2.30mmol)のTHF溶液(4mL)を加えた。得られた混合物を60分間撹拌した。反応混合物の温度を-30℃未満に維持しながら、トリフルオロ酢酸(TFA)(0.24mL,3.070mmol)の水溶液(2mL)を加えた。その後、反応混合物を15℃で18時間撹拌した。混合物に水(15mL)及び酢酸エチル(15mL)を加え、相分離した。水層を酢酸エチル(15mL×2)で抽出し、有機層を合わせて飽和NaHCO水溶液(10mL×1)で洗浄し、次いで、水(10mL×2)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、ろ過し、減圧乾燥し、黄色オイル状物質を得た。この黄色オイル状物質に、酢酸エチル/ヘキサン=3/7(15mL)の混合物を加え、20分間撹拌し、デカンテーションし、白色粘着性物質を得た。得られた粘着性物質にN-ヘプタン(15mL)を加え、30分間撹拌し、ろ過し、化合物3(247mg,収率37%)を白色結晶として得た。
【0135】
得られた化合物3の融点及び赤外分光(IR)分析結果は、次の通りであった。
融点:64.2℃
IR:3400,2900,1500cm-1
【0136】
得られた化合物3の核磁気共鳴(NMR)分光分析結果は、次の通りであった。詳細を図3に示す。
H NMR(500MHz,DMSO,30℃):δ 7.59(d,J=2.1Hz,1H),7.42(dd,J=8.3,2.1Hz,1H),7.34(d,J=8.4Hz,1H),7.09(d,J=8.6Hz,2H),6.86-6.78(m,2H),6.32(d,J=1.1Hz,1H),4.87(d,J=5.4Hz,1H),4.69(d,J=5.0Hz,1H),4.52(d,J=7.2Hz,1H),4.37(dd,J=6.8,4.9Hz,1H),4.01-3.92(m,4H),3.73-3.64(m,2H),3.61-3.51(m,2H),3.25(td,J=9.3,5.4Hz,1H),3.00-2.91(m,1H),1.29(t,J=7.0Hz,3H).
図1
図2
図3