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特開2024-64832C-アリールグリコシド誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064832
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】C-アリールグリコシド誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/10 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
C07D309/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173737
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】関 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】真島 和志
(72)【発明者】
【氏名】ムラニ シャヘーン カシム
(72)【発明者】
【氏名】タプキル サンジープ ラメシュラオ
(72)【発明者】
【氏名】ナディヴェードヒ マヘシュワラ レディ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】C-アリールグリコシド誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】式(I)で表されるC-アリールグリコシド誘導体を製造する方法であって、還元剤の存在下、式(II)で表されるヒドロキシケトン体と酸とを接触させ、前記C-アリールグリコシド誘導体(I)を形成する工程を含む、前記方法を提供する。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
[式中、
Rは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基保護基を表し、
Arは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるC-アリールグリコシド誘導体(I)を製造する方法であって、
還元剤の存在下、下記式(II):
【化2】
[式中、R及びArは前記と同義である。]
で表されるヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させ、前記C-アリールグリコシド誘導体(I)を形成する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記酸が、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化チタン、三塩化鉄、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸の使用量が、前記ヒドロキシケトン体(II) 1モルに対して、0.001モル以上5モル以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤が、シラン化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シラン化合物が、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン及びトリフェニルシランから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤の使用量が、前記ヒドロキシケトン体(II) 1モルに対して、1モル以上10モル以下である、請求項1、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記工程において、前記還元剤の存在下、前記ヒドロキシケトン体(II)と前記酸とを、-110℃以上60℃以下の温度で接触させる、請求項1、2、4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C-アリールグリコシド誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SGLT2阻害剤は、抗糖尿病薬として有用である。なお、「SGLT2」は、ナトリウム-グルコース共輸送担体-2を意味する。SGLT2阻害剤としては、例えば、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)等が知られている。
【0003】
SGLT2阻害剤の製造方法として、1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体の保護基を脱保護してカナグリフロジンを合成することが提案されている(特許文献1参照)。1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン前駆体は、C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体とも称され、SGLT-2阻害薬を製造するための中間体として注目されている(特許文献1~2及び非特許文献1~3)。
【0004】
C-アリールヒドロキシグリコサイド誘導体の製造方法として種々の提案がされており、例えば、-78℃の超低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にアリールリチウムを作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献1及び3)、-20~-10℃の低温下において、D-グルコノラクトン誘導体にArMgBr・LiCl(Arはアリール基を表す)等のターボグリニャール試薬を作用させてアリール基を付加反応させる方法(非特許文献2)、リチウムトリn-ブチルマグネサート(nBuMgLi)から得られたマグネシウムアート錯体を用いて、-15℃程度の温度環境下、D-グルコノラクトン誘導体にアリール基を付加反応させる方法(特許文献2)等が知られている。また、ニッケル触媒存在下でチオエステル誘導体に有機亜鉛試薬を反応させることによりカップリングが起こり、ケトン誘導体が得られることが報告されている(非特許文献4及び5)。
【0005】
また、下記式(X)で表されるレムデシビル(Remdesivir)は、抗ウイルス薬として用い得る化合物である。レムデシビルは、例えば、RSウイルス、コロナウイルス等の一本鎖RNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示す。
【0006】
【化1】
【0007】
特許文献3には、レムデシビル及びその中間体の製造方法が開示されている。特許文献3には、クロロトリメチルシラン(TMSCl)及びn-ブチルリチウム存在下、下記式(XI)で表されるラクトンと、下記式(Ar’’)で表されるブロモピラゾールとを、-78℃で反応させることにより、下記式(XII)で表されるヒドロキシヌクレオシドが得られることが記載されている。このヒドロキシヌクレオシドは、レムデシビル合成のための中間体として用いることができる。なお、「Bn」はベンジル基を表す。
【0008】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2010/043682号公報
【特許文献2】WO2015/012110号公報
【特許文献3】WO2012/012776号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Med.Chem.2008,51,1145-1149
【非特許文献2】Org.Lett.2014,16,4090-4093
【非特許文献3】J.Org.Chem.1989,54,610-612
【非特許文献4】Tetrahedron Letters 2002,43,1039-1042
【非特許文献5】Chem.Eur.J.2018,24,8774-8778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、C-アリールグリコシド誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本件特許出願人は、C-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体の製造方法及びC-アリールグリコシド誘導体の製造方法について、特許出願を行っている(特願2022-081925)。
【0013】
上記特許出願に係るC-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体の製造方法(以下「第1の方法」という。)は、次の通りである:
下記式(V):
【化3】
[式中、
は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表し、
100は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表し、
nは、1又は2を表す。]
で表されるC-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体(V)を製造する方法であって、
下記式(II):
【化4】
[式中、
は、上記と同義であり、
Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、
nは、1又は2を表す。]
で表されるケトン誘導体(II)と塩基とを接触させて、ケトン誘導体(II)から式:-CO-Rで表されるヒドロキシ基保護基を脱離させた後、酸をさらに接触させて、C-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体(V)を製造する工程を含む、方法。
【0014】
上記特許出願に係るC-アリールグリコシド誘導体の製造方法(以下「第2の方法」という。)は、次の通りである:
下記式(VII):
【化5】
[式中、W及びnは、上記と同義である。]
で表されるC-アリールグリコシド誘導体(VII)を製造する方法であって、
上記第1の方法によりC-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体(V)を製造した後、得られたC-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体(V)とシラン化合物とを接触させて、C-アリールグリコシド誘導体(VII)を製造する工程を含む、方法。
【0015】
上記第1及び第2の方法によれば、ケトン誘導体(II)からC-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体(V)が製造された後、C-アリール-ヒドロキシグリコサイド誘導体(V)からC-アリールグリコシド誘導体(VII)が製造される。
【0016】
本発明者らは、上記第1及び第2の方法を改良すべく鋭意検討した結果、還元剤の存在下、ケトン誘導体(II)(本発明におけるヒドロキシケトン体(II)に対応)と酸とを接触させることにより、環化及び還元が一挙に進行し、1つの工程でC-アリールグリコシド誘導体(VII)(本発明におけるC-アリールグリコシド誘導体(I)に対応)が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、還元剤の不存在下でケトン誘導体(II)と酸とを接触させても、C-アリールグリコシド誘導体(VII)は得られない。
【0017】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]下記式(I):
【化6】
[式中、
Rは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基保護基を表し、
Arは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。]
で表されるC-アリールグリコシド誘導体(I)を製造する方法であって、
還元剤の存在下、下記式(II):
【化7】
[式中、R及びArは前記と同義である。]
で表されるヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させ、前記C-アリールグリコシド誘導体(I)を形成する工程
を含む、前記方法。
[2]前記酸が、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化チタン、三塩化鉄、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸から選択される、請求項1に記載の方法。
[3]前記酸の使用量が、前記ヒドロキシケトン体(II) 1モルに対して、0.001モル以上5モル以下である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記還元剤が、シラン化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記シラン化合物が、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン及びトリフェニルシランから選択される、[4]に記載の方法。
[6]前記還元剤の使用量が、前記ヒドロキシケトン体(II) 1モルに対して、1モル以上10モル以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記工程において、前記還元剤の存在下、前記ヒドロキシケトン体(II)と前記酸とを、-110℃以上60℃以下の温度で接触させる、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、C-アリールグリコシド誘導体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について説明する。
【0020】
≪用語の説明≫
以下、本明細書で用いられる用語について説明する。以下の説明は、別段規定される場合を除き、本明細書を通じて適用される。なお、「値A~値B」という表現は、別段規定される場合を除き、値A以上値B以下を意味する。
【0021】
有機溶媒
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4-ジオキサン、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0022】
ハロゲン原子
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
【0023】
アルキル基
アルキル基の炭素数は、例えば1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~12(例えば、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3又は1~2)である。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上であり、分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上である。
【0024】
アルケニル基
アルケニル基の炭素数は、例えば2~20、好ましくは2~15、より好ましくは2~12(例えば、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4又は2~3)である。アルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。直鎖状のアルケニル基の炭素数は2以上であり、分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は3以上である。
【0025】
シクロアルキル基
シクロアルキル基の炭素数は、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6である。
【0026】
ヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式の飽和脂肪族複素環基である。飽和脂肪族複素環基は、飽和結合のみによって環が構成された脂肪族複素環基である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロシクロアルキル基の員数は、例えば3~8員、好ましくは4~7員、より好ましくは5~7員、より一層好ましくは5又は6員である。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、酸素原子をヘテロ原子として含むことが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、アジリジニル基、オキシラニル基、チイラニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、オキサゾリジニル基、ピラゾリジニル基、チアゾリジニル基、テトラヒドロイソチアゾリル基、テトラヒドロオキサゾリル基、テトラヒドロイソオキサゾリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基(環上の硫黄原子は酸化されてもよい)、アゼパニル基、ジアゼパニル基、オキセパニル基、アゾカニル基、ジアゾカニル基等が挙げられる。
【0027】
一実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基から選択される。ヘテロシクロアルキル基は、好ましくは、テトラヒドロフラニル基である。
【0028】
アリール基
アリール基は、例えば、単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の炭素数4~14、好ましくは6~14、より好ましくは6~10の芳香族炭化水素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基は、好ましくは、フェニル基である。
【0029】
ヘテロアリール基
ヘテロアリール基は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)の芳香族複素環基である。多環式は、好ましくは、縮合環式である。ヘテロ原子の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。ヘテロアリール基の員数は、好ましくは4~14員、より好ましくは5~10員である。ヘテロアリール基としては、例えば、1~2個の酸素原子を含むもの、1~2個の硫黄原子を含むもの、1~2個の酸素原子と1~2個の硫黄原子とを含むもの、1~4個の窒素原子を含むもの、1~3個の窒素原子と1~2個の硫黄原子及び/又は1~2個の酸素原子とを含むもの等が挙げられる。ヘテロアリール基は、好ましくは単環式又は二環式の4~10員、好ましくは5~10員の芳香族複素環基である。
【0030】
単環式の芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、ピロリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル基、1,3,4-オキサジアゾリル基等)、チアジアゾリル基(例えば、1,2,4-チアジアゾリル基、1,3,4-チアジアゾリル基等)、トリアゾリル基(例えば、1,2,3-トリアゾリル基、1,2,4-トリアゾリル基等)、テトラゾリル基、トリアジニル基等の5~7員の単環式の芳香族複素環基が挙げられる。
【0031】
縮合多環式の芳香族複素環基としては、例えば、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、フロピリジニル基、ピロロピリジニル基、ピラゾロピリジニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピラジニル基、イミダゾピリミジニル基、チエノピリミジニル基、フロピリミジニル基、ピロロピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、オキサゾロピリミジニル基、チアゾロピリミジニル基、ピラゾロトリアジニル基、ナフト[2,3-b]チエニル基、フェノキサチイニル基、インドリル基、イソインドリル基、1H-インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、α-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の8~14員の縮合多環式(好ましくは2環式又は3環式)の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0032】
一実施形態において、ヘテロアリール基は、チエニル基、ベンゾチオフェニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基及びピリジル基から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは、チエニル基及びベンゾチオフェニル基から選択される。
【0033】
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基
ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基は、それぞれ、1以上のハロゲン原子を有するアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ハロアルキル基、ハロアリール基又はハロヘテロアリール基が有するハロゲン原子の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0034】
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基
アルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、それぞれ、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0035】
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基
ハロアルキレン基、ハロアリーレン基及びハロヘテロアリーレン基は、それぞれ、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基から1個の水素原子を除去することにより生成される2価の官能基であり、ハロアルキル基、ハロアリール基及びハロヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0036】
アリールアルキル基
アリールアルキル基は、1以上のアリール基を有するアルキル基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0037】
アリールアルケニル基
アリールアルケニル基は、1以上のアリール基を有するアルケニル基であり、アルケニル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基が有するアリール基の数は、例えば1~3、好ましくは1又は2、より好ましくは1である。
【0038】
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基
アルキルカルボニル基及びアリールカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アルキル基及び式:-CO-アリール基で表される基であり、アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。
【0039】
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基
アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びアリールアルキルオキシ基は、それぞれ、式:-O-アルキル基、式:-O-ハロアルキル基、式:-O-ヘテロシクロアルキル基及び式:-O-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0040】
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基
アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びアリールアルキルチオ基は、それぞれ、式:-S-アルキル基、式:-S-ハロアルキル基、式:-S-ヘテロシクロアルキル基及び式:-S-アリールアルキル基で表される基であり、アルキル基、ハロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。
【0041】
アルキルオキシカルボニル基
アルキルオキシカルボニル基は、式:-CO-O-アルキル基で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキルオキシカルボニル基に含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0042】
アミノ基
アミノ基は、式:-NHで表される基(1級アミノ基)である。
【0043】
モノアルキルアミノ基
モノアルキルアミノ基は、式:-NH(-Q)[式中、Qは、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Qで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0044】
ジアルキルアミノ基
ジアルキルアミノ基は、式:-N(-Q)(-Q)[式中、Q及びQは、それぞれ独立して、アルキル基を表す。]で表される基であり、アルキル基に関する説明は、上記の通りである。Q又はQで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0045】
脂環式アミノ基
脂環式アミノ基は、例えば、5又は6員環の脂環式アミノ基であり、5又は6員環の脂環式アミノ基としては、例えば、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ピロリジン-1-イル基、ピラゾリジン-1-イル基、イミダゾリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基等が挙げられる。脂環式アミノ基は、脂環式アミノ基の結合手を有する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から独立して選択されるヘテロ原子(例えば、1個のヘテロ原子)を含んでいてもよい。脂環式アミノ基は、好ましくは、モルホリノ基である。
【0046】
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基
アミノカルボニル基、モノアルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基及び脂環式アミノカルボニル基は、それぞれ、式:-CO-アミノ基、式:-CO-モノアルキルアミノ基、式:-CO-ジアルキルアミノ基及び式:-CO-脂環式アミノ基で表される基であり、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及び脂環式アミノ基に関する説明は、上記の通りである。
【0047】
置換基群α
置換基群αは、以下の置換基で構成される。
(α-1)ハロゲン原子
(α-2)ニトリル基
(α-3)ニトロ基
(α-4)アミノ基
(α-5)アルキル基
(α-6)ハロアルキル基
(α-7)モノアルキルアミノ基
(α-8)ジアルキルアミノ基
(α-9)脂環式アミノ基
(α-10)アルキルオキシカルボニル基
(α-11)アミノカルボニル基
(α-12)モノアルキルアミノカルボニル基
(α-13)ジアルキルアミノカルボニル基
(α-14)脂環式アミノカルボニル基
(α-15)保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
(α-16)保護基で保護されていてもよいチオール基
【0048】
置換基群β
置換基群βは、式(ii)で表される置換基で構成される。
【0049】
以下、置換基群α及びβについて説明する。
【0050】
(α-5)において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。
【0051】
(α-6)において、ハロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3、より一層好ましくは1又は2である。ハロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、より一層好ましくは1である。
【0052】
保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基
ヒドロキシ基保護基は、目的の反応を行う際にはヒドロキシ基を保護することができ、目的の反応の終了後にはヒドロキシ基から脱離させることができるものであることが好ましい。ヒドロキシ基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。
【0053】
アルキルカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基が挙げられる。置換基は、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、フェニル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より一層好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6、より一層好ましくは炭素数1~4)のアルキルオキシ基、炭素数2~11(好ましくは炭素数2~9、より好ましくは炭素数2~7、より一層好ましくは炭素数2~5)のアルキルオキシカルボニル基等から選択することができる。1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、イソプロパノイル基、ピバロイル基等が挙げられる。アルキルカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~5のアルキルカルボニル基であり、より好ましくは、アセチル基又はピバロイル基であり、より一層好ましくは、アセチル基である。
【0054】
アリールカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基、4-メチルオキシベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-tert-ブチルベンゾイル基、4-フルオロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-ブロモベンゾイル基、4-フェニルベンゾイル基、4-メチルオキシカルボニルベンゾイル基等が挙げられる。
【0055】
アリールアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、1,1-ジフェニルエチル基、ナフチルメチル基、トリチル基等が挙げられる。アリールアルキル型保護基は、好ましくは、ベンジル基である。
【0056】
アルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基又はtert-ブチル基、より一層好ましくは、メチル基である。
【0057】
アリールアルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数9~13のアリールアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数10~14のアリールアルキルオキシプロピル基等のアリールアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アリールアルキルオキシアルキル型保護基は、例えば、1以上の置換基を有していてもよいベンジルオキシメチル基、好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はメチルオキシ基で置換されていてもよいベンジルオキシメチル基、より好ましくはベンジルオキシメチル基である。
【0058】
アルキルオキシアルキル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルキルオキシエチル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数4~10のアルキルオキシプロピル基等のアルキルオキシアルキル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。アルキルオキシアルキル型保護基は、好ましくは、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシメチル基、より好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチルオキシ基又はエチルオキシ基を有していてもよい炭素数2~6のアルキルオキシメチル基、より一層好ましくは、メチルオキシメチル基である。
【0059】
シリル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数7~11のアリールアルキル基及び1以上の置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。シリル型保護基は、好ましくは、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選択される官能基を有するシリル基、より好ましくは、炭素数1~5のアルキル基及びフェニル基から選択される官能基を有するシリル基、より一層好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はtert-ブチルジフェニルシリル基である。
【0060】
オキシカルボニル型保護基としては、例えば、1以上の置換基を有していてもよい炭素数2~10のアルキルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数3~10のアルケニルオキシカルボニル基、1以上の置換基を有していてもよい炭素数8~12のアリールアルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。置換基の具体例は、アルキルカルボニル型保護基と同様である。オキシカルボニル型保護基は、好ましくは、炭素数2~6のアルキルオキシカルボニル基、炭素数3~6のアルケニルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基、より好ましく、メチルオキシメチル基、アリルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0061】
アセタール型保護基としては、例えば、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0062】
アリール型保護基としては、例えば、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0063】
保護基で保護されたヒドロキシ基は、式:-O-Qで表される基であることが好ましい。Rは、アルキル基、ハロアルキル基、アリール基、ハロアリール基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基又はアリールアルキル基を表す。式:-O-Qで表される基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。Qは、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルキルカルボニル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、エチル基、テトラヒドロフラニル基、アセチル基又はベンジル基であることがより好ましい。
【0064】
保護基で保護されていてもよいチオール基
チオール基保護基は、目的の反応を行う際にはチオール基を保護することができ、目的の反応の終了後にはチオール基から脱離させることができるものであることが好ましい。チオール基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。これらの保護基に関する説明は、上記の通りである。
【0065】
保護基で保護されたチオール基は、式:-S-Qで表される基であることが好ましい。Qに関する説明は、上記の通りである。
【0066】
式(ii)で表される置換基
【化8】
【0067】
式(ii)において、V10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。アルキレン基又はハロアルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基又はハロヘテロアリーレン基の炭素数は、4~14であることが好ましく、6~14であることがより好ましい。V10は、アルキレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがより好ましい。
【0068】
式(ii)において、bは、0又は1を表す。bは、1であることが好ましい。
【0069】
式(ii)において、W10は、アルキレン基、ハロアルキレン基、アリーレン基、ハロアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ハロヘテロアリーレン基、エステル結合、エーテル結合又はカルボニル基を表す。W10は、ヘテロアリーレン基であることが好ましく、硫黄原子をヘテロ原子として含む5員環のヘテロアリーレン基であることがより好ましく、チエニレンであることがより一層好ましい。
【0070】
式(ii)において、cは、0又は1を表す。cは、1であることが好ましい。
【0071】
式(ii)において、X10は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。
【0072】
10で表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよく、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0073】
10は、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキルオキシ基又は酸素原子をヘテロ原子として含むヘテロシクロアルキルオキシ基を有するアリール基、或いは、非置換のヘテロアリール基であることがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基又はテトラヒドロフラニルオキシ基を有するフェニル基、或いは、非置換のベンゾチオフェニル基であることがより一層好ましい。
【0074】
≪C-アリールグリコシド誘導体(I)≫
C-アリールグリコシド誘導体(I)は、下記式(I)で表される。
【0075】
【化9】
【0076】
式(I)において、Rは、それぞれ独立して、ヒドロキシ基保護基を表す。ヒドロキシ基保護基としては、例えば、アルキルカルボニル型保護基、アリールカルボニル型保護基、アリールアルキル型保護基、アルキル型保護基、アリールアルキルオキシアルキル型保護基、アルキルオキシアルキル型保護基、シリル型保護基、オキシカルボニル型保護基、アセタール型保護基、アリール型保護基等が挙げられる。これらの保護基は、1以上のハロゲン原子を有していてもよい。これらの保護基に関する説明は上記と同様である。
【0077】
一実施形態において、Rは、それぞれ独立して、アセチル基、ベンゾイル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピバロイル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-ニトロベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基及びt-ブチルジフェニルシリル基から選択することができる。
【0078】
別の実施形態において、Rは、それぞれ独立して、式:-CO-Rで表されるヒドロキシ基保護基から選択することができる。Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0079】
式(I)において、4個のRは、異なるヒドロキシ基保護基であってもよいが、ヒドロキシ基保護基の効率的な導入及び除去の観点から、同一のヒドロキシ基保護基であることが好ましい。一実施形態において、4個のRはすべてアセチル基である。
【0080】
式(I)において、Arは、
(1)置換基を有していてもよいアルキル基、
(2)置換基を有していてもよいアルケニル基、
(3)置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
(4)置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、
(5)置換基を有していてもよいアリール基、
(6)置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
(7)置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は、
(8)置換基を有していてもよいアリールアルケニル基を表す。
【0081】
以下、官能基(1)~(8)について説明する。
【0082】
置換基を有していてもよいアルキル基
アルキル基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0083】
置換基を有していてもよいアルケニル基
アルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0084】
置換基を有していてもよいシクロアルキル基
シクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。シクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0085】
置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基
ヘテロシクロアルキル基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロシクロアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0086】
置換基を有していてもよいアリール基
アリール基に関する説明は、上記の通りである。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0087】
置換基を有していてもよいヘテロアリール基
ヘテロアリール基に関する説明は、上記の通りである。ヘテロアリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0088】
置換基を有していてもよいアリールアルキル基
アリールアルキル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0089】
置換基を有していてもよいアリールアルケニル基
アリールアルケニル基に関する説明は、上記の通りである。アリールアルケニル基は、1以上の置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群α及びβから選択することができる。置換基群αから1以上の置換基を選択するとともに、置換基群βから1以上の置換基を選択してもよい。
【0090】
式(I)におけるArは、下記式(iv)で表されることが好ましい。
【0091】
【化10】
【0092】
式(iv)において、Y10は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましい。アリーレン基又はヘテロアリーレン基の炭素数は、4~14であることが好ましく、6~14であることがより好ましい。
【0093】
10で表されるアルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基は、1以上の置換基を有していてもよく、1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0094】
10は、置換基を有するアリーレン基であることが好ましく、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基を有するアリーレン基であることがより好ましく、フッ素原子、塩素原子又はメチル基を有するフェニレン基であることがより好ましい。
【0095】
10は、Arの結合手を有する炭素原子の両隣に位置する炭素原子は置換基を有さず、残りの炭素原子は置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、Arの結合手を有する炭素原子の両隣に位置する炭素原子若しくはヘテロ原子は置換基を有さず、残りの炭素原子若しくはヘテロ原子は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基であることが好ましい。Y10は、Arの結合手を有する炭素原子に対してオルト位には置換基を有さず、メタ位及び/又はパラ位には置換基を有していてもよいフェニレン基であることがより好ましい。
【0096】
式(iv)において、V10、W10、X10、b及びcは、それぞれ、式(ii)と同義である。
【0097】
あるいは、式(I)におけるArは、下記式(vi)で表されることが好ましい。
【0098】
【化11】
【0099】
式(vi)において、R41及びR42は、それぞれ独立して、水素原子又はアミノ基の保護基を表す。アミノ基の保護基としては、カルバメート系、アシル系、アミド系、スルホンアミド系、フタロイル基等、いずれの保護基を用いてもよい。カルバメート系の保護基としては、例えば、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等が挙げられる。アシル系の保護基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。アミド系の保護基としては、例えば、トリフルオロアセチル基等が挙げられる。スルホンアミド系の保護基としては、例えば、p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基等が挙げられる。アミノ基の保護基は、アシル系又はアミド系の保護基であることが好ましい。アミノ基の保護基は、ピバロイル基又はトリフルオロアセチル基であることがより好ましい。R41及びR42は、互いに結合してフタロイル基等のアミノ基の保護基を形成していてもよい。Arが式(vi)の構造を有していると、レムデシビルの中間体として好適に用いることができる。
【0100】
式(I)におけるArは、C-アリールグリコシド誘導体(I)をSGLT-2阻害薬の製造原料として使用する観点から、SGLT-2阻害薬が有する官能基と同一であるか、SGLT-2阻害薬が有する官能基を誘導化した官能基であることが好ましい。
【0101】
ここで、カナグリフロジン(1-(β-D-グリコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン)、エンパグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{4-クロロ-3-[(4-{[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシ}フェニル)メチル]フェニル}-D-グルシトール)、イプラグリフロジン((1S)-1,5-アンヒドロ-1-C-{3-[(1-ベンゾチオフェン-2-イル)メチル]-4-フルオロフェニル}-D-グルシトール-(2S)-ピロリジン-2-カルボン酸)及びダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エチルオキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-チオール)をはじめとするSGLT-2阻害剤は、下記式(A)で表される基を有する。
【0102】
したがって、式(I)におけるArは、下記式(A)で表される基であることが好ましい。
【0103】
【化12】
【0104】
式(A)において、dは、0~4の整数を表す。dは、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。dが2以上である場合、d個のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0105】
式(A)において、d個のRは、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。d個のRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ及びハロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のハロアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のハロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルキルオキシ基から選択することがより一層好ましい。
【0106】
式(A)において、Ar’は、下記式(v)で表される基である。
【0107】
【化13】
【0108】
式(v)において、W10、X10及びcは、それぞれ、式(ii)と同義である。
【0109】
式(A)において、Ar’は、以下の式(Ar’-1)、(Ar’-2)又は(Ar’-3)で表される基であることが好ましい。
【0110】
【化14】
【0111】
式(Ar’-1)、(Ar’-2)及び(Ar’-3)において、pは、0~5の整数である。pは、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、より一層好ましくは0又は1である。
【0112】
式(Ar’-1)、(Ar’-2)及び(Ar’-3)において、p個のRは、それぞれ独立して、置換基群α、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基から選択することができる。p個のRは、それぞれ独立して、置換基群α、及び、置換基群αから選択される1以上の置換基を有していてもよいアリール基から選択することが好ましい。置換基群αから選択される1以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルキルオキシ基、ハロアルキルオキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルチオ基から選択することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及びヘテロシクロアルキルオキシ基から選択することがより好ましく、フッ素原子、エチルオキシ基及びテトラヒドロフラニルオキシ基から選択することがより好ましい。
【0113】
pが2以上である場合、p個のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0114】
式(Ar’-1)において、pは、好ましくは1であり、Rは、好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子を有するフェニル基であり、より好ましくは、フッ素原子を有するフェニル基である。非置換又は置換のフェニル基が結合している位置は、好ましくは、チオフェン環の2位である。ハロゲン原子を有するフェニル基において、ハロゲン原子が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0115】
式(Ar’-2)において、pは、好ましくは0である。
【0116】
式(Ar’-3)において、pは、好ましくは1であり、Rは、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~3のアルキルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基は、好ましくは、テトラヒドロフラニルオキシ基である。置換基を有していてもよいアルキルオキシ基又は置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルオキシ基が結合している位置は、好ましくは、ベンゼン環の4位である。
【0117】
d=1である場合、式(A)で表される基は、下記式(B)で表される基であることが好ましい。
【0118】
【化15】
【0119】
式(B)において、R及びAr’は、式(A)と同義である。
【0120】
式(A)又は(B)で表される基は、下記式(Ar-1)、(Ar-2)、(Ar-3)又は(Ar-4)で表される基であることが好ましい。なお、「Et」は、エチル基を表す。
【0121】
【化16】
【0122】
≪ヒドロキシケトン体(II)≫
ヒドロキシケトン体(II)は、下記式(II)で表される。
【0123】
【化17】
【0124】
式(II)において、R及びArは、式(I)と同義である。
【0125】
≪C-アリールグリコシド誘導体(I)を製造する方法≫
C-アリールグリコシド誘導体(I)は、還元剤の存在下、ヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させることにより、C-アリールグリコシド誘導体(I)を形成する工程を含む方法により製造することができる。この方法によれば、還元剤の存在下、ヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させることにより、環化及び還元が一挙に進行し、1つの工程でC-アリールグリコシド誘導体(I)を得ることができる。なお、還元剤の不存在下でヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させても、C-アリールグリコシド誘導体(I)は得られない。
【0126】
ヒドロキシケトン体(II)は、市販品であってもよいし、常法に従って製造してもよい。
【0127】
還元剤としては、例えば、シラン化合物が挙げられる。シラン化合物は、H-Si-R(-R)(-R)で表される化合物から選択することができる。R、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。アルキル基及びアリール基に関する説明は、上記の通りである。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、より一層好ましくは1~6、より一層好ましくは1~4、より一層好ましくは1~3である。アルキル基は、1以上の置換基を有していてもよい。アルキル基が有する置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。アルキル基が有する1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。アルキル基が有する1以上の置換基は、炭素数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等)から選択することが好ましい。アリール基は、1以上の置換基を有していてもよい。アリール基が有する置換基の数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2である。アリール基が有する1以上の置換基は、それぞれ独立して、置換基群αから選択することができる。アリール基が有する1以上の置換基は、炭素数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等)から選択することが好ましい。
【0128】
一実施形態において、R、R及びRのうちの1個が置換基を有していてもよいアルキル基であり、残りの2個が置換基を有していてもよいアリール基である。別の実施形態において、R、R及びRのうちの2個が置換基を有していてもよいアルキル基であり、残りの1個が置換基を有していてもよいアリール基である。さらに別の実施形態において、R、R及びRの全てが置換基を有していてもよいアルキル基である。さらに別の実施形態において、R、R及びRの全てが置換基を有していてもよいアリール基である。R、R及びRのうちの1個以上が置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、2個以上が置換基を有していてもよいアルキル基であることがより好ましく、3個すべてが置換基を有していてもよいアルキル基であることがより一層好ましい。
【0129】
シラン化合物としては、例えば、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリフェニルシラン、ジメチルフェニルシラン、tert-ブチルジメチルシラン等が挙げられる。1種のシラン化合物を単独で用いてもよいし、2種以上のシラン化合物を組み合わせて用いてもよい。シラン化合物は、トリエチルシラン、トリイソプロピルシラン及びトリフェニルシランから選択することが好ましく、トリエチルシラン及びトリイソプロピルシランから選択することがより好ましい。
【0130】
還元剤の使用量は、ヒドロキシケトン体(II) 1モルに対して、例えば1モル以上10モル以下、好ましくは1モル以上5モル以下である。
【0131】
酸としては、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化チタン、三塩化鉄、四塩化スズ、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げられる。1種の酸を単独で用いてもよいし、2種以上の酸を組み合わせて用いてもよい。酸は、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化チタン、三塩化鉄、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸から選択することが好ましく、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体であることがより好ましい。
【0132】
酸の使用量は、ヒドロキシケトン体(II) 1モルに対して、例えば0.001モル以上5モル以下、好ましくは0.01モル以上10モル以下、より好ましくは0.05モル以上5モル以下である。
【0133】
ヒドロキシケトン体(II)と酸との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。ヒドロキシケトン体(II)と酸とを溶媒中で混合することにより、ヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させることができる。溶媒は、好ましくは有機溶媒である。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルTHF、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、塩化メチレン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。1種の溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。溶媒は、好ましくは、塩化メチレン、アセトニトリル又はこれらの混合溶媒である。
【0134】
溶媒の使用量は、ヒドロキシケトン体(II) 1gに対して、例えば1mL以上100mL以下、好ましくは2mL以上20mL以下である。
【0135】
還元剤の存在下、ヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させる際、接触温度(反応温度)は、例えば-110℃以上60℃以下、好ましくは-60℃以上50℃以下、好ましくは-40℃以上40℃以下であり、接触時間(反応時間)は、例えば0.5時間以上48時間以下、好ましくは1時間以上17時間以下である。
【0136】
得られたC-アリールグリコシド誘導体(I)は、以下の方法で単離することができる。
【0137】
先ず、反応液にクエンチ液(例えば、水、HCl水溶液等)を加えて、反応を停止させる。クエンチ液を加えた反応液を撹拌して、水層と有機層とに分離させる。有機層を抽出した後、水層に有機溶媒を加えて、有機層と水層とに再び分離させる。有機層を抽出し、先に抽出した有機層と合わせて総有機層を得る。総有機層を、洗浄液(例えば、水、HCl水溶液、飽和NaHCO水溶液、食塩水等)で洗浄した後、硫酸ナトリウム等を用いて乾燥させて、C-アリールグリコシド誘導体(I)を含む残渣を得る。
【0138】
水層に加えられる有機溶媒の具体例は、ヒドロキシケトン体(II)と酸とを接触させる際に使用される溶媒の具体例と同様である。1種の有機溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。有機溶媒は、好ましくは、塩化メチレン、アセトニトリル又はこれらの混合溶媒である。
【0139】
得られたC-アリールグリコシド誘導体(I)は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離してもよいし、濃縮残渣として未精製のまま次工程で使用してもよい。
【0140】
C-アリールグリコシド誘導体(I)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光分析により確認することができる。
【実施例0141】
〔実施例1〕
下記式で示される反応を行い、化合物Xjから、化合物XIIを製造した。
【0142】
【化18】
【0143】
窒素雰囲気下、丸底フラスコに化合物Xj(230mg crude,0.39mmol)を加え、CHCl(1mL)で溶解し、0℃に冷却した。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BFEtO)(96μL,0.78mmol)を1分かけてゆっくりと加え、0℃で5分間撹拌した。次いで、トリエチルシラン(124μL,0.78mmol)を1分かけてゆっくりと加えた。次いで、室温で4時間撹拌し、反応を進行させた。出発物質が完全に消費されたことをTLCで確認した後、反応混合物をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)で希釈し、NaHCO飽和水溶液(10mL)でクエンチし、二相分離し、有機層を塩水(10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=3/7)で精製し、化合物XII(55mg,化合物Xjからの収率 25%)を無色オイル状物質として得た(ジアステレオマー比率(β体:α体)=3:1,R値 0.5)。なお、β体が目的物質である。
【0144】
得られた化合物XIIの核磁気共鳴(NMR)分光分析結果及び質量分析(HRMS)結果は、次の通りであった。
H NMR(500MHz) δ 7.33(d,J=8.2Hz,1H),7.23(d,J=8.2Hz,1H),7.20(s,1H),7.10(s,2H),7.06(dd,J=5.2,3.1Hz,1H),6.83(s,2H),5.35-5.32(m,1H),5.31-5.28(m,1H),4.90(dd,J=13.3,2.3Hz,2H),4.62(dd,J=12.3,1.9Hz,1H),4.37(dd,J=9.2,3.0Hz,1H),4.14-4.11(m,1H),4.01-3.95(m,4H),2.13(d,J=0.6Hz,3H),2.08(d,J=0.7Hz,3H),2.00(d,J=0.6Hz,3H),1.81(d,J=0.7Hz,3H),1.38(td,J=6.9,0.5Hz,3H).
13C NMR(126MHz) δ 170.7,169.7,169.4,157.6,139.2,138.9,137.3,134.4,133.7,131.2,129.9,129.5,129.3,128.5,126.1,125.3,114.6,85.7,83.3,82.2,78.5,78.1,77.4,77.2,76.9,75.3,67.8,63.7,63,38.5,29.8,20.895,20.6,20.4,15.0.
質量分析(HRMS):[M+Na] 計算値 C2933ClO10 599.1660,実測値 599.1654.