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特開2024-66474電波伝送システム、及び、電波伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066474
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電波伝送システム、及び、電波伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20240508BHJP
   H04B 7/145 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H04B7/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180100
(22)【出願日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022174457
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 翔
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
(72)【発明者】
【氏名】成末 義哲
(72)【発明者】
【氏名】海老原 晃
(72)【発明者】
【氏名】森川 博之
【テーマコード(参考)】
5J020
5K072
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA01
5J020BA16
5J020CA01
5J020DA03
5J020DA10
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072DD11
5K072DD15
5K072GG05
5K072GG12
5K072GG13
(57)【要約】
【課題】不特定の受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送システム、及び、電波伝送方法を提供する。
【解決手段】電波伝送システムは、複数の反射部を有し、反射角度を走査可能な反射板と、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における画像、又は、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における受信端末の位置情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記画像又は前記受信端末の位置情報に基づいて、前記反射板の反射角度を制御する制御部とを含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反射部を有し、電波の反射角度を走査可能な反射板と、
前記電波の反射角度を走査可能な範囲における画像、又は、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における受信端末の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記画像又は前記受信端末の位置情報に基づいて、前記反射板の反射角度を制御する制御部と
を含む、電波伝送システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記画像に含まれる人を認識し、当該人に向けて前記反射板が電波を反射するように前記反射角度を制御する、請求項1に記載の電波伝送システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像に含まれる人のうち、携帯端末を利用している人を認識し、当該人に向けて前記反射板が前記電波を反射するように前記反射角度を制御する、請求項2に記載の電波伝送システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識すると、前記複数のエリアに対応した複数の方向に前記反射板が電波を反射するように前記反射角度を制御する、請求項2に記載の電波伝送システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記エリアにいる人が多いほど当該エリアに対応する反射方向に前記反射板が反射する電波の強度が強くなるように、前記反射角度を制御する、請求項4に記載の電波伝送システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記エリアが前記取得部から遠いほど当該エリアに対応する反射方向に前記反射板が反射する電波の強度が強くなるように、前記反射角度を制御する、請求項4に記載の電波伝送システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識すると、前記複数のエリアに対応して前記複数の反射部を複数のグループに分け、前記グループ毎に対応するエリアの人に向けて前記反射板が電波を反射するように、前記グループ毎に前記反射角度を制御する、請求項2に記載の電波伝送システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記エリアにいる人が多いほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を多くし、前記エリアにいる人が少ないほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を少なくする、請求項7に記載の電波伝送システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記エリアが前記取得部から遠いほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を多くし、前記エリアが前記取得部に近いほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を少なくする、請求項7に記載の電波伝送システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記反射板と、前記画像に含まれる人との間の距離に応じて、前記複数の反射部が電波の位相を変化させる位相変化量を制御する、請求項1に記載の電波伝送システム。
【請求項11】
前記制御部は、複数の時点において前記取得部によって取得された画像に基づいて、人の移動方向及び/又は移動速度を求め、求めた移動方向及び/又は移動速度に基づいて現時点よりも将来の時点における人の位置を推定し、人の推定位置に向けて前記反射板が前記電波を反射するように前記反射角度を制御する、請求項1に記載の電波伝送システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数の反射部の各々において前記電波の位相を変化させる位相変化量を電気的に制御する、請求項1に記載の電波伝送システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記複数の反射部の各々の反射位相を第1値と第2値のいずれかに設定する、請求項1に記載の電波伝送システム。
【請求項14】
前記第1値と前記第2値との差は、120度~240度である、請求項13に記載の電波伝送システム。
【請求項15】
前記電波は、Sub-6、又は、ミリ波帯の電波である、請求項1に記載の電波伝送システム。
【請求項16】
前記複数の反射部の各々における前記電波の位相は、液晶移相器によって連続的に変化される、又は、離散移相器によって3値以上の離散値に変化される、請求項12に記載の電波伝送システム。
【請求項17】
複数の反射部を有し、電波の反射角度を走査可能な反射板と、
前記電波の反射角度を走査可能な範囲における画像、又は、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における受信端末の位置情報を取得する取得部と、
前記反射板の反射角度を制御する制御部と
を含む、電波伝送システムにおいて、
前記取得部が、前記画像、又は、前記受信端末の位置情報を取得し、
前記制御部が、前記取得部によって取得される前記画像又は前記受信端末の位置情報に基づいて、前記反射板の反射角度を制御する、電波伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波伝送システム、及び、電波伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、波と相互作用する表面であって、前記波が該表面によって反射又は透過されるように該表面のインピーダンスを変化させるための複数の同調可能素子を備える表面(反射面)と、前記複数の同調可能素子の各々を制御するように前記表面に接続された制御装置と、を備える整形デバイスがある。整形デバイスは、前記制御装置に接続され且つパイロット信号を受信する送信モジュールを更に備え、前記制御装置が、前記送信モジュールが受信した前記パイロット信号に応じて前記複数の同調可能素子を制御する。各同調可能素子が二つの状態のみを有し、全ての同調可能素子の状態が、表面のインピーダンスを定める。二つの状態は、位相シフトに対応している。複数の同調可能素子は、電磁的同調可能特性を有する電磁素子である。整形デバイスは、基地局等のネットワークステーションと、携帯電話等の電子デバイスとの間において、複数の同調可能素子を備える表面(反射面)で電波を反射する角度を調整するために、Wi-Fi(登録商標)やBLE(登録商標)で電子デバイスから送信されるパイロット信号に含まれる電子デバイスの情報に基づいて、複数の同調可能素子を備える表面(反射面)で電波を反射する角度を調整している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-536931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の整形デバイス(反射板)が反射面で電波を反射する角度を調整するには、携帯電話等の電子デバイス(受信端末)から無線通信でパイロット信号を受信することが必要であり、パイロット信号に応じて反射方向を電子デバイス(受信端末)に向けている。このため、従来の整形デバイス(反射板)は、パイロット信号の送受信を行わない不特定の受信端末に対して、反射面の反射方向を向けることはできない。
【0005】
また、一般的に、反射板の反射角度を走査可能な全範囲において反射角度を走査すれば、位置が分からない不特定の受信端末に対して電波を反射できるが、全範囲で反射角度を走査するのは効率的ではない。
【0006】
そこで、不特定の受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送システム、及び、電波伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態の電波伝送システムは、複数の反射部を有し、電波の反射角度を走査可能な反射板と、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における画像、又は、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における受信端末の位置情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得される前記画像又は前記受信端末の位置情報に基づいて、前記反射板の反射角度を制御する制御部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
不特定の受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送システム、及び、電波伝送方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における電波伝送システムの動作説明図である。
図2】実施形態の電波伝送システムの構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態の電波伝送システムを壁に取り付けた状態の一例を示す図である。
図4】実施形態の反射板の複数のセルの配列の一例を示す図である。
図5A】実施形態の反射板での反射角度の調整の原理の一例を説明する図である。
図5B】実施形態の反射板での反射角度の調整の原理の一例を説明する図である。
図6】実施形態の反射板のセルの構成の一例を示す図である。
図7A】共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。
図7B】共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。
図7C】共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。
図7D】共振素子のPINダイオードのオンとオフによるセル内での共振素子の結合状態の一例を示す図である。
図8A】極座標系における天頂角θ及び方位角φを示す図である。
図8B】反射板の反射面を水平方向に向けて配置した状態における仰角Θ及び方位角Φを示す図である。
図9】実施形態の電波伝送システムの具体的な利用形態の一例を説明する図である。
図10】制御部が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
図11】実施形態の変形例2の電波伝送システムの具体的な利用形態の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の電波伝送システム、及び、電波伝送方法を適用した実施形態について説明する。以下では、同一の要素に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。X軸に平行な方向(X方向)、Y軸に平行な方向(Y方向)、Z軸に平行な方向(Z方向)は、互いに直交する。また、以下では、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称す場合がある。また、平面視とはXY面視することをいう。また、以下では構成が分かりやすくなるように各部の長さ、太さ、厚さ等を誇張して示す場合がある。また、平行、直角、直交、水平、垂直、上下等の文言は、実施形態の効果を損なわない程度のずれを許容するものとする。
【0012】
また、以下の説明で、「電波」とは電磁波の一種であり、一般的に、3THz以下の電磁波は電波と呼ばれている。以下では、屋外の基地局又は中継局から放射された電磁波を「電波」と呼び、電磁波一般について言及するときは「電磁波」と呼ぶ。また、以下では、「ミリ波」又は「ミリ波帯」というときは、30GHz~300GHzの周波数帯域に加えて、24GHz~30GHzの準ミリ波帯も含むものとする。
【0013】
実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板が反射する電波は、第五世代移動通信システム(5G)等のミリ波帯や、Sub-6を含む1GHz~30GHzの周波数帯域の電波であると好適である。また、実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板が反射する電波は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、又はUMB(Ultra Mobile Broadband)であってもよい。また、実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板が反射する電波は、IEEE802.11(Wi-Fi(登録商標))、IEEE802.16(WiMAX(登録商標))、IEEE802.20、UWB(Ultra-Wideband)、Bluetooth(登録商標)、又はLPWA(Low Power Wide Area)等であってもよい。電波の周波数が高くなるにつれて、反射や回折による伝搬損失が大きくなり、不感地帯が発生しやすくなる。このため、実施形態の電波伝送システムに含まれる反射板は、比較的高い周波数を扱う通信に、より好適である。以下では、特に断らない限り、一例としてミリ波帯とSub-6の電波を用いて説明する。
【0014】
<実施形態>
<電波伝送システム10>
図1は、本開示の一実施形態における電波伝送システム10の動作説明図である。
【0015】
本開示の電波伝送システム10は、例えば、屋外の建物BDの壁や窓に配置される。電波伝送システム10は、反射板100(図2参照)を有しており、反射板100は、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface:再構成可能なリフレクタ)と呼ばれる、ビームの指向性を調整可能な指向性制御アレイである。
【0016】
電波伝送システム10が配置される建物BDの種類は、任意であるが、例えば高層な建物が林立するような地域での建物である。高層な建物が林立する地域では、電波が正常に届かない不感地(通信環境が良好でない地域ないし空間、「不感地帯」とも称される)が発生しやすい。本開示の電波伝送システム10は、反射する電波のビームの向きを制御することで、不感地に対して電波を届ける。
【0017】
ここで、図1では、無線基地局BSから発信された電波、及び電波伝送システム10から反射された電波Rの放射態様が模式的に示されている。図1に示すように、無線通信を行うために無線基地局BSが設けられていることがある。無線基地局BSは、インターネットのようなネットワーク(不図示)からの信号を無線信号にして、電波Rを発信することで、電波Rを受信端末U1~U3が受信する。また、受信端末U1~U3が発信した電波Rを無線基地局BSで受信することで、受信端末U1~U3がインターネットのようなネットワークへのアクセスすることが行われる。無線基地局BSは、電波伝送システム10に対して数10cm~数m程度の近傍に設けられていてもよく、あるいは、電波伝送システム10に対して数10m~数km程度離れて設けられていてもよい。
【0018】
本開示の電波伝送システム10は、入射された電波Rをビームの向きを変えて特定の方向にビームを向けて反射したり、マルチビームにしたりすることで、建物BDに遮られていた不感地帯へ電波を届ける。以下では、特に断らない限り、電波は平面波であるものとして説明する。
【0019】
図1に示すように、電波伝送システム10を用いることで屋外の受信端末U1~U3を選択してインターネット通信が可能となる。具体的には、例えばある時刻で無線基地局BSから送信される電波Rは、電波伝送システム10で反射されて屋外の受信端末U1へ受信させることで受信端末U1の無線通信を成立させることができる。別の時刻で無線基地局BSから送信される電波Rは、電波伝送システム10で反射されて屋外の受信端末U2へ受信させることで受信端末U2の無線通信を成立させることができる。また、受信端末U3についても受信端末U1及びU2と同様である。なお、ここでは受信端末U1、U2、及びU3が電波Rを受信する場合について説明するが、受信端末U1、U2、及びU3が電波Rを送信する際には、電波伝送システム10で反射された電波Rを無線基地局BSが受信することになる。
【0020】
また、図1では、電波伝送システム10に加えて、無線基地局BSを設ける例を示しているが、無線中継局等から飛来した電波を、電波伝送システム10の反射板100で反射してもよい。また、図1では、受信端末U1、U2、及びU3は、ユーザが所持するスマートフォンであるが、建物等に固定されて移動しない固定的な受信端末であってもよい。
【0021】
図2は、電波伝送システム10の構成の一例を示すブロック図である。図3は、電波伝送システム10を壁1に取り付けた状態の一例を示す図である。図2には、反射板100が無線基地局BSから到来した電波を受信端末U1に向けて直接反射している状態を示す。
【0022】
電波伝送システム10は、反射板100、カメラ120、及び制御部5を有する。本実施形態の電波伝送方法は、電波伝送システム10の制御部5が実行する処理によって実現される。カメラ120は、取得部の一例である。
【0023】
制御部5は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)よって実現され、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含む。
【0024】
制御部5は、カメラ120によって取得される画像に対して画像処理を行うことによって、画像に含まれる人を認識し、人に向けて反射板100が電波を反射するように反射板100の各セルの反射角度を制御する。反射角度を人がいる方向に限定することで、反射角度の走査範囲を狭めることができ、受信端末(U1~U3)に向けて電波を効率的に反射可能になるからである。図2には1つのカメラ120を示すが、1つの反射板100に対して複数のカメラ120が設けられていてもよい。
【0025】
各セルの反射角度の制御は、各セルが電波を反射する際に電波の位相を変化させる位相変化量を調整することによって実現される。なお、制御部5が実行する制御の詳細については後述する。なお、制御部5は、不図示の電源生成部で生成された電源電圧に基づいて動作する。
【0026】
また、図3に示すように、電波伝送システム10(反射板100及び制御部5)は、壁1に設けられている。ここで、建物BDの壁1において、電波伝送システム10が設けられる場合の地上からの高さは、電波の効率性の点で、1m~14mが好ましく、2m~10mが特に好ましい。
【0027】
なお、図3では電波伝送システム10は、壁1上に配置される例を示しているが、電波伝送システム10における反射板100は、窓ガラス上に設けられていてもよい。反射板100が窓ガラスに設けられる場合は、反射板100に含まれる反射板の基板や共振素子は、視感透過率が50%以上である透明部材で構成されると好適である。なお、反射板100が窓ガラスに設けられる場合は、制御部5は、反射板100から離間して、窓ガラスに隣接する壁部や窓ガラスの枠部のような他の箇所に配置されてもよい。
【0028】
さらに、本開示の電波伝送システム10は、屋内の壁や窓ガラスに設置してもよい。その場合、屋内での不感地帯の低減に寄与する。
【0029】
電波伝送システム10が屋内に設けられる場合の床面からの高さは、電波の効率性の点で、50cm~2mが好ましい。
【0030】
<反射板100の構成、原理、及び動作>
次に、図4乃至図7Dを用いて、反射板100の構成、原理、及び動作について説明する。
【0031】
図4は、反射板100の複数のセルの配列の一例を示す図である。図4では、垂直偏波の電波を反射する場合について説明するが、水平偏波についても同様である。
【0032】
図4に示すように、反射板100は、規則的に配列された複数のセル110を有する。セル110は繰り返し単位となる構成であって、例えば、図4では、一例としてセル110がX方向及びY方向に10個ずつ配列されている。
【0033】
反射板100は、各セル110で電波を反射する際に位相を変化させる量(位相変化量)を制御することで、反射板100が電波を反射する際の反射角度を鏡面反射以外の角度、又は、鏡面反射の角度に調整可能である。一例として、図4に示すように、セル110をX方向及びY方向に10個ずつ配列することで、反射波の反射角度を調整できる。
【0034】
反射板100の各セル110の位相変化量は2値的、又は、2値よりも多い多値的に制御することができる。反射板100は、各セル110の位相変化量を制御して反射板100が電波を反射する際の反射角度を調整することにより、所望の反射方向に電波を反射する。なお、ここでは、電波の位相を2値的に制御する場合について説明する。
【0035】
また、複数のセル110の配列は、図4に示すようなアレイ状に限らず、例えば、規則性を持たせずにランダム(不規則的)に配列してもよい。セル110は、X方向及びY方向に10個以上配列されており、X方向及びY方向における配列数は、130個以下であることが好ましく、100個以下であることがさらに好ましい。
【0036】
また、各セル110は、共振素子111と、共振素子112H及び112Vとを有する。セル110は、反射部の一例であり、共振素子111は第1共振素子の一例であり、共振素子112H及び112Vの各々は第2共振素子の一例である。共振素子112Hは、水平偏波の電波に付与する位相変化量を変更する際に用いられ、共振素子112Vは、垂直偏波の電波に付与する位相変化量を変更する際に用いられる。共振素子111は、単独で所定の共振周波数で共振可能な共振素子である。共振素子112H及び112Vは、電気的な制御で水平方向及び垂直方向における共振周波数を第1共振周波数又は第2共振周波数に切替可能な切替素子を有するが、図4では省略する。セル110の詳細については、図6を用いて後述する。
【0037】
また、ここでは、各セル110が、共振素子111と、共振素子112H及び112Vとを有する形態について説明するが、各セル110は、共振素子111と、共振素子112H及び112Vのうちのいずれか一方とを有する構成であってもよい。
【0038】
共振素子112Hの切替素子がオフの状態では、水平方向における共振周波数は第1共振周波数であり、共振素子112Hの切替素子がオンの状態では、水平方向における共振周波数は第2共振周波数になる。共振素子112Vの切替素子がオフの状態では、垂直方向における共振周波数は第1共振周波数であり、共振素子112Vの切替素子がオンの状態では、垂直方向における共振周波数は第2共振周波数になる。なお、水平方向及び垂直方向における第1共振周波数は異なっていてもよく、水平方向及び垂直方向における第1共振周波数は異なっていてもよい。
【0039】
以下では、共振素子112Hの切替素子のオフとオフを切り替えることを、水平方向でセル110をオン又はオフにすると称し、共振素子112Vの切替素子のオフとオフを切り替えることを、垂直方向でセル110をオン又はオフにすると称す。また、水平方向及び垂直方向を特に区別しない場合に、共振素子112H又は112Vのいずれかの切替素子のオフとオフを切り替えることを、セル110をオン又はオフにすると称す。
【0040】
セル110のオン、オフを制御することで、反射板100は、入射した電波を反射する角度を、水平方向又は垂直方向において所望の方向に設定可能となる。セル110のオン、オフの詳細については図6及び図7A乃至図7Dを用いて後述する。図4では、オンのセル110を白く示し、オフのセルをドットの塗り潰しで示す。セル110は、オン、オフが制御部5によって制御されるアクティブなセルである。
【0041】
なお、2値よりも多い多値で制御する場合は、電気的に制御する移相器を各セル110に設けることが好ましい。移相器は、位相調整部の一例である。移相器としては、液晶や強誘電体などを用いることが好ましい。移相器は、電波の位相を連続的な値のうちの任意の値に変化させることができるので、多値での制御に好適である。また、移相器の代わりに、3値以上の離散値に変化させることが可能な離散移相器を用いてもよい。
【0042】
図5A及び図5Bは、反射板100での反射角度の調整の原理の一例を説明する図である。反射板100は、RIS(Reconfigurable Intelligent Surface:再構成可能なリフレクタ)と呼ばれる、ビームの指向性を調整可能なアレイである。図5A及び図5Bにおいて、dは、隣り合うセル110のX方向におけるピッチである。図5A及び図5Bでは、XZ平面において、隣同士のセル110における水平偏波の電波の入射と反射の様子を分かり易くするために、反射板100の反射面(+Z方向側の表面)に入射する位置と、反射面から出射する位置とをX方向にずらして別々に示す。
【0043】
反射板100は、アレイ状に並べられた複数のセル110の各々において、電波を反射する際に電波の位相を変更することで、反射波であるビームの伝搬方向を調整する。
【0044】
具体的には、図5Aに示すように、反射板100の反射面(+Z方向側の表面)に入射する電波に対して、X方向及びY方向におけるセル110同士の間隔を考慮して、電波を反射する際にセル110が位相を変化させる量(位相変化量)をセル110毎に設定することで、1つの反射板100に含まれるすべてのセル110で電波を反射する方向を調整することができる。すべてのセル110で電波を反射する方向は、反射板100の全体としての反射角度と同義である。
【0045】
例えば、Z軸に沿って入射される電波をXZ平面内で反射する時に、セル110毎に位相を加えることで反射方向を変える。すなわち、反射板100の場所X毎で位相を加えることで電波の反射方向を変えることができる。
【0046】
図5Aに示すように、座標(Xf,Yf,Zf)の点Fから出射された電波が反射板100の反射面上の座標(X,Y,0)の点に入射して反射され、座標(Xp,Yp,Zp)の点Pに到達する際に、反射板100の反射面で電波に対して加えられる位相Ψ(X,Y)は、次式(1)で表すことができる。なお、定数kは2π/λであり、λは自由空間における電波の波長である。
【0047】
座標(Xp,Yp,Zp)は電波を受信するために集める点という意味で焦点と称す。
【0048】
【数1】
【0049】
式(1)では、反射板100の反射面で電波に対して加えられる位相Ψ(X,Y)の分布は、位置Xに対して非線形である。反射板100の反射面に対して点Fと点Pが十分に遠ければ、式(1)を反射面上の座標X,Yに対して線形な式に近似される。
【0050】
また、図5Bには、X方向及びY方向においてピッチdで隣り合うセル110に天頂角θin及び方位角φinで入射する電波と、反射板100によって天頂角θout及び方位角φoutの方向に反射される電波をXZ平面で見た様子を示す。天頂角及び方位角は、後述する図8Aにおける天頂角θ及び方位角φで表される。
【0051】
反射板100の反射面に対して点Fと点Pが十分に遠い場合には、図5Bに示すように、ピッチdで隣り合うセル110に入射する電波は平行であって入射角はともに天頂角θin、方位角φinであり、反射板100の反射面で反射される電波も平行であって反射角はともに天頂角θout、方位角φoutであると考えることができる。この場合に、ピッチdで隣り合うセル110に入射する電波の位相差は例えばX方向についてd×sinθin×cosφinであり、ピッチdで隣り合うセル110で反射される電波の位相差はd×sinθout×cosφoutである。また、図5Bには示さないが、ピッチdで隣り合うセル110に入射する電波の位相差は例えばY方向についてd×sinθin×sinφinであり、ピッチdで隣り合うセル110で反射される電波の位相差はd×sinθout×sinφoutである。入射の天頂角θinと方位角φin及び反射の天頂角θoutと方位角φoutを用いて式(1)を近似し、X、Yに依存しない定数項を無視することで次式(2)を得る。
【0052】
【数2】
【0053】
このようにして得られた位相Ψ(X,Y)を実現するように、反射板100内の位相差を近似的に実現するようなセル110の制御を行うことで、反射板100に入射してきた電波を所望の方向に反射させることができる。なお、セル110を制御するときに、すべてのセル110について式(1)で表される位相Ψ(X,Y)に対して同じ値を加算しても、同じ結果を得ることができ、反射板100の全体としての反射角度は変わらない。
【0054】
例えば、電圧によって連続的に反射時の位相を制御できるセル110を用いることで、誤差を除いて位相Ψ(X,Y)を実現することができ、反射板100において反射方向を変えることができる。
【0055】
また、電圧のオンとオフによる2値で反射時の位相変化量を制御できるセル110を用いることで、近似的に位相Ψ(X,Y)を実現することができ、反射板100において反射方向を変えることができる。
【0056】
オン状態とオフ状態を切り替えることができる各セル110で位相Ψ(X,Y)を電波に加えることを実現するためには、オン状態とオフ状態での反射時の位相差を約180度確保できればよい。例えば、位相Ψ(X,Y)が-90°から90°の間であればオフ状態になり、-180°から-90°又は90°から180°の間であればオン状態になることで、位相Ψ(X,Y)をおおよそ実現することができる。この結果、各セル110において反射方向を変えることができる。これは式(1)及び式(2)のいずれの場合でも成立する。
【0057】
上述の位相Ψ(X,Y)からオン状態とオフ状態を選択することは一例であり、互いに重複しない180°の範囲でオン状態とオフ状態を選択すればよい。例として、20°から180°又は-180°から-160°をオフ状態、-160°から20°をオン状態などとしてもよい。
【0058】
このようにすることで、電波伝送システム10は、5Gの基地局等から出射された電波を、ビームの向きを変えて色々な方向や好きな方向へビームを向けて出したり、マルチビームにしたりすることもできる。
【0059】
なお、図5A及び図5Bでは、XZ平面内で反射される電波を示したが、上述のように、反射板100は、YZ平面内で電波が反射させる場合や、Z軸を含みXZ平面及びYZ平面に対して角度を有する平面内で反射される場合も同様に電波を反射可能である。このため、反射板100は、鏡面反射以外の角度に反射角度を設定可能なリフレクタとなる。
【0060】
図4には、垂直偏波の電波を反射する場合において、一例として、すべてのセル110のオン又はオフの状態が、各行内でX方向において変化し、各列内でY方向に配列される10個のセル110がオン又はオフに統一されている状態を示す。これは式(2)を元にオン状態とオフ状態を決めた場合に相当する。
【0061】
なお、図4に示す反射板100におけるセル110の配列は一例であって、アレイに設けられるセル110の数は、数十個~数千個程度であってもよい。
【0062】
<オンとオフによる2値で位相変化量を制御するセル110の構成>
図6は、セル110の構成の一例を示す図である。セル110は、オンとオフによる2値で位相変化量を水平方向又は垂直方向において制御するセルであり、共振素子111と、共振素子111に隣接する共振素子112H及び112Vを有する。また、図6には、基板101を示す。基板101は、反射板100(図4参照)の基板101であり、一例として、1つの反射板100が1つの基板101を含む。基板101の平面視でのサイズは、図4に反射板100として示すサイズである。また、基板101の-Z方向側の表面にはグランド層が設けられている。反射板100は複数のセル110を含む。図6には、基板101の全体のうちの1つのセル110に相当する部分を示す。また、1つの反射板100が1つの基板101を含む形態について説明するが、1つの反射板100が複数の基板101を含む構成であってもよい。すなわち、1つの反射板100の中で、1又は複数のセル110に対して1つの基板101が設けられていてもよい。
【0063】
基板101は、一例として、平面視で矩形状の基板である。基板101は、例えば、可撓性を有する、樹脂製で薄いフィルム状のフレキシブル基板、又は、可撓性を有しないリジッド基板である。可撓性とは、外観で分かる程度に物体が折れずに曲がる性質である。基板101は、フレキシブル基板である場合は、例えば、フッ素、COP(Cyclo-Olefin Polymer)、PET(Polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、ポリイミド、Peek(polyether ether ketone)、LCP(Liquid Crystal Polymer)、その他の複合材等の、可撓性を有する樹脂素材で形成可能である。また、基板101は、リジッド基板である場合には、例えば、ガラス布にエポキシ樹脂等を含浸させたプリプレグとコア材とを貼り合わせた基板等を用いることができる。
【0064】
また、基板101は、屋外の基地局等から放射される電波に対して透明な任意の材料で形成されていてもよい。「透明」とは、視感透過率が少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であることをいう。一例として、基板101に透明な樹脂基材を用いる。上記の条件を満たす樹脂材料として、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)等を用いることができる。また、基板101は、ガラス板であってもよい。
【0065】
共振素子111及び112H及び112Vは、金属層で形成される。金属層は、基板101が電波に対して透明な任意の材料で形成されていない場合には、例えば、銅、ニッケル、又は金等の金属薄膜で形成可能である。また、金属層は、基板101が電波に対して透明な任意の材料で形成されている場合には、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化インジウム・酸化スズ(IZO)等の透明導電膜、窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)等の金属窒化物、又はLow-e(low emissivity)ガラス用のLow-e膜で形成されるのが望ましい。また、金属層は、基板101が電波に対して透明な任意の材料で形成されている場合には、例えば、銅、ニッケル、又は金等のメッシュ状の金属薄膜で形成されていてもよい。
【0066】
共振素子111は、平面視で正方形状の導体である。共振素子111は、+Y方向側においてX方向に沿って延びる端辺111Aを有する。共振素子111には、共振素子112H及び112Vが寄生する。共振素子112H及び112Vは、共振素子111に電磁界結合によって結合して寄生するため、共振素子111が主共振素子であって、共振素子112H及び112Vが寄生共振素子であることとして捉えてもよい。共振素子112Hは、水平偏波用であり、共振素子112Vは、垂直偏波用である。共振素子112H及び112Vは、共振素子111に対する位置が90度異なり、共振素子112Hは、共振素子111の+X方向側に位置し、共振素子112Vは、共振素子111の+Y方向側に位置するが、互いに同一の構成を有する。
【0067】
共振素子112Vは、線状エレメント112A及び112BとPIN(p-intrinsic-n)ダイオード112Cとを有する。PINダイオード112Cは、切替素子の一例である。線状エレメント112A及び112Bは、X方向に平行に延びている。線状エレメント112Aは、共振素子111の端辺111Aの+Y方向側に配置されており、線状エレメント112Bは、線状エレメント112Aの+Y方向側に配置されている。線状エレメント112A及び112Bの間には、PINダイオード112Cが設けられている。一例として、線状エレメント112AにPINダイオードのカソードが接続され、線状エレメント112BにPINダイオード112Cのアノードが接続されている。
【0068】
また、線状エレメント112A及び112Bの-X方向側の端部には、RFチョーク113、114が設けられている。RFチョーク113は、基板101の裏面のグランド電位(GND)のグランド層に接続され、RFチョーク114は、制御用端子に接続されて制御用電圧BVが印加される。制御用電圧BVは、制御部5(図2参照)から印加される。
【0069】
共振素子111と線状エレメント112Aとの電磁界結合を得るために、共振素子111の端辺111Aと、線状エレメント112Aとの間の間隔は、一例として、λe/10以下であると好適であり、λe/30程度であるとさらに好適である。λeは、反射板100が反射する電波の周波数における波長の電気長である。
【0070】
共振素子112Hは、共振素子112Vと同様に、線状エレメント112A及び112BとPIN(p-intrinsic-n)ダイオード112Cとを有する。共振素子112Hの動作は、共振素子112Vの動作と同様であるため、ここでは詳細は省略する。
【0071】
なお、1つのセル110内で共振素子111と共振素子112H及び112Vとが設けられる領域の平面視でのX方向及びY方向の長さは、2λ以下である。図6には、正方形状の共振素子111を示すが、例えば、共振素子111が楕円形である場合のようにX方向及びY方向の寸法が一定ではない場合には、1つのセル110内で共振素子111と共振素子112H及び112Vとが設けられる領域の平面視での最大のX方向の長さと、最大のY方向の長さとが、2λ以下であればよい。
【0072】
図7A乃至図7Dは、共振素子112H及び112VのPINダイオード112Cのオンとオフによるセル110内での共振素子111に対する共振素子112H及び112Vの線状エレメント112A及び112Bの結合状態の一例を示す図である。図7A乃至図7Bでは、共振素子111に対して結合する線状エレメント112A、又は、線状エレメント112A及び112Bを示し、その他の構成を省く。
【0073】
図7Aには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112VのPINダイオード112C(図6参照)がオンになるとともに、制御用電圧BVによって共振素子112HのPINダイオード112C(図6参照)がオフになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続され、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されない。この結果、図7Aに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bと、共振素子112Hの線状エレメント112Aとが結合した状態になる。
【0074】
図7Bには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112V及び112HのPINダイオード112C(図6参照)がオフになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されず、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されない。この結果、図7Bに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112Aと、共振素子112Hの線状エレメント112Aとが結合した状態になる。
【0075】
図7Cには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112VのPINダイオード112C(図6参照)がオフになるとともに、制御用電圧BVによって共振素子112HのPINダイオード112C(図6参照)がオンになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続されず、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続される。この結果、図7Cに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112Aと、共振素子112Hの線状エレメント112A及び112Bとが結合した状態になる。
【0076】
図7Dには、制御部5(図2参照)から印加される制御用電圧BVによって共振素子112V及び112HのPINダイオード112C(図6参照)がともにオンになっているときの結合状態を示す。このため、共振素子112Vの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続され、共振素子112Hの線状エレメント112Aには線状エレメント112Bが接続される。この結果、図7Dに示すように、共振素子111には、共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bと、共振素子112Hの線状エレメント112A及び112Bとが結合した状態になる。
【0077】
図7A及び図7Bの結合状態を比べると、図7Aでは共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bが共振素子111に結合しているが、図7Bでは共振素子112Vの線状エレメント112Aのみが共振素子111に結合している点が異なる。図7A及び図7Bの結合状態を比べると、図7Aの結合状態の方が、共振素子112Vの長さが長くなり、形状が変化する。このため、図7Aに示す結合状態のように共振素子112VのPINダイオード112C(図6参照)をオンにすると、図7Bに示す結合状態のように共振素子112VのPINダイオード112Cがオフである状態よりも共振素子112Vの共振周波数が低下して第1共振周波数になる。これとは逆に、図7Bに示す結合状態のように共振素子112V及び112HのPINダイオード112C(図6参照)をオフにすると、図7Aに示す結合状態のように共振素子112VのPINダイオード112Cがオンである状態よりも共振素子112Vの共振周波数が上昇して第2共振周波数になる。
【0078】
2つの略同一の共振周波数を有する共振素子同士が近くに置かれると、相互作用により反射特性が変わることが知られている。共振素子111の共振周波数が、共振素子112Vの共振素子112の第1共振周波数又は第2共振周波数のいずれかと略同一の共振周波数を持つ場合、共振素子112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることにより、共振素子111及び112Vの全体の形状(又は長さ)が変化して、セル110の反射特性が変化する。
【0079】
共振素子111及び112Vは、共振素子112VのPINダイオード112Cがオフのときとオンのときとで、垂直偏波の入射波としての電波に与える位相変化量の絶対値の差が約180度になるように、共振素子111のサイズ、及び、共振素子112Vの線状エレメント112A及び112Bが設定されている。約180度とは、一例として180度±45度の範囲内の値であることを意味する。共振素子111及び112Vは、導体で作製されるため、製造誤差等によって位相変化量に誤差が生じる場合が有り得る。しかしながら、共振素子112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、垂直偏波の入射波に与える位相変化量を約180度(180度±45度)変化させることができれば、反射板100の全体としての垂直偏波の電波の反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。鏡面反射とは、正反射のことであり、通常の金属反射等による反射によって等位相面が生じる方向に反射することをいう。
【0080】
また、共振素子112H及び112Vは、平面視で角度が90度異なるだけで、同一の線状エレメント112A及び112Bを有し、同様に動作する。すなわち、共振素子111及び112Hは、共振素子112HのPINダイオード112Cがオフのときとオンのときとで、水平偏波の入射波としての電波に与える位相変化量の絶対値の差が約180度になるように、共振素子111のサイズ、及び、共振素子112Hの線状エレメント112A及び112Bが設定されている。共振素子112HのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、水平偏波の入射波に与える位相変化量を約180度(180度±45度)変化させることができれば、反射板100の全体としての水平偏波の電波の反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
【0081】
反射板100は、各セル110の共振素子112H又は112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、すべてのセル110の集合としての反射板100での垂直偏波又は垂直偏波の入射波の反射角度(反射方向)を切り換えることができる。すなわち、反射板100は、制御部5が各セル110の共振素子112H又は112VのPINダイオード112Cのオンとオフを切り換えることによって、水平方向又は垂直方向における位相変化量を2値的に制御することができ、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。鏡面反射とは、正反射のことであり、通常の金属反射等による反射によって等位相面が生じる方向に反射することをいう。なお、反射板100は、反射角度を鏡面反射の角度にも調整可能である。
【0082】
例えば、垂直方向について、共振素子112VのPINダイオード112Cをオフにしたときのセル110の位相変化量が30度であり、PINダイオード112Cをオンにしたときのセル110の位相変化量が210度であるように、位相変化量を2値的に制御することができる。この場合に、位相変化量の30度は第1値の一例であり、位相変化量の210度は第2値の一例である。共振素子112VのPINダイオード112Cがオフのときの位相変化量と、オンのときの位相変化量との差は、絶対値で120度~240度である。すなわち、位相変化量の第1値と第2値との差は、絶対値で180±60度である。位相変化量の第1値と第2値との差をこのような範囲の値に設定することで、製造誤差等によるばらつきを考慮して、位相変化量を2値的に制御することで、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
【0083】
このため、垂直方向において、すべてのセル110のPINダイオード112Cをオフにしているときは、すべてのセル110の位相変化量の差は0度である。実際には多少のばらつきがあるため、位相変化量の差は約0度になる。また、これは、垂直方向において、すべてのセル110のPINダイオード112Cをオンにしている場合も同様である。
【0084】
また、垂直方向において、すべてのセル110について、共振素子112VのPINダイオード112Cがオフのセル110と、PINダイオード112Cがオンのセル110とがある場合には、すべてのセル110の位相変化量(例えば、30度と210度)の差は、180度である。実際には多少のばらつきがあるため、位相変化量の差は約180度になる。
【0085】
なお、これは、水平方向においても同様である。また、ここでは一例として、共振素子111が正方形状であり、共振素子112H及び112Vが2本の線状エレメント112A及び112Bの間にPINダイオード112Cを有する形態について説明した。しかしながら、共振素子111の形状は正方形状に限られず、電波を反射可能であれば、どのような平面形状であってもよい。また、共振素子112H及び112Vの構成が異なっていてもよい。また、共振素子112H及び112Vは、制御部5によって切り換えられることによって形状や長さを変更可能であれば、どのような構成であってもよい。また、PINダイオード112Cに限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチ、バラクタ、又は、FET(Field effect transistor)のようなトランジスタであってもよい。
【0086】
<極座標系>
図8Aは、極座標系における天頂角θ及び方位角φを示す図である。反射板100は、XYZ座標の原点に位置する。天頂角θは、+Z方向に対する角度であり、矢印で示すように+Z方向から下ろした角度を正とする。方位角φは、XY平面内での+X方向に対する方位角であり、矢印で示すように+X方向から+Y方向に向かう角度を正とする。rは動径であり、原点から受信端末U1が位置する受信点Gまでの距離である。反射板100の反射角度は、天頂角θ及び方位角φで表される。
【0087】
<仰角Θ及び方位角Φ>
図8Bは、反射板100の反射面100Aを水平方向に向けて配置した状態における仰角Θ及び方位角Φを示す図である。図8Bでは、XZ平面が水平面である。反射板100の反射面100Aを水平方向に向けるとは、反射面100Aの法線が水平方向に向くことであり、図3に示すように反射板100が壁1に取り付けられている状態に相当する。反射面100Aの法線が水平方向に向いている状態は、図8Bに示すように、反射面100Aの法線がZ方向に平行であることである。
【0088】
大文字で表す仰角Θ及び方位角Φは、図8Bに示す通りである。具体的には、仰角Θは、受信点GとXYZ座標系の原点とを含み水平面(XZ平面)に垂直な平面α内における、水平面(XZ平面)に対する受信点Gの仰角である。また、方位角Φは、受信点GとXYZ座標系の原点とを含み水平面(XZ平面)に垂直な平面αがXZ平面視(水平面視)で+Z方向となす角度である。
【0089】
<電波伝送システム10の具体的な利用形態>
図9は、電波伝送システム10の具体的な利用形態の一例を説明する図である。図9には、電波伝送システム10の反射板100及びカメラ120が壁1に取り付けられている状態の一例を示す。XYZ座標の原点は、一例として反射板100の反射面100Aの中心に位置する。
【0090】
壁1は、一例として、建物BD1とは別の建物の壁である。カメラ120は、一例として反射板100の上側に位置する。また、一例として、カメラ120は、反射板100の反射面100Aの中心の真上(XY面視におけるY軸上)に位置する。
【0091】
図9には、一例として3人の人を示す。3人のうち、携帯機器としてのスマートフォンSM1を見ているのは、利用者P1である。携帯機器は、受信端末のうち、人が所持して移動可能な受信端末である。スマートフォンSM1と無線基地局BS1との間には建物BD1があり、無線基地局BS1が出力する電波は、スマートフォンSM1に直接的には届かない状況である。このため、無線基地局BSから到来した電波を反射板100がスマートフォンSM1に向けて反射している。
【0092】
なお、図9には1つのカメラ120を示すが、1つの反射板100に対して複数のカメラ120が設けられていてもよい。複数のカメラ120を用いれば、より広い範囲において、スマートフォンSM1の利用者P1を認識可能である。また、複数のカメラ120が撮像する領域を重複させることで、スマートフォンSM1の利用者P1の認識精度を向上させることができる。
【0093】
<反射板100の反射角度>
ここで、反射板100の反射角度は、仰角Θについては、一点鎖線で示すΘAの範囲で調整可能である。また、反射板100の反射角度は、方位角Φについては、破線で示すΦAの範囲で調整可能である。図9には、ΘA及びΦAの範囲を分かり易く示すために、Z軸を中心とする±90度の角度で示すが、実際のΘA及びΦAの範囲は、一例として、ともにZ軸を中心とする±60度であり、互いに等しい。すなわち、反射板100が電波の反射角度を走査可能な範囲は、仰角ΘについてのΘA(±60度)の範囲と、方位角ΦについてのΦA(±60度)の範囲とで規定される範囲である。図9では、反射板100が電波の反射角度を走査可能な範囲内に、スマートフォンSM1の利用者P1を含む3人の人が存在する。なお、ΘA及びΦAの範囲は、±60度よりも大きくてもよく、小さくてもよい。また、ΘA及びΦAの範囲は、互いに異なる角度範囲であってもよい。
【0094】
なお、電波伝送システム10は、複数の反射板100を含んでいてもよい。例えば、反射板100が反射角度を調整可能な範囲であるΘA及びΦAが比較的小さい場合には、複数の反射板100を用いることで、実質的なΘA及びΦAの範囲を広げることが可能である。
【0095】
<カメラ120>
カメラ120は、制御部5に接続されており、反射板100が電波の反射角度を走査可能な範囲に向けられている。カメラ120が取得する画像は、動画又は静止画のいずれであってもよい。カメラ120が取得する画像を表すデータはデジタル画像データであり、制御部5に入力される。
【0096】
カメラ120は、制御部5によって制御されることによって、反射板100が電波の反射角度を走査可能な範囲における画像を取得可能である。このため、カメラ120によって取得される画像には、スマートフォンSM1の利用者P1を含む3人の人の画像が含まれる。
【0097】
<画像処理によるスマートフォンSM1の利用者P1の識別>
ここで、スマートフォンSM1を見ている利用者P1は、一例として、手でスマートフォンSM1を持ち、腕を曲げてスマートフォンSM1を顔の前に位置させ、頭を前傾させてスマートフォンSM1を覗き込んでいる姿勢を取っている。スマートフォンを利用しているときの人の姿勢は、利用者P1のような姿勢に限らないが、例えば腕を曲げることや頭を前傾させること等の幾つかの特徴がある。また、スマートフォンSM1で通話している場合には、スマートフォンSM1を頭部の耳の付近に当てているという特徴がある。
【0098】
このため、様々な利用者がスマートフォンの操作時に取り得る姿勢のパターンを表す姿勢パターンデータを制御部5のメモリ5Aに格納しておき、制御部5が姿勢パターンデータを用いてカメラ120で取得される画像に対してパターン認識等の画像処理を行うことによって、カメラ120によって取得される画像に含まれる3人の中から、スマートフォンSM1の利用者P1を特定できる。また、カメラ120を壁1に固定する位置のXYZ座標と、反射板100のXYZ座標とを用いれば、画像の中における利用者P1の位置を表すXYZ座標を求めることができる。
【0099】
制御部5は、カメラ120によって取得される画像に対してパターン認識等の画像処理を行うことによって、画像に含まれる利用者P1を認識し、利用者P1に向けて反射板100が電波を反射するように反射板100の各セル110の反射角度を制御する。利用者P1がいる方向に限定して反射角度を走査することで、反射角度の走査範囲を狭めることができ、スマートフォンSM1に向けて電波を効率的に反射可能になる。なお、各セル110の反射角度の制御は、各セル110が電波を反射する際に電波の位相を変化させる位相変化量を調整することによって実現される。
【0100】
また、制御部5は、画像の中における利用者P1の位置を表すXYZ座標を求めることができるため、反射板100と、画像に含まれる利用者P1との間の距離に応じて、利用者P1のスマートフォンSM1に反射波が届くように、複数のセル110が電波の位相を変化させる位相変化量を制御する。複数のセル110が電波の位相を変化させる位相変化量によって、反射波が届く距離が変わるからである。
【0101】
また、人が多く集まる場所に向けてカメラ120を設置すると、画像処理によってスマートフォンSM1の利用者P1を見つけやすくなり、スマートフォンSM1に向けて電波を効率的に反射可能にすることができる。人が多く集まる場所は、例えば、人気のある待ち合わせ場所や、人気のある飲食店の前等である。
【0102】
なお、ここでは、スマートフォンSM1の利用者P1を識別する画像処理について説明したが、スマートフォンSM1の利用者P1であるかどうかを区別せずに、画像に含まれる人を識別して、人がいる方向に反射板100の反射角度を制御してもよい。
【0103】
<フローチャート>
図10は、制御部5が実行する処理の一例を表すフローチャートである。ここでは、反射板100及びカメラ120の位置を表すXYZ座標は、メモリ5Aに格納されていることとする。
【0104】
制御部5は、処理がスタートすると、カメラ120に画像を取得させる(ステップS1)。カメラ120は、反射板100が電波の反射角度を走査可能な範囲における画像を取得する。
【0105】
制御部5は、メモリ5Aに格納されている姿勢パターンデータを読み出し、カメラ120で取得される画像に対してパターン認識の画像処理を行い、画像に含まれるスマートフォンSM1の利用者P1の位置を取得する(ステップS2)。ステップS2において、制御部5は、画像の中におけるスマートフォンSM1の利用者P1の位置を求める。制御部5は、画像の中における利用者P1の位置のXYZ座標を求め、求めたXYZ座標を、反射板100の反射面100Aの中心に対する仰角Θ及び方位角Φと、反射面100Aの中心からの距離とに変換する。
【0106】
制御部5は、スマートフォンSM1の利用者P1の位置(仰角Θ、方位角Φ、及び距離)に応じて、スマートフォンSM1に向けて反射板100が電波を反射するように各セル110の位相変化量を調整する(ステップS3)。ステップS3の処理により、スマートフォンSM1の利用者P1に向けて反射板100の反射角度と反射波の到達距離とが制御され、スマートフォンSM1に向けて電波が反射される。
【0107】
以上で、制御部5は、一連の処理を終了する(エンド)。制御部5は、所定の周期でステップS1~S3の処理を繰り返し実行する。スマートフォンSM1の利用者P1が歩行している場合や、車両等で移動する場合があるからである。なお、所定の周期は、一例として、0.1秒から2.0秒であり、1.0秒以下であることが好ましい。
【0108】
<効果>
電波伝送システム10は、複数のセル110を有し、反射角度を走査可能な反射板100と、電波の反射角度を走査可能な範囲(ΘA、ΦA)における画像を取得するカメラ120と、カメラ120によって取得される画像に基づいて、反射板100の反射角度を制御する制御部5とを含む。このため、カメラ120によって取得される画像に基づいて、反射波がスマートフォンSM1やその他の受信端末に向くように反射板100の反射角度を制御できる。
【0109】
したがって、不特定の受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送システム10を提供できる。なお、受信端末は、スマートフォンSM1のように人が所持して移動可能な携帯機器に限らず、建物等に固定されて移動しない固定的な受信端末であってもよい。
【0110】
また、制御部5は、画像に含まれる人を認識し、人に向けて反射板100が電波を反射するように反射角度を制御する。反射波としての電波を必要とするスマートフォンSM1等の携帯端末は、人が所持している。このため、反射角度を人がいる方向に限定することで、反射角度の走査範囲を狭めることができ、スマートフォンSM1等の携帯機器に向けて電波を効率的に反射可能である。
【0111】
また、制御部5は、画像に含まれる人のうち、スマートフォンSM1等の携帯機器を利用している人を認識し、当該人に向けて反射板100が電波を反射するように反射角度を制御する。スマートフォンSM1等の携帯機器を利用している人は、姿勢に特徴があるため、姿勢パターンデータを用いた画像処理によってスマートフォンSM1等の携帯機器を利用している人を認識することができる。そして、スマートフォンSM1等の携帯機器を利用している人がいる方向に反射角度を限定すれば、反射角度の走査範囲をさらに狭めることができ、スマートフォンSM1等の携帯機器に向けて電波をさらに効率的に反射可能である。
【0112】
また、制御部5は、反射板100と、画像に含まれる人との間の距離に応じて、複数のセル110が電波の位相を変化させる位相変化量を制御する。このため、反射波としての電波が受信端末に確実に到達可能になり、受信端末に向けて電波をさらに効率的に反射可能である。
【0113】
また、反射板100は、複数のセル110を有し、制御部5は、複数のセル110の各々において電波の位相を変化させる位相変化量を電気的に制御する。反射板100における位相変化量を連続的な値のうちの任意の値に変化させることができ、位相変化量を多値的に制御可能である。
【0114】
反射板100は、複数のセル110を有し、制御部5は、複数のセル110の各々の反射位相を第1値と第2値のいずれかに設定する。このため、位相変化量を2値的に制御することで、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
【0115】
第1値と第2値との差は、120度~240度であるので、製造誤差等によるばらつきを考慮して、位相変化量を2値的に制御することで、反射角度を鏡面反射以外の角度に調整可能である。
【0116】
電波は、Sub-6、又は、ミリ波帯の電波であるので、第五世代移動通信システム(5G)やSub-6等の周波数帯域の電波を反射する際に、受信端末に効率的に電力を供給可能な電波伝送システム10を提供できる。
【0117】
複数のセル110の各々における電波の位相は、液晶移相器によって連続的に変化される、又は、離散移相器によって3値以上の離散値に変化される。このため、位相変化量を多値的に制御可能である。
【0118】
電波伝送方法は、複数のセル110を有し、反射角度を走査可能な反射板100と、電波の反射角度を走査可能な範囲(ΘA、ΦA)における画像を取得するカメラ120と、反射板100の反射角度を制御する制御部5とを含む電波伝送システム10において、カメラ120が、画像を取得し、制御部5が、カメラ120によって取得される画像に基づいて、反射板100の反射角度を制御する。このため、カメラ120によって取得される画像に基づいて、反射波がスマートフォンSM1やその他の受信端末に向くように反射板100の反射角度を制御できる。
【0119】
したがって、不特定の受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送方法を提供できる。なお、受信端末は、スマートフォンSM1のように人が所持して移動可能な携帯機器に限らず、建物等に固定されて移動しない固定的な受信端末であってもよい。
【0120】
なお、以上では、制御部5が、カメラ120によって取得される画像に対してパターン認識等の画像処理を行うことで、スマートフォンSM1等の受信端末の利用者P1を特定する形態について説明した。しかしながら、例えば、ディープラーニングを利用して、カメラ120によって取得される画像の中からスマートフォンSM1等の受信端末の利用者P1の特徴等を抽出することで利用者P1を特定して、画像の中における利用者P1の位置を求めてもよい。
【0121】
また、カメラ120が画像のデータを無線通信等でデータセンターのサーバに送信し、サーバが画像処理を行って利用者P1の位置を求め、サーバから無線通信等で制御部5に利用者P1の位置を表す位置データを送り、制御部5がスマートフォンSM1等の受信端末を利用している利用者P1に向けて反射板100の反射角度を制御してもよい。
【0122】
また、制御部5が、現時点と、現時点よりも前の1又は複数の時点とにおいて取得した画像を用いて利用者P1の移動方向及び/又は移動速度を求め、求めた移動方向及び/又は移動速度に基づいて現時点よりも将来の時点における利用者P1の位置を推定し、利用者P1の推定位置に向けて反射板100が電波を反射するように反射角度を制御してもよい。例えば、制御部5が利用者P1の移動方向を求めた場合には、人の平均的な歩行速度と、現時点から将来の時点までの時間とに基づいて、現時点から将来の時点までの利用者P1の移動距離を求め、求めた移動距離を現時点の利用者P1の位置に対して、求めた移動方向において付加することで、将来の時点における利用者P1の位置を推定することができる。また、利用者P1の移動方向が決まっているような場合に、制御部5が利用者P1の移動速度を求めた場合には、求めた移動速度と、現時点から将来の時点までの時間とに基づいて、現時点から将来の時点までの利用者P1の移動距離を求め、求めた移動距離を現時点の利用者P1の位置に対して移動方向において付加することで、将来の時点における利用者P1の位置を推定することができる。また、制御部5が利用者P1の移動方向及び移動速度を求めた場合には、移動速度と、現時点から将来の時点までの時間とに基づいて、現時点から将来の時点までの利用者P1の移動距離を求め、求めた移動距離を現時点の利用者P1の位置に対して、求めた移動方向において付加することで、将来の時点における利用者P1の位置を推定することができる。
【0123】
将来の時点における利用者P1の位置を推定して、利用者P1の移動方向や移動速度に応じて推定した位置に反射板100が電波を反射するように反射角度を制御することで、移動中の利用者P1の受信端末に対して電波を効率的に反射し続けることができる。
【0124】
また、以上では、受信端末の利用者P1の位置を求めるためにカメラ120によって取得される画像を取得する形態について説明した。しかしながら、電波の到来方向を求めるために、すなわち無線基地局BSの位置を取得するためにカメラ120によって取得される画像を用いてもよい。無線基地局BSのアンテナは、特徴的な形状を有するため、受信端末の利用者P1の位置を求めるためのパターン認識等の画像処理と同様の画像処理を行うことで、無線基地局BSのアンテナの位置を求めることが可能である。このようにすることで、無線基地局BSと反射板100の間が見通し(LOS:Line of Sight)領域であるかどうかを制御部5が判定可能になり、反射板100の設置時又は移設時等に設置場所が適切であるかを制御部5が判定できる。また、無線基地局BSのアンテナの位置が分かることで電波の到来方向が分かるので、受信端末に向けて反射するために各セル110の位相変化量を計算するための計算時間を短縮できる。
【0125】
また、反射板100が反射する電波の周波数帯域とは異なる周波数帯域の電波を送受信する無線基地局のアンテナを制御部5が画像処理で認識可能にしておいてもよい。制御部5が異なる周波数帯域の電波を送受信する無線基地局のアンテナを認識した場合には、制御部5が見通し領域であるかどうかの判定等を行わないようにすることが可能である。
【0126】
<変形例1>
ここでは、実施形態の変形例1の電波伝送システム10及び電波伝送方法について説明する。
【0127】
以上では、制御部5が、カメラ120によって取得される画像に基づいて、反射板100の反射角度を制御する構成について説明した。より具体的には、制御部5が、カメラ120によって取得される画像に対してパターン認識等の画像処理を行い、スマートフォンSM1等の受信端末を利用している利用者P1に向けて反射板100の反射角度を制御する構成について説明した。
【0128】
しかしながら、電波伝送システム10及び電波伝送方法は、このような構成に限られない。電波伝送システム10及び電波伝送方法は、例えば、スマートフォンSM1等の受信端末の位置情報に基づいて、受信端末に向けて反射板100の反射角度を制御してもよい。
【0129】
すなわち、電波伝送システム10は、複数のセル110を有し、反射角度を走査可能な反射板100と、電波の反射角度を走査可能な範囲(ΘA、ΦA)における受信端末の位置情報を取得する取得部と、取得部によって取得される受信端末の位置情報に基づいて、反射板100の反射角度を制御する制御部5とを含む構成であってもよい。
【0130】
スマートフォンSM1等の受信端末の位置情報は、例えば、スマートフォンSM1に搭載されているGPS(Global Positioning System)受信機が取得する位置情報であり、スマートフォンSM1の位置情報を収集するサーバと、電波伝送システム10の取得部とがデータ通信を行うことによって、取得部が取得すればよい。
【0131】
また、カメラ120の代わりに、反射板100が電波の反射角度を走査可能な範囲(ΘA、ΦA)に1又は複数のアンテナを設け、スマートフォンSM1が発信するBLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))のビーコン信号等のような信号を受信してもよい。ビーコン信号等の信号をアンテナで受信すれば、アンテナの周囲にスマートフォンSM1が存在することが分かるので、制御部5がアンテナの方向に反射板100の反射角度を制御することで、スマートフォンSM1に反射波を向けることができる。なお、アンテナは、カメラ120と同様に、人が多く集まる場所等に設置してもよい。
【0132】
また、画像処理で求めた利用者P1の位置情報と、スマートフォンSM1から受信した信号に基づいて求めたスマートフォンSM1の位置情報とを組み合わせて、制御部5が反射板100の反射角度を制御してもよい。このように画像処理で求めた位置情報と、スマートフォンSM1から受信した信号に基づいて求めたスマートフォンSM1の位置情報とを組み合わせれば、より効率的に、スマートフォンSM1等の受信端末を所持する利用者P1に向けて反射波を向けることができる。
【0133】
また、電波伝送方法は、複数のセル110を有し、反射角度を走査可能な反射板100と、電波の反射角度を走査可能な範囲(ΘA、ΦA)における受信端末の位置情報を取得する取得部とを含む電波伝送システム10において、取得部によって取得される携帯機器(受信端末U1~U3)の位置情報に基づいて、反射板100の反射角度を制御する方法であってもよい。
【0134】
このため、取得部によって取得される受信端末の位置情報に基づいて、反射波がスマートフォンSM1やその他の受信端末に向くように反射板100の反射角度を制御できる。
【0135】
したがって、実施形態の変形例1によれば、不特定の受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送システム10及び電波伝送方法を提供できる。なお、受信端末は、スマートフォンSM1のように人が所持して移動可能な携帯機器に限らず、建物等に固定されて移動しない固定的な受信端末であってもよい。
【0136】
人が所持して移動可能な携帯機器以外の受信端末として、例えば工場内にある機械等が挙げられる。工場内にある機械の例としては、例えば、受信端末を有する工作機械や、受信端末を有するAutomatic Guided Vehicle(AGV:無人搬送車)等が挙げられる。当該機械内での受信端末の位置を予めデータとして保持しておき、カメラ120によって取得される画像に基づいて制御部5が機械を認識した際に、当該機械内における受信端末の位置を求め、受信端末の方向に反射波を反射してもよい。
【0137】
<変形例2>
図11は、実施形態の変形例2の電波伝送システム10の具体的な利用形態の一例を説明する図である。ここでは、図9に示す電波伝送システム10との相違点について説明する。
【0138】
変形例2の反射板100は、電波を複数の方向に反射可能である。例えば、図4に示すような複数のセル110を複数のグループに分けて、グループ毎に複数のセル110における位相変化量を調整すれば、グループ毎に電波の反射角度を設定できる。すなわち、1つの反射板100でマルチビームの反射波を実現できる。
【0139】
複数のセル110を複数のグループに分けるには、例えば、反射面100Aの中心を通るX軸及びY軸で4つのグループに分ける方法や、反射面100AをX方向に3分割する方法等がある。また、図4に示す複数のセル110をX方向及びY方向において、1つおきに選択することで2つのグループに分ける方法や、2つおきに選択することで3つのグループに分ける方法等がある。
【0140】
変形例2では、制御部5は、カメラ120で取得した画像に対して画像処理を行い、スマートフォンSMの利用者Pを認識する。複数の利用者Pが存在し、かつ、複数のエリアに分かれている場合には、複数のセル110を複数のグループに分けて、ビームエリア1及び2にそれぞれ反射波R1及びR2がそれぞれ届くように各セル110の位相変化量を調整すればよい。例えば、図11に示すように、2つのエリアに分かれている場合には、複数のセル110を2つのグループに分けて、ビームエリア1及び2にそれぞれ反射波が届くように各セル110の位相変化量を調整すればよい。マルチビームの反射波で複数のエリアの利用者Pの受信端末に反射波を効率的に到達させることが可能になる。
【0141】
この場合に、例えば、ビームエリア1にいる利用者Pの数の方が、ビームエリア2にいる利用者Pの数よりも多い場合には、制御部5は、反射板100の複数のセル110を2つのグループに分ける際に、ビームエリア1に反射するセル110の数をビームエリア2に反射するセル110の数よりも多くしてもよい。ビームエリア1及び2の各々にいる利用者Pの数に応じて、反射波としての電波を各利用者Pの受信端末に確実に到達させることが可能になる。
【0142】
また、制御部5は、画像処理でビームエリア1とビームエリア2のどちらがカメラ120から遠いか又は近いかを判定可能である。例えば、ビームエリア1の方がビームエリア2よりも遠い場合には、制御部5は、反射板100の複数のセル110を2つのグループに分ける際に、ビームエリア1に反射するセル110の数をビームエリア2に反射するセル110の数よりも多くしてもよい。このようにすることで、ビームエリア1及び2の各々に対して、反射波としての電波を受信端末に確実に到達させることが可能になる。
【0143】
なお、複数のセル110を複数のグループに分割する際に、各グループに含まれるセル110の数によって、反射波が到達可能な距離や、反射可能な角度に制約が生じる可能性があるため、1つのグループに最小限必要なセル110の数等の制約を設けてもよい。
【0144】
なお、マルチビームの反射波を実現する方法は、複数のセル110を複数のグループに分割する方法以外の方法であってもよい。例えば、ビームエリア1の方向に所定の強度で反射するための反射位相がφ1、ビームエリア2の方向に所定の強度で反射するための反射位相がφ2である場合に、制御部5が反射位相をArg[exp(j×φ1)+exp(j×φ2)]に設定すれば、ビームエリア1及び2に対してある強度割合で電波を反射するマルチビームを生成できる。
【0145】
また、制御部5は、画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識すると、複数のエリアに対応した複数の方向に反射板100が電波を反射するように反射角度を制御してもよい。例えば、N(Nは2以上の整数)個のビームエリアの方向に所定の強度で反射するための反射位相がφ1~φNである場合に、制御部5が反射板100の反射位相をArg[exp(j×φ1)+・・・+exp(j×φN)]に設定すれば、ビームエリア1~Nに対してある強度割合で電波を反射するマルチビームを生成できる。
【0146】
また、制御部5は、画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識してマルチビームを生成する場合に、エリアにいる人が多いほど当該エリアに対応する反射方向に反射板100が反射する電波の強度が強くなるように、反射角度を制御してもよい。重み定数a1~aNを用いて、反射板100の反射位相をArg[a1×exp(j×φ1)+・・・+aN×exp(j×φN)]と表し、エリアにいる人が多いほど電波の強度が強くなるようにa1~aNを設定することで、エリアにいる人が多いほど電波の強度を強くすることができる。
【0147】
また、制御部5は、画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識してマルチビームを生成する場合に、エリアがカメラ120から遠いほど当該エリアに対応する反射方向に反射板が反射する電波の強度が強くなるように、反射角度を制御してもよい。重み定数a1~aNを用いて、反射板100の反射位相をArg[a1×exp(j×φ1)+・・・+aN×exp(j×φN)]と表し、エリアがカメラ120から遠いほど電波の強度が強くなるようにa1~aNを設定することで、エリアがカメラ120から遠いほど電波の強度を強くすることができる。
【0148】
この他にも、例えば制御部5で所望の反射波分布に対してシミュレーションを用いて反射位相を最適化する方法も用いることができる。
【0149】
実施形態の変形例2によれば、不特定の複数の受信端末を複数のグループに分けて、各グループの受信端末に対して電波を効率的に反射可能な電波伝送システム10及び電波伝送方法を提供できる。なお、受信端末は、スマートフォンSM1のように人が所持して移動可能な携帯機器に限らず、建物等に固定されて移動しない固定的な受信端末であってもよい。
【0150】
以上、本開示の例示的な電波伝送システム、及び、電波伝送方法について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0151】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
複数の反射部を有し、電波の反射角度を走査可能な反射板と、
前記電波の反射角度を走査可能な範囲における画像、又は、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における受信端末の位置情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得される前記画像又は前記受信端末の位置情報に基づいて、前記反射板の反射角度を制御する制御部と
を含む、電波伝送システム。
(付記2)
前記制御部は、前記画像に含まれる人を認識し、当該人に向けて前記反射板が電波を反射するように前記反射角度を制御する、付記1に記載の電波伝送システム。
(付記3)
前記制御部は、前記画像に含まれる人のうち、携帯端末を利用している人を認識し、当該人に向けて前記反射板が前記電波を反射するように前記反射角度を制御する、付記2に記載の電波伝送システム。
(付記4)
前記制御部は、前記画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識すると、前記複数のエリアに対応した複数の方向に前記反射板が電波を反射するように前記反射角度を制御する、付記2に記載の電波伝送システム。
(付記5)
前記制御部は、前記エリアにいる人が多いほど当該エリアに対応する反射方向に前記反射板が反射する電波の強度が強くなるように、前記反射角度を制御する、付記4に記載の電波伝送システム。
(付記6)
前記制御部は、前記エリアが前記取得部から遠いほど当該エリアに対応する反射方向に前記反射板が反射する電波の強度が強くなるように、前記反射角度を制御する、付記4に記載の電波伝送システム。
(付記7)
前記制御部は、前記画像に含まれる人が複数のエリアにいることを認識すると、前記複数のエリアに対応して前記複数の反射部を複数のグループに分け、前記グループ毎に対応するエリアの人に向けて前記反射板が電波を反射するように、前記グループ毎に前記反射角度を制御する、付記2に記載の電波伝送システム。
(付記8)
前記制御部は、前記エリアにいる人が多いほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を多くし、前記エリアにいる人が少ないほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を少なくする、付記7に記載の電波伝送システム。
(付記9)
前記制御部は、前記エリアが前記取得部から遠いほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を多くし、前記エリアが前記取得部に近いほど当該エリアに対応する前記グループに含まれる前記反射部の数を少なくする、付記7に記載の電波伝送システム。
(付記10)
前記制御部は、前記反射板と、前記画像に含まれる人との間の距離に応じて、前記複数の反射部が電波の位相を変化させる位相変化量を制御する、付記1乃至9のいずれか1項に記載の電波伝送システム。
(付記11)
前記制御部は、複数の時点において前記取得部によって取得された画像に基づいて、人の移動方向及び/又は移動速度を求め、求めた移動方向及び/又は移動速度に基づいて現時点よりも将来の時点における人の位置を推定し、人の推定位置に向けて前記反射板が前記電波を反射するように前記反射角度を制御する、付記1乃至10のいずれか1項に記載の電波伝送システム。
(付記12)
前記制御部は、前記複数の反射部の各々において前記電波の位相を変化させる位相変化量を電気的に制御する、付記1乃至11のいずれか1項に記載の電波伝送システム。
(付記13)
前記制御部は、前記複数の反射部の各々の反射位相を第1値と第2値のいずれかに設定する、付記1乃至12のいずれか1項に記載の電波伝送システム。
(付記14)
前記第1値と前記第2値との差は、120度~240度である、付記13に記載の電波伝送システム。
(付記15)
前記電波は、Sub-6、又は、ミリ波帯の電波である、付記1乃至14のいずれか1項に記載の電波伝送システム。
(付記16)
前記複数の反射部の各々における前記電波の位相は、液晶移相器によって連続的に変化される、又は、離散移相器によって3値以上の離散値に変化される、付記12に記載の電波伝送システム。
(付記17)
複数の反射部を有し、電波の反射角度を走査可能な反射板と、
前記電波の反射角度を走査可能な範囲における画像、又は、前記電波の反射角度を走査可能な範囲における受信端末の位置情報を取得する取得部と、
前記反射板の反射角度を制御する制御部と
を含む、電波伝送システムにおいて、
前記取得部が、前記画像、又は、前記受信端末の位置情報を取得し、
前記制御部が、前記取得部によって取得される前記画像又は前記受信端末の位置情報に基づいて、前記反射板の反射角度を制御する、電波伝送方法。
【符号の説明】
【0152】
1 壁
U1、U2、U3 受信端末
P、P1 利用者
SM、SM1 スマートフォン(受信端末及び携帯機器の一例)
5 制御部
10 電波伝送システム
100 反射板
100A 反射面
110 セル(反射部の一例)
111 共振素子
111A 端辺
112、112H、112V 共振素子
112A、112B 線状エレメント
112C PINダイオード
120 カメラ(取得部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10
図11