(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069081
(43)【公開日】2024-05-21
(54)【発明の名称】炎症の程度の評価方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240514BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240514BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240514BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
G01N33/15 Z
G01N33/53 D
G01N33/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179874
(22)【出願日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】玉置 寛子
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲し▼含
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 香織
(72)【発明者】
【氏名】村上 将登
(72)【発明者】
【氏名】石井 健
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045DA36
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】ランゲルハンス細胞が関与する炎症の程度の評価方法およびその利用技術を提供すること。
【解決手段】ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症の程度を評価する方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症の程度を評価する方法。
【請求項2】
被験物質とランゲルハンス細胞とを接触させる工程、および
前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、を含む、炎症誘導物質のスクリーニング方法。
【請求項3】
被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞とを接触させる工程、および
前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
【請求項4】
ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法。
【請求項5】
ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症性疾患の予後の診断のためのデータを提示する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランゲルハンス細胞が関与する炎症の程度の評価方法、およびその利用技術に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚における炎症は、体外から侵入した異物等を排除して生体の恒常性を維持しようとする生体反応である。また、多くの免疫関連疾患や皮膚疾患が、炎症に関連している。このため、皮膚における炎症の程度を評価することは、非常に重要である。一方、炎症には、種々の発症機構があることから、炎症の程度を評価可能な指標が望まれている(特許文献1等)。
【0003】
ところで、表皮等に局在する抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞は、皮膚の炎症において重要な役割を果たすことが知らされている。そのため、ランゲルハンス細胞を標的とすることで、幅広い炎症の程度の評価方法の開発に繋がる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炎症反応におけるランゲルハンス細胞の機能・作用機序等については、未だ不明なところが多く、皮膚等のランゲルハンス細胞に着目した炎症の程度の評価方法は、未だ確立されていない。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、ランゲルハンス細胞が関与する炎症の程度の評価方法、およびその利用技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を指標とすることにより、炎症の程度を評価できることを初めて見出した。そして、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を包含する。
<1>ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症の程度を評価する方法。
<2>被験物質とランゲルハンス細胞とを接触させる工程、および
前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、を含む、炎症誘導物質のスクリーニング方法。
<3>被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞とを接触させる工程、および
前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法。
<4>ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法。
<5>ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症性疾患の予後の診断のためのデータを提示する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ランゲルハンス細胞が関与する炎症の程度の評価方法、およびその利用技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】LPS刺激後の、単球由来ランゲルハンス細胞様細胞(以下、「moLCs」とも称する。)の移動距離を示す図である(上図)。また、LPS刺激後の、moLCsの移動速度を示す図である(下図)。
【
図2】種々の炎症誘導物質での刺激後の、moLCsの移動速度を示す図である。
【
図3】LPS刺激後の、フィブロネクチン上のmoLCsにおけるインテグリンα-5のmRNA発現量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0011】
〔1.本発明の概要〕
上述の通り、炎症反応におけるランゲルハンス細胞の機能・作用機序等については、未だ不明なところが多く、皮膚等のランゲルハンス細胞に着目した炎症の程度の評価方法は、未だ確立されていない。
【0012】
本発明者らは、新たな指標に基づく炎症の程度の評価方法について、鋭意検討を行った。具体的には、ヒト末梢血単核球からサイトカインの分化誘導によって調製したランゲルハンス細胞に対し、細菌細胞壁由来抗原であるリポポリサッカライド(LPS)による炎症誘導を実施し、炎症の程度の指標となる因子の探索を行った。その結果、以下の知見を得ることに成功した。
・細胞接着分子であるフィブロネクチンでコーティングしたプレート上のランゲルハンス細胞を炎症誘導したところ、当該ランゲルハンス細胞の運動性が低下することを発見。
・運動性が低下した原因は、インテグリンの発現量が変化し、フィブロネクチンとの細胞接着が変化したからと予想。
・炎症誘導により、ランゲルハンス細胞におけるインテグリン(特に、インテグリンα-5)の発現量が増加することを確認。
【0013】
上記知見に基づき、インテグリン(特にインテグリンα-5)の発現量を指標とすることで、炎症の程度の評価、炎症誘導物質のスクリーニング、抗炎症物質のスクリーニング、免疫関連疾患における免疫機能の評価等に応用可能であるとの発想に至り、本願発明を完成させた。
【0014】
このようなランゲルハンス細胞におけるインテグリンと、炎症との関係はこれまでに知られておらず、本発明者らが見出した知見は驚くべきことである。
【0015】
〔2.炎症の程度の評価方法〕
本発明の一態様において、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を指標として、炎症の程度を評価する方法を提供する。本発明の一態様において、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症の程度を評価する方法を提供する。
【0016】
本明細書において、「ランゲルハンス細胞(「LC」とも称する。)」とは、皮膚の表皮、特定の粘膜等に存在する、免疫に関与する細胞(樹状細胞)を意図する。ランゲルハンス細胞は、皮膚の表皮等で抗原を捉えると活性化し、真皮・リンパ管に移動して、T細胞を活性化する。
【0017】
本明細書において、「インテグリン」とは、細胞の表面に存在する膜貫通型ヘテロ二量体タンパク質であり、細胞外マトリックス(ECM)の受容体として働く一群のタンパク質を意図する。インテグリンは、α鎖とβ鎖とからなるヘテロ二量体タンパク質である。インテグリンα鎖は、α-1~α-11まで存在し、本態様において、いずれのインテグリンを指標としてもよいが、インテグリンα-5がランゲルハンス細胞における発現量が多いため好ましい。
【0018】
本明細書において、「インテグリンの発現量」とは、インテグリン遺伝子から転写されるmRNAの発現量、またはインテグリン遺伝子から転写・翻訳されるタンパク質の発現量を意図する。すなわち、本明細書における種々の方法において、インテグリンのmRNAレベルの発現量およびタンパク質レベルの発現量のいずれを指標としてもよい。
【0019】
インテグリンのタンパク質およびmRNAの発現量の測定方法は、特に限定されず、公知である任意の方法が使用できる。インテグリンのタンパク質の発現量の測定法としては、例えば、酵素標識免疫測定方法(ELISA)、ウエスタンブロッティング法、免疫蛍光染色法、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、蛍光標識ビーズを用いたマルチプレックスアッセイ等が挙げられる。インテグリンのmRNAの発現量の測定法としては、例えば、リアルタイムRT-PCR、ノーザンブロッティング法等が挙げられる。
【0020】
ヒトのインテグリンα-1に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_181501.2として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_181501.2として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_852478.1として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-2に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_002203.4として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_002203.4として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_002194.2として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-3に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_002204.4として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_002204.4として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_002195.1として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-4に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_000885.6として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_000885.6として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_000876.3として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-5に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_002205.5として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_002205.5として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_002196.4として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-6に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_001079818.3として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_001079818.3として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_001073286.1として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-7に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_001144996.2として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_001144996.2として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_001138468.1として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-8に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_003638.3として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_003638.3として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_003629.2として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-9に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_002207.3として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_002207.3として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_002198.2として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-10に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_003637.5として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_003637.5として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_003628.2として、データベースNCBIに登録されている。ヒトのインテグリンα-11に関して、mRNAの塩基配列はAccession No. NM_001004439.2として、cDNAの塩基配列はAccession No. NM_001004439.2として、タンパク質のアミノ酸配列はAccession No. NP_001004439.1として、データベースNCBIに登録されている。インテグリンの発現量を測定する場合、例えば、これらのmRNAおよび/またはタンパク質の量を、上述した方法にしたがって測定すればよい。
【0021】
本明細書において、「炎症」とは、ランゲルハンス細胞が存在している器官・臓器(例えば、皮膚、口腔、気道、消化管、尿路、生殖管等)における炎症、換言すれば、ランゲルハンス細胞が関与している炎症を意図する。
【0022】
本明細書において、「炎症の程度」とは、対象部位における炎症の重篤度を意図する。
【0023】
炎症の程度の評価は、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を指標として行うものであれば特に限定されない。炎症の程度の評価は、例えば、正常なランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量と、対象となるランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量と、を比較することにより行われる。前記比較において、正常なランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量に比して、対象となるランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量が多い場合、炎症の程度が高い(炎症が重篤)と評価し得る。また、前記比較において、正常なランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量に比して、対象となるランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量が少ない場合、炎症の程度が低い(炎症が軽い)と評価し得る。
【0024】
本態様における炎症の程度の評価対象は、例えば、哺乳動物、例えば、ヒト、および、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、チンパンジー等の非ヒト哺乳動物が挙げられる。本態様における炎症の程度の評価対象は、好ましくは、ヒトである。
【0025】
本態様において、ランゲルハンス細胞は、評価対象の生体に由来するランゲルハンス細胞(以下、「生体由来ランゲルハンス細胞」)であり、評価対象の生体から直接採取されたランゲルハンス細胞である。生体由来ランゲルハンス細胞は、評価対象の皮膚から単離された株化されていないランゲルハンス細胞(以下、「単離ランゲルハンス細胞」と称する場合もある。)であってもよいし、評価対象の皮膚切片に存在するランゲルハンス細胞であってもよい。なかでも、インテグリンの発現量を正確に測定できることから、単離ランゲルハンス細胞であることが好ましい。単離ランゲルハンス細胞は、生体から分離したランゲルハンス細胞と換言することができる。
【0026】
生体由来ランゲルハンス細胞の供給源としては、特に限定されないが、例えば、皮膚、口腔粘膜等が挙げられる。
【0027】
〔3.炎症誘導物質のスクリーニング方法〕
本発明の一態様において、被験物質とランゲルハンス細胞とを接触させる工程(「工程(A)」とも称する。)、および前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程(「工程(B)」とも称する。)、を含む、炎症誘導物質のスクリーニング方法を提供する。
【0028】
本明細書において、「炎症誘導物質」とは、任意の対象部位に炎症を生じさせる物質を意図する。対象部位は、ランゲルハンス細胞が存在している器官・臓器であることが好ましい。
【0029】
工程(A)において、被験物質とランゲルハンス細胞とを接触させる。被験物質とランゲルハンス細胞との接触は、例えば、被験物質を含有するランゲルハンス細胞用培地において、ランゲルハンス細胞の生理学的機能の維持に適した培養条件下にランゲルハンス細胞を培養すること等によって行うことができる。より具体的には、被験物質とランゲルハンス細胞との接触は、ランゲルハンス細胞が培養されている培養液中に被験物質を添加することにより行われ得る。
【0030】
被験物質としては、任意の物質が使用され得る。被験物質の種類は特に限定されず、例えば、天然物の抽出物中に存在する化合物、低分子合成化合物、合成ペプチド、細胞培養上清、細胞抽出物等が用いられる。本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される被験物質は、化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリー、コンビナトリアルライブラリー等に含まれる化合物であってよい。本発明の一実施形態において、スクリーニングに使用される被験物質は、好ましくは、低分子化合物であり、より好ましくは、低分子化合物の化合物ライブラリーであり得る。化合物ライブラリーは、市販の化合物ライブラリーを用いてもよく、当該技術分野における通常の方法により構築された化合物ライブラリーを用いてもよい。
【0031】
被験物質は、液体である場合、そのまま用いてもよく、必要に応じて溶媒で希釈して用いてもよい。また、被験物質は、固体である場合、溶媒に溶解させて用いることができる。溶媒は、被験物質の種類、測定対象の生理学的事象の種類等によって異なるので一概には決定することができないことから、被験物質の種類、測定対象の生理学的事象の種類等に応じて適宜決定することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、精製水、エタノール、エタノール水溶液、カルシウム含有溶液〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコースおよび10mM2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル〕エタンスルホン酸(HEPES)塩酸緩衝液(pH7.4)〕、カルシウム不含溶液〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、5mMグリコールエーテルジアミン四酢酸、10mMグルコースおよび10mMのHEPES塩酸緩衝液(pH7.4)〕、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
【0032】
本態様において、ランゲルハンス細胞は、生体由来ランゲルハンス細胞であってもよく、ランゲルハンス株化細胞であってもよく、インビトロで単球から分化させたランゲルハンス細胞(moLCs)であってもよい。
【0033】
インビトロで単球からランゲルハンス細胞を分化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、単球用培地に、GM-CSF、TGF-β1、および/またはIL-4等の分化因子を添加した培地で単球を培養すること等によって行なうことができる。具体的には、例えば、Otsuka Y. et al., Differentiation of Langerhans Cells from Monocytes and Their Specific Function in Inducing IL-22-Specific Th Cells. J Immunol. 2018 Nov 15;201(10):3006-3016.およびGeissmann F. et al., Transforming growth factor beta1, in the presence of granulocyte/macrophage colony-stimulating factor and interleukin 4, induces differentiation of human peripheral blood monocytes into dendritic Langerhans cells. J Exp Med. 1998 Mar 16;187(6):961-6.に記載の方法で、単球からランゲルハンス細胞を分化させることができる。
【0034】
単球用培地への上記分化因子の添加量は、単球の数等によって異なるので一概に決定することができないことから、単球の数等に応じて適宜決定することが好ましい。
【0035】
単球と上記分化因子との接触時間は、単球からランゲルハンス細胞へ分化するのに十分な時間であれば特に限定されないが、例えば、3日間以上であり、好ましくは5日間以上である。
【0036】
本スクリーニング方法において、上記の方法により、単球からランゲルハンス細胞へ分化させたものをそのまま用いてもよいし、純化したランゲルハンス細胞を用いてもよい。
【0037】
ランゲルハンス細胞を純化する方法としては、特に限定されないが、例えば、フローサイトメトリー、磁気細胞分離法等により行うことができる。フローサイトメトリー、磁気細胞分離法によってランゲルハンス細胞を純化する場合、ランゲルハンス細胞のマーカーとしては、特に限定されないが、例えば、CD207、CD1a、HLA-DR、E-cadherin等が挙げられる。これらランゲルハンス細胞のマーカーのなかでは、単球とランゲルハンス細胞とを容易に区別する観点から、CD207およびCD1aが好ましい。ランゲルハンス細胞は、「CD207陽性およびCD1a陽性」、「CD207陽性、CD1a陽性、およびHLA-DR陽性」等を示すことを指標として検出し、分離することができる。
【0038】
なお、生体由来ランゲルハンス細胞については、上記〔2.炎症の程度の評価方法〕に記載の内容が援用される。
【0039】
ランゲルハンス細胞用培地は、例えば、基本培地に培地添加物を添加することによって調製することができる。培地添加物としては、特に限定されないが、例えば、血清、抗生物質等が挙げられる。基本培地としては、特に限定されないが、例えば、RPMI1640培地、MEM培地、IMDM培地、Ham’s F12培地等が挙げられる。ランゲルハンス細胞用培地は、血清飢餓培地であってもよく、非血清飢餓培地であってもよい。血清飢餓培地は、通常、好ましくは、0~1%(v/v)、より好ましくは、0~0.5%(v/v)の血清濃度を有する。非血清飢餓培地は、通常、好ましくは、2~10%(v/v)、より好ましくは、5~10%(v/v)の血清濃度を有する。
【0040】
ランゲルハンス細胞用培地における被験物質の量は、被験物質の種類、ランゲルハンス細胞の数等によって異なるので一概に決定することができないことから、被験物質の種類、ランゲルハンス細胞の数等に応じて適宜決定することが好ましい。被験物質とランゲルハンス細胞との接触時間は、被験物質の種類、培養温度等によって異なるので一概に決定することができないことから、被験物質の種類、培養温度等に応じて適宜決定することが好ましい。被験物質とランゲルハンス細胞との接触時間は、炎症誘導作用を的確に評価する観点から、好ましくは、1~96時間であり、より好ましくは、1~48時間であり、さらに好ましくは、3~24時間である。
【0041】
培養条件には、培養温度、培養雰囲気における二酸化炭素濃度等が含まれる。培養温度は、炎症誘導作用を的確に評価する観点から、好ましくは、25.0~40.0℃であり、より好ましくは30.0~38.0℃であり、さらに好ましくは、35.0~38.0℃であり、最も好ましくは、36.5~37.5℃である。
【0042】
培養雰囲気における二酸化炭素濃度は、炎症誘導作用を的確に評価する観点から、好ましくは、4~10%(v/v)であり、より好ましくは、5~7%(v/v)である。
【0043】
工程(B)において、上記〔2.炎症の程度の評価方法〕に記載した方法により、前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞中のインテグリンの発現量を測定する。
【0044】
本発明の一実施形態において、工程(B)の後に、さらに以下の工程を含み得る:
前記工程で得られたインテグリンの発現量を指標として、炎症誘導物質を選別する工程。
【0045】
すなわち、本発明の一実施形態において、被験物質とランゲルハンス細胞とを接触させる工程、前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、および前記工程で得られたインテグリンの発現量を指標として、炎症誘導物質を選別する工程を含む、炎症誘導物質のスクリーニング方法を提供する。
【0046】
炎症誘導物質の選別は、例えば、被験物質とランゲルハンス細胞との接触前後における、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を比較することにより行われる。炎症誘導物質の選別は、例えば、被験物質とランゲルハンス細胞との接触前に比して、被験物質とランゲルハンス細胞との接触後に、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量が増加した場合、当該被験物質を炎症誘導物質であると判定し得る。
【0047】
〔4.抗炎症物質のスクリーニング方法〕
本発明の一態様において、被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞とを接触させる工程、および前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法を提供する。
【0048】
本態様について、上記〔3.炎症誘導物質のスクリーニング方法〕と異なる部分のみを記載する。よって、本態様について、特に記載がない場合は、上記〔3.炎症誘導物質のスクリーニング方法〕に記載の内容が援用される。
【0049】
本明細書において、「抗炎症物質」とは、当該物質の存在下において、当該物質の非存在下と比して、炎症が低減(抑制)される物質を意図する。本態様における抗炎症物質は、例えば、ウィルス、細菌等の生物刺激、アレルギー物質、化学物質、薬物等の化学刺激、熱覚刺激、痛み刺激、機械刺激等による炎症を低減することができる。本態様における抗炎症物質は、特に、ランゲルハンス細胞が関与している炎症を低減することができる。
【0050】
本態様において使用されるランゲルハンス細胞は、炎症状態のランゲルハンス細胞である。本態様では、炎症状態のランゲルハンス細胞を用いることにより、スクリーニングの精度が上がるため、より効率的な抗炎症物質のスクリーニングが可能となる。
【0051】
炎症状態のランゲルハンス細胞は、種々の炎症誘導物質を用いて、ランゲルハンス細胞(例えば、上記〔3.炎症誘導物質のスクリーニング方法〕に記載した、生体由来ランゲルハンス細胞、ランゲルハンス株化細胞、moLCs)を刺激することにより、調製できる。炎症誘導物質としては、特に限定されないが、例えば、LPS、TNF-α、IL-1β、LTA(リポタイコ酸)、Poly(I:C)(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸ナトリウム塩)、IMQ(イミキモド)、PGN(ペプチドグリカン)、R848等が挙げられる。
【0052】
本発明の一実施形態において、工程(B)の後に、さらに以下の工程を含み得る:
前記工程で得られたインテグリンの発現量を指標として、抗炎症物質を選別する工程。
【0053】
すなわち、本発明の一実施形態において、被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞とを接触させる工程、前記被験物質と接触したランゲルハンス細胞において、インテグリンの発現量を測定する工程、および前記工程で得られたインテグリンの発現量を指標として、抗炎症物質を選別する工程を含む、抗炎症物質のスクリーニング方法を提供する。
【0054】
抗炎症物質の選別は、例えば、被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞との接触前後における、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を比較することにより行われる。抗炎症物質の選別は、例えば、被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞との接触前に比して、被験物質と炎症状態のランゲルハンス細胞との接触後に、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量が減少した場合、当該被験物質を抗炎症物質であると判定し得る。
【0055】
〔5.炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法〕
本発明の一態様において、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を指標として、炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法を提供する。本発明の一態様において、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法を提供する。
【0056】
本明細書において、「炎症性疾患」とは、ランゲルハンス細胞が存在している器官・臓器における炎症性の疾患、換言すれば、ランゲルハンス細胞が関与している炎症性の疾患を意図する。
【0057】
「炎症性疾患」としては、上記定義に含まれるものであれば特に限定されないが、例えば、皮膚炎、口内炎、気管支炎、腸炎、尿道炎等が挙げられる。
【0058】
本明細書において、「炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法」とは、炎症性疾患を診断するための材料として、データを提供することを意図する。
【0059】
本発明の一実施形態において、本態様は、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程、および前記で得られたデータ(インテグリンの発現量)を炎症性疾患の診断のために提示する工程を含み得る。ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する主体、および前記で得られたデータを提示する主体は特に限定されず、例えば、医療補助者(例えば、臨床検査技師)等であり得る。また、データの提示を受ける主体は、炎症性疾患を診断できる主体であればよく、例えば、医師である。
【0060】
本態様において、「ランゲルハンス細胞」および「インテグリン」については、上記〔2.炎症の程度の評価方法〕に記載の内容が援用される。
【0061】
〔6.炎症性疾患の予後の診断のためのデータを提示する方法〕
本発明の一態様において、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を指標として、炎症性疾患の予後の診断のためのデータを提示する方法を提供する。本発明の一態様において、ランゲルハンス細胞におけるインテグリンの発現量を測定する工程を含む、炎症性疾患の予後の診断のためのデータを提示する方法を提供する。
【0062】
本明細書において、「炎症性疾患の予後を診断のためのデータを提示する方法」とは、炎症性疾患の予後を診断するための材料として、データを提供することを意図する。「予後の診断」は、治療効果の評価を含む。
【0063】
本態様において、「ランゲルハンス細胞」および「インテグリン」については、上記〔2.炎症の程度の評価方法〕に記載の内容が援用される。また、「炎症性疾患」については、上記〔5.炎症性疾患の診断のためのデータを提示する方法〕に記載の内容が援用される。
【0064】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0065】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
〔1.moLCsの作製〕
moLCsは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)中の単球(CD14+細胞)を、特定の条件下で分化誘導することにより作製した。具体的には、Otsuka Y. et al., Differentiation of Langerhans Cells from Monocytes and Their Specific Function in Inducing IL-22-Specific Th Cells. J Immunol. 2018 Nov 15;201(10):3006-3016.およびGeissmann F. et al., Transforming growth factor beta1, in the presence of granulocyte/macrophage colony-stimulating factor and interleukin 4, induces differentiation of human peripheral blood monocytes into dendritic Langerhans cells. J Exp Med. 1998 Mar 16;187(6):961-6.に記載の方法で作製した。
【0067】
得られたmoLCsについて、免疫細胞化学により、CD207およびCD1aの染色を行ったところ、LC様の特徴であるCD207+およびCD1a+を有する細胞(moLCs)に変化したことが確認された(データは示していない。)。
【0068】
また、得られたmoLCsをLPS刺激すると、移動マーカーであるCCR7およびCXCR4、ならびに活性化マーカーであるCD86およびHLA-DRの発現が増加しており、LCが活性化されたことが分かった(データは示していない。)。
【0069】
以上の結果より、実験で使用可能なmoLCsが得られたと結論付けた。
【0070】
〔2.moLCsの運動性におけるLPSの効果〕
moLCsの運動性におけるLPSの効果を調べるために、フィブロネクチン上で培養したmoLCsをLPSで刺激する実験を行った。
【0071】
具体的には、ヒト血漿フィブロネクチン(Sigma-Aldrich社製、型番:F2006-5MG)0.75μg/cm2で被覆した培養皿に、上記1.で作製したmoLCsを7×103cells/ウェルとなるように18ウェルマイクロスライドに播種し、24時間培養した。培地は、10%FBSおよび1%Antibiotic-Antimycotic(100X)(Thermo Fisher Scientific社製、型番:15240096)を含むRPMI1640(Thermo Fisher Scientific社製、型番:11875-093)を用いた。その後、顕微鏡用培養システム(東海HIT社製、STXG-IX3WX-SET)を用いて、37℃、5%CO2の条件で、LPSを添加せずに6時間培養しながら撮影した(LPS(-))。次いで、50ng/ml LPSを添加して6時間培養しながら撮影した(LPS(+))。撮影は、オリンパス共焦点レーザー走査型顕微鏡 FV3000を用いて、1分間隔で行った。撮影した結果をもとに、各moLCsの移動距離および移動速度を調べた。移動距離の測定は、Image JソフトウェアのManual Trackingツールを用いて、6時間視野に存在した細胞の累積移動距離、および移動速度を算出した。
【0072】
結果を
図1に示す。なお、
図1において、LPS(-)は、n=114(47、31、36)であり、LPS(+)は、n=133(51、36、41)であった。また、実験は、3回の個々の実験で行われた。****は、対応のないt検定で、P<0.0001を示す。
図1に示すように、LPS刺激により、moLCsの移動距離および移動速度が減少した。このことより、フィブロネクチン上で培養したmoLCsは、LPS刺激により、運動性が低下することが示された。
【0073】
〔3.moLCsの運動性における各種炎症誘導物質の効果〕
moLCsの運動性における各種炎症誘導物質の効果を調べるために、フィブロネクチン上で培養したmoLCsを各種炎症誘導物質で刺激する実験を行った。
【0074】
具体的には、フィブロネクチンで被覆した培養皿に、上記1.で作製したmoLCsを7×103cells/ウェルとなるように96ウェルプレートで播種し、24時間培養した。培地は、10%FBSおよび1%Antibiotic-Antimycotic(100X)を含むRPMI1640を用いた。24時間培養後、細胞核を染めるヘキスト染色溶液(Hoechst33342、Invitrogen社製、型番:H3570)を培養液の1/500量添加し、インキュベーター中で15分間染色した。その後、各種炎症誘導物質(LPS:50ng/ml、TNF-α:10ng/ml、IL-1β:10ng/ml、LTA(リポタイコ酸):10μg/ml、Poly(I:C)(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸ナトリウム塩):25μg/ml、IMQ(イミキモド):10μg/ml)を添加したRPMI1640に交換し、37℃、5%CO2の条件で6時間培養しながら撮影した。撮影は、ハイスループット細胞機能探索システム CellVoyagerCV8000(横河電機社製)を用いて、2分間隔で行った。ハイコンテント解析ソフトウェア CellPathfinderを用いて、移動速度を計測した。
【0075】
結果を
図2に示す。
図2に示すように、各種炎症誘導物質での刺激により、moLCsの移動速度が減少した。このことより、フィブロネクチン上で培養したmoLCsは、炎症誘導物質の種類(換言すれば、炎症の種類)によらず、運動性が低下することが示された。
【0076】
〔4.LPS刺激によるインテグリンmRNAの発現〕
インテグリンα1~11の中で、インテグリンα5(ITGA5)に着目して、LPS刺激によるmRNAの発現量の変化について調べた。
【0077】
具体的には、ヒト血漿フィブロネクチン(Sigma-Aldrich社製、型番F2006-5MG)0.75μg/cm2で被覆した培養皿に、上記1.で作製したmoLCsを5×105cells/ウェルとなるように6ウェルプレートに播種し、24時間培養した。培地は、10%FBSおよび1%Antibiotic-Antimycotic(100X)を含むRPMI1640を用いた。その後、50ng/ml LPSを添加して6時間培養した(LPS(+))。培養後のmoLCsについて、ITGA5 mRNAの発現量を調べた。ITGA5 mRNAの発現量の測定は、以下の通り行った。まず、細胞をPBSで洗浄し、トータルRNA抽出試薬TRI Reagent(登録商標)(Molecular Research社製、型番:TR118)を用いて、全RNAを抽出した。抽出した全RNA溶液にクロロホルムを加え、RNAを含む水層を回収し、これにイソプロパノールを加えて、RNAを沈殿させた。70%エタノールで洗浄した後、RNase free waterに溶解させ、RNAサンプルを得た。このRNAサンプルから、逆転写酵素(QIAGEN社製、商品名:QuantiTect reverse transcription kit、型番:205315)を用い、cDNAを作製した。このcDNAとTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO社製、型番:QPS-201)を使い、リアルタイムPCR装置でcDNAを検出し、mRNA量を算出した。内在性コントロールとして18s RNAを使用した。なお、プライマーは、以下のものを使用した。
ITGA5 Fw: 5'-TGCAGTGTGAGGCTGTGTACA-3’(配列番号1)
ITGA5 Rv: 5'-GTGGCCACCTGACGCTCT-3’(配列番号2)
18s RNA Fw: 5'-CGGCTACCACATCCAAGGAA-3’(配列番号3)
18s RNA Rv: 5'-AGCTGGAATTACCGCGGC-3’(配列番号4)。
【0078】
結果を
図3に示す。
図3において、LPS(-)およびLPS(+)は、各々n=6であった。また、*は、対応のないt検定で、P<0.05を示す。
図3に示すように、LPS刺激により、ITGA5 mRNAの発現量が有意に増加した。このことより、LCのインテグリン(特に、ITGA5)の発現量を指標とすることにより、炎症の程度を評価できることが示された。
【0079】
また、上記〔3.moLCsの運動性における各種炎症誘導物質の効果〕の結果より、LPSに関わらず、種々の炎症誘導物質がmoLCsの運動性の低下に関与することが示された。したがって、本実験結果と併せて、LCのインテグリンを指標とすることにより、種々の炎症を評価することができると示唆される。