(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024069961
(43)【公開日】2024-05-22
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20240515BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240515BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180281
(22)【出願日】2022-11-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月11日に令和3年度 繊維学会秋季研究発表会(オンライン)プログラム『1D09』(予稿集2021年76巻2号)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】兼橋 真二
(72)【発明者】
【氏名】荻野 賢司
(72)【発明者】
【氏名】狩谷 昭太朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011QA03
4J011QA46
4J011SA02
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011UA01
4J011VA01
4J011VA04
4J011WA02
4J011WA05
4J011WA06
4J100AL74P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BC43P
4J100CA23
4J100DA36
4J100JA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルムとしての強度と表面の撥水性を両立した、非可食バイオマス由来の化合物をベースとする活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】不飽和エチレン構造を有する化合物(A)および光重合開始剤(B)を有し、不飽和エチレン構造を有する化合物(A)が、式(3)で示される化合物を含み、該化合物の側鎖不飽和基数の平均値(m)が0.1~1.8の範囲に設定される活性エネルギー線硬化性組成物。側鎖不飽和基数の平均値(m)=(活性エネルギー線硬化性組成物中における式(3)で示される化合物中のR’における炭素-炭素二重結合の総モル数)/(活性エネルギー線硬化性組成物中における式(3)で示される化合物の総モル数)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和エチレン構造を有する化合物(A)および光重合開始剤(B)を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、
不飽和エチレン構造を有する化合物(A)が、以下の式(1)で示される化合物を含み、上記式(1)で示される化合物の、以下の式(2)で算出される側鎖不飽和基数の平均値(m)が0.1~1.8の範囲に設定されることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【化1】
【請求項2】
上記の式(1)で示される化合物が以下の式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【化2】
【請求項3】
不飽和エチレン構造を有する化合物(A)全体に対して、式(1)で示される化合物が20質量%以上含有されることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項5】
硬化物の20℃における表面張力が、30mN/m以下であることを特徴とする請求項4記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線処理によりフィルムとしたときに高撥水性を有する活性エネルギー線硬化性組成物およびその硬化物に関し、さらに詳しくは、フィルムとしての強度と表面の撥水性を両立した、非可食バイオマス由来の化合物をベースとする活性エネルギー線硬化性組成物およびその硬化物に関するものである。
【0002】
近年、循環型社会への転換の流れから、化石資源由来の化学製品の使用を避け、バイオマス由来の化学製品を使用する流れがますます強まっている。このような流れのなかで、バイオマス由来ではあるものの、世界の食糧供給に悪影響を及ぼさないよう、とりわけ非可食で、かつ未利用のバイオマスの利用が強く求められている。
コーティングやインクの用途においてもこの流れは顕著であり、非可食バイオマスを用いた活性エネルギー線硬化性組成物、特にバイオマス由来の(メタ)アクリル化合物を含む組成物の開発が望まれている。
【0003】
一方で、化石資源由来の従来のコーティングやインクは、従来、より高い機能を求めて開発が繰り返されてきた経緯がある。バイオマス由来の化学製品は、化石資源由来の化学製品に比べて概して高コストとなることから、バイオマス由来であることに加えて、従来の化石資源由来の化学製品を超える機能が求められる傾向にある。
【0004】
ところで、カシューナッツ殻油(CNSL)は、カシューナッツ殻から搾油される油状の非可食バイオマスであり、かつ一部用途を除いてほとんど使われていない未利用バイオマスである。よって、CNSLおよびその誘導体を各種化学製品へ用途展開していくことが期待されている。
このCNSLに多く含まれるカルダノールは、フェノール性の水酸基に加え、側鎖に重合性の不飽和二重結合基を含む炭化水素基を有することから、CNSLおよびその誘導体は活性エネルギー線硬化性組成物の材料として有望であると考えられる。
例えば、CNSLを(メタ)アクリル化合物へ誘導化し、活性エネルギー線硬化性組成物に利用している例として、カルダノールの(メタ)アクリル化誘導体を活性エネルギー線硬化性組成物として用いることがあげられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、カルダノールの(メタ)アクリル化誘導体を用いる効果としてインクのバイオマス度向上効果のみが謳われており、その他の機能については記載がないため、このものを実際の化学製品として用いることは実質困難である。よって、カルダノールの(メタ)アクリル化誘導体を用いるだけでなく、さらにその他の機能を有する活性エネルギー線硬化性組成物が求められている。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、活性エネルギー線処理によりフィルムとしたときに、各種機能を有する活性エネルギー線硬化性組成物に関する。より詳しくは、フィルムとしての強度と表面の撥水性を両立した、非可食バイオマス由来の化合物をベースとする活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルダノール誘導体の側鎖二重結合基の不飽和度を一定の範囲内となるように制御することで、硬化物の強度を維持しながら優れた撥水性を発現できる組成物となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 不飽和エチレン構造を有する化合物(A)および光重合開始剤(B)を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、不飽和エチレン構造を有する化合物(A)が、以下の式(1)で示される化合物を含み、上記式(1)で示される化合物の、以下の式(2)で算出される側鎖不飽和基数の平均値(m)が0.1~1.8の範囲に設定されることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【化1】
[2] 上記の式(1)で示される化合物が以下の式(3)で示される化合物であることを特徴とする[1]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【化2】
[3] 不飽和エチレン構造を有する化合物(A)全体に対して、式(1)で示される化合物が20質量%以上含有されることを特徴とする[1]記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
[5] 硬化物の20℃における表面張力が、30mN/m以下であることを特徴とする[4]記載の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、非可食バイオマス由来の化合物をベースとしても、フィルムとしての強度と表面の撥水性を両立することができるため、持続可能な循環型社会に寄与できる。
すなわち、本発明で用いるカルダノールの(メタ)アクリル化誘導体は、重合性の(メタ)アクリル基と、特定の範囲に制御された側鎖二重結合基を有する。そして、上記側鎖二重結合基を特定の範囲に制御することで、飽和炭化水素構造由来の撥水性と、不飽和二重結合基由来の重合性のバランスが図られ、活性エネルギー線硬化による十分な重合と、得られるフィルムの撥水性との両立ができたと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態の例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルを意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む共重合成分を重合して得られる樹脂である。
本発明において、「主成分」とは、対象物中の最も多い成分をさし、通常、対象物中の50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、殊に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0011】
また、本発明において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)または「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」または「Y未満であることが好ましい」旨の意も包含する。
さらに、「Xおよび/またはY(X,Yは任意の構成)」とは、XおよびYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、XおよびY、の3通りを意味するものである。
【0012】
本発明の一実施形態に係る活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「組成物」という場合がある)は、不飽和エチレン構造を有する化合物(A)および光重合開始剤(B)を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、
上記不飽和エチレン構造を有する化合物(A)が、以下の式(1)で示される化合物を含み、かつ、以下の式(2)で算出される側鎖不飽和基数の平均値(m)が、0.1~1.8の範囲に設定される活性エネルギー線硬化性組成物である。
【化3】
【0013】
以下に、本発明において使用することができる各種配合材料について説明する。ただし、本明細書に記載のない材料等の使用を排除するものではない。
【0014】
<不飽和エチレン構造を有する化合物(A)>
本発明で用いる不飽和エチレン構造を有する化合物(A)は、以下の式(1)で示される化合物を含み、上記式(1)で示される化合物の、以下の式(2)で算出される側鎖不飽和基数の平均値(m)が0.1~1.8の範囲に設定される化合物である。
【0015】
【0016】
上記式(1)で示される化合物としては、例えば、以下に示すものがあげられる。ここでn=0~3の整数を示す。なお、式(1)で示される化合物は、以下の例に限定されるものではない。
【0017】
【0018】
上記式(1)において、Rは水素原子もしくはメチル基を示している。Rが水素原子であると、低強度で活性エネルギー線硬化が行いやすい傾向がみられる。また、Rがメチル基であると、より硬質の硬化物を形成しやすい傾向がみられる。
【0019】
上記式(1)で表される化合物は、式(3)で示す化合物であることが好ましく、特に上記(1-1)、(1-2)で表される化合物であることが、撥水性等の特性に加えて、硬化物のバイオマス度を向上させやすい点で好ましい。
【化6】
上記式(1)で表される化合物は、単独で用いても、複数種類を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明において、上記の式(1)で示される化合物における側鎖不飽和基数の平均値(m)(以下、「側鎖不飽和基数の平均値(m)」とすることがある)は、以下の式(2)にて求めることができる。
側鎖不飽和基数の平均値(m)=(活性エネルギー線硬化性組成物中における式(1)で示される化合物中のR’における炭素-炭素二重結合の総モル数)/(活性エネルギー線硬化性組成物中における式(1)で示される化合物の総モル数)…(2)
【0021】
上記側鎖不飽和基数の平均値(m)の下限値は、通常0.1であり、好ましくは0.12であり、さらに好ましくは0.15であり、特に好ましくは0.2である。
上記側鎖不飽和基数の平均値(m)がこの下限値を下回ると、硬化物が十分な強度を保持できない傾向がみられる。
一方、上記側鎖不飽和基数の平均値(m)の上限値は、通常1.8であり、好ましくは1.75であり、さらに好ましくは1.7であり、特に好ましくは1.6である。
上記側鎖不飽和基数の平均値(m)がこの上限値を上回ると、硬化物の撥水性が低下する傾向がみられる。
なお、上記側鎖不飽和基数の平均値(m)の好ましい範囲内において、上記側鎖不飽和基数の平均値(m)がより低い値であると、硬化物が軟質となりやすくエラストマーとして使用しやすくなる傾向がみられる。一方、上記側鎖不飽和基数の平均値(m)がより高い値であると、硬化物が硬質となりやすくハードコートやインクとして使用しやすくなる傾向がみられる。
【0022】
上記式(1)で示される化合物は、公知の有機合成的手法により容易に製造可能である。
しかし、非可食バイオマスの活用の観点から、非可食バイオマスであるカシューナッツ殻油(CNSL)に多く含まれるカルダノールを出発原料として誘導化し、精製することで製造することが好ましい。
なお、カルダノールをそのまま還元処理せずに誘導化した場合、上記側鎖不飽和基数の平均値(m)の値は原料であるカルダノールに由来することから、通常1.85~2となる。
【0023】
本発明の組成物における上記側鎖不飽和基数の平均値(m)の測定方法としては、既知の側鎖不飽和基数の平均値(m)を有する式(1)に示す化合物同士を混合量に応じて計算値として求めたり、核磁気共鳴(NMR)分析装置で得られる分析値から計算したりする等、種々の公知の方法により測定することができる。
そして、上記側鎖不飽和基数の平均値(m)の値を、本発明の好ましい範囲に制御する方法としては、例えば、カルダノールに水素添加による還元処理を施して不飽和度を一定の値に制御し、その制御された原料を誘導化することで、式(1)に示す化合物を得る方法があげられる。また、既知の側鎖不飽和基数の平均値(m)を有する式(1)に示す化合物を用いて計算値として算出する場合には、本発明で好ましいとする範囲外の側鎖不飽和基数の平均値(m)を有する式(1)に示す化合物を用いてもよい。
【0024】
不飽和エチレン構造を有する化合物(A)は、組成物中の全固形分の質量に対して20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは30~95質量%であり、50~90質量%であることがさらに好ましい。。
上記不飽和エチレン構造を有する化合物(A)の含有割合が、上記下限値を下回ると十分な強度を有する硬化物の作成が困難になる傾向があり、上限値を上回ると不飽和エチレン構造を有する化合物(A)が有する以外の特性を硬化物に付与することが困難になる傾向がある。ここで、組成物中の全固形分とは、溶媒等の、硬化物とした際に組成物から除去される成分を除いた全成分を表す。
【0025】
不飽和エチレン構造を有する化合物(A)は、上記式(1)で示される化合物以外の不飽和エチレン構造を有する化合物を含んでいてもよい。
その具体例としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、 2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、 2-ヒドロキシプロピル(メタ) アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、 4-tert-ブチルシクロへキサノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、 3,3,5-トリメチルシクロへキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレー卜、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ノニルフエノールアクリレート、(2-メチル-2-エチ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、 N-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド等の不飽和エチレン構造を1つ有する化合物;
1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、 3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)ア クリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6- ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート 、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の不飽和エチレン構造を2つ有する化合物;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプ ロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性トリメチロールプロパントリ(メタ) アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ (メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等の不飽和エチレン構造を3つ以上有する化合物;
脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の不飽和エチレン構造を有するオリゴマー;
等が挙げられる。
これら上記式(1)で示される化合物以外の不飽和エチレン構造を有する化合物は、単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0026】
すなわち、上記式(1)で示される化合物の含有量は、硬化物に上記式(1)で示される化合物に由来する物性が発揮される範囲内であれば特に規定されないが、その下限値として好ましくは不飽和エチレン構造を有する化合物(A)の10質量%であり、さらに好ましくは25質量%であり、特に好ましくは50質量%である。
上記式(1)で示される化合物の含有量が下限を下回ると、上記式(1)で示される化合物に由来する硬化物物性が発揮されにくくなる傾向にある。
一方、上記式(1)で示される化合物の含有量の上限値として、好ましくは不飽和エチレン構造を有する化合物(A)の95質量%であり、90質量であることがさらに好ましく、80質量%であることが特に好ましい。上記式(1)で示される化合物の含有量が上限を超えないと、組成物の硬化性向上等、上記式(1)で示される化合物が有しない別の特性を組成物および硬化物に付与しやすくなる傾向にある。
【0027】
<光重合開始剤(B)>
(A)とともに用いる光重合開始剤(B)としては、光の作用によりラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではない。
このような光重合開始剤(B)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。
なお、これら光重合開始剤(B)は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用することもできる。
【0028】
また、上記光重合開始剤(B)の助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これら助剤も1種単独で用いてもよいし2種以上併せて用いることもできる。
【0029】
光重合開始剤(B)は、不飽和エチレン構造を有する化合物(A)に対して、通常0.1~20質量%となるよう含有させるものであり、好ましくは0.5~15質量%であり、さらに好ましくは2~12質量%であり、特に好ましくは5~10質量%である。
光重合開始剤(B)の含有割合が、上記下限値を下回ると硬化物の製造が困難になる傾向があり、上限値を上回ると光重合開始剤(B)に基づく硬化物の物性低下が起こりやすくなる傾向がある。
【0030】
<その他の成分>
本発明の組成物には、上記不飽和エチレン構造を有する化合物(A)および光重合開始剤(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、溶媒、着色剤、その他の活性エネルギー線硬化性組成物の分野で用いられる一般的な成分を添加することができる。
【0031】
[溶媒]
すなわち、本発明の組成物は、低粘度化および基材への濡れ広がり性を向上させる等のために、公知または市販の溶媒を含んでいてもよい。
このような溶媒として、例えば、例えば、水;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でもしくは2種以上併用することができる。
【0032】
本発明の組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の成分や用途等に応じて適宜定めることができ、例えば、活性エネルギー線硬化性組成物中に0.1~50質量%とすることができる。
【0033】
[着色剤]
また、本発明の組成物は、着色剤を含有することもできる。本発明の組成物がこのような着色剤を含む場合には、例えば、顔料、染料等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも耐光性の観点から、顔料を好ましく用いることができる。
上記顔料としては、例えば、公知の顔料を用いることができ、無機顔料および有機顔料のいずれも用いることができる。
【0034】
上記無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタン等があげられる。
【0035】
上記有機顔料としては、例えば、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料;β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系等の不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化、臭素化等)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系等)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料および複素環式顔料;等があげられる。
なお、本発明の組成物が、着色剤を用いる場合には、その分散性をより良好にするために、公知の分散剤を併用してもよい。
【0036】
[その他の一般的な成分]
本発明の組成物は、溶媒、着色剤以外にも活性エネルギー線硬化性組成物に使用される一般的な成分を含むことができる。
具体的には、活性エネルギー線硬化性組成物に所望の機能や特性等を付与し得る公知または市販のものを制限なく使用することができ、例えば、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤、充填剤、増感剤、pH調整剤、保湿剤、酸化防止剤、酸素除去剤、還元剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、可塑剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、磁性体、貯蔵安定剤、表面張力調整剤、スリッピング剤、アンチブロッキング剤、光安定化剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、増粘剤(チキソトロピー剤)、抗菌・防黴剤等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明の組成物は、上記不飽和エチレン構造を有する化合物(A)および光重合開始剤(B)、必要に応じてその他の成分を混合することにより得ることができる。また、上記混合方法については、特に限定されず、種々の方法により混合することができる。例えば、各成分を一括混合したり、任意の成分を先に混合した後に残りの成分を混合したりする等、適宜選択することができる。
【0038】
また、本発明の組成物は、例えば、基材上に所定厚みとなるように塗工し、活性エネルギー線を照射して硬化物とすることができる。
【0039】
本発明の組成物を塗工する対象となる基材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂等やそれらの成型品(フィルム、シート、カップ等)等のプラスチック基材、それらの複合基材、またはガラス繊維や無機物を混合した前記材料の複合基材等、金属(アルミニウム、銅、鉄、SUS、亜鉛、マグネシウム、これらの合金等)や、ガラス等の基材上にプライマー層を設けた基材等があげられる。
【0040】
本発明の組成物の塗工方法としては、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法があげられ、通常は常温の条件下にて、基材に塗工すればよい。
【0041】
基材上に塗工された活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
【0042】
紫外線照射により本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる際には、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いて、通常30~3,000mJ/cm2(好ましくは100~1,500mJ/cm2)の紫外線を照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全化を図ることもできる。その際の加熱条件としては、例えば、温度120~200℃等があげられる。
【0043】
塗工膜厚(硬化後の膜厚)としては、通常、紫外線硬化性の塗膜として光重合開始剤(B)が均一に反応するべく光線透過を鑑みると、3~1,000μmであればよく、好ましくは5~500μmであり、特に好ましくは10~200μmである。
【0044】
活性エネルギー線硬化性組成物を用いて塗膜を形成した後、これを硬化する際に、上記樹脂組成物中に有機溶媒が残存している場合、有機溶媒を乾燥除去することが好ましい。上記乾燥条件としては、好ましくは温度40~120℃で時間1~20分、より好ましくは温度50~100℃で時間2~10分である。
【0045】
このようにして得られた硬化物は、フィルムとして用いる場合において、十分な硬度を有するものであり、例えば、その20℃における表面張力が、通常、30mN/m以下であり、好ましくは25mN/m以下、特に好ましくは20mN/m以下である。
上記表面張力は、得られたフィルムの表面に、表面張力等が既知である水を滴下して、接触角計(協和界面化学社製、Drop Master500)を用いて、接触角を測定した後、接触角から表面張力を算出する方法であるYoungの式およびBerthelohtの界面自由エネルギーにおける理論式を用いることで算出することができる。具体的には、以下の式(4)および式(5)を解くことで硬化物の表面張力が得られる。
ここで、γSはフィルムの表面張力、γLは水の表面張力、γSLはフィルム-水間の界面エネルギー、θは接触角を表す。
γS=γLcosθ+γSL …(4)
γSL=γS+γL-2√γSγL …(5)
【0046】
また、上記硬化物は、フィルムとして用いる場合において、十分な撥水性を有するものであり、例えば、23℃50%RHで24時間調湿したフィルムを用い、そのフィルム表面の試験する部分を触れたりこすったりせずに、JIS-R3257(1999)に準じて(θ/2法)測定した、水液滴の接触から3秒後の、水に対する接触角が、通常、65°~120°であり、70°~110°であることが好ましく、80°~100°にあることがさらに好ましい。
ここで、接触角は、一般的に、水滴が硬化物であるフィルム表面に接触した直後から経時的に変化し数秒程度で安定化するものであるが、市販の接触角測定装置を用いると、接触直後から経時的に連続して精度よく測定することができる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、種々の用途に供することができる。
このような用途としては、例えば、重合あるいは架橋反応を利用した成形樹脂、注型樹脂、繊維強化材料、3D造形用樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合レジン、印刷インク、印刷ニス、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルター用レジスト、ブラックマトリクス用レジスト、液晶用フォトスペーサー、リアプロジェクション用スクリーン材料、光ファイバー、プラズマディスプレー用リブ材、ドライフィルムレジスト、プリント基板用レジスト、ソルダーレジスト、半導体用フォトレジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト、エッチング用レジスト、マイクロレンズアレー、絶縁材、ホログラム材料、光学スイッチ、導波路用材料、オーバーコート剤、粉末コーティング、接着剤、粘着剤、離型剤、光記録媒体、粘接着剤、剥離コート剤、マイクロカプセルを用いた画像記録材料のための組成物、各種デバイス等をあげることができる。
【0048】
とりわけ、様々な基材上に印刷や塗布した場合に良好な被膜形成特性を示すことから、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば、印刷インクとして好ましく用いることができる。印刷インクとして用いる際の印刷方式は、公知の方式であればどのようなものでもよく、例えば、オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷があげられる。
【実施例0049】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0050】
まず、CNSL(LB-7250、東北化工社製)を用いて、下記のように各種カルダノールを合成した。
【0051】
<合成例1:カルダノールアクリレート(CA)の合成>
CNSL(30.0g)、トリエチルアミン(13.4ml)、ジクロロメタン(75ml)の混合液にアクリロイルクロリド(7.8ml)を内温0℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後24 時間熟成させた後、反応液を水洗および溶媒留去を行い、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することで目的化合物の無色オイルを25.0g(収率71%)で得た。1H NMRにて目的化合物であることを確認した。また、1H NMRから測定された側鎖不飽和基数の平均値(m)は1.9であった。
【0052】
<合成例2-1:側鎖飽和型カルダノールの合成>
CNSL(20.0g)、5%パラジウムカーボン(2.0g)およびエタノール(250ml)の混合液を水素ガス雰囲気下、室温で24時間撹拌した。得られた反応液からパラジウムカーボンをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで濾別し精製することで目的化合物の白色ワックス状固体を14.2g(収率70%)得た。1H NMRにて目的化合物であることを確認した。
【0053】
<合成例2-2:側鎖飽和型カルダノールアクリレート(sCA)の合成>
CNSLを合成例2-1で合成した側鎖飽和型カルダノール(10.1g)に変更した以外は合成例1と同様の配合割合で合成および精製を行い、目的化合物の白色ワックス状固体を9.2g(収率78%)得た。1H NMRにて目的化合物であることを確認した。また、1H NMRから側鎖不飽和基が検出されなかったことから、側鎖不飽和基数の平均値(m)を0とした。
【0054】
[実施例1]
合成例1(CA)と合成例2-2(sCA)とが質量比で10:90となるように混合して作製した不飽和エチレン構造を有する化合物(A)100質量部に、光重合開始剤(B)として5.0質量部のイルガキュア(登録商標)1173を加え混合して組成物を得た。この組成物を、それぞれ厚さ0.075mm(75μm)となるようにスペーサーを設けた2枚のガラス板の間に挟み込んだ。その後、ML-251B 超高圧UVランプ(ウシオ電機社製)にて積算光量60mW/cm2となるように紫外線照射し、組成物を硬化させた。
【0055】
[実施例2~5]
合成例1(CA)と合成例2-2(sCA)との質量比を表1に示すように変更して混合することにより、式(2)で算出される側鎖不飽和基数の平均値(m)を表1に示す値に調整した以外は実施例1と同様にして組成物を作製し、その組成物を硬化させた。
【0056】
[比較例1]
合成例1(CA)100質量部に5.0質量部のイルガキュア(登録商標)1173を加え混合した組成物を、実施例1と同様にして硬化し、厚み0.075mm(75μm)mmの硬化物を得た。
【0057】
[比較例2]
合成例2-2(sCA)100質量部に5.0質量部のイルガキュア(登録商標)1173を加え混合した組成物を、実施例1と同様にして硬化し、厚み0.075mm(75μm)の硬化物を得た。得られた硬化物は粘調なワックス状であり、ゲル分測定を実施したところ0%であったことから、十分な強度のある硬化物が形成できないと判断し、水接触角測定、および表面張力の算出を行なかった。
【0058】
[水接触角(°)の測定]
得られた実施例1~5および比較例1の硬化物に対し、DMo501Hi(共和界面化学社製)を用いて、水滴の接触から3秒後の接触角を測定し、JIS R3257(1999)に準じてθ/2法にて20℃の条件で水に対する接触角を算出した。算出した値を後記の表1に合わせて示す。
なお、上記接触角は、23℃50%RHで24時間調湿した硬化物(フィルム)を用い、そのフィルム表面の試験する部分を触れたり擦ったりせずに測定している。
【0059】
[表面張力(mN/m)の測定]
上記で算出した水に対する接触角の数値を用い、Youngの式およびBerthelohtの式を用いて硬化物であるフィルムの表面張力を算出した。算出した値を後記の表1に合わせて示す。
【0060】
【0061】
上記表1の結果より、実施例1~5においては、その組成比に関わらず十分なゲル分率を有しており、側鎖不飽和基数の平均値が一定以上であることで、いずれも十分な強度のある硬化物が形成できていることがわかる。比較例2のように側鎖不飽和基数の平均値が一定以下であると、十分な強度を有する硬化物を形成できない。
一方、実施例1~5と比較例1とを比較すると、側鎖不飽和基数の平均値が一定以下であることで、撥水性および硬化物の表面張力が大きく低下し、撥水性が向上することもわかる。これは、側鎖不飽和基数が一定の範囲内であることで、側鎖不飽和基の重合に由来するポリマーの三次元緻密性と、側鎖飽和アルキル構造に由来するポリマー疎水効果を両立できたためと考えられる。
このような特異な物性は、非石油資源由来の機能性インクやコーティングとしての使用に加え、水の影響を受けにくい機能性粘着剤や機能性接着剤としての使用等にも有効であると考えられる。