(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002190
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 3/08 20060101AFI20241226BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20241226BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01T3/08
G21K1/00 N
G21K5/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102184
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】岩下 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】木内 笠
(72)【発明者】
【氏名】加美山 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博隆
(72)【発明者】
【氏名】鬼柳 善明
(72)【発明者】
【氏名】古坂 道弘
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB09
2G188CC28
2G188DD31
2G188EE12
(57)【要約】
【課題】粒子由来のSEUクロスセクションを高精度に測定することが可能な測定装置、測定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】陽子を照射する加速器11と、加速器11から照射された陽子を減速する減速板と、加速器11から照射される陽子エネルギー、及び減速板の厚さに基づいて、減速板にて発生する中性子数を算出する第1算出部22と、陽子エネルギーに基づいて、デバイス3にて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出する第2算出部23と、中性子数、及び中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、デバイス3にて発生する中性子由来のSEUを算出する第3算出部24と、デバイス3にて発生するSEUと中性子由来のSEUに基づいて、陽子由来のSEUクロスセクションを算出する第4算出部26を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEUクロスセクションを測定する測定装置であって、
デバイスに粒子を照射する加速器と、
前記加速器と前記デバイスとの間に設置され、前記加速器から照射された粒子を減速する減速板と、
前記加速器から照射される粒子エネルギー、及び前記減速板の厚さに基づいて、前記減速板にて発生する中性子数を算出する第1算出部と、
前記粒子エネルギーに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出する第2算出部と、
前記中性子数、及び前記中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUを算出する第3算出部と、
前記デバイスにて発生するSEUと前記中性子由来のSEUに基づいて、粒子由来のSEUクロスセクションを算出する第4算出部と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記デバイスにて発生するSEUをカウントするカウント部、を更に備えた
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
厚さが異なる複数の減速板から1つの減速板を選択する切替機構、を更に備え、
前記第1算出部は、前記切替機構で選択された減速板の厚さに基づいて、前記減速板にて発生する中性子数を算出する
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1算出部は、中性子エネルギーと中性子数との関係を示す第1対応データを備えており、前記粒子エネルギーから前記中性子エネルギーを算出し、前記第1対応データを参照して前記中性子数を算出する
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第2算出部は、
中性子エネルギーと前記中性子由来のSEUクロスセクションとの関係を示す第2対応データを備えており、前記粒子エネルギーから前記中性子エネルギーを算出し、前記中性子エネルギーに基づき、前記第2対応データを参照して前記中性子由来のSEUクロスセクションを算出する
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項6】
SEUクロスセクションを測定する測定方法であって、
加速器から照射され減速板で減速した粒子をデバイスに照射し、
前記加速器から照射される粒子の粒子エネルギー、及び前記減速板の厚さに基づいて、前記減速板にて発生する中性子数を算出し、
前記粒子エネルギーに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出し、
前記中性子数、及び前記中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUを算出し、
前記デバイスにて発生したSEU、及び前記中性子由来のSEUに基づいて、粒子由来のSEUクロスセクションを算出する
測定方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の測定装置の、第1算出部、第2算出部、第3算出部、及び第4算出部としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、SEU(Single EventUpset)クロスセクションを測定する測定装置、測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、メモリなどのデバイスに単一の粒子(中性子、陽子、重粒子など)が衝突すると、ビットが反転する事象であるSEUが発生する。粒子を照射した際に発生するSEUの数を、照射したフルエンス(単位面積当たりに通過した粒子の総数)で除した数値をSEUクロスセクションという。即ち、SEUクロスセクションは、「(SEU発生数)/(照射粒子フルエンス)」で算出することができる。
【0003】
エネルギー依存の粒子(例えば、陽子)のSEUクロスセクションを測定する場合には、粒子のエネルギーを変更してSEU発生数を測定することが必要になる。
【0004】
粒子のエネルギーを変更する方法として非特許文献1には、加速器により粒子の速度を変化させ、デバイスに照射する粒子のエネルギーを変更する方法が開示されている。非特許文献2には、加速器で発生させた特定のエネルギーを有する粒子を減速板に衝突させることより、粒子エネルギーを減衰させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】https://ieeexplore.ieee.org/document/4077290
【非特許文献2】https://ieeexplore.ieee.org/document/7482480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に記載された加速器から照射する粒子の速度を変化させる方法では、粒子のエネルギーを柔軟に変更することが難しく、加速器の設定及び調整に長時間を要するという問題がある。
【0007】
一方、非特許文献2に記載された減速板を用いる方法では、減速板に粒子(例えば、陽子)が衝突する際に中性子が発生してしまい、その中性子に由来するSEUが発生するため、粒子由来のSEUクロスセクションを高精度に測定することが難しいという問題がある。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒子由来のSEUクロスセクションを高精度に測定することが可能な測定装置、測定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の測定装置は、SEUクロスセクションを測定する測定装置であって、デバイスに粒子を照射する加速器と、前記加速器と前記デバイスとの間に設置され、前記加速器から照射された粒子を減速する減速板と、前記加速器から照射される粒子エネルギー、及び前記減速板の厚さに基づいて、前記減速板にて発生する中性子数を算出する第1算出部と、前記粒子エネルギーに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出する第2算出部と、前記中性子数、及び前記中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUを算出する第3算出部と、前記デバイスにて発生するSEUと前記中性子由来のSEUに基づいて、粒子由来のSEUクロスセクションを算出する第4算出部を備える。
【0010】
本開示の一態様の測定方法は、SEUクロスセクションを測定する測定方法であって、加速器から照射され減速板で減速した粒子をデバイスに照射し、前記加速器から照射される粒子の粒子エネルギー、及び前記減速板の厚さに基づいて、前記減速板にて発生する中性子数を算出し、前記粒子エネルギーに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出し、前記中性子数、及び前記中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、前記デバイスにて発生する中性子由来のSEUを算出し、前記デバイスにて発生したSEU、及び前記中性子由来のSEUに基づいて、粒子由来のSEUクロスセクションを算出する。
【0011】
本開示の一態様は、上記測定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、粒子由来のSEUクロスセクションを高精度に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る測定装置及び周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る測定装置及び周辺機器の構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は、減速板の厚さを変化させたときの、陽子スペクトルを示すグラフである。
【
図4】
図4は、中性子エネルギーと中性子フラックスとの対応データ(第1対応データ)を示すグラフである。
【
図5】
図5は、中性子エネルギーと中性子由来のSEUクロスセクションとの対応データ(第2対応データ)を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る測定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態に係る測定装置について説明する。
図1は、実施形態に係る測定装置100の詳細な構成を示すブロック図、
図2は、測定装置100及び観測対象となるデバイス3の構成を示す説明図である。
図1、
図2に示すように測定装置100は、照射装置1と、演算装置2を備えている。測定装置100は、デバイス3に粒子(例えば、陽子)を照射し、デバイス3における粒子由来のSEUクロスセクションを測定する。
【0015】
照射装置1は、加速器11と、切替機構12を備えている。
【0016】
加速器11は、粒子を加速した加速粒子を切替機構12に設けられる減速板D(D1~Dn)に照射する。本実施形態では、加速器11から照射する粒子として陽子を照射する例について説明する。加速器11は、例えば陽子のエネルギーが20[MeV]となるように加速する。
【0017】
切替機構12は、厚さが異なる複数の減速板D(D1~Dn)を備えている。切替機構12は、厚さが異なる複数の減速板から1つの減速板Dを選択する。減速板Dは、加速器11とデバイス3との間に設置され、加速器11から照射された陽子(粒子)を減速させる。切替機構12は、ユーザの操作により、使用する減速板Dを選択することができる。以下、減速板D1の厚さをt1、減速板D2の厚さをt2とする。従って、減速板Dnの厚さはtnである。減速板Dとして、例えばアルミニウム板を使用してもよい。
【0018】
ユーザは、減速板D1~Dnのうちのいずれかを選択することができる。
図3は、減速板Dの厚さtを変化させたときの、陽子スペクトルを示すグラフである。
図3において、曲線s1は厚さ1.0[mm]、曲線s2は厚さ1.5[mm]、曲線s3は厚さ1.8[mm]、曲線s4は厚さ2.0[mm]のアルミ板を用いたときのデータを示している。
図3のグラフから、減速板Dの厚さtを変化させることにより、陽子エネルギーを変更可能であることが理解される。即ち、切替機構12を操作して減速板Dを変更することにより、デバイス3に照射する陽子エネルギーを変化させることができる。
【0019】
加速器11から加速した陽子(粒子)を減速板Dに向けて照射することにより、減速板Dにおいて陽子が減速される。減速された陽子がデバイス3に照射されると、該デバイス3においてSEUが発生する。SEUを測定することにより、デバイス3における陽子由来のSEUクロスセクションを算出することができる。
【0020】
演算装置2は、測定部21と、第1算出部22と、第2算出部23と、第3算出部24と、カウント部25と、第4算出部26を備えている。
【0021】
測定部21は、加速器11にて加速された陽子数をカウントする。陽子数のカウント値は、加速器11から照射される陽子エネルギーに対応する数値である。測定部21は、カウントした陽子数を第1算出部22及び第2算出部23に出力する。
【0022】
第1算出部22は、測定部21でカウントされた陽子数、及び切替機構12にて設定されている減速板Dの厚さtの情報を取得する。第1算出部22は、各減速板D1~Dnの厚さt1~tnごとに、中性子エネルギーと中性子フラックス(中性子数)との関係を示す第1対応データを備えている。
【0023】
図4は、減速板Dとして、厚さ1.0[mm]、1.5[mm]、1.8[mm]、2.0[mm]のアルミ板を用いたときの、中性子エネルギーと中性子フラックスとの関係を示すグラフである。
図4に示すグラフは、中性子エネルギーと中性子数との関係を示す第1対応データの一例である。
図4に示すグラフは、予めシミュレーションすることにより取得することが可能である。なお、シミュレーションデータを使用せず、複数の減速板Dを用いて実際に測定したデータを使用してもよい。
【0024】
第1算出部22は、切替機構12から減速板Dの厚さtの情報を取得し、更に測定部21から取得した陽子数に基づいて、中性子エネルギーを算出する。即ち、加速器11にて加速された陽子数と中性子エネルギーは一意に対応するので、陽子数から中性子エネルギーを算出することができる。
【0025】
第1算出部22は、減速板Dの厚さt及び中性子エネルギーに基づいて、中性子フラックス(中性子数)を算出する。更に中性子フラックスに照射時間を乗じて中性子フルエンスを算出する。第1算出部22は、算出した中性子フルエンスのデータ(これを、φ(E)とする)を第3算出部24に出力する。第1算出部22は、加速器11から照射される陽子エネルギー(粒子エネルギー)、及び減速板Dの厚さtに基づいて、減速板Dにて発生する中性子数を算出する。
【0026】
即ち、第1算出部22は、中性子エネルギーと中性子数との関係を示す第1対応データを備えており、粒子エネルギーから中性子エネルギーを算出し、第1対応データを参照して中性子数を算出する。
【0027】
第2算出部23は、例えば
図5に示すように、デバイス3に応じた中性子エネルギーと中性子由来のSEUクロスセクションとの関係を示すグラフ(第2対応データ)を備えている。
図5に示すグラフは、中性子エネルギーと中性子由来のSEUクロスセクションとの関係を示す第2対応データの一例である。
図5に示すグラフは、シミュレーションにより予め取得することが可能である。また、シミュレーション結果を使用せず、複数の減速板Dを用いて実際に測定したデータを使用してもよい。
【0028】
第2算出部23は、測定部21でカウントされた陽子数により得られる中性子エネルギーに基づき、
図5に示すグラフを参照して中性子由来のSEUクロスセクションを算出する。即ち、第2算出部23は、陽子エネルギー(粒子エネルギー)に基づいて、中性子エネルギーを算出し、更に、算出した中性子エネルギーに基づき、第2対応データを参照してデバイス3にて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出する。
【0029】
第2算出部23は、算出した中性子由来のSEUクロスセクションのデータ(これを、σ(E)とする)を第3算出部24に出力する。
【0030】
第3算出部24は、上述した中性子フルエンスφ(E)及び中性子由来のSEUクロスセクションσ(E)に基づいて、デバイス3において発生する中性子由来のSEU発生数N1を算出する。即ち第3算出部24は、第1算出部22で算出された中性子数(フラックス)、及び中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、デバイス3において発生する中性子由来のSEUを算出する。
【0031】
具体的に第3算出部24は、下記(1)式により、中性子由来のSEU発生数N1を算出する。
【0032】
【0033】
(1)式に示す「E」はエネルギーである。第3算出部24は、中性子由来のSEU発生数N1を第4算出部26に出力する。
【0034】
カウント部25は、デバイス3において発生したSEU発生数N2をカウントする。カウント部25はカウントしたSEU発生数N2を第4算出部26に出力する。SEU発生数N2には、デバイス3に陽子が照射されて発生する陽子由来のSEU、及び中性子が照射されて発生する中性子由来のSEUが含まれる。
【0035】
第4算出部26は、カウント部25から出力されるSEU発生数N2、及び、第3算出部24から出力される中性子由来のSEU発生数N1を取得する。第4算出部26は、N2からN1を減算する。この減算値(N2-N1)は、陽子由来のSEU発生数であり、SEU発生数N2から減速板Dにて発生した中性子由来のSEU発生数N1を減算した数値である。
【0036】
第4算出部26は、算出した陽子由来のSEU発生数をデバイス3に照射した陽子数で除算することにより、陽子由来のSEUクロスセクションを算出する。即ち第4算出部26は、SEUのカウント値と、中性子由来のSEUに基づいて、陽子(粒子)由来のSEUクロスセクションを算出する。
【0037】
次に、上述した測定装置100によりデバイス3に陽子を照射し、陽子由来のSEUクロスセクションを測定する手順を、
図6に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態では粒子の一例として陽子を照射する例について説明するが、その他の粒子を用いることも可能である。
【0038】
初めにステップS11においてユーザは、切替機構12を操作して複数の減速板D1~Dnから、任意の厚さtの減速板Dを設定する。
【0039】
ステップS12においてユーザは、加速器11を操作して、例えば加速した20[Mev]の陽子を減速板Dに向けて照射する。
図2に示すように減速板Dに陽子が照射されることにより陽子は減速され、且つ減速板Dにおいて中性子が発生する。減速された陽子、及び減速板Dで発生した中性子はデバイス3に照射される。デバイス3では、減速された陽子及び中性子が照射されることによりSEUが発生する。
【0040】
ステップS13においてカウント部25は、デバイス3で発生したSEUをカウントし、カウント値N2を第4算出部26に出力する。前述したように、カウント値N2は、陽子由来のSEU発生数、及び中性子由来のSEU発生数N1を合計した数値である。
【0041】
ステップS14において第1算出部22は、切替機構12から現在設定されている減速板Dの厚さtのデータを取得し、且つ、測定部21でカウントされた陽子数を取得する。第1算出部22は、取得した陽子数に基づいて、減速板Dに照射される中性子エネルギーを算出する。第1算出部22は、減速板Dの厚さt及び中性子エネルギーに基づき、
図4に示したグラフ(第1対応データ)を参照して、中性子フルエンスを算出する。中性子フルエンスは、中性子フラックス(中性子数)に基づいて算出することができる。
【0042】
ステップS15において第2算出部23は、測定部21でカウントされた陽子数により得られる中性子エネルギーに基づき、
図5に示したグラフ(第2対応データ)を参照して中性子由来のSEUクロスセクションを算出する。
【0043】
ステップS16において第3算出部24は、第1算出部22で算出された中性子フラックスと、第2算出部23で算出された中性子由来のSEUクロスセクションに基づき、前述した(1)式により中性子由来のSEU発生数N1を算出する。
【0044】
ステップS17において第4算出部26は、デバイス3におけるSEU発生数N2から中性子由来のSEU発生数N1を減算して、陽子由来のSEU発生数(N2-N1)を算出する。
【0045】
ステップS18において第4算出部26は、陽子によるSEU発生数(N2-N1)に基づいて、陽子由来のSEUクロスセクションを算出する。こうして、デバイス3に中性子が照射されることにより発生するSEUの影響を除外して、陽子由来のSEUクロスセクションを算出することができる。
【0046】
このように、本実施形態に係る測定装置100は、SEUクロスセクションを測定する測定装置100であって、デバイス3に粒子(例えば、陽子)を照射する加速器11と、加速器11とデバイス3との間に設置され、加速器11から照射された粒子を減速する減速板Dと、加速器11から照射される粒子エネルギー、及び減速板Dの厚さtに基づいて、減速板Dにて発生する中性子数を算出する第1算出部22と、粒子エネルギーに基づいて、デバイス3にて発生する中性子由来のSEUクロスセクションを算出する第2算出部23と、中性子数、及び中性子由来のSEUクロスセクションに基づいて、デバイス3において発生する中性子由来のSEUを算出する第3算出部24と、デバイス3にて発生するSEUと中性子由来のSEUに基づいて、粒子由来のSEUクロスセクションを算出する第4算出部26を備える。
【0047】
本実施形態では、加速器11から照射する陽子エネルギーを変更することなく、減速板Dの厚さtを変更するという簡単な操作により、デバイス3に照射する陽子エネルギーを変化させることができる。このため、加速器11から照射する陽子エネルギーを変更する操作が不要となり、ユーザによる労力を軽減できる。
【0048】
また、減速板Dで発生する中性子由来のSEUによる影響を除外して、陽子由来のSEUクロスセクションを算出することができる。このため、陽子由来のSEUクロスセクションを高精度に測定することが可能になる。
【0049】
本実施形態では、厚さが異なる複数の減速板D(D1~Dn)から1つの減速板Dを選択する切替機構12を備えているので、所望の厚さtを有する減速板Dを容易に選択して陽子由来のSEUクロスセクションを測定することが可能になる。
【0050】
本実施形態では、第1算出部22は、
図4に示したように中性子エネルギーと中性子数(中性子フラックス)との関係を示すグラフ(第1対応データ)を備えており、中性子エネルギーに基づき、第1対応データを参照して中性子数を算出するので、演算負荷を増大させることなく簡易な操作で中性子数を算出することが可能になる。
【0051】
本実施形態では、第2算出部23は、
図5に示したように中性子エネルギーと中性子由来のSEUクロスセクションとの関係を示すグラフ(第2対応データ)を備えており、中性子エネルギーに基づき、第2対応データを参照して中性子由来のSEUクロスセクションを算出するので、演算負荷を増大させることなく簡易な操作で中性子由来のSEUクロスセクションを算出することが可能になる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、デバイス3に照射する粒子として陽子を例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、陽子以外の粒子を採用してもよい。
【0053】
上記説明した本実施形態の測定装置100の演算装置2には、
図7に示すように例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid StateDrive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、演算装置2の各機能が実現される。
【0054】
なお、演算装置2は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、演算装置2は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0055】
なお、演算装置2用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば非一時的な(non-transitory)記録媒体である。
【0056】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 照射装置
2 演算装置
3 デバイス
11 加速器
12 切替機構
21 測定部
22 第1算出部
23 第2算出部
24 第3算出部
25 カウント部
26 第4算出部
100 測定装置
D(D1~Dn) 減速板