(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024761
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/024 20060101AFI20250214BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20250214BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20250214BHJP
【FI】
H01S5/024
H01S5/02253
H01S5/0239
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129006
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中垣 政俊
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA08
5F173MB03
5F173MC12
5F173MD05
5F173MD07
5F173MD16
5F173MD27
5F173MD33
5F173ME01
5F173ME12
5F173ME22
5F173ME32
5F173ME55
5F173ME56
5F173ME57
5F173MF03
5F173MF28
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】駆動時に内部の半導体レーザ素子から発せられた熱を発光装置の外部に効果的に伝えることが求められている。
【解決手段】発光装置は、上面を有し、上面に、平面状の領域を含む底面を有する凹部が設けられる、金属材料から形成された基板と、凹部の底面に配置されるサブマウントと、サブマウントに配置され、レーザ光を出射する半導体レーザ素子と、サブマウントに配置されるレンズ支持部材と、レンズ支持部材によって支持され、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光をコリメートまたは集束するレンズと、半導体レーザ素子を囲む、セラミックスから形成された枠体と、を備え、基板および半導体レーザ素子は、上面視で長辺および短辺を有する矩形形状であり、基板の長辺と半導体レーザ素子の長辺とは互いに平行である。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を有し、前記上面に、平面状の領域を含む底面を有する凹部が設けられる、金属材料から形成された基板と、
前記凹部の前記底面に配置されるサブマウントと、
前記サブマウントに配置され、レーザ光を出射する半導体レーザ素子と、
前記サブマウントに配置されるレンズ支持部材と、
前記レンズ支持部材によって支持され、前記半導体レーザ素子から出射される前記レーザ光をコリメートまたは集束するレンズと、
前記半導体レーザ素子を囲む、セラミックスから形成された枠体と、
を備え、
前記基板および前記半導体レーザ素子は上面視で矩形形状であり、前記矩形形状は長辺および短辺を有し、
前記基板の長辺と前記半導体レーザ素子の長辺とは互いに平行である、発光装置。
【請求項2】
前記半導体レーザ素子の長辺の長さは1500μm以上である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記凹部は、上面視で角が丸まった矩形形状である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板は、前記上面の反対側に位置する平面状の下面を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記凹部の前記底面に配置され、前記レーザ光を反射して前記レーザ光の進行方向を前記上面から離れる方向に変化させるミラー部材をさらに備える、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記凹部の外縁は、上面視で、前記枠体の内側に存在する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記凹部の前記底面および前記基板の下面は互いに平行である、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記基板の前記上面と、前記凹部の前記底面との距離は、前記半導体レーザ素子の上面と、前記凹部の前記底面との距離よりも小さい、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記基板の前記上面と、前記凹部の前記底面との距離は、前記半導体レーザ素子の上面と、前記半導体レーザ素子の下面との距離よりも小さい、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記凹部の前記底面における前記平面状の領域の平面度は10μm以下であり、
前記基板の下面の平面度は50μm以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記凹部の前記底面は、前記半導体レーザ素子を支持する第1底面と、前記ミラー部材を支持する第2底面とを有し、
前記基板の下面を高さの基準として、前記第2底面は前記第1底面よりも低い位置にある、請求項5に記載の発光装置。
【請求項12】
前記基板の前記上面から前記基板の下面までの距離は、前記基板の前記上面から前記枠体の下面までの距離よりも長い、請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第1底面および前記第2底面は平面状であり、互いに平行である、請求項11に記載の発光装置。
【請求項14】
前記基板の前記上面から前記基板の下面までの距離は、前記基板の前記上面から前記枠体の下面までの距離よりも長い、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記枠体は上面から下面に貫通する開口部を有し、前記開口部は内側面の下面側に段を有し、
前記基板の上面の周縁領域は前記段に接合される、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記基板の上面の周縁領域および前記段は、無機接合部材を介して接合される、請求項15に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子を用いてレーザ光を出射する発光装置は、レーザ加工機、プロジェクタ、および照明光源などの装置に利用することができる。そのような発光装置では、製造誤差が生じたり、製造過程で構造が変形したりすることが原因で、駆動時に半導体レーザ素子から発せられる熱を発光装置の外部に効果的に伝えることができず、当該熱が半導体レーザ素子の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体レーザ素子を用いてレーザ光を出射する発光装置において、発光装置の駆動時に半導体レーザ素子から発せられる熱を発光装置の外部に効果的に伝えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の発光装置は、上面を有し、前記上面に、平面状の領域を含む底面を有する凹部が設けられる、金属材料から形成された基板と、前記凹部の前記底面に配置されるサブマウントと、前記サブマウントに配置され、レーザ光を出射する半導体レーザ素子と、前記サブマウントに配置されるレンズ支持部材と、前記レンズ支持部材によって支持され、前記半導体レーザ素子から出射される前記レーザ光をコリメートまたは集束するレンズと、前記半導体レーザ素子を囲む、セラミックスから形成された枠体と、を備え、前記基板および前記半導体レーザ素子は上面視で矩形形状であり、前記矩形形状は長辺および短辺を有し、前記基板の長辺と前記半導体レーザ素子の長辺とは互いに平行である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の実施形態によれば、発光装置の駆動時に半導体レーザ素子から発せられる熱を発光装置の外部に効果的に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、本開示の例示的な実施形態による発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本実施形態による発光装置の変形例の構成を模式的に示す、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本実施形態による発光装置に用いられる基部の製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本実施形態による発光装置に用いられる基部の製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図3C】
図3Cは、本実施形態による発光装置に用いられる基部の製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図4A】
図4Aは、本実施形態による発光装置の変形例に用いられる基部の製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図4B】
図4Bは、本実施形態による発光装置の変形例に用いられる基部の製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【
図5B】
図5Bは、レーザ光源の、YZ平面に対して平行な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態による発光装置、発光装置に用いられる基部の製造方法、および発光装置の製造方法を説明する。複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を示す。
【0009】
さらに、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するために例示しているのであって、本発明を以下に限定しない。また、構成要素のサイズ、材質、形状、その相対的配置などの記載は、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図している。各図面が示す部材の大きさおよび位置関係は、理解を容易にするために誇張している場合がある。
【0010】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形または四角形などの多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取りなどの加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶ。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶ。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書および特許請求の範囲で記載される“多角形”の解釈に含まれる。
【0011】
(実施形態)
以下に、
図1Aおよび
図1Bを参照して、本開示の実施形態による発光装置の構成例を説明する。
図1Aは、本開示の例示的な実施形態による発光装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示す発光装置の分解斜視図である。
図1Aおよび
図1Bに示す発光装置100は、内部の半導体レーザ素子から出射されたレーザ光Lを、発光装置100の外部に出射する。
【0012】
発光装置100は、
図1Bに示すように、基板10と、レーザ光源20と、枠体40とを備える。発光装置100は、さらに、ミラー部材30と、複数のワイヤ41と、カバー50とを備えてもよい。基板10は上面12を有する。レーザ光源20は、半導体レーザ素子22を有するチップオンサブマウント(Chip on Submount)型の半導体レーザ光源である。ミラー部材30は反射面32を有する。発光装置100は、ツェナーダイオードのような保護素子および/またはサーミスタのような内部温度を測定するための温度測定素子をさらに備えてもよい。本明細書において、基板10および枠体40が接合された構成を、「基部60」とも称する。基部60は、レーザ光源20およびミラー部材30を収容する。
【0013】
図1Bに示す例において、レーザ光源20の数は1個であるが、複数個であってもよい。レーザ光源20の数が複数個である場合、ミラー部材30の数はレーザ光源20の数と同じであってもよいし、レーザ光源20の数よりも少なくてもよい。ミラー部材30の数がレーザ光源20の数と同じ場合、ミラー部材30およびレーザ光源20は1対1に対応する。ミラー部材30の数がレーザ光源20の数よりも少ない場合、1つのミラー部材30は、2つ以上のレーザ光源20に対応する。
【0014】
これらの図では、参考のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が模式的に示されている。X軸の矢印の方向を+X方向と称し、その反対方向を-X方向と称する。±X方向を区別しない場合、単にX方向と称する。Y方向およびZ方向についても同様である。本明細書では、説明のわかりやすさのために、+Y方向を「上方」と称し、-Y方向を「下方」と称する。このことは、発光装置の使用時における向きを制限するわけではなく、発光装置の向きは任意である。
【0015】
図1Cは、
図1Aに示す発光装置100の他の分解斜視図である。
図1Cにおいて、
図1Bに示す複数のワイヤ41は省略されている。
図1Dは、
図1Aに示す発光装置100に含まれる枠体40を下方から見た斜視図である。
図1Eは、
図1Aに示す発光装置100からカバー50を省略した構成の上面図である。
図1Fは、
図1Aに示す発光装置100の、YZ平面に対して平行な断面図である。
図1Fに示す太線の矢印は、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向を表す。
図1Gは、
図1Fに示す構成のうち、基板10の上面12の一部を改変した図である。
【0016】
本実施形態による発光装置100において、基板10の上面12には、
図1Cに示すように、底面15を有する凹部13が設けられている。レーザ光源20およびミラー部材30は凹部13の底面15に配置される。レーザ光源20から出射されたレーザ光の進行方向をレーザ光源20の前方として、ミラー部材30は、レーザ光源20の前方に位置するように配置される。
図1Fに示すように、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lは、ミラー部材30の反射面32で反射されて上面12から離れる方向に進行し、カバー50を透過する。このようにして、発光装置100は、カバー50からレーザ光Lを出射する。発光装置100は、例えば、平面状の配置面に配置される。また、例えば、基板10の下面14は、平面状の配置面に配置される。
【0017】
本実施形態による発光装置100とは異なり、基板10の上面12に凹部13を設けない構成の課題を、以下に説明する。上面に凹部を設けない基板を枠体40に、ろう材のような無機接合部材を介して接合する場合、無機接合部材に熱が加えられる。基板の熱膨張係数が枠体40の熱膨張係数よりも高いと、無機接合部材に加えられる熱によって基板が枠体40よりも変形し、その結果、基板は上に凸に反る傾向にある。例えば、基板10が金属材料から形成され、枠体40が、基板10よりも熱膨張係数の低いセラミックスから形成される場合、基板の反りが生じ得る。本明細書において、上面に凹部を設けていない基板および枠体40が接合された構成を「基部本体」とも称する。
【0018】
基板は、
図1Cに示すように、+Y方向から見る上面視で矩形形状である。当該矩形形状は長辺および短辺を有する。基板が長辺および短辺を有する矩形形状である場合、上記の基板の反りは、短辺方向よりも長辺方向において大きくなる。半導体レーザ素子22は、基板と同様に矩形形状である。発光装置100を小型化する観点から、スペースの無駄が生じないよう基板の長辺と半導体レーザ素子22の長辺とが互いに平行になるように、レーザ光源20は基板の上面に配置される。その場合、長辺方向における基板の大きな反りが原因でレーザ光源20の下面が基板の上面に十分に接触しないことから、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を基板に効果的に伝えられない可能性がある。
【0019】
これに対して、本実施形態による発光装置100では、基板10が例えば金属材料から形成されれば、基板10は可塑性を有するので、プレス装置によって基板10の上面12に凹部13を設けることが可能である。プレス装置は、例えば、平面状の支持面を有するステージと、平面状の下端を有する押圧部とを備え得る。押圧部の下端は、ステージの支持面に対して平行になるように調整され得る。プレス装置のステージ上に、基板の下面14が下になるように上記の基部本体を配置し、押圧部によって基板の上面を押圧することにより、基板の上面に凹部が形成される。このようにして、上面12に凹部13が設けられた基板10が得られる。押圧により、凹部13を設ける前の基板の上面と比較して、凹部13の底面15の反りは低減され、より具体的には底面15は平面状になる。
【0020】
本実施形態による発光装置100では、平面状の底面15にレーザ光源20が配置されるので、レーザ光源20の下面が底面15に均一に接触する。その結果、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を基板10に効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0021】
以下に、発光装置100の各構成要素を説明する。
【0022】
<基板10>
基板10は、
図1Cに示すように上面12を有する。上面12には、底面15を有する凹部13が設けられている。基板10は、さらに、上面12の反対側に位置する下面14を有する。底面15はXZ平面に対して平行な面である。底面15は全体に平面状の領域を有する。底面15と同様に、下面14はXZ平面に対して平行な面である。下面14は全体に平面状の領域を有する。底面15および下面14は互いに平行である。底面15の法線方向は+Y方向である。本明細書において、面の法線方向とは、面の垂直方向であって、当該面を有する物体から離れる方向を意味する。底面15が平面状であること、下面14が平面状であること、および底面15および下面14が互いに平行であることによって得られる効果については後述する。
【0023】
基板10の下面14を高さの基準として、基板10の上面12のうち、最も上方に位置する箇所から、底面15のうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を凹部13の深さとすると、凹部13の深さは、例えば、5μm以上30μm以下であり得る。底面15全体における平面状の領域の平面度は、例えば10μm以下であり、下面14の平面度は、例えば20μm以下である。
【0024】
平面度は、JIS B 0621「幾何偏差の定義及び表示」によると「平面形体の幾何学的に正しい平面(幾何学的平面)からの狂いの大きさ」と定義されている。具体的には、平面度は、完全に平らな2つの仮想的な平面によって対象面を上下から挟んだ場合の当該2つの仮想的な平面の距離に相当する。
【0025】
基板10は概略的に平板形状である。基板10は、上面視で矩形形状である。基板10は長辺および短辺を有する。また、凹部13は、上面視で矩形形状である。凹部13は長辺および短辺を有する。凹部13は、上面視で角が丸まった矩形形状であることが好ましい。角が丸まっていることにより、角が丸まっていない場合と比較して、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱によって基板10の体積が変動する際に、角付近へ応力が集中することを抑制できる。
【0026】
基板10の熱伝導率は、例えば、50W/m・K以上500W/m・K以下であり得る。そのような熱伝導率を有する基板10により、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、基板10を介して配置面に効果的に伝えることができる。
【0027】
基板10の熱膨張係数は、例えば10×10
-6[1/K]以上20×10
-6[1/K]以下であり得る。基板10の熱膨張係数が枠体40の熱膨張係数よりも高い場合、基板を枠体40に、ろう材のような無機接合部材を介して接合すると、前述したように、無機接合部材に加えられる熱が原因で、当該基板は上に凸に反る傾向にある。基板が可塑性を有する場合、押圧のような加工方法によって当該基板の上面に凹部を設けることにより、当該基板の反りが緩和され、
図1Cに示す基板10が得られる。凹部を設ける前の上面と比較して、凹部13の底面15の反りは低減され、より具体的には凹部13の底面15は平面状になる。
【0028】
基板10は、例えばCu、Al、およびAgからなる群から選択される少なくとも1つの金属材料から形成され得る。当該金属材料は、上記の熱伝導率および熱膨張係数を満たし、可塑性を有する。基板10のX方向における寸法は、例えば1mm以上10mm以下であり、Y方向における寸法は、例えば0.1mm以上5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば1mm以上20mm以下であり得る。
【0029】
<レーザ光源20>
レーザ光源20は、
図1Cに示すように、基板10の凹部13の底面15に配置される。また、レーザ光源20は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、サブマウント21と、端面出射型の半導体レーザ素子22と、レンズ支持部材23と、速軸コリメートレンズ24とを備える。レーザ光源20の構成要素を発光装置100の構成要素として扱ってもよい。
図5Aは、レーザ光源20の分解斜視図である。
図5Bは、レーザ光源20の、YZ平面に対して平行な断面図である。以下に、レーザ光源20の各構成要素を説明する。
【0030】
<サブマウント21>
サブマウント21は、
図5Aに示すように、XZ平面に対して平行である上面21s1および下面21s2を有する。上面21s1および下面21s2の各々には金属膜が設けられている。上面21s1に設けられた金属膜は、半導体レーザ素子22およびレンズ支持部材23をサブマウント21に接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。上面21s1に設けられた金属膜は、さらに、半導体レーザ素子22に電力を供給することに用いてもよい。下面21s2に設けられた金属膜は、
図1Cに示す基板10およびレーザ光源20を、接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。上面21s1および下面21s2の各々に設けられた金属膜は、駆動時に半導体レーザ素子22で発せられる熱を、サブマウント21を介して基板10に伝えることにも役立つ。
【0031】
サブマウント21は、例えば、
図1Cに示す枠体40と同様に、前述のセラミックスから形成され得る。サブマウント21は、例えば、
図1Cに示す基板10と同様に、前述の金属材料から形成され得る。サブマウント21の一部または全体は、例えば、AlN、SiC、アルミナ、CuW、Cu、Cu/AlN/Cuの積層構造、および金属マトリクス複合材料(Metal Matrics Compound:MMC)からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。MMCは、例えば、Cu、AgまたはAlからなる群から選択される少なくとも1つとダイヤモンドを含む。あるいは、サブマウント21の一部または全体は、他の一般的な材料から形成されていてもよい。
【0032】
サブマウント21の熱伝導率は、例えば10[W/m・K]以上800[W/m・K]以下であり得る。そのような熱伝導率を有するサブマウント21により、駆動中に半導体レーザ素子22から発せられた熱を効率的に基板10に伝えることができる。サブマウント21の熱膨張率は、例えば2×10-6[1/K]以上2×10-5[1/K]以下であり得る。そのような熱膨張率を有するサブマウント21により、サブマウント21に半導体レーザ素子22を、接合部材を介して接合する場合、当該接合部材に加えられた熱によってサブマウント21が変形する可能性を低減できる。
【0033】
サブマウント21は凹部13の底面15に配置される。
また、凹部13の外縁は、
図1Eに示すように、上面視で枠体40の内側にある。したがって、サブマウント21および基板10を接合部材で接合する場合、接合部材が加熱によって溶融した後冷却して固まる過程で、溶融した接合部材が枠体40まで流出する可能性を低減することができる。接合部材は、例えば、AuSn、SnCu、SnAg、およびSnAgCuからなる群から選択される少なくとも1つのはんだ材であり得る。
【0034】
また、押圧によって凹部13を設ける場合、
図1Gに示すように、凹部13の周囲に隆起部16が生じ得る。隆起部16が生じた場合でも、基板10および枠体40の接合強度に悪影響を及ぼすことはない。更に、隆起部16によって、溶融した接合部材が枠体40まで流出する可能性を低減することができる。
【0035】
なお、サブマウント21および基板10を焼結材で接合してもよい。焼結では、金属の粒子または金属の粉末を当該金属の融点よりも低い温度で加熱して焼き固めることにより、部材同士が接合される。焼結材は、例えば金属ペーストであり得る。金属ペーストは、有機バインダとその中に分散される複数の金属粒子とを有する。複数の金属粒子は、例えば、Ag粒子、Cu粒子、Au粒子、およびその他の貴金属粒子からなる群から選択される少なくとも1種類の金属粒子を含む。金属ペーストは柔軟性を有するので、金属ペースト中の複数の金属粒子を加熱によって焼結してサブマウント21および基板10を接合する際に、サブマウント21の位置を微調整することができる。
【0036】
<半導体レーザ素子22>
半導体レーザ素子22は、
図5Aに示すように、サブマウント21の上面21s1によって支持されている。すなわち、半導体レーザ素子22は、サブマウント21を介して、凹部13の底面15に配置される。
【0037】
半導体レーザ素子22は、上面視で矩形形状である。当該矩形形状は長辺および短辺を有する。半導体レーザ素子22の長辺の長さは、例えば1000μm以上10000μm以下であり得る。半導体レーザ素子22は、例えば、10W以上の高出力のレーザ光を出射することができる。半導体レーザ素子22は駆動時に多くの熱を発する。発せられる熱は、半導体レーザ素子22が長くなると多くなる。
図1Cに示すように、発光装置100を小型化する観点から、スペースの無駄が生じないよう基板10の長辺と半導体レーザ素子22の長辺とが互いに平行になるように、レーザ光源20は凹部13の底面15に配置される。その場合、底面15が平面状であることから、サブマウント21の下面は底面15に均一に接触するので、駆動時に、長く延びた半導体レーザ素子22から発せられた熱を、サブマウント21を介して基板10に効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0038】
半導体レーザ素子22は、ミラー部材30の反射面32に向けてレーザ光Lを出射するように配置される。半導体レーザ素子22の出射面が、X方向を長手方向とするXY平面に対して平行な平面である場合、半導体レーザ素子22から+Z方向に出射されたレーザ光Lは、YZ平面において相対的に速く広がり、XZ平面において相対的に遅く広がる。レーザ光Lの速軸方向はY方向に対して平行であり、遅軸方向はX方向に対して平行である。
【0039】
半導体レーザ素子22はサブマウント21によって底上げされるので、進行しながら広がるレーザ光Lをすべてミラー部材30の反射面32に入射させることができる。進行しながら広がるレーザ光Lは、反射面32で反射され、カバー50を透過する。
【0040】
基板10の上面12から凹部13の底面15までのY方向における距離は、半導体レーザ素子22の上面から凹部13の底面15までのY方向における距離よりも短い。基板10の上面12から凹部13の底面15までのY方向における距離は、半導体レーザ素子22の上面から半導体レーザ素子22の下面までのY方向における距離よりも短い。そのような距離の関係により、基板10の上面12に凹部13を設けても、凹部13を設けるために基板10の大きさを大幅に変更する必要がない。すなわち、発光装置100を大型化することなく、凹部13を設け、発光装置100の放熱性を向上することができる。
【0041】
ここで、基板10の上面12から凹部13の底面15までのY方向における距離は、基板11の上面12のうち、最も上方に位置する箇所から、凹部13の底面15のうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を意味する。半導体レーザ素子22の上面から凹部13の底面15までのY方向における距離は、半導体レーザ素子22の上面から、凹部13の底面15のうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を意味する。
【0042】
半導体レーザ素子22はZ方向に交差する2つの端面の一方に出射面22eを有し、出射面22eからレーザ光を+Z方向に出射する。レーザ光は、+Z方向に進行するにつれてYZ平面およびXZ平面において異なる速さで広がる。レーザ光は、YZ平面において相対的に速く広がり、XZ平面において相対的に遅く広がる。レーザ光のスポットは、コリメートしない場合、ファーフィールドで、XY平面においてY方向が長軸でありX方向が短軸である楕円形状である。
【0043】
レーザ光のうち、その進行方向に対して垂直な任意の面において、強度がピーク強度の1/e2以上である部分を主要部分とする。eは自然対数の底である。本明細書において、レーザ光の広がりは、レーザ光の主要部分の広がりを意味する。
【0044】
半導体レーザ素子22は、可視領域における紫色、青色、緑色もしくは赤色のレーザ光、または不可視領域における赤外もしくは紫外のレーザ光を出射し得る。紫色光の発光ピーク波長は、400nm以上420nm以下の範囲内にあることが好ましく、400nm以上415nm以下の範囲内にあることがより好ましい。青色光の発光ピーク波長は、420nmより大きく495nm以下の範囲内にあることが好ましく、440nm以上475nm以下の範囲内にあることがより好ましい。緑色光の発光ピーク波長は、495nmより大きく570nm以下の範囲内にあることが好ましく、510nm以上550nm以下の範囲内にあることがより好ましい。赤色光の発光ピーク波長は、605nm以上750nm以下の範囲内にあることが好ましく、610nm以上700nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0045】
紫色、青色および緑色のレーザ光を出射する半導体レーザ素子22としては、窒化物半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。窒化物半導体材料としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色のレーザ光を出射する半導体レーザ素子22としては、例えば、InAlGaP系、GaInP系、GaAs系、およびAlGaAs系の半導体材料を含むレーザダイオードが挙げられる。
【0046】
なお、端面出射型の半導体レーザ素子22の代わりに、VCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)素子のような面発光型の半導体レーザ素子を用いてもよい。面発光型の半導体レーザ素子は、当該半導体レーザ素子から出射されたレーザ光が+Z方向に進行するように配置される。あるいは、面発光型の半導体レーザ素子を、当該半導体レーザ素子から出射されたレーザ光が+Y方向に進行するように配置してもよい。その場合、後述するミラー部材30を設ける必要はない。
【0047】
<レンズ支持部材23>
レンズ支持部材23は、
図5Aに示すように、サブマウント21の上面21s1によって支持されている。レンズ支持部材23は、サブマウント21の前面または側面によって支持されるように、サブマウント21に配置されてもよい。レンズ支持部材23は、2つの柱状部分23aと、2つの柱状部分23aの間に位置し、2つの柱状部分23aを連結する連結部分23bとを有する。2つの柱状部分23aは半導体レーザ素子22の両側に位置し、連結部分23bは半導体レーザ素子22の出射面22e側の上方に位置する。レンズ支持部材23は、2つの柱状部分23aの端面23asによって速軸コリメートレンズ24を支持する。レンズ支持部材23は、半導体レーザ素子22を跨ぐように位置し、半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光が速軸コリメートレンズ24に入射することを妨げない。
【0048】
レンズ支持部材23は、例えば、
図1Cに示す枠体40と同様に、前述のセラミックスから形成され得る。レンズ支持部材23は、例えば、
図1Cに示すカバー50と同様に、前述の透光性材料から形成され得る。レンズ支持部材23は、例えば、コバールおよびCuWからなる群から選択される少なくとも1つの合金から形成され得る。レンズ支持部材23は、例えばSiから形成され得る。
【0049】
半導体レーザ素子22およびレンズ支持部材23はサブマウント21に配置されるので、半導体レーザ素子22および速軸コリメートレンズ24の相対的な位置関係は、レーザ光源20をどこに配置するかに関係なく固定される。したがって、当該位置関係にずれは生じない。
【0050】
<速軸コリメートレンズ24>
速軸コリメートレンズ24は、
図5Aに示すように、例えば、X方向に一様な断面形状のシリンドリカルレンズであり得る。速軸コリメートレンズ24は、光入射側に平面を有し、光出射側に凸曲面を有する。当該凸曲面は、YZ平面において曲率を有する。速軸コリメートレンズ24の焦点は、半導体レーザ素子22の出射面22e内の発光点の中心にほぼ一致する。
図5Bに示すように、速軸コリメートレンズ24は、半導体レーザ素子22の出射面22eから+Z方向に出射されたレーザ光をYZ平面において速軸方向にコリメートする。本明細書において、「コリメートする」とは、レーザ光Lを平行光にすることだけではなく、レーザ光Lの広がり角を低減することも意味する。
図5Bに示す破線によって囲まれた領域は、レーザ光の強度がそのピーク強度の1/e
2倍以上である領域を表す。速軸コリメートレンズ24は、例えば、ガラス、シリコン、石英、合成石英、サファイア、および透明セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。
【0051】
速軸コリメートレンズ24は、
図1Fに示すように、基板10の上面12とカバー50の下面54との間に位置し、かつレーザ光Lの光路上に位置する。速軸コリメートレンズ24は、基板10、枠体40、およびカバー50によって形成される封止空間の内部に配置されるので、レーザ光Lが大きく広がる前にレーザ光Lをコリメートすることができる。したがって、速軸コリメートレンズ24を小型にすることが可能になる。
【0052】
なお、速軸コリメートレンズ24の代わりに、半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光Lを、YZ平面だけでなくXZ平面においてもコリメートするコリメートレンズを用いてもよい。あるいは、速軸コリメートレンズ24の代わりに、半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光Lを集束する集光レンズを用いてもよい。
【0053】
上記のことから、平面状の底面15に配置されたレーザ光源20は、
図1Fに示すように、レーザ光Lを、底面15に対して平行な+Z方向に出射する。レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向が、厳密に+Z方向に対して平行でなくても、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向と、+Z方向とがなす角度の絶対値が0.5°以下であれば許容される。レーザ光源20から出射されたレーザ光Lは、YZ平面においてコリメートされているが、XZ平面においてコリメートされていない。 レーザ光源20に含まれる半導体レーザ素子22は、
図1Fに示すように、基板10、枠体40、およびカバー50によって封止されている。この封止は気密封止であることが好ましい。気密封止による効果は、半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光Lの波長が短くなるほど高くなる。気密封止されず、半導体レーザ素子22の出射面が外気に接している構成では、レーザ光Lの波長が短くなるほど、集塵によって動作中に出射面の劣化が進行していく可能性が高くなるからである。すなわち、半導体レーザ素子22を気密封止することにより、半導体レーザ素子22の出射面を集塵から保護することができる。
図1Cに示すように、発光装置100を小型化する観点から、スペースの無駄が生じないよう基板10の長辺と半導体レーザ素子22の長辺とが互いに平行になるように、レーザ光源20は凹部13の底面15に配置される。発光装置100を小型化することにより、気密封止が容易になる。
【0054】
<ミラー部材30>
ミラー部材30は、
図1Cに示すように、基板10の凹部13の底面15に配置される。また、ミラー部材30とレーザ光源20とは、基板10の長辺方向に並んで配置される。ミラー部材30は、X方向に一様な断面形状を有する。当該断面形状は概略的に三角形である。ミラー部材30は、下面と、背面と、下面および背面を繋ぐ斜面とを有する。下面はXZ平面に対して平行であり、背面はXY平面に対して平行である。当該斜面の法線方向は、YZ平面に対して平行な方向であって、+Y方向と鋭角をなし、かつ-Z方向と鋭角をなす方向である。ミラー部材30の下面と斜面とがなす角度は45°であるが、この角度に限定されず例えば30°以上60°以下であってもよい。
【0055】
ミラー部材30は、平面状の反射面32を有する。反射面32は基板10の上面12に対して傾斜し、斜め上方を向く。本明細書において、斜め上方とは、+Y方向と30°以上60°以下の角度をなす方向を意味する。反射面32がレーザ光源20から出射されたレーザ光Lを受けることができ、かつ、反射面32の法線方向が+Y方向と30°以上60°以下の角度をなす方向であれば、反射面32の法線方向は、YZ平面に対して平行であってもよいし、平行でなくてもよい。
【0056】
平面状の底面15に配置されたミラー部材30の反射面32は、
図1Fに示すように、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lを反射してレーザ光Lの進行方向を、基板10の上面12から離れる方向に変化させる。
図1Fに示す例において、基板10の上面12から離れる方向は、凹部13の底面15に対して垂直な+Y方向である。反射面32で反射されたレーザ光Lの進行方向が、厳密に+Y方向に対して平行でなくても、反射面32で反射されたレーザ光Lの進行方向と、+Y方向とがなす角度の絶対値が0.5°以下であれば許容される。
【0057】
本実施形態による発光装置100とは異なり、
図1Fに示す例において、基部60を前述の基部本体に置き換える場合、基部本体における基板の上面には凹部13が設けられないことから、当該基板反りは緩和されない。上に凸に沿った基板の上面にレーザ光源20およびミラー部材30を配置する場合、レーザ光源20と、ミラー部材30との相対的な位置関係がずれる。そのことが原因で、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向は+Z方向からずれ、レーザ光源20から出射され、ミラー部材30の反射面32で反射されたレーザ光Lの進行方向は+Y方向からずれる。その結果、発光装置の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向は、設計上の進行方向である+Y方向からずれてしまう。
【0058】
これに対して、本実施形態による発光装置100では、凹部13の平面状の底面15にレーザ光源20およびミラー部材30を配置することにより、レーザ光源20と、ミラー部材30との相対的な位置関係のずれが低減される。したがって、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向と+Z方向とのずれは低減され、レーザ光源20から出射され、ミラー部材30の反射面32で反射されたレーザ光Lの進行方向と+Y方向とのずれは低減される。その結果、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向と、設計上の進行方向である+Y方向とのずれを低減することが可能になる。なお、設計上の進行方向は+Y方向に限られず、任意の方向である。
【0059】
ミラー部材30は、例えば、斜面を有する台と、斜面に設けられた反射面とを備える。台は、例えば、ガラス、石英、合成石英、サファイア、セラミックス、シリコン、金属、および誘電体材料からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。反射面は、例えば、誘電体多層膜および金属材料などの反射性材料から形成され得る。当該反射面が反射面32に相当する。
【0060】
あるいは、ミラー部材30は、例えば、斜面を有する台を備え、当該台が上記の反射性材料から形成されていてもよい。この場合、当該台の斜面が反射面32に相当する。
【0061】
<枠体40>
枠体40は、
図1Bに示すように基板10の上面12の周囲に位置し、
図1Aに示すようにカバー50を支持する。枠体40は、
図1Bに示すように、上面視でレーザ光源20およびミラー部材30を囲む。枠体40は、
図1Cに示すように、内側面から内側に突出した突出部43を有する。
図1Eに示す例において、突出部43は、サブマウント21の両側面および背面に向けて突出している。突出部43は、さらに、サブマウント21の正面に向けて突出していてもよい。また、突出部43は、両側面にのみ突出していてもよい。サブマウント21の正面は、半導体レーザ素子22の出射面と同じ側に位置し、サブマウント21の背面は、半導体レーザ素子22の出射面とは反対側に位置する。サブマウント21の両側面は、サブマウント21の正面および背面を繋ぐ。
【0062】
枠体40は、
図1Cに示すように、第1上面42aと、第2上面42bとを有する。第2上面42bは突出部43の上面であり、第1上面42aよりも下方に位置し、上面視で第1上面42aによって囲まれる。
図1Eに示す例において、第2上面42bは概略的にU字形状である。
【0063】
第1上面42aには、第1接合領域46a、および第1接合領域46aを囲む外側領域47が設けられている。第1接合領域46aおよび外側領域47は概略的に矩形環状の形状である。第1接合領域46aは、カバー50および枠体40を、はんだ材のような接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。外側領域47は、カバー50を接合する接合部材が外側領域47を越えて流れ出る可能性を低減する。第1接合領域46aおよび外側領域47は、
図1Eに示すように、上面視で、レーザ光源20およびミラー部材30を囲む。第1上面42aには、さらに、第1接合領域46aおよび外側領域47よりも-Z方向において、互いに電気的に絶縁された第1導電領域48aおよび第2導電領域48bが設けられている。
【0064】
第2上面42bには、互いに電気的に絶縁された第3導電領域48cおよび第4導電領域48dが設けられている。第3導電領域48cは、内部配線を介して第1導電領域48aに電気的に接続されている。第4導電領域48dは、内部配線を介して第2導電領域48bに電気的に接続されている。
図1Eに示すように、上面視で、レーザ光源20およびミラー部材30は、第3導電領域48cのZ方向に延びる部分と、第4導電領域48dのZ方向に延びる部分との間に位置する。第3導電領域48cは、サブマウント21の上面および一部のワイヤ41を介して、半導体レーザ素子22に電気的に接続されている。第4導電領域48dは、残りのワイヤ41を介して、半導体レーザ素子22に電気的に接続されている。したがって、第1導電領域48aと第2導電領域48bとの間に電圧を印加することにより、レーザ光源20に給電することができる。
【0065】
枠体40は、さらに、
図1Dに示すように、第1下面44aと、第2下面44bとを有する。第2下面44bは突出部43の下面を部分的に有し、第1下面44aよりも上方に位置し、-Y方向から見る下面視で第1下面44aによって囲まれる。第2下面44bは概略的に矩形環状の形状である。
図1Cに示す基板10の一部または全部は、第1下面44aと第2下面44bとの段差によって囲まれた空間に収容される。枠体40を透過して見たとき、第2下面44bの外周は、上面視で、基板10の上面12の外周を囲み、第2下面44bの内周は、上面視で、基板10の上面12の外周によって囲まれる。
【0066】
枠体40は、
図1Dに示すように、第1上面42aから第1下面44aに貫通する開口部45を有する。開口部45は、内側面の下面側に、段に相当する第2下面44bを有する。第2下面44bの全体には、第2接合領域46bが設けられている。基板10の上面12の周縁領域は、段に設けられた第2接合領域46bに、ろう材のような無機接合部材を介し接合される。ろう材としては、例えば、銀ろうが挙げられる。第2接合領域46bは、基板10および枠体40を、無機接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。ろう材の融点は、はんだ材の融点よりも高い。したがって、ろう材を加熱して基板10および枠体40を接合し、次に、はんだ材を加熱して基板10およびレーザ光源20を接合する場合、はんだ材に加えられる熱が原因で基板10および枠体40の接合が外れる可能性を低減できる。なお、無機接合部材として、例えば、AuSn、Auペースト、Agペーストを用いてもよい。
【0067】
図1Dに示す例において、第2下面44bの全体に第2接合領域46bが設けられているが、この例に限られない。第2下面44bの一部に第2接合領域46bが設けられていてもよい。
【0068】
枠体40の第1下面44aは、
図1Fに示すように、基板10の下面14よりも高い位置にある。言い換えれば、基板10の上面12から基板10の下面14までのY方向における距離は、基板10の上面12から枠体40の第1下面44aまでのY方向における距離よりも長い。ここで、基板10の上面12から基板10の下面14までのY方向における距離は、基板10の上面12のうち、最も上方に位置する箇所から、基板10の下面14のうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を意味する。基板10の上面12から枠体40の第1下面44aまでのY方向における距離は、基板10の上面12のうち、最も上方に位置する箇所から、枠体40の第1下面44aのうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を意味する。
【0069】
発光装置100を平面状の配置面に配置する場合、基板10の下面14は当該配置面によって支持される。基板10の下面14は、当該配置面に、例えば、はんだ材のような接合部材を介して接合される。基板10の下面14が平面状である場合、下面14の全体が接合部材を介して配置面に均一に接触するので、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、基板10を介して配置面に効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。下面14の全体が接合部材を介して配置面に均一に接触するので、発光装置100を安定に配置することもできる。さらに、発光装置100を平面状の配置面に配置する場合、凹部13の底面15は基板10の下面14に対して平行であるので、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向と、設計上の進行方向である+Y方向とのずれをより効果的に低減することができる。
【0070】
なお、枠体40の第1下面44aは、基板10の下面14と同一平面に位置してもよい。言い換えれば、基板10の上面12から基板10の下面14までのY方向における距離は、基板10の上面12から枠体40の第1下面44aまでのY方向における距離と同じであってもよい。あるいは、無機接合部材を介して基板10を配置面に接合する際に妨げにならないのであれば、枠体40の第1下面44aは、基板10の下面14よりも低い位置にあってもよい。言い換えれば、基板10の上面12から基板10の下面14までのY方向における距離は、基板10の上面12から枠体40の第1下面44aまでのY方向における距離よりも短くてもよい。枠体40の第1下面44aが、基板10の下面14よりも低い位置にある場合は、基板10の下面14のみが配置面に接触していることが好ましい。当該配置面は、上面視で、基板10の下面14に重なる一方、枠体40の第1下面44aには重ならない。
【0071】
枠体40の第1下面44aが、基板10の下面14よりも低い位置にある場合でも基板10の下面14が配置面に接触していることから、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、基板10を介して配置面に効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。さらに、枠体40の第1下面44aが、基板10の下面14よりも低い位置にある場合でも基板10の下面14のみが配置面に接触していることから、凹部13の底面15は当該配置面に対して平行になる。したがって、基板10の押圧によってレーザ光Lの進行方向のずれを低減するという効果を十分に発揮できる。
【0072】
枠体40は、例えば、AlN、SiN、SiC、およびアルミナからなる群から選択されるセラミックスから形成され得る。枠体40の熱膨張係数は、例えば、2×10-6[1/K]以上15×10-6[1/K]以下であり得る。枠体40のX方向における寸法は、例えば3mm以上30mm以下であり、Y方向における最大の寸法は、例えば1mm以上5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば3mm以上30mm以下であり得る。
【0073】
第1接合領域46a、第2接合領域46b、外側領域47、および導電領域48a~48d、は、例えば、Ag、Cu、W、Au、Ni、Pt、およびPdからなる群から選択される少なくとも1つの金属材料から形成され得る。第1接合領域46a、外側領域47、および導電領域48a~48dは、例えば、第1上面42a、第2上面42bの全体に金属膜を設け、当該金属膜をエッチングによってパターニングすることにより、形成され得る。
【0074】
<カバー50>
カバー50は、
図1Cに示す枠体40の第1上面42aによって支持される。カバー50は、
図1Bに示すように、上面52と、下面54とを有する。カバー50の下面54は基板10の上面12に対向し、カバー50の上面52はカバー50の下面54の反対側に位置する。カバー50の下面54は基板10の上面12に対向するので、「対向面」と称してもよい。カバー50は、レーザ光源20、より具体的には半導体レーザ素子22の上方に位置する。カバー50は、さらに、ミラー部材30の上方に位置する。
【0075】
カバー50は、反射面32で反射されたレーザ光Lを透過させる。より具体的には、カバー50は、
図1Cに示すように透光部分56を有し、透光部分56は、反射面32で反射されたレーザ光Lを透過させる。
【0076】
カバー50は、レーザ光Lが透過する透光領域を除く箇所に遮光膜58を有していてもよい。
図1Cに示す例においては、カバー50は、下面54のうち、レーザ光Lが透過する透光領域の少なくとも周囲に遮光膜58を有する。当該透光領域は透光部分56の下面に相当する。
図1Cに示す例において、透光領域は矩形であるが、この形状に限定されない。透光領域の形状は、例えば、円形であってもよいし、楕円形であってもよい。なお、遮光膜58は、カバー50の上面52に設けられていてもよい。
【0077】
遮光膜58は、発光装置100の内部で生じるレーザ光L以外の迷光が発光装置100の外部に漏れる可能性を低減する。遮光膜58は、さらに、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの戻り光がレーザ光源20に到達する可能性を低減する。戻り光による照射を低減できれば、レーザ光源20は損傷しにくくなる。
【0078】
図1Cに示す例において、遮光膜58は、下面54のうち、透光部分56の下面以外の領域の全体に設けられている。そのように設けられた遮光膜58は、上記の迷光が発光装置100の外部に漏れる可能性、および上記の戻り光がレーザ光源20に到達する可能性をさらに低減する。
【0079】
カバー50のうち、レーザ光Lを透過させる透光部分56は、レーザ光Lに対して、例えば60%以上の透過率を有し、好ましくは80%以上の透過率を有し得る。カバー50のうち、残りの部分はそのような透光性を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0080】
カバー50は、例えば、ガラス、シリコン、石英、合成石英、サファイア、および透明セラミックスからなる群から選択される少なくとも1つの透光性材料から形成され得る。カバー50のX方向における寸法は、例えば3mm以上15mm以下であり、Y方向における寸法は、例えば0.1mm以上1.5mm以下であり、Z方向における寸法は、例えば1mm以上20mm以下であり得る。
【0081】
遮光膜58は、例えば、第1接合領域46a、第2接合領域46b、外側領域47、および導電領域48a~48dと同様に、前述の金属材料から形成され得る。遮光膜58は、第1接合領域46a、第2接合領域46b、外側領域47、および導電領域48a~48dと同様に、例えば、カバー50の下面54の全体に金属膜を設け、当該金属膜をエッチングによってパターニングすることにより、形成され得る。
【0082】
遮光膜58の周縁領域は、枠体40の第1上面42aに設けられた第1接合領域46aに、はんだ材のような接合部材を介して接合される。遮光膜58が上記の金属材料から形成される場合、遮光膜58は、カバー50および枠体40を、接合部材を介して接合する際に、接合強度を向上させる。
【0083】
なお、
図1Aから
図1Cに示す例において、カバー50は平板形状であるが、この形状に限定されない。発光装置100において、カバー50は下部が開放された箱形状であってもよい。そのような形状の場合、枠体40およびカバー50は、カバー50の下面を枠体40の第1上面42aによって支持するように接合される。
【0084】
以上のことから、本実施形態による発光装置100では、発光装置100を小型化する観点から、スペースの無駄が生じないよう半導体レーザ素子22の長辺と基板10の長辺とが互いに平行になるように、レーザ光源20は凹部13の底面15に配置される。その場合、底面15が平面状であることから、サブマウント21の下面は底面15に均一に接触するので、駆動時に、長く延びた半導体レーザ素子22から発せられる熱を、サブマウント21を介して基板10に効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0085】
さらに、本実施形態による発光装置100では、発光装置100を平面状の配置面に配置する場合、基板10の平面状の下面14の全体が接合部材を介して配置面に均一に接触するので、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、基板10を介して配置面に効果的に伝えることができる。基板10の平面状の下面14の全体が接合部材を介して配置面に均一に接触するので、発光装置100を安定に配置することもできる。
【0086】
さらに、本実施形態による発光装置100では、凹部13の平面状の底面15にレーザ光源20およびミラー部材30を配置することにより、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向と、+Z方向とのずれを低減し、反射面32で反射されたレーザ光Lの進行方向と、+Y方向とのずれを低減することができる。その結果、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向と、設計上の進行方向である+Y方向とのずれを低減することが可能になる。
【0087】
さらに、本実施形態による発光装置100では、発光装置100を平面状の配置面に配置する場合、凹部13の底面15および基板10の下面14が互いに平行であるので、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向と、設計上の進行方向である+Y方向とのずれをより効果的に低減することが可能になる。
【0088】
なお、本実施形態による発光装置100は、カバー50の上面52に配置された他のミラー部材をさらに備えてもよい。他のミラー部材の反射面は、反射面32で反射され、カバー50を透過したレーザ光Lを+Y方向とは異なる方向に反射する。+Y方向とは異なる方向とは、例えば+Z方向であり得る。本実施形態による発光装置100は、
図1Bに示すカバー50の上面52に配置された遅軸コリメートレンズをさらに備えてもよい。遅軸コリメートレンズは、反射面32で反射され、カバー50を透過したレーザ光Lを、XY平面において遅軸方向にコリメートする。あるいは、本実施形態による発光装置100は、カバー50の上面52に配置された他のミラー部材および遅軸コリメートレンズの両方をさらに備えてもよい。他のミラー部材の反射面は、反射面32で反射され、カバー50を透過したレーザ光Lを+Y方向とは異なる方向に反射する。遅軸コリメートレンズは、他のミラー部材の反射面で反射されたレーザ光を遅軸方向にコリメートする。
【0089】
(発光装置100の変形例)
次に、
図2Aおよび
図2Bを参照して、本実施形態による発光装置100の変形例を説明する。
図2Aは、本実施形態による発光装置100の変形例の構成を模式的に示す、YZ平面に対して平行な断面図である。
図2Aに示す発光装置110が本実施形態による発光装置100とは異なる点は、発光装置110が、基板10に代えて基板10Vを備えることである。本明細書において、基板10Vおよび枠体40が接合された構成を「基部60V」とも称する。
図2Bは、
図2Aに示す発光装置110に用いられる基部60Vの構成の上面図である。
【0090】
基板10Vは、
図2Aに示すように、上面12および下面14を有する。上面12には、底面15を有する凹部13が設けられている。凹部13の底面15は、レーザ光源20が配置される第1底面15aと、ミラー部材30が配置される第2底面15bとを有する。実施形態とその変形例との差異は、凹部13の第2底面15bの有無である。第2底面15b以外の構成については、前述した通りである。
【0091】
基板10の下面14を高さの基準として、第2底面15bは第1底面15aよりも低い位置にある。したがって、底面15は、第1底面15aと第2底面15bとの間に形成された段差を有する。凹部13、より具体的には、凹部13のうち、第1底面15aの外縁は、上面視で角が丸まった矩形形状である。凹部13の内側にある第2底面15bの外縁についても同様である。凹部13の角が丸まっていることにより、凹部13の角付近への応力の集中を抑制できる。基板10Vの下面14は、
図1Cに示す基板10の下面14と同じである。
【0092】
基板10Vの下面14を高さの基準として、上面12における最も上方に位置する箇所から、第1底面15aのうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を凹部13の第1の深さとすると、凹部13の第1の深さは、例えば、5μm以上30μm以下であり得る。基板10Vの下面14を高さの基準として、上面12における最も上方に位置する箇所から、第2底面15bのうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を凹部13の第2の深さとすると、凹部13の第2の深さは、例えば、5μm以上50μm以下であり得る。第1底面15aおよび第2底面15bは平面状であり、互いに平行である。底面15は、第1底面15aと第2底面15bとの間に段差を有するが、第1底面15aおよび第2底面15bにおいて平面状の領域を有する。第1底面15aおよび第2底面15bと同様に、基板10Vの下面14は平面状である。基板10Vの下面14は、全体に平面状の領域を有する。第1底面15aおよび第2底面15bは、基板10Vの下面14に対して平行である。底面15における平面状の領域である第1底面15aおよび第2底面15bの平面度は、例えば10μm以下であり、下面14の平面度は、例えば20μm以下である。
【0093】
図2Bに示すように、上面視で、第2底面15bは第1底面15aに囲まれる。その場合、第2底面15bがどの位置にあるのかが確認しやすく、ミラー部材30を第2底面15bに配置しやすい。
図2Bに示す例において、第2底面15bのX方向における寸法は、第1底面15aのX方向における寸法よりも小さいが、両者の寸法の大小関係はこの例に限定されない。第2底面15bのX方向における寸法は、第1底面15aのX方向における寸法と同じであってもよい。第2底面15bが、凹部13をX方向に横切るように設けられていてもよい。その場合、上面視で、第2底面15bは、第1底面15aのうち、第2底面15bよりも+Z方向に位置する一部と、第2底面15bよりも-Z方向に位置する残りの部分とによって挟まれてもよい。その場合でも、第2底面15bがどの位置にあるのかが確認しやすく、ミラー部材30を第2底面15bに配置しやすい。なお、第1底面15aのうち、第2底面15bよりも+Z方向に位置する一部はなくてもよい。
【0094】
発光装置110では、第2底面15bを第1底面15aよりも低くすることにより、第2底面15bを設けない発光装置100と比較して、ミラー部材30をより低い位置に配置することができる。その結果、レーザ光源20に含まれるサブマウント21の厚さをより小さくしても、半導体レーザ素子22から出射されたレーザ光Lを反射面32に入射させることができる。サブマウント21の厚さをより小さくできるので、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、サブマウント21を介して基板10により効果的に伝えることができ、当該熱を、基板10を介して配置面により効果的に伝えることが可能になる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0095】
さらに、発光装置110では、平面状であり互いに平行である第1底面15aおよび第2底面15bのうち、第1底面15aにレーザ光源20が配置され、第2底面15bにミラー部材30が配置される。したがって、レーザ光源20から出射されたレーザ光Lの進行方向と+Z方向とのずれを低減でき、反射面32で反射されたレーザ光Lの進行方向と+Y方向とのずれを低減できる。その結果、発光装置110の外部に出射されたレーザ光Lと、設計上の進行方向である+Y方向とのずれを低減することが可能になる。第1底面15a、第2底面15b、および下面14が平面状であり、互いに平行である場合、発光装置110の外部に出射されたレーザ光Lと、設計上の進行方向である+Y方向とのずれをより効果的に低減することが可能になる。発光装置110において基板10Vの下面14が平面状であることによって得られる効果は、本実施形態による発光装置100において下面14が平面状であることによって得られる効果と同じである。
【0096】
(発光装置の製造方法)
以下に、
図3Aから
図3Cを参照して、本実施形態による発光装置100に用いられる基部60の製造方法を説明する。
図3Aから
図3Cは、本実施形態による発光装置100に用いられる基部60の製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【0097】
最初の工程において、
図3Aに示すように、基板11および枠体40が接合された基部本体61が用意される。基板11は、上面12および下面14を有する。枠体40は、基板11の上面12の周囲に位置する。基板11の材料は、
図1Cに示す基板10の材料と同じである。枠体40の材料については前述した通りである。前述したように、基板11および枠体40を、ろう材のような無機接合部材を介して接合する場合、基板11の熱膨張係数が枠体40の熱膨張係数よりも高いと、無機接合部材に加えられる熱が原因で、基板11は、
図3Aに示すように、短辺方向よりも長辺方向において上に凸に反る傾向にある。
【0098】
次の工程において、基部本体61は、
図3Bに示すように、プレス装置70に配置される。プレス装置70は、上面72を有するステージ70aと、下端74を有し、Y方向に沿って延びる押圧部70bと、押圧部70bを支持し、Y方向に沿って移動する支持部材70cとを備える。ステージ70aの上面72および押圧部70bの下端74はXZ平面に対して平行な平面状であり、かつ互いに平行である。基部本体61のうち、基板11の下面14の少なくとも一部は、ステージ70aの上面72に接触する。これは、基板11の上面12から基板11の下面14までのY方向における距離が、基板11の上面12から枠体40の第1下面44aまでのY方向における距離よりも長いからである。ここで、基板11の上面12から基板11の下面14までのY方向における距離は、基板11の上面12のうち、最も上方に位置する箇所から、基板11の下面14のうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を意味する。基板11の上面12から枠体40の第1下面44aまでのY方向における距離は、基板11の上面12のうち、最も上方に位置する箇所から、枠体40の第1下面44aのうち、最も下方に位置する箇所までのY方向における距離を意味する。
【0099】
次の工程において、基板11の上面12は、
図3Cに示すように、押圧部70bの下端74によって押圧される。この押圧は、例えば、上面視で枠体40の穴を画像認識し、押圧部70bの下面視における下端74の中心が穴の中心に一致するように行われる。その結果、底面15を有する凹部13が上面12に形成されて、基板10が得られる。
図3Bに示す基板11はステージ70aと押圧部70bとによって挟まれて
図3Cに示す基板10になる。凹部13の形状は押圧部71bの下端74によって決まり、基板10の下面14の形状はステージ70aの上面72によって決まる。押圧により、凹部13の底面15および基板10の下面14はXZ平面に対して平行な平面状になり、かつ互いに平行になる。凹部13の底面15の平面度は押圧部70bの下端74の平面度に依存し、基板10の下面14の平面度はステージ70aの上面72の平面度に依存する。
【0100】
なお、上記の押圧により、
図1Gに示すように、基板10の上面12のうち、押圧部70bの下端74と接触しない部分が少し上方に押し上げられて隆起部16が生じ得る。隆起部16により、凹部13の形状の視認性が向上するので、凹部13の底面15にレーザ光源20およびミラー部材30を配置しやすくなる。
【0101】
以上の工程により、本実施形態による発光装置100に用いられる基部60を製造することができる。本実施形態による発光装置100の製造方法は、上記の基部60の製造工程に加えて、凹部13の底面15に、
図1Fに示すようにレーザ光源20を、より具体的にはサブマウント21を介して半導体レーザ素子22を配置する工程を含む。当該製造方法は、さらに、凹部13の底面15に、
図1Fに示すようにミラー部材30を配置する工程を含む。レーザ光源20の代わりに、レーザ光Lを+Y方向に出射する面発光型の半導体レーザ素子を底面15に配置する場合、ミラー部材30を配置する工程を省略できる。
【0102】
プレス装置70によって基板10の上面12に凹部13を設けるという上記の簡単な工程により、凹部13の底面15が平面状になる。その結果、前述したように、サブマウント21の下面は底面15に均一に接触するので、発光装置100の駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、サブマウント21を介して基板10に効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0103】
さらに、プレス装置70によって基板10の上面12に凹部13を設けるという上記の簡単な工程により、基板10の下面14が平面状になる。その結果、前述したように、発光装置100を平面状の配置面に配置する場合、基板10の下面14の全体が接合部材を介して配置面に均一に接触するので、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、基板10を介して配置面に効果的に伝えることができる。このことも、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0104】
さらに、凹部13の平面状の底面15にレーザ光源20およびミラー部材30を配置することにより、前述したように、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向と、設計上の進行方向とのずれを低減することができる。
【0105】
次に、
図4Aおよび
図4Bを参照して、本実施形態による発光装置100の変形例に用いられる基部60Vの製造方法を説明する。
図4Aおよび
図4Bは、本実施形態による発光装置100の変形例に用いられる基部60Vの製造方法の工程の例を説明するための、YZ平面に対して平行な断面図である。
【0106】
前述の基部本体61を用意した後の工程において、基部本体61は、
図4Aに示すように、プレス装置70Vに配置される。プレス装置70Vは、
図3Bに示す押圧部70bの代わりに、押圧部71bを備える。押圧部71bの下端74は、第1下端74aと、第2下端74bとを有する。ステージ70aの上面72を高さの基準として、第2下端74bは第1下端74aより低い位置にある。ステージ70aの上面72ならびに押圧部70bの第1下端74aおよび第2下端74bは、XZ平面に対して平行な平面状であり、かつ互いに平行である。第2下端74bのX方向における寸法は、第1下端74aのX方向における寸法よりも小さく、第2下端74bは、下面視で、第1下端74aによって囲まれてもよい。あるいは、第2下端74bのX方向における寸法は、第1下端74aのX方向における寸法と同じであり、第2下端74bは、下面視で、第1下端74aのうち、第2下端74bよりも+Z方向に位置する一部と、第2下端74bよりも-Z方向に位置する残りの部分とによって挟まれてもよい。
【0107】
次の工程において、
図4Bに示すように、プレス装置70Vにより、基板11の上面12が、押圧部71bの下端74によって押圧される。その結果、上面12に凹部13が形成された基板10Vが得られる。凹部13の形状は、押圧部71bの下端74の形状によって決まる。凹部13の底面15は、第1底面15aと、第2底面15bとを有する。基板10Vの下面14を高さの基準として、第2底面15bは、第1底面15aよりも低い位置にある。押圧により、凹部13の第1底面15a、第2底面15b、および基板10Vの下面14は、XZ平面に対して平行な平面状になり、互いに平行になる。凹部13の第1底面15aの平面度は押圧部70bの第1下端74aの平面度に依存し、凹部13の第2底面15bの平面度は押圧部70bの第2下端74bの平面度に依存する。基板10Vの下面14の平面度は、
図3Bに示す基板10の下面14の平面度と同様に、ステージ70aの上面72の平面度に依存する。
【0108】
以上の工程により、本実施形態による発光装置100の変形例に用いられる基部60Vを製造することができる。なお、本実施形態による発光装置100に用いられる基部60を製造した後に、凹部13の底面15の一部を、他の押圧部によって押圧してもよい。押圧により、底面15は第1底面15aおよび第2底面15bを有するので、本実施形態による発光装置100の変形例に用いられる基部60Vが得られる。
【0109】
本実施形態による発光装置100の変形例の製造方法は、上記の基部60Vの製造工程に加えて、凹部13の底面15に、より具体的には第1底面15aに、
図2Aに示すようにレーザ光源20を配置する工程を含む。本実施形態による発光装置100の変形例の製造方法は、さらに、凹部13の底面15に、より具体的には第2底面15bに、
図2Aに示すようにミラー部材30を配置する工程を含む。
【0110】
プレス装置70によって基板10の上面12に凹部13を設けるという上記の簡単な工程により、互いに高さが異なる平面状の第1底面15aおよび第2底面15bが得られる。基板10Vの下面14を高さの基準として、相対的に高い第1底面15aにはレーザ光源20が配置され、相対的に低い第2底面15bにはミラー部材30が配置される。その結果、前述したように、サブマウント21の厚さをより小さくできるので、駆動時に半導体レーザ素子22から発せられる熱を、サブマウント21を介して基板10により効果的に伝えることができる。このことは、発光装置100の放熱性の向上に役立つ。
【0111】
さらに、平面状であり互いに平行である第1底面15aおよび第2底面15bのうち、第1底面15aにレーザ光源20が配置され、第2底面15bにミラー部材30が配置される。したがって、前述したように、発光装置100の外部に出射されたレーザ光Lの進行方向と、設計上の進行方向とのずれを低減することができる。
【0112】
本開示は、以下の項目に記載の発光装置を含む。
[項目1]
上面を有し、前記上面に、平面状の領域を含む底面を有する凹部が設けられる、金属材料から形成された基板と、
前記凹部の前記底面に配置されるサブマウントと、
前記サブマウントに配置され、レーザ光を出射する半導体レーザ素子と、
前記サブマウントに配置されるレンズ支持部材と、
前記レンズ支持部材によって支持され、前記半導体レーザ素子から出射される前記レーザ光をコリメートまたは集束するレンズと、
前記半導体レーザ素子を囲む、セラミックスから形成された枠体と、
を備え、
前記基板および前記半導体レーザ素子は上面視で矩形形状であり、前記矩形形状は長辺および短辺を有し、
前記基板の長辺と前記半導体レーザ素子の長辺とは互いに平行である、発光装置。
[項目2]
前記半導体レーザ素子の長辺の長さは1500μm以上である、項目1に記載の発光装置。
[項目3]
前記凹部は、上面視で角が丸まった矩形形状である、項目1または2に記載の発光装置。
[項目4]
前記基板は、前記上面の反対側に位置する平面状の下面を有する、項目1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目5]
前記凹部の前記底面に配置され、前記レーザ光を反射して前記レーザ光の進行方向を前記上面から離れる方向に変化させるミラー部材をさらに備える、項目1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目6]
前記凹部の外縁は、上面視で、前記枠体の内側に存在する、項目1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目7]
前記凹部の前記底面および前記基板の下面は互いに平行である、項目1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目8]
前記基板の前記上面と、前記凹部の前記底面との距離は、前記半導体レーザ素子の上面と、前記凹部の前記底面との距離よりも小さい、項目1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目9]
前記基板の前記上面と、前記凹部の前記底面との距離は、前記半導体レーザ素子の上面と、前記半導体レーザ素子の下面との距離よりも小さい、項目1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目10]
前記凹部の前記底面における前記平面状の領域の平面度は10μm以下であり、
前記基板の下面の平面度は50μm以下である、項目1から9のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目11]
前記凹部の前記底面は、前記半導体レーザ素子を支持する第1底面と、前記ミラー部材を支持する第2底面とを有し、
前記基板の下面を高さの基準として、前記第2底面は前記第1底面よりも低い位置にある、項目5に記載の発光装置。
[項目12]
前記基板の前記上面から前記基板の下面までの距離は、前記基板の前記上面から前記枠体の下面までの距離よりも長い、項目11に記載の発光装置。
[項目13]
前記第1底面および前記第2底面は平面状であり、互いに平行である、項目11または12に記載の発光装置。
[項目14]
前記基板の前記上面から前記基板の下面までの距離は、前記基板の前記上面から前記枠体の下面までの距離よりも長い、項目1から10のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目15]
前記枠体は上面から下面に貫通する開口部を有し、前記開口部は内側面の下面側に段を有し、
前記基板の上面の周縁領域は前記段に接合される、項目1から14のいずれか1項に記載の発光装置。
[項目16]
前記基板の上面の周縁領域および前記段は、無機接合部材を介して接合される、項目15に記載の発光装置。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示の発光装置は、例えば、レーザ加工機、プロジェクタ、および照明光源などの装置に利用され得る。
【符号の説明】
【0114】
10、10V、11:基板 12:基板の上面 13:凹部 14:基板の下面 15:凹部の底面 15a:凹部の第1底面 15b:凹部の第2底面 16:隆起部 20:レーザ光源 21:サブマウント 21s1:サブマウントの上面 21s2:サブマウントの下面 22:半導体レーザ素子 22e:出射面 23:レンズ支持部材 23a:柱状部分 23as:端面 23b:連結部分 24:速軸コリメートレンズ 30:ミラー部材 32:反射面 40:枠体 41:ワイヤ 42a:枠体の第1上面 42b:枠体の第2上面 43:突出部 44a:枠体の第1下面 44b:枠体の第2下面 45:開口部 46a:第1接合領域 46b:第2接合領域 47:外側領域 48a:第1導電領域 48b:第2導電領域 48c:第3導電領域 48d:第4導電領域 50:カバー 52:カバーの上面 54:カバーの下面 56:透光部分 58:遮光膜 60、60V:基部 61:基部本体 70、70V:プレス装置 70a:ステージ 70b、71b:押圧部 70c:支持部材 72:ステージの上面 74:押圧部の下端 74a:押圧部の第1下端 74b:押圧部の第2下端 100、110:発光装置 L:レーザ光