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  • 特開-振動提示装置、および振動提示方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009080
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】振動提示装置、および振動提示方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111837
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 淳司
(72)【発明者】
【氏名】駒▲崎▼ 掲
(72)【発明者】
【氏名】田中 由浩
(72)【発明者】
【氏名】久原 拓巳
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA61
5E555AA64
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC01
5E555BD07
5E555CA44
5E555CA47
5E555CB66
5E555CB68
5E555CB73
5E555CB78
5E555CC30
5E555DA13
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA05
5E555EA07
5E555EA08
5E555EA09
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】部位数に依存して伝送容量が多くなることなく、地点Aにおける身体の複数の部位の振動を地点Bで再現する。
【解決手段】振動提示装置20は、入力された時間振動波形に対応する振動を提示する第1部位用振動提示部22と、入力された時間振動波形に対応する振動を提示する第2部位用振動提示部23と、第1人の第1部位の振動の時間振動波形と、第1人の第2部位の振動の時間振動波形と、が、混合されて地点Aから地点Bに伝送された時間振動波形である混合時間振動波形を、第1部位用振動提示部22と第2部位用振動提示部23に入力する提示信号生成部21と、第2人の第1部位もしくは第2人の第1部位の近傍と、第2人の第2部位もしくは第2人の第2部位の近傍と、の少なくとも何れかに、第2人の注意を誘導するための提示として振動以外の情報の提示を行う誘導情報提示部24と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある地点を地点Aとし、
前記地点Aとは異なるある地点を地点Bとし、
人の身体のある所定の部位を第1部位とし、
人の身体の前記第1部位とは異なる所定の部位を第2部位とし、
ある人を第1人とし、
前記第1人と異なるある人を第2人として、
前記地点Aにいる第1人の前記第1部位と前記第2部位の間で関連性を有して発生した振動を、前記地点Bにいる第2人に知覚させるための振動提示装置であって、
前記第2人の前記第1部位に振動を提示するためのものであって、入力された時間振動波形に対応する振動を提示する第1部位用振動提示部と、
前記第2人の前記第2部位に振動を提示するためのものであって、入力された時間振動波形に対応する振動を提示する第2部位用振動提示部と、
を含み、更に、
前記第1人の前記第1部位の振動の時間振動波形と、前記第1人の前記第2部位の振動の時間振動波形と、が、混合されて前記地点Aから前記地点Bに伝送された時間振動波形である混合時間振動波形を、前記第1部位用振動提示部と前記第2部位用振動提示部に入力する提示信号生成部と、
前記第2人の前記第1部位もしくは前記第2人の前記第1部位の近傍と、前記第2人の前記第2部位もしくは前記第2人の前記第2部位の近傍と、の少なくとも何れかに、前記第2人の注意を誘導するための提示として振動以外の情報の提示を行う誘導情報提示部と、
を含むことを特徴とする、
振動提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動提示装置であって、
前記誘導情報提示部は、前記第2人の注意を誘導するための提示として、光の提示を行う、
振動提示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動提示装置であって、
前記誘導情報提示部が行う、前記第2人の注意を誘導するための提示は、時間変動しないように提示する、
振動提示装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の振動提示装置であって、
前記誘導情報提示部は、前記第2人の前記第1部位もしくは前記第2人の前記第1部位の近傍と、前記第2人の前記第2部位もしくは前記第2人の前記第2部位の近傍と、の両方に同じ提示を行う、
振動提示装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の振動提示装置であって、
前記誘導情報提示部は、前記混合時間振動波形の振幅が極大となる時刻において、前記提示の強度が極大となるように、提示を行う、
振動提示装置。
【請求項6】
ある地点を地点Aとし、
前記地点Aとは異なるある地点を地点Bとし、
人の身体のある所定の部位を第1部位とし、
人の身体の前記第1部位とは異なる所定の部位を第2部位とし、
ある人を第1人とし、
前記第1人と異なるある人を第2人として、
前記地点Aにいる第1人の前記第1部位と前記第2部位の間で関連性を有して発生した振動を、前記地点Bにいる第2人に知覚させるための振動提示方法であって、
前記第1人の前記第1部位の振動の時間振動波形と、前記第1人の前記第2部位の振動の時間振動波形とを、混合されて前記地点Aから前記地点Bに伝送された時間振動波形である混合時間振動波形を、入力し、
前記第2人の前記第1部位に、前記入力された時間振動波形に対応する振動を提示し、
前記第2人の前記第2部位に、前記入力された時間振動波形に対応する振動を提示し、
前記第2人の前記第1部位もしくは前記第2人の前記第1部位の近傍と、前記第2人の前記第2部位もしくは前記第2人の前記第2部位の近傍と、の少なくとも何れかに、前記第2人の注意を誘導するための提示として振動以外の情報の提示を行う、
振動提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触覚情報の遠隔地への伝達に関する。
【背景技術】
【0002】
触覚伝達の従来技術として、人の身体の複数の部位における時間振動波形を取得し、取得した時間振動波形のそれぞれを伝送して、伝送された時間振動波形のそれぞれを別の人の身体の各部位に提示するという手法がある(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Basil Duvernoy, Sarah Mcintyre (2022) Human-to-Human Strokes Recordings for Tactile Apparent Motion HAPTICS: SCIENCE, TECHNOLOGY, APPLICATIONS, EUROHAPTICS 2022, p. 376-378 <URL: https://arxiv.org/pdf/2205.02135.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、触覚情報を取得する地点とその触覚情報を再生する、あるいは提示する(以下、単に「提示する」ともいう。)地点とが異なる場合において、非特許文献1の技術を用いると、振動を取得し、かつ、提示する部位数に応じて、時間振動波形を、触覚情報を取得する地点から触覚情報を提示する地点に伝送する必要が生じる。即ち、非特許文献1には、部位数に依存して伝送容量が多くなるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、部位数に依存して伝送容量が多くなることなく、触覚情報を取得する地点における身体の複数の部位の振動の感触と同等の感触を、触覚情報を提示する地点にいる人(ヒト)に与えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様の振動提示装置は、ある地点を地点Aとし、地点Aとは異なるある地点を地点Bとし、人の身体のある所定の部位を第1部位とし、人の身体の第1部位とは異なる所定の部位を第2部位とし、ある人を第1人とし、第1人と異なるある人を第2人として、地点Aにいる第1人の第1部位と第2部位の間で関連性を有して発生した振動を、地点Bにいる第2人に知覚させるための振動提示装置である。振動提示装置は、第2人の第1部位に振動を提示するためのものであって、入力された時間振動波形に対応する振動を提示する第1部位用振動提示部と、第2人の第2部位に振動を提示するためのものであって、入力された時間振動波形に対応する振動を提示する第2部位用振動提示部と、を含み、更に、第1人の第1部位の振動の時間振動波形と、第1人の第2部位の振動の時間振動波形と、が、混合されて地点Aから地点Bに伝送された時間振動波形である混合時間振動波形を、第1部位用振動提示部と第2部位用振動提示部に入力する提示信号生成部と、第2人の第1部位もしくは第2人の第1部位の近傍と、第2人の第2部位もしくは第2人の第2部位の近傍と、の少なくとも何れかに、第2人の注意を誘導するための提示として振動以外の情報の提示を行う誘導情報提示部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、部位数に依存して伝送容量が多くなることなく、触覚情報を取得する地点における身体の複数の部位の振動の感触と同等の感触を、触覚情報を提示する地点にいる人(ヒト)に与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本開示の実施形態に係る振動提示システムの機能構成例を示した図である。
図2図2は本開示の実施形態に係る振動取得装置の機能構成例を示した図である。
図3図3は本開示の実施形態に係る振動取得方法の処理フロー例を示した図である。
図4図4は本開示の実施形態に係る振動提示装置の機能構成例を示した図である。
図5図5は本開示の実施形態に係る振動提示方法の処理フロー例を示した図である。
図6図6は本開示の実施形態の変形例に係る振動取得装置の機能構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を用いて本開示の実施形態について詳細に説明する。また、以下、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0010】
[振動提示システム]
本実施形態に係る振動提示システムは、身体の2つの部位(以下、「第1部位」、「第2部位」ともいう。)で測定した振動を混合した1つの時間振動波形を地点Aから地点Bに伝送し、地点Bでは、地点Bにいる人(ヒト)の身体の両方の部位(例えば、手と足)に同じ時間振動波形を提示すると共に、地点Bにいる人の注意を2つの部位の少なくとも何れかに誘導する。ここで、「2つの部位で測定した振動」とは、第1部位と第2部位の両方の部位において測定した振動だけではなく、第1部位と第2部位の夫々の部位の近傍において測定した振動も含むものとする。第1部位において測定した振動と第2部位の近傍において測定した振動も含むものとする。あるいは、第1部位の近傍において測定した振動と第2部位において測定した振動も含むものとする。
【0011】
本実施形態において、地点Aとはある地点であり、地点Bとは地点Aとは異なるある地点のことをいう。また、地点Aにいる、ある人を「人X」ともいう。地点Bにいる、ある人を「人Y」ともいう。したがって、上述した定義を用いて、別の観点から表現すれば、本実施形態に係る振動提示システムは、地点Aにいる人Xの第1部位と第2部位の間で関連性を有して発生した振動を、地点Bにいる人Yに知覚させるためのシステムである。
【0012】
本システムを利用することにより、地点Bにいる人(人Y)は、第1部位や第2部位(上述の例でいえば、手や足)に注意を向けることとなり、人Yの第1部位と第2部位には、混合した1つの振動が提示されているにもかかわらず、地点Aにいる人(人X)が感じている感触と近い(類似の)感触を得ることができる。
【0013】
本実施形態に係る振動提示システム1は、図1に示すように、振動取得装置10と、振動提示装置20とがネットワーク8を介して通信可能となるように、例えば構成されている。
【0014】
本実施形態では、振動取得装置10は地点A(あるいは地点Aの近傍)にあり、振動提示装置20は地点B(あるいは地点Bの近傍)にあることを想定している。但し、地点Aにいる人Xの複数の部位の振動が取得できれば、必ずしも振動取得装置10全体が同一の地点A(あるいは地点Aの近傍)にある必要はない。例えば、送出情報生成部13は、必ずしも地点Aあるいは地点Aの近傍にあることが必須ではない。また、地点Bにいる人Yの複数の部位に提示用の時間振動波形(後述)から生成された振動を与えることができれば、必ずしも振動提示装置20全体が地点B(あるいは地点Bの近傍)にある必要はない。例えば、提示信号生成部21は、必ずしも地点Bあるいは地点Bの近傍にあることが必須ではない。
【0015】
[振動取得装置]
本開示の実施形態に係る振動取得装置10は、図2に示すように、第1部位振動取得部11と、第2部位振動取得部12と、送出情報生成部13とを、例えば有する。振動取得装置10が、図3に示した処理フローを実施することにより本実施形態の振動取得方法を行う。
【0016】
第1部位振動取得部11は、第1部位の振動を取得して、アナログの振動信号である第1時間振動波形を出力する(ステップS11)。第1部位振動取得部11は、第1時間振動波形を取得できるものであれば、その手段は問わない。例えば、加速度センサの他、マイクロホンであってもよい。
【0017】
第2部位振動取得部12は、第2部位の振動を取得して、アナログの振動信号である第2時間振動波形を出力する(ステップS12)。第2部位振動取得部12は、第2時間振動波形を取得できるものであれば、その手段は問わない。例えば、加速度センサの他、マイクロホンであってもよい。なお、ステップS11とステップS12は、後述する送出情報生成部13による混合の処理を適切に行うことができれば、その順序は問わない。即ち、ステップS11とステップS12との順序を逆にして処理するように構成してもよいし、あるいは、並行して処理するように構成してもよい。
【0018】
送出情報生成部13は、第1時間振動波形と第2時間振動波形とを混合してディジタル化したディジタル混合振動信号を生成し、ネットワーク8に対して出力する(ステップS13)。送出情報生成部13による、第1時間振動波形と第2時間振動波形と、の信号の混合は、互いの振動波形の時間ズレが無いように混合される。送出情報生成部13による信号の混合の処理は、第1時間振動波形と第2時間振動波形とを、AD変換する前に実施してもよいし、AD変換した後に実施してもよい。ディジタル混合振動信号は、公知の符号化技術で圧縮符号化して符号を得て、当該符号をネットワーク8に対して出力するように構成してもよい。なお、振動取得装置10と振動提示装置20との間をネットワーク8ではなく、例えば銅線などのケーブルで構成した場合には、送出情報生成部13は、第1時間振動波形と第2時間振動波形とをアナログ信号のまま混合し、混合された信号は、AD変換せずにアナログ信号のままネットワーク8へ出力するように構成してもよい。
【0019】
[振動提示装置]
本開示の実施形態に係る振動提示装置20は、図4に示すように、提示信号生成部21と、第1部位用振動提示部22と、第2部位用振動提示部23と、誘導情報提示部24とを、例えば有する。振動提示装置20が、図5に示した処理フローを実施することにより本実施形態の振動提示方法を行う。
【0020】
提示信号生成部21は、ディジタル混合振動信号がネットワーク8から入力され、ディジタル混合振動信号をDA変換して提示用の時間振動波形を生成して第1部位用振動提示部と第2部位用振動提示部に出力する(ステップS21)。即ち、提示信号生成部21は、人Xの第1部位の振動の第1時間振動波形と、人Xの第2部位の振動の第2時間振動波形とが、混合されて地点Aから地点Bに伝送された時間振動波形であるディジタル混合振動信号から生成した提示用の時間振動波形を、第1部位用振動提示部22と第2部位用振動提示部23に入力する。振動取得装置10より、圧縮符号化された符号が入力された場合には復号してディジタル混合振動信号を得た後に、提示用の時間振動波形を生成する。なお、振動取得装置10と振動提示装置20との間をネットワーク8ではなく、例えば銅線などのケーブルで構成した場合であって、振動取得装置10より、アナログ信号が入力された場合には、その信号のまま第1部位用振動提示部と第2部位用振動提示部に出力する。
【0021】
第1部位用振動提示部22は、第1部位に直接または間接的に接して配置される。第1部位用振動提示部22は、提示用の時間振動波形を振動に変換して出力する(ステップS22)。即ち、第1部位用振動提示部22は、人Yの第1部位に振動を提示するためのものであって、振動提示装置20に入力されたディジタル混合振動信号(第1部位用振動提示部22に入力された提示用の時間振動波形)に対応する振動を提示する。
【0022】
第2部位用振動提示部23は、第2部位に直接または間接的に接して配置される。第2部位用振動提示部23は、提示用の時間振動波形を振動に変換して出力する(ステップS23)。即ち、第2部位用振動提示部23は、人Yの第2部位に振動を提示するためのものであって、振動提示装置20に入力されたディジタル混合振動信号(第2部位用振動提示部23に入力された提示用の時間振動波形)に対応する振動を提示する。なお、ステップS22とステップS23は、後述する誘導情報提示部24による知覚情報Pの提示の処理が適切に行うことができれば、その順序は問わない。即ち、ステップS22とステップS23との順序が逆に処理するように構成してもよいし、あるいは、並行して処理するように構成してもよい。
【0023】
誘導情報提示部24は、第1部位と第2部位の少なくとも何れかまたはそれらの近傍に配置され、注意を誘導するための情報を提示する(ステップS24)。即ち、誘導情報提示部24は、人Yの第1部位もしくは人Yの第1部位の近傍と、人Yの第2部位もしくは人Yの第2部位の近傍と、の少なくとも何れかに、人Yの注意を誘導するための提示として「振動以外の知覚情報」(以下、「知覚情報P」ともいう。)の提示を行う。
【0024】
人Yの注意を誘導するための提示としての知覚情報Pの具体例の1つとしては、光が挙げられる。この場合、光の色についての限定はないが、万人にとって、あるいは人Yにとって、より注意を引きやすい色を選択するなどして構成してもよい。
【0025】
知覚情報Pは、時間変動するように構成してもよいし、時間変動しないように構成してもよい。
【0026】
知覚情報Pが時間変動する場合の例としては、時間振動波形そのものを知覚情報Pに変換することが挙げられる。例えば知覚情報Pを光とした場合に、受信する信号の時間振動波形の極大で、光の大きさが極大となるように時間変動をするように構成することが挙げられる。この場合、図4の破線で示したように、提示用の時間振動波形をそのまま誘導情報提示部24に入力し、光に変換して出力(点灯)してもよい。あるいは、図4中に一点鎖線で示したように、提示信号生成部21は、提示用の時間振動波形をローパスフィルタに通した信号を誘導信号として得て、当該誘導信号を誘導情報提示部24に入力するようにしてもよい。提示用の時間振動波形が閾値より大きい、あるいは閾値以上である場合に、所定の大きさ(第1の大きさ)となり、そうでない場合には第1の大きさよりも小さい所定の第2の大きさとなるようにした信号を誘導信号として得て、当該誘導信号を誘導情報提示部24に入力するようにしてもよい。誘導情報提示部24は、混合時間振動波形の振幅が極大となる時刻において、知覚情報Pの提示の強度が極大となるように、提示を行う。
【0027】
知覚情報Pが時間変動しない場合の例としては、例えば知覚情報Pを光とした場合に、常時光を点灯させておくことが挙げられる。知覚情報Pを時間変動しない光として提示する場合、誘導情報提示部24への入力は無くてもよく、単に光を点灯させるように構成してもよい。
【0028】
誘導情報提示部24による、知覚情報Pの提示の誘導は、例えば、人Yの第1部位もしくは人Yの第1部位の近傍と、人Yの第2部位もしくは人Yの第2部位の近傍と、の両方に同じ提示を行うように構成してもよい。あるいは、人Yの第1部位もしくは人Yの第1部位の近傍と、人Yの第2部位もしくは人Yの第2部位の近傍と、のいずれか一方のみに提示を行うように構成してもよい。
【0029】
以上、本実施形態について説明した。上述した振動提示システム1を利用することにより、人Yは、誘導情報提示部24により提示される知覚情報Pに注意が引かれる。知覚情報Pに注意が引かれることにより、人Yが、第1部位と第2部位におけるディジタル混合振動信号を元に生成された振動の感触が、人Xが、第1部位と第2部位とでそれぞれ感じ取る振動の感触と近い(類似した)感触となる。この感触の具体例を、以下の振動提示システム1の使用例にて説明する。
【0030】
(振動提示システム1の使用例)
上述した振動提示システム1の使用例として、バスケットボールのドリブルの様子を用いて説明する。
【0031】
例えば、地点Aにいる人Xに対し、人Xの手(第1部位)に第1部位振動取得部11として加速度センサを装着し、人Xの足(第2部位)に第2部位振動取得部12として別の加速度センサを装着したとする。地点Bにいる人Yに対し、人Yの手(第1部位)に第1部位用振動提示部22として振動伝達用のアクチュエータを装着し、人Yの足(第2部位)に第2部位用振動提示部23として別の振動伝達用のアクチュエータを装着したとする。また、誘導情報提示部24として、人Yの手の近傍に発光器(発光器L1)を設置し、人Yの足元近傍に別の発光器(発光器L2)を設置したとする。発光器L1,L2は、図4に示した提示信号生成部21からの一点鎖線の信号を利用するものとする。具体的には、第1の大きさの場合は発光器L1,L2を点灯(発光)させ、第2の大きさの場合は発光器L1,L2を点灯させないように構成しているものとする。点灯/非点灯を決める閾値としては、人Xがバスケットボールを弾いた際の振動、あるいは、ボールが床に当たった際の振動の内、最大振幅値が小さい方の振動を閾値とする。したがって、この閾値よりも振幅値が大きな振動は第1の大きさと判断し、この閾値よりも振幅値が小さな振動は第2の大きさと判断するように構成されているものとする。
【0032】
上述の構成において、振動提示システム1を使用した場合、地点Aにいる人Xに、バスケットボールを使用して、その場で、ドリブルを行わせたとする。この場合、人Yが、知覚情報P(発光器L1,L2)に注意が引かれることにより、人Yの第1部位と第2部位における提示用の時間振動波形から生成された振動の感触が、人Xが、第1部位と第2部位とのそれぞれの部位で感じ取る振動の感触に近い(類似した)ものとなる。即ち、人Yには提示用の時間振動波形という1つの信号から生成された振動が伝わっているにも関わらず、人Yは、人Yの第1部位と地点Bの2部位とに、交互に振動を受けているとの感触が得られる。換言すれば、人Yが振動の感触を受ける元になっている提示用の時間振動波形は、時間振動波形の極大部分に注目すれば、第1時間振動波形あるいは第2時間振動波形に比して、実質的に周期が半分になっている1つの時間振動波形である。人Yは、この1つの時間振動波形から受ける振動を、第1部位と第2部位に同じタイミングで受けることにより、人Yは、あたかも、地点Aにおける人Xがバスケットボールを用いてドリブルを行っている際の振動の感触が、地点Bにいる人Yに伝達されてきたと感じ取ることができる。
【0033】
発光器L1と発光器L2は、いずれか一方のみを点灯するように構成してもよい。人Yが感じ取る上述の感触は、必ずしも、発光器L1,L2の双方とも同時に点灯させる場合に限らず、いずれか一方のみが点灯する場合であっても得ることができる。
【0034】
また、上述の例では、発光器L1,L2を点灯させる/点灯させないという、形式で構成したが、本実施形態はこれに限らず、発光器L1,L2を常時点灯させてもよい。発光器L1,L2を常時点灯させる場合であっても、人Yは上述の感触を得ることができる。この場合、発光器は、発光器L1,L2の双方とも常時点灯させる場合に限らず、いずれか一方のみを常時点灯させてもよい。
【0035】
上述したように、本実施形態に係る振動提示システムは、身体の2つの部位の振動を混合した1つの時間振動波形を地点Aから地点Bに伝送し、地点Bでは、地点Bにいる人(ヒト)の身体の両方の部位(例えば、手と足)に同じ時間振動波形を提示すると共に、地点Bにいる人の注意を2つの部位の少なくとも何れかに誘導している。したがって、部位数に依存して伝送容量が多くなることなく、触覚情報を取得する地点における身体の複数の部位の振動の感触と同等の感触を、触覚情報を提示する地点にいる人(ヒト)に与えることができる。
【0036】
本実施形態では、誘導情報提示部24による提示を、第1部位と第2部位との間で交互に提示するような制御は行っていない。上述の使用例で言えば、発光器L1,L2を交互に点灯させるような処理は行っていない。第1部位と第2部位とを交互に点灯させることにより、人Yに人Xの感触と類似した感触を与えることは可能ではある。しかし、これを実現するには、そのための情報を地点Aから地点Bに伝送する必要が生じてしまう。あるいは、地点Bでの振動信号の分離処理等、高度な信号処理が必要となってしまう。本実施形態は、そのような伝送や処理が不要となる。部位数に依存して伝送容量が多くなることなく、触覚情報を取得する地点における身体の複数の部位の振動の感触と同等の感触を、触覚情報を提示する地点にいる人(ヒト)に与えることができる。
【0037】
[振動取得装置10の変形例]
図2で示した振動取得装置10は、図6に示したような、振動取得装置10Aとして構成してもよい。10Aは、第1部位振動取得部11Aと、送出情報生成部13Aと、から構成されている。
【0038】
第1部位振動取得部11Aは、上述した第1部位振動取得部11と第2部位振動取得部12の双方の機能を有する。即ち、第1部位振動取得部11Aは、人Xの第1部位と第2部位の双方の振動を取得する。第1部位振動取得部11Aは、例えば、人Xの近傍に配置したマイクロホンである。第1部位振動取得部11Aの設置場所は、人Xの第1部位と第2部位の双方の振動を取得することができれば、特定の場所に限定されない。即ち、床に直接設置してもよいし、床から所定の高さを確保して設置するようにしてもよい。
【0039】
送出情報生成部13Aは、振動取得装置10の送出情報生成部13で行う、時間振動波形の混合処理の機能を有していない。第1部位振動取得部11Aは、人Xの第1部位と第2部位の双方の振動を取得する。したがって、送出情報生成部13Aは、送出情報生成部13が行う、時間振動波形の混合処理が不要となる。
【0040】
以上、この開示の実施の形態、および変形例について説明したが、具体的な構成は、本実施の形態に限られるものではなく、この開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、この開示に含まれることはいうまでもない。例えば、本実施形態では、部位の数として、第1部位と第2部位の2か所の例を用いて説明したが、この部位を3か所以上となるように構成してもよい。その場合は、振動取得装置10において、測定か所に応じて、振動取得部を追加するように構成することが考えられる。また、上述した「(振動提示システム1の使用例)」における説明では、第1部位(手)と第2部位(足)の両方の部位に加速度センサを取り付けて振動を測定した。本開示はこれに限られず、例えば、第2部位(足)については、ドリブルする床に加速度センサ、あるいはマイクロフォンを取り付けて振動を測定するなど、第1部位振動取得部11や第2部位振動取得部12の位置は適宜変更してもよい。また、本実施の形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 振動提示システム
10,10A 振動取得装置
11,11A 第1部位振動取得部
12 第2部位振動取得部
13,13A 送出情報生成部
20 振動提示装置
21 提示信号生成部
22 第1部位用振動提示部
23 第2部位用振動提示部
24 誘導情報提示部
8 ネットワーク
A,B 地点
L1,L2 発光器
P 知覚情報
X,Y 人(ヒト)
図1
図2
図3
図4
図5
図6