(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-07
(45)【発行日】2022-03-15
(54)【発明の名称】通信品質劣化推定装置、通信品質劣化推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/08 20220101AFI20220308BHJP
【FI】
H04L43/08
(21)【出願番号】P 2018130843
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2020-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年3月1日に、一般社団法人電子情報通信学会が発行した、電子情報通信学会技術研究報告、第117巻、第486号、105-110ページにおいて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】田行 里衣
(72)【発明者】
【氏名】池上 大介
(72)【発明者】
【氏名】松田 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】滝根 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】金正 英朗
【審査官】平井 嗣人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/08-43/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを構成する要素の通信品質劣化を推定する通信品質劣化推定装置であって、
前記通信ネットワークにおける通信品質計測値と各計測の経路情報とを入力する入力手段と、
前記通信ネットワークにおける要素間の関係を表すグラフ構造と、前記通信品質計測値と、前記経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する推定手段と、
前記通信品質劣化推定値を用いて前記グラフ構造を更新する更新手段と、を備え、
前記更新手段は、各要素の位置座標と前記通信品質劣化推定値を特徴量とし、当該特徴量のクラスタリングを行うことにより、要素間の類似度を計算し、当該類似度を用いて前記グラフ構造を更新する
ことを特徴とする通信品質劣化推定装置。
【請求項2】
グラフ構造と、通信品質計測値と、経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する前記推定手段による処理と、グラフ構造を更新する前記更新手段による処理とを、終了条件を満たすまで繰り返し、各要素の通信品質劣化推定値、又は当該通信品質劣化推定値に基づいて得られる情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信品質劣化推定装置。
【請求項3】
前記更新手段は、通信品質劣化推定値を含む1つ以上の特徴量に基づいて、要素間の類似度を計算し、当該類似度を用いて前記グラフ構造を更新する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信品質劣化推定装置。
【請求項4】
通信ネットワークを構成する要素の通信品質劣化を推定する通信品質劣化推定装置により実行される通信品質劣化推定方法であって、
前記通信ネットワークにおける通信品質計測値と各計測の経路情報とを入力する入力ステップと、
前記通信ネットワークにおける要素間の関係を表すグラフ構造と、前記通信品質計測値と、前記経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する推定ステップと、
前記通信品質劣化推定値を用いて前記グラフ構造を更新する更新ステップと、を備え、
前記更新ステップにおいて、前記通信品質劣化推定装置は、各要素の位置座標と前記通信品質劣化推定値を特徴量とし、当該特徴量のクラスタリングを行うことにより、要素間の類似度を計算し、当該類似度を用いて前記グラフ構造を更新する
ことを特徴とする通信品質劣化推定方法。
【請求項5】
グラフ構造と、通信品質計測値と、経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する前記推定ステップによる処理と、グラフ構造を更新する前記更新ステップによる処理を、終了条件を満たすまで繰り返し、各要素の通信品質劣化推定値、又は当該通信品質劣化推定値に基づいて得られる情報を出力する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信品質劣化推定方法。
【請求項6】
前記更新ステップにおいて、前記通信品質劣化推定装置は、通信品質劣化推定値を含む1つ以上の特徴量に基づいて、要素間の類似度を計算し、当該類似度を用いて前記グラフ構造を更新する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の通信品質劣化推定方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の通信品質劣化推定装置における各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信における複数区間を経由した通信品質計測値を入力として、その通信ネットワーク内におけるどの要素(ノード、リンク、区間など)でどれだけの劣化が発生しているかを推定・判定する技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では、ユーザ環境の多様化や利用方法の多岐化により、様々な箇所で品質劣化が発生する状況である。通信サービス品質向上のためには、劣化箇所を把握する必要があり、そのための手法として、特許文献1(特開2017-192041)に開示された技術等が提案されている。この既存の技術では、経路情報とは別に、通信経路に含まれる要素(ノード、リンク、区間など)の類似性を表すグラフ構造を導入することによって、計測値が得られなかった要素においても推定を可能とし、推定精度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、既存技術では通信経路に含まれる要素の類似性を表すグラフ構造を導入することによって、計測値が得られなかった要素においても推定を可能とし、推定精度の向上を図っているが、類似性を表すグラフ構造が正しく与えられなかった場合、誤った推定結果を出力してしまい推定精度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、通信ネットワークにおける要素間の関係を表すグラフ構造を用いて通信品質値の推定を行う技術において、推定精度の低下を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術によれば、 通信ネットワークを構成する要素の通信品質劣化を推定する通信品質劣化推定装置であって、
前記通信ネットワークにおける通信品質計測値と各計測の経路情報とを入力する入力手段と、
前記通信ネットワークにおける要素間の関係を表すグラフ構造と、前記通信品質計測値と、前記経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する推定手段と、
前記通信品質劣化推定値を用いて前記グラフ構造を更新する更新手段と、を備え、
前記更新手段は、各要素の位置座標と前記通信品質劣化推定値を特徴量とし、当該特徴量のクラスタリングを行うことにより、要素間の類似度を計算し、当該類似度を用いて前記グラフ構造を更新することを特徴とする通信品質劣化推定装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、通信ネットワークにおける要素間の関係を表すグラフ構造を用いて通信品質値の推定を行う技術において、推定精度の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】通信品質劣化推定装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】通信品質劣化推定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】特徴量の3次元空間上の配置例を示す図である。
【
図6】シミュレーション実験に用いた遅延時間分布を示す図である。
【
図7】平均遅延時間が最も大きい基地局における推定誤差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の説明では、通信品質値の推定対象とする通信ネットワークの要素の例として主にノード(基地局、サーバ等)を挙げているが、本発明の対象とする要素は、ノードに限られない。例えば、リンクでもよいし、通信ネットワークにおける区間でもよいし、その他のものであってもよい。
【0010】
(実施の形態の概要)
本実施の形態では、通信経路に含まれるノード間の類似性を表すグラフ構造を構築し、構築されたグラフ構造に基づき通信品質劣化を推定する通信品質劣化推定装置が使用される。本実施の形態で使用するグラフ構造は、例えば隣接行列、グラフラプラシアン行列などである。
【0011】
当該グラフ構造において、通信品質計測値(例えば遅延時間やパケット損失率など)が近い値を持つノード間の接続性を強く構築することができれば、高精度な遅延時間推定が可能となる。このためには、各ノードにおける品質の値が既知である必要がある。しかし、通信品質劣化推定装置の目的は、遅延時間等の品質値を推定することであるので、真の品質値を用いてグラフ構造を構築することはできない。
【0012】
そこで、本実施の形態では、通信品質劣化推定装置はまず暫定的にグラフ構造を設定し、特許文献1などに開示された方法でグラフ構造を用いた通信品質劣化推定を行う。この結果の推定値を用いて、推定値の類似性に基づいてグラフ構造を更新し、更新したグラフ構造を用いて通信品質劣化推定を行う。このグラフ構造の更新と通信品質劣化推定を繰り返し実行することで、推定精度の低下を抑止し、推定精度を向上させている。以下、通信品質劣化推定装置の構成及び動作を詳細に説明する。
【0013】
(装置構成例)
図1は、本実施の形態における通信品質劣化推定装置100の機能構成図である。
図1に示すように、通信品質劣化推定装置100は、暫定グラフ構築部101、通信品質劣化推定部102、推定値判定部103、グラフ構築部104を備える。通信品質劣化推定装置100には2点のノード間の通信品質計測値及び計測の経路情報の複数の組が入力される。各部の機能の概要は下記のとおりである。
【0014】
暫定グラフ構築部101は、通信ネットワークを構成する要素間の関係を表すグラフの構造であるグラフ構造を構築する。
【0015】
通信品質劣化推定部102は、1度目の処理として、入力と暫定グラフ構築部101で構築されたグラフ構造を用い,各ノードの通信品質劣化推定を行う。2度目以降は入力とグラフ構築部104で更新されたグラフ構造を用い、各ノードの通信品質劣化推定を行う。
【0016】
推定値判定部103は、通信品質劣化推定部102により算出された通信品質劣化推定値に基づいて、再度、グラフの構築及び通信品質劣化推定を行うか判定を行う。グラフ構築部104は、通信品質劣化推定値を元に、ノード間の類似度に基づいてグラフ構造を更新する。
【0017】
通信品質劣化推定装置100は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、当該通信品質劣化推定装置100で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0018】
図2は、本実施の形態における上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図2のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置150、補助記憶装置152、メモリ装置153、CPU154、インタフェース装置155、表示装置156、及び入力装置157等を有する。
【0019】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体151によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体151がドライブ装置150にセットされると、プログラムが記録媒体151からドライブ装置150を介して補助記憶装置152にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体151より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置152は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0020】
メモリ装置153は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置152からプログラムを読み出して格納する。CPU154は、メモリ装置153に格納されたプログラムに従って、当該通信品質劣化推定装置100に係る機能を実現する。インタフェース装置155は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置156はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置157はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。
【0021】
(実施例)
図3は、通信品質劣化推定装置100の動作例を示すフローチャートである。
図3を参照して、
図1に示した通信品質劣化推定装置100の動作例を説明する。
【0022】
本実施例では、一例として、通信ネットワークにおいて通信品質劣化の推定対象とする要素をノードとし、当該ノードはサーバ及び基地局とする。また、推定する通信品質を遅延時間とする。通信品質劣化推定装置100は、複数のサーバと複数の基地局からなる通信ネットワークを対象として、遅延時間の推定を行う。
【0023】
以下で説明する手順において、k(k=1,2,...)はグラフ構築と遅延時間推定の繰り返し回数であり、x(k)、y(k)はそれぞれk回目の繰り返しにおける各基地局の遅延時間の推定値を並べた基地局遅延ベクトル、各サーバの遅延時間の推定値を並べたサーバ遅延ベクトルである。
【0024】
また、以下で説明する処理において、入力(2点のノード間の通信品質計測値及び各計測の経路情報)と隣接行列とに基づいて基地局遅延ベクトル、及びサーバ遅延ベクトルを推定する方法自体は既存技術であり、例えば、特許文献1に開示されている方法を用いることができる。
【0025】
以下で説明する処理の前提として、通信品質劣化推定装置100には通信ネットワークの構成情報(各ノードの位置等)が既に入力され、メモリ等に記憶されているものとする。各部は、必要に応じて、当該構成情報を利用できる。
【0026】
また、通信品質劣化推定装置100には2点のノード間の通信品質計測値及び各計測の経路情報も入力されているとする。2点のノード間の通信品質計測値とは、例えば、特許文献1に示されているz_k(k=1,…,K)であり、各計測の経路情報とは、例えば、特許文献1に示されている計測k(k=1,…,K)における経路情報を表す行列Aである。
【0027】
<ステップ1>
暫定グラフ構築部101は、通信ネットワークを構成するノードの関係を表すグラフを既存のグラフ構築法に基づき構築する。本実施例では、グラフ構造を表す行列の一例として隣接行列A(0)を構築する。隣接行列A(0)は、ノード数がNであればN×Nの行列であり、その(i,j)要素a(k)
i,j(i,j=1,2,...N)は、例えば、ノードiとノードj間の距離に応じて1又は0の値をとる。ここで構築する隣接行列A(0)は、隣接ノード間に劣化の類似性があるノード群の隣接行列である。本実施例では、A(0)は、基地局群の隣接行列であることを想定している。
【0028】
また、通信品質劣化推定部102において、遅延時間推定により推定された基地局遅延ベクトル、サーバ遅延ベクトルをそれぞれx(0)、y(0)とする。
【0029】
<ステップ2>
繰り返しの回数を表す変数であるkを1とする。
【0030】
<ステップ3>
通信品質劣化推定部102は、入力(「2点のノード間の品質計測値及び計測の経路情報」の複数の組)と暫定グラフ構築部101で構築されたグラフ構造を用い、各ノードの通信品質劣化推定を行い、各ノードの遅延時間を推定する。グラフ構築部104は、各基地局の位置と、各基地局に対して推定された遅延時間を特徴量として用いることで基地局間の類似度を計算する。
【0031】
<ステップ4>
グラフ構築部104は、ステップ3で得られた類似度を用いて、隣接行列を更新し、その隣接行列をA(k)とする。類似度の計算方法及び隣接行列の更新方法については後述する。
【0032】
<ステップ5>
通信品質劣化推定部102は、ステップ4で得られたA(k)を用いて基地局遅延ベクトル、サーバ遅延ベクトルを推定し、x(k)、y(k)とする。
【0033】
<ステップ6、7>
推定値判定部103は、終了条件が満足されたか否かを判定することにより、繰り返し処理の継続する、又は、繰り返し処理を終了して通信品質劣化推定値の出力を行う。通信品質劣化推定値の出力に関しては、通信品質劣化推定値そのものを出力してもよいし、当該通信品質劣化推定値に基づいて得られる情報(例:統計値、グラフィック情報等)を出力することとしてもよい。
【0034】
終了条件としては、試行回数n(n≧1)を指定することで、k=nになったときに終了することとしてもよいが、本実施例では、閾値ε(ε>0)を設定し、
【0035】
【数1】
ならば繰り返し処理を終了して、ステップ7で通信品質劣化推定値を出力する。この条件を満足しない場合には、ステップ8に進む。
【0036】
<ステップ8>
kをk+1としてステップ3~6を繰り返す。
【0037】
(基地局間の類似度に基づくグラフ構築手法)
次に、上述したステップ3における類似度の計算方法の一例を説明する。
【0038】
<基地局のデータ集合>
本実施例では、類似度を、要素(ここでは基地局)の位置座標と推定遅延時間を特徴量ベクトルとしてクラスタリング手法によって求める。まず、類似度を計算するためのデータ集合を定義する。
【0039】
基地局bi∈Bの位置座標aiをai=(ai,1,ai,2)と表す。また推定された基地局遅延ベクトルをx(k)=(x1
(k) x2
(k)・・・xN_B
(k))Tと表す。基地局データ集合TをT={ti|i=1,2,...NB}と定義する。ti=(ti,1,ti,2,ti,3)∈Tは基地局biが持つ特徴量ベクトルであり、各特徴量ti,l(l=1,2,3)は次式で定義される。
【0040】
【数2】
上記の各式におけるθ
l、φ
l(l=1,2,3)はパラメータである。
【0041】
<クラスタリングによる隣接行列の設定>
続いて、
図4、
図5に示す例を用いて、類似度の計算方法の例を説明する。
【0042】
図4は、基地局の配置(座標)を示しており、同じ形のマーク(●、▲、×)で示される基地局は近い値の推定遅延時間を持つものとする。基地局b
i∈Bの特徴量t
i∈Tは、
図5に示すように3次元空間上の点(マーク)として表すことができ、同じ形のマークは3次元空間上で近い場所に存在することが分かる。
【0043】
この性質から、特徴量をクラスタリングすることにより、推定遅延時間と位置が近い基地局の集合を求めることができる。
【0044】
クラスタリングの手法は特定の手法に特に限定されないが、本実施例では、Fuzzy c-means法(FCM法)を用いてクラスタリングを行う例を示す。他のクラスタリングの手法を用いることもできる。
【0045】
ここではクラスタ数をNCとする。FCM法では、各基地局が一つのクラスタに割当てられるのではなく、各クラスタに属する割合である帰属度が得られる。基地局biの帰属度qiをqi=(qi,1 qi,2 ・・・qi,N_C)Tと表す。qi,j(j=1,2,...NC)は基地局biがクラスタjに属する割合であり、
【0046】
【0047】
qi,jが大きいほど基地局biはクラスタjに属する割合が高いことを表す。
【0048】
基地局bi_1とbi_2の類似度DC(bi_1,bi_2)は例えば次式で与えられる。これは一例であり、類似度は他の指標で与えてもよい。
【0049】
【数4】
q
iが満たす条件より、D
c(b
i_1,b
i_2)≦√2である。D
c(b
i_1,b
i_2)を用いて、k=1,2,....に対して隣接行列A
(k)の(i_1,i_2)要素a
(k)
i_1,i_2(i_1,i_2=1,2,...N
B)を例えば次式にように与えることができる。
【0050】
【数5】
なお、本実施例では、類似度はノードのグラフ構造における隣接関係に反映されるが、これは一例であり、類似度をリンクのグラフ構造におけるリンクの有無やリンクの重み等に反映させることとしてもよい。
【0051】
<シミュレーション実験による性能評価>
次に、上記の実施例によるシミュレーション実験の結果を示す。
【0052】
図6に、シミュレーション実験に用いた基地局の配置と真値の遅延分布を示す。
図6において、基地局の位置を示す六角形の中の数字は基地局番号を示し、六角形の濃度が遅延を表す。
【0053】
また、上述したフローチャートでの処理において使用するパラメータをε=0.05、N
C=3とする。
図7に、平均遅延時間が最も大きい基地局(
図6に示した7、8、12、13、14、19、20番の基地局)における推定値の誤差を示す。
図7(a)、(b)はそれぞれ既存手法(特許文献1)と本実施例に係る提案手法の性能を表している。
図7(a)、(b)に示すとおり、提案手法では、推定誤差が改善されていることが分かる。
【0054】
(実施の形態の効果)
通信品質劣化推定装置100は、通信品質劣化推定を繰り返し、推定値を要素のグラフ構造に反映させることとしたので、推定精度の低下を抑止、また推定精度の向上を実現した。実施例の結果(
図7)より、既存技術(特許文献1)の1回の推定を実施した結果に対して、本実施例に係る技術では、平均遅延時間を真値としたときの推定値の誤差が小さくなり、推定精度の高さを示している。
【0055】
(実施の形態のまとめ)
以上、説明したように、本実施の形態によれば、通信ネットワークを構成する要素の通信品質劣化を推定する通信品質劣化推定装置であって、前記通信ネットワークにおける通信品質計測値と各計測の経路情報とを入力する入力手段と、前記通信ネットワークにおける要素間の関係を表すグラフ構造と、前記通信品質計測値と、前記経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する推定手段と、前記通信品質劣化推定値を用いて前記グラフ構造を更新する更新手段とを備えることを特徴とする通信品質劣化推定装置が提供される。
【0056】
入力装置157は入力手段の例であり、通信品質劣化推定部102は推定手段の例であり、グラフ構築部104は更新手段の例である。
【0057】
前記通信品質劣化推定装置は、グラフ構造と、通信品質計測値と、経路情報とを用いて通信品質劣化推定値を算出する前記推定手段による処理と、グラフ構造を更新する前記更新手段による処理とを、終了条件を満たすまで繰り返し、各要素の通信品質劣化推定値、又は当該通信品質劣化推定値に基づいて得られる情報を出力する。
【0058】
前記更新手段は、例えば、通信品質劣化推定値を含む1つ以上の特徴量に基づいて、要素間の類似度を計算し、当該類似度を用いて前記グラフ構造を更新する。
【0059】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 通信品質劣化推定装置
101 暫定グラフ構築部
102 通信品質劣化推定部
103 推定値判定部
104 グラフ構築部
150 ドライブ装置
151 記録媒体
152 補助記憶装置
153 メモリ装置
154 CPU
155 インターフェース装置
156 表示装置
157 入力装置