(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】リンを含有し、連晶構造を有する小細孔ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20220328BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20220328BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20220328BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20220328BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20220328BHJP
B01J 37/06 20060101ALN20220328BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/80 A
B01J35/10 301F
B01J37/04 102
B01J37/10
B01J37/06
(21)【出願番号】P 2018029368
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】佐野 庸治
(72)【発明者】
【氏名】定金 正洋
(72)【発明者】
【氏名】津野地 直
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0287874(US,A1)
【文献】特開2017-065943(JP,A)
【文献】特開2017-048106(JP,A)
【文献】特表2013-522011(JP,A)
【文献】特開2016-147801(JP,A)
【文献】特開2018-140887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造がAFX構造とCHA構造との連晶構造であり、リンを
細孔内に含有する
結晶性アルミノシリケートであることを特徴とする小細孔ゼオライト。
【請求項2】
前記リンの含有状態が、リン酸イオン又はリン化合物の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項3】
アルミニウムに対するリンのモル比が0.50以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項4】
前記結晶構造におけるCHA構造とAFX構造の合計に対するAFX構造の比率が0.5以上1.0未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項5】
アルミナに対するシリカのモル比が5以上30以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項6】
骨格を構成する金属原子に対するリンのモル比が0.0005以上、0.1以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライト。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライトを製造する方法であって、
シリカアルミナ源、リン源、有機構造指向剤源、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有
し、
前記有機構造指向剤源がCHA構造及びAFX構造のそれぞれを指向するカチオンを含む塩であり、前記リン源がテトラエチルホスホニウムブロミドを含むことを特徴とする小細孔ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
前記組成物のシリカに対するリンのモル比が0.1以上であることを特徴とする請求項7に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記シリカアルミナ源が結晶性アルミノシリケートであることを特徴とする請求項7又は8に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
【請求項10】
前記シリカアルミナ源がFAU型ゼオライトであることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
【請求項11】
前記組成物のCHA構造を指向するカチオン及びAFX構造を指向するカチオンの合計に対するAFX構造を指向するカチオンのモル比が0よりも大きく0.79以下であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
【請求項12】
前記組成物がシリカ源を含むことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連晶構造を有する小細孔ゼオライト及びその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、リンを含有し、連晶構造を有する小細孔ゼオライトであって、触媒や触媒基材に適した小細孔ゼオライト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャバザイト型ゼオライト(以下、「CHA型ゼオライト」ともいう。)をはじめとする小細孔ゼオライトは、自動車や船舶などの移動体の内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)の低下のための選択的触媒還元触媒(以下、「SCR触媒」ともいう。)として使用されている(特許文献1)。
【0003】
近年、CHA型ゼオライトに代わる小細孔ゼオライトとして、結晶構造がAFX構造及びCHA構造の連晶である結晶性アルミノシリケートが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/106519号パンフレット
【文献】特開2017-065943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これまでに報告されている連晶構造を有する小細孔ゼオライトと比べて、より高い耐熱性を示す連晶構造を有する小細孔ゼオライトを提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような小細孔ゼオライトの工業的な製造方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、触媒又は触媒担体として適した小細孔ゼオライトについて検討した。その結果、連晶構造を有するゼオライトにリンを含有させることができること、及び、このようなゼオライトは高い耐熱性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 結晶構造がAFX構造とCHA構造との連晶構造であり、リンを含有することを特徴とする小細孔ゼオライト。
[2] 前記リンを細孔内に含有することを特徴とする上記[1]に記載の小細孔ゼオライト。
[3] アルミニウムに対するリンのモル比が0.50以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の小細孔ゼオライト。
[4] 前記結晶構造におけるCHA構造とAFX構造の合計に対するAFX構造の比率が0.5以上1.0未満であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライト。
[5] アルミナに対するシリカのモル比が5以上30以下であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライト。
[6] 骨格を構成する金属原子に対するリンのモル比が0.0005以上、0.1以下であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライト。
[7] 上記[1]乃至[6]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライトを製造する方法であって、シリカアルミナ源、リン源、有機構造指向剤源、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化する結晶化工程、を有することを特徴とする小細孔ゼオライトの製造方法。
[8] 前記リン源が、テトラエチルホスホニウム水酸化物、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムクロライド及びテトラエチルホスホニウムヨージドの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[7]に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
[9] 前記シリカアルミナ源が結晶性アルミノシリケートであることを特徴とする上記[7]又は[8]に記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
[10] 前記シリカアルミナ源がFAU型ゼオライトであることを特徴とする上記[7]乃至[9]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
[11] 前記有機構造指向剤源がCHA構造及びAFX構造のそれぞれを指向するカチオンを含む塩であることを特徴とする上記[7]乃至[10]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
[12] 前記組成物がシリカ源を含むことを特徴とする上記[7]乃至[11]のいずれかひとつに記載の小細孔ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、これまでに報告されている連晶構造を有する小細孔ゼオライト(リンを含有しない小細孔ゼオライト)と比べて、より高い耐熱性を示す連晶構造を有する小細孔ゼオライトを提供することができる。さらに、本発明は、このような小細孔ゼオライトの工業的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例2の小細孔ゼオライトのXRDパターンである。
【
図2】実施例2の小細孔ゼオライトの走査型電子顕微鏡観察図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の小細孔ゼオライトについて詳細に説明する。
【0011】
本発明は、結晶構造がAFX構造とCHA構造との連晶構造であり、リンを含有することを特徴とする小細孔ゼオライト(以下、「本発明の小細孔ゼオライト」ともいう。)に係る。
【0012】
本発明の小細孔ゼオライトは、その結晶構造における最大細孔が酸素8員環によって形成される細孔(以下、「酸素8員環細孔」ともいう。)であるゼオライトである。最大細孔が酸素8員環細孔であるゼオライトの結晶構造として、CHA構造、AEI構造、AFX構造、GME構造、LEV構造、KFI構造及びSAV構造などが例示できる。
【0013】
ゼオライトの結晶構造は、国際ゼオライト学会で定義される構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)であり、これはCollection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターン、及び、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-structure.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。
【0014】
本発明の小細孔ゼオライトは、結晶性アルミノシリケートであることが好ましい。結晶性アルミノシリケートは、骨格を構成する金属原子(以下、「T原子」ともいう。)がアルミニウム(Al)とケイ素(Si)であり、これらのT原子が酸素(O)を介したネットワークからなる三次元の骨格構造からなる結晶構造を有する。本発明の小細孔ゼオライトは、T原子としてアルミニウムとケイ素以外の金属元素を有するゼオライトを含まないことが好ましく、リン(P)を含むネットワークからなる骨格構造を有するアルミノフォスフェートやシリコアルミノホスフェートなどのゼオライト類縁物質を含まないことがより好ましい。
【0015】
本発明の小細孔ゼオライトの結晶構造は、AFX構造とCHA構造との連晶構造である。連晶構造(intergrowth)は、二次元的又は一次元的な周期構造のうちの少なくともいずれかの周期構造を有する結晶構造である。CHA構造など、各構造コードで示される結晶構造は三次元的な周期構造を示す結晶構造である。これに対し、AFX構造とCHA構造との連晶構造は、a軸方向及びb軸方向にはAFX構造又はCHA構造のいずれかの結晶構造が三次元的な周期構造を有し、なおかつ、c軸方向にはAFX構造とCHA構造とが交互に積層し二次元的な周期構造を有する結晶構造である。すなわち、AFX構造とCHA構造との連晶構造は、AFX構造及びCHA構造に加えて、AFX構造とCHA構造との積層不整を有する結晶構造である。
【0016】
AFX構造とCHA構造との連晶構造からなる結晶構造が示すXRDパターンは、CHA構造を有するゼオライト(以下、「CHA型ゼオライト」ともいう。)、及び、AFX構造を有するゼオライト(以下、「AFX型ゼオライト」ともいう。)を物理的に混合して得られた混合ゼオライトが示すXRDパターンとは異なる。すなわち、混合ゼオライトは、CHA構造及びAFX構造のそれぞれに対応したXRDピークを全て含むXRDパターンを有する。これに対し、AFX構造とCHA構造との連晶構造からなる結晶構造が示すXRDパターンは、CHA構造又はAFX構造のXRDピークの一部がピークシフトしたXRDピークやブロード化したピークなど、連晶構造に由来するXRDピークを含むXRDパターンを示す。
【0017】
本発明において、連晶構造は、DIFFaXを用いたシミュレーションにより得られる連晶構造の粉末X線回折パターン(以下、「DIFFaXパターン」ともいう。)と本発明の小細孔ゼオライトの粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターンとの比較、又は、透過型電子顕微鏡による観察、の少なくともいずれかの方法により確認できる。
【0018】
本発明の小細孔ゼオライトは、その結晶構造におけるCHA構造とAFX構造の合計に対するAFX構造の比率(以下、「AFX比率」ともいう。)が0.5以上1.0未満、更には0.6以上1.0未満であることが好ましい。AFX比率は、CHA構造とAFX構造の比率(以下、「連晶比率」ともいう。)が異なる連晶構造を有する結晶構造のDIFFaXパターンと、本発明の小細孔ゼオライトのXRDパターンとを比較することにより求めることができる。具体的には、「CHA構造:AFX構造」で表した場合の連晶比率が、0.1:0.9、0.2:0.8、0.3:0.7、0.4:0.6、0.5:0.5、0.6:0.4、0.7:0.3、0.8:0.2、0.9:0.1である結晶構造のDIFFaXパターンをそれぞれ求め、これらのDIFFaXパターンと本発明の小細孔ゼオライトのXRDパターンとを比較し、本発明の小細孔ゼオライトのXRDパターンと一致するDIFFaXパターンの連晶比率から、AFX比率を求めることができる。
【0019】
本発明の小細孔ゼオライトはリンを含有する。これにより、小細孔ゼオライトの耐熱性を向上させることができる。また、小細孔ゼオライトの酸点がリンで修飾されることにより、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び、窒素酸化物還元触媒などの各種の触媒や各種触媒の基材として適した酸強度を有する小細孔ゼオライトとなる。
【0020】
リンは、小細孔ゼオライトの骨格以外に含有されていること、すなわち、T原子以外として含有されていることが好ましい。本発明の小細孔ゼオライトが、リンとT原子とが化学結合を介することなくリンを含有することで、T原子であるアルミニウムの熱安定性が向上する。リンは、小細孔ゼオライトの細孔内に含有されていることが好ましく、結晶構造の細孔内に含有されていることがより好ましく、酸素8員環細孔内に含有されていることがより好ましい。リンが細孔内、更には酸素8員環細孔内に存在することで、T原子であるアルミニウムの近傍にリンが存在する。これにより、当該アルミニウムの熱安定性が向上する傾向がある。
【0021】
リンの含有状態は、リン酸イオン又はリン化合物の少なくともいずれかであることが好ましく、リン化合物であることがより好ましく、有機リン化合物であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の小細孔ゼオライトにおいて、リンの含有状態はNMR測定により確認することができる。
【0023】
本発明の小細孔ゼオライトでは、T原子に対するリンのモル比(以下、「P/T比」ともいう。)が0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。P/T比が0.1以下であることで、小細孔ゼオライトの細孔が触媒反応等の目的とする反応に十分に寄与することができる。P/T比は0.0005以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましい。特に好ましいP/T比の範囲として、0.001以上0.1以下を挙げることができる。
【0024】
本発明の小細孔ゼオライトでは、アルミニウムに対するリンのモル比(以下、「P/Al比」ともいう。)が0.50以下であることが好ましい。P/Al比が0.50以下であれば、本発明の小細孔ゼオライトが触媒用途に十分な酸点及び耐熱性を有する。P/Al比は0.002以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましい。触媒活性及び耐熱性を改善しやすくする上では、P/Al比は0.002以上0.50以下であることが特に好ましい。
【0025】
本発明の小細孔ゼオライトでは、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3比」ともいう。)が5以上30以下であることが好ましく、5以上25以下であることがより好ましい。SiO2/Al2O3比が5以上であることで、本発明の小細孔ゼオライトが触媒等の用途において十分な耐熱性を示す。一方、SiO2/Al2O3比が30以下であれば、本発明の小細孔ゼオライトが触媒として十分な量の酸点を有する。耐熱性及び十分な量の酸点を持たせるためには、SiO2/Al2O3比は5以上20以下であることが特に好ましい。
【0026】
本発明の小細孔ゼオライトは、フッ素(F)を実質的に含んでいないこと、すなわち、フッ素含有量が0ppmであることが好ましい。一般的に、ゼオライトに含まれるフッ素は、原料に由来する。原料にフッ素を含む化合物を使用して得られたゼオライトは、その製造コストが高くなりやすい。ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法など、通常の組成分析法により得られる測定値の測定限界を考慮すると、本発明の小細孔ゼオライトのフッ素含有量は0ppm以上100ppm以下であればよく、0ppm以上50ppm以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明におけるP/T比、P/Al比、SiO2/Al2O3比などの各組成は一般的な組成分析方法、例えばICP法、によって測定することができる。
【0028】
本発明の小細孔ゼオライトは、BET比表面積が500m2/g以上1000m2/g以下であることが好ましく、BET比表面積が600m2/g以上800m2/g以下であることがより好ましい。
【0029】
本発明の小細孔ゼオライトは、t-plot法による求まる細孔(以下、「マイクロ細孔」ともいう。)容積が0.2mL/g以上0.4mL/g以下であることが好ましく、0.25mL/g以上0.35mL/g以下であることがより好ましい。
【0030】
次に、本発明の小細孔ゼオライトの製造方法について説明する。
【0031】
本発明の小細孔ゼオライトは、シリカアルミナ源、リン源、有機構造指向剤源、アルカリ源及び水を含む組成物を結晶化する工程、を有する製造方法により得られる。
【0032】
シリカアルミナ源、リン源、有機構造指向剤源、アルカリ源及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する工程(以下、「結晶化工程」ともいう。)により、原料組成物から本発明の小細孔ゼオライトが結晶化する。
【0033】
原料組成物に含まれるシリカアルミナ源は、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)を含む化合物である。ケイ素とアルミニウムとをそれぞれ含む化合物である場合に比べ、ひとつの化合物がケイ素及びアルミニウムを含む場合は、小細孔ゼオライトの結晶化が効率良く進行する傾向がある。好ましいシリカアルミナ源として、無定形アルミノシリケート又は結晶性アルミノシリケートの少なくともいずれかを挙げることができ、結晶性アルミノシリケートであることが好ましく、FAU型ゼオライトであることがより好ましく、X型ゼオライト又はY型ゼオライトの少なくともいずれかであることが更に好ましく、Y型ゼオライトであることが特に好ましい。
【0034】
シリカアルミナ源では、SiO2/Al2O3比が1.25以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。一方、SiO2/Al2O3比は100以下であればよく、50以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。好ましいシリカアルミナ源のSiO2/Al2O3比は、1.25以上50以下であり、5以上10以下であることがより好ましい。
【0035】
シリカアルミナ源のカチオンタイプは任意である。カチオンタイプとして、ナトリウム型(Na型)、プロトン型(H+型)及びアンモニウム型(NH4型)の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、ナトリウム型であることがより好ましい。
【0036】
小細孔ゼオライトの結晶化促進の観点から、シリカ源及びアルミナ源はシリカアルミナ源のみであることが好ましいが、原料組成物のSiO2/Al2O3比を微調整する上では、シリカ源又はアルミナ源の少なくともいずれかを含んでいてもよく、シリカ源を含むことが好ましい。
【0037】
シリカ源はケイ素を含む化合物であり、シリカゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、及び、無定形ケイ酸の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、無定形ケイ酸が好ましい。
【0038】
アルミナ源はアルミニウムを含む化合物であり、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、金属アルミニウム、擬ベーマイト、アルミナゾル及びアルミニウムアルコキシドの群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0039】
リン源は、リンを含有するカチオンの化合物であり、ホスホニウムカチオンを含む化合物であることが好ましく、ホスホニウムカチオンの硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。原料組成物が結晶化する過程におけるリンの取り込みは、電荷バランスの影響を受ける。そのため、リンを含有するカチオンは結晶化物の細孔等の結晶化物内部に取り込まれる。これに対し、リンを含有するアニオンは結晶化物に取り込まれない。そのため、リン酸(PO4
2-)及びその塩など、リンを含有するアニオンはリンの供給源として機能しない。
【0040】
好ましいリン源は、テトラエチルホスホニウム(以下、「TEP」ともいう。)カチオン又はテトラメチルホスホニウム(以下、「TMP」ともいう。)カチオンの少なくともいずれかを含む化合物が挙げられ、TEPカチオンを含む化合物であることが好ましい。好ましいリン源として、テトラエチルホスホニウム水酸化物(以下、「TEPOH」ともいう。)、テトラエチルホスホニウムブロミド(以下、「TEPBr」ともいう。)、テトラエチルホスホニウムクロライド(以下、「TEPCl」ともいう。)、及び、テトラエチルホスホニウムヨージド(以下、「TEPI」ともいう。)の群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、TEPOH又はTEPBrの少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0041】
有機構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)源は、CHA構造及びAFX構造を指向するカチオンを含む塩であり、CHA構造を指向するカチオンを含む塩、及び、AFX構造を指向するカチオンの塩をそれぞれ使用してもよく、例えば、CHA構造を指向する四級アンモニウムカチオンを含む塩、及び、AFX構造を指向する四級アンモニウムカチオンを含む塩であることが好ましい。SDA源に含まれるカチオンによって、結晶構造がCHA構造とAFX構造の連晶構造である小細孔ゼオライトが原料組成物から結晶化する。
【0042】
CHA構造を指向するカチオン(以下、「SDACHA」ともいう。)を含む塩は、SDACHAの硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、SDACHAのハロゲン化物又は水酸化物の少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0043】
SDACHAは、トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムカチオン、コリンカチオン及びトリメチルベンジルアンモニウムカチオンの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、トリメチル-1-アダマンタンアンモニウム(以下、「TMAda」ともいう。)カチオンであることがより好ましい。
【0044】
TMAdaカチオンを含む塩は、トリメチル-1-アダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、「TMAdaOH」ともいう。)、トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムブロミド(以下、「TMAdaBr」ともいう。)、トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムクロライド(以下、「TMAdaCl」ともいう。)、及び、トリメチル-1-アダマンタンアンモニウムヨージド(以下、「TMAdaI」ともいう。)の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、TMAdaOH又はTMAdaBrの少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0045】
AFX構造を指向するカチオン(以下、「SDAAFX」ともいう。)を含む塩は、SDAAFXの硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物及び水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、SDAAFXのハロゲン化物又は水酸化物の少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0046】
SDACHAは、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルカチオン、1,4-ビス(アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルカチオン、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオン、及び、N,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクテン-2,3:5,6-ジピロリジニウムカチオンの群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチル(以下、「Dab-4」ともいう。)カチオンであることが好ましい。
【0047】
Dab-4カチオンを含む塩は、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジオキシド、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジクロライド、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジブロミド、及び、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジヨージドの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、1,4-ビス(1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジブロミド(以下、「[Dab-4]2+(Br-)2」ともいう。)であることがより好ましい。
【0048】
アルカリ源はアルカリ金属の化合物であり、アルカリ金属水酸化物であることが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる少なくとも1種を含む水酸化物であることがより好ましく、ナトリウム又はカリウムの少なくともいずれかを含む水酸化物であることが更に好ましく、ナトリウムを含む水酸化物であることが特に好ましい。
【0049】
水は純水であってもよいが、原料組成物に含まれる各原料に由来する構造水や溶媒としての水であってもよい。
【0050】
原料組成物では、SiO2/Al2O3比が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、SiO2/Al2O3比は100以下であればよく、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。好ましいSiO2/Al2O3比は、10以上50以下であり、20以上40以下であることがより好ましい。
【0051】
原料組成物では、シリカに対するリンのモル比(以下、「P/SiO2比」ともいう。)が0.001以上1.0以下であればよく、0.002以上0.5以下であることが好ましい。小細孔ゼオライトにおいて、リンの含有を促進させやすくする上では、P/SiO2比は0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.1以上0.4以下であることが更に好ましい。
【0052】
原料組成物では、シリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO2比」ともいう。)は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.10以上であることが更に好ましい。製造コストを低減する観点から、SDA/SiO2比は、0.50以下であればよく、0.30以下であることが好ましく、0.20以下であることがより好ましい。
【0053】
SDA源がSDACHAを含む塩、及び、SDAAFXを含む塩である場合、SDACHA及びSDAAFXの合計に対するSDAAFXのモル比(以下、「SDA比」ともいう。)は、0よりも大きく1未満であればよい。
【0054】
原料組成物では、シリカに対するアルカリ金属のモル比(以下、「アルカリ/SiO2比」ともいう。)は、0.1以上1.5以下であることが好ましく、0.5以上1.0以下であることがより好ましい。
【0055】
原料組成物では、シリカに対するOHのモル比(以下、「OH/SiO2比」ともいう。)は、0.1以上1.0以下であることが好ましく、0.5以上1.0以下であることがより好ましい。
【0056】
原料組成物では、シリカに対する水(H2O)のモル比(以下、「H2O/SiO2比」ともいう。)は、3以上50以下であることが好ましく、10以上40以下であることがより好ましい。原料組成物に適度な流動性を付与する観点から、H2O/SiO2比は20以上35以下であることが好ましい。
【0057】
好ましい原料組成物の各モル比として以下の範囲を挙げることができる。
SiO2/Al2O3比 :10以上50以下
P/SiO2比 :0.001以上1.0以下
SDA/SiO2比 :0.01以上0.50以下
(SDA比) :0よりも大きく1未満
アルカリ/SiO2比 :0.1以上1.5以下
OH/SiO2比 :0.1以上1.0以下
H2O/SiO2比 :3以上50以下
【0058】
原料組成物にフッ素を含む化合物が含まれると、製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物はフッ素(F)を実質的に含んでいないことが好ましい。ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法など、通常の組成分析法により得られる測定値の測定限界を考慮すると、原料組成物のフッ素含有量は0ppm以上100ppm以下であればよく、0ppm以上50ppm以下であることがより好ましい。
【0059】
結晶化工程では原料組成物を水熱処理することにより、これを結晶化すればよい。
【0060】
水熱処理の温度は、原料組成物の結晶化が進行する温度であればよく、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。原料組成物が結晶化すれば、必要以上に水熱処理の温度を高くする必要はない。そのため、水熱処理の温度は、200℃以下であればよく、180℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。
【0061】
水熱処理において、原料組成物は、攪拌した状態又は静置した状態のいずれの状態であってもよい。
【0062】
本発明の製造方法では、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程及びイオン交換工程の少なくともいずれか(以下、「後処理工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0063】
洗浄工程では、結晶化工程後の小細孔ゼオライトと液相を公知の方法で固液分離し、固相として得られる小細孔ゼオライトを純水で洗浄すればよい。
【0064】
乾燥工程では、結晶化工程後又は洗浄工程後の小細孔ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、結晶化工程後又は洗浄工程後の小細孔ゼオライトを、大気中、50℃以上150℃以下で2時間以上、静置することが例示できる。
【0065】
イオン交換工程では、小細孔ゼオライトを任意のカチオンタイプとする。カチオンタイプをアンモニウム型とする場合、小細孔ゼオライトと塩化アンモニウム水溶液とを混合することが挙げられる。また、カチオンタイプをプロトン型とする場合、アンモニウム型の小細孔ゼオライトを焼成することが挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
(結晶構造の同定)
一般的なX線回折装置(装置名:D8 Advance、Bruker社製)を使用し、以下の条件で試料のXRD測定をした。
線源 :CuKα線(λ=1.5405Å)
測定範囲:2θ=5°~50°
【0068】
得られたXRDパターンと、DIFFaXパターンとを比較することで、試料の結晶構造を同定した。DIFFaXパターンとして、AFX比率が0.7(CHA構造:AFX構造=0.3:0.7)である、CHA構造とAFX構造の連晶構造のDIFFaXパターンを使用した。
【0069】
(組成分析)
水酸化カリウム水溶液に試料を溶解して試料溶液を調製した。一般的なICP装置(装置名:SPS7000、Seiko社製)を使用して、当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)で測定することにより、試料の組成を分析した。
得られた測定値から、試料の各組成を求めた。
【0070】
(窒素吸着測定)
一般的な窒素吸着装置(装置名:BELSORP-mini、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて、試料に対する窒素ガスの吸着量を測定した。窒素ガスの吸着結果に、BET法を適用することにより、試料のBET比表面積を求めた。また、窒素ガスの吸着結果に、t-plot法を適用することにより、マイクロ細孔容積を求めた。なお、窒素ガス吸着は、通常の定容量法を用いた。測定条件は、以下に示す通りである。
測定温度 :-196℃
前処理 :400℃、10時間、窒素流通
【0071】
(NMR)
一般的なNMR測定装置(装置名:Varian600PS、Varian社製)を使用し、以下の条件で試料のNMRを測定した。
周波数 :150.88MHz
ローター:ジルコニアローター、直径3.2mm
回転速度:7kHz
【0072】
(相対結晶化度の算出)
結晶構造の同定と同様な方法で試料のXRDパターンを得た。得られたXRDパターンにおいて、それぞれ、2θが12.9±0.2°、17.6±0.2°、20.3±0.2°、25.9±0.2°及び30.4±0.2°にピークトップを有するXRDピークを求め、その合計強度を結晶化度とした。
【0073】
実施例1
リン源としてTEPBr水溶液、SDA源としてTMAdaOH水溶液及び[Dab-4]2+(Br-)2水溶液を使用し、リン源、SDA源、純水、水酸化ナトリウム、シリカ源として無定形ケイ酸(3号ケイ酸ソーダ)、及びFAU型ゼオライト(Y型、カチオンタイプ:Na型、SiO2/Al2O3比=5.5、アルミノシリケート)を混合して以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0.1
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.80
アルカリ/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0074】
得られた原料組成物を密閉容器内に充填し、この密閉容器を10rpmで回転させて原料組成物を撹拌した状態で140℃、4日間の条件で水熱処理を行うことにより、原料組成物を結晶化させた。結晶化工程後の原料組成物を固液分離し、固形分を純水で洗浄した後、70℃で乾燥して本実施例のゼオライトを得た。
【0075】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本実施例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が10.2、P/Al比が0.028、及び、P/T比が0.005であった。
【0076】
実施例2
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0.2
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.80
アルカリ/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0077】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本実施例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が9.8、P/Al比が0.044、及び、P/T比が0.007であった。
【0078】
本実施例の小細孔ゼオライトのXRDパターンを
図1に示し、SEM写真を
図2に示す。
【0079】
実施例3
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0.3
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.80
アルカリ/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0080】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本実施例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が5.8、P/Al比が0.050、及び、P/T比が0.013であった。
【0081】
実施例4
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0.35
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.80
アルカリ/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0082】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本実施例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が5.2、P/Al比が0.071、及び、P/T比が0.020であった。
【0083】
実施例5(参考例)
リン源として、TEPBr水溶液の代わりにTEPOH水溶液を使用したこと、及び、原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0.0025
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.80
Na/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0084】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本実施例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が11.8、P/Al比が0.009、及び、P/T比が0.001であった。
【0085】
実施例6(参考例)
原料組成物を以下の組成としたこと以外は実施例5と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0.0125
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.81
アルカリ/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0086】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本実施例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が8.8、P/Al比が0.003、及び、P/T比が0.001であった。
【0087】
比較例1
リン源を使用しなかったこと、及び、原料組成物を以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様の方法で本実施例のゼオライトを得た。
SiO2/Al2O3比 =25
P/SiO2比 =0
SDA/SiO2比 =0.121
SDA比 =「Dab-4」/(TMAda+「Dab-4」)
=0.79
OH/SiO2比 =0.80
アルカリ/SiO2比 =0.78
H2O/SiO2比 =28.4
【0088】
XRDパターン及びDIFFaXパターンの比較結果によれば、本比較例のゼオライトは、CHA構造及びAFX構造の連晶構造からなる結晶構造を有する小細孔ゼオライトであった。また、上述した組成分析によれば、本実施例の小細孔ゼオライトでは、SiO2/Al2O3比が12.4であったが、P/Al比が0、及び、P/T比が0であった。
【0089】
実施例1~6及び比較例1の結果を下記表1に示す。
【0090】
【0091】
測定例1
実施例2及び比較例1の小細孔ゼオライトを空気中500℃で10時間焼成した。焼成後の小細孔ゼオライトの評価結果を下記表2に示す。
【0092】
【0093】
上記表2より、実施例2の小細孔ゼオライトは、比較例1の小細孔ゼオライトと比べ、BET比表面積が大きく、なおかつ、マイクロ細孔容積が同程度であることが確認できた。これより、実施例2の小細孔ゼオライトはリンを含有しているにもかかわらず、結晶構造中の細孔がリンにより閉塞していないことが確認できた。
【0094】
測定例2
実施例2、実施例4及び比較例1の小細孔ゼオライトを空気中500℃で10時間焼成した。焼成後の各小細孔ゼオライトを空気中、750℃及び800℃のそれぞれで1時間熱処理し、熱処理前後の結晶化度を求め、以下の式に従って相対結晶化度を求めた。結果を下記表3に示す。
【0095】
相対結晶化度(%)=(熱処理後の小細孔ゼオライトの結晶化度
/熱処理前の小細孔ゼオライトの結晶化度)×100
【0096】
【0097】
上記表3より、リンを含有する実施例2及び実施例4の小細孔ゼオライトは、リンを含有しない比較例1の小細孔ゼオライトよりも相対結晶化度が高いこと、すなわち、耐熱性が高いことが確認できた。さらに、実施例2よりもリンの含有量が多い(すなわち、上記表1に示すP/SiO2比が高い)実施例4の小細孔ゼオライトは、より相対結晶化度が高くなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の小細孔ゼオライトは、例えば、アルコールやケトンからの低級オレフィン製造用触媒、クラッキング触媒、脱ろう触媒、異性化触媒、及び排気ガスからの窒素酸化物還元触媒及びこれらの触媒の基材として使用することができる。さらに、窒素酸化物還元触媒として使用することができる。また、優れた耐熱性を有しているため、高温の状況下でも使用することができる。