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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】六方晶フェライト磁性粉
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/706 20060101AFI20220330BHJP
   G11B 5/714 20060101ALI20220330BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20220330BHJP
   H01F 1/11 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G11B5/706
G11B5/714
C01G49/00 C
H01F1/11
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019216472
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2020095770
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018229078
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129470
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 高
(72)【発明者】
【氏名】大元 寛久
(72)【発明者】
【氏名】金田 秀治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】多田 稔生
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171264(JP,A)
【文献】特開2003-059032(JP,A)
【文献】特開2012-204726(JP,A)
【文献】特開平09-232123(JP,A)
【文献】特開2012-142529(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/62 - 5/82
C01G 49/00
H01F 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶フェライト粒子の表面にアルミニウム水酸化物が被着した磁性粒子からなり、Al/Feモル比が0.030~0.200、Co/Feモル比が0.002~0.030、Nb/Feモル比が0.005~0.050、下記(1)式により算出されるFeサイト価数AFeが3.015~3.040である、磁気記録媒体用六方晶フェライト磁性粉。
Fe=(3+2×[Co/Fe]+5×[Nb/Fe])/(1+[Co/Fe]+[Nb/Fe]) …(1)
ここで、[Co/Fe]はCo/Feモル比、[Nb/Fe]はNb/Feモル比を意味する。
【請求項2】
活性化体積Vactが1400~1800nm3である、請求項1に記載の磁気記録媒体用六方晶フェライト磁性粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体用のM型六方晶フェライト磁性粉に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ等の磁気記録媒体に用いる高密度記録に適した磁性粉として、六方晶フェライト磁性粉が知られている。磁気記録媒体の性能としては、記録密度が高いことに加え、SNR(S/N比)が高いこと、およびドライブに走行させたときの耐久性に優れることも重要である。
【0003】
特許文献1には、希土類元素とBiを添加し、かつ粒子表面にアルミニウム水酸化物を被着させた六方晶フェライト磁性粉を適用することによって、磁気記録媒体のSNRと耐久性を同時に改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-139451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、デジタルデータの利用が増え続ける中、膨大なデータの保存を担う磁気記録媒体には磁気特性および耐久性の両面において、今後も更なる特性改善が望まれている。
磁気記録媒体への情報の記録および再生は、通常、磁気記録媒体(磁気テープなど)をドライブ内で走行させ、磁気記録媒体の磁性層表面を磁気ヘッドと接触させ摺動させることにより行われる。その際、電磁変換特性を向上させる手法の1つとして、磁性層表面の平滑性を高めることが有効である。ところが、従来、SNRと耐久性の同時改善に有効であるとされていた特許文献1に開示の磁性粉を、平滑性の高い磁性層が得られるように開発された磁性層塗布液に適用して磁気記録媒体を作製したところ、特許文献1に開示の磁性粉を用いても磁気記録媒体の耐久性改善効果が不十分であることがわかった。
【0006】
本発明は、磁気記録媒体のSNRを含めた磁気特性の向上と、耐久性の更なる向上とを同時に実現し得る磁性粉末を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは詳細な研究の結果、M型六方晶フェライト磁性粉において、CoとNbの含有によってFeサイトの原子の平均的な原子価を厳密に制御し、かつアルミニウム水酸化物を粒子表面に被着させることが、磁気記録媒体のSNRと耐久性の顕著な向上に極めて有効であることを見出した。
【0008】
すなわち上記目的は、六方晶フェライト粒子の表面にアルミニウム水酸化物が被着した磁性粒子からなり、Al/Feモル比が0.030~0.200、Co/Feモル比が0.002~0.030、Nb/Feモル比が0.005~0.050、下記(1)式により算出されるFeサイト価数AFeが3.015~3.040である、磁気記録媒体用六方晶フェライト磁性粉によって達成される。この磁性粉の活性化体積Vactは例えば1400~1800nm3とすることができる。
Fe=(3+2×[Co/Fe]+5×[Nb/Fe])/(1+[Co/Fe]+[Nb/Fe]) …(1)
ここで、[Co/Fe]はCo/Feモル比、[Nb/Fe]はNb/Feモル比を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁性粉は、磁性層の平滑性向上効果が高い処方の磁性層塗布液に適用した場合でも、SNRと耐久性の優れた改善効果が安定して発揮される磁気記録媒体を構築することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《六方晶フェライト磁性粉》
〔成分組成〕
本発明で対象とする六方晶フェライトは、BaO・6Fe23を基本構造とするマグネトプランバイト型(M型)のものである。Feサイトの一部を2価の遷移金属Coと、5価の遷移金属Nbとで置換する。Co/Feモル比は0.002~0.030の範囲とする。Nb/Feモル比は0.005~0.050の範囲とする。これらのモル比において、本発明の磁性粉を用いて製造される磁気記録媒体の優れたSNR特性と優れた耐久性との両立を図ることができる。
【0011】
一般的に六方晶フェライトにおいては、Feサイトの一部を2価の遷移金属M2、4価の遷移金属M4、5価の遷移金属M5の1種以上で置換することが行われる。2価の遷移金属M2としてはCo、Zn等が挙げられ、4価の遷移金属M4としてはTi、Sn等が挙げられ、5価の遷移金属M5としてはNb、Ta等が挙げられる。これらの遷移元素で置換することにより保磁力Hc等の磁気特性を調整することができる。Feサイト原子の平均的な原子価を表す指標として、Feサイト価数がある。2価の遷移金属M2、4価の遷移金属M4、5価の遷移金属M5の1種以上で置換した場合の一般化されたFeサイト価数を本明細書ではXFeと表記する。Feサイト価数XFeは下記(2)式によって表される。
Fe=(3+2×[M2/Fe]+4×[M4/Fe]+5×[M5/Fe])/(1+[M2/Fe]+[M4/Fe]+[M5/Fe]) …(2)
ここで、[M2/Fe]は2価の遷移金属M2とFeのモル比、[M4/Fe]は4価の遷移金属M4とFeのモル比、[M5/Fe]は5価の遷移金属M5とFeのモル比を意味する。
従来一般的に、Feサイト価数XFeはできるだけ3価に近い3.000前後の値に調整されている。
【0012】
本明細書では、Feサイトの置換元素として2価のCoと5価のNbを使用する。したがって、CoとNbの含有量により規定されるFeサイト価数として、下記(1)式のAFeを導入する。
Fe=(3+2×[Co/Fe]+5×[Nb/Fe])/(1+[Co/Fe]+[Nb/Fe]) …(1)
ここで、[Co/Fe]はCo/Feモル比、[Nb/Fe]はNb/Feモル比を意味する。
【0013】
発明者らは研究の結果、Feサイトの一部をCoおよびNbで置換する際、単にその置換量を調整するのではなく、Feサイトの原子の平均的な原子価を3価よりも僅かにプラス側にシフトさせることによって、平滑性の高い磁性層を形成した磁気記録媒体において、従来よりも効果的にSNRと耐久性との両立が可能になることを見出した。具体的には、Feサイト価数AFeが3.015~3.040の範囲となるように組成を厳密にコントロールすることが極めて有効である。AFeが上記範囲を外れて小さくなると磁気記録媒体の耐久性向上効果が低下する。AFeが上記範囲を外れて大きくなると磁気記録媒体のSNR向上効果が低下する。Co、Nb以外のFeサイト置換元素は添加しなくても構わない。すなわち、一般化されたFeサイト価数XFeが、(1)式によるFeサイト価数AFeと等しくなる組成を適用することができる。この場合、Feサイト価数AFeが3.015~3.040の範囲に調整されていることは、一般化されたFeサイト価数XFeも3.015~3.040の範囲に調整されていることを意味する。
【0014】
本発明の六方晶フェライト磁性粉はAlを含有する。Alは、Al水酸化物として六方晶フェライト粒子の表面に付着させる。焼成により合成した六方晶フェライト粉を洗浄したのち乾燥させた乾燥粉の表面に、水酸化アルミニウム、バイヤライト、ベーマイト、非晶質の水酸化アルミニウムゲルの1種または2種以上で構成されるアルミニウム水酸化物を被着させてなる被覆層は、磁気記録媒体(例えば磁気テープ)における磁性層の耐久性を向上させるために極めて有効である。上記耐久性向上作用は磁性粉中のAl/Feモル比が0.030以上となるようにアルミニウム水酸化物を被着させることによって発揮される。Al/Feモル比は0.038以上であることがより効果的である。ただし、非磁性成分であるAlが過剰に存在すると磁気特性の低下を招く要因となる。そのため、Al/Feモル比は0.200以下の範囲とすることが望ましく、0.100以下に管理してもよい。Al水酸化物を被着させる処理については特許文献1に開示されている技術を利用することができる。六方晶フェライト粒子の表面に付着したアルミニウム水酸化物の同定は、XAFS(X線吸収微細構造)解析により行うことができる。
【0015】
本発明の六方晶フェライト磁性粉は、Biを含有するものであってもよい。Biは、小粒子化および磁気特性の向上に有効な元素である。原料混合物中のBiの大部分は六方晶フェライト磁性粉中に入る。Biの上記作用を十分に得るためには、磁性粉のBi/Feモル比が0.001~0.100となるように原料混合物中のBi添加量を調整することが好ましく、0.010~0.050の範囲に管理してもよい。
【0016】
〔活性化体積Vact〕
粉体の磁気特性の計測により算出される活性化体積Vactは、1400~1800nm3であることが望ましい。磁性粉を磁気記録媒体に使用する場合、磁性粉の充填度が大きいほどSNRの向上(ノイズの低減)には有効となる。その意味においてVactが小さい磁性粉を適用することが有利である。ただし、Vactを極度に小さくするためには粉体の粒子サイズを極めて微細にする必要があり、製造上の困難を伴う。さらに、アルカリ土類金属元素のサイトがBaであるM型六方晶フェライトの場合、粒子サイズが小さいほど酸洗浄の工程でのBa損失が増大しやすい。Ba損失は磁気特性の低下を招き、小粒子化(すなわちVact低減)によるSNR向上効果を相殺する要因となる。一方、Vactが大きいほど上述のBa損失の抑制には有利となるが、粒子サイズが大きいことに起因して磁気記録媒体のSNRを向上させる効果は減少し、昨今の厳しいSNR特性の要求に応えられなくなる。これらの点を種々検討した結果、六方晶フェライト磁性粉においてSNRの向上を特に重視する場合には、活性化体積Vactを1400~1800nm3の範囲とすることが望ましいという知見を得た。
【0017】
原料混合物の非晶質体を結晶化させる手法で六方晶フェライトを合成する場合、「非晶質体の成分組成」と「結晶化条件(特に加熱温度)」の組合せによって、得られる六方晶フェライト粉の活性化体積Vactをコントロールすることができる。
【0018】
〔粉末磁気特性〕
本発明で対象とする磁性粉は、保磁力Hcが159~239kA/m(約2000~3000Oe)であることが望ましく、保磁力分布SFDが0.4~1.0であることが望ましい。また、飽和磁化σsは40.0~50.0A・m2/kg、角形比SQは0.48~0.56の範囲で調整すればよい。
【0019】
〔BET比表面積〕
上述のように、磁気記録媒体のノイズ低減には、使用する磁性粉の小粒子化が有効である。粒子のサイズ的因子を比表面積で見た場合、BET一点法によるBET比表面積は50~130m2/gであることが望ましい。
【0020】
《磁性粉の製造方法》
本発明に従う六方晶フェライト磁性粉は、原料混合物の非晶質体を結晶化させる手法を用いて製造することができる。具体的には、例えば以下の工程を経ることによって製造することができる。
【0021】
〔原料混合工程〕
六方晶フェライト磁性粉を構成する元素および非晶質体を形成するために必要な元素を含む各種原料物質を混合して原料混合粉を得る。本発明に従う六方晶フェライト磁性粉はBaO・6Fe23型の基本構造を有し、Feの一部はCoおよびNbで置換される。上記各元素のうち、金属元素の供給源としては、通常、それらの元素の酸化物や水酸化物が使用される。BaおよびBの供給源としては、それぞれBaCO3およびH3BO3を使用することが望ましい。各原料物質は混合機により撹拌混合され、原料混合物とされる。ヘンシェルミキサーなど撹拌羽根を有する混合機でせん断混合することが望ましい。
【0022】
〔造粒工程〕
得られた原料混合物は、後工程での取扱い性等を考慮して、所定の粒径を有する球状造粒品とすることが一般的である。例えばパン型造粒機を用いて、水あるいは必要に応じてバインダー成分を添加しながら球状に成形し、直径1~50mm程度の粒状物とし、これを200~300℃程度に加熱して乾燥させることにより造粒品が得られる。
【0023】
〔非晶質化工程〕
乾燥後の原料混合物(上記造粒品)を高温に昇温して溶融させ、1350~1450℃の溶融体とする。その溶融体を急冷することにより非晶質体とする。急冷の手法としては、双ロール法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、遠心アトマイズ法などが挙げられる。発明者らの検討によれば、活性化体積Vactが前記範囲にある小粒子化された六方晶フェライト結晶を生成させる場合には、ガスアトマイズ法により非晶質体を得ておくことがより効果的である。得られた非晶質体は、必要に応じてボールミル等により解砕した後、粒度調整することができる。
【0024】
〔結晶化工程〕
上記非晶質体を580~720℃の温度範囲で加熱保持することにより、六方晶フェライト結晶を析出させる。保持時間は通常、60~240分とすればよい。この結晶化の熱処理によって得られた粉体には、六方晶フェライト結晶の他、非晶質体に含まれていた残余成分が結晶化した物質(主としてホウ酸バリウム結晶)が含まれる。
【0025】
〔酸洗浄工程〕
次に、結晶化工程で得られた粉体から、六方晶フェライト粒子を抽出するために、ホウ酸バリウムを主体とする残余物質を酸によって溶解除去する。この処理をここでは「酸洗浄」と呼ぶ。酸洗浄液としては濃度2~20質量%の酢酸水溶液が好適である。結晶化工程で得られた粉体を酸洗浄液中に浸漬し、沸点以下の温度に保持する。液を撹拌することが効果的である。液のpHは5.0以下とすることが好ましい。上記残余成分の溶解が終了した後、固液分離して、六方晶フェライト粉を抽出する。
【0026】
上記固液分離によって抽出された六方晶フェライト粉には酸洗浄液が付着しているため、それを水によって洗い落とす。この処理をここでは「水洗」と呼ぶ。水洗の初期段階として、必要に応じてアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で中和する処理を行うことができる。アルカリ水溶液の濃度は、例えば水酸化ナトリウムならば0.01~1.5mol/Lの範囲で調整すればよい。
【0027】
〔被着前解砕工程〕
このようにして得られた六方晶フェライトに、アルミニウム水酸化物を被着させる場合には、解砕処理を施し、微粉化しておくことが望ましい。この段階の解砕処理は一般的な湿式ミルを適用すればよい。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布において、全粒子の90%以上が粒子径0.1~100μmの範囲に入るように、アルミニウム水酸化物被着処理前の段階で十分に微細化しておくことが好ましい。
【0028】
〔アルミニウム水酸化物被着工程〕
酸洗浄工程で得られた六方晶フェライト粒子に、アルミニウム水酸化物を被着させてもよい。本明細書においては、水酸化アルミニウム、バイヤライト、ベーマイト、非晶質の水酸化アルミニウムゲルを総称して、アルミニウム水酸化物と呼ぶ。
六方晶フェライト粒子を、アルミニウム塩が溶解している水溶液中に分散させ、スラリーとする。このスラリーにアルカリを添加することにより、アルミニウム水酸化物の生成反応を生じさせ、六方晶フェライト粒子の表面にアルミニウム水酸化物の層を形成する。スラリーの温度は25~50℃程度とすればよい。反応前(アルカリ添加前)の液のpHは2.0~5.0であることが好ましく、2.0~4.0の範囲がより好ましい。反応前のpHが2.0より低いと六方晶フェライト粒子の一部が溶解しやすく、場合によっては磁気特性の低下を招く要因となる。反応時の液のpHは7.0~10.0に調整することが好ましい。pHが7.0より低い場合あるいは10.0より高い場合は、磁気記録媒体の耐久性向上に有効なアルミニウム水酸化物を十分に生成させて六方晶フェライト粒子表面へ被着させることが難しくなる。反応終了後、スラリーを上記温度範囲で5~30分程度撹拌することが望ましい。アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウムなどが適用でききる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどが適用でききる。アルミニウム塩の使用量は、固形分(湿式解砕後の六方晶フェライト粒子)100質量部に対し、Alの量がAl(OH)3換算で1~17質量部となるように設定することが望ましい。
【0029】
〔ろ過工程および乾燥工程〕
次に、六方晶フェライト粒子を含むスラリーをろ過などの手法により固液分離し、固形分を回収する。この固形分を十分に水洗する。具体的には、洗浄后液(ろ液)の導電率が10μS/cm以下となるまで入念に水洗を行うことが望ましい。
【0030】
水洗が終了した固形分を、120℃未満、より好ましくは115℃以下の温度で乾燥させる。乾燥時間は例えば1~20時間の範囲で選択すればよい。乾燥温度が高いと磁気記録媒体の耐久性を安定して顕著に改善することが難しくなる。乾燥温度の下限については特にこだわる必要はなく、常温でも構わない。例えば20℃以上範囲で設定することができる。このようにして、六方晶フェライト磁性粒子からなる乾燥粉または、六方晶フェライト粒子の表面にアルミニウム水酸化物が被着している磁性粒子からなる乾燥粉が得られる。上記乾燥粉に最終的な仕上解砕処理を施し、粒度分布を調整してもよい。
【実施例
【0031】
[実施例1]
(六方晶フェライト磁性粉の製造)
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化コバルトCoO(試薬90%以上)、酸化ニオブNb25(工業用)を秤量して表1に示す原料配合とし、三井三池製FMミキサーを用いて混合し、原料混合物を得た。上記原料混合物をペレタイザーに入れ、水を噴霧しながら球状に成形して造粒し、その後270℃で14時間乾燥させ、粒径1~50mmの造粒品を得た。
【0032】
上記造粒品を、白金るつぼを用いて溶融炉により溶融させた。1400℃まで昇温して60分撹拌しながら保持し、各原料物質を完全に溶融状態としたのち、その溶融物(溶湯)をノズルから出湯させて、ガスアトマイズ法にて急冷し、非晶質体を得た。得られた非晶質体を所定の温度に加熱保持することにより結晶化させ、六方晶フェライトを生成させた。この加熱保持温度を「結晶化処理温度」と呼ぶ。結晶化処理温度での保持時間は60分とした。
【0033】
上記加熱保持によって得られた粉体中には、六方晶フェライトの他、ホウ酸バリウムを主体とする残余物質が含まれている。以下、この粉体を「結晶化後の粉体」と呼ぶ。残余物質を除去するための酸洗浄を以下の条件で行った。
酸洗浄条件;
結晶化後の粉体を60℃に加温した10質量%酢酸水溶液に浸漬させ、撹拌しながら1時間保持して上記残余物質を液中に溶解させ、ろ過により固液分離を行い、純水を加えて洗浄した。
その後、回収した固形物に純水を加えて撹拌し、スターミルで湿式解砕した。
【0034】
湿式解砕後の固形分を含むスラリーに塩化アルミニウム水溶液を添加した。塩化アルミニウムによるAlの添加量を固形分100質量部に対するAl(OH)3換算で3.3質量部とした。塩化アルミニウム水溶液添加後のスラリーを40℃で10分撹拌した。このスラリーのpHは3.0~4.0の範囲にあった。その後、水酸化ナトリウムを添加してpHを8.0~9.0に調整した後、40℃で更に10分撹拌することにより、反応生成物であるアルミニウム水酸化物の層を固形分の粒子(六方晶フェライト磁性粒子)の表面に形成した。その後、ろ過により固液分離を行い、純水を加え、洗浄后液(ろ液)の導電率が10μS/cm以下となるまで水洗した。水洗後に110℃の空気中で12時間の乾燥を行い、次いでディスクミル(中央化工機商事株式会社製、プレマックスPR-100型)により乾式での解砕処理を施した。このようにして六方晶フェライト粒子の表面にアルミニウム水酸化物を被着させた乾燥粉を得た。これを供試粉として以下の調査に供した。
【0035】
(磁性粉末の組成分析)
アジレントテクノロジー株式会社製の高周波誘導プラズマ発光分析装置ICP(720-ES)により供試粉の組成分析を行った。得られた定量値から、各元素のFeに対するモル比を算出した。ある元素X(Xは例えばCo、Alなど)についてのX/Feモル比は下記の式により算出される。
X/Feモル比=X含有量(モル%)/Fe含有量(モル%)
Baの含有量については、以下の式で算出されるBa/Feサイト元素モル比で表示した。
Ba/Feサイト元素モル比=Ba含有量(モル%)/FeおよびFeサイトの一部を置換する遷移金属元素の合計含有量(モル%)
本例の場合、Feサイトの一部を置換する遷移金属元素はCoとNbのみであるから、Ba/Feサイト元素モル比=Ba含有量(モル%)/(Fe含有量(モル%)+Co含有量(モル%)+Nb含有量(モル%))となる。
【0036】
(Feサイト価数)
CoとNbの含有量により規定されるFeサイト価数AFeおよび一般化されたFeサイト価数XFeを、それぞれ上述の(1)式および(2)式により求めた。本例の場合、Feサイトの一部を置換する遷移金属元素はCoとNbのみであるから、AFe=XFeとなる。
【0037】
(粉末磁気特性の測定)
供試粉をφ6mmのプラスチック製容器に詰め、東英工業株式会社製VSM装置(VSM-P7-15)を使用して、外部磁場795.8kA/m(10kOe)で、保磁力Hc、飽和磁化σs、角形比SQ、保磁力分布SFD(粉体のバルク状態におけるSFD値)を測定した。
【0038】
(BET比表面積の測定)
供試粉について、ユアサアイオニクス株式会社製4ソーブUSを用いてBET一点法による比表面積を求めた。
【0039】
(活性化体積Vactの算出)
パルス磁界発生器(東英工業社製)および振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて、六方晶フェライト磁性粉を飽和磁化させた後、飽和磁化方向とは逆方向に磁場(逆磁場と呼ぶ)を0.76ms印加し、磁場を取り去った時の残留磁化量を測定した。この逆磁場の値を変更し、残留磁化が0Am2/kgとなるときの逆磁場の値Hr(0.76ms)を求めた。このHrを残留保磁力と呼ぶこととする。磁性体のHr値によって印加する逆磁場の値は適宜設定することができる。次に印加時間を8.4msとして同様の操作を行い、残留磁化が0Am2/kgとなるときの残留保磁力Hr(8.4ms)を求めた。更に印加時間を17sとして同様の操作を行い、残留磁化が0Am2/kgとなる時の残留保磁力Hr(17s)を求めた。Hr(0.76ms)、Hr(8.4ms)、Hr(17s)を用いて、下記(3)式からH0、KuV/kTを算出し、その値を下記(4)式に代入して活性化体積Vactを算出した。
Hr(t)=H0{1-[(kT/KuV)ln(f0t/ln2)]0.77} ……(3)
ここで、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、Ku:結晶磁気異方性定数、V:活性化体積、Hr(t):印加時間tにおける残留保磁力(Oe)、H0:10-9秒での残留保磁力(Oe)、f0:スピン歳差周波数(s-1)、t:逆磁場保持時間(s)、である。f0の値はここでは10-9(s-1)である。
Vact(nm3)=1.505×105×KuV/kT/H0 ……(4)
【0040】
〔磁気記録媒体(磁気テープ)の作製〕
以下、磁気テープ作製に関して記載する「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0041】
(磁性層塗布液の処方)
<磁性液>
六方晶バリウムフェライト磁性粉粒子:100.0部
オレイン酸:2.0部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン製MR-104):10.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:4.0部
(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.07meq/g)
アミン系ポリマー(ビックケミー社製DISPERBYK-102):6.0部
メチルエチルケトン:150.0部
シクロヘキサノン:150.0部
<研磨剤液>
α-アルミナ(比表面積19m2/g、真球度1.4):6.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂
(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.1meq/g):0.6部
2,3-ジヒドロキシナフタレン:0.6部
シクロヘキサノン:23.0部
<非磁性フィラー液>
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ80nm、変動係数=7%、真球度1.03):
2.0部
メチルエチルケトン:8.0部
<潤滑剤・硬化剤液>
ステアリン酸:3.0部
ステアリン酸アミド:0.3部
ステアリン酸ブチル:6.0部
メチルエチルケトン:110.0部
シクロヘキサノン:110.0部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネート(登録商標)L):3部
【0042】
(非磁性層塗布液の処方)
非磁性粉体 α酸化鉄(平均長軸長10nm、平均針状比:1.9、BET比表面積75m2/g):100部
カーボンブラック(平均粒径20nm):25部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂(平均分子量70000、SO3Na基含有量0.2meq/g):18部
ステアリン酸:1部
シクロヘキサノン:300部
メチルエチルケトン:300部
【0043】
(バックコート層塗布液の処方)
非磁性無機粉末:α酸化鉄(平均長軸長0.15μm、平均針状比:7、BET比表面積52m2/g):80部
カーボンブラック(平均粒径20nm):20部 塩化ビニル共重合体:13部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂:6部
フェニルホスホン酸:3部
シクロヘキサノン:155部
メチルエチルケトン:155部
ステアリン酸:3部
ブチルステアレート:3部
ポリイソシアネート:5部
シクロヘキサノン:200部
【0044】
(磁気テープの作製)
磁性層塗布液は、上記磁性層塗布液の処方に従う各物質を、バッチ式縦型サンドミルにより0.5mmΦのジルコニアビーズを使用して24時間分散し(ビーズ分散)、その後、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過することにより作製した。
非磁性層塗布液は、上記非磁性層塗布液の処方に従う各物質を、バッチ式縦型サンドミルにより0.1mmΦのジルコニアビーズを使用して24時間分散し(ビーズ分散)、その後、0.5μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過することにより作製した。 バックコート層塗布液は、上記バックコート層塗布液の処方に示した物質のうち潤滑剤(ステアリン酸およびブチルステアレート)とポリイソシアネート、シクロヘキサノン200部を除いた各物質をオープン型ニーダにより混練・希釈した後、横型ビーズミル分散機により1mmΦのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80%、ローター先端周速10m/sで1パス滞留時間を2分とし、12パスの分散処理に供し、その後残りの物質を添加してディゾルバーで撹拌し、得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過することにより作製した。
【0045】
厚み5μmのポリエチレンナフタレート製支持体(幅方向ヤング率:8GPa、縦方向ヤング率:6GPa)の表面上に、乾燥後の厚みが100nmになるように上記で調製した非磁性層塗布液を塗布、乾燥した後、その上に乾燥後の厚みが70nmになるように上記で調製した磁性層塗布液を塗布した。この磁性層塗布液が未乾状態にあるうちに、磁場強度0.3Tの磁場を塗布面に対し垂直方向に印加する垂直配向処理を施し、乾燥させた。その後、この支持体の反対面に乾燥後の厚みが0.4μmになるように上記で調製したバックコート層塗布液を塗布し、乾燥させた。得られたテープを金属ロールのみから構成されるカレンダーにより、速度100m/min、線圧300kg/cm、温度100℃で表面平滑化処理し、その後70℃のドライ環境で36時間の熱処理を施した。熱処理後1/2インチ幅にスリットし、磁気テープを得た。
【0046】
以上の磁性層塗布液の処方、非磁性層塗布液の処方、バックコート層塗布液の処方、磁気テープの作製手順は、磁性層表面の表面平滑性を高めることができる磁気テープ作製手法が適用されたものである。
【0047】
(電磁変換特性の測定および塗膜耐久性の評価)
作製した磁気テープの電磁変換特性を、ヘッドを固定した1/2インチ(0.0127m)リールテスターを用いて以下の方法により測定した。
ヘッド/テープ相対速度は6m/sとした。記録はMIG(Metal-In-Gap)ヘッド(ギャップ長0.15μm、トラック幅1.0μm)を使い、記録電流は各磁気テープの最適記録電流に設定した。再生ヘッドには素子厚み15nm、シールド間隔0.1μm、リード幅0.5μmのGMR(Giant-Magnetoresistive)ヘッドを用いた。線記録密度270KFCIで信号の記録を行い、再生信号をシバソク社製のスペクトラムアナライザーで測定した。キャリア信号の出力値と、スペクトル全帯域の積分ノイズとの比をSNRとした。SNR測定には、磁気テープの走行開始後に信号が十分に安定した部分の信号を使用した。
【0048】
磁気テープを、上記条件で1パスあたり1000mとして温度32℃相対湿度80%環境において5000パス往復走行させた。この1パス目のSNRが1.0dB以上であれば、今後の高密度記録化に対応しうるノイズ特性を実現させることのできる六方晶フェライト磁性粉であると評価される。したがって、磁気記録媒体のSNRの評価は、1パス目のSNRが1.0dB以上であるものを○、それ以外を×と表示し、○評価を合格と判定した。
【0049】
1パス目のSNRと5000パス目のSNRとの差分(「5000パス目のSNR」-「1パス目のSNR」の値)を求めた。この差分が-2.0dBより大きい値であるもの(すなわち差分の絶対値が2.0dB未満であるもの)は、非常に優れた走行耐久性を有すると評価される。したがって、磁気記録媒体の耐久性の評価は、上記差分の絶対値が2.0dB未満であるものを○、それ以外を×と表示し、○評価を合格と判定した。
以上の信号の記録および再生は、磁気テープの磁性層表面と磁気ヘッドとを摺動させて行ったものである。
結果を表1に示す。
【0050】
[実施例2]
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化コバルトCoO(試薬90%以上)、酸化ニオブNb25(工業用)を秤量して表1に示す原料配合としたこと、および結晶化処理温度を表1に示す温度としたこと以外、実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例3]
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化コバルトCoO(試薬90%以上)、酸化ニオブNb25(工業用)、酸化ビスマスBi23(工業用)を秤量して表1に示す原料配合としたこと、および結晶化処理温度を表1に示す温度としたこと以外、実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例4]
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化コバルトCoO(試薬90%以上)、酸化ニオブNb25(工業用)、酸化ビスマスBi23(工業用)を秤量して表1に示す原料配合としたこと、および結晶化処理温度を表1に示す温度としたこと以外、実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例5]
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化コバルトCoO(試薬90%以上)、酸化ニオブNb25(工業用)を秤量して表1に示す原料配合としたこと、結晶化処理温度を表1に示す温度としたこと、および乾燥後の解砕処理をディスクミルに代えてインパクトミル(ミルシステム株式会社製、ファインインパクトミルAVIS-150)にて行ったこと以外、実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化コバルトCoO(試薬90%以上)、酸化チタンTiO2(試薬1級)、酸化ビスマスBi23(工業用)を秤量して表1に示す原料配合としたこと、および結晶化処理温度を表1に示す温度としたこと以外、実施例1と同様の条件で実験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例2]
ホウ酸H3BO3(工業用)、炭酸バリウムBaCO3(工業用)、酸化鉄Fe23(工業用)、酸化ニオブNb25(工業用)を秤量して表1に示す原料配合としたこと、および結晶化処理温度を表1に示す温度としたこと以外、実施例1と同様の条件で実験を行った。
【0056】
[比較例3]
(六方晶フェライト磁性粉の製造)
ホウ酸H3BO3、炭酸バリウムBaCO3、酸化鉄Fe23、酸化コバルトCoO、酸化ニオブNb25、水酸化アルミニウムAl(OH)3を秤量して表1に示す原料配合とし、ミキサーを用いて混合し、原料混合物を得た。
【0057】
得られた原料混合物を、白金るつぼを用いて溶融炉により溶融させた。1380℃で温度保持し、各原料物質を完全に溶融状態としたのち、その溶融物(溶湯)をノズルから出湯させて、水冷双ロール法にて急冷し、非晶質体を得た。得られた非晶質体を結晶化処理温度680℃で300分加熱保持することにより結晶化させ、六方晶フェライトを生成させた。
【0058】
上記加熱保持によって得られた粉体中に含まれる残余物質を除去するための酸洗浄を以下の条件で行った。
酸洗浄条件;
上記加熱保持で得られた粉体を乳鉢で粗粉砕した。前記粗粉砕後の粉体を2000mLのガラス瓶に入れ、1mmφZrビーズ1000gと1%濃度の酢酸800mLを加えてペイントシェーカーにて3時間の分散処理を行った。得られた分散液をビーズと分離させ、3Lのステンレスビーカーに入れて100℃で3時間処理した。その後、遠心分離器で沈澱させる手法によりデカンテーションを繰り返した。
【0059】
このようにして得られた酸洗浄後の固形分を乾燥させて六方晶フェライト磁性粉を得た。得られた六方晶フェライト磁性粉に対して、実施例1と同様の方法で磁性粉特性および媒体特性を調べた。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
本発明の規定に従う各実施例の磁性粉は、表面平滑性の高い磁性層を形成した磁気記録媒体において、SNRおよび耐久性を同時に改善することができた。
【0062】
比較例1の磁性粉は、Feサイトの一部を置換する元素としてCoとTiを適用したものである。Nbを含有しないので、表面平滑性の高い磁性層を形成した磁気記録媒体の耐久性を十分に改善することができなかった。比較例1の実験に用いた5000パス往復走行後の再生ヘッド表面を対物レンズ20倍の光学顕微鏡により観察したところ、磁気記録媒体の磁性層に由来する異物がヘッドに付着していた。すなわち、磁気記録媒体において「磁性層削れ」が発生したことが確認された。
【0063】
比較例2では、Nbの多量添加によってFeサイト価数AFeが高くなりすぎたので、磁気記録媒体の初期SNRが低下した。
【0064】
比較例3では、Feサイトの一部を置換する元素としてCoおよびNbが添加されているが、Feサイト価数AFeが本発明範囲を外れて低いので、耐久性を十分に改善することができなかった。