(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置のための位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20220404BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220404BHJP
H02K 33/16 20060101ALI20220404BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H02K33/16 A
H02K41/03 A
H01L21/68 K
H01L21/68 F
(21)【出願番号】P 2020542312
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2019053613
(87)【国際公開番号】W WO2019170379
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-08-28
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】キマン,マールテン,ハートガー
(72)【発明者】
【氏名】ウェセリン,ジャスパー
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-123361(JP,A)
【文献】特開2014-155241(JP,A)
【文献】特開2009-124879(JP,A)
【文献】特開平07-023554(JP,A)
【文献】特開昭63-242160(JP,A)
【文献】特開2004-096910(JP,A)
【文献】特開2010-153908(JP,A)
【文献】国際公開第2017/024409(WO,A1)
【文献】特表2005-528878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H02K 1/00-1/16、1/18-1/26、1/28-1/34
17/00-17/44、33/00-33/18
41/00-41/06
H02P 1/00-1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造を位置決めするための位置決めシステムであって、
前記位置決めシステムは、アクチュエータと、制御ユニットによって受信された位置セットポイントに応答して前記アクチュエータを制御するための制御ユニットと、を備え、
前記アクチュエータは、磁束を提供するように構成された磁石を備える磁石アセンブリと、コイルアセンブリと、を備え、
前記コイルアセンブリ及び前記磁石アセンブリは、互いに関して移動可能であり、
前記コイルアセンブリは、コイルを備え、
駆動電流による前記コイルの始動は、前記磁石アセンブリと前記コイルアセンブリとの間に力を提供し、
前記磁石アセンブリは、更なる導電体を備え、
前記更なる導電体は、非強磁性導電材料を備え、
前記更なる導電体は、前記コイルアセンブリの前記コイルに磁気的に結合され、前記コイル内のアクチュエータ電流の結果として前記更なる導電体内に誘起される誘導電流のための短絡パスを形成
し、
前記更なる導電体の少なくとも一部は、前記コイルアセンブリ及び前記磁石アセンブリの移動の方向において、前記コイルアセンブリに対面する、位置決めシステム。
【請求項2】
前記更なる導電体の導電率は、前記磁石の導電率を超える、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項3】
前記更なる導電体は、前記コイルアセンブリに対向する、請求項1又は2に記載の位置決めシステム。
【請求項4】
前記導電体によって形成される前記短絡パスは、前記コイルの巻線と同軸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の位置決めシステム。
【請求項5】
前記更なる導電体は、短絡リングを形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の位置決めシステム。
【請求項6】
前記コイルアセンブリ及び前記磁石アセンブリは、各々がリング形状の断面を有し、
前記更なる導電体によって形成される前記短絡リングは、前記コイルアセンブリ及び前記磁石アセンブリの前記リング形状の断面と同軸である、請求項5に記載の位置決めシステム。
【請求項7】
前記磁石アセンブリは、強磁性材料を含むバック鉄を更に備え、
前記バック鉄は、前記磁石の前記磁束を誘導するためのものであり、
前記バック鉄は、前記磁石から前記コイルアセンブリの側面に沿って延在し、
前記更なる導電体は、前記コイルアセンブリに対向する前記バック鉄の表面に配置される、請求項5又は6に記載の位置決めシステム。
【請求項8】
前記アクチュエータは、平面に沿った方向の始動のために線形アクチュエータを形成し、
前記磁石アセンブリ及びコイルアセンブリは、前記平面に対向し、
前記更なる導電体は、前記平面に沿って延在する前記磁石アセンブリ上に平面層を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の位置決めシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、ステータと、前記ステータに関して移動可能なムーバと、を備え、
前記ステータは、前記磁石アセンブリを備え、
前記ムーバは、前記コイルアセンブリを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の位置決めシステム。
【請求項10】
前記構造の位置を測定するための位置測定システムと、前記コイルを駆動するために前記アクチュエータに接続された増幅器と、を更に備え、
前記制御ユニットは、位置感知入力を備え、
前記位置測定システムによって測定された前記位置は、前記位置感知入力に提供され、
前記制御ユニットは、前記増幅器の入力に接続された出力を備え、
前記制御ユニットは、前記位置セットポイント、及び前記位置測定システムによって測定された前記位置に基づいて、前記増幅器を駆動するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の位置決めシステム。
【請求項11】
リソグラフィ装置の構造を位置決めするために、請求項1から10のいずれか一項に記載の位置決めシステムを備える、リソグラフィ装置。
【請求項12】
リソグラフィ装置のための投影システムであって、
1つ以上の光学要素と、前記光学要素のうちの1つ以上を位置決めするための請求項1から10のいずれか一項に記載の前記位置決めシステムと、を備える、投影システム。
【請求項13】
リソグラフィ装置のためのステージ装置であって、
オブジェクトテーブルと、前記オブジェクトテーブルを位置決めするための請求項1から10のいずれか一項に記載の前記位置決めシステムと、を備える、ステージ装置。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の前記位置決めシステムを備える、電子ビーム検査装置。
【請求項15】
位置決めシステムによって構造を位置決めする方法であって、
前記位置決めシステムは、アクチュエータと、制御ユニットによって受信された位置セットポイントに応答して前記アクチュエータを制御するための制御ユニットと、を備え、
前記アクチュエータは、磁束を提供するように構成された磁石を備える磁石アセンブリと、コイルアセンブリと、を備え、
前記コイルアセンブリ及び前記磁石アセンブリは、互いに関して移動可能であり、
前記コイルアセンブリは、コイルを備え、
駆動電流による前記コイルの始動は、前記磁石アセンブリと前記コイルアセンブリとの間に力を提供し、
前記磁石アセンブリは、更なる導電体を備え、
前記更なる導電体は、非強磁性導電材料を備え、
前記更なる導電体は、前記コイルアセンブリの前記コイルに磁気的に結合され、前記コイル内のアクチュエータ電流の結果として前記更なる導電体内に誘起される誘導電流のための短絡パスを形成し、
前記更なる導電体の少なくとも一部は、前記コイルアセンブリ及び前記磁石アセンブリの移動の方向において、前記コイルアセンブリに対面し、
前記方法は、前記制御ユニットを用いて、アクチュエータ電流を前記コイルアセンブリ内へ駆動すること、それによって、前記更なる導電体内の前記誘導電流を誘起すること、を含み、
前記誘導電流は、前記短絡パスによって短絡される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001] 本願は、2018年3月9日出願の欧州特許出願第18160934.8号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[002] 本発明は、位置決めシステム、こうした位置決めシステムを備えるリソグラフィ装置、こうした位置決めシステムを備えるリソグラフィ装置のための投影システム、こうした位置決めシステムを備えるリソグラフィ装置のためのステージ装置、こうした位置決めシステムを備える電子ビーム検査装置、及び、構造を位置決めする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが付与される隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0004】
[004] 典型的には、リソグラフィ装置は、装置又は装置内部のコンポーネント又はオブジェクトを位置決めするか又は変位させるための、1つ以上の位置決めデバイス又は位置決めシステムを備える。
【0005】
[005] こうした位置決めシステムは、例えば、コイルアセンブリ及び磁石アセンブリを備える、電磁アクチュエータなどのアクチュエータを備えることができる。コイルアセンブリは、駆動電流によって駆動されたとき、磁場を発生させ、駆動電流は、磁石アセンブリによって提供される磁場と相互作用し、結果としてコイルアセンブリと磁石アセンブリとの間に力を生じさせることができる。磁石アセンブリ及びコイルアセンブリは互いに関して移動可能であり得、力を受けると、磁石アセンブリ及びコイルアセンブリのうちの一方を、他方磁石アセンブリ及びコイルアセンブリのうちの他方に関して移動させることができる。
【0006】
[006] コイルアセンブリの誘導性、すなわち、コイルアセンブリ内のコイルの誘導性に起因して、コイルアセンブリのインピーダンスは周波数の増加と共に増加する傾向にある。結果として、高周波数始動のためにアクチュエータの使用を試みるとき、コイルアセンブリを駆動する周波数が高いほど、駆動電流を提供するためにより高い駆動電圧が必要となる。
【0007】
[007] 同様に、こうしたより高い周波数では、モータ定数において位相遅れが生じる傾向にあり、周波数の増加と共に電流の関数として力における遅延を提供する。
【0008】
[008] 結果として、電磁アクチュエータによる始動の達成可能帯域幅は制限される。更に、高駆動電圧は、必要に応じて高モータドライバ(例えば、増幅器)散逸を提供する可能性がある。
【発明の概要】
【0009】
[009] 高帯域幅位置決めシステムを提供することが望ましい。
【0010】
[010] 本発明の一態様によれば、構造を位置決めするために位置決めシステムが提供され、
位置決めシステムは、アクチュエータと、制御ユニットによって受信された位置セットポイントに応答してアクチュエータを制御するための制御ユニットと、を備え、
アクチュエータは、磁束を提供するように構成された磁石を備える磁石アセンブリと、コイルアセンブリと、を備え、
コイルアセンブリ及び磁石アセンブリは、互いに関して移動可能であり、
コイルアセンブリは、コイルを備え、
駆動電流によるコイルの始動は、磁石アセンブリとコイルアセンブリとの間に力を提供し、
磁石アセンブリは、更なる導電体を備え、
更なる導電体は、非強磁性導電材料を備え、
更なる導電体は、コイルアセンブリのコイルに磁気的に結合され、コイル内のアクチュエータ電流の結果として更なる導電体内に誘起される誘導電流のための短絡パスを形成する。
【0011】
[011] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置の構造を位置決めするために本発明に従った位置決めシステムを備える、リソグラフィ装置が提供される。
【0012】
[012] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置のための投影システムが提供され、投影システムは、1つ以上の光学要素と、光学要素のうちの1つ以上を位置決めするための本発明に従った位置決めシステムと、を備える。
【0013】
[013] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置のためのステージ装置が提供され、ステージ装置は、オブジェクトテーブルと、オブジェクトテーブルを位置決めするための本発明に従った位置決めシステムと、を備える。
【0014】
[014] 本発明の一態様によれば、本発明に従った位置決めシステムを備える電子ビーム検査装置が提供される。
【0015】
[015] 本発明の一態様によれば、位置決めシステムによって構造を位置決めする方法が提供され、
位置決めシステムは、アクチュエータと、制御ユニットによって受信された位置セットポイントに応答してアクチュエータを制御するための制御ユニットと、を備え、
アクチュエータは、磁束を提供するように構成された磁石を備える磁石アセンブリと、コイルアセンブリと、を備え、
コイルアセンブリ及び磁石アセンブリは、互いに関して移動可能であり、
コイルアセンブリは、コイルを備え、
駆動電流によるコイルの始動は、磁石アセンブリとコイルアセンブリとの間に力を提供し、
磁石アセンブリは、更なる導電体を備え、
更なる導電体は、非強磁性導電材料を備え、
更なる導電体は、コイルアセンブリのコイルに磁気的に結合され、コイル内のアクチュエータ電流の結果として更なる導電体内に誘起される誘導電流のための短絡パスを形成し、
方法は、制御ユニットを用いて、アクチュエータ電流をコイルアセンブリ内へ駆動すること、それによって、更なる導電体内の誘導電流を誘起すること、を含み、
誘導電流は、短絡パスによって短絡される。
【0016】
[016] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態が採用可能なリソグラフィ装置を示す図である。
【
図2A】従来技術に従ったアクチュエータの一部を概略的に示す断面図である。
【
図2B】従来技術に従ったアクチュエータの一部を概略的に示す上面図である。
【
図3】アクチュエータが採用可能な位置決めシステムを概略的に示す図である。
【
図4A】本発明の実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能なアクチュエータの一部を概略的に示す図である。
【
図4B】本発明の実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能なアクチュエータの一部を概略的に示す図である。
【
図4C】本発明の実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能な別のアクチュエータの一部を概略的に示す図である。
【
図5】
図4Bに従ったアクチュエータの一部の詳細図を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能なアクチュエータの一部を概略的に示す図である。
【
図7A】従来技術のアクチュエータのインピーダンス応答及びモータ定数を概略的に示すボーデ線図である。
【
図7B】従来技術のアクチュエータのインピーダンス応答及びモータ定数を概略的に示すボーデ線図である。
【
図8A】本発明の一実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能なアクチュエータの、インピーダンス応答及びモータ定数を概略的に示すボーデ線図である。
【
図8B】本発明の一実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能なアクチュエータの、インピーダンス応答及びモータ定数を概略的に示すボーデ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[017]
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示している。この装置は、照明システムIL、支持構造MT、基板テーブルWT、及び投影システムPSを備える。
【0019】
[018] 照明システムILは、放射ビームBを調整するように構成される。支持構造MT(例えばマスクテーブル)は、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続される。基板テーブルWT(例えばウェーハテーブル)は、基板W(例えばレジストコートウェーハ)を保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続される。投影システムPSは、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)に投影するように構成される。
【0020】
[019] 照明システムILは、放射を誘導し、整形し、又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、又はその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0021】
[020] 本明細書で使用する「放射ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)紫外線(UV)放射、及び、(例えば、5nm~20nmの範囲の波長を有する)極端紫外線(EUV)放射、を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0022】
[021] 支持構造MTは、パターニングデバイスMAを支持、すなわちその重量を支えている。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの配向、リソグラフィ装置の設計及び、例えばパターニングデバイスMAが真空環境で保持されているか否か等の条件に応じた方法でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械式、真空式、静電式又はその他のクランプ技術を用いて、パターニングデバイスMAを保持することができる。支持構造MTは、例えば、必要に応じて固定又は可動式にできるフレーム又はテーブルであってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSに対して確実に所望の位置に来るようにしてもよい。
【0023】
[022] 本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するように、放射ビームBの断面にパターンを付与するために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板Wのターゲット部分Cにおける所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路などのターゲット部分Cに生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0024】
[023] パターニングデバイスMAは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、更には様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小型ミラーのマトリクス配列を使用し、ミラーは各々、入射する放射ビームBを異なる方向に反射するように個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームBにパターンを付与する。
【0025】
[024] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム及び静電光学システム、又はその任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。
【0026】
[025] 本明細書で示すように、本装置は、(例えば透過マスクを使用する)透過タイプである。あるいは、装置は、(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)反射タイプでもよい。
【0027】
[026] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブルWT(及び/又は、2つ又はそれ以上のマスクテーブル)を有するタイプとすることができる。こうした「マルチステージ」機械において、追加のテーブルが並列に使用可能であるか、又は、1つ以上の他のテーブルが露光に使用されている間に1つ以上のテーブル上で予備工程が実施可能である。1つ以上の基板テーブルWTに加えて、リソグラフィ装置は測定ステージを有することができ、測定ステージは、基板テーブルWTがその位置から離れているときに、投影システムPSの下の位置にあるように配置される。基板Wを支持する代わりに、測定ステージには、リソグラフィ装置の特性を測定するためのセンサを提供することができる。例えば投影システムは、イメージ品質を決定するために、測定ステージ上のセンサ上にイメージを投影することができる。
【0028】
[027] リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板Wの少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばパターニングデバイスMAと投影システムPSの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で使用することができる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板Wなどの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムPSと基板Wの間に液体が存在するというほどの意味である。
【0029】
[028]
図1を参照すると、照明システムILは放射源SOから放射ビームBを受ける。放射源SO及びリソグラフィ装置は、例えば放射源SOがエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームBは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOから照明システムILへと渡される。他の事例では、例えば放射源SOが水銀ランプの場合は、放射源SOがリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0030】
[029] 照明システムILは、放射ビームBの角度強度分布を調整するためのアジャスタADを備えていてもよい。一般に、照明システムの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。また、照明システムILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。照明システムILを用いて放射ビームBを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0031】
[030] 放射ビームBは、支持構造MT上に保持されたパターニングデバイスMTに入射し、パターニングデバイスMAによってパターンを付与される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2のポジショナPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、又は容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1のポジショナPMと別の位置センサ(
図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、支持構造MTの移動は、第1のポジショナPMの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールの助けにより実現できる。ロングストロークモジュールは、広範囲の動きにわたってショートストロークモジュールの粗動位置決めを提供することができる。ショートストロークモジュールは、狭い範囲の動きにわたってロングストロークモジュールに対して支持構造MTの微動位置決めを提供することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ロングストロークモジュールは、広範囲の動きにわたってショートストロークモジュールの粗動位置決めを提供することができる。ショートストロークモジュールは、狭い範囲の動きにわたってロングストロークモジュールに対して基板テーブルWTの微動位置決めを提供することができる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、支持構造MTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と、基板アライメントマークP1、P2とを用いて位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークP1、P2をターゲット部分の間の空間に置くこともできる(これらはスクライブラインアライメントマークとして既知である)。同様に、複数のダイがマスクMA上に提供されている場合、マスクアライメントマークM1、M2は、ダイ間に置かれてもよい。
【0032】
[031] 図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
【0033】
[032] 第1のモード、いわゆるステップモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームBに付与されたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分を露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分のサイズが制限される。
【0034】
[033] 第2のモード、いわゆるスキャンモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、放射ビームBに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分Cの(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分Cの(スキャン方向における)高さが決まる。
【0035】
[034] 第3のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0036】
[035] 上述した使用モードの組み合わせ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0037】
[036]
図2Aは、従来技術に従ったアクチュエータACTの一部を示す断面図であり、断面図は、
図2Bに示されるアクチュエータの上面図の線A―Aに沿ったものである。アクチュエータは、コイルアセンブリCA及び磁石アセンブリMAを備える。コイルアセンブリ及び磁石アセンブリは、互いに関して移動可能である。例えば、コイルアセンブリが移動可能であり得る、磁石アセンブリが移動可能であり得る、又は、コイルアセンブリ及び磁石アセンブリの両方が移動可能であり得る。
図3に示されるように、構造STRを位置決めするための位置決めシステムPOSは、アクチュエータACT及び制御ユニットCUを備える。構造は任意のオブジェクトとすることができる。制御ユニットは、セットポイントSET、すなわち、構造の望ましい位置を定義するアナログ又はデジタルの位置セットポイントを受信するための、セットポイント入力を備える。制御ユニットは、セットポイントに基づいてアクチュエータを駆動する。制御ユニットによって提供される出力信号及び増幅器への入力に応答して、アクチュエータを駆動する、すなわちコイルアセンブリのコイルを駆動する、増幅器AMPが提供可能である。位置決めシステムは、構造の位置を測定するための位置感知システムPMSを更に備えることが可能であり、また、1つ以上の位置センサ(干渉計、エンコーダ、容量センサ、又は任意の他の好適な位置センサ)を備え、位置信号は、フィードバック制御ループを提供するために、位置感知システムによって制御ユニットに提供されている構造の位置を表す。
【0038】
[037] 磁石アセンブリは、永久磁石などの磁石MGを備える。代替として、電磁石を適用することができる。更に、磁石アセンブリはバック鉄BAを備えることができる。バック鉄は、磁石によって提供される磁束をコイルアセンブリに向けて導き、コイルアセンブリに磁束を集中させる。バック鉄は、磁束を導くことが可能な鉄又は任意の他の好適な(強磁性)材料とすることができる。コイルアセンブリは、コイルハウジングCH内に提供される電気コイルCLを形成する巻線を備える。コイルハウジングはコイルを保持すること、コイルの巻線のパッケージングを提供すること、金属(例えば、非強磁性導体)を備えること、及び、コイル巻線から離れて散逸する熱を導くためのヒートシンキングを提供することが可能である。
【0039】
[038] アクチュエータは、任意の構造、すなわち任意のオブジェクトを位置決めすることができる。構造は、磁石アセンブリ及びコイルアセンブリのうちの一方に接続可能である。磁石アセンブリ及びコイルアセンブリのうちの他方は、例えば、基準フレーム、力フレーム、ベースフレーム、バランスマス、又は他の基準構造に接続可能である。
【0040】
[039]
図2Aに示したようなアクチュエータACTを備える位置決めシステムは、円対称性とすることができる。言い換えれば、
図2Aに示されるような断面図は、
図2Bに示されるようなリング形状アクチュエータを形成するために円形に反復可能である。したがって、
図2Aで一部が示されているコイルは、リング形状(環状)とすることができる。同様に、磁石及びバック鉄はリング形状とすることができる。したがって、
図2Aの左側に示されるバック鉄は、内側環状バック鉄を形成することができ、
図2Aの右側に示されるバック鉄は外側環状バック鉄を形成することができる。これに対応して、コイルアセンブリのコイルの巻線は環状に延在することができる。
【0041】
[040]
図7Aは、
図2Aに従ったアクチュエータのインピーダンス応答のボーデ線図を示す。低周波数では、コイルのインピーダンスは、コイル巻線の抵抗の結果として一般に抵抗性である。より高い周波数では、インピーダンスはコイルの誘導特性に起因して増加する。更にまた
図7Aに示されるように、インピーダンスの位相は同様の挙動をたどる。
【0042】
[041]
図7Bは、
図2Aに従ったアクチュエータのモータ定数のボーデ線図を示す。モータ定数は、コイル駆動電流の関数としてのアクチュエータ力として理解される。低周波数では、モータ定数は実質的に周波数とは無関係である。より高い周波数では、モータ定数は減少する。更にまた
図7Bに示されるように、モータ定数の位相は同様の挙動をたどる。モータ定数におけるロールオフは、アクチュエータの応答における遅延、すなわち、駆動電流の関数として力における遅延を提供する。
【0043】
[042]
図4Aは、本発明の一実施形態に従った、位置決めシステムにおいて採用可能なアクチュエータの一部のカットアウト図を示す。アクチュエータは、一般に、
図2Aのアクチュエータに関して上記で説明したようなコイルアセンブリ及び磁石アセンブリを備える。したがって、
図2A、並びに構成部分及びそれらの機能についての対応する記述が参照される。位置決めシステムの残余部分の一般的なセットアップは、
図3を参照しながら説明される通りである。本発明の一態様によれば、アクチュエータの磁石アセンブリは、更なる導電体CONを更に備える。更なる導電体は、非強磁性導電体を備え、好ましくは、更なる導電体は銅又はアルミニウムなどの非強磁性導電体である。更なる導電体は、コイルアセンブリのコイルに磁気的に結合される。したがって、コイルアセンブリのコイル内を流れるアクチュエータ電流は、磁気結合によって、更なる導電体内の誘導電流を誘起することになる。コイルアセンブリのコイル内の電流は、コイル磁場を発生させることになる。コイル内の電流(における変化)及び結果として生じるコイル磁場(における変化)によって、更なる導電体内で電流が誘起されることになる。更なる導電体は、短絡パス(例えば、低電気抵抗パス)を提供する。したがって、誘起された電流は短絡パスによって短絡される。短絡パスという用語は、低抵抗性閉導電パスとして理解されるべきである。更なる導電体は強磁性材料を備え、したがって、更なる導電体の存在によって透磁率は実質的に変化せず、コイル内のアクチュエータ電流による磁場は、更なる導電体の存在によって実質的に変化しないことになる。更なる導電体は、低抵抗を提供するために、したがって、下記で説明するようにコイルインピーダンスを効果的に減少させるために、磁石及び/又はバック鉄の導電率を超える導電率を呈することが可能である。コイルは、駆動電流によって駆動されるとき、コイル磁場を発生させる。コイル磁場の結果として、更なる導電体内に誘導電流が誘起されることになる。誘導電流は、ある程度、コイル磁場にある程度対向する一般的により弱い対向磁場を提供することになる。誘導電流の結果として、コイル磁場はより高い周波数までそのままの状態を維持し、より高い周波数におけるアクチュエータのインピーダンスの減少を提供することになる。異なる角度から示すと、更なる導電体とコイルとの間の磁気結合、及び更なる導電体における低インピーダンス電気パスに起因して、変圧器の短絡された2次巻線(更なる導電体における低インピーダンスパスと比較)が、変圧器の1次巻線のインピーダンス(コイルアセンブリのコイルのインピーダンスと比較)を減少させるのと同様に、より高い周波数において、コイルの有効インピーダンスが減少する。位置決めシステムの動的性能を向上させることが可能であり、高周波数増幅器散逸を低減させることが可能である。更に、下記でより詳細に説明するように、遅延低減も提供可能である。
【0044】
[043] 更なる導電体は、任意の好適な形状を有することができる。好ましくは、更なる導電体はコイルアセンブリと対面しており、すなわち、表面がコイルアセンブリと対面する磁石及び/又はバック鉄の表面上に提供されるため、コイルアセンブリから比較的短距離に誘導電流を有することになる。更なる導電体によって形成される短絡パスは、コイルの巻線と同軸であり得るため、良好な磁気結合、したがって、より高い周波数におけるインピーダンスの効果的な減少を提供する。
【0045】
[044] 代替形態が
図4Bに示されており、更なる導電体は、コイルアセンブリと対面する磁石の表面上、並びにコイルアセンブリと対面するバック鉄の表面上に提供される。
図4Aを参照しながら説明した効果と同様の効果が、
図4Bに示される実施形態にも適用される。
【0046】
[045]
図2Aを参照しながら上記で説明したように、アクチュエータはリング形状とすることができる。これに対応して、
図4A及び
図4Bに示される更なる導電体もリング形状とすることができる。結果として、更なる導電体は、誘導電流を短絡させることが可能な閉巻線を形成し、したがって、誘導電流のための低抵抗導電パスを提供することになる。したがって、各バック鉄のコイルアセンブリと磁石との間の更なる導電体の相対的に薄い層は、低抵抗導電パスを提供するのに十分であり得る。更なる導電体の相対的に薄い層は、コイルアセンブリと磁石アセンブリとの間のギャップを小さいまま維持することができるため、アクチュエータの性能(例えば、モータ峻度)を大幅に犠牲にすることが回避される。
【0047】
[046] 更に、
図4A及び
図4Bに示される実施形態の場合と同様に、更なる導電体のリング形状は、磁石アセンブリのリング形状及びコイルアセンブリのリング形状と同軸とすることができる。したがって、更なる導電体のリング形状の低抵抗導電パスは、磁石アセンブリ及びコイルアセンブリの外周に沿った誘導電流による均一な効果を提供するために、コイルアセンブリ及び磁石アセンブリのリング形状と組み合わせ可能である。
【0048】
[047]
図4Cは、本発明の一実施形態に従った位置決めシステムにおいて採用可能な、別のアクチュエータACT2の一部のカットアウト図を示す。前述のアクチュエータACTと同様に、アクチュエータACT2は、軸SAを対称的に中心とする回転対称アクチュエータである。アクチュエータACT2は、コイルアセンブリCA2及び磁石アセンブリMA2を備える。図に示されるような実施形態において、磁石アセンブリMA2は3つの円筒磁石MG2が取り付けられるバック鉄BA2を備え、磁石MG2は、矢印によって示されるような磁化方向を有する。コイルアセンブリCA2は、バック鉄BC2に取り付けられた2つのコイルCL2を備える。
図4Cの右側を見るとわかるように、アクチュエータACT2には、前述の更なる導電体CONと同一又は同様の機能を有する、更なる導電体CON2も提供することができる。
【0049】
[048]
図5は、
図4Bに従ったアクチュエータの磁石及びバック鉄の一部を示す詳細図である。
図5は同様に、更なる導体を示す。更なる導体内で誘起される誘導電流は、更なる導体上に線で概略的に示されており、線は、リング形状の短絡誘導電流を表すために環状に延在する。
【0050】
[049] 更なる導電体は、磁石、バック鉄、又はその両方の上に層を形成することができる。更なる導電体は、例えばマイクロメートルからミリメートルの範囲内とすることができる。
【0051】
[050] 上記では、リング形状(回転対称)アクチュエータの例を示しているが、同一の原理をフラットアクチュエータにも同様に適用可能であることを理解されよう。こうしたフラットアクチュエータは、例えば、コイルアセンブリと磁石アセンブリとの間のギャップに平行な平面に沿った方向に力を及ぼすアクチュエータであり、例えば、ステージの短ストロークモータなどの線形モータを備えることができる。例は
図6に示す。更なる導電体CONは磁石アセンブリMA上に配置可能であり、例えば、更なる導電体は、磁石アセンブリ上に銅板などの導電板を形成可能である。アクチュエータは、力を与え、板に平行な(又は、板に垂直な)方向に位置決めすることができる。
【0052】
[051]
図4A及び
図4B、並びに同様に
図5、
図6に従った更なる導体の効果を、
図8A及び
図8Bを参照しながら説明する。
図8Aは、それぞれ
図4A及び
図4Bに従ったアクチュエータのインピーダンス応答のボーデ線図を示す。また、比較のために、
図7Aの曲線が
図8Aにコピーされる。
図4A及び
図4Bに従ったアクチュエータのインピーダンス応答の大きさを
図2Aに従ったアクチュエータと比較すると、より高い周波数におけるインピーダンスはより低い。更にまた
図8Aに示されるように、
図2Aに従ったアクチュエータと比較した場合、
図4A及び
図4Bに従った実施形態では、より高い周波数におけるインピーダンスの相変化はより少ない。したがって、誘導電流がコイル磁場をより高い周波数のまま維持する場合、アクチュエータのインピーダンスは低減される。したがって、制御ユニット及び増幅器は、より高い周波数においてアクチュエータを駆動することが可能であるため、位置決めシステムの帯域幅を増加させることができる。
【0053】
[052]
図8Bは、それぞれ
図4A及び
図4Bに従ったアクチュエータのモータ定数のボーデ線図を示す。上記で説明したように、モータ定数は、コイル駆動電流の結果としてのアクチュエータ力として理解される。再度、比較のために、
図7Bの曲線が
図8Bにコピーされる。
図8Bに示されるように、
図2Aのアクチュエータと比較して、
図4A及び
図4Bに従った実施形態におけるモータ定数の高周波数ロールオフは少ない。更にまた
図8Bに示されるように、モータ定数の位相は対応する挙動をたどる。更なる導電体は、モータ定数における少ない高周波ロールオフ、及び、モータ定数の少ない高周波相変化を提供する。コイルアセンブリは、コイルが配置されるコイルハウジングを更に備えることができる。コイルハウジングは金属を含み得、それによって、一方ではコイルの巻線を機械的に保護し、他方では熱を巻線から遠くへ誘導し、コイルハウジング内に誘導電流を発生させる可能性もある。更なる導電体内の誘導電流によってアクチュエータ内の磁場変化が減衰するにつれて、コイルハウジング内の誘導電流が減少する。したがって、位置決めシステムのフィードバックループの遅延が減少し得、セットポイントにおけるダイナミクスに対する位置決めシステムのより速い応答を提供する。
【0054】
[053] 更なる導電体を有するアクチュエータを備える位置決めシステムを、リソグラフィ装置に適用することが可能であり、すなわち、リソグラフィ装置内に位置決めシステムを形成することが可能である。したがって、本発明に従った位置システムを、リソグラフィ装置のためのステージ装置に含めることができる。更なる導電体を有するアクチュエータは、例えば、短ストロークアクチュエータ又はステージの垂直アクチュエータを形成することが可能であり、したがって、前述のように拡張帯域幅機能によって高速位置決めが実行可能である。例えばステージは、基板ステージ(ウェーハテーブル)又はマスクステージ(パターニングデバイス)を備えることができる。別の例として、更なる導電体を備えるアクチュエータは、投影システムの光学要素のアクチュエータを形成することができる。光学要素は、例えば、極端紫外線のための反射型投影システム内の投影光学ボックスのミラー、又は、透過型投影システム内のレンズとすることが可能であり、したがって、例えば基板高さマップに従って適合させるために、光学要素位置を駆動するときに適用可能であるため、光学要素の高速位置決めを実行可能にする。
【0055】
[054] 本発明は、位置決めシステムによって、構造を位置決めする方法を更に包含することが可能であり、
位置決めシステムは、アクチュエータと、制御ユニットによって受信された位置セットポイントに応答してアクチュエータを制御するための制御ユニットと、を備え、
アクチュエータは、磁束を提供するように構成された磁石を備える磁石アセンブリと、コイルアセンブリと、を備え、
コイルアセンブリ及び磁石アセンブリは、互いに関して移動可能であり、
コイルアセンブリは、コイルを備え、
駆動電流によるコイルの始動は、磁石アセンブリとコイルアセンブリとの間に力を提供し、
磁石アセンブリは、更なる導電体を備え、
更なる導電体は、非強磁性導電材料を備え、
更なる導電体は、コイルアセンブリのコイルに磁気的に結合され、コイル内のアクチュエータ電流の結果として更なる導電体内に誘起される誘導電流のための短絡パスを形成し、
方法は、制御ユニットを用いて、アクチュエータ電流をコイルアセンブリ内へ駆動すること、それによって、更なる導電体内の誘導電流を誘起すること、を含み、
誘導電流は、短絡パスによって短絡される。
【0056】
[055] 本発明に従った方法を用いると、本発明に従ったアクチュエータを用いるのと同一又は同様の効果を達成することができる。また、本発明に従ったアクチュエータを参照しながら説明したものと、同一又は同様の実施形態を提供することができる。
【0057】
[056] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0058】
[057] 光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組み合わせを適用することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0059】
[058] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0060】
[059] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。