IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ギガフォトン株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

<>
  • 特許-レーザシステム 図1
  • 特許-レーザシステム 図2
  • 特許-レーザシステム 図3
  • 特許-レーザシステム 図4
  • 特許-レーザシステム 図5
  • 特許-レーザシステム 図6
  • 特許-レーザシステム 図7
  • 特許-レーザシステム 図8
  • 特許-レーザシステム 図9
  • 特許-レーザシステム 図10
  • 特許-レーザシステム 図11
  • 特許-レーザシステム 図12
  • 特許-レーザシステム 図13
  • 特許-レーザシステム 図14
  • 特許-レーザシステム 図15
  • 特許-レーザシステム 図16
  • 特許-レーザシステム 図17
  • 特許-レーザシステム 図18
  • 特許-レーザシステム 図19
  • 特許-レーザシステム 図20
  • 特許-レーザシステム 図21
  • 特許-レーザシステム 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-15
(45)【発行日】2022-08-23
(54)【発明の名称】レーザシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20220816BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220816BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020501905
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2018006278
(87)【国際公開番号】W WO2019163029
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム、COI拠点「コヒーレントフォトン技術によるイノベーション拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 弘司
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】谷 峻太郎
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/151682(WO,A1)
【文献】特開2013-175434(JP,A)
【文献】特開2006-226790(JP,A)
【文献】特開2015-026668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0353561(US,A1)
【文献】特開2003-124554(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147901(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/072879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
H01L 21/30
H01L 21/46
G01M 11/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザシステムであって、以下を備える:
A.パルスレーザ光を出力するレーザ装置;
B.希ガスを収容する希ガスチャンバ;
C.前記レーザ装置から出力された前記パルスレーザ光を前記希ガスチャンバ内に集光して前記希ガスを励起させる集光光学系;
D.前記希ガスチャンバ内で発生する高調波光に含まれるEUV光を選択的に通過させるフィルタチャンバ;
E.前記フィルタチャンバに接続された排気装置;
F.前記希ガスチャンバと前記フィルタチャンバとの間であって、前記パルスレーザ光の光路上に配置された少なくとも1つの貫通孔;
G.前記希ガスチャンバ内に前記希ガスを供給する希ガス供給部;
H.前記希ガス供給部から前記希ガスチャンバに流れる前記希ガスの流量を制御する流量制御バルブ;
I.前記希ガスチャンバ内の前記希ガスの圧力を検出する第1の圧力センサ;
J.前記第1の圧力センサの検出圧力が基準範囲内となるように前記流量制御バルブを制御する第1の制御部;
K.少なくとも前記第1の圧力センサの検出圧力に基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する第2の制御部;及び
L.前記貫通孔を含む領域を撮影して画像データを出力する撮影装置;
ここで、前記第2の制御部は、前記希ガスチャンバ内の前記希ガスの圧力と前記EUV光のパルスエネルギとの関係に基づいて、前記EUV光のパルスエネルギの最大値からの変動量を算出し、この変動量に基づいて算出される前記パルスレーザ光のパルスエネルギの設定値に基づいて前記レーザ装置を制御し、さらに、
前記第2の制御部は、前記画像データに基づいて前記貫通孔の面積を算出し、
前記面積と、前記第1の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。
【請求項2】
請求項に記載のレーザシステムであって、
前記第2の制御部は、前記面積と、前記第1の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記パルスレーザ光の集光位置における前記希ガスの圧力を算出し、この集光位置における前記希ガスの圧力に基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。
【請求項3】
請求項に記載のレーザシステムであって、
前記撮影装置は、前記フィルタチャンバ内に配置されている。
【請求項4】
レーザシステムであって、以下を備える:
A.パルスレーザ光を出力するレーザ装置;
B.希ガスを収容する希ガスチャンバ;
C.前記レーザ装置から出力された前記パルスレーザ光を前記希ガスチャンバ内に集光して前記希ガスを励起させる集光光学系;
D.前記希ガスチャンバ内で発生する高調波光に含まれるEUV光を選択的に通過させるフィルタチャンバ;
E.前記フィルタチャンバに接続された排気装置;
F.前記希ガスチャンバと前記フィルタチャンバとの間であって、前記パルスレーザ光の光路上に配置された少なくとも1つの貫通孔;
G.前記希ガスチャンバ内に前記希ガスを供給する希ガス供給部;
H.前記希ガス供給部から前記希ガスチャンバに流れる前記希ガスの流量を制御する流量制御バルブ;
I.前記希ガスチャンバ内の前記希ガスの圧力を検出する第1の圧力センサ;
J.前記第1の圧力センサの検出圧力が基準範囲内となるように前記流量制御バルブを制御する第1の制御部;
K.少なくとも前記第1の圧力センサの検出圧力に基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する第2の制御部;
M.前記貫通孔を含む領域を撮影して画像データを出力する撮影装置;及び
N.前記フィルタチャンバ内の圧力を検出する第2の圧力センサ;
ここで、前記第2の制御部は、前記希ガスチャンバ内の前記希ガスの圧力と前記EUV光のパルスエネルギとの関係に基づいて、前記EUV光のパルスエネルギの最大値からの変動量を算出し、この変動量に基づいて算出される前記パルスレーザ光のパルスエネルギの設定値に基づいて前記レーザ装置を制御し、さらに、
前記第2の制御部は、前記画像データに基づいて前記貫通孔の面積を算出し、前記面積と、前記第1の圧力センサの検出圧力と、前記第2の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。
【請求項5】
請求項に記載のレーザシステムであって、
前記第2の制御部は、前記面積と、前記第1の圧力センサの検出圧力と、前記第2の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記パルスレーザ光の集光位置における前記希ガスの圧力を算出し、この集光位置における前記希ガスの圧力に基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。
【請求項6】
請求項に記載のレーザシステムであって、
前記撮影装置は、前記フィルタチャンバ内に配置されている。
【請求項7】
レーザシステムであって、以下を備える:
A.パルスレーザ光を出力するレーザ装置;
B.希ガスを収容する希ガスチャンバ;
C.前記レーザ装置から出力された前記パルスレーザ光を前記希ガスチャンバ内に集光して前記希ガスを励起させる集光光学系;
D.前記希ガスチャンバ内で発生する高調波光に含まれるEUV光を選択的に通過させるフィルタチャンバ;
E.前記フィルタチャンバに接続された排気装置;
F.前記希ガスチャンバと前記フィルタチャンバとの間であって、前記パルスレーザ光の光路上に配置された少なくとも1つの貫通孔;
G.前記希ガスチャンバ内に前記希ガスを供給する希ガス供給部;
H.前記希ガス供給部から前記希ガスチャンバに流れる前記希ガスの流量を制御する流量制御バルブ;
I.前記希ガスチャンバ内の前記希ガスの圧力を検出する第1の圧力センサ;
J.前記第1の圧力センサの検出圧力が基準範囲内となるように前記流量制御バルブを制御する第1の制御部;及び
K.少なくとも前記第1の圧力センサの検出圧力に基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する第2の制御部;
ここで、前記希ガスチャンバは、中空ファイバであって、前記フィルタチャンバ内に配置されている。
【請求項8】
請求項に記載のレーザシステムであって、
前記貫通孔は、前記パルスレーザ光が入射する前記中空ファイバの入射側の端部に位置する第1の貫通孔と、前記パルスレーザ光が出射される前記中空ファイバの出射側の端部に位置する第2の貫通孔とを含む。
【請求項9】
請求項に記載のレーザシステムであって、以下をさらに備える:
Q.前記第1の貫通孔を含む領域を撮影して画像データを出力する撮影装置;
ここで、前記第2の制御部は、前記画像データに基づいて前記第1の貫通孔の面積を算
出し、前記面積と、前記第1の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記レーザ装置から出力される前記パルスレーザ光のパルスエネルギを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm~45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度の極端紫外(EUV)光を生成する極端紫外光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、シンクロトロン放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【0004】
LPP式のEUV光生成装置は、EUV光を集光するための集光ミラーを含む。この集光ミラーの反射率等を高精度に計測するために、反射率計測装置が用いられる。この反射率計測装置は、反射率測定用のEUV光を出力するレーザシステムを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2016/0315442号明細書
【文献】特開2004-273415号公報
【文献】国際公開第2016/151682号
【文献】特開2013-195535号公報
【概要】
【0006】
本開示の1つの観点に係るレーザシステムであって、以下を備える:
A.パルスレーザ光を出力するレーザ装置;
B.希ガスを収容する希ガスチャンバ;
C.レーザ装置から出力されたパルスレーザ光を希ガスチャンバ内に集光して希ガスを励起させる集光光学系;
D.希ガスチャンバ内で発生する高調波光に含まれるEUV光を選択的に通過させるフィルタチャンバ;
E.フィルタチャンバに接続された排気装置;
F.希ガスチャンバとフィルタチャンバとの間であって、パルスレーザ光の光路上に配置された少なくとも1つの貫通孔;
G.希ガスチャンバ内に希ガスを供給する希ガス供給部;
H.希ガス供給部から希ガスチャンバに流れる希ガスの流量を制御する流量制御バルブ;
I.希ガスチャンバ内の希ガスの圧力を検出する第1の圧力センサ;
J.第1の圧力センサの検出圧力が基準範囲内となるように流量制御バルブを制御する第1の制御部;及び
K.少なくとも第1の圧力センサの検出圧力に基づいて、レーザ装置から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギを制御する第2の制御部。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、本開示の比較例に係る検査光源としてのレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
図3図3は、比較例に係るレーザシステムから出力されるEUV光の出力の時間変化を例示するグラフである。
図4図4は、第1の実施形態に係るレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
図5図5は、主制御部によって行われるレーザシステムの制御フローを示すフローチャートである。
図6図6は、図5のフローチャートにおけるステップS100のサブルーチンを示すフローチャートである。
図7図7は、図5のフローチャートにおけるステップS320のサブルーチンを示すフローチャートである。
図8図8は、希ガスの圧力とEUV光のパルスエネルギとの関係を表す第1のデータを例示するグラフである。
図9図9は、図5のフローチャートにおけるステップS330のサブルーチンを示すフローチャートである。
図10図10は、EUV光のパルスエネルギと基本波光のパルスエネルギとの関係を表す第2のデータを例示するグラフである。
図11図11は、第2の実施形態に係るレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
図12図12は、主制御部によって行われるレーザシステムの制御フローを示すフローチャートである。
図13図13は、図12のフローチャートにおけるステップS420のサブルーチンを示すフローチャートである。
図14図14は、貫通孔の面積Spin、圧力P1,P2、及び集光位置Cpの希ガスの圧力P’の関係を表す第3のデータを例示する図である。
図15図15は、図12のフローチャートにおけるステップS430のサブルーチンを示すフローチャートである。
図16図16は、P2=0と近似した場合の第3のデータを表す関数P’=f(P1,P2,Spin)を概略的に示すグラフである。
図17図17は、第3の実施形態に係るレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
図18図18は、主制御部によって行われるレーザシステムの制御フローを示すフローチャートである。
図19図19は、EUV光のパルスエネルギと基本波光のパルスエネルギとの関係を表す第2のデータを例示するグラフである。
図20図20は、第4の実施形態に係るレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
図21図21は、主制御部によって行われるレーザシステムの制御フローを示すフローチャートである。
図22図22は、フェムト秒レーザ装置の構成例を示す図である。
【実施形態】
【0008】
<内容>
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例に係るレーザシステム
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.第1の実施形態
3.1 構成
3.2 動作
3.2.1 準備及び発振開始動作
3.2.2 EUV光のパルスエネルギの変動量の算出
3.2.3 基本波光のパルスエネルギの設定値の算出
3.3 効果
4.第2の実施形態
4.1 構成
4.2 動作
4.2.1 集光位置の圧力の算出
4.2.2 EUV光のパルスエネルギの変動量の算出
4.3 効果
5.第3の実施形態
5.1 構成
5.2 動作
5.3 効果
6.第4の実施形態
6.1 構成
6.2 動作
7.フェムト秒レーザ装置
7.1 構成
7.2 動作
7.3 効果
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられる場合がある。本願においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。
【0011】
図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2、ターゲット供給部26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給部26は、ターゲット物質をチャンバ2内部に供給するよう構成され、たとえば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられる。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0012】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、たとえば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されている。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には、たとえば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されている。EUV集光ミラー23は、たとえば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF)292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が設けられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御部5、ターゲットセンサ4等を含む。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の通過タイミング、位置、形状、大きさ、軌道、速度のうちいずれかまたは複数を検出するよう構成されている。
【0014】
EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と露光装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。接続部29内部には、アパーチャ293が形成された壁291が設けられている。壁291は、そのアパーチャ293がEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されている。
【0015】
また、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。ターゲット回収部28は、ターゲット27のうちプラズマ化しなかった残渣を回収する。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、例示的なLPP式のEUV光生成システムの動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給部26は、ターゲット物質によって形成されたターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力するよう構成されている。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。EUV集光ミラー23は、放射光251に含まれるEUV光を、他の波長域の光に比べて高い反射率で反射する。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、露光装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
EUV光生成制御部5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括するよう構成されている。EUV光生成制御部5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理するよう構成されている。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、EUV光生成制御部5は、たとえば、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御するよう構成されてもよい。さらに、EUV光生成制御部5は、たとえば、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御するよう構成されている。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例に係るレーザシステム
次に、比較例に係るレーザシステムについて説明する。本比較例に係るレーザシステムは、たとえば、図1に示したEUV光生成装置1におけるEUV集光ミラー23の反射率を測定するための反射率測定装置に用いられる検査光源としてのEUVコヒーレント光源である。
【0020】
2.1 構成
図2に、本開示の比較例に係る検査光源としてのレーザシステム40の構成を概略的に示す。レーザシステム40は、フェムト秒レーザ装置41と、集光光学系42と、希ガスチャンバ43と、希ガス供給部44と、第1の圧力センサ45と、フィルタチャンバ46と、排気装置47と、第2の圧力センサ48と、を含む。
【0021】
フェムト秒レーザ装置41は、希ガスを励起するためのフェムト秒(fs)のパルス時間幅を有するポンプ用パルスレーザ光Lpを出力するように構成されている。本明細書において、フェムト秒レーザ装置とは、出力されるパルスレーザ光のパルス時間幅が1ps未満であるレーザ装置と定義する。フェムト秒レーザ装置41は、基本波光としての直線偏光のポンプ用パルスレーザ光Lpを出力する。ポンプ用パルスレーザ光Lpは、中心波長が約796.5nm、パルス時間幅が約5fs~100fsの範囲内、パルスエネルギが約1mJ~10mJの範囲内、パルスの繰り返し周波数が約1kHz~10kHzの範囲内である。フェムト秒レーザ装置41は、たとえばチタンサファイヤレーザ装置である。
【0022】
集光光学系42は、平凸レンズ、非球面レンズ、凹面ミラー、軸外放物面ミラーのうちのいずれか1つまたは複数を含み、フェムト秒レーザ装置41から出力されたポンプ用パルスレーザ光Lpを、希ガスチャンバ43内の所定の集光位置Cpに集光させる。
【0023】
希ガスチャンバ43は、希ガスを収容するものであって、ウインドウ50と、貫通孔51と、を含む。希ガスチャンバ43には、配管43aを介して希ガス供給部44が接続されている。希ガス供給部44は、希ガスとしてのヘリウム(He)ガスまたはネオン(Ne)ガスを供給する図示しないガスボンベに接続されている。また、配管43aには、希ガスチャンバ43内の圧力を計測するための第1の圧力センサ45が接続されている。さらに、配管43aの第1の圧力センサ45の接続部と希ガス供給部44との間には、希ガス供給部44から希ガスチャンバ43内へ流れる希ガスの流量を調整するための流量制御バルブ44aが設けられている。
【0024】
ウインドウ50は、集光光学系42から出射されたポンプ用パルスレーザ光Lpがほぼ垂直に入射するように、希ガスチャンバ43に配置されている。ウインドウ50は、たとえば、フッ化マグネシウム(MgF2)結晶により形成されており、光学軸とポンプ用パルスレーザ光の軸が略一致するように配置されている。ウインドウ50の厚みは、たとえば約1mmである。
【0025】
希ガスチャンバ43とフィルタチャンバ46とは、図示しないOリングを介して接続されており、この接続部には隔壁52が設けられている。この隔壁52は、たとえばアルミニウム等の金属膜であり、ポンプ用パルスレーザ光Lpの光路上に貫通孔51が形成されている。貫通孔51は、隔壁52にポンプ用パルスレーザ光Lpを照射することにより形成されたものであり、断面形状はほぼ円形のピンホールである。集光光学系42は、ポンプ用パルスレーザ光Lpを、希ガスチャンバ43内において貫通孔51の位置と殆ど同じ位置に集光させる。この集光位置Cpにおけるポンプ用パルスレーザ光Lpの集光径は約100μmである。したがって、貫通孔51の直径は、ポンプ用パルスレーザ光Lpの集光径と同程度である。
【0026】
基本波光としてのポンプ用パルスレーザ光Lpが集光位置Cpで集光されることによって、希ガスが励起される。この励起された希ガスの非線形効果によってポンプ用パルスレーザ光Lpと同軸上に、少なくとも59次以上の奇数の高次高調波を含む高調波光が生成される。59次の高調波光が、波長約13.5nmのEUV光60である。
【0027】
フィルタチャンバ46は、希ガスチャンバ43に対して、ポンプ用パルスレーザ光Lpの光路の下流側に配置されている。フィルタチャンバ46内には、第1のビームセパレータ53と、第2のビームセパレータ54と、バンドパスフィルタ55と、第1の多層膜ミラー56と、第2の多層膜ミラー57とが配置されている。第1のビームセパレータ53と第2のビームセパレータ54とは、それぞれ、二酸化ジルコニウム(ZrO2)や窒化ニオブ(NbN)の薄膜を、シリコン(Si)や二酸化シリコン(SiO2)の基板上に形成したものである。第1のビームセパレータ53と第2のビームセパレータ54とは、それぞれ入射光から約10nm~40nmの波長帯域の光を選択的に反射するダイクロイックミラーとして機能する。
【0028】
第1のビームセパレータ53は、希ガスチャンバ43から貫通孔51を通過した高調波光及び基本波光がP偏光として入射し、かつ入射角が基本波光に対してほぼブリュースター角となるように配置されている。第2のビームセパレータ54は、第1のビームセパレータ53と平行で、かつ第1のビームセパレータ53による反射光が入射するように配置されている。したがって、第2のビームセパレータ54に入射する入射光は、P偏光であって、入射角は基本波光に対してほぼブリュースター角である。
【0029】
バンドパスフィルタ55は、貫通孔が形成された部材の貫通孔上に、厚みが数100nmのZr薄膜を固定したZr薄膜フィルタである。バンドパスフィルタ55は、約7nm~15nmの波長帯域の光を選択的に透過させ、その他の波長帯域の光は、反射または吸収する。バンドパスフィルタ55は、第2のビームセパレータ54により反射された反射光の光路上に配置されている。
【0030】
第1の多層膜ミラー56と第2の多層膜ミラー57とは、それぞれ、たとえばモリブデン(Mo)薄膜とシリコン(Si)薄膜とを交互に積層した多層膜である。第1の多層膜ミラー56は、バンドパスフィルタ55を透過した光の光路上に配置されている。第2の多層膜ミラー57は、第1の多層膜ミラー56による反射光が入射するように配置されている。第1の多層膜ミラー56と第2の多層膜ミラー57とは、バンドパスフィルタ55の透過光から、波長約13.1nmの61次の高調波光と波長約14.0nmの57次の高調波光の反射を抑制し、波長約13.5nmの59次の高調波光であるEUV光60を反射させる。
【0031】
フィルタチャンバ46には、排気装置47が接続されている。排気装置47は、フィルタチャンバ46内を排気し、フィルタチャンバ46内の圧力を真空に近い圧力とする。また、フィルタチャンバ46には、フィルタチャンバ46内の圧力を計測するための第2の圧力センサ48が接続されている。
【0032】
フィルタチャンバ46は、反射率計測装置の図示しない計測チャンバ内に配置されたEUV集光ミラー23にEUV光60を伝送するための図示しない光伝送部に接続されている。フィルタチャンバ46と光伝送部とは、図示しないOリングや金属ガスケットによってシールされている。
【0033】
2.2 動作
次に、比較例に係るレーザシステム40の動作について説明する。まず、準備動作として、排気装置47の運転を開始させ、第2の圧力センサ48の検出圧力P2が真空に近い圧力となるまで低下させる。検出圧力P2が真空に近い圧力となると、流量制御バルブ44aを開き、希ガスチャンバ43内への希ガスの供給を開始する。そして、第1の圧力センサ45の検出圧力P1が所定の目標圧力PT1となるように流量制御バルブ44aを調整する。この目標圧力PT1は、10k~100kPaの範囲内の値であり、たとえば約17kPaである。
【0034】
次に、フェムト秒レーザ装置41を駆動し、中心波長が約796.5nm、パルス時間幅が約30fs、パルスエネルギが約6mJ、パルスの繰り返し周波数が約1kHzであるポンプ用パルスレーザ光Lpを出力させる。フェムト秒レーザ装置41から出力されたポンプ用パルスレーザ光Lpは、集光光学系42により、希ガスチャンバ43内の集光位置Cpに集光される。ポンプ用パルスレーザ光Lpの集光径は約100μmである。
【0035】
ポンプ用パルスレーザ光Lpが集光位置Cpで集光されることによって、希ガスが励起され、希ガスの非線形効果によって少なくとも59次以上の奇数の高次高調波を含む高調波光が生成される。59次の高調波光が、波長約13.5nmのEUV光60である。高調波光の偏光方向と出射光軸とは、ポンプ用パルスレーザ光Lpの偏光方向と入射光軸と一致している。集光位置Cpで発生した高調波光及び基本波光は、貫通孔51を通過してフィルタチャンバ46内の第1のビームセパレータ53に入射する。
【0036】
第1のビームセパレータ53に入射した高調波光及び基本波光のうち、約10nm~40nmの波長帯域の光が反射される。この反射光は、第2のビームセパレータ54に入射する。第2のビームセパレータ54に入射した光のうち、約10nm~40nmの波長帯域の光が反射される。この反射光は、バンドパスフィルタ55に入射する。バンドパスフィルタ55に入射した光のうち、約7nm~15nmの波長帯域の光がバンドパスフィルタ55を通過する。バンドパスフィルタ55を通過した光は、第1の多層膜ミラー56と第2の多層膜ミラー57とで順次反射される。このとき、61次と57次の高調波光の反射が抑制される。
【0037】
このように、希ガスチャンバ43で発生したEUV光60を含む高調波光は、フィルタチャンバ46により波長選択され、波長約13.5nmのEUV光60のみがフィルタチャンバ46から反射率測定装置内のEUV集光ミラー23に向けて出力される。
【0038】
2.3 課題
反射率測定装置においては、1枚のEUV集光ミラー23の反射率を測定するために8時間程度の時間が要される。このため、測定精度の向上および測定時間の短縮には、検査光源としてのレーザシステム40からのEUV光60の出力を長時間安定化させることが課題である。
【0039】
EUV光60の出力を長時間安定化させるためには、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力を一定にする必要がある。しかし、レーザシステム40を長時間連続動作させると、ポンプ用パルスレーザ光Lpにより貫通孔51の周辺の隔壁52にアブレーションが生じ、貫通孔51のサイズが変化してしまう。貫通孔51のサイズが変化すると、貫通孔51を通じてフィルタチャンバ46に流れる希ガスの流量が変化し、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力が変化する。
【0040】
希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力は、流量制御バルブ44aによる圧力調整に対する応答速度が遅い。このため、第1の圧力センサ45の検出圧力の変化に合わせて流量制御バルブ44aを制御して希ガスの流量を調整したとしても、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力を安定化させ、EUV光60の出力を安定化させることは難しい。
【0041】
図3は、反射率測定装置の測定点におけるEUV光60の出力の時間変化を例示するグラフである。比較例に係るレーザシステム40では、アブレーションにより貫通孔51のサイズが大きくなり、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力の低下するとともに、EUV光60の出力が低下する。
【0042】
3.第1の実施形態
次に、本開示の第1の実施形態に係るレーザシステム40aについて説明する。なお、以下では、上記比較例に係るレーザシステム40の構成要素と略同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0043】
3.1 構成
図4に、本開示の第1の実施形態に係るレーザシステム40aの構成を概略的に示す。第1の実施形態に係るレーザシステム40aは、比較例に係るレーザシステム40の構成要素に加えて、主制御部61と、レーザ出力制御部62と、を含む。主制御部61は、第1の圧力センサ45、第2の圧力センサ48、及び流量制御バルブ44aと、それぞれ信号線を介して接続されている。レーザ出力制御部62は、主制御部61及びフェムト秒レーザ装置41と、それぞれ信号線を介して接続されている。
【0044】
本実施形態では、隔壁52は、ポンプ用パルスレーザ光Lpでアブレーションされにくい金属やガラスで形成されている。ポンプ用パルスレーザ光Lpでアブレーションされにくい金属材料としては、たとえば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等を含む高融点の金属材料が挙げられる。
【0045】
主制御部61は、第1の制御部61aと、第2の制御部61bと、を含む。第1の制御部61aは、第1の圧力センサ45の検出圧力P1と第2の圧力センサ48の検出圧力P2とに基づいて流量制御バルブ44aを制御する。第2の制御部61bは、第1の圧力センサ45の検出圧力P1に基づいてレーザ出力制御部62を制御する。レーザ出力制御部62は、第2の制御部61bから送信された制御信号に基づいて、フェムト秒レーザ装置41から出力される基本波光としてのポンプ用パルスレーザ光Lpのパルスエネルギを変更する。
【0046】
3.2 動作
次に、第1の実施形態に係るレーザシステム40aの動作について説明する。図5は、主制御部61によって行われるレーザシステム40aの制御フローを示す。まず、主制御部61は、準備動作として、排気装置47の運転と、希ガスチャンバ43内への希ガスの供給とを開始させた後、フェムト秒レーザ装置41の発振動作を開始させる(ステップS100)。
【0047】
この後、主制御部61に含まれる第1の制御部61aと第2の制御部61bとにより、第1の制御フロー(ステップS200~S210)と第2の制御フロー(ステップS300~S340)とが並行して行われる。
【0048】
第1の制御フローにおいて、まず、第1の制御部61aは、第1の圧力センサ45の検出圧力P1をモニタリングする(ステップS200)。そして、第1の制御部61aは、検出圧力P1が基準範囲RPs内となるように流量制御バルブ44aをPID(Proportional-Integral-Differential)制御する(ステップS210)。具体的には、第1の制御部61aは、検出圧力P1と基準値との差に応じて、PID制御に基づく制御信号を流量制御バルブ44aに送信する。第1の制御部61aは、ステップS200とステップS210とを所定時間毎に繰り返し実行する。なお、基準範囲RPsは、EUV光60のパルスエネルギEEUVがほぼ最大、すなわち波長変換効率が最大となる希ガスの圧力の範囲である(図8参照)。基準範囲RPsには、EUV光60のパルスエネルギEEUVを最大とする基準圧力Psが含まれる。
【0049】
第2の制御フローにおいて、まず、第2の制御部61bは、第1の圧力センサ45の検出圧力P1をモニタリングし(ステップS300)、検出圧力P1が基準範囲RPs内であるか否かを判定する(ステップS310)。第2の制御部61bは、検出圧力P1が基準範囲RPs内である場合(ステップS310でYes)には、処理をステップS300に戻す。第2の制御部61bは、検出圧力P1が基準範囲RPs外となった場合(ステップS310でNo)には、検出圧力P1に基づき、EUV光60のパルスエネルギEEUVの変動量ΔEEUVを算出する(ステップS320)。
【0050】
次に、第2の制御部61bは、ΔEEUV=0とするための基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを算出する(ステップS330)。そして、第2の制御部61bは、基本波光としてのポンプ用パルスレーザ光Lpのパルスエネルギが設定値Efsとなるように、レーザ出力制御部62に制御信号を送信する(ステップS340)。この後、第2の制御部61bは、処理をステップS300に戻す。第2の制御部61bは、ステップS300~S340を所定時間毎に繰り返し実行する。
【0051】
3.2.1 準備及び発振開始動作
次に、図5のフローチャートにおけるステップS100の詳細を説明する。図6は、ステップS100のサブルーチンを示す。このサブルーチンにおいて、まず、第1の制御部61aは、排気装置47の運転を開始させる(ステップS101)。第1の制御部61aは、排気装置47の運転が開始すると、第2の圧力センサ48の検出圧力P2をモニタリングし(ステップS102)、検出圧力P2が真空に近づいたか否か判定する(ステップS103)。具体的には、第1の制御部61aは、検出圧力P2が、P2≦Aを満たすか否かを判定する。たとえば、A=10-2Paである。第1の制御部61aは、P2>Aであれば(ステップS103でNo)、処理をステップS102に戻す。第1の制御部61aは、P2≦Aとなれば、流量制御バルブ44aを制御し、希ガスチャンバ43内への希ガスの供給を開始させる(ステップS104)。
【0052】
第1の制御部61aは、希ガスの供給が開始すると、第1の圧力センサ45の検出圧力P1をモニタリングする(ステップS105)。そして、第1の制御部61aは、検出圧力P1が基準範囲RPs内となるように流量制御バルブ44aをPID制御する(ステップS106)。このステップS106は、前述の第1の制御フローに含まれるステップS210と同様である。次に、第1の制御部61aは、検出圧力P1が基準範囲RPs内で安定化したか否かを判定する(ステップS107)。第1の制御部61aは、検出圧力P1が基準範囲RPs内で安定化していない場合(ステップS107でNo)には、処理をステップS105に戻す。
【0053】
検出圧力P1が基準範囲RPs内で安定化した場合(ステップS107でYes)には、第2の制御部61bは、基本波光のパルスエネルギが初期値Efstとなるようにレーザ出力制御部62に制御信号を送信する(ステップS108)。この初期値Efstは、前述の貫通孔51のサイズが初期値の場合に、EUV光60のパルスエネルギEEUVを所定の目標値とする値である。この後、レーザ出力制御部62は、フェムト秒レーザ装置41の発振動作を開始させる(ステップS109)。
【0054】
3.2.2 EUV光のパルスエネルギの変動量の算出
次に、図5のフローチャートにおけるステップS320の詳細を説明する。図7は、ステップS320のサブルーチンを示す。このサブルーチンにおいて、まず、第2の制御部61bは、基本波光のパルスエネルギが初期値Efstの場合における希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力と、EUV光60のパルスエネルギEEUVとの関係を表す第1のデータ(図8参照)を呼び出す(ステップS321)。この第1のデータは、第2の制御部61b内、若しくは、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0055】
次に、第2の制御部61bは、図8に示す第1のデータと、第1の圧力センサ45の検出圧力P1に基づき、EUV光60のパルスエネルギEEUVの変動量ΔEEUVを算出する(ステップS322)。具体的には、第1のデータに基づき、検出圧力P1に対応するEUV光60のパルスエネルギEEUV#P1と、希ガスの圧力に対するEUV光60のパルスエネルギの最大値EEUV#Mとの差異を算出する。
【0056】
なお、第2の制御部61bは、第1のデータに代えて、第1のデータを表す関数を記憶しておき、この関数を用いて変動量ΔEEUVを算出してもよい。
【0057】
3.2.3 基本波光のパルスエネルギの設定値の算出
次に、図5のフローチャートにおけるステップS330の詳細を説明する。図9は、ステップS330のサブルーチンを示す。このサブルーチンにおいて、まず、第2の制御部61bは、EUV光60のパルスエネルギEEUVと、基本波光のパルスエネルギとの関係を表す第2のデータ(図10参照)を呼び出す(ステップS331)。この第2のデータは、第2の制御部61b内、若しくは、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0058】
次に、第2の制御部61bは、図10に示す第2のデータに基づき、ΔEEUV=0とするための基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを算出する(ステップS332)。具体的には、基本波光のパルスエネルギの初期値Efstに対応するEUV光60のパルスエネルギに、ステップS320で算出された変動量ΔEEUVを加算した値に対応する基本波光のパルスエネルギを算出し、これを設定値Efsとする。
【0059】
なお、第2の制御部61bは、第2のデータに代えて、第2のデータを表す関数を記憶しておき、この関数を用いて設定値Efsを算出してもよい。この関数は、第2のデータの線形近似直線であってもよい。
【0060】
3.3 効果
本実施形態によれば、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力が変化した場合に、第1の制御部61aによる流量制御バルブ44aのPID制御と並行して、フェムト秒レーザ装置41の入力パルスエネルギEfが高速に制御される。したがって、本実施形態によれば、アブレーションにより貫通孔51のサイズが変化し、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力が変化することによるEUV光60の出力の変動を抑制することができ、長時間安定したEUV光60を出力させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、排気装置47の排気速度が速いので、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力が変化したとしても、フィルタチャンバ46内の圧力変化が小さく、第2の圧力センサ48の検出圧力P2は真空に近い値に維持され得る。このため、本実施形態では、EUV光60の出力制御に、第2の圧力センサ48の検出圧力P2は用いていない。
【0062】
4.第2の実施形態
第1の実施形態では、第1の圧力センサ45の検出圧力P1に基づいてEUV光60のパルスエネルギEEUVの変動量ΔEEUVを算出しているが、集光位置Cpの希ガスの圧力が検出圧力P1と異なり得る。集光位置Cpの希ガスの圧力と検出圧力P1とが異なる場合には、変動量ΔEEUVが正確に求まらない可能性がある。
【0063】
本開示の第2の実施形態では、集光位置Cpの希ガスの圧力を正確に求めることにより、変動量ΔEEUVの算出精度を向上させる。以下、第2の実施形態に係るレーザシステム40bについて説明する。なお、以下では、第1の実施形態に係るレーザシステム40aの構成要素と略同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0064】
4.1 構成
図11に、本開示の第2の実施形態に係るレーザシステム40bの構成を概略的に示す。本実施形態に係るレーザシステム40bは、第1の実施形態に係るレーザシステム40aの構成要素に加えて、撮影装置70を含む。撮影装置70は、フィルタチャンバ46内に、貫通孔51を含む隔壁52を撮影するように配置されている。撮影装置70により撮影された画像データは、第2の制御部61bに送信される。
【0065】
本実施形態では、第2の制御部61bに、第1の圧力センサ45の検出圧力P1に加えて、第2の圧力センサ48の検出圧力P2が入力される。本実施形態では、第2の制御部61bは、撮影装置70から送信された画像データに基づき、貫通孔51の面積Spinを算出する。また、第2の制御部61bは、面積Spinと検出圧力P1,P2とに基づき、集光位置Cpの希ガスの圧力P’を算出する。本実施形態のレーザシステム40bのその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0066】
4.2 動作
次に、第2の実施形態に係るレーザシステム40bの動作について説明する。図12は、主制御部61によって行われるレーザシステム40bの制御フローを示す。まず、主制御部61は、準備動作として、排気装置47の運転と、希ガスチャンバ43内への希ガスの供給とを開始させた後、フェムト秒レーザ装置41の発振動作を開始させる(ステップS100)。このステップS100は、第1の実施形態と同一である。
【0067】
この後、第1の制御部61aと第2の制御部61bとにより、第1の制御フロー(ステップS200~S210)と第2の制御フロー(ステップS400~S470)とが並行して行われる。第1の制御フローは、第1の実施形態と同一であるので、説明は省略する。
【0068】
第2の制御フローにおいて、まず、第2の制御部61bは、貫通孔51の面積Spinと、検出圧力P1,P2とをモニタリングし(ステップS400)、面積Spinに所定値以上の変化が生じたか否かを判定する(ステップS410)。第2の制御部61bは、面積Spinに所定値以上の変化が生じていない場合(ステップS410でNo)には、処理をステップS400に戻す。第2の制御部61bは、面積Spinに所定値以上の変化が生じた場合(ステップS410でYes)には、面積Spinと、検出圧力P1,P2とに基づき、集光位置Cpの希ガスの圧力P’を算出する(ステップS420)。そして、第2の制御部61bは、集光位置Cpの希ガスの圧力P’に基づき、EUV光60のパルスエネルギEEUVの最大値からの変動量ΔEEUVを算出する(ステップS430)。
【0069】
次に、第2の制御部61bは、ΔEEUV=0とするための基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを算出する(ステップS440)。そして、第2の制御部61bは、基本波光としてのポンプ用パルスレーザ光Lpのパルスエネルギが設定値Efsとなるように、レーザ出力制御部62に制御信号を送信する(ステップS450)。
【0070】
この後、第2の制御部61bは、面積Spinが規定値以下であるか否かを判定する(ステップS460)。第2の制御部61bは、面積Spinが規定値以下である場合(ステップS460でYes)には、処理をステップS400に戻す。第2の制御部61bは、面積Spinが規定値より大きくなった場合(ステップS460でNo)には、隔壁52の交換を促す信号を、図示しないディスプレイまたは外部装置に送信し(ステップS470)、処理をステップS400に戻す。
【0071】
4.2.1 集光位置の圧力の算出
次に、図12のフローチャートにおけるステップS420の詳細を説明する。図13は、ステップS420のサブルーチンを示す。このサブルーチンにおいて、まず、第2の制御部61bは、面積Spin、圧力P1,P2、及び集光位置Cpの希ガスの圧力P’の関係を表す第3のデータ(図14参照)を呼び出す(ステップS421)。この第3のデータは、第2の制御部61b内、若しくは、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0072】
次に、第2の制御部61bは、図14に示す第3のデータに基づき、集光位置Cpの希ガスの圧力P’を算出する(ステップS422)。具体的には、第3のデータは、面積Spin、圧力P1,P2、及び圧力P’の関係がテーブル化されたものである。第2の制御部61bは、図14に示すテーブルデータを参照し、面積Spinの計測値、及び検出圧力P1,P2が、最も対応する圧力P’を求める。
【0073】
なお、第2の制御部61bは、第3のデータに代えて、第3のデータを表す関数P’=f(P1,P2,Spin)を記憶しておき、この関数を用いて圧力P’を算出してもよい。
【0074】
4.2.2 EUV光のパルスエネルギの変動量の算出
次に、図12のフローチャートにおけるステップS430の詳細を説明する。図15は、ステップS430のサブルーチンを示す。このサブルーチンにおいて、まず、第2の制御部61bは、希ガスチャンバ43内の希ガスの圧力と、EUV光60のパルスエネルギEEUVとの関係を表す第1のデータを呼び出す(ステップS431)。この第1のデータは、第1の実施形態において図8に示した第1のデータと同一である。この第1のデータは、第2の制御部61b内、若しくは、図示しない記憶装置に記憶されている。
【0075】
次に、第2の制御部61bは、第1のデータと、ステップS420で算出された集光位置Cpの希ガスの圧力P’とに基づき、EUV光60のパルスエネルギEEUVの変動量ΔEEUVを算出する(ステップS432)。具体的には、第1のデータに基づき、図8に示すグラフにおいて、希ガスの圧力P1を圧力P’に置き換え、圧力P’に対応するEUV光60のパルスエネルギと、EUV光60のパルスエネルギの最大値との差異を算出する。
【0076】
なお、第2の制御部61bは、第1のデータに代えて、第1のデータを表す関数を記憶しておき、この関数を用いて変動量ΔEEUVを算出してもよい。
【0077】
また、本実施形態におけるステップS440の詳細は、第1の実施形態のステップ330と同一である。すなわち、第2の制御部61bは、図10に示す第2のデータに基づき、ΔEEUV=0とするための基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを算出する。
【0078】
4.3 効果
本実施形態によれば、貫通孔51の面積Spinの計測値に基づいて、集光位置Cpの希ガスの圧力P’を算出し、この圧力P’に基づいて変動量ΔEEUVを算出するので、変動量ΔEEUVの算出精度が向上する。これにより、EUV光60の出力を長時間安定化させることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、集光位置Cpの希ガスの圧力P’の算出に、面積Spin、及び検出圧力P1,P2を用いているが、検出圧力P2は必須ではない。これは、検出圧力P1が104Pa程度であるのに対して、検出圧力P2は10-2Pa程度と低く、要求される圧力P’の算出精度によっては、P2=0とみなしても問題が生じないためである。
【0080】
図16は、P2=0と近似した場合の第3のデータを表す関数P’=f(P1,P2,Spin)を概略的に示す。実際の装置では、P2≦10-2Paであって、P1は約104Paであるため、P2=0と近似することができる。このように、集光位置Cpの希ガスの圧力P’と、貫通孔51の面積Spinとの関係は、第1の圧力センサ45の検出圧力P1に依存して変化する。
【0081】
5.第3の実施形態
第1及び第2の実施形態では、希ガスチャンバ43内の圧力に基づいてEUV光60の出力を制御しているが、フィルタチャンバ46内のビームセパレータ等の光学素子の劣化によりEUV光60の出力が変化することが考えられる。
【0082】
本開示の第3の実施形態では、EUV光60の出力を実測することにより、EUV光60の出力の安定化を図る。以下、第3の実施形態に係るレーザシステム40cについて説明する。なお、以下では、第1の実施形態に係るレーザシステム40aの構成要素と略同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0083】
5.1 構成
図17に、本開示の第3の実施形態に係るレーザシステム40cの構成を概略的に示す。本実施形態に係るレーザシステム40cは、第1の実施形態に係るレーザシステム40aの構成要素に加えて、ビームスプリッタ71と、光センサ72と、を含む。ビームスプリッタ71及び光センサ72は、フィルタチャンバ46内に配置されている。
【0084】
ビームスプリッタ71は、第2の多層膜ミラー57から反射光として出力されるEUV光60の光路上に、光路軸に対して傾斜した状態で配置されている。ビームスプリッタ71は、入射したEUV光60の一部を反射する。ビームスプリッタ71は、たとえばZr薄膜を固定したZr薄膜フィルタである。
【0085】
光センサ72は、ビームスプリッタ71により反射された反射光の光路上に配置されている。光センサ72は、たとえばフォトダイオードであり、入射光を検出して、EUV光60のパルスエネルギに対応する計測信号を出力する。光センサ72から出力された計測信号は、第2の制御部61bに送信される。本実施形態では、第2の制御部61bは、前述の変動量ΔEEUVに加えて、EUV光60のパルスエネルギの計測値を考慮して基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを求める。また、本実施形態では、第2の制御部61bは、計時機能を有している。本実施形態のレーザシステム40cのその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0086】
5.2 動作
次に、第3の実施形態に係るレーザシステム40cの動作について説明する。図18は、主制御部61によって行われるレーザシステム40cの制御フローを示す。まず、主制御部61は、準備動作として、排気装置47の運転と、希ガスチャンバ43内への希ガスの供給とを開始させた後、フェムト秒レーザ装置41の発振動作を開始させる(ステップS100)。このステップS100は、第1の実施形態と同一である。
【0087】
この後、第1の制御部61aと第2の制御部61bとにより、第1の制御フロー(ステップS200~S210)と第2の制御フロー(ステップS500~S590)とが並行して行われる。第1の制御フローは、第1の実施形態と同一であるので、説明は省略する。
【0088】
第2の制御フローにおいて、まず、第2の制御部61bは、タイマTをリセットスタートして計時を開始する(ステップS500)。次に、第2の制御部61bは、光センサ72から送信された計測信号に基づき、EUV光60のパルスエネルギの計測値EREUVを取得する(ステップS510)。そして、第2の制御部61bは、計測値EREUVと、EUV光60の目標パルスエネルギEtEUVとの差ΔEREUVを、下式1に基づいて算出する(ステップS520)。
ΔEREUV=EtEUV-EREUV ・・・(1)
【0089】
なお、目標パルスエネルギEtEUVとは、フィルタチャンバ46内の光学素子に劣化が生じていない場合において、基本波光のパルスエネルギを初期値Efstとした初期状態におけるEUV光60のパルスエネルギの最大値EEUV#Mである(図8参照)。
【0090】
次に、第2の制御部61bは、第1の圧力センサ45の検出圧力P1をモニタリングし(ステップS530)、検出圧力P1が基準範囲RPs内であるか否かを判定する(ステップS540)。第2の制御部61bは、検出圧力P1が基準範囲RPs内である場合(ステップS540でYes)には、処理をステップS530に戻す。第2の制御部61bは、検出圧力P1が基準範囲RPs外となった場合(ステップS540でNo)には、検出圧力P1に基づき、EUV光60のパルスエネルギEEUVの最大値である目標パルスエネルギからの変動量ΔEEUVを算出する(ステップS550)。ステップS550の詳細は、第1の実施形態のステップS320と同様である。
【0091】
次に、第2の制御部61bは、下式2に基づいて、変動量ΔEEUVを補正し、補正後の変動量ΔESUMEUVを取得する(ステップS560)。
ΔESUMEUV=ΔEEUV+ΔEREUV ・・・(2)
【0092】
次に、第2の制御部61bは、図19に示す第2のデータに基づき、ΔESUMEUV=0とするための基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを算出する(ステップS570)。本実施形態では、第2の制御部61bは、基本波光のパルスエネルギの初期値Efstに対応するEUV光60のパルスエネルギに、補正後の変動量ΔESUMEUVを加算した値に対応する基本波光のパルスエネルギを算出し、これを設定値Efsとする。
【0093】
そして、第2の制御部61bは、基本波光としてのポンプ用パルスレーザ光Lpのパルスエネルギが設定値Efsとなるようにレーザ出力制御部62に制御信号を送信する(ステップS580)。
【0094】
この後、第2の制御部61bは、タイマTが所定時間K以上であるか否かを判定する(ステップS590)。第2の制御部61bは、タイマTが所定時間K未満である場合(ステップS590でNo)には、処理をステップS530に戻す。第2の制御部61bは、タイマTが所定時間K以上である場合(ステップS590でYes)には、処理をステップS500に戻す。すなわち、第2の制御部61bは、所定時間Kが経過するたびに、EUV光60のパルスエネルギの計測値EREUVを取得して、変動量ΔEEUVを補正する。なお、所定時間Kは、たとえば、0.5時間から24時間の範囲内である。
【0095】
5.3 効果
本実施形態によれば、定期的にEUV光60のパルスエネルギを計測して、検出圧力P1により求めた変動量ΔEEUVを補正し、補正後の変動量ΔESUMEUVに基づいて基本波光のパルスエネルギの設定値Efsを算出する。このため、フィルタチャンバ46内の光学素子に劣化が生じ、フィルタチャンバ46から出力されるEUV光60のパルスエネルギが変化した場合に、この変化を補正して安定化することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、ビームスプリッタ71をEUV光60の光路上に固定配置しているが、これに代えて、ビームスプリッタ71をEUV光60の光路上から退避可能としてもよい。たとえば、ビームスプリッタ71を図示しないリニアステージ上に配置して移動自在とし、EUV光60のパルスエネルギを計測する場合にのみビームスプリッタ71を光路上に配置してもよい。また、反射率計測装置で反射率を測定している場合に、ビームスプリッタ71を光路上から退避させ、反射率計測装置で反射率を測定していない場合にビームスプリッタ71を光路上に配置してもよい。
【0097】
6.第4の実施形態
第1~第3の実施形態では、希ガスチャンバ43を、貫通孔51が形成された隔壁52を介してフィルタチャンバ46に接続しているが、レーザシステムの構成はこれに限られない。
【0098】
本開示の第4の実施形態では、フィルタチャンバ内に希ガスを収容したキャピラリファイバを配置する。なお、本開示では、チャンバという用語は、気体等を収容する室を意味し、キャピラリファイバ等の中空ファイバも含むものとする。以下、第4の実施形態に係るレーザシステム40dについて説明する。なお、以下では、上記各実施形態に係るレーザシステムの構成要素と略同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0099】
6.1 構成
図20に、本開示の第4の実施形態に係るレーザシステム40dの構成を概略的に示す。第4の実施形態に係るレーザシステム40dは、フェムト秒レーザ装置41と、集光光学系42と、キャピラリファイバ80と、希ガス供給部44と、第1の圧力センサ45と、フィルタチャンバ90と、排気装置47と、第2の圧力センサ48と、撮影装置70と、を含む。
【0100】
キャピラリファイバ80は、希ガスを収容するものであって、第1の貫通孔81aが形成された第1の隔壁81と、第2の貫通孔82aが形成された第2の隔壁82と、を含む。第1の隔壁81は、ポンプ用パルスレーザ光Lpが入射するキャピラリファイバ80の入射側の端部に位置している。第2の隔壁82は、ポンプ用パルスレーザ光Lpが出射されるキャピラリファイバ80の出射側の端部に位置している。
【0101】
キャピラリファイバ80には、配管80aを介して希ガス供給部44が接続されている。また、配管80aには、キャピラリファイバ80内の圧力を計測するための第1の圧力センサ45が接続されている。さらに、配管80aの第1の圧力センサ45の接続部と希ガス供給部44との間には、流量制御バルブ44aが設けられている。キャピラリファイバ80と配管80aの一部は、フィルタチャンバ90内に配置されている。
【0102】
第1の隔壁81及び第2の隔壁82は、ポンプ用パルスレーザ光Lpでアブレーションされにくい金属やガラスで形成されている。ポンプ用パルスレーザ光Lpでアブレーションされにくい金属材料としては、たとえば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の高融点金属が挙げられる。
【0103】
フィルタチャンバ90は、ウインドウ91を含む。ウインドウ91は、集光光学系42から出射されたポンプ用パルスレーザ光Lpがほぼ垂直に入射するように配置されている。ウインドウ91は、たとえば、MgF2結晶により形成されており、光学軸とポンプ用パルスレーザ光の軸が略一致するように配置されている。ウインドウ91の厚みは、たとえば約1mmである。
【0104】
キャピラリファイバ80は、ウインドウ91を介してフィルタチャンバ90内に入射したポンプ用パルスレーザ光Lpが第1の貫通孔81aと第2の貫通孔82aとを通過するように配置されている。本実施形態では、集光光学系42は、ポンプ用パルスレーザ光Lpをキャピラリファイバ80内に集光させる。すなわち、集光位置Cpは、第1の貫通孔81aと第2の貫通孔82aとの間におけるポンプ用パルスレーザ光Lpの光路上である。ポンプ用パルスレーザ光Lpが集光位置Cpで集光されることによって、希ガスが励起され、少なくとも59次以上の奇数の高次高調波を含む高調波光が生成される。
【0105】
フィルタチャンバ90内には、第1のビームセパレータ53と、第2のビームセパレータ54と、バンドパスフィルタ55と、第1の多層膜ミラー56と、第2の多層膜ミラー57とが配置されている。第1のビームセパレータ53は、キャピラリファイバ80から第2の貫通孔82aを通過した高調波光及び基本波光がP偏光として入射し、かつ入射角が基本波に対してほぼブリュースター角となるように配置されている。第1のビームセパレータ53、第2のビームセパレータ54、バンドパスフィルタ55、第1の多層膜ミラー56、及び第2の多層膜ミラー57の構成や配置は、上記各実施形態と同様である。
【0106】
また、フィルタチャンバ90には、排気装置47と、第2の圧力センサ48とが接続されている。排気装置47及び第2の圧力センサ48の構成は、上記各実施形態と同様である。また、フィルタチャンバ90内には、前述の撮影装置70が配置されている。本実施形態では、撮影装置70は、第1の貫通孔81aを含む第1の隔壁81を撮影するように配置されている。撮影装置70により撮影された画像データは、第2の制御部61bに送信される。
【0107】
主制御部61に含まれる第1の制御部61aと第2の制御部61bとの構成は、第2の実施形態と同様である。第2の制御部61bは、撮影装置70から送信された画像データに基づき、第1の貫通孔81aの面積Spinaを算出する。また、第2の制御部61bは、第1の貫通孔81aの面積Spinaと検出圧力P1,P2とに基づき、集光位置Cpの希ガスの圧力P’’を算出する。
【0108】
6.2 動作
図21は、主制御部61によって行われるレーザシステム40dの制御フローを示す。この制御フローは、図12に示した第2の実施形態における制御フローと同様であるので、説明は省略する。なお、本実施形態では、第2の制御部61bは、第1の貫通孔81aの面積Spinaが規定値より大きくなった場合に、キャピラリファイバ80の交換を促す信号を、図示しないディスプレイまたは外部装置に送信し(ステップS670)。
【0109】
本実施形態によれば、第1の貫通孔81aの面積Spinaの計測値に基づいて、集光位置Cpの希ガスの圧力P’’を算出し、この圧力P’’に基づいて変動量ΔEEUVを算出するので、変動量ΔEEUVの算出精度が向上する。これにより、EUV光60の出力を長時間安定化させることができる。
【0110】
なお、本実施形態は、第2の実施形態における希ガスチャンバをキャピラリファイバとしてフィルタチャンバ内に配置したものであるが、第1の実施形態や第3の実施形態の変形例として、希ガスチャンバに代えてキャピラリファイバをフィルタチャンバ内に配置してもよい。
【0111】
また、本実施形態は、キャピラリファイバの各端部に、貫通孔が形成された隔壁を設けているが、これに代えて、隔壁を設けず、キャピラリファイバ等の中空ファイバの各端部の開口を貫通孔とみなしてもよい。
【0112】
また、上記各実施形態では、フィルタチャンバ内に配置されるビームセパレータを、ポンプ用パルスレーザ光LpとEUV光60の波長帯域の光を反射するダイクロイックミラーとしているが、これに代えて、EUV光60の光軸上に配置された複数のピンホールを用いてもよい。ポンプ用パルスレーザ光LpのビームダイバージェンスがEUV光60のビームダイバージェンスよりも広いという性質を利用して、ポンプ用パルスレーザ光Lpのピンホールの通過を抑制し、EUV光60を選択的に通過させることができる。
【0113】
また、上記各実施形態では、主制御部61に含まれる第1の制御部61aと第2の制御部61bとをそれぞれ別の構成要素としているが、これらを1つの制御部として構成してもよい。また、主制御部61は、半導体回路等のハードウェアにより構成されたものに限られず、CPU等の制御回路が、メモリから読み込んだプログラムを実行するものであってもよい。さらに、主制御部61は、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラムが可能なゲートアレイであってもよい。
【0114】
7.フェムト秒レーザ装置
次に、フェムト秒レーザ装置41の具体的な構成及び動作を説明する。
【0115】
7.1 構成
図22に、フェムト秒レーザ装置41の構成例を示す。フェムト秒レーザ装置41は、モードロックレーザ装置121と、高反射ミラー122,123と、パルス伸張器124と、増幅器125と、パルス圧縮器126と、アッテネータ127と、を含む。
【0116】
モードロックレーザ装置121は、励起用レーザ装置120と、集光レンズ130と、可飽和吸収ミラー131と、ダイクロイックミラー132Aと、高反射ミラー132B,132Cと、チタンサファイヤ結晶133と、を含む。さらに、モードロックレーザ装置121は、プリズム134A,134B,134C,134Dと、スリット135と、1軸ステージ136と、出力結合ミラー137と、を含む。
【0117】
可飽和吸収ミラー131と出力結合ミラー137とにより光共振器が構成されている。この光共振器の光路上には、ダイクロイックミラー132Aと、チタンサファイヤ結晶133と、高反射ミラー132B,132Cと、プリズム134A,134Bと、スリット135と、プリズム134C,134Dとが順番に配置されている。プリズム134A,134B,134C,134Dの頂角は、光の入射角と出射角とがそれぞれほぼブリュースタ角となる角度であることが好ましい。
【0118】
プリズム134Aとプリズム134Bは、互いに分散方向が逆であって、光がブリュースタ角で入射して、ブリュースタ角で出射するように配置されている。プリズム134Cとプリズム134Dは、互いに分散方向が逆であって、光がブリュースタ角で入射して、ブリュースタ角で出射するように配置されている。
【0119】
スリット135は、開口部がプリズム134Bとプリズム134Cとの間の光路上に配置されている。スリット135は、矢印で示す移動方向138、たとえば光路軸に対して略垂直方向に移動するように、図示しないホルダを介して1軸ステージ136に固定されている。
【0120】
高反射ミラー122,123は、モードロックレーザ装置121から出力されたパルスレーザ光を反射してパルス伸張器124に入射させるように配置されている。
【0121】
パルス伸張器124は、グレーティング141,142と、集光レンズ143,144と、高反射ミラー145,146とを含む。グレーティング141,142と、集光レンズ143,144とは、入射したパルスレーザ光のパルス時間幅を伸張するように配置されている。
【0122】
増幅器125は、パルス伸張器124から出力されたパルスレーザ光を増幅するように構成されている。増幅器125は、再生増幅器150と、チタンサファイヤ結晶を含む増幅器152と、を含む。再生増幅器150は、チタンサファイヤ結晶151と、高反射ミラー153と、λ/4板154と、EO(Electro Optical)ポッケルスセル155と、偏光子156と、高反射ミラー157と、図示しない励起用レーザ装置とを含む。増幅器152は、図示しないチタンサファイヤ結晶と、図示しない励起用レーザ装置とを含む。
【0123】
パルス圧縮器126は、増幅器125から出力されたパルスレーザ光の光路上に配置されたグレーティング161,162を含む。
【0124】
アッテネータ127は、偏光子170と、半波長板171と、回転ステージ172と、を含む。回転ステージ172は、半波長板171を保持し、光軸を中心として回転するように構成されている。前述のレーザ出力制御部62は、回転ステージ172を駆動して半波長板171を回転させることにより、パルスレーザ光がアッテネータ127を透過する透過率を制御するように構成されている。
【0125】
7.2 動作
モードロックレーザ装置121では、スリット135の開口を通過する波長領域で、モードロックされてレーザ発振し、パルス時間幅がフェムト秒のパルスレーザ光が出力結合ミラー137から出力される。このパルスレーザ光は、パルス伸張器124により、パルス時間幅が伸張され、再生増幅器150によって増幅される。そして、この増幅されたパルスレーザ光は、増幅器152によって、さらに増幅される。ここで、再生増幅器150のEOポッケルスセル155を制御することによって、増幅するパルスを選択し、所定の繰返し周波数で増幅することができる。
【0126】
増幅器125によって増幅されたパルスレーザ光は、パルス圧縮器126によって、再びパルス時間幅がフェムト秒のパルスレーザ光となる。ここで、スリット135の開口部の位置を、移動方向138に沿って移動させることにより、パルスレーザ光の中心波長を変化させることができる。
【0127】
レーザ出力制御部62は、主制御部61から基本波光のパルスエネルギの設定値を受信すると、パルス圧縮器126から出力された直線偏光のパルスレーザ光の偏光面を、半波長板171を回転させることによって回転させる。偏光子170は、P偏光成分の光を透過させ、その他の偏光成分の光を反射する。これにより、フェムト秒レーザ装置41のパルスエネルギが設定値となるように制御する。アッテネータ127の透過率は、たとえば、70%~99%の範囲内で制御される。
【0128】
7.3 効果
以上の構成のフェムト秒レーザ装置41は、出力する基本波光のパルスエネルギをアッテネータ127によって制御することによって、パルスエネルギを変化させても、アッテネータ127よりも上流の素子に対する熱負荷等を変化させることはない。このため、アッテネータ127よりも上流のチタンサファイヤ結晶やその他光学素子の熱負荷の変化が抑制される。この結果、フェムト秒レーザ装置41を安定して動作させることができる。
【0129】
なお、アッテネータ127よりも上流のチタンサファイヤ結晶やその他光学素子の熱負荷の変化が小さい場合には、前述の増幅器125に含まれるチタンサファイヤ結晶を励起させるための励起用レーザ装置の出力を制御してもよい。
【0130】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0131】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22