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特許7138858フィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】フィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220912BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018127918
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020008361
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】大竹 豊
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智徳
(72)【発明者】
【氏名】今 正人
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-081101(JP,A)
【文献】特表2013-535678(JP,A)
【文献】特表2004-519293(JP,A)
【文献】Kim,S el al.,Efficient Iterative CT Reconstruction on Octree Guided by Geometric Errors,6th Conference on Industrial Computed Tomography (iCT) 2016,2016年02月09日,pp1-5,https://www.ndt.net/article/ctc2016/papers/ICT2016_paper_id15.pdf
【文献】篠原 他,画像再構成:臨床医のための解説 第2回 逐次近似画像再構成法,断層映像研究会雑誌,2014年08月,Vol.41, No.2,pp45-57,http://www.jat-jrs.jp/journal/41/41-2-4557shino2.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
A61B 6/00-A61B 6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT装置を使って取得した測定対象物の透過像にフィルタ逆投影法を適用してCT再構成処理する際に、
前記透過像にフィルタ逆投影処理のためのフィルタを適用してフィルタ投影像を生成し、
該フィルタ投影像に対して、画像の低解像度化及び/又は枚数の間引きを行って、低解像度の投影像を生成し、
該低解像度の投影像を用いてCT再構成を行って、低解像度のボリュームデータを生成し、
該低解像度のボリュームデータの各ボクセルを仮分割し、
該仮分割したボクセルについて、仮分割前後のボクセル値を比較し、
該仮分割前後のボクセル値の差分が閾値よりも大きければ、その仮分割を有効として、前記ボリュームデータのボクセルにその仮分割のボクセルを反映して更に分割を続け、
前記仮分割前後のボクセル値の差分が閾値よりも小さければ、その仮分割を無効として、前記ボクセルの分割を終了することを特徴とするフィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法。
【請求項2】
前記画像の低解像度化を、2方向の画素をそれぞれ2つずつまとめて画素数を1/4にする2×2のビニングにより行うことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法。
【請求項3】
前記枚数の間引きを1枚おきに行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法。
【請求項4】
1回のボクセルの仮分割を、3方向をそれぞれ2分割する2×2×2=8分割により行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法に係り、特に、CT再構成処理を格段に高速化することが可能な、フィルタ逆投影法によるCT再構成処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1970年代に医療用X線CT装置が実用に供され、この技術をベースに1980年代初期頃より工業用製品のためのX線CT装置が登場した。以来、工業用X線CT装置は、外観からでは確認困難な鋳物部品の鬆、溶接部品の溶接不良、および電子回路部品の回路パターンの欠陥などの観察・検査に用いられてきた。一方、近年3Dプリンタの普及に伴い、3Dプリンタによる加工品内部の観察・検査のみならず、内部構造の3D寸法計測とその高精度化の需要が増大しつつある。
【0003】
上述の技術の動向に対して、計測用X線CT装置がドイツを中心に普及し始めている(特許文献1、2参照)。この計測用X線CT装置では、測定対象を回転テーブル中心に配置して測定対象を回転させながらX線照射を行う。
【0004】
計測で使用する一般的なX線CT装置1の構成を図1に示す。X線を遮蔽するエンクロージャ10の中にコーンビーム状のX線13を照射するX線源12、X線13を検出するX線検出器14、測定対象物(例えばワーク)Wを置いてCT撮像の為にワークWを回転させる回転テーブル16、X線検出器14に映るワークWの位置や倍率を調整するためのXYZ移動機構部18があり、それらのデバイスを制御するコントローラ20、及び、ユーザ操作によりコントローラ20に指示を与える制御PC22などで構成される。
【0005】
制御PC22は、各デバイス制御の他に、X線検出器14に映るワークWの投影画像を表示する機能や、ワークWの複数の投影画像から断層画像を再構成する機能を有する。
【0006】
X線源12から照射されたX線13は、図2に示す如く、回転テーブル16上のワークWを透過してX線検出器14に届く。ワークWを回転させながらあらゆる方向のワークWの透過画像(投影画像)をX線検出器14で得て、フィルタ逆投影法や逐次近似法などの再構成アルゴリズムを使って再構成することにより、ワークWの断層画像を生成する。
【0007】
前記XYZ移動機構部18のXYZ軸と回転テーブル16のθ軸を制御することにより、ワークWの位置を移動することができ、ワークWの撮影範囲(位置、倍率)や撮影角度を調整することができる。
【0008】
X線CT装置1の最終目的であるワークWの断層画像またはボリュームデータ(ワークWの立体像または断層画像のZ軸方向の集合)を得るには、ワークWのCTスキャンを行う。
【0009】
CTスキャンはワークWの投影画像取得とCT再構成の2つの処理で構成され、投影画像取得処理では、X線照射中にワークWを載せた回転テーブル16を一定速度で連続的あるいは一定ステップ幅で断続的に回転し、全周囲方向(一定間隔)のワークWの投影画像を取得する。得られた全周囲方向(一定間隔)の投影画像をフィルタ逆投影法や逐次近似法などのCT再構成アルゴリズムを使ってCT再構成することで、図3に例示する如く、ワーク(図3ではマスターボール)の断層画像またはボリュームデータが得られる。
【0010】
得られたボリュームデータを用いて、寸法測定や欠陥解析などの各種測定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-71345号公報
【文献】特開2004-12407号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】Kim et al., “Efficient Iterative CT Reconstruction on Octree Guided by Geometric Errors”, iCT2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
生成したボリュームデータを用いてワーク内部の各測定(寸法測定、欠陥解析等)を行うことができるが、その際、必要な測定精度に基づいてボリュームデータの解像度を決定し、その解像度が得られるようにCT再構成条件を決定する。一般的にボリュームデータを高解像度にするほどCT再構成に多くの時間を必要とするが、ワーク形状や材質が変化しない部分においても高解像度にするため、時間的効率がよくないという問題点を有していた。
【0014】
一方、本発明に類似する手法として、非特許文献1には、逐次CT再構成処理法において、ワーク形状の複雑さに応じて解像度の階層を変化させることが記載されている。
【0015】
しかしながら、逐次CT再構成処理との組合せでは十分な効果を発揮することができなかった。
【0016】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、CT再構成処理を格段に高速化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、X線CT装置を使って取得した測定対象物の透過像にフィルタ逆投影法を適用してCT再構成処理する際に、前記透過像にフィルタ逆投影処理のためのフィルタを適用してフィルタ投影像を生成し、該フィルタ投影像に対して、画像の低解像度化及び/又は枚数の間引きを行って、低解像度の投影像を生成し、該低解像度の投影像を用いてCT再構成を行って、低解像度のボリュームデータを生成し、該低解像度のボリュームデータの各ボクセルを仮分割し、該仮分割したボクセルについて、仮分割前後のボクセル値を比較し、該仮分割前後のボクセル値の差分が閾値よりも大きければ、その仮分割を有効として、前記ボリュームデータのボクセルにその仮分割のボクセルを反映して更に分割を続け、前記仮分割前後のボクセル値の差分が閾値よりも小さければ、その仮分割を無効として、前記ボクセルの分割を終了することにより、前記課題を解決するものである。
【0018】
ここで、前記画像の低解像度化を、2方向の画素をそれぞれ2つずつまとめて画素数を1/4にする2×2のビニングにより行うことができる。
【0019】
又、前記枚数の間引きを1枚おきに行うことができる。
【0020】
又、1回のボクセルの仮分割を、3方向をそれぞれ2分割する2×2×2=8分割により行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィルタ逆投影法によるCT再構成において、ワーク形状の複雑さに応じて解像度の階層を変化させることで、CT再構成処理の格段の高速化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】計測で使用する一般的なX線CT装置の全体構成を示す断面図
図2】同じく要部配置を示す斜視図
図3】同じくCT再構成の概要を示す図
図4】本発明の原理を説明するための図
図5】本発明の実施形態における処理手順を示す流れ図
図6】前記実施形態でフィルタ投影像を低解像度化している状態を示す図
図7】同じくボクセル分割の手順を示す流れ図
図8】同じく分割の様子を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0024】
本発明においては、図4に原理を示す如く、フィルタ逆投影法のCT再構成処理において、初めに投影像を低解像化してCT再構成を行う。そこで生成した低解像度のボリュームデータの各ボクセルを必要に応じて分割していく。
【0025】
図4は、1283の解像度のボリュームデータ(ボクセル)から開始して、20483の解像度まで局所的に分割している様子を示す。測定対象物のエッジ部分を多く分割し、それ以外の形状変化が少ない部分はほとんど分割しない。
【0026】
ここで示している分割とは、より高い解像度で局所的にCT再構成することを意味し、例えば1つのボクセルを、xyzの3方向でそれぞれ2分割して2×2×2=8つのボクセルに分割することができる。
【0027】
ボクセルの分割が必要かどうかを判断するために、分割前後のボクセル値の変化を確認する。分割前後のボクセル値の変化が大きい場合は、分割前の解像度では測定対象物の形状が正しく標本化できていないことを示しているため、分割が必要と判断する。一方、分割前後のボクセル値の変化が小さい場合は、これ以上の解像度は不要であり、分割は不要と判断する。
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0029】
本実施形態では、図5のまずステップ100で、フィルタ投影像を生成する。具体的には、図1に例示したようなX線CT装置1を使ってワークWの透過像(複数)を取得する。そして、各透過像を対数変換して、フィルタ逆投影処理のためのフィルタを適用する。
【0030】
次いでステップ200で、フィルタを適用した投影像(フィルタ投影像)の低解像度化を行う。即ち、フィルタ投影像に対して、図6に例示する如く、画像の低解像度化及び枚数の間引きを行う。画像の低解像度化は、例えばxy2方向の画素を2つずつまとめて画素数を1/4にする2×2のビニングを繰り返すことによって行う。枚数の間引きは、例えば奇数枚目を残す方法を繰り返すことによって行う。各解像度の投影像は、以降のボクセル分割で使用するために残しておく。この際、メモリ節約のため、一次ファイルに書き出すことができる。
【0031】
次いでステップ300に進み、ボクセルを分割すると共に局所的なCT再構成を行う。即ち、ステップ200で生成した最も低い解像度の投影像を用いてCT再構成を行い、低解像度のボリュームデータを生成する。その後、そのボリュームデータの各ボクセルを必要に応じて、例えばxyz3方向をそれぞれ2分割して2×2×2=8分割するが、便宜上、分割の回数を識別するためにオクタントレベル(OLV)を設ける。この際、一度も分割がされていない状態のボリュームデータのボクセルをOLV0とし、以降、i回目の分割を行った状態のボクセルをOLViとする。ボクセルの分割は、1つ上の解像度の投影像によるCT再構成でボクセルを生成することにより行う。
【0032】
ボクセル分割の手順を図7に示す。
【0033】
ボクセル分割に際しては、まずステップ310で、初期ボリュームデータを生成する。即ち、図5のステップ200で生成した最も低い低解像度の投影像を用いてフィルタ逆投影法によるCT再構成処理を行い、ボリュームデータを生成する。このボリュームデータの全てのボクセルにはOLV0を仮設定する。
【0034】
次いでステップ320に進み、分割のループが、例えば最高解像度Nまで全て終了したか否かを判定する。ループ数i<Nで判定結果が否である場合には、ステップ330に進み、あるOLVにおいて、OLV未決定(仮設定)のボクセルを仮分割する。即ち、例えばOLV1の場合、このステップにおけるボリュームデータは1回も分割されていない状態であり、全てのボクセルがOLV未決定の状態であるため、全てのボクセルについて仮分割を行う。この仮分割は、1つの解像度の投影像によるCT再構成処理でボクセルを生成することにより行う。
【0035】
次いでステップ340に進み、ステップ330で仮分割したOLV未決定ボクセルについて、分割前後のボクセル値の変化を確認する。即ち、仮分割した8つの各ボクセルと分割前のボクセルとのボクセル値の差分を計算し、その最大値が閾値よりも大きければその仮分割を有効とする。逆に小さければその仮分割を無効とし、そのときのボクセルのOLVを決定(固定)する。
【0036】
仮分割が有効な場合、ボリュームデータのボクセルにその仮分割のボクセルを反映して仮分割を続ける。
【0037】
ステップ320で、分割されたボクセルの解像度が最高解像度i=Nに到達して分割のループが終了したと判断したときには、ステップ350で分割を終了する。
【0038】
なお、仮分割時に局所的なCT再構成を行っており、仮分割が有効であればその結果を反映しているため、分割完了後のCT再構成は不要となる。
【0039】
このようにして、フィルタ逆投影法によるCT再構成処理において、測定対象物の形状の複雑さに応じて解像度の階層を変化させることで、CT再構成処理の格段の高速化を実現できる。
【0040】
なお、前記実施形態においては、画像の低解像度化を2×2のビニングにより行い、枚数の間引きを1枚おきに行い、ボクセルの仮分割を2×2×2=8分割により行うようにしていたが、低解像度化、間引き、仮分割数等はこれに限定されない。
【0041】
分割のループ数も、最高解像度に到達するNに限定されず、例えば最高解像度に到達する前に分割を終了することもできる。
【0042】
又、元の投影画像の解像度を超える分割も可能である。この場合は最高解像度で分割したときと同じ投影画像、画像枚数を使って分割を行う。ボリュームデータの解像度が投影画像の解像度より高い場合、例えば2048×2048の投影画像で4096×4096×4096のボリュームデータを生成する場合であっても、十分な投影画像枚数があれば、フィルタ逆投影法のアルゴリズムにより、精度の良いボリュームデータを得ることが可能である。
【0043】
又、前記実施形態においては、本発明がワークの測定に適用されていたが、測定対象物はワークに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1…X線CT装置
12…X線源
13…X線
14…X線検出器
16…回転テーブル
20…コントローラ
22…制御PC
W…ワーク(測定対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8