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特許7181566核反応検出装置及び方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】核反応検出装置及び方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20221124BHJP
   G06F 11/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01T1/24
G06F11/00 602Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021529203
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026274
(87)【国際公開番号】W WO2021002469
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019125192
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】岩下 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】舩津 玄太郎
(72)【発明者】
【氏名】古坂 道弘
(72)【発明者】
【氏名】加美山 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博隆
(72)【発明者】
【氏名】鬼柳 善明
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282516(JP,A)
【文献】VIOLANTE M et al.,A New Hardware/Software Platform and a New 1/E Neutron Source for Soft Error Studies: Testing FPGAs,IEEE Transactions on Nuclear Science,Vol. 54, No. 4,米国,IEEE,2007年08月,pp. 1184-1189
【文献】BENEVENUTI F et al.,Comparative Analysis of Inference Errors in a Neural Network Implemented in SRAM-Based FPGA Induced,31st Symposium on Integrated Circuits and Systems Design (SBCCI),米国,IEEE,2018年
【文献】KOCKELMANN W et al.,Time-of-Flight Neutron Imaging on IMAT@ISIS: A New User Facility for Materials Science,Journal of Imaging,スイス,Molecular Diversity Preservation International,2018年02月28日,Vol. 4 Issue 3-47,pp. 1-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/24
G06F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子放射線が入射される環境に配置され、自身に含まれる半導体素子にSEU(Single Event Upset)が発生すると正常時と異なる値を出力するように構成されたユーザー回路が形成されたFPGA(Field Programmable Gate Array)と、
前記FPGAのユーザー回路からの出力値に基づきユーザー回路に異常動作が発生したことを検出する異常動作検出部と
前記異常動作検出部で計測された異常動作の発生時刻に基づき飛行時間法を用いて粒子エネルギーを算出する粒子エネルギー算出部と、を備えた
ことを特徴とする核反応検出装置。
【請求項2】
前記ユーザー回路は、メモリ回路部と、メモリ回路部に含まれる各データをFPGAのクロック周期で監視し、何れかのデータの値に変化があったことを検出して検出結果を出力するメモリ監視回路部とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の核反応検出装置。
【請求項3】
前記メモリ監視回路部は、メモリ回路部の全てのデータを値が同一であり且つクロック周期で変化させるデータ更新回路部と、メモリ回路部の各データを比較するデータ比較回路部と、データ比較回路部による比較結果に基づき各データの値の同一でなくなったことを検出して検出結果を出力する検出回路部とを備えた
ことを特徴とする請求項2記載の核反応検出装置。
【請求項4】
異常動作検出部で検出された異常動作の発生数に基づきSEUクロスセクションを算出するSEUクロスセクション算出部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の核反応検出装置。
【請求項5】
前記FPGAは、SRAM型のFPGAである
ことを特徴とする請求項1乃至何れか1項記載の核反応検出装置。
【請求項6】
自身に含まれる半導体素子にSEU(Single Event Upset)が発生すると正常時と異なる値を出力するように構成されたユーザー回路が形成されたFPGA(Field Programmable Gate Array)を、粒子放射線が入射される環境に配置する工程と、
前記FPGAのユーザー回路からの出力値に基づきユーザー回路に異常動作が発生したことを検出する異常動作検出工程と
前記異常動作検出工程で計測された異常動作の発生時刻に基づき飛行時間法を用いて粒子エネルギーを算出する工程と、を備えた
ことを特徴とする核反応検出方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1乃至何れか1項記載の核反応検出装置の異常動作検出部として機能させる
ことを特徴とする核反応検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線のエネルギーを特定し、その粒子のエネルギーにおけるSEUクロスセクション測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
SEU(Single Event Upset)クロスセクションのエネルギー依存性を測定するために、従来は特定のエネルギーの粒子線を照射することによって、SEUクロスセクションを測定していた。例えば、CYRIC(Cyclotron and Radioisotope Center)やTSL(The Svedberg Lab.)は単色/準単色中性子源として知られ、特定のエネルギーのみ生成することで、そのエネルギーの粒子によるSEUクロスセクションを求めることができる(非特許文献1)。
【0003】
ここで、SEUとは、単一の粒子(中性子、陽子、重粒子等)がメモリ等のLSI(Large Scale Integration)に入射し核反応により生成された電荷によってLSIに保存されたデータ(ビット)が反転してしまう事象を意味する。なお、SEUはソフトエラーとも呼ばれる。
【0004】
また、SEUクロスセクションとは、粒子がSEUを発生させる割合を表す尺度を意味する。半導体にフルエンスΦ[n/cm](単位面積に入射する粒子の総数)の粒子を照射したときに発生したSEUの数をNとすると、SEUクロスセクションは下記式(1)で表される。
【0005】
【数1】
【0006】
一方、従来から粒子放射線のエネルギーを検出する方法として、飛行時間法がある。飛行時間法は、一定距離の飛行に要する時間を計測することで粒子の速度を算出し、粒子エネルギーに変換する方法である。本方式の使用例として、例えば粒子放射線の一種である中性子の飛行時間法について説明する。中性子のエネルギーEは中性子の速度vの二乗に比例し、下記式(2)で表される。なお、mは中性子の質量である。
【0007】
【数2】
【0008】
そのため、加速器や原子炉を用いてパルス中性子を生成し、一定距離に検出器を設置し、パルス中性子の生成時間と中性子が検出器で検出された時間の差(飛行時間)を測定することにより、その中性子のエネルギーを特定することが可能となる。このように飛行時間法は中性子のエネルギーを求める方法として広く用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Eishi H. Ibe, “Terrestrial Radiation Effects in ULSI Devices and Electronic Systems”, pp.84-105, John Wiley & Sons Singapore Pte. Ltd, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ソフトエラーを発生させた粒子のエネルギーを特定する方法として、従来技術である単色源を用いた場合、特に中性子の場合、断続的なエネルギーしか生成することができず、連続的なSEUクロスセクションを測定するのは困難であった。
【0011】
また、SEUを発生させる粒子はMeVオーダーの高速の粒子である。図6に20m飛行させた場合の中性子のエネルギーと飛行時間の関係を示す。このように、高エネルギー粒子の飛行時間はns~μsオーダーである。一方、SEUを検出する方法として誤り検出符号(CRC(Cyclic Redundancy Check),Parity,ECC(Error Correction Code)等)を用いてデータのビット誤りを検出する方法がある。しかしながら、例えばSRAM(Static Random Access Memory)の場合、動作可能な周波数は速くても1GHzで、1クロックサイクルで読み出せるビット数も多くて64bitである。そのため、1Mbitを読み出すのに約15μs要してしまう。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)のコンフィグレーションRAMも誤り検出符号を用いて検出することができるが、全領域をチェックするのに数m~数10msec要してしまう。このように、誤り検出符号を用いて高エネルギー粒子の飛行時間を検出することは困難であった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、検出速度が高速な核反応検出装置及び方法並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明に係る核反応検出装置は、粒子放射線が入射される環境に配置され、自身に含まれる半導体素子にSEU(Single Event Upset)が発生すると正常時と異なる値を出力するように構成されたユーザー回路が形成されたFPGA(Field Programmable Gate Array)と、前記FPGAのユーザー回路からの出力値に基づきユーザー回路に異常動作が発生したことを検出する異常動作検出部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、SEUの発生により出力が異常動作するようFPGAのユーザー回路を構成したので、FPGA100の動作クロックのオーダーでSEUの発生を検出することができる。すなわち、SEUの発生を高速に検出することができ、これによりSEU発生時刻の計測精度が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る核反応検出装置の構成図
図2】FPGAの内部構造を説明する図
図3】FPGAのCLBの内部構造及びSEFの発生を説明する図
図4】FPGAのSMの内部構造及びSEFの発生を説明する図
図5】FPGAにおけるメモリー監視回路の動作を説明する図
図6】中性子のエネルギーと飛行時間の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態に係る核反応検出装置について図1図5を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る核反応検出装置の構成図、図2はFPGAの内部構造を説明する図、図3はFPGAのCLBの内部構造及びSEFの発生を説明する図、図4はFPGAのSMの内部構造及びSEFの発生を説明する図、図5はFPGAにおけるメモリー監視回路の動作を説明する図である。
【0017】
本実施形態では、SEUによって発生するエラーをナノ秒オーダーで検出することで、SEUを発生させた粒子のエネルギーを飛行時間法を用いて特定し、照射した粒子フルエンスから、そのエネルギーのSEUクロスセクションを測定する。具体的には、図1に示すように、SRAM型のFPGA100のユーザー回路101を用いてSEUを検出する。本実施形態のFPGAは、粒子放射線が入射される環境に配置され、自身に含まれる半導体素子にSEUが発生すると正常時と異なる値を出力するように構成されたユーザー回路が形成される。
【0018】
まず、FPGAの一般的な内部構造及びSEUの検出原理について説明する。FPGAは、図2に示すように、論理を構成するCLB(Configuration Logic Block)、入出力機能を実現するIOB(Input Output Block)、要素間の接続を実現する接続要素であるSM(Switch Matrix)、PSB(Programmable Switch BOX)を備える。
【0019】
CLBは、図3に示すように、LUT(Look Up Table)とFF(Flip Flop)とを備え、LUTのSRAMで作られたCRAM(コンフィグレーションRAM)のデータを元に出力値をコントロールし、様々な基本回路を構成することができる。このLUT内のCRAMにSEUが発生すると、ユーザーが意図した設計とは異なる回路となり、誤動作を起こす。
【0020】
SM(Switch Matrix)は、図4に示すように、パス・トランジスタにより配線経路を自由に設定する。パス・トランジスタはSRAMで作られたCRAMによってON/OFFが制御される。このCRAMにSEUが発生すると、ユーザーが意図した設計とは異なる配線となる。
【0021】
この様に、論理部であるCLB、接続部であるSMのCRAMにてSEUが発生すると直ちに誤った回路になり、ユーザーが設計した回路動作とは異なる動きをすることがある。この異常動作をここではSEF(Soft error failure)と呼ぶ。このSEFを検出することで、高速にSEUを検出することができる。
【0022】
SEFを検出できるユーザー回路101の一例について図1を参照して説明する。ユーザー回路101は、周知のように、FPGA100に対してユーザー回路構築用のコンフィグレーションデータを外部から書き込む事により構成される。
【0023】
図1の例では、ユーザー回路101は、メモリ回路部110と、メモリ回路部110に含まれる各データをFPGA100の動作クロック周期で監視し、何れかのデータの値に変化があったことを検出して検出結果を出力するメモリ監視回路部120とを備える。このような構成により、FPGA100の動作クロックオーダでSEFを検出することができる。なお、FPGA100の動作クロックの周波数は、FPGA100に入力される外部クロックと必ずしも一致しない点に留意されたい。
【0024】
より具体的な例としては、メモリ監視回路部120は、メモリ回路部110の全てのデータを値が同一であり且つクロック周期で変化させるデータ更新回路部121と、メモリ回路部110の各データを比較するデータ比較回路部122と、データ比較回路部122による比較結果に基づき各データの値の同一でなくなったことを検出して検出結果を出力する検出回路部123とを備える。
【0025】
さらに具体的な例としては、メモリ回路部110は、可能な限り多くのレジスタにより構成される。また、データ更新回路部121では、メモリ回路部110の各レジスタを動作可能(タイミングが収束可能)な最大周波数で0→1→0→1を繰り返す回路を構築する。データ比較回路部122は、メモリ回路部110の複数のレジスタを比較監視する。データ比較回路部122の一例としてはXOR回路が挙げられる。
【0026】
ここで、SEUが発生すると、正しくレジスタが機能しないため、値が変化しなくなる。検出回路部123は、データ比較回路部122の出力値が変化しない動作を検出することで、高速にSEUを検出することができる。検出回路部123は、SEUを検出するとエラー検出信号を出力する。図5に検出回路部123の動作の例を示す。なお、図5では、説明を簡単にするため、メモリ回路部110に含まれる2つのレジスタA及びBのみについて図示した。図5に示すように、本ユーザー回路101では、ナノ秒オーダーの分解能でSEUの発生を検知することができる。すなわち、SEUが2クロックの時間範囲内で発生したことを検出することができる。
【0027】
本実施の形態に係る核反応検出装置は、図1に示すように、FPGA100と電気的に接続され、粒子放射線から防護された環境に配置された核反応検出装置本体200を備えている。核反応検出装置本体200は、SEF検出部210と、粒子エネルギー算出部220と、SEUクロスセクション算出部230と、計時部290とを備えている。核反応検出装置本体200は情報処理装置により構成される。核反応検出装置本体200の各部の実装形態は不問であり、専用ハードウェアにより構成してもよいし、汎用装置にプログラムをインストールして構成してもよいし、これらを任意に組み合わせてもよい。
【0028】
SEF検出部210(異常動作検出部)は、FPGA100のユーザー回路101からの出力値に基づきユーザー回路101に異常動作が発生したこと、すなわちSEFの発生を検出する。SEF検出部210は、検出回路部123からのエラー検出信号に基づきSEFの発生を検出すると、計時部290が計時する現在時刻を取得することによりSEFの発生時を認識する。SEF検出部210は、SEFが発生したこと及びその時刻を、図示しない所定の記憶手段に記憶したり、図示しない外部の装置に出力したりする。
【0029】
粒子エネルギー算出部220は、SEF検出部210で計測された異常動作の発生時刻に基づき飛行時間法を用いて粒子エネルギーを算出する。具体的には、粒子エネルギー算出部220は、SEF検出部210に取得された検出回路部123からのエラー検出信号が送出された時刻すなわちSEFの発生時刻と、粒子が発生した時刻の差を算出することによって、SEUを発生させ、SEFを引き起こした粒子のエネルギーを算出することができる。粒子が発生した時刻の取得は、粒子エネルギー算出部220が、外部の装置からの粒子発生タイミング信号の入力を検出し、検出した時の現在時刻を計時部290から取得すればよい。粒子エネルギー算出部220は、算出した粒子エネルギーを、図示しない所定の記憶部に記憶したり、図示しない外部の装置に出力したりする。なお、粒子が発生した時刻は、外部の装置から取得する、又は、予め所定の記憶部に記憶しておき当該記憶部から取得してもよい。
【0030】
SEUクロスセクション算出部230は、CRAMのSEUクロスセクションを算出する。具体的には、SEUクロスセクション算出部230は、SEF検出部210で検出された異常動作の発生数に基づきSEUクロスセクションを算出する。ところで、CRAMに発生したSEUのすべてがSEFを引き起こすわけではない。つまり、回路動作に影響のないCRAMにSEUが発生してもSEFを検出することはできない。SEFはユーザー設計によって変動するため、SEFのSEUクロスセクションを求める必要はなく、CRAMのSEUクロスセクションを求める必要がある。
【0031】
CRAMのSEUクロスセクションの絶対値を得るには補正が必要である。補正をするためには、CRAMのCRCチェック機能を用いて使用していないCRAMも含めたSEU数:Nを算出し、SEFカウント分布をSEF確率分布p(t)にし、図6に示すエネルギーと到着時間の関係よりSEFエネルギー確率分布p(E)を算出する。そして、Nにp(E)を乗じることでエネルギー毎のSEU発生数の分布であるNSEU(E)絶対値を算出することができる。最後に、中性子測定器で計測したエネルギー毎のフルエンスΦ(E)から、エネルギー毎のSEUクロスセクションを算出する。
【0032】
このように本実施の形態に係る核反応検出装置によれば、SEUの発生により出力が異常動作するようにFPGA100のユーザー回路101を構成したので、FPGA100の動作クロックのオーダーでSEUの発生を検出することができる。すなわち、SEUの発生を高速に検出することができ、これによりSEU発生時刻の計測精度が高いものとなる。これにより、SEUなどのイベントを発生させた粒子のエネルギーを高い精度で測定することができる。また、連続的な粒子エネルギー毎のSEUクロスセクションなどのイベントの発生率を高い精度で測定することができる。
【0033】
なお、核反応検出装置本体200における粒子エネルギー算出部210及びSEUクロスセクション算出部220は任意の構成要素であり、何れか一方のみを備えるようにしてもよい。
【0034】
また、核反応検出装置本体200は、さらに、取得したSEUクロスセクションなどのイベントの発生率を用いることにより、パルス粒子源(パルス中性子源)のエネルギースペクトルを測定するエネルギー測定部を備えていてもよい。
【0035】
また、核反応検出装置本体200は、さらに、位置情報におけるエネルギーを検出するエネルギー検出手段を備えていてもよい。ここで位置情報は、FPGA100においてSEUが発生した物理的位置(空間的位置)を意味する。当該位置情報は、SEUの発生を検出した後に、ユーザー回路構築用コンフィグレーションデータとユーザー回路101とを比較したり、メモリ回路部110の各アドレスのデータを走査して当該データの適否を判定したりすることにより取得可能である。
【実施例
【0036】
中性子によるSEUクロスセクションを測定する実施例を示す。
【0037】
中性子照射場において、中性子測定器により半導体照射中に中性子フラックスおよび中性子フルエンスを測定する。加速器により加速された陽子パルスを中性子発生ターゲットに照射し、中性子を生成する。この陽子パルスが中性子発生ターゲットに当たった瞬間が中性子が生成された時間であり、飛行時間法のt=0に相当する。このt=0を示すタイミング信号とSEFを検出したタイミング信号の差を取ることで飛行時間を測定し、中性子エネルギーに換算することができる。
【0038】
デバイスはFPGAを用い、ユーザー回路でレジスタを構成し、ある動作クロックで動作させる。中性子を照射し、飛行時間とSEFカウントを観測する。CRAM全領域トータルSEUクロスセクション測定では、CRAMエラー総数を観測する。以上より、SEUクロスセクションを算出する。
【0039】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0040】
例えば、SRAM型のFPGAだけでなく、EEPROM型のFPGAであっても本発明を適用できる。また、粒子放射線は中性子線に限定するものではなく、FPGAに入射した際にSEUが生じるのであれば他の粒子放射線であっても本発明を適用できる。
【0041】
また、メモリ回路部110及びメモリ監視回路部120によりユーザー回路101を構築したが、SEUの発生により異常動作が生じて出力値が変化するような回路であれば他の回路であってもよい。
上記説明した核反応検出装置本体200は、汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。例えば、コンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)と、メモリと、ストレージ(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置と、入力装置と、出力装置とを備える。メモリおよびストレージは、記憶装置である。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、核反応検出装置本体200の各機能が実現される。また、核反応検出装置本体200は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、核反応検出装置本体200は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。核反応検出装置本体200用のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0042】
100:FPGA
101:ユーザー回路
110:メモリ回路部
120:メモリ監視回路部
121:データ更新回路部
122:データ比較回路部
123:検出回路部
200:核反応検出装置本体
210:SEF検出部
220:粒子エネルギー算出部
230:SEUクロスセクション算出部
290:計時部
図1
図2
図3
図4
図5
図6