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特許7185231無線通信システム、無線端末、集中制御局及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-29
(45)【発行日】2022-12-07
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線端末、集中制御局及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/30 20090101AFI20221130BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20221130BHJP
   H04W 36/36 20090101ALI20221130BHJP
   H04W 36/38 20090101ALI20221130BHJP
【FI】
H04W36/30
H04W36/08
H04W36/36
H04W36/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019033385
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020141175
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若尾 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】アベセカラ ヒランタ
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】金子 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】ティハーリー ディン
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/044458(WO,A1)
【文献】特開2010-288252(JP,A)
【文献】特開2014-171128(JP,A)
【文献】特表2016-521524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末、及び前記無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局を備えた無線通信システムであって、
前記無線基地局は、
当該無線基地局に帰属する前記無線端末との間の無線通信品質、及び他の前記無線基地局における帰属する前記無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報を、当該無線基地局に帰属する前記無線端末に通知する情報通知部
を有し、
前記無線端末は、
前記情報通知部から通知された品質測定情報に基づいて、無線通信品質を向上可能な前記無線基地局のいずれかを新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する帰属先算出部と、
前記無線基地局が帰属先の更新を許可した場合に、前記帰属先算出部が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する帰属先記録部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
複数の前記無線基地局を制御する集中制御局をさらに有し、
前記無線基地局それぞれは、
少なくとも当該無線基地局に帰属する前記無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報を前記集中制御局に通知し、
前記集中制御局は、
前記無線基地局それぞれから通知された品質測定情報に基づいて、前記無線基地局それぞれにおける帰属する前記無線端末との間の無線通信品質を向上可能な前記無線基地局を新たな帰属先として選択する帰属情報それぞれを算出する全帰属先算出部
を有し、
前記無線端末それぞれは、
帰属している前記無線基地局を介して、前記全帰属先算出部が算出した帰属情報を受信した場合、前記全帰属先算出部が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように前記帰属先記録部が帰属情報を記録すること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記集中制御局は、
有線通信経路を介して品質測定情報を受信すること
を特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
複数の前記無線基地局は、
有線通信経路及び無線通信経路を介して互いに接続され、前記有線通信経路、前記無線通信経路及び前記無線端末の少なくともいずれかを介して品質測定情報を受信すること
を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線端末及び前記無線基地局は、
互いに無線通信を行うための1つ以上の無線物理インターフェース及び1つ以上の無線仮想インターフェースを有し、
前記無線仮想インターフェースには無線通信品質を示す1つ以上の情報を品質測定情報として用いること
を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線端末及び前記無線基地局は、
互いに複数の無線通信方式によって無線通信を行う複数の無線通信アプリケーションを備え、品質測定情報が前記無線通信アプリケーションそれぞれにおける無線通信品質に基づいていること
を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
品質測定情報が無線通信における受信電力、要求データレート及び前記無線基地局の帯域の使用率を含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
帰属している無線基地局との間の無線通信品質、及び他の無線基地局に帰属する他の無線端末の無線通信品質に基づく品質測定情報に基づいて、無線通信品質を向上可能な他の無線基地局を新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する帰属先算出部と、
帰属している無線基地局が帰属先の更新を許可した場合に、前記帰属先算出部が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する帰属先記録部と
を有することを特徴とする無線端末。
【請求項9】
複数の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局を制御する集中制御局であって、
複数の無線基地局それぞれの帰属する無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報に基づいて、複数の無線基地局それぞれに帰属する無線端末との間の無線通信品質を向上可能な無線基地局を新たな帰属先として選択する帰属情報それぞれを算出する全帰属先算出部と、
前記全帰属先算出部が算出した帰属情報それぞれを複数の無線基地局に通知する帰属先通知部と
を有することを特徴とする集中制御局。
【請求項10】
複数の無線端末と複数の無線基地局とが行う無線通信方法であって、
前記無線基地局が、当該無線基地局に帰属する前記無線端末との間の無線通信品質、及び他の前記無線基地局における帰属する前記無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報を、当該無線基地局に帰属する前記無線端末に通知する工程と、
前記無線端末が、通知された品質測定情報に基づいて、無線通信品質を向上可能な前記無線基地局のいずれかを新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する工程と、
前記無線基地局が帰属先の更新を許可した場合に、算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する工程と
を含むことを特徴とする無線通信方法。
















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線端末、集中制御局及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多様な無線通信システムが広く普及している。例えば、免許帯の無線通信システムであるセルラシステムは、現在第4世代の無線通信規格が商用化されており、径が大小のセルを組み合わせながら、移動無線端末を収容している。また、免許不要帯で普及している無線通信システムとしては、まず無線LANシステムが挙げられ、国内では2.4/5/60GHz帯の無線周波数を利用して数~数十mの径に存在する無線端末に対して広帯域な無線通信が提供されている。また、別の免許不要帯の無線通信システムとして挙げられるLPWA(Low Power Wide Area)は、数~数kmの広大な径に存在する無線端末に対して低消費電力で無線通信を提供できることから、モノのインターネットサービスを収容することに適している。
【0003】
このように、多様な無線通信システムの中から、無線サービスの要求に応じて適した無線通信システムを選択できる無線通信環境が普及している。また、無線通信システム群のうち、大容量を目的としたものは、エリア容量増大のために無線基地局の高密度化が進んでいる。例えば、無線端末の周りに十分無線通信を実施できるほどの強い受信電力で検出される無線基地局が1台以上存在するような無線環境が増えている。
【0004】
結果として、無線端末が選択できる無線アクセスの自由度は、無線通信システムの種類及び無線基地局台数の両面で、大きくなっている。この自由度を活かして、複数の無線アクセスに同時接続してロードバランシングやフレーム冗長送信を行う無線通信プロトコルが開発されている(例えば非特許文献1参照)。例えば、セルラ回線と無線LAN回線を同時に用いることにより、無線通信環境を安定化させることができる。
【0005】
一方で、従来技術においては、無線端末は、同種無線通信システム内の複数無線基地局を用いた無線通信を行うことができず、複数の無線アプリケーションを立ち上げていても、それらの無線トラヒックは全て1台の無線基地局との間の無線通信路で収容する必要がある。この時、各無線アプリケーションの要求品質を満足できない確率が高まるという課題がある。
【0006】
例えば、従来技術では、無線端末は、受信電力が最大となる電波を放出する無線基地局に帰属する。当該技術では、無線基地局の近傍に無線端末が多数存在する時に、無線端末が全て共通の無線基地局に接続するため、無線端末群の要求データレートの総和が無線基地局の通信路容量を上回ってオーバーロードすることとなり、要求品質を満足できない確率が高まる。
【0007】
上記のオーバーロードを緩和するために、各無線基地局の帰属無線端末台数の偏りが最小となるように各無線端末を帰属させるという制御法に切り替えることも検討される。しかし、この制御法では、無線端末は受信電力の弱い無線基地局へも帰属するため、無線端末への無線通信路容量が小さくなった結果、無線端末の要求データレートが無線通信路容量を上回りオーバーロードとなる確率が高まる。このように、同種無線通信システムにおいて無線端末の無線通信を1本の無線通信路で収容する場合、無線端末の要求品質を満足できない確率が高くなるという課題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Atefeh Hajijamali Arani, 外4名, "Distributed Learning for Energy-Efficient Resource Management in Self-Organizing Heterogeneous Networks", IEEE TRANSACTIONS ON VEHICULAR TECHNOLOGY, OCTOBER 2017, VOL. 66, NO. 10, p.9287-9303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、無線基地局に対する無線端末の配置に偏りが生じても、通信品質の低下を抑えることができる無線通信システム、無線端末、集中制御局及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様にかかる無線通信システムは、複数の無線端末、及び前記無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局を備えた無線通信システムであって、前記無線基地局は、当該無線基地局に帰属する前記無線端末との間の無線通信品質、及び他の前記無線基地局における帰属する前記無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報を、当該無線基地局に帰属する前記無線端末に通知する情報通知部を有し、前記無線端末は、前記情報通知部から通知された品質測定情報に基づいて、無線通信品質を向上可能な前記無線基地局のいずれかを新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する帰属先算出部と、前記無線基地局が帰属先の更新を許可した場合に、前記帰属先算出部が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する帰属先記録部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、複数の前記無線基地局を制御する集中制御局をさらに有し、前記無線基地局それぞれは、少なくとも当該無線基地局に帰属する前記無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報を前記集中制御局に通知し、前記集中制御局は、前記無線基地局それぞれから通知された品質測定情報に基づいて、前記無線基地局それぞれにおける帰属する前記無線端末との間の無線通信品質を向上可能な前記無線基地局を新たな帰属先として選択する帰属情報それぞれを算出する全帰属先算出部を有し、前記無線端末それぞれは、帰属している前記無線基地局を介して、前記全帰属先算出部が算出した帰属情報を受信した場合、前記全帰属先算出部が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように前記帰属先記録部が帰属情報を記録することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記集中制御局が、有線通信経路を介して品質測定情報を受信することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、複数の前記無線基地局が、有線通信経路及び無線通信経路を介して互いに接続され、前記有線通信経路、前記無線通信経路及び前記無線端末の少なくともいずれかを介して品質測定情報を受信することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記無線端末及び前記無線基地局が、互いに無線通信を行うための1つ以上の無線物理インターフェース及び1つ以上の無線仮想インターフェースを有し、前記無線仮想インターフェースには無線通信品質を示す1つ以上の情報を品質測定情報として用いることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記無線端末及び前記無線基地局が、互いに複数の無線通信方式によって無線通信を行う複数の無線通信アプリケーションを備え、品質測定情報が前記無線通信アプリケーションそれぞれにおける無線通信品質に基づいていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、品質測定情報が無線通信における受信電力、要求データレート及び前記無線基地局の帯域の使用率を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様にかかる無線端末は、帰属している無線基地局との間の無線通信品質、及び他の無線基地局に帰属する他の無線端末の無線通信品質に基づく品質測定情報に基づいて、無線通信品質を向上可能な他の無線基地局を新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する帰属先算出部と、帰属している無線基地局が帰属先の更新を許可した場合に、前記帰属先算出部が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する帰属先記録部とを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様にかかる集中制御局は、複数の無線端末と無線通信を行う複数の無線基地局を制御する集中制御局であって、複数の無線基地局それぞれの帰属する無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報に基づいて、複数の無線基地局それぞれに帰属する無線端末との間の無線通信品質を向上可能な無線基地局を新たな帰属先として選択する帰属情報それぞれを算出する全帰属先算出部と、前記全帰属先算出部が算出した帰属情報それぞれを複数の無線基地局に通知する帰属先通知部とを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様にかかる無線通信方法は、複数の無線端末と複数の無線基地局とが行う無線通信方法であって、前記無線基地局が、当該無線基地局に帰属する前記無線端末との間の無線通信品質、及び他の前記無線基地局における帰属する前記無線端末との間の無線通信品質に基づく品質測定情報を、当該無線基地局に帰属する前記無線端末に通知する工程と、前記無線端末が、通知された品質測定情報に基づいて、無線通信品質を向上可能な前記無線基地局のいずれかを新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する工程と、前記無線基地局が帰属先の更新を許可した場合に、算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無線基地局に対する無線端末の配置に偏りが生じても、通信品質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】無線基地局が品質測定情報を交換する情報交換経路を示す図である。
図3】一実施形態にかかる無線基地局の構成例を示す図である。
図4】一実施形態にかかる無線端末の構成例を示す図である。
図5】無線通信システムにおける無線端末の帰属先の制御例を示すシーケンス図である。
図6】他の実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。
図7】無線基地局と集中制御局との情報交換経路の一例を示す図である。
図8】一実施形態にかかる集中制御局の構成例を示す図である。
図9】無線通信システムにおいて、取得される情報の具体例を示す図である。
図10】共存動作を行う無線通信システムの第1動作例を示すシーケンス図である。
図11】共存動作を行う無線通信システムの第2動作例を示すシーケンス図である。
図12】無線端末の学習結果を他の無線端末へ配信する場合の動作例を示すシーケンス図である。
図13】共存動作を行う無線通信システムに発生する異常の場所を模式的に示す図である。
図14】異常が発生した場合の無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図15】異常が発生した場合の無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
図16】異常が発生した場合に、第1モードに切替える無線通信システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。図1は、一実施形態にかかる無線通信システム10の構成例を示す。図1に示すように、無線通信システム10は、複数の無線基地局20がネットワーク100に対してそれぞれスイッチ102を介して接続されている。ここで、無線基地局20それぞれは、ネットワーク100を介した有線通信経路によって互いに接続されている。また、無線基地局20は、無線通信によって他の無線基地局20との間で通信を行うことも可能にされている。
【0023】
無線基地局20の周囲には、無線基地局20との間で無線通信を行う複数の無線端末30が位置している。無線端末30は、例えばRSSI(Received Signal Strength Indicator)の強度などの物理的な信号によって無線基地局20に対する帰属を決定する1つ以上の無線物理インターフェース、及び、受信信号を演算処理した結果に応じて無線基地局20に対する帰属を決定する1つ以上の無線仮想インターフェースのいずれかによって無線基地局20に接続される。
【0024】
ここで、無線端末30は、無線基地局20から通知される品質測定情報に基づいて、帰属する無線基地局20を選択する自律分散制御を行う。品質測定情報は、無線基地局20が帰属する無線端末30との間の無線通信品質を測定した情報と、他の無線基地局20における無線端末30との間の無線通信品質を測定した情報とを含むものとする(図3等を用いて後述)。なお、無線端末30は、周辺の1つ以上の無線基地局20に対して帰属可能であり、遠方の無線基地局20に対しては帰属外となる。
【0025】
図2は、無線通信システム10における無線基地局20が品質測定情報などの情報を互いに交換する情報交換経路を示す。図2において太矢印で示した情報交換経路は、有線区間(有線通信経路)と無線区間(無線通信経路)の2種類に分類される。有線区間では、スイッチ102及びネットワーク100を介して情報が交換される。無線区間には、無線基地局20が他の無線基地局20との間で無線通信を直接行う区間と、無線基地局20が無線端末30を介して他の無線基地局20と無線通信を行う区間とがある。つまり、無線端末30は、無線基地局20と他の無線基地局20との間の通信を中継することも可能にされている。
【0026】
例えば、無線端末30が無線基地局20の相互の通信を中継しない場合には、無線基地局20は、自局が測定した品質測定情報を周囲の他の無線基地局20へ送信することにより、それぞれの品質測定情報を交換する。
【0027】
また、無線端末30が無線基地局20の相互の通信を中継する場合には、無線基地局20は、自局が測定した品質測定情報を周囲の無線端末30へ通知する。そして、無線端末30は、通知された品質測定情報を周囲の他の無線基地局20へ通知する。無線端末30は、複数の無線通信アプリケーションを実行し、情報を中継する場合に無線通信規格(無線通信方式)を他の無線通信規格に変換し、他の無線通信規格で無線基地局に通知するように構成されてもよい。また、無線端末30及び無線基地局20は、互いに複数の無線通信規格によって無線通信を行う複数の無線通信アプリケーションを備え、品質測定情報が無線通信アプリケーションそれぞれにおける無線通信品質に基づくようにされてもよい。
【0028】
図3は、一実施形態にかかる無線基地局20の構成例を示す。図3に示すように、無線基地局20は、アンテナ部21、無線通信部22、通信I/F部23、品質測定部24、情報通知部25、要求情報評価部26、要求応答通知部27及び帰属情報記録部28を有する。
【0029】
無線基地局20は、アンテナ部21を介して所定の規格の電波を送受信し、無線通信部22が行う処理により、無線端末30及び他の無線基地局20との間で無線通信を行う。無線通信部22は、高周波(RF:Radio Frequency)の信号を処理するRF部220と、無線通信メディアアクセス制御(MAC)の機能を備えたMAC機能部222とを有する。通信I/F部23は、ネットワーク100(図1)などによって構成される有線区間を介して通信を行うインターフェースである。
【0030】
品質測定部24は、無線環境測定部240及びトラヒック測定部242を有し、当該無線基地局20(自局)に帰属する無線端末30との間の無線通信品質を測定し、自局の無線通信品質に基づく品質測定情報を品質測定情報算出処理によって算出して取得する。無線環境測定部240は、無線通信の環境の測定を行い無線環境情報を取得する。トラヒック測定部242は、無線通信のトラヒックの測定を行いトラヒック情報を取得する。品質測定情報は、例えば無線環境情報及びトラヒック情報に基づいて算出される。また、品質測定情報は、無線通信における受信電力、要求データレート及び無線基地局の帯域の使用率を含んでもよい。
【0031】
無線基地局20は、他の無線基地局20(他局)において帰属する無線端末30との間の無線通信品質を示す品質測定情報に関しては、通信I/F部23を介して有線区間の情報を取得し、無線通信部22を介して無線区間の情報を取得する。そして、品質測定部24は、自局及び他局から取得した品質測定情報を集約させる。
【0032】
情報通知部25は、品質測定部24が集約させた品質測定情報を無線通信部22を介して無線端末30へ通知する。
【0033】
要求情報評価部26は、無線通信部22を介して無線端末30から後述する帰属要求を受けると、無線端末30の帰属の可否(帰属先の変更・更新の可否)を判断する。
【0034】
要求応答通知部27は、要求情報評価部26が無線端末30の帰属先の更新を許可した場合、その旨を要求応答として無線端末30へ無線通信部22を介して通知する。
【0035】
帰属情報記録部28は、要求情報評価部26が無線端末30の帰属先の更新を許可した場合、無線端末30の帰属先を管理する管理情報を更新して記録する。
【0036】
図4は、無線端末30の構成例を示す。図4に示すように、無線端末30は、アンテナ部31、無線通信部32、制御情報算出部33、帰属先要求部34及び帰属先記録部35を有する。
【0037】
無線端末30は、アンテナ部31を介して所定の規格の電波を送受信し、無線通信部32が行う処理により、無線基地局20との間で無線通信を行う。無線通信部32は、高周波の信号を処理するRF部320と、無線通信メディアアクセス制御(MAC)の機能を備えたMAC機能部322とを有する。そして、無線端末30は、無線通信部32を介して無線基地局20が送信する品質測定情報を取得する。
【0038】
制御情報算出部33は、帰属先算出部330を有する。帰属先算出部330は、無線通信部32を介して取得された品質測定情報に基づいて帰属先算出処理を行い、無線通信品質を向上可能な無線基地局20のいずれかを新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する。例えば、帰属先算出部330は、無線通信品質を高めるために最適な無線基地局20を新たな帰属先として選択する帰属情報を算出する。
【0039】
帰属先要求部34は、帰属している無線基地局20、又は帰属先算出部330が算出した帰属情報により選択される無線基地局20などに対し、帰属先を変更する許可を求める帰属要求を無線通信部32を介して通知する。
【0040】
帰属先記録部35は、無線端末30が帰属先の更新を許可する要求応答を無線基地局20から受信した場合、帰属先算出部330が算出した帰属情報に基づいて帰属先を更新するように帰属情報を記録する。つまり、帰属先記録部35は、帰属先を管理する管理情報を帰属情報によって更新する。
【0041】
図5は、無線通信システム10における無線端末30の帰属先の制御例を示すシーケンス図である。ここでは、2つの無線基地局20-1,20-2と、2つの無線端末30-1,30-2があるとする。また、帰属先制御を行う前には、無線端末30-1は、無線基地局20-1に帰属し、無線端末30-2は、無線基地局20-2に帰属しているものとする。
【0042】
この時、無線基地局20-1は、無線端末30-1とデータ通信を行い、要求トラヒックを測定している(S100)。無線基地局20-2は、無線端末30-2とデータ通信を行い、要求トラヒックを測定している(S102)。
【0043】
同時に、無線基地局20-1は、無線端末30-1,30-2からの上り信号(Ack信号など)から受信電力などの無線通信品質を測定し、無線通信品質を示す情報を取得する(S104,S108)。また、無線基地局20-2は、無線端末30-1,30-2からの上り信号から受信電力などの無線通信品質を測定し、無線通信品質を示す情報を取得する(S106,S110)。
【0044】
次に、ある無線基地局(図5において無線基地局20-1)が周辺の無線基地局(図5において無線基地局20-2)に対して2つの信号を送信する(S112)。1つ目の信号は、取得した無線通信品質を示す情報を互いに交換するための情報交換要求信号である。2つ目の信号は、無線基地局20-1,20-2それぞれが管理する時刻を互いに同期させるための同期信号である。
【0045】
2つの信号を受信した無線基地局20-2は、取得した無線通信品質を示す情報を応答として無線基地局20-1へ送信する(S114)。無線基地局20-1は、取得した無線通信品質を示す情報を応答として無線基地局20-2へ送信する(S116)。つまり、無線基地局20-1及び無線基地局20-2は、それぞれが取得した情報を相互に送信して情報交換を行う。
【0046】
情報交換が完了すると、無線基地局20-1,20-2は、同期信号に同期して同時に品質測定情報算出処理を行い(S118,S120)、算出した品質測定情報をそれぞれに帰属している無線端末30-1,30-2に対して配信する(S122,S124)。
【0047】
品質測定情報を受信した無線端末30-1,30-2は、それぞれ帰属先算出処理を行い(S126,S128)、それぞれ帰属先算出処理完了通知を帰属先に行う(S130,S132)。帰属先算出処理完了通知は、帰属先、帰属情報により選択される無線基地局20-1,20-2、又は周囲の全ての無線基地局に対して、帰属先を変更する許可を求める帰属要求を含んでいてもよい。
【0048】
無線基地局20-1,20-2は、それぞれ帰属する全ての無線端末の帰属先算出処理完了を確認すると(S134,S136)、再度互いに帰属先算出処理完了確認のための情報交換を行って帰属先の変更・更新の可否を判断する(S138,S140)。
【0049】
無線基地局20-1,20-2は、帰属先の更新を許可した場合、それぞれ帰属している無線端末30-1,30-2などに帰属先変更トリガー信号を同時に配信する(S142,S144)。
【0050】
そして、無線端末30-1,30-2は、帰属先変更トリガー信号に格納されたタイミング情報にしたがって同時に帰属先変更処理を実施する(S146,S148)。
【0051】
無線通信システム10は、以上の処理を繰り返して、無線端末30の帰属先の制御を行う。
【0052】
次に、無線通信システムの他の実施形態について説明する。図6は、他の実施形態にかかる無線通信システム10aの構成例を示す。図6に示すように、無線通信システム10aは、複数の無線基地局20aがネットワーク100に対してそれぞれスイッチ102を介して接続されている。ここで、無線基地局20aそれぞれは、ネットワーク100を介した有線通信経路によって互いに接続されている。また、無線基地局20aは、無線通信によって他の無線基地局20aとの間で通信を行うことも可能にされている。
【0053】
無線基地局20aの周囲には、無線基地局20aとの間で無線通信を行う複数の無線端末30aが位置している。無線端末30aは、例えばRSSIの強度などの物理的な信号によって無線基地局20に対する帰属を決定する1つ以上の無線物理インターフェース、及び、受信信号を演算処理した結果に応じて無線基地局20aに対する帰属を決定する1つ以上の無線仮想インターフェースのいずれかによって無線基地局20aに接続される。
【0054】
また、無線通信システム10aは、無線基地局20aそれぞれと、無線端末30aそれぞれを全体的に管理・制御する集中制御局40aがネットワーク100に接続されている。つまり、無線通信システム10aは、図1に示した無線通信システム10に対し、集中制御局40aが接続された形態となっている。
【0055】
図7は、無線通信システム10aにおける無線基地局20aが集中制御局40aとの間で上述した品質測定情報などの情報を互いに交換する情報交換経路の一例を示す。図7において太矢印で示した情報交換経路は、有線区間(有線通信経路)である。有線区間では、スイッチ102及びネットワーク100を介して情報が交換される。そして、集中制御局40aは、無線基地局20aを介して各無線端末30aに制御内容を通知する。
【0056】
なお、無線通信システム10aは、図1に示した無線通信システム10が有する機能を全て兼ね備えていてもよい。この場合、無線通信システム10aを構成する各部は、無線通信システム10の対応する各部の機能を兼ね備えることとする。以下、無線通信システム10aは、図1に示した無線通信システム10が有する機能を全て兼ね備えている場合を例に説明する。
【0057】
図8は、一実施形態にかかる集中制御局40aの構成例を示す。図8に示すように、集中制御局40aは、通信I/F部400、測定情報記録部402、全帰属先算出部404及び帰属先通知部406を有する。なお、集中制御局40aにおいて、通信I/F部400を除く測定情報記録部402、全帰属先算出部404及び帰属先通知部406などをまとめて他の機能ブロック410と記すことがある。
【0058】
通信I/F部400は、ネットワーク100(図7)などによって構成される有線区間を介して通信を行うインターフェースである。通信I/F部400は、無線基地局20aそれぞれが有する品質測定部24(図3参照)が自局の無線通信品質に基づいて算出した品質測定情報を、無線基地局20aそれぞれから受信する。
【0059】
測定情報記録部402は、無線基地局20aそれぞれから通信I/F部400が受信した品質測定情報を記録する。
【0060】
全帰属先算出部404は、測定情報記録部402が記録した品質測定情報それぞれを用いて帰属先算出処理を行い、無線通信品質を向上可能な無線基地局20aのいずれかを新たな帰属先として選択する帰属情報を、全ての無線端末30aそれぞれに対して算出する。
【0061】
帰属先通知部406は、全帰属先算出部404が算出した帰属情報を、通信I/F部400及び無線基地局20aを介して全ての無線端末30aそれぞれに対して通知する。
【0062】
無線端末30aそれぞれは、帰属情報を受信すると、例えば帰属情報に指示される無線基地局20aなどに帰属要求を通知する。そして、無線通信システム10aは、図5に示した制御例のように、無線端末30aそれぞれの帰属先を制御する。
【0063】
図9は、無線通信システム10a(及び無線通信システム10)において、取得(収集)される情報の具体例を示す。図9に示すように、無線通信システム10aにおいて収集される情報は、個無線端末情報と無線基地局情報とに分けられる。個無線端末情報は、各無線仮想インターフェースの帰属先基地局などを含む。無線基地局情報は、情報収集先の無線基地局の識別子などを含む。
【0064】
次に、無線通信システム10aが図2に示した情報交換経路を用いた自律分散制御と、図7に示した情報交換経路を用いた集中制御とを共存させた場合の動作(以下、共存動作)の例について説明する。例えば、無線通信システム10aは、通常時は図7に示した情報交換経路によって品質測定情報を通知するが、当該情報交換経路に異常が生じたときには図2に示した情報交換経路によって品質測定情報を通知する。
【0065】
無線仮想インターフェースの帰属先制御の精度を向上させるためには、配下の無線端末30aからの全情報を集中制御局40aが制御する方が長けている。しかし、集中制御局40aやネットワーク100などの構成に異常が生じた場合には、集中制御局40aによる制御が機能しなくなる場合がある。そこで、無線通信システム10aは、集中制御局40aやネットワーク100などの構成に異常が生じた場合には、図2に示した情報交換経路によって品質測定情報を通知するように制御を切替える。
【0066】
図10は、共存動作を行う無線通信システム10aの第1動作例を示すシーケンス図である。図10に示した動作例では、無線端末30aの自律分散制御を機械学習アルゴリズムによって実装しているものとする。
【0067】
機械学習アルゴリズムは、例えば無線端末30aの時点tに観測された現在の状態(S(t))を入力として、各無線仮想インターフェースの最適な帰属先無線基地局(A(t))を出力する推定関数を、過去の入出力データと無線基地局20aから配信された品質測定情報を用いて統計的に求めることとする。
【0068】
したがって、無線通信システム10aは、集中制御を行っている間に、自律分散制御の機械学習アルゴリズムの入出力情報に必要な品質測定情報を収集し、異常が生じて自律分散制御への切替時には、各無線端末30aの学習を完了しておく。
【0069】
例えば、図10に示すように、無線通信システム10aは、集中制御を行うシーケンス処理(S200)を完了した後に、学習に関するシーケンス(S300)を実施する。
【0070】
具体的には、無線基地局20aが個無線端末情報(図9参照)を帰属している無線端末30aから取得(S202)して集約し、集中制御局40aへ通知する(S204)。集中制御局40aは、集中計算によって配下の各無線端末30aの各無線仮想インターフェースの帰属先を算出し(S206)、無線基地局20aを経由して帰属先指示を配下の無線端末30aへ指示する(S208,S210)。
【0071】
無線端末30aは、S(t)の観測を実施する(S302)。そして、無線端末30aが集中制御局40aからの指示に応じて無線仮想インターフェースの帰属先制御を実施し、無線基地局20aが帰属先をA(t)として管理する(S304)。無線端末30aはS(t)の観測を常時実施しており、同時にA(t)に対する制御時のS(t)も管理しておく。
【0072】
その後、無線端末30aは、自身の個無線端末情報を収集し(S306)、S(t)時の個無線端末情報を無線基地局20aへ通知する(S308)。無線基地局20aは、他の無線基地局からの個無線端末情報も収集して集約し(S310)、帰属の無線端末30aへ配信する(S312)。
【0073】
無線端末30aは、配信された他の無線基地局とその帰属の無線端末の情報を入力として、学習アルゴリズム中のt時の学習内容を更新する(S314)。
【0074】
無線通信システム10aは、以上の処理を繰り返して、無線端末30aの帰属先の制御を行う。
【0075】
図11は、共存動作を行う無線通信システム10aの第2動作例を示すシーケンス図である。図11に示した第2動作例において、図10に示した動作と実質的に同一の動作には同一の符号が付してある。
【0076】
例えば、図11に示すように、無線通信システム10aは、集中制御を行うシーケンス処理(S200)を完了した後に、学習に関するシーケンス(S500)を実施する。
【0077】
無線基地局20aは、S(t)時の個無線端末情報・無線基地局情報を集中制御局40aへ通知する(S502)。集中制御局40aは、全無線端末の(S(t),A(t))の学習内容を更新し(S504)、無線基地局20aを介して帰属無線端末の更新学習内容を無線端末30aに通知する(S506,S508)。
【0078】
図12は、無線端末30aの学習結果を他の無線端末30aへ配信する場合の動作例を示すシーケンス図である。ここでは、2つの無線基地局20a-1,20a-2と、3つの無線端末30a-1a,30a-1b,30a-2aがあるとする。また、無線端末30a-1a,30a-1bは、無線基地局20a-1に帰属し、無線端末30a-2aは、無線基地局20a-2に帰属しているものとする。
【0079】
まず、無線端末30a-1aは、無線基地局20a-1に対して学習内容を通知する(S600)。無線基地局20a-1は、通知された学習内容を無線端末30a-1bに配信する(S602)。また、無線基地局20a-1は、帰属している無線端末の学習内容を無線基地局20a-2へも配信する(S604)。無線基地局20a-2は、帰属している無線端末30a-2aに対し、他の無線基地局20a-1の帰属無線端末の学習内容を配信する(S606)。そして、無線通信システム10aは、以上の処理を繰り返して、帰属先の制御を行う。
【0080】
また、共存動作を行う無線通信システム10aは、異常が発生する場所に応じて、集中制御から自律分散制御に切替えるシーケンスが異なる。以下、無線通信システム10aにおける自律分散制御を行う動作を第1モードの動作とする。
【0081】
図13は、共存動作を行う無線通信システム10aに発生する異常の場所を模式的に示す。例えば、無線通信システム10aは、図13に示したA,B,Cそれぞれの場所で異常が発生することが考えられる。Aの場所で異常が発生した場合、集中制御局40aの通信I/F部400は機能する。Bの場所で異常が発生した場合、無線通信システム10aは、集中制御局40aが機能しない。Cの場所で異常が発生した場合、無線通信システム10aは、異常が発生した有線区間を介して無線基地局20aに対する通信を行うことができない。
【0082】
図14は、Aの場所で異常が発生した場合の無線通信システム10aの動作例を示すシーケンス図である。集中制御局40aは、通信I/F部400が他の機能ブロック410の異常を検知(S700)すると、全ての無線基地局20aに対して第1モードへの切替を指示する(S702)。無線基地局20aは、集中制御局40aからの指示に応じて、全ての帰属する無線端末30aに対して第1モードへの切替を指示する(S704)。
【0083】
図15は、B又はCの場所で異常が発生した場合の無線通信システム10aの動作例を示すシーケンス図である。無線基地局20aは、帰属無線端末情報を集中制御局40aに通知(S800)した後、集中制御局40aから一定期間応答がなかった場合、異常が発生しているかを確認するために、異常検知プローブを集中制御局40aに対して送信する(S802)。
【0084】
無線基地局20aは、異常検知プローブに対して集中制御局40aから応答がない場合、当該無線基地局20a(自局)を第1モードへ切替え(S804)、全ての帰属する無線端末30aに対して第1モードへの切替を指示する(S806)。
【0085】
図16は、Cの場所で異常が発生した場合に、全ての無線基地局20a及び全ての無線端末30aを第1モードに切替える無線通信システム10aの動作例を示すシーケンス図である。
【0086】
例えば、無線基地局20a-1は、帰属無線端末情報を集中制御局40aに通知(S900)した後、集中制御局40aから一定期間応答がなかった場合、異常が発生しているかを確認するために、異常検知プローブを集中制御局40aに対して送信する(S902)。
【0087】
無線基地局20a-1は、異常検知プローブに対して集中制御局40aから応答がない場合、異常が発生していると判断し、当該無線基地局20a-1(自局)を第1モードへ切替え(S904)、他の無線基地局(ここでは無線基地局20a-2)に対して第1モードへの切替を指示する(S906)。
【0088】
第1モードへの切替の指示を受信した無線基地局20a-2は、集中制御局40aに対して第1モードへの変更要求を送信する(S908)。集中制御局40aは、第1モードへの変更要求を受信できれば応答を送信し(S910)、第1モードへの変更を行う(S902)。集中制御局40aが第1モードへの変更要求を受信できない場合、他の無線基地局20aも異常検知プローブを集中制御局40aへ送信するシーケンスを開始する。
【0089】
そして、無線基地局20a-1は、全ての帰属する無線端末30aに対して第1モードへの切替を指示する(S914)。最後に、無線基地局20a-1及び帰属する無線端末30aが第1モードへの切替を実施する。
【0090】
図16に示した例では、Cの場所で異常が発生した場合、ネットワーク100等を介して集中制御局40aと通信をすることができる無線基地局20a-2及び他の無線端末30aも第1モードへ切替える。
【0091】
このように、実施形態にかかる無線通信システムは、品質測定情報に基づいて算出された帰属情報によって帰属先を更新するので、無線基地局に対する無線端末の配置に偏りが生じても、通信品質の低下を抑えることができる。
【0092】
また、実施形態にかかる無線通信システムは、運用と並行して各無線端末間で強化学習の学習結果を共有し、その学習結果により、障害発生箇所に応じて、集中制御局による中央集中制御と、無線端末による分散制御とに切り換えることができる。換言すれば、両方の制御方式で、障害発生箇所に応じたそれぞれの切り換え動作に対応して学習結果を用いた最適化が可能である強化学習の方法には何らかの特徴があると考えられる。
【符号の説明】
【0093】
10,10a・・・無線通信システム、20,20a・・・無線基地局、22・・・無線通信部、23・・・通信I/F部、24・・・品質測定部、25・・・情報通知部、26・・・要求情報評価部、27・・・要求応答通知部、28・・・帰属情報記録部、30,30a・・・無線端末、32・・・無線通信部、33・・・制御情報算出部、34・・・帰属先要求部、35・・・帰属先記録部、40a・・・集中制御局、100・・・ネットワーク、330・・・帰属先算出部、400・・・通信I/F部、402・・・測定情報記録部、404・・・全帰属先算出部、406・・・帰属先通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16