IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧 ▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ 東京電力株式会社の特許一覧 ▶ 東電設計株式会社の特許一覧 ▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧 ▶ 双葉電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-構造物の点検システム 図1
  • 特許-構造物の点検システム 図2
  • 特許-構造物の点検システム 図3
  • 特許-構造物の点検システム 図4
  • 特許-構造物の点検システム 図5
  • 特許-構造物の点検システム 図6
  • 特許-構造物の点検システム 図7
  • 特許-構造物の点検システム 図8
  • 特許-構造物の点検システム 図9
  • 特許-構造物の点検システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】構造物の点検システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20221208BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20221208BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20221208BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20221208BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20221208BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01N33/38
G08B25/04 Z
G01N17/00
G08C17/00 Z
G08C15/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018158754
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020034307
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/Field Intelligence搭載型大面積分散IoTプラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆文
(72)【発明者】
【氏名】荒木 徹平
(72)【発明者】
【氏名】吉本 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】野田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴康
(72)【発明者】
【氏名】濱田 浩
(72)【発明者】
【氏名】塚田 智之
(72)【発明者】
【氏名】河村 直明
(72)【発明者】
【氏名】堤 知明
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井出 周治
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】金村 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼安 理寛
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022687(JP,A)
【文献】特開2010-211440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の状態を検知可能な検知部と、
前記構造物に設けられ、前記検知部による計測値に基づいて当該検知部から出力された検知信号が入力されると共に、当該検知信号が異常出力であるか否かを判定し、当該検知信号が異常出力である場合にはエラー信号として第1信号を出力し、当該検知信号が異常出力でない場合には当該検知信号に基づいて第1信号を出力可能な第1集積部と、
前記構造物に設けられ、前記第1信号を入力可能とされると共に当該第1信号に基づく第2信号を出力可能な第2集積部と、を備え、
一つの前記第2集積部には、複数の前記第1集積部が接続されていると共に、当該第2集積部は、前記構造物の長手方向又は当該構造物の短手方向に複数配置されて、互いに前記第2信号を入出力可能とされている、
構造物の点検システム。
【請求項2】
蓄積されたデータから求められたパラメータと前記計測値とに基づいて前記構造物の状態を推定可能な状態推定部が、前記第2集積部を含んで構成されている、
請求項1に記載の構造物の点検システム。
【請求項3】
前記第2集積部のそれぞれには、報知部が電気的に接続されており、
前記状態推定部は、前記構造物において異常が発生していると推定された箇所の前記検知部を特定可能とされていると共に、当該構造物に異常が発生していると推定された場合に、当該検知部からの前記検知信号に基づく前記第1信号が入力される前記第2集積部に電気的に接続された前記報知部を作動可能とされている、
請求項2に記載の構造物の点検システム。
【請求項4】
前記報知部は、前記状態推定部で前記構造物に異常が発生していると推定された場合に、前記第2集積部から電力を供給されて発光する発光部とされている、
請求項3に記載の構造物の点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、構造物運用支援システムに関する発明が記載されている。この構造物運用支援システムは、炭素配線とセンサ(検知部)とを備えたシート状システムを備えており、センサから出力された検知信号が通信ネットワークを介してサーバや監視用端末装置に送信されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-22687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の先行技術では、センサから出力された検知信号によるデータは、サーバに蓄積されるか監視用端末装置のモニタに表示されるのみであり、センサから出力された信号を現場で利用することができない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、検知部から出力された検知信号を現場で利用することができる構造物の点検システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る構造物の点検システムは、構造物の状態を検知可能な検知部と、前記構造物に設けられ、前記検知部による計測値に基づいて当該検知部から出力された検知信号が入力されると共に、当該検知信号に基づいて第1信号を出力可能な第1集積部と、前記構造物に設けられ、前記第1信号を入力可能とされると共に当該第1信号に基づく第2信号を出力可能な第2集積部と、を備え、一つの前記第2集積部には、複数の前記第1集積部が接続されていると共に、当該第2集積部は、前記構造物の長手方向又は当該構造物の短手方向に複数配置されて、互いに前記第2信号を入出力可能とされている。
【0007】
第1の態様に係る構造物の点検システムによれば、複数の検知部によって構造物の状態を測定可能とされており、当該検知部からは、当該検知部による計測値に基づいて、検知信号が出力される。また、検知信号は、構造物に設けられた第1集積部に入力されると共に、当該第1集積部からは第1信号が出力される。
【0008】
ここで、本態様では、構造物に第2集積部が設けられており、一つの第2集積部には、複数の第1集積部が接続されている。このため、第2集積部には、複数の第1集積部から第1信号が入力され、当該第2集積部に複数の検知部による計測値を集約することができる。
【0009】
また、第2集積部は、構造物の長手方向又は構造物の短手方向に複数配置されていると共に、互いに第2信号を入出力可能とされている。このため、複数の検知部による計測値を複数の第2集積部間で共有することができる。
【0010】
第2の態様に係る構造物の点検システムは、第1の態様に係る構造物の点検システムにおいて、蓄積されたデータから求められたパラメータと前記計測値とに基づいて前記構造物の状態を推定可能な状態推定部が、前記第2集積部を含んで構成されている。
【0011】
第2の態様に係る構造物の点検システムによれば、第2集積部を含んで状態推定部が構成されている。この状態推定部は、蓄積されたデータから求められたパラメータと計測値とに基づいて構造物の状態を推定可能とされている。このため、状態推定部では、構造物の広範囲において複数箇所の計測値を集約し、当該構造物の状態を推定することができる。
【0012】
第3の態様に係る構造物の点検システムは、第2の態様に係る構造物の点検システムにおいて、前記第2集積部のそれぞれには、報知部が電気的に接続されており、前記状態推定部は、前記構造物において異常が発生していると推定された箇所の前記検知部を特定可能とされていると共に、当該構造物に異常が発生していると推定された場合に、当該検知部からの前記検知信号に基づく前記第1信号が入力される前記第2集積部に電気的に接続された前記報知部を作動可能とされている。
【0013】
第3の態様に係る構造物の点検システムによれば、複数の第2集積部のそれぞれに報知部が電気的に接続されている。一方、状態推定部は、構造物に異常が発生していると推定したときに、当該構造物において異常が発生していると推定された箇所の検知部を特定する。そして、構造物において異常が発生していると推定された箇所の検知部からの検知信号に基づく第1信号が入力される第2集積部に電気的に接続された報知部が、状態推定部によって作動される。このため、構造物に異常が発生した場合に、当該構造物において異常が発生している箇所を報知することができる。
【0014】
第4の態様に係る構造物の点検システムは、第3の態様に係る構造物の点検システムにおいて、前記報知部は、前記状態推定部で前記構造物に異常が発生していると推定された場合に、前記第2集積部から電力を供給されて発光する発光部とされている。
【0015】
第4の態様に係る構造物の点検システムによれば、状態推定部で構造物に異常が発生していると推定された場合に、当該構造物における異常が発生していると推定された箇所において、発光部が発光して当該構造物の異常が報知される。このため、観測者は、現場において、構造物における異常発生箇所を速やかに認識することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る構造物の点検システムは、検知部から出力された検知信号を現場で利用することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る構造物の点検システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る構造物の点検システムがトンネルに設置された状態を示しており、トンネルの内周面を平面状に展開したときの各センサ等の配置を模式的に示す展開図である。
図3】本実施形態に係る構造物の点検システムの概略構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係る構造物の点検システムにおいて、エッジ・ノードで行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る構造物の点検システムにおいて、ゲートウェイで行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る構造物の点検システムにおいて、サーバで行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る構造物の点検システムの一部を構成する配線シートの構成を模式的に示す部分断面図である。
図8】本実施形態に係る構造物の点検システムがトンネルに設置された状態を示す模式図である。
図9】本実施形態の変形例に係る構造物の点検システムが橋に設置された状態を示す模式図である。
図10】本実施形態の変形例に係る構造物の点検システムが橋に設置された状態を示しており、橋を下方側から見たときの各センサ等の配置を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図10を用いて、本発明に係る構造物の点検システム及びこれを用いた構造物の点検方法の実施形態の一例について説明する。
【0019】
図8に示されるように、本実施形態に係る構造物の点検システムとしての「点検システム10」は、構造物としての「トンネル12」の内周面12Aに沿って配置された複数のシートユニット14と、隣接するシートユニット14間にそれぞれ配置された複数の第2集積部として「ゲートウェイ16」とを備えている。
【0020】
図7にも示されるように、シートユニット14は、エッジ・ノード18、20、配線シート22及び絶縁シート24を含んで構成されている。なお、エッジ・ノード18、20は、シートユニット14において、負荷として機能している。
【0021】
配線シート22は、炭素を主な材料とする導体でかつ可撓性を有する材質、具体的には、グラフェン、グラファイト及び単層又は多層のカーボンナノチューブ等で構成されており、その形状としては、線状又は板状が挙げられる。この配線シート22は、エッジ・ノード18、20と電気的に接続されており、エッジ・ノード18、20の信号線や電力供給線として機能している。なお、配線シート22は、シートユニット14が配置される環境等に応じて、銅等の金属製とされていてもよい。また、配線シート22は、トンネル12内に配置された図示しない照明等に電力を供給する図示しない既設の電力供給線と電気的に接続されている。
【0022】
一方、絶縁シート24は、電気絶縁性及び可撓性を有する材質、具体的には、ポリ塩化ビニル樹脂等の絶縁性有機高分子体で構成されており、その形状としては、トンネル12の周方向に沿う平面視で矩形の板状とされている。そして、絶縁シート24の内側には、配線シート22が、当該配線シート22の外部との接続に必要な箇所を除いて、埋め込まれた状態となっている。
【0023】
なお、本実施形態では、一例として、シートユニット14がトンネル12の長手方向に10[m]程度の間隔をあけて配置されている。
【0024】
ここで、本実施形態では、図1及び図2に示されるように、シートユニット14に当該シートユニット14の長手方向に連なって複数のエッジ・ノード18及びエッジ・ノード20が設けられている点に第1の特徴がある。また、本実施形態では、トンネル12に複数のゲートウェイ16が配置されており、当該ゲートウェイ16同士が通信可能とされている点に第2の特徴がある。さらに、ゲートウェイ16に報知部としての「発光部74」が接続されている点に第3の特徴がある。以下、本実施形態の要部を構成するエッジ・ノード18、20、ゲートウェイ16及び発光部74の構成について詳細に説明することとする。
【0025】
図3に示されるように、エッジ・ノード18は、検知部としての「歪センサ26」と、第1集積部としての「制御部28」と、信号処理部30とを備えている。
【0026】
歪センサ26は、トンネル12の内周面12Aに貼り付けられた図示しない歪ゲージを含んで構成されていると共に、トンネル12における当該歪ゲージが貼り付けられた箇所に発生した歪の大きさに応じて「検知信号V1(電圧)」を制御部28に出力可能とされている。
【0027】
制御部28は、一例として、図示しない基板にCPU(Central Processing Unit)等が取り付けられて構成されていると共に、配線シート22を介して信号処理部30に電気的に接続されている。この制御部28は、図7に示されるように、電気絶縁性及び耐候性を有する樹脂で構成されたケース32を備えており、ケース32の内側には、上述したCPU等が収納されている。そして、制御部28は、絶縁シート24の表面に取り付けられている。
【0028】
また、制御部28は、歪センサ26の健全性を評価可能とされている。詳しくは、制御部28は、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えている。そして、ROMには歪センサ26の出力値の上限値及び下限値が記憶されており、制御部28では、歪センサ26から入力された検知信号V1がROMに記憶された上限値と下限値との間に収まっていない場合には、検知信号V1がエラーとしてRAMに記憶されるようになっている。なお、検知信号V1が上記ROMに記憶された上限値と下限値との間に収まっている場合には、検知信号V1は、歪センサ26の計測値としてRAMに記憶されるようになっている。
【0029】
信号処理部30は、一例として、入力された信号のノイズを除去可能な構成とされており、図示しない基板に同じく図示しないコンデンサや抵抗器等が取り付けられて構成されたローパスフィルタを備えている。なお、信号処理部30は、制御部28と同様に信号処理部30を構成する電子機器を覆う図示しないケースを備えていると共に、絶縁シート24の表面に取り付けられている。
【0030】
そして、上記のように構成されたエッジ・ノード18では、制御部28のRAMに記憶された検知信号V1がエラーである場合に、検知信号V1がエラー信号としてゲートウェイ16に送信され、検知信号V1がエラーでない場合には、当該検知信号が信号処理部30に入力されてノイズが除去された状態で、ゲートウェイ16に補正信号(補正データ)として出力されるようになっている。なお、以下では、エッジ・ノード18からゲートウェイ16に出力される信号を、エラー信号であるか補正信号であるかに関わらず、「第1信号34」と称することとする。
【0031】
一方、エッジ・ノード20は、検知部としての「歪センサ36」、「塩分センサ38」及び「電位センサ40」と、第1集積部としての「制御部42」と、信号処理部44とを備えている。これらのうち、制御部42は制御部28と、歪センサ36は歪センサ26と、信号処理部44は信号処理部30と、それぞれ基本的に同様の構成とされている。なお、歪センサ36は、「検知信号V2(電圧)」を制御部42に出力可能とされている。また、歪センサ26、36は、シートユニット14の長手方向(トンネル12の周方向)に沿って所定の間隔をあけて配置されている。
【0032】
塩分センサ38は、トンネル12の内周面12Aの水分の塩分濃度を測定して、当該塩分濃度に応じて「検知信号V3(電圧)」を制御部42に出力可能とされている。なお、塩分センサ38には、図示しない水分センサが接続されており、塩分センサ38は、当該水分センサがトンネル12の内周面12Aの水分を検出したときに出力される検知信号によって起動されるようになっている。
【0033】
電位センサ40は、トンネル12を構成するコンクリートに設けられた図示しない照合電極とトンネル12の鉄筋46(図2参照)との電位差を測定可能とされていると共に、当該電位差に応じて「検知信号V4(電圧)」を制御部42に出力可能とされている。
【0034】
なお、制御部42も制御部28と同様に、歪センサ36、塩分センサ38及び電位センサ40の健全性を評価可能とされている。詳しくは、制御部42のROMには、制御部42に検知信号を出力する各センサの出力値の上限値及び下限値が記憶されている。そして、制御部42では、歪センサ36、塩分センサ38及び電位センサ40から入力された検知信号が、ROMに記憶されたそれぞれに対応する上限値と下限値との間に収まっていない場合には、当該検知信号がエラーとしてRAMに記憶されるようになっている。なお、これらの検知信号が制御部42のROMに記憶された上限値と下限値との間に収まっている場合には、当該検知信号は、各センサの計測値としてRAMに記憶されるようになっている。
【0035】
そして、上記のように構成されたエッジ・ノード20では、制御部42のRAMに記憶された検知信号がエラーである場合に、当該検知信号がエラー信号としてゲートウェイ16に送信され、当該検知信号がエラーでない場合には、当該検知信号が信号処理部44に入力されてノイズが除去された状態で、ゲートウェイ16に補正信号(補正データ)として入力されるようになっている。なお、以下では、エッジ・ノード20からゲートウェイ16に入力される信号を、エラー信号であるか補正信号であるかに関わらず、「第1信号48」と称することとする。
【0036】
次に、ゲートウェイ16の構成について説明する。ゲートウェイ16は、制御部50、通信部52、記憶部54及びこれらが収納されると共に電気絶縁性及び耐候性を有する樹脂で構成されたケース56(図8参照)を備えている。
【0037】
制御部50は、一例として、図示しない基板にCPU等が取り付けられて構成されていると共に、配線シート22及びケーブル58(図8参照)を介してエッジ・ノード18の制御部28及びエッジ・ノード20の制御部42に電気的に接続されている。そして、制御部50には、第1信号34、48が入力可能とされている。なお、ケーブル58は、ゲートウェイ50への電力供給線としても用いられている。
【0038】
通信部52は、図示しない配線部等を介して制御部50と電気的に接続されており、通信部52と制御部50との間で信号の入出力等が可能とされている。また、通信部52は、一例として、図示しないアンテナ等を備えており、無線LAN等のネットワークを介して外部サーバ60との通信が可能とされている。
【0039】
記憶部54は、図示しないRAM及びROMを備えていると共に、図示しない配線部等を介して制御部50及び通信部52と電気的に接続されている。そして、記憶部54のRAMには、制御部28、42からの第1信号34、48が入力されることで、各センサのエラーを含む計測値及びエラーを出力したセンサの識別信号が一時的に記憶されるようになっている。なお、記憶部54に記憶された各センサの計測値は、制御部50から制御信号が入力されると、通信部52を介して外部サーバ60に送信されて、当該外部サーバ60に記憶されるようになっている。
【0040】
また、ゲートウェイ16の制御部50には、振動センサ62が電気的に接続されている。この振動センサ62は、一例として、加速度計等を含んで構成されており、トンネル12に発生する振動に応じて「検知信号V5(電圧)」を制御部50に出力することが可能とされている。そして、振動センサ62の計測値は、制御部50を介して記憶部54に出力されて、記憶部54のRAMに一時的に記憶されるようになっている。
【0041】
上記のように構成されたゲートウェイ16は、一つのシートユニット14に対して一つ配置されていると共に、トンネル12の長手方向に所定の間隔をあけて配置されている。また、ゲートウェイ16の制御部50からは、エッジ・ノード18、20に各センサによる計測を指示する指示信号が出力されるようになっており、エッジ・ノード18、20は、当該指示信号に基づき各センサによる計測を開始するようになっている。
【0042】
なお、ゲートウェイ16に接続された振動センサ62による測定は、ゲートウェイ16からエッジ・ノード18、20への指示信号が出力されるのと同様のタイミングで行われるようになっている。また、エッジ・ノード18、20の各センサ及び振動センサ62の測定は、間欠的に行われるようになっており、例えば、当該計測が一日に一回程度行われるように設定されていてもよいし、当該計測が数分毎に行われるように設定されていてもよい。
【0043】
そして、図1及び図2に示されるように、これらのゲートウェイ16のうち隣接するゲートウェイ16同士はケーブル58で電気的に接続されている。これにより、これらのゲートウェイ16は、互いに記憶部54のRAMに記憶されている各センサの計測値を「第2信号64」として入出力することで、当該計測値を共有することが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態では、トンネル12の簡易診断を行うことが可能となっている。具体的には、ゲートウェイ16の制御部50では、記憶部54に記憶された所定数の計測値の相対関係が解析されるようになっている。
【0045】
そして、同じセンサの計測値が増加傾向にある場合や、同様のタイミングで測定された同種のセンサの計測値の大小関係からトンネル12に損傷等の異常が発生していると制御部50で判定された場合には、ゲートウェイ16から外部サーバ60に警報信号が送信されるようになっている。
【0046】
さらに、ゲートウェイ16の制御部50では、同様のタイミングで測定された同種のセンサ、一例として、歪センサ26、36の計測値の大小関係からトンネル12において異常が発生していると推定される箇所を特定することが可能となっている。例えば、ゲートウェイ16の制御部50は、連なって配置された歪センサ26において、特定の歪センサ26に近付くに従って計測値が大きくなっている場合、当該歪センサ26が設けられている箇所で異常が発生していると判定するような構成としてもよい。これは、制御部50によって、トンネル12において異常が発生していると推定される箇所に配置された歪センサ26、36を特定可能とされていると捉えることもできる。
【0047】
一方、発光部74は、LED(Light Emitting Diode)76を含んで構成されていると共に、全てのゲートウェイ16に対して配置されており、ケーブル78でゲートウェイ16と電気的に接続されている。そして、発光部74は、ゲートウェイ16からケーブル78を介して電力を供給されることで発光(点灯)するようになっている。
【0048】
詳しくは、ゲートウェイ16の制御部50でトンネル12において異常が発生していると推定された場合、トンネル12において異常が発生していると推定された箇所に配置された歪センサ26、36に、制御部28、42を介して電気的に接続されたゲートウェイ16から電力が供給されるようになっている。その結果、ゲートウェイ16の制御部50でトンネル12において異常が発生していると推定された場合、トンネル12において異常が発生していると推定された箇所の近傍に配置された発光部74が発光するようになっている。
【0049】
一方、外部サーバ60では、ゲートウェイ16からの警報信号が入力されると、無線LAN等のネットワークを介して外部サーバ60に接続された監視コンピュータ66のモニタ68に警告が表示されるようになっている(図1参照)。また、ゲートウェイ16から送信された各センサの計測値にエラーが含まれていた場合には、モニタ68にエラーが出力されたセンサの種類と配置箇所が表示されるようになっている。
【0050】
また、外部サーバ60は、データベースを備えており、当該データベースには、エッジ・ノード18、20及びゲートウェイ16に設けられている各種センサの計測値に対応する予測モデルが格納されている。この予測モデルとしては、鉄筋コンクリート製の所定の構造物における各部分の歪、塩分濃度及び電位度等の実測値と当該構造物の経過年数との関係と、上記センサで測定された測定対象の鉄筋コンクリート構造物の各状態量とを照合し、当該鉄筋コンクリート構造物構造物の劣化状態を予測可能な状態予測モデルが挙げられる。さらに、このデータベースには、トンネル12の基本構造やトンネル12を構成する材料の組成等の基本情報も格納されており、上記状態予測モデルに用いられる所定のパラメータの一部が、当該基本情報に基づいて決定されるようになっている。
【0051】
そして、本実施形態では、外部サーバ60において、各センサの計測値と予測モデルとが比較されることで、トンネル12の状態が異常であるか正常であるかを推定可能とされている。換言すれば、本実施形態では、外部サーバ60において、トンネル12の劣化状態を判定可能とされている。なお、以下では、ゲートウェイ16、エッジ・ノード18、20及び外部サーバ60の複合体を「状態推定部70」と称することとする。
【0052】
具体的には、外部サーバ60では、各センサの計測値と予測モデルとが比較されて、当該計測値と予測モデルの値との乖離度に基づいてトンネル12に異常があるか否かが判定されるようになっている。そして、トンネル12に異常が確認された場合には、図1に示されるように、外部サーバ60から監視コンピュータ66に異常信号72が出力されて、モニタ68に警告が表示されるようになっている。一方、外部サーバ60で各センサの計測値と予測モデルとを比較した結果、トンネル12に異常が確認されない場合には、モニタ68には、異常無しと表示されるようになっている。
【0053】
(本実施形態の作用及び効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0054】
本実施形態では、図1に示されるように、歪センサ26、36、塩分センサ38、電位センサ40及び振動センサ62によってトンネル12の状態を測定可能とされており、これらのセンサからは、当該センサによる計測値に基づいて、検知信号が出力される。また、検知信号は、トンネル12に設けられた制御部28、42に入力されると共に、制御部28、42からは第1信号34、48が出力される。
【0055】
ここで、本実施形態では、トンネル12にゲートウェイ16が設けられており、一つのゲートウェイ16には、複数の制御部28、42が接続されている。このため、ゲートウェイ16には、複数の制御部28、42から第1信号34、48が入力され、ゲートウェイ16に複数のセンサによる計測値を集約することができる。
【0056】
また、ゲートウェイ16は、トンネル12の長手方向に複数配置されていると共に、互いに第2信号64を入出力可能とされている。このため、複数のセンサによる計測値を複数のゲートウェイ16で共有することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ゲートウェイ16を含んで状態推定部70が構成されている。この状態推定部は、蓄積されたデータから求められたパラメータと計測値とに基づいてトンネル12の状態を推定可能とされている。このため、状態推定部70では、トンネル12の広範囲において複数箇所の計測値を集約し、トンネル12の状態を推定することができる。
【0058】
また、本実施形態では、複数のゲートウェイ16のそれぞれに発光部74が電気的に接続されている。一方、状態推定部70は、トンネル12に異常が発生していると推定したときに、トンネル12において異常が発生していると推定された箇所のセンサを特定する。そして、トンネル12において異常が発生していると推定された箇所のセンサからの検知信号に基づく第1信号48が入力されるゲートウェイ16に電気的に接続された発光部74が、状態推定部70によって作動される。このため、トンネル12に異常が発生した場合に、トンネル12において異常が発生している箇所を報知することができる。
【0059】
加えて、本実施形態では、状態推定部70でトンネル12に異常が発生していると推定された場合に、トンネル12における異常が発生していると推定された箇所において、発光部74が発光してトンネル12の異常が報知される。このため、観測者は、現場において、トンネル12における異常発生箇所を速やかに認識することができる。
【0060】
次に、図4図6に示されるフローチャートを用いて、本実施形態に係る点検システム10による構造物(トンネル12)の点検方法の手順の一例を示す。なお、トンネル12の点検方法は、図4図6に示されるフローチャートに限らず他の手順により行われてもよい。
【0061】
最初に、図4を用いてエッジ・ノード18、20の制御フローを示すこととする。このフローが開始されると、まず、ステップS100では、ゲートウェイ16からの指示信号がエッジ・ノード18、20に出力される。
【0062】
次に、ステップS102では、ゲートウェイ16からの指示信号に基づき、歪センサ26、36、塩分センサ38、電位センサ40による計測が行われる。
【0063】
次に、ステップS104では、各センサの計測値から制御部28、42で各センサの健全性評価が行われ、制御部28、42において各センサの計測信号と各センサの上限値及び下限値とが比較される。
【0064】
次に、ステップS106では、制御部28、42で各センサの計測値にエラー(各センサの上限値と下限値との間に収まっていない値)が含まれているか否かが判定される。そして、各センサの計測値にエラーが含まれていると判定された場合には、ステップS108に進み、該当する計測値がエラー信号(異常値)としてゲートウェイ16に送信されると共に、その他の計測値は、信号処理部30、44に送信されて、ステップS110に進む。一方、各センサの計測値にエラーが含まれていないと判定された場合には、各センサの全ての計測値が信号処理部30、44に送信されて、ステップS110に進む。
【0065】
次に、ステップS110では、信号処理部30、44で各センサの計測値のノイズが除去される。
【0066】
次に、ステップS112では、ノイズが除去された各センサの計測値がエッジ・ノード18、20からゲートウェイ16に送信されて、上記制御フローが終了する。
【0067】
次に、図5を用いてゲートウェイ16の制御フローを示すこととする。このフローが開始されると、まず、ステップS200では、ゲートウェイ16からエッジ・ノード18、20に計測を指示する指示信号が出力される。
【0068】
次に、ステップS202では、エッジ・ノード18、20から入力された各センサの計測値にエラーがあるか否かが判定される。そして、各センサの計測値の中にエラーがあると判定された場合には、ステップS204に進み、ゲートウェイ16の記憶部54にエラーが出力されたセンサの識別信号が記憶されて、ステップS206に進む。一方、エッジ・ノード18、20から入力された各センサの計測値にエラーがないと判定された場合には、ステップS206に進む。
【0069】
次に、ステップS206では、エッジ・ノード18、20から送信された各センサによる計測値の相対関係が、ゲートウェイ16の制御部50で解析される。
【0070】
次に、ステップS208では、ステップS206での解析結果に基づき、トンネル12の簡易診断が行われる。この簡易診断では、同じセンサの計測値の増減の傾向や同様のタイミングで測定された同種のセンサの計測値の大小関係が比較される。
【0071】
次に、ステップS210では、ステップS208の結果からトンネル12に異常が発生しているか否かが判定される。そして、トンネル12に異常が発生していると判定された場合には、ステップS212に進み、ゲートウェイ16から外部サーバ60に警報信号が送信されると共に、トンネル12において異常が発生していると推定された箇所の近傍に配置された発光部74が点灯されて、ステップS214に進む。一方、トンネル12に異常が発生していないと判定された場合には、ステップS214に進む。
【0072】
次に、ステップS214では、ゲートウェイ16から各センサの計測値が外部サーバ60に送信されて、上記制御フローが終了する。
【0073】
次に、図6を用いて外部サーバ60の制御フローを示すこととする。このフローが開始されると、まず、ステップS300では、ゲートウェイ16から警報信号が入力されているか否かが判定される。そして、ゲートウェイ16から警報信号が入力されていると判定された場合には、ステップS302に進み、モニタ68に警告が表示されて、ステップS304に進む。一方、ゲートウェイ16から警報信号が入力されていないと判定された場合には、ステップS304に進む。
【0074】
次に、ステップS304では、ゲートウェイ16から送信された各センサの計測値が外部サーバ60に記憶される。
【0075】
次に、ステップS306では、ゲートウェイ16から送信された各センサの計測値にエラーが含まれているか否かが判定される。そして、ゲートウェイ16から送信された各センサの計測値にエラーが含まれていると判定された場合には、ステップS308に進み、モニタ68にエラーが出力されたセンサの種類と配置箇所が表示されて、ステップS310に進む。一方、ゲートウェイ16から送信された各センサの計測値にエラーが含まれていないと判定された場合には、ステップS310に進む。
【0076】
次に、ステップS310では、トンネル12の基本情報がデータベースから呼び出される。
【0077】
次に、ステップS312では、トンネル12の基本情報に基づき、データベースから各センサの計測値に対応する予測モデルが呼び出される。
【0078】
次に、ステップS314では、各センサの計測値と予測モデルとが比較される。
【0079】
次に、ステップS316では、ステップS312の結果からトンネル12に異常があるか否かが判定される。そして、トンネル12に異常があると判定された場合には、ステップS318に進み、外部サーバ60から監視コンピュータ66に異常信号72が出力されることでモニタ68に警告が表示されて、上記制御フローが終了する。一方、トンネル12に異常がないと判定された場合には、ステップS320に進み、モニタ68に異常無しが表示されて、上記制御フローが終了する。
【0080】
以上、説明したように、本実施形態に係る点検システム10によれば、センサから出力された検知信号を現場で利用することができる。
【0081】
<上記実施形態の変形例>
また、本実施形態では、図9及び図10に示されるように、構造物としての「橋80」に対して点検システム10を配置することも可能である。具体的には、本変形例では、橋80の複数の主桁82のそれぞれに対し、主桁82の長手方向(橋80の長手方向)に沿ってシートユニット14を配置されると共に、主桁82のそれぞれに一つずつゲートウェイ16が配置されている。そして、ゲートウェイ16には、それぞれ発光部74が設けられている。
【0082】
また、本変形例では、橋80の短手方向(主桁82の長手方向と直交する方向)に配置された複数のゲートウェイ16において、通信部52が共有されており、第2信号64が一つの通信部52を介して当該ゲートウェイ16間で入出力されるようになっている。
【0083】
このような構成によれば、状態推定部70によって、トンネル12の場合と同様に橋80の異常を検知することができる。
【0084】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、エッジ・ノード18、20からのデータをゲートウェイ16に集約する構成としていたが、これに限らない。例えば、ゲートウェイ16の制御部50のCPU等の機能等に応じて、各センサの検知信号が直接ゲートウェイ16に出力される構成としてもよい。
【0085】
(2) また、上述した実施形態では、ゲートウェイ16同士がケーブル58で接続されていたが、これに限らず、ゲートウェイ16同士で通信部52を用いた無線通信を行う構成としてもよい。また、エッジ・ノード18、20にアンテナ等を設けて、エッジ・ノード18、20とゲートウェイ16との間で無線通信を行う構成としてもよい。
【0086】
(3) さらに、上述した実施形態では、歪センサ、塩分センサ、電位センサ及び振動センサを備えていたが、これら以外のセンサを構造物に配置する構成としてもよい。また、各センサの方式も上述したものに限らず、種々の方式のセンサを採用可能である。
【0087】
(4) 加えて、上述した実施形態では、点検システム10によってトンネル12及び橋80の異常を検知していたが、鉄筋コンクリート製の構造物であれば、点検システム10によってこれら以外の種類の構造物の異常を検知することも可能である。
【0088】
(5) さらに加えて、上述した実施形態では、報知部として発光部74が用いられているたが、アラーム等を報知部として用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 点検システム(構造物の点検システム)
12 トンネル(構造物)
16 ゲートウェイ(第2集積部)
26 歪センサ(検知部)
28 制御部(第1集積部)
34 第1信号
36 歪センサ(検知部)
38 塩分センサ(検知部)
40 電位センサ(検知部)
42 制御部(第1集積部)
48 第1信号
64 第2信号
70 状態推定部
74 発光部(報知部)
80 橋(構造物)
V1 検知信号
V2 検知信号
V3 検知信号
V4 検知信号
V5 検知信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10