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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】合成皮革
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20221209BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20221209BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
D06N3/14 102
B32B27/12
B32B27/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017165597
(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2019044280
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 優子
(72)【発明者】
【氏名】千々和 宏之
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191000(JP,A)
【文献】特開2003-147057(JP,A)
【文献】特開2000-302835(JP,A)
【文献】特開平05-059674(JP,A)
【文献】特開平07-132573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00- 7/06
B32B 1/00-43/00
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布(i)と、接着層(ii)と、中間層(iii)と、表皮層(iv)とを有する合成皮革であって、
前記中間層(iii)が、ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、鎖伸長剤(C)との反応物であるポリウレタン樹脂を含む組成物から形成されたものであり、
前記ポリオール(A)が、一般式(1)で表されるヒドロキシ化合物(d1)に由来する単位を有するポリカーボネートポリオール(a1)を含むものであり、前記ヒドロキシ化合物(d1)が、ジエチレングリコール単独、又は、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとからなり、
前記ポリカーボネートポリオール(a1)の含有率が、前記ポリオール(A)中、40質量%以上であり、
前記ポリオール(A)が、さらに、前記ポリカーボネートポリオール(a1)以外のポリカーボネートポリオールからなるポリオール(a2)を含むものであり、
前記表皮層(iv)は、溶剤系ウレタン樹脂を含む組成物から形成されたものであることを特徴とする合成皮革。
【化1】

[一般式(1)中、nは、1以上7以下の整数を表す。]
【請求項2】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量が、500以上8,000以下である請求項1記載の合成皮革。
【請求項3】
前記化合物(d1)の含有率が、前記ポリカーボネートポリオール(a1)の原料であるヒドロキシ化合物(D)中、40質量%以上である請求項1又は2記載の合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂は、優れた機械的強度を有するため、フィルム、接着剤、自動車内装材、研磨材、家電部品、包装材料、印刷ロール等の様々な分野で広く利用されている。中でも、近年では、ポリウレタン樹脂が有する柔軟性のため優れた風合いが得られることから、合成皮革用途に多くの研究がなされている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-100289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記合成皮革(人工皮革も含む)の製造に用いられるポリウレタン樹脂は、近年、特に自動車内装材向けに高い耐久性が求められている。中でも、車輌内装材では、従来の耐久性(耐熱性、耐候性、耐加水分解性等)に加えて、耐薬品性が求められている。しかしながら、従来から知られている合成皮革では、耐薬品性が十分に満足できるものではない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、優れた耐薬品性を有する合成皮革を形成可能なウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、ウレタン樹脂のポリオール成分として、特定のヒドロキシ化合物を原料に用いたポリカーボネートポリオールを特定量用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、基布(i)と、接着層(ii)及び/又は中間層(iii)と、表皮層(iv)とをこの順で有する合成皮革に関するものであり、前記中間層(iii)及び/または表皮層(iv)は、ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、鎖伸長剤(C)との反応物であるポリウレタン樹脂を含む組成物から形成されたものであり、前記ポリオール(A)は、一般式(1)で表されるヒドロキシ化合物(d1)に由来する単位を有するポリカーボネートポリオール(a1)を含むものであることを特徴とする。
【0008】
【化1】
[一般式(1)中、nは、1以上7以下の整数を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成皮革は、耐薬品性に優れるため、例えば、自動車部品、家電部品、包装材、皮革様シート等の用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の合成皮革は、基布(i)と、接着層(ii)と、中間層(iii)及び/又は表皮層(iv)とをこの順で有するものであり、前記中間層(iii)及び/または表皮層(iv)は、ポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、鎖伸長剤(C)との反応物であるポリウレタン樹脂を含む組成物から形成されるものである。
【0011】
前記ポリオール(A)は、2個以上の水酸基を有する化合物であり、ヒドロキシ化合物(D)に由来する単位を有するポリカーボネートポリオール(a1)を含むものである。前記ポリカーボネートポリオール(a1)の含有率は、ポリオール(A)100質量%中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。
【0012】
前記ヒドロキシ化合物(D)は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物である。前記ヒドロキシ化合物(D)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール;トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオールなどが挙げられる。
【0013】
特に、前記ヒドロキシ化合物(D)は、一般式(1)で表されるヒドロキシ化合物(d1)を含む。前記ポリカーボネートポリオール(a1)が、一般式(1)で表される化合物(d1)に由来する単位(-O-(-(CH22O-)n-)を含むことで、耐薬品性が良好となる。
【0014】
【化2】
[一般式(1)中、nは、1以上7以下の整数を表す。]
【0015】
前記ヒドロキシ化合物(d1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量160~360、より好ましくは分子量190~330)等が挙げられる。中でも、いっそう優れた耐薬品性の観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
【0016】
前記ヒドロキシ化合物(d1)の含有率は、ヒドロキシ化合物(D)100質量%中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。ヒドロキシ化合物(d1)の含有率が上記範囲にあると、耐薬品性が良好である。
【0017】
中でも、ヒドロキシ化合物(d1)は、ジエチレングリコールを含むことが好ましく、この場合、ジエチレングリコールの含有率は、化合物(d1)100質量%中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。ジエチレングリコールの含有率が上記範囲にあると、耐薬品性がよりいっそう良好である。
【0018】
前記ヒドロキシ化合物(D)が、ヒドロキシ化合物(d1)以外の他のヒドロキシ化合物を含む場合、前記他のヒドロキシ化合物としては、耐薬品性維持の観点から、ブタンジオール、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0019】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)はヒドロキシ化合物(d1)を含むヒドロキシ化合物(D)とカーボネート化合物(E)とをエステル交換反応することにより得られるものを用いることができる。前記反応の際、ポリカーボネート化又はエステル交換触媒として、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどのチタンアルコラート、テトラフェニルチタネートなどのチタンフェノラート等のチタン化合物を共存させてもよい。前記ポリカーボネート化又はエステル触媒としては、金属触媒、酸触媒等を用いてもよい。
前記ポリカーボネート化又はエステル交換触媒の量は、前記ヒドロキシ化合物(D)及びカーボネート化合物(E)の合計100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
また、前記ポリカーボネートポリオール(a1)は、前記ヒドロキシ化合物(D)とホスゲンを反応させて得られたものなど、既知の製造方法を用いて得られたものを用いることができる。
【0020】
前記カーボネート化合物(E)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、脂肪族カーボネート、芳香環含有カーボネートが挙げられる。脂肪族カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等の飽和脂肪族カーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、1,3-ペンチレンカーボネート、1,4-ペンチレンカーボネート、1,5-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネートおよび2,4-ペンチレンカーボネート等の不飽和脂肪族カーボネートなどが挙げられる。芳香環含有カーボネートとしては、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート等が挙げられる。中でも、優れた耐薬品を有するウレタン樹脂成形物を得られることから、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の飽和脂肪族カーボネート;ジフェニルカーボネート等の芳香族カーボネートなどが好ましい。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは8,000以下、より好ましくは6,000以下である。
なお本明細書において、数平均分子量、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を表すものとする。
【0022】
前記ポリカーボネートポリオールの水酸基価は、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上であり、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは120mgKOH/g以下である。前記水酸基価は、ポリカーボネートポリオール1g中の水酸基に相当する水酸化カリウムのmg数と定義し、JISK1557-1:2007に準拠して測定した値を表す。
【0023】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)は、前記ヒドロキシ化合物(D)とカーボネート化合物(E)とを、必要に応じて用いるポリカーボネート化又はエステル交換触媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0024】
前記ポリオール(A)は、前記ポリカーボネートポリオール(a1)以外に、その他のポリオール(a2)を含んでいてもよい。前記その他のポリオール(a2)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、前記ポリカーボネートポリオール(a1)以外のポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0025】
前記ポリエステルポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、低分子量のポリオールと、ポリカルボン酸とを反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらを共重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0026】
前記低分子量のポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の分子量が50以上300以下である脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造を有するポリオール;ビスフェノールA及びビスフェノールF等の芳香族構造を有するポリオールなどが挙げられる。
【0027】
前記ポリカルボン酸としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;それらの無水物またはエステル化物などが挙げられる。
【0028】
前記ポリエーテルポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、活性水素原子を2つ以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させた化合物などが挙げられる。前記活性水素原子を2つ以上有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、水、ヘキサントリオール等が挙げられる。また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0029】
前記ポリカーボネートポリオール(a1)以外のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記他のヒドロキシ化合物に由来する単位を有し、前記ヒドロキシ化合物(d1)に由来する単位を有しないポリカーボネートポリオール化合物等が挙げられる。
【0030】
前記ポリイソシアネート(B)としては、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましい。前記脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を用いることができる。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、イソホロンジイソシアネート、及び/又は、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0031】
前記ポリイソシアネート(B)には、合成皮革の風合いを向上することを目的として、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートと併せて芳香族ポリイソシアネートを併用してもよい。
【0032】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等を用いることができる。これらの芳香族ポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートの含有率は、前記ポリイソシアネート(B)中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0034】
前記鎖伸長剤(C)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アミノ基を有する鎖伸長剤(c1)、水酸基を有する鎖伸長剤(c2)等が挙げられる。中でも、いっそう優れた耐薬品性の観点から、アミノ基を有する鎖伸長剤(c1)を含むことが好ましい。
【0035】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤(c1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。中でも、いっそう優れた耐薬品性の観点から、イソホロンジアミン及び/又は4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミンが好ましく、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミンがより好ましい。
前記アミノ基を有する鎖伸長剤(c1)の含有率は、前記鎖伸長剤(C)100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0036】
前記水酸基を有する鎖伸長剤(c2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などが挙げられる。
【0037】
また、反応調整剤又は重合度調整剤として、公知のものが使用でき、例えば、ブタノールなどの1官能性のモノオール、あるいはジエチルアミンやジブチルアミン等の1官能性のモノアミンなどが挙げられる。
【0038】
前記ポリオール(A)及び前記鎖伸長剤(C)が有する水酸基及び/又はアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH+NH)は、好ましくは0.95以上1.05以下である。また、前記ウレタン樹脂(A)の製造後には、残存するイソシアネート基を失活させる目的で、メタノール、1,3-ブタンジオール等のアルコール溶剤を添加させてもよい。
【0039】
前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、いっそう優れた耐薬品性および成膜性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下である。
【0040】
前記ポリウレタン樹脂におけるウレタン結合の含有量は、好ましくは500μmol/g以上、より好ましくは700μmol/g以上であり、好ましくは1200μmol/g以下、より好ましくは1000μmol/g以下である。前記ウレタン結合の含有量は、前記ポリオール(A)、前記ポリイソシアネート(B)及び前記鎖伸張剤(C)の合計質量に対するウレタン結合の含有量を表す。
【0041】
前記ポリウレタン樹脂の含有率は、前記ポリウレタン樹脂を含む組成物(以下、「ポリウレタン樹脂組成物」という場合がある。)100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0042】
前記ポリウレタン樹脂は、例えば、前記ポリオール(A)及び必要に応じて用いる有機溶剤を混合した後、前記ポリイソシアネート(B)及び鎖伸長剤(C)を混合することで製造することができる。前記反応の際、触媒を共存させてもよい。前記有機溶剤としては、ポリウレタン樹脂組成物に含まれていてもよい有機溶剤として後述する有機溶剤と同様の有機溶剤を用いることができる。前記触媒としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の化合物が挙げられる。反応温度は、好ましくは50℃以上100℃以下であり、反応時間は好ましくは3時間以上10時間以下である。反応後、残存するイソシアネート基を失活させる目的で、メタノール、1,3-ブタンジオール等のアルコール溶剤を添加してもよい。
【0043】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、さらに有機溶剤を含むことが好ましい。前記有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド溶剤;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル等のエステル溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール溶剤などが挙げられる。中でも、アミド溶剤、アルコール溶剤が好ましい。アミド溶剤及びアルコール溶剤を含む場合、アミド溶剤とアルコール溶剤の含有量の比(アミド溶剤/アルコール溶剤)は、質量基準で、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下である。
【0044】
前記ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤等の架橋剤を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。
【0045】
前記ポリウレタン樹脂を含む組成物は、必要に応じて、さらに可塑剤、充填材、顔料、染料、安定剤、難燃剤等の添加剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0046】
本発明の合成皮革の中間層(iii)は、例えば、前記ポリウレタン樹脂組成物を加熱成形することによって形成することができる。加熱成形は2段階で行うことが好ましく、60℃以上120℃以下で一次硬化させた後、90℃以上130℃以下で二次硬化させることが好ましい。一次硬化の時間は、好ましくは1分以上20分以下であり、二次硬化の時間は、好ましくは1分以上20分以下である。熱硬化後は、前記ポリウレタン樹脂組成物に含まれるポリウレタン樹脂のウレタン化反応が簡潔していることが好ましい。
【0047】
本発明の合成皮革において、前記基布(i)を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー及び炭素繊維並びにそれらの混紡繊維等を用いることができ、前記基布(i)の形態は、不織布、織布及び編物のいずれであってもよい。
【0048】
前記接着層(ii)は、例えば、溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、無溶剤系ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0049】
前記表皮層(iv)は、例えば、溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、無溶剤系ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエステル樹脂等を含む樹脂組成物用いて形成することができる。
【0050】
本発明の合成皮革は、例えば、例えば、離型処理された基材上に、表皮層(iv)を形成した後に、前記表皮層(iv)上に、前記ポリウレタン樹脂組成物を塗工し、乾燥させて中間層(iii)を得、次いで、前記中間層(iii)上に接着層(ii)を形成し、該接着層(ii)と基布(i)とを貼り合わせる方法により製造することができる。
【0051】
前記層(ii)~(iv)を形成する際の樹脂組成物の塗工方法としては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、パイプコーター、コンマコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。
【0052】
前記樹脂組成物を塗工後、例えば、80~120℃に調整した乾燥機等を使用して、例えば、1~60分保持することで前期樹脂組成物を乾燥することができる。
【0053】
前記層(ii)~(iv)の乾燥後の膜厚としては、それぞれ使用される用途に応じて
適宜決定されるが、例えば、0.001~10mmの範囲であることが好ましい。
【0054】
前記表皮層(iv)上には、必要に応じて、表面処理層(v)を設けてもよい。
【0055】
本発明の合成皮革は耐薬品性が良好であり、フィルム、接着剤、自動車内装材、研磨材、家電部品、包装材料等に公的に用いられる。
【実施例
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0057】
実施例において、数平均分子量、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)により、以下の条件で測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:以下の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0058】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンA-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンA-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンA-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンA-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレンF-550」
【0059】
(合成例1:ポリカーボネートポリオール(1)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ジエチレングリコール100質量部とジフェニルカーボネート193質量部を仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01重量%添加し、200℃で5時間反応させ、次いで、減圧条件下で10時間反応させ、ポリカーボネートポリオール(1)を得た。このポリカーボネートポリオール(1)の水酸基値は32mgKOH/gであった。
【0060】
(合成例2:ポリカーボネートポリオール(2)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ジエチレングリコール50質量部とトリエチレングリコール50質量部とジフェニルカーボネート152質量部を仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01重量%添加し、200℃で5時間反応させ、次いで、減圧条件下で10時間反応させ、ポリカーボネートポリオール(2)を得た。このポリカーボネートポリオール(2)の水酸基値は55mgKOH/gであった。
【0061】
(合成例3:ポリカーボネートポリオール(3)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ジエチレングリコール70質量部とポリエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#200」)30質量部とジフェニルカーボネート153質量部を仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01重量%添加し、200℃で5時間反応させ、次いで、減圧条件下で10時間反応させ、ポリカーボネートポリオール(3)を得た。このポリカーボネートポリオール(3)の水酸基値は57mgKOH/gであった。
【0062】
(合成例4:ポリカーボネートポリオール(4)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ジエチレングリコール80質量部とポリエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#400」)20質量部とジフェニルカーボネート152質量部を仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01重量%添加し、200℃で5時間反応させ、次いで、減圧条件下で10時間反応させ、ポリカーボネートポリオール(4)を得た。このポリカーボネートポリオール(4)の水酸基値は56mgKOH/gであった。
【0063】
(合成例5:ポリカーボネートポリオール(5)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ジエチレングリコール40質量部と1,4-ブタンジオール60質量部とジエチルカーボネート130質量部を仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01重量%添加し、120℃で10時間反応させ、次いで190℃で2時間反応させたのち、減圧しながら10時間反応させ、ポリカーボネートポリオール(5)を得た。このポリカーボネートポリオール(5)の水酸基値は37mgKOH/gであった。
【0064】
(合成例6:ポリカーボネートポリオール(6)の合成)
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリエチレングリコール(日油株式会社製「PEG#400」)20質量部と1,4-ブタンジオール80質量部とジエチルカーボネート117質量部を仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.01重量%添加し、120℃で10時間反応させ、次いで190℃で2時間反応させたのち、減圧しながら10時間反応させ、ポリカーボネートポリオール(6)を得た。このポリカーボネートポリオール(6)の水酸基値は33mgKOH/gであった。
【0065】
【表1】
【0066】
[合成例7]中間層用ポリウレタン樹脂(X-1)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(1)75質量部とポリカーボネートポリオール(T4691)25質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を124質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)26質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを186質量部加え、35℃まで冷却し、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(以下、「H12MDA」と略記する。)を7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-1)組成物を得た。
【0067】
[合成例8]中間層用ポリウレタン樹脂(X-2)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(2)75質量部とポリカーボネートポリオール(T4692)25質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを126質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを189質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-2)組成物を得た。
【0068】
[合成例9]中間層用ポリウレタン樹脂(X-3)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(3)90質量部とポリカーボネートポリオール(T4692)10質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを127質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを190質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを8質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-3)組成物を得た。
【0069】
[合成例10]中間層用ポリウレタン樹脂(X-4)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(4)90質量部とポリカーボネートポリオール(T4692)10質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを126質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを189質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-4)組成物を得た。
【0070】
[合成例11]中間層用ポリウレタン樹脂(X-5)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(5)75質量部とポリカーボネートポリオール(T4691)25質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを126質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを189質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-5)組成物を得た。
【0071】
[合成例12]中間層用ポリウレタン樹脂(X-6)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(1)50質量部とポリカーボネートポリオール(T4691)20質量部とポリカーボネートポリオール(T4692)30質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを126質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを189質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-6)組成物を得た。
【0072】
[合成例13]中間層用ポリウレタン樹脂(X-7)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(1)30質量部とポリカーボネートポリオール(T4691)14質量部とポリカーボネートポリオール(T4692)56質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを127質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを190質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを8質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-7)組成物を得た。
【0073】
[比較合成例1]中間層用ポリウレタン樹脂(X’-1)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(6)75質量部とポリカーボネートポリオール(T4691)25質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを125質量部、IPDIを26質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを186質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X’-1)組成物を得た。
【0074】
[比較合成例2]中間層用ポリウレタン樹脂(X’-2)の合成
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、ポリカーボネートポリオール(T4692)100質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、DMFを126質量部、IPDIを28質量部、オクチル酸第一錫0.05質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを189質量部加え、35℃まで冷却し、H12MDAを7質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、N,N-ジブチルアミン0.4質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X’-2)組成物を得た。
【0075】
[調製例1]表皮層用配合液の調製
溶剤系ウレタン樹脂(DIC株式会社製「クリスボン NY-331」)100質量部、黒色顔料(DIC株式会社製「DILAC L-1770S)20質量部をメカニカルミキサーにて2,000rpm、2分間撹拌し、次いで真空脱泡機を使用して脱泡させて表皮層用配合液を得た。
【0076】
[調製例2]接着層用配合液の調製
攪拌機、還流管、及び温度計を有する反応装置に、1,6-ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオール(数平均分子量;2,000、「PC-1」と略記する。)437質量部を加え、0.095MPaに減圧して120~130℃で脱水を行った。その後、50℃まで冷却して、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を340質量部、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)73質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加え、75℃で反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。次いで、これに、DMFを636質量部加え、40℃まで冷却し、イソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)を10質量部加え、混合撹拌することによって、ポリウレタン樹脂を鎖伸長させた。次いで、モノエタノールアミン6.0質量部を加え、混合することによって、ポリウレタン樹脂(X-1-1)組成物を得た。このポリウレタン樹脂(X-1-1)組成物に対し、接着剤層を形成するため塗工する直前に、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(以下、「HDIアダクト」と略記する。)を10質量%配合し、ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0077】
[実施例1]
シボ柄離型紙(旭ロール株式会社製「ARX-120」)上に、調製例1で得られた表皮層用配合液をナイフコーターにて塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることにより表皮層を得た。更にこの表皮層上に、合成例及び比較合成例で得られたポリウレタン樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させた。次いで、調製例2で得られた接着層用配合液をナイフコーターにて塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させることにより接着層を得た。最後に、不織布基材(目付300g/m)を前記接着層上に重ね、熱ロールプレス(ロール温度130℃、プレス線圧8MPa/m、送り速度1m/min)にて熱圧着させ、合成皮革を得た。
次いで、フラット離型紙(リンテック株式会社製「EK-100D」)上に、合成例及び比較合成例で得られたポリウレタン樹脂組成物を、ナイフコーターを使用して塗布した後(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機を使用して70℃で2分間、次いで120℃で2分間乾燥させ、乾式皮膜を得た。
【0078】
[実施例2~7、比較例1~2]
中間層(iii)に用いるポリウレタン樹脂組成物を表に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして合成皮革と乾式皮膜を得た。
【0079】
[耐オレイン酸性の測定方法1]
実施例及び比較例で得られた合成皮革にオレイン酸で湿らせた脱脂綿を載せて、23℃で24時間静置した後、表面形状を目視確認した。
【0080】
[耐オレイン酸性の測定方法2]
実施例及び比較例で得られた乾式皮膜を幅5mm、長さ50mmの短冊状に裁断し、引張試験機「オートグラフAG-I」(株式会社島津製作所製)を用いて、温度23℃の雰囲気下で、クロスヘッドスピード10mm/秒の条件で引張り、試験片の100%モジュラス(MPa)を測定し、試オレイン酸浸漬前測定値とした。この時のチャック間距離は40mmとした。
また、同様に作製した試験片を常温でオレイン酸に23℃で24時間浸漬した後取り出し、表面に付着したオレイン酸を紙ウエスで軽く拭き取った。その後、試験片の100%モジュラス値を測定しオレイン酸浸漬後測定値とした。この値をオレイン酸浸漬前測定値で除した値を100%モジュラス値の保持率として、耐オレイン酸性を以下のように評価した。
[判定基準]
◎:合成皮革の表面形状に変化が見られない、かつ100%モジュラス保持率60%以上
○:合成皮革の表面形状に変化が見られない、かつ100%モジュラス保持率50~60%
△:合成皮革の表面形状に変化が見られない、かつ100%モジュラス保持率40~50%
×:合成皮革の表面形状に変化が見られる、もしくは100%%モジュラス保持率40%未満
【0081】
以上の評価結果を表2及び表3に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
本発明の合成皮革である実施例1~7の合成皮革は、耐薬品性が良好であった。
【0085】
これに対して、比較例1、2の合成皮革は、一般式(1)で表されるヒドロキシ化合物(d1)に由来する単位を有するポリカーボネートポリオール(a1)を含まないポリオールを用いて形成されたものであり、耐薬品性に劣るものであった。