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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】差圧式流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/48 20060101AFI20221213BHJP
   G01F 1/50 20060101ALI20221213BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20221213BHJP
   G01F 15/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01F1/48
G01F1/50
G01F1/00 W
G01F15/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019059221
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159851
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】土井原 良次
(72)【発明者】
【氏名】チョン・カー・ウィー
(72)【発明者】
【氏名】寺阪 正訓
(72)【発明者】
【氏名】田村 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】林 丈裕
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0208833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/34-1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる流体の流量を測定する差圧式流量計であって、
前記流路に対して直列状に設置され、前記流体に差圧を生成する一対の差圧生成体と、
前記上流側の差圧生成体へ流入する流体の第1圧力及び前記上流側の差圧生成体から流出して前記下流側の差圧生成体へ流入する流体の第2圧力の差である第1差圧と、前記第2圧力及び前記下流側の差圧生成体から流出した流体の第3圧力の差である第2差圧とに基づき前記流路を流れる流体の流量を測定する流量測定機構とを備え、
前記一対の差圧生成体が、互いに異なる長さの内部流路を有し、かつ、当該両差圧生成体の内部流路における上流端側の流路形状が略同一の形状損失になるように設定されていると共に、当該両差圧生成体の内部流路における下流端側の流路形状が略同一の形状損失になるように設定されていることを特徴とする差圧式流量計。
【請求項2】
流路を流れる流体の流量を測定する差圧式流量計であって、
前記流路に対して直列状に設置され、前記流体に差圧を生成する一対の差圧生成体と、
前記上流側の差圧生成体へ流入する流体の第1圧力及び前記上流側の差圧生成体から流出して前記下流側の差圧生成体へ流入する流体の第2圧力の差である第1差圧と、前記第2圧力及び前記下流側の差圧生成体から流出した流体の第3圧力の差である第2差圧とに基づき前記流路を流れる流体の流量を測定する流量測定機構とを備え、
前記一対の差圧生成体が、互いに異なる長さの内部流路を有し、かつ、当該両差圧生成体の内部流路における上流端側に生じる形状損失が互いにキャンセルされると共に、当該両差圧生成体の内部流路における下流端側に生じる形状損失が互いにキャンセルされるように構成されていることを特徴とする差圧式流量計。
【請求項3】
前記一対の差圧生成体が、略同一の径寸法に設定された内部流路を有するキャピラリーである請求項1又は2のいずれかに記載の差圧式流量計。
【請求項4】
前記流量測定機構が、
前記上流側の差圧生成体の上流端に接続され、その内部に前記第1圧力を取り出す圧力取出部を有する第1圧力計と、
前記上流側の差圧生成体の下流端及び前記下流側の差圧生成体の上流端の間に接続され、その内部に前記第2圧力を取り出す圧力取出部を有する第2圧力計と、
前記下流側の差圧生成体の下流端に接続され、その内部に前記第3圧力を取り出す圧力取出部を有する第3圧力計とを備えている請求項1乃至3のいずれかに記載の差圧式流量計。
【請求項5】
前記第1圧力計、前記第2圧力計及び前記第3圧力計の圧力取出部が、略同一形状に設定されている請求項4記載の差圧式流量計。
【請求項6】
前記第1圧力計、前記第2圧力計及び前記第3圧力計の圧力取出部が、いずれかの差圧生成体の内部流路と連通し、当該内部流路よりも大きい径寸法を有する測定流路を有しており、
前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第1圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第2圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されており、
前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第2圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第3圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されている請求項5記載の差圧式流量計。
【請求項7】
前記流量測定機構が、
前記上流側の差圧生成体の上流端及び下流端に接続され、その内部に前記第1差圧を取り出す差圧取出部を有する第1差圧計と、
前記下流側の差圧生成体の上流側及び下流側に接続され、その内部に前記第2差圧を取り出す差圧取出部を有する第2差圧計とを備えている請求項1又は2のいずれかに記載の差圧式流量計。
【請求項8】
前記第1差圧計及び前記第2差圧計の差圧取出部の前記流路から延びる部分の当該流路に対する高さが略同一に設定されている請求項7記載の差圧式流量計。
【請求項9】
前記第1差圧計及び前記第2差圧計の差圧取出部が、いずれかの差圧生成体の内部流路の上流側と連通し、当該内部流路よりも大きい径寸法を有する第1測定流路と、当該差圧生成体の内部流路の下流側と連通し、当該内部流路よりも大きい径寸法を有する第2測定流路とを有しており、
前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第1差圧計の第1測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第2差圧計の第1測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されており、
前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第1差圧計の第2測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第2差圧計の第2測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されている請求項8記載の差圧式流量計。
【請求項10】
前記流体の密度を補正するための補正用圧力計をさらに備えている請求項7乃至9いずれかに記載の差圧式流量計。
【請求項11】
前記両差圧生成体の少なくとも一部が曲げられている請求項1乃至10のいずれかに記載の差圧式流量計。
【請求項12】
前記両差圧生成体の一部が環状に曲げられている請求項11のいずれかに記載の差圧式流量計。
【請求項13】
前記一対の差圧生成体の少なくとも一方に、その内部流路を流れる前記流体の温度を検出する温度センサが設置されている請求項1乃至12のいずれかに記載の差圧式流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧式流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、流路を流れる流体の流量を正確に把握する必要があることから、各流路に流量計が設置される。例えば、特許文献1には、流量計の一つとして、流路に設置される差圧生成体と、差圧生成体へ流入する流体の圧力を検出する上流側圧力計と、差圧生成体から流出する圧力を検出する下流側圧力計と、を備えた差圧式流量計が開示されている。
【0003】
ところで、流路に差圧生成体を設置し、この差圧生成体に生じる差圧から流体の体積流量Qv及び質量流量Qmを算出する理論式として次の式(1)がある。
【0004】
ここで、dは、差圧生成体の直径、μは、流体の粘度、lは、流路から差圧生成体に流入した流体が助走区間を経て層流として速度分布が完成した領域(以下、層流領域ともいう)における二点間の距離、ΔPは、前記二点間の差圧、をそれぞれ示している。すなわち、この式(1)においては、差圧生成体における層流領域の摩擦損失しか考慮されていない。
【0005】
このため、前記従来の差圧式流量計において、両圧力計で検出された圧力から差圧ΔP´を算出し、この差圧ΔP´をΔPとして式(1)から体積流量Qvを算出しようとすると、正確な流量が得られない。
【0006】
なぜなら、前記従来の差圧式流量計で得られる差圧ΔP´には、上流側圧力計の測定流路を流れる流体が差圧生成体の内部流路へ流入する場合に、その接合箇所における流路形状の縮小に伴って生じる形状損失、差圧生成体の内部流路を流れる流体が下流側圧力計の測定流路へ流入する場合に、その接合箇所における流路形状の拡大に伴って生じる形状損失、及び、各圧力計の測定流路で生じる摩擦損失が含まれるからである。
【0007】
一方、差圧生成体の層流領域に圧力取出部を設けて差圧ΔPを直接測定する方法も考えられるが、差圧生成体から静圧を取り出すためには、差圧生成体の直径よりもある程度小さい直径の圧力取出管を接続する必要があるため、圧力取出管の直径が小さくなり過ぎて正確に静圧を取り出すことができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-153677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、理論式を用いてより正確な流量を測定できる差圧式流量計を得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る差圧式流量計は、流路を流れる流体の流量を測定する差圧式流量計であって、前記流路に対して直列状に設置され、前記流体に差圧を生成する一対の差圧生成体と、前記上流側の差圧生成体へ流入する流体の第1圧力及び前記上流側の差圧生成体から流出して前記下流側の差圧生成体へ流入する流体の第2圧力の差である第1差圧と、前記第2圧力及び前記下流側の差圧生成体から流出した流体の第3圧力の差である第2差圧とに基づき前記流路を流れる流体の流量を測定する流量測定機構とを備え、前記一対の差圧生成体が、互いに異なる長さの内部流路を有し、かつ、当該両差圧生成体の内部流路における上流端側の流路形状が略同一の形状損失になるように設定されていると共に、当該両差圧生成体の内部流路における下流端側の流路形状が略同一の形状損失になるように設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明に係る差圧式流量計は、流路を流れる流体の流量を測定する差圧式流量計であって、前記流路に対して直列状に設置され、前記流体に差圧を生成する一対の差圧生成体と、前記上流側の差圧生成体へ流入する流体の第1圧力及び前記上流側の差圧生成体から流出して前記下流側の差圧生成体へ流入する流体の第2圧力の差である第1差圧と、前記第2圧力及び前記下流側の差圧生成体から流出した流体の第3圧力の差である第2差圧とに基づき前記流路を流れる流体の流量を測定する流量測定機構とを備え、前記一対の差圧生成体が、互いに異なる長さの内部流路を有し、かつ、当該両差圧生成体の内部流路における上流端側に生じる形状損失が互いにキャンセルされると共に、当該両差圧生成体の内部流路における下流端側に生じる形状損失が互いにキャンセルされるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
このようなものであれば、各差圧生成体の内部流路の上流端側及び下流端側の流路形状を略同一にしたので、第1差圧及び第2差圧に基づき、一対の差圧生成体によって生成される差圧を算出する場合に、各差圧生成体の内部流路の上流端側及び下流端側で生じる形状損失が互いにキャンセルされる。これにより、前記理論式を用いてより正確に体積流量を算出できるようになる。ここで、形状損失とは、内部流路の形状変化(具体的には、内部流路の曲がり、内部流路の内径の拡縮等)によって当該内部流路を流れる流体に発生するエネルギー損失を示している。
【0013】
なお、具体的には、前記一対の差圧生成体として、略同一の径寸法に設定された内部流路を有するキャピラリーを使用すればよい。
【0014】
また、本発明に係る差圧式流量計としては、三つの圧力計によって前記第1圧力、前記第2圧力及び前記第3圧力をそれぞれ検出した上で第1差圧及び第2差圧を算出する圧力検出方式と、差圧計によって直接第1差圧及び第2差圧を検出する差圧検出方式とが考えられる。
【0015】
なお、圧力検出方式としては、前記流量測定機構が、前記上流側の差圧生成体の上流端に接続され、その内部に前記第1圧力を取り出す圧力取出部を有する第1圧力計と、前記上流側の差圧生成体の下流端及び前記下流側の差圧生成体の上流端の間に接続され、その内部に前記第2圧力を取り出す圧力取出部を有する第2圧力計と、前記下流側の差圧生成体の下流端に接続され、その内部に前記第3圧力を取り出す圧力取出部を有する第3圧力計とを備えているものであってもよい。
【0016】
そして、この場合、前記第1圧力計、前記第2圧力計及び前記第3圧力計の圧力取出部が、略同一形状に設定されていることが好ましい。
【0017】
このようなものであれば、各圧力計で検出された圧力に基づき、一対の差圧生成体によって生成される差圧を算出する場合に、各圧力計の圧力取出部で生じる摩擦損失が互いにキャンセルされる。これにより、前記理論式を用いてより正確に体積流量を算出できるようになる。
【0018】
さらに、この場合、前記第1圧力計、前記第2圧力計及び前記第3圧力計の圧力取出部が、いずれかの差圧生成体の内部流路と連通し、当該内部流路よりも大きい径寸法を有する測定流路を有しており、前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第1圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第2圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されており、前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第2圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第3圧力計の測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されていることが好ましい。
【0019】
このようなものであれば、各圧力計で検出された圧力に基づき、一対の差圧生成体によって生成される差圧を算出する場合に、各圧力計の測定流路と各差圧生成体の内部流路との接合箇所で生じる形状損失が互いにキャンセルされる。これにより、前記理論式を用いてより正確に体積流量を算出できるようになる。
【0020】
また、差圧検出方式としては、前記一対の差圧生成体が、前記流路に対して間欠的に配置されており、前記流量測定機構が、前記上流側の差圧生成体の上流端及び下流端に接続された前記各流路に連通され、その内部に前記第1差圧を取り出す差圧取出部を有する第1差圧計と、前記下流側の差圧生成体の上流側及び下流側に接続された前記各流路に連通され、その内部に前記第2差圧を取り出す差圧取出部を有する第2差圧計とを備えているものであってもよい。
【0021】
また、この場合、前記第1差圧計及び前記第2差圧計の差圧取出部の前記流路から延びる部分の当該流路に対する高さが略同一に設定されているものであることが好ましい。
【0022】
このようなものであれば、各差圧計で検出された差圧に基づき、一対の差圧生成体によって生成される差圧を算出する場合に、各差圧計の圧力取出部で生じる損失が互いにキャンセルされる。これにより、前記理論式を用いてより正確に体積流量を算出できるようになる。
【0023】
さらに、この場合、前記第1差圧計及び前記第2差圧計の差圧取出部が、いずれかの差圧生成体の内部流路の上流側と連通し、当該内部流路よりも大きい径寸法を有する第1測定流路と、当該差圧生成体の内部流路の下流側と連通し、当該内部流路よりも大きい径寸法を有する第2測定流路とを有しており、前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第1差圧計の第1測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第2差圧計の第1測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されており、前記上流側の差圧生成体の内部流路と前記第1差圧計の第2測定流路との接合箇所における流路形状と、前記下流側の差圧生成体の内部流路と前記第2差圧計の第2測定流路との接合箇所における流路形状とが略同一の形状損失になるように設定されているものであることがより好ましい。
【0024】
このようなものであれば、各差圧計で検出された差圧に基づき、一対の差圧生成体によって生成される差圧を算出する場合に、各差圧計の測定流路と各差圧生成体の内部流路との接合箇所で生じる形状損失が互いにキャンセルされる。これにより、前記理論式を用いてより正確に体積流量を算出できるようになる。この場合、第1差圧計の第2測定流路と第2差圧計の第1測定流路とを共通のものとしてもよい。
【0025】
また、差圧検出方式においては、前記流体の密度を補正するための補正用圧力計を備えているものであってもよい。
【0026】
流体の質量流量を算出する場合には、流体の密度が用いられるが、このようなものであれば、補正用圧力計の検出値に基づき流体の密度を補正することができるため、より正確な流量を得ることができる。
【0027】
なお、本発明に係る差圧流量計においては、二つの差圧生成体を直列状に配置する必要があるため、差圧流量計の全長が長くなる。そこで、前記両差圧生成体の少なくとも一部が曲げられているものあってもよく、また、前記両差圧生成体の一部が環状に曲げられているものであってもよい。
【0028】
このようなものであれば、差圧流量計の全長を短くすることができ、これにより、コンパクトになる。
【0029】
また、前記一対の差圧生成体の少なくとも一方に、その内部流路を流れる前記流体の温度を検出する温度センサが設置されているものであってもよい。
【0030】
このようなものであれば、差圧生成体を流れる流体の粘度μを温度に基づき補正することできるため、より正確な流量を測定できる。
【0031】
このように構成した差圧式流量計によれば、前記理論式を用いてより正確な流量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施形態1に係る差圧式流量計を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態2に係る差圧式流量計を模式的に示す断面図である。
図3】その他の実施形態に係る差圧式流量計を示す模式図である。
図4】その他の実施形態に係る差圧式流量計を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る差圧式流量計を図面に基づいて説明する。
【0034】
本発明に係る差圧式流量計は、半導体製造プロセスに使用される各機器に接続される流路に設置されるものである。なお、本発明に係る差圧式流量計は、他の分野における流路に使用することもできる。
【0035】
<実施形態1> 本実施形態に係る差圧式流量計100は、図1に示すように、流路Lに対して直列状に設置され、当該流路Lを流れる流体に差圧を生成する一対の差圧生成体10,20と、各差圧生成体10,20によって生成された差圧に基づき流路Lを流れる流体の流量を測定する流量測定機構Fと、を備えている。
【0036】
前記一対の差圧生成体10,20は、管状のものであり、具体的には、円筒状のキャピラリーである。そして、一対の差圧生成体10,20は、その内部流路10a,20aの上流端側の流路形状が互いに略同一の形状損失になるように設定さており、その内部流路の10a,20a下流端側の流路形状が互いに略同一の形状損失になるように設定されている。具体的には、一対の差圧生成体10,20は、互いに異なる長さの内部流路10a,20aを有しており、その内部流路10a,20aの径寸法が略同一になっている。すなわち、一対の差圧生成体10,20の内部流路10a,20aは、その長さ以外の形状が略同一になっている。なお、本実施形態においては、円筒状のキャピラリーを用いたが、これに限定されることなく、内部流路10a,20aの断面が矩形状や楕円状等その他の形状のキャピラリーであってもよい。
【0037】
そして、前記一対の差圧生成体10,20は、それぞれ直線状に延びており、流路Lに対して流体の流方向に沿って並べて配置されている。より具体的には、全長が短い方の差圧生成体10aが、流路Lの上流側に配置され、全長が長い方の差圧生成体20aが、流路Lの下流側に配置されている。
【0038】
前記流量測定機構Fは、具体的には、上流側の差圧生成体10へ流入する流体の圧力である第1圧力及び上流側の差圧生成体10から流出して下流側の差圧生成体20へ流入する流体の圧力である第2圧力の差である第1差圧と、第2圧力及び下流側の差圧生成体20から流出した流体の圧力である第3圧力の差である第2差圧と、に基づき流路Lを流れる流体の流量を測定するものである。
【0039】
そして、前記流量測定機構Fは、上流側の差圧生成体10の上流端に接続され、その内部に前記第1圧力を取り出すための圧力取出部31を有する第1圧力計30と、上流側の差圧生成体10の下流端及び下流側の差圧生成体20の上流端の間に接続され、その内部に前記第2圧力を取り出すための圧力取出部41を有する第2圧力計40と、下流側の差圧生成体20の下流端に接続され、その内部に第3圧力を取り出すための圧力取出部51を有する第3圧力計50と、を備えている。なお、以下において、第1圧力計30、第2圧力計40及び第3圧力計50をまとめて各圧力計30,40,50ともいう。
【0040】
前記各圧力計30,40,50の圧力取出部31,41,51は、流路Lや差圧生成体10,20の内部流路10a,20aと連通して流体が流れる測定流路31a,41a,51aと、測定流路31a,41a,51aから分岐して延びる圧力取出路31b,41b,51bと、を備えている。また、測定流路31a,41a,51aは、差圧生成体10,20の内部流路10a,20aよりも大きな径寸法(直径)を有している。また、圧力取出路31b,41b,51bは、測定流路31a,41a,51aから分岐して延びており、その先端側に圧力取出路31b,41b,51bによって取り出された圧力を検出する圧力検出部32,42,52が設けられている。なお、本実施形態の圧力取出部31b,41b,51bは、測定流路31a,41a,51aの上下流方向に対して中央に当たる位置から分岐して延びている。
【0041】
そして、前記各圧力計30,40,50は、圧力取出部31,41,51の形状が略同一形状に設定されている。具体的には、前記各圧力計30,40,50の圧力取出部31,41,51は、測定流路31a,41a,51a及び圧力取出路31b,41b,51bの長さや径寸法が略同一に設定されており、また、測定流路31a,41a,51aに対する圧力取出路31b,41b,51bの分岐位置が略同一に設定されている。
【0042】
そして、上流側の差圧生成体10の内部流路10aと第1圧力計30の測定流路31aとの接合箇所X1における流路形状と、下流側の差圧生成体20の内部流路20aと第2圧力計40の測定流路41aとの接合箇所X2における流路形状と、が互いに略同一の形状損失になるように設定されている。すなわち、これらの接合箇所X1,X2の流路形状が略同一になるように内部流路10a,20a及び測定流路31a,41aが接合されている。
【0043】
また、上流側の差圧生成体10の内部流路10aと第2圧力計40の測定流路41aとの接合箇所X3における流路形状と、下流側の差圧生成体20の内部流路20aと第3圧力計50の測定流路51aとの接合箇所X4における流路形状と、が互いに略同一の形状損失になるように設定されている。すなわち、これらの接合箇所X3,X4の流路形状が略同一になるように内部流路10a,20a及び測定流路41a,51aが接合されている。
【0044】
なお、流量測定機構Fは、演算部60をさらに備えている。演算部60は、各圧力計30,40,50に接続されている。なお、演算部60は、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段等を備えたいわゆるコンピュータによって構成してあり、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協働することによってその機能が実現されるようにしてある。具体的には、各圧力計30,40,50で検出された圧力に基づき流路Lに流れる流体の流量を演算する機能を発揮する。
【0045】
次に、本実施形態に係る差圧式流量計100の測定原理を説明する。
【0046】
先ず、第1圧力をP、第2圧力をP、第3圧力をP、第1圧力計30の測定流路31aにおける圧力取出路31bよりも下流側Y1で生じる摩擦損失をΔPfp1out、第2圧力計40の測定流路41aにおける圧力取出路41bよりも下流側Y2で生じる摩擦損失をΔPfp2out、第2圧力計40の測定流路41aにおける圧力取出路41bよりも上流側Y3で生じる摩擦損失をΔPfp2in、第3圧力計50の測定流路51aにおける圧力取出路51bよりも上流側Y4で生じる摩擦損失をΔPfp3in、接合箇所X1における流路形状の縮小に伴う形状損失をΔPsc1、接合箇所X3における流路形状の拡大に伴う形状損失をΔPse1、接合箇所X2における流路形状の縮小に伴う形状損失をΔPsc2、接合箇所X4における流路形状の拡大に伴う形状損失をΔPse2、上流側の差圧生成体10の層流領域における摩擦損失をΔPfc1、下流側の差圧生成体20の層流領域における摩擦損失をΔPfc2、とすると、第1差圧ΔP12及び第2差圧ΔP23は、それぞれ次の式(2)及び式(3)で表すことができる。
【0047】
ここで、各圧力計30,40,50の圧力取出部31,41,51が略同一形状になっていることとから、第1圧力計30の測定流路31aの下流側Y1で生じる摩擦損失ΔPfp1outと、第2圧力計40の測定流路41aの下流側Y2で生じる摩擦損失ΔPfp2outとが略同一となり、第2圧力計40の測定流路41aの上流側Y3で生じる摩擦損失ΔPfp2inと、第3圧力計50の測定流路51aの上流側Y4で生じる摩擦損失ΔPfp3inとが略同一となる。さらに、接合箇所X1及び接合箇所X2の流路形状が略同一形状になっていることから、接合箇所X1に生じる形状損失ΔPsc1と接合箇所X2に生じる形状損失ΔPsc2とが略同一となる。また、接合箇所X3及び接合箇所X4の流路形状が略同一形状になっていることから、接合箇所X3に生じる形状損失ΔPse1と接合箇所X4に生じる形状損失ΔPse2とが略同一となる。
【0048】
よって、式(2)及び式(3)に基づき、第1差圧ΔP12と第2差圧ΔP23との差を算出すると、差圧生成体10,20の層流領域に生じる摩擦損失以外の摩擦損失及び形状損失を除いた次の式(4)が得られる。
すなわち、各圧力計で検出される圧力値のみから、層流領域における摩擦損失のみを含む値が得られる。
【0049】
そして、このΔP23-ΔP12をΔPとして式(1)に代入することにより、流路Lを流れる流体のより正確な流量を算出することができる。
【0050】
なお、演算部60は、第1圧力計30で検出された第1圧力P1、第2圧力計40で検出された第2圧力P2、及び、第3圧力計50で検出された第3圧力P3から式(4)に基づきΔPを算出し、式(1)を用いて流路Lに流れる流体の流量を算出する。
【0051】
<実施形態2> 本実施形態に係る差圧式流量計100は、前記実施形態1における流量測定機構Fの変形例である。具体的には、本実施形態に係る流量測定機構Fは、図2に示すように、上流側の差圧生成体10の上流端及び下流端に接続され、その内部に前記第1差圧を取り出す差圧取出部71を有する第1差圧計70と、下流側の差圧生成体20の上流側及び下流側に接続され、その内部に前記第2差圧を取り出す差圧取出部81を有する第2差圧計80と、を備えている。なお、以下において、第1差圧計70及び第2差圧計80をまとめて各差圧計70,80ともいう。
【0052】
前記各差圧計70,80の差圧取出部71,81は、差圧生成体10,20の内部流路10a,20aの上流側と連通して流体が流れる第1測定流路71a,81aと、差圧生成体10,20の内部流路10a,20aの下流側と連通して流体が流れる第2測定流路71b,81bと、第1測定流路71a,81a及び第2測定流路71b,81bから分岐して延びる圧力取出路71c,81cと、を備えている。なお、第1測定流路71a,81a及び第2測定流路71b,81bは、差圧生成体10,20の内部流路10a,20aよりも大きな径寸法(直径)を有している。また、各圧力取出路71c,81cは、第1測定流路71a,81a及び第2測定流路71b,81bから分岐して延びており、その先端側に圧力取出路71c,81cによって取り出された圧力の差圧を検出する差圧検出部72,82が設けられている。なお、本実施形態においては、第1差圧計70の第2測定流路71bと第2差圧計80の第1測定流路81aとが共通して使用されており、この共通する測定流路から分岐する第1差圧計70の圧力取出路71cの一部と第2差圧計80の圧力取出路81cの一部とが共通して使用されている。
【0053】
前記各差圧計70,80の差圧取出部71,81は、各差圧取出路71c、81cの流路Lからの高さh(流路Lから直交方向へ延びる部分の長さ)が略同一に設定されている。具体的には、差圧検出部72,82を挟んで両側に位置する各差圧取出路71c,81cの流路Lからの高さh(流路Lから直交方向へ延びる部分の長さ)が略同一に設定されている。また、差圧取出路71c及び差圧取出路81cの流路Lからの高さh(流路Lから直交方向へ延びる部分の長さ)が略同一に設定されている。これにより、差圧検出部72,82は、いずれも流路Lから略同一の高さに配置されている。また、第1測定流路71a,81a及び第2測定流路71b,81bに対する圧力取出路71cの分岐位置が略同一に設定されている。
【0054】
そして、上流側の差圧生成体10の内部流路10aと第1差圧計70の第1測定流路71aとの接合箇所X1における流路形状と、下流側の差圧生成体20の内部流路20aと第2差圧計80の第1測定流路81aとの接合箇所X2における流路形状と、が互いに略同一の形状損失になるように設定されている。すなわち、これらの接合箇所X1,X2の流路形状が略同一になるように内部流路10a,20a及び第1測定流路71a,81aが接合されている。
【0055】
また、上流側の差圧生成体10の内部流路10aと第1差圧計70の第2測定流路71bとの接合箇所X3における流路形状と、下流側の差圧生成体20の内部流路20aと第2差圧計80の第2測定流路81bとの接合箇所X4における流路形状と、が互いに略同一の形状損失になるように設定されている。すなわち、これらの接合箇所X3,X4の流路形状が略同一になるように内部流路10a,20a及び第2測定流路71b、81bが接合されている。
【0056】
このようなものであっても、第1差圧計70で検出される第1差圧P12と第2差圧計80で検出される第2差圧P23との差に基づきΔPを算出することにより、接合箇所X1,X2,X3,X4に生じる形状損失、第1差圧計70の第1測定流路71a及び第2測定流路71bに生じる摩擦損失、及び、第2差圧計80の第1測定流路81a及び第2測定流路81bに生じる摩擦損失が除かれた、層流領域における摩擦損失のみを含む差圧が得られる。
【0057】
<その他の実施形態> 前記各実施形態においては、一対の差圧生成体10,20として直線状のキャピラリーを使用しているが、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、キャピラリー10,20の途中をU字状に曲げた形態のものや、図4に示すように、キャピラリー10,20の途中を環状に曲げた形態のものを使用してもよい。ここで、図3(a)、図3(b)及び図4に示す実施形態において、キャピラリー10(上流側の差圧生成体10)及びキャピラリー20(下流側の差圧生成体20)は、直線状の部分以外を見た場合に、互いに同一形状の曲げられた部分を備えている。例えば、図3(a)及び図3(b)に示す実施形態においては、キャピラリー10及びキャピラリー20は、互いにU字状及び一対のL字状に曲げられた部分を備えており、図4に示す実施形態においては、キャピラリー10及びキャピラリー20は、互いに円環状に曲げられた部分を備えている。また、図3(a)、図3(b)及び図4に示す実施形態において、キャピラリー10及びキャピラリー20は、互いに直線状の部分の長さが異なっており、これにより、両キャピラリー10、20の全長を相違させている。例えば、図3(a)及び図4に示す実施形態においては、キャピラリー10及びキャピラリー20は、上流端部10b、20b及び下流端部10c、20cのいずれか一方又は双方(両実施形態においては双方)の直線状の部分が互いに異なる長さになっており、図3(b)に示す実施形態においては、キャピラリー10及びキャピラリー20は、中間部10d,20dの直線状の部分が互いに異なる長さになっている。このようなものであれば、キャピラリーの全長を維持したまま、装置全体の全長を短くすることができる。なお、図3(b)に示す実施形態においては、第1圧力計30及び第2圧力計40の間の距離と第2圧力計40及び第3圧力計50の間の距離とが同一になっている。
【0058】
また、前記各実施形態においては、一対の差圧生成体10,20としてキャピラリーを使用しているが、一対の差圧生成体として、内部流路内に層流素子を配置したリストリクタを使用してもよい。
【0059】
また、前記実施形態2において、流路Lを流れる流体の圧力を検出する圧力計をさらに設けてもよい。この場合、当該圧力計は、差圧測定の邪魔にならないように第1差圧計70よりも上流側、或いは、第2差圧計80よりも下流側に設ければよい。これにより、圧力計で検出される圧力に基づき流体の密度を補正することができるようになる。そして、次の式(5)で質量流量Qmを算出することでより正確な値を得ることができる。
なお、ρは、流体の密度を示している。
【0060】
また、前記各実施形態において、一対の差圧生成体10,20に対して温度センサを設けてもよい。この場合、温度センサで測定される温度に基づき流体の粘度μ及び密度ρを補正することができるようになる。
【0061】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
100 差圧式流量計
10 上流側の差圧生成体
10a 内部流路
20 下流側の差圧生成体
20a 内部流路
30 第1圧力計
31 差圧取出部
31a 測定流路
40 第2圧力計
41 差圧取出部
41a 測定流路
50 第3圧力計
51 差圧取出部
51a 測定流路
70 第1差圧計
71a 第1測定流路
71b 第2測定流路
71c 圧力取出路
80 第2差圧計
81a 第1測定流路
81b 第2測定流路
81c 圧力取出路
X1,X2,X3,X4 接続箇所
図1
図2
図3
図4