(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】評価装置及び評価方法、表示装置及び表示方法、露光装置及び露光方法、露光システム、デバイス製造装置、並びに、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2021150092
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2020166892の分割
【原出願日】2016-03-16
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】杉本 彩子
(72)【発明者】
【氏名】大坪 洋介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 将
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-136326(JP,A)
【文献】特開2010-175733(JP,A)
【文献】特表2010-538474(JP,A)
【文献】国際公開第2016/019117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G06F 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが露光装置の動作状態を示す複数の項目のそれぞれの変数が入力される入力部と、
スパース構造学習法を用いて前記複数の項目の各変数の間の相関関係を求め、前記複数の項目にそれぞれ対応する複数のノードと、二つの項目の二つの変数の間の相関関係に応じた表示形態で前記二つの項目に対応する二つの前記ノードを関連付けるエッジとを用いて、前記求めた相関関係を含む表示対象物を表示する表示部と、
を備え、
前記複数の項目のそれぞれは、前記露光装置を構成する複数の部分を
、前記複数の部分の配置の違いに基づく所定基準で分類することで得られる複数のグループのうちの少なくとも一つに関連しており、
前記表示部は、
前記複数の部分のうちの同一の又は近接する位置に配置されている少なくとも一つの部分に対応する一のグループに関連する少なくとも二つの項目にそれぞれ対応する少なくとも二つの前記ノードを、一群の表示物としてまとめて表示する表示装置。
【請求項2】
前記露光装置は、複数のセンサを備え、
前記複数のセンサのうちの一のセンサは、前記複数の部分のうちの前記一のセンサに対応する少なくとも一つの部分の前記動作状態を検出可能であり、
前記入力部には、前記複数のセンサのそれぞれの検出結果が、前記複数の項目のそれぞれの変数として入力され、
前記複数のノードは、前記複数のセンサにそれぞれ対応している
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記露光装置は、露光装置内の上部領域に、前記複数の部分のうちの第1部分を備えており、
前記露光装置は、前記上部領域よりも下方に位置する前記露光装置内の中部領域に、前記複数の部分のうちの前記第1部分とは異なる第2部分を備えており、
前記露光装置は、前記中部領域よりも下方に位置する前記露光装置内の下部領域に、前記複数の部分のうちの前記第1及び第2部分とは異なる第3部分を備えており、
前記表示部は、前記第1部分に対応する第1のグループに関連する少なくとも二つの項目にそれぞれ対応する少なくとも二つの前記ノードを、一群の表示物として第1表示領域にまとめて表示し、
前記表示部は、前記第2部分に対応する第2のグループに関連する少なくとも二つの項目にそれぞれ対応する少なくとも二つの前記ノードを、一群の表示物として前記第1表示領域よりも下方に位置する第2表示領域にまとめて表示し、
前記表示部は、前記第3部分に対応する第3のグループに関連する少なくとも二つの項目にそれぞれ対応する少なくとも二つの前記ノードを、一群の表示物として前記第2表示領域よりも下方に位置する第3表示領域にまとめて表示する
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1部分は、マスクと、マスクを保持するマスクステージと、マスクステージを移動させる駆動システムと、前記マスクに向けて露光光を射出する照明系との少なくとも一つを含み、
前記第2部分は、前記マスクを通過した前記露光光を基板に投影する投影光学系を含み、
前記第3部分は、前記基板と、前記基板を保持する基板ステージと、前記基板ステージを移動させる駆動システムとの少なくとも一つを含む
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記表示対象物が前記露光装置に対応付けられる表示形態で、前記表示対象物を表示する
請求項1
から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数のグループは、前記複数の部分を前記複数の部分の機能の違いに基づいて分類することで得られる複数の第1グループを含む
請求項1
から5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数のグループは、前記複数の部分を前記複数の部分の位置の違いに基づいて分類することで得られる複数の第2グループを含む
請求項1から
6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
それぞれが露光装置の動作状態を示す複数の項目のそれぞれの変数が入力されることと、
スパース構造学習法を用いて前記複数の項目の各変数の間の相関関係を求め、前記複数の項目にそれぞれ対応する複数のノードと、二つの項目の二つの変数の間の相関関係に応じた表示形態で前記二つの項目に対応する二つの前記ノードを関連付けるエッジとを用いて、前記求めた相関関係を含む表示対象物を表示することと
を含
み、
前記複数の項目のそれぞれは、前記露光装置を構成する複数の部分を、前記複数の部分の配置の違いに基づく所定基準で分類することで得られる複数のグループのうちの少なくとも一つに関連しており、
前記表示することは、前記複数の部分のうちの同一の又は近接する位置に配置されている少なくとも一つの部分に対応する一のグループに関連する少なくとも二つの項目にそれぞれ対応する少なくとも二つの前記ノードを、一群の表示物としてまとめて表示することを含む表示方法。
【請求項9】
物体を露光する露光装置であって、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の表示装置を備える露光装置。
【請求項10】
物体を露光する露光方法であって、
請求項
8に記載の表示方法を含む露光方法。
【請求項11】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の表示装置と、前記露光装置とを備える露光システム。
【請求項12】
請求項
10に記載の露光方法を用いて前記物体を露光し、当該物体にパターンを転写し、
露光された前記物体を現像して、前記パターンに対応する露光パターン層を形成し、
前記露光パターン層を介して前記物体を加工するデバイス製造方法。
【請求項13】
請求項
8に記載の表示方法を、コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
露光装置の性能を評価する評価装置及び評価方法、露光装置の性能に関連する表示を行う表示装置及び表示方法、この評価装置若しくは表示装置を備える露光装置、この評価方法若しくは表示方法を含む露光方法、この評価装置若しくは表示装置を備える露光システム、この露光方法を用いるデバイス製造方法、並びに、コンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路等のデバイスを製造するために、露光装置が用いられる。特許文献1には、露光装置の異常を検出するための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
評価装置の第1の態様は、露光装置の性能を評価する評価装置であって、それぞれが露光装置の動作状態を示す複数の項目のそれぞれの変数が入力される入力部と、前記動作状態が第1状態にあるときの前記複数の項目の各変数及び前記動作状態が前記第1状態とは異なる第2状態にあるときの前記複数の項目の各変数から求まる第1変化量と、該第1変化量に応じた前記露光装置の性能の変化量との間の関係を表す第1関係が記憶されたメモリと、前記入力部と接続され、前記動作状態が前記第1及び第2状態と異なる第3状態にあるときの前記複数の項目の各変数と、前記メモリ内の前記第1関係とを用いて、前記露光装置の性能を表す指標値を求めるコントローラとを備える。
【0005】
表示装置の第1の態様は、露光装置の性能に関する情報を表示する表示装置であって、上述した本発明の評価装置の第1の態様と、前記露光装置の性能に対する影響を表す表示形態で、前記指標値を表示する表示部とを備える。
【0006】
評価方法の第1の態様は、露光装置の性能を評価する評価方法であって、それぞれが前記露光装置の動作状態を示す複数の項目のそれぞれの変数が入力されることと、前記動作状態が第1状態にあるときの前記複数の項目の各変数及び前記動作状態が前記第1状態とは異なる第2状態にあるときの前記複数の項目の各変数から求まる第1変化量と該第1変化量に応じた前記露光装置の性能の変化量との間の関係を表す第1関係と、前記動作状態が前記第1及び第2状態と異なる第3状態であるときの前記複数の項目の各変数とを用いて、前記露光装置の性能を表す指標値を求めることとを含む。
【0007】
表示方法の第1の態様は、露光装置の性能に関する情報を表示する表示方法であって、上述した評価方法の第1の態様と、前記露光装置の性能に対する影響を表す表示形態で、前記指標値を表示することとを含む。
【0008】
露光装置の第1の態様は、物体を露光する露光装置であって、上述した評価装置の第1の態様を備える。
【0009】
露光装置の第2の態様は、物体を露光する露光装置であって、上述した表示装置の第1の態様を備える。
【0010】
露光方法の第1の態様は、物体を露光する露光方法であって、上述した評価方法の第1の態様を備える。
【0011】
露光方法の第2の態様は、物体を露光する露光方法であって、上述した表示方法の第1の態様を備える。
【0012】
露光システムの第1の態様は、上述した評価装置の第1の態様と、前記露光装置とを備える。
【0013】
露光システムの第2の態様は、上述した表示装置の第1の態様と、前記露光装置とを備える。
【0014】
デバイス製造方法の第1の態様は、上述した露光方法の第1又は第2の態様を用いて前記物体を露光し、当該物体にパターンを転写し、露光された前記物体を現像して、前記パターンに対応する露光パターン層を形成し、前記露光パターン層を介して前記物体を加工する。
【0015】
コンピュータプログラムの第1の態様は、上述した評価装置又は表示装置が備えるコントローラによる処理を、コンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態の露光システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の露光装置の構成の一例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の評価装置の構成の一例を示す構成図である。
【
図4】
図4は、評価装置が行う評価動作(つまり、露光装置の性能を評価する動作)の全体の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、相関構造の第1の推定動作の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、相関構造の表示形態の基本を示す平面図である。
【
図7】
図7は、相関構造の表示形態の第1具体例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、相関構造の表示形態の第2具体例を示す平面図である。
【
図9】
図9(a)から
図9(d)は、夫々、相関構造の表示例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、相関構造の第2の推定動作の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、相関構造の第3の推定動作の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、精度行列中の要素の分類を示す行列である。
【
図14】
図14は、スコアと性能との間の対応関係を示すデータベースの一例である。
【
図16】
図16は、重み付け処理が行われる前のスコアSC、重み付け処理を行うための重み付け係数及び重み付け処理が行われる前のスコアSCを示すグラフである。
【
図17】
図17は、第2変形例でのログデータの一例を示す行列である。
【
図18】
図18は、デバイス製造方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
(1)露光システムSYSの構成
はじめに、
図1から
図3を参照しながら、本実施形態の露光システムSYSの構成について説明する。以下では、説明の便宜上、露光システムSYSの構成について説明した後に、露光システムSYSが備える露光装置1及び評価装置2の夫々の構成について順に説明する。
(1-1)露光システムSYSの構成
図1を参照しながら、本実施形態の露光システムSYSの構成について説明する。
図1は、本実施形態の露光システムSYSの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、露光システムSYSは、有線又は無線の通信インタフェース3を介して接続された露光装置1と評価装置2とを備えている。露光装置1及び評価装置2は、同一工場内に設置されている。但し、露光装置1が工場内に設置される一方で、評価装置2が工場外に設置されていてもよい。例えば、評価装置2は、露光装置の製造メーカに設置されていてもよい。また、評価装置2は複数であってもよい。複数の評価装置2のうちの少なくとも1つを工場内に設置し、少なくとも1つを工場外に設置してもよい。
【0019】
露光装置1は、物体を露光する。以下では、説明の便宜上、物体は、レジストが塗布された半導体基板等の基板141(
図2参照)であるものとする。この場合、露光装置1は、基板141を露光することで、基板141にデバイスパターン(例えば、半導体素子パターン)を転写する。つまり、露光装置1は、半導体素子等のデバイスを製造するための露光装置であるものとする。但し、後述するように、露光装置1は、任意の物体を露光する又は任意の物体に光を照射する任意の露光装置であってもよい。
【0020】
評価装置2は、露光装置1の性能を評価する。例えば、評価装置2は、露光装置1の現在の性能の良否を判定する。例えば、評価装置2は、露光装置1の将来の性能の良否を予測する。評価対象となる性能は、露光装置1によるデバイスの製造に関連する性能(いわゆる、生産性)を含んでいてもよい。評価対象となる性能は、生産性の安定的な維持に関連する性能を含んでいてもよい。このような性能の一例として、露光装置1の全体としてのパフォーマンス(例えば、スループット及び歩留まり等)や、露光装置1の全体としての精度(例えば、重ね合わせ精度、同期精度及び線幅精度等)や、露光装置1を構成する各構成要素の性能(例えば、精度)があげられる。
【0021】
露光装置1の性能は、露光装置1に発生する異常に依存して変動する。従って、評価装置2が行う「露光装置1の性能の評価」は、「露光装置1に実際に発生している異常の検出」を含んでいてもよい。評価装置2が行う「露光装置1の性能の評価」は、「露光装置1において将来発生する可能性のある異常の予測」を含んでいてもよい。
【0022】
露光装置1及び評価装置2は、有線又は無線のネットワーク4を介して、工場の外部に設置される外部のホストコンピュータ5と接続されている。ホストコンピュータ5は、例えば、ある単一の工場に設置されている複数の露光装置1及び複数の評価装置2を制御する。或いは、ホストコンピュータ5は、例えば、複数の工場に設置されている複数の露光装置1及び複数の評価装置2を制御する。
【0023】
評価装置2は、有線又は無線のネットワーク6を介して、工場の外部に設置される管理装置7に接続されている。管理装置7は、例えば、評価装置2による評価結果を管理する。
(1-2)露光装置1の構成
続いて、
図2を参照しながら、本実施形態の露光装置1の構成の一例について説明する。
図2は、本実施形態の露光装置1の構成の一例を示す構成図である。
【0024】
尚、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、露光装置1を構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。
【0025】
図2に示すように、露光装置1は、マスクステージ11と、照明系12と、投影光学系13と、基板ステージ14と、複数のセンサ15と、制御装置16とを備えている。
【0026】
マスクステージ11は、基板141に転写されるデバイスパターンが形成されたマスク111を保持可能である。マスクステージ11は、マスク111を保持した状態で、照明系12から射出される露光光ELが照射される照明領域を含む平面(例えば、XY平面)に沿って移動可能である。例えば、マスクステージ11は、モータを含む駆動システム112の動作により移動する。マスクステージ11は、駆動システム112の動作により、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向、並びに、θX方向、θY方向及びθZ方向のうちの少なくとも一つに沿って移動可能である。
【0027】
照明系12は、露光光ELを射出する。露光光ELは、例えば、水銀ランプから射出される輝線(例えば、g線、h線若しくはi線等)であってもよい。露光光ELは、例えば、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光:Deep Ultra Violet光)であってもよい。露光光ELは、例えば、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)又はF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光:Vacuum Ultra Violet光)であってもよい。照明系12が射出した露光光ELは、マスク111の一部に照射される。
【0028】
投影光学系13は、マスク111を透過した露光光ELを、基板141に投影して、マスク111に形成されたデバイスパターンの像を基板141上に形成する。
【0029】
基板ステージ14は、基板141を保持する。基板ステージ14は、基板141を保持した状態で、投影光学系13によって露光光ELが投影される投影領域を含む平面(例えば、XY平面)に沿って移動可能である。例えば、基板ステージ14は、モータを含む駆動システム142の動作により移動する。基板ステージ14は、駆動システム142の動作により、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向、並びに、θX方向、θY方向及びθZ方向のうちの少なくとも一つに沿って移動可能である。なお、基板ステージ14は、基板141の保持を解除してもよい。
【0030】
複数のセンサ15の夫々は、夫々のセンサ15に対応する検出対象物の状態(動作状態)を検出する。複数のセンサ15の夫々は、検出結果を制御装置16に対して出力する。
【0031】
検出対象物は、露光装置1の各動作ブロック(例えば、マスクステージ11、マスク111、駆動システム112、照明系12、投影光学系13、基板ステージ14、基板141及び駆動システム142のうちの少なくとも一つ)を含んでいてもよい。つまり、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、各動作ブロックの状態を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、各動作ブロックの温度を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、各動作ブロックの位置(例えば、X軸方向の位置、Y軸方向の位置、Z軸方向の位置、θX方向の位置、θY方向の位置及びθZ方向の位置のうちの少なくとも一つ)を検出してもよい。
【0032】
検出対象物は、露光装置1内の任意の空間(例えば、マスク111と照明系12との間の空間、マスク111と投影光学系13との間の空間、投影光学系13と基板141との間の空間、マスク111が配置される空間及び基板141が配置される空間等のうちの少なくとも一つ)を含んでいてもよい。つまり、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、露光装置1内の任意の空間の状態を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、任意の空間の温度を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、任意の空間の湿度を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、任意の空間の圧力(言い換えれば、気圧)を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、任意の空間のクリーン度を検出してもよい。
【0033】
検出対象物は、露光光ELを含んでいてもよい。つまり、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、露光光ELの状態を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、露光光ELの強度を検出してもよい。
【0034】
制御装置16は、露光装置1全体の動作を制御する。制御装置16は、露光装置1が備える各動作ブロックを動作させるための制御コマンドを、各動作ブロックに対して出力する。各動作ブロックは、制御コマンドに従って動作する。
【0035】
例えば、制御装置16は、上述したマスクステージ11を第1方向に向かって第1時間以内に第1移動量だけ移動させる制御コマンドを、駆動システム112に対して出力してもよい。つまり、制御装置16は、「第1方向」、「第1時間」及び「第1移動量」という制御パラメータ(制御目標値)を含む制御コマンドを、駆動システム112に対して出力してもよい。この場合、マスクステージ11は、駆動システム112の動作により、第1方向に向かって第1時間以内に第1移動量だけ移動する。
【0036】
例えば、制御装置16は、上述した照明系12に第2強度の露光光ELを第2時間に渡って射出させる制御コマンドを、照明系12に対して出力してもよい。つまり、制御装置16は、「第2強度」及び「第2時間」という制御パラメータを含む制御コマンドを、照明系12に対して出力してもよい。この場合、照明系12は、第2強度の露光光ELを第2時間に渡って射出する。
【0037】
例えば、制御装置16は、上述した基板ステージ14を第3方向に向かって第3時間以内に第3移動量だけ移動させる制御コマンドを、駆動システム142に対して出力してもよい。つまり、制御装置16は、「第3方向」、「第3時間」及び「第3移動量」という制御パラメータを含む制御コマンドを、駆動システム142に対して出力してもよい。この場合、基板ステージ14は、駆動システム142の動作により、第3方向に向かって第3時間以内に第3移動量だけ移動する。
【0038】
なお、制御コマンドは、時刻及び速度という制御パラメータを含んでいてもよい。
【0039】
制御装置16は、評価装置2に対して、露光装置1の性能を評価するために評価装置2によって使用されるログデータを送信する。ここで、ログデータとは、コンピュータや通信機器が一定の処理を実行したこと(または実行できなかったこと)を記録したデータを指してもよい。例えば、制御装置16は、ログデータの少なくとも一部として、複数のセンサ15の検出結果を評価装置2に対して送信してもよい。例えば、制御装置16は、ログデータの少なくとも一部として、制御コマンドを評価装置2に対して送信してもよい。例えば、制御装置16は、ログデータの少なくとも一部として、露光装置1が複数のセンサ15の検出結果を解析する又は制御コマンドを生成する過程において露光装置1内で生成される中間データ等のその他のデータを評価装置2に対して送信してもよい。
【0040】
尚、露光装置1は、上述した動作ブロックとは異なるその他の動作ブロックを更に備えていてもよい。この場合、制御装置16は、その他の動作ブロックを動作させるための制御コマンドを、その他の動作ブロックに対して出力してもよい。更に、露光装置1が上述した動作ブロックとは異なるその他の動作ブロックを更に備えている場合には、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、その他の動作ブロックの状態を検出してもよい。
【0041】
例えば、露光装置1が液浸露光装置である場合には、露光装置1は、その他の動作ブロックとして、液浸部材を介して液浸空間に液体を供給する液体供給装置を更に備えていてもよい。この場合、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、液体供給装置の状態(特に、液体供給装置が液浸空間に供給する液体の状態)を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、液体供給装置の状態として、液体供給装置が供給する液体の温度、純度、圧力及び供給量並びに液体に溶存する物体(酸素、二酸化炭素等)のうちの少なくとも一つを検出してもよい。
【0042】
例えば、露光装置1が液浸露光装置である場合には、露光装置1は、その他の動作ブロックとして、液浸部材を介して液浸空間から液体を回収する液体回収装置を更に備えていてもよい。この場合、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、液体回収装置の状態(特に、液体回収装置が液浸空間から回収する液体の状態)を検出してもよい。例えば、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、液体回収装置が回収する液体の温度、純度及び回収量のうちの少なくとも一つを検出してもよい。
【0043】
例えば、露光装置1は、その他の動作ブロックとして、計測器を備える計測ステージを更に備えていてもよい。複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、計測機のセンサであってもよい。この場合、複数のセンサ15のうちの少なくとも一部は、計測ステージの状態(例えば、上述した温度及び位置等のうちの少なくとも一方)を検出してもよい。
(1-3)評価装置2の構成
続いて、
図3を参照しながら、本実施形態の評価装置2の構成の一例について説明する。
図3は、本実施形態の評価装置2の構成の一例を示す構成図である。
【0044】
図3に示すように、評価装置2は、CPU(Central Processing Unit)21と、メモリ22と、入力部23と、操作機器24と、表示機器25とを備える。
【0045】
CPU21は、評価装置2の動作を制御する。CPU21は、後に詳述するように、露光装置1の性能を評価するための評価動作を行う。
【0046】
メモリ22は、評価動作をCPU21に行わせるためのコンピュータプログラムを格納する。メモリ22は、更に、CPU21が評価動作を行っている間に生成される一時データを一時的に格納する。
【0047】
入力部23には、露光装置1から、CPU21が評価動作を行うために用いられるログデータが入力される。ログデータは、露光装置1(特に、制御装置16)が評価装置2に送信する一群のデータである。例えば、ログデータは、複数のセンサ15の検出結果、制御コマンド及び中間データ等のうちの少なくとも一つを含む。
【0048】
複数のセンサ15の検出結果が検出対象物(例えば、露光装置1の各動作ブロックや露光装置1内の空間)の状態を示すことは上述したとおりである。検出対象物が露光装置1に関連することを考慮すれば、検出対象物の状態は、露光装置1の動作状態を示していると言える。また、制御コマンドは、露光装置1の各動作ブロックの動作を規定しているがゆえに、露光装置1の動作状態を示しているとも言える。中間データもまた、検出結果又は制御コマンドに関連するデータであるがゆえに、露光装置1の動作状態を示しているとも言える。従って、ログデータは、露光装置1の動作状態を示す一群のデータである。つまり、ログデータは、夫々が露光装置1の動作状態を示す複数種類の変数(つまり、夫々が露光装置1の動作状態を示す複数種類の状態の項目に関する変数)の集合に相当する。このため、ログデータは、“あるセンサ15の検出結果”という状態の項目の変数の集合を、センサ15の数だけ含んでいてもよい。ログデータは、“ある制御コマンドの内容”という状態の項目を示す変数の集合を、制御コマンドの種類の数だけ含んでいてもよい。ログデータは、“ある中間データ等の内容”という状態の項目を示す変数の集合を、中間データ等の種類の数だけ含んでいてもよい。
【0049】
操作機器24は、評価装置2に対するユーザの操作を受け付ける。操作機器24は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルの少なくとも一つを含んでいてもよい。CPU21は、操作機器24が受け付けたユーザの操作に基づいて、上述した評価動作を行ってもよい。但し、評価装置2は、操作機器24を備えていなくてもよい。
【0050】
表示機器25は、所望の情報を表示可能である。例えば、表示機器25は、評価装置2の状態を示す情報を表示してもよい。例えば、表示機器25は、評価動作に関連する任意の情報を表示してもよい。例えば、表示機器25は、評価装置2による評価結果を表示してもよい。但し、評価装置2は、表示機器25を備えていなくてもよい。
【0051】
本実施形態では、評価装置2は、入力部23が取得したログデータを構成する複数の状態の項目の変数の間の関係の変化に基づいて、露光装置1の性能を評価する。ログデータを構成する複数の状態の項目の変数の間の関係は相関(相関構造)であってもよい。評価対象となる性能は、ログデータそのものから評価することが困難又は不可能である一方で、ログデータの相関構造の変化から評価可能な性能を含んでいてもよい。上述した重ね合わせ精度、同期精度(例えば、マスクステージ11の移動態様と基板ステージ14の移動態様との間の同期精度、及び、マスクステージ11又は基板ステージ14のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に沿った移動態様の同期精度等)、及び、線幅精度等は、ログデータそのものから評価することが困難又は不可能である一方でログデータの相関構造の変化から評価可能な性能の一例である。但し、評価対象となる性能は、ログデータそのものから評価することが可能な性能を含んでいてもよい。
【0052】
尚、入力部23には、複数のセンサ15の検出結果、制御コマンド及び中間データ等のうちの少なくとも一つに加えて又は代えて、露光装置1の動作状態を示す任意のデータが、ログデータの少なくとも一部として(つまり、変数として)入力されてもよい。
【0053】
また、評価装置2は、露光装置1が備える制御装置16の一部を構成する装置であってもよい。つまり、評価装置2は、露光装置1の一部を構成する装置であってもよい。或いは、評価装置2は、露光装置1が備える制御装置16(或いは、露光装置1そのもの)とは物理的に又は機能的に分離した装置であってもよい。
【0054】
(2)評価装置2による評価動作
続いて、
図4から
図15を参照しながら、評価装置2が行う評価動作(つまり、露光装置1の性能を評価する動作)について説明する。以下では、説明の便宜上、評価動作の全体の流れについて説明した後に、評価動作を構成する各工程について順に説明する。
【0055】
(2-1)評価装置2による評価動作の全体の流れ
はじめに、
図4を参照しながら、評価装置2が行う評価動作の全体の流れについて説明する。
図4は、評価装置2が行う評価動作(つまり、露光装置1の性能を評価する動作)の全体の流れを示すフローチャートである。
【0056】
図4に示すように、入力部23には、露光装置1から、夫々が露光装置1の動作状態を示す複数種類の変数の集合であるログデータが入力される(ステップS1)。入力部23に入力されたログデータは、メモリ22に格納される。
【0057】
ログデータは、あるセンサ15の検出結果の配列(例えば、時系列に沿った配列)である第1データセットを含んでいてもよい。この場合、ログデータは、各センサ15に対応する第1データセットを含む。つまり、ログデータは、第1データセットを、センサ15の数だけ含む。例えば、マスク111の温度を検出する温度センサと基板141の温度を検出する温度センサとを露光装置1が備えている場合には、ログデータは、マスク111の温度を示す変数(つまり、マスク111の温度という状態の項目の変数)の配列である第1データセットと、基板141の温度を示す変数(つまり、基板141の温度という状態の項目の変数)の配列である第1データセットとを含む。
【0058】
ログデータは、ある制御コマンド(或いは、制御コマンドが含む制御パラメータ)を示す変数の配列である第2データセットを含んでいてもよい。この場合、ログデータは、各制御コマンド(或いは、各制御パラメータ)に対応する第2データセットを含む。つまり、ログデータは、第2データセットを、制御コマンド(或いは、制御パラメータ)の種類の数だけ含む。例えば、マスクステージ11を移動させるための第1制御コマンドと基板ステージ14移動させるための第2制御コマンドとを露光装置1が生成する場合には、ログデータは、第1制御コマンドを示す変数(つまり、第1制御コマンドという状態の項目の変数)の配列である第2データセットと、第2制御コマンドを示す変数(つまり、第2制御コマンドという状態の項目の変数)の配列である第2データセットとを含む。
【0059】
ログデータは、その他の任意のデータを示す変数を時系列に沿って並べることで得られる第3データセットを含んでいてもよい。この場合、ログデータは、各任意のデータに対応する第3データセットを含む。つまり、ログデータは、第3データセットを、その他の任意のデータの種類の数だけ含む。
【0060】
このため、ログデータは、数式1に示すように、変数xの行列として表現可能である。
【0061】
【0062】
数式1において、「d」は、ログデータを構成する変数xの種類の総数(つまり、状態の項目Iの総数)を意味する。従って、「xk1(但し、k1は、1以上且つd以下の整数)」は、ある状態の項目Ik1の変数xに相当する。つまり、各列の変数xk1の集合(xk1
(1)、xk1
(2)、・・・、xk1
(N))は、ある種類の変数xk1(つまり、ある状態の項目Ik1の変数xk1)の集合に相当する。例えば、「x1」は、第1センサ15の検出結果を示す変数xであり、「x2」は、第2センサ15の検出結果を示す変数xであり、「x3」は、第1制御コマンドを示す変数xであり、「x4」は、第1中間データを示す変数xの集合であってもよい。
【0063】
一方で、数式1において、「N」は、ログデータに含まれるある状態の項目Iの変数xのサンプル数を意味する。例えば、「x(k2)(但し、k2は、1以上且つN以下の整数)は、時刻k2時点での変数を意味する。例えば、「x1
(1)」は、第1時刻における第1センサ15の検出結果を示す変数であり、「x1
(2)」は、第2時刻における第1センサ15の検出結果を示す変数であり、「x1
(3)」は、第3時刻における第1センサ15の検出結果を示す変数であってもよい。
【0064】
その後、CPU21は、ステップS1で入力されたログデータを構成する複数の状態の項目Iの変数xの間の相関構造Rを推定する(ステップS2)。「相関構造R」は、ある状態の項目Iの変数xとその他の状態の項目Iの変数xとの間の相関(典型的には、相関係数)を、全ての状態の項目Iの変数xを対象に算出することで得られる。このため、相関構造Rは、数式2に示すように、相関係数rの行列として表現可能である。尚、数式2において、「rij」は、状態の項目Iiの変数xi(但し、iは、1以上且つd以下の整数)と状態の項目Ijの変数xj(但し、jは、1以上且つd以下の整数)との間の相関係数を示す。
【0065】
【0066】
本実施形態では特に、CPU21は、有意な相関係数(つまり、何らかの相関があることを示す相関係数であって、ゼロでない相関係数)rの数が所定量以下となる相関構造Rを推定する。言い換えれば、CPU21は、有意でない相関係数(つまり、相関がないことを示す相関係数であって、ゼロとなる相関係数)rの数が所定量より多くなる相関構造Rを推定する。つまり、CPU21は、スパースな相関構造Rを推定する。尚、スパースな相関構造Rを推定する動作の詳細については、
図5から
図12を参照しながら、後に詳述する。
【0067】
続いて、CPU21は、ステップS2で推定した相関構造Rの変化V(以降、適宜“相関変化V”と称する)を検出する(ステップS3)。「相関変化V」は、第1の相関構造Rに含まれるある相関係数rと第2の相関構造Rに含まれる同一種類の相関係数rとの間の変化量(つまり、差分)vを、全ての相関係数rを対象に算出することで得られる。このため、相関変化Vは、数式3に示すように、相関係数rの変化量vの行列として表現可能である。尚、数式3において、「vij」は、第1の相関構造Rに含まれる相関係数rijと第2の相関構造Rに含まれる相関係数rijとの間の変化量を示す。
【0068】
【0069】
本実施形態では、相関変化Vを検出するために、CPU21は、相関構造Rを2回以上推定する。相関構造Rを2回以上推定するために、入力部23には、2つ以上のログデータが入力される。典型的には、入力部23には、ログデータが逐次入力される。CPU21は、入力部23にログデータが入力される都度、入力されたログデータの相関構造Rを推定する。その結果、CPU21は、入力部23にログデータが入力された回数分の相関構造Rを推定する。
【0070】
例えば、入力部23には、第1の基板141を露光している第1期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xから構成される第1のログデータが入力され、その後、第2の基板141を露光している第2期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xから構成される第2のログデータが入力されてもよい。つまり、入力部23には、露光対象となる基板141が変わる都度、ログデータが新たに入力されてもよい。或いは、例えば、入力部23には、基板141上の第1のショット領域を露光している第3期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xから構成される第3のログデータが入力され、その後、基板141上の第2のショット領域を露光している第4期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xから構成される第4のログデータが入力されてもよい。つまり、入力部23には、露光対象となるショット領域が変わる都度、ログデータが新たに入力されてもよい。或いは、入力部23には、任意の第5期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xから構成される第5のログデータが入力され、その後、任意の第6期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xから構成される第6のログデータが入力されてもよい。例えば、入力部23には、基板141上の1つのショット領域を露光している期間中の第1時刻における露光装置1の動作状態を示す変数xから構成されるログデータが入力され、基板141上の1つのショット領域を露光している期間中の第2時刻における露光装置1の動作状態を示す変数xから構成されるログデータが入力されてもよい。
【0071】
その後、CPU21は、ステップS3で検出した相関変化Vに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定(或いは、予測、以下同じ)する(ステップS4)。本実施形態では、CPU21は、相関変化Vを構成する各変化量vに応じたスコアSCを算出する。CPU21は、スコアSCに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定する。
【0072】
その後、表示機器25は、必要に応じて、ステップS4における露光装置1の性能の良否の判定結果(予測結果)を表示する(ステップS5)。尚、判定結果を表示する動作の詳細については、
図15を参照しながら、後に詳述する。
【0073】
(2-2)相関構造Rの推定動作
続いて、
図5から
図11を参照しながら、評価装置2が行う評価動作のうち「相関構造Rの推定動作(
図4のステップS2)」について説明する。尚、本実施形態では、評価装置2は、相関構造Rの推定動作として、第1の推定動作、第2の推定動作又は第3の推定動作を実行する。以下、第1から第3の推定動作について順に説明する。
【0074】
また、以下に説明する推定動作では、CPU21は、スパース構造学習法を用いて、スパースな相関構造Rを推定するものとする。更に、以下に説明する推定動作では、スパース構造学習法を実現するためのアルゴリズムとして、Graphical Lasso(グラフィカルラッソ)というアルゴリズムが採用されるものとする。
【0075】
但し、スパース構造学習法を実現するためのアルゴリズムとして、その他のアルゴリズム(例えば、Cluster Graphical Lasso:クラスタグラフィカルラッソ等)が採用されてもよい。更に、CPU21は、スパース構造学習法とは異なる手法を用いて、スパースな相関構造Rを推定してもよい。
【0076】
(2-2-1)相関構造Rの第1の推定動作
はじめに、
図5を参照しながら、相関構造Rの第1の推定動作について説明する。
図5は、相関構造Rの第1の推定動作の流れを示すフローチャートである。
【0077】
図5に示すように、CPU21は、スパース構造学習法における正則化項を規定する正則化パラメータρを設定する(ステップS211)。ここでは、CPU21は、正則化パラメータρを、任意の値又は所望の値(例えば、デフォールトの値)に設定してもよい。或いは、CPU21は、正則化パラメータρを指定するユーザの指示に従って、正則化パラメータρを設定してもよい。
【0078】
尚、正則化パラメータρが大きくなるほど、相関構造Rに含まれる有意な相関係数rの数が減少する。言い換えれば、正則化パラメータρが大きくなるほど、相関構造Rに含まれる有意でない(つまり、ゼロとなる)相関係数rの数が増加する。つまり、正則化パラメータρが大きくなるほど、相関構造Rのスパース性が向上する(言い換えれば、相関構造Rの次元が低くなる)。
【0079】
その後、CPU21は、
図4のステップS1で取得したログデータに対して、Graphical Lassoを採用したスパース構造学習法に基づく演算処理を施す(ステップS212)。
【0080】
Graphical Lassoを採用したスパース構造学習法に基づく演算処理は、ログデータを用いて数式4を満たす精度行列Λを特定する演算処理である。つまり、CPU21は、ログデータに対してスパース構造学習法に基づく演算処理を施すことで、精度行列Λを特定する(ステップS213)。尚、数式4において、「S」は、ログデータの分散共分散行列(標本共分散行列)を示す。分散共分散行列Sは、精度行列Λの逆行列に相当する。分散共分散行列Sの第i行第j列の要素Sijは、数式5により特定可能である。数式4において、「tr(SΛ)」は、行列SΛの対角和を示す関数である。数式5において、「ui」及び「uj」は、夫々、数式6及び7により特定可能である。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
その後、CPU21は、数式8を用いて、ステップS213で特定した精度行列Λを規格化(言い換えれば、標準化又は正規化)する(ステップS214)。その結果、CPU21は、ログデータの偏相関行列を生成することができる(ステップS214)。この偏相関行列は、相関構造Rに相当する。尚、規格化は、数式8を用いて行われる。数式8中において、規格化する前の精度行列Λの第i行第j列の要素とΛijとする。
【0086】
【0087】
その後、CPU21は、必要に応じて、ステップS214で算出した相関構造Rを所望の表示形態で表示するように、表示機器25を制御する(ステップS215)。その結果、表示機器25は、ステップS214で算出した相関構造Rを所望の表示形態で表示する。
【0088】
ここで、
図6から
図8を参照しながら、相関構造Rの表示形態について説明する。
図6は、相関構造Rの表示形態の基本を示す平面図である。
図7は、相関構造Rの表示形態の第1具体例を示す平面図である。
図8は、相関構造Rの表示形態の第2具体例を示す平面図である。
【0089】
図6に示すように、表示機器25は、ノードn及びエッジeという表示対象物を表示することで、相関構造Rを表示する。
【0090】
ノードnは、ある状態の項目Iに対応する表示対象物である。従って、表示機器25が表示するノードの数は、状態の項目Iの数(つまり、変数xの種類の数)と一致する。
図6は、状態の項目I
1に対応するノードn
1、状態の項目I
2に対応するノードn
2、状態の項目I
3に対応するノードn
3、状態の項目I
4に対応するノードn
4、状態の項目I
5に対応するノードn
5、状態の項目I
6に対応するノードn
6、状態の項目I
7に対応するノードn
7、状態の項目I
8に対応するノードn
8、・・・、及び、状態の項目I
dに対応するノードn
dが表示される例を示している。
【0091】
エッジeは、2つのノードnを関連付ける(言い換えれば、結ぶ又は連結する)表示対象物である。特に、エッジeは、2つのノードnに対応する2つの状態の項目Iの間の相関係数r(つまり、一方の状態の項目Iの変数xと他方の状態の項目Iの変数xとの間の相関係数r)に応じた表示形態で2つのノードnを関連付ける表示対象物である。
図6は、エッジeが2つのノードnを関連付ける線状の表示対象物である例を示している。
【0092】
相関係数rに応じたエッジeの表示形態の一例として、相関係数rがゼロとなる2つの状態の項目Iに対応する2つのノードnを関連付けるエッジeが表示されない一方で、相関係数rがゼロとならない2つの状態の項目Iに対応する2つのノードnを関連付けるエッジeが表示される表示形態があげられる。例えば、
図6は、ノードn
1とノードn
4とを関連付けるエッジe
14、ノードn
1とノードn
6とを関連付けるエッジe
16、ノードn
1とノードn
7とを関連付けるエッジe
17、ノードn
4とノードn
5とを関連付けるエッジe
45及びノードn
6とノードn
dとを関連付けるエッジe
6dが表示される例を示す。この場合、相関係数r
14、相関係数r
16、相関係数r
17、相関係数r
45及び相関係数r
6dがゼロでない一方で、その他の相関係数rはゼロになっている。
【0093】
相関係数rに応じたエッジeの表示形態の一例として、2つのノードnを関連付けるエッジeの外観を2つのノードnに対応する2つの状態の項目Iの間の相関係数rに応じて変えるという表示形態があげられる。例えば、相関係数rの絶対値の大きさに応じてエッジeの外観が変わるように、エッジeが表示されてもよい。具体的には、例えば、相関係数rの絶対値が大きくなるほどエッジeが太くなる又は濃くなるように、エッジeが表示されてもよい。例えば、相関係数rの符号に応じてエッジeの外観が変わるように、エッジeが表示されてもよい。具体的には、例えば、相関係数rがマイナスとなる場合のエッジeの外観と、相関係数rがプラスとなる場合のエッジeの外観とが異なるように、エッジeが表示されてもよい。また、相関係数rの大きさに応じてエッジeの色が変わるように、エッジeが表示されてもよい。
【0094】
本実施形態では、表示機器25は、相関構造Rと露光装置1とを対応付ける(言い換えれば、関連付けられる)表示形態で、相関構造Rを表示してもよい。
【0095】
相関構造Rと露光装置1とを対応付ける表示形態の一例として、相関構造Rを、露光装置1を構成する複数の動作ブロックを所定の基準で分類することで得られる複数のグループに対応付ける表示形態があげられる。尚、動作ブロックとは、独立の機能を有し、交換又は着脱が可能で、より大きなシステムに構成されるものであってもよい。
【0096】
具体的には、相関構造Rがノードn及びエッジeを用いて表示されることは上述したとおりである。ノードnは、ある状態の項目Iに1対1で対応する。ある状態の項目Iは、露光装置1のある動作ブロックの状態を示すことから、当該ある動作ブロックに関連すると言える。つまり、各ノードnは、露光装置1の対応する動作ブロックに関連する。この表示形態では、所定の基準に従えば同一のグループに属する動作ブロックに関連するノードnは、一群のノード群として、互いに近接するように(言い換えれば、まとめて)表示される。尚、ノードnを、ある状態の項目Iに対して、1対N、或いはM対1(NおよびMは任意の数)で対応させてもよい。
【0097】
相関構造Rと露光装置1とを対応付ける表示形態の一例として、相関構造Rを、露光装置1内で物理的に、機能的に又は便宜的に区分可能な複数の空間を所定の基準で分類することで得られる複数のグループに対応付ける表示形態があげられる。具体的には、ある状態の項目Iは、露光装置1内のある空間の状態を示すことから、当該ある空間に関連すると言える。つまり、各ノードnは、露光装置1内のある空間に関連する。この表示形態では、所定の基準に従えば同一グループに属する空間に関連するノードnは、一群のノード群として、互いに近接するように(言い換えれば、まとめて)表示される。
【0098】
露光装置1を構成する複数の動作ブロック又は露光装置1内で区分可能な複数の空間を分類するために用いられる「所定の基準」は、例えば、露光装置1の特性(言い換えれば、仕様等)を考慮した基準である。
【0099】
露光装置1の特性は、露光装置1を構成する複数の動作ブロックの機能に依存する可能性がある。このため、「所定の基準」は、露光装置1を構成する複数の動作ブロックの機能を考慮した基準であってもよい。この場合、相関構造Rは、露光装置1を構成する複数の動作ブロックを当該複数の動作ブロックの機能の違いで分類することで得られる複数のグループに対応付けられるように表示される。具体的には、ある機能を実現するための動作ブロックに関連するノードnは、一群のノード群として、互いに近接するように(言い換えれば、まとめて)表示される。
【0100】
例えば、マスクステージ11は、第1の機能を実現するための動作ブロックであり、照明系12は、第2の機能を実現するための動作ブロックであり、投影光学系13は、第3の機能を実現するための動作ブロックであり、基板ステージ14及び基板141は、第4の機能を実現するための動作ブロックであり、駆動システム112及び142は、第5の機能を実現するための動作ブロックであると分類可能であるとする。この場合、マスクステージ11の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn及びマスク111の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。更に、照明系12の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。更に、投影光学系13の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。更に、基板ステージ14の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn及び基板141の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。更に、駆動システム112の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn及び駆動システム142の動作状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。
【0101】
その結果、
図7に示すように、複数の状態の項目Iに夫々対応する複数のノードnは、同一の機能に関連するノードnを含むノード群の単位で区別されるように表示される。尚、
図7は、機能F#1に関連する3つのノードnを含むノード群と、機能F#2に関連する1つのノードnを含むノード群と、機能F#3に関連する2つのノードnを含むノード群と、機能F#4に関連する5つのノードnを含むノード群と、機能F#5に関連する9つのノードnを含むノード群と、機能F#6に関連する3つのノードnを含むノード群と、機能F#7に関連する4つのノードnを含むノード群と、機能F#8に関連する1つのノードnを含むノード群とが表示される例を示している。
【0102】
同一の機能を実現するための複数の動作ブロックは、当該同一の機能を実現するために同じように動作する傾向が相対的に強い。従って、同一の機能を実現するための複数の動作ブロックの状態を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xは、正の相関を有する傾向が相対的に強い。更には、ある機能を実現するためのある動作ブロックに関連する複数の状態の項目Iの夫々の変数xは、同じ動作ブロックの状態を示すがゆえに、同じように変化する傾向が相対的に強い。従って、ある機能を実現するためのある動作ブロックに関連する複数の状態の項目Iの変数xもまた、正の相関を有する傾向が相対的に強い。このため、
図7に示すように、同一の機能に関連する複数のノードnを関連付けるエッジeは、相対的に多く表示される。
【0103】
一方で、夫々が異なる機能を実現するための複数の動作ブロックは、異なる機能を実現するがゆえに同じように動作する傾向が相対的に弱い。従って、ある機能を実現するための動作ブロックの状態を示す状態の項目Iの変数xと、他の機能を実現するための他の動作ブロックの状態を示す状態の項目Iの変数xとの間には、相関がない傾向が相対的に強い。このため、
図7に示すように、夫々が異なる機能に関連する複数のノードnを関連付けるエッジeは、それほど多くは表示されない。
【0104】
露光装置1の特性は、露光装置1を構成する複数の動作ブロックが配置される位置に依存する可能性がある。このため、「所定の基準」は、露光装置1を構成する複数の動作ブロックの配置を考慮した基準であってもよい。この場合、相関構造Rは、露光装置1を構成する複数の動作ブロックを当該複数の動作ブロックの配置の違いで分類することで得られる複数のグループに対応付けられるように表示される。具体的には、この表示形態では、同一の又は近接する位置に配置されている動作ブロックに関連するノードnは、一群のノード群として、互いに近接するように(言い換えれば、まとめて)表示される。
【0105】
例えば、マスクステージ11、マスク111、駆動システム112及び照明系12は、露光装置1内の上部領域に配置されており、投影光学系13は、露光装置1内の中部領域に配置されており、基板ステージ14、基板141及び駆動システム142は、露光装置1内の下部領域に配置されていると分類可能であるとする。この場合、マスクステージ11の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn、マスク111の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn、駆動システム112の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn及び照明系12の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。更に、投影光学系13の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。更に、基板ステージ14の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn、基板141の状態を示す状態の項目Iに対応するノードn及び駆動システム142の状態を示す状態の項目Iに対応するノードnが一群のノード群として表示される。
【0106】
その結果、
図8に示すように、複数の状態の項目Iに夫々対応する複数のノードnは、同一の又は近接する位置に関連するノードnを含むノード群の単位で区別されるように表示される。尚、
図8は、上部領域付近の位置P#1に関連する2つのノードnを含むノード群と、上部領域付近の位置P#2に関連する2つのノードnを含むノード群と、上部領域付近の位置P#3に関連する2つのノードnを含むノード群と、中部領域付近の位置P#4に関連する4つのノードnを含むノード群と、中部領域付近の位置P#5に関連する3つのノードnを含むノード群と、中部領域付近の位置P#6に関連する3つのノードnを含むノード群と、中部領域付近の位置P#7に関連する4つのノードnを含むノード群と、下部領域付近の位置P#8に関連する8つのノードnを含むノード群とが表示される例を示している。
【0107】
同一の又は近接する位置に配置される複数の動作ブロックの状態は、同じように変化する傾向が相対的に強い。従って、同一の又は近接する位置に配置される複数の動作ブロックに関連する複数の状態の項目Iの変数xは、正の相関を有する傾向が相対的に強い。更には、ある位置に配置されているある動作ブロックに関連する複数の状態の項目Iの変数xは、同じ動作ブロックの状態を示すがゆえに、同じように変化する傾向が相対的に強い。従って、ある位置に配置されているある動作ブロックに関連する複数の状態の項目Iの変数xもまた、正の相関を有する傾向が相対的に強い。このため、
図8に示すように、同一の又は近接する位置に配置されている動作ブロックに関連する複数のノードnを関連付けるエッジeは、相対的に多く表示される。
【0108】
一方で、互いに離れた位置に配置されている複数の動作ブロックの動作状態は、同じように変化する傾向が相対的に弱い。従って、ある位置に配置されている動作ブロックの状態を示す状態の項目Iの変数xと、ある位置から離れた他の位置に配置されている他の動作ブロックの状態を示す状態の項目Iの変数xとの間には、相関がない傾向が相対的に強い。このため、
図8に示すように、互いに離れた位置に配置されている複数のノードnを関連付けるエッジeは、それほど多くは表示されない。
【0109】
尚、露光装置1の特性は、露光装置1内の複数の空間の機能又は配置に依存する可能性もある。このため、「所定の基準」は、露光装置1内の複数の空間の機能又は空間の配置を考慮した基準であってもよい。この場合、相関構造Rは、露光装置1内の複数の空間を当該複数の空間の機能及び空間の配置のうちの少なくとも一方の違いで分類することで得られる複数のグループに対応付けられてもよい。
【0110】
或いは、露光装置1の特性は、露光装置1の複数の動作ブロック又は複数の空間のその他の特性(つまり、配置及び機能とは異なる特性)に依存する可能性もある。このため、「所定の基準」は、露光装置1の複数の構成要素又は複数の空間のその他の特性を考慮した基準であってもよい。この場合、相関構造Rは、露光装置1の複数の動作ブロック又は複数の空間を当該複数の動作ブロック又は当該複数の空間のその他の特性の違いで分類することで得られる複数のグループに対応付けられてもよい。
【0111】
このような表示形態によれば、表示機器25に表示された相関構造Rを視認するユーザは、相関を有するノードnを好適に且つ容易に認識することができる。つまり、ユーザは、どの状態の項目Iの変数xがどの状態の項目Iの変数xと相関を有しているか否かを、視覚的に容易に認識することができる。その結果、例えば、ユーザは、露光装置1のどの機能に又はどの配置(位置)に関連する動作ブロック又は空間の状態が同じように変化しているか否かを、視覚的に容易に認識することができる。
【0112】
例えば、
図9(a)は、露光装置1の下部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合の相関構造Rの表示例を示す。下部領域の動作ブロックの温度が増加した場合には、下部領域の複数の動作ブロックの温度が共に増加する一方で、上部領域に位置する動作ブロックの温度は増加しにくい。このため、下部領域に位置する複数の動作ブロックの間における温度の相関が正の相関となる(つまり、相関係数が+1又は+1に近い値を有する)。一方で、下部領域に位置する動作ブロックと上部領域に位置する動作ブロックとの間における温度の相関がなくなりやすい(つまり、相関係数がゼロ又はゼロに近い値を有しやすい)。このため、
図9(a)に示すように、下部領域に位置する複数の動作ブロックに関連する複数のノードnを関連付けるエッジeが相対的に多く表示される。一方で、
図9(a)に示すように、下部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnと上部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnとを関連付けるエッジeは、それほど多く表示されることはない。従って、ユーザは、
図9(a)に示す相関構造Rを視認することで、下部領域に位置する動作ブロックの状態(ここでは、温度)が同じように変化していることを容易に認識することができる。
【0113】
例えば、
図9(b)は、露光装置1の上部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合の相関構造Rの表示例を示す。この場合には、上部領域に位置する複数の動作ブロックに関連する複数のノードnを関連付けるエッジeが相対的に多く表示される。一方で、上部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnと下部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnとを関連付けるエッジeは、それほど多く表示されることはない。従って、ユーザは、
図9(b)に示す相関構造Rを視認することで、上部領域に位置する動作ブロックの状態(ここでは、温度)が同じように変化していることを容易に認識することができる。
【0114】
尚、
図9(c)は、正則化パラメータρが適切に設定されていない状況下で下部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合の相関構造Rの表示例を示す。ここで、正則化パラメータρが適切に設定されていない状況は、正則化パラメータρが所望値(例えば、
図9(a)に示す例で設定されている正則化パラメータρ)よりも小さな値に設定されている状況を想定する。正則化パラメータρが所望値よりも小さな値に設定されている場合には、正則化パラメータρが所望値に設定されている場合と比較して、相関構造Rに含まれる有意でない(つまり、ゼロでない)相関係数の数rが増加する。このため、
図9(c)に示すように、下部領域に位置する複数の動作ブロックに関連する複数のノードnを関連付けるエッジeのみならず、下部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnと上部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnとを関連付けるエッジeもまた、相応に多く表示される可能性がある。
【0115】
一方で、
図9(d)は、正則化パラメータρが適切に設定されていない状況下で上部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合の相関構造Rの表示例を示す。ここで、正則化パラメータρが適切に設定されていない状況は、正則化パラメータρが所望値(例えば、
図9(b)に示す例で設定されている正則化パラメータρよりも小さな値に設定されている状況を想定する。正則化パラメータρが所望値よりも小さな値に設定されている場合には、正則化パラメータρが所望値に設定されている場合と比較して、相関構造Rに含まれる有意でない(つまり、ゼロでない)相関係数の数rが増加する。このため、
図9(d)に示すように、上部領域に位置する複数の動作ブロックに関連する複数のノードnを関連付けるエッジeのみならず、上部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnと下部領域に位置する動作ブロックに関連するノードnとを関連付けるエッジeもまた、相応に多く表示される可能性がある。
【0116】
このように、正則化パラメータρが適切に設定されていない場合には、ユーザは、どの機能を実現するための又はどの位置に配置されている動作ブロック又は空間の状態が同じように変化するか否かを、視覚的に容易に認識することができない可能性がある。このため、CPU21は、相関構造Rを特定する際に、ユーザによる相関構造Rの視覚的な認識を容易にすることが可能な適切な正則化パラメータρを設定してもよい。尚、後述する第2及び第3の推定動作の夫々は、第1の推定動作に対して、適切な正則化パラメータρを設定するための動作を追加した動作例に相当する。
【0117】
(2-2-2)相関構造Rの第2の推定動作
続いて、
図10を参照しながら、相関構造Rの第2の推定動作について説明する。
図10は、相関構造Rの第2の推定動作の流れを示すフローチャートである。尚、第2の推定動作は、交差検証(クロスバリデーション:Cross Validation)の手法を用いて正則化パラメータρを決定するという点で、第1の推定動作と異なる。第2の推定動作のその他の動作は、第1の推定動作のその他の動作と同一であってもよい。このため、第1の推定動作によって行われる動作と同様の動作については、同一のステップ番号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0118】
図10に示すように、CPU21は、正則化パラメータρを設定する(ステップS211)。
【0119】
その後、CPU21は、
図4のステップS1で取得したログデータを、K(但し、Kは2以上の整数)個の分割データに分割する(ステップS222)。
【0120】
その後、CPU21は、K-1個の分割データを選択する。更に、CPU21は、選択したK-1個の分割データに対して、Graphical Lassoを採用したスパース構造学習法に基づく演算処理を施す(ステップS223)。その結果、CPU21は、精度行列Λを特定する。その後、CPU21は、選択しなかった残り1個の分割データを用いて、K-1個の分割データから特定された精度行列Λの尤度を算出する(ステップS224)。CPU21は、以上のステップS223及びステップS224の動作を、K個の分割データから選択可能なK-1個の分割データの全ての組み合わせを対象に行う(ステップS225)。このため、CPU21は、以上のステップS223及びステップS224の動作を、K回行うことになる(ステップS225)。その結果、CPU21は、K個の尤度を算出する。その後、CPU21は、K個の尤度の平均を算出する(ステップS226)。
【0121】
その後、CPU21は、尤度の平均を第1所定回数以上算出したか否かを判定する(ステップS227)。
【0122】
ステップS227の判定の結果、尤度の平均を第1所定回数以上算出していないと判定される場合には(ステップS227:No)、CPU21は、ステップS211からステップS226を再度行う。この際、CPU21は、正則化パラメータρを変更する。つまり、CPU21は、正則化パラメータρに、未だ設定していない値を設定する(ステップS211)。その後、CPU21は、変更後の正則化パラメータρを用いて、尤度の平均の算出を完了する。
【0123】
他方で、ステップS227の判定の結果、尤度の平均を第1所定回数以上算出していると判定される場合には(ステップS227:Yes)、CPU21は、尤度の平均が最も大きくなる状態を実現した正則化パラメータρを選択する(ステップS228)。その後、CPU21は、ステップS228で選択した正則化パラメータρを用いて、
図4のステップS1で取得したログデータに対して、Graphical Lassoを採用したスパース構造学習法に基づく演算処理を施す(ステップS229)。以降は、第2の推定動作においても、第1の推定動作と同様に、ステップS213からステップS215の動作が行われる。
【0124】
第2の推定動作によれば、CPU21は、交差検証の手法を用いて正則化パラメータρを適切な値に絞り込むことができる。従って、CPU21は、より好適に相関構造Rを推定することができる。なお、CPU21は、代替推定法やテストサンプル方を用いて正則化パラメータρを適切な値に絞り込んでもよい。
【0125】
(2-2-3)相関構造Rの第3の推定動作
続いて、
図11を参照しながら、相関構造Rの第3の推定動作について説明する。
図11は、相関構造Rの第3の推定動作の流れを示すフローチャートである。尚、第3の推定動作は、露光装置1の特性を考慮して正則化パラメータρを決定するという点で、第1の推定動作と異なる。第3の推定動作のその他の動作は、第1の推定動作のその他の動作と同一であってもよい。このため、第1の推定動作によって行われる動作と同様の動作については、同一のステップ番号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0126】
図11に示すように、CPU21は、正則化パラメータρを設定する(ステップS211)。
【0127】
その後、CPU21は、
図4のステップS1で取得したログデータに対して、Graphical Lassoを採用したスパース構造学習法に基づく演算処理を施す(ステップS223)。その結果、CPU21は、精度行列Λを特定する。
【0128】
その後、CPU21は、特定した精度行列Λに基づいて、エッジ密度Dを算出する(ステップS232)。
【0129】
ここで、エッジ密度Dについて説明する。上述したように、精度行列Λから相関構造Rが推定される。更に、上述したように、相関構造Rは、ノードn及びエッジeを用いて表示される。本実施形態の「エッジ密度D」は、相関構造Rを表示するために用いるエッジeの密度を意味する。但し、相関係数rがゼロとなる2つの状態の項目Iに対応する2つのノードnを関連付けるエッジeが表示されない一方で、相関係数rがゼロとならない2つの状態の項目Iに対応する2つのノードnを関連付けるエッジeが表示される表示形態が、エッジ密度Dを算出するための前提となる。このため、エッジ密度eは、実質的には、相関構造Rを構成する全ての要素に対して有意な(つまり、ゼロでない)相関係数rが占める割合を示すパラメータであるとも言える。
【0130】
更に、本実施形態の「エッジ密度D」は、単なるエッジeの密度ではなく、露光装置1の特性を考慮して算出されるエッジeの密度である。具体的には、上述したように、所定の基準(例えば、機能又は配置(位置)を考慮した基準)に従えば同一のグループに属する動作ブロック(或いは、空間)に関連するノードnは、一群のノード群として表示される。その結果、異なるノード群に夫々属する異なるノードnを関連付けるエッジeは、表示されない傾向が相対的に強い。つまり、異なるノード群に夫々属する異なるノードnを関連付けるエッジeの密度が相対的に小さくなる。一方で、同一のノード群に属する異なるノードnを関連付けるエッジeは、表示される傾向が相対的に強い。つまり、同一のノード群に属する異なるノードnを関連付けるエッジeの密度が相対的に大きくなる。このように、エッジ密度Dは、ノードnを分類するグループ(つまり、ノード群)と何らかの相関を有している。本実施形態の「エッジ密度D」は、ノードnを分類するグループ(つまり、ノード群)とエッジ密度Dとが何らかの相関を有していることを考慮した上で算出されるエッジeの密度である。言い換えれば、本実施形態の「エッジ密度D」は、露光装置の特性を考慮した所定の基準で露光装置1の動作ブロック(或いは、空間)を分類することで得られる複数のグループを考慮したエッジeの密度(言いかえれば、異なるグループ間のエッジeの密度)である。
【0131】
例えば、CPU21は、数式9を用いて、エッジ密度Dを算出することができる。尚、数式9における「Λ
ij」は、精度行列Λの第i行第j列の要素を示す。数式9における「sgn(Λ
ij)」は、Λ
ij>0である場合に+1となり、Λ
ij=0である場合に0となり、Λ
ij<0である場合に-1となる。数式9における「C
k」は、精度行列Λの要素のうち同じグループ(例えば、同じ機能又は同じ配置)に属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す一部の要素(つまり、相関係数r)を抜き出すことで生成される行列である。数式9における「C
k’」は、精度行列Λの要素のうち同じグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素であって且つ行列C
kを構成する要素とは異なる要素を抜き出すことで生成される行列である。具体的には、
図12に示すように、精度行列Λは、第1のグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素から構成される行列C
1と、第2のグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素から構成される行列C
2と、・・・、第s(但し、sは1以上の整数)のグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素から構成される行列C
sと、異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素から構成される行列とを含む。数式9の「C
k」及び「C
k’」の夫々は、
図12に示す行列C
1から行列C
sの中から順次選択される。
【0132】
【0133】
但し、評価動作によって評価したい露光装置1の性能の種類によっては、評価に大いに寄与する状態の項目I及び評価にそれほど寄与しない状態の項目Iが存在する場合もある。この場合には、CPU21は、エッジ密度Dを算出する際に、評価にそれほど寄与しない状態の項目Iの変数xを考慮しなくてもよい。つまり、CPU21は、評価動作によって評価したい露光装置1の性能の種類を考慮して、エッジ密度Dを算出してもよい。例えば、
図12に示す行列C
1から行列C
sのうち行列C
2が、評価にそれほど寄与しない状態の項目Iに関連する要素から構成されている場合には、CPU21は、数式9の「C
k」及び「C
k’」の夫々として、行列C
2を選択しなくてもよい。
【0134】
その後、CPU21は、エッジ密度Dを第2所定回数以上算出したか否かを判定する(ステップS233)。
【0135】
ステップS233の判定の結果、エッジ密度Dを第2所定回数以上算出していないと判定される場合には(ステップS233:No)、CPU21は、ステップS211からステップS232を再度行う。この際、CPU21は、正則化パラメータρを変更する。つまり、CPU21は、正則化パラメータρに、未だ設定していない値を設定する(ステップS211)。その後、CPU21は、変更後の正則化パラメータρを用いて、エッジ密度Dの算出を完了する。
【0136】
他方で、ステップS233の判定の結果、エッジ密度Dを第2所定回数以上算出していると判定される場合には(ステップS233:Yes)、CPU21は、閾値δを設定する(ステップS234)。
【0137】
閾値δは、適切なエッジ密度Dを設定し、その結果、適切な正則化パラメータρを設定するために用いられるパラメータである。具体的には、
図9(a)から
図9(d)を参照しながら説明したように、正則化パラメータρが適切に設定される場合には、正則化パラメータρが適切に設定されない場合と比較して、エッジ密度Dが小さくなる。エッジ密度Dが相対的に小さい場合(
図9(a)又は
図9(b)参照)には、エッジ密度Dが相対的に大きい場合(
図9(c)又は
図9(d)参照)と比較して、ユーザは、露光装置1の動作状態の変化を視覚的に容易に認識することができる。このため、エッジ密度Dは、ユーザが露光装置1の動作状態の変化を視覚的に容易に認識することができる程度に小さしてもよい。
【0138】
従って、CPU21は、ユーザが露光装置1の動作状態の変化を視覚的に容易に認識することができる程度にエッジ密度Dが小さくなる状況と、ユーザが露光装置1の動作状態の変化を視覚的に容易に認識することができない程度にエッジ密度Dが大きくなる状況とを区別することが可能な値になるように、閾値δを設定する。
【0139】
ここで、
図12に示すように、精度行列Λの各要素は、同一のグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素と、異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素とを含むことは上述したとおりである。このため、相関構造Rも同様に、同一のグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素と、異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素とを含む。ここで、同一のグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素の絶対値は相対的に大きくなる。一方で、異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素の絶対値は相対的に小さくなる又はゼロになる。つまり、露光装置1の特性(例えば、特性を考慮した構成要素又は空間のグルーピング)を考慮すると、精度行列Λ(或いは、相関構造R)は、そもそもスパースな行列になる可能性がある。言い換えれば、露光装置1の特性を考慮すると、エッジ密度Dは、そもそも相応に小さな値になる可能性がある。つまり、露光装置1の特性を決める要素の一つである機能又は配置(位置)を考慮した動作ブロック又は空間のグルーピングは、実質的にデフォールトのエッジ密度Dを特定しているとも言える。
【0140】
従って、CPU21は、露光装置1の特性を考慮して、閾値δを設定する。例えば、精度行列Λを構成する全ての要素に対して、異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素が占める比率は、実質的に、露光装置1の特性を考慮したデフォールトのエッジ密度Dに対応する比率となる。従って、CPU21は、精度行列Λを構成する全ての要素に対して異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素が占める比率を考慮して、閾値δを設定してもよい。例えば、CPU21は、精度行列Λを構成する全ての要素に対して異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素が占める比率に対応するエッジ密度Dを、閾値δに設定してもよい。例えば、CPU21は、精度行列Λを構成する全ての要素に対して異なるグループに属する複数の状態の項目Iの相関係数rを示す要素が占める比率に対応するエッジ密度Dに対して所定のマージンを加算又は減算することで得られる値を、閾値δに設定してもよい。
【0141】
或いは、CPU21は、露光装置1の特性を考慮することに加えて又は代えて、評価動作によって評価したい露光装置1の性能の種類を考慮して、閾値δを設定してもよい。例えば、露光装置1の性能の一例として、エッジ密度Dに応じて良否判定の精度が変動する性能が存在し得る。この場合には、CPU21は、エッジ密度Dと評価したい性能の種類の良否判定の精度との間の関係を考慮した上で、評価したい性能の良否を好適に判定することが可能となるエッジ密度Dと評価したい性能の良否を好適に判定することが困難となるエッジ密度Dとを区別可能な値となるように、閾値δを設定してもよい。
【0142】
具体的には、例えば、露光装置1の性能の一例として、エッジ密度Dが相対的に小さい相関構造Rに基づいて好適に良否を判定可能である一方で、エッジ密度Dが相対的に大きい相関構造Rに基づいて好適に良否を判定することが困難な性能が存在し得る。このような性能を評価する場合には、CPU21は、閾値δとして、相対的に小さい値を設定してもよい。或いは、例えば、露光装置1の性能の一例として、エッジ密度Dが相対的に大きい相関構造Rに基づいて好適に良否を判定可能な性能が存在し得る。このような種類の性能を評価する場合には、CPU21は、閾値δとして、相対的に大きい値を設定してもよい。
【0143】
再び
図11において、その後、エッジ密度Dが閾値δよりも小さくなる状態を実現した正則化パラメータρのうち最も小さい正則化パラメータρを選択する(ステップS236)。その後、CPU21は、ステップS236で選択した正則化パラメータρを用いて、
図4のステップS1で取得したログデータに対して、Graphical Lassoを採用したスパース構造学習法に基づく演算処理を施す(ステップS237)。以降は、第3の推定動作においても、第1の推定動作と同様に、ステップS213からステップS215の動作が行われる。
【0144】
第3の推定動作によれば、CPU21は、露光装置1の特性を考慮して、正則化パラメータρを適切な値に絞り込むことができる。従って、CPU21は、より好適に相関構造Rを推定することができる。
【0145】
(2-3)相関変化Vの検出動作
続いて、評価装置2が行う評価動作のうち相関変化Vの検出動作(
図4のステップS3)について説明する。
【0146】
上述したように、CPU21は、第1の相関構造Rに含まれるある相関係数rと第2の相関構造Rに含まれる同一種類の相関係数rとの間の変化量vを、全ての相関係数rを対象に算出することで、相関変化Vを検出する。3つ以上の相関構造Rが推定されている場合には、CPU21は、3つ以上の相関構造Rのうち時系列に沿って順に推定された2つの相関構造Rの変化Vを検出してもよい。例えば、第1の相関構造R、第2の相関構造R、第3の相関構造R及び第4の相関構造Rがこの順に推定された場合には、CPU21は、第1及び第2の相関構造Rの変化V、第2及び第3の相関構造Rの変化V、並びに、第3及び第4の相関構造Rの変化Vを検出してもよい。
【0147】
但し、CPU21は、
図4のステップS1で取得したログデータから、相関構造Rを推定することなく(つまり、
図4のステップS2の動作を行うことなく)、相関変化Vを検出してもよい。CPU21は、ログデータから相関変化Vを検出するための手法として、確率密度比推定法(DRE:Density Ratio Estimation)を用いてもよい。この場合、相関構造Rを推定しなくてもよいがゆえに、相関変化Vの検出結果の精度が、相関構造Rの推定精度に影響を受けることがない。従って、CPU21は、相関変化Vを相対的に高精度に検出することができる。更に、CPU21は、確率密度比推定法の基底関数として多項式の基底関数を採用することで、非線形な相関変化Vをも検出することができる。更に、CPU21は、相関変化Vを検出する元となる相関構造Rが密である(つまり、有意な要素が相対的に多い)場合であっても、相関変化Vを好適に検出することができる。
【0148】
一方で、相関構造Rを推定することで相関変化Vを検出する場合には、相関構造Rがどのような構造となるかが明らかになるという利点も存在する。従って、CPU21は、相関構造Rを推定することで相関変化Vを検出することで得られる利点と、相関構造Rを推定することなく相関変化Vを検出することで得られる利点とを比較した上で、相関変化Vを検出するためにより適した手法を採用してもよい。
【0149】
検出された相関変化Vは、相関構造Rと同様に、d行d列の行列となる。このため、CPU21は、必要に応じて、相関構造Rと同様に、相関変化Vを所望の表示形態で表示するように、表示機器25を制御してもよい。相関変化Vの表示形態は、相関構造Rの表示形態と同一であってもよい。このため、相関変化Vの表示形態の詳細な説明は省略する。
【0150】
(2-3)性能の判定動作
続いて、評価装置2が行う評価動作のうち露光装置1の性能の良否の判定動作(
図4のステップS4)について説明する。上述したように、CPU21は、露光装置1の性能の良否を判定するために、相関変化Vに基づいて、相関変化Vを構成する各変化量vに応じたスコアSCを算出する。
【0151】
例えば、CPU21は、変化量v毎のスコアSCを算出してもよい。この場合、CPU21は、各変化量vそのものを、スコアSCとして採用してもよい。つまり、CPU21は、変化量vijそのものを、変化量vijに対応するスコアSCijとして採用してもよい。或いは、CPU21は、各変化量vに基づく任意の演算処理を行うことで、各変化量vに対応するスコアSCを算出してもよい。この場合、CPU21は、状態の項目Iの総数の2乗個(つまり、d×d個)のスコアSCを算出することになる。
【0152】
或いは、CPU21は、スコアSCの総数を低減するために、状態の項目I毎のスコアSCを算出してもよい。具体的には、変化量vi1から変化量vidは、夫々、状態の項目Iiの変数xiと他の状態の項目Iの変数xとの間の相関係数ri1から相関係数ridの変化を示している。従って、CPU21は、ある状態の項目Iiの変数xiに関連する変化量vi1から変化量vidに基づいて、ある状態の項目IiのスコアSCiを算出してもよい。例えば、CPU21は、数式10を用いて、ある状態の項目IiのスコアSCiを算出してもよい。
【0153】
【0154】
或いは、CPU21は、その他の任意の手法を用いて、相関変化Vを構成する各変化量vに応じたスコアSCを算出してもよい。
【0155】
ここで、
図13(a)及び
図13(b)を参照しながら、スコアSCの一例について説明する。
図13(a)及び
図13(b)は、夫々、スコアSCの一例を示すグラフである。
【0156】
図13(a)は、露光装置1の上部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合の状態の項目I毎のスコアSCの例を示す。
図13(a)に示すように、上部領域に関連する状態の項目IのスコアSCは、中部領域又は下部領域に関連する状態の項目IのスコアSCよりも大きくなる。従って、スコアSCは、上部領域に位置する動作ブロックの状態(ここでは、温度)が同じように変化していることを示している。
【0157】
図13(b)は、露光装置1の下部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合の状態の項目I毎のスコアSCの例を示す。
図13(b)に示すように、下部領域に関連する状態の項目IのスコアSCは、上部領域又は中部領域に関連する状態の項目IのスコアSCよりも大きくなる。従って、スコアSCは、下部領域に位置する動作ブロックの状態(ここでは、温度)が同じように変化していることを示している。
【0158】
尚、表示機器25は、任意の表示形態でスコアSCを表示してもよい。例えば、表示機器25は、
図13(a)及び
図13(b)に示すグラフを用いて、スコアSCを表示してもよい。例えば、表示機器25は、相関構造R又は相関変化Vと同様に、スコアSCが、露光装置1を構成する複数の動作ブロックを当該複数の動作ブロックの機能若しくは配置位置の違いで分類することで得られる複数のグループに対応付けられるように、スコアSCを表示してもよい。例えば、表示機器25は、ある機能又はある配置(位置)に関連する状態の項目IのスコアSCを、互いに近接して表示してもよい。
図13(a)及び
図13(b)は、ある配置位置に関連する状態の項目IのスコアSCを互いに近接して表示する例を示している。
【0159】
スコアSCを算出した後、CPU21は、算出したスコアSCに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定する。本実施形態では、CPU21は、スコアSCと露光装置1の性能との間の対応関係を示すデータベース(言い換えれば、テーブル又は関数)DB及び算出したスコアSCに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定する。例えば、CPU21は、スコアSCと露光装置1の性能を定性的に又は定量的に示す指標データとの間の対応関係を示すデータベースDB及び算出したスコアSCに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定する。但し、CPU21は、その他の手法を用いて、算出したスコアSCに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定する。
【0160】
ここで、
図14を参照しながら、スコアSCと性能との間の対応関係を示すデータベースDBの一例について説明する。
図14は、スコアSCと性能との間の対応関係を示すデータベースDBの一例である。
【0161】
図14に示すように、データベースDBは、状態の項目I
1のスコアSC
1、状態の項目I
2のスコアSC
2、・・・、及び、状態の項目I
dのスコアSC
dの組み合わせと、当該組み合わせに対応する性能の良否を示す指標データとを対応付けている。例えば、データベースDBは、スコアSC
1がS#11であり、スコアSC
2がS#21であり、・・・、スコアSC
dがS#d1である場合には、露光装置1の性能がP#11・・・1である(例えば、全ての性能が良好のまま維持されている)ことを示している。例えば、データベースDBは、スコアSC
1がS#21であり、スコアSC
2がS#22であり、・・・、スコアSC
dがS#d3である場合には露光装置1の性能がP#22・・・3である(例えば、マスクステージ11と基板ステージ14との間の同期精度が、0.5%以上悪化している)ことを示している。例えば、データベースDBは、スコアSC
1がS#21であり、スコアSC
2がS#21であり、・・・、スコアSC
dがS#d1である場合には露光装置1の性能がP#21・・・1である(例えば、近い将来、線幅精度が0.1%以上悪化する可能性がある)ことを示している。データベースDBを構成する各レコードも同様に、スコアSCがある値となった場合に露光装置1の性能が現在どのようになっているか(或いは、現時点でどのように変化したか)又は将来どのように変化するかを示す。
【0162】
尚、データベースDBは、CPU21が算出したスコアSCのうちの少なくとも一部を用いて露光装置1の性能の良否をCPU21に判定させることができる限りは、どのようなデータ構造を有していてもよい。
【0163】
本実施形態では、データベースDBは、評価動作が行われる前に評価装置2によって(或いは、評価装置2とは異なるデータベース構築装置によって、以下同じ)予め構築されている。構築されたデータベースDBは、メモリ22に予め格納されている。但し、データベースDBは、評価動作と並行して、評価装置2によって逐次構築されてもよい。データベースDBは、評価動作と並行して、評価装置2によって逐次更新されてもよい。
【0164】
評価装置2は、露光装置1が実際に行った露光動作の結果に基づいて、データベースDBを構築(或いは、更新、以下同じ)してもよい。具体的には、例えば、評価装置2は、露光装置1がある露光動作を行った際に実際に計測された変数x及び性能を、ログデータとして取得してもよい。或いは、例えば、評価装置2は、露光装置1と同一機種である他の露光装置がある露光動作を行った際に実際に計測された変数x及び性能を、ログデータとして取得してもよい。この場合、評価装置2は、取得したログデータに基づいてスコアSCを算出すると共に、ログデータとして取得した性能に当該算出したスコアSCを対応付けることで、データベースDBを構築してもよい。尚、ここでいう「露光動作」は、実際のデバイスとして使用される基板141に対する露光動作であってもよい。或いは、「露光動作」は、テスト露光用の基板141に対する露光動作であってもよい。
【0165】
評価装置2は、上述した露光装置1の特性を考慮した上で、シミュレーションを行ってもよい。例えば、評価装置2は、上述した露光装置1を構成する複数の動作ブロックの機能又は配置(位置)を考慮した上で、シミュレーションを行なってもよい。例えば、評価装置2は、上述した露光装置1内の複数の空間の機能又は配置(位置)を考慮した上で、シミュレーションを行なってもよい。例えば、評価装置2は、上述した露光装置1の動作ブロック又は空間のその他の特性を考慮した上で、シミュレーションを行なってもよい。以下、露光装置1の特性を考慮したシミュレーションの一例について説明する。
【0166】
例えば、露光動作が行われる場合には、マスクステージ11のX軸方向に沿った移動、マスクステージ11のY軸方向に沿った移動及びマスクステージ11のZ軸方向に沿った移動は、本来は別個独立に制御される。従って、マスクステージ11のX軸方向に沿った位置を示す状態の項目Iの変数xと、マスクステージ11のY軸方向に沿った位置を示す状態の項目Iの変数xと、マスクステージ11のZ軸方向に沿った位置を示す状態の項目Iの変数xとは、相関を有さないはずである。評価装置2は、このようなマスクステージ11の各軸に沿った位置の関係を考慮して、データベースDBを構築してもよい。その結果、CPU21は、このようなデータベースDBに基づいて評価動作を行うことで、マスクステージ11のX軸方向に沿った位置を示す状態の項目Iの変数x、マスクステージ11のY軸方向に沿った位置を示す状態の項目Iの変数x及びマスクステージ11のZ軸方向に沿った位置を示す状態の項目Iの変数xの間に相関があることをスコアSCが示している場合には、マスクステージ11の各軸に沿った移動の同期精度が良好でないと判定することができる。
【0167】
例えば、ある動作ブロックの特定部分の状態が複数のセンサ15によって検出される場合には、当該複数のセンサの検出結果を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xは、正の相関を有するはずである。評価装置2は、このような複数のセンサ15によって状態が検出される特定部分を含む動作ブロックの存在を考慮して、データベースDBを構築してもよい。その結果、CPU21は、このようなデータベースDBに基づいて評価動作を行うことで、複数のセンサ15の検出結果を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xの間の相関が小さい又はないことをスコアSCが示している場合には、特定部分を含む動作ブロックに何らかの異常が生じている又は特定部分の状態を検出する複数のセンサ15に何らかの異常が生じていると判定することができる。
【0168】
例えば、本来は状態が同じになるはずの複数の動作ブロック(或いは、複数の空間)が存在する場合がある。この場合には、複数の動作ブロックの状態を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xは、正の相関を有するはずである。評価装置2は、このような本来は状態が同じになるはずの複数の動作ブロックの存在を考慮して、データベースDBを構築してもよい。その結果、CPU21は、このようなデータベースDBに基づいて評価動作を行うことで、複数の動作ブロックの状態を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xの間の相関が小さい又はないことをスコアSCが示している場合には、複数の動作ブロックに何らかの異常が生じている又は複数の動作ブロックの状態を検出する複数のセンサ15に何らかの異常が生じていると判定することができる。
【0169】
例えば、上述したように、同一の又は近接する位置の複数の動作ブロック(或いは、空間)の温度は、同じように変化するはずである。つまり、同一の又は近接する位置の複数の動作ブロックの温度を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xは、正の相関を有するはずである。評価装置2は、このような同一の又は近接する配置位置に位置する複数の動作ブロックの温度の関係を考慮して、データベースDBを構築してもよい。その結果、CPU21は、このようなデータベースDBに基づいて評価動作を行うことで、同一の又は近接する位置の複数の動作ブロックの温度を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xの間の相関が小さい又はないことをスコアSCが示している場合には、複数の動作ブロックに何らかの異常が生じている又は複数の動作ブロックの状態を検出する複数のセンサ15に何らかの異常が生じていると判定することができる。
【0170】
例えば、上述したように、互いに離れた位置の複数の動作ブロック(或いは、空間)の温度は、互いに独立して変化するはずである。つまり、互いに離れて位置する複数の動作ブロックの温度を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xの間の相関は小さくなる又はないはずである。評価装置2は、このような互いに離れた配置位置に位置する複数の動作ブロックの温度の関係を考慮して、データベースDBを構築してもよい。その結果、CPU21は、このようなデータベースDBに基づいて評価動作を行うことで、互いに離れて位置する複数の動作ブロックの温度を夫々示す複数の状態の項目Iの変数xの間に相対的に大きな相関があることをスコアSCが示している場合には、複数の動作ブロックに何らかの異常が生じている又は複数の動作ブロックの状態を検出する複数のセンサ15に何らかの異常が生じていると判定することができる。尚、間に断熱材を介して配置される動作ブロックの温度についても同様のことが言える。
【0171】
以上の説明したように、評価装置2は、露光装置1の性能の良否を好適に判定することができる。特に、本実施形態では、評価装置2は、変数xそのもの(つまり、ログデータそのもの)に基づいて性能の良否を判定することに代えて、変数xの相関構造Rの変化である相関変化Vに基づいて性能の良否を判定する。従って、評価装置2は、変数xそのものから良否を判定することが困難又は不可能である一方で、相関変化Vから良否を判定可能な性能を好適に評価することができる。例えば、評価対象となる性能の種類によっては、性能が良好でなくなった場合において、変数xそのものには未だ異常の傾向が見られないものの当該変数xに関する相関変化Vには何らかの異常の傾向が見られる場合がある。本実施形態の評価装置2は、このような性能の良否を好適に且つ早期に判定する(実質的には、性能の良否を予測する)ことができる。
【0172】
加えて、評価装置2は、ログデータの相関変化Vに基づいて性能の良否を判定するがゆえに、ログデータを構成する各状態の項目Iの変数xの値自体が違う状況下であっても露光装置1のある性能が同じように悪化していると判定することができる。例えば、露光装置1の動作状態が第1状態から第2状態に変化した場合に実際に計測されたログデータ(変数x)から算出されたスコアSCの組み合わせと露光装置1の動作状態が第1状態から第2状態に変化した場合に実際に計測された露光装置1の性能の良否とを対応付ける第1レコードを含むデータベースDBが構築されているとする。尚、以下では説明の便宜上、第1レコードは、露光装置1の動作状態が第1状態から第2状態に変化した場合に算出されたスコアSCの組み合わせと、露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化したという指標データとを対応付けているものとする。このようなデータベースDBを用いて評価装置2が評価動作を行っている間に露光装置1の動作状態が第1状態から第2状態に変化した場合には、評価装置2は、当然に、第1レコードを用いて、露光装置1の性能の良否を判定する。従って、評価装置2は、露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化したと判定する。一方で、このようなデータベースDBを用いて評価装置2が評価動作を行っている間に露光装置1の動作状態が第3状態から第4状態に変化したとする。この場合、露光装置1の動作状態が第1状態にある場合に入力されるログデータ(変数x)と、露光装置1の動作状態が第3状態にある場合に入力されるログデータ(変数x)とは異なるものとする。同様に、露光装置1の動作状態が第2状態にある場合のログデータ(変数x)と、露光装置1の動作状態が第4状態にある場合に入力されるログデータ(変数x)とは異なるものとする。一方で、露光装置1の動作状態が第1状態から第2状態に変化したときのログデータの相関変化Vが、露光装置1の動作状態が第3状態から第4状態に変化したときのログデータの相関変化Vと同一であるものとする。この場合には、単にログデータそのものに基づいて露光装置1の性能の良否を判定する比較例の評価装置であれば、露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化したと判定することができない可能性が相対的に高い。しかるに、本実施形態の評価装置2は、第1レコードを参照することで、露光装置1の動作状態が第3状態から第4状態に変化した場合であっても、露光装置1の動作状態が第1状態から第2状態に変化した場合と同様に、露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化したと判定することができる。従って、評価装置2は、露光装置1の性能の良否を好適に判定することができる。
【0173】
また、上述の実施形態では、変数x(ログデータ)の数が、例えば数千以上であっても安定して露光装置1の性能の良否を好適に判定することができる。また、上述の実施形態では、観測値(例えば、変数x)が動的に変化する場合であっても、露光装置1の性能の良否を好適に判定することができる。なお、上述の実施形態において、露光装置1というシステムのモジュール構造(変数のグループ)を自動的に認識してもよい。
【0174】
(2-4)判定結果の表示動作
続いて、評価装置2が行う評価動作のうち性能の良否の判定結果の表示動作(
図4のステップS5)について説明する。
【0175】
表示機器25は、判定結果をそのまま文字や図形等を用いて表示してもよい。例えば、表示機器25は、「露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化した」旨を示す文字や図形等を表示してもよい。
【0176】
表示機器25は、判定結果と露光装置1とを対応付ける表示形態で、判定結果を表示してもよい。判定結果と露光装置1とを対応付ける表示形態の一例として、判定結果を、露光装置1を構成する複数の動作ブロック(或いは、複数の空間、以下同じ)を上述した所定の基準で分類することで得られる複数のグループに対応付ける表示形態があげられる。例えば、判定結果は、露光装置1のある種類の性能の良否を示す。露光装置1のある性能の良否は、露光装置1のある動作ブロックの状態に依存し得る。従って、評価装置2は、表示するべき判定結果が、露光装置1のどの動作ブロックに関連する性能の良否の判定結果であるかを特定することができる。このため、評価装置2は、表示するべき判定結果が、露光装置1を構成する複数の動作ブロックのうちの当該表示するべき判定結果に関連する少なくとも一つの動作ブロックに対応付けられるように、判定結果を表示してもよい。具体的には、
図15(a)に示すように、表示機器25は、「露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化した」という判定結果が、当該判定結果に関連する中部領域に配置される少なくとも一つの動作ブロックに対応付けられるように、当該判定結果を表示してもよい。その結果、ユーザは、「露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化した」という判定結果の原因の一つが、当該判定結果が対応付けられている中部領域に配置される少なくとも一つの動作ブロックにあると容易に認識することができる。或いは、
図15(b)に示すように、表示機器25は、「露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化した」という判定結果が、当該判定結果に関連する機能F#2を実現するための少なくとも一つの動作ブロックに対応付けられるように、当該判定結果を表示してもよい。その結果、ユーザは、「露光装置1のある性能Aが所定量Bだけ悪化した」という判定結果の原因の一つが、当該判定結果が対応付けられている機能F#2を実現するための少なくとも一つの動作ブロックにあると容易に認識することができる。
【0177】
表示機器25は、性能の悪化の度合いに応じて、判定結果の表示形態や表示態様を代えてもよい。例えば、
図15(a)及び
図15(c)に示すように、表示機器25は、性能の悪化の度合いが大きくなるほど、判定結果を示す文字や図形等(
図15(a)及び
図15(c)では、エクスクラメーションマーク)が強調される(
図15(a)及び
図15(c)では、大きくなる)ように、判定結果を表示してもよい。尚、
図15(a)は、性能の悪化の度合いが相対的に大きい場合の判定結果の表示例を示しており、
図15(c)は、性能の悪化の度合いが相対的に小さい場合の判定結果の表示例を示している。
【0178】
(3)変形例
続いて、本実施形態の評価装置2による評価動作の変形例について説明する。
【0179】
(3-1)第1変形例
第1変形例では、評価装置2は、相関変化Vを構成する各変化量vに応じたスコアSCを算出した後に、算出したスコアSCのうちの少なくとも一部に対して所望の重み付け処理を行う。例えば、評価装置2は、スコアSCのうちの少なくとも一部に対して所定の重み付け係数を掛け合わせる重み付け処理を行ってもよい。例えば、評価装置2は、スコアSCのうちの少なくとも一部に所定の重み付け関数に基づく演算を行う重み付け処理を行ってもよい。その後、評価装置2は、重み付け処理が行われたスコアSCに基づいて、露光装置1の性能の良否を判定する。
【0180】
以下、
図16を参照しながら、スコアSCに対する重み付け処理の一例について説明する。
図16は、重み付け処理が行われる前のスコアSC、重み付け処理を行うための重み付け係数及び重み付け処理が行われる前のスコアSCを示すグラフである。
【0181】
図16の上段のグラフは、重み付け処理が行われる前の状態の項目I毎のスコアSCを示している。CPU21は、
図16の上段に示すスコアSCに対して、
図16の中段に示す重み付け係数wを掛け合わせる。その結果、
図16の下段に示すスコアSCが得られる。
【0182】
重み付け係数wは、スコアSC毎に(つまり、
図16に示す例では、状態の項目I毎に)用意される。このため、CPU21は、状態の項目I
iに対応するスコアSC
iに対して重み付け係数w
iを掛け合わせる。但し、
図16は、複数のスコアSCに対して共通の重み付け係数wが用意される例を示している。
【0183】
CPU21は、露光装置1の特性を考慮して、重み付け係数wを設定してもよい。例えば、評価装置2は、上述した露光装置1を構成する複数の動作ブロックの機能又は配置(位置)を考慮した上で、重み付け係数wを設定してもよい。例えば、評価装置2は、上述した露光装置1内の複数の空間の機能又は配置(位置)を考慮した上で、重み付け係数wを設定してもよい。例えば、評価装置2は、上述した露光装置1の複数の動作ブロック又は複数の空間のその他の特性を考慮した上で、重み付け係数wを設定してもよい。以下、露光装置1の特性を考慮した重み付け係数wを設定動作の一例について説明する。
【0184】
CPU21は、ある位置の動作ブロック又は空間に関するスコアSCの重要性を上げることが可能な重み付け係数wを設定してもよい。CPU21は、ある位置の動作ブロック又は空間に関するスコアSCの重要性を下げることが可能な重み付け係数wを設定してもよい。CPU21は、ある位置の動作ブロック又は空間に関するスコアSCの重要性が、別の位置の動作ブロック又は空間に関するスコアSCの重要性よりも高くなる状態を実現可能な重み付け係数wを設定してもよい。
【0185】
例えば、第1の位置の動作ブロックに関するスコアSCと比較して、第2の位置の動作ブロックに関するスコアSCが大きくなる場合が想定される。ここで、第1の位置の動作ブロックに関するスコアSCが極めて小さい場合には、当該極めて小さいスコアSCは、ノイズである可能性がある。例えば、極めて小さいスコアSCは、相関構造Rの推定精度に起因したノイズである可能性がある。従って、この場合には、CPU21は、ノイズである可能性があるスコアSCの重要性を下げることが可能な重み付け係数wを設定してもよい。
【0186】
具体的には、例えば、露光装置1の上部領域に位置する動作ブロックの温度が増加した場合を想定する。この場合、上述したように、上部領域に位置する動作ブロックに関連するスコアSCは、中部領域又は下部領域に位置する動作ブロックに関連するスコアSCよりも大きくなる。特に、下部領域に位置する動作ブロックに関連するスコアSCは、極めて小さくなる(
図15の上段のグラフ参照)。つまり、下部領域に位置する動作ブロックに関連するスコアSCは、ノイズである可能性がある。この場合には、CPU21は、
図16の中段のグラフに示すように、下部領域に位置する動作ブロックに関連するスコアSCの重要性を下げることが可能な重み付け係数wを設定してもよい。
【0187】
或いは、例えば、ある動作ブロックの配置(位置)によっては、当該ある動作ブロックの状態が、他の動作ブロックの状態の影響を受けない場合がある。つまり、ある動作ブロックが位置する配置位置によっては、当該ある動作ブロックの状態を示す状態の項目Iの変数xが、他の状態の項目Iの変数xから独立している(つまり、相関がない)場合がある。この場合には、独立した状態の項目Iの変数xは、ある動作ブロックの状態が露光装置1に与える影響の有無を判定するための相対的に重要な変数であるとも言える。従って、この場合には、CPU21は、独立した状態の項目IのスコアSCの重要性を上げることが可能な重み付け係数wを設定してもよい。
【0188】
具体的には、第1の位置に熱源となり得る動作ブロックが配置されており、熱源が発生する熱が伝達される程度に第1の位置に近接している第2の位置にある動作ブロックが配置されており、第1の位置と第2の位置との間に断熱材となり得る動作ブロックが配置されている場合を想定する。この場合、断熱材は、熱源が発生する熱がある動作ブロックに伝達することを防止する。従って、第2の位置に位置する動作ブロックの温度は、第1の位置に位置する動作ブロック(つまり、熱源)の影響を受けない。つまり、第2の位置に位置する動作ブロックの温度を示す状態の項目Iの変数xは、第1の位置に位置する動作ブロック(つまり、熱源)の温度を示す状態の項目Iの変数xから独立している。従って、この場合には、第2の位置に位置する動作ブロックの温度を示す状態の項目IのスコアSCの重要性を上げることが可能な重み付け係数wを設定してもよい。
【0189】
CPU21は、評価動作によって評価したい露光装置1の性能の種類を考慮して、重み付け係数wを設定してもよい。例えば、上述したように、評価動作によって評価したい露光装置1の性能の種類によっては、評価に大いに寄与する状態の項目I及び評価にそれほど寄与しない状態の項目Iが存在する場合もある。従って、ある性能を評価する場合には、評価に大いに寄与する状態の項目IのスコアSCの重要性は、評価にそれほど寄与しない状態の項目IのスコアSCの重要性よりも高い。従って、CPU21は、評価したい性能の種類に基づいて、評価に大いに寄与する状態の項目IのスコアSCの、評価動作に対する寄与率が増加するように、重み付け処理を行ってもよい。CPU21は、評価したい性能の種類に基づいて、評価にそれほど寄与しない状態の項目IのスコアSCの、評価動作に対する寄与率が減少する又はゼロになるように、重み付け処理を行ってもよい。
【0190】
第1変形例においても、評価装置2は、露光装置1の性能の良否を好適に判定することができる。特に、第1変形例では、重み付け処理が行われたスコアSCに基づいて性能の良否を判定するがゆえに、評価装置2は、露光装置1の性能の良否をより好適に判定することができる。
【0191】
(3-2)第2変形例
続いて、
図17を参照しながら、評価動作の第2変形例について説明する。
図17は、夫々、第2変形例でのログデータの一例を示す行列である。
【0192】
上述した実施形態では、ログデータは、夫々がある期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xから構成されている。一方で、第2変形例では、ログデータは、夫々がある期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xに加えて、夫々が当該ある期間よりも過去の期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを含んでいる。例えば、
図17に示すように、ログデータは、夫々が第m(但し、mは1以上の整数)期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを示すデータ部分L
mに加えて、夫々が第m期間よりも過去の第m-1期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを示すデータ部分L
m-1を含む。従って、ログデータは、N行×2d列の行列となる。CPU21は、このようなログデータを用いて、相関構造Rを推定し、相関変化Vを検出し、露光装置1の性能の良否を判定する。
【0193】
第2変形例においても、評価装置2は、露光装置1の性能の良否を好適に判定することができる。特に、第2変形例では、ログデータに複数の期間中に観測される複数の状態の項目Iの変数xが含まれているがゆえに、相関変化Vもまた、複数の期間中に観測される複数の状態の項目Iの変数xの相関の変化を示している。例えば、相関変化Vは、第m期間中に観測される複数の状態の項目Iの変数xと第m-1期間中に観測される複数の状態の項目Iの変数xとの間の相関構造Rの変化Vに加えて、第m-1期間中に観測される複数の状態の項目Iの変数xと第m-2期間中に観測される複数の状態の項目Iの変数xとの間の相関構造Rの変化Vを示し得る。このため、評価装置2は、最新の相関変化Vと過去の相関変化Vとに基づいて、露光装置1の性能の良否をより好適に判定することができる。
【0194】
尚、上述の第2変形例の説明では、ログデータは、2つの期間中の露光装置1の動作状態を示す変数xを含んでいる。しかしながら、ログデータは、3つ以上の期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを含んでいてもよい。例えば、ログデータは、夫々が第m期間中の露光装置1の状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを示すデータ部分Lmに加えて、夫々が第m期間よりも過去の第m-1期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを示すデータ部分Lm-1、並びに、夫々が第m期間及び第m-1期間よりも過去の第m-2期間中の露光装置1の動作状態を示す複数の状態の項目Iの変数xを示すデータ部分Lm-2を含んでいてもよい。
【0195】
上述の説明では、露光装置1は、半導体基板等の基板141を露光する。しかしながら、露光装置1は、ガラス板、セラミック基板、フィルム部材、又は、マスクブランクス等の任意の物体を露光してもよい。露光装置1は、液晶表示素子又はディスプレイを製造するための露光装置であってもよい。露光装置1は、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(例えば、CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ及びマスク111(或いは、レチクル)のうちの少なくとも一つを製造するための露光装置であってもよい。露光装置1は、物体に露光光ELを照射することで物体に発生する光トラップ力を用いて物体を補足する光ピンセット装置であってもよい。
【0196】
半導体デバイス等のデバイスは、
図18に示す各ステップを経て製造されてもよい。デバイスを製造するためのステップは、デバイスの機能及び性能設計を行うステップS201、機能及び性能設計に基づいたマスク111を製造するステップS202、デバイスの基材である基板141を製造するステップS203、マスク111のデバイスパターンからの露光光ELで基板141を露光し且つ露光された基板141を現像するステップS204、デバイス組み立て処理(ダイシング処理、ボンディング処理、パッケージ処理等の加工処理)を含むステップS205及び検査ステップS206を含んでいてもよい。
【0197】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した露光装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0198】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う評価装置及び評価方法、表示装置及び表示方法、露光装置及び露光方法、露光システム、デバイス製造装置、並びに、コンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0199】
1 露光装置
11 マスクステージ
111 マスク
112 駆動システム
12 照明系
13 投影光学系
14 基板ステージ
141 基板
142 駆動システム
15 センサ
16 制御装置
2 評価装置
21 CPU
22 メモリ
23 入力部
24 操作機器
25 表示機器
SYS 露光システム