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特許7195952有機電界発光素子用の有機イリジウム錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】有機電界発光素子用の有機イリジウム錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20221219BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20221219BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221219BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221219BHJP
   C07C 49/92 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
C09K11/06 660
H05B33/10
H05B33/14 B
C07C49/92
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019014064
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121936
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】政広 泰
(72)【発明者】
【氏名】谷内 淳一
(72)【発明者】
【氏名】八木 繁幸
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107973823(CN,A)
【文献】特開2017-144424(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105820098(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0004780(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0273563(US,A1)
【文献】特表2014-516965(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104557998(CN,A)
【文献】WU, B. and YOSHIKAI, N.,Conversion of 2-Iodobiaryls into 2,2'-Diiodobiaryls via Oxidation-Iodination Sequence: A Versatile Route to Ladder-Type Heterofluorenes,Angewandte Chemie,2015年06月08日,Vol.127,pp.8860-8863, S3-S12
【文献】STOKES, Benjamin J. et al.,Rh2(II)-Catalyzed synthesis of carbazoles from biaryl azides,Journal of Organic Chemistry,2009年03月18日,vol.74, no.8,pp.3225-3228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C09K 11/06
H01L 51/50
H05B 33/10
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C-N配位子と補助配位子がイリジウムに配位してなる有機電界発光素子用の有機イリジウム錯体において、
前記C-N配位子として、少なくとも1つのメチル基が導入された2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート配位子が配位した、下記式で示される有機イリジウム錯体。
【化1】
(上記式中、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ、メチル基又は水素原子のいずれかである。但し、R 、R 、R 、R については、R 及びR がメチル基でありR 及びR が水素であるか、又は、R 及びR がメチル基でありR 及びR が水素であるか、若しくは、R 、R 、R のいずれもがメチル基でありR が水素である。X-Yは補助配位子である。)
【請求項2】
補助配位子(X-Y)は、下記のいずれかである請求項1記載の有機イリジウム錯体。
【化2】
(上記式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子である。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の有機イリジウム錯体に配位するC-N配位子の製造方法であって、下記工程を含む方法、
(1)出発原料であるジブロモアニリン又はメチル基が導入されたジブロモアニリン誘導体と、フェニルボロン酸誘導体又はメチル基を有するフェニルボロン酸誘導体とを反応させることにより、ビフェニルアミン誘導体からなる中間体1を合成する工程。
(2)前記中間体1のアミノ基がヨウ素化された中間体2を合成する工程。
(3)前記中間体2をペルオキソ酸で酸化し、環状ジベンゾヨードニウム化合物である中間体3を合成する工程。
(4)中間体3にチオ酢酸塩を反応させてブロモジベンゾチオフェン誘導体である中間体4を合成する工程。
(5)前記中間体4をボロン酸エステルと反応させることにより、1以上のメチル基が導入されたジベンゾチオフェン-ボロン酸誘導体である中間体5を合成する工程。
(6)前記中間体5と、2-クロロキノリン又は2-クロロキノリン誘導体とを反応させる工程。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の有機イリジウム錯体の製造方法であって、
イリジウム塩と、請求項3記載の方法により合成されたC-N配位子とを反応させて前駆体を合成し、
前記前駆体と補助配位子とを反応させることで有機イリジウム錯体を合成する工程を含む有機イリジウム錯体の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の有機イリジウム錯体がドープされた発光層を備える有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用のりん光材料として好適な有機イリジウム錯体を提供する技術に関する。詳しくは、赤色りん光材料として有用であり、発光量子収率(ΦPL)が高く、色純度に優れた有機イリジウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(OLED)は、次世代ディスプレイや照明としての技術開発が期待されている。特徴として、消費電力が少なく、薄型化が可能であり、応答速度に優れ、暗所・明所のいずれにおいても鮮明に画像表示できる等の利点を有している。図7は、OLEDの構造の一例を説明する図である。図7の例示において、OLEDは、陰極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/陽極/ガラス基板の多層構成を基本とする。近年では、この基本構造を有する素子に、正孔(電子)注入層、バッファ層、層間絶縁膜等の発光特性向上のための機能層を適宜に追加したものも提案されている。
【0003】
上記のような構造を有するOLEDの発光層には、各種の発光材料が用いられている。ここで、OLEDの発光材料は、蛍光材料とりん光材料に大別されるが、近年はりん光材料に関する新規材料の開発が進んでいる。発光材料には発光効率が高く省電力化に対応できることが要求されるところ、りん光材料はその発光原理に基づき、蛍光材料と比較してこれらの要求に応え得るからである。そして、OLED用のりん光材料として、これまで各種の有機化合物の研究がなされてきたが、近年では白金やイリジウム等の貴金属を中心金属とする有機金属錯体からなるりん光材料の研究例が主流となっている。
【0004】
ここで、OLEDのディスプレイ等への応用を検討するとき、りん光材料に関して検討すべき重要事項として、その発光色の純度が挙げられる。OLEDでは、発光材料からの赤(R)緑(G)青(B)の光の三原色の発光の発光強度を調整することで全ての色を表現することができる。この色表現を適切にするためには、目的の発光色を高純度且つ高効率で発光することが求められる。この点、本願発明者等によれば、発光波長が最も長い赤色発光を示すりん光材料は、発光量子収率(ΦPL)が低い傾向にあり、他の発光色に対して関心の高い材料となっている。
【0005】
尚、発光量子収率(PL量子効率(ΦPL))とは、発光材料の量子効率に関連する因子の一つである。発光材料の量子効率を「外部量子効率」と「内部量子効率」とに大別した場合において、PL量子効率は内部量子効率を決定する因子である。発光材料には、内部量子効率の向上が求められ、そのためには高いPL量子効率の達成を目指すことになる。
【0006】
上記のとおり、りん光材料としては、白金やイリジウム等の貴金属の有機金属錯体の報告例が多い。そして、これまで赤色の発光を示す赤色りん光性有機イリジウムがいくつか報告されている。本願出願人も、赤色りん光性有機イリジウムに関するいくつかの先行技術を開示している。これらの赤色りん光性有機イリジウムとして、中心金属であるイリジウムに、複素環を有しC-N構造を備える配位子(C-N配位子)と、ジケトナート系補助配位子(β‐ジケトン系配位子)が配位した有機金属錯体が提案されている。
【0007】
具体的には、特許文献1では、C-N配位子として1-(ジベンゾ[b,d]フラン4-イル)イソキノリナートを適用し、ジケトナート系補助配位子としてブチルオキシ基を導入したジベンゾイルメタナートを配位させた、下記化1に示すイリジウム錯体を開示している。また、特許文献2では、C-N配位子として2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートを適用し、ジケトナート系補助配位子としてtert-ブチル基を導入したジベンゾイルメタナートを配位させた、下記化2に示すイリジウム錯体を開示している。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-222635号公報
【文献】特開2016-15468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した従来の有機イリジウム錯体は、いずれも赤色に区分できる発光色を呈するりん光材料である。しかしながら、これらの有機イリジウム錯体は、発光効率(発光量子収率(ΦPL))及び色純度の双方において満足できるものではなかった。即ち、特許文献1の有機イリジウム錯体は、ポリメタクリル酸メチル薄膜(PMMA薄膜)中における発光波長(λPL)が635nmであり、ほぼ純赤色の発光を呈することができる。しかし、ΦPLが0.17と低く発光効率の観点からは不十分である。一方、特許文献2の有機イリジウム錯体は、PMMA薄膜中におけるΦPLは0.61と比較的高いものの、発光波長(λPL)が612nmであり純赤色よりも短波長化した発光を呈する。
【0012】
上記特許文献1、2記載の有機イリジウム錯体が示すように、赤色発光性りん光材料に関しては、色純度に優れ純赤色を保ちながら、発光量子収率(ΦPL)を向上することは難しい。両特性のバランス良好な赤色発光性りん光材料はないというのが現状である。
【0013】
本発明は、以上の背景のもとになされたものであり、OLED用の赤色発光性りん光材料として好適な有機イリジウム錯体であって、発光量子収率(ΦPL)が高く、色純度に優れた有機イリジウム錯体を目的とする。また、後述するように、この有機イリジウム錯体は、その合成プロセスにおいても特徴を有する。本発明は、当該有機イリジウム錯体を効果的に製造するための方法についても開示する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートの誘導体をC-N配位子とした有機イリジウム錯体の効果を検討することとした。具体的には、置換基としてメチル基を2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートの特定の位置に導入した有機イリジウム錯体について検討した。その結果、従来の有機イリジウムに対して、高効率な純赤色りん光性の有機イリジウム錯体を得ることができることを見出し、本発明に想到した。
【0015】
上記課題を解決する本発明は、C-N配位子と補助配位子がイリジウムに配位してなる有機電界発光素子用の有機イリジウム錯体において、前記C-N配位子として、少なくとも1つのメチル基が導入された2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート配位子が配位した、下記式で示される有機イリジウム錯体である。
【化3】
(上記式中、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ、メチル基又は水素原子のいずれかである。但し、R、R、R、Rの少なくともいずれか一つはメチル基である。X-Yは補助配位子である。)
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明に係る赤色りん光性有機イリジウム錯体は、そのC-N配位子である2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートにメチル基を導入する点にある。特に、このC-N配位子のジベンゾチオフェン部位の特定位置に一つ以上のメチル基を導入することを特徴とする。
【0017】
C-N配位子を有する有機イリジウム錯体からなるりん光材におけるPL量子効率ΦPLの低下の要因としては、分子の熱失活が挙げられる。この熱失活の要因の一つとして、C-N配位子の芳香族のC-H結合における伸縮振動が挙げられる。本発明では、C-N配位子の特定位置(C-H結合)にメチル基(-CH)を導入することで、高エネルギーな伸縮振動を示すC-H結合を、低エネルギーなC-C結合に置き換えている。これにより振動失活を抑制し、ΦPLの向上を図ることができる。また、本発明者等は、C-N配位子にメチル基を導入することで錯体分子の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギー差が変化することで、発光波長λPLの長波長側へのシフトが生じて純赤色のりん光を示すようになったと考察する。
【0018】
このように、本発明は、C-N配位子である2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートの特定部位、即ち、2’位(R)、6’位(R)、7’位(R)、8’位(R)にメチル基を導入することで、ΦPL向上とλPLの長波長化を図り、好適な赤色りん光性有機イリジウム錯体を構成する。
【0019】
また、本発明に係る有機イリジウム錯体における、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートに対するメチル基導入は、ジベンゾチオフェン部位へのメチル基導入に加えて、キノリン部位へのメチル基(R、R、R)の導入も有用である。キノリン部位でも、上述した芳香族のC-H結合での伸縮振動による失活が生じると考えられるので、C-H結合をC-C結合に置き換えることでΦPLの向上が期待できるからである。
【0020】
以上のとおり、本発明に係る有機イリジウム錯体では、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートのジベンゾチオフェン部位へのメチル基の導入を必須とする。本発明の好ましい態様を挙げるとすれば、2’位のみにメチル基を導入する態様(R=メチル基、R、R、R=水素)、2’、7’位にメチル基を導入する態様(R、R=メチル基、R、R=水素)、6’、8’位にメチル基を導入する態様(R、R=メチル基、R、R=水素)、2’,6’,8’位にメチル基を導入する態様(R、R、R=メチル基、R=水素)が挙げられる。これら態様の中でも特に好ましい態様は、2’位へのメチル基導入を必須とする態様(R=メチル基、R~R=水素又はメチル基のいずれか)である。
【0021】
そして、本発明に係る有機イリジウム錯体において、C-N配位子と共にイリジウムに配位する補助配位子(X-Y配位子)は、好ましくは、下記の配位子が挙げられる。補助配位子は、有機イリジウム錯体の発光特性の向上に直接的に寄与することはないものの、多少の変動を生じさせる構成である。下記の配位子は、低分子量で補助配位子として前記作用を有するものである。
【0022】
【化4】
(上記式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子である。)
【0023】
上記の補助配位子において、より好ましい配位子は、β-ジケトン配位子である、アセチルアセトン(2,4-ペンタンジオン)、又は、ジピバロイルメタン(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタジオン)である。そして、最も好ましい配位子は、ジピバロイルメタンである。上記のとおり、補助配位子は有機イリジウム錯体の発光特性の向上に直接寄与するものではない。但し、本発明の目的においては、補助配位子の最適化を図ることが好ましく。この観点から、ジピバロイルメタンが補助配位子として最適である。ジピバロイルメタンはアセチルアセトンよりも立体障害が大きい配位子である。OLEDのような固体媒体中における発光では、分子間相互作用による無放射失活を低減できることが好ましく、そのためにはジピバロイルメタンのような立体障害が大きい配位子が補助配位子として好適である。
【0024】
【化5】
(上記式中、*を付した原子は、イリジウム原子に配位する配位原子である。)
【0025】
以上説明した本発明に係る赤色りん光性有機イリジウム錯体は、従来の有機イリジウム錯体に対して、色純度に優れ発光効率も高いものとなる。よって、OLEDの発光層として有用である。この有機イリジウム錯体を高分子薄膜にドープすることで発光層を形成することができる。
【0026】
次に、本発明に係る有機イリジウム錯体の製造方法について説明する。本発明のような、イリジウムにC-N配位子及びβ‐ジケトン化合物等の補助配位子が配位する有機イリジウム錯体の合成方法に関しては、その大枠の製造方法は公知である。即ち、まず、イリジウム塩とC-N配位子を構成する含窒素化合物とを加熱反応させて前駆体を得た後、この前駆体と補助配位子(β‐ジケトン化合物等)とを加熱反応させることで有機イリジウム錯体を合成することができる。また、前記工程の他、先にイリジウム塩と補助配位子とを反応させた後に、含窒素化合物(C-N配位子)を反応させても有機イリジウム錯体は合成可能である。
【0027】
本発明に係る有機イリジウム錯体においても、上記の合成プロセスが適用される。但し、本発明の特徴は、C-N配位子である2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートの特定の位置(2’位、6’位、7’位、8’位)にメチル基を導入することである。
【0028】
この点、無置換の2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートの合成は、比較的容易であり公知のものとなっている。例えば、出発原料としてジベンゾ[b,d]チオフェン-4-ボロン酸を用い、これとキノリンのハロゲン化合物をクロスカップリングさせることで、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリンが合成される。出発原料であるジベンゾ[b,d]チオフェン-4-ボロン酸は市販品として入手可能であるので、容易にC-N配位子となる含窒素化合物を合成できる。
【0029】
これに対して、本発明に係る有機イリジウム錯体である、特定位置にメチル基が導入された2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリンに関しては、その合成例の報告はこれまでなかった。
【0030】
本発明者等は、本発明の主題事項である、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート配位子へのメチル基の導入に想到した段階から、その合成方法について鋭意の検討を行っている。そして、その具体的手法として、C-N配位子の合成に関して以下のようなプロセスを見出した。
【0031】
この本発明に係る合成プロセスでは、出発原料としてジブロモアニリン又はメチル基が導入されたジブロモアニリン誘導体を用いる。そして、ジブロモアニリン(誘導体)と、フェニルボロン酸又はメチル基を有するフェニルボロン酸誘導体との鈴木・宮浦クロスカップリング反応によりビフェニルアミン誘導体からなる中間体1を得る工程と、この中間体1のアミノ基がヨウ素化された中間体2を合成する工程とを含む。更に、前記中間体2をメタクロロ過安息香酸等のペルオキソ酸で酸化し、環状ジベンゾヨードニウム化合物である中間体3を合成する工程を含む。この中間体3の合成は、本発明の合成方法における特徴的工程である。
【0032】
そして、中間体3にチオ酢酸塩を反応させてブロモジベンゾチオフェン誘導体である中間体4を合成した後、中間体4をリチオ化させ、ボロン酸エステルと反応及び加水分解させることで、1以上のメチル基が導入されたジベンゾチオフェン-ボロン酸誘導体である中間体5を合成する。このようにして中間体5として生成される多メチル置換のジベンゾチオフェン誘導体は、新規な物質であり、上記した中間体3の合成と共に本発明の錯体合成方法における特徴といえる。
【0033】
中間体5であるジベンゾチオフェン-ボロン酸誘導体の合成後は、無置換の2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート配位子の合成方法と同様である。即ち、中間体5と2-クロロキノリンとの鈴木・宮浦クロスカップリング反応によって、本発明のC-N配位子である、メチル基が導入された2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート配位子を合成することができる。
【0034】
尚、キノリン部位にメチル基が導入されたC-N配位子を合成する場合には、中間体5と2-クロロキノリン又は2-クロロキノリン誘導体(2-クロロ-4-メチルキノリン等)とを反応させることで、所望のC-N配位子を合成できる。2-クロロキノリン誘導体については、市販品又は既知の方法によって合成された化合物が適用できる。
【0035】
以上のように、本発明では中間体1~中間体5の合成を経て、C-N配位子である、置換基が導入された2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート配位子を合成する。このような反応ルートを適用するのは、狙った位置にメチル基が導入されたC-N配位子を合成するためである。本発明の合成プロセスは、異性化や位置選択性の問題を懸念することなく目的化合物を得ることができる。OLED用の発光材料には高純度であることが要求されることから、異性化等による純度低下のおそれのない本発明の方法には大きな利点がある。
【0036】
そして、メチル基が導入されたC-N配位子を合成した後は、上記したように、イリジウム塩とC-N配位子とを加熱反応させて前駆体を合成し、更に、前駆体と補助配位子とを反応させることで、本発明に係る有機イリジウム錯体を製造することができる。先にイリジウム塩と補助配位子とを反応させた後に、C-N配位子を反応させても良い。
【0037】
尚、上記の前駆体を合成するための加熱反応は、80℃~130℃、12~24時間で行うことが好ましい。また、補助配位子との加熱反応は、60℃~130℃、0.5~12時間で行うことが好ましい。これらの反応は、溶媒存在下で行うことが好ましい。
【0038】
以上説明した本発明に係る有機イリジウム錯体は、OLEDの発光層の発光ドーパントとして有用である。発光層は、本発明に係る有機イリジウム錯体の他、電子輸送材料、ホール輸送性ホスト材料等の成分を適宜に混合して構成される。発光層の形成は、スピンコート法、真空蒸着法等の方法により適切に形成される。
【発明の効果】
【0039】
本発明の有機イリジウム錯体は、従来の錯体よりもPL量子収率及び耐熱性が高く、OLEDの発光材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4のジクロロメタン溶液中での発光スペクトルを示す図。
図2】本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4のトルエン溶液中での発光スペクトルを示す図。
図3】本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4のPMMA薄膜中での発光スペクトルを示す図。
図4】本実施形態で作製したOLEDの構成を説明する図。
図5】本実施形態で作製したOLED(Device1~Device4)の電界発光スペクトルを示す図。
図6】本実施形態で作製したOLED(Device1~Device4)のJ-V-L曲線を示す図。
図7】OLEDの構造の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、C-N配位子として2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート及びその誘導体が配位し、補助配位子としてジピバロイルメタン(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタジオン)が配位した下記の4種の有機イリジウム錯体を合成し、その発光特性の評価を行った。下記4種の有機イリジウム錯体において、無置換の2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートをC-N配位子とするIr-1は、比較例となる従来の有機Ir錯体である。一方、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートのジベンゾチオフェン部位にメチル基を導入した、Ir-2、Ir-3、Ir-4が本実施形態に係る有機イリジウム錯体である。
【0042】
【化6】
【0043】
(I)有機イリジウム錯体(Ir-1~Ir-4)の合成
上記有機イリジウム錯体の合成では、(i)C-N配位子(C-N配位子(1)~C-N配位子(4)の合成を行った後、(ii)C-N配位子とイリジウム塩(塩化イリジウム)とを反応させて前駆体(前駆体(1)~前駆体(4)を合成した。そして、前駆体と補助配位子であるジピバロイルメタンを反応させて有機イリジウム錯体(Ir-1~Ir-4)を合成した。
【0044】
本実施形態における、有機イリジウム錯体(Ir-1~Ir-4)の合成スキームを下記に示す。下記のスキームにおいて、従来例となる有機イリジウム錯体(Ir-1)の合成は、市販のジベンゾチオフェン-ボロン酸を出発原料としてC-N配位子(1)を合成した後、前駆体(1)の合成を経て有機イリジウム錯体(Ir-1)を合成した。
【0045】
一方、本実施形態に係る有機イリジウム錯体(Ir-2~Ir-4)については、まず、出発原料としてジブロモアニリン誘導体を用いて中間体1a~1c、中間体2a~2c、中間体3a~3c、中間体4a~4c、中間体5a~5cを順次合成し、C-N配位子(2)~(4)を合成した。そして、Ir-1と同様にして前駆体(2)~(4)を合成して、有機イリジウム錯体(Ir-2~Ir-4)を合成した。
【0046】
【化7】
【0047】
尚、本実施形態において、出発原料及び合成に使用した試薬及び溶媒は、すべて市販の試薬グレードのものを精製することなく用いた。乾燥THFは、市販の脱水THFを購入し、そのまま用いた。また、カラムクロマトグラフィーに用いる充填剤として、ナカライテスク社製球状シリカゲル(中性)又は関東化学社製球状シリカゲル(中性)を用いた。
【0048】
また、合成した化合物の同定には、プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトル及び質量分析(マス(MS)スペクトル)を用いた。H NMRスペクトルの測定には、JEOL社製 JNM-ECX400分光光度計(400MHz)又はJEOL社製 JNM-ECS400分光光度計(400MHz)を用いた。MSスペクトルは、α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸(CHCA)をマトリックスとして、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI法)によってイオン化した試料を飛行時間(TOF)型質量分析によって測定した(MALDI-TOF-MSスペクトル)。測定にはShimadzu-Kratos AXIMA-CFR PLUS TOF Mass質量分析装置を用いた。元素分析は、アセトアニリドを標準物質として、ジェイ・サイエンスラボ製JM-10元素分析装置により測定した。
【0049】
有機イリジウム錯体Ir-1の合成
(i)C-N配位子(1)(2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナートの合成
炭酸カリウム(8.90g、64.4mmol)を水(225mL)に溶解させた水溶液を1000mL四つ口丸底フラスコに入れ、更に、ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イルボロン酸(4.72g、20.7mmol)、2-クロロキノリン(3.64g、22.3mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.94g、0.813mmol)、1,2-ジメトキシエタン(225mL)、エタノール(90mL)を丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で18時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(200mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(300mL)及び飽和食塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン、 v/v、4/1)で精製した。以上の操作により、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリナート(C-N配位子(1))を5.44g(17.5mmol)を合成した。この化合物は白色固体であり、収率84%であった。
【0050】
(ii)前駆体(1)の合成
上記で合成したC-N配位子(1)(5.23g,16.7mmol)、塩化イリジウム三水和物(2.95g,8.36mmol)、2-エトキシエタノール(330mL)及び水(65mL)を1000mL四つ口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で20時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、反応系中に生じた濃赤色沈殿を、吸引濾過によって回収した。以上の操作により、C-N配位子(1)とイリジウムとの前駆体(1)を合成した(収率76%(5.40g,3.18mmol)。
【0051】
(iii)有機イリジウム錯体(Ir-1)の合成
上記で合成した前駆体(1)(2.01g,1.18mmol)、ジピバロイルメタン(0.45mL,2.29mmol)、炭酸ナトリウム(2.04g,19.2mmol)及び2-エトキシエタノール(300mL)を500mL三つ口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で3時間、85℃で加熱攪拌した。放冷後、ジクロロメタン(200mL)及び水(200mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン, v/v,4/1)で精製した後、ヘキサンを加え、75℃で攪拌することにより洗浄を行い、吸引濾過によって回収して目的化合物である有機イリジウム錯体(Ir-1)を得た。この有機イリジウム錯体は赤色固体で収率68%(1.59g,1.60mmol)であった。また、以上の工程で合成した化合物のNMR等による特性は、以下の通りであった。
【0052】
H NMR(400 MHz, CDCl) δ0.59(s,18H),4.84(s,1H),6.83(d,J=7.8 Hz,2H),
7.30-7.52(m,10H),7.83-7.85(dd,J=8.2,1.4 Hz,2H),7.89-7.93(m,2H),7.97-7.99(m,2H),8.29(d,J=8.7 Hz,2H),8.38(d,J=8.7 Hz,2H),8.70(d,J=8.7 Hz,2H).13C NMR(100 MHz, CDCl) δ27.76,40.62,88.78,119.02,120.21,121.44,122.05,124.52,125.35,125.99,126.08,126.90,127.32,130.76,131.25,133.91,136.20,136.45,136.53,137.99,141.48,149.09,156.56,169.50,194.28.MALDI TOF-MS: m/z [M+H] Calcd.For5344IrN:997.24,Found:997.27.Anal.Calcd.for C5343IrN: C,63.90; H,4.35; N,2.81. Found: C,64.09; H,4.48; N,2.81.
【0053】
(A)有機イリジウム錯体Ir-2の合成
(A-i)C-N配位子(2)(2-(メチルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリン)の合成
C-N配位子(2)の合成は、2,6-ジブロモ-4-メチルアニリンを出発原料として、中間体1a、2a、3a、4a、5aを経て合成される。
【0054】
<中間体1a(3-ブロモ-5-メチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)の合成>
炭酸カリウム(33.2g,0.240mol)を水(120mL)に溶解させた水溶液を2000mL四つ口丸底フラスコに入れ、更に2,6-ジブロモ-4-メチルアニリン(20.1g,76.0mmol)、 フェニルボロン酸(6.35g,52.1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4.33g,3.74mmol)、トルエン(200mL)、エタノール(120mL)を丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で13時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(200mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン, v/v,1/3)で精製することにより、目的化合物である中間体1a(3-ブロモ-5-メチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)の白色固体を収率82%で得た(11.2g,42.7mmol)。
【0055】
<中間体2a(3-ブロモ-2-ヨード-5-メチル-1,1’-ビフェニル)の合成>
中間体1a(3-ブロモ-5-メチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)(6.02g,23.0mmol)、4M塩酸(65mL)及びテトラヒドロフラン(65mL)を1000mL四つ口丸底フラスコに入れ、冷媒のメタノール/アセトン及び液体窒素を入れたデュワーフラスコに浸して反応系を0℃に保った。そこに、滴下漏斗を用いて亜硝酸ナトリウム(2.01g,29.1mmol)を水(24mL)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下した。
【0056】
反応系を0℃で20分攪拌した後、ヨウ化カリウム(9.53g,57.4mmol)を水(36mL)に溶解させた水溶液を加えた。0℃で10分攪拌した後、デュワーフラスコを取り除き、徐々に室温に戻しながら更に1時間攪拌した。この時、系中は茶色であった。ここに飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を、系中の色が淡黄色になるまで加え、15分攪拌した。その後、酢酸エチル(200mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(300mL)及び飽和食塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。
【0057】
そして、残渣をクロロホルムに溶解させ、そこにシリカゲルを50g加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することによってシリカゲルに吸着させた。そして、クロマトカラム管(φ:60mm)に展開溶媒を含んだ250gのシリカゲルを詰め、先ほどの残渣を吸着させたシリカゲルを上に詰めて、すばやく溶媒を展開することで(展開溶媒:ヘキサン)精製した。以上の操作により、目的化合物である中間体2a(3-ブロモ-2-ヨード-5-メチル-1,1’-ビフェニル)の白色固体を収率38%で得た(3.28g,8.81mmol)。
【0058】
<中間体3a(4-ブロモ-2-メチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)の合成>
中間体2a(3-ブロモ-2-ヨード-5-メチル-1,1’-ビフェニル)(3.07g,8.25mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(3.0mL,33.9mmol)、m-クロロ過安息香酸(約30%含水)(3.03g,12.3mmol)、脱水ジクロロメタン(36mL)を100mL三つ口丸底フラスコに入れ窒素雰囲気、室温下で1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を8割ほど留去した。ここにジエチルエーテル(45mL)を加え、再び室温下で攪拌したのち、沈殿物を吸引濾過によって回収した。以上の操作により、環状ジベンゾヨードニウム化合物である中間体3a(4-ブロモ-2-メチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)の白色固体を収率96%で得た(4.13g,7.93mmol)。
【0059】
<中間体4a(4-ブロモ-2-メチルジベンゾ[b,d]チオフェン)の合成>
中間体3a(4-ブロモ-2-メチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)(4.25g,8.15mmol)、チオ酢酸カリウム(1.86g,16.3mmol)、塩化銅(II)(無水)(43.5mg,0.324mmol)、水素化カルシウムで乾燥後蒸留によって得た脱水ジメチルスルホキシド(30mL)を100mL三つ口丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で20時間、110℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(30mL)及び水(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(30mL)及び飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をクロロホルムに溶解させ、そこにシリカゲルを20g加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することによってシリカゲルに吸着させた。そして、クロマトカラム管(φ:46mm)に展開溶媒を含んだ100gのシリカゲルを詰め、先ほどの残渣を吸着させたシリカゲルを上に詰めて、すばやく溶媒を展開することで(展開溶媒:ヘキサン)精製した。以上の操作によりブロモジベンゾチオフェン誘導体である中間体4a(4-ブロモ-2-メチルジベンゾ[b,d]チオフェン)の淡黄色固体を収率77%で得た(1.74g,6.27mmol)。
【0060】
<中間体5a((2-メチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)の合成>
中間体4a(4-ブロモ-2-メチルジベンゾ[b,d]チオフェン)(4.24g,15.3mmol)、脱水テトラヒドロフラン(45.0mL)を窒素雰囲気にした100mL三つ口丸底フラスコに入れ、液体窒素及び冷媒としてメタノール/アセトンを入れたデュワーフラスコに浸して反応系を-78℃に冷却した。そこに、滴下漏斗を用いて1.6Mのn-ブチルリチウム(12.0mL,19.2mmol)をゆっくりと滴下し、-78℃で1.5時間攪拌した。その後、滴下漏斗を用いてほう酸トリイソプロピル(11.0mL,71.3mmol)を滴下した後、ゆっくりと室温に戻しながら、18時間攪拌した。その後、4M塩酸を75mL加え、更に室温下で1時間攪拌した。反応後、ジクロロメタン(50mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除き、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣を10mLのジクロロメタンに溶かした後、50mLのヘキサンを加えると、再沈殿によって白色固体が析出した。これを吸引濾過によって回収した。TLC上にて、R=0(展開溶媒:クロロホルム)のスポットのみ確認された。これ以上の精製は行わずに、次の反応に用いた。以上の操作により中間体5a((2-メチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)を収率67%(2.49g,10.3mmol)で合成した。
【0061】
・C-N配位子(2)の合成
炭酸カリウム(13.5g,97.7mmol)を水(280mL)に溶解させた水溶液を2L三つ口丸底フラスコに入れ、更に中間体5a((2-メチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)(6.76g,27.9mmol)、2-クロロキノリン(4.88g,29.8mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.70g,1.47mmol)、1.2-ジメトキシエタン(280mL)、エタノール(120mL)を丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で18時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(200mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン, v/v,2/3)で精製することにより、C-N配位子(2)である2-(メチルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリンの淡黄色固体を収率97%で得た(8.83g,27.1mmol)。
【0062】
(A-ii)前駆体(2)の合成
上記で合成したC-N配位子(2)(0.732g,2.25mmol)、塩化イリジウム三水和物(0.397g,1.12mmol)、2-エトキシエタノール(40mL)及び水(8mL)を100mL二口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気で20時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、反応系中に生じた橙色沈殿を、吸引濾過吸引濾過によって回収した。以上の操作により、C-N配位子(2)とイリジウムとの前駆体(2)を合成した(収率56%(0.554g,0.316mmol)。
【0063】
(A-iii)有機イリジウム錯体(Ir-2)の合成
上記で合成した前駆体(2)(152mg,0.0867mmol)、ジピバロイルメタン(0.1mL,0.488mmol)、炭酸ナトリウム(96.2mg,0.911mmol)及び2-エトキシエタノール(20mL)を50mL二口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で3時間、85℃で加熱攪拌した。放冷後、ジクロロメタン(20mL)及び水(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン, v/v,1/1)で精製した後、ヘキサンを加え、75℃で攪拌することにより洗浄を行い、吸引濾過によって回収して目的化合物である有機イリジウム錯体(Ir-2)を得た。この有機イリジウム錯体は赤色固体で収率5.2%(9.1mg,0.00864mmol)であった。また、以上の工程で合成した化合物のNMR等による特性は、以下の通りであった。
【0064】
H NMR(400 MHz, CDCl) δ0.55(s,18H),1.51(s,6H),4.59(s,1H),7.20-7.24(m,2H),7.36-7.41(m,2H),7.42-7.46(m,4H),7.56(s,2H),7.68(d,J=9.2 Hz,2H),7.74(d,J=6.8 Hz,2H),7.93-7.96(m,4H),8.08-8.10(m,4H),8.29(d,J=9.2 Hz,2H),8.73(d,J=9.2 Hz,2H).13C NMR(100 MHz, CDCl) δ23.77,28.14,29.79,88.39,119.79,120.45,120.94,122.21,124.57,125.42,125.45,125.70,126.34,127.34,130.49,132.10,133.33,136.15,137.04,143.89,149.50,154.43,170.36,193.55. ESI-MS: m/z [M+H] Calcd.For5548IrN:1025.28, Found:1025.27. Anal.Calcd.for C5547IrN: C,64.49; H,4.63; N,2.73. Found: C,64.24; H,4.67; N,2.70.
【0065】
(B)有機イリジウム錯体Ir-3の合成
(B-i)C-N配位子(3)(2-(6,8-ジメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリン)の合成
C-N配位子(3)の合成は、2,6-ジブロモアニリンを出発原料として、中間体1b、2b、3b、4b、5bを経て合成される。
【0066】
<中間体1b(3-ブロモ-3’,5’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)の合成>
炭酸カリウム(13.0g,93.7mmol)を水(60mL)に溶解させた水溶液を1000mL四つ口丸底フラスコに入れ、更に2,6-ジブロモアニリン(10.1g,40.1mmol)、3,5-ジメチルフェニルボロン酸(4.05g,27.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.61g,1.39mmol)、トルエン(200mL)、エタノール(60mL)を丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で20時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(150mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン, v/v,2/3)で精製することにより、目的化合物である中間体1b(3-ブロモ-3’,5’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)の白色固体を収率42%で得た(3.13g,11.3mmol)。
【0067】
<中間体2b(3-ブロモ-2-ヨード-3’,5’-メチル-1,1’-ビフェニル)の合成>
中間体1b(3-ブロモ-3’,5’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)(3.08g,11.2mmol)、4Mの塩酸(32mL)及びテトラヒドロフラン(32mL)を500mL三つ口丸底フラスコに入れ、液体窒素及び冷媒としてメタノール/アセトンを入れたデュワーフラスコに浸して反応系を0℃まで冷却した。そこに、滴下漏斗を用いて亜硝酸ナトリウム(1.05g,15.2mmol)を水(12mL)に溶解させた水溶液をゆっくりと滴下した。
【0068】
反応系を0℃で20分攪拌した後、ヨウ化カリウム(4.74g,28.6mmol)を水(18mL)に溶解させた水溶液を加えた。0℃にて10分攪拌した後、デュワーフラスコを取り除き、ゆっくりと室温に戻しながら更に1時間攪拌した。この時、系中は茶色であった。ここに飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を、系中の色が淡黄色になるまで加え、15分攪拌した。その後、酢酸エチル(100mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(100mL)及び飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。
【0069】
そして、残渣をクロロホルムに溶解させ、そこにシリカゲルを25g加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することによってシリカゲルに吸着させた。そして、クロマトカラム管(φ:46mm)に展開溶媒を含んだ125gのシリカゲルを詰め、先ほどの残渣を吸着させたシリカゲルを上に詰めて、すばやく溶媒を展開することで(展開溶媒:ヘキサン)精製した。目的化合物である中間体2b(3-ブロモ-2-ヨード-3’,5’-メチル-1,1’-ビフェニル)収率49%(2.11g,5.46mmolで得た。この化合物は、粘度の高い透明液体であった。
【0070】
<中間体3b(6-ブロモ-2,4-ジメチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)の合成>
中間体2b(3-ブロモ-2-ヨード-3’,5’-メチル-1,1’-ビフェニル)(2.08g,5.37mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(1.4mL,15.9mmol)、m-クロロ過安息香酸(約30%含水)(1.78g,7.22mmol)、脱水ジクロロメタン(20mL)を100mL三つ口丸底フラスコに入れ窒素雰囲気、室温下にて1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を8割ほど留去した。ここにジエチルエーテル(20mL)を加え、室温下で30分攪拌したのち、生じた沈殿物を吸引濾過によって回収した。以上の操作により、環状ジベンゾヨードニウム化合物である中間体3b(6-ブロモ-2,4-ジメチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)の白色固体を収率90%で得た(2.57g,4.83mmol)。
【0071】
<中間体4b(6-ブロモ-2,4-メチルジベンゾ[b,d]チオフェン)の合成>
中間体3b(6-ブロモ-2,4-ジメチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)(2.50g,4.69mmol)、チオ酢酸カリウム(1.08g,9.46mmol)、塩化銅(II)(無水)(25.3mg,0.188mmol)、水素化カルシウムで乾燥後蒸留によって得た脱水ジメチルスルホキシド(15mL)を50mL二口丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で20時間、110℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(20mL)及び水(20mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(20mL)及び飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をクロロホルムに溶解させ、そこにシリカゲルを20g加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することによってシリカゲルに吸着させた。そして、クロマトカラム管(φ:32mm)に展開溶媒を含んだ100gのシリカゲルを詰め、先ほどの残渣を吸着させたシリカゲルを上に詰めて、すばやく溶媒を展開することで(展開溶媒:ヘキサン)精製した。得られた白色固体は、エタノール中にて再結晶を行った。以上の操作によりブロモジベンゾチオフェン誘導体である中間体4b(6-ブロモ-2,4-メチルジベンゾ[b,d]チオフェン)の白色固体を収率43%で得た(0.585g,2.01mmol)。
【0072】
<中間体5b((6,8-ジメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)の合成>
中間体4b(6-ブロモ-2,4-メチルジベンゾ[b,d]チオフェン)(0.579g,1.99mmol)、脱水テトラヒドロフラン(8mL)を窒素雰囲気にした100mL三つ口丸底フラスコに入れ、液体窒素及び冷媒としてメタノール/アセトンを入れたデュワーフラスコに浸して反応系を-78℃に冷却した。そこに、滴下漏斗を用いて1.6Mのn-ブチルリチウム(1.6mL,2.56mmol)をゆっくりと滴下し、-78℃で1.5時間攪拌した。その後、滴下漏斗を用いてほう酸トリイソプロピル(3.2mL,14.0mmol)を滴下した後、ゆっくりと室温に戻しながら、18時間攪拌した。その後、4Mの塩酸を8mL加え、更に室温下で1時間攪拌した。反応後、ジクロロメタン(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除き、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣を5mLのジクロロメタンに溶かした後、30mLのヘキサンを加えると、再沈殿によって白色固体が析出した。これを吸引濾過によって回収した。TLC上にて、R=0(展開溶媒:クロロホルム)のスポットのみ確認された。これ以上の精製は行わずに、次の反応に用いた。以上の操作により中間体5b((6,8-ジメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)を収率60%(0.306g,1.19mmol)で合成した。
【0073】
・C-N配位子(3)の合成
炭酸カリウム(0.516g,3.69mmol)を水(12mL)に溶解させた水溶液を100mL二口丸底フラスコに入れ、更に中間体5b(6,8-ジメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)(0.298g,1.16mmol)、2-クロロキノリン(0.192g,1.17mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(62.3mg,0.0537mmol)、1,2-ジメトキシエタン(12mL)、エタノール(5mL)を丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で18時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(20mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(20mL)及び飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン, v/v,2/3)で精製することにより、C-N配位子(3)である2-(6,8-ジメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリンの白色固体を収率73%で得た
【0074】
(B-ii)前駆体(3)の合成
上記で合成したC-N配位子(3)(0.270g,0.795mmol)、塩化イリジウム三水和物(0.140g,0.396mmol)、2-エトキシエタノール(15mL)及び水(3mL)を50mL二口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で20時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、反応系中に生じた濃赤色沈殿を、吸引濾過によって回収した。以上の操作により、C-N配位子(3)とイリジウムとの前駆体(3)を合成した(収率48%(172mg,0.0954mmol))。
【0075】
(B-iii)有機イリジウム錯体(Ir-3)の合成
上記で合成した前駆体(3)(156mg,0.0862mmol)、ジピバロイルメタン(0.1mL,0.488mmol)、炭酸ナトリウム(96.2mg,0.911mmol)及び2-エトキシエタノール(20mL)を50mL二口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で15分間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、ジクロロメタン(30mL)及び水(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン, v/v,1/1)で精製した。その後、シクロヘキサンを加え、85℃で攪拌することにより溶媒洗浄し、放冷後、沈殿固体を吸引濾過によって回収して目的化合物である有機イリジウム錯体(Ir-3)を得た。この有機イリジウム錯体は赤色固体で収率40%(72.5mg,0.0690mmol)であった。また、以上の工程で合成した化合物のNMR等による特性は、以下の通りであった。
【0076】
H NMR(400 MHz, CDCl)δ0.52(s,18H),2.36(s,6H),2.58(s,6H),4.82(s,1H),6.71(d,J=8.2 Hz,2H),7.01(s,2H) ,7.27-7.33(m,4H),7.43(t,J=7.1 Hz,2H),7.57(s,2H),7.82(d,J=7.8 Hz2H),8.25(d,J=7.8 Hz2H),8.38(d,J=7.8 Hz2H),8.72(d,J=7.8 Hz,2H).13C NMR(100 MHz, CDCl) δ20.43,21.62,27.78,40.62,88.69,118.01,119.14,121.64,125.89,126.07,127.00,127.29,127.40,130.66,131.14,131.83,133.56,133.90,134.58,136.24,136.72,137.89,141.46,149.11,156.33,169.61,194.23.MALDI TOF-MS: m/z [M] Calcd.For5751IrN:1052.30, Found:1052.32. Anal.Calcd.For C5751IrN: C,65.05; H,4.88; N,2.66. Found: C,64.93; H,4.83; N,2.52.
【0077】
(C)有機イリジウム錯体Ir-4の合成
(C-i)C-N配位子(4)(2-(6,6,8-トリメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリン)の合成
C-N配位子(4)の合成は、2,6-ジブロモ-4-メチルアニリンを出発原料として、中間体1c、2c、3c、4c、5cを経て合成される。
【0078】
<中間体1c(3-ブロモ-3’,5,5’-トリメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)の合成>
炭酸カリウム(3.96g,0.286mol)を水(90mL)に溶解させた水溶液を1000mL四つ口丸底フラスコに入れ、更に2,6-ジブロモ-4-メチルアニリン(15.06g,56.9mmol)、3,5-ジメチルフェニルボロン酸(5.66g,37.8mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.14g,1.85mmol)、トルエン(450mL)、エタノール(90mL)を丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で20時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(200mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン, v/v,2/3)で精製した。得られた淡黄色固体を、エタノール中で再結晶することによって、目的化合物である中間体1c(3-ブロモ-3’,5,5’-トリメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)の白色固体を収率38%で得た(4.16g,14.4mmol)。
【0079】
<中間体2c(3-ブロモ-2-ヨード-3’,5,5’-トリメチル-[1,1’-ビフェニル)の合成>
中間体1c(3-ブロモ-3’,5,5’-トリメチル-[1,1’-ビフェニル]-2-アミン)(4.10g,14.1mmol)、4Mの塩酸(40mL)及びテトラヒドロフラン(40mL)を500mL三つ口丸底フラスコに入れ、冷媒としてメタノール/アセトン及び液体窒素を入れたデュワーフラスコに浸して反応系を0℃に冷却した。そこに、亜硝酸ナトリウム(1.21g,17.5mmol)を水(15mL)に溶かした水溶液を滴下漏斗でゆっくりと滴下した。
【0080】
反応系を0℃で20分攪拌した後、水(25mL)に溶かしたヨウ化カリウム(5.95g,35.9mmol)水溶液を加えた。0℃で10分攪拌した後、デュワーフラスコを取り除き、徐々に室温に戻しながら更に1時間攪拌した。この時、系中は茶色であった。ここに飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を、系中の色が淡黄色になるまで加え、15分攪拌した。その後、酢酸エチル(150mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。
【0081】
そして、残渣をクロロホルムに溶解させ、そこにシリカゲルを50g加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することによって、残渣をシリカゲルに吸着させた。その後、クロマトカラム管(φ:60mm)に展開溶媒を含んだ250gのシリカゲルを詰め、先ほど残渣を吸着させたシリカゲルを上に詰めた。すばやく溶媒を展開し、精製を行った。展開溶媒にはヘキサンを用いた。以上より、目的化合物である中間体2c(3-ブロモ-2-ヨード-3’,5,5’-トリメチル-1,1’-ビフェニル)を収率49%(2.77g,6.90mmol)。で得た。この化合物は高い粘性の透明液体であった。
【0082】
<中間体3c(4-ブロモ-2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)の合成>
中間体2c(3-ブロモ-2-ヨード-3’,5,5’-トリメチル-1,1’-ビフェニル)(2.65g,6.61mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(1.7mL,19.3mmol)、m-クロロ過安息香酸(約30%含水)(2.14g,8.66mmol)、脱水ジクロロメタン(25mL)を100mL三つ口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温で1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を8割ほど留去した。ここにジエチルエーテル(25mL)を加え、室温下で30分攪拌したのち、生じた沈殿を吸引濾過によって回収した。以上の操作により、環状ジベンゾヨードニウム化合物である中間体3c(4-ブロモ-2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)の白色固体を収率93%で得た(3.38g,6.15mmol)。
【0083】
<中間体4c(4-ブロモ-2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]チオフェン)の合成>
中間体3c(4-ブロモ-2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]ヨードル-5-イウムトリフルオロメタンスルホン酸塩)(3.35g,6.10mmol)、チオ酢酸カリウム(1.40g,12.2mmol)、塩化銅(II)(無水)(32.4 mg,0.241mmol)、水素化カルシウムで乾燥後蒸留によって得た脱水ジメチルスルホキシド(25mL)を50mL二口丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下にて20時間、110℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(30mL)及び水(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(40mL)及び飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をクロロホルムに溶解させ、そこにシリカゲルを20g加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去することによってシリカゲルに吸着させた。そして、クロマトカラム管(φ:32mm)に展開溶媒を含んだ100gのシリカゲルを詰め、先ほどの残渣を吸着させたシリカゲルを上に詰めて、すばやく溶媒を展開することで(展開溶媒:ヘキサン)精製した。得られた白色固体をエタノール中で再結晶を行った。以上の操作によりブロモジベンゾチオフェン誘導体である中間体4c(4-ブロモ-2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]チオフェン)の白色固体を収率47%で得た(0.876g,2.87mmol)。
【0084】
<中間体5c((2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)の合成>
中間体4c(4-ブロモ-2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]チオフェン)(0.865g,2.83mmol)、脱水テトラヒドロフラン(12mL)を窒素雰囲気にした100mL三つ口丸底フラスコに入れ、液体窒素及び冷媒としてメタノール/アセトンを入れたデュワーフラスコに浸して反応系を-78℃まで冷却した。そこに、滴下漏斗を用いて1.6Mのn-ブチルリチウム(2.5mL,3.88mmol)をゆっくりと滴下し、-78℃で1.5時間攪拌した。その後、滴下漏斗を用いてほう酸トリイソプロピル(4.8mL,20.9mmol)を滴下した後、デュワーフラスコを取り除いて徐々に室温に戻しながら、18時間攪拌した。その後、4Mの塩酸を12mL加え、更に室温下で1時間攪拌した。反応後、ジクロロメタン(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた後に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣を10mLのジクロロメタンに溶かした後、50mLのヘキサンを加え、沈殿した白色固体を吸引濾過によって回収した。中間体5c((2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)を収率62%(0.474g,1.75mmol)で合成した。
【0085】
・C-N配位子(4)の合成
水(20mL)に溶解させた炭酸カリウム(0.782g,5.66mmol)水溶液を100mL三つ口丸底フラスコに入れ、更に中間体5c((2,6,8-トリメチルジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)ボロン酸)(0.470g,1.74mmol)、2-クロロキノリン(0.290g,1.77mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(92.1 mg,0.0797mmol)、1,2-ジメトキシエタン(20mL)、エタノール(8mL)を丸底フラスコに入れ窒素雰囲気下で18時間、100℃で加熱攪拌した。放冷後、クロロホルム(50mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を水(50mL)及び飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン, v/v,4/1)で精製することにより、C-N配位子(3)である2-(2,6,8-トリメチルベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)キノリンの白色固体を収率73%(0.466g,1.27mmol)で得た
【0086】
(C-ii)前駆体(4)の合成
上記で合成したC-N配位子(4)(0.410g,1.15mmol)、塩化イリジウム三水和物(0.204g,0.581mmol)、2-エトキシエタノール(30mL)及び水(6mL)を100mL二口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で20時間、110℃で加熱攪拌した。放冷後、反応系中に生じた赤色沈殿を、吸引濾過によって回収した。以上の操作により、C-N配位子(4)とイリジウムとの前駆体(4)を合成した(収率47%(0.252g,0.135mmol))。
【0087】
(C-iii)有機イリジウム錯体(Ir-4)の合成
上記で合成した前駆体(4)(212mg,0.114mmol)、ジピバロイルメタン(0.1mL,0.488mmol)、炭酸ナトリウム(110mg,1.04mmol)及び2-エトキシエタノール(30mL)を50mL二口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下において85℃で3時間加熱攪拌した。放冷後、ジクロロメタン(30mL)及び水(30mL)を加えて分液漏斗中で振とうし、水層を取り除いた。更に有機層を飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン, v/v,1/1)で精製した後、ヘキサンを加え、75℃で攪拌することにより溶媒洗浄し、吸引濾過によって目的化合物である有機イリジウム錯体(Ir-4)を得た。この有機イリジウム錯体は赤色固体で収率3.8%(9.4mg,0.0866mmol)であった。また、以上の工程で合成した化合物のNMR等による特性は、以下の通りであった。
【0088】
H NMR(400MHz, CDCl) δ0.54(s,18H),1.49(s,3H),2.49(s,3H),2.68(s,3H),4.58(s,1H),7.08(s,2H),7.16-7.21(m,2H),7.35-7.37(m,2H),7.51(s,2H),7.66(d,J=8.7 Hz,2H),7.72-7.74(m,4H),8.28(d,J=8.7 Hz,2H),8.79(d,J=9.2 Hz,2H).13C NMR(100 MHz, CDCl) δ20.54,21.59,23.75,28.15,40.61,88.36,118.20,119.90,121.17,124.85,125.58,126.39,127.30,127.48,130.39,131.38,132.69,134.14,134.60,136.04,136.84,142.31,143.80,148.81,159.68,168.49,187.84,193.55.ESI-MS: m/z [M+H] Calcd.For5956IrN:1081.34, Found:1081.37. Anal.Calcd.For C5955IrN: C,65.59; H,5.13; N,2.59. Found: C,65.37; H,4.77; N,2.59.
【0089】
(II)各有機イリジウム錯体の特性評価
上記のようにして合成した有機イリジウム錯体(Ir-1~Ir-4)について、光学特性(発光スペクトル、PL量子収率)の測定・評価を行った。また、各イリジウム錯体を用いたOLEDを作製し、EL特性を評価した。
【0090】
[有機イリジウム錯体の発光特性の測定・評価]
各有機イリジウム錯体について、発光(PL)スペクトル及びPL量子収率ΦPLを測定した。PLスペクトルの測定では、堀場製作所社製Fluorolog-3分光光度計を用いた。PL量子収率の測定では、浜松ホトニクス社製C9920-12量子収率測定装置を用いた。
【0091】
発光特性の評価は、媒質として、有機溶媒(ジクロロメタン(CHCl)、トルエン)中における特性評価と、高分子薄膜(ポリメタクリル酸メチル(PMMA))中における特性評価を行った。有機溶媒は、いずれも分光分析用ジクロロメタン及び分光分析用トルエンであり、測定は光路長1cmのセルにサンプルを入れて測定した。
【0092】
また、PMMA薄膜は、アルゴン雰囲気下でPMMA1g及び有機イリジウム錯体0.04mmolを脱水トルエンに溶かし、この溶液をシリンジフィルターを通して滴下してスピンコートにより製膜した(2000rpmで2秒、4000rpmで60秒)。そして、115℃で1時間焼成してPMMA薄膜として測定した。
【0093】
<有機溶媒中の発光特性>
本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4の有機溶媒(ジクロロメタン溶液、トルエン溶液)の発光スペクトルを図1図2に示す。また、有機溶媒中での発光特性の測定結果をまとめたものを表1、表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4の発光波長(λPL)は、ジクロロメタン溶液で619nm~629nm(表1)、トルエン溶液で616nm~627nm(表2)であり、赤橙もしくは赤色の発光を示した。そして、いずれの有機溶媒中でも、本実施形態に係るメチル基を導入した有機イリジウム錯体(Ir2~Ir-4)において、無置換の有機イリジウム錯体(Ir-1)に対して発光が長波長側へのシフト(レッドシフト)を示していた。また、発光の半値幅(FWHM)を参照すると、Ir-2~Ir-4は、Ir-1に比べて小さい傾向にあった。従って、本実施形態に係るメチル基を導入した有機イリジウム錯体(Ir2~Ir-4)は、メチル基導入により、色純度が向上した赤色りん光を示すことが確認された。
【0097】
PL量子効率(ΦPL)の測定結果を参照すると、いずれの有機イリジウム錯体も0.7を超える高い値を示した。そして、いずれの有機溶媒中でも、本実施形態に係るメチル基を導入した有機イリジウム錯体(Ir2~Ir-4)は、無置換の有機イリジウム錯体(Ir-1)に対して、ΦPLが向上していることが確認された。
【0098】
<PMMA薄膜中の発光特性>
本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4を含むPMMA薄膜の発光スペクトルを図3に示す。また、有機溶媒中での発光特性の測定結果をまとめたものを表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
本実施形態で合成した有機イリジウム錯体Ir-1~Ir-4のPMMA薄膜中の発光特性は、上記有機溶媒における発光特性と傾向として類似する。これらのλPLは、616nm~627nmの赤橙もしくは赤色の発光を示した。そして、本実施形態に係るメチル基を導入した有機イリジウム錯体(Ir2~Ir-4)は、従来例である無置換の有機イリジウム錯体(Ir-1)に対して発光がレッドシフトしていた。そして、ΦPLを参照すると、いずれの有機イリジウム錯体も0.75を超える値を示した。特に、Ir2、Ir-4は、Ir-1に対してΦPLが向上し0.85超の高い値であった。
【0101】
また、Ir-3の結果を見ると、FWHMがIr-1よりも幅広となっており、ΦPLもIr-1よりも低い値となっていた。このことから、メチル基の導入位置としては、2’位への導入を優先すべきであると考えられる。Ir-3は、発光特性がやや劣る面はあるものの、無置換の錯体に対するレッドシフトがあることから有意な錯体である。
【0102】
[有機イリジウム錯体の電界発光特性の評価]
本実施形態で合成した有機イリジウム錯体(Ir-1~Ir-4)の電界発光特性を検討するため、有機電界発光素子(OLED)を作製してその性能を評価した。
【0103】
本実施形態で作製したOLEDの構成を図4に示す。OLEDの作製においては、陽極(ITO)を成膜したガラス基板(20×25mm)上に、ホール注入層としてイソプロピルアルコール/水=1/1(v/v)に溶かしたPEDOT:PSS(ポリ(3,4- エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))をスピンコートによって塗布し焼成した。
【0104】
次に、発光ドーパントである有機イリジウム錯体(Ir-1~Ir-4)、電子輸送材料であるPBD(2-(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-ビフェニルイル)-1,3,4-オキサジアゾール)、ホール輸送性ホスト材料であるPVCz(ポリ(N-ビニルカルバゾール))を質量比で0.4:6:10で混合し、トルエンに溶解させた溶液をスピンコートにて塗布し、焼成することで発光層を形成した。
【0105】
そして、発光層の上に、フッ化セシウム、アルミニウムを順次、真空蒸着にて積層し、陰極を形成した。以上の工程により作製されたIr-1~Ir-4によるOLEDを、それぞれDevice1~Device4と称する。
【0106】
<OLED特性の評価>
上記工程で得られたOLED(Device1~Device4)を、スライドガラスとUV硬化エポキシ樹脂を用いて封止し、有機EL特性評価用のサンプルを作製した。そして、電界発光特性を評価した。本実施形態では、各DeviceのELスペクトル、最大輝度Lmax(cd/m)、最大外部量子効率ηexT,max(%)及びCIE表色系(x,y)等のOLED特性を、輝度配光特性測定装置(浜松ホトニクス社製、C-9920-11)により測定した。
【0107】
表4に、Device1~Device4の発光開始電圧VTurn-on(V)、最大輝度Lmax(cd/m)、最大外部量子効率ηext,max(%)、最大電流効率ηj,max(cd/A)、最大電力効率ηp,max(lm/W)、ELスペクトルにおけるピーク波長λEL(nm)、及びCIE(x,y)の結果を示す。発光開始電圧VTurn-onは輝度が1cd/mに達した電圧を表す。また、Lmax等については、[ ]内に測定時の印加電圧(@V)も合わせて示した。尚、CIE(x,y)は、最大輝度時における発光のCIE色度座標である。
【0108】
また、図5図6は、各OLEDデバイスの最大輝度Lmax時に測定された、電界発光(EL)スペクトルとJ-V-L曲線を示す。
【0109】
【表4】
【0110】
ELスペクトル及び電界発光波長(λEL)について検討すると、Device1~Device4は、λELが615nm~633nmの赤色電界発光を示した。この結果は、上述した有機溶媒中、PMMA薄膜中で示したスペクトルと同様である。そして、メチル基を導入した有機イリジウム錯体(Ir-2~Ir-4)をドーパントとしたDevice2~Device4は、Device1(Ir-1)と比較して、より長波長な電界発光が得られた。また、ELスペクトルのFWHMも狭くなっている。よって、本実施形態の有機イリジウム錯体(Ir-2~Ir-4)は、赤色りん光材料としてOLEDの発光層の発光ドーパントとして効果的であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の有機イリジウム錯体は、PL量子効率(ΦPL)が高く色純度(赤色)に優れた赤色りん光材料である。本発明によれば、有機電界発光素子を利用するディスプレイ等において、赤色発光のためのドーパントとして有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7