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特許7219900無線通信方法、無線通信システム、基地局装置、無線端末、及び無線通信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】無線通信方法、無線通信システム、基地局装置、無線端末、及び無線通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/16 20090101AFI20230202BHJP
   H04W 88/10 20090101ALI20230202BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20230202BHJP
【FI】
H04W48/16 132
H04W88/10
H04W88/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020034682
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141355
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若尾 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】河村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】アベセカラ ヒランタ
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】金子 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】ティハーリー ディン
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159898(WO,A1)
【文献】特表2012-504354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波帯で無線通信を行う1つ以上の高周波帯基地局、前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線通信を行う1つ以上の低周波帯基地局、並びに前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局のいずれとも無線通信を可能にされた複数の無線端末を備えた無線通信システムが行う無線通信方法において、
遮蔽物により電波を遮蔽されていない前記無線端末が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を前記高周波帯基地局が判定する高周波接続判定工程と、
前記高周波接続判定工程により接続を許可した前記無線端末に対し、高周波帯における接続許可を前記高周波帯基地局が応答する高周波応答制御工程と、
前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した前記無線端末に対し、当該無線端末が送信する接続要求に対する接続の可否を前記低周波帯基地局が判定する低周波接続判定工程と、
前記低周波接続判定工程により接続を許可した前記無線端末に対し、低周波帯における接続許可を前記低周波帯基地局が応答する低周波応答制御工程と、
前記無線端末それぞれが前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局それぞれからの応答、及び前記低周波帯基地局における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局を接続先として選択する学習を行う学習処理工程と
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記学習処理工程では、
前記無線端末が現在の接続にかかる状態を検知し、次に前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局に接続を要求する行動に対する報酬を取得して、前記状態及び前記行動の組合せの有効性を前記報酬により補正する強化学習を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
高周波帯で無線通信を行う1つ以上の高周波帯基地局、前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線通信を行う1つ以上の低周波帯基地局、並びに前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局のいずれとも無線通信を可能にされた複数の無線端末を備えた無線通信システムにおいて、
前記高周波帯基地局は、
遮蔽物により電波を遮蔽されていない前記無線端末が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を判定する高周波接続判定部と、
前記高周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、高周波帯における接続許可を応答する高周波応答制御部と
を有し、
前記低周波帯基地局は、
前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した前記無線端末に対し、当該無線端末が送信する接続要求に対する接続の可否を判定する低周波接続判定部と、
前記低周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、低周波帯における接続許可を応答する低周波応答制御部と
を有し、
前記無線端末それぞれは、
前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局それぞれからの応答、及び前記低周波帯基地局における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局を接続先として選択する学習を行う学習処理部
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
前記学習処理部は、
当該無線端末の現在の接続にかかる状態を検知し、次に前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局に接続を要求する行動に対する報酬を取得して、前記状態及び前記行動の組合せの有効性を前記報酬により補正する強化学習を行うこと
を特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
高周波帯で無線端末と無線通信を行う高周波帯基地局、及び前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線端末と無線通信を行う低周波帯基地局の少なくとも1つを備えた基地局装置において、
前記高周波帯基地局は、
遮蔽物により電波を遮蔽されていない前記無線端末が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を判定する高周波接続判定部と、
前記高周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、高周波帯における接続許可を応答する高周波応答制御部と
を有し、
前記低周波帯基地局は、
前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した前記無線端末に対し、当該無線端末が送信する接続要求に対する接続の可否を判定する低周波接続判定部と、
前記低周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、低周波帯における接続許可を応答する低周波応答制御部と
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項6】
高周波帯で無線通信を行う1つ以上の高周波帯基地局、及び前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線通信を行う1つ以上の低周波帯基地局のいずれとも無線通信を可能にされた無線端末において、
当該無線端末が遮蔽物により電波を遮蔽されていない場合に送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対して接続を許可した前記高周波帯基地局、及び前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した場合に接続を許可した前記低周波帯基地局それぞれからの応答、及び前記低周波帯基地局における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局を接続先として選択する学習を行う学習処理部と、
前記学習処理部が接続先として選択した前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局に対して接続要求を行う接続要求制御部と
を有することを特徴とする無線端末。
【請求項7】
請求項5に記載の基地局装置の各部としてコンピュータを機能させるための無線通信プログラム。
【請求項8】
請求項6に記載の無線端末の各部としてコンピュータを機能させるための無線通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方法、無線通信システム、基地局装置、無線端末、及び無線通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信を用いた幅広いサービスやニーズをもとに、次世代移動通信システムとして第五世代移動通信システム(5G)の検討が進められている。5Gの特徴としては、超高速、超低遅延、多数同時接続が挙げられており、これらによって新たな産業創出や社会的課題の解決などが期待されている。
【0003】
5Gは、様々なサービスの要求品質に応えるため、800MHz、2GHz、サブ6GHz帯、又はWi-Fi(登録商標)などの低い周波数帯からミリ波帯などの高い周波数帯まで、様々な周波数帯を活用するヘテロジーニアスネットワーク(Integrated Networks)で構成されている。
【0004】
このヘテロジーニアスネットワークを有効活用するために、5Gではデュアルコネクティビティが検討されている(例えば非特許文献1参照)。デュアルコネクティビティは、無線端末が異なる周波数帯のインターフェース(IF)を備え、複数の基地局と同時接続して通信をすることを可能にする仕組みである。
【0005】
また、5Gは、多様化したアプリケーションの各通信を要求品質に応じて適当な周波数帯の基地局に振り分けて、効率的にサービスを収容することが期待されている。
【0006】
しかしながら、デュアルコネクティビティにおける各無線端末の接続先基地局の決定法、及び基地局接続確立後の各アプリケーションのルーティング設定法は、明確に規定されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】O.Semiari et.al., “Integrated Millimeter Wave and Sub-6 GHz Wireless Networks: A Roadmap for Joint Mobile Broadband and Ultra-Reliable Low-Latency Communications,”IEEE Wireless Communications, vol.26, no.2, pp.109-115, April 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、異なる周波数帯を用いて効率的な通信を可能にすることができる無線通信方法、無線通信システム、基地局装置、無線端末、及び無線通信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様にかかる無線通信方法は、高周波帯で無線通信を行う1つ以上の高周波帯基地局、前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線通信を行う1つ以上の低周波帯基地局、並びに前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局のいずれとも無線通信を可能にされた複数の無線端末を備えた無線通信システムが行う無線通信方法において、遮蔽物により電波を遮蔽されていない前記無線端末が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を前記高周波帯基地局が判定する高周波接続判定工程と、前記高周波接続判定工程により接続を許可した前記無線端末に対し、高周波帯における接続許可を前記高周波帯基地局が応答する高周波応答制御工程と、前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した前記無線端末に対し、当該無線端末が送信する接続要求に対する接続の可否を前記低周波帯基地局が判定する低周波接続判定工程と、前記低周波接続判定工程により接続を許可した前記無線端末に対し、低周波帯における接続許可を前記低周波帯基地局が応答する低周波応答制御工程と、前記無線端末それぞれが前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局それぞれからの応答、及び前記低周波帯基地局における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局を接続先として選択する学習を行う学習処理工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様にかかる無線通信システムは、高周波帯で無線通信を行う1つ以上の高周波帯基地局、前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線通信を行う1つ以上の低周波帯基地局、並びに前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局のいずれとも無線通信を可能にされた複数の無線端末を備えた無線通信システムにおいて、前記高周波帯基地局が、遮蔽物により電波を遮蔽されていない前記無線端末が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を判定する高周波接続判定部と、前記高周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、高周波帯における接続許可を応答する高周波応答制御部とを有し、前記低周波帯基地局が、前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した前記無線端末に対し、当該無線端末が送信する接続要求に対する接続の可否を判定する低周波接続判定部と、前記低周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、低周波帯における接続許可を応答する低周波応答制御部とを有し、前記無線端末それぞれが、前記高周波帯基地局及び前記低周波帯基地局それぞれからの応答、及び前記低周波帯基地局における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局を接続先として選択する学習を行う学習処理部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様にかかる基地局装置は、高周波帯で無線端末と無線通信を行う高周波帯基地局、及び前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線端末と無線通信を行う低周波帯基地局の少なくとも1つを備えた基地局装置において、前記高周波帯基地局が、遮蔽物により電波を遮蔽されていない前記無線端末が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を判定する高周波接続判定部と、前記高周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、高周波帯における接続許可を応答する高周波応答制御部とを有し、前記低周波帯基地局が、前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した前記無線端末に対し、当該無線端末が送信する接続要求に対する接続の可否を判定する低周波接続判定部と、前記低周波接続判定部が接続を許可した前記無線端末に対し、低周波帯における接続許可を応答する低周波応答制御部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様にかかる無線端末は、高周波帯で無線通信を行う1つ以上の高周波帯基地局、及び前記高周波帯基地局よりも低い周波数帯で無線通信を行う1つ以上の低周波帯基地局のいずれとも無線通信を可能にされた無線端末において、当該無線端末が遮蔽物により電波を遮蔽されていない場合に送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対して接続を許可した前記高周波帯基地局、及び前記高周波帯基地局が接続要求を拒否した場合に接続を許可した前記低周波帯基地局それぞれからの応答、及び前記低周波帯基地局における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局を接続先として選択する学習を行う学習処理部と、前記学習処理部が接続先として選択した前記高周波帯基地局又は前記低周波帯基地局に対して接続要求を行う接続要求制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる周波数帯を用いて効率的な通信を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの基本構成例を示す図である。
図2】無線通信システムの動作の概要を例示する図である。
図3】高周波帯基地局が有する機能を例示する図である。
図4】低周波帯基地局が有する機能を例示する図である。
図5】無線端末が有する機能を例示する図である。
図6】無線通信システムにおける動作を示すための変数を示す図である。
図7】無線通信システムにおける動作を示すための変数を示す図である。
図8】(a)は、無線端末から基地局装置への接続要求を示す図である。(b)は、基地局装置から無線端末への接続の過程を示す図である。(c)は、無線端末が基地局装置との接続を決定した状態及び学習を継続している状態を示す図である。
図9】(a)は、基地局装置のミリ波帯インターフェースに対し、各無線端末が接続要求を行っている状態を示す図である。(b)は、基地局装置が最も効用が高くなるユーザを選択した状態を示す図である。(c)は、基地局装置がユーザの近隣に位置するユーザをクラスタに追加した状態を示す図である。(d)は、ビームフォーミングを決定した状態を示す図である。
図10】(a)は、基地局装置のサブ6GHz帯のインターフェースに対し、各無線端末が接続要求を行っている状態を示す図である。(b)は、基地局装置がサブ6GHz帯のインターフェースに対し、接続する無線端末を選択した状態を示す図である。
図11】一実施形態にかかる無線端末のハードウェア構成例を示す図である。
図12】(a)は、無線通信システムの基本構成例を示す図である。(b)は、無線通信システムが高周波帯を用いた場合の動作例を示す図である。(c)は、無線通信システムが低周波帯を用いた場合の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明がなされるに至った背景について説明する。図12は、比較例の無線通信システム1の構成例及び動作例を示す図である。図12(a)は、無線通信システム1の基本構成例を示す図である。図12(b)は、無線通信システム1が高周波帯を用いた場合の動作例を示す図である。図12(c)は、無線通信システム1が低周波帯を用いた場合の動作例を示す図である。なお、無線通信システム1は、上述した5Gの機能を備えていることとする。
【0016】
図12(a)に示すように、無線通信システム1は、高周波帯インターフェース(IF)及び低周波数帯インターフェースを備えた複数の基地局装置2と、高周波帯インターフェース及び低周波数帯インターフェースを備えた1つ以上の無線端末3とを有する。
【0017】
具体的には、基地局装置2は、例えばミリ波帯などの高周波帯基地局としての機能、及びサブ6GHz帯などの低周波帯基地局としての機能を有する。無線端末3は、例えばミリ波帯などの高周波帯無線端末としての機能、及びサブ6GHz帯などの低周波帯無線端末としての機能を有する。
【0018】
つまり、無線通信システム1は、異なる周波数帯を用いたデュアルコネクティビティを有するシステムである。以下、高周波帯ではミリ波帯の電波(ビーム)が発せられ、低周波帯ではサブ6GHz帯の電波(ビーム)が発せられることとする。
【0019】
無線通信システム1においては、無線端末3が備えるアプリケーションの要求品質を考慮せずに、無作為に無線端末3の接続先となる基地局装置2の決定、及びアプリケーションそれぞれのルーティング設定を行うと、以下のような通信効率の低下が生じる場合がある。
【0020】
例えば、図12(b)に示すように、基地局装置2と無線端末3とが高周波帯による通信を行う場合、樹木などの電波を遮蔽する遮蔽物4が通信路上にあると、高周波帯の電波が遮蔽されてしまう。
【0021】
具体的には、基地局装置2は、ミリ波帯の電波を照射する場合、無線通信システム1全体の利用率を最大化するように、接続する無線端末3が集中している方向へビームフォーミング(BF)を行う。
【0022】
しかし、基地局装置2が照射するBFの照準方向に存在する遮蔽物4の裏に位置する無線端末3に対しては伝送レートが激減する。つまり、高周波帯通信の指向性に伴って伝送レートの劣化が生じてしまう。
【0023】
また、図12(c)に示すように、高周波帯での収容に失敗した通信が低周波帯に遷移した場合、単に無線端末3における受信電力が最大となる基地局装置2に接続するようにされると、無線端末3それぞれの配置によっては特定の基地局装置2に接続が集中してしまうことがある。つまり、低周波帯の通信を行う基地局装置2において、輻輳の確率が高まることがある。
【0024】
そこで、一実施形態にかかる無線通信システムでは、異なる周波数帯を用いて効率的な通信を可能にするように、基地局装置及び無線端末が構成されている。
【0025】
図1は、一実施形態にかかる無線通信システム10の基本となる構成例を示す図である。図1に示すように、無線通信システム10は、例えば基地局装置20及び無線端末30を有し、基地局装置20はネットワーク100に接続されている。なお、無線通信システム10は、上述した5Gの機能を備えていることとする。
【0026】
基地局装置20は、高周波帯基地局40及び低周波帯基地局60を有し、デュアルコネクティビティを備えた基地局となっている。つまり、基地局装置20は、高周波帯インターフェース(IF)及び低周波数帯インターフェースを備えている。
【0027】
高周波帯基地局40は、ネットワーク100に接続されており、例えばミリ波帯などの高周波帯(ミリ波帯インターフェース)を用いて無線端末30との間で無線通信を行う。
【0028】
低周波帯基地局60は、ネットワーク100に接続されており、例えばサブ6GHz帯(サブ6GHz帯インターフェース)などの低周波帯を用いて無線端末30との間で無線通信を行う。
【0029】
無線端末30は、例えばミリ波帯などの高周波帯無線端末としての機能、及びサブ6GHz帯などの低周波帯無線端末としての機能を有する。
【0030】
次に、図2を用いて無線通信システム10の動作の概要について説明する。図2は、無線通信システム10の動作の概要を例示する図である。ここでは、無線通信システム10は、2つの基地局装置20を有し、2つの基地局装置20の周囲に8つの無線端末30が位置しているものとする。
【0031】
無線通信システム10において、無線端末30は、自局が実行する各アプリケーションの要求品質の要件(品質要件)を満たすように、基地局装置20が備える高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60を選択して接続する設定を行う。また、無線端末30は、アプリケーションごとにルーティング設定を実施する。
【0032】
このとき、無線端末30は、高周波帯基地局40及び低周波帯基地局60に対し、接続要求の送信と、接続要求への応答としてフィードバック(FB)情報を受信することを繰り返し、上述した品質要件を満たすように設定を収束させる。
【0033】
FB情報には、無線端末30が送信する各要求に対する可否の判定結果、他の無線端末30に関する無線伝送レート、及び各アプリケーションの要求レートを含むこととする。
【0034】
具体的には、無線端末30は、以下のようにFB情報を用いてQ学習(Q-learning)、DQN(deep Q-learning)、DDQN(Dobule DQN)などの強化学習を行い、設定を収束させる。
【0035】
強化学習は、例えば無線端末30が現在の状態を検知してある行動をとったことに対して報酬と呼ばれる補正値を受け取り、その状態・行動のペアの有効性を報酬で補正していくアルゴリズムである。ここでは、例えば無線通信システム10における状態、行動、報酬を下記のように定義する。
【0036】
状態は、現在の高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60を選択する設定、及び無線端末30が実行するアプリケーションごとのルーティング設定であるとする。
【0037】
行動は、次に要求する高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60を選択する設定、及び無線端末30が実行するアプリケーションごとのルーティング設定の内容であるとする。
【0038】
報酬は、FB情報の加工値であるとする。
【0039】
そして、無線通信システム10は、基地局装置20と無線端末30との間で次の(A),(B),(C)の処理を繰り返す。
【0040】
(A) 無線端末30は、基地局装置20に対して、接続とアプリケーションごとのルーティング設定を要求する。そして、無線端末30は、現在の学習情報を参照して、現在の最適な接続とアプリケーションごとのルーティング設定を算出し、接続要求を対象となる基地局装置20へ通知する。
【0041】
(B) 基地局装置20は、後述する所定の制御を行い、無線端末30からの要求に対する応答及び基地局装置20に関する情報を無線端末30に対して通知する。例えば、基地局装置20は、無線端末30が送信した接続要求に対する応答(接続可否)を通知する。また、基地局装置20は、接続中又は接続要求中の他の無線端末30の要求品質及び伝送レート等を基地局情報として無線端末30へ通知する。
【0042】
具体例として、基地局装置20において、高周波帯基地局40は、無線通信システム10全体の無線効率(効用)を最大化するように、無線端末30が集中して位置する場所(接続無線端末集中部)に照準を合わせたBF(ビームフォーミング)制御を行う。
【0043】
このとき、高周波帯基地局40は、無線の受信電力を介して当該高周波帯基地局40に対する各無線端末30の相対座標となる情報を取得する。同時に、高周波帯基地局40は、取得した情報に基づいて、BF制御における無線伝送レートも算出する。
【0044】
また、基地局装置20は、過去の通信実績に基づいて、各無線端末30が実行する各アプリケーションの要求帯域を示す情報を取得する。そして、高周波帯基地局40は、各無線端末30に対する無線伝送レート及び各アプリケーションの要求帯域の2つの情報に基づいて、効用を最大化する方向を接続無線端末集中部とする。
【0045】
また、基地局装置20において、低周波帯基地局60は、輻輳が生じる場合には無線端末30に対する接続の可否を判定し、接続を許可する無線端末30を選択する制御を行う。
【0046】
(C) 無線端末30は、基地局装置20が送信した応答及び基地局情報を用いて、高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60の選択、及び無線端末30が実行するアプリケーションごとのルーティングを学習する処理を行う。ここで、無線端末30は、制御に関する学習情報を強化学習又は深層強化学習により更新する。
【0047】
そして、無線通信システム10は、無線端末30が制御及び学習を行って、次のように動作する。
【0048】
まず、高周波帯基地局40は、通信経路上に遮蔽物4がない無線端末30の位置する方向へビームフォーミングを行い、当該無線端末30のみに接続する。
【0049】
通信経路上に遮蔽物4がある無線端末30に対しては、低周波帯基地局60が収容する。また、高周波帯基地局40が収容しきれない無線端末30に対しても、基地局装置20は、デュアルコネクティビティによって低周波帯基地局60が接続する。
【0050】
なお、無線端末30は、低周波帯基地局60に対して接続する場合、電波の利用率の偏りを最小化することができる低周波帯基地局60を選択して接続する。また、高周波帯基地局40及び低周波帯基地局60の両方に接続中の無線端末30は、それぞれの接続による輻輳確率を最小化するように、各アプリケーションのルーティングを設定する。
【0051】
次に、高周波帯基地局40、低周波帯基地局60及び無線端末30の構成例を示し、無線通信システム10について詳述する。
【0052】
図3は、高周波帯基地局40が有する機能を例示する図である。図3に示すように、高周波帯基地局40は、アンテナ部400、RF(Radio Frequency)部402、送受信部404、IF(インターフェース)部406、伝送レート測定部408、メディアアクセス制御(MAC)測定部410、高周波接続判定部412、高周波応答制御部414、及びBF(ビームフォーミング)制御部416を有する。
【0053】
高周波帯基地局40は、アンテナ部400及びRF部402を介して、送受信部404が例えばミリ波帯の電波を送受信する。また、高周波帯基地局40は、IF部406がネットワーク100を介して他の基地局装置20との間で情報を送受信する。
【0054】
伝送レート測定部408は、IF部406を介して取得した情報に基づいて他の基地局装置20の伝送レート、及び自局の伝送レートを測定し、測定結果を高周波接続判定部412に対して出力する。
【0055】
MAC測定部410は、IF部406を介して取得した情報に基づいて他の基地局装置20のメディアアクセス等、及び自局のメディアアクセス等を測定し、測定結果を高周波接続判定部412に対して出力する。
【0056】
高周波接続判定部412は、送受信部404、伝送レート測定部408及びMAC測定部410から入力された情報に基づいて、遮蔽物により電波を遮蔽されていない無線端末30が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を判定し、判定結果を高周波応答制御部414及びBF制御部416に対して出力する。
【0057】
高周波応答制御部414は、接続要求をした無線端末30に対する応答を制御する。例えば、高周波応答制御部414は、高周波接続判定部412が接続を許可した無線端末30に対し、高周波帯における接続許可を、送受信部404、RF部402及びアンテナ部400を介して応答する。
【0058】
BF制御部416は、高周波接続判定部412が判定した接続の可否に基づいて、RF部402及びアンテナ部400によって出力するビームフォーミングを制御する。例えば、BF制御部416は、通信経路上に遮蔽物4(図2参照)がない無線端末30に照準を合わせたビームフォーミング制御を行う。
【0059】
図4は、低周波帯基地局60が有する機能を例示する図である。図4に示すように、低周波帯基地局60は、アンテナ部600、RF(Radio Frequency)部602、送受信部604、IF(インターフェース)部606、伝送レート測定部608、メディアアクセス制御(MAC)測定部610、低周波接続判定部612、及び低周波応答制御部614を有する。
【0060】
低周波帯基地局60は、アンテナ部600及びRF部602を介して、送受信部604が例えばサブ6GHz帯の電波を送受信する。また、低周波帯基地局60は、IF部606がネットワーク100を介して他の基地局装置20との間で情報を送受信する。
【0061】
伝送レート測定部608は、IF部606を介して取得した情報に基づいて他の基地局装置20の伝送レート、及び自局の伝送レートを測定し、測定結果を低周波接続判定部612に対して出力する。
【0062】
MAC測定部610は、IF部606を介して取得した情報に基づいて他の基地局装置20のメディアアクセス等、及び自局のメディアアクセス等を測定し、測定結果を低周波接続判定部612に対して出力する。
【0063】
低周波接続判定部612は、送受信部604、伝送レート測定部608及びMAC測定部610から入力された情報に基づいて、高周波帯基地局40が接続要求を拒否した無線端末30に対し、当該無線端末30が送信する接続要求に対する接続の可否を判定し、判定結果を低周波応答制御部614に対して出力する。
【0064】
低周波応答制御部614は、接続要求をした無線端末30に対する応答を制御する。例えば、低周波応答制御部614は、低周波接続判定部612が接続を許可した無線端末30に対し、低周波帯における接続許可を、送受信部604、RF部602及びアンテナ部600を介して応答する。
【0065】
図5は、無線端末30が有する機能を例示する図である。図5に示すように、無線端末30は、アンテナ部300、高周波帯RF部302、高周波帯送受信部304、アンテナ部306、低周波帯RF部308、低周波帯送受信部310、アプリケーション管理部312、ルーティング設定部314、接続要求制御部316、記憶部318、及び学習処理部320を有する。
【0066】
無線端末30は、アンテナ部300及び高周波帯RF部302を介して、高周波帯送受信部304が例えばミリ波帯の電波を送受信する。また、無線端末30は、アンテナ部306及び低周波帯RF部308を介して、低周波帯送受信部310が例えばサブ6GHz帯の電波を送受信する。
【0067】
アプリケーション管理部312は、無線端末30が備える各アプリケーションを管理する。
【0068】
ルーティング設定部314は、アプリケーション管理部312が管理するアプリケーションごとにルーティング設定を行い、設定内容を接続要求制御部316に対して出力する。なお、ルーティング設定部314は、学習処理部320が行う強化学習又は深層強化学習の結果に応じてルーティング設定を更新する。
【0069】
接続要求制御部316は、ルーティング設定部314が設定したルーティング、及び学習処理部320が行う強化学習又は深層強化学習の結果に応じて、基地局装置20に対する接続要求を制御する。
【0070】
記憶部318は、高周波帯送受信部304及び低周波帯送受信部310が受信した情報、並びに学習処理部320が学習した結果を記憶する。
【0071】
学習処理部320は、記憶部318が記憶している情報に基づいて、強化学習又は深層強化学習を行い、学習した結果をルーティング設定部314及び接続要求制御部316に対して出力する。
【0072】
例えば、学習処理部320は、高周波帯基地局40及び低周波帯基地局60それぞれからの応答、及び低周波帯基地局60における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60を接続先として選択する学習を行う。
【0073】
また、学習処理部320は、当該無線端末30の現在の接続にかかる状態を検知し、次に高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60に接続を要求する行動に対する報酬を取得して、状態及び行動の組合せの有効性を報酬により補正する強化学習又は深層強化学習を行う。
【0074】
次に、無線通信システム10の動作について詳述する。なお、無線通信システム10における動作を示すために、ここでは図6及び図7に示された変数を用いる。
【0075】
図6に示した基地局装置b(APb)及び無線端末k(ユーザk)が備える通信インターフェースは、下式(1)によって表される。
【0076】
【数1】
【0077】
ミリ波帯の電波は、無線端末kを収容する容量がサブ6GHz帯の電波よりも多くなる。しかし、遮蔽物によって容易に遮蔽されてしまう。ここでは、ミリ波帯の電波は、下式(2)によって表される。
【0078】
【数2】
【0079】
一方、サブ6GHz帯の電波は、ミリ波帯の電波よりも無線端末kを収容する容量が小さくなるが、ミリ波帯の電波よりも遮蔽されにくく、信頼性が高い。
【0080】
各無線端末kは、アプリケーションセットFの品質要件を伴う接続を要求する。各アプリケーションは、それぞれの品質要件を満たす必要がある。
【0081】
そこで、無線通信システム10は、無線端末k内のアプリケーションfの要求帯域Rkfを必要最低限「補償」し、基地局装置bの負荷φを抑制して、下式(3)~(8)に示すようにシステム全体の効用関数(電波の利用効率)uを最大化する。
【0082】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0083】
図8は、無線通信システム10の動作シーケンス((a)~(c))を示す図である。図8(a)は、無線端末kから基地局装置bへの接続要求を示す図である。図8(b)は、基地局装置bから無線端末kへの接続の過程を示す図である。図8(c)は、無線端末kが基地局装置bとの接続を決定した状態及び学習を継続している状態を示す図である。
【0084】
図8(a)において、状態s(t)は、現在の無線端末k(ユーザk)がアプリケーションの品質要件を満たして基地局装置bに時間tで接続していることを示しており、具体的には下式(9)によって表される。
【0085】
【数9】
【0086】
なお、状態Sの濃度は、下式(10)によって表され、(基地局台数×バンド数)^アプリケーション数となっている。ここでは、バンド数は、高周波及び低周波の2つである。
【0087】
【数10】
【0088】
また、行動a(t)は、無線端末kが基地局装置bに対してアプリケーションを実行するために時間tにおいて次に選択して要求する接続であり、具体的には下式(11),(12)によって表される。
【0089】
【数11】
【数12】
【0090】
なお、行動Aの濃度は、下式(13)によって表され、(基地局台数×バンド数)^アプリケーション数となっている。ここでは、バンド数は、高周波及び低周波の2つである。
【0091】
【数13】
【0092】
上述したように、無線端末kは、例えばDQNを用いて強化学習を行う機能を備えており、アプリケーションごとに接続要求を基地局装置bに対して行う。
【0093】
図8(b)に示すように、基地局装置bは、無線端末kからのミリ波帯によるアプリケーションごとの品質要件を満たす接続要求に対し、無線端末kの位置及び基地局装置bの電波利用効率に基づいて、接続を許可する無線端末kを選択する。
【0094】
また、基地局装置bは、無線端末kからのサブ6GHz帯によるアプリケーションごとの品質要件を満たす接続要求に対し、無線端末kの位置及び基地局装置bの電波利用効率に基づいて、接続を許可する無線端末kを選択する。このとき、基地局装置bは、過負荷である場合には、最も負荷の重い無線端末kをドロップさせる。
【0095】
そして、基地局装置bは、FB情報を用いて接続の可否を無線端末kへ応答する。
【0096】
図8(c)に示すように、無線端末kは、FB情報に基づいて下式(14)~(16)によって表される報酬を算出し、DQN又はDDQNを更新させて強化学習を行い、新たな状態へ移行する。
【0097】
【数14】
【数15】
【数16】
【0098】
次に、図8(b)に示した基地局装置bから無線端末kへの接続のためのアルゴリズムを、図9及び図10を用いてより詳細に説明する。
【0099】
図9は、基地局装置bがミリ波帯のインターフェースを用いて接続を許可する無線端末k(ユーザu)を選択するアルゴリズムを模式的に示す図である。図9(a)は、基地局装置bのミリ波帯インターフェースに対し、各無線端末k(各ユーザu)が接続要求を行っている状態を示す図である。図9(b)は、基地局装置bが最も効用(電波利用効率)が高くなるユーザuを選択した状態を示す図である。図9(c)は、基地局装置bがユーザuの近隣に位置するユーザuをクラスタCに追加した状態を示す図である。図9(d)は、基地局装置bがユーザuの近隣に位置するユーザuをクラスタに追加して、ビームフォーミングを決定した状態を示す図である。
【0100】
図9(a)に示すように、各無線端末k(ユーザu~u)が接続要求を行っている場合、基地局装置bは、ビーム幅θbkを最小にして、実利(効用)が最も高くなるユーザuを選択する。
【0101】
図9(b)に示すように、基地局装置bは、選択したユーザuを下式(17)によって表されるクラスタCに追加する。
【0102】
【数17】
【0103】
このとき、ユーザu及びユーザuは、ユーザuの近隣に位置してビーム照射の対象に追加される候補となっている。もし、下式(18)が満たされる場合、基地局装置bは、当該ユーザuを上式(17)に示したクラスタCに追加する。
【0104】
【数18】
【0105】
図9(c)に示した例では、基地局装置bは、ユーザuが上式(18)を満たしたとして、下式(19)に示したように、ユーザuをクラスタCに追加する。
【0106】
【数19】
【0107】
次に、基地局装置bは、ユーザuの近隣に位置しているもう一つのユーザuをクラスタCに追加した後の最適化されたビーム方向及びビーム幅の関数である基地局の有利関数と、ユーザuをクラスタCに追加する前の最適化されたビーム方向及びビーム幅の関数である基地局の有利関数とを下式(20)に示したように比較する。
【0108】
【数20】
【0109】
ここでは、ユーザuをクラスタCに追加した後の最適化された基地局の有利関数が、ユーザuをクラスタCに追加する前の最適化された基地局の有利関数よりも小さくなる(図9(d))ため、基地局装置bは、上式(19)に示したようにクラスタCを決定する。
【0110】
図10は、基地局装置bがサブ6GHz帯のインターフェースを用いて接続を許可する無線端末k(ユーザu)を選択するアルゴリズムを模式的に示す図である。図10(a)は、基地局装置bのサブ6GHz帯のインターフェースに対し、各無線端末k(各ユーザu~u)が接続要求を行っている状態を示す図である。図10(b)は、基地局装置bがサブ6GHz帯のインターフェースに対し、接続する無線端末k(各ユーザu)を選択した状態を示す図である。
【0111】
基地局装置bのサブ6GHz帯のインターフェースに対し、各無線端末k(各ユーザu~u)が接続要求を行っている場合(図10(a))、基地局装置bは、実利(効用)が最も高くなる例えばユーザu,uを選択する。このとき、基地局装置bは、負荷の重い(効用が小さい)ユーザu,uをドロップさせる。
【0112】
なお、無線端末30、高周波帯基地局40、及び低周波帯基地局60それぞれが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0113】
すなわち、無線端末30、高周波帯基地局40、及び低周波帯基地局60は、それぞれコンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0114】
図11は、無線端末30のハードウェア構成例を示す図である。図11に示すように、無線端末30は、例えば入力部70、出力部71、通信部72、CPU73、メモリ74及びHDD75がバス76を介して接続され、コンピュータとしての機能を備える。また、無線端末30は、記憶媒体77との間でデータを入出力することができるようにされている。
【0115】
入力部70は、例えばキーボード等である。出力部71は、例えばディスプレイなどの表示装置である。通信部72は、例えば無線のネットワークインターフェースである。
【0116】
CPU73は、無線端末30を構成する各部を制御し、上述した計算等を行う。メモリ74及びHDD75は、データ等を記憶する。記憶媒体77は、無線端末30が有する機能を実行させる無線通信プログラム等を記憶可能にされている。なお、無線端末30を構成するアーキテクチャは図11に示した例に限定されない。また、高周波帯基地局40及び低周波帯基地局60も無線端末30と同様のハードウェア構成を有する。
【0117】
このように、一実施形態にかかる無線通信システム10は、高周波帯基地局40が、遮蔽物4により電波を遮蔽されていない無線端末30が送信するアプリケーションごとの品質要件を伴う接続要求に対する接続の可否を判定し、低周波帯基地局60が、高周波帯基地局40が接続要求を拒否した無線端末30に対し、当該無線端末30が送信する接続要求に対する接続の可否を判定し、無線端末30それぞれが、高周波帯基地局40及び低周波帯基地局60それぞれからの応答、及び低周波帯基地局60における輻輳発生確率に基づいて、アプリケーションごとの品質要件を満たすように、高周波帯基地局40又は低周波帯基地局60を接続先として選択する学習を行うので、異なる周波数帯を用いて効率的な通信を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0118】
10・・・無線通信システム、20・・・基地局装置、30・・・無線端末、40・・・高周波帯基地局、60・・・低周波帯基地局、70・・・入力部、71・・・出力部、72・・・通信部、73・・・CPU、74・・・メモリ、75・・・HDD、76・・・バス、77・・・記憶媒体、400・・・アンテナ部、402・・・RF部、404・・・送受信部、406・・・IF部、408・・・伝送レート測定部、410・・・MAC測定部、412・・・高周波接続判定部、414・・・高周波応答制御部、416・・・BF制御部、600・・・アンテナ部、602・・・RF部、604・・・送受信部、606・・・IF部、608・・・伝送レート測定部、610・・・MAC測定部、612・・・低周波接続判定部、614・・・低周波応答制御部、300・・・アンテナ部、302・・・高周波帯RF部、304・・・高周波帯送受信部、306・・・アンテナ部、308・・・低周波帯RF部、310・・・低周波帯送受信部、312・・・アプリケーション管理部、314・・・ルーティング設定部、316・・・接続要求制御部、318・・・記憶部、320・・・学習処理部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12