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特許7239100炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/76 20060101AFI20230307BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20230307BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20230307BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20230307BHJP
   C07C 15/067 20060101ALI20230307BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20230307BHJP
   C10G 35/095 20060101ALI20230307BHJP
   C07C 2/12 20060101ALI20230307BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
C07C2/76
B01J29/40 Z
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/067
C07C15/08
C10G35/095
C07C2/12
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018164608
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020037521
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188949
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 成典
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】常岡 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 泰之
(72)【発明者】
【氏名】荒木 泰博
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和
(72)【発明者】
【氏名】小倉 賢
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-151351(JP,A)
【文献】特開平10-147543(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C10G
C07B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2~7の軽質炭化水素を主成分とする原料を、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物に接触させることを含む炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法であって、
ZSM-5を含有する触媒組成物と、下記一般式(1)で表される化合物とを窒素雰囲気中、50~110℃で加熱撹拌し、次いで酸素存在下、300℃~600℃で加熱処理して、非晶質である酸化ケイ素化合物により被覆された前記炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物を得ることを含
炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
Si(OR)4-n ・・・(1)
[式中、Xは水素原子又はアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、nは0~4の整数を表す。]
【請求項2】
NH-TPD法において200℃~500℃の温度領域で脱離するアンモニア量から規定される触媒の酸量とAlのモル比が、1.25以下である、請求項1に記載の炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物100質量部に対するガリウムの含有量が、0.1質量部以上10.0質量部以下である、請求項1又は2に記載の炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記触媒組成物がガリウムを含有し、
ガリウムと、アルミニウムのモル比(Ga/Al)が、0.1以上10.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オクタン価の高いガソリンや芳香族炭化水素を得る方法として、白金/アルミナ系触媒による直留ナフサの接触改質が商業的に広く採用されている。この接触改質における原料ナフサとしては、自動車用ガソリン製造を目的とする場合には、主に沸点70~180℃の留分が用いられる。またベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族留分、いわゆるBTX製造の場合には、60~150℃の留分が用いられている。
しかし、原料炭化水素の炭素数の減少とともに芳香族への転化割合が低くなり、生成物のオクタン価も減少してしまうため、炭素数が7以下の炭化水素を主成分とする軽質炭化水素を原料として、従来の接触改質法で、高オクタン価ガソリンや芳香族炭化水素を高収率で製造することは困難であった。このため、こうした軽質炭化水素の用途は石油化学原料や都市ガス製造用原料などに限られていた。
このため、軽質炭化水素から芳香族炭化水素を製造する試みがなされている。例えば特許文献1~3には、ガリウム含有結晶性アルミノシリケート触媒組成物を用いた炭素数2~7の炭化水素を主原料とした芳香族炭化水素製造方法が記載されている。
【0003】
付加価値の高い炭素数6~8の単環芳香族炭化水素は高い収率で生産できることが好ましい。さらに高い収率で付加価値の高い炭素数6~8の単環芳香族炭化水素するため、特許文献1~3に記載のような単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物には未だ改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-37803号公報
【文献】特開2008-38032号公報
【文献】特開2009-233601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、炭素数が7以下の炭化水素を主成分とする軽質炭化水素を原料として、高い収率で炭素数6~8の単環芳香族炭化水素を製造できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
結晶性アルミノシリケートは、Alに活性点としての酸点を有するもので、この酸点が接触改質反応に寄与する。ただし、反応に伴って少しずつコークを生成、堆積することにより、その活性が劣化する。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、結晶性アルミノシリケートの酸点を酸化ケイ素化合物で被覆することにより、炭素数が7以下の炭化水素を主成分とする軽質炭化水素を原料として、高い収率で炭素数6~8の単環芳香族炭化水素を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の第一の態様は、炭素数2~7の軽質炭化水素を主成分とする原料を、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物に接触させることを含む炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法であって、前記炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物は、非晶質である酸化ケイ素化合物により被覆され、結晶性アルミノシリケートを含有し、前記酸化ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される化合物に由来する酸化ケイ素化合物である、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法である。
Si(OR)4-n ・・・(1)
[式中、Xは水素原子又はアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、nは0~4の整数を表す。]
【0008】
本発明の他の態様は、結晶性アルミノシリケートを含有する触媒組成物と、下記一般式(1)で表される化合物とを、酸素非存在下、室温~110℃で加熱して反応物を得る工程と、前記反応物を、酸素存在下、300℃~600℃で加熱する工程と、を含む、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物の製造方法である。
Si(OR)4-n ・・・(1)
[式中、Xは水素原子又はアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、nは0~4の整数を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炭素数が7以下の炭化水素を主成分とする軽質炭化水素を原料として、高い収率で炭素数6~8の単環芳香族炭化水素を製造できる製造方法が提供出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物>
本発明において、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物(以下、「触媒組成物(A)」という場合がある。)は、結晶性アルミノシリケートを含有し、酸化ケイ素化合物で被覆されている。
【0011】
(酸化ケイ素化合物)
本発明において、酸化ケイ素化合物とは、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を含む化合物の総称である。ただし、本発明において、結晶性アルミノシリケートは酸化ケイ素化合物には含まれないものとする。
【0012】
触媒組成物(A)において、酸化ケイ素化合物は非晶質である。非晶質である酸化ケイ素化合物により被覆する場合、結晶質である酸化ケイ素化合物に比べて、被覆層の厚みを薄く調整することが可能であり、被覆前の触媒の反応活性を維持しやすいという点で好ましい。
【0013】
本発明において、酸化ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される化合物に由来する酸化ケイ素化合物である。
Si(OR)4-n ・・・(1)
[式中、Xは水素原子又はアルキル基を表し、Rはアルキル基を表し、nは0~4の整数を表す。]
【0014】
前記一般式(1)中、Xは水素原子又はアルキル基を表す。Xのアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、SiOCH(CH、Si(OCH(CH、Si(OCH(CH)、SiOCH(Cなどが挙げられる。
なかでも、前記一般式(1)で表される化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0015】
触媒組成物を酸化ケイ素化合物で被覆する方法は特に限定されないが、例えば前記一般式(1)で表される化合物により触媒組成物を表面処理する方法が挙げられる。
具体的には、結晶性アルミノシリケートを含有する触媒組成物と、前記一般式(1)で表される化合物とを窒素雰囲気中、室温~110℃(好ましくは50~100℃)で加熱撹拌し、1~5時間(好ましくは1~2時間)撹拌する。その後、反応物を濾過し、ヘキサン、シクロヘキサン、ドデカン等の有機溶媒で洗浄し、乾燥する。次いで、酸素存在下、300℃~600℃(好ましくは450~600℃)で加熱処理することにより、酸化ケイ素化合物で被覆された触媒組成物(A)が得られる。
【0016】
本発明において、触媒組成物(A)は、NH-TPD法において200℃~500℃の温度領域で脱離するアンモニア量から規定される触媒の酸量とAlのモル比が、1.25以下であることが好ましく、1.23以下であることがより好ましく、1.21以下であることが更に好ましい。また、実用上は0.50以上であることが好ましい。触媒組成物(A)における酸量は外表面および細孔内の総Al量に由来するが、表面処理により外表面のAlを被覆し、触媒の酸量とAlのモル比を一定の割合に制御することで、重質化などの副反応を抑制しつつ環化反応活性を維持し、芳香族収率を向上させることができる。
また、NH-TPD法において200℃~500℃の温度領域で脱離するアンモニア量から規定される触媒の酸量は、1.00μmоl/g以下であることが好ましく、0.50μmоl/g以下であることがより好ましい。触媒表面上の酸点を適切な密度に調整することにより、原料の重質化反応を抑制し、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の収率を向上することができる。
NH-TPD法において200℃~500℃の温度領域で脱離するアンモニア量から規定される触媒の酸量が上記上限値以下であることにより、重質化やガス分解などの副反応が抑制されて芳香族収率が向上する。また、NH-TPD法において200℃~500℃の温度領域で脱離するアンモニア量から規定される触媒の酸量が上記下限値以下であることにより、被覆による反応活性点の減少の影響を受けずに、芳香族を高い収率で得られる。
【0017】
本明細書中、触媒の酸量とは、NH-TPD法で測定される触媒の酸点の量を示す。
NH-TPD法とは、塩基ブローブ分子のアンモニア(NH)を触媒に吸着させ、温度を連続的に上昇させることによって脱離するアンモニアの量及び脱離温度を測定することにより、触媒の酸点の量を測定する手法である。
NH-TPD法は、例えば、「丹羽;ゼオライト,10,175(1993)」に記載の装置及び測定条件で実施することができる。
【0018】
(結晶性アルミノシリケート)
本発明において、触媒組成物(A)に含有される結晶性アルミノシリケートの構造としては特に限定されないが、ペンタシル型ゼオライトが好ましく、中でもMFIタイプ及び/又はMELタイプの結晶構造体を有するゼオライトがより好ましい(結晶性アルミノシリケートの中で3次元的に連結した構造を持つものをゼオライトという)。MFIタイプ、MELタイプのゼオライトは、“The Structure Commission of the International Zeolite Association”により公表された種類の公知ゼオライト構造型に属する(Atlas of Zeolite Structure Types, W.M.Meiyer and D.H.Olson (1978). Distributed by Polycrystal Book Service, Pittsburgh, PA, USA)。MFIタイプのゼオライトの例はZSM-5であり、MELタイプのゼオライトの例はZSM-11である。
【0019】
本発明において、触媒組成物(A)が含有する結晶性アルミノシリケートとしては、結晶性アルミノシリケート内にガリウムあるいは亜鉛が存在するものや、結晶性アルミノシリケートにガリウムあるいは亜鉛を担持したもの(以下、「ガリウム担持結晶性アルミノシリケート」「亜鉛担持結晶性アルミノシリケート」という。)や、その双方を含んだものが使用することができるが、少なくとも結晶性アルミノシリケート内にガリウムあるいは亜鉛を含むものが好ましい。また、結晶性アルミノシリケート内にガリウムカチオンあるいは亜鉛カチオンを含むものがさらに好ましい。
【0020】
本発明において、触媒組成物(A)が含有する結晶性アルミノシリケートは、イオン交換法により結晶性アルミノシリケートにガリウムあるいは亜鉛を挿入することにより製造することが好ましい。イオン交換法としては、ガリウム源または亜鉛源を溶液とし結晶性アルミノシリケートを浸漬して行う方法(水溶液とする場合が多い)や、結晶性アルミノシリケートとガリウム源または亜鉛源とを固体の状態で物理的に混合することによりイオン交換を行う方法が挙げられる。
この場合、ガリウム源としては、硝酸ガリウム、塩化ガリウム等のガリウム塩や、酸化ガリウム等を好ましく用いることができる。塩化ガリウムのような禁水性物質や固体状の酸化ガリウムの場合は、結晶性アルミノシリケートとガリウム源とを固体の状態で物理的に混合することによりイオン交換を行う方法が好ましい。同様に亜鉛源としては、硝酸亜鉛や塩化亜鉛、酸化亜鉛を好ましく用いることができる。またイオン交換する際には、適宜、還元性ガス、不活性ガス、またはそれらを含む混合ガスの雰囲気下で加熱する方法が好ましい。
【0021】
本発明において、触媒組成物(A)が含有する結晶性アルミノシリケートの粒子径は、0.05~20μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.5~5μmが更に好ましく、1~3μmが更に好ましい。
また上記の粒子径を有する粒子の含有率が、全粒子の質量を基準として80質量%以上であることが好ましい。
【0022】
反応分子の大きさと結晶性アルミノシリケートの細孔の寸法がほぼ同じである場合、結晶性アルミノシリケート細孔中では、分子の拡散速度が遅くなる傾向にある。このため、粒子直径が20μm以下の粒子であると、細孔深部の活性点に反応分子が接近し易く、活性点が反応中に有効に使用されやすくなる。
【0023】
水熱合成によって結晶性アルミノシリケートを得る場合、生成粒子の大きさに影響を与える因子としては、シリカ源の種類、第4級アンモニウム塩等の有機添加物の量、鉱化剤としての無機塩の量・種類、ゲル中の塩基量、ゲルのpH及び結晶化操作時の昇温速度、温度や撹拌速度等が挙げられる。これらの条件を適当に調節することにより、上述した粒径範囲の結晶性アルミノシリケートを得ることができる。
【0024】
本発明において、結晶性アルミナシリケートのケイバン比(ケイ素とアルミニウムのモル比)は10以上1000以下であることが好ましく、35以上100以下であることが更に好ましい。
【0025】
本発明において、触媒組成物(A)100質量部に対するのガリウムの含有量が、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上7.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以上5.0質量部以下であることが更に好ましい。
また、ガリウムと、アルミニウムのモル比(原子比、Ga/Al)が、0.1以上10.0以下であることが好ましく、0.5以上7.0以下がより好ましく、1.0以上5.0以下が特に好ましい。
【0026】
・・活性化処理
また、本発明において、触媒組成物(A)が含有する結晶性アルミノシリケートは、所望に応じ、一般的に結晶性アルミノシリケートを触媒成分として用いる場合に施される種々の活性化処理を施すことができる。すなわち、触媒組成物(A)が含有する結晶性アルミノシリケートは、前記水熱合成等の方法によって製造されたものの他、その変性化処理または活性化処理によって得られるものをも包含するものである。
【0027】
例えば、結晶性アルミノシリケートを塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウム等のアンモニウム塩を含む水溶液中でイオン交換してアンモニウム型とした後に、アルカリ金属やアルカリ土類金属以外の金属イオンを含む水溶液中でイオン交換したり、あるいはその水溶液を含浸させてアルカリ金属やアルカリ土類金属以外の所望金属を導入することができる。
また、前記アンモニウム型の結晶性アルミノシリケートを空気、窒素または水素雰囲気中で200~800℃、好ましくは350~700℃の温度で3~24時間加熱することによりアンモニアを除去して酸型の構造に活性化することができる。また、酸型触媒を水素または水素と窒素の混合ガスにて上記の条件で処理してもよい。さらに、酸型触媒を乾燥条件下にアンモニアと接触させるアンモニア変性を施してもよい。触媒組成物(A)は、一般的には、炭化水素原料と接触する前に、前記の活性化処理を施して使用するのが好ましい。
【0028】
本発明において、触媒組成物(A)の活性成分は前記結晶性アルミノシリケートであるが、成形を容易にするため、あるいは触媒の機械的強度を向上させるため等の目的で、触媒組成物は担体あるいは成形助剤等を含んでいてもよい。
担体あるいは成形助剤等を含む場合、触媒組成物の全質量に占める前記結晶性アルミノシリケートの含有量は特に制限されないが、結晶性アルミノシリケートは、触媒組成物(A)の全質量に対し、40~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。
【0029】
結晶性アルミノシリケートを含有する組成物は、押出成形、スプレードライ、打錠成形、転動造粒、油中造粒等の方法で粒状、球状、板状、ペレット状等の各種成形体とすることができる。また、成形時には、成形性を良くするために有機化合物の滑剤を使用することが望ましい。
【0030】
一般に、結晶性アルミノシリケートの組成物の成形は、結晶性アルミノシリケートのアンモニウムイオン等によるイオン交換工程に先立って行なうこともできるし、また結晶性アルミノシリケートをイオン交換した後に行うこともできる。
【0031】
・添加剤
また、本発明において、触媒組成物(A)には、前述した結晶性アルミノシリケートの他に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、特に限定されないが、アルミナボリア、シリカ、シリカアルミナ、リン酸アルミニウム等の無機酸化物、カオリンやモンモリロナイトなどの粘土鉱物、無機リン化合物や有機リン化合物などが挙げられる。その添加量は、特に制限されないが、触媒組成物中に50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下となるよう加えられる。
【0032】
また、本発明において、触媒組成物(A)には補助成分として金属成分を担持させて用いることができる。補助成分としての金属成分は、結晶性アルミノシリケートに担持させたり、その他の添加剤に担持させたり、その両方でも構わない。
このような補助金属成分としては、例えば、脱水素能を有する金属や炭素析出を抑制する効果のある金属が挙げられる。補助金属成分の具体例としては、触媒活性を向上させるものとして、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、アルミニウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、アンチモン、ビスマス、セレン等が挙げられる。これらの金属は、単独の他、2種以上を組合せて用いることもでき、その担持量は金属換算で0.1~10質量%である。金属担持方法としては、イオン交換法、含浸法、物理混合等の公知の技術をいることができる。また、ペンタシル型ゼオライトの合成時に、補助成分として前記金属成分を添加することで、補助成分金属を含有させることもできる。また、反応に際してのコークの堆積の抑制効果を持つ補助金属成分として、マグネシウム、カルシウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ルテニウム、イリジウムの中から選ばれる1種以上の金属を担持させることができ、その担持量は、金属換算で0.01~5質量%である。
【0033】
<炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の製造方法>
本発明の芳香族炭化水素の製造方法においては、上述した触媒組成物(A)と、炭素数2~7の炭化水素を含有する原料油と、を接触させて芳香族炭化水素を製造する。
ここで、本発明で用いる原料は炭素数2~7の軽質炭化水素を含むものであり、原料中の炭素数2~7の軽質炭化水素の含有量は特に限定されないが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60~100質量%である。
【0034】
また、炭素数2~7の軽質炭化水素としては特に限定されないが、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、パラフィン、オレフィンのいずれでも構わない。さらにはこれらの混合物でも構わない。このような炭化水素の具体例としては、炭素数2から7の直鎖状脂肪族飽和炭化水素(エタン、プロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン)、分岐状脂肪族飽和炭化水素(イソブタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン)、環状脂肪族飽和炭化水素(シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、1-メチルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロペンタン、1,2-ジメチルシクロペンタン、1,3-ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等)、直鎖状脂肪族不飽和炭化水素(エチレン、プロピレン、ノルマルブテン、ノルマルペンテン、ノルマルヘキセン、ノルマルヘプテン等)、分岐状脂肪族不飽和炭化水素(イソブテン、2-メチルブテン、2-メチルペンテン、3-メチルペンテン、2-メチルヘキセン、3-メチルヘキセン等)、環状脂肪族不飽和炭化水素(シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン等)、プロパンやブタンを主成分とする液化石油ガス、炭素数5~7のパラフィンを主成分とするナフサ留分中の沸点100℃以下の軽質留分(ライトナフサ)、流動接触分解装置(FCC)からのC4留分、エチレンクラッカーのラフィネート等が挙げられる。
【0035】
次に、本発明の単環芳香族炭化水素の製造方法の工程は特に限定されないが、主に以下の(a)~(d)の4つの工程を有することが好ましい。また、本発明の単環芳香族炭化水素の製造方法以下の(a)~(d)の4つの工程に加え、(e)の工程を有していてもよい。
(a)転化反応工程
(b)反応層流出物の気液分離工程
(c)分離ガスからの水素分離工程
(d)分離液からの芳香族炭化水素の分離工程
(e)原料軽質族炭化水素とリサイクルガスとの混合工程
【0036】
(転化反応工程)
この工程には、少なくとも前述した触媒組成物(A)を保持する反応層が直列にn個配列され、さらに当該反応層間に、反応層からの流出物の加熱手段として、加熱炉などが設けられている。原料の軽質炭化水素と、後述するリサイクルガスとの混合物を反応層に通過せしめて、その混合物を芳香族炭化水素へ転化させる工程である。この工程における好ましい反応条件は、反応層入口温度として350~650℃、水素分圧0.5MPa以下、原料のガス空間速度100~2000hr-1である。
【0037】
本発明に係る転化反応工程における反応層入口温度は、一般的には350~650℃が好ましい範囲であるが、原料の軽質炭化水素がノルマルパラフィンを主成分とする場合には450~650℃、イソパラフィンを主成分とする場合には400~600℃、オレフィンを主成分とする場合には350~550℃がさらに好ましい温度範囲となる。
【0038】
転化反応工程で用いられる反応器としては特に限定されないが、例えば、固定床型反応器、CCR型反応器、流動床型反応器などが挙げられる。固定床やCCR型反応器を用いる場合は、前述した触媒組成物(A)を保持する反応層が少なくとも直列にn個(nは2以上の整数)配置され、さらに該反応層間に、または該反応層に、前段反応層からの流出物への加熱手段として、加熱炉などの加熱装置が設けることが好ましい。なお、原料の軽質炭化水素がオレフィンを主成分とする場合には、吸熱量が少なくなるため、触媒組成物(A)を保持する反応層が1段(n=1)であってもよい。
また、この直列に配置されたn個の反応層の内、1段目反応層の触媒量が全体の触媒量の30容量%以下、好ましくは1~30容量%、より好ましくは2~30容量%、さらに好ましくは2~28容量%になるように配置することが好ましい。直列に配置された反応層の数nが3以上の場合には、1段目反応層の触媒量が全体の触媒量の60/n容量%以下になるようにするのが好ましい。これにより、最終的に得られる芳香族収率が向上する。さらに反応層の数nは2以上であれば特に限定されないが、多過ぎても効果は変わらず、経済性が悪くなる。従って、nとしては2以上8以下が好ましく、より好ましくは3以上6以下が望ましい。
【0039】
また、本発明に係る転化反応工程においては、一定の反応層入口温度で運転することもできるし、所定の芳香族収率が得られるように、反応層入口温度を連続的又は段階的に上昇させて運転することもできる。芳香族収率が所定範囲を下回ったり、反応層入口温度が所定温度範囲を超えるようになると、反応器を新しい触媒が充填された反応器又は再生された触媒が充填された反応器に切り替えて反応を継続する。触媒の再生は空気、窒素、水素又は窒素/水素混合ガス等の気流中で200~800℃好ましくは350~700で加熱処理することにより行うことができる。本発明の芳香族炭化水素の製造方法は、好ましくは、前記触媒組成物(A)を保持した反応層を含む、2系列以上の固定床反応装置を用いて行われる。この場合、各系列の反応装置は直列に並んだ複数の反応層から成り立っている。軽質炭化水素を含有する原料を1以上の系列の反応器に導入して反応を進めながら、他の1以上の系列の反応器中の触媒を再生処理に付する。これらの2系列以上の反応器で、1以上の系列の反応器で1~10日反応運転後、2~20日間の再生処理が完了した他の1以上の系列の反応器と切り替え、反応/再生を行うことにより、例えば1年間の連続運転を行うことができる。
また、サイクリック運転のように、反応に使用されている系列の反応器の一部又は全部を他系列と切り替えて反応を継続して行なうことも可能である。そして各1~10日の反応の1サイクルごとに反応温度を5~20℃程度連続又は段階的に上昇させて芳香族収率を40~75%重量%の所定範囲に保持することが好ましい。
【0040】
なお、前記芳香族収率Rは、次の式(1)で表わされる。
R=A/B×100(%) (1)
A:転化反応生成物中の炭素数6~8の芳香族炭化水素の質量
B:転化した全反応生成物と未反応の炭化水素原料の質量
【0041】
脂肪族及び/又は脂環族炭化水素が芳香族炭化水素へ転化する際には、脱水素を伴う反応が進行するので、反応条件下では水素を添加しなくても反応に見合う水素分圧を有することとなる。意図的な水素の添加は、コークの堆積を抑制し、再生頻度を減らす利点があるが、芳香族の収率は、水素分圧の増加により急激に低下するため必ずしも有利ではない。それ故、水素分圧は0.5MPa以下に抑えることが好ましい。
本発明に係る転化反応工程には、後続の分離工程からリサイクルガスとして循環されるメタン及び/又はエタンを含む軽質ガスを存在させることが望ましい。このメタン及び/又はエタンを含む軽質ガスの存在下に転化反応を行うことで、触媒上へのコーク析出を抑制し、長時間にわたって芳香族収率を高く維持することができる。反応系へ循環される全軽質ガス(リサイクルガス)の循環量は、炭化水素供給原料1質量部当り、0.1~10質量部、好ましくは0.5~3質量部にすることが望ましい。
【0042】
(反応層流出物の気液分離工程)
この工程は、前記転化反応工程からの流出物を、1個又は2個以上の気液分離器からなる気液分離帯域に導入し、比較的高圧下で気液分離し、芳香族炭化水素を主成分として含む液体成分(高圧分離液)と、水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の軽質ガス(高圧分離ガス)とに分離する工程である。分離条件としては、温度は通常10~50℃、好ましくは20~40℃であり、圧力は通常0.5~8MPa、好ましくは1~3MPaである。
反応層流出物は、この気液分離工程に導入される以前に、低温の原料炭化水素と間接熱交換させて30~50℃まで冷却し、また必要に応じ、気液分離工程及び軽質ガスからの水素を分離する工程の負荷を軽減するために、軽質ガスの一部を分離することができる。例えば、気液分離工程に導入前に、冷却した反応層流出物を低圧気液分離器にて0.2~0.35MPaの低圧で気液分離することができる。次いで、低圧気液分離器の塔頂ガスを、圧縮、冷却及び気液分離を2~3回繰り返し、低圧気液分離器の塔低液の圧力を1~3MPa1~3MPaまで上昇させ、塔頂ガスと塔低液とを合流させた後に気液分離工程に導入することができる。また、塔頂ガスと塔低液とを合流させず、塔頂ガスを圧縮した際に発生した凝縮液と塔低液とを合流させた後に気液分離工程に導入することもできる。
【0043】
(分離ガスからの水素分離工程)
この工程は、前記気液分離工程で分離された高圧分離ガスから水素を選択的に分離し、メタン及び/又はエタンを含むリサイクルガスを得る工程である。この場合の水素分離方法としては、従来公知の方法、例えば、膜分離方法や深冷分離方法等が用いられる。水素の選択的分離効率の点からは膜分離方法の使用が好ましいが、リサイクルガスとして深冷分離方法からのオフガスを利用する場合は、膜分離方法からのオフガスと比べて未反応プロパンを最大限に反応させることができるので、芳香族炭化水素収率で1~3質量%高くできる利点がある。どちらの方法を採用するかは、経済的見地から判断される。膜分離装置としては、例えば、分離膜として、ポリイミドや、ポリスルホン、ポリスルホンとポリジメチルシロキサンとのブレンド体を用いたもの等が市販されている。この工程で得られたリサイクルガスの一部は、全循環ガス量を一定範囲に保持するために、系外へ排出される。高純度の水素を回収するために、好ましくは回収系として膜分離装置又はPSA(吸・脱着分離装置)を膜分離装置の後段に設置する。後段の装置の選択は、経済的見地から決められる。
【0044】
(分離液からの芳香族炭化水素の分離工程)
この工程は、前記気液分離工程で得られた高圧分離液から芳香族炭化水素と低沸点炭化水素ガスとを分離する工程であり、その装置としてはスタビライザー(蒸留塔)が用いられる。塔頂留分として分離された低沸点炭化水素ガスは、C3~C4の炭化水素からなるもので、リサイクルガスとして用いてもよい。塔低留分は、BTX留分と炭素数9以上の重質留分とを含むので、更にBTXを精製回収する。
【0045】
(原料軽質炭化水素とリサイクルガスとの混合工程)
この工程は、原料軽質炭化水素に対して、前記水素ガス分離工程で得られたメタン及び/又はエタンを含むリサイクルガスおよび前記芳香族炭化水素分離工程で分離された低沸点炭化水素ガスを混合する任意工程であり、この混合は配管内で行うことができる。この混合物は前記転化反応工程に導入される。原料軽質族炭化水素1質量部当りの前記リサイクルガスおよび低沸点炭化水素ガスの混合割合は、0.1~10質量部、好ましくは0.5~3質量部である。このように、メタン及び/又はエタンをリサイクルガスとして使用することにより、次のような効果が得られる。すなわち、脱水素環化による芳香族化反応は吸熱反応であり、その為に触媒層温度は低下し芳香族化反応に不利となる。メタン及び/又はエタンは、この反応条件下では芳香族化しないので不活性ガスと見なせる。メタン及び/又はエタンを加熱することにより、これが熱供給媒体として働き、触媒層の温度低下を抑制し、芳香族化反応を有利に進め、芳香族炭化水素収率を向上できる。また、リサイクリングにより原料の転化反応で生成する水素の分圧を低下させ、芳香族化反応を有利に進めることができ、その結果、芳香族炭化水素収率を向上できる。更に、反応層でのガス速度が増大するので(GHSVが大きくなる)、反応基質と触媒活性点との接触時間が短くなり、コーク状物質を与える過剰反応が抑制できる。その結果、反応経過時間と共に起こる活性低下を抑制でき、芳香族炭化水素収率を高い水準で維持できる。商業装置においては、リサイクルガス比は経済的見地から決められる。
【実施例
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<合成例>
(製造例1)
ZSM-5(アンモニウム型、Si/Al=35 mol/mol)5gを用いて、空気流通下、500℃で5時間焼成して、ZSM-5(プロトン型)を得た。続いて、3.0質量%(ZSM-5の総質量を100質量%とした値)のガリウムがイオン交換(または含浸担持)されるように、蒸留水70mlに硝酸ガリウム0.37gを溶解した水溶液中で懸濁し、80℃で24時間撹拌した。その後、空気流通下にて、500℃で3時間焼成を行うことでガリウム含有結晶性アルミノシリケートを得た。表面酸点処理として、ガリウム含有結晶性アルミノシリケートをテトラメトキシシランおよびヘキサン中で撹拌し、1時間還流した後に600℃で熱処理を施した。39.2MPa(400kgf)の圧力をかけて打錠成型し、粗粉砕して20~28メッシュのサイズに揃えて、粒状体とし、ガリウムを含む結晶性アルミノシリケート1(触媒組成物1)を得た。この結晶性アルミノシリケート1を、実施例1の炭素数6~8の単環芳香族炭化水素製造用触媒組成物として用いた。
【0048】
(製造例2)
Si/Al=60mol/molのZSM-5を用いたこと以外は製造例1と同様にして触媒組成物2を得た。
【0049】
(比較製造例1)
表面酸点処理を行わなかったこと以外は製造例1と同様にして比較触媒組成物1を得た。
【0050】
(比較製造例2)
表面酸点処理を行わなかったこと以外は製造例2と同様にして比較触媒組成物2を得た。
【0051】
<NH3-TPD測定>
試料30mgに対し、前処理としてヘリウムを30mL/minで流通し、10℃/minの昇温速度で500℃まで昇温して1時間保持した。1時間保持後にヘリウム流通下で100℃まで降温し、続いてアンモニア(5%ヘリウムバランス)を30mL/minで流通し、100℃で30分保持した。次に100℃に保持した状態でヘリウム30mL/minを流通して10分間系内を置換し、その後ヘリウム30mL/min流通下で10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温しながらTPD測定を実施した。NH酸量の測定結果を表Xに示す。なお。表中のAlはZSM-5の組成がHn(HO)16[AlSi96-n192]であるとして各元素の原子量から算出した。
【0052】
【表1】
【0053】
<BTX収率(1)>
(実施例1~2、比較例1~2)
製造例1~2、比較製造例1~2の触媒組成物をそれぞれ5mL反応器に充填した流通式反応装置を用い、反応温度:550℃、反応圧力:0.1MPaGの条件で、ブテンを触媒組成物と接触、反応させた。その際、原料油と触媒との接触時間が6.4秒となるように希釈剤として窒素を導入した。
この条件にて30分間反応させて、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素を製造し、反応装置に直結されたFIDガスクロマトグラフにより生成物の組成分析を行って、炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の収率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
上記表2に示したとおり、本発明を適用した実施例1では、酸点表面処理をしていない比較触媒組成物1を用いた比較例1に比べてBTX収率が高かった。また、本発明を適用した実施例2では、酸点表面処理をしていない比較触媒組成物2を用いた比較例2に比べてBTX収率が高かった。
【0056】
<BTX収率(2)>
(実施例3、比較例3)
ブテンの代わりにブタンを用いたこと以外は、前記「BTX収率(1)」と同様にして炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の収率を測定した。測定結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
上記表3に示したとおり、本発明を適用した実施例3では、酸点表面処理をしていない比較触媒組成物1を用いた比較例3に比べてBTX収率が高かった。
【0059】
<BTX収率(3)>
(実施例4、比較例4)
ブテンの代わりに下記表4の性状を有する原料油1を用いたこと以外は、前記「BTX収率(1)」と同様にして炭素数6~8の単環芳香族炭化水素の収率を測定した。測定結果を表5に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
上記表5に示したとおり、本発明を適用した実施例4では、酸点表面処理をしていない比較触媒組成物1を用いた比較例4に比べてBTX収率が高かった。