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特許7239932網構築方法、網設計装置及び網設計プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】網構築方法、網設計装置及び網設計プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 3/52 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
H04Q3/52 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019200431
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021077925
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】間野 暢
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】宇野 毅明
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-242149(JP,A)
【文献】特開2002-325087(JP,A)
【文献】特開2000-244951(JP,A)
【文献】特開2019-047160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-12/22
12/50-12/66
41/00-49/9057
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q3/52
11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の機械式パッチパネルを有する入力層、中間層、出力層の3層からなる網を構築する網構築方法であって、
機械式パッチパネルのサイズをN、各層が有する機械式パッチパネルの台数をLとすると、
各層における前記Lの値が等しくなるように、機械式パッチパネルを各層に1台ずつ増設し、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間をそれぞれN/(L+1)本の新たな配線で接続し、
各層間の収容数が(LN)/(L+1)で定められる上限に至るまで、
既設のL台の入力層の機械式パッチパネル及び既設のL台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、並びに、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと既設のL台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、
の少なくともいずれかを接続する、
網構築方法。
【請求項2】
それぞれ複数の機械式パッチパネルを有する入力層、中間層、出力層の3層からなる網を設計する網設計装置であって、
機械式パッチパネルのサイズをN、各層が有する機械式パッチパネルの台数をLとすると、
各層における前記Lの値が等しくなるように、機械式パッチパネルを各層に1台ずつ増設し、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間をそれぞれN/(L+1)本の新たな配線で接続し、
各層間の収容数が(LN)/(L+1)で定められる上限に至るまで、
既設のL台の入力層の機械式パッチパネル及び既設のL台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、並びに、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと既設のL台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、
の少なくともいずれかを接続する、
網設計装置。
【請求項3】
請求項2に記載の網設計装置に備わる各機能部としてコンピュータを実現させる、
網設計プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
機械式パッチパネルを複数用いて、拡張可能なパッチパネル網を構築するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの配線は面倒な作業であるが、高速で堅牢なネットワークサービスの不可欠な基礎となっている。ネットワーク局ビルにおけるこれらのタスクの運用コストは大きい。なぜならば、これらの作業は、通常、作業手順書の作成、ケーブルの両端においてネットワーク機器に接続する2人の作業員の派遣、ケーブルの疎通と電力レベルの試験、これらの作業の統制者を必要とするからである。さらに、作業員がケーブルを間違って配線することがあり、これがサービス品質の劣化および/またはこれらの作業ミスを修正するための追加の作業を引き起こす。
【0003】
機械式パッチパネル(非特許文献1)を利用することで配線作業が遠隔から自動で実行できる。しかし、1台の機械式パッチパネルではネットワーク局ビルの配線全てを収容できないため、複数の機械式パッチパネルを使用したパッチパネル網を構成する必要がある。
【0004】
局舎内の使用配線数は、最初は少なく、時間とともに増加していく。このため、機械式パッチパネル網を構成する際は、初期段階では使用する機械式パッチパネル台数が少なく、使用機械式パッチパネル台数を増加すると収容可能な配線数も増加する、拡張可能な網を構成することが望ましい。このような網が構築できれば初期投資額を抑えて局舎内の配線作業を自動化できる可能性がある。
【0005】
複数の機械式パッチパネルを使用した網構築方法として、狭義非閉塞構成(strictly nonblocking)や再配置非閉塞構成(rearrangeably nonblocking)などが利用できる(非特許文献2、3)。図1は再配置非閉塞網の例である。これら非閉塞網はある条件のもと、理論的に任意の接続パターンの実現が保証されているが、拡張については考慮されていない。
【0006】
次のような2つの方法で非閉塞網を拡張することも考えられるがそれぞれ後述する欠点が存在する。
第1の関連方法:中間層を最初から設置し、拡張の際は入力層、出力層の機械式パッチパネルを追加する方法。図1において中間層の機械式パッチパネルM1,M2,…,Mkと入出力にT1,R1を最初に配置し、拡張の際はT2,R2を追加し、次の拡張の際にはT3,R3を追加し、と入出力層の機械式パッチパネルを2台ずつ追加する方法である。
第2の関連方法:拡張の際は、入力層、中間層、出力層を追加しそれぞれの層を再配線し、ひとまわり大きい非閉塞網を構成する方法。図1から入力層、中間層、出力層にそれぞれに機械式パッチパネルを1台ずつ追加し、それぞれの層をパッチパネル間の配線数がN/(k+1)となるように再配線する方法である。
【0007】
第1の関連方法は次に説明する欠点が存在する。初期状態で、最終状態に必要な機械式パッチパネルの3分の1以上を設置する必要があり、後述するように、初期投資額が増加してしまう。また、初期構築の段階で最終状態を決定する必要があり、この最終状態をさらに拡張することができない。よって、最終的に必要となる配線数を初期構築の際に正しく予測する必要があるが局舎は長期間(10年以上)に渡り運用されるため、これは困難である。
【0008】
第2の関連方法も次に説明する欠点が存在する。ひとまわり大きい狭義非閉塞網へと拡張するには現在使用中の既設接続を再配線する必要があり、通信の断が発生する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】A. S. Kewitsch, “Large scale, all-fiber optical cross-connect switches for automated patch-panels,” Journal of Lightwave Technology, vol. 27, no. 15, pp. 3107-3115, Aug 2009.
【文献】F. Hwang, The mathematical theory of nonblocking switching networks. World Scientific, 2004, vol. 15.
【文献】M. Toru, I. Takeru, K. Mizutani, and O. Akashi, “Increasing capacity of the clos structure for efficient nonblocking networks,” 信学技報, vol. 118, no. 466, pp. 25-30, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
局舎内の配線数は時間とともに増加していくので、使用する機械式パッチパネル台数が徐々に増加可能であり、収容可能な配線数を大きくできることが望ましい。
【0011】
本開示は、初期状態で使用する機械式パッチパネルの台数が少なく、初期構築時に最終的な状態を決定する必要がなく、拡張時に使用中の既設配線を再配線が不要であるような網構築方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る方法は、
それぞれ複数の機械式パッチパネルを有する入力層、中間層、出力層の3層からなる網を構築する網構築方法であって、
機械式パッチパネルのサイズをN、各層が有する機械式パッチパネルの台数をLとすると、
各層における前記Lの値が等しくなるように、機械式パッチパネルを各層に1台ずつ増設し、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間をそれぞれN/(L+1)本の新たな配線で接続し、
各層間の収容数が(LN)/(L+1)で定められる上限に至るまで、
既設のL台の入力層の機械式パッチパネル及び既設のL台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、並びに、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと既設のL台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、
の少なくともいずれかを接続する、
網構築方法である。
【0013】
本開示に係る装置は、
それぞれ複数の機械式パッチパネルを有する入力層、中間層、出力層の3層からなる網を設計する網設計装置であって、
機械式パッチパネルのサイズをN、各層が有する機械式パッチパネルの台数をLとすると、
各層における前記Lの値が等しくなるように、機械式パッチパネルを各層に1台ずつ増設し、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間をそれぞれN/(L+1)本の新たな配線で接続し、
各層間の収容数が(LN)/(L+1)で定められる上限に至るまで、
既設のL台の入力層の機械式パッチパネル及び既設のL台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、並びに、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと既設のL台の中間層の機械式パッチパネルとの間の未使用配線、
の少なくともいずれかを接続する、
網設計装置である。
【0014】
本開示に係るプログラムは、本開示に係る網構築方法に備わる各ステップをコンピュータに実行せるプログラムであり、本開示に係る網設計装置に備わる各機能部としてコンピュータを実現させるプログラムである。プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【0015】
本開示に係る網は、
それぞれ複数の機械式パッチパネルを有する入力層、中間層、出力層の3層からなる網であって、
機械式パッチパネルのサイズをN、各層が有する機械式パッチパネルの台数をLとすると、
各層における前記Lの値が等しく、
各層の機械式パッチパネルの台数は1台ずつ増設され、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間はそれぞれN/(L+1)本の配線で接続され、
既設のL台の入力層の機械式パッチパネル及び既設のL台の出力層の機械式パッチパネルと増設された1台の中間層の機械式パッチパネルとの間に接続されている配線数、並びに、
増設された1台の入力層の機械式パッチパネル及び増設された1台の出力層の機械式パッチパネルと既設のL台の中間層の機械式パッチパネルとの間に接続されている配線数、
の和が(LN)/(L+1)以下である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、初期状態で使用する機械式パッチパネルの台数が少なく、初期構築時に最終的な状態を決定する必要がなく、拡張時に使用中の既設配線を再配線が不要な拡張可能網を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】再配置非閉塞網の例を示す。
図2】関連手法の初期状態の一例を示す。
図3】関連手法において1回拡張した状態の一例を示す。
図4】関連手法における拡張例を示す。
図5】関連手法における拡張後の最終状態の一例を示す。
図6】本開示に係る提案手法の初期状態の一例を示す。
図7】本開示における1回目の拡張のタイミングの一例を示す。
図8】本開示における1回目の拡張例を示す。
図9】本開示における2回目の拡張のタイミングの一例を示す。
図10】本開示における2回目の拡張例を示す。
図11】本開示における2回目の第2の拡張時の第1の接続例を示す。
図12】本開示における2回目の第2の拡張時の第2の接続例を示す。
図13】本開示における3回目の拡張のタイミングの一例を示す。
図14】本開示における3回目の拡張例を示す。
図15】本開示に係る装置構成図の一例を示す。
図16】使用機械式パッチパネル台数と収容数の関係の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
再配置非閉塞網をベースとした拡張可能な網構築について説明する。機械式パッチパネルのサイズをNとする。再配置非閉塞網は、図1のような入力層、中間層、出力層の3層からなり、それぞれの層はk個の機械式パッチパネルをもち、各層のパッチパネルは互いにN/k本の配線で接続されている。
まず、関連手法(第1の関連手法)について説明し、次に本開示に係る提案手法について説明する。
【0020】
〔関連手法〕
図1の構成から入力層の機械式パッチパネルパネルをk-1台、出力層の機械式パッチパネルをk-1台取り除く。すると図2のような構成が得られる。これを初期状態とする。図2はN=1000,k=10の場合の初期状態とする。この初期構成では配線を最大N本収容することができる。
【0021】
必要な配線収容数がNより大きくなった場合に、入力層と出力層にそれぞれ1台の機械式パッチパネルを追加する。そして、追加した機械式パッチパネルと中間層の各機械式パッチパネルをN/k本の配線で接続する。この拡張により配線収容数は2N本に増加する(図3)。
【0022】
以降、同様にして必要な配線収容数が現在の収容可能数を越える度に、入力層と出力層にそれぞれ1台の機械式パッチパネルを追加する(図4)。そして、追加した機械式パッチパネルと中間層の各機械式パッチパネルをN/k本の配線で接続する。1回の拡張で配線収容数はN本増加する。
【0023】
この手法は入力層の機械式パッチパネル数がL∈{1,…,k}である場合、使用台数がk+2L、収容数がL×Nとなる。この方法では最初にkを決める必要があり、最大でもkN本収容できる構成までしか拡張することができない(図5)。また、初期状態でk+2台の機械式パッチパネルが必要となる。
【0024】
〔提案手法〕
まずは機械式パッチパネルサイズNを1000とした具体的な拡張例を説明し、次に一般の場合を用いて増設のタイミング、使用台数と収容数の関係について説明する。
【0025】
〔N=1000の場合の拡張例〕
図6のように接続し、これを初期状態とする。
この状態では1000本の配線を収容できるが500本まで収容した段階で機械式パッチパネルを増設する。図7がその状態である。図7において配線の近くの数字は使用中の配線数と総配線数を表わしている。例えばT1の左上の数字500/1000は入力配線数が全部で1000本あり、そのうち500本が使用中であることを示している。
【0026】
拡張では入力層、中間層、出力層にそれぞれ機械式パッチパネルを1台増設する(図8)。1回目の拡張ではT2,M2,R2が増設される。そして新設された入力層の機械式パッチパネルT2と中間層の機械式パッチパネルM2を500本の配線で接続する。次にT1とM1の間の配線のうち未使用の配線500本をM2に接続する。するとM1側に500本の空きポートができるので、T2とM1を500本の配線で接続する。R2についても同様に接続変更する。
【0027】
1回目の拡張後の状態(図8)では2000本の配線を収容できるが、1200本まで収容した段階で次の機械式パッチパネルを増設する(図9)。2回目の拡張でも、1回目と同様に、入力層、中間層、出力層にそれぞれ機械式パッチパネルを1台増設する(図10)。図10ではT3,M3,R3が増設されている。そして新設された入力層の機械式パッチパネルT3と中間層の機械式パッチパネルM3を334本の配線で接続する。
【0028】
次に、T1,T2とM1,M2の間に未使用配線が800本ある。また、T3とM3の間に666本の未使用配線が存在する。そこで、これらの未使用配線を用いて、2回目の拡張における上限まで接続する。例えば、上限が2200本の場合、T3とM2を666本の配線で接続する(図11)。これにより、2回目の拡張の上限に達する。
【0029】
また、図12に示すように、T1とM2の間の333本、T2とM2の間の333本の未使用配線をM3に接続可能である。またM1,M2側に666本の空きポートができるので、T3とM1,M2との間を666本の未使用配線で接続可能である。図10では、M1の配線が全て使用済みのため、T3とM2を666本の未使用配線で接続可能である。R3についても同様に接続変更する。このように、2回目の拡張後の状態では3000本の配線を収容できるが、上限の2200本まで収容した段階で次の機械式パッチパネルを増設する(図13)。
【0030】
3回目の拡張でも、1回目と同様に、入力層、中間層、出力層にそれぞれ機械式パッチパネルを1台増設する(図14)。図14ではT4,M4,R4が増設されている。そして新設された入力層の機械式パッチパネルT4と中間層の機械式パッチパネルM4は250本の配線で接続可能である。次に、T1,T2,T3とM1,M2,M3の間に未使用配線が800本あるのでそのうち750本をM4に接続可能である。またM1,M2,M3側に750本の空きポートができるので、T4とM1,M2,M3を750本の配線で接続可能である。R4についても同様に接続変更する。
以降の増設のルールについては一般の場合に含め、次節で説明する。
【0031】
〔一般の場合〕
一般の機械式パッチパネルサイズNについて初期状態、拡張のタイミングと接続変更方法、使用台数と収容数の関係について説明する。図15に、本開示に係る網設計装置の構成の一例を示す。網設計装置10は、パラメータ入力部11、拡張条件判断部12及び接続変更計算部13を備え、拡張のための構成変更を計算する。パラメータ入力部11には、機械式パッチパネルのサイズNや現在の台数L、それぞれのパッチパネル間の配線本数と使用中の配線数を入力する。
【0032】
初期状態は図6のように入力層、中間層、出力層に1台ずつ機械式パッチパネルT1、M1、R1を設置する。そして入力層と中間層の機械式パッチパネルをN本で接続し、出力層と中間層もN本で接続する。拡張は前節と同様に各3層に1台ずつ機械式パッチパネルを増設する。
【0033】
拡張のタイミングについて説明する。このタイミングが拡張条件判断部12で以下のように計算される。現在の中間層の機械式パッチパネル台数をLとする。このとき、配線最大をLN本収容可能であるが、(LN)/(L+1)収容するまでに拡張する。収容数が(LN)/(L+1)以下ならいつでも拡張してよく、これは運用者が決定する。
【0034】
例えば、大量の配線接続の需要が見込まれるので早めに拡張するなどである。図13はN=1000,L=3の例であり、このとき拡張が必要な収容数は(LN)/(L+1)=(9×1000)/4=2250であり、図では2200本収容しているので拡張タイミングの条件を満たしている。
【0035】
拡張の際の接続変更について説明する。拡張条件判断部12において拡張が必要とされた場合、接続変更計算部13によって以下のように計算される。拡張時は各3層に1台ずつ機械式パッチパネル、T(L+1),M(L+1),R(L+1)を増設する。増設された入力層の機械式パッチパネルT(L+1)とM(L+1)をN/(L+1)本の配線で接続する。
【0036】
配線の収容が高々(LN)/(L+1)であるので、入力層の機械式パッチパネルT1,T2,…,TLと中間層の機械式パッチパネルM1,M2,…,MLの間には未使用配線が少なくともLN-(LN)/(L+1)=(LN)/(L+1)本存在する。これら未使用配線(LN)/(L+1)本を増設されたM(L+1)に接続可能である。一方、M1,M2,…,ML側に(LN)/(L+1)本分の空きポートがあるので、T(L+1)とM1,M2,…,MLを(LN)/(L+1)の配線で接続可能である。
【0037】
ここで、既設の入力層及び出力層と新設の中間層との間の未使用配線を接続する第1の接続の数と、新設の入力層及び出力層と既設の中間層との間の未使用配線を接続する第2の接続の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、新設の入力層及び出力層に備わる未使用配線の数が既設の入力層及び出力層に備わる未使用配線の数に等しくなるまで第2の接続を行うことができる。また、新設及び既設の入力層及び出力層に備わる未使用配線の数が等しくなった時点からは、既設及び新設の各入力層及び出力層に備わる各機械式パッチパネルに未使用配線が残るよう、各層間の収容数が(LN)/(L+1)で定められる上限に至るまで、既設及び新設の各入力層及び出力層に備わる各機械式パッチパネルに対応する第1の接続又は第2の接続を順に行う。
【0038】
図13はN=1000,L=3の例であり、追加したT4とM4をN/(L+1)=1000/4=250本で接続し、未使用配線(LN)/(L+1)=(3×1000)/4=750本を貼り替えている。
【0039】
使用台数と収容数の関係について説明する。現在の中間層の機械式パッチパネル台数がLの場合、収容数が(LN)/(L+1)までに拡張する必要がある。よって、使用台数Lが3の場合、収容数は(LN)/(L+1)=2250未満の2200本で拡張している。また、初期状態で必要な機械式パッチパネルの台数は3となる。
【0040】
(本開示によって生じる効果)
提案手法により、初期状態で使用する機械式パッチパネル台数は3となり、使用中の既設配線の再配置をすることなく拡張可能な網が構築できる。このため、本開示は、初期状態で使用する機械式パッチパネルの台数が少なく、初期構築時に最終的な状態を決定する必要がなく、拡張時に使用中の既設配線を再配線が不要な拡張可能網を構築することができる。また、拡張可能な機械式パッチパネル網により、初期投資額を抑えつつ、ネットワーク局舎内での配線作業を自動化できる可能性がある。
【0041】
図16は機械式パッチパネルサイズNが1000の場合の提案手法と関連手法の使用する機械式パッチパネル台数と収容数の台数の関係を図示している。関連手法は事前に最終状態の中間層機械式パッチパネル数kを決める必要があり、図16ではk=10の場合とk=20の場合を図示している。
【0042】
図16から提案手法は初期状態に必要な機械式パッチパネル台数が少なく、しかも拡張途中において関連手法よりも少ないもしくは同等の台数で同じ収容数を達成でき、拡張の能力高い(最大まで拡張した場合の収容数が大きい)ことが分かる。
【0043】
例えば、初期状態で必要な台数は提案手法が3台であるのに対して提案手法はk=10の場合で12台、k=20の場合で22台である。また、収容数5000を越えるために必要な機械式パッチパネルの台数は提案手法が18台であるのに対して提案手法はk=10の場合で20台、k=20の場合で30台である。また、収容数15000を越えるために必要な機械式パッチパネルの台数は提案手法が48台であるのに対して提案手法はk=10の場合では拡張の限界に達しているためそのような網を構成できず、k=20の場合で50台である。
【0044】
(開示のポイント)
局舎内の配線数を時間とともに増加していくので徐々に使用する機械式パッチパネル台数を増加していき、収容可能な配線数を大きくできるような拡張可能な網構築方法が必要である。従来技術は初期段階での使用機械式パッチパネル台数が多いか、拡張時に使用中の既設配線を再配置する必要があった。初期段階での使用台数が多いと初期投資額が高額になり、使用中の既設配線を再配置すると通信断が発生するという問題があった。
【0045】
本開示では機械式パッチパネル間をあらかじめ多めの配線で接続し、拡張が必要なタイミングで未使用配線を別の機械式パッチパネルに接続変更することで拡張可能な網を構築する手法を提案した。パッチパネル間を多めの配線で接続しているため拡張時に必ず利用可能な未使用配線が残り、拡張の余地が残る。また、事前に多めにファイバを敷設しておき、接続変更ではなく別のファイバを使用してもよい。
【0046】
これにより、初期状態で使用する機械式パッチパネルの台数が少なく、使用中の既設配線の再配置をすることなく拡張可能な網が構築できる。
【0047】
なお、本開示の装置はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10:網設計装置
11:パラメータ入力部
12:拡張条件判断部
13:接続変更計算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
図16