(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】洗浄方法、洗浄装置、記憶媒体、及び洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230317BHJP
C11D 7/08 20060101ALI20230317BHJP
C11D 7/34 20060101ALI20230317BHJP
C11D 7/28 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H01L21/304 645B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 647A
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
C11D7/08
C11D7/34
C11D7/28
(21)【出願番号】P 2019515103
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2018003684
(87)【国際公開番号】W WO2018198466
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2017086690
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】平野 勲
(72)【発明者】
【氏名】寺田 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳司
(72)【発明者】
【氏名】戸島 孝之
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-281148(JP,A)
【文献】特開平03-072626(JP,A)
【文献】特開平10-135170(JP,A)
【文献】特開2007-237119(JP,A)
【文献】特開2006-229002(JP,A)
【文献】特開2010-027786(JP,A)
【文献】特開2004-241414(JP,A)
【文献】特開平05-283381(JP,A)
【文献】特開平04-079325(JP,A)
【文献】特開平04-079324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
C11D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理層を備える基板を加熱する加熱工程と、
加熱された前記基板に対して、被処理層を分解可能な成分(A)の蒸気を供給して、前記被処理層と、前記成分(A)とを反応させる反応処理工程と、
前記成分(A)と反応した前記被処理層を前記基板から除去する除去工程と、
を含み、前記加熱工程において、前記基板を前記成分(A)の沸点-10℃以上、沸点未満の高温に加熱し、前記蒸気の温度が、前記成分(A)の沸点以上、500℃以下であることを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記成分(A)が硝酸である、請求項
1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記成分(A)がスルホン酸である、請求項
1に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記スルホン酸がフッ素化アルキルスルホン酸である、請求項
3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記フッ素化アルキルスルホン酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸からなる群より選択される1種以上である、請求項
4に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記成分(A)がトリフルオロメタンスルホン酸であり、前記蒸気の温度が、前記成分(A)の沸点以上、200℃以下である、請求項
1に記載の洗浄方法。
【請求項7】
被処理層を備える基板を加熱する加熱部と、
加熱された前記基板に対して、被処理層を分解可能な成分(A)の蒸気を供給して、前記被処理層と、前記成分(A)とを反応させる蒸気供給部と、
前記成分(A)と反応した前記被処理層を前記基板から除去する除去液を供給する除去液供給部と、
を備え、前記加熱部は、前記基板を前記成分(A)の沸点-10℃以上であり沸点未満の高温に加熱し、前記蒸気の温度が、前記成分(A)の沸点以上、500℃以下であることを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄装置が、1以上の第1処理部と、1以上の第2処理部とを備え、
前記加熱部と、前記蒸気供給部とを備える処理室が、前記第1処理部に設けられ、
前記除去液供給部が、前記第2処理部に設けられ、
前記加熱部により前記被処理層を備える前記基板を加熱しながら、前記蒸気供給部から前記蒸気を供給する、請求項
7に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記第1処理部が、補助ガスを前記処理室内に供給する補助ガス供給部を更に備える、請求項
8に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記成分(A)が硝酸である、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記成分(A)がスルホン酸である、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記スルホン酸がフッ素化アルキルスルホン酸である、請求項
11に記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記フッ素化アルキルスルホン酸が、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸からなる群より選択される1種以上である、請求項
12に記載の洗浄装置。
【請求項14】
前記成分(A)がトリフルオロメタンスルホン酸であり、前記蒸気の温度が、前記成分(A)の沸点以上、200℃以下である、請求項
7に記載の洗浄装置。
【請求項15】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の洗浄方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記録媒体。
【請求項16】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の洗浄方法において使用され、前記成分(A)として酸性化合物を含む洗浄組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法、洗浄装置、記憶媒体、及び洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造工程では、半導体ウエハ等の基板上に形成された層間絶縁膜や金属膜等の被エッチング膜を、レジスト膜をマスク材として使用してエッチングすることで、所定のパターンを形成する工程が行われる。
【0003】
近年、層間絶縁膜として低誘電率膜(Low-k膜)を用いたCu多層配線技術が注目されている。このようなCu多層配線技術では、Low-k膜に埋め込み配線溝又は孔を形成し、その中にCuを埋め込むデュアルダマシン法が採用される。
Low-k膜としては有機系の材料も多く用いられている。このような有機系のLow-k膜をエッチングする場合には、Low-k膜と同じく有機膜であるレジストと、十分にエッチングレートに差をつけることが困難である。このため、Ti膜、TiN膜等の無機系のハードマスク膜がエッチング用のマスクとして使用される。
【0004】
エッチング後に基板上に残存するレジスト膜や、ハードマスク膜は基板上からから除去される必要がある。かかる除去の方法としては、例えば、枚葉式の洗浄装置を使用して、有機アミン系除去液、フッ化アンモンを含むフッ化アンモン系除去液、無機系の除去液等を用いて行う方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるような除去液を用いる方法では、除去液又は基板の温度を上げることで処理を促進することができる。
しかしながら、除去液の組成の変化の影響や、除去液の供給系の配管部材の耐熱性の観点から、温度の上限には制約があった。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであって、従来よりも高温で被処理層を分解又は変性させることによって、被処理層を効果的に除去することができる洗浄方法、洗浄装置、記憶媒体、及び洗浄組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み検討を行ったところ、被処理層を備える基板を加熱した状態で、基板に対して被処理層を分解可能な成分(A)の蒸気を供給し、次いで、成分(A)と反応した被処理層を基板から除去する方法によって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、
被処理層を備える基板を加熱する加熱工程と、
加熱された基板に対して、被処理層を分解可能な成分(A)の蒸気を供給して、被処理層と、成分(A)とを反応させる反応処理工程と、
成分(A)と反応した前記被処理層を前記基板から除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする洗浄方法である。
【0010】
本発明の第2の態様は、
被処理層を備える基板を加熱する加熱部と、
加熱された基板に対して、被処理層を分解可能な成分(A)の蒸気を供給して、被処理層と、成分(A)とを反応させる蒸気供給部と、
成分(A)と反応した被処理層を基板から除去する除去液を供給する除去液供給部と、
を備えることを特徴とする洗浄装置である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる洗浄方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶した記録媒体である。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1の態様にかかる洗浄方法において使用され、成分(A)として酸性化合物を含む洗浄組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも高温で被処理層を分解又は変性させることによって、被処理層を効果的に除去することができる洗浄方法、洗浄装置、記憶媒体、及び洗浄組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示される基板処理装置が備える基板処理ユニットの構成の概略を示す平面図である。
【
図3】
図2に示される基板処理ユニットが備える第1処理部の構成の概略を示す断面図である。
【
図4】
図2に示される基板処理ユニットが備える第2処理部の構成の概略を示す断面図である。
【
図5】洗浄方法を実行するための洗浄装置の制御に関するフローチャートを示す図である。
【
図6】ドライエッチングにより洗浄対象の基板が形成される態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、洗浄方法、洗浄装置、記録媒体、及び洗浄組成物について説明する。洗浄方法は、被処理層を備える基板から被処理層を除去すべく、基板を洗浄する方法である。洗浄装置は、前述の洗浄方法において好適に使用される装置である。記録媒体は、前述の洗浄方法をコンピュータに実行させるためプログラムを記憶した記録媒体である。洗浄組成物は、前述の洗浄方法において使用される組成物である。
【0016】
まず、
図6を参照し、洗浄対象の基板について、以下に説明する。
洗浄対象の基板W1の構造の一例が、
図6(D)に示される。
図6(D)に示されるように、基板W1は、例えば、半導体ウエハ91と、被エッチング膜92と、被処理層93(ハードマスク膜)とを順に有する。被エッチング膜92及び被処理層93は、ドライエッチング処理により所定のパターンにパターニングされており、基板W1の表面の凹凸パターンを形成している。
半導体ウエハ91は、例えばシリコンウエハである。被エッチング膜92は、例えば、絶縁膜、導電体膜等である。絶縁膜は、例えばSiO
2膜、Low-k膜と呼ばれる低誘電率膜等のシリコン系絶縁膜である。Low-k膜は、例えば、比誘電率が二酸化シリコンの比誘電率よりも低い膜、例えばSiOC膜、SiCOH膜等である。導電体膜は、例えばCu膜、Al膜等の金属膜である。
被処理層93については、無機ハードマスク膜、有機ハードマスク膜、有機-無機複合ハードマスク膜等である。これらのハードマスク膜の材質については詳細に後述する。
【0017】
基板W1は、例えば
図6(A)に示される原料基板Woのドライエッチング処理により得られる。原料基板Woは、半導体ウエハ91と、被エッチング膜92’と、被処理層93’(ハードマスク膜)と、フォトリソグラフィ工程により所定のパターンによりパターニングされたフォトレジスト膜94とを順に有する。被エッチング膜92’及び被処理層93’は、未だ所定のパターンにパターニングされていない。
【0018】
原料基板Woのドライエッチング処理は、例えば次のようにして実施される。
まず、
図6(B)に示されるように、フォトレジスト膜94をマスク材として使用して被処理層93’をドライエッチングする。これにより、フォトレジスト膜94のパターンが被処理層93’に転写され、所定のパターンにパターニングされた被処理層93が形成される。
【0019】
次いで、
図6(C)に示されるように、フォトレジスト膜94をアッシング処理により除去する。
【0020】
その後、
図6(D)に示されるように、被処理層93をマスク材として使用して被エッチング膜92’をドライエッチングする。これにより、所定のパターンにパターニングされた被エッチング膜92が形成される。
【0021】
ドライエッチング処理は、異方性エッチングであってもよいし、等方性エッチングであってもよい。ドライエッチング処理で使用されるエッチング方法としては、例えば、ECRエッチング法、ICPエッチング法、CCPエッチング法、Heliconエッチング法、TCPエッチング法、UHFプラズマ法、SWPエッチング法等が挙げられる。
【0022】
図6(D)に示されるように、基板W1には、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)、レジスト膜のアッシングの際しに生じたレジスト残渣等の物質Pが付着している場合がある。
【0023】
≪洗浄組成物≫
洗浄組成物は、後述される洗浄方法において使用される組成物である。具体的には、洗浄組成物は、基板上に形成された被処理層を洗浄するために用いられる。洗浄組成物は、被処理層を分解可能な成分(A)を含む。
【0024】
以下、洗浄組成物による処理対象である基板、及び被処理層と、洗浄組成物に含まれる必須又は任意の成分について説明する。
【0025】
<基板>
基板の種類は、特に限定されない。基板は、例えば、ガラス基板や金属基板等の無機材料からなる基板であってよく、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等からなる樹脂製の基板であってもよい。
基板としては、典型的にはシリコン基板等の半導体基板である。
【0026】
また、基板上には、被処理層以外に、種々の他の層が形成されていてもよい。
他の層としては、絶縁層や、金属やITO等の金属酸化物等の導電性材料からなる導電性層や、半導体層、反射防止層等が挙げられる。
絶縁層としては、例えば、SiO2膜や、低誘電率膜(Low-k膜)が挙げられる。
Low-k膜としては、比誘電率が二酸化シリコンの比誘電率より低い膜である、SiOC膜、SiCOH膜等が挙げられる。
【0027】
以上説明した基板上に、被処理層と、必要に応じて他の層とが、所望する層構成となるように積層される。
【0028】
<被処理層>
被処理層の材質は、成分(A)により分解し得る材料であれば特に限定されない。被処理層としては、熱硬化型架橋高分子等からなる層や、フォトレジスト膜(特にイオン注入プロセス用のマスク材として使用されたイオン注入されたフォトレジスト膜)が挙げられるが、典型的にはハードマスク膜である。
リソグラフィープロセスによる微細加工等で、基板上の被エッチング層をエッチングしてパターンを形成する際に、エッチング選択比が被エッチング層と大きく異なる材質からなるパターン化された層が形成される。このパターン化された層をマスクとして被エッチング層のエッチングが行われる。
この被エッチング層とエッチング選択比が大きく異なる、マスクとして使用される層をハードマスクという。
ハードマスク膜の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
【0029】
無機ハードマスク膜の材質としては、例えば、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、シリコン酸化物(SiO2)、シリコン窒化物(Si3N4)、シリコン酸窒化物(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、及び炭化窒化ケイ素(SiCN)等が挙げられる。
【0030】
また、有機基を有するケイ素含有材料もハードマスク膜の材質として用いられる。かかる有機基を有するケイ素含有材料の例としては、ポリカルボシラン、オルガノポリシラザン、オルガノポリシラン、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンと金属酸化物(酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化タングステン)との共重合体等が挙げられる。
【0031】
有機ハードマスク膜(カーボンハードマスク膜)の材質としては、アモルファスカーボンや種々の樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、ノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレン樹脂等の芳香族基を含む樹脂が好ましく用いられる。
また、芳香族基を含む樹脂からなるカーボンハードマスク膜としては、例えば、特許第4433933号公報に記載されるような組成物を用いて形成されるハードマスク膜も知られている。
【0032】
具体的には、特許第4433933号公報に記載される組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体と、感放射線性酸発生剤と、溶剤とを含有する感放射線性組成物である。
【0033】
【化1】
(式(1)において、R
1は水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示し、各R
2は相互に独立に水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示し、R
3はエポキシ基を有する1価の有機基を示す。)
【0034】
【化2】
(式(2)において、各R
4は相互に独立に水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示す。)
【0035】
かかる感放射線性組成物用いて形成されるハードマスク膜は、式(2)で表される繰り返し単位に由来する芳香族基や、式(1)で表される繰り返し単位に由来するエステル結合を含む。
また、式(1)で表される繰り返し単位に含まれるR3で表されるエポキシ基同士が反応すると、エーテル結合が生成し得る。
このように、ハードマスク膜が、エステル結合や、エーテル結合を有するポリマーを含む場合がある。
【0036】
更に、ハードマスク膜は、フッ素、塩素、硫黄元素を含むこともある。
例えば、ハードマスク膜の材料には種々の目的でフッ素を含有する官能基が導入されることもあるし、ハードマスク膜を備える積層体に対してフッ素含有ガスを用いるドライエッチングが施される場合、ハードマスク膜の材料がフッ素化されることもある。
【0037】
カーボンハードマスク膜について他の材料としては、例えば、特許第5440755号公報、特許第5229044号公報、特許第5920588号公報、国際公開WO2014/014034号、特許第4639919号公報、及び国際公開WO2012/161126号等に記載される材料が挙げられる。
以下、各特許文献に記載の材料について説明するが、一般式の番号や置換基等を示す略号については、各特許文献に記載の番号を用いて説明するため、重複する場合がある。
【0038】
特許第5440755号公報には、下記式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される単位構造:
【化3】
と、下記式(2)で表される構造単位と、下記式(3)で表される構造単位:
【化4】
(上記式中、R
3、R
4、R
5、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1ないし3のアルキル基を表わし、
R
6、R
7及びR
8は、それぞれ、水素原子又は炭素原子数1ないし10の鎖状又は環状のアルキル基を表わし、
R
9は炭素原子数1ないし10の鎖状又は環状のアルキル基又は炭素原子数6ないし20の芳香族基を表わし、また、
R
7とR
8は互いに結合して環を形成していてもよく、
M及びQはそれぞれ直接結合又は連結基を表わし、
nは0又は1の整数を表わす。)
を含むポリマーであって、当該ポリマーを構成する全ての単位構造の総数を1.0とした場合、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)又は式(1-4)で表わされる単位構造の数(a)の割合、式(2)で表わされる単位構造の数(b)の割合及び式(3)で表わされる単位構造の数(c)の割合が、0.5≦a≦0.8、0.1≦b≦0.2、0.1≦c≦0.3となるポリマーが開示されている。
【0039】
特許第5440755号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、式(2)で表される単位に由来するエステル結合を有する。また、式(3)で表される単位は、エポキシ基(オキシラニル基)又はオキセタニル基を有するため、これらの基同志の反応によって、カーボンハードマスクに含まれるポリマーがエーテル結合を有する場合がある。
更に、式(1-1)~(1-4)で表される構造単位中の芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0040】
特許第5229044号公報には、
(A)芳香族環を有する重合体と、
(B)下記式(1):
【化5】
(式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、アダマンチル基、又はグリシジルエーテル基を示す。ただし、複数のRのうち、1つ又は2つがアダマンチル基であるとともに、1つ又は2つがグリシジルエーテル基である。nは0~3の整数を示す。)
で表される化合物と、
(C)有機溶媒と、を含有する組成物を用いて形成されるポリマーをカーボンハードマスクとして使用し得ることが記載されている。
特許第5229044号公報には、(A)芳香族環を有する重合体として、ノボラック樹脂を好適に使用できることも記載されている。
【0041】
特許第5229044号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、例えば、(A)芳香族環を有する重合体がノボラック樹脂である場合に、フェノール性水酸基と、式(1)で表される化合物が有するグリシジル基との反応により生成するエーテル結合を有する。
更に、(A)芳香族環を有する重合体や、式(1)で表される化合物に由来する芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0042】
特許第5920588号公報には、下記式(2):
-(-O-Ar2-O-Ar3-T-Ar4-)-・・・(2)
(ただし、式(2)中、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ炭素数6~50のアリーレン基を含む有機基を表し、Tはカルボニル基を表す。)
で表される構造単位、又は下記式(1)
-(-O-Ar1-)-・・・(1)
(式(1)中、Ar1は炭素数6~50のアリーレン基又は複素環基を含む有機基を表す。)
で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位の組み合わせを含むポリマーが記載されている。
【0043】
特許第5229044号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、芳香族ポリエーテルであって、必然的にエーテル結合を有する。
更に、特許第5229044号公報に記載のポリマーに含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0044】
国際公開WO2014/014034号には、芳香環を含む樹脂と、下記式(i):
Ar-(X-Q)n・・・(i)
(式(i)中、
Xはカルボニル基又はスルホニル基である。
Qは、1価の複素芳香族基又は-OR1である。R1は、炭素原子数1~30の1価の有機基である。
Arは、芳香族炭化水素基又は複素芳香族基である。
nは1~8の整数である。nが2以上である場合、複数のX及びQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される部分構造を有する架橋剤とを含有する組成物を用いて形成されるポリマーが記載されている。
【0045】
国際公開WO2014/014034号には、芳香環を含む樹脂の具体例として、ノボラック樹脂や、ポリアリーレンエーテル等のポリアリーレン系樹脂等について記載され、架橋剤の具体例として下記構造の化合物が開示されている。ノボラック樹脂が下記構造の架橋剤により架橋されて生成するポリマーは、エステル結合を含む。ポリアリーレンエーテルが下記構造の架橋剤により架橋されて生成するポリマーは、エーテル結合と、エステル結合と、を含む。また、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基を含む架橋剤を用いる場合、生成するポリマーにフッ素原子が含まれ得る。
更に、国際公開WO2014/014034号に記載のポリマーに含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【化6】
【0046】
特許第4639919号公報には、下記式(4)~(6):
【化7】
(式(4)~(6)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す。)
で表される構造単位を有する重合体を含む組成物を用いて形成される膜のハードマスク膜としての使用が記載されている(段落[0035]~[0037]を参照。)。
【0047】
また、特許第4639919号公報には、組成物が、上記の重合体の他に、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリイミド類等の種々の樹脂を含んでいてもよいことが記載されている(段落[0063]~[0065]を参照。)。つまり、特許第4639919号公報に記載される組成物を用いて形成されるハードマスク膜は、式(4)~(6)で表される構造単位に由来するアミド結合、及びエステル結合のみならず、バインダー樹脂に由来するエーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びイミド結合を含み得る。
更に、特許第4639919号公報に記載の組成物を用いて形成されるハードマスク膜に含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0048】
国際公開WO2012/161126号に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位:
【化8】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1~3のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を表し、R
3はヒドロキシ基又はカルボキシル基を表す。
式(2)中、R
4は水素原子又はメチル基を表し、Yは-C(=O)-NH-基又は-C(=O)-O-基で表される連結基を表し、Xはラクトン環を含む基、アダマンタン環を含む基又は置換されていてもよいベンゼン環基、置換されていてもよいナフタレン環基、若しくは置換されていてもよいアントラセン環基を表し、前記Yで表される連結基の炭素原子は前記ポリマーの主鎖と結合する。)
を含むポリマー(A)と、ブロックイソシアネート基、メチロール基又は炭素原子数1~5のアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する架橋性化合物(B)と、溶剤(C)とを含む組成物を用いて形成されるカーボンハードマスク膜が記載されている。
【0049】
国際公開WO2012/161126号に記載される組成物を用いて形成されるハードマスク膜に含まれるポリマーは、式(1)で表される構造単位、又は式(2)で表される構造単位に由来するアミド結合や、式(2)で表される構造単位に由来するエステル結合を有する。
【0050】
上記の特許文献のいくつかにも記載されている通り、所望する構造のポリマーと、架橋剤とを含む組成物を用いて形成される膜が、カーボンハードマスク膜として好ましく使用される。
カーボンハードマスク膜形成用の組成物に配合される一般的な架橋剤としては、特許第5920588号公報に記載されるメラミン系架橋剤、置換尿素系架橋剤、又はこれらのオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤が好ましく、例えば、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、又はメトキシメチル化チオ尿素等の化合物や、特許5867732号の段落[0035]に記載される耐熱性の高い架橋剤である、分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を、架橋剤として特に好ましく用いることができる。
【0051】
このような化合物は下記式(4)で表される部分構造を有する化合物や、下記式(5)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化9】
【0052】
式(4)中、R10及びR11はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を表し、n10は1~4の整数を表し、n11は1~(5-n10)の整数を表し、(n10+n11)は2~5の整数を表す。
式(5)中、R12は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R13は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、n12は1~4の整数を表し、n13は0~(4-n12)を表し、(n12+n13)は1~4の整数を表す。
オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2~100、又は2~50の範囲で用いることができる。
【0053】
以上説明した材料からなるハードマスク膜やフォトレジスト膜を良好に除去できるように、後述する被処理層を分解可能な成分(A)が適宜選択される。
【0054】
<被処理層を分解可能な成分(A)>
被処理層を分解可能な成分(A)(以下、成分(A)とも記す。)の種類は、被処理層の材質に応じて適宜選択され、気化させる際に加熱により著しく分解しない成分であれば、特に限定されない。
ここで、被処理層の分解は、被処理層を構成する材料の分子中の共有結合等の化学結合を開裂されることだけではなく、除去液等により被処理層を容易に洗浄、除去できる程度に、被処理層を成分(A)と反応させることが含まれる。かかる反応による被処理層の変性には、例えば、被処理層の除去液に対する可溶化が含まれる。
成分(A)は、典型的には、塩基性化合物(A1)、酸性化合物(A2)、酸化剤(A3)、及び還元剤(A4)等から適宜選択される。
これらの成分(A)の中では、洗浄性能が良好であることと、気化が容易である物質が多いことと等から酸性化合物(A2)が好ましい。
なお、洗浄効果が損なわれない範囲で、塩基性化合物(A1)、酸性化合物(A2)、酸化剤(A3)、及び還元剤(A4)等から選択される2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
成分(A)としては、種々の材質を良好に分解しやすい点から、塩基性化合物(A1)及び酸性化合物(A2)からなる群より選択される少なくとも1つであるのが好ましい。
【0056】
(塩基性化合物(A1))
塩基性化合物(A1)は、例えば、エステル結合(-CO-O-)、カーボネート結合(-CO-O-CO-)、アミド結合(-CO-NH-)、ウレタン結合(-NH-CO-NH-)等の塩基の存在下に開裂し得る結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
塩基性化合物(A1)の種類は、被処理層を分解できる限りにおいて特に限定されず、有機塩基であっても、無機塩基であってもよい。
【0057】
有機塩基としては、エチルアミン、n-プロピルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等のアミン類;ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、及び1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等の環状塩基性化合物等が挙げられる。
【0058】
(酸性化合物(A2))
酸性化合物(A2)は、例えば、エステル結合(-CO-O-)、カーボネート結合(-CO-O-CO-)、アミド結合(-CO-NH-)、ウレタン結合(-NH-CO-NH-)等の酸の存在下に開裂し得る結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
酸性化合物(A2)の種類は、被処理層を分解できる限りにおいて特に限定されず、有機酸であっても、無機酸であってもよい。
【0059】
有機酸の好適な例としては、脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸)、フッ素化脂肪族カルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸等)、アルカンスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等)、アリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等)、フッ素化アルキルスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸及びトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)等が挙げられる。
有機酸の炭素原子数は特に限定されないが、1~30が好ましく、1~10がより好ましい。
【0060】
無機酸の好適な例としては、塩酸(塩化水素)、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。
【0061】
以上説明した酸性化合物(A2)の中では、洗浄性能の点で、硝酸、及びスルホン酸が好ましい。好適なスルホン酸としては、前述のアルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、及びフッ素化アルキルスルホン酸が挙げられ、フッ素化アルキルスルホン酸がより好ましい。
【0062】
また、酸性化合物(A2)の中でもルイス酸性を示すルイス酸は、エーテル結合を良好に開裂させ得る。また、臭化水素酸やヨウ化水素酸等のハロゲン化水素もエーテル結合を開裂させるために用いることができる。
臭化水素酸やヨウ化水素酸等のハロゲン化水素や、ルイス酸性を示す酸性化合物(A2)は、エーテル結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に好ましく使用される。
かかるルイス酸の好適な例としては、前述のフッ素化アルキルスルホン酸が挙げられる。フッ素化アルキルスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0063】
これらのフッ素化アルキルスルホン酸は、ハードマスク膜、特にフッ素元素を含むハードマスク膜に対する親和性(濡れ性)が良好である。
このため、フッ素化アルキルスルホン酸を用いると、ハードマスク膜、特にフッ素元素を含むハードマスク膜を良好に、洗浄、除去しやすい。
【0064】
(酸化剤(A3))
酸化剤(A3)は、例えば、-CO-NH-NH-CO-結合のような酸化剤により容易に開裂する結合を有する材料からなる被処理層や、無機ハードマスク膜である被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
成分(A3)として使用し得る酸化剤としては、例えば、過酸化物、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、バナジン酸塩、次亜塩素酸塩、酸化鉄、オゾン等が挙げられる。
過酸化物の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸、過酸化尿素、及び過塩素酸が挙げられる。
【0065】
(還元剤(A4))
還元剤(A4)は、例えば、ジスルフィド結合のような還元剤により容易に開裂する結合を有する材料を含む被処理層を洗浄する場合に、成分(A)として好ましく使用される。
成分(A)として使用し得る還元剤としては、ヒドラジン等のヒドラジン化合物;アルデヒド類;アルコール類;アミン類等が挙げられる。
【0066】
洗浄剤組成物における成分(A)の含有量は、所望する洗浄条件において、所望する程度に被処理層を除去可能であれば特に限定されない。また、成分(A)の含有量は、成分(A)の種類に応じて、適宜、適切な量に調整される。
典型的には、洗浄剤組成物における成分(A)の含有量は、ポリマー溶液の質量(ポリマー(B)の質量と溶剤の質量との合計)に対して、5~150質量%が好ましく、30~130質量%がより好ましく、90~120質量%が特に好ましい。
【0067】
<ポリマー(B)>
洗浄組成物は、ポリマー(B)(以下、成分(B)とも記す。)を含んでいてもよい。洗浄組成物がポリマー(B)を含む場合、洗浄組成物を加熱して、成分(A)の蒸気を発生させる際に洗浄組成物の突沸が起きても、洗浄装置が洗浄液によって広範囲に汚染されにくい。
【0068】
当然ながらポリマー(B)が、成分(A)に対する耐性を有するのが好ましい。
【0069】
ポリマー(B)の種類は、均一な洗浄組成物を調製可能である限り特に限定されない。
ポリマー(B)の好適な例としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマー、ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマー、及び多糖類からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0070】
((メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマー)
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーは、(メタ)アクリル酸のホモポリマーであっても、(メタ)アクリル酸と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーは、成分(A)に対する耐性に優れるが、酸性化合物(A2)に対する耐性に優れることや、塩基性化合物(A1)と塩を形成する場合があるため、酸性化合物(A2)とともに用いるのが好ましい。
【0071】
(メタ)アクリル酸と共重合させてもよいモノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、及びスチレン類等が挙げられる。
【0072】
(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸アミド、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0074】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0075】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0076】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0077】
(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマーにおける、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位の含有量は、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。つまり、ポリメタクリル酸、及びポリアクリル酸が最も好ましい。
【0078】
(ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマー)
ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーは、ビニル基含有化合物のホモポリマーであっても、ビニル基含有化合物と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。なお、(メタ)アクリル酸又はその誘導体は、ビニル基含有化合物に含めない。
【0079】
ビニル基含有化合物の例としては、N-ビニルカルボン酸アミド、ビニルエーテル類、、ビニルエステル類、及び酸基含有ビニル化合物等が挙げられる。
【0080】
N-ビニルカルボン酸アミドの例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、N-ビニル安息香酸アミド等が挙げられる。
【0081】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0082】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0083】
酸基含有ビニル化合物の例としては、ビニルスルホン酸、及びビニルホスホン酸等が挙げられる。
【0084】
上記のビニル基含有化合物の中でも、入手の容易性や成分(A)に対する耐性等の点で、N-ビニルカルボン酸アミド、及び酸基含有ビニル化合物が好ましく、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルプロピオンアミド、ビニルスルホン酸、及びビニルホスホン酸がより好ましく、N-ビニルアセトアミド、ビニルスルホン酸、及びビニルホスホン酸が特に好ましい。
【0085】
ビニル基含有化合物と共重合させてもよいモノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、及びスチレン類等が挙げられる。
これらの好適な例については、前述の通りである。
なお、(メタ)アクリル酸と、ビニル基含有化合物とを含む単量体のコポリマーを、成分(B)として用いることもできる。
【0086】
ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーにおける、ビニル基含有化合物に由来する構成単位の含有量は、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。
ビニル基含有化合物に由来する構成単位を有するポリマーとして特に好ましいポリマーとしては、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、ポリビニルスルホン酸、及びポリビニルホスホン酸が挙げられる。
ポリ(N-ビニルアセトアミド)は、成分(A)に対する耐性に優れるが、塩基性化合物(A1)に対する耐性に特に優れることから、塩基性化合物(A1)とともに用いるのが好ましい。
ポリビニルスルホン酸、及びポリビニルホスホン酸は、成分(A)に対する耐性に優れるが、酸性化合物(A2)に対する耐性に優れることや、塩基性化合物(A1)と塩を形成する場合があるため、酸性化合物(A2)とともに用いるのが好ましい。
【0087】
(多糖類)
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、アガロース、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナン、カードラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、デキストラン、ローカストビーンガム、アルギン酸類、及びヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0088】
以上説明した成分(B)の分子量は、特に限定されない。成分(B)の分子量は、例えば、ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)として、5万~200万が好ましく、10万~125万がより好ましい。
【0089】
洗浄組成物中の成分(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。成分(B)の使用量は、ポリマー溶液の質量(成分(B)の質量と溶剤の質量との合計)に対して、1~30質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましく、3~15質量%が特に好ましい。
【0090】
<溶剤>
洗浄組成物は、取り扱い性の点から、0~40℃程度の室温付近の温度で液状であるのが好ましい。このため、洗浄組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
なお、塩基性化合物(A1)や酸性化合物(A2)が、0~40℃程度の室温付近の温度において液状である場合、溶剤を用いることなく室温付近の温度で液状である洗浄組成物を調製可能である場合がある。
かかる溶剤としては、水、及び有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0091】
溶剤の沸点が、成分(A)の沸点よりも低い場合、例えば、密封された耐圧性の容器内で、洗浄組成物を、成分(A)の大気圧下での沸点以上の温度に加熱し、次いで、耐圧性の容器に取り付けられた弁を開放することによって、洗浄対象の基板に向けて、成分(A)の蒸気を供給することができる。
【0092】
被処理層が成分(A)が進行させる加水分解反応により分解することが多いことから、溶剤は、水を含んでいてもよい。溶剤が含水溶剤である場合、溶剤中の水の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0093】
溶剤として用いることができる有機溶剤の具体例としては、
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;
N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;
N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコール類;
ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、ジエチルジグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチル-n-エーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールエステル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;
2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸-i-ブチル、ぎ酸-n-ペンチル、酢酸-i-ペンチル、プロピオン酸-n-ブチル、酪酸エチル、酪酸-n-プロピル、酪酸-i-プロピル、酪酸-n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸-n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-ペンチロラクトン等のラクトン類;
n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、メチルオクタン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;等が挙げられる。
【0094】
<その他の成分>
洗浄組成物は、上記の成分の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、pH調整剤、及び金属防食剤等が挙げられる。
【0095】
<洗浄組成物の製造方法>
洗浄組成物は、以上説明した成分を、それぞれ所望する量均一に混合することにより調製することができる。調製時の溶解残や、不溶性の不純物を除去するために、洗浄組成物を、必要に応じてフィルターによりろ過してもよい。
【0096】
≪洗浄方法≫
洗浄方法では、被処理層を備える基板において、被処理層の除去が行われる。被処理層については、洗浄組成物について前述した通りである。
洗浄方法は、加熱工程と、反応処理工程と、除去工程とを含む。
加熱工程では、被処理層を備える基板の加熱が行われる。
反応処理工程では、被処理層と、成分(A)との反応が行われる。
除去工程では、成分(A)と反応した被処理層の基板からの除去が行われる。
以下、洗浄方法に含まれる各工程について説明する。
【0097】
<加熱工程>
加熱工程では、被処理層を備える基板の加熱が行われる。加熱温度は、基板に過度のダメージが生じたり、前述の成分(A)の熱分解が生じたりしない方法であれば特に限定されない。
加熱工程では、成分(A)の沸点-10℃以上の温度に、基板が加熱されるのが好ましい。なお、成分(A)の沸点は、被処理層と成分(A)との反応を行う際の、基板周囲の圧力における沸点である。
このため、基板が、成分(A)の沸点-10℃以上の温度に加熱されていると、被処理層に対して、成分(A)を蒸気として接触させやすい。
この場合、基板の温度は、成分(A)の沸点-10℃以上沸点未満であってもよく、成分(A)の沸点以上であってもよい。
加熱された基板の温度は、成分(A)が分解しにくいことや、過度のエネルギー消費を抑える点から500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下が特に好ましい。
【0098】
基板が、成分(A)の沸点-10℃以上沸点未満、好ましくは沸点-10℃以上沸点-8℃未満、より好ましくは沸点-10℃以上沸点-5℃未満に加熱される場合、被処理層を備える基板に向けて供給される成分(A)の蒸気が、被処理層の表面で凝縮され液滴となる。被処理層表面上に生成した高温の成分(A)の液滴は、同体積での成分(A)の含有量が、成分(A)の蒸気よりも多い。また、この条件下では、成分(A)の蒸気が、被処理層の表面に全く触れない訳ではないため、成分(A)の蒸気による、被処理層の分解も進行する。このため、被処理層の分解が良好に進行する。
【0099】
また、基板の温度は、成分(A)の沸点以上でもよい。この場合は、被処理層と成分(A)とが高い温度で接触することによって、被処理層の分解が良好に進行する。
【0100】
基板を加熱する方法は特に限定されない。基板を加熱する方法としては、例えば、赤外線ヒーター等の外部加熱装置により、基板を非接触で加熱する方法や、基板を加熱台上に載置する方法等が挙げられる。
また、基板が置かれた室内に、高温のガスを流通させて、基板を所定の温度まで加熱させてもよい。この場合、高温のガスとしては、基板や被処理層と反応しない不活性なガスや、成分(A)の蒸気と不活性なガスとの混合ガスや、成分(A)の蒸気等が挙げられる。
基板が、加熱された成分(A)の蒸気を用いて加熱される場合、加熱工程と、後述する反応処理工程とが連続的に実施されると解される。
基板全体を、素早く均一な温度に加熱しやすいことから、基板を加熱台上に載置する方法が好ましい。
【0101】
<反応処理工程>
反応処理工程では、加熱された基板に対して、被処理層を分解可能な成分(A)の蒸気を供給して、被処理層と成分(A)を反応させる。
なお、成分(A)としては、塩基性化合物(A1)、酸性化合物(A2)、酸化剤(A3)、及び還元剤(A4)等から選択される2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、酸性化合物(A2)が好ましい。
【0102】
酸性化合物(A2)の中では、洗浄性能の点で、硝酸、及びスルホン酸が好ましい。好適なスルホン酸としては、前述のアルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、及びフッ素化アルキルスルホン酸が挙げられ、フッ素化アルキルスルホン酸がより好ましい。
フッ素化アルキルスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0103】
成分(A)の蒸気の外部への拡散を防ぐことができ、成分(A)の蒸気の温度を所望する温度に保ちやすいことから、通常、被処理層と成分(A)との反応は、密閉された処理室内に基板を置いた状態で行われるのが好ましい。
【0104】
成分(A)の蒸気を処理室内に導入する前には、処理室内に補助ガス(不活性ガス)を流通させるか、処理室内を減圧して、処理室内の、成分(A)と被処理層との反応を阻害し得る物質の量を低減させておくのが好ましい。
処理室内の圧力条件は特に限定されないが、0MPa(G)(大気圧)以上0.10MPa(G)以下が好ましく、0MPa(G)(大気圧)以上0.05MPa(G)以下がより好ましく、0MPa(G)(大気圧)以上0.03MPa(G)以下が特に好ましい。
減圧を行う場合、成分(A)の蒸気を導入する前に、処理室内に不活性ガスを導入して、処理室内の圧力を大気圧又は大気圧付近の圧力に戻しておくのも好ましい。
【0105】
成分(A)の蒸気は、成分(A)を含有する洗浄組成物の加熱によって生成する。洗浄組成物は、成分(A)単独でもよく、成分(A)と溶剤とを含んでいてもよい。
成分(A)の蒸気を発生させる方法は、所望する温度の成分(A)を含む蒸気を生成させることができる方法であれば特に限定されない。
典型的には、密閉された耐圧性の容器内で、成分(A)を含む洗浄組成物を、所望する蒸気の温度まで加熱した後、洗浄組成物を含む容器と、処理室とを繋ぐ配管内に設けられたバルブを開放することで、所望する温度の成分(A)の蒸気を処理室内に供給することができる。
この時、蒸気の温度が、所望する温度より低下することを避けるために、蒸気を供給する配管が、配管の外周部を加熱する補助加熱装置を備えているのが好ましい。また、処理室の壁面の一部又は全部を、補助加熱装置により加熱するのも好ましい。
【0106】
処理室に供給される蒸気の温度は特に限定されないが、成分(A)の沸点以上500℃以下が好ましく、成分(A)の沸点以上450℃以下が好ましく、成分(A)の沸点以上400℃以下がより好ましい。
【0107】
成分(A)として、トリフルオロメタンスルホン酸を用いる場合、トリフルオロメタンスルホン酸の蒸気の温度は、トリフルオロメタンスルホン酸の沸点以上200℃以下が好ましい。
なお、トリフルオロメタンスルホン酸の沸点は、トリフルオロメタンスルホン酸の蒸気を被処理層と反応させる際の、基板周囲の圧力における沸点である。
【0108】
反応処理工程において、被処理層と成分(A)とを反応させる時間は特に限定されない。
【0109】
上記のようにして、被処理層と成分(A)とを反応させた後、必要に応じて基板を冷却し、次いで除去工程による被処理層の除去を行う。
【0110】
<除去工程>
除去工程では、成分(A)と反応した被処理層の基板からの除去が行われる。なお、成分(A)と反応した被処理層は、被処理層の分解物又は変性物である。
成分(A)と反応した被処理層を基板から除去する方法は、特に限定されないが、基板を傷つけることなく、被処理層の分解物又は変性物を除去しやすいことから、基板と、除去液とを接触させる方法が好ましい。
基板と、除去液とを接触させる方法は特に限定されない。例えば、浸漬等の方法であってもよいが、被処理層の分解物又は変性物を除去しやすいことから、基板表面で除去液を流動させる方法が好ましく、基板表面に除去液を噴霧する方法がより好ましい。
【0111】
除去液は、水でもよく、有機溶剤でもよく、水と有機溶剤とを含む混合液であってもよい。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低沸点のアルカノールの他、洗浄組成物に含まれていてもよい溶剤として前述した、種々の有機溶剤を用いることができる。
【0112】
成分(A)が、塩基性化合物(A1)を含む場合、除去液に少量の酸を加えてもよく、成分(A)が、酸性化合物(A2)を含む場合、除去液に少量の塩基を加えてもよい。
【0113】
除去液は、常温であってもよいし、常温よりも高温に加熱されていてもよい。除去液を常温よりも高温に加熱して供給することにより、除去効率を高めることができる。
【0114】
除去液による基板表面の洗浄時間は特に限定されない。被処理層の分解物又は変性物が、所望する程度に基板表面から除かれるまで、除去液による除去操作を継続すればよい。
【0115】
除去液による除去を行った後、必要に応じて、基板を乾燥させることにより、洗浄された基板が得られる。
【0116】
≪洗浄装置≫
洗浄装置は、加熱部と、蒸気供給部と、除去液供給部とを備える。
加熱部は、被処理層を備える基板の加熱を行う。供給部は、加熱された基板に対する、前述の成分(A)の蒸気の供給を行う。供給部による成分(A)の蒸気の供給によって、被処理層と、成分(A)とを反応させる。除去液供給部は、基板に対して除去液を供給することによって、成分(A)と反応した、被処理層を基板から除去する。
【0117】
上記の洗浄装置は、それぞれ別個の役割を担う、1以上の第1処理部と、1以上の第2処理部とを備えるのが好ましい。この場合、第1処理部に上記の加熱部と、蒸気供給部とを備える処理室が設けられ、第2処理部に除去液供給部が設けられるのが好ましい。
そして、第1処理部は、補助ガスを処理室内に供給する補助ガス供給部を、更に備えるのが好ましい。
かかる洗浄装置において、第1処理部において、被処理層を備える基板の加熱を行いながら、蒸気供給部から基板に対して蒸気の供給が行われる。
【0118】
このような洗浄装置の好ましい一例について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。なお、
図5は、洗浄方法を実行するための洗浄装置の制御に関するフローチャートである。
【0119】
まず、
図1に示すように、洗浄装置は1は、洗浄操作を実行する基板処理ユニット2と、基板処理ユニット2の動作を制御する制御ユニット3とを備える。
【0120】
基板処理ユニット2は、基板の洗浄に関する各種処理を実行する。基板処理ユニット2が実行する各種処理については後述する。
【0121】
制御ユニット3は、例えばコンピュータであり、制御部と記憶部とを備える。制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、基板処理ユニット2の動作を制御する。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memmory)、ハードディスク等の記憶デバイスで構成されており、基板処理ユニット2において実行される各種処理を制御するプログラムを記憶する。
なお、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記録されてもよいし、その記憶媒体から記憶部にインストールされてもよい。
コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリーカード等が挙げられる、
記憶媒体には、例えば基板処理装置1の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、コンピュータが基板処理装置1を制御して、洗浄方法を実行させるプログラムが記録される。
【0122】
<基板処理ユニットの構成>
基板処理ユニットの構成について
図2を参照して説明する。
図2は、基板処理ユニット2の構成を示す概略平面図である。なお、
図2中の点線は基板を表す。
【0123】
基板処理ユニット2は、基板に対する各種処理を行う。基板処理ユニット2は、被処理層を備える基板から被処理層を除去する洗浄処理を行う。基板の典型例については、前述の通りである。
【0124】
基板処理ユニット2は、搬入出ステーション21と、搬入出ステーション21に隣接して設けられた処理ステーション22とを備える。
搬入出ステーション21は、載置部211と、載置部211に隣接して設けられた搬送部212とを備える。
載置部211には、複数毎の基板を水平状態で収容する複数の搬送容器(以下「キャリアC」と記す。)が載置される。
【0125】
搬送部212は、搬送機構213と受渡部214とを備える。搬送機構213は、基板を保持する保持機構を備え、水平方向及び鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能であるように構成されている。
【0126】
処理ステーション22は、基板に対する成分(A)の蒸気の供給を行う第1処理部4と、第1処理部4で基板上の被処理層と成分(A)とを反応させた後に、基板に対して除去液の供給を行う第2処理部5とを備える。
基板処理ユニット2において、搬入出ステーション21と、処理ステーション22とによって、
図5中の「第1処理部4への基板の搬入」(S101)が行われる。
図2では、処理ステーション22が複数の第1処理部4と、複数の第2処理部5とを有するが、処理ステーションにおいて第1処理部4の数と第2処理部5の数とはそれぞれ1つであってもよい。
図2中、第1処理部4は、所定方向に延在する搬送路221の一方側に配列されており、第2処理部5は、他方側に配列されている。これらの配列は一例であり、第1処理部4、及び第2処理部5の配列は、設計上、運用上の理由等に応じて任意に決定されてよい。
【0127】
搬送路221には、搬送機構222が設けられている。搬送機構222は、基板を保持する保持機構を備え、水平方向及び鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能であるように構成されている。
【0128】
以下、第1処理部で、成分(A)が供給される前の基板を「基板W1」、第1処理部4で成分(A)が供給された後の基板であって、第2処理部5で除去液を供給される前の基板を「基板W2」、第2処理部5で除去液を供給された後の基板を「基板W3」と記す。
【0129】
基板処理ユニット2において、搬入出ステーション21の搬送機構213は、キャリアCと受渡部214との間で、基板W1、基板W3の搬送を行う。具体的には、搬送機構213は載置部211に載置されたキャリアCから基板W1を取り出し、取り出した基板W1を受渡部214に載置する。また、搬送機構213は、処理ステーション22の搬送機構222により受渡部214に載置された基板W3を取り出し、載置部211のキャリアCへ収容する。
【0130】
基板処理ユニット2において、処理ステーション22の搬送機構222は、受渡部214と第1処理部4との間、第1処理部4と第2処理部5との間、第2処理部5と受渡部214との間で基板W1、基板W2、及び基板W3の搬送を行う。
具体的には、搬送機構222は、受渡部214に載置された基板W1を取り出し、取り出した基板W1を第1処理部4へ搬入する(S101)。また、搬送機構222は、第1処理部4から基板W2を取り出し、「第1処理部4からの基板の搬出」(S106)を行う。そして、搬送機構222は、第1処理部4から取り出された基板W2を第2処理部5へ搬入する「第2処理部への基板の搬入」(S107)を行う。更に、搬送機構222は、第2処理部5から基板W3を取り出し、「第2処理部5からの基板の搬出」(S110)を行う。次いで、搬送機構222は、取り出された基板W3を受渡部214に載置する。
【0131】
<第1処理部の構成>
第1処理部4の構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、第1処理部4の構成を示す概略断面図である。
第1処理部4は、加熱部41と、蒸気供給部42とを備える。
図3において、加熱部41は処理室411と、ヒーター412と、補助ガス供給管413及びバルブ414と、排気管415及びバルブ416とを備える。蒸気供給部42は、成分(A)供給管421と、バルブ422と、洗浄組成物貯留容器423とを備える。洗浄組成物貯留容器423は、加熱装置(不図示)を備える、加熱装置により、洗浄組成物貯留容器内の洗浄組成物が加熱されることで、前述の成分(A)を含む蒸気を発生させる。
【0132】
処理室411と、成分(A)供給管421とは、成分(A)を含む蒸気を所望する温度で処理室411内に供給しやすくする目的で、補助加熱装置を備えていてもよい。
処理室411については、
図3中、ヒーター412が設置されている面を下面とし、下面と反対の面を上面とする場合に、上面、及び側面に補助加熱装置が設けられるのが好ましい。補助加熱装置は、前述の上面、及び側面を構成する蓋体であってもよい。
また、成分(A)供給管421には、補助加熱装置としてリボン型のヒーターを巻きつけることができる。
【0133】
以下、第1処理部が行う処理について説明する。
【0134】
まず、前述の搬送機構222により第1処理部4に基板W1が搬入される(S101)。搬入された基板W1は、第1処理部内のヒーター412に載置される。ヒーター412上に基板W1が載置された後、バルブ414を開くことによって、「補助ガスの供給」(S102)が行われる。なお、補助ガスを供給する際、成分(A)供給管421中のバルブ422は閉じられ、排気管415中のバルブ416は開けられる。これによって、処理室411内の雰囲気が、補助ガスの雰囲気に置換される。
補助ガスは不活性ガスであり、補助ガスの供給により、処理室411内の被処理層と成分(A)との反応を阻害する物質の量が低減される。
所定の時間、補助ガスを供給した後に、バルブ414とバルブ416とが閉じられ、補助ガスの供給(S102)が停止される。
【0135】
補助ガスの供給(S102)に次いで、ヒーター412により基板W1に対し、「加熱開始」(S103)する。なお、ヒーター412は、基板W1が載置される前又は後や、補助ガスの供給前又は供給中に加熱を開始してもよい。
なお、基板W1の温度を所定の温度まで上げる時間を短縮できること等から、ヒーター412は常時高温に保たれていてもよい。この場合、
図5に示されるフローチャート中の「加熱開始」(S103)と「加熱停止」(S105)とが省略される。
【0136】
ヒーター412の、基板W1が載せられる面には、温度計(不図示)が設けられるのが好ましい。この場合、温度計が取得した基板W1の温度のデータに基づいて、基板W1の温度が一定であるように、ヒーター412の発生する熱量を増減させる制御が行われるのが好ましい。
【0137】
なお、前述の通り、ヒーター412に変えて、赤外線ヒーター等により非接触で基板W1を加熱してもよいし、処理室411に高温に加熱されたガスを供給して、基板W1の加熱を行ってもよい。
【0138】
基板W1の温度が所定の温度に達した後、成分(A)供給管421中のバルブ422を開くことにより「成分(A)の蒸気の供給」(S104)が行われる。この時、バルブ414とバルブ416とは、閉じられたままである。
所定の時間、処理室411内に成分(A)の蒸気を供給した後、バルブ422が閉じられ、成分(A)の蒸気の供給(S104)が停止される。成分(A)の蒸気の供給(S104)の停止後、ヒーター412を停止し「加熱停止」(105)が行われる。
成分(A)の蒸気の供給(S104)の停止後、バルブ416が開けられ、処理室411内の成分(A)蒸気が、排気管415より排出される。排出された成分(A)の蒸気は、排気管415に連結された処理装置(不図示)によって捕集され、必要に応じて中和等の処理が行われた後に廃棄される。
【0139】
以上のようにして、第1処理部4において、基板W1上の被処理層と、成分(A)とを反応させた後、基板W2について、搬送機構222による「第1処理部4からの基板の搬出」(S106)と「第2処理部5への基板の搬入」(S107)とが行われる。
なお、第2処理部5に基板W2を搬入する前に、クーリングプレート等の冷却装置(不図示)を用いて、基板W2が、冷却されるのが好ましい。
【0140】
<第2処理部の構成>
次に、第2処理部5の構成について
図4を参照して説明する。
図4は、第2処理部5の構成を示す概略断面図である。
第2処理部5は、基板W2に対する「除去液の供給」(S108)を含む処理を行う。第2処理部5が行う処理には、その他の処理が含まれていてもよい。
【0141】
第2処理部5は、チャンバ51を備え、チャンバ51内で、除去液の供給による被処理層の除去を含む基板処理を行う。
【0142】
第2処理部5は、基板保持部52を備える。基板保持部52は、回転軸521と、ターンテーブル522と、チャック523と、駆動部524とを備える。回転軸521は、チャンバ51内において鉛直方向に延在する。ターンテーブル522は、回転軸521の上端部に取り付けられる。チャック523は、ターンテーブル522の上面外周部に設けられ、基板W2の外縁部を支持する。駆動部524は、回転軸521を回転駆動する。基板保持部52は、基板W2を保持して回転可能となっている。
【0143】
基板W2は、チャック523に支持され、ターンテーブル522の上面からわずかに離間した状態で、ターンテーブル522に水平保持される。基板保持部52による基板W2の保持方式は、可動のチャック523によって基板W2の外縁部を把持するいわゆるメカニカルチャックタイプである。保持方式は、基板W2の裏面を真空吸着するいわゆるバキュームチャックタイプであってもよい。
【0144】
回転軸521の基端部は、駆動部524により回転可能に支持される。回転軸521の先端部は、ターンテーブル522を水平に支持する。回転軸521が回転すると、回転軸521の上端部に取り付けられたターンテーブル522が回転する。これにより、チャック523に支持された状態でターンテーブル522に保持された基板W2が回転する。制御部3は、駆動部524の動作を制御することにより、基板W2の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0145】
第2処理部5は、基板保持部52に保持された基板W2に対して除去液Lを供給する除去液供給部53を備える。
【0146】
除去液供給部53は、ノズル531と、除去液供給源532とを備える。ノズル531は、基板保持部52に保持された基板W2に対して、除去液Lを吐出する。除去液供給源532は、ノズル531に除去液Lを供給する。除去液供給源532が有するタンクには、除去液Lが貯留されている。ノズル531には、除去液供給源532から、バルブ533等の流量調整器が介設された供給管路534を通じて、除去液Lが供給される。第2処理部5は、それぞれ異なる除去液を供給する複数の除去液供給部を備えていてもよい。追加の除去液供給部は、除去液供給部53と同様に構成することができる。
【0147】
除去液Lとしては、洗浄方法について前述した通りである。
【0148】
第2処理部5は、ノズル531及びノズル531を駆動するノズル移動機構54を備える。ノズル移動機構54は、アーム541と、移動体542と、旋回昇降機構543とを有する。移動体542は、アーム541に沿って移動可能な駆動機構内蔵型の装置である。旋回昇降機構543は、アーム541を旋回及び昇降させる。ノズル531は、移動体542に取り付けられている。ノズル移動機構54は、ノズル531を、基板保持部52に保持された基板W2の中心の上方の位置と基板W2の周縁の上方の位置との間で移動させることができる。更には、ノズル移動機構54は、ノズル531を、平面視で後述するカップ55の外側にある待機位置まで移動させることができる。
【0149】
そして、基板保持部52に保持された基板W2を所定の速度で回転させたまま、除去液供給部53のノズル531を基板W2の上方に位置させ、ノズル531から基板W2に除去液Lを供給する。この際、制御部3は、除去液供給部53の動作を制御することにより、除去液Lを供給するタイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W2に供給された除去液Lは、基板W2の回転にともなう遠心力によって基板W2の表面に広がる。これにより、基板W2の表面から、被処理層の反応物又は変性物が除去される。
【0150】
第2処理部5は、排出口551を有するカップ55を備える。カップ55は、基板保持部52の周囲に設けられており、基板W2から飛散した除去液等を受け止める。カップ55には、昇降機構56と、液排出機構57とが設けられている。昇降機構56は、カップ55を上下方向に駆動させる。液排出機構57は、基板W2から飛散した除去液等を排出口551に集めて排出する。
【0151】
このようにして、第2処理部5による、被処理層の除去が行われることで基板W3が得られる。得られた基板W3に対して、第2処理部5において「基板の乾燥」(S109)が行われる。第2処理部5内で基板を乾燥させる方法としては、基板保持部52に保持された基板W3を回転させ続けることで、基板W3に付着した除去液を振り切る方法が挙げられる。また、窒素ガス、ドライエア等の乾燥用ガスを吹き付ける方法等で基板W3の乾燥が行われてもよい。
なお、基板W3の乾燥は、第2処理部5からW3が搬出された後に行われてもよい。
【0152】
このようにして得られた基板W3を、搬送機構222が第2処理部5から取り出し、「第2処理部5からの基板の搬出」(S110)が行われる。
【0153】
なお、第2処理部5は、基板保持部52に保持された基板W2に対して、イソプロピルアルコール(IPA)等の乾燥用溶媒を吐出するノズルと、該ノズルに乾燥用溶媒を供給する乾燥用溶媒供給源とを有する乾燥用溶媒供給部を備えていてもよい。また、第2処理部5は、基板保持部52に保持された基板W2に対して、窒素ガス、ドライエア等の乾燥用ガスを吐出するノズルと、該ノズルに乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給源とを有する乾燥用ガス供給部を備えていてもよい。
【0154】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0155】
〔実施例1〕
エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)が形成されたシリコン基板を、180℃に加熱した。
シリコン基板の加熱後、大気圧下で、シリコン基板に、硝酸50質量%を含む水溶液を加熱して発生させた蒸気を、180℃で、3分間供給した。なお、硝酸の大気圧下での沸点は82.6℃である。
蒸気の供給後、弱塩基性の水-水溶性エーテル混合液を除去液として用いて、カーボンハードマスク膜の除去を行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【0156】
〔実施例2〕
エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)が形成されたシリコン基板を、300℃で150秒間加熱した。
シリコン基板の加熱後、シリコン基板に、硝酸17.5質量%とポリアクリル酸12.5質量%と水70質量%とからなる洗浄組成物を300℃に加熱して発生させた蒸気を、300℃で2分間供給した。
蒸気の供給後、ジメチルスルホキシドとN-メチル-2-ピロリドンとを含む塩基性の除去液を用いて、カーボンハードマスク膜の除去を行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【0157】
〔実施例3〕
シリコン基板を加熱する温度を450℃に変更することと、蒸気の供給温度を450℃に変更することとの他は、実施例2と同様にしてカーボンハードマスク膜の除去処理を行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、カーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【0158】
〔実施例4〕
エステル結合とエーテル結合とフッ素元素とを含むポリマーを含むカーボンハードマスク膜(膜厚80nm)が形成されたシリコン基板を、180℃に加熱した。
シリコン基板の加熱後、大気圧下で、シリコン基板に、トリフルオロメタンスルホン酸50質量%を含む水溶液を加熱して発生させた蒸気を、180℃で、1分間、3分間、又は5分間供給した。なお、トリフルオロメタンスルホン酸の大気圧下での沸点は162℃である。
蒸気の供給後、弱塩基性の水-水溶性エーテル混合液を除去液として用いて、カーボンハードマスク膜の除去を行った後、更に水リンスを行った。
水リンス後の基板表面を顕微鏡観察したところ、蒸気供給時間が1分間、3分間、又は5分間のいずれの場合でもカーボンハードマスク膜は良好に除去されており、基板の膜厚も殆ど減少しなかった。
【符号の説明】
【0159】
1 基板処理装置
2 基板処理ユニット
3 制御ユニット
4 第1処理部
41 加熱部
42 蒸気供給部
5 第2処理部
51 チャンバ
52 基板保持部
53 除去液供給部