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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】共役ジエン系ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/28 20060101AFI20230322BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20230322BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20230322BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C08C19/28
C08F236/04
C08F230/08
B60C1/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020510928
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012899
(87)【国際公開番号】W WO2019189204
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018059451
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015928
【氏名又は名称】ZSエラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤井 まな
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼ 久勝
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110230(JP,A)
【文献】特開2016-216545(JP,A)
【文献】特開2017-186533(JP,A)
【文献】特開2014-162809(JP,A)
【文献】国際公開第2014/014052(WO,A1)
【文献】特開2013-108036(JP,A)
【文献】特開2012-140623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/28
C08F 236/04
C08F 230/08
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを含む単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させる第2工程と、
前記第2工程で得られるシロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化12】

(上記一般式(2)中、X は、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X 、X およびX は、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
【請求項2】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンである請求項1に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化13】

(上記一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。)
【請求項3】
前記ヒドロカルビルオキシシラン化合物が、窒素原子を含有する基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物である請求項1または2に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記窒素原子を含有する基が、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基である請求項に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項5】
前記第1工程が、
不活性溶媒中で、イソプレンを含む単量体(a)を、重合開始剤により重合し、活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)とを、混合して重合反応を継続させ、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を備える、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程とを備え、かつ、
前記単量体(a)または前記単量体(b)の少なくとも一方として、前記一般式(2)で表される化合物を含有するものを用いる請求項1~のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる前に、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部に、窒素原子を含有する変性剤を反応させる工程をさらに備える請求項1~のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項7】
前記窒素原子を含有する変性剤が、窒素原子を含有し、ケイ素原子を含まない変性剤である請求項に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項8】
前記窒素原子を含有し、ケイ素原子を含まない変性剤が、N-置換環状アミド類である請求項に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の製造方法により得られる共役ジエン系ゴム。
【請求項10】
請求項に記載の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカとを含有するゴム組成物。
【請求項11】
架橋剤をさらに含有する請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項13】
請求項12に記載のゴム架橋物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系ゴムの製造方法に関し、より詳しくは、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができる共役ジエン系ゴムを製造するための方法に関する。また、本発明は、この製造方法により得られる共役ジエン系ゴム、該共役ジエン系ゴムを含有するゴム組成物およびそのゴム架橋物にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のタイヤには、環境問題および資源問題から低燃費性が強く求められる一方で、安全性の面から優れたウエットグリップ性が求められている。ゴムに対し、充填剤としてシリカを配合したゴム組成物の架橋物は、カーボンブラックを配合したゴム組成物の架橋物に比べて、低発熱性に優れるため、タイヤを構成した場合の転がり抵抗が小さくなる。そのため、シリカを配合したゴム組成物からなるゴム架橋物を用いてタイヤを構成することにより、低燃費性に優れたタイヤを得ることができる。
【0003】
このようなゴム組成物を構成するゴムにおいて、ゴムとシリカとの親和性を高めるために、種々の試みが行われている。たとえば、特許文献1には、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサンを反応させる第2工程と、前記第2工程で得られるシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、8位が3級アミン構造含有基で置換された1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン構造を有する化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/0208739号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、近年の自動車用タイヤに対する要求性能の高まりを鑑みると、今後新しく開発されるタイヤには、特許文献1に記載されたゴムなど従来のゴムを用いた場合と比べ、低発熱性、ウエットグリップ性および操縦安定性により一層優れたゴム架橋物を与えることができるものが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができる、共役ジエン系ゴムを製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することで得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、変性剤として、シロキサンを反応させ、次いで、シロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、変性剤として、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムによれば、これを用いて得られるゴム架橋物が、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させる第2工程と、
前記第2工程で得られるシロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の製造方法において、前記シロキサンとして、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを用いることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。)
【0010】
本発明の製造方法において、前記シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(2)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X、XおよびXは、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。)
本発明の製造方法において、前記ヒドロカルビルオキシシラン化合物が、窒素原子を含有する基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記窒素原子を含有する基が、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基であることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法において、前記第1工程が、
不活性溶媒中で、イソプレンを含む単量体(a)を、重合開始剤により重合し、活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)とを、混合して重合反応を継続させ、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を備える、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程とを備え、かつ、
前記単量体(a)または前記単量体(b)の少なくとも一方として、前記シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含有するものを用いるものであることが好ましい。
【0012】
本発明の製造方法において、前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる前に、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部に、窒素原子を含有する変性剤を反応させる工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記窒素原子を含有する変性剤が、窒素原子を含有し、ケイ素原子を含まない変性剤であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記窒素原子を含有し、ケイ素原子を含まない変性剤が、N-置換環状アミド類であることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムが提供される。
さらに、本発明によれば、上記共役ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカとを含有してなるゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有してなるものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含んでなるタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を与えることができる共役ジエン系ゴム、該共役ジエン系ゴムを含有するゴム組成物、該ゴム組成物を架橋してなり、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含んでなるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<共役ジエン系ゴムの製造方法>
本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法は、
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させる第2工程と、
前記第2工程で得られるシロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる第3工程とを備える。
【0017】
<第1工程>
本発明の製造方法の第1工程は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程である。
【0018】
本発明の製造方法の第1工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るために、単量体として用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0019】
本発明の製造方法の第1工程における、共役ジエン化合物の使用量は、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中の、共役ジエン単量体単位の含有割合が45~99.99重量%となる量とすることが好ましく、50~94.98重量%となる量とすることがより好ましく、55~89.97重量%となる量とすることがさらに好ましい。共役ジエン単量体単位の含有割合が上記範囲となる量とすることにより、共役ジエン系ゴムの製造が容易になる。
【0020】
また、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、シリカに対して相互作用可能な官能基と、ビニル基を含有する化合物であればよく、特に限定されない。ここで、シリカに対して相互作用可能な官能基とは、該官能基とシリカ表面との間で共有結合を形成するか、または、共有結合よりも弱い分子間力(たとえば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等)を形成することが可能な官能基である。このようなシリカに対して相互作用可能な官能基としては、特に限定されないが、窒素原子含有官能基、ケイ素原子含有官能基、酸素原子含有官能基などが挙げられ、これらの中でも、シリカとの相互作用が高いという観点より、ケイ素原子含有官能基が好ましい。すなわち、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物を用いることが好ましく、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物を用いることで、共役ジエン系ゴムに、ケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の単位を導入することができる。
【0021】
シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、特に限定されないが、低発熱性、ウエットグリップ性および操縦安定性をより高めることができるという点より、下記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物が好ましい。
【化3】
上記一般式(2)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X、XおよびXは、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。
【0022】
本発明の製造方法の第1工程において、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物として、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物を用いることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中に、下記一般式(3)で表される単量体単位を導入することができる。
【化4】
上記一般式(3)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基を表し、X10、X11およびX12は、それぞれ独立して、水酸基、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。
【0023】
なお、上記一般式(3)で表される単位において、Xは、上記一般式(2)で表される化合物中のXに対応し、上記一般式(3)で表される単位において、X10、X11およびX12は、上記一般式(2)で表される化合物中のX、XおよびXにそれぞれ対応する。そのため、上記一般式(3)で表される単位において、X、X10、X11およびX12は、上記一般式(2)で表される化合物中のX、X、XおよびXと同じとすることができる。また、上記一般式(2)で表される化合物として、X、XおよびXのうち少なくとも一つが、置換アミノ基、またはヒドロカルビルオキシ基であるものを用いた場合には、置換アミノ基、またはヒドロカルビルオキシ基が、任意の工程およびタイミングにおいて加水分解されることで、X、XおよびXのうち少なくとも一つを、水酸基とすることができる。
【0024】
上記一般式(2)中、Xは、化学的な単結合またはヒドロカルビレン基であり、好ましくは、化学的な単結合である。ヒドロカルビレン基としては、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、または、アリーレン基とアルキレン基とが結合した基などが挙げられる。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などが挙げられる。アルケンジイル基としては、ビニレン基、エチレン-1,1-ジイル基などが挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、フェニレン基とメチレン基とが結合した基、フェニレン基とエチレン基とが結合した基などが挙げられる。Xがヒドロカルビレン基である場合には、Xは、アリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0025】
上記一般式(2)中、X、XおよびXは、それぞれ独立して、置換アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。X、XおよびXのうち、少なくとも1つが置換アミノ基であることが好ましく、X、XおよびXのうち、2つが置換アミノ基であることがより好ましい。
【0026】
、XおよびXを構成し得る置換アミノ基としては、下記一般式(4)で表される基が好適である。
【化5】
上記一般式(4)中、RおよびR10は、互いに結合していても、あるいは、結合していなくてもよく、RおよびR10が互いに結合していない場合には、RおよびR10は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、または、トリヒドロカルビルシリル基を表し、RとR10とが互いに結合している場合には、RおよびR10は、窒素原子および/または酸素原子を含有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
【0027】
およびR10を構成し得るヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基などの鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げられる。これらの中でも、鎖状アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
およびR10を構成し得るヒドロカルビル基が、置換基を有する場合には、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基などが挙げられ、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;フェノキシメチル基などのアリールオキシアルキル基;などが挙げられる。
【0028】
およびR10を構成し得るトリヒドロカルビルシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などが挙げられる。
【0029】
とR10とが互いに結合している場合において、RおよびR10を構成し得るヒドロカルビレン基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基などのアルキレン基;ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基などのアルケンジイル基;などが挙げられる。また、RおよびR10を構成し得るヒドロカルビレン基が、窒素原子および/または酸素原子を含有する場合には、窒素原子および/または酸素原子を含有するヒドロカルビレン基としては、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、-CH-CH-O-CH-CH-で表される基などが挙げられる。
およびR10は、アルキル基であるか、あるいは、RとR10とは互いに結合してアルキレン基となっていることが好ましく、RおよびR10は、アルキル基であることがより好ましく、RおよびR10は、メチル基またはエチル基であることがさらに好ましい。
【0030】
上記一般式(4)中、RおよびR10がヒドロカルビル基である場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基などのジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基;などが挙げられる。これらの中でも、ジアルキルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基がより好ましい。
【0031】
上記一般式(4)中、RおよびR10が、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基である場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、ジ(メトキシメチル)アミノ基、ジ(エトキシメチル)アミノ基などのジ(アルコキシアルキル)アミノ基などが挙げられる。
【0032】
上記一般式(4)中、RおよびR10が、トリヒドロカルビルシリル基である場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ基、N-トリメチルシリル-N-メチルアミノ基などのトリアルキルシリル基含有アミノ基などが挙げられる。
【0033】
上記一般式(4)中、RとR10とが互いに結合して、ヒドロカルビレン基となっている場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、1-トリメチレンイミノ基、1-ピロリジノ基、1-ピペリジノ基、1-ヘキサメチレンイミノ基、1-ヘプタメチレンイミノ基、1-オクタメチレンイミノ基、1-デカメチレンイミノ基、1-ドデカメチレンイミノ基などの1-アルキレンイミノ基などが挙げられる。
【0034】
上記一般式(4)中、RとR10とが互いに結合して、窒素原子および/または酸素原子を含有するヒドロカルビレン基となっている場合における、上記一般式(4)で表される基の具体例としては、1-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1-イミダゾリル基、モルホリノ基などが挙げられる。
【0035】
上記一般式(4)で表される基としては、ジアルキルアミノ基、1-アルキレンイミノ基が好ましく、ジアルキルアミノ基がより好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基がさらに好ましい。
【0036】
上記一般式(2)中、X、XおよびXを構成し得るヒドロカルビルオキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;などが挙げられる。
【0037】
上記一般式(2)中、X、XおよびXを構成し得るヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;フェニル基、4-メチル-1-フェニル基、ベンジル基などのアリール基;などが挙げられる。
、XおよびXを構成し得るヒドロカルビル基が、置換基を有する場合には、置換基としてヒドロカルビルオキシ基を有するヒドロカルビル基などが挙げられ、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基などが挙げられる。
【0038】
上記一般式(2)中、Xが化学的な単結合であり、X、XおよびXのうち、1つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(エチルメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジイソプロピルアミノ)ジエチルビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルシラン;[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]ジメチルビニルシラン、[ビス(トリメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシラン、[ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]ジエチルビニルシランなどの[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]ジアルキルビニルシラン;(ジメチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(メトキシエチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシメチル)ビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジ(エトキシエチル)ビニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジ(アルコキシアルキル)ビニルシラン;ピロリジノジメチルビニルシラン、ピペリジノジメチルビニルシラン、ヘキサメチレンイミノジメチルビニルシラン、4,5-ジヒドロイミダゾリルジメチルビニルシラン、モルホリノジメチルビニルシランなどの環状アミノジアルキルビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0039】
上記一般式(2)中、Xがヒドロカルビレン基であり、X、XおよびXのうち、1つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、(ジメチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジメチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-プロピルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジエチル-4-ビニルフェニルシラン、(ジ-n-ブチルアミノ)ジエチル-3-ビニルフェニルシランなどの(ジアルキルアミノ)ジアルキルビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0040】
上記一般式(2)中、Xが化学的な単結合であり、X、XおよびXのうち、2つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルシラン;ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ]メチルビニルシラン、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチルビニルシラン、ビス[ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノ]エチルビニルシランなどのビス[ビス(トリアルキルシリル)アミノ]アルキルビニルシラン;ビス(ジメチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシメチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メトキシエチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エトキシエチルビニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルコキシアルキルシラン;ビス(ピロリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ピペリジノ)メチルビニルシラン、ビス(ヘキサメチレンイミノ)メチルビニルシラン、ビス(4,5-ジヒドロイミダゾリル)メチルビニルシラン、ビス(モルホリノ)メチルビニルシランなどのビス(環状アミノ)アルキルビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0041】
上記一般式(2)中、Xがヒドロカルビレン基であり、X、XおよびXのうち、2つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、ビス(ジメチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-プロピルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチル-4-ビニルフェニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)エチル-3-ビニルフェニルシランなどのビス(ジアルキルアミノ)アルキルビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0042】
上記一般式(2)中、Xが化学的な単結合であり、X、XおよびXのうち、3つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリス(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)ビニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルシランなどが挙げられる。
【0043】
上記一般式(2)中、Xがヒドロカルビレン基であり、X、XおよびXのうち、3つが置換アミノ基である場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリス(ジメチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-プロピルアミノ)-3-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)-4-ビニルフェニルシラン、トリス(ジ-n-ブチルアミノ)-3-ビニルフェニルシランなどのトリス(ジアルキルアミノ)ビニルフェニルシランなどが挙げられる。
【0044】
上記一般式(2)中、Xが化学的な単結合であり、X、XおよびXのうち、いずれも置換アミノ基でない場合における、上記一般式(2)で表されるケイ素原子含有官能基を含有するビニル化合物の具体例としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリプロポキシビニルシランなどのトリアルコキシビニルシラン;メチルジメトキシビニルシラン、メチルジエトキシビニルシランなどのジアルコキシアルキルビニルシラン;ジ(tert-ペントキシ)フェニルビニルシラン、ジ(tert-ブトキシ)フェニルビニルシランなどのジアルコキシアリールビニルシラン;ジメチルメトキシビニルシランなどのモノアルコキシジアルキルビニルシラン;tert-ブトキシジフェニルビニルシラン、tert-ペントキシジフェニルビニルシランなどのモノアルコキシジアリールビニルシラン;tert-ブトキシメチルフェニルビニルシラン、tert-ブトキシエチルフェニルビニルシランなどのモノアルコキシアルキルアリールビニルシラン;トリス(β-メトキシエトキシ)ビニルシランなどの置換アルコキシビニルシラン化合物;などが挙げられる。
【0045】
上記一般式(2)で表される化合物のなかでも、Xが化学的な単結合であるものが好ましく、Xが化学的な単結合であり、かつ、X、XおよびXのうち、2つが置換アミノ基である化合物がより好ましく、Xが化学的な単結合であり、かつ、X、XおよびXのうち、2つがジアルキルアミノ基である化合物が特に好ましい。
【0046】
上記一般式(2)で表される化合物の中でも、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルビニルシランが好ましく、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランが特に好ましい。
【0047】
また、上記一般式(2)で表される化合物以外の、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物としては、4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノスチレン、3-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノスチレン;4-ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、3-ビス(トリメチルシリル)アミノメチルスチレン、4-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、3-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレンなどのビス(トリアルキルシリル)アミノアルキルスチレン;3-ジメチルアミノスチレン、3-ジエチルアミノスチレン、3-ジプロピルアミノスチレン、3-ジブチルアミノスチレン、3-ジアリルアミノスチレン、4-ジメチルアミノスチレン、4-ジエチルアミノスチレン、4-ジプロピルアミノスチレン、4-ジブチルアミノスチレン、4-ジアリルアミノスチレンなどのジアルキルアミノスチレン;4-N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、4-N,N-ジエチルアミノメチルスチレン、4-N,N-ジ-n-プロピルアミノメチルスチレン、4-N,N-ジ-n-ブチルアミノメチルスチレン、4-N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジエチルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジ-n-プロピルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジ-n-ブチルアミノエチルスチレンなどのジアルキルアミノアルキルスチレン;などが挙げられる。
【0048】
本発明の製造方法の第1工程における、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の使用量は、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中の、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位の含有割合が0.01~20重量%となる量とすることが好ましく、0.02~2重量%となる量とすることがより好ましく、0.03~1重量%となる量とすることがさらに好ましい。シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位の含有割合が上記範囲となる量とすることにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性の向上効果をより顕著なものとすることできる。
【0049】
また、本発明の製造方法の第1工程においては、得られる共役ジエン系ゴムをゴム架橋物とした場合における、低発熱性およびウエットグリップ性をさらに高めることができるという観点より、重合に用いる単量体として、共役ジエン化合物およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とともに、芳香族ビニル化合物をも用いることが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0050】
本発明の製造方法の第1工程における、芳香族ビニル化合物の使用量は、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中の、芳香族ビニル単量体単位の含有割合が54.99重量%以下となる量とすることが好ましく、5~49.98重量%となる量とすることがより好ましく、10~44.97重量%となる量とすることがさらに好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有割合が上記範囲となる量とすることにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性をより高めることができる。
【0051】
さらに、本発明の製造方法の第1工程においては、共役ジエン化合物、およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とともに、芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物、およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物と共重合可能な化合物を用いてもよい。このような共重合可能な化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他の(メタ)アクリル酸誘導体;などが挙げられる。
【0052】
本発明の製造方法の第1工程における、共重合可能な化合物の使用量は、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中の、共重合可能な化合物の単量体単位の含有割合が10重量%以下となる量とすることが好ましく、5重量%以下となる量とすることがより好ましい。
【0053】
重合に用いる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;などが挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体濃度が、たとえば1~50重量%となる量であり、好ましくは5~40重量%となる量である。
【0054】
重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン化合物、およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含む単量体を重合させて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジ-t-ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ-t-ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、n-ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。
なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの2級アミン化合物と反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。有機アルカリ金属アミド化合物を重合開始剤として用いることにより、重合開始末端に、2級アミン化合物による変性構造を導入することができ、これにより、得られるゴム架橋物を、より低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとすることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系重合体鎖の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常1~50ミリモル、好ましくは1.5~20ミリモル、より好ましくは2~15ミリモルの範囲である。
【0056】
重合温度は、通常-80~+150℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とともに、芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。また、共役ジエン系重合体鎖における各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0057】
また、共役ジエン化合物およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含む単量体を重合するにあたり、得られる共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサンなど環状のエーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの脂肪族ジエ-テル;ジフェニルエーテル、アニソールなどの芳香族エーテル;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、エーテル化合物としてはテトラヒドロフラン、エチレングリコールジブチルエーテル、及び、エチレングリコールジエチルエーテルが特に好ましく、第三級アミンとしてはテトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001~100モル、より好ましくは0.01~10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0058】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~80重量%、特に好ましくは5~75重量%である。共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0059】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、100,000~1,000,000が好ましく、150,000~900,000がより好ましく、150,000~800,000が特に好ましい。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0060】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.0~2.5である。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造が容易となる。
【0061】
また、本発明の製造方法においては、得られるゴム架橋物を、より低発熱性に優れたものとするためには、第1工程を、次のような工程とすることが好ましい。
すなわち、不活性溶媒中で、イソプレンを含む単量体(a)を、重合開始剤により重合し、活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)とを、混合して重合反応を継続させ、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を備える、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程と、を備えるものとすることが好ましい。
【0062】
このような工程を採用することにより、第1工程により得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を、イソプレン単量体単位を含む重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とが一続きにして形成されたものを含むものとすることができる。
【0063】
また、この際には、単量体(a)または単量体(b)の少なくとも一方として、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含有するものを用いることで、たとえば、単量体(a)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含有させることで、重合体ブロック(A)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有させることができ、同様に、単量体(b)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含有させることで、重合体ブロック(B)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有させることができる。
【0064】
重合体ブロック(A)を形成するための単量体(a)としては、イソプレンを含有するものであればよく、形成する重合体ブロック(A)の単量体組成に応じた単量体を用いればよい。たとえば、重合体ブロック(A)をイソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなるものとする場合には、単量体(a)としては、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含有するものとすればよい。また、重合体ブロック(A)を、イソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を有するものとする場合には、単量体(a)を、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物に加えて、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を含有するものとすればよい。
以下、このような態様について説明する。
【0065】
[重合体ブロック(A)]
本発明の一態様に係る共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(A)は、イソプレン単量体単位を含有するものであればよく、特に限定されず、イソプレン単量体単位のみからなるものであってよいし、あるいは、イソプレン単量体単位と、イソプレン単量体単位以外の単量体単位とからなるものであってもよい。この場合における、イソプレン単量体単位以外の単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位が好適に挙げられ、重合体ブロック(A)は、イソプレン単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位をも含有するものであることが好ましい。
【0066】
重合体ブロック(A)中における、イソプレン単量体単位の含有割合は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。また、イソプレン単量体単位の含有割合の上限は、特に限定されないが、好ましくは99重量%以下である。重合体ブロック(A)中のイソプレン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、共役ジエン系ゴムにシリカなどの配合剤を配合した場合に、共役ジエン系ゴムとシリカなどの配合剤との親和性をより高めることができ、これにより、得られるゴム架橋物を、低発熱性およびウエットグリップ性により優れたものとすることができる。
【0067】
重合体ブロック(A)に含まれる芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル化合物としては、上述した芳香族ビニル化合物と同じものを用いることができ、これらの中でもスチレンが好ましい。なお、これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体ブロック(A)中における、芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。また、芳香族ビニル単量体単位の含有割合の下限は、特に限定されないが、好ましくは1重量%以上である。
【0068】
また、本発明の一態様に係る製造方法においては、共役ジエン系重合体鎖を構成する、重合体ブロック(A)および後述する重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有させればよいが、たとえば、このようなシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位が、重合体ブロック(A)のみに含有される態様、重合体ブロック(B)のみに含有される態様、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の両方に含有される態様のいずれであってもよい。
【0069】
シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位の含有割合は、重合体ブロック(A)に含有させる場合、重合体ブロック(B)に含有させる場合、また、これら両方に含有させる場合のいずれにおいても、共役ジエン系ゴムを構成する全単量体単位に対する含有割合が、好ましくは0.01~20重量%の範囲、より好ましくは0.02~2重量%の範囲、特に0.03~1重量%の範囲となるように調整することが好ましい。シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位の含有割合を上記範囲とすることにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性の向上効果をより顕著なものとすることできる。
【0070】
重合体ブロック(A)は、所望により、イソプレン単量体単位、ならびに必要に応じて含有される芳香族ビニル単量体単位およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位に加えて、その他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位を構成するために用いられるその他の化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、および1,3-ヘキサジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;などが挙げられる。などが挙げられる。これらのその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合体ブロック(A)中における、その他の単量体単位の含有割合は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
本発明の一態様に係る製造方法において、共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(A)は、不活性溶媒中、イソプレンを含む単量体(a)を、重合開始剤により重合することにより形成される。形成された重合体ブロック(A)は、活性末端を有するものとなる。
【0072】
重合体ブロック(A)を形成するために、単量体の重合に用いられる不活性溶媒としては、上述した不活性溶媒と同じものを用いることができる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、好ましくは1~80重量%となる量であり、より好ましくは10~50重量%となる量である。
【0073】
重合体ブロック(A)を形成するために用いられる重合開始剤としては、イソプレンを含む単量体(a)を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、上述した重合開始剤と同じものを用いることができる。
【0074】
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、イソプレンを含む単量体(a)100g当り、好ましくは4~250ミリモル、より好ましくは6~200ミリモル、特に好ましくは10~70ミリモルの範囲である。
【0075】
イソプレンを含む単量体(a)を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。また、重合体ブロック(A)を共重合体鎖とする場合の各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。
【0076】
また、本発明の一態様に係る製造方法においては、重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、上述した極性化合物と同じものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、0.01~30モルが好ましく、0.05~10モルがより好ましい。極性化合物の使用量が上記範囲内にあると、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、しかも、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。また、上記範囲内で極性化合物の使用量を増加させることで、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を増加させることができる。
【0077】
重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量は、5~90重量%が好ましく、5~80重量%がより好ましい。イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。なお、本明細書中において、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量とは、イソプレン単量体単位中の、1,2-構造を有するイソプレン単量体単位および3,4-構造を有するイソプレン単量体単位の合計量の割合を指すものとする。
【0078】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000の範囲であり、好ましくは1,500~20,000の範囲であり、より好ましくは2,000~10,000の範囲である。重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることにより、低発熱性の向上効果をより高めることができる。
【0079】
また、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.0~1.5であることが好ましく、1.0~1.3であることがより好ましい。重合体ブロック(A)の分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。なお、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によりポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0080】
[重合体ブロック(B)]
本発明の一態様に係る共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位を含有するものであればよく、特に限定されず、1,3-ブタジエン単量体単位のみからなるものであってよいし、あるいは、1,3-ブタジエン単量体単位と、1,3-ブタジエン単量体単位以外の単量体単位とからなるものであってもよい。この場合における、1,3-ブタジエン単量体単位以外の単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位が好適に挙げられ、重合体ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位に加えて、芳香族ビニル単量体単位をも含有するものであることが好ましい。
【0081】
重合体ブロック(B)中における、1,3-ブタジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは45重量%以上であり、より好ましくは50~94.98重量%、さらに好ましくは55~89.97重量%である。重合体ブロック(B)中の1,3-ブタジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。
【0082】
重合体ブロック(B)に含まれる芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル化合物としては、上述した芳香族ビニル化合物と同じものを用いることができ、これらの中でも、スチレンが好ましい。芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは54.99重量%以下、より好ましくは5~49.98重量%、さらに好ましくは10~44.97重量%である。
【0083】
また、本発明の一態様に係る製造方法においては、共役ジエン系重合体鎖を構成する、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の少なくとも一方に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有させればよく、そのため、重合体ブロック(B)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位が含まれるような態様であってもよく、本発明の一態様に係る製造方法においては、得られるゴム架橋物を、より低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとすることができるという点より、少なくとも重合体ブロック(B)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有させることが好ましい。重合体ブロック(B)に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位を含有させる場合における、その含有割合は、共役ジエン系ゴムを構成する全単量体単位に対する含有割合が、上記範囲となるような含有割合とすればよいが、重合体ブロック(B)中における、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位の含有割合を、0.01~20重量%の範囲とすることが好ましく、0.02~2重量%の範囲とすることがより好ましく、0.03~1重量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0084】
さらに、重合体ブロック(B)は、所望により、1,3-ブタジエン単量体単位、ならびに必要に応じて含有される芳香族ビニル単量体単位およびシリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物の単位に加えて、その他の単量体単位を含有していてもよい。このようなその他の単量体単位を構成するその他の化合物としては、上述した重合体ブロック(A)において例示された化合物(ただし、1,3-ブタジエンを除く)と同様のものに加え、イソプレンを用いることができる。重合体ブロック(B)中における、その他の単量体単位の含有割合は、40重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましく、25重量%以下であることがさらに好ましい。
【0085】
本発明の一態様において、共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(B)は、上述した活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)と、を混合して重合反応を継続させることにより、重合体ブロック(A)と一続きに形成される。形成された重合体ブロック(B)は、活性末端を有するものとなる。一方、重合体ブロック(A)からは、活性末端が消失する。
【0086】
重合体ブロック(B)を形成するために、重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)との重合に用いられる不活性溶媒としては、特に限定されず、上述した不活性溶媒と同じものを用いることができる。
【0087】
重合体ブロック(B)を形成する際における、活性末端を有する重合体ブロック(A)の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)100g当り、好ましくは0.1~5ミリモル、より好ましくは0.15~2ミリモル、さらに好ましくは0.2~1.5ミリモルの範囲である。
【0088】
重合体ブロック(A)と1,3-ブタジエンを含む単量体(b)との混合方法は、特に限定されず、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の溶液中に活性末端を有する重合体ブロック(A)を加えてもよいし、活性末端を有する重合体ブロック(A)の溶液中に1,3-ブタジエンを含む単量体(b)を加えてもよい。重合の制御の観点より、1,3-ブタジエンを含む単量体(b)の溶液中に活性末端を有する重合体ブロック(A)を加える方法が好ましい。
【0089】
1,3-ブタジエンを含む単量体(b)を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。重合体ブロック(B)を共重合体鎖とする場合には、結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0090】
重合体ブロック(B)を共重合体鎖とする場合の各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0091】
また、本発明の一態様においては、重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節時と同様に、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。ただし、重合体ブロック(A)の調製時に、不活性溶媒に、重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するのに十分な量の極性化合物を添加している場合は、新たに極性化合物を添加しなくてもよい。ビニル結合含有量を調節するために用いられる極性化合物としては、上述した極性化合物と同じものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.1~30mo1の範囲で調節すればよい。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0092】
重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~80重量%、特に好ましくは5~75重量%である。重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0093】
このようにして、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。本発明の一態様においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、生産性の観点より、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)で構成され、かつ、重合体ブロック(B)の末端が活性末端であることが好ましいが、重合体ブロック(A)を複数有するものであってもよいし、その他の重合体ブロックを有するものであってもよい。たとえば、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)などの、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が挙げられる。この場合には、重合体ブロック(B)に続いて形成された重合体ブロック(A)の末端に、活性末端が形成されることとなる。共役ジエン系重合体鎖の活性末端側に重合体ブロック(A)を形成させる場合、イソプレンの使用量は、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、10~100モルであることが好ましく、15~70モルであることがより好ましく、20~35モルであることが特に好ましい。
【0094】
本発明の一態様において得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との重量比(重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)が複数存在する場合は、それぞれの合計重量を基準とした重量比)は、(重合体ブロック(A)の重量)/(重合体ブロック(B)の重量)で、0.001~0.2であることが好ましく、0.005~0.1であることがより好ましく、0.01~0.05であることが特に好ましい。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との重量比を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0095】
<第2工程>
本発明の製造方法の第2工程は、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる工程である。
【0096】
本発明の製造方法の第2工程で用いるシロキサン化合物としては、シロキサン構造(-Si-O-Si)を有するものであればよく、特に限定されないが、シロキサン構造に加えて有機基を有するオルガノシロキサンが好ましく、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
なお、本発明の製造方法の第2工程において、シロキサン化合物は、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を変性させるための変性剤として作用する。
【化6】
上記一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。
【0097】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、上記一般式(1)中のR~R、XおよびXを構成し得る炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0098】
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0099】
さらに、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4~12の基としては、たとえば、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
-Z-Z-E (5)
上記一般式(5)中、Zは、炭素数1~10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2~10の炭化水素基である。
【0100】
上記一般式(5)で表される基としては、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数1~3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0101】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、XおよびXとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基、または、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、Xとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基が好ましい。さらに、XおよびXが炭素数1~6のアルキル基であり、Xがエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であることがより好ましい。
【0102】
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、すなわち2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましい。
【化7】
上記一般式(6)中、tは2~20の整数であり、X13は炭素数2~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R11は水素原子またはメチル基であり、X14は炭素数1~10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、tが2~8の整数であり、X13が炭素数3のアルキレン基であり、R11が水素原子であり、かつ、X14がメトキシ基であるものが好ましい。
【0103】
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは1~200の整数、好ましくは20~150の整数、より好ましくは30~120の整数である。mが1~200であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
【0104】
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~120の整数である。kは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、1~400であることが好ましく、20~300であることがより好ましく、30~250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖との反応が進行し易く、更に、m、nおよびkの合計数が400以下であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
【0105】
本発明の製造方法の第2工程における、シロキサンの使用量は、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端1モルに対して、シロキサン化合物中の-Si-O-の繰り返し単位数に換算して、好ましくは0.1~10モル、より好ましくは0.2~5モル、さらに好ましくは0.5~2.5モル、より好ましくは1~2モルである。シロキサン化合物の使用量が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができ、とりわけ、その使用量を、-Si-O-の繰り返し単位数に換算して1モル以上とすることにより、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端のうち、実質的に全ての活性末端を、シロキサン化合物と反応させることができ、これにより、共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物に由来する構造を介した、ヒドロカルビルオキシシラン化合物による変性構造を適切に導入することができ、これにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性をより高めることができるため、特に好ましい。
【0106】
シロキサン化合物と活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とを反応させる方法は、特に限定されないが、これらを、それぞれが溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した第1工程において用いる不活性溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るための重合に用いた重合溶液に、シロキサン化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。また、この際においては、シロキサン化合物は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1分~1時間である。
【0107】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、シロキサン化合物を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にシロキサン化合物を添加することが望ましい。シロキサン化合物の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0108】
本発明の製造方法の第2工程によれば、上述した第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤としてのシロキサン化合物を反応させることで、少なくとも一部の共役ジエン系重合体鎖は、シロキサン構造中のケイ素原子と共役ジエン系重合体鎖の活性末端との間に新たな結合を形成し、共役ジエン系重合体鎖の末端に、シロキサン構造が導入されるとともに、シロキサン構造中の酸素原子と、共役ジエン系重合体鎖の活性末端を形成していた金属原子との間で、-O(Mは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または、ランタン系列金属原子)で表される活性末端が形成されることとなる。なお、本発明の製造方法の第2工程により得られる、反応後の共役ジエン系重合体鎖は、重合体鎖末端に、シロキサン化合物による変性構造が導入されたものを含むものであるが、これ以外にも、シロキサン化合物による変性がされていない未変性の共役ジエン系重合体鎖を含むものであってもよい。
【0109】
<第3工程>
本発明の製造方法の第3工程は、上述した第2工程で得られるシロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる工程である。
【0110】
なお、本発明の製造方法の第3工程において用いる、シロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖とは、上述した第2工程を経たものであればよく、そのため、このようなシロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖には、シロキサンによる変性構造が導入された活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含んでいればよく、シロキサン化合物による変性がされていない未変性の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖をも含み得るものである。さらには、シロキサン化合物による変性構造が導入された活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端が加水分解され、活性末端が水酸基に変換された、シロキサン化合物による変性構造が導入された共役ジエン系重合体鎖をも含み得るものである。以下、第3工程の説明において、シロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖を、適宜、「共役ジエン系重合体鎖」と略記する。
【0111】
特に、本発明の製造方法によれば、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することにより得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させ、さらに、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることで、これにより得られる共役ジエン系ゴムを、優れた低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性を備えるゴム架橋物を与えることのできるものとすることができる。
【0112】
本発明の製造方法の第3工程において用いる、変性剤としてのヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、ヒドロカルビルオキシ基を少なくとも1つ有するケイ素含有化合物であって、第2工程において用いたシロキサン化合物に該当しないものであればよいが、ヒドロカルビルオキシ基に加えて、窒素原子を含有する基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、このような窒素原子を含有する基として、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基を有するものがより好ましい。本発明の製造方法において、ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、ヒドロカルビルオキシ基が、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖や、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とシロキサン化合物との反応により生成した反応残基と反応することで、変性剤として作用する。
【0113】
このようなヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(7)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化8】
上記一般式(7)中、R12は、ヒドロカルビル基であり、Aは、ヒドロカルビルオキシ基であり、Aは、窒素原子を含有する基であり、pは0~2の整数、qは1~3の整数、rは1~3の整数、p+q+r=4である。
【0114】
上記一般式(7)中のR12は、ヒドロカルビル基であり、たとえば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられるが、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、これらのなかでも、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0115】
上記一般式(7)中のAは、ヒドロカルビルオキシ基であり、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;などが挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点より、アルコキシ基およびアリーロキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基およびエトキシ基が特に好ましい。
【0116】
上記一般式(7)中のAは、窒素原子を含有する基であり、窒素原子を含有する基であれば特に限定されないが、窒素原子を有する有機基であることが好ましく、たとえば、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基、2-ジメチルアミノエチル基、3-ジメチルアミノプロピル基、3-ジエチルアミノプロピル基、3-ジプロピルアミノプロピル基、3-ジブチルアミノプロピル基、3-フェニルメチルアミノプロピル基、3-(4-メチルピペラジニル)プロピル基、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル基、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル基、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性をより向上させることができるという点より、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基などの、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基であることが好ましい。なお、「活性水素原子」とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、ポリメチレン鎖の炭素-水素結合よりも結合エネルギーが低いものであることが好ましい。
【0117】
上記一般式(7)で表される化合物において、pは0~2の整数、qは1~3の整数、rは1~3の整数、p+q+r=4である。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖や、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とシロキサン化合物との反応により生成した反応残基との反応性の観点より、好ましくは、pは0~1の整数、qは2~3の整数であり、rは1~2の整数であり、より好ましくは、p=0、q=3、r=1である。なお、pが2である場合において、一般式(7)で表される化合物1分子中に2個含まれるR12で表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。同様に、qが2または3である場合において、一般式(7)で表される化合物1分子中に複数含まれるAで表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよく、rが2または3である場合において、一般式(7)で表される化合物1分子中に複数含まれるAで表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0118】
上記一般式(7)で表される化合物の具体例としては、特に限定されないが、たとえば、一般式(7)中のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基である化合物として、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのAとして、3-アミノプロピル基を有する化合物;4-アミノブチルジメチルメトキシシラン、4-アミノブチルメチルジメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメチルエトキシシラン、4-アミノブチルメチルジエトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシランなどのAとして、4-アミノブチル基を有する化合物;3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメチルメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメチルエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどのAとして、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基を有する化合物;などが挙げられる。
【0119】
また、一般式(7)中のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基以外の基である化合物として、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジメチルアミノプロピル基を有する化合物;3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジエチルアミノプロピル基を有する化合物;3-ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジプロピルアミノプロピル基を有する化合物;3-ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジブチルアミノプロピル基を有する化合物;3-フェニルメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-フェニルメチルアミノプロピル基を有する化合物;3-(4-メチルピペラジニル)プロピルトリメトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルジメチルメトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルトリエトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-(4-メチルピペラジニル)プロピル基を有する化合物;
【0120】
N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのAとして、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル基を有する化合物;N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのAとして、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル基を有する化合物;N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのAとして、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基を有する化合物;などが挙げられる。
【0121】
また、ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、下記一般式(8)で表される化合物も好適に用いることができる。
【化9】
上記一般式(8)中、Aはヒドロカルビルオキシ基であり、R13は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R14およびR15は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R14およびR15は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成していてもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。sは0~2の整数である。
【0122】
上記一般式(8)中のAは、ヒドロカルビルオキシ基であり、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;などが挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点より、アルコキシ基およびアリーロキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基およびエトキシ基が特に好ましい。
【0123】
上記一般式(8)において、s(すなわち、一般式(8)においてAで表される基の数)は、0~2の整数であり、sが2であることが好ましい。一般式(8)におけるsが2である場合において、一般式(8)で表される化合物1分子中に2個含まれるAで表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0124】
上記一般式(8)において、R13は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。R13となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基およびアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基およびエチル基が特に好ましい。また、R13で表される炭化水素基は、炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、その置換基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロカルビルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基などのカルボニル基含有基や、エポキシ基、オキシ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン基などを挙げることができる。なお、一般式(8)におけるsが0である場合において、一般式(8)で表される化合物1分子中に2個含まれる、R13で表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0125】
上記一般式(8)において、R14およびR15は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R14およびR15は互いに結合して環構造を形成して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。また、これらが環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。R14およびR15が互いに結合しない場合に、R14およびR15となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基およびアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基およびエチル基が特に好ましい。また、R14およびR15が互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合に、R14およびR15が結合してなる2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、n-ブチレン基(一般式(8)において、これらが結合する窒素原子とともに1-ピロリジン基を形成する場合)、n-ペンチレン基(1-ピペリジン基を形成する場合)などのアルキレン基や、ブタジエニレン基(1-ピロール基を形成する場合)などが挙げられる。
なお、R14およびR15が互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合、環構造としては、4~8員環構造が好ましい。
【0126】
また、R14およびR15で表される炭化水素基は、環構造形成の有無に関わらず、炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、その置換基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロカルビルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基などのカルボニル基含有基や、エポキシ基、オキシ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン基などを挙げることができる。さらに、R14およびR15は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合には、その環構造を形成する原子として、炭素原子およびこれらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子が含まれていてもよく、そのようなヘテロ原子の例として、窒素原子や酸素原子を挙げることができる。
【0127】
上記一般式(8)で表される化合物として、特に好ましいものとして、R14およびR15で表される炭化水素基が互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに、ピペラジン環構造を形成しているものが挙げられる。より具体的には、下記一般式(9)で表される化合物が特に好ましい。一般式(8)で表される化合物として、このような構造を有するものを用いることにより、得られるゴム架橋物を特に低発熱性に優れたものとすることができる。
【化10】
上記一般式(9)中、A、R13、およびsは、いずれも、上記一般式(8)におけるものと同じものを表し、R16は炭化水素基を表す。
【0128】
上記一般式(9)におけるR16は、炭化水素基を表す。R16となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基およびアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0129】
上記一般式(8)で表される化合物の具体例としては、2,2-ジメトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2,2-ジエトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2,2-ジメトキシ-8-(N,N-ジエチルアミノ)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2-メトキシ-2-メチル-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタンなどが挙げられる。これら一般式(8)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物の中でも、得られるゴム架橋物を低発熱性およびウエットグリップ性により優れたものとすることができるという点より、上記一般式(7)で表される化合物が好ましく、上記一般式(7)中のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基である化合物がより好ましく、上記一般式(7)中のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基と、活性水素原子を有する2級アミノ基との両方を含有する基である化合物がさらに好ましい。
【0131】
本発明の製造方法の第3工程における、ヒドロカルビルオキシシラン化合物の使用量は、特に限定されないが、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端1モルに対して、好ましくは0.1~5モルであり、より好ましくは0.2~2モル、さらに好ましくは0.4~1.5モルである。ヒドロカルビルオキシシラン化合物の使用量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、低発熱性とウエットグリップ性により優れたものとすることができる。
【0132】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物と、共役ジエン系重合体鎖とを反応させる方法は、特に限定されないが、これらを、それぞれが溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した第1工程および第2工程において用いる不活性溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第2工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させるために用いた反応溶液に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。また、この際においては、ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1分~1時間である。
【0133】
共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を添加する時期は、上述した第2工程においてシロキサン化合物を添加した後であれば、特に限定されないが、上述した第2工程と同様に、重合反応が完結しておらず、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にヒドロカルビルオキシシラン化合物を添加することが望ましい。ヒドロカルビルオキシシラン化合物の添加をこのように行なうことにより、共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0134】
なお、本発明の製造方法の第2工程および第3工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物およびヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる前の状態のとき、シロキサン化合物のみを反応させた後であって、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させる前の状態のとき、あるいは、シロキサン化合物およびヒドロカルビルオキシシラン化合物のいずれも反応させた後において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が残存している状態のときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤や変性剤などを重合系内に添加して、カップリングや変性を行ってもよい。
【0135】
本発明の製造方法においては、第2工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる前の状態のときにおいて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、窒素原子を含有する変性剤を添加して、カップリングあるいは変性を行うことが好ましく、これにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性の向上効果をより高めることができる。なお、窒素原子を含有する変性剤としては、特に限定されないが、その添加効果が大きいという観点より、窒素原子を含有し、ケイ素原子を含まない変性剤が好ましい。
【0136】
窒素原子を含有する変性剤としては、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、およびN-メチル-ε-カプロラクタムなどのN-置換環状アミド類;1,3-ジメチルエチレン尿素、および1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノンなどのN-置換環状尿素類;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのN-置換アミノケトン類;ジフェニルメタンジイソシアネート、および2,4-トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒドなどのN-置換アミノアルデヒド類;ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのN-置換カルボジイミド類;N-エチルエチリデンイミン、N-メチルベンジリデンイミンなどのシッフ塩基類;4-ビニルピリジンなどのピリジル基含有ビニル化合物;N,N’-ジメチル尿素、N,N’-ジエチル尿素、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、N,N-ジメチル-N’,N’-ジフェニル尿素などの尿素化合物;
【0137】
N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、アミノアセトアミド、N,N-ジメチル-N’,N’-ジメチルアミノアセトアミド、N,N-ジメチルアミノアセトアミド、N,N-エチルアミノアセトアミド、N,N-ジメチル-N’-エチルアミノアセトアミド、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、ピコリン酸アミド、N,N-ジメチルイソニコチンアミド、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’-テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N’,N’-テトラメチルオキサミド、2-フランカルボン酸アミド、N,N-ジメチル-2-フランカルボン酸アミド、キノリン-2-カルボン酸アミド、N-エチル-N-メチル-キノリンカルボン酸アミドなどのアミド化合物;コハク酸イミド、N-メチルコハクイミド、マレイミド、N-メチルマレイミド、フタルイミド、N-メチルフタルイミドなどのイミド化合物;1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,1-ジプロピル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-プロピル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-ブチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-(2-メトキシエチル)-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-(2-エトキシエチル)-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ-(2-エトキシエチル)-2-イミダゾリジノンなどのN-アルキル置換オキサゾリジノン化合物;メチル-2-ピリジルケトン、メチル-4-ピリジルケトン、プロピル-2-ピリジルケトン、ジ-4-ピリジルケトン、プロピル-3-ピリジルケトン、2-ベンゾイルピリジン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンなどのピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物;2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-フェニルピロリドン、2-ピペリドン、2-キノロン、N-メチル-キノロン、ε-カプロラクタムなどのラクタム化合物;
【0138】
N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミドなどのN,N-ジヒドロカルビルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどのN,N-ジヒドロカルビルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチルアクリルアミドなどのN,N-ジヒドロカルビルアミノブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリルアミドなどのN、N-ジヒドロカルビルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのN,N-ジヒドロカルビルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチルメタクリルアミドなどのN,N-ジヒドロカルビルアミノブチルメタクリルアミドなどのN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類;などが挙げられる。
【0139】
上記した窒素原子を含有する変性剤のなかでも、N-置換環状アミド類、芳香族イソシアネート類、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド類が好ましく、N-置換環状アミド類がより好ましく、N-フェニル-2-ピロリドンが特に好ましい。窒素原子を含有し、ケイ素原子を含まない変性剤は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0140】
窒素原子を含有する変性剤を添加して、カップリングあるいは変性を行う際における、窒素原子を含有する変性剤の使用量は、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端1モルに対して、好ましくは0.05~0.95モルであり、より好ましくは0.2~0.8モル、さらに好ましくは0.3~0.7モルである。窒素原子を含有する変性剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性をより適切に高めることができる。
【0141】
そして、第3工程において、共役ジエン系重合体鎖に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させた後は、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0142】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを反応溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより反応溶液から重合溶媒を分離して、共役ジエン系ゴムを回収する。なお、反応溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
【0143】
共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは5~100重量部、より好ましくは10~60重量部、さらに好ましくは15~50重量部である。
【0144】
このようにして本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、上述した第2工程において、変性剤として、シロキサン化合物を用いて反応を行い、次いで、上述した第3工程において、変性剤として、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を用いて反応を行うことにより、得られるものである。そのため、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、重合体鎖末端に、シロキサン化合物による変性構造およびヒドロカルビルオキシシラン化合物による変性構造が導入されたものを含むものであるが、このようなもの以外にも、重合体鎖末端に、シロキサン化合物による変性構造のみが導入されたものや、重合体鎖末端に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物による変性構造のみが導入されたもの、さらには、いずれの変性構造も導入されていないものを含有するものであってもよい。さらには、第2工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させる前の状態のときにおいて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、窒素原子を含有する変性剤を添加して、カップリングあるいは変性を行った場合には、重合体鎖末端に、窒素原子を含有する変性剤によるカップリング構造や変性構造が導入されたものを含有するものであってもよい。
【0145】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率は、特に限定されないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。カップリング率が上記範囲であると、得られるゴム架橋物の機械的強度および耐摩耗性を良好にバランスさせることができる。なお、カップリング率は、シロキサン化合物およびヒドロカルビルオキシシラン化合物、ならびに、必要に応じて用いられるカップリング剤やその他の変性剤と反応させる前の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量の1.8倍以上の分子量を有する重合体分子の、最終的に得られた共役ジエン系ゴムの全量に対する重量分率であり、このときの分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めるものとする。
【0146】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値で、好ましくは100,000~3,000,000、より好ましくは150,000~2,000,000、特に好ましくは200,000~1,500,000である。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性をより高めることができ、さらには、得られるゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
【0147】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.5であることがより好ましく、1.2~2.2であることが特に好ましい。共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0148】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~100、より好ましくは30~90、特に好ましくは35~80である。なお、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0149】
このようにして本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、充填剤および架橋剤などの配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。特に、充填剤としてシリカを配合した場合に、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができるゴム組成物を与える。
【0150】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に対して、シリカを含有してなる組成物である。
【0151】
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを含有してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴムなどの改質天然ゴムであってもよい。)、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス-BR、低シスBRであってもよい。また、1,2-ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、クロロプレンゴム、ニトリルクロロプレンゴム、およびニトリルイソプレンゴム、などのうち、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは、天然ゴムとポリブタジエンゴム、天然ゴムとスチレン-ブタジエン共重合ゴム等、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0152】
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10~100重量%を占めることが好ましく、50~100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
【0153】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される)は、好ましくは20~400m/g、より好ましくは50~220m/g、特に好ましくは80~170m/gである。また、シリカのpHは、5~10であることが好ましい。
【0154】
本発明で用いるシリカとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収値が、好ましくは約100~約400の範囲、特に約150~約300の範囲にあるものが好ましい。
【0155】
本発明で用いるシリカとしては、電子顕微鏡による測定で0.01~0.05μmの範囲の平均極限粒径を有するものが好ましいが、シリカの平均極限粒径はこの範囲に限定されず、さらに小さくても、またはさらに大きくてもよい。
【0156】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、様々な市販シリカが使用できる。例えば、PPG Industries社製のHi-Sil、210、Hi-Sil233、Hi-Sil243LD;ソルベイ社製のZeosil 1115MP、Zeosil 1165MP、Zeosil 165GR、Zeosil Premium 200MP;エボニック社製のULTRASIL VN2、ULTRASIL VN3;などが挙げられる。
【0157】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは10~250重量部であり、より好ましくは15~150重量部、さらに好ましくは20~130重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性をより高めることができる。
【0158】
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、種々のシランカップリング剤を用いることができるが、本発明においては、スルフィド系、メルカプト系、保護化メルカプト系(たとえば、カルボニルチオ基を持つもの)、チオシアネート系、ビニル系、アミノ系、メタクリレート系、グリシドキシ系、ニトロ系、エポキシ系またはクロロ系のシランカップリング剤を好適に用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-[ エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール、3-オクタノイルチオ-1-プロピル-トリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および3-クロロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT-Z100、NXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60、NXT-Z45、NXT、エボニック社製のSi69、Si75、VP Si363なども用いることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの1種または2種以上を予めオリゴマー化させて、オリゴマー化させた状態にて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。
【0159】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0160】
なお、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0161】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0162】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、相溶化剤、界面活性剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0163】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0164】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部、特に好ましくは0.5~15重量部である。
【0165】
また、本発明のゴム組成物には、ゴム成分以外に樹脂を配合してもよい。樹脂を配合することにより、ゴム組成物に粘着性を付与させたり、ゴム組成物中の充填剤の分散性を高めることができる。その結果、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性や耐摩耗性の向上が期待できる。また、可塑剤と同様な効果として、ゴム組成物の加工性を向上させることもできる。樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、アルキルフェノール-アセチレン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、インデン系樹脂、インデンを含有するC9系樹脂、α-メチルスチレン・インデン共重合体樹脂、クマロン-インデン樹脂、ファルネセン系樹脂、ポリリモネン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、変性されていたり、水素添加されていたりするものであってもよい。これらの樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。樹脂の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは25重量部以下である。
【0166】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは120~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒~30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0167】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0168】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0169】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0170】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、ウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、その優れたウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
【実施例
【0171】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0172】
〔重量平均分子量、分子量分布〕
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定機:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC-8220」)
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel SuperHM-H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0173】
〔ミクロ構造〕
・ビニル結合量(単位:モル%)
赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より重合体のビニル結合量を求めた。
・スチレン単位の含量(単位:重量%)
JIS K6383(1995)に従って、屈折率から重合体のスチレン単位の含量を求めた。
【0174】
〔ゴム架橋物のウエットグリップ性〕
ウエットグリップ性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmのゴム架橋物の試験片を、ARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδの値を測定することにより評価した。このtanδの値については、実施例1~4、比較例1については、比較例1の測定値を100とする指数で示し、実施例5,6、比較例2,3については、比較例2の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れる。
【0175】
〔ゴム架橋物の低発熱性〕
低発熱性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmのゴム架橋物の試験片を、ARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定することにより評価した。このtanδの値については、実施例1~4、比較例1については、比較例1の測定値を100とする指数で示し、実施例5,6、比較例2,3については、比較例2の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0176】
〔ゴム架橋物の操縦安定性〕
操縦安定性については、JIS K6301に従って、ゴム架橋物の試験片について、引張試験を行ない、(200%伸張時の応力)/(50%伸長時の応力)の値を測定・計算することにより評価した。この(200%伸張時の応力)/(50%伸長時の応力)の値については、実施例1~4、比較例1については、比較例1の測定値を100とする指数で示し、実施例5,6、比較例2,3については、比較例2の測定値を100とする指数で示した。この数値が大きいものほど、シリカによる補強性が高く、操縦安定性に優れる。
【0177】
〔実施例1〕
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器に、窒素雰囲気下、工業用ヘキサン(住友化学社製、商品名「ヘキサン(一般品)」、密度0.68g/mL)10.2kg、テトラメチルエチレンジアミン16.5mmol、1,3-ブタジエン707g、スチレン373g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン(上記一般式(2)において、X=化学的な単結合、X、X=ジエチルアミノ基、X=メチル基である化合物)8.41mmolを仕込んだ後、n-ブチルリチウム16.8mmolを加え、40℃で重合を開始した。重合を開始してから12分経過後、1,3-ブタジエン598g、およびスチレン122gを40分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認した。次いで、下記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-の繰り返し単位数に換算して25.2mmolとなるように添加し、30分間反応させた。次に、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(上記一般式(7)において、A=メトキシ基、A=3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基、p=0、q=3、r=1である化合物)16.8mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1520L」)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、重合溶液を24時間常温下に放置し、溶媒を蒸発させて重合体を得た。その後、得られた重合体を更に55℃で12時間減圧乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は431,000、スチレン単量体単位含有量は27.5重量%、ビニル結合含有量は57.4重量%であり、得られた実施例1の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.10重量%であった。
【化11】
【0178】
〔実施例2〕
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン16.8mmolに代えて、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン(上記一般式(7)において、A=メトキシ基、A=3-ジエチルアミノプロピル基、p=0、q=3、r=1である化合物)16.8mmolを使用したこと以外は実施例1と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例2の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は360,000、スチレン単量体単位含有量は27.8重量%、ビニル結合含有量は54.5重量%であり、得られた実施例2の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.10重量%であった。
【0179】
〔実施例3〕
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン16.8mmolに代えて、2,2-ジメトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン(上記一般式(9)において、A=メトキシ基、R16=メチル基、s=2である化合物)16.8mmolを使用したこと以外は実施例1と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は402,000、スチレン単量体単位含有量は27.0重量%、ビニル結合含有量は54.0重量%であり、得られた実施例3の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.10重量%であった。
【0180】
〔実施例4〕
窒素置換された800ml容器に、シクロヘキサン214.5g、およびテトラメチルエチレンジアミン4.5mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム45.0mmolを添加した。次いで、イソプレン162.3g、およびスチレン13.2gをゆっくりと添加し、50℃の容器内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A1)を得た。この重合体ブロック(A1)の重量平均分子量(Mw)は6,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.5重量%、イソプレン単量体単位含有量は92.5重量%、およびビニル結合含有量は7.0重量%であった。
【0181】
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器に、窒素雰囲気下、工業用ヘキサン(住友化学社製、商品名「ヘキサン(一般品)」、密度0.68g/mL)10.2kg、テトラメチルエチレンジアミン14.8mmol、1,3-ブタジエン707g、スチレン373g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン8.41mmolを仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロック(A1)を、使用したn-ブチルリチウム量に換算して16.8mmolを加え、40℃で重合を開始した。重合を開始してから12分経過後、1,3-ブタジエン598g、およびスチレン122gを40分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認した。次いで、上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-の繰り返し単位数に換算して25.2mmolとなるように添加し、30分間反応させた。次に、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン16.8mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1520L」)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、重合溶液を24時間常温下に放置し、溶媒を蒸発させて重合体を得た。その後、得られた重合体を更に55℃で12時間減圧乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例4の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は346,000、スチレン単量体単位含有量は26.9重量%、ビニル結合含有量は55.6重量%であり、得られた実施例4の共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.10重量%であった。
【0182】
〔比較例1〕
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器に、窒素雰囲気下、工業用ヘキサン(住友化学社製、商品名「ヘキサン(一般品)」、密度0.68g/mL)10.2kg、テトラメチルエチレンジアミン16.5mmol、1,3-ブタジエン707g、およびスチレン373gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム16.8mmolを加え、40℃で重合を開始した。重合を開始してから12分経過後、1,3-ブタジエン598g、およびスチレン122gを40分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認した。次いで、上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-の繰り返し単位数に換算して25.2mmolとなるように添加し、30分間反応させた。次に、2,2-ジメトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン16.8mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1520L」)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、重合溶液を24時間常温下に放置し、溶媒を蒸発させて重合体を得た。その後、得られた重合体を更に55℃で12時間減圧乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は412,000、スチレン単量体単位含有量は27.8重量%、ビニル結合含有量は55.4重量%であった。
【0183】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例1の共役ジエン系ゴム80.0部とブタジエンゴム20.0部(日本ゼオン社製、商品名「Nipol BR1220」)を30秒素練りし、次いでシリカ(ソルベイ社製、商品名「Zeosil 1165MP」)50部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックス T-DAE」)25部、およびシランカップリング剤(エボニック社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ソルベイ社製、商品名「Zeosil 1165MP」)25部、酸化亜鉛2.5部、ステアリン酸2.0部および老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2.0部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として3分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.50部、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1.7部、および1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)2.0部を加えてこれらを混練することで、ゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物を、50℃のオープンロールでシート状に成形した。得られたシート状のゴム組成物を160℃で20分間プレス架橋することで、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片を用いて、ウエットグリップ性、低発熱性、および操縦安定性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0184】
また、実施例2~4、比較例1の共役ジエン系ゴムについても、それぞれ同様にして、ゴム架橋物の試験片を作製し、ウエットグリップ性、低発熱性、および操縦安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
表1より、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することにより得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させ、さらに、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることにより製造される共役ジエン系ゴムを、架橋することで得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れるものであった(実施例1~4)。
【0187】
一方、共役ジエン系重合体鎖を得る際に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を使用しなかった場合には、得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に劣るものであった(比較例1)。
【0188】
〔実施例5〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.01mmol、1,3-ブタジエン76.3g、スチレン28.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.051gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.58mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、N-フェニルピロリドン0.24mmolを添加し、15分間反応させた。次いで、残留している前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に対して上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が0.14mmolとなるように添加し、20分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.24mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例5の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は406,000、スチレン単量体単位含有量は26重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。また、得られた実施例5の変性共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.049重量%であった。
【0189】
〔実施例6〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.01mmol、ピペリジン0.48mmol、1,3-ブタジエン76.3g、スチレン28.7g、およびビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.051gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.53mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が0.29mmolとなるように添加し、20分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.96mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例6の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は375,000、スチレン単量体単位含有量は26重量%、ビニル結合含有量は57重量%であった。また、得られた実施例6の変性共役ジエン系ゴム中における、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン単量体単位含有量は0.049重量%であった。
【0190】
〔比較例2〕
窒素置換された800ml容器に、シクロヘキサン134.3g、およびテトラメチルエチレンジアミン1.0mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム10.0mmolを添加した。次いで、イソプレン36.1g、およびスチレン2.9gをゆっくりと添加し、50℃の容器内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A2)を得た。この重合体ブロック(A2)の重量平均分子量(Mw)は5,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.09、スチレン単量体単位含有量は7.4重量%、イソプレン単量体単位含有量は92.6重量%、およびビニル結合含有量は7.3重量%であった。
【0191】
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.22mmol、1,3-ブタジエン76.3g、およびスチレン28.7gを仕込んだ後、活性末端を有する重合体ブロック(A2)を0.88mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、N-フェニルピロリドン0.31mmolを添加し、15分間反応させた。次いで、残留している前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に対して上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が0.18mmolとなるように添加し、20分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.61mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例2の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は400,000、スチレン単量体単位含有量は26重量%、ビニル結合含有量は57重量%であった。
【0192】
〔比較例3〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、ピペリジン0.61mmol、1,3-ブタジエン76.3g、およびスチレン28.7gを仕込んだ後、n-ブチルリチウムを0.73mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.31mmolを添加し、15分間反応させた。次いで、残留している前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に対して上記式(10)で表されるポリオルガノシロキサンを、-Si-O-繰り返し単位の含有量が0.18mmolとなるように添加し、20分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.31mmolを添加し、15分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、変性共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例3の変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は287,000、スチレン単量体単位含有量は26重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0193】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
実施例5,6、比較例2,3の共役ジエン系ゴムについても、それぞれ、実施例1と同様にして、ゴム架橋物の試験片を作製し、ウエットグリップ性、低発熱性、および操縦安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0194】
【表2】
【0195】
表2より、窒素原子を含有する変性剤を使用した場合や、重合開始末端に、2級アミン化合物による変性構造を導入した場合においても、共役ジエン化合物と、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物とを含む単量体を重合することにより得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させ、さらに、ヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることにより製造される共役ジエン系ゴムを、架橋することで得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れるものであった(実施例5,6)。
【0196】
一方、窒素原子を含有する変性剤を使用した場合や、重合開始末端に、2級アミン化合物による変性構造を導入した場合においても、共役ジエン系重合体鎖を得る際に、シリカに対して相互作用可能な官能基を含有するビニル化合物を使用しなかった場合には、得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に劣るものであった(比較例2,3)。