(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-27
(45)【発行日】2023-04-04
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
H10K 77/10 20230101AFI20230328BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230328BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230328BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230328BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230328BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20230328BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H10K77/10
H10K50/10
H10K59/10
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
G09F9/30 365
G09F9/30 308Z
(21)【出願番号】P 2020561309
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2019047812
(87)【国際公開番号】W WO2020129702
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018240122
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】染谷 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】横田 知之
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 健二
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0106718(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第104600202(CN,A)
【文献】特開2016-076484(JP,A)
【文献】YOKOTA, Tomoyuki, et al.,Ultraflexible organic photonic skin,Science Advances,米国,American Association for the Advancement of Science,2016年04月15日,Vol. 2,e1501856,https://doi.org/10.1126/sciadv.1501856
【文献】FUKAGAWA, Hirohiko, et al.,Long-Lived Flexible Displays Employing Efficient and Stable Inverted Organic Light-Emitting Diodes,Advanced Materials,ドイツ,WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA,2018年05月29日,Vol. 30,1706768,https://doi.org/10.1002/adma.201706768
【文献】YIN, Da, et al.,Two-Dimensional Stretchable Organic Light-Emitting Devices with High Efficiency,ACS Applied Materials & Interfaces,米国,American Chemical Society,2016年10月28日,vol. 8,31166-31171,DOI: 10.1021/acsami.6b10328
【文献】CHOI, Minwoo, et al.,Flexible active-matrix organic light-emitting diode display enabled by MoS2 thin-film transistor,SCIENCE ADVANCES,米国,American Association for the Advancement of Science,2018年04月20日,vol. 4,eaas8721,DOI: 10.1126/sciadv.aas8721
【文献】WHITE, Matthew S., et al.,Ultrathin, highly flexible and stretchable PLEDs,Nature Photonics,英国,Macmillan Publishers Limited.,2013年07月28日,vol. 7,811-816,DOI: 10.1038/NPHOTON.2013.188
【文献】KIM, Jaemin, et al.,Ultrathin Quantum Dot Display Integrated with Wearable Electronics,Advanced Materials,vol. 29,ドイツ,WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA,2017年08月21日,1700217,DOI: 10.1002/adma.201700217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 77/10
H10K 50/00
H10K 59/00
G09F 9/30
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、基板上に隣接して形成された陰極との間に複数の層が積層された
逆構造を有する有機電界発光素子であって、
該素子は、基板、陽極、陰極、及び、陽極と陰極との間に積層された複数の層を含んで構成され、該素子
の総厚みが10μm未満であることを特徴とする有機電界発光素子(パラキシリレン系重合体層とSiON層とを交互に積層した構造のパッシベーション層を有するもの、及び、パラキシリレン系重合体層とエポキシ層との積層構造である封止層を有するものを除く)。
【請求項2】
前記基板は、単層であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記基板は、パラキシリレン系重合体の単層膜であることを特徴とする請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。より詳しくは、電子機器の表示部等の表示装置や照明装置等としての利用可能な有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、表示装置として用いた場合には、高輝度、高精細な表示が可能となり、液晶表示装置に比べて視野角も広い等の優れた特徴を有することから、テレビや携帯電話のディスプレイや照明装置としての利用の拡大が期待されている。更に有機電界発光素子は、薄く、柔軟でフレキシブルであるという特徴を活かした他の用途への利用も検討されており、例えば、有機電界発光素子を含むシートを肌に発布して光を照射し、肌を活性化することで美容効果や治療効果を得る方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1参照)。有機電界発光素子の薄さや柔軟性を更に向上させる研究も盛んに行われており、柔軟性に優れた有機電界発光素子や極薄の有機電界発光素子についての報告も行われている(非特許文献2~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】トモユキ ヨコタ(Tomoyuki Yokota)外9名、「サイエンス アドバンシス(Science Advances)」、2016年、第2号、e1501856
【文献】マシュー S.ホワイト(Matthew S.White)外15名、「ネイチャー フォトニクス(Nature photonics)」、2013年、第188号、DOI:10.1038
【文献】ドンユン キム(Dong-Young Kim)外4名、「マテリアルズ ビューズ(Materials Views)」、2015年、第25号、p7145-7153
【文献】ダエヒョン キム(Dae-Hyeong Kim)外16名、「ネイチャー マテリアルズ(Nature Materials)」、2010年、第9号、p511-517
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄く、柔軟でフレキシブルであるという特徴は、現在広く利用されている液晶表示装置にはない特徴であり、有機電界発光素子の利用の拡大や新たな用途の開拓のうえで重要な特徴である。上述した有機電界発光素子を含むシートを肌に発布する用途においても、シートが薄く、柔軟であるほど肌に装着した際の不快感が軽減されるため、薄さや柔軟性に優れた素子が求められる。一方で素子が必要な時間発光を維持できる寿命も重要な要素である。非特許文献2や3に記載の素子は、薄さや柔軟性に優れるものであるが、封止がされておらず寿命が短いものである。封止をすると寿命は改善するものの素子の厚みが厚くなり、柔軟性が低下することになる。このように、従来の素子は、薄さや柔軟性と寿命との両立の点で改善の余地がある。また、薄さの観点において、非特許文献4に記載のように曲面への追随性に優れるためには素子の厚みが十分に薄い領域であることが必要である。具体的には、10μm未満であり、できれば3μm以下であることが重要である。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、従来の有機電界発光素子と同程度の素子寿命を維持しつつ、厚さ10μm未満の薄さで柔軟性に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来の有機電界発光素子と同程度の素子寿命を維持しつつ、薄さや柔軟性に優れた有機電界発光素子について検討し、極薄膜の基板を用い、基板上に形成された陰極と陽極との間に複数の層が積層された構造を有する、いわゆる逆構造の有機電界発光素子とすると、従来の有機電界発光素子と同程度の素子寿命を維持しつつ、厚さ10μm未満で柔軟性に優れた有機電界発光素子が得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、該素子は、厚みが10μm未満であることを特徴とする有機電界発光素子である。
【0009】
上記基板は、単層であることが好ましい。
【0010】
上記基板は、パラキシリレン系重合体の単層膜であることが好ましい。
【0011】
上記有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有することが好ましい。
【0012】
本発明はまた、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置でもある。
【0013】
本発明はまた、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機電界発光素子は、従来の有機電界発光素子と同程度の素子寿命を有しながら、より薄く、柔軟性に優れることから、テレビや携帯電話のディスプレイ等の表示装置や照明装置の他、美容効果や治療効果を得る目的で素子を肌に発布して使用する用途等、種々の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の有機電界発光素子の一例を説明するための概略図である。
【
図2】比較例1の有機電界発光素子を説明するための概略図である。
【
図3】実施例1により得られた有機電界発光素子の電圧-電流密度特性および電流密度-外部量子効率特性を示した図である。
【
図4】実施例1により得られた有機電界発光素子の発光イメージ図の経時変化を示した図である。
【
図5】比較例1により得られた有機電界発光素子の発光イメージ図の経時変化を示した図である。
【
図6】実施例2により得られた有機電界発光素子の電圧-電流密度特性および電流密度-外部量子効率特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0017】
本発明の有機電界発光素子は、厚みが10μm未満の素子厚を持つ逆構造の有機電界発光素子である。
有機電界発光素子としては、陰極と基板上に形成された陽極との間に複数の層が積層された、いわゆる順構造のものが一般的である。順構造の有機電界発光素子は酸素や水によって劣化しやすく、厳密な封止が不可欠であるため、複数層のある程度の厚みを持った無機物層が必要となる。このため、基板としては従来、バリア機能を担保し寿命を確保する目的から結果として100μm以上の厚みのものが用いられている。これに対し、有機電界発光素子を順構造に比べて酸素や水に対する耐性が高い逆構造にすることで、バリア層はほとんど必要なく、あっても単層かつ薄膜で十分であるため、より厚みの薄い基板の使用も可能となる。本発明の有機電界発光素子は、このような逆構造の有機電界発光素子と素子の総厚が10μm未満となるような極薄の基板とを組み合わせることで、従来の素子と同程度の素子寿命を維持しつつ、薄さや柔軟性に極めて優れた有機電界発光素子としたものである。
以下においては、本発明の有機電界発光素子が用いる基板についてまず説明し、その後に基板以外の有機電界発光素子の構成について説明する。
【0018】
<基板>
本発明の有機電界発光素子を構成する基板は、厚みが10μm未満のものであるが、厚みが3μm以下のものが好ましい。より好ましくは、1μm以下のものである。また素子製造過程での取り扱いのし易さの点から、基板の厚みは1nm以上であることが好ましい。
基板の厚みは、水晶振動子膜厚計、接触式段差計、分光エリプソメトリーなどにより測定することができる。
【0019】
上記基板は、単層であることが好ましい。その理由は、複数層により積層された極薄膜は、熱膨張係数の違い及びその薄さからカールしやすい等、平坦な膜でいることが難しいためである。単層であることで、積層膜である場合に比べて平坦な状態を維持しやすくなる。
【0020】
本発明の有機電界発光素子を構成する基板の材料は特に制限されず、有機材料、無機材料のいずれであってもよいが、極薄の基板を形成しやすいことから、有機材料が好ましい。有機材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートや、下記式(1):
【0021】
【0022】
(式中、Rは、水素原子又はハロゲン原子を表す。R’は、芳香環の置換基であるハロゲン原子又は1価の有機基を表す。mは、0~4の数を表す。)で表される構造単位を有するパラキシリレン系重合体(パリレン:日本パリレン合同会社の登録商標)などの重合体や、フォトレジスト材料が挙げられる。フォトレジスト材料としては、エポキシ樹脂系フォトレジスト材料(SU-8等)等を用いることができる。これらの中でも、パリレンが特に好ましい。
【0023】
上記式(1)におけるmは、0~4の数を表すが、0~2が好ましい。
上記式(1)における1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1~20のハロアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1~10のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基等のジアリールアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、スチリル基等の炭素数2~30のアルケニル基;エチニル基、1-プロピニル基、プロパルギル基等の炭素数2~30のアルキニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基等で置換されていてもよいアリール基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基で置換されていてもよい複素環基;N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基等のN,N-ジアルキルカルバモイル基;ジオキサボロラニル基、スタニル基、シリル基、エステル基、ホルミル基、チオエーテル基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0024】
上記パラキシリレン系重合体は、上記式(1)で表される構造単位のみからなるものであってもよく、その他の構造単位を有するものであってもよいが、パラキシリレン系重合体を構成する全構造単位100モル%に対して、上記式(1)で表される構造単位の割合が95モル%以上であることが好ましい。より好ましくは、98モル%以上であり、更に好ましくは、99モル%以上である。
【0025】
上記基板の材料となる重合体は、重量平均分子量が1000~1000000であることが好ましい。このような分子量のものであると、フィルムとしての強度、安定性が高い。重量平均分子量は、より好ましくは、100000~1000000であり、更に好ましくは、500000~1000000である。
パラキシリレン系重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC)により測定することができる。
【0026】
<基板以外の構成>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に形成された陰極と陽極と、陰極と陽極との間に1層または複数層の有機化合物層を有するものである。ここで有機化合物層は、発光層を含み、必要に応じてその他に電子輸送層や正孔輸送層を含む層である。
本発明の有機電界発光素子は、更に陰極と陽極との間に金属酸化物層を有する有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子であることが好ましい。金属酸化物を素子の材料として用いることで、より酸素や水への耐性の高い有機電界発光素子とすることができる。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に隣接して陰極が形成され、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有する有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子であって、陰極と発光層との間に、電子注入層と、必要に応じて電子輸送層とを有し、陽極と発光層との間に正孔輸送層及び/又は正孔注入層を有する構成の素子であることが好ましい。本発明の有機電界発光素子は、これらの各層の間に他の層を有していてもよいが、これらの各層のみから構成される素子であることが好ましい。すなわち、陰極、電子注入層、必要に応じて電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び/又は正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。また本発明の素子は、電子注入層又は電子輸送層の全部又は一部として、有機バッファ層を有していてもよい。
上記構成の有機電界発光素子において、素子が電子輸送層を有さない場合は、電子注入層と発光層とが隣接することになる。また、素子が正孔輸送層、正孔注入層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層と陽極とに隣接して積層されることになり、素子が正孔輸送層と正孔注入層の両方を有する場合には、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。
【0027】
上記有機電界発光素子において、発光層を形成する材料としては、発光層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0028】
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ-フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ-フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレンビニレン)(RO-PPV)、シアノ-置換-ポリ(パラ-フェンビニレン)(CN-PPV)、ポリ(2-ジメチルオクチルシリル-パラ-フェニレンビニレン)(DMOS-PPV)、ポリ(2-メトキシ,5-(2’-エチルヘキソキシ)-パラ-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン-アルト-ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω-ビス[N,N’-ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]-ポリ[9,9-ビス(2-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニル)-オルト-コ(アントラセン-9,10-ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ-フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレン)(RO-PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010-230995号、特願2011-6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0029】
上記発光層を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq3)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq2)、(1,10-フェナントロリン)-トリス-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-ブタン-1,3-ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)3(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィンプラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6-ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’-ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレン-ジ-カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4-(ジ-シアノメチレン)-2-メチル-6-(パラ-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5-ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’-(パラ-フェニレンジビニレン)-ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’-テトラフェニル-9,9’-スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009-155325号公報および特願2010-230995号、特願2011-6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。また、ケミプロ化成社の製品であるKHLHS-04、KHLDR-03等も用いることができる。
【0030】
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましい。より好ましくは、20~100nmであり、更に好ましくは、40~100nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0031】
上記有機電界発光素子が、電子輸送層を有する場合、その材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層の材料として用いることができる化合物の例としては、トリス-1,3,5-(3’-(ピリジン-3’’-イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2-(3-(9-カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2-フェニル-4,6-ビス(3,5-ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4-ビス(4-ビフェニル)-6-(4’-(2-ピリジニル)-4-ビフェニル)-[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’-(1,3,5-ベントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5-ビス(6’-(2’,2’’-ビピリジル))-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、ケミプロ化成社の製品であるKHLHS-01等も用いることができる。
これらの中でも、Alq3のような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
【0032】
上記有機電界発光素子が、電子注入層を有する場合、電子注入層の材料としては、窒素含有化合物から形成される窒素含有膜からなる層を用いることができる。
窒素含有膜からなる層を形成する窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドンのようなピロリドン類、ポリピロールのようなピロール類又はポリアニリンのようなアニリン類、又はポリビニルピリジンのようなピリジン類、同様に、ピロリジン類、イミダゾール類、ピペリジン類、ピリミジン類、トリアジン類などの含窒素複素環を有する化合物や、アミン化合物が挙げられる。
【0033】
上記窒素含有化合物としてはまた、窒素含有率の高い化合物が好ましく、ポリアミン類が好ましい。ポリアミン類は、化合物を構成する全原子数に対する窒素原子数の比率が高いため、有機電界発光素子を高い電子注入性と駆動安定性を有するものとする点から適している。
ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンのようなポリアルキレンポリアミンが好適に用いられ、高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられる。特にポリエチレンイミンが好ましい。中でも、窒素含有化合物が、ポリエチレンイミン又はジエチレントリアミンであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、ここで低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
【0034】
上記窒素含有膜の平均厚さは、特に限定されないが、0.5~10nmであることが好ましい。より好ましくは、1~5nmであり、更に好ましくは、1~3nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により測定することができる。
【0035】
上記有機電界発光素子が、正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層として用いる正孔輸送性有機材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン-アリールアミン共重合体、フルオレン-ビチオフェン共重合体、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0036】
上記p型の低分子材料としては、例えば、1,1-ビス(4-ジ-パラ-トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’-ビス(4-ジ-パラ-トリルアミノフェニル)-4-フェニル-シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’-トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD1)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD3)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’-テトラフェニル-パラ-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(パラ-トリル)-パラ-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(メタ-トリル)-メタ-フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N-イソプロピルカルバゾール、N-フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4-ジ-パラ-トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m-MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1-フェニル-3-(パラ-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ジ(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,7-ビス(2-ヒドロキシ-3-(2-クロロフェニルカルバモイル)-1-ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4-ジチオケト-3,6-ジフェニル-ピロロ-(3,4-c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t-ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0037】
上記有機電界発光素子が、電子輸送層や正孔輸送層を有する場合、これらの層の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましい。より好ましくは、20~100nmであり、更に好ましくは、40~100nmである。
電子輸送層や正孔輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0038】
上記有機電界発光素子が金属酸化物層を有する場合、陰極から発光層までの間、陽極から発光層までの間のいずれか又は両方に金属酸化物層を有する形態が考えられる。本発明の有機電界発光素子がこのような形態のものである場合、その中でも、陰極から発光層までの間との発光層から陽極までの間の両方に金属酸化物層を有することが好ましい。陰極から発光層までの間の金属酸化物層を第1の金属酸化物層、陽極から発光層までの間の金属酸化物層を第2の金属酸化物層とし、本発明の有機電界発光素子の好ましい素子の構成の一例を表すと、陰極、第1の金属酸化物層、電子注入層及び/又は電子輸送層、発光層、正孔輸送層、第2の金属酸化物層、陽極がこの順に隣接して積層された構成である。本発明の有機電界発光素子が窒素含有膜からなる層を有する場合の好ましい素子の構成の一例を表すと、陰極、第1の金属酸化物層、窒素含有膜からなる層、発光層、正孔輸送層、第2の金属酸化物層、陽極がこの順に隣接して積層された構成である。なお、窒素含有膜からなる層と、発光層との間に必要に応じて電子輸送層を有していてもよい。金属酸化物層の重要性は、第1の金属酸化物層の方が高く、第2の金属酸化物層は、最低非占有分子軌道の極端に深い有機材料、例えば、HATCNでも置き換える事ができる。
【0039】
上記第1の金属酸化物層は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
【0040】
上記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウムなどの金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛などの三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO・7Al2O3も含まれる。
これら第1の金属酸化物層は、電子注入層ともいえ、また、電極(陰極)ともいえる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから上記第1の金属酸化物層を構成する一層に該当しない。
【0041】
上記第2の金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V2O5)、酸化モリブテン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ルテニウム(RuO2)等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものが好ましい。第2の金属酸化物層が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものにより構成されると、第2の金属酸化物層が陽極から正孔を注入して発光層又は正孔輸送層へ輸送するという正孔注入層としての機能により優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極から発光層又は正孔輸送層への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止することもできるという利点がある。より好ましくは、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンから構成されるものである。
【0042】
上記第1の金属酸化物層の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機電界発光素子とする点から、1~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、2~100nmである。
上記第2の金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5~50nmである。
第1の金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
第2の金属酸化物層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0043】
上記有機電界発光素子において、陽極及び陰極としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としてはITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)などが上げられる。不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金などが挙げられる。
陰極としては、この中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
上記のように、一般に陽極に用いられる金属を陰極及び陽極に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITOなどである。
【0044】
上記陰極の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましい。より好ましくは、100~200nmである。陰極の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30~150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10~30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用することができる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0045】
また本発明の有機電界発光素子が、陰極から発光層までの間に金属酸化物層を有し、陰極側の積層構造の末端から、表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層、金属単体の層、金属酸化物の層、有機化合物層をこの順に有する素子であることは、本発明の有機電界発光素子の好適な実施形態の1つである。これらの層をこの順に隣接して有することで、以下のような効果が得られる。
電極として金属単体を用いることで、ITOを電極として用いた場合に比べて低電力で素子を駆動させることができる。また、本発明の素子は陰極側が基板上に形成された逆構造の素子であるから、素子を作製する際、陰極側では金属単体の層は、表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層上に形成されることになる。このような表面エネルギーの高い金属化合物層上に金属単体の層を形成すると均一な薄膜を形成することができ、また表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層の存在により金属単体の層を薄くしても導電性を高くできる。このため、ITOを電極として用いた場合に比べて電極である金属単体の層を薄くすることができ、これにより、フレキシビリティに優れた電極とすることができる。更に、金属単体の層を屈折率の高い層で挟むことで金属単体の層の光の反射を抑え、透明性の高い電極とすることができる。
【0046】
上記陰極側の積層構造の末端を形成する表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物は、中でも、表面エネルギーが65dyne/cm以上の金属化合物が好ましく、より好ましくは、表面エネルギーが70dyne/cm以上の金属化合物である。このような金属化合物を用いることで、該金属化合物の層上に金属単体の層を形成する場合に、薄膜の層をより均一に形成することができる。
【0047】
上記表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物は、Zn、Mo、Ti、Mg、Ce、Al、Fe、及び、Zrから選択されるいずれかの金属元素の酸化物及び/又は硫化物であることが好ましい。このような金属化合物は薄膜の形成がしやすく、また入手も容易であるため、有機電界発光素子の材料として好適である。より好ましくは、Zn、Mo、Ti、及び、Mgから選択されるいずれかの金属元素の酸化物及び/又は硫化物であり、更に好ましくは、Zn、Moから選択されるいずれかの金属元素の酸化物及び/又は硫化物である。
【0048】
上記表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層の平均厚さは、1~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5~100nmであり、更に好ましくは、10~50nmである。
【0049】
上記有機電界発光素子の陰極となる金属単体の層は、Ag、Al、Au、Cu、W、Co、Ni、Zn、K、Li、Fe、Pt、Sn、Cr、Pb、Ti、Mn、及び、Pdからなる群より選択される金属単体の層であることが好ましい。これらの金属単体を用いることで、本発明の有機電界発光素子の駆動電圧をより低くすることができる。より好ましくは、Ag、Al、Au、Cu、W、Co、Ni、及び、Znからなる群より選択される金属単体の層であり、更に好ましくは、Ag、Al、Au、及び、Cuからなる群より選択される金属単体の層である。
【0050】
上記有機電界発光素子の陰極となる金属単体の層の平均厚さは、1~100nmであることが好ましい。より好ましくは、5~50nmであり、更に好ましくは、7~25nmである。
【0051】
本発明の有機電界発光素子が、陰極から発光層までの間に金属酸化物層を有し、陰極側の積層構造の末端から、表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層、金属単体の層、金属酸化物の層、有機化合物層をこの順に有する素子である場合、陰極側の積層構造を構成する金属酸化物の層は、仕事関数が3.5以上の金属酸化物の層であることが好ましい。このような金属酸化物を用いることで、電極の透明性と電子注入性を兼ね備えることができる。より好ましくは、仕事関数が4.0以上の金属酸化物の層であり、更に好ましくは、仕事関数が4.0以上、5.0以下の金属酸化物の層である。
【0052】
上記仕事関数が3.5以上の金属酸化物としては、ZnO、MgO、MoO3、TiO2、Al2O3、FeO、ZrO2、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等が挙げられる。この中でも好ましくは、ZnO、MgO、MoO3、TiO2、ZrO2、ITO、ATO、IZO、AZO、FTO等の仕事関数が4.0以上の金属酸化物であり、より好ましくは、ZnO、MgO、ITO、ATO、IZO、AZO、FTO等の仕事関数が4.0以上、5.0以下の金属酸化物である。
【0053】
上記陰極側の積層構造を構成する金属酸化物の層の平均厚さは、1~100nmであることが好ましい。より好ましくは、1~50nmであり、更に好ましくは、1~25nmである。
【0054】
本発明の有機電界発光素子は更に、陽極側の積層構造の末端から、金属酸化物の層、金属単体の層、表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層、有機化合物層をこの順に有するものであってもよく、このような構造を有することは本発明の有機電界発光素子の好適な実施形態の1つである。陽極側にもこれらの層を隣接して有することで、素子をより駆動電圧が低く、透明性の高い素子とすることができる。
陽極側にこのような積層構造を有する場合、該積層構造を構成する表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層、陽極側の金属単体の層(陽極の層)の具体例や好ましい構造、平均厚さは上述した陰極側の積層構造における表面エネルギーが60dyne/cm以上の金属化合物の層、陰極側の金属単体の層(陰極の層)のものと同様である。
【0055】
本発明の有機電界発光素子が陽極側に上述した積層構造を有する場合、陽極側の金属酸化物の層は、仕事関数が3.5以上の金属酸化物の層であることが好ましい。このような金属酸化物を用いることで、電極の透明性と正孔注入性を兼ね備えることができる。より好ましくは、仕事関数が4.0以上の金属酸化物の層であり、更に好ましくは、仕事関数が4.5以上の金属酸化物の層である。
【0056】
上記仕事関数が3.5以上の金属酸化物としては、ZnO、MgO、MoO3、TiO2、Al2O3、FeO、ZrO2、ITO、ATO、IZO、AZO、FTO等が挙げられる。この中でも好ましくは、ZnO、MgO、MoO3、TiO2、ZrO2、ITO、ATO、IZO、AZO、FTO等の仕事関数が4.0以上の金属酸化物であり、より好ましくは、MgO、MoO3、TiO2等の仕事関数が4.5以上の金属酸化物である。
【0057】
上記陽極側の金属酸化物の層の平均厚さは、1~100nmであることが好ましい。より好ましくは、1~50nmであり、更に好ましくは、1~25nmである。
【0058】
本発明の有機電界発光素子が陽極側に上述した積層構造を有しない場合、陽極側の積層構造の末端に陽極を有し、陽極と有機化合物層との間に金属酸化物層を有する構造であることが好ましい。
この場合、陽極としては、Au、Ag、Al等が挙げられ、陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましく、より好ましくは、30~150nmである。
陽極と有機化合物層との間に金属酸化物層を構成する金属酸化物としては、上記仕事関数が3.5以上の金属酸化物が挙げられ、金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、より好ましくは、5~50nmである。
【0059】
本発明の有機電界発光素子において、有機化合物から形成される層の成膜方法は特に限定されず、材料の特性に合わせて種々の方法を適宜用いることができるが、溶液にして塗布できる場合はスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いて成膜することができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。塗布しない場合や溶媒溶解性が低い場合は真空蒸着法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution)法などが好適な例として挙げられる。
【0060】
上記有機化合物から形成される層を、有機化合物溶液を塗布して形成する場合、有機化合物を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0061】
上記陰極、陽極、及び、酸化物層は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陽極、陰極の形成には、金属箔の接合も用いることができる。これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていても良い。第2の金属酸化物層は、これらの中でも、気相成膜法を用いて形成するのがより好ましい。気相成膜法によれば、有機化合物層の表面を壊すことなく清浄にかつ陽極と接触よく形成することができ、その結果、上述したような第2の金属酸化物層を有することによる効果がより顕著なものとなる。
【0062】
上記有機電界発光素子の特性をさらに向上させる等の理由から、必要に応じて例えば正孔阻止層、電子阻止層などを有していてもよい。これらの層を形成するための材料としては、これらの層を形成するために通常用いられる材料を用い、また、これらの層を形成するために通常用いられる方法により層を形成することができる。
【0063】
本発明の有機電界発光素子は、酸素や水分による劣化に強い逆構造の有機電界発光素子とすることでバリア機能の少ない厚みの薄い基板の使用を可能とし、これと極薄の基板とを組み合わせることで従来の有機電界発光素子よりも薄く、柔軟性に優れる素子としたものであり、テレビや携帯電話のディスプレイ等の表示装置や照明装置の他、美容効果や治療効果を得る目的で素子を肌に発布して使用する美容器具や医療器具に好適に使用することができる。このような、本発明の有機電界発光素子を備える表示装置、照明装置や美容器具、医療器具もまた、本発明の一つである。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0065】
1.基板の作製
合成例1(SU-8製1.5μm基板の作製+ITOの作製)
[0-11]ガラス基板をセミコクリーン(フルウチ化学社製)を用いて超音波洗浄したのちに、酸素プラズマ洗浄を行った。
[0-21]このガラス基板表面にNovec 1700(フッ素アクリル系コーティング剤、3M社製)を2000rpm、30秒の条件でスピンコートして塗膜を形成した。
[0-31]Novec 1700の塗膜を形成したガラス基板をサポート基板として用い、その表面に厚さ1.5μmのSU-8(microchem社製フォトレジスト)をスピンコートして塗膜を形成し、UV架橋を行った後にホットプレート上で95℃、3分アニールを行った。これにより基板101を作製した。
[0-41]次に透明電極層を形成するため、ITOターゲットを持つスパッタ装置の基板ホルダーに基板101を固定した。酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約70nmのITO電極を形成した。形成した透明電極はフォトリソグラフィーでパターニングを行った。
SU-8、ITO電極層、及び、基板の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0066】
合成例2(パリレン製0.1μm基板の作製+ITOの作製)
[0-12]ガラス基板をセミコクリーン(フルウチ化学社製)を用いて超音波洗浄したのちに、酸素プラズマ洗浄を行った。
[0-22]このガラス基板表面にNovec 1700を2000rpm、30秒の条件でスピンコートして塗膜を形成した。
[0-32]Novec 1700の塗膜を形成したガラス基板をサポート基板として用い、その表面に、diX-SR(第三化成株式会社製)を原料とし、ラボコータ PDS-2010(日本パリレン合同会社製)を用いて、CVD法により厚さ0.1μmのパリレンの塗膜を形成し、窒素雰囲気下でホットプレート上で180℃、30分アニールを行った。これにより基板102を作製した。
[0-42]次に透明電極層を形成するため、ITOターゲットを持つスパッタ装置の基板ホルダーに基板102を固定した。酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約70nmのITO電極を形成した。形成した透明電極はフォトリソでパターニングを行った。
パリレン、ITO電極層、及び、基板の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0067】
合成例3(ポリイミド製1μm基板の作製+ITOの作製)
[0-13]ガラス基板をセミコクリーン(フルウチ化学社製)を用いて超音波洗浄したのちに、酸素プラズマ洗浄を行った。
[0-23]このガラス基板表面にNovec 1700(フッ素アクリル系コーティング剤、3M社製)を2000rpm、30秒の条件でスピンコートして塗膜を形成した。
[0-33]Novec 1700の塗膜を形成したガラス基板をサポート基板として用い、その表面に厚さ1μmのCT4112(京セラケミカル社製ポリイミド)をスピンコートして塗膜を形成し、イナートオーブンで180℃、60分焼成を行った。これにより基板103を作製した。
[0-43]次に透明電極層を形成するため、ITOターゲットを持つスパッタ装置の基板ホルダーに基板103を固定した。酸素を導入した状態でスパッタし、膜厚約70nmのITO電極を形成した。形成した透明電極はフォトリソグラフィーでパターニングを行った。
CT4112、ITO電極層、及び、基板の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0068】
2.有機電界発光素子の作製及び特性評価
実施例1
[1]合成例1で作製されたITO電極層(陰極2)付きフィルム基板101を用意した。この基板に対し、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]洗浄後の基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに再度固定した。約5×10
-5Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、金属酸化物層3として、膜厚約2nmの酸化亜鉛層を作成した。
この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が成膜されないようにした。
[3]次に有機バッファ層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは分子量70000のP1000であった。膜厚はX線光電分光法により測定に、約1nmであった。
[4]次に、[3]の処理を行った基板を真空装置に導入し、5×10
-5Pa以下まで減圧した。電子輸送層5としてKHLHS-01を15nm、発光層6としてα-NPD:KHLHS-04:KHLDR-03を、正孔輸送層7としてα-NPDをそれぞれ順番に30nm、24nm真空蒸着法により積層した。
[5]次に、正孔輸送層7の上に、正孔注入層8を形成した。ここでは、酸化モリブデンを10nm気相成膜法である真空蒸着法により形成した。
[6]次に、最終工程として正孔注入層8上に陽極9を形成した。ここでは、アルミニウムを100nm真空蒸着法により成膜した。
[7]最後に封止層10として、diX-SR(第三化成株式会社製)を原料とし、ラボコータ PDS-2010(日本パリレン合同会社製)を用いて、CVD法により厚さ1μmのパリレンの塗膜を成膜した。封止後、サポート基板より該素子を剥離した。
以上の工程[1]~[7]により、有機電界発光素子51を作製した(
図1)。実施例1の素子51の素子厚は、2.75μmであった。
[8]下記<有機電界発光素子の発光特性測定>により、有機電界発光素子51の電流密度-外部量子効率特性を評価した。また、電圧-電流密度特性を評価した。結果を
図3に示す。また、発光の経時変化を観察した。結果を
図4に示す。
<有機電界発光素子の発光特性測定>
Keithley製の「2400 SourceMeter」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。浜松ホトニクス社製の「輝度配光特性測定装置 C9920-11」により、発光輝度を測定した。
【0069】
実施例2
実施例1の[1]を以下の[1-2]に、[7]を以下の[7-2]に、[8]を以下の[8-2]に変更したこと以外は、実施例1と同様にして有機電界発光素子52を作製した。
[1-2]合成例2で作製されたITO電極層(陰極2)付きフィルム基板102を用意した。この基板に対し、UVオゾン洗浄を20分行った。
[7-2]最後に封止層10として、diX-SR(第三化成株式会社製)を原料とし、ラボコータ PDS-2010(日本パリレン合同会社製)を用いて、CVD法により厚さ0.1μmのパリレンの塗膜を成膜した。封止後、サポート基板より該素子を剥離した。
以上の工程[1]~[7-2]により、有機電界発光素子52を作製した(
図1)。実施例2の素子52の素子厚は、0.45μmであった。
[8-2]上記<有機電界発光素子の発光特性測定>により、有機電界発光素子52の電流密度-外部量子効率特性を評価した。また、電圧-電流密度特性を評価した。結果を
図6に示す。
【0070】
比較例1
[1-3]合成例1で作製されたITO電極層(陽極9)付きフィルム基板101を用意した。この基板に対し、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2-3]次に、[1-3]の処理を行った基板を真空装置に導入し、5×10
-5Pa以下まで減圧して、正孔注入層8として酸化モリブデンを10nm、正孔輸送層7としてα-NPDを24nm、発光層6としてα-NPD:KHLHS-04:KHLDR-03を30nm、電子輸送層5としてKHLHS-01を15nm真空蒸着法により積層した。
[3-3]次に、電子注入層11を形成した。ここでは、フッ化ナトリウム層を1nm気相成膜法である真空蒸着法により形成した。
[4-3]次に、最終工程として電子注入層11上に陰極2を形成した。ここでは、アルミニウムを100nm、真空蒸着法により成膜した。
[5-3]最後に封止層10として、diX-SR(第三化成株式会社製)を原料とし、ラボコータ PDS-2010(日本パリレン合同会社製)を用いて、CVD法により厚さ1μmのパリレンの塗膜を成膜した。封止後、サポート基板より該素子を剥離した。
以上の工程[1-3]~[5-3]により、有機電界発光素子53を作製した。比較例1の素子53の素子厚は、2.75μmであった。
[6-3]有機電界発光素子53の発光の経時変化を観察した。結果を
図5に示す。
【0071】
図3より、使用上問題ない程度の効率で発光が得られていることがわかる。また、
図4よりその発光はダークスポットも少なく安定していることが観察できている。一方、実施例1と同じ基板と同じ封止構造を用いた従来の有機電界発光素子である素子53の発光の経時変化(
図5)では明らかにダークスポットの成長が観察され、連続的に安定した使用が難しいことを示している。9時間までの測定ではあるが、5時間の時点で既にダークスポットは大きく成長しており、数時間の使用さえ困難であることが推察される。このことから、曲面への追随性を備えながら、連続的に安定に光を使用するためには、本発明の有機電界発光素子の部材や厚みを含めた構成が好適であることが示された。
また、実施例2の結果である
図6より、さらに薄い素子厚でも実施例1と同様に使用上問題ない程度の効率で発光が得られていることがわかる。さらに、経時変化においても、実施例と同様の結果を得ている。このことから、さらに薄い、追随性が高く、密着性も高い領域においても、使用可能であることが示された。
【符号の説明】
【0072】
2:陰極
3:金属酸化物層
4:有機バッファ層
5:電子輸送層
6:発光層
7:正孔輸送層
8:正孔注入層
9:陽極
10:封止層
11:電子注入層
101:1.5μm基板
102:0.1μm基板