(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】ペリクル及びペリクルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20230417BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20230417BHJP
【FI】
G03F1/62
G03F1/84
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021068842
(22)【出願日】2021-04-15
(62)【分割の表示】P 2018531190の分割
【原出願日】2016-12-02
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴレス,デイビッド,フェルディナンド
(72)【発明者】
【氏名】アベッグ,エリック,アキレス
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクセン,オーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウンス,デルク,ゼルヴァーティウス,ゲートルダ
(72)【発明者】
【氏名】ゴービル,プラディープ ケー
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ナザレヴィッチ,マキシム,アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ノッテンブーム,アーノウド,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ ケルクホフ,マーカス,アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ザンデ,ウィレム,ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ツヴォル,ピーター-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】フェルメーレン,ヨハネス,ペトラス,マルチヌス,ベルナルドス
(72)【発明者】
【氏名】フォールトハイゼン,ウィレム-ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウィレイ,ジェイムス,ノーマン
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-195355(JP,A)
【文献】特開平07-271016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045262(US,A1)
【文献】特開2005-165141(JP,A)
【文献】特開2005-309129(JP,A)
【文献】特開2010-045283(JP,A)
【文献】特開2010-186167(JP,A)
【文献】特開2011-022308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 1/62
G03F 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルアセンブリであって、
ペリクルを支持するように構成されたフレームと、前記フレームに取り付けられたペリクルと、前記ペリクルの張力を調整するように構成された張力制御装置と、を備え、
前記張力制御装置は、前記フレームの少なくとも一部分を加熱して前記ペリクルの張力を増加させるように構成された少なくとも1つのヒータを備え、
前記フレームは、第1のヤング率及び第1の熱膨張係数を有する第1の層と、前記第1のヤング率より高い第2のヤング率及び前記第1の熱膨張係数より高い第2の熱膨張係数を有する第2の層と、を有し、
前記第2の層は、前記第1の層より前記ペリクルに近接して配置される、ペリクルアセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのヒータは、前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項1に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項3】
前記ペリクルは、第1のヤング率及び第1の熱膨張係数を有する第1の層と、前記第1のヤング率より高い第2のヤング率及び前記第1の熱膨張係数より高い第2の熱膨張係数を有する第2の層と、を備え、
前記第1の層は、前記第2の層より前記フレームに近接して配置される、請求項2に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項4】
前記ペリクルは、前記ペリクルの厚さが前記ペリクルの残りの部分の厚さより大きい少なくとも1つの領域を備える、請求項2又は3に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの領域は、前記ペリクルの縁部に近接している、請求項4に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの領域において、前記第2の層の厚さは前記ペリクルの前記残りの部分の前記第2の層の厚さより大きい、請求項4又は5に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのヒータは、前記ペリクルの前記残りの部分の厚さより大きい厚さを有する前記ペリクルの前記少なくとも1つの領域を局所的に加熱するように構成される、請求項4から6の何れか一項に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項8】
前記ヒータは、抵抗加熱によって前記ペリクルアセンブリの少なくとも1つのコンポーネントを加熱するように構成される、請求項1から7の何れか一項に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項9】
前記張力制御装置は、前記フレームを伸長させ、前記ペリクルの張力を増加させるために前記フレームに力を印加するように構成された少なくとも1つのアクチュエータを備える、請求項1から8の何れか一項に記載のペリクルアセンブリ。
【請求項10】
フレームによって保持されたペリクルをモニタし、前記ペリクルの損傷を検出するように構成されたセンサと、
前記ペリクルの損傷の検出に反応して、前記ペリクルの張力を低下させることによって、前記ペリクルのさらなる損傷を抑制するように構成された張力制御デバイスと、を備え、
前記張力制御デバイスは、前記フレームの少なくとも一部分を加熱して前記ペリクルの張力を増加させるように構成された少なくとも1つのヒータを備え、
前記フレームは、第1のヤング率及び第1の熱膨張係数を有する第1の層と、前記第1のヤング率より高い第2のヤング率及び前記第1の熱膨張係数より高い第2の熱膨張係数を有する第2の層と、を有し、
前記第2の層は、前記第1の層より前記ペリクルに近接して配置される、デブリ低減装置。
【請求項11】
前記張力制御デバイスは、前記ペリクルを保持するフレームを圧迫することによって、前記フレームによって保持された前記ペリクルの張力を低下させるように構成された複数のアクチュエータを備える、請求項10に記載のデブリ低減装置。
【請求項12】
前記張力制御デバイスは、前記ペリクルの温度を上昇させることによって、前記ペリクルの張力を低下させるように構成された温度制御デバイスを備える、請求項10に記載のデブリ低減装置。
【請求項13】
前記温度制御デバイスは、抵抗加熱によって前記ペリクルの温度を上昇させるように構成される、請求項12に記載のデブリ低減装置。
【請求項14】
前記温度制御デバイスは、前記ペリクルの温度を上昇させるために、前記ペリクルの全体又は一部を照明するように構成された放射源を備える、請求項12に記載のデブリ低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2015年12月17日に出願された欧州出願15200767.0、2016年4月27日に出願された米国出願62/328,291、及び2016年7月22日に出願された米国出願62/365,524の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明はペリクル及びペリクルアセンブリに関する。ペリクルアセンブリは、ペリクルと、ペリクルを支持するフレームと、を備えてよい。ペリクルは、リソグラフィ装置のパターニングデバイスでの使用に好適であってよい。本発明は、特にEUVリソグラフィ装置及びEUVリソグラフィツールとの関連で使用されるが、これだけに限らない。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層上にパターニングデバイス(例えば、マスク)からのパターンを投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するためにリソグラフィ装置により使用される放射の波長は、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を使用するリソグラフィ装置を使用して、従来の(例えば、193nmの波長を有する電磁放射を使用することができる)リソグラフィ装置より小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] パターンはパターニングデバイスを使用してリソグラフィ装置の放射ビームに付与することができる。パターニングデバイスは、ペリクルによって粒子汚染から保護することができる。ペリクルはペリクルフレームによって支持することができる。
【0006】
[0006] リソグラフィにペリクルを使用することは周知であり十分に確立されている。DUVリソグラフィ装置における典型的なペリクルは、パターニングデバイスから離れた所に位置する薄膜であり、使用時にリソグラフィ装置の焦点面外にある。ペリクルはリソグラフィ装置の焦点面外にあるため、ペリクルに付着する汚染粒子はリソグラフィ装置の焦点外にある。その結果、汚染粒子の像は基板上に投影されない。もしペリクルが存在しなければ、パターニングデバイスに付着した汚染粒子が基板上に投影され、投影パターンに欠陥が導入される。
【0007】
[0007] EUVリソグラフィ装置においてペリクルを使用することが望まれる。EUVリソグラフィは、一般的に真空中で行われる点、及びパターニングデバイスが一般的に透過型ではなく反射型である点でDUVリソグラフィと異なる。
【0008】
[0008] 従来技術に関連する問題を克服又は緩和するペリクル及びペリクルアセンブリを提供することが望まれる。本明細書に記載の本発明の実施形態は、EUVリソグラフィ装置に使用することができる。本発明の実施形態は、DUVリソグラフィ装置又は別の形態のリソグラフィ装置にも使用することができる。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 本発明の第1の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルであって、リソグラフィ装置での通常の使用中に、ペリクルの残りの領域が破損する前に優先的に破損するように構成された少なくとも1つの破損領域を備えるペリクルが提供される。
【0010】
[0010] 有利には、ペリクルに破損領域を備えることで、ペリクル上で最初に破損する場所を予め設定することができる。ペリクルの破損領域は、ペリクルの周辺部分より構造的に弱いものとすることができる。破損領域は、ペリクルデブリによる周辺環境の汚染を抑制する制御された形でペリクルが破損するように構成することができる。付加的又は代替的に、破損領域は、差し迫ったペリクルの故障の兆しをモニタ可能なペリクルの領域を提供する。破損領域の破損は、ペリクルの残りの部分が間もなく故障することを示すことができ、検出されると、ペリクルを動作から除外するように作用することができる。
【0011】
[0011] 少なくとも1つの破損領域は、ペリクルの周辺領域と比較して厚さの薄いペリクルの領域を含むことができる。
【0012】
[0012] 少なくとも1つの破損領域は、ペリクルの残りの領域と比較して破損領域を構造的に弱化するために、放射に露光されたペリクルの領域を含むことができる。
【0013】
[0013] 少なくとも1つの破損領域は、ペリクルの1つ以上の孔及び/又はクラックが形成された領域を含むことができる。
【0014】
[0014] 少なくとも1つの破損領域は、ペリクルの残りの領域と比較して破損領域を構造的に弱化するように構成された物質に暴露されたペリクルの領域を含むことができる。
【0015】
[0015] ペリクルは、破損領域と隣接して配置された強化領域をさらに含み、強化領域はペリクルの残りの領域と比較して大きい厚さを有する。
【0016】
[0016] 強化領域はペリクル上に曲線形状を描くことができる。
【0017】
[0017] 少なくとも1つの破損領域は、ペリクルの残りの領域が破損する前に優先的に破損するように構成された破砕線を含むことができ、破砕線に沿ってペリクル内のクラックが形成される。
【0018】
[0018] ペリクルは、少なくとも1つの破損領域をモニタし、少なくとも1つの破損領域の破損を検出するように構成されたセンサをさらに備えることができる。
【0019】
[0019] 本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるペリクルと、ペリクルを支持するように構成されたフレームと、を備え、ペリクルは、フレームによって支持された外周部分と、外周部分によって囲まれた支持されない部分と、を含む、ペリクルアセンブリが提供される。
【0020】
[0020] 破砕線はペリクルのフレームによって支持された外周部分のセクション間に延在することができる。
【0021】
[0021] 破砕線はペリクルの支持されない部分の縁部に位置する部分を囲むことができる。
【0022】
[0022] ペリクルの強化部分の一部はフレームと接触することができる。
【0023】
[0023] 強化部分の厚さを大きくすることで、強化部分をペリクルの他の部分より高い温度まで加熱する。ペリクルの強化部分とフレームの接触は、ペリクルからの及びフレームへの熱伝導を可能にする強化部分とフレームの熱的接続をもたらす。
【0024】
[0024] 少なくとも1つの破損領域は、ペリクルのフレームによって支持された外周部分の一部を形成することができる。
【0025】
[0025] 本発明の第3の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルアセンブリであって、ペリクルを支持するように構成されたフレームと、フレームに取り付けられたペリクルと、を備え、ペリクルは第1の張力を有する第1の層と第2の張力を有する第2の層とを少なくとも含み、第1の張力は、ペリクルが破損した場合に、第1の張力と第2の張力の差によってペリクルが巻き上がるように第2の張力より高いペリクルアセンブリが提供される。
【0026】
[0026] 有利には、破損するときに自ら巻き上がるペリクルは、その中にペリクルデブリを封じ込める。これによってペリクルデブリによる周囲環境の汚染が減る。
【0027】
[0027] ペリクルは、リソグラフィ装置での通常の使用中に、ペリクルの残りの領域が破損する前に優先的に破損するように構成された少なくとも1つの破損領域を含むことができ、少なくとも1つの破損領域は、ペリクルの少なくとも1つの破損領域における破損によって、ペリクルが確実に巻き上がるように配置される。
【0028】
[0028] 本発明の第4の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルであって、少なくとも1つの導電層と、導電層との電気接続を確立できることによって、導電層の接点間の電気抵抗を測定することを可能にする複数の電気接点と、を備えるペリクルが提供される。
【0029】
[0029] 本発明の第5の態様によれば、第4の態様によるペリクルと、ペリクル上の電気接点の少なくとも2つと接続され、電気接点間の抵抗を測定するように構成されたセンサと、を備えたペリクル故障検出装置が提供される。
【0030】
[0030] ペリクルの導電層は、ペリクルの温度を調節するためにペリクルから熱エネルギーを放出するように構成することができる。導電層は経時的に酸化する可能性がある。導電層の酸化によって、層の放射率が低下し、ひいてはペリクルから熱エネルギーを放出する効率が悪くなる。導電層の酸化はまた、層の電気抵抗を増大させる。センサは、層の酸化を示す導電層の電気抵抗の増大及び層の放射率の低下を検出することができる。導電層の電気抵抗が閾値を超えて増大する場合は、ペリクルはもはや使用に適さない可能性があり、交換することができる。
【0031】
[0031] 導電層の電気抵抗の増大は、付加的又は代替的にペリクル内のクラックを示すことができる。したがって、導電層の抵抗をセンサによってモニタすることで、ペリクル内のクラックを特定できる可能性がある。
【0032】
[0032] 本発明の第6の態様によれば、ペリクルフレーム上に位置するペリクルと関連する特性の変化を検出するように配置されたセンサアセンブリを備えたペリクル故障検出装置であって、ペリクルと関連する特性の変化はペリクルの損傷を示すペリクル故障検出装置が提供される。
【0033】
[0033] センサアセンブリは、ペリクルによる放射の光透過又は光反射の変化を検出するように構成することができる。
【0034】
[0034] センサアセンブリは、放射がペリクルに沿って透過されるように放射ビームをペリクルに結合するように構成された放射源と、反射されてペリクルを通って戻る放射を受ける、又はペリクルを透過された放射を受けるように構成された放射センサと、を備えることができ、センサが受けた反射された又は透過された放射の変化はペリクルの損傷を示す。
【0035】
[0035] センサアセンブリは、ペリクルによる音波の音響透過又は音響反射の変化を検出するように構成することができる。
【0036】
[0036] センサアセンブリは、ペリクルに音波を発生させるように構成されたトランスデューサと、反射されてペリクルを通って戻る音波を受ける、又はペリクルを透過された音波を受けるように構成されたセンサと、を備えることができ、センサが受けた反射された又は透過された音波の変化はペリクルの損傷を示す。
【0037】
[0037] センサアセンブリは、ペリクルが受ける応力を測定するように構成された応力センサを備えることができる。
【0038】
[0038] センサはペリクルが受ける歪みを測定するように構成された歪みゲージを備えることができる。
【0039】
[0039] 本発明の第7の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルであって、第1の延性を有する第1の層と、第2の延性を有する第2の層と、第3の延性を有する第3の層と、を含み、第3の層は第1の層と第2の層の間に位置し、第3の延性は第1の延性より小さく、かつ第2の延性より小さいペリクルが提供される。
【0040】
[0040] 第3の層は、第1及び第2の層の延性より小さい延性を有する。したがって、第3の層は、第1及び第2の層と比較して比較的脆い。ペリクルが引張応力下に置かれると、第3の層は、第1及び第2の層が破損する前に破損することになる。第3の層が破損することで、ペリクルが致命的に破損する前にエネルギーが散逸する。第1及び第2の層は、第3の層が破損した後、さらなるエネルギーの散逸を招くさらなる歪みを受ける可能性がある。第3の層は第1の層と第2の層の間に位置するため、有利には、第3の層の破片は第1及び第2の層によって封じ込められ、したがって、周囲環境を汚染することはない。
【0041】
[0041] 本発明の第8の態様によれば、リソグラフィ装置のペリクルに近接して配置されたデブリステアリングデバイスを備えるデブリ低減装置であって、デブリステアリングデバイスは、ペリクルの破損から生じるデブリを好ましい方向に誘導するように構成されるデブリ低減装置が提供される。
【0042】
[0042] デブリ低減装置は、ペリクルをモニタし、ペリクルの破損を検出するように構成されたセンサをさらに備え、デブリステアリングデバイスは、ペリクルの破損の検出に反応し、ペリクルの破損から生じるデブリを好ましい方向に誘導するように構成される。
【0043】
[0043] デブリステアリングデバイスは、ペリクルに近接して配置され、内部がペリクルが保持される圧力より低い圧力に保持される閉鎖チャンバと、ペリクルの破損の検出に反応してチャンバを開くことによって、破損したペリクルから生じたデブリがチャンバに吸引されるように構成されたアクチュエータと、を備えることができる。
【0044】
[0044] デブリステアリングデバイスは、ペリクルに近接して配置され、内部がペリクルが保持される圧力より高い圧力に保持される閉鎖チャンバと、ペリクルの破損の検出に反応してチャンバを開くことによって、破損したペリクルから生じたデブリがチャンバから優先方向に吹き飛ばされるように構成されたアクチュエータとを備えることができる。
【0045】
[0045] デブリステアリングデバイスは、ペリクルに近接して配置された荷電表面を備えることができ、ペリクルが破損した場合に、ペリクルからのデブリが静電気引力によって荷電表面に向けて誘導される。
【0046】
[0046] 本発明の第9の態様によれば、フレームによって保持されたペリクルをモニタし、ペリクルの損傷を検出するように構成されたセンサと、ペリクルの損傷の検出に反応して、ペリクルの張力を低下させることによって、ペリクルのさらなる損傷を抑制するように構成された張力制御デバイスと、を備えるデブリ低減装置が提供される。
【0047】
[0047] 張力制御デバイスは、ペリクルを保持するフレームを圧迫することによって、フレームによって保持されたペリクルの張力を低下させるように構成された複数のアクチュエータを備えることができる。
【0048】
[0048] 張力制御デバイスは、ペリクルの温度を上昇させることによって、ペリクルの張力を低下させるように構成された温度制御デバイスを備えることができる。
【0049】
[0049] 温度制御デバイスは、抵抗加熱によってペリクルの温度を上昇させるように構成することができる。
【0050】
[0050] 温度制御デバイスは、ペリクルの温度を上昇させるために、ペリクルの全体又は一部を照明するように構成された放射源を備えることができる。
【0051】
[0051] 本発明の第10の態様によれば、ペリクルの懸架領域を囲むようにペリクルをペリクルの外周部分で支持するように構成されたペリクルフレームであって、ペリクルの懸架領域の対向する縁部に配置され、ペリクルの懸架領域の縁部に沿って第1の方向に延在する第1の側部対と、ペリクルの懸架領域の対向する縁部に配置され、ペリクルの懸架領域の縁部に沿って、第1の方向と実質的に垂直な第2の方向に延在する第2の側部対と、を備え、ペリクルフレームによって支持されたペリクルが、ペリクルの第1の方向の初期張力より小さい第2の方向の初期張力を有するように、第1の側部対は、第2の側部対の第1の方向のコンプライアンスより大きい第2の方向のコンプライアンスを有するように構成されるペリクルフレームが提供される。
【0052】
[0052] 第1の側部対は、第2の側部対の第1の方向の厚さより小さい第2の方向の厚さをそれぞれ有することができる。
【0053】
[0053] 第1の側部対は、第1の側部対に沿って第1の方向に延在するスリットをそれぞれ含むことができる。
【0054】
[0054] 本発明の第12の態様によれば、パターニングデバイスを保護するように配置されたペリクルの一部分を、放射ビームによって照明するように構成された放射源と、ペリクルから反射された放射ビームの一部分を検出するように配置されたセンサと、センサと通信し、センサにより行われた反射された放射の検出からペリクルの故障を検出するように構成されたコントローラと、を備えるペリクル故障検出装置が提供される。
【0055】
[0055] 有利には、ペリクル故障検出装置を使用して、ペリクルの故障を遠隔的にモニタすることができる。放射源は、リソグラフィ装置に設けられ、リソグラフィ露光を行う目的で使用される放射源とは別個のものとすることができる。放射源は、例えばレーザを含むことができる。放射源は、紫外線に関連する波長より長い波長を有する放射ビームを放出することができる。
【0056】
[0056] 放射源は、放射ビームが非法線入射角でペリクルに入射するように構成することができる。
【0057】
[0057] ペリクルを放射によって非法線入射角で照明することによって、反射される放射の位置は、放射がペリクルから反射されたのか、ペリクルの後ろに位置するパターニングデバイスから反射されたのかに依存する。したがって、ペリクルから反射される放射は、(反射された放射の位置に基づいて)パターニングデバイスから反射される放射と区別することができる。したがって、ペリクルから反射される放射は、パターニングデバイスから反射される放射とは独立して測定することができる。このような測定は、ペリクルの故障をペリクルから反射された放射の測定結果から検出できるようにする可能性がある。
【0058】
[0058] センサは、ペリクルからの放射ビームの拡散反射を検出するように配置することができる。
【0059】
[0059] センサは、ペリクルからの放射ビームの鏡面反射を検出するように配置することができる。
【0060】
[0060] コントローラは、ペリクルから反射された放射ビームの一部分の強度の、センサにより作成された測度が閾値を下回る場合に、ペリクルの故障を検出するように構成することができる。
【0061】
[0061] センサはさらに、センサのペリクルから反射された放射ビームの一部分と異なる位置に入射する、パターニングデバイスから反射された放射ビームの一部分を検出するように構成することができる。
【0062】
[0062] センサは、ペリクルから反射される放射を検出するように構成された第1のセンサ領域と、パターニングデバイスから反射される放射を検出するように構成された第2のセンサ領域と、を備えることができる。
【0063】
[0063] 本発明の第13の態様によれば、ペリクルによって保護されたパターニングデバイスの一部分を、ペリクルを透過する放射ビームによって照明するように構成された放射源と、ペリクルを透過した放射ビームの少なくとも一部分を受けて測定するように配置されたセンサ装置と、センサ装置と通信し、センサ装置が受けた放射の強度の測度が増加するときにペリクルの故障を検出するように構成されたコントローラと、を備えるペリクル故障検出装置が提供される。
【0064】
[0064] 放射源は、例えばEUV放射を放出することができる。放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成することができ、また、リソグラフィ露光を行う目的で他の形で使用することもできる。放射源により供給される放射は、照明システムを形成すると考えられ得る1つ以上の他のコンポーネントによって誘導されてパターニングデバイスに入射することができる。
【0065】
[0065] パターニングデバイスは、反射型フィデューシャルを備えることができ、センサ装置は、フィデューシャルから反射された放射ビームの一部分を測定するように構成することができる。
【0066】
[0066] センサ装置及びコントローラはさらに、フィデューシャルから反射された放射ビームの一部分に形成されたフィーチャのアライメントを測定するように構成することができる。
【0067】
[0067] センサ装置及びコントローラはさらに、フィデューシャルから反射された放射ビームの一部分の波面収差を測定するように構成することができる。
【0068】
[0068] 本発明の第14の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルであって、ペリクルは複数のターミネーションフィーチャを備え、ターミネーションフィーチャは、クラック先端を有するペリクル内のクラックがターミネーションフィーチャ内に伝播する場合に、クラック先端がクラック先端における応力の減少を経験するように構成されるペリクルが提供される。
【0069】
[0069] 有利には、ターミネーションフィーチャは、クラックのペリクル内の伝播を終了させることができる。これによってクラックがペリクルのさらなる部分に損傷を与えることを防止することができ、ペリクルの完全な故障(すなわちクラックが実質的にペリクル全体に延びること)を防止することができる。ターミネーションフィーチャを使用してクラックを終了させることによって、ペリクルデブリの生成を抑制することができる。したがって有利には、ターミネーションフィーチャは、ペリクルが故障した場合のペリクルデブリによる周辺化合物の汚染を減らす。
【0070】
[0070] ターミネーションフィーチャは、ペリクルが張力下に置かれるとき、ターミネーションフィーチャに生じる応力が、ペリクルのターミネーションフィーチャの外側の領域に生じる応力より小さくなるように構成することができる。
【0071】
[0071] ターミネーションフィーチャは、実質的に規則的なパターンで配置することができる。
【0072】
[0072] ターミネーションフィーチャは、ペリクルに形成された孔を含むことができる。
【0073】
[0073] 孔は実質的に円形の孔とすることができる。
【0074】
[0074] 孔は約10ナノメートルより大きい横寸法を有することができる。
【0075】
[0075] 横寸法は、例えば孔の半径とすることができる。
【0076】
[0076] 孔は約20ナノメートルより大きい横寸法を有することができる。
【0077】
[0077] ターミネーションフィーチャは、ドーピング材料でドープされたペリクルのドープ領域を含むことができる。
【0078】
[0078] 一部の実施形態では、ドーピング材料はp型ドーパントとすることができる。一部の実施形態では、ドーピング材料はs型ドーパントとすることができる。
【0079】
[0079] 一部の実施形態では、ペリクルはシリコン(例えばポリシリコン膜)を含むことができる。このような実施形態では、ドーピング材料は、例えばホウ素、アルミニウム、窒素、ガリウム及び/又はインジウムの1つ以上を含むドーパントなどのp型ドーパントとすることができる。付加的又は代替的に、ドーピング材料は、例えばリン、ヒ素、アンチモン、ビスマス及び/又はリチウムを含むドーパントなどのn型ドーパントとすることができる。
【0080】
[0080] 一部の実施形態では、ペリクルはグラフェンを含むことができる。このような実施形態では、ドーピング材料は、ホウ素、窒素、チタン、クロム、プラチナ、コバルト、インジウム及び/又は硫黄の1つ以上を含むことができる。付加的又は代替的に、ドーピング材料は、有機分子、酸、塩基及び/又はハロゲン化物の1つ以上を含むことができる。一部の実施形態では、ドーピング材料は、例えば銅、ニッケル、ルテニウム、モリブデン及び/又はプラチナなどの遷移金属を含むことができる。
【0081】
[0081] ドーピング材料はホウ素を含むことができる。
【0082】
[0082] ドープ領域は実質的に円形とすることができる。
【0083】
[0083] ターミネーションフィーチャは、ドーピング材料でドープされたドープ領域の複数のストライプを備えることができる。
【0084】
[0084] ドープ領域のストライプは互いに実質的に平行に配置することができる。
【0085】
[0085] ドープ領域は約10ナノメートルより大きい横寸法を有することができる。
【0086】
[0086] ドープ領域は約20ナノメートルより大きい横寸法を有することができる。
【0087】
[0087] ペリクルは、ドーピング材料でドープされたペリクルの境界部分を含むターミネーションフィーチャを備えることができ、境界部分は、ペリクルフレームに懸架されるように構成された領域であるペリクルの懸架領域の外周に配置される。
【0088】
[0088] 本発明の第15の態様によれば、リソグラフィ装置のロードステージであって、ペリクルによって保護されたパターニングデバイスを収容するように構成されたチャンバと、チャンバ内に位置するペリクルの少なくとも一部分の位置を測定するように構成されたセンサ装置と、チャンバ内部の圧力を変化させるように構成された圧力変化装置と、を備え、圧力変化装置は、チャンバ内部の圧力を変化させる速度を、ペリクルの少なくとも一部分の位置の測定結果に応じて制御するように構成されるロードステージが提供される。
【0089】
[0089] 圧力変化装置は、チャンバ内部の圧力を変化させる速度を、ペリクルの位置がペリクルの位置の望ましい範囲の外にあることを示す測定結果に応じて低下させるように構成することができる。
【0090】
[0090] ペリクルの位置の望ましい範囲は、パターニングデバイスからの最小距離とパターニングデバイスからの最大距離の間にあるものとすることができる。
【0091】
[0091] センサ装置は、ペリクルの少なくとも一部分を放射で照明するように構成された放射源と、ペリクルから反射された放射を受けて測定するように配置された放射センサと、を備えることができる。
【0092】
[0092] 放射源は、ペリクルを非法線入射角で照明するように構成することができ、放射センサは、反射された放射が放射センサに入射する位置を測定するように構成される。
【0093】
[0093] センサ装置は共焦点結像センサを備えることができる。
【0094】
[0094] センサ装置は、チャンバの外側に配置され、チャンバは、放射がチャンバの中に及びチャンバから外に伝播できるように構成されたウィンドウを備えることができる。
【0095】
[0095] 圧力変化装置は、パターニングデバイスをリソグラフィ装置にロードするとき、チャンバを真空圧力状態にポンプで引くように構成することができる。
【0096】
[0096] 圧力変化装置は、パターニングデバイスをリソグラフィ装置からアンロードするとき、チャンバを大気圧状態にベントするように構成することができる。
【0097】
[0097] ロードステージは、ペリクルの位置の変化をチャンバ内部の圧力の関数として記録するように構成されたコントローラをさらに備えることができる。
【0098】
[0098] コントローラはさらに、チャンバ内部の圧力の関数として記録されたペリクルの位置の変化からペリクルの疲労を検出するように構成することができる。
【0099】
[0099] 本発明の第16の態様によれば、ペリクルを処理する方法であって、ペリクルの少なくとも一部分を、ペリクルの延性-脆性遷移温度より高い温度まで加熱すること、及び、ペリクルをペリクルの加熱された部分の少なくとも一部分を塑性変形させるのに十分な張力下に置くこと、を含む方法が提供される。
【0100】
[00100] ペリクルの少なくとも一部分を加熱することは、ペリクルの一部の部分のみを局所的に加熱することを含むことができる。
【0101】
[00101] ペリクルの少なくとも一部分を加熱することは、ペリクルが取り付けられたペリクルフレームを加熱することを含むことができる。
【0102】
[00102] ペリクルの少なくとも一部分を加熱することは、ペリクルの少なくとも一部分を放射で照明することを含むことができる。
【0103】
[00103] ペリクルの少なくとも一部分を加熱することは、ペリクルの少なくとも一部分をレーザビームで照明することを含むことができる。
【0104】
[00104] ペリクルを張力下に置くことは、ペリクルをペリクルフレームに懸架することを含むことができる。
【0105】
[00105] ペリクルを張力下に置くことはさらに、ペリクルにわたる圧力差を生み出すことを含む。
【0106】
[00106] 本発明の第17の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルアセンブリであって、ペリクルを支持するように構成されたフレームと、フレームに取り付けられ、少なくとも1つの導電層を備えたペリクルと、少なくとも1つの導電層に接続され、少なくとも1つの導電層に電流を発生させるように構成された電流源と、を備え、電流源は、ペリクルの温度が閾値温度より高くなるように抵抗加熱によってペリクルを加熱する電流を発生させるように構成されるペリクルアセンブリが提供される。
【0107】
[00107] 閾値温度は約摂氏120°とすることができる。
【0108】
[00108] 電流源は、少なくとも1つの導電層に実質的に直流の電流を発生させるように構成することができる。
【0109】
[00109] 本発明の第18の態様によれば、リソグラフィ装置のパターニングデバイスとの使用に適したペリクルアセンブリであって、ペリクルを支持するように構成されたフレームと、フレームに取り付けられたペリクルと、ペリクルの張力を調整するように構成された張力制御装置と、備えたペリクルアセンブリが提供される。
【0110】
[00110] 張力制御装置は、ペリクルアセンブリのコンポーネントを加熱するように構成された少なくとも1つのヒータを備えることができ、ペリクルアセンブリのコンポーネントを加熱することはペリクルの張力を増加させる。
【0111】
[00111] 少なくとも1つのヒータは、ペリクルフレームの少なくとも一部分を加熱するように構成することができる。ヒータはペリクルフレームの各側に設けることができる。
【0112】
[00112] ペリクルフレームは、第1のヤング率及び第1の熱膨張係数を有する第1の層と、第1のヤング率より高い第2のヤング率及び第1の熱膨張係数より高い第2の熱膨張係数を有する第2の層と、を備えることができ、第2の層は第1の層よりペリクルに近接して配置される。
【0113】
[00113] 少なくとも1つのヒータは、ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成することができる。
【0114】
[00114] ペリクルは、第1のヤング率及び第1の熱膨張係数を有する第1の層と、第1のヤング率より高い第2のヤング率及び第1の熱膨張係数より高い第2の熱膨張係数を有する第2の層と、を備えることができ、第1の層は第2の層よりペリクルフレームに近接して配置される。
【0115】
[00115] ペリクルは、ペリクルの厚さがペリクルの残りの部分の厚さより大きい少なくとも1つの領域を含むことができる。
【0116】
[00116] 少なくとも1つの領域は、ペリクルの縁部に近接しているものとすることができる。
【0117】
[00117] 少なくとも1つの領域において、第2の層の厚さはペリクルの残りの部分の第2の層の厚さより大きいものとすることができる。
【0118】
[00118] 少なくとも1つのヒータは、ペリクルの残りの部分の厚さより大きい厚さを有するペリクルの少なくとも1つの領域を局所的に加熱するように構成することができる。
【0119】
[00119] ヒータは、抵抗加熱によってペリクルアセンブリの少なくとも1つのコンポーネントを加熱するように構成することができる。
【0120】
[00120] 張力制御装置は、ペリクルフレームを伸長させ、ペリクルの張力を増加させるためにペリクルフレームに力を印加するように構成された少なくとも1つのアクチュエータを備えることができる。
【0121】
[00121] 本発明の第19の態様によれば、ペリクルを一時的に張力にさらすことを含む、ペリクルを強化する方法が提供される。
【0122】
[00122] ペリクルを張力に1秒未満の間さらすことができる。
【0123】
[00123] 張力は衝撃荷重として印加することができる。
【0124】
[00124] 本発明の異なる態様の特徴は、本発明の他の態様の特徴と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
[00125] 本発明の実施形態を、単なる例として添付の概略図を参照して以下に説明する。
【0126】
【
図1】リソグラフィ装置と放射源とを備えたリソグラフィシステムの概略図である。
【
図2】パターニングデバイス及びペリクルアセンブリの概略図である。
【
図3】本発明のある実施形態に係るペリクルの概略図である。
【
図4A】本発明のある実施形態に係るペリクルを形成するプロセスのステージを概略的に示す。
【
図4B】本発明のある実施形態に係るペリクルを形成するプロセスのステージを概略的に示す。
【
図4C】本発明のある実施形態に係るペリクルを形成するプロセスのステージを概略的に示す。
【
図4D】本発明のある実施形態に係るペリクルを形成するプロセスのステージを概略的に示す。
【
図5】ペリクルアセンブリ及びパターニングデバイスの概略図である。
【
図6】本発明のある実施形態に係るペリクルアセンブリの概略図である。
【
図7】ペリクルアセンブリのペリクルが破損した後の
図6のペリクルアセンブリの一部分を概略的に示す。
【
図8】本発明の代替的な実施形態に係るペリクルアセンブリの一部分を概略的に示す。
【
図9】本発明の別の代替的な実施形態に係るペリクルアセンブリの概略図である。
【
図10】本発明のさらに別の代替的な実施形態に係るペリクルアセンブリの概略図である。
【
図11】本発明のさらに別の代替的な実施形態に係るペリクルアセンブリの概略図である。
【
図12A】本発明の実施形態に係るペリクル故障検出装置の概略図である。
【
図12B】本発明の実施形態に係るペリクル故障検出装置の概略図である。
【
図12C】本発明の実施形態に係るペリクル故障検出装置の概略図である。
【
図12D】本発明の実施形態に係るペリクル故障検出装置の概略図である。
【
図13A】本発明のある実施形態に係るペリクルの概略図である。
【
図14】本発明のある実施形態に係るデブリ低減装置の概略図である。
【
図15】本発明の代替的な実施形態に係るデブリ低減装置の概略図である。
【
図16】本発明の別の代替的な実施形態に係るデブリ低減装置の概略図である。
【
図17A】本発明の実施形態に係るペリクルフレームの概略図である。
【
図17B】本発明の実施形態に係るペリクルフレームの概略図である。
【
図18】本発明のある実施形態に係るペリクル故障検出装置の概略図である。
【
図19】保護ケース内に位置し、本発明のある実施形態に係るペリクル故障検出装置によってモニタされるパターニングデバイス及びペリクルアセンブリの概略図である。
【
図20】本発明のある実施形態に係るペリクル故障検出装置を備えるリソグラフィ装置の概略図である。
【
図21】本発明のある実施形態に係る、ターミネーションフィーチャを含むペリクルの概略図である。
【
図23】クラックの長さの関数であるペリクル内のクラックの先端における応力を概略的に表す。
【
図24A】ペリクル内のクラックの伝播のステージを概略的に示す。
【
図24B】ペリクル内のクラックの伝播のステージを概略的に示す。
【
図25】本発明のある実施形態に係る、ドープ領域のストライプ状のターミネーションフィーチャを含むペリクルの概略図である。
【
図26】ドープ境界部を有するペリクルを含むペリクルアセンブリの概略図である。
【
図27】ペリクルフレームを加熱するように構成されたヒータを備えたペリクルアセンブリの概略図である。
【
図28A】ペリクルフレームの一部分を加熱する前のペリクルアセンブリの各部分を概略的に示す。
【
図28B】ペリクルフレームの一部分を加熱した後のペリクルアセンブリの各部分を概略的に示す。
【
図29A】ペリクルを加熱する前のペリクルアセンブリの概略図である。
【
図29B】ペリクルを加熱した後のペリクルアセンブリの概略図である。
【
図30】ペリクルを加熱した後の、代替的な実施形態に係るペリクルアセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0127】
[00126]
図1は、本発明の一実施形態に係るペリクルアセンブリ15を含むリソグラフィシステムを示している。このリソグラフィシステムは、放射源SOとリソグラフィ装置LAとを備える。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームBを生成するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMAを支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTと、を備える。照明システムILは、放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にこの放射ビームBを調整するように構成される。投影システムは、(パターニングデバイスMAによりパターン形成された)放射ビームBを基板W上に投影するように構成される。基板Wは、予め形成されたパターンを含むことができる。この場合、リソグラフィ装置は、パターン形成された放射ビームBを、基板W上に予め形成されたパターンに対して位置合わせする。
【0128】
[00127] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSは、全て外部環境から隔離できるように構築及び配置することができる。大気圧未満の圧力のガス(例えば、水素)を放射源SO内に提供することができる。照明システムIL及び/又は投影システムPS内には、真空を提供することができる。照明システムIL及び/又は投影システムPS内には、大気圧を十分に下回る圧力の少量のガス(例えば、水素)を提供することができる。
【0129】
[00128]
図1に示す放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれることがあるタイプのものである。例えばCO2レーザであってもよいレーザ1は、燃料放出器3から供給されるスズ(Sn)などの燃料に、レーザビーム2を介してエネルギーを付与するように配置される。以下の説明ではスズについて言及するが、任意の好適な燃料を使用することができる。燃料は、例えば、液状であってもよく、例えば、金属又は合金であってもよい。燃料放出器3は、例えば小滴の形態のスズを、軌道に沿ってプラズマ形成領域4に向けて誘導するように構成されたノズルを備えることができる。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4のスズに入射する。スズにレーザエネルギーを付与することにより、プラズマ形成領域4にプラズマ7が生じる。EUV放射を含む放射は、プラズマのイオンの脱励起及び再結合中にプラズマ7から放出される。
【0130】
[00129] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ5(より一般的に、法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)によって集光及び合焦される。コレクタ5は、EUV放射(例えば、13.5nmなどの所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置される多層構造を有することができる。コレクタ5は、2つの楕円焦点を有する楕円構成を有することができる。以下で考察されるように、第1焦点はプラズマ形成領域4にあってもよく、第2焦点は中間焦点6にあってもよい。
【0131】
[00130] レーザ生成プラズマ(LPP)源の他の実施形態では、コレクタ5は、EUV放射をかすめ入射角で受け、そのEUV放射を中間焦点に合焦させるように構成されたいわゆるかすめ入射コレクタであってもよい。かすめ入射コレクタは、例えば複数のかすめ入射リフレクタを備えた入れ子型コレクタであってもよい。かすめ入射リフレクタは、光軸Oを中心に軸方向に対称に配置することができる。
【0132】
[00131] 放射源SOは、1つ以上の汚染トラップ(図示せず)を含むことができる。例えば汚染トラップは、プラズマ形成領域4と放射コレクタ5の間に配置することができる。汚染トラップは、例えば回転フォイルトラップであってもよいか、又は汚染トラップの任意の他の適切な形態であってもよい。
【0133】
[00132] レーザ1は、放射源SOから分離することができる。この場合、レーザビーム2は、レーザ1から放射源SOへ、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダ、及び/又は他の光学系を含むビームデリバリシステム(図示せず)を使って送ることができる。レーザ1及び放射源SOは、合わせて放射システムとみなすことができる。
【0134】
[00133] コレクタ5により反射された放射は、放射ビームBを形成する。放射ビームBは点6で合焦され、プラズマ形成領域4の像を形成する。この像は、照明システムILの仮想放射源の役割を果たす。放射ビームBが合焦される点6は、中間焦点と呼ばれることがある。放射源SOは、中間焦点6が放射源の閉鎖構造9の開口部8に又は開口部8付近に位置付けられるように配置される。
【0135】
[00134] 放射ビームBは、放射源SOから、放射ビームを調整するように構成された照明システムIL内へと通過する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10とファセット瞳ミラーデバイス11とを備えることができる。ファセットフィールドミラーデバイス10とファセット瞳ミラーデバイス11はともに、放射ビームBに所望の断面形状及び所望の角度分布を提供する。放射ビームBは、照明システムILを通過し、支持構造MTにより保持されるパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは、ペリクルフレーム17により定位置に保持されるペリクル19によって保護される。ペリクル19とペリクルフレーム17はともにペリクルアセンブリ15を形成する。(例えばマスクであってもよい)パターニングデバイスMAは、放射ビームBを反射し、放射ビームBにパターン形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを備えることができる。
【0136】
[00135] パターニングデバイスMAから反射した後、パターン形成された放射ビームBは投影システムPSに入射する。投影システムは、基板テーブルWTに保持された基板W上に放射ビームBを投影するように構成された複数のミラーを備える。投影システムPSは、放射ビームに縮小係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャより小さいフィーチャを有する像を形成することができる。例えば縮小係数4を適用することができる。
図1では投影システムPSは2つのミラーを有しているが、投影システムは、任意の数のミラー(例えば、6個のミラー)を備えることができる。
【0137】
[00136] リソグラフィ装置は、例えば、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付与されたパターンを基板W上に投影する(すなわち、動的露光)スキャンモードで使用することができる。支持構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの縮小及び像反転特性により決定することができる。基板Wに入射するパターン形成された放射ビームは放射バンドを含むことができる。この放射バンドは、露光スリットと呼ばれることがある。スキャン露光中、基板テーブルWT及び支持構造MTは、この露光スリットが基板Wの露光フィールド上を進むように動作することができる。
【0138】
[00137]
図1に示した放射源SO及び/又はリソグラフィ装置は、図示されていないコンポーネントを備えることができる。例えば、放射源SOにスペクトルフィルタを設けることができる。スペクトルフィルタは、EUV放射に対しては実質的に透過的であるが、赤外線放射などの他の放射波長を実質的にブロックするものであってもよい。
【0139】
[00138] リソグラフィシステムの他の実施形態では、放射源SOは他の形態を取ることができる。例えば、代替的な実施形態では、放射源SOは1つ以上の自由電子レーザを含むことができる。1つ以上の自由電子レーザは、1つ以上のリソグラフィ装置に供給できるEUV放射を放出するように構成することができる。
【0140】
[00139] 以上で簡単に説明したように、ペリクルアセンブリ15は、パターニングデバイスMAに隣接して設けられたペリクル19を備える。ペリクル19は放射ビームBの経路に設けられ、その結果、放射ビームBが照明システムILからパターニングデバイスMAに近づくときと、パターニングデバイスMAにより投影システムPSへ反射されるときのいずれの場合にも放射ビームBはペリクル19を通過する。ペリクル19は(少量のEUV放射を吸収するが)EUV放射に対して実質的に透明な薄膜を含む。ペリクル19はパターニングデバイスMAを粒子汚染から保護する役割を果たす。ペリクル19は本明細書ではEUV透明ペリクルと呼ばれることがある。
【0141】
[00140] リソグラフィ装置LA内部をクリーンな環境に維持するための努力がなされても、リソグラフィ装置LA内部に粒子が存在する可能性がある。ペリクル19がなければ、粒子がパターニングデバイスMA上に付着する可能性がある。パターニングデバイスMA上の粒子は、放射ビームBに付与されるパターン及び基板Wに転写されるパターンに不利な影響を及ぼすおそれがある。有利には、ペリクル19は、パターニングデバイスMA上に粒子が付着するのを防止するために、パターニングデバイスMAとリソグラフィ装置LA内の環境の間にバリアを提供する。
【0142】
[00141] ペリクル19は、ペリクル19の表面に入射する粒子が放射ビームBの焦点面内に存在しないようにパターニングデバイスMAから十分離れて配置される。このようにペリクル19とパターニングデバイスMAを分離することには、ペリクル19の表面上に粒子がある場合に放射ビームBにパターンを付与する程度を減らす働きがある。放射ビームB内に粒子が存在しても、その位置が放射ビームBの焦点面内でない(すなわち、パターニングデバイスMAの表面でない)場合には、粒子の像は基板Wの表面で合焦しないことが理解されるだろう。一部の実施形態では、ペリクル19とパターニングデバイスMAの間の間隔は、例えば2mm~3mm(例えば、約2.5mm)であってもよい。
【0143】
[00142]
図2は、ペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAを断面図でより詳細に概略的に示す。パターニングデバイスMAはパターン形成面24を有する。ペリクルフレーム17は、ペリクル19の外周部分でペリクル19を支持する。ペリクルフレーム17は、ペリクルフレームのパターニングデバイスMAへの取り外し可能な装着を可能にする(すなわち、ペリクルフレームのパターニングデバイスMAに対する装着及び取り外しを可能にする)ように構成された装着構造22を備えることができる。装着構造22は、パターニングデバイスMAに設けられた装着機構(図示せず)と係合するように構成される。装着機構は、例えばパターニングデバイスMAから延びる突起であってもよい。装着構造22は、例えば、突起と係合し、ペリクルフレーム17をパターニングデバイスMAに固定するロック部材を含むことができる。
【0144】
[00143] 複数の装着構造及び対応する装着機構を設けることができる。装着構造は、ペリクルフレーム17周りに(例えばフレームの一方の側に2個とフレームの反対側に2個)分布させることができる。対応する装着機構は、パターニングデバイスMAの外周に分布させることができる。
【0145】
[00144]
図2には、汚染粒子26を概略的に示す。汚染粒子26はペリクル19に衝突した後、ペリクル19に保持される。ペリクル19は、汚染粒子をマスクMAのパターン形成面24から十分離れた所に保持するため、汚染粒子はリソグラフィ装置LAによって基板上に結像されない。
【0146】
[00145] 本発明のある実施形態に係るペリクルアセンブリは、使用中に実質的に欠陥のない状態を保つ(マスクパターンがペリクルによって保護される)(パターニングデバイス上の)マスクパターンを提供できる可能性がある。一部の実施形態では、ペリクルとマスクの間の空間にガスを流出入させることができる間隔を、ペリクルフレームとマスクの間に(例えばスリットの形で)設けることができる。これによって、ペリクル19に損傷を与えることなくマスクアセンブリのポンプダウン及びベントを行うことが可能になる。
【0147】
[00146]
図3は、ペリクル19の断面をより詳細に概略的に示す。ペリクル19は、複数の層31a~31dから形成される薄膜を含む。
図3に示す実施形態では、ペリクルは4つの層31a~31dを含む。ただし、他の実施形態では、ペリクル19は4つより多い又は少ない層を含んでよい。説明を簡単にするために、
図3に示す層31a~31dの厚さはペリクル19の幅に対して誇張されている。したがって、
図3に示す層31a~31dは、層31a~31dの縮尺表示ではない。
【0148】
[00147] ペリクル19は主膜層31cを含む。主膜層の厚さは、(
図3に概略的に表されているように)ペリクル19を形成する他の層31a、31b、31dのそれぞれの厚さより大きい。主膜層31cは、ポリシリコン(pSi)膜などの材料を含んでよい。ポリシリコン(pSi)膜は、EUV放射に対して実質的に透明であることから、EUVリソグラフィ装置での使用に適している。主膜層31cは、およそ40nmのオーダーの厚さを有してよい。
【0149】
[00148] 主膜層31cは、代替的に、例えばグラフェン、シリセンなどのEUV放射に対して実質的に透明な何らかの他の材料から形成することができる。本明細書におけるEUV放射に対して実質的に透明なペリクル又はペリクル層への言及は、ペリクル又はペリクル層が、入射EUV放射の少なくとも65%、好ましくは入射EUV放射の少なくとも80%、及びより好ましくは少なくとも90%を透過することを意味することが意図されている。
【0150】
[00149] ペリクル19はさらに、第1のキャッピング層31bと第2のキャッピング層31dとを含む。第1及び第2のキャッピング層31b、31dは、主膜層31cを封入するように主膜層31cの両側に位置する。キャッピング層31b、31dは、ペリクル19が暴露され、主膜層31cに接触する場合に主膜層31cに損傷を与えるおそれがある物質から主膜層31cを保護する働きをする。例えば、キャッピング層31b、31dは、主膜層31cに接触する場合に主膜層31cに損傷を与えるおそれがある、水素ラジカル、プラズマ、及び微量の酸素への暴露から主膜層31cを保護する働きをすることができる。したがって、キャッピング層31b、31dは、損傷性物質への暴露によってペリクル19に生じる損傷を減らす働きをすることができる。第1及び/又は第2のキャッピング層31b、31cは、例えばおよそ5nmのオーダーの厚さを有することができる。例えば第1及び/又は第2のキャッピング層31b、31cは、およそ3nmより大きい厚さを有することができる。第1及び/又は第2のキャッピング層31b、31cの厚さは、およそ7nm未満とすることができる。
【0151】
[00150] ペリクル19はさらに、放射層31aを含む。放射層は、比較的高い熱放射率を有する材料から形成することができる。例えば、放射層31aは金属(例えばルテニウムなどの遷移金属)から形成することができる。一部の実施形態では、放射層31aはグラフェンから形成することができる。放射層31aは、本発明の一部の実施形態では導電性であってもよく、代替的に導電層と呼ばれることがある。導電性の放射層31aは、例えば放射層31aの電気抵抗を測定するために、放射層31aと電気的に接続することができる。
【0152】
[00151] リソグラフィ装置LAでのペリクル19の使用中、ペリクルは放射(例えばEUV放射)に露光される。ペリクル19は、露光される放射(例えばEUV放射)に対して実質的に透明であるように構成されるが、放射の一部はペリクルに吸収され、ペリクルを加熱する働きをする。ペリクルの温度がペリクルに損傷を与え得る温度に達しないことが望ましい。放射層31aの比較的高い熱放射率は、ペリクル19からの熱エネルギーの放出を促進し、これによってペリクル19の温度が調節される。放射層31aは、ペリクル19の温度がペリクル19に重大な損傷を与え得る温度を超えずに、ペリクル19を(放射層を含まないペリクルと比べて)大きいパワーの放射に暴露することができる。
【0153】
[00152] ペリクル19の層31a~31dは、堆積プロセスによって形成することができる。例えば、第1の層を基板上に堆積させ、残りの層を第1の層の上に順次堆積させることができる。層を堆積させ得る好適な堆積プロセスは、化学蒸着(CVD)プロセスであってもよい。
【0154】
[00153]
図4は、ペリクルアセンブリ15を製造する方法を概略的に示している。まず
図4Aを参照すると、基板50(例えばシリコンウェーハ)上にペリクル19が形成される。例えば化学蒸着(CVD)を用いて基板50上に層(例えば
図3を参照して以上で説明した層31a~31d)を堆積させることができる。次に、基板50の矩形領域が、ペリクル19の外周部分55に残りの基板50により支持されたペリクル19を残してエッチング除去される。
【0155】
[00154] ペリクル19の外周部分55周りに基板50が存在することは、ペリクル19の緊張性を保つ硬性フレームを提供するため有利である。つまり、ペリクル19は、ペリクル19に張力が生じるように硬性フレームによって伸長される。ペリクル19は、形成されるやり方によって、作製されるときに(例えばCVDプロセス中に)ピンと張っている。もし基板50がペリクル19を支持する硬性フレームを提供せず、逆に柔軟性を有するフレームが提供されれば、ペリクル19の張力によってフレームが内側に曲がってしまう。このように内側に曲がる結果として、ペリクル19の張力が失われてしまう。方法の残りのステップによって、基板50の外側部分は、ペリクル19の張力が失われることなく除去することが可能になる。もしペリクル19の張力が失われるならば、ペリクル19の制御されないたるみが生じ、ペリクル19に皺が見られるだろう。
【0156】
[00155] ペリクル19の膜の外縁周りに延びる基板50によって支持されるペリクルの一部分は、ペリクルの外周部分55と呼ばれることがある。外周部分55の外縁は破線で示される。外周部分55の内縁はペリクル19を支持する基板50の内側部分によって画定され、
図4Aの実線で示される。
【0157】
[00156]
図4Bは、基板50にクランプされ得るカバーを概略的に示す。
図4Bの左側の図は、上から見た上面カバー54及び基板50を示す。
図4Bの右側の図は、断面で見た上面カバー54、基板50及び他のコンポーネントを示す。上面カバー54は、使用時のパターニングデバイスMAから最も遠いペリクル19の側の基板50に押し付けられる。
【0158】
[00157]
図4Bの右側の破線は、ペリクル19の位置を示す。この実施形態では、ペリクル19は基板50の底面にある。これは、基板50の矩形領域を除去するのに用いられたエッチングをウェーハの上面に適用したためである。このような実施形態では、ペリクル19と上面カバー54の間に隙間がある。したがって、上面カバー54は平らな内表面を有することができる。代替的な実施形態では、ペリクル19は基板50の上面にある(エッチングは基板の底面に適用された)。このような実施形態では、ペリクル19と上面カバー54の間に隙間がなく、したがって、上面カバーはペリクルのたるみを収容するリセスを含むことになる。
【0159】
[00158] 基板50の反対側にペリクルフレーム17及び底面カバー56を設ける。ペリクルフレーム17はペリクル19の外周部分55に固定される。フレーム17は、内側への湾曲に抵抗可能であり、したがって、ペリクル19の張力を保つことができるほど十分な硬性がある。フレーム17は、接着剤又は任意の他の適切な手段を使用して外周部分55に固定することができる。底面カバー56は基板50に押し付けられ、ペリクル19の底面とフレーム17をともに覆う。ペリクル19のフレーム17に接触していない部分は、支持されない部分と呼ばれることがある。
【0160】
[00159]
図4Bから、上面カバー54はペリクル19の上面を覆い、底面カバー56はペリクル19の底面を覆うことが見て取れる。このように、カバー54、56はその間に、ペリクルフレーム17に取り付けられたペリクル19を含む密封された空間を形成する。上面カバー54、底面カバー56及びフレーム17は、基板50に装着されるときにペリクル19の周囲に汚染物質が導入される可能性を最小限にするために、クリーンな状態で基板50に取り付けられる。実際、ペリクル19を作製し、次いでフレーム17及びカバー54、56を装着するプロセス全体は、クリーンな状態で実行することができる。
【0161】
[00160]
図4Cに概略的に示すように、基板50の底面カバー56を超えて延びる部分をトリミングするために切削ツール(例えば、フライス盤)が使用される。
図4Cでは、基板50の右側部分はすでに除去されている。基板50の上部は、矢印60で示す方向に切断することにより今まさに除去されるところである。次いで基板50の他の部分が除去される。ペリクル19は密封された環境内に封じ込められているため、このような基板50の切断にはペリクル19に汚染物質が導入されるリスクがない。
【0162】
[00161] 基板50の縁部がトリミングされると、残りのアセンブリは
図4Dに示すペリクル搬送アセンブリ62である。ペリクル搬送アセンブリ62は、ペリクル膜19と、基板50の一部分と、ペリクルフレーム17と、上面カバー54と、底面カバー56とを備える。ペリクル搬送アセンブリ62は、汚染物質が侵入できない密封された環境にペリクル19を保持する。フレーム17はペリクルを支持し、ペリクル19の張力を維持する。
【0163】
[00162]
図4に関連して説明及び図示されるステップは、ペリクルの張力を維持し、ペリクルの汚染を防止するペリクル搬送アセンブリ62を提供する。ペリクル搬送アセンブリ62は、例えば単一の場所で製造することができる。これは、例えば、ペリクルを第1の製造場所で製造した後に第2の場所に搬送して支持フレームに装着すること(第2の場所への搬送中に汚染物質が導入される可能性がある)と比較して有利である。
【0164】
[00163] ペリクル搬送アセンブリ62は、例えば、ペリクル製造場所からペリクルがリソグラフィ装置により使用されるパターニングデバイスMA(例えばマスク)に装着されるマスクショップに運ぶことができる。ペリクル19及びペリクルフレーム17はペリクル搬送アセンブリ62の残りの部分から取り除き、パターニングデバイスMAに取り付けることができる。ペリクルフレーム17の剛性はペリクル19の張力を維持し、(例えば
図2に見られるように)パターニングデバイスMAに近接して配置されたときにペリクル19をピンと張った状態に保持する。
【0165】
[00164]
図4を参照して以上で説明したように、ペリクル19は、ペリクル19に張力が生じるように形成される。ペリクル19の各層の張力は、基板50上への各層の堆積中に確立され、後にペリクル19に取り付けられるペリクルフレーム17によって維持される。ペリクル19の各層の張力は、例えば堆積プロセスの特性によって決定することができる。例えば、ペリクル19の層の(例えばCVDによる)堆積が行われる温度及び/又は圧力は、堆積層の張力を決定することができる。したがって、各層の張力は、層を堆積させる堆積プロセスの1つ以上の特性(例えば温度及び/又は圧力)を制御することによって制御することができる。
【0166】
[00165] ペリクル19の各層の張力はまた、層を堆積させる材料についての層の組成に依存する。例えば、ポリシリコン層上に堆積させたルテニウムを含む層は、同じ堆積条件(例えば堆積が行われる温度及び圧力)下でシリコン窒化物層上に堆積させたルテニウムを含む層と異なる張力を有することになる。したがって、ペリクル19の各層の張力は、付加的又は代替的に、ペリクル19の異なる層を形成する材料を選択することによって制御することができる。
【0167】
[00166] ペリクル19は、リソグラフィ装置LAでの使用中、ペリクル19に摩耗を引き起こす力及び/又は状態にさらされ、結果としてペリクル19が損傷するおそれがある。例えば、ペリクル19及び/又はペリクルフレーム17は、ペリクル19及び/又はペリクルフレーム17の膨張及び/又は収縮を引き起こす(例えば放射露光に起因する)温度変化を受ける可能性がある。ペリクル19及び/又はペリクルフレームの膨張及び/又は収縮によって、ペリクル19に追加の応力が加えられ、その結果、ペリクル19を摩耗させ、最終的にペリクル19に損傷を与える可能性がある。
【0168】
[00167] ペリクル19は、ペリクル19を化学変化させる可能性がある物質及び/又は状態に暴露される可能性もある。例えば、ペリクル19の放射層31aは時間をかけて酸化を受ける可能性がある。放射層31aの酸化によって放射層31aの放射率が低下し、放射層31aがペリクル19の温度を調節する効果が減少する可能性があり、これによってペリクル19がさらに損傷を受ける結果となる。リソグラフィ装置LAにおいて、ペリクル19は、ペリクル19を化学変化させ、かつ構造的に弱化させ得る水素ラジカルなどの物質に暴露される可能性がある。
【0169】
[00168] ペリクル19は、ペリクル19の耐用期間中、圧力変化を受ける可能性がある。例えば、ペリクル19は、リソグラフィ装置LAの外部の大気圧状態を経験する可能性があり、また、リソグラフィ装置LAでの使用のために真空圧状態にポンプダウンされる可能性がある。ペリクル19が経験する圧力状態の変化によって、ペリクル19はペリクル19にわたる圧力差を経験することになる可能性がある。ペリクル19にわたる圧力差はペリクル19に追加の応力を印加し、パターニングデバイスMA側に又はパターニングデバイスMAから離れる方にペリクル19を湾曲させる働きをする可能性がある。
【0170】
[00169] 以上で説明したプロセス及び/又は本明細書で説明しない他のプロセスは、ペリクル19が破損するまでペリクル19を徐々に弱化することになる。例えば、ペリクル19を破裂させ得る1つ以上のクラックがペリクル19内に生じる可能性がある。破損したペリクルはいくつかの破片になる可能性がある。ペリクルの破片は周囲環境を汚染する可能性がある。例えば、破損したペリクルがパターニングデバイスMAを汚染し、パターニングデバイスを使用不可能にする可能性がある。
【0171】
[00170] 破損したペリクル19によって生じる汚染を抑制するために、ペリクル19が破損寸前である可能性を検出する、及び/又はペリクル19が破損したことを検出するために、ペリクル19をモニタすることが望まれる。そして、ペリクル19を使用から除外する、及び/又はペリクル19が引き起こす可能性がある潜在的汚染を軽減する措置を取ることができる。付加的又は代替的に、ペリクル19が破損するときに、汚染をほとんど又は全くもたらさない制御された方法で破損が起るようにペリクル19を構成することが望まれる。
【0172】
[00171] 本明細書で検討されている本発明の実施形態は、差し迫ったペリクルの破損及び/又はペリクル19の破損を検出可能にするペリクル19及び/又はペリクルフレームの特徴を含む。ペリクル19が制御された方法で破損するように構成された実施形態も検討する。別の実施形態は、破損したペリクル19から生じる汚染を軽減するように構成された装置を備える。
【0173】
[00172]
図5は、ペリクル19とペリクルフレーム17とを備え、パターニングデバイスMAに取り付けられたペリクルアセンブリ15の概略図である。ペリクル55は、フレーム17に取り付けられた外周部分55を含む。パターニングデバイスMAは、基板Wに転写されるパターンが形成されるパターン形成領域71を含む。パターニングデバイスMAの露光フィールド73が、リソグラフィ露光中に放射(例えばEUV放射)に露光される。露光フィールド73は、放射の露光スリット75を露光フィールド73にわたってスキャンすることによって放射に露光することができる。露光スリットは、図に両矢印77で示すy方向(スキャン方向と呼ばれることがある)にスキャンすることができる。y方向に垂直なx方向も
図5には示されている。x方向は非スキャン方向と呼ばれることがある。露光スリット75は、パターニングデバイスMAの露光スリット75に対する移動を通して露光フィールド73上をスキャンすることができる。
【0174】
[00173]
図5に見られるように、ペリクル19は、露光フィールド73内にあるが、パターン形成領域71を覆わない領域79を含む。したがって、ペリクル19のこの領域79は、パターン形成領域71を覆うペリクル19と同じ状態(放射への露光による加熱を含む)にさらされる。しかし、ペリクル19のこの領域79への変更は、パターン形成領域71に入射する放射、又はパターン形成領域71から反射されるパターン形成された放射ビームに影響を及ぼすことはない。露光フィールド73内にあるが、パターン形成領域71を覆わないペリクル19の領域79は、利用可能領域79と呼ばれることがある。ペリクル19の利用可能領域79への変更は、パターン形成領域71に入射する放射、又はパターン形成領域71から反射されるパターン形成された放射ビームに影響を及ぼすことなく行うことができる。ペリクル19の利用可能領域79になされ得る変更は、ペリクル19が故障寸前かもしれないという兆候がないかどうかモニタされ得るフィーチャを含むことができる。ペリクル19の利用可能領域79になされ得る変更は、ペリクル19を制御された方法で破損させるフィーチャを含むことができる。
【0175】
[00174] パターニングデバイスMAは、マーカ(例えばフィデューシャル)81を含むことができる。マーカ81は、例えばパターニングデバイスMAのアライメントを測定するためのアライメント測定に使用することができる。マーカ81は、ペリクルの利用可能領域79内に位置することができる。ペリクル19の利用可能領域81へのいかなる変更も、マーカ81を使用するいかなるアライメント測定も妨げないことが望まれる。
【0176】
[00175]
図6は、ペリクルアセンブリ15のペリクル19が破損領域83を含むペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAの概略図である。
図6のペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAの特徴の多くは、
図5を参照して説明したペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAと同じであり、本明細書ではこれ以上詳細に説明しない。説明を簡単にするために、
図5に示した特徴の一部は
図6では省略されている(例えば露光スリット75及びマーカ81は
図6に示されていない)。
【0177】
[00176] ペリクル19の破損領域83は利用可能領域79内に位置し、したがって、パターン形成領域71に入射する放射、又はパターン形成領域71から反射されるパターン形成された放射ビームに影響を及ぼさない。破損領域83は、リソグラフィ装置LAにおけるペリクル19の通常の使用中に、ペリクルの残りの領域が破損する前に優先的に破損するように構成される。破損領域83は、例えばペリクル19の周辺領域と比較して、ペリクル19の厚さの薄い領域を含むことができる。例えばペリクル19の製造中、破損領域83の厚さがペリクル19の周辺領域の厚さ未満になるように、破損領域83への材料の堆積を少なくすることができる。したがって、破損領域83はペリクル19の周辺領域より構造的に弱くなり、ペリクル19の残りの領域が破損する前に優先的に破損することになる。
【0178】
[00177] 付加的又は代替的に、破損領域83は、ペリクル19の残りの部分とは異なる状態にさらされたペリクル19の領域を含むことができる。破損領域がさらされた異なる状態は、破損領域83をペリクル19の周辺領域より構造的に弱くする。例えば、リソグラフィ装置LAでペリクル19を使用する前に、破損領域83は、ペリクル19の残りの部分の露光を行わない放射に露光することができる。つまり、ペリクル19を構造的に弱化する役割を果たす放射(例えばEUV放射)を使用して破損領域83を選択的に露光することができる一方、ペリクル19の残りの部分を放射に露光することはできない。したがって、破損領域83はペリクル19の周辺領域より構造的に弱くなり、ペリクル19の残りの領域が破損する前に優先的に破損することになる。
【0179】
[00178] 一部の実施形態では、破損領域83は、ペリクルの残りの部分が暴露された物質とは異なる物質に暴露されたペリクル19の領域を含むことができる。例えば、リソグラフィ装置LAでペリクル19を使用する前に、破損領域83は、ペリクル19の残りの部分と比較して破損領域を構造的に弱化するように構成された物質に暴露することができる。破損領域83は、例えば破損領域83を構造的に弱化するために、破損領域83を化学変化させる働きをし得る水素ラジカルに暴露することができる。したがって、破損領域83は、ペリクル19の残りの領域が破損する前に優先的に破損することになる。
【0180】
[00179] 付加的又は代替的に、破損領域83は、リソグラフィ装置でペリクル19を使用する前に、1つ以上の孔及び/又はクラックがペリクル19内に意図的に形成されるペリクル19の領域を含むことができる。ペリクル19内の1つ以上の孔及び/又はクラックによって、破損領域83はペリクル19の周辺領域より構造的に弱くなる。したがって、破損領域83は、ペリクル19の残りの領域が破損する前に優先的に破損することになる。
【0181】
[00180] 破損領域83が破損すると、ペリクル19の破損はペリクル19の他の領域に伝播する可能性がある。例えば、ペリクル19は、ペリクル19内のクラックが破砕線85に沿って形成されるように破砕線85に沿って破砕する可能性がある。一部の実施形態では、破砕線85はペリクル19の周辺領域より構造的に弱くなるように構成することができ、以上で説明したような破損領域の別の例を含むことができる。したがって、破砕線85は、破損領域83を参照して以上で説明したあらゆる特徴を有することができる、及び/又は破損領域83を参照して以上で説明したあらゆる方法を使用して形成することができる。
【0182】
[00181] 代替的に、破砕線85は、ペリクル19の周辺領域より構造的に強くなるように構成することができる。例えば、破砕線は、ペリクル19の周辺領域より大きな厚さを有するペリクルの強化領域を含むことができる。ペリクル19が破損領域83で破損した場合、ペリクル内のクラックがペリクル19中に伝播することは、強化された破砕線85によって妨げられることになる。一般に、クラックは利用可能な最も弱い経路をたどる傾向がある。したがって、強化された破砕線85を設けることによって、クラックは破砕線85とフレーム17の間にある経路をたどることになる。
【0183】
[00182] ペリクル19が強化領域と破損領域83とを含む実施形態では、破損領域83を強化領域とフレーム17の間に配置することが望まれる。その結果、ペリクル19内の破損領域83が破損した結果生じるクラックは、ペリクル19のフレーム17と強化領域の間にある領域に閉じ込められることになる。
【0184】
[00183] 他の実施形態では、破砕線85は、ペリクル19の周辺領域より構造的に強くならない又は弱くならないように構成することができ、ペリクルが破損領域83で破損した結果として必然的に生じることができる。破損領域83は、後続のペリクル19の破損が優先的な場所で、例えば破砕線85に沿って生じるように配置することができる。
【0185】
[00184] 一部の実施形態では、ペリクル19は、ペリクル19が破損後に制御された形で巻き上がるように構成することができる。例えば、ペリクル19が破砕線85に沿って破損するとき、ペリクル19は制御された形で自ら巻き上がることができる。
図7は、ペリクル19が自ら巻き上がった後のペリクル19の概略図である。
図7には、ペリクル19の外周部分55のセクションが付着したままのペリクルフレーム17の一部分も示されている。
図7に示す構成では、ペリクルの大部分は無傷でペリクルフレーム17に付着したままである。破損したペリクル19は小さいエリア内に封じ込められ、ペリクル19はパターニングデバイスMAに接触することが妨げられる。したがって、ペリクル19の破損によって周囲環境の汚染はほとんど又は全くもたらされることがない。パターニングデバイスMAは動作状態にあり、再び使用することができる。このような場合、破損したペリクル19はパターニングデバイスMAから簡単に取り外し、新しいペリクル19に交換することができる。
【0186】
[00185] ペリクル19は、ペリクル19の異なる層に異なる張力を導入することによって・BR>ゥら巻き上がるように構成することができる。例えば、ペリクルは、第1の張力を有する第1の層と第2の張力を有する第2の層とを少なくとも含むことができる。第1の張力は第2の張力より高いものとすることができる。第1の層と第2の層の張力の差によって、ペリクルが破損した場合に第1の層が第2の層を引き寄せることができ、その結果ペリクル19は
図7に示すように自ら巻き上がる。
図7に示す実施形態では、高い張力を有するペリクルの第1の層は、低い張力を有するペリクル19の第2の層よりペリクルフレーム17から遠くに位置する。これによってペリクルは、ペリクルのパターニングデバイスMAが位置する側と反対側で巻き上がる。有利なことに、これによってペリクル19が巻き上がったときにパターニングデバイスMAに接触することを回避することができる。
【0187】
[00186] 代替的な実施形態では、高い張力を有するペリクルの第1の層は、低い張力を有するペリクル19の第2の層よりペリクルフレーム17の近くに位置することができる。これによってペリクル19は、ペリクル19のパターニングデバイスMAが位置する側と同じ側で巻き上がることができる。
【0188】
[00187] (
図7に標示された)巻き上がったペリクル19の半径rは、第1の層と第2の層の張力の差に少なくとも部分的に依存する。一般に、第1の層の張力と第2の層の張力の差が大きければ大きいほど、結果として生じる巻き上がったペリクル19の半径rは小さくなる。
【0189】
[00188]
図3を参照して以上で説明したように、ペリクル19は3つ以上の層を含むことができる。ペリクル19は、ペリクルのいずれか2つの層に異なる張力が付与されていれば、自ら巻き上がるように構成することができる。一部の実施形態では、ペリクルを形成する全ての層に異なる張力を付与することができる。
【0190】
[00189] 以上で説明したように、ペリクルの各層の張力は、各層の形成に用いられる堆積プロセス(例えばCVD)の特性によって決定することができる。異なる張力を有する層を提供するために、堆積プロセスの異なる特性を使用して異なる層を堆積させることができる。例えば、第1の層は、第1の温度及び第1の圧力を使用して堆積させることができ、第2の層は、第1の温度及び第1の圧力と異なる温度及び/又は圧力を使用して堆積させることができる。したがって、第1の層には第2の層の張力と異なる張力が与えられる。付加的又は代替的に、異なる張力を有する層を提供するために、ペリクル19の異なる層を形成するのに使用される材料を選択することができる。
【0191】
[00190] ペリクル19が自ら巻き上がるように構成された実施形態では、ペリクル19は少なくとも1つの破損領域83を含むことができる。破損領域83は、破損領域83が破損したときにペリクル19が確実に自ら巻き上がるように配置することができる。例えば
図6に示す破損領域83は、破損領域83の破損によってペリクルが確実に自ら巻き上がることを可能にする位置にある。以上に説明したように、破砕線85は、ペリクル19が優先的に破損する破損領域を構成することもできる。破砕線85に沿ってペリクルが破損することによって、ペリクルは制御された形で確実に自ら巻き上がることができる。
【0192】
[00191]
図6に示す実施形態では、ペリクル19が、ペリクル19の破損中に生成されるデブリによるどんな周囲環境の汚染も減らす制御された形で破損する少なくとも1つの破損点83が提供される。一部の実施形態では、破損領域83は、破損領域83の破損がペリクル全体の致命的な故障を引き起こさないように構成することができる。このような実施形態では、破損領域83をモニタすることができ、破損点83の破損を検出することができる。破損領域83の破損の検出は、ペリクルの残りの部分が破損寸前であることを示すことができ、その結果、(周囲環境を汚染するおそれのある)ペリクル全体の致命的な故障の前に、ペリクル19を動作から除外することができる。
【0193】
[00192]
図8は、ペリクルフレーム17によって保持されたペリクル19を備えたペリクルアセンブリ15の一部分の概略図である。ペリクルアセンブリ15は、他の実施形態を参照して本明細書で説明するどんな特徴も含むことができる。ペリクル19は、露光フィールド73内にあるが、(
図8に示されていない)パターニングデバイスMAのパターン形成領域を覆わない利用可能領域79を含む。ペリクル19はさらに、破損領域83を含む。破損領域83は、通常の使用中に、ペリクル19の残りの領域が破損する前に優先的に破損するように構成されたペリクル19の一部分を含む。破損領域83の少なくとも一部はペリクル19の利用可能領域79内に位置する。破損領域83は、ペリクル19の周辺部分と比べて構造的に弱化することができる。
図8の破損領域83は、
図6を参照して以上で説明した破損領域と同様とすることができ、本明細書で説明する他の破損領域のどんな特徴も含むことができる。
図8の破損領域83は、本明細書で説明する破損領域を形成する方法のいずれかを使用して形成することができる。
【0194】
[00193] ペリクル19はさらに、破損領域83に隣接して配置された強化領域87を含む。強化領域は、ペリクル19の残りの領域と比較して大きい厚さを有する。したがって、強化領域87は破損領域83より構造的に強く、破損領域83が破損した場合に、ペリクル19がさらに破損することに抵抗するように構成される。破損領域83は、例えば強化領域87に隣接する破砕線85に沿って破損することができる。
【0195】
[00194]
図8に示す実施形態では、強化領域87はペリクル19上に形作られた曲線を描く。これによって強化領域87の強度が向上し、強化領域87はペリクル19がさらに破損することに抵抗できるようになる。強化領域87及び破砕線85は、ペリクル19のフレーム17によって支持される外周部分55のセクション間に延在する。破砕線85及び強化領域87は、ペリクル19の支持されない部分(フレーム17に接触していない部分)の縁部に位置するペリクル19の一部分を囲む。したがって、ペリクル19の破損した領域は小さい封じ込め領域であり、ペリクルの残りの部分は無傷のままで、デブリがほとんど又は全く生成されない。
【0196】
[00195] 通常使用時に、破損領域はペリクル19の残りの部分と同様の力及び状態にさらされる。破損領域83が破損することで、ペリクルの他の領域が破損寸前であることを示すことができる。破損領域83はモニタすることができ、破損領域83が破損したことを検出した場合は、ペリクルは動作を中止して交換することができる。有利には、ペリクルは、ペリクルの致命的な故障の前に動作を中止する。これによって著しいデブリの発生及び周囲環境の汚染を回避することができる。
【0197】
[00196] 破損領域83は、破損領域83の破損を検出するように構成された任意の形態のセンサを使用してモニタすることができる。例えば、破損領域は放射によって照明することができ、破損領域からの放射の反射及び/又は透過を検出することができる。破損領域の反射率又は透過率の変化によって、破損領域83が破損していることを示すことができる。
【0198】
[00197] 破損領域83の少なくとも一部は、リソグラフィ露光プロセス中に放射(例えばEUV放射)を受け、パターニングデバイスMAから反射され、その後基板Wに入射する放射の一部は破損領域を通過することになる。破損領域が破損すると、破損領域83の透過率が変化することになる。これは、基板Wを通過した放射を受ける基板の領域での基板Wにおける放射の強度変化によって検出することができる。このような強度変化は検出することができ、破損領域83が破損したことを示すことができる。基板Wにおける放射強度の変化は直接検出することができる。代替的に、基板Wにおける放射強度の変化は、放射への露光後に基板Wをモニタすることによって検出することができる。基板Wは、放射への露光時に状態変化を受けるフォトレジストを備えることができる。フォトレジストを露光する放射の強度変化はフォトレジスト内で検出可能となり、破損領域83の破損を示すことができる。破損領域83を通過した放射を受ける基板Wの領域は、(破損領域83がパターニングデバイスMAのパターン形成領域の外側に位置するため)基板Wのパターン形成されたフィーチャが形成される領域の外側にある。したがって、破損領域の破損は、基板に形成されるパターンに影響を及ぼすことはない。
【0199】
[00198] 一部の実施形態では、破損領域83(又は本明細書で説明するペリクルの別のフィーチャ)は、パターニングデバイスの基板W上に結像される部分を表示するイメージフィールドの外側に配置することができる。したがって、破損領域83(又は本明細書で説明するペリクルの別のフィーチャ)は、基板Wを露光させる放射に影響を及ぼさない可能性がある。
【0200】
[00199] 一部の実施形態では、ペリクルは、
図8の破損領域83と同様の複数の破損領域83を含むことができる。破損領域の破損を検出するために、複数の破損領域83をそれぞれモニタすることができる。
【0201】
[00200] 以上で説明したように、強化領域87は、ペリクル19の残りの領域と比較して大きい厚さを有する。ペリクル19の厚さを大きくすることによって、(例えば放射の吸収が大きくなるため)強化領域87をペリクルの他の部分より高い温度まで加熱することができる。強化領域87は、強化領域87とフレームの間の熱的接続を提供するようにフレーム17と接触している。したがって、強化領域87からの熱は、ヒートシンクの役割を果たし、強化領域87の温度を調節し得るフレーム17に伝導させることができる。
【0202】
[00201]
図5~
図8を参照して以上に説明した実施形態では、少なくとも破損領域83は、露光フィールド73内にあるがパターニングデバイスMAのパターン形成領域を覆わないペリクル19の利用可能領域79に設けられる。一部の実施形態では、ペリクルフレーム17は、ペリクルの外周部分55の少なくとも一部が露光放射を受けるように、露光73内に少なくとも部分的に配置することができる。これによって、1つ以上の破損領域83又はペリクルに対する他の改変領域が、フレーム17によって支持されるペリクル19の外周部分55に位置することができる。
【0203】
[00202]
図9は、ペリクルフレーム17の一部が露光フィールド73内に位置するペリクルアセンブリ15及びパターニングデバイスMAの概略図である。
図9に示す実施形態は、
図5に示した実施形態と同じ多くの特徴を有する。
図5と
図9の対応する特徴を示すために同じ参照番号が使用され、これらの特徴の多くは、
図9を参照して再度詳細に説明されることはない。
【0204】
[00203]
図9に示す実施形態では、ペリクルフレーム17は、露光フィールド73の内側に位置し、したがって、リソグラフィ露光プロセス中に放射(例えばEUV放射)を受ける一部分を含む。したがって、露光フィールド73内にあるが、パターニングデバイスMAのパターン形成領域を覆わないペリクル19の利用可能部分79は、フレーム17によって支持された外周部分55の一部を含む。これによって、1つ以上の破損領域83はフレーム17によって支持された外周部分55に位置することができる。ペリクル19の外周部分に位置する複数の破損領域83を
図9に示す。
【0205】
[00204]
図9に示す破損領域83はフレーム17によって支持されているため、破損領域の破損が、ペリクル19のフレーム17と接触していない支持されない領域に影響を及ぼすことはほとんどない。したがって、有利なことにペリクル19の残りの部分は無傷のままであり、これによって相当量のデブリの発生を回避することができる。
【0206】
[00205]
図8を参照して以上で説明したのと同様、破損領域の破損を検出するために、破損領域83をモニタすることができる。破損領域83が破損することで、ペリクル19の他の領域が破損寸前であることを示すことができる。破損領域83が破損していることを検出した場合は、ペリクル19は動作を中止して交換することができる。有利には、ペリクルは、ペリクル19の致命的な故障の前に動作を中止する。これによって、著しいデブリの発生及び周囲環境の汚染を回避することができる。
【0207】
[00206]
図9の実施形態では、例えば
図5の実施形態と比較して、ペリクルフレーム17によって占有されていないパターニングデバイスMA上の利用可能な空間が小さい。これによって、マーカ81を設けることができるパターニングデバイスMA上の利用可能な空間の提供が制限される又は無い可能性がある。
図9の実施形態では、ペリクルフレーム17にウィンドウ82を設けて、このウィンドウ82からパターニングデバイスMA上のマーカ81が見えるようにする。これによって、例えばパターニングデバイスMAのアライメント中にマーカ81にアクセスすることができる。
【0208】
[00207]
図3を参照して以上で説明したように、ペリクル19は、導電性の少なくとも1つの層を含むことができる。例えばペリクル19は、同様に導電性であり得る放射層31aを含むことができる。ペリクル19の導電層は、例えば金属(例えばルテニウムなどの遷移金属)から形成することができる。代替的に、ペリクル19の導電層は、グラフェンから形成することができる。
【0209】
[00208] ペリクル19の導電率によって、ペリクル19の各部の電気抵抗をモニタすることが可能になる。以上で述べたように、ペリクルの放射層31aは、時間をかけて化学変化を受ける可能性がある。例えばペリクル19の放射層31aは酸化する可能性がある。放射層31aの酸化によって放射層31aの放射率が低下し、放射層31aがペリクル19の温度を調節する効果が減少する可能性がある。したがって、放射層31aの酸化は、ペリクル19の過熱によってペリクル19が損傷を受ける可能性を増大させるおそれがある。
【0210】
[00209] 放射層31aの酸化は、放射層31aの電気抵抗を増大させることにもなる。したがって、放射層31aの酸化は、ペリクル19の全て又は一部の電気抵抗をモニタすることによって検出することができる。ペリクル19は、例えばペリクル19の導電層(例えば放射層31a)との電気的接続を可能にする電気接点を含むことができる。導電層で確立された電気的接続によって、導電層の抵抗及び電気接点間の抵抗が測定可能になる。測定される抵抗の増大は、導電層(例えば放射層31a)の酸化を示すことができる。測定された抵抗が閾値を上回る場合は、ペリクル19は、過熱によるペリクル19の故障を回避するために動作を中止することができる。
【0211】
[00210] ペリクル上の電気接点は、例えばペリクル19のフレーム17によって支持された外周部分55上に位置することができる。
図10は、ペリクルフレーム17と、ペリクルフレーム17によってペリクル19の外周部分55で支持されたペリクル19とを備えたペリクルアセンブリ15の一部分の概略図である。ペリクル19は、ペリクル19の導電層との電気的接続を確立可能にする電気接点89を備える。電気接点89はペリクル19の外周部分55に位置する。ペリクル19の外周部分55はフレーム17によって直接支持されているため、(例えばペリクルとの電気的接続から生じ得る)ペリクルの外周部分55へのいかなる損傷も、ペリクル19のフレーム17と接触していない支持されない部分に損傷を生じさせる可能性が低い。
【0212】
[00211] 2つの電気接点89の間にセンサ91が接続され、電気接点間の抵抗を測定するように構成される。センサ91は、2つの接点間の抵抗を測定可能ないかなる形態のセンサであってもよい。
【0213】
[00212] 電気接点89は、露光フィールド73内にあるが、(
図10に示されていない)パターニングデバイスMAのパターン形成領域を覆わないペリクル19の利用可能領域79に位置する。したがって、ペリクル19の電気接点89間にある領域は、ペリクル19の支持されない部分と同様の状態にさらされることになる。したがって、ペリクル19の電気接点89間にある領域の、センサ91によって測定される抵抗の増加を生じさせる酸化は、ペリクル19の他の領域の酸化を示すことができる。以上で説明したように、センサ91によって測定された抵抗が閾値を上回る場合は、ペリクル19は、過熱によるペリクル19の故障を回避するために動作を中止することができる。
【0214】
[00213] ペリクル19の電気抵抗は、付加的又は代替的に、ペリクル19内のクラックを検出するためにモニタすることができる。一部の例では、ペリクル19の致命的な故障を引き起こさない1つ以上のクラックがペリクル19内に生じる可能性がある。クラックが生じたペリクル19は、ペリクル19の致命的な故障が差し迫っていることを示すことができる。したがって、致命的な故障の前にペリクル19を動作から除外する(これによって相当量のデブリの発生及び周囲環境の汚染を軽減する)ことができるように、ペリクル19の致命的な故障が起きる前にペリクル19内のクラックを検出することが望ましい。
【0215】
[00214] ペリクル19内のクラックは、ペリクル19にかかる電気抵抗を測定することによって検出することができる。
図11は、ペリクル19と、ペリクルの外周部分55を支持するペリクルフレーム17と、を備えたペリクルアセンブリ15の概略図である。ペリクル19は、ペリクル19の導電層との電気的接続を確立可能にする電気接点89を備える。
図11の実施形態では、電気接点89はペリクル19の外周部分55に位置する。
【0216】
[00215] 電気接点89の各対の間にセンサ91が接続され、ペリクル19の電気抵抗及び電気接点89間の電気抵抗を測定するように構成される。1つ以上のセンサ91によって測定される抵抗の増加は、ペリクル19内にクラックが生じたことを示すことができる。1つ以上のセンサ91によって測定される抵抗の増加が検出された場合、ペリクル19は、ペリクル19のさらなる損傷及びペリクル19の致命的な故障のリスクを回避するために動作を中止することができる。
【0217】
[00216]
図11に示す実施形態では、4つの電気接点89及び2つのセンサ91が示されている。しかしながら、他の実施形態では、ペリクル19は4つより少ない又は多い電気接点89を備えてもよい。一部の実施形態では、ペリクルの外周部分55にいくつかの電気接点89を分布させることができ、ペリクルに広がる複数の異なる電気路の抵抗を、複数のセンサ91を使用して測定することができる。これによって、ペリクル19のいかなる場所で生じるクラックも検出可能になる。
【0218】
[00217] 一部の実施形態では、電気接点89間の電気経路は、ペリクル19のその他の部分から電気的に絶縁することができる。例えば、ペリクル19は、(例えば他の領域に導電材料がないために)ペリクル19の他の領域から電気的に絶縁された導電路を2つの電気接点89の間に備えることができる。このような実施形態では、ペリクル19全体を電位にさらすのとは対照的に、ペリクル19の特定領域に電位を印加することができる。経路の電気抵抗を導出するために、絶縁された電気経路に沿って流れるいずれの電流も測定することができる。経路のいずれの抵抗の変化も、ペリクルの損傷及び/又は差し迫ったペリクル19の故障の可能性を示すことができる。
【0219】
[00218] 一部の実施形態では、ペリクルアセンブリは、ペリクル19に関連する特性の変化を検出するように構成されたセンサアセンブリを備えることができる。ペリクル19に関連する特性の変化はペリクル19の損傷を示すことができる。例えば、センサアセンブリは、放射及び/又は音波に対するペリクルの透過率又は反射率の変化を検出するように構成することができる。例えばペリクル内にクラックが生じたためにペリクルが損傷を受けた場合、損傷を受けた領域の反射率は上昇する可能性がある。したがって、ペリクルの反射率の上昇の検出は、ペリクル19の損傷を示すことができる。
【0220】
[00219]
図12A~
図12Dは、本発明の実施形態に係るペリクル故障検出装置の構成要素の概略図である。
図12Aは、ペリクルアセンブリ15の一部分及びセンサアセンブリのある実施形態のコンポーネントを示す。ペリクルアセンブリ15は、フレーム17と、ペリクル19の外周部分55でフレームによって支持されたペリクル19と、を備える。ペリクルフレーム17はパターニングデバイスMAに取り付けられる。ペリクル故障検出装置は、放射源93と、放射センサ(
図12Aに示されていない)と、を備えたセンサアセンブリを備える。放射源93は、導波管98に入力される放射ビーム97を放出するように構成される。導波管98はペリクル19に接続され、放射ビーム97をペリクル19に透過させるように放射ビーム97をペリクル19に結合するように構成される。ペリクル19は導波管の役割を果たし、ペリクル19に沿った放射ビーム97の透過を支持する。
【0221】
[00220]
図12Bは、ペリクルアセンブリ15の一部分及びセンサアセンブリの代替的な実施形態のコンポーネントを示す。
図12Bに示す実施形態は、ペリクル19と接触して配置されたトランスデューサ94(例えばピエゾトランスデューサ)を備える。トランスデューサ94は、ペリクル19に沿って透過されるペリクル19内の音波96を励起する。
【0222】
[00221]
図12Cは、ペリクル19の外周部分55をフレーム17によって保持されたペリクル19内を波が伝播する様子を概略的に示す。波形が入力点100からペリクル19に入力される。
図12Cでは、波面を線102で表す。波は、(例えば
図12Aに示すように、放射ビームがペリクル19に結合される場合の)電磁波であってもよく、(例えば
図12Bに示すように、トランスデューサがペリクル内に音波を発生させる場合の)音波であってもよい。ペリクル19は導波管の役割を果たし、ペリクル19を横断する波の伝播を支持する。波はペリクル19の表面と実質的に平行な方向に伝播する。
【0223】
[00222] 一部の実施形態では、ペリクル19による波の透過及び/又は反射を測定することができる。例えばセンサは、入力点100の近くに配置することができ、入力点に向かって反射して戻る波を測定することができる。センサは、例えば波形がペリクル19に入力されてから対応する反射がセンサによって測定されるまでの再帰時間を測定することができる。損傷を受けていないペリクル19の場合、波は(
図12Cに示すように)ペリクル19の入力点100とは反対側のフレーム17において反射される可能性がある。
【0224】
[00223]
図12Dは、クラック104が発現したペリクル19を示す。クラック104は入射する波を反射する働きをし、これによって、ペリクル19の反対端側のフレーム17より入力点100に近い反射源を提供する。したがって、ペリクル19内のクラック104によって、波形がペリクル19に入力されてから対応する反射がセンサによって測定されるまでの再帰時間が短縮する可能性がある。したがって、センサによって検出される信号の変化はペリクル19の損傷を示すことができる。一部の実施形態では、ペリクル19によって透過及び/又は反射される波の強度を検出するために、1つ以上のセンサを配置することができる。ペリクル19によって透過及び/又は反射される波の強度の変化はペリクル19の損傷を示すことができる。
【0225】
[00224] 一部の実施形態では、ペリクル故障検出装置の一部を形成し得るセンサアセンブリは、ペリクル19が受ける応力を測定するように構成されたセンサを備えることができる。例えば、ペリクルフレーム17によって支持されたペリクル19の外周部分55上に応力センサを配置することができる。応力センサは、ペリクル19が受ける圧縮応力を測定するように構成することができる。付加的又は代替的に、応力センサはペリクル19が受ける引張応力を測定するように構成することができる。
【0226】
[00225] 好適な応力センサは、例えば2つの要素の間に延在する肉薄のブリッジを含むマイクロブリッジ応力センサを含むことができる。マイクロブリッジが圧縮応力を受けた場合、肉薄のブリッジはこの応力下で曲がる又は破損する可能性があり、これによって、応力センサが配置されたペリクル19が受けた応力が示される。
【0227】
[00226] 一部の実施形態では、好適な応力センサは、例えば1つ以上のGuckelリングを含むことができる。Guckelリングは、リング状の構造と、リング状の構造に広がる1つ以上の梁とを有する。Guckelリングは、引張応力を圧縮応力に変換するように構成される。Guckelリングが引張応力を受けた場合、リングに広がる1つ以上の梁はこの応力下で曲がる可能性があり、これによって、Guckelリングが配置されたペリクル19が受けた応力が示される。
【0228】
[00227] 一部の実施形態では、2つ以上の応力センサをペリクル19に配置することができる。ペリクル19上に配置された異なる応力センサは、異なる場所における応力、異なる方向に作用する応力、及び/又は異なる大きさの応力を測定するように構成することができる。
【0229】
[00228] 高レベルの応力を受けるペリクル19は応力による損傷を受ける可能性がある。ペリクル19上に1つ以上の応力センサを配置することによって、ペリクル19が受ける応力をモニタすることが可能になる。ペリクル19が受ける応力が、ペリクル19の損傷が起こり得るほど大きい場合、ペリクル19は、ペリクル19の損傷及び致命的な故障を回避するために動作を中止することができる。
【0230】
[00229] 付加的又は代替的に、ペリクル19上に1つ以上の歪みゲージを配置することができる。例えば1つ以上の歪みゲージは、ペリクル19の外周部分55上に配置することができる。1つ以上の歪みゲージは、ペリクルが受ける歪みをモニタすることができる。ペリクル19が受ける歪みが、ペリクル19の損傷が起こり得るほど大きい場合、ペリクル19は、ペリクル19の損傷及び致命的な故障を回避するために動作を中止することができる。
【0231】
[00230] 一部の実施形態では、ペリクル19は、ペリクル19の一部が破損した場合にデブリをその中に封じ込めるように構成することができる。
図13Aは、本発明のある実施形態に係るペリクル19の概略断面図である。ペリクル19は、第1の層101と、第2の層103と、第3の層105と、を含む。
図13Aに示すように、第3の層105は、第1の層101と第2の層103の間に位置する。第1の層101は第1の延性を有し、第2の層103は第2の延性を有し、第3の層105は第3の延性を有する。第3の延性は、第1の延性より小さく、かつ第2の延性より小さい。
【0232】
[00231] 延性とは、材料が持つ応力下で塑性的に変形する能力の測度である。例えば材料が引張応力を受けると、材料は引張応力下で変形して伸長する。延性とは、破損する前に材料がどれだけの塑性変形/伸長を受けるかを示す測度である。例えば、比較的高い延性を有する材料は、材料が破損する前に大きな変形を受けることになる。低い延性を有する材料は、引張応力下で変形を受けにくく、破損する前にわずかな変形しか受けない可能性がある。
【0233】
[00232]
図13Aに示す実施形態では、ペリクル19の3つの層101、103、105の各々は、使用中に同じ応力を受けることになる。第3の層105は、第1及び第2の層101、103の延性より低い延性を有し、したがって、第1及び第2の層101、103と比較して比較的脆い。
【0234】
[00233]
図13Bは、
図13Aに示すペリクルが経験し得る応力歪み曲線を概略的に示す。層101、103、105の全てが無傷である場合、ペリクル19が受ける歪みは、ペリクルの最も剛性の高い層によって支配されるペリクル19の総剛性によって決定される。ペリクル19の最も剛性の高い層は第3の層105である。したがって、初期応力下において、ペリクル19の歪みは、およそ第3の層105の応力歪み曲線(
図3Bに105で示す)を示す。第1の臨界歪み108において、第3の層105は破損する。第3の層の破損によって、例えば第3の層105内でのクラック形成及び/又は音波の発生などが起こるため、ペリクル19内のエネルギーが散逸してしまう。
【0235】
[00234] 第3の層105が破損した後、ペリクル19の全体としての応力歪み曲線は、第1及び第2の層101、103が組み合わされた応力歪み曲線(
図13Bに101、103で示す)を示す。第1及び第2の層101、103は、第3の層105より高い延性を有するため、第3の層105が破損した後にさらなる変形を受ける可能性がある。第3の層105が破損した後の第1及び第2の層101、103のさらなる変形は、ペリクル19の致命的な破砕の前に、ペリクル19内のポテンシャルエネルギーをさらに散逸させる。
【0236】
[00235] 第2の臨界歪み110において、第1及び第2の層101、103は破損し、ペリクル19の致命的な破砕が生じる。以上で説明したように、第3の層105が破損した後に第1及び第2の層101、103が受ける歪みはポテンシャルエネルギーを散逸させる働きをする。したがって、第1及び第2の層101、103が破損して、ペリクル19の致命的な破砕が生じた場合に利用可能なポテンシャルエネルギーは少ない。その結果、致命的な破砕の間に散逸するエネルギーは少なくなる。比較的高い延性を有する第1及び第2の層101、103の存在は、ペリクル19の突発故障の前にペリクル19が散逸し得るエネルギー量を増やす働きをする。
【0237】
[00236]
図13Bを参照して以上で説明したように、ペリクル19が第3の層105を破損するほど大きい応力を受けた場合、第3の比較的脆い層105は、(第3の層105の延性が低いために)第1及び第2の比較的延性のある層101、103より前に破損することになる。
図13Aに示すように、第3の層105は、第1及び第2の層101、103の間に位置する。したがって、第3の層105が破損するとき、第3の層の破片は、第1及び第2の層101、103によって封じ込められる。したがって、第3の層105の破片は周囲環境を汚染することはなく、ペリクル19は、実質的な汚染を引き起こすことなくきれいに除去及び/又は交換することができる。第3の層105が破損した後も、第1及び第2の層101、103は、(比較的延性が高いために)追加の応力に耐えることができ、破損した第3の層105を安全に封じ込めることができる。
【0238】
[00237] 第1及び第2の比較的延性の高い層101、103は、
図3を参照して以上で説明したようにキャッピング層を形成することができる。第1及び第2の層101、103は、例えば金属及び/又は合金から形成することができる。例えば第1及び第2の層101、103は、例えばチタニウム、ニオビウム及び/又はジルコニウム合金を含むことができる。
【0239】
[00238] 一部の実施形態では、ペリクル19は4つ以上の層を含むことができる。例えば、
図13Aを参照して以上で説明した3つの層に加えて、ペリクル19は放射層(例えば
図3を参照して説明した放射層31aと同様の放射層)を含むこともできる。一般に、ペリクルデブリをその中に封じ込める役割を果たすペリクル19は、任意の数の層を含むことができ、これらの層の少なくとも1つは、延性の低い層の両側に位置する2つの他の層の延性より低い延性を有する。比較的延性の高い層(すなわち第1及び第2の延性層101、103)は、比較的延性の低い層(すなわち第3の延性層105)と直接接触する必要はない。つまり、これらの層の間に1つ以上の中間層を配置することができる。このような実施形態では、第3の比較的延性の低い層は、たとえ層間に直接的な接触がないとしても、第1及び第2の比較的延性の高い層の間に位置すると考えられる。
【0240】
[00239]
図14は、本発明のある実施形態に係るデブリ低減デバイス107の概略図である。デブリ低減デバイス107はペリクル19の近くに配置される。
図14に示す実施形態では、デブリ低減デバイス107は、ペリクルフレーム17と、ペリクルフレーム17によってペリクル19の外周部分55で保持されたペリクルと、を備えたペリクルアセンブリ15に隣接して配置される。デブリ低減デバイス107は、ペリクル19の破損から生じるデブリを好ましい方向に誘導するように構成されたデブリステアリングデバイスを備える。
図14に示す実施形態では、デブリ低減デバイス107はさらに、ペリクル19をモニタして、ペリクル19の破損を検出するように構成されたセンサ112を備える。デブリステアリングデバイスは、(センサ112によって検出される)ペリクル19の破損の検出に反応して、ペリクルの破損から生じるデブリを好ましい方向に誘導するように構成される。
【0241】
[00240]
図14に示す実施形態では、デブリステアリングデバイスは、閉鎖チャンバ109とアクチュエータ111とを備える。チャンバ109の内部は、ペリクル19を保持する圧力より低い圧力に保持される。例えば、チャンバ109の内部は、真空ポンプを使用することによって、非常に低い圧力にポンプダウンすることができる。アクチュエータ111は、ペリクル19の破損の検出に反応してチャンバ109を開くように構成される。例えば、センサ112によってペリクル19の破損が検出されると、センサ112はアクチュエータ111に信号113を送信することができる。アクチュエータ111は、チャンバ109を開くことによって信号113に応答する。アクチュエータ111は、例えばチャンバ109の内部を露出するために、チャンバ109のドア(図示せず)を開くことができる。チャンバ109がアクチュエータ111によって開かれるとき、チャンバ109内部の低い初期圧力によって材料がチャンバ109に吸い込まれることになる。例えば、破損したペリクル19がチャンバ109に吸い込まれることによって、破損したペリクル19から生じたデブリを(好ましい方向の一例と考えられ得る)チャンバ109内に誘導することができる。デブリはチャンバ109内に安全に封じ込めることができ、周囲環境の汚染(例えばパターニングデバイスMAの汚染)を回避することができる。
【0242】
[00241] 一部の実施形態では、デブリ低減デバイスは2つ以上のチャンバ109を備えることができる。例えば、各々がペリクル109の破損を検出したときにチャンバ109を開くように構成されたアクチュエータを有する複数のチャンバ109を、ペリクル19の周りに配置することができる。
【0243】
[00242] センサ112は、ペリクル109の破損を検出可能ないずれのセンサであってもよい。例えば、センサ112は、本発明の他の実施形態と関連して以上で説明したいずれのセンサも含むことができる。一般に、ペリクル19の破損を検出するために、本明細書の記載の有無にかかわらないどんなセンシング方法も使用することができる。
【0244】
[00243] 代替的な実施形態では、(
図14に示すような)ペリクル19の近くに配置されたチャンバ109は、ペリクル19を保持する圧力より高い圧力に保持することができる。例えば真空ポンプ機構は、ペリクル19を保持する環境を、チャンバ109内部の圧力より低い圧力にポンプダウンするように構成することができる。センサ112がペリクル109の破損を検出し、アクチュエータ111がチャンバ109を開く場合、圧力差によってチャンバ109からガスが排出することになる。その結果、破損したペリクル19から生じたデブリは、チャンバ109から好ましい方向に吹き飛ばされる。例えばデブリをパターニングデバイスMAから吹き飛ばすことができ、パターニングデバイスMAのどんな汚染も低減することができる。
【0245】
[00244]
図15は、本発明の代替的な実施形態に係るデブリ低減デバイス107’の概略図である。デブリ低減デバイス107’はペリクル19の近くに配置される。
図15に示す実施形態では、デブリ低減デバイス107は、ペリクルフレーム17と、ペリクルフレーム17によってペリクル19の外周部分55で保持されたペリクルと、を備えたペリクルアセンブリ15に隣接して配置される。デブリ低減デバイス107’は、ペリクル19の破損から生じるデブリを好ましい方向に誘導するように構成されたデブリステアリングデバイスを備える。デブリステアリングデバイスは、ペリクル19の近くに配置された荷電表面115を備える。荷電表面115は、例えば荷電プレートを含むことができる。荷電表面は、例えば電圧源117を使用して帯電させることができる。ペリクル19が破損した場合、ペリクルから生じたデブリは、静電気引力によって荷電表面に向・BR>ッて誘導される。有利には、ペリクルデブリを荷電表面115に向けて誘導することによって、他のコンポーネント(例えばパターニングデバイスMA)の汚染が減少する。
【0246】
[00245] 一部の実施形態では、荷電表面115は、ペリクル19の破損を検出するように構成されたセンサ(例えばセンサ112)と併用することができる。例えば表面115は、センサによるペリクル19の破損の検出に応答してのみ(例えば電圧源117をオンにすることによって)帯電させることができる。
【0247】
[00246]
図16は、本発明のある実施形態に係るデブリ低減デバイス121の概略図である。デブリ低減デバイス121は、フレーム17によって保持されたペリクル19をモニタしてペリクル19の損傷を検出するように構成されたセンサ123を備える。例えばセンサは、ペリクル19内の1つ以上のクラックの形成を検出するように構成することができる。付加的又は代替的に、センサは、ペリクル19に含み得る1つ以上の破損領域の破損を検出するように構成することができる。一般に、ペリクル19の損傷を検出するために、本明細書の記載の有無にかかわらないどんなセンシング方法も使用することができる。
【0248】
[00247] デブリ低減デバイス121はさらに、ペリクル19の損傷の(センサ123による)検出に反応して、ペリクルの張力を低下させることによって、ペリクル19のさらなる損傷を抑制するように構成された張力制御デバイスを備える。
【0249】
[00248]
図16に示す実施形態では、張力制御デバイスは、ペリクル19を保持するフレーム17を圧迫するように構成された複数のアクチュエータ125の形をとる。アクチュエータは、例えばペリクル19の損傷を検出したときに、センサ123からアクチュエータ125に送信される信号126に応答することができる。アクチュエータ125は、
図16に矢印で示すようにフレーム17の2つの側に反対方向の力を印加することによってフレーム17を圧迫する。
図16に示すようにフレーム17を圧迫することによって、フレーム17によって保持されたペリクル19の外周部分55の相対するセクション間の距離127がわずかに短くなり、これによって、(フレーム17の相対する部分間に懸架された)ペリクル19の支持されない部分の張力が低下する。
【0250】
[00249] ペリクル19の張力を低下させることによって、ペリクル19が受ける応力が低下し、ペリクル19のさらなる損傷及び致命的な故障の可能性が低下する。これによって、ペリクル19の致命的な故障より前にペリクル19を動作から除外する、及び/又は交換することが可能になる。
【0251】
[00250] 他の実施形態では、張力制御デバイスは他の形をとることもできる。例えば張力制御デバイスは、ペリクル19の損傷の検出に応答してペリクル19の温度を上昇させるように構成された温度制御デバイスを含むことができる。ペリクル19の温度を上昇させることによって、ペリクル19が膨張し、これによってペリクル19の張力が低下することになる。
【0252】
[00251] 温度制御デバイスは、例えば抵抗加熱によってペリクル19の温度を上昇させるように構成することができる。例えばペリクル19に接触して配置させた抵抗素子に電流を通すことができる。抵抗素子の抵抗は、ペリクル19への熱エネルギーの伝達をもたらし得る素子の加熱を引き起こし、これによってペリクル19の温度が上昇する。付加的又は代替的に、ペリクル19自体に電流を通すことができ、ペリクル19の抵抗によってペリクル19が直接加熱されることになる。
【0253】
[00252] 他の実施形態では、温度制御デバイスは、ペリクル19の全体又は一部を照明するように構成された放射源を備えることができる。ペリクル19は、照明放射の一部を吸収し、これによってペリクル19を放射によって加熱することができる。
【0254】
[00253] 一部の実施形態では、リソグラフィ装置のコンポーネントの汚染を減らすために、以上で説明したもの以外の手段を取ることができる。例えば、一部の実施形態では、ペリクル19に近接して1つ以上のシャッタを配置することができる。1つ以上のシャッタは、ペリクル19の破損の検出に応答して閉まるように構成することができる。1つ以上のシャッタは、破損したペリクル19から生じるデブリの到達が許容されるリソグラフィ装置LAの領域を制限する役割を果たし、これによってリソグラフィ装置LAの汚染の程度を制限することができる。
【0255】
[00254] リソグラフィ装置は、パターニングデバイスMAの近くに配置されたマスキングブレイドを備えることができる。マスクブレイドは、例えばパターニングデバイスMAに入射する放射の空間範囲を制限するために使用することができる。一部の実施形態では、マスキングブレイドは、ペリクル19の破損の検出に応答して互いに接近するように構成することができる。これによって、破損したペリクル19から生じたデブリが照明システムILに入り込むことを防止することができ、したがって、有利には照明システムILの汚染を防止することができる。
【0256】
[00255] 一部の実施形態は、制御された方法でペリクルを意図的に破損させるように構成された装置を備えることができる。例えばペリクル19の損傷が検出された場合、ペリクル19は、相当量のデブリを発生するおそれのある、制御されていないペリクル19の致命的な破砕を回避するために、制御された方法で破損させることができる。一部の実施形態では、ペリクルを制御された方法で破損させ得る1つ以上のアクチュエータを提供することができる。他の実施形態では、ペリクル内にクラックを形成するように動作可能な1つ以上の放射源を提供することができる。例えば、ペリクルを破砕し得る高出力レーザビームでペリクルを照明する1つ以上のレーザを配置することができる。制御されたクラックをペリクル内に形成するために、制御された方法でレーザビームをペリクルに通過させることができる。
【0257】
[00256]
図5を参照して以上で説明したように、ペリクル19は、リソグラフィ装置LAでの使用中に、(通常y方向で示される)スキャン方向にペリクル19にスキャンされる放射のスリット75にさらすことができる。放射露光は、ペリクル19の張力を低下し得るペリクル19の局所加熱を生じさせる可能性がある。例えば
図5から理解されるように、放射の露光スリット75は、x及びy方向に異なる寸法を有する。
【0258】
[00257] 特に、露光スリット75の寸法は、y方向よりx方向が大きい。その結果、ペリクルのx方向の幅の大きい部分がスリット75内の放射によって加熱されて膨張し、これによってx方向の張力が低下する。一方、ペリクル19上の露光スリット75の与えられた位置において、ペリクル19のy方向の幅の小さい部分だけが露光スリット内の放射によって加熱される。その結果、y方向におけるペリクル19の張力の低下は、x方向におけるペリクル19の張力の低下より小さい。ペリクル19がx及びy方向にほぼ同じ張力を有するように、x及びy方向における張力低下の差を補償するための機構を提供することが望まれる。
【0259】
[00258]
図17a及び17bは、ペリクルフレーム17の代替的な実施形態の概略図である。
図17a及び17bに示すペリクルフレーム17の各実施形態は、x及びy方向に異なるコンプライアンスを有するように構成される。
図17a及び17bに示す各ペリクルフレーム17は、ペリクル19の外周部分55でペリクル19を支持するように構成される。ペリクルフレーム17は、ペリクルの懸架された(すなわち支持されない)領域131を囲む。ペリクルフレーム17は、ペリクル19の懸架された領域131の両端に配置され、ペリクル19の懸架された領域131の縁部に沿って(第1の方向と呼ばれることもある)x方向に延在する第1の側部対133a、133bを備える。ペリクルフレーム17はさらに、ペリクル19の懸架された領域131の両端に配置され、ペリクル19の懸架された領域131の縁部に沿って(第2の方向と呼ばれることもある)y方向に延在する第2の側部対135a、135bを備える。
【0260】
[00259] 第1の側部対133a、133bは、第2の側部対135a、135bのx方向のコンプライアンスより大きいy方向のコンプライアンスを有するように構成される。フレーム17のy方向のコンプライアンスが大きいということは、ペリクルフレーム17によって支持されるペリクル19が、ペリクルのx方向の初期張力より小さいy方向の初期張力を有することを意味する。初期張力は、リソグラフィ装置LAにおいてペリクルを使用する以前のペリクル19の張力と考えることができる。同じように、ペリクル19の初期張力は、ペリクル19が熱平衡にある(すなわち、ペリクル19の全ての領域が実質的に同じ温度である)ときのペリクル19の張力と考えることができる。
【0261】
[00260] 以上で説明したように、ペリクル19が放射の露光スリットにさらされている間、ペリクル19を異なる方向に異なって加熱することができる。特に、加熱によるペリクルのx方向の張力の低下は、加熱によるペリクルのy方向の張力の低下より大きい可能性がある。x方向の初期張力はy方向の初期張力より大きいため、放射の露光スリットに露光することによってペリクルを加熱した後、ペリクル19は、有利なことにy方向の張力とほぼ等しいx方向の張力を有することができる。
【0262】
[00261]
図17a及び17bに示す両実施形態では、ペリクルフレームの第1の側部対133a、133bのy方向の厚さは、第2の側部対135a、135bのx方向の厚さより小さい。その結果、フレーム17のy方向のコンプライアンスはフレーム17のx方向のコンプライアンスより大きい。
図17bに示す実施形態では、第1の側部対133a、133bの厚さは、第1の側部対133a、133bにスリット137を形成することによって、第2の側部対135a、135bの厚さと比べて小さい。スリット137は、x方向に第1の側部対133a、133bに沿って延在する。第1の側部対133aの厚さは、材料が存在しないフレーム17の部分を構成するスリット137を除いた全厚さと考えられる。
【0263】
[00262] ある実施形態では、ペリクルの有無及び完全性をモニタすることが有利である。光ビーム(放射ビーム142)の検知表面からの反射に基づいてペリクル完全性検出器を動作させることができる。ペリクル完全性は、ペリクル表面から反射された放射ビーム142の検出によってモニタされる。ビーム発信器及び受信器は、反射ビームが受信器に到達できるように配置することができる。受信器は、ペリクル膜が存在する場合に信号を検知し、ペリクル膜が存在しないか又は無傷でない場合(すなわち、ペリクルが破損している場合)に信号を検知しない。
【0264】
[00263]
図18及び
図19に示す実施形態では、受信器センサにおける信号は、ペリクルの発信器からの距離に敏感である。ペリクル膜が上下に移動するとき、反射した放射ビーム142の振幅及び位置は受信器上で変化することになる。受信器は、周囲気圧変動及び振動といった任意の外的因子に対するペリクル膜の動的応答のモニタリングを可能にするために、これらのパラメータの一方又は両方に敏感である。例えば、反射した放射ビーム142の位置に敏感な位置敏感検出器を受信器として使用することができる。
【0265】
[00264] フレーム存在検出器も望まれ、反射した放射ビーム142に基づいて動作可能である。フレーム状態、フレームの有無、剥離やゆがみ、又はフレームを変形させている可能性があるEUV放射からの何らかの熱的効果を検出するために多重光ビームフレーム検出器を使用することができる。
【0266】
[00265] したがって、ペリクル膜とペリクルフレーム検出器はともに、放射ビーム発信器と受信器とを備えることができる。放射ビーム142は、単一のレーザダイオード又はダイオード配列によって提供することができる。しかしながら、任意の他の放射ビーム源によって提供することもできる。発信器と受信器を遠隔させるために光ファイバを使用することができる。放射ビーム142は、ペリクル材料からの良好な反射係数を、レチクル材料及びペリクル(及びマスク)保護ケースカバー面に与える波長を有するように選択される。望ましくない熱的効果を抑えるために、ペリクルにビームをほとんど吸収させないことも望ましい。上述の検出器は、光(放射)ビームの反射に基づいて動作するものと説明されているが、これは例示目的にすぎない。例えば音波をベースとした他のタイプの発信ビームや任意の他の適切な検出器をこの目的に使用することができる。
【0267】
[00266] 上述の検出器は、異なる受信ファイバ開口数(NA)を有する混合光ファイバ束を使用することができる。異なるNAを有することによって反射率補償が可能になり、検出は検知表面における反射率変化に鈍感になる。
【0268】
[00267] 光(放射)ビームアプローチを使用する検出器は、ペリクル運動及びその運動周波数を検出することになる。共振周波数は、例えばペリクル状態を示す。どんな運動周波数の変化も、使用による差し迫ったペリクル故障、熱的効果、又はペリクルの変化/劣化などに関連する変化を示すことができる。このような目的のために、法線入射ビームスキャンと非法線入射ビームスキャンをともに使用することができる。最適入射角によって、より小さな空間における検出器の数を少なくすることができる。ペリクル膜の状態は、初期段階で測定した後、経時的に変化を検出するためにモニタすることができる。
【0269】
[00268] 光発信器/受信器アレイ(例えばレーザダイオード、1又は2次元アレイ)を使用してペリクルの複数の領域を検出することができる。放射ビームは、発信器ごとに異なった角度に調整され、小さいフットプリントから複数の領域を効果的にチェックすることができる。発信器/検出器の対構成の例は、1列の3つのセンサ、十字配列を形成する5つ又は9つのセンサ、又は少なくとも1つのフレームセンサがアレイの縁部にあり、少なくとも1つのペリクルセンサがアレイの中央にある3×3センサアレイであってもよい。
【0270】
[00269] ペリクル完全性の変化を検出するためにペリクル表面をスキャンするスキャンビームコンセプトを使用することもできる。これによって、(例えば回転ステージと一体化した)1D又は2D空間における回転能力を有する放射ビームを備えることが必要になる。
【0271】
[00270] ペリクル及びフレーム検出デバイスは、リソグラフィ装置又は他のデバイス(例えば搬送ケース、レチクル検査ツールなど)の内部及び外部の様々な場所に配置し、保管、運搬中などにペリクル状態を検出することができる。ペリクル完全性は、レチクル検査の間、例えばペリクルを介したレチクル上の粒子汚染を検出するのに使用されるスキャトロメトリ装置の使用中にモニタすることもできる。
【0272】
[00271]
図18は、本発明のある実施形態に係るペリクル故障検出装置140の概略図である。ペリクル故障検出装置140は、放射源141と放射センサ143とを備える。放射源141は放射ビーム142を放出するように構成される。放射センサ143は、放射ビーム142の反射光を受けて検出するように配置される。
【0273】
[00272]
図18にはパターニングデバイスMA及びペリクルアセンブリ15も示されている。ペリクルアセンブリ15は、ペリクル19と、パターニングデバイスMAを粒子汚染から保護するためにペリクル19を適切な位置に保持するペリクルフレーム17と、を備える。放射源141は、ペリクル19の一部及び(ペリクル19を介して)パターニングデバイスMAを放射ビーム142で照明するように配置される。放射センサ143は、ペリクル19及びパターニングデバイスMAからの放射ビーム142の反射光を受けて測定するように配置される。放射センサは、ペリクル19の一部分を非法線入射角で照明するように構成される。つまり、ペリクル19における放射ビーム142の入射角θはゼロより大きい。一般に、ペリクル19は、パターニングデバイスMAのパターン形成面24とほぼ平行である。したがって、放射ビーム142がパターニングデバイスMAのパターン形成面24に入射する入射角は、一般に放射ビーム142のペリクル19への入射角θとほぼ等しい。
【0274】
[00273] ペリクル19及びパターン形成面24における放射ビーム142の非法線入射角θに起因して、ペリクル19から反射される反射ビーム142aの位置は、パターニングデバイスMAから反射される反射ビーム142bの位置と異なる。したがって、ペリクル19からの反射ビーム142aは、放射センサ143のパターニングデバイスMAからの反射ビーム142bの位置と異なる位置に入射する。放射センサ143は、放射が入射する位置を決定するように構成することができる。したがって、放射センサ143は、ペリクル19から反射される放射とパターニングデバイスMAから反射される放射を区別することが可能であってよい。
【0275】
[00274] ペリクル検出装置140はさらに、センサ143と通信するコントローラ145を備える。コントローラ145は、センサによる反射された放射の検出からペリクルの故障を検出するように構成される。例えばコントローラ145は、ペリクル19からの実質的な放射の反射がない場合、ペリクル19が存在しない、又はペリクル19が破損している(したがって、放射ビーム142の光路に存在しない)と推測することができる。一部の実施形態では、コントローラは、ペリクル19から反射された放射ビーム142の一部分142aの強度の測度が閾値を下回る場合、ペリクルの故障を検出するように構成することができる。反射部分142aの強度の測度はセンサ143によって作られ、例えば、センサ143に入射する反射された放射のパワー及び/又は強度を含むことができる。
【0276】
[00275]
図18に示す実施形態では、放射センサ143は、第1の検出器領域143aと第2の検出器領域143bとを含む。第1の検出器領域はペリクル19から反射された放射142aを受けるように配置され、第2の検出器領域143bはパターニングデバイスMAから反射された放射142bを受けるように配置される。
【0277】
[00276] 第1の検出器領域143aがペリクル19からの実質的な反射光を検出する(例えば閾値を上回る強度又はパワーを有する放射が測定される)場合は、コントローラ145は、ペリクル19は適切な位置にあり、故障していないと判定することができる。第1の検出器領域143aがペリクルからの実質的な反射光を検出しない(例えば第1の検出器領域143aで測定された強度又はパワーが閾値を下回る)場合は、コントローラ145は、ペリクルが存在しない、又はペリクルが破損している(したがって、放射ビーム142の光路に存在しない)と判定することができる。
【0278】
[00277] 第1の検出器領域143aで測定した放射と比較するために、第2の検出器領域143bでも放射を測定することができる。第2の検出器領域143bで測定された放射は、例えばパターニングデバイスMAの存在を確認するため、及び/又はペリクル19の有無を検出する目的でパターニングデバイスMA及び/又はペリクルが正確に位置合わせされていることを確認するために使用することができる。例えば、第2の検出器領域143bにおいて、パターニングデバイスMAからの実質的な放射の反射が測定されない場合は、ペリクル故障検出装置140はペリクルの有無を検出するために正確に配置及び/又は位置合わせされていないことを示すことができる。
【0279】
[00278] ペリクル故障検出装置140がペリクル19の有無を検出するために正確に配置及び位置合わせされており、かつペリクルが破損した場合は、第2の検出器領域143bで測定される放射のパワー及び/又は強度は低下する可能性がある。ペリクル19がパターン形成面24から反射される放射142bの光路に存在する場合は、放射の一部分が(ペリクル19によって反射されるだけでなく)ペリクル19によって吸収され、これによって第2の検出器領域143bに入射する放射のパワーが低下する可能性がある。例えば、ペリクル19に入射するEUV放射のおよそ10~20%が、ペリクル19を通過するたびにペリクルによって吸収される可能性がある。ペリクル19が破損し、もはや放射ビーム142の光路に存在しない場合、放射はもはやペリクル19によって吸収されることはない。したがって、第2の検出器領域143bに入射する放射のパワーは増大することになる。一部の実施形態では、コントローラ145は、第2の検出器領域143bに入射する放射のパワーの低下を利用して、ペリクル19が故障したことを検出することができる。
【0280】
[00279]
図18に示す実施形態では、放射センサ143は、ペリクル19から反射された放射142aを検出するように構成された第1の検出器領域143aと、パターニングデバイスMAから反射された放射142bを検出するように構成された第2の検出器領域143bと、を含む。他の実施形態では、放射センサ143は他の形態をとることができる。例えば、一部の実施形態では、第2の検出器領域143bは省略することができる。そのような実施形態では、第1の検出器領域142aによる測定の結果だけを使用して、ペリクル19が存在しているか否か、又は故障しているか否かを判定することができる。
【0281】
[00280] 一般に、放射ビーム142のペリクル19から反射された一部分142aを検出するように配置されるいずれのセンサも使用することができる。
図18の実施形態に示すように、放射センサ143はさらに、放射ビーム142のパターニングデバイスMAから反射された一部分142bを検出するように構成することができる。放射ビームは非法線入射角でペリクルに入射するため、放射ビーム142のパターニングデバイスMAから反射された一部分142bは、放射センサ143のパターニングデバイスMAから反射された放射ビーム142の一部分142aと異なる位置に入射する。
【0282】
[00281] 以上で説明してきたように、ペリクル19は、ペリクル19に初期張力が生じるようにペリクルフレーム17上に配置される。ペリクル19が破損した場合、ペリクルの初期張力によって、ペリクルをペリクルフレーム17によって囲まれた領域のほぼ全体から除去することができる。例えばペリクル19は、破損後に自ら巻き上がる、及び/又はペリクルフレーム17から切断される可能性がある。したがって、ペリクル19の破損は、ペリクル19上の任意の場所でペリクル19をモニタすることによって検出することができる。一部の実施形態では、単一のペリクル故障検出装置を使用して、ペリクル19上の任意の場所でペリクル19の故障を判定することができる。他の実施形態では、複数のペリクル故障検出装置を設けてペリクル19の異なる部分をモニタすることができる。
【0283】
[00282]
図18に示す実施形態では、コントローラ145は、センサ143とは別個のコンポーネントとして示されている。他の実施形態では、コントローラ145は、センサ143の一部を形成する、又は別のコンポーネントの一部を形成することができる。
【0284】
[00283]
図18に示す実施形態では、センサ143は、放射ビーム142のペリクル19からの鏡面反射を検出するように配置される。その結果、放射源141は、ペリクル19からの鏡面反射142aがパターニングデバイスMAからの鏡面反射と異なる位置になるように、非法線入射角でペリクル19を照明するように配置される。
【0285】
[00284] 一部の実施形態では、センサ143は、ペリクル19からの拡散反射を検出するように配置することができる。以上で説明した方法と同様に、拡散反射の検出を使用して、ペリクル19が故障したか否かを検出することができる。そのような実施形態では、放射源141は、非法線入射角でペリクル19を照明するように配置することができるか、又は法線入射でペリクルを照明するように配置することができる。ペリクル19からの拡散反射の角度プロファイルは、パターニングデバイスからの拡散反射の角度プロファイルと異なる可能性がある。その結果、放射源SOが法線入射角でペリクル19を照明する実施形態では、拡散反射の測定結果を使用して、ペリクル19からの反射とパターニングデバイスMAからの反射を区別することができる。
【0286】
[00285] ペリクル故障検出装置140(
図18を参照して以上で説明したペリクル検出装置など)は、ペリクル19によって保護されたパターニングデバイスMAを取り扱い使用するプロセスのどのステージでも使用することができる。例えば、ペリクル故障検出装置140は、リソグラフィ装置のロードロックステージで使用することができる。ロードロックステージは、ペリクル19によって保護されたパターニングデバイスMAをリソグラフィ装置に搬入又はリソグラフィ装置から搬出するのに使用することができる。例えばパターニングデバイスMAは、大気圧状態からリソグラフィ装置の外へ移動させ、ロードロック内に配置することができる。ロードロックは、リソグラフィ装置内でのパターニングデバイスMAの使用に備えて、パターニングデバイスMAをロードロック内に有した状態で真空圧状態にポンプダウンすることができる。そしてパターニングデバイスMAは、リソグラフィプロセスで使用するために、ロードロックからリソグラフィ装置に搬送することができる。
【0287】
[00286] 一部の実施形態では、ペリクル故障検出装置140は、リソグラフィ装置のロードロックステージに配置することができる。ペリクル故障検出装置140は、パターニングデバイスMA及びペリクルを使用のためにリソグラフィ装置にロードするより前に、ペリクルをチェックするのに使用することができる。ペリクル故障検出装置140がペリクルが故障していることを検出した場合は、パターニングデバイスMAは、リソグラフィ装置にロードされない可能性があり、また、リソグラフィ装置で使用されない可能性がある。パターニングデバイスMAをリソグラフィ装置にロードする前にペリクルをチェックすることによって、破損したペリクルがリソグラフィ装置に入ることを防ぐことができる。有利には、これによってペリクルデブリがリソグラフィ装置に侵入し、リソグラフィ装置を汚染することを防ぐことができる。
【0288】
[00287] パターニングデバイスMA、及びパターニングデバイスMAを保護するペリクル19は、(レチクルポッドと呼ばれることがある)保護ポッドに移送することができる。例えばパターニングデバイスは、保護ケース内に配置されたまま(例えばロードロックを介して)リソグラフィ装置にロードすることができる。次にパターニングデバイスMAは、リソグラフィプロセスで使用するために保護ケースから取り出すことができる。保護ケースは、例えば内側ポッド及び外側ポッドと呼ばれることがある内側コンパートメントと外側コンパートメントとを備えることができ、内側ポッドは外側ポッド内に配置される。
【0289】
[00288]
図19は、パターニングデバイスMA及びペリクルアセンブリ15が中にある保護ケース147の一部分の概略図である。ペリクルアセンブリ15は、ペリクル19とペリクルフレーム17とを備える。
図19には、パターニングデバイスMA及びペリクルアセンブリが保護ケース147内にある一方、故障がないかペリクル19をモニタするのに使用し得るペリクル故障検出装置140も示されている。保護ケース147内にあるペリクル19のモニタリングを容易にするために、保護ケース147は第1の透明ウィンドウ149aを備える。第1の透明ウィンドウ149aは、放射ビーム142の少なくとも一部分及び放射ビーム142の反射部分142a、142bを透過させる。
【0290】
[00289]
図19に示す実施形態では、保護ケース147はさらに、第2の透明ウィンドウ149bを備える。第2の透明ウィンドウ149bを使用して、ペリクルアセンブリ15及び/又はパターニングデバイスMAのさらなる特徴をモニタすることができる。例えば、
図19に示す実施形態では、ペリクルフレーム17の存在をモニタするモニタリングデバイス240が配置される。
【0291】
[00290] モニタリングデバイス240は、ペリクル故障検出装置140と同様の原理を利用するものであり、放射源241と放射センサ243とを備える。放射源は、放射ビーム242により非法線入射角でペリクルフレーム17を照明するように構成される。放射センサ243は、放射ビーム242のペリクルフレーム17から反射された一部分242aを受けて測定するように構成される。放射センサ243は、ペリクルフレーム17が存在するか否かを、センサ243による反射された放射242aの測定の結果に基づいて判定することができる。例えば、放射センサ243によって測定された放射のパワー又は強度が閾値を上回る場合は、ペリクルフレーム17が存在すると判定することができる。放射センサ243によって測定された放射のパワー又は強度が閾値未満である場合は、ペリクルフレーム17が存在しないと判定することができる。
【0292】
[00291] モニタリングデバイス240を使用して、ペリクルによる保護が意図されているパターニングデバイスMAと、ペリクルによる保護が意図されていないパターニングデバイスMAを区別することができる。例えばモニタリングデバイス240が、ペリクルフレーム17がパターニングデバイス上に存在すると判定した場合、パターニングデバイスはペリクルによる保護が意図されていると推測することができる。モニタリングデバイス240が、ペリクルフレーム17が適切な位置にないと判定した場合は、パターニングデバイスMAはペリクルによる保護が意図されていないと推測することができる。以上で説明したように、ペリクル故障検出装置140は、無傷のペリクル19がパターニングデバイスMAを保護しているかどうかを判定することができる。
【0293】
[00292] 一部の実施形態では、パターニングデバイスがペリクルによる保護が意図されているか否かは他の手段によって検出することができる。例えば、パターニングデバイスMAが中にある保護ケース147は、パターニングデバイスがペリクルによる保護が意図されているか否かに依存して異なる可能性がある。パターニングデバイスMAはペリクルによる保護が意図されているか否かを判定するために、保護ケースの1つ以上の特徴をモニタすることができる。例えば、一部の実施形態では、ペリクル19によって保護されるパターニングデバイスMAとともに使用するように設計された保護ケース147は、ペリクルフレーム17及びペリクル19を収容する窪みを含む可能性がある。ペリクル19によって保護されないパターニングデバイスMAとともに使用するように設計された保護ケース147は、ペリクルフレーム17及びペリクルを収容する窪みを含まない可能性がある。このような実施形態では、モニタリングデバイス240は、保護ケース147内の窪みの有無を検出するように構成することができる。保護ケース147内の窪みの有無は、保護ケースがペリクル19による保護が意図されているパターニングデバイスMAを移送しているか、ペリクル19による保護が意図されていないパターニングデバイスMAを移送しているかを示すことができる。
【0294】
[00293] ペリクル故障検出装置140及び/又はモニタリングデバイス240をロードロックステージで使用することを以上で説明してきたが、ペリクル故障検出装置140及び/又はモニタリングデバイスは他の場所で使用することもできる。例えば、パターニングデバイスMAをリソグラフィプロセスで使用する準備を行う、リソグラフィ装置のパターニングデバイスMAハンドリングステージにおいてこれらを使用することができる。一部の実施形態では、複数のペリクル故障検出装置140及び/又はモニタリングデバイス240を複数の異なる場所で使用することができる。
【0295】
[00294] ペリクル故障検出装置を使用してペリクルの故障を検出する実施形態を以上に説明してきた。一部の実施形態では、光学装置を使用して、ペリクルが圧力差にさらされている間にペリクルの1つ以上の領域の位置を測定することができる。以上で説明したように、パターニングデバイスをリソグラフィ装置にロードするプロセスの一部として、パターニングデバイス及びペリクルを(例えばロードロックステージにおいて)真空圧状態にポンプダウンすることができる。パターニングデバイスをリソグラフィ装置からアンロードするプロセスの一部として、パターニングデバイス及びペリクルを圧力上昇にさらすことができる。例えば、パターニングデバイスがロードロックステージからアンロードされる前に、大気圧にベントされるロードロックステージにパターニングデバイスを配置することができる。
【0296】
[00295] パターニングデバイス及びペリクルが変化する圧力状態にさらされるため、ペリクルにわたり圧力差が生じる可能性がある。例えば、パターニングデバイスとペリクルの間の容積の圧力は、この容積の外側の圧力より遅い速度で変化し、これによってペリクルにわたり圧力差が生じる可能性がある。ペリクルにわたる圧力差は、ペリクルを曲げる役割を果たす力をペリクルに及ぼすおそれがある。例えばペリクルは、パターニングデバイス側に曲がるか、パターニングデバイスから離れるようにして曲がる可能性がある。ペリクルが曲がると、ペリクルの損傷及び/又はペリクルの破損が生じるおそれがある。例えばペリクルは、パターニングデバイス、及び/又はパターニングデバイス及びペリクルを含み得る保護ケース(例えば
図19に示す保護ケース147など)に接触するほど曲がるおそれがある。ペリクルと別のコンポーネントが接触すると、ペリクルの損傷が生じ、ペリクルが破損するおそれがある。
【0297】
[00296] ペリクルの損傷を回避するために、(例えばポンプダウン又はベント手順中に)圧力状態を変化させる速度を、ペリクルにわたるどんな圧力差もペリクルを損傷させない安全な閾値内に確実に維持されるように制限することができる。これは、例えば圧力変化の間のペリクルの1つ以上の領域の位置を測定し、この測定結果に応じて圧力を変化させる速度を調整することによって達成することができる。例えば、実質的にペリクルの中心部分の位置を測定することができる。ペリクルの中心部分がパターニングデバイスに近過ぎること、及び/又はパターニングデバイスから遠過ぎることが検出された場合は、パターニングデバイスがさらされる圧力の変化の速度を低下させることができる。ペリクルの位置が十分に安全な範囲内にある(すなわち、パターニングデバイスに近過ぎない又はパターニングデバイスから遠過ぎない)ことが検出された場合は、ポンプダウン及び/又はベント手順を完了するのに必要な時間を短縮するために、圧力変化の速度を高めることができる。
【0298】
[00297] 一般に、リソグラフィ装置は、ペリクルによって保護されたパターニングデバイスを収容するように構成されたチャンバと、チャンバ内に位置するペリクルの少なくとも一部分の位置を測定するように構成されたセンサ装置と、チャンバ内部の圧力を変化させるように構成された圧力変化装置と、を備える、リソグラフィ装置用のロードステージを備えることができる。圧力変化装置は、チャンバ内部の圧力を変化させる速度を、ペリクルの少なくとも一部分の位置の測定結果に応じて制御するように構成することができる。圧力変化装置は、例えばチャンバ内部の圧力を変化させる速度を、ペリクルの位置がペリクルの位置の望ましい範囲の外にあることを示す測定結果に応じて低下させるように構成することができる。ペリクルの位置の望ましい範囲は、例えばパターニングデバイスからの最小距離とパターニングデバイスからの最大距離の間にある可能性がある。つまり、ペリクルがパターニングデバイスに近づき過ぎた、又はパターニングデバイスから離れすぎた場合は、圧力変化の速度を低下させることができる。
【0299】
[00298] 有利には、パターニングデバイス及びペリクルがさらされる圧力変化の速度を、ペリクルの位置の測定結果に応じて制御することによって、ポンプダウン及び/又はベント手順に必要な時間を短縮できると同時に、圧力変化の速度を確実に安全な範囲内に維持できるようになる。
【0300】
[00299] 代替的な実施形態では、パターニングデバイス及びペリクルがポンプダウン及び/又はベント手順中にさらされる可能性がある圧力変化の速度をモデル化することができる。例えば、ポンプダウン及び/又はベント手順中のペリクルの応答は、複数の異なる圧力変化の速度でモデル化することができる。これによって、ペリクルに損傷を与えない安全な圧力変化速度の決定が可能になる。例えば、ペリクルに損傷を与えることのない、パターニングデバイス及びペリクルがさ・BR>轤ウれる可能性がある圧力変化の最大速度は、モデル化によって決定することができる。
【0301】
[00300] しかしながら、モデル化結果は関連する不確実性を伴い、ペリクルの挙動を正確に予測しないおそれがある。例えば、ペリクルの機械的特性はペリクルによって異なる可能性があり、実際にモデルに入力される機械的特性と異なる可能性がある。したがって、ペリクルの挙動は、モデル化結果と異なる可能性がある。モデル化不確実性を解決するために、実際に使用される圧力変化の速度は、実質的にモデル化プロセスを使用して決定された圧力変化の最大安全速度未満である可能性がある。つまり、ポンプダウン及び/又はベントプロセスにおいて使用される圧力変化の速度は、ペリクルに損傷を与えるリスクを低下させるために、(モデル化プロセスの結果として決定される)理論的に安全な圧力変化の速度未満に低下する可能性がある。
【0302】
[00301] したがって、モデル化不確実性の1つの結果として、実際に使用される圧力変化の速度が、実質的にペリクルに損傷を与えることなく使用し得る圧力変化の最大速度未満となる可能性がある。結果として、ポンプダウン及び/又はベントプロセスを実行するのにかかる時間が増加する可能性がある。その結果、パターニングデバイスをリソグラフィ装置にロードしてリソグラフィ装置から取り出す速度が低下し、リソグラフィ装置のスループットが低下するおそれがある。
【0303】
[00302] 以上で説明したように、一部の実施形態では、パターニングデバイス及びペリクルがさらされる圧力変化の速度を、ペリクルの位置の測定結果に応じて制御することができる。圧力変化の速度を(モデル化結果とは対照的に)ペリクルの測定結果に応じて制御することによって、ペリクルに損傷を与えるリスクを冒さずに圧力変化の速度を高めることができる。つまり、リアルタイムの測定結果に依存する場合に使用される圧力変化の速度は、モデル化結果に依存する場合より大きくなる可能性がある。その結果、パターニングデバイスは、ペリクルの測定結果に応じてポンプダウン及び/又はベントプロセスを制御することによって、リソグラフィ装置への及び/又はリソグラフィ装置からのロードをより速い速度で行うことができる。有利には、これによってリソグラフィ装置のスループットの増大が可能になる。
【0304】
[00303] ポンプダウン及び/又はベント手順は、パターニングデバイス及びペリクルが保護ケース(例えば
図19に示す保護ケース147)内にある間に実行することができる。
図19を参照して以上で説明したように、保護ケース147は、1つ以上の透明ウィンドウ149a、149bを備えることができる。
【0305】
[00304] 保護ケースの透明ウィンドウ149a、149bは、ペリクルの位置を定めるためにペリクルの光学測定を可能にする。例えば、
図19に示すペリクル故障検出装置140と同様のセンサを使用して、ペリクルのある領域の位置を定めることができる。
図19に示すペリクル故障検出装置140は、放射源141と、放射センサ143と、コントローラ145と、を備える。放射源141は、ペリクル19の一部分を非法線入射角で放射ビーム142によって照明する。その結果、放射ビーム142のペリクル19から反射された一部分142aの位置は、ペリクル19の照明された部分の位置に依存する。例えば、ペリクル19の照明された部分がパターニングデバイスMAに近づく又はパターニングデバイスMAから遠ざかる場合は、反射された部分142aが放射センサ143に入射する位置は変化する可能性がある。
【0306】
[00305] 放射センサ143は、反射された部分142aが放射センサ143に入射する位置を検出するように動作可能であってよい。例えば、放射センサ143は、放射センサ143上の異なる位置に位置する複数の異なる検出器領域を含むことができる。複数の検出器領域は、例えば検出器領域アレイ(例えばCCDアレイ又はCMOSアレイ)として配置することができる。コントローラ145は、放射センサ143による測定の結果を受信し、この測定結果から放射センサ143上の反射された部分142aの位置を定めることができる。コントローラ145はさらに、測定結果からペリクルの照明された部分の位置を定めることができる。例えば、コントローラ145は、ペリクル19の照明された部分のパターニングデバイスMAからの距離を測定することができる。
【0307】
[00306] 放射センサ143はまた、放射ビーム142の透明ウィンドウ149a及び/又はパターニングデバイスからの反射光を測定することができる。放射センサ143上における、透明ウィンドウ149a及び/又はパターニングデバイスからの反射光の位置は、ペリクルからの反射光の位置と比較され得る基準測定値の働きをすることができる。例えば、ペリクルからの反射光の位置を透明ウィンドウ149a及び/又はパターニングデバイスMAからの反射光の位置と比較することによって、ペリクルの透明ウィンドウ149a及び/又はパターニングデバイスMAからの距離を測定することができる。
【0308】
[00307] 一部の実施形態では、共焦点結像センサを使用して、ペリクルのある部分の位置を定めることができる。共焦点結像センサは、共焦点結像センサの光軸に沿って一連の単色像を形成するように構成された放射源を備えることができる。放出された放射の反射光は、ピンホールを通して結像される。センサは、結像された反射放射の、結像された放射を反射する光軸上の位置に依存する波長を決定することができる。したがって、結像された放射の波長は、ペリクルなどの反射面の位置を示す。この原理を利用して、共焦点結像センサは、ペリクルの照明された領域の位置を測定するために使用することができる。
【0309】
[00308] 一部の実施形態では、共焦点結像センサを使用して、複数の反射面の位置を同時に定めることができる。例えば、共焦点結像センサを使用して、透明ウィンドウ149a及び/又はパターニングデバイスMAの位置を定めると同時に、ペリクルの照明された部分の位置を定めることができる。ペリクルの定められた位置は、例えばペリクルの透明ウィンドウ及び/又はパターニングデバイスMAからの距離を測定するために、パターニングデバイス及び/又は透明ウィンドウの定められた位置と比較することができる。他の方法を使用して、ペリクルの位置とパターニングデバイス及び/又は透明ウィンドウの位置を同時に測定することもできる。例えば、三角測量を用いて、ペリクルの位置とパターニングデバイス及び/又は透明ウィンドウの位置を一緒に同時に測定することができる。これらの位置は、
図19に関連して以上に示したように同時にモニタすることができる。
【0310】
[00309] 以上で説明したように、ペリクルのある部分の位置の測定結果を使用して、ペリクルがさらされる圧力変化の速度を制御することができる。ペリクルの測定される部分は、例えば実質的にペリクルの中心部分であってよい。一部の実施形態では、ペリクルの複数の部分の位置を(例えば複数のセンサを使用して)測定することができる。一部の実施形態では、光センサ(例えば
図19を参照して以上で説明したタイプのセンサ)を使用して、ペリクルのある部分の位置を測定することができる。一般に、ペリクルの1つ以上の部分の位置を測定するのに、どんな形のセンサも使用することができる。
【0311】
[00310]
図18及び
図19のセンサの数及びその場所は、例示目的で示されているに過ぎない。波長を適切に選択した追加のセンサ及び場所を、要求又は必要に応じた機能を追加して使用することができる。
【0312】
[00311] 一部の実施形態では、付加的又は代替的に、ペリクルの1つ以上の部分の位置の測定結果を、ペリクルの疲労を示すものとして使用することができる。例えば、圧力の関数であるペリクルの位置の変化は、複数の異なるポンプダウン及び/又はベント手順中に測定することができる。圧力の関数であるペリクルの位置が異なるポンプダウン及び/又はベント手順によって大幅に異なる場合は、ペリクルの機械的特性が変化したことを示す可能性がある。これは、例えばペリクルの疲労を示す可能性があり、ペリクルがさらなる損傷及び破損を起こしやすい可能性があるという警告として使用される可能性がある。そして、このようなペリクルは使用から除外し、ペリクルのさらなる損傷を回避することができる。
【0313】
[00312] 一部の実施形態では、ペリクル19の故障は、ペリクル19内を伝播する放射の測定を通じて検出することができる。このような測定は、リソグラフィ装置において他の目的で既に行われている可能性がある。例えば、ペリクル19内を伝播した放射の測定は、アライメント目的で、及び/又は波面収差を測定するために行うことができる。
図20は、コンポーネントのアライメント及び/又は波面収差を測定するのに使用できるリソグラフィ装置LAの概略図である。
図20に示すリソグラフィ装置LAは、
図1に示すリソグラフィ装置LAと同様である。
図1を参照して以上で説明した同一の特徴を示すために、
図20において同一の参照番号を使用する。これらの特徴は、
図20を参照してこれ以上詳細に説明されることはない。
【0314】
[00313]
図20に示す実施形態では、パターニングデバイスMAはフィデューシャル150を備える。フィデューシャル150は、
図5に示すマーカ81と同様とすることができる。フィデューシャル150は、測定目的で放射ビームBの一部分にパターン形成することができる。例えば、フィデューシャル150は、放射ビームBによって照明されると複数の回折次数の形成をもたらす反射回折格子を備えることができる。他の実施形態では、フィデューシャル150はパターニングデバイスMAの一部を形成しない可能性があるが、(例えば支持構造MT上の)パターニングデバイスMAに隣接して配置される可能性がある。フィデューシャル150から反射される放射はペリクル19を通過する。
【0315】
[00314]
図20にはセンサ装置151も示されている。センサ装置151は、投影システムPSから出力される放射ビームBの1つ以上の特性を測定するように構成される。センサ装置151は、例えばフィデューシャル150から反射される放射の1つ以上の特性(例えばフィデューシャルで形成される回折次数)を測定することができる。センサ装置151によって行われる測定を使用して、パターニングデバイスMA及び/又は支持構造MTのアライメントに対する基板テーブルWTのアライメントを決定することができる。例えばセンサ装置151を使用して、フィデューシャル150によって形成される放射ビームBの1つ以上のフィーチャ(例えば1つ以上の回折次数)の位置を定めることができる。これによって、フィデューシャル150に対するセンサ装置151のアライメントの決定が可能になる。
【0316】
[00315] 一部の実施形態では、付加的又は代替的にフィデューシャル150及びセンサ装置151を使用して、投影システムPSによって導入される波面収差を測定することができる。例えばセンサ装置151は、シヤリング干渉測定を実行するように構成することができる。このような実施形態では、センサ装置151は、透過型回折格子と、透過型回折格子の後方に配置された放射センサとを含むことができる。放射センサは、フィデューシャル150に形成された回折次数と、センサ装置151の透過型回折格子に形成された回折次数の相互作用を測定するように構成することができる。フィデューシャル150及び/又はセンサ装置151は、互いに対して移動することができる。例えばセンサ装置151は、放射ビームBに対してステップ移動し、各ステップ位置で測定を行うことができる。センサ装置151による測定の結果を多項式の一セット、例えばゼルニケ多項式などにフィットさせることができる。そのような多項式の一セットは、投影システムPSによって導入された波面収差を特徴付けることができ、また、投影システムを調整する(例えば投影システムPSによって導入された波面収差を抑制する)のに使用することができる。
【0317】
[00316] 以上で説明したように、コンポーネントのアライメント及び/又は波面収差を決定するのに使用される測定は、ペリクル19を透過する放射を測定することを含むことができる。以上でさらに説明したように、ペリクル19は、入射する放射の一部分を吸収及び/又は反射することができる。例えば、EUV放射ビームBのパワーは、ペリクル19を通過するたびに、およそ10%がペリクル19によって吸収される可能性がある。放射ビームBは、放射センサ151に到達するまでにペリクル19を二回通過するため、EUV放射ビームBのパワーはペリクル19によっておよそ20%が吸収される可能性がある。その結果、センサ装置151によって測定される放射強度はペリクル19の存在によって低下する。ペリクル19が破損しそうな場合は、ペリクル19は放射ビームBの光路から取り除くことができる。例えばペリクル19は、粉々に砕ける及び/又は巻き上がる可能性があり、その結果、もはやペリクルフレーム17によってパターニングデバイスMA上に保持されなくなる。ペリクル19が放射ビームBの光路から取り除かれる場合は、センサ装置151に到達する放射の強度は上昇することになる。これは、センサ装置151によって測定される信号の増加によって検出することができる。このような増加を使用して、ペリクル19の故障を検出することができる。
【0318】
[00317]
図20に示す実施形態では、リソグラフィ装置LAはさらに、センサ装置151と通信するコントローラ153を備える。コントローラ153は、センサ装置151によって測定される放射強度の測度を示す信号をセンサ装置151から受信することができる。コントローラ153は、センサ装置151によって測定される放射強度の測度の増加を検出することができ、検出された増加からペリクル19が破損していると判定することができる。コントローラ153は、例えばペリクル19の故障が検出されたことを示す信号及び/又は警告を発することができる。
【0319】
[00318]
図20に示す実施形態では、放射源SO、センサ装置151、及びコントローラ153は、ペリクル故障検出装置の一例を形成すると考えることができる。放射源SOは、ペリクル19によって保護されたパターニングデバイスMAの一部分を放射ビームBによって照明するように構成される。放射ビームBはペリクル19を透過する。センサ装置151は、ペリクル19を透過した放射ビームBの少なくとも一部分を受けて測定するように配置される。コントローラ153はセンサ装置151と通信し、センサ装置が受けた放射の強度の測度が増加するときにペリクル19の故障を検出するように構成される。放射強度の測度は、例えば放射のパワーとすることができる。
【0320】
[00319] ペリクルの破損を制御及び/又は検出する実施形態を以上で説明してきた。上記の実施形態では、ペリクルが破損し始めると、ペリクル内のクラックはペリクル全体に伝播し続けると一般に仮定されている。しかしながら、一部の実施形態では、ペリクルはペリクル内のクラックの伝播を制限するように構成されたフィーチャを含むことができる。
図21は、複数のターミネーションフィーチャ301を含むペリクル19の概略図である。説明を簡単にするため、ターミネーションフィーチャ301は、ペリクル19のサイズと比較して比較的大きいものとして示されている。実際には、ターミネーションフィーチャ301は、ペリクル19のサイズと比較して、
図21に示すよりも小さいものとすることができる。ペリクル19はまた、
図21に示すよりも多くのターミネーションフィーチャ301を含むことができる。
【0321】
[00320] ターミネーションフィーチャ301は、ペリクル19が張力下に置かれるとき(例えばペリクルフレームに懸架されるとき)、ターミネーションフィーチャに生じる応力が、ペリクルのターミネーションフィーチャの外側の領域に生じる応力より小さくなるように構成することができる。以下でさらに詳細に説明するように、ターミネーションフィーチャ301は、例えばペリクル19内の孔を含むことができる(したがって、ターミネーションフィーチャ自体の内部に応力を有しない)。代替的に、ターミネーションフィーチャは、ペリクルのドーピング材料でドープされた領域を含むことができる。
【0322】
[00321]
図22は、ペリクル19内に形成されたクラック303の概略図である。クラック303は長さaを有する。クラック303は半径Rを有する先端305を有する。本明細書におけるクラック先端305への言及は、
図22において305と標示された太線によって示されたクラック303の端部に接するペリクルの材料の領域を指すものと解釈されるべきである。本明細書におけるクラック先端における応力への言及は、クラック303の端部に接するペリクルの材料の領域が経験する応力を意味するものと解釈されるべきである。
【0323】
[00322] まず、クラック303がペリクル19内に形成されると、クラックは、次の条件を満たす場合に成長し続けることになる。
【0324】
【0325】
[00324] 式中、σはクラックの先端における応力であり、aはクラックの長さであり、KICはペリクル材料の臨界応力拡大係数、すなわち靭性である。(1)に与えられた条件の左側の式は、クラックの先端における応力拡大係数KIにほぼ等しい。臨界応力拡大係数KICは、ペリクルの材料の定数特性である。
【0326】
[00325] 典型的には、ペリクル材料内のクラックの先端における応力σは、当初(すなわちクラックが初めて生じたときは)、ペリクルがペリクルフレームに取り付けられたときに受ける予張力によってもたらされる応力ほどである。クラックが従来のペリクル内を伝播し始めるとき、クラック先端における応力σは典型的には減少しない。その代わりに、クラック先端における応力σはクラック長さaが増すにつれて増加する。結果として、(1)の条件は満たされ続け、クラックは、ペリクル19の懸架領域の縁部に到達するまで(すなわちクラックがペリクルフレームに到達するまで)伝播し続けることになる。
【0327】
[00326]
図21に示すペリクルの実施形態では、ペリクル19はターミネーションフィーチャ301を含む。ターミネーションフィーチャ301は、クラック先端305がターミネーションフィーチャ内に伝播する場合に、クラック先端がクラック先端における応力σの減少を経験するように構成される。クラック先端における応力σの減少は、(1)に与えられた条件がもはや成り立たなくなるほどの大きさだけ減少する。その結果、クラックの伝播を終了させることができ、クラックはそれ以上成長し続けることはない。
【0328】
[00327]
図23は、クラックがターミネーションフィーチャ301に向かってその内部に伝播するときの、クラック先端における応力σをクラック長さaの関数として概略的に示す。
図22に示す応力は、ニュートン毎平方メートル単位のミーゼス応力である。クラックが成長するとき、クラック先端の半径Rは実質的に一定のままである一方、クラックの長さaは増す。その結果、クラック長さaのクラック先端の半径Rに対する比率a/Rは上昇し、結果として、クラック先端における応力σもクラック長さaの増加とともに増加する。
【0329】
[00328] クラック長さaの増加に伴う応力σの初期増加は
図22に見ることができる。クラックがターミネーションフィーチャ301に接近するにつれて、応力σの増加率は無限大になるまで増加する。これは、ターミネーションフィーチャ301を直接取り囲む領域では、応力がペリクル19の残りの部分より高く、かつターミネーションフィーチャ301自体より高いためである。ターミネーションフィーチャを取り囲む高応力領域によって、クラックがターミネーションフィーチャ301に引き込まれる可能性がある。
【0330】
[00329] ターミネーションフィーチャ301は、クラック先端の半径Rより大きい半径を有することができる。クラックがターミネーションフィーチャ301に入ると、クラック先端の半径Rはターミネーションフィーチャ301の半径になって増大する。その結果、比率a/Rは低下し、クラック先端における応力σも減少する。応力σの大きな減少は、
図23の約0.985×10
-7mより大きいクラック長さaに見ることができる。応力σの減少は、(1)の条件がもはや満たされず、したがって、クラックの伝播がターミネーションフィーチャ301で終了することを意味する。このように、クラックがそれ以上伝播することが妨げられ、クラックのサイズは、クラックがペリクル19全体に伝播する前に制限される。
【0331】
[00330] 以上で説明したように、ターミネーションフィーチャ301の半径は、伝播するクラック先端の半径Rより大きいものとすることができる。ペリクル19内を伝播するクラック先端は、約1~10ナノメートルのオーダーの半径Rを有することができる。したがって、ターミネーションフィーチャ301は、約10ナノメートルより大きい半径を有することができる。一部の実施形態では、ターミネーションフィーチャ301の半径はこれより大きいものとすることができ、例えば半径は、約20ナノメートル、約50ナノメートル、さらに約100ナノメートルより大きいものとすることができる。有利には、ターミネーションフィーチャ301が伝播するクラック先端の半径Rより大きい半径を有することによって、クラック先端がターミネーションフィーチャ301に入ったときに、比率a/Rが確実に低下し、これに対応してクラック先端における応力σが減少する。
【0332】
[00331]
図21に示す実施形態では、各ターミネーションフィーチャ301は実質的に円形である。他の実施形態では、ターミネーションフィーチャ301は、実質的に円形以外の形状を有することができる。一般に、ターミネーションフィーチャ301は、クラック先端の半径Rより大きい横寸法を有することができる。横寸法は、例えば半径とすることができる。横寸法は、ターミネーションフィーチャ301の幅とすることができる。横寸法は、約10ナノメートル、約20ナノメートル、約50ナノメートル、さらに約100ナノメートルより大きいものとすることができる。
【0333】
[00332]
図21の実施形態に示すように、ターミネーションフィーチャ301は、実質的に規則的なパターンで配置することができる。つまり、隣接するターミネーションフィーチャ301間の間隔は、いくつかの異なる隣接するターミネーションフィーチャ301のセットについて実質的に同じにすることができる。有利には、ターミネーションフィーチャ301を実質的に規則的なパターンで配置することによって、クラックが2つのターミネーションフィーチャ間を伝播した後、ペリクル19の縁部に到達する前にその両端で終了する可能性が増す可能性がある。これはクラックの範囲を制限する働きをすることができ、有利には、汚染をもたらすおそれがある相当量のデブリをクラックが発生させることを防止することができる。したがって、有利には、ターミネーションフィーチャ301は、ペリクル19の故障から生じるおそれがある周辺コンポーネントの汚染を低減させる。
【0334】
[00333] 一部の実施形態では、一部又は全てのターミネーションフィーチャ301は、ペリクル19内の孔を含むことができる。孔は、例えば実質的に円形の孔とすることができる。円形孔は、材料の比較的安定した断絶であり、したがって、(他の形状を有する孔と比較して)ペリクル19の故障を引き起こす変化そのものを減少させることができる。一般に、ペリクル19内の孔は、ペリクル19の他の場所の応力より大きい応力を、ペリクル19の孔と接する領域に生じさせる。例えば、ペリクル19の孔と接する領域の応力は、ペリクル19の他の場所の応力の約2倍とすることができる。しかしながら、ペリクル19の孔と接する領域の応力は、典型的には伝播するクラック先端における応力σより小さい。
【0335】
[00334]
図24Aは、ペリクル19内の孔を含むターミネーションフィーチャ301に向かって伝播しているクラック303の概略図である。クラック303は、ターミネーションフィーチャ301に到達する前、ターミネーションフィーチャ301の半径より小さい半径Rを有するクラック先端305を有する。クラック先端における応力σは、(1)の条件が満たされ、クラック先端がペリクル19内を伝播し続けるほどの大きさである。
【0336】
[00335]
図24Bは、ターミネーションフィーチャ305に到達した後のクラック303の概略図である。クラック先端305がターミネーション領域305に入ると、クラック先端305の半径Rは、ターミネーションフィーチャ301の半径となり、クラック先端における応力σは、ペリクル19のターミネーションフィーチャ301と接する領域の応力となる。以上で説明したように、ペリクル19のターミネーションフィーチャ301と接する領域の応力は、典型的にはペリクルの他の場所より大きい(例えばペリクルの他の場所の応力の2倍)が、典型的には(
図24Aに示すように)クラック先端305がターミネーションフィーチャ301に向かって伝播しているときのクラック先端305における応力より小さい。したがって、ターミネーションフィーチャに入ると、クラック先端における応力σは、
図22を参照して以上で説明したように減少し、クラック303の伝播は終了する。
【0337】
[00336] ペリクル19内の孔を含むターミネーションフィーチャ301を備える実施形態では、孔の直径(又は孔の他の横寸法)は、ペリクル19がパターニングデバイスMAとの接触を防止するように構成された汚染粒子のサイズより小さいものとすることができる。ペリクル19内の孔を含むターミネーションフィーチャ301は、例えばペリクル19内に孔を形成するためにペリクル19の層を等方的にエッチングすることによって形成することができる。孔のサイズ及び/又は形状は、エッチングプロセスを制御することによって制御することができる。
【0338】
[00337] 一部の実施形態では、一部又は全てのターミネーションフィーチャ301は、ペリクル19のドープ領域を含むことができる。ペリクル19のドープ領域は、ドーピング材料でドープされる。例えばホウ素などのドーピング材料を使用して、ペリクルの各領域をドープすることができる。一部の実施形態では、ホウ素以外のドーピング材料を使用することもできる。一部の実施形態では、ドーピング材料はp型ドーパントとすることができる。付加的又は代替的に、ドーピング材料はs型ドーパントとすることができる。
【0339】
[00338] 一部の実施形態では、ペリクルはシリコン(例えばポリシリコン膜)を含むことができる。このような実施形態では、ドーピング材料は、例えばホウ素、アルミニウム、窒素、ガリウム及び/又はインジウムの1つ以上を含むドーパントなどのp型ドーパントとすることができる。付加的又は代替的に、ドーピング材料は、例えばリン、ヒ素、アンチモン、ビスマス及び/又はリチウムを含むドーパントなどのn型ドーパントとすることができる。
【0340】
[00339] 一部の実施形態では、ペリクルはグラフェンを含むことができる。このような実施形態では、ドーピング材料は、ホウ素、窒素、チタン、クロム、プラチナ、コバルト、インジウム及び/又は硫黄の1つ以上を含むことができる。付加的又は代替的に、ドーピング材料は、有機分子、酸、塩基及び/又はハロゲン化物の1つ以上を含むことができる。一部の実施形態では、ドーピング材料は、例えば銅、ニッケル、ルテニウム、モリブデン及び/又はプラチナなどの遷移金属を含むことができる。
【0341】
[00340] ペリクル19のドープ領域は、ペリクルの他の非ドープ領域より小さい応力を受ける可能性がある。例えば、ドープ領域を含むペリクル19が張力下に置かれるとき(例えばペリクルフレームに懸架されるとき)、ドープ領域に生じる応力は、ペリクル19のドープ領域の外側の領域に生じる応力より小さいものとすることができる。一部の実施形態では、ペリクル19のドープ領域によって、圧縮応力をペリクル19に導入することができる。
【0342】
[00341] ペリクル19のドープ領域の応力はペリクルの他の非ドープ領域より小さいため、伝播するクラックの先端がドープ領域に入る場合、クラック先端における応力σは、ドープ領域に入るときに減少する。クラック先端における応力σの減少は、上記(1)の条件がもはや満たされなくなるに足るものとすることができる。結果として、クラックの伝播はドープ領域で終了することになる。
【0343】
[00342] ペリクルの領域は、例えば、まずペリクル19にマスクを貼ることによって選択的にドープすることができる。マスクは、ドープ対象の領域のみが露出されたままになるように、ペリクル19のドープ対象の領域以外の領域を覆うことができる。次に露出領域をドーピング材料でドープすることができる。ドーピングが行われた後、マスクを取り除き、ドープ領域を含むペリクル19を露出させることができる。ペリクル19の部分のみがドープされるため、ペリクル19全体の機械的特性は、ドープ領域に実質的に影響されない。
【0344】
[00343] 一部の実施形態では、ドープ領域は実質的に円い形を有することができる。実質的に円形のドープ領域の機械的特性は、ペリクル19に形成された孔を参照して以上で考察した機械的特性と類似している可能性がある。ドーピングによってターミネーション領域を形成することによって、ドーピングプロセスは、ターミネーション領域の機械的特性(例えばペリクルに張力を与えることから生じる応力分布)を制御するために制御することができる。
【0345】
[00344] 一部の実施形態では、ドープ領域は、円形のドープ領域の規則的なパターン以外の形で形成することができる。
図25は、ドープ領域の複数のストライプ状のドープ領域301を含むペリクル19の概略図である。
図25の実施形態では、ストライプは、
図25に示すペリクル19のx方向の全範囲に延在する。
図25の実施形態では、ドープ領域のストライプは互いに実質的に平行である。ドープ領域が互いにほぼ又は実質的に平行になるように位置合わせすることによって、ストライプに垂直な方向に(すなわち
図25に示すy方向に)コンポーネントから伝播し始めるいずれのクラックもドープ領域301に到達し、ドープ領域301で終了することになる。さらに、ストライプのドープ領域301によってもたらされるペリクル19の応力分布は、一般に、クラックはほぼy方向に(又は少なくともx方向よりy方向に大きいコンポーネントから)のみ成長及び伝播することを意味する。したがって、
図25に示すように配置されたストライプのドープ領域は、ペリクル内に生じる実質的に全てのクラックがドープ領域301に入ることを確実にすることができる。
【0346】
[00345] ドープ領域301のストライプは、ドープ領域301で終了するクラック先端の半径Rより大きい横寸法を有することができる。横寸法は、ドープ領域301の(
図25に示すy方向の)幅とすることができる。ドープ領域301の幅は、例えば、約10ナノメートル、約20ナノメートル、約50ナノメートル、さらに約100ナノメートルより大きいものとすることができる。
【0347】
[00346] 一部の実施形態では、ドープ領域は、ペリクルの懸架領域の周囲に設けることができる。
図26は、ペリクルの懸架領域の周囲に設けられたドープ領域を含むペリクルアセンブリの実施形態の概略図である。ペリクルアセンブリは、ペリクル19とペリクルフレーム17とを備える。ペリクル19はペリクルフレーム17によって保持される。ペリクルフレーム17は、ペリクル19の懸架(すなわち支持されない)領域131を囲む。ペリクル19の懸架領域131は、ペリクル19の懸架領域131の周囲に配置された境界部分311を含む。
図26の実施形態では、境界部分311はドーピング材料(例えばホウ素)でドープされる。以上で説明したように、ペリクルのドープ領域は、ペリクル19のドープ領域の外側の他の領域より小さい応力を受ける可能性がある。境界部分は、上記のターミネーションフィーチャと同様のターミネーションフィーチャとして機能することができる。
【0348】
[00347] 有利には、ドープ領域を境界部分311の形で提供することで、ペリクルにかかる異なる方向の応力を、境界部分311のドーピングを制御することによって制御できるようになる。例えば、
図26に示すペリクルにかかるx及びy方向の応力を制御するために、異なる量のドーピング材料を境界部分311上の異なる位置に提供することができる。
【0349】
[00348] 一部の実施形態では、
図21~
図27を参照して以上で説明したような異なる形態のターミネーションフィーチャを、単一の実施形態において組み合わせることができる。例えば、一部の実施形態では、
図26に示すドープされた境界部分は、例えばペリクルの円形のドープ領域及び/又は孔のパターンなどの他のターミネーションフィーチャと組み合わせることができる。一般に、本明細書で説明する異なる形態のターミネーションフィーチャはいずれも単一の実施形態において組み合わせることができる。
【0350】
[00349] 一部の実施形態では、ペリクルを使用する前にペリクルの靭性を増すために、ペリクルを処理プロセスにかけることができる。例えば、引張状態に保持しながら、ペリクルの全体又は一部を、ペリクルの延性-脆性遷移温度(DBTT)より高い温度まで加熱することができる。以下でさらに詳細に説明するように、引張状態に保持しながら、ペリクルの全体又は一部をペリクルのDBTTより高い温度に加熱することで、ペリクルの一部の領域が塑性変形する可能性がある。塑性変形は、ペリクル内の欠陥がある領域に圧縮応力を導入することができる。以上で説明したように、ペリクルに圧縮応力が存在することで、ペリクル内のクラック伝播が減速又は停止する可能性がある。
【0351】
[00350] 以上で説明したように、ペリクルは複数の異なる材料の層から形成することができる。例えば、ペリクルを形成するために、複数の異なる層を互いの上に堆積させることができる。ペリクルの製造中、堆積プロセスにおける不完全性に起因して、1つ以上の層が層内に欠陥を含んで堆積される可能性がある。1つ以上の層内に欠陥があることによって、ペリクルの局所的に脆弱な領域が生じる可能性がある。付加的又は代替的に、(例えば数ナノメートルのオーダーのサイズを有する)小さいクラックが、ペリクルの1つ以上の層内に生じる可能性がある。このようなペリクル内の欠陥は、後になってペリクルを疲労及び/又は故障させるおそれがある局部応力集中をペリクルに引き起こす可能性がある。したがって、ペリクル故障を引き起こす可能性を低下させるために、ペリクルのそのような欠陥領域を強化することが望まれる。
【0352】
[00351] 一部の状況では、延性材料は、一時的に張力にさらすことによって強化することができる。張力は、材料内のクラック成長により強い耐性を有する持続的強化状態をもたらすことができる。例えば、小さいクラック含む延性ペリクルが引張状態に保持される場合、材料の全体が弾性変形する可能性がある。しかしながら、クラックの先端に近接した領域では、ペリクルは塑性変形することができ、これによってクラックの先端に圧縮応力が導入される可能性がある。クラックの先端における圧縮応力は、クラックのさらなる伝播を減速させる又は防止することができ、したがって、さらなる損傷に対してペリクルを強化することができる。したがって、ペリクルの疲労からの回復力が増すことになる。このようなペリクルの疲労からの回復力は、張力が取り除かれた後に残る。例えば張力は、短時間、例えば1秒未満の間印加することができる。張力は、例えば衝撃荷重として印加することができる。
【0353】
[00352] 一般に、ペリクルは、比較的脆い少なくともいくつかの層で形成される。したがって、正常動作温度におけるペリクルは、上記の圧縮応力が導入されるのに十分な延性を示さない可能性がある。したがって、ペリクルに張力を作用させる前に、まずはペリクルのDBTTより高い温度までペリクルを加熱することができる。DBTTを超える温度までペリクルを加熱することでペリクルの延性が高まる。ペリクルが高い延性を有している間に、ペリクルのペリクル内の欠陥に近接した領域が塑性変形するようにペリクルに高い張力を作用させることができる。以上で説明したように、塑性変形は、さらなるクラック成長に対してペリクルを強化できる圧縮応力の領域をペリクルに導入することができる。
【0354】
[00353] ペリクルの各領域の塑性変形は、臨界塑性変形より小さいものにとどめるべきである。つまり、ペリクル内のクラック先端における応力がペリクルの引張強度を超える張力をペリクルに作用させるべきではない。これは、塑性変形がクラック
先端に生じても、クラックはペリクル内に伝播しないことを保証する。
【0355】
[00354] ペリクルがペリクルのDBTTより高い温度まで加熱されると、例えばペリクルがペリクルにわたる圧力差にさらされることによって、ペリクルに張力を印加することができる。以上で説明したように、パターニングデバイス及びペリクルが変化する圧力状態にさらされる場合、ペリクルにわたって圧力差が確立される可能性がある。例えば、パターニングデバイスとペリクルの間の容積内の圧力は、この容積の外側の圧力より遅い速度で変化し、これによってペリクルにわたる圧力差が生じる可能性がある。ペリクルにわたる圧力差は、ペリクルを曲げるように作用する力をペリクルに及ぼすことができる。例えば、ペリクルはパターニングデバイス側に曲がるか、パターニングデバイスから離れるようにして曲がることができる。ペリクルを曲げるように作用する力は、ペリクルの張力を増加させることができる。以上で説明したように、ペリクルの温度がDBTTより高い間にペリクルの張力が増加することによって、ペリクルの各領域が塑性変形する可能性がある。塑性変形は、ペリクルに圧縮応力を導入する働きをすることができる。
【0356】
[00355] 一部の実施形態では、ペリクルフレームが支持するペリクルの張力が、ペリクルの一部の領域に塑性変形を生じさせるのに十分な高い温度までペリクルを加熱することができる。したがって、このような実施形態では、(例えばペリクルにわたる圧力差を導入することによって)ペリクルの張力をさらに増加させる必要がない可能性がある。しかしながら、不利なことに、塑性変形を生じさせるのにさらなる張力の増加を必要としない程度までペリクル全体の温度を上昇させることは、ペリクル全体の張力を減少させる働きをするおそれがある。したがって、このような加熱は局所的に実行し、ペリクルの限定領域でのみ実行することができる。
【0357】
[00356] 一部の実施形態では、ペリクルの懸架部分のコーナは、ペリクルのコーナにおける応力を低下させるために局所的に加熱することができる。ペリクルがペリクルフレームと接触するペリクルの懸架部分のコーナは、典型的には、比較的高い応力集中が生じる場所である可能性がある。コーナをペリクルのDBTTより高い温度まで局所的に加熱することによって、コーナ領域にクリープが生じる可能性がある。クリープは、加熱領域におけるペリクルの応力を局所的に低下させる働きをすることができる。
【0358】
[00357] 例えばペリクルの1つ以上の部分を放射によって照明することによって、ペリクルを局所的に加熱することができる。例えば、照明領域を加熱するために、レーザを使用してペリクルの1つ以上の部分をレーザビームで照明することができる。付加的又は代替的に、ペリクルは、ペリクルを適切な位置に保持するペリクルフレームを加熱することによって局所的に加熱することができる。ペリクルフレームを加熱することによって、ペリクルのペリクルフレームと接触する又は近接する領域が加熱されることになる。これはペリクルの懸架領域のコーナを含むことができる。ペリクルの残りの部分は、限定的な加熱しか受けないか又は全く加熱を受けない可能性があり、ペリクルのDBTT未満のままである可能性がある。その結果、ペリクル全体の張力は低下しないことになる。
【0359】
[00358] 以上で説明したように、ペリクルの1つ以上の領域は、ペリクルのDBTTより高い温度まで加熱することができる。ペリクルの加熱は、ペリクルの温度がペリクルの融点を超えないように行うことができる。例えば、ポリシリコン材料を含むペリクルは、約1000℃以上の温度まで加熱することができる。
【0360】
[00359] 一部の実施形態では、ペリクルは、リソグラフィ装置における動作中に連続的に加熱することができる。例えばペリクルは、ペリクルの温度が閾値温度超に保たれるように連続的に加熱することができる。リソグラフィ露光中、ペリクルの各部分は、放射がパターニングデバイス上にスキャンされるときに、放射(例えばEUV放射)に周期的に露光することができる。ペリクルは、入射する放射の一部分を吸収することができ、これによってペリクルの温度が上昇する。ペリクルを放射に露光する周期的な性質に起因して、ペリクルの温度は周期的な加熱を受けることができる。つまり、ペリクルは放射への露光中に加熱され、放射への露光の合間に冷める。
【0361】
[00360] リソグラフィ装置の環境において、パターニングデバイス及びペリクルは一般的に真空圧力状態にポンプで引かれる。しかしながら、それでも環境は、例えば水蒸気などの気体を含む可能性がある。水蒸気はペリクル上に凝縮し、ペリクル上に水が存在することになる可能性がある。ペリクルと水が接触してペリクルが酸化する可能性がある。酸素はEUV放射に対する透過率が低い。したがって、ペリクルの酸化によって、EUV波長におけるペリクルの透過率は低下する。
【0362】
[00361] ペリクルの温度が閾値温度より下がったときにのみ、ペリクル上に水が凝縮することができる。例えば、ペリクルが放射に露光されていない(そして放射によって加熱されている)ときに、水は周期的な加熱を受けるペリクル上に凝縮することができる。ペリクルが放射に露光されるとき、ペリクルの温度は、ペリクル上への水の実質的な凝縮を防ぐのに十分であってよい。したがって、ペリクル上への水の凝縮は、ペリクルの温度が水の実質的な凝縮が起こり得る温度まで下がらないように、放射への露光の合間にペリクルを加熱することによって抑制及び/又は防止することができる。例えばペリクルは、使用中にペリクルの温度が閾値温度を下回らないように連続的に加熱することができる。閾値温度は、ペリクル上への水の実質的な凝縮が起こらない温度とすることができる。閾値温度は、例えば約120℃とすることができる。
【0363】
[00362] ペリクルを加熱することによってペリクル上への水の凝縮を抑制及び/又は防止することは、(ペリクル上に水の存在がないため)ペリクルの酸化を抑える。有利には、ペリクルの酸化を抑えることで、酸化によるペリクルのEUV透過率の低下が抑えられる。
【0364】
[00363] ペリクルは、例えば抵抗加熱によって加熱することができる。以上に記載したように、ペリクルは、導電性の少なくとも1つの層を含むことができる。1つ以上の導電層との電気的接続をなし、層の抵抗加熱が生じるように、導電層に電流を流すことができる。
【0365】
[00364] 一般に、ペリクルを加熱することは、(例えばペリクルの疲労を引き起こすことによって)ペリクルの寿命を短くするおそれがある。しかしながら、ペリクルの酸化を抑えるためにペリクルを抵抗加熱することによって、ペリクルは、EUV放射への露光により吸収されるパワーと比較して比較的少ない量のパワーを吸収する可能性がある。例えば、一部の実施形態では、ペリクルは、EUV放射への露光によって約4W/cm2を吸収する可能性がある。これに対して、ペリクルが約120℃の閾値温度超を保つことを保証するペリクルの抵抗加熱は、約0.1W/cm2のパワー吸収しか生じさせない可能性がある。したがって、抵抗加熱は、比較的少ない量の追加的な吸収パワーに寄与することができ、ペリクルの疲労を大幅に増大させない可能性がある。
【0366】
[00365] 以上に記載したように、ペリクルは抵抗加熱によって加熱することができる。ペリクルを加熱するために、ペリクルアセンブリの一部として電流源を設けることができる。本発明の一部の実施形態によれば、ペリクルアセンブリは、ペリクルを支持するように構成されたフレームと、フレームに取り付けられ、少なくとも1つの導電層を含むペリクルと、を備えることができる。ペリクルアセンブリはさらに、少なくとも1つの導電層に接続され、少なくとも1つの導電層に電流を発生させるように構成された電流源を備えることができる。電流源は、ペリクルの温度が閾値温度より高くなるように抵抗加熱によってペリクルを加熱する電流を発生させるように構成することができる。閾値温度は約摂氏120℃以上とすることができる。電流源は、実質的に直流の電流を少なくとも1つの導電層に発生させるように構成することができる。
【0367】
[00366] ペリクルを閾値温度まで加熱するのに必要な電流は、材料によって異なり得ることが理解されよう。例えば、ペリクルを閾値温度まで加熱するのに必要な電流は、ペリクルの導電材料の抵抗率及びペリクルの熱質量に依存することができる。所与のペリクルを閾値温度まで加熱するのに必要な電流は、当業者による実験を通して容易に計算及び/又は確立することができる。
【0368】
[00367] 以上で詳細に説明してきたように、ペリクルは、典型的にはペリクルが初期張力状態で保持されるようにペリクルフレーム上に配置される。ペリクルの初期張力は、ペリクルにわたり圧力差が確立されるとき、ペリクルの湾曲及び撓みを抑える働きをする。例えば、リソグラフィ装置からパターニングデバイスをロード及びアンロードする間、パターニングデバイス及びペリクルは、変化する圧力状態にさらされる可能性がある。変化する圧力状態によって、圧力差がペリクルにわたって確立される可能性がある。ペリクルを初期張力状態に保持することは、圧力差によって生じるペリクルの湾曲及び撓みを抑える。例えば、ペリクルが最大約2パスカルの圧力差にさらされるときに約500μmを超えて撓まないように、ペリクルを初期張力下に置くことが望まれる。したがって、ペリクルの高い初期張力は、ペリクルが変化する圧力状態にさらされるとき(例えばリソグラフィ装置からパターニングデバイスをロード及び/又はアンロードする間)有利な効果をもたらすことができる。
【0369】
[00368] リソグラフィ露光プロセス中に、ペリクルがさらされる圧力は、実質的に一定とすることができる。したがって、ペリクルの両側の圧力は実質的に同じとすることができ、ペリクルにわたり実質的な圧力差が存在しない可能性がある。したがって、リソグラフィ露光プロセスを受けている間にペリクルを張力下に置く必要性が低下する可能性がある。
【0370】
[00369] リソグラフィ露光プロセス中に、EUV放射がペリクルにスキャンされるとき、ペリクルの所与の部分が周期的な加熱を受けることができる。ペリクルの各部分の周期的な加熱によって、ペリクルのある部分の応力が増し、ペリクルの他の部分の応力が減る。周期的な加熱に起因するペリクルの応力の変化は、ペリクルの疲労を引き起こすために示されてきた。つまり、ペリクルの引張強度は経時的に低下する。ペリクルが疲労する速度は、ペリクルの初期張力の増加とともに高まる。したがって、ペリクルの初期張力は、ペリクル疲労が生じる速度を高め、ペリクルの寿命を短くする働きをするおそれがある。したがって、ペリクルの高い初期張力は、リソグラフィ露光プロセス中に悪影響をもたらすおそれがある。
【0371】
[00370] 以上に記載したように、ペリクルの比較的高い初期張力は、パターニングデバイスをロード及び/又はアンロードする間は有利なことがあるが、リソグラフィ露光中は不利なことがある。したがって、ペリクルの張力を増加させる及び/又は減少させる働きをする方法及び装置が提案される。これによって、張力をペリクルの状態に基づいて制御できるようになる。例えば、ペリクルの張力は、ペリクルをリソグラフィ装置にロード及び/又はアンロードする前に増加させることができる。ペリクルの張力は、リソグラフィ露光プロセスにおいてペリクルをEUV放射に露光する前に減少させることができる。
【0372】
[00371]
図27は、ペリクルの張力を調整するように構成されたペリクルアセンブリ15の概略図である。ペリクルアセンブリ15は、ペリクル19と、ペリクル19を支持するように構成されたペリクルフレーム17と、を備える。ペリクルアセンブリ15はさらに、ヒータ501を備える。ヒータ501は、ペリクルフレーム17を加熱するように構成される。ヒータは、例えば抵抗加熱によってペリクルフレーム17を加熱するように構成することができる。
図27に示すヒータ501は、ペリクルフレーム17上に配置された薄膜抵抗ヒータ501である。ペリクルフレーム17を加熱することでペリクルフレームが膨張することになり、これによってフレームが伸長し、フレーム17にかかるペリクル19が伸長する。ペリクル19を伸長させることがペリクル19の張力を増加させる働きをする。
【0373】
[00372]
図27に示す実施形態では、ヒータ501は、ペリクルフレーム17の2つの向かい合う辺にのみ配置されている。したがって、ヒータ501は、
図27に示すy方向にのみペリクル19の張力を増加させるように構成される。
図27に示すように、ペリクル19は、x方向よりy方向に長い。したがって、y方向の張力は、ペリクルが圧力差にさらされたときにどれくらい撓むかを測定する際の支配的要因である可能性がある。他の実施形態では、ヒータ501は、ペリクルフレーム17の他の辺に配置することができる。例えばヒータ501は、ペリクル19をx方向に伸長させるように配置することもできる。
【0374】
[00373] ある実施形態(図示せず)では、ヒータは、ペリクルフレーム17の各辺に設けることができる。ヒータをペリクルフレームの各辺に設ける場合、ペリクルは等方的に膨張する。これはペリクル19の応力を低下させることができるために有利である。
【0375】
[00374] 一部の実施形態では、ペリクル19は、リソグラフィ装置にパターニングデバイスをロード及びアンロードするのに望ましい張力より小さい初期張力状態でペリクルフレーム17上に配置することができる。パターニングデバイスをリソグラフィ装置にロードする前に、ヒータ501は、ペリクルフレーム17を加熱し、ペリクル19の張力を増加させるためにスイッチをオンにすることができる。ペリクル19の張力は、例えば圧力差がペリクル19にわたって確立されたときにペリクルの撓み及び湾曲に抵抗する張力まで増加させることができる。次に、パターニングデバイス及びペリクルアセンブリ15は、真空圧状態にポンプダウンし、リソグラフィ装置にロードすることができる。
【0376】
[00375] リソグラフィ装置にロードされた後、ヒータ501はスイッチをオフにすることができ、ペリクルフレーム17は冷めることができる。ペリクルフレーム17が冷めるとき、ペリクル19の張力は低下する。次に、パターニングデバイス及びペリクルは、リソグラフィ露光プロセスの一環としてEUV放射に露光することができる。ペリクルの張力はEUV放射への露光前に低下されたため、有利なことにEUV放射への露光から生じる疲労は低下する。
【0377】
[00376] リソグラフィ装置からパターニングデバイス及びペリクルアセンブリをアンロードする前に、ヒータ501は、ペリクルフレーム17を加熱するために電源を入れることができる。ペリクルフレーム17の加熱は、ペリクル19の張力を増加させるためにペリクルフレーム及びペリクル19を伸長させる。ペリクル19の張力が増加することによって、ペリクル19がアンロードプロセス中に大気圧状態にベントされるときの撓み及び湾曲にペリクルが抵抗することが可能になる。
【0378】
[00377] 一部の実施形態では、ペリクルフレーム17は、抵抗加熱以外の方法を使用して加熱することができる。例えば、ペリクルフレーム17は、ペリクルフレーム17によって吸収され、ペリクルフレーム17を加熱する放射に露光することができる。一部の実施形態では、ペリクルフレーム17は、ペリクルフレーム17を加熱すること以外の方法を使用して伸長させることができる。例えば、1つ以上のアクチュエータ(例えばピエゾアクチュエータ)は、ペリクルフレーム17を伸長させるためにフレームに力を印加するように構成することができる。
【0379】
[00378] 一部の実施形態では、ペリクル19の張力は、ペリクルフレーム17を伸長させるのとは対照的に、ペリクルフレーム17を曲げることによって調整することができる。
図28A及び28Bは、ペリクル19の張力を増加させるためにペリクルフレーム17を曲げた後(
図28B)及び曲げる前(
図28A)のペリクルアセンブリの一部分の概略図である。ペリクルフレーム17は、第1の層17aと、第1の層17a上に配置された第2の層17bとを含む。ペリクル19は第2の層17bに取り付けられる。
【0380】
[00379] ペリクルフレーム17の第2の層17bは、ペリクルフレーム17の第1の層17aより高いヤング率及び熱膨張係数を有する。第2の層17bは、例えばルテニウムを含むことができる。ペリクルフレーム17が加熱されると、第2の層17bは第1の層17aより速い速度で膨張する。その結果、フレーム17は
図28Bに示すように曲がる。フレーム17の湾曲は、ペリクル19の張力を増加させるためにペリクル19を引っ張る働きをする。
【0381】
[00380] ペリクルフレーム17は、例えば抵抗加熱によって、ペリクルフレーム17を曲げるために加熱することができる。例えば、第2の層17bは導電性を有するものとすることができ、抵抗加熱によって第2の層17bを加熱するために、第2の層17bに電流を通すことができる。代替的に、ペリクルフレーム17は、ペリクルフレーム17を抵抗加熱によって加熱するために電流を通す第3の導電層を含むことができる。第3の層は、例えば第1の層17aと第2の層17bの間に配置することができる。電流がペリクル19に及ばないようにペリクル19をペリクルフレーム17から電気的に絶縁することが望まれる。ペリクル19は、例えば導電層の上面にエッチラインを製造することによって導電層から電気的に絶縁することができる。
【0382】
[00381]
図28A及び28Bに示す構成では、一定量の加熱を受けたときにペリクルフレームが曲がる量は、第1及び第2の層17a、17bの相対厚さに依存することができる。したがって、第1及び第2の層17a、17bの厚さは、一定量の加熱に対して望ましい曲げ量を提供するように選択することができる。
【0383】
[00382] 一部の実施形態では、ペリクルの張力は、ペリクルフレーム17を曲げるのではなくペリクル19自体を曲げることによって変化させることができる。例えば、
図28A及び28Bを参照して以上で説明した多層構造はペリクル自体に使用することができる。
図29A及び29Bは、本発明の実施形態に係るペリクルアセンブリ15の概略図である。ペリクルアセンブリ15はペリクルフレーム17によって支持されるペリクル19を備える。ペリクル19は、第1のヤング率及び第1の熱膨張係数を有する第1の層19aと、第2のヤング率及び第2の熱膨張係数を有する第2の層19bと、を少なくとも含む。第2のヤング率は第1のヤング率より高く、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数より高い。
【0384】
[00383] 第2の層19bは、第1の層19aよりパターニングデバイスから離れた場所に配置することができる。ペリクル19は、第1及び第2の層19a、19b以外の別の層を含むことができる。説明を簡単にするために、
図29A及び29Bに別の層は示されていない。
【0385】
[00384]
図29Aは初期張力状態のペリクル19を示す。初期張力は、例えばリソグラフィ露光プロセス中に使用することができる。パターニングデバイス及びペリクルアセンブリを、リソグラフィ装置に及び/又はリソグラフィ装置からロードする及び/又はアンロードする前に、ペリクル19の張力を増加させることができる。ペリクル19の張力を増加させるために、ペリクル19を加熱することができる。例えば、抵抗加熱によってペリクルを加熱するために、(
図29A及び29Bには示していない)ペリクルの導電層に電流を通すことができる。付加的又は代替的に、ペリクル19は、ペリクルによって吸収され、その結果ペリクルを加熱する働きをする放射に露出することができる。
【0386】
[00385]
図29Bは、ペリクル19が加熱された後のペリクルアセンブリ15を示す。ペリクル19を加熱することによって、第2の層19bは第1の層19aより大きく膨張する。これにはペリクルを曲げ、ペリクルの張力を増加させる効果がある。その結果、ペリクルは、ペリクル19にわたる圧力差にさらされたときのさらなる湾曲に十分に抵抗することができる。(例えばリソグラフィ露光における使用のために)ペリクル19の張力を減少させるために、ペリクル19は、弛緩して
図29Aに示す位置に戻るように冷めることができる。
【0387】
[00386] 一部の実施形態では、ペリクル19は、ペリクルの剛性がペリクル全体にわたって均一にならないように構成することができる。
図30は、ペリクル19の縁部に近い領域のペリクルの剛性が高いペリクルアセンブリ15の概略図である。
図30に示すペリクルアセンブリ15は、
図29A及び29Bに示すペリクルアセンブリ15と同様であり、類似のコンポーネントを再び詳細に説明することはない。
図30の実施形態では、第2の層19bは、ペリクル19の縁部に近い領域の厚さが大きい。ペリクル19の厚さが大きい領域は、パターニングデバイス上の露光フィールドを覆わない可能性がある。したがって、ペリクル19の厚さを大きくしてもペリクルの結像性能は影響を受けない。
【0388】
[00387]
図30の実施形態では、ペリクル19の厚さが大きい領域は、局所的に加熱することができる。厚さが大きい領域を局所的に加熱することによって、ペリクル19の湾曲のほとんどが(
図30に示すように)厚さが大きい領域で生じる。ペリクルの本体は厚さが大きい領域の湾曲によって伸長され、その結果、ペリクルの張力が増加する。ペリクル19の厚さが大きい領域は剛性も高い。したがって、この領域は、ペリクル19の湾曲によって領域に発生する応力に耐えることによく適している。
【0389】
[00388] 厚さが大きい領域は、例えばペリクルフレーム17上にヒータを配置することによって、局所的に加熱することができる。ヒータは、ペリクル19の縁部に近いペリクルの領域を局所的に加熱する役割を果たすことになる。ヒータは、例えば抵抗ヒータとすることができる。
【0390】
[00389] 一部の実施形態では、ペリクルの局所的加熱は、ペリクルの望ましい応力分布を作成するように構成することができる。これによって、不均一な応力場をペリクルに生成することができる。例えば、局所的加熱は、一方向の応力を、別方向の応力を維持しながら低減するように構成することができる。一般に、局所的加熱を使用して、ペリクルの応力分布を制御することができる。これによって、例えばペリクルの皺を低減するために応力を均衡させることができる。
【0391】
[00390]
図30の実施形態では、ペリクル19の懸架部分の一領域が大きい厚さを有する。大きい厚さは、その領域の剛性を増加させる働きをする。ペリクルの剛性が増加すると、ペリクル19にわたる圧力差に耐えるのに必要なペリクルの張力が減少する結果となる。したがって、有利には、ペリクルの張力は、厚さが大きい領域が存在しない場合に使用される張力より小さい張力まで増加させることができる。
【0392】
[00391] 一部の実施形態では、ペリクルの厚さが大きい領域とペリクルの本体の間の移行部は、ペリクルの厚さが(
図30に示す厚さの階段状変化とは対照的に)領域間で滑らかに移行するように構成することができる。このような移行部は、例えばペリクルの製造中にペリクルを等方的にエッチングすることによって形成することができる。厚さが異なる領域間の滑らかな移行部は、移行領域における応力集中を低くすることができる。
【0393】
[00392] 以上で説明してきたペリクルの応力張力を増加させる方法及び装置を使用して、内在張力を導入するのが困難な材料のペリクルに張力を導入することができる。例えば、一部の実施形態では、ペリクルはグラフェンを含むことができる。一般的に、グラフェンを含むペリクルに張力を導入することは困難である。以上で説明した方法及び装置は、有利なことに、グラフェンを含むペリクルに張力を導入することを可能にする。
【0394】
[00393] ペリクルの張力を制御する様々な実施形態を以上で説明してきた。ペリクルの張力を制御するように構成された装置は、張力制御装置と呼ばれることがある。張力制御装置は、ペリクルアセンブリのコンポーネント(例えばペリクルフレーム及び/又はペリクル)を加熱するように構成されたヒータを備えることができる。張力制御装置は、ペリクルフレームに力を及ぼすように構成された1つ以上のアクチュエータを備えることができる。
【0395】
[00394] ペリクル及びペリクルアセンブリの様々な発明態様が以上で説明され、発明の特定の実施形態との関連で図に示されている。説明及び/又は図示されたどの態様も単一の実施形態に組み合わせられることは理解されよう。例えば、1つの実施形態の1つ以上の特徴は、別の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。2つ以上の発明態様を含むいくつかの実施形態を説明してきたが、単一の発明態様しか含まない実施形態も本明細書では想定されていることがさらに理解されよう。一般に、説明した実施形態のどの特徴も単独で使用することができるか、又は説明した実施形態の他のどの特徴とも任意に組み合わせて使用することができる。
【0396】
[00395] 本テキストではリソグラフィ装置との関連における本発明の実施形態について特に言及しているが、本発明の実施形態は他の装置で使用することができる。発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置或いは、ウェーハ(又は他の基板)又はマスク(又は他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成することができる。これらの装置は一般に、リソグラフィツールと呼ぶことができる。こうしたリソグラフィツールは、真空状態又は大気(非真空)状態を使用することができる。
【0397】
[00396] 「EUV放射」という用語は、4~20nmの範囲内、例えば、13~14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するとみなすことができる。EUV放射は、例えば、6.7nm又は6.8nmといった4~10nmの範囲内の10nm未満の波長を有することができる。
【0398】
[00397] 本テキストではIC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書に記載のリソグラフィ装置は、他の用途を有することができることは理解されるべきである。他の用途として可能なものには、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用の誘導パターン及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造が含まれる。
【0399】
[00398] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上記以外の態様で実施できることが明らかである。以上の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、以下の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えることができる。
【0400】
[00399] 本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ以上の実施形態を開示する。開示される実施形態は本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は開示される実施形態に限定されない。本発明は添付の特許請求の範囲によって画定される。
【0401】
[00400] 説明される(1つ以上の)実施形態、及び明細書中の「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得ることを示すが、必ずしもすべての実施形態がその特定の特徴、構造、又は特性を含んでいなくてもよい。また、かかる表現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性がある実施形態に関連して説明される場合、かかる特徴、構造、又は特性を他の実施形態との関連においてもたらすことは、それが明示的に説明されているか否かにかかわらず、当業者の知識内のことであると理解される。
【0402】
[00401] 請求の範囲の解釈には、概要及び要約部分ではなく、詳細な説明部分が用いられることが意図されていることを理解すべきである。概要及び要約部分は、本発明者(ら)が考える本発明の1つ以上の例示的な実施形態を記載し得るが、それがすべてではなく、したがって、いかなる意味においても本発明及び添付の請求の範囲を限定することを意図していない。
【0403】
[00402] これまで、特定の機能の実施及びそれらの関係を示す機能的構成単位を用いて本発明を説明してきた。これらの機能的構成単位の境界は、説明の便宜上、本明細書において任意に定められたものである。かかる特定の機能及びそれらの関係が適切に実行される限り、別の境界を定めることが可能である。
【0404】
[00403] 特定の実施形態の以上の説明は、本発明の全般的性質を完全に明らかにしているため、当該分野の技術の範囲内の知識を適用することにより、他の者が、本発明の基本概念を逸脱することなく、過度の実験の必要なく容易に、かかる特定の実施形態を様々な用途に合わせて変形及び/又は適合させることができるだろう。したがって、そのような適合及び変形は、本明細書に提示された教示及び手引きに基づき、開示された実施形態の均等物の意味及び範囲内であることが意図される。本明細書中の表現又は用語は、限定ではなく説明を目的とするものであり、本明細書の用語又は表現は、当業者により上記教示及び手引きに照らして解釈されるべきことを理解すべきである。
【0405】
[00404] 本発明の広さ及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきでなく、以下の請求の範囲及びその均等物に基づいてのみ画定されるべきである。