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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-27
(45)【発行日】2023-05-10
(54)【発明の名称】冷菓用チョコレートおよび冷菓
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20230428BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20230428BHJP
【FI】
A23G1/00
A23G9/00 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019136238
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021019504
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(73)【特許権者】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】副島 正行
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】石原 葉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 千尋
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148848(JP,A)
【文献】特開2018-113863(JP,A)
【文献】特開2006-280209(JP,A)
【文献】特開平08-089172(JP,A)
【文献】特公平01-054804(JP,B2)
【文献】国際公開第2009/057451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00
A23G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオ分(カカオニブ、カカオマス、ココアケーキ、ココアパウダー、及びココアバターの中で含まれるものの合計)を15質量%以上含有し、前記カカオ分由来のココアバターが3~9質量%であり、前記カカオ分由来のココアバターを含む油脂の合計が43~50質量%である冷菓用チョコレートであって、
前記チョコレートに含まれる油脂が、下記条件(a)~(c)を満たす、冷菓用チョコレート。
(a)構成脂肪酸として炭素数14以下の直鎖飽和脂肪酸を10質量%以下含有する。
(b)構成脂肪酸として炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸を10~25質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65~85質量%含有する。
【請求項2】
チョコレートに含まれる油脂が、下記条件(d)を満たす、請求項1に記載の冷菓用チョコレート。
(d)構成脂肪酸の不飽和脂肪酸含有量に対する多価不飽和脂肪酸含有量が0.45以下である。
【請求項3】
チョコレートに含まれる油脂が、下記条件(e)を満たす、請求項1又は2に記載の冷菓用チョコレート。
(e)固体脂含量が10℃で1~30%、20℃で1~20%、35℃で3%以下である。
【請求項4】
チョコレートに含まれる油脂が、ラウリン系油脂及び液状油を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷菓用チョコレート。
【請求項5】
前記冷菓用チョコレートが、冷菓の天面、冷菓の底面または冷菓の間に層状に用いられるチョコレートである、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷菓用チョコレート。
【請求項6】
前記冷菓が、容器に充填された冷菓である、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷菓用チョコレート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の冷菓用チョコレートを使用した冷菓。
【請求項8】
前記冷菓用チョコレートが、冷菓の天面、冷菓の底面または冷菓の間に層状に存在する、請求項7に記載の冷菓。
【請求項9】
前記冷菓が、容器に充填されている、請求項7又は8に記載の冷菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓用チョコレートに関する。また、本発明は、冷菓用チョコレートを用いた冷菓にも関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、チョコレートのみからなる商品以外に、チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品にも使用されている。チョコレートと他の食品とを組み合わせた商品には、チョコレートとアイスクリーム等の冷菓とを組み合わせた商品がある。例えば、特許文献1~3には、冷菓用チョコレートが提案されている。
【0003】
消費者の食品に対するニーズの変化から、最近は、多少高価であっても、より美味しい食品が求められている。アイスクリーム等の冷菓においても、より美味しい商品が求められている。そのため、冷菓にチョコレートが使用される場合、冷菓に使用されるチョコレートについても、風味及び口どけが良く、より美味しいことが求められている。
【0004】
冷菓に使用されるチョコレートは冷菓と接触するため、通常の菓子に使用する場合と比べると早く固化する。通常の菓子に使用されるチョコレートを冷菓に用いると、チョコレートの固化が速いために、チョコレートが厚掛かりになったり、チョコレートが冷菓の表面を覆う前に固まるなどの製造上の問題が生じる。これを防ぐために、通常冷菓用チョコレートは油脂を多量に配合することで粘度を下げるのだが、一方で油っぽくなり、風味が悪くなる恐れがあった。また、冷菓用チョコレートのように、粘度の低いチョコレートが容器に充填された冷菓に使用されると、容器の側壁を伝って底面方向にチョコレートが流れ落ちるという製造上の問題も生じる。そのため、冷菓と組み合わせる時の製造適性を有しながら油っぽさがなく、良好な風味を有する冷菓用チョコレートが求められている。
【0005】
また、最近の冷菓には、美味しさに加えて、食べやすいことも求められている。冷菓の食べやすさの1つには、冷凍庫から取り出してから直ぐに食べられることが挙げられる。冷菓が冷凍庫から取り出してから直ぐに食べられるためには、冷菓は、冷凍保存中に硬くなり過ぎずに、冷凍庫から取り出した直後に適度な硬さであることが必要である。そのため、冷菓と同様に、冷菓に使用されるチョコレートにも、冷凍庫から取り出した直後に適度な硬さであることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-172972号公報
【文献】特開2006-280209号公報
【文献】特開2010-268749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、冷菓と組み合わせる時の製造適性、良好な硬さ、良好な風味、良好な口溶けを有する冷菓用チョコレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、冷菓用チョコレートにおいて、チョコレートに含まれる油脂が特定の条件を満たすことで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]カカオ分を15質量%以上、ココアバターを3~9質量%、油脂を43~50質量%含有する冷菓用チョコレートであって、
前記チョコレートに含まれる油脂が、下記条件(a)~(c)を満たす、冷菓用チョコレート。
(a)構成脂肪酸として炭素数14以下の直鎖飽和脂肪酸を10質量%以下含有する。
(b)構成脂肪酸として炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸を10~25質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65~85質量%含有する。
[2]チョコレートに含まれる油脂が、下記条件(d)を満たす、[1]に記載の冷菓用チョコレート。
(d)構成脂肪酸の不飽和脂肪酸含有量に対する多価不飽和脂肪酸含有量が0.45以下である。
[3]チョコレートに含まれる油脂が、下記条件(e)を満たす、[1]又は[2]に記載の冷菓用チョコレート。
(e)固体脂含量が10℃で1~30%、20℃で1~20%、35℃で3%以下である。
[4]チョコレートに含まれる油脂が、ラウリン系油脂及び液状油を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の冷菓用チョコレート。
[5]前記冷菓用チョコレートが、冷菓の天面、冷菓の底面または冷菓の間に層状に用いられるチョコレートである、[1]~[4]のいずれかに記載の冷菓用チョコレート。
[6]前記冷菓が、容器に充填された冷菓である、[1]~[5]のいずれかに記載の冷菓用チョコレート。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の冷菓用チョコレートを使用した冷菓。
[8]前記冷菓用チョコレートが、冷菓の天面、冷菓の底面または冷菓の間に層状に存在する、[7]に記載の冷菓。
[9]前記冷菓が、容器に充填されている、[7]又は[8]に記載の冷菓。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、冷菓と組み合わせる時の製造適性、良好な硬さ、良好な風味、良好な口溶けを有する冷菓用チョコレートを提供することができる。さらに、このようなチョコレートを用いた冷菓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】容器内に充填された冷菓用チョコレートおよび冷菓の一実施形態を示した概略断面図である。
図2】容器内に充填された冷菓用チョコレートおよび冷菓の一実施形態を示した概略断面図である。
図3】容器内に充填された冷菓用チョコレートおよび冷菓の一実施形態を示した概略断面図である。
図4】容器内に充填された冷菓用チョコレートおよび冷菓の一実施形態を示した概略断面図である。
図5】容器内に充填された冷菓用チョコレートおよび冷菓の一実施形態を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<冷菓用チョコレート>
本発明に係るチョコレートは、カカオ分を15質量%以上、ココアバターを3~9質量%、油脂を43~50質量%含有するものであり、チョコレートに含まれる油脂は、脂肪酸組成が特定の条件を満たすものである。このようなチョコレートは、冷菓と組み合わせる時の製造適性、良好な硬さ、良好な風味、良好な口溶けを有するものであり、冷菓用として好適に用いることができる。
【0013】
本発明において、「チョコレート」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上で規定されたチョコレートに限定されないものとする。チョコレートは、食用油脂、糖質、カカオ分、乳製品、香料、乳化剤等を原料とし、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなす食品のことである。本発明におけるチョコレートは、水分含量が好ましくは3質量%以下である。なお、本発明におけるチョコレートは、ダークチョコレート、およびミルクチョコレートの他に、ホワイトチョコレート、ルビーチョコレート、およびカラーチョコレートも含む。
本発明において、「カカオ分」とは、カカオニブ、カカオマス、ココアケーキ、ココアパウダー、ココアバターとする。
本発明において、「ココアバター」とは、チョコレートに配合されるココアバターの他に、カカオニブ、カカオマス、ココアケーキ、ココアパウダー等に含まれるココアバターも含む。
本発明において、「チョコレートに含まれる油脂」とは、チョコレート中の全油脂分のことであり、配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)も含むものとする。例えば、一般的に、カカオマスの油脂(ココアバター)含有量は54~56質量%(含油率0.54~0.56)であり、ココアパウダーの油脂(ココアバター)含有量は11~24質量%(含油率0.11~0.24)であり、全脂粉乳の油脂(乳脂)含有量は25質量%(含油率0.25)であるから、チョコレートに含まれる油脂の含有量は、各原料のチョコレート中の配合量(質量%)に含油率を掛け合わせたものを合計した値となる。
本発明において、「冷菓」とは、冷凍状態で喫食される菓子類であれば、特にその種類は限定されない。例えば、冷菓としては、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」、いわゆる、「乳等省令」で規定される、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスや、厚生省告示「食品、添加物等の規格基準」で規定される氷菓が挙げられる。
【0014】
本発明に係るチョコレートは、カカオ分を15質量%以上含有し、好ましくは15~40質量%含有し、より好ましくは15~25質量%含有する。
【0015】
本発明に係るチョコレートは、ココアバターを3~9質量%含有し、好ましくは3~8.5質量%含有し、より好ましくは3~8質量%含有する。
【0016】
本発明に係るチョコレートは、油脂を43~50質量%含有し、好ましくは43~49質量%含有し、より好ましくは44~49質量%含有する。
【0017】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、少なくとも下記条件(a)を満たす。
(a)構成脂肪酸として炭素数14以下の直鎖飽和脂肪酸を10質量%以下含有する。
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、構成脂肪酸として炭素数14以下の直鎖飽和脂肪酸を0.1~8.0質量%含有することが好ましく、0.5~6.0質量%含有することがより好ましい。
【0018】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を10質量%以下含有することが好ましく、0.1~8.0質量%含有することがより好ましく、0.5~6.0質量%含有することがさらに好ましい。
【0019】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、少なくとも下記条件(b)を満たす。
(b)構成脂肪酸として炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸を10~25質量%含有する。
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、構成脂肪酸として炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸を12~23質量%含有することが好ましく、15~20質量%含有することがより好ましい。
【0020】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、少なくとも下記条件(c)を満たす。
(c)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を65~85質量%含有する。
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を68~84質量%含有することが好ましく、70~83質量%含有することがより好ましい。
【0021】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、さらに下記条件(d)を満たすことが好ましい。
(d)構成脂肪酸の不飽和脂肪酸含有量に対する多価不飽和脂肪酸含有量が0.45以下である。
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、構成脂肪酸の不飽和脂肪酸含有量に対する多価不飽和脂肪酸含有量が、0.20~0.40であることが好ましく、0.25~0.35であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、構成脂肪酸中のトランス脂肪酸の含有量が10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
本発明において、炭素数14以下の直鎖飽和脂肪酸は、炭素数が好ましくは8~14であり、例えば、オクタン酸(8:0)、デカン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)等が挙げられる。
本発明において、炭素数16~18の直鎖飽和脂肪酸とは、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)等が挙げられる。
本発明において、不飽和脂肪酸は、炭素数が好ましくは16~24であり、より好ましくは炭素数18であり、例えば、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、およびリノレン酸(18:3)等が挙げられる。
なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数と二重結合数の組み合わせである。また、多価不飽和脂肪酸とは、二重結合数が2つ以上の不飽和脂肪酸である。
【0024】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂は、さらに下記条件(e)を満たすことが好ましい。
(e)固体脂含量(SFC)が10℃で1~30%、20℃で1~20%、35℃で3%以下である。
本発明においては、固体脂含量が、10℃で1~20%、20℃で1~15%、35℃で2%以下であることが好ましく、10℃で1~15%、20℃で1~10%、35℃で1%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)を用いて行うことができる。
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定することができる。
【0026】
本発明に係るチョコレートは、含まれる油脂が好ましくはラウリン系油脂を含有する。本発明に係るチョコレートに用いるラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を好ましくは40質量%以上含有し、より好ましくは40~60質量%含有する油脂である。ラウリン系油脂としては、例えば、パーム核油、ヤシ油、ババス油等が挙げられる。さらに、これらの油脂を混合および分別等の加工処理を施した加工油脂が挙げられる。これらのラウリン系油脂の中でも、ヤシ油が好ましい。これらのラウリン系油脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0027】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂中のラウリン系油脂の含有量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明に係るチョコレートは、含まれる油脂が好ましくは液状油を含有する。本発明に係るチョコレートに用いる液状油とは、20℃で液状の油脂のことである。液状油としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油等が挙げられる。さらに、これらの油脂を混合および分別等の加工処理を施した加工油脂が挙げられる。これらの液状油の中でも、大豆油、菜種油が好ましい。これらの液状油は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0029】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂中の液状油の含有量は、50~90質量%であることが好ましく、52~88質量%であることがより好ましく、55~85質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明に係るチョコレートに用いるラウリン系油脂と液状油の配合比は、0:100~20:80であることが好ましく、0:100~15:85であることがより好ましく、0:100~10:90であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明に係るチョコレートは、含まれる油脂が好ましくは部分水素添加油脂を含有する。本発明において、部分水素添加油脂とは、原料油脂を構成する一部の不飽和脂肪酸の二重結合に水素を付加して得られる油脂のことである。部分水素添加油脂は、硬化油といわれることもある。部分水素添加油脂中のトランス脂肪酸の含有量は、10~60質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがより好ましい。
【0032】
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂中の部分水素添加油脂の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、8~20質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明に係るチョコレートには、ラウリン系油脂、液状油、部分水素添加油脂以外にも、乳脂等の通常チョコレートの製造に使用される油脂を配合することができる。
【0034】
本発明に係るチョコレートには、さらに、糖質を配合することができる。糖質としては、例えば、ショ糖(砂糖および粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、およびデキストリンなどが使用できる。チョコレートに占める糖質の含有量は、25~60質量%であることが好ましく、28~55質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは30~50質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明に係るチョコレートには、さらに、一般的に配合される原料を配合することができる。具体的には、例えば、全脂粉乳および脱脂粉乳などの乳製品、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、およびコーヒー粉末などの各種粉末、ガム類、澱粉類、乳化剤、酸化防止剤、着色料、ならびに香料を使用できる。
【0036】
本発明に係るチョコレートは、従来公知のチョコレートの製造方法を用いることにより製造することができる。本発明に係るチョコレートは、例えば、上記の原料を使用し、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、および冷却工程等を経て、製造することができる。
【0037】
本発明に係るチョコレートは、冷菓に用いられ、好ましくは冷菓の天面、冷菓の底面または冷菓の間に層状に用いられる。また、本発明に係るチョコレートは、好ましくは容器に充填された冷菓に用いられる。
【0038】
本発明に係る冷菓は、本発明に係るチョコレートを使用している。本発明に係る冷菓は、従来公知の冷菓の製造方法を用いることにより、冷菓とチョコレートを組み合わせることで製造することができる。例えば、本発明に係るチョコレートを冷菓と組み合わせる方法としては、充填、被覆、注入、挟む等が挙げられる。
【0039】
本発明に係るチョコレートと冷菓の組み合わせの形態は、特に限定されるものではなく、様々な形態とすることができる。例えば、本発明に係るチョコレートは、冷菓の天面に存在してもよいし、冷菓の底面に存在してもよいし、冷菓の間に層状に存在してもよい。また、本発明に係るチョコレートは、これらの形態を組み合わせたものであってもよく、冷菓の天面や底面の一部のみに存在したり、冷菓の間の2層以上に存在したりしてもよい。また、円柱状や角柱状などの冷却した押し型等を用いて凹型にした冷菓等の上面に充填し、再度冷却した押し型を用いるなどしてチョコレートを凹型に成形した層にしてもよい。チョコレートで形成された凹部の内側には冷菓のほかにムース、ジェリー、ジャム、ソースなどのデザート素材などを充填してもよい。
【0040】
本発明に係る冷菓は、好ましくは容器に充填されている。本発明に係るチョコレートと冷菓を充填する容器は特に限定されず、食品用の容器を用いることができる。また、容器の材質は特に限定されず、紙製、プラスチック製、ガラス製、陶器製、金属製等の容器を用いることができる。
【0041】
本発明に係るチョコレートと冷菓の組み合わせの実施形態の概略断面図を図1~5に示す。図1では、容器11に冷菓13およびチョコレート12が順に充填されており、冷菓13の天面にチョコレート12が存在している。図2では、容器21にチョコレート22および冷菓23が順に充填されており、冷菓23の底面にチョコレート22が存在している。図3では、容器31に冷菓33B、チョコレート32、および冷菓33Aが順に充填されており、冷菓33Aおよび冷菓33Bの間に層状にチョコレート32が存在している。図4では、容器41に冷菓43B、チョコレート42、デザート素材44および冷菓43Aが順に充填されており、冷菓43Aおよび冷菓43Bの間に凹型に成形した層状にチョコレート42が存在し、凹型のチョコレート42の内側にデザート素材44が存在している。図5では、容器51に冷菓53、チョコレート52、デザート素材54が順に充填されており、冷菓53の上面に凹型に成形した層状にチョコレート52が存在し、凹型のチョコレート52の内側にデザート素材54が存在している。なお、図1~5では、容器上部に空洞が存在しているが、容器一杯に、チョコレート、冷菓、またはデザート素材が充填されていてもよい。
【実施例
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかし、これらの例示により本発明が限定されるものではない。
【0043】
<分析方法>
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)を用いて行った。
本発明に係るチョコレートに含まれる油脂のSFCは、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。
【0044】
<原料油脂>
原料油脂は以下の油脂を使用した。
ヤシ油(ラウリン酸含有量:47.9質量%)
菜種油(20℃の性状:液状)
部分水素添加油脂(トランス脂肪酸含有量:22.3質量%)
植物油脂1(商品名:シエンタソフトN(日清オイリオグループ株式会社製))
【0045】
<チョコレートの製造>
表1に記載の配合(単位は質量部)で、常法(混合、微粒化、精練)により、チョコレートを製造した。
表2には、チョコレート中の各成分の含有量(単位は質量%)、油脂中のラウリン系油脂、液油、部分水素添加油脂の含有量(単位は質量%)、ラウリン系油脂と液状油比率(単位は質量%)を示す。なお、チョコレート中の水分含量は、全ての配合で1質量%以下だった。
表3には、油脂中の脂肪酸組成(単位は質量%)および固体脂含量(SFC)(単位は%)を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
<チョコレートの評価>
上記で製造した実施例1~7および比較例1~6のチョコレートについて、チョコレートの充填適性(カップアイスクリームの天面でのチョコレートの広がり、充填時のノズルでの液ダレ、チョコレートの流れ落ち)を評価した。評価の方法は「1)充填評価法」に従った。
【0050】
1)充填評価法
1.90mm口径のカップに充填し天面を均一に均したオーバーラン80のアイスクリームを-8℃に温度調整した。続いて、アイスクリームの天面より30mmの高さからシャワーノズル(φ75の充填面に、内径2mmのノズルを放射状に均等に124本配置したもの。)を用いて30℃に調整した20gの冷菓用チョコレートの充填を行った。
2.充填されたチョコレートがアイスクリームの天面に触れてから固化するまでの間に、「アイスクリームの天面に均一に広がり、覆うことができるか(=広がり)」を下記の2段階で評価した。評価結果を表4に示す。「○」以上を合格とした。
(評価基準)
○:アイスクリームの天面にチョコレートが均一に広がった。
×:アイスクリームの天面にチョコレートが均一に広がらず、充填終了時にチョコレートの一部が突起状に固化していた。
3.チョコレートの充填終了後、「シャワーノズル内に保持されているチョコレートが垂れてこないこと(=液ダレ)」を評価し、実用に耐えうる物性となっているかを下記の3段階で評価した。評価結果を表4に示す。「○」以上を合格とした。
(評価基準)
◎:ノズル内には、チョコレートが全く残っていなかった。
○:ノズル内にチョコレートが少し残っていたが、3秒以内に液ダレが発生しなかった。
×:ノズル内にチョコレートが残っており、3秒以内に液ダレが発生した。
4.チョコレートの充填終了後、アイスクリームの天面から、容器の側壁を伝って底面方向にチョコレートが流れ落ちているかを下記の3段階で評価した。評価結果を表4に示す。△以上を合格とした。
(評価基準)
○:チョコレートはアイスクリームの天面に留まり、底面方向に全く流れ落ちていなかった。
△:チョコレートの大部分はアイスクリームの天面に留まったが、一部が底面方向に流れ落ちていた。
×:チョコレートの大部分がアイスクリームの天面に留まらず、底面方向に流れ落ちていた。
【0051】
続いて、「1)充填評価法」に従い充填されたチョコレートの喫食時の硬さ(さじ通り)、風味、口溶けについて官能評価した。方法は「2)コーティング用チョコレートの官能評価法」に従った。
2)コーティング用チョコレートの官能評価法
1.「1)充填評価法」によってチョコレートを充填した冷菓を急速冷凍庫へ1時間入れ、固化させた。
2.-18℃の冷凍庫へ移し、7日間以上放置した。
3.評価パネル3名により評価を行った。具体的には、喫食時のチョコレートの硬さ(さじ通り)、風味、口溶けについて、「5点:非常に良い、4点:良い、3点:多少良い、2点:普通、1点:悪い」を基準として、1~5点の間で0.5点刻みで点数をつけ、3名のパネルの平均点を表4示した。2.5点以上を合格点とした。
本発明に係るチョコレートは、製造適正を満たし、充填時に90mm口径のカップアイスクリーム天面に十分に広がって厚みのある層を形成することができ、官能評価も良好であった。
【0052】
【表4】
【符号の説明】
【0053】
11、21、31、41、51:容器
12、22、32、42、52:チョコレート
13、23、33A、33B、43A、43B、53:冷菓(アイスクリーム)
44、54:デザート素材
図1
図2
図3
図4
図5