(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-28
(45)【発行日】2023-05-11
(54)【発明の名称】虫誘引剤、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 65/20 20090101AFI20230501BHJP
A01N 65/08 20090101ALI20230501BHJP
A01N 65/44 20090101ALI20230501BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20230501BHJP
A01P 19/00 20060101ALI20230501BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20230501BHJP
【FI】
A01N65/20
A01N65/08
A01N65/44
A01M1/02 A
A01P19/00
A01N25/10
(21)【出願番号】P 2019001479
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】林 有未
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭介
(72)【発明者】
【氏名】宮ノ下 明大
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-028825(JP,A)
【文献】特開昭54-035071(JP,A)
【文献】特開平03-232804(JP,A)
【文献】実開平05-009280(JP,U)
【文献】特開2003-116441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0328002(US,A1)
【文献】特開2016-050210(JP,A)
【文献】特開2012-041326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01M
A01P
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、
グルテンフィード及びグルテンミールからなる群から選択される1種以上のバイオマス材料
と、
熱可塑性樹脂
と、を含むことを特徴とする、バイオマスプラスチックからなる虫誘引剤
であって、
前記虫が、コメノゴミムシダマシ、チャイロコメノゴミムシダマシ、クロゴミムシダマシ、フタオビツヤゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、ヒメゴミムシダマシ、ヒラタコクヌストモドキ、コクヌストモドキ、カシミールコクヌストモドキ、ノコギリヒラタムシ、オオメノコギリヒラタムシ、カクムネヒラタムシ、タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシから選択される1種以上の虫である虫誘引剤。
【請求項2】
前記バイオマス材料の含有量が、前記バイオマスプラスチックの質量に基づいて10質量%以上である請求項
1に記載の虫誘引剤。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1
又は2に記載の虫誘引剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項の虫誘引剤を製造する方法であって、
大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、及び
グルテンフィード及びグルテンミールからなる群から選択される1種以上のバイオマス材料、並びに熱可塑性樹脂を含む組成物を複合化する工程を含む製造方法。
【請求項5】
大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、及び
グルテンフィード及びグルテンミールからなる群から選択される1種以上のバイオマス材料
と、熱可塑性樹脂と、を複合化することによって、バイオマスプラスチックに虫誘引性を付与する方法
であって、
前記虫が、コメノゴミムシダマシ、チャイロコメノゴミムシダマシ、クロゴミムシダマシ、フタオビツヤゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、ヒメゴミムシダマシ、ヒラタコクヌストモドキ、コクヌストモドキ、カシミールコクヌストモドキ、ノコギリヒラタムシ、オオメノコギリヒラタムシ、カクムネヒラタムシ、タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシから選択される1種以上の虫である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスプラスチックからなる虫誘引剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、虫誘引剤は虫を誘引して、捕捉したり殺虫成分を接触及び/又は摂食させたりして防除するために利用される。虫誘引剤には、性フェロモン剤、集合フェロモン剤、誘引香料等の化学物質、及び魚類、肉類、穀物類、野菜類等の天然物が利用される。例えば特許文献1では、第一に、トラップ法などにおいて、遠方にいる害虫を効果的に引き寄せるのに十分な誘引作用を有する誘引剤を提供することを目的とし、穀物の胚芽又は/及び穀物の胚芽の抽出物を有効成分として配合したことを特徴とする害虫誘引剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天然物系の虫誘引剤は、化学物質系の虫誘引剤と比較して安価であり、虫の種や生育ステージ、雌雄を選ばずに効果が期待されるが、腐敗して不衛生になる場合もある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、腐敗の恐れが無く、虫の種や生育ステージ、雌雄を選ばずに効果を発揮する安価な虫誘引剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、食品製造業において発生する種々の副産物をバイオマス材料として用いたバイオマスプラスチックの虫誘引性について検討した結果、特定の材料を用いたバイオマスプラスチックが虫誘引性を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、上記目的は、大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、グルテンフィード及びグルテンミールからなる群から選択される1種以上のバイオマス材料と、熱可塑性樹脂と、を含むことを特徴とする、バイオマスプラスチックからなる虫誘引剤であって、前記虫が、コメノゴミムシダマシ、チャイロコメノゴミムシダマシ、クロゴミムシダマシ、フタオビツヤゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、ヒメゴミムシダマシ、ヒラタコクヌストモドキ、コクヌストモドキ、カシミールコクヌストモドキ、ノコギリヒラタムシ、オオメノコギリヒラタムシ、カクムネヒラタムシ、タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシから選択される1種以上の虫である虫誘引剤によって達成される。なお、本発明において、虫誘引剤は、種々の虫、例えば食品工場等に侵入して問題を引き起こす害虫等を誘引する虫誘引性を有する物を意味し、特に後述する虫誘引試験によって少なくとも1種の虫の虫誘引性が認められる物を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、食品製造業の副産物を利用したバイオマスプラスチックによって、腐敗の恐れが無く、虫の種や生育ステージ、雌雄を選ばずに効果を発揮する安価な虫誘引剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の虫誘引性試験を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[虫誘引剤]
本発明の虫誘引剤は、小麦フスマ、末粉、大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、及びコーンの加工副産物からなる群から選択される1種以上のバイオマス材料、並びに熱可塑性樹脂を含むことを特徴とするバイオマスプラスチックからなる。本発明者らの検討によって、上記の食品製造業において発生する副産物のバイオマス材料と熱可塑性樹脂とを含むバイオマスプラスチックが、虫誘引性を有することが見出された。上記のようなバイオマスプラスチックは、食品製造業の副産物を利用して低コストで製造可能であるため、本発明の虫誘引剤は、化学物質系の虫誘引剤と比較して非常に安価な虫誘引剤である。なお、後述する実施例で示す通り、バイオマスプラスチックへ加工することで、元のバイオマス材料単独よりも虫誘引性が高い虫誘引剤が得られている。この要因は明らかではないが、前記バイオマス材料と熱可塑性樹脂を複合化する際に生じる臭い成分等が影響するものと考えられる。
【0011】
一般に、植物等の生物由来のバイオマス材料は、燃焼させてエネルギー利用を行った場合には二酸化炭素を発生するが、バイオマス材料の元となる植物が光合成により大気中から二酸化炭素を吸収することによって、 全体で見ると二酸化炭素の量は増加しない「カーボンニュートラル」という特性を持っている。このようなカーボンニュートラルという考え方から、環境問題の軽減に貢献できるとして、バイオマス材料の利用は注目されている。その一環として、従来から、石油系プラスチック材料にバイオマス材料を混合したバイオマスプラスチックの開発が行なわれている。したがって、本発明の虫誘引剤は、バイオマス材料の利用による環境問題の軽減の観点からも有益である。
【0012】
本発明において、小麦フスマは、小麦から小麦粉を製造するプロセスで得られる小麦粒の外皮部分であり、末粉は、小麦から得られる灰分が高い下級粉である。また、大豆皮は、大豆から大豆油や大豆粉を製造するプロセスにおける、脱皮工程で得られる大豆の皮部分であり、脱脂大豆は、大豆油を製造するプロセスにおける抽出工程で得られる抽出粕である。さらに、脱脂菜種は、菜種から菜種油を製造するプロセスにおける搾油及び/又は抽出工程で得られる搾油/抽出粕である。
【0013】
コーンの加工副産物は、コーンウエットミリング副産物及び/又はコーンドライミリング副産物である。コーンウエットミリングとは、トウモロコシから澱粉(コーンスターチ)を製造するプロセスの一種であり、全て水中で粉砕、分離を行うプロセスである(コーン製品の知識、第100頁~第105頁、幸書房(1993年)参照)。一般に、まず、トウモロコシを亜硫酸水に浸漬して軟化させ、油分を多く含む胚芽を砕かないように外皮及び胚乳部を粗粉砕し、篩別、洗浄、遠心分離等により胚芽を除去する。その後、胚芽以外の部分を摩砕してスラリー化し、そのスラリーから、篩別、洗浄等により外皮を除去し、さらに遠心分離、洗浄等によりたん白質を除去して澱粉を分離する。使用後の亜硫酸水の浸漬液は、濃縮されコーンスティープリカー(CSL)と称される濃縮液となる。前記外皮部分は、コーンファイバーと称される副産物となり、通常、前記CSLと混合され、グルテンフィードと称される副産物となる。前記たん白質部分は、脱水乾燥され、グルテンミールと称される副産物となる。また、前記胚芽部分については、コーン油を搾油、及び/又は抽出して得られた脱脂粕がコーンジャームミールと称される副産物となる。本発明において、コーンウエットミリング副産物とは、上記プロセスから得られる澱粉及び胚芽から得られるコーン油以外の部分を意味する。具体的には、CSL、外皮部分、たん白質部分、胚芽部分の脱脂粕であり、これらを別々に採取して単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記のように製造されるコーンファイバー、グルテンフィード、グルテンミール、及びコーンジャームミールからなる群から選択される1種以上の副産物を用いてもよい。本発明において、コーンウエットミリング副産物は、容易に入手できる点で、コーンファイバー、グルテンフィード及びグルテンミールからなる群から選択される1種以上の副産物であることが好ましい。コーンドライミリングとは、トウモロコシからコーングリッツ、コーンフラワーを製造するプロセスの一種であり、調質後粉砕し、物理的に分離を行うプロセスである。(コーン製品の知識、第136頁~第141頁、幸書房(1993年)参照)。コーンドライミリング副産物は、ドライコーンジャーム(胚芽部分)、コーンファイバー(外皮部分)、コーンブラン(コーン糠)であり、これらを別々に採取して単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。本発明において、コーンドライミリング副産物として容易に入手できる点で、ホミニーフィード(上記副産物の一部又は全部を合わせたもの)が好ましい。本発明において、コーンの加工副産物としては、コーンウエットミリング副産物が好ましい。
【0014】
本発明の虫誘引剤によって、誘引される虫には特に制限はなく、例えば食品工場等に侵入して問題を引き起こす害虫等が挙げられる。そのような害虫の例としては、コメノゴミムシダマシ、チャイロコメノゴミムシダマシ、クロゴミムシダマシ、フタオビツヤゴミムシダマシ、ガイマイゴミムシダマシ、ヒメゴミムシダマシ、ヒラタコクヌストモドキ、コクヌストモドキ、カシミールコクヌストモドキ、コクゾウムシ、ココクゾウムシ、グラナリアコクゾウムシ、コナナガシンクイムシ、チビタケナガシンクイムシ、コメノケシキスイ、ガイマイデオキスイ、ノコギリヒラタムシ、オオメノコギリヒラタムシ、カクムネヒラタムシ、タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシ、ヒメマルカツオブシムシ、シロオビマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ、オビヒメカツオブシムシ、ハラジロカツオブシムシ、ヒメアカカツオブシムシ、アカマダラカツオブシムシ、チビケカツオブシムシ、アズキゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ、アカイロマメゾウムシ、インゲンマメゾウムシ、ニセセマルヒョウホンムシ、ナガヒョウホンムシ、コクヌスト、ホソチビコクヌスト、ノシメマダラメイガ、スジマダラメイガ、スジコナマダラメイガ、チャマダラメイガ、ガイマイツヅリガ、イッテンコクガ、カシノシマメイガ、コメノシマメイガ、バクガ、ヒラタチャタテ等が挙げられる。なお、虫は、発育の仕方によって「不完全変態類」と「完全変態類」の2つに分類できる。不完全変態類は「卵→幼虫→成虫」という順序で発育し、完全変態類は「卵→幼虫→蛹→成虫」という順序で発育する。本発明の虫誘引剤によって、誘引される虫の形態に特に制限はなく、本発明の虫誘引剤の元へ移動できればよく、不完全変態類及び完全変態類の幼虫、成虫のいずれの生育ステージでもよい。
【0015】
本発明の虫誘引剤において、前記バイオマス材料の含有量には、特に制限はなく、使用するバイオマス材料の種類、熱可塑性樹脂の種類、所望の虫誘引性、形状、強度、成形性等に応じて、適宜選択することができる。虫誘引性の観点から、前記バイオマス材料の含有量は、前記バイオマスプラスチックの質量に基づいて、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また、バイオマスプラスチックの強度や成形性の観点から、前記バイオマス材料の含有量は、バイオマスプラスチックの質量に基づいて、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。なお、本発明の虫誘引剤においては、本発明の効果を損なわない限り、前記虫誘引性が得られるバイオマス材料以外のバイオマス材料を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の虫誘引剤において、熱可塑性樹脂の種類は、上記バイオマス材料と複合化してバイオマスプラスチックを形成することができれば、特に制限はない。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。成形性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、ポリブテン-1等が挙げられる。カーボンニュートラルの観点からは、バイオマス由来プラスチックが好ましく、例えば澱粉樹脂、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、バイオポリオレフィン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明の虫誘引剤は、本発明の効果を損なわない限り、上記のバイオマス材料及び熱可塑性樹脂以外に、一般にプラスチックに配合される添加剤を適宜含有していてもよい。例えば、可塑剤、無機充填剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、耐加水分解剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
【0018】
本発明の虫誘引剤の形態は、特に制限はない。ペレット状等の成形用原料の形態でもよく、シート状、フィルム状、チューブ状、種々の形状の射出成形品、押出成形品、発泡成形品等の形態でもよい。
【0019】
本発明の虫誘引剤は、単独で、又は他の虫誘引剤と併用して、例えば粘着捕獲部や水槽部等と組み合わせた虫捕獲器、又は虫防除装置に使用することができる。
【0020】
[虫誘引剤の製造方法]
本発明の虫誘引剤を製造する方法は、小麦フスマ、末粉、大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、及びコーンの加工副産物からなる群から選択される1種以上のバイオマス材料、並びに熱可塑性樹脂を含む組成物を複合化する工程を含む。前記バイオマス材料及び熱可塑性樹脂を含む組成物を複合化することで、容易に本発明のバイオマスプラスチックからなる虫誘引剤が製造できる。前記複合化の方法は、特に制限はなく、従来公知の熱可塑性樹脂の加熱混練方法を適宜採用することができる。例えば、前記虫誘引性が得られるバイオマス材料及び熱可塑性樹脂、並びに必要に応じて前記虫誘引性が得られるバイオマス材料以外のバイオマス材料、及び上述の各種添加剤を含む組成物を一軸押出機や二軸押出機、混合可塑化装置等の加熱混練機に投入することで複合化することができる。ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いて予備混合した後、上記加熱混練機を用いて複合化してもよい。また、複合化する前にバイオマス材料に前処理を施すことは差し支えない。例えば、熱可塑性樹脂と容易に複合化させるため、バイオマス材料の粉砕、乾燥、脱脂処理等の前処理を行うこともできる。本発明においては、複合化した後、引き続き成形工程を行い、各種形状の成形品の形態の虫誘引剤を製造することもでき、ペレタイザー等を用いてペレット化して、成形用原料の形態の虫誘引剤を製造することもできる。前記複合化工程から引き続いて、又はペレット化した成形用原料を用いて、成形品の形態の虫誘引剤を製造する方法についても、従来公知の熱可塑性樹脂の成形方法を適宜採用することができる。例えば、押出成形法(インフレーション法、Tダイ法を含む)、射出成形法(射出プレス成形、射出発泡成形を含む)、カレンダー成形法、キャスティング成形法等によって、シート状、フィルム状、チューブ状、種々の形状の成形品を製造することができる。なお、本発明の製造方法において、前記バイオマス材料、及び前記熱可塑性樹脂を含む組成物の好ましい態様は、上述の本発明の虫誘引剤の場合と同様である。
【0021】
なお、本発明は、上述の説明から理解できるように、小麦フスマ、末粉、大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、及びコーンの加工副産物からなる群から選択される1種以上のバイオマス材料を含有させることによって、バイオマスプラスチックに虫誘引性を付与する方法にもある。本発明の方法の好ましい態様は、上述の本発明の虫誘引剤の場合と同様である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.バイオマスプラスチックの調製
表1に示した各バイオマス材料を表2~表4に示した含有量で、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンのペレットと予備混合した後、二軸押出機に供給し、加熱混練して複合化し、生成した複合体を二軸押出機出口でペレット状に切断した後、冷却、乾燥し、成形用原料の形態(ペレット)のバイオマスプラスチックを調製した。
【0023】
【0024】
2.虫誘引性試験方法
(1)試験虫
虫誘引性試験に、コクヌストモドキ(成虫)、タバコシバンムシ(成虫)、カクムネヒラタムシ(成虫)、チャイロコメノゴミムシダマシ(幼虫)を用いた。いずれも雌雄分別なしで用いた。
(2)試験方法
図1に示した試験装置10を用いて、虫誘引性試験を行なった。まず、図示の通り、試験装置10は横23cm×奥行き23cm×高さ20cmのポリスチレン製容器本体11及びメッシュ加工の通気孔13を有する蓋12を備えている。図示の通り、ポリスチレン製容器本体11底面の対角線上にろ紙20を敷き、試験試料21として、1.で得られた各バイオマスプラスチックのペレット10gと対照試料22(バイオマスプラスチックの調製に用いたポリプロピレン10g、又はバイオマス材料5g(バイオマス材料としての量を揃えるため))を設置し、試験装置10を試験条件(温度25℃、湿度60%、明期16時間(8:00~24:00)暗期8時間(24:00~8:00))下に配置した。各虫を繁殖容器から出して未給餌条件下、前記試験条件下で12:00から1時間インキュベートした後、13:00に容器中央部の放虫場所30に20匹放ち、前記試験条件下でインキュベートした。21時間(表5の試験は24時間)インキュベート後、10:00(表5の試験は13:00)に各試料をろ紙ごと回収し、誘引虫数(ろ紙の上に乗っていたもの+ろ紙の真下にいたもの)及び徘徊虫数をカウントし、「試験試料への誘引虫数/(試験試料への誘引虫数+対照試料への誘引虫数+徘徊虫数)×100」の計算式によって誘引率(%)を算出した。上記試験は、各試料の設置を異なる対角線上に変えて3回(表5の試験は2回)繰り返し、平均値を求めた。
3.虫誘引性試験結果
各バイオマスプラスチックの虫誘引性試験の結果を表2~表5に示す。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
表2に示した通り、バイオマス材料として小麦フスマ、末粉、大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、コーンの加工副産物であるグルテンフィード、及びグルテンミールを含むバイオマスプラスチックを用いた試験例1~7で少なくとも1種の虫の虫誘引性が認められた。また、表3に示した通り、大豆皮を10質量%含むバイオマスプラスチックを用いた試験例8でも虫誘引性が認められ、バイオマス材料の含有量が10質量%以上で十分な虫誘引性を示すバイオマスプラスチックが得られることが示唆された。さらに、表4に示した通り、大豆皮を含むバイオマスプラスチック、及びグルテンミールを含むバイオマスプラスチックを用いて、元のバイオマス材料を対照として試験した試験例11及び試験例12でも、バイオマスプラスチックに虫誘引性が認められ、バイオマスプラスチックへ加工することで、元のバイオマス材料より高い虫誘引性が得られることが示唆された。また、表5に示した通り、一般に虫が好む玄米に対して試験した試験例13及び試験例14でも虫誘引性が認められ、上記のバイオマスプラスチックは虫誘引剤として有効であることが示唆された。
【0030】
以上により、小麦フスマ、末粉、大豆皮、脱脂大豆、脱脂菜種、コーンの加工副産物からなる群から選択される1種以上のバイオマス材料を含むバイオマスプラスチックは、虫誘引性を有することが示唆された。
【0031】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、食品製造業の副産物を利用したバイオマスプラスチックによって、腐敗の恐れが無く、虫の種や生育ステージ、雌雄を選ばずに効果を発揮する安価な虫誘引剤を提供することができる。また、食品製造業の副産物の有効利用、及びカーボンニュートラルの考え方による環境問題の軽減に貢献できる。
【符号の説明】
【0033】
10 試験装置
11 ポリスチレン製容器本体
12 蓋
13 通気孔(メッシュ加工)
20 ろ紙
21 試験試料(虫誘引剤)
22 対照試料
30 放虫場所