(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】光学素子の製造方法及び光学素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20230518BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20230518BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20230518BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20230518BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1337 520
G02B3/14
G02B3/00 B
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2019144842
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】延藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-127707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0049784(US,A1)
【文献】特開2005-157164(JP,A)
【文献】特開2011-150076(JP,A)
【文献】特開昭54-072069(JP,A)
【文献】特開平06-317804(JP,A)
【文献】特開2003-255127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0043717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1337
G02B 3/00 - 3/14
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な第1の透明電極、前記第1の透明電極に対向する平坦な第2の透明電極、及び、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に設けられた液晶層を有する液晶セルに、前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に対して磁力線が交差する磁界を印加する工程と、
前記磁界を印加した状態で、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に電圧を印加する工程と、
を含
み、前記液晶層は、前記第1の透明電極側及び前記第2の透明電極側で、それぞれ垂直配向膜に接する光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記電圧を印加する工程の後に、前記磁界の印加を停止する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記液晶層は、重合性化合物を含有し、前記重合性化合物を重合させる工程を更に含む請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記液晶層は、負の誘電率異方性を示す液晶である請求項1から3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記磁力線の少なくとも一部は、前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に垂直に交差する請求項1から
4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
平坦な第1の透明電極と、
前記第1の透明電極に対向する平坦な第2の透明電極と、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に設けられた液晶層と、
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に対して磁力線が交差する磁界を形成する磁界形成部と、
電圧を前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に印加する電圧印加部と、
を備え
、前記液晶層の前記第1の透明電極側及び前記第2の透明電極側に、それぞれ垂直配向膜を備える光学素子。
【請求項7】
前記磁界形成部は除去可能である請求項
6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記液晶層は、負の誘電率異方性を示す液晶である請求項
6又は7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記磁界形成部は、前記第1の透明電極又は前記第2の透明電極に沿って配置される少なくとも1つの磁石を含む請求項
6から8の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
前記電圧印加部の印加する電圧の大きさを制御する電圧制御部をさらに備える請求項
6から9の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項11】
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に沿う方向において屈折率分布を有するレンズとして構成される請求項
6から10の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項12】
所定の中心軸線の周りで、光学軸の方向が方位角方向に変化するqプレートとして構成される請求項
6から10の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項13】
平坦な第1の透明電極と、
前記第1の透明電極に対向する平坦な第2の透明電極と、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に設けられた、液晶分子が配向した状態で重合した液晶重合体層と、
前記液晶重合体層の前記第1の透明電極側及び前記第2の透明電極側にそれぞれ配置された垂直配向膜と
を備え、前記液晶重合体層は、前記液晶分子が少なくとも部分的に前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に対して垂直方向以外の方向に配向して
おり、
前記液晶重合体層は、前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に沿う位置に依存して、前記液晶分子の配向方向が異なる光学素子。
【請求項14】
前記液晶重合体層は、前記液晶分子が、少なくとも部分的に所定の中心軸線の周りに放射状に配向している請求項
13に記載の光学素子。
【請求項15】
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に沿う方向において屈折率分布を有するレンズとして構成される請求項
13に記載の光学素子。
【請求項16】
前記所定の
中心軸線の周りで、光学軸の方向が方位角方向に変化するqプレートとして構成される請求項
14に記載の光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を利用した光学素子の製造方法、及び該製造方法により製造される光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶化合物が配向による屈折率異方性を有することを利用した、レンズ及び波長板等の光学素子が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献2、及び、非特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載される液晶を用いたレンズでは、平坦な電極層と同心円状の複数の輪帯電極を含む電極層との間に液晶層を設け、各輪帯電極に印加する電圧を制御することにより、液晶層の屈折率分布を調整している。さらに、電極層を輪帯状にした場合、液晶層に印加される電圧が階段状となり、理想的なレンズ特性を得られないため、特許文献1では、輪帯状の透明電極と液晶層との間に絶縁層と高抵抗層を配置して、液晶層の屈折率分布の変化が滑らかになるようにしている。これにより、特許文献1では、液晶層を屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)として機能するように構成している。
【0004】
また、特許文献2では、液晶化合物を用いたレンズを得るために、液晶層の表面付近の液晶分子の配向を決める配向層のアンカリングエネルギーを、非一様な分布とすることが記載されている。アンカリングエネルギーの非一様な分布は、例えば、配向層に光誘起異方性を有する物質を使用し、光重合中の照射光量の分布を不均一にすることによって生成される。又は、アンカリングエネルギーの非一様な分布は、ラビング法において、配向層の表面を非一様な条件でラビングすることによっても生成される。
【0005】
さらに、液晶化合物の配向方向を制御することにより、素子全体でπのリタデーションを有しながら、方位角方向に光学軸の向きが変化するqプレートを製造することが知られている。qプレートは、超解像顕微鏡等に利用されるベクトルビームを生成するために利用される。非特許文献1は、SWaP(scanning wave photopolymerization)と呼ばれる技術を利用して、qプレートのための分子の配向パターンを有するポリマーフィルムを直接製造することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5906366号公報
【文献】特許第5451986号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Miho Aizawa, Megumi Ota, Kyohei Hisano, Norihisa Akamatsu, Takeo Sasaki, Christopher J. Barrett, and Atsushi Shishido, "Direct fabrication of a q-plate array by scanning wave photopolymerization", Journal of the Optical Society of America B, Vol. 36, No. 5 (May 2019), D47-D51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の液晶を使用した光学素子によれば、所望の光学特性を得るために、複雑な形状を有する電極、固有の配向特性を有する配向膜、又は、特殊な製造技術が必要であった。本発明の目的は、液晶を用いて単純な構成で所望の光学特性が得られる光学素子の製造方法及び、当該方法で製造される光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、
図3に示すように、磁力線が第1の透明電極14及び第2の透明電極15と交差するように磁界を印加した状態で、第1の透明電極14及び第2の透明電極15の間に電圧を印加することにより、液晶分子20の配向方向を所望の方向に設定することが可能になるとの知見を得、本発明に至った。
【0010】
本発明は、以下のとおりである。
〔1〕平坦な第1の透明電極、前記第1の透明電極に対向する平坦な第2の透明電極、及び、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に設けられた液晶層を有する液晶セルに、前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に対して磁力線が交差する磁界を印加する工程と、
前記磁界を印加した状態で、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に電圧を印加する工程と、
を含む光学素子の製造方法。
〔2〕前記電圧を印加する工程の後に、前記磁界の印加を停止する上記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記液晶層は、重合性化合物を含有し、前記重合性化合物を重合させる工程を更に含む上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕前記液晶層は、負の誘電率異方性を示す液晶である上記〔1〕から〔3〕の何れかに記載の製造方法。
〔5〕前記液晶層は、前記第1の透明電極側及び前記第2の透明電極側で、それぞれ垂直配向膜に接する上記〔1〕から〔4〕の何れかに記載の製造方法。
〔6〕前記磁力線の少なくとも一部は、前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に略垂直に交差する上記〔1〕から〔5〕の何れかに記載の製造方法。
〔7〕平坦な第1の透明電極と、
前記第1の透明電極に対向する平坦な第2の透明電極と、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に設けられた液晶層と、
前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に対して磁力線が交差する磁界を形成する磁界形成部と、
電圧を前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に印加する電圧印加部と、
を備える光学素子。
〔8〕前記磁界形成部は除去可能である上記〔7〕に記載の光学素子。
〔9〕前記液晶層は、負の誘電率異方性を示す液晶である上記〔7〕又は〔8〕に記載の光学素子。
〔10〕前記液晶層の前記第1の透明電極側及び前記第2の透明電極側に、それぞれ垂直配向膜を備える上記〔7〕から〔9〕の何れかに記載の光学素子。
〔11〕前記磁界形成部は、前記第1の透明電極又は前記第2の透明電極に沿って配置される少なくとも1つの磁石を含む上記〔7〕から〔10〕の何れかに記載の光学素子。
〔12〕前記電圧印加部の印加する電圧の大きさを制御する電圧制御部をさらに備える上記〔7〕から〔11〕の何れかに記載の光学素子。
〔13〕前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に沿う方向において屈折率分布を有するレンズとして構成される上記〔7〕から〔12〕の何れかに記載の光学素子。
〔14〕前記磁界形成部により規定される軸線の周りで、光学軸の方向が方位角方向に変化するqプレートとして構成される上記〔7〕から〔12〕の何れかに記載の光学素子。
〔15〕平坦な第1の透明電極と、
前記第1の透明電極に対向する平坦な第2の透明電極と、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に設けられた、液晶分子が配向した状態で重合した液晶重合体層と、
前記液晶重合体層の前記第1の透明電極側及び前記第2の透明電極側にそれぞれ配置された垂直配向膜と
を備え、前記液晶重合体層は、前記液晶分子が少なくとも部分的に前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に対して垂直方向以外の方向に配向している光学素子。
〔16〕前記液晶重合体層は、前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に沿う位置に依存して、前記液晶分子の配向方向が異なる上記〔15〕に記載の光学素子。
〔17〕前記液晶重合体層は、前記液晶分子が、少なくとも部分的に所定の中心軸線の周りに放射状に配向している上記〔15〕又は〔16〕に記載の光学素子。
〔18〕前記第1の透明電極及び前記第2の透明電極に沿う方向において屈折率分布を有するレンズとして構成される上記〔15〕又は〔16〕に記載の光学素子。
〔19〕前記所定の軸線の周りで、光学軸の方向が方位角方向に変化するqプレートとして構成される上記〔17〕に記載の光学素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、液晶を用いて単純な構成で所望の光学特性が得られる光学素子の製造方法及び、当該方法で製造される光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る光学素子(電圧印加前)の構成を説明する模式図である。
【
図2】
図1の光学素子の磁石配置を説明する平面図である。
【
図3】
図1の光学素子の電極間に電圧を印加した状態を示す図である。
【
図4】
図3の光学素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る光学素子の構成を説明する模式図である。
【
図6】
図5の光学素子の磁石配置を説明する平面図である。
【
図7】
図5の光学素子の磁石配置の他の例を説明する平面図である。
【
図8】第3実施形態に係るレンズ(光学素子)の一例を示す模式図である。
【
図9】
図8のレンズの製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】第4実施形態に係る光学素子の概略構成を示す模式図である。
【
図11】
図10の光学素子に入射する光の偏光方向の変化を説明する図である。
【
図12】
図10の光学素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図10の光学素子を生成する前段階の構成を説明する図である。
【
図14】第5実施形態に係る光学素子の概略構成を示す模式図である。
【
図15】重合性化合物を重合させてqプレート(光学素子)を製造する方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法、比率等は現実のものとは一致していない。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子10の概略構成を説明するための光学素子10を側方から見た模式図である。光学素子10は、液晶層11、平坦な第1及び第2の基板12、13、電圧印加部18、並びに、磁界形成部19を含んで構成される。
図1及び以下の同様な図において、x方向及びy方向は、第1及び第2の基板12、13の基板面に沿う互いに直交する方向である。x方向を幅方向、y方向を奥行き方向と言い換えることができる。第1及び第2の基板が平面視において矩形の形状を有する場合、x方向及びy方向はそのそれぞれの辺に沿う方向としうる。z方向は、x方向及びy方向に直交する方向とすることができる。z方向を厚さ方向と言い換えることができる。
【0015】
液晶層11は、液晶化合物を含み、第1の基板12及び第2の基板13の間に充填される。さらに、液晶層11は、一以上の非液晶化合物を含んでよい。第1の基板12及び第2の基板13の間に液晶層11を封入したものを、液晶セルと呼ぶ。液晶層11は、負の誘電率異方性を示す液晶とすることができる。負の誘電率異方性を示す液晶層は、負の誘電率異方性を有する液晶化合物を含有しうる。液晶層11の液晶化合物は、複数の種類の液晶分子20を含んでよい。一般に、液晶分子20は、誘電テンソルの分子軸(又は光学軸)に沿った成分が軸に垂直な成分よりも大きい正の誘電率異方性を有するものと、誘電テンソルの分子軸に沿った成分が軸に垂直な成分よりも小さい負の誘電率異方性を有するものがある。負の誘電率異方性を有する液晶化合物は、負の誘電率異方性を有する液晶分子20を含有する。しかし、本発明に使用し得る液晶化合物の液晶分子20は、負の誘電率異方性を有するものに限られない。説明のため、液晶分子20は、一方向に長い棒状の分子として
図1、3等に模式的に図示されている。これらの図における液晶分子20は、実際の大きさや見かけを反映したものではない。
【0016】
本実施形態の液晶層は、非重合性液晶化合物を含む一以上の非重合性化合物を含有する。以下に示す第2及び第4実施形態においても同様である。
【0017】
本開示で使用されうる非重合性液晶化合物の詳細については、後述する。
【0018】
第1及び第2の基板12、13は、それぞれ第1及び第2の透明電極14、15、並びに、第1及び第2の配向膜16、17を有する。第1及び第2の透明電極14、15は、それぞれ、第1及び第2の基板12、13の液晶層11側に形成される。第1及び第2の配向膜16、17は、それぞれ、第1及び第2の透明電極14、15の液晶層11側に形成され、液晶層11と接する。
【0019】
本実施形態において、z方向に沿う方向に見たとき第1及び第2の基板12、13の形状は、矩形とする。しかし、第1及び第2の基板12、13の形状は、矩形に限られず、円形、三角形、六角形等の種々の形状とすることができる。第1及び第2の基板12、13は、所望の波長領域の光に対して透過性を有し、本願で開示する光学素子及び製造方法に適用可能なものであれば、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、第1及び第2の基板12、13の材料としては、石英、ガラス、又は、プラスチックを採用することができる。第1の基板12と第2の基板13との間は、周囲が例えば封止材によって封止される。また、第1の基板12と第2の基板13との間の間隔を均一にするために、スペーサが配置される。
【0020】
第1及び第2の透明電極14、15は、例えば、インジウム酸化物、錫酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)により構成される。第1及び第2の透明電極14、15は、例えば、第1及び第2の基板12、13上にスパッタリングにより形成することができる。第1及び第2の透明電極14、15は、液晶層11に本発明の目的を達するために十分な電界を印加可能な厚さを有する。
【0021】
第1及び第2の配向膜16、17は、液晶層11と接し、界面に位置する液晶分子20の配向方向を規定する。配向膜材料としては、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ペンゾシクロブテンポリマー)、ポリビニルアルコールなどの透明性の有機材料を用いることができる。本実施形態に係る第1及び第2の配向膜16、17としては、垂直配向膜を採用することができる。しかし、配向膜としては液晶分子の誘電率異方性の正負及び駆動モードに応じて、垂直配向膜又は水平配向膜を適宜選択することができる。垂直配向膜を採用する場合は、液晶を初期状態で垂直配向させることができるため、基板界面における方位角方向の束縛力(方位角アンカリング)が水平配向させた場合に比べて非常に小さくなることから、比較的弱い磁場と電界を用いて、放射線状等の液晶分子の配向を得られる。
垂直配向膜としては、公知の垂直配向処理が施された配向膜から選択された配向膜を使用することができる。垂直配向膜の材料及び製法等は、第1及び第2の配向膜16、17との界面に位置する液晶層11の液晶分子20が垂直配向するものであれば、特に制限は無い。例えば、公知の垂直配向膜には光配向処理を施した配向膜が含まれる。光配向処理は、基板上に塗布された高分子有機化合物の薄膜に直線偏光された紫外線を照射することにより、その高分子有機化合物の側鎖を紫外線の照射方向に傾けるものである。後述するように、第1及び第2の配向膜16、17は、本願発明の必須の構成要素ではない。例えば、自発配向作用を有する添加剤を使用することによって液晶分子の初期配向を制御できる場合には、第1又及び第2の配向膜16、17は、不要になる場合がある。また、液晶層11の弾性及び磁場に対する応答性によっては、第1及び第2の配向膜16、17は、不要になる場合がある。
【0022】
電圧印加部18は、第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に電圧を印加可能に構成される。電圧印加部18は、第1の透明電極14と第2の透明電極15との間にz方向の電界を印加することにより、液晶層11に含まれる液晶分子20を分極させることができる。これによって、負の誘電率異方性を有する液晶分子20に対して、電界の方向に対して直交するx方向及びy方向に平行なyx面内方向に傾けようとする力が加わる。
【0023】
電圧印加部18は、
図1に示すように電圧源21、スイッチ22、及び電圧源21を制御する回路等を含んで構成されうる。
図1に図示する例では、電圧源21は、交流電圧源であるが、電圧源21は、直流電圧源及び交流電圧源の何れであってもよい。光学素子10は、電圧源21を内蔵せず、電圧源21に接続するための端子を有していてもよい。その場合、電圧印加部18は、複数の端子を第1及び第2の透明電極14、15に接続する回路を含む。スイッチ22は、電圧源21と第1及び第2の透明電極14、15の少なくとも何れかとの電気的な接続を、オン/オフすることができる。すなわち、スイッチ22の操作により、液晶層11に電界が加わった状態と電界が加わっていない状態とを切替えることができる。なお、以下の説明において、電圧源21により第1及び第2の透明電極14、15の間に電圧が印加された状態は、液晶層11に電界が加わった状態と同じである。
【0024】
磁界形成部19は、第1の透明電極14及び第2の透明電極15に対して磁力線23が交差する方向に磁界を形成する。磁界形成部19が形成する磁界の磁力線23の少なくとも一部は、第1の透明電極14及び第2の透明電極15と垂直に交差することが好ましい。なお、
図1、
図3等において、磁力線は液晶層11を通る部分を含む一部のみを表示している。磁界形成部19としては、例えば、ネオジウム磁石等の永久磁石又は電磁石を採用することができる。磁界形成部19は、第1の基板12又は第2の基板13の液晶層11側と反対側の側面近傍に配置することができる。本実施形態において、磁界形成部19の磁力線を発する面は、第1及び第2の基板12、13の基板面よりも小さい。本発明では、例えば液晶分子を垂直配向することによって比較的弱い磁場と電界を用いて液晶分子の配向を変化させることができるので、第1及び第2の基板12、13の基板面よりも小さいネオジウム磁石等の永久磁石を使用することが可能である。そのため、磁界形成部19の磁力線分布により、放射状の磁力線23を得られる。例えば、
図1及び
図2に示すように、磁界形成部19は、第2の基板13の中心部分に隣接して配置される。磁界形成部19が永久磁石の場合、磁界形成部19は、z方向に分極した丸型又は四角型等の板状の磁石とすることができる。磁界形成部19は、N極又はS極の何れかの面を第2の基板13に対向させて配置することができる。
【0025】
次に、光学素子10の動作について説明する。
【0026】
図1は、電圧が印加されていない状態の光学素子10を示している。液晶層11に含まれる液晶分子20は、垂直配向膜である第1及び第2の配向膜16、17、並びに、磁界形成部19が及ぼす作用により、第1及び第2の基板12、13の基板面に対して垂直なz方向に並んで配列する。
【0027】
第1及び第2の配向膜16、17は、第1及び第2の配向膜16、17に接する液晶分子20に配向規制力を及ぼし、液晶分子20の長手方向が、第1及び第2の基板12、13の基板面に直交するz方向に並ぶように液晶分子20を配向させる。第1及び第2の配向膜16、17に接していない液晶分子も、液晶の有する弾性により同じ方向に並んで配向しようとする。
【0028】
また、磁界形成部19は、液晶分子20に対して磁力線23に沿う方向に液晶分子20の長手方向を配向させる力を及ぼす。特に、第2の基板13を挟んで磁界形成部19の反対側に位置する液晶分子20aに対して、z方向の強い磁界が作用する。このため、平面視において第2の基板13の中心付近に位置する液晶分子20aは、z方向に配向する。磁界形成部19は、磁界形成部19から離れて位置する液晶分子20bに対しても、磁力線23に沿う方向に配向させようとする力を及ぼす。しかし、
図1に示した例では、液晶層11が第1及び第2の配向膜16、17との界面で受ける垂直方向の配向規制力と、液晶層11の有する弾性力とが、液晶分子20bが磁場から受ける力に勝る。このため、磁界形成部19から離れて位置する液晶分子20bは、第2の基板13の中心付近の液晶分子20aと同じz方向に配向される。
【0029】
なお、第1及び第2の配向膜16、17によらず、磁界形成部19の作用および液晶層11の弾性のみにより、液晶層11中の液晶分子20がz方向に配列されることができるならば、第1及び第2の配向膜16、17は、必ずしも必要ではない。その場合、第1及び第2の配向膜16、17が無くとも、磁界形成部19によって以下に説明する作用、効果を得ることができる。
【0030】
図1の状態において、光学素子10に対してz方向に入射する光は、進行方向及び偏光方向等を変更しようとする作用を受けることなく通過する。
図1の光学素子10は、光学素子としての機能を発現する前の段階にある。
【0031】
図3は、磁界形成部19による磁界を印加した状態で、電圧印加部18により第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に電圧を印加した状態を示す。第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に印加された電圧により、液晶分子20に対して第1及び第2の透明電極14、15と平行になるxy面に沿う方向に倒れようとする力が働く。本願においてxy面とは、x方向及びy方向を含む面に平行な面を意味する。また、磁界形成部19が形成する磁界により、液晶分子20には磁界に沿う方向に傾こうとする力が加わる。このため、液晶層11の液晶分子20の配向方向は、第1及び第2の配向膜16、17による配向規制力、電圧印加部18により印加される電圧、磁界形成部19の形成する磁界のバランスにより決定される。
【0032】
図3に示す例では、電圧印加部18により印加される電圧、及び、磁界形成部19の形成する磁界の強度を調整することにより、液晶分子20は以下のように配向される。すなわち、磁界形成部19に近く、第1の透明電極14と第2の透明電極15に直交する磁力線上に位置する液晶分子20aは、磁界からの力が強く働き、長手方向が第1の透明電極14と第2の透明電極15に直交するz方向に配向する。
図2に示したように、磁界形成部19は平面視において光学素子10の中心付近に位置するので、液晶層11のx方向及びy方向の中心付近の液晶分子20aは、長手方向をz方向に向け配向する。このような状態を、以下では単にz方向に配向するという場合がある。他の方向に配向する場合も同様とする。
【0033】
一方、磁界形成部19から離れた位置に位置する液晶分子20bにおいては、磁力線23の向きはz方向からxy面方向に傾く。また、磁界形成部19から離れた位置に位置する液晶分子20bに働く磁界の強さは、磁界形成部19の近傍の液晶分子20aに働く磁界の強さより弱い。このため、磁界形成部19から離れた位置に位置する液晶分子20bは、より電界の影響を強く受けz軸方向から倒れた方向を向いて配向する。さらに、z方向に沿う方向から見たとき、磁力線23は磁界形成部19から放射状に広がるので、液晶分子20は、磁界形成部19の第2の基板13に対向する面の中心からz軸方向に延びる仮想的な軸線を中心にして、放射状に配向される。
【0034】
液晶は、液晶分子の配向方向に依存して屈折率が異なる屈折率異方性を有する。
図3の光学素子10では、液晶分子20がx方向及びy方向の中心から外周部に向けて、z方向を向いた状態から徐々に倒れることにより、軸対称な屈折率の勾配が生じる。例えば、
図3では、第1及び第2の基板12、13に挟まれた液晶層11のx方向及びy方向の中心付近では屈折率が小さく、外周部に向けて屈折率が徐々に大きくなる。光は、屈折率が一様でない媒質を伝播するとき、屈折率の大きい方へ曲がる性質を有する。これによって、光学素子10は、第1の基板12又は第2の基板13に対して垂直に入射する光に対して、負の屈折力を有する屈折率分布型(GRIN:Graded Index)レンズとして作用する。
【0035】
光学素子10は、スイッチ22を操作することにより、レンズ機能を発現又は停止することができる。さらに、光学素子10の電圧印加部18は、第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に印加する電圧の大きさを制御する電圧制御部24を備えることができる。電圧制御部24は、電圧源21の電圧を調整することにより、液晶層11の屈折率分布を変えることができる。これにより、光学素子10の光学特性、例えば、焦点距離を変えることが可能になる。
【0036】
次に、
図4に示すフローチャートを用いて、レンズ機能を有する光学素子10を生成する方法について説明する。ここで、光学素子10を生成するとは、液晶セルを光学素子として機能させることまでを意味する。
【0037】
まず、平坦な第1の透明電極14、第1の透明電極14に対向する平坦な第2の透明電極15、及び、第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に設けられた液晶層11を有する液晶セルが用意される(ステップS101)。第1の透明電極14及び第2の透明電極15は、それぞれ、第1の基板12及び第2の基板13の対向する表面に形成されてよい。
【0038】
次に、この液晶セルに対して磁界を印加する(ステップS102)。磁界の磁力線23は、第1の透明電極14及び第2の透明電極15に対して交差するように印加される。好ましくは、磁力線23の一部は第1の透明電極14及び第2の透明電極15と直交する。磁界を形成する磁界形成部19は、第1の透明電極14又は第2の透明電極15に沿って配置される。磁界形成部19が永久磁石の場合、磁界形成部19である磁石が、液晶セルに近接する所定の位置に配置される。磁界形成部19が電磁石の場合、液晶セルに近接する所定の位置に配置された磁界形成部19のコイルが通電され、磁界を発生させる。
【0039】
磁界を印加した状態で、第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に電圧を印加する(ステップS103)。電圧は、交流電源又は直流電源である電圧源21を備える電圧印加部18により印加される。第1の透明電極14と第2の透明電極15との間に電圧が印加されると、液晶分子20の配向が液晶層11内の位置により変化するので、xy面内の位置による屈折率分布が生じる。電圧印加部18が印加する電圧強度は、磁界形成部19の形成する磁界との関係で、液晶層11に所望の屈折率分布が得られるように調整される。これにより、光学素子10を例えば、負の屈折力を有する凹レンズとして使用することができる。
図3は平行光束である入射光26が、光学素子10を透過して発散する出射光27となる様子を示す。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、複雑な形状を有する電極、特殊な配向特性を有する配向膜等を用いること無く、比較的単純方法で負の屈折力を有するレンズとして機能する光学素子10を生成することができる。また、電圧印加部18により印加する電圧をオン/オフすることにより、光学素子としての機能を発現させ、又は、停止させることが可能になる。さらに、電圧印加部18により印加する電圧を調整することにより、焦点距離を変更することも可能である。
【0041】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る光学素子110の概略構成を説明する断面図である。光学素子110は、正の屈折力を有するレンズ、すなわち、凸レンズとして機能する。光学素子110は、部分的に
図1~3の光学素子10の構成と類似する。光学素子10に含まれる構成要素に対応する構成要素がある場合、光学素子110の構成要素は、光学素子10の対応する構成要素の参照符号に100を加えた参照符号が付されている。
【0042】
図5に示すように、光学素子110は、液晶層111、平坦な第1及び第2の基板112、113、電圧印加部118、並びに、磁界形成部119を含んで構成される。液晶層111は、液晶化合物を含み、第1の基板112及び第2の基板113の間に充填される。液晶層111は、非液晶化合物を含んでよい。第1及び第2の基板112、113は、それぞれ第1及び第2の透明電極114、115、第1及び第2の配向膜116、117を有する。
【0043】
液晶層111、第1及び第2の基板112、113、第1及び第2の透明電極114、115、第1及び第2の配向膜116、117、並びに、電圧印加部118は、それぞれ第1実施形態の液晶層11、第1及び第2の基板12、13、第1及び第2の透明電極14、15、第1及び第2の配向膜16、17、並びに、電圧印加部18と同様に構成されるので、説明を省略する。
【0044】
光学素子110は、
図5及び
図6に示すように、磁界形成部119が、複数の磁石を含んで構成される。磁界形成部119は、第1の基板112に沿う外周部に取付けられている。例えば、磁界形成部119は、
図6に示すように正六角形の頂点に当たる位置に配置された6つの磁石により構成されうる。それぞれの磁石は、第1の基板112に対して全て同じ極(S極又はN極)を向けて配置される。
【0045】
図5に示すように、電圧印加部118により電圧を印加したときの液晶層111内における液晶分子120の配向は、
図3の光学素子10の液晶分子20の配向とは異なる。具体的には、磁界形成部119の配置された液晶層111の外周部に位置する液晶分子120bは、z方向に配向する。一方、何れの磁界形成部119からも離れた、液晶層111のxy面の中心近くに位置する液晶分子120aは、磁界形成部119からの磁場の影響が小さくなるので、印加された電場によりxy面方向に平行な状態となる。このため、液晶層111の屈折率は、中心部において大きく外周部に近づくにつれて徐々に小さくなる。これによって、光学素子110は、第1の基板112又は第2の基板113に対して垂直に入射する光に対して、正の屈折力を有するGRINレンズとして作用することができる。
図5に示すように、光学素子110の外部から第1の基板112に垂直方向に入射した平行光束の入射光126は、光学素子130を透過して収束する出射光127となる。
【0046】
なお、正の屈折力を有する光学素子110の磁界形成部119の配置される位置は、
図5及び
図6に示したものに限られない。
図7に示すように、第1の基板112に隣接して、円環状の磁石を磁界形成部119として配置することもできる。円環状の磁石を用いることにより、より軸対称に近い磁場を発生させることが可能になる。また、矩形の第1の基板112の4隅に対向して、4つの磁界形成部119を配置することができる。さらに、矩形の第1の基板112の平行な2辺に沿って、長方形の磁石を配置することもできる。その場合、光学素子110は、シリンドリカルレンズとなりうる。
【0047】
以上説明したように本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、複雑な形状を有する電極、特殊な配向特性を有する配向膜等を用いること無く、比較的単純な方法で正の屈折力を有するレンズとして機能する光学素子110を生成することができる。また、第1実施形態の光学素子110と同様に、光学素子としての機能の発現、停止、及び、焦点距離の変更等が可能である。
【0048】
<第3実施形態>
次に、
図8を参照して本発明の第3実施形態に係る光学素子130について説明する。
図8の光学素子130は、第2実施形態に係る光学素子110と共通する構成要素を含む。また、光学素子130の製造方法は、第2実施形態に係る光学素子110を製造する方法と部分的に共通している。このため、第2実施形態に係る光学素子110と共通する構成要素には、同一の参照符号を付して、主に相違点についてのみ説明する。
【0049】
光学素子130は、液晶重合体層131、並びに、第1及び第2の基板112、113を含む。第1及び第2の基板112、113は、液晶重合体層131側にそれぞれ第1及び第2の透明電極114、115、第1及び第2の配向膜116、117を有する。第1及び第2の配向膜116、117は、液晶重合体層131の第1の透明電極114側及び第2の透明電極115側にそれぞれ配置された垂直配向膜である。光学素子130は、第2実施形態の光学素子110とは異なり、電圧印加部118及び磁界形成部119を含んでいない。
【0050】
液晶重合体層131は、液晶層111中の重合性化合物が重合して固化し、液晶層111中の液晶分子を位置に応じて所定の方向に配向した状態で固定して形成される。重合性化合物は重合性液晶化合物を含んでよい。重合性液晶化合物は、重合性官能器を有する液晶化合物であり、液晶化合物と重合性化合物の双方の性質を有する。また、液晶層111は、液晶性を示さない重合性化合物と非重合性液晶化合物との混合物を含んでもよい。以下に示す第5実施形態においても同様である。
【0051】
本開示で使用されうる重合性液晶化合物の詳細については、後述する。
【0052】
液晶重合体層131は、製造工程において印加した磁界及び電界の作用により、液晶分子が少なくとも部分的に第1の透明電極14及び第2の透明電極15に対して垂直なz方向以外の方向に配向して硬化されている。
【0053】
液晶重合体層131に含まれる硬化した液晶分子の配向方向は、位置に依存して異なる。
図8に示す例では、液晶分子20の配向がxy面の中心部でxy面に沿う状態から、外周部に向けてz方向に徐々に立ち上がる。それに伴い、屈折率の大きさがxy面内の位置に応じて変化する。液晶重合体層131のxy面内の屈折率分布は、xy面内の中心部において大きく、周辺部において小さい。このため、光学素子130は、第2実施形態に係る光学素子110と同様に、正の屈折力を有するGRINレンズとして機能する。第2実施形態の光学素子110と同様に、光学素子130の外部から第1の基板112に垂直方向に入射した平行光束の入射光126は、光学素子130を透過して収束する出射光127となる。
【0054】
次に、
図9を参照して光学素子130の製造方法について説明する。この説明において、製造方法が部分的に共通する第2実施形態の
図5及び
図6を参照する。なお、ステップS201~S203の工程は、
図4のステップS101~S103の工程に類似する。
【0055】
まず、平坦な第1の透明電極114、第1の透明電極114に対向する平坦な第2の透明電極115、及び、第1の透明電極114と第2の透明電極115との間に設けられた液晶層111を有する液晶セルが用意される(ステップS201)。第1の透明電極114及び第2の透明電極115は、それぞれ、第1の基板112及び第2の基板113の対向する表面に形成されてよい。第1の透明電極114及び第2の透明電極115の液晶層111側の表面には、さらに、第1の配向膜116及び第2の配向膜117が形成されてよい。第1の配向膜116及び第2の配向膜117は、垂直配向膜である。
【0056】
液晶層111は、負の誘電率異方性を示す液晶層である。負の誘電率異方性を示す液晶層は、負の誘電率異方性を有する液晶化合物を含有する。第2実施形態の液晶層111とは異なり、第3実施形態で使用される液晶層111は重合性化合物を含有する。液晶層111は、重合性化合物として、重合性液晶化合物を含んでよい。
【0057】
次に、この液晶セルに対して磁界を印加する(ステップ202)。磁界の磁力線は、第1の透明電極114及び第2の透明電極115に対して交差するように印加される。好ましくは、磁力線の一部は第1の透明電極114及び第2の透明電極115と直交する。磁界を印加する磁界形成部119が永久磁石の場合、磁界形成部119である磁石が、液晶層111に近接する所定の位置に配置される。磁界形成部119が電磁石の場合、液晶セルに近接する所定の位置に配置された磁界形成部119のコイルが通電され、磁界を発生させる。本実施形態では、
図5及び
図6に示すように、複数の磁界形成部119が、第1の基板112に沿う第1の基板112の外周部に配置される。例えば、磁界形成部119は、同じ極を第1の基板112に向けて配置される永久磁石である。磁界形成部119は、光学素子130に対して着脱可能に取り付けられる。
【0058】
ステップS202に続き、磁界を形成した状態で、第1の透明電極114と第2の透明電極115との間に電圧を印加する(ステップS203)。電圧は、交流電源又は直流電源を備える電圧印加部118により印加される。第1の透明電極114と第2の透明電極115との間に電圧が印加されると、液晶分子120の配向が場所により変化するので、xy面内の位置による屈折率分布が生じる。電圧印加部118が印加する電圧の大きさは、磁界形成部119の形成する磁界との関係で、液晶層111に所望の屈折率分布が得られるように調整される。
図5において、液晶層111の屈折率は、xy面方向において第1及び第2の基板112、113の中心部分で大きく、周辺部分で小さい。これにより、光学素子110は、第1の基板112に垂直に入射する入射光に対して正の屈折力を有する凸レンズとして作用する。
【0059】
上記ステップS201~S203の工程は、液晶層111が重合性化合物を含有することを除き、第2実施形態において光学素子110を生成する工程と基本的に同じである。第2実施形態に係る光学素子110は、電圧印加部118により印加する電圧をオン/オフすること、及び、電圧値を調整することにより、動的に光学素子としての機能の発現/停止及び屈折率等を調整することができる。これに対して、本実施形態の光学素子130は、光学素子110の液晶層111に含まれていた重合性化合物を硬化させることにより、光学的特性が固定される。さらに、光学素子130は、後の工程で不要な構成要素を除去することにより小型に構成される。以下に、ステップS203の後の工程を説明する。
【0060】
ステップS203の後、液晶セルに磁界及び電界を印加した状態で、液晶層111の重合性化合物を重合させる(ステップS204)。液晶層111の重合性化合物は、紫外線又は可視光光線を含む光の照射、加熱、又は、その他の方法によって硬化される。重合性化合物を硬化させることにより、液晶層111に含まれる液晶化合物が、重合前の液晶分子の配向状態のまま固定される。このため、重合前の液晶層111の屈折率分布が保持される。以下、液晶層111が重合した層を液晶重合体層131と呼ぶ。
【0061】
ステップS204で重合性化合物を重合させた後、磁界及び電圧の印加を停止する(ステップS205)。具体的には、磁界形成部119が永久磁石の場合、磁界形成部119を光学素子130から取り除く。磁界形成部119が電磁石の場合、磁界形成部119への電力の供給を停止する。また、電圧印加部118のスイッチ122をオフにする。液晶重合体層131内では、液晶分子120は固定されているので、磁界及び電圧の印加を停止しても、液晶重合体層131の光学特性に変化は生じない。
【0062】
さらに、ステップS205の後、光学素子130から不要な構成要素が取り除かれる(ステップS206)。不要な構成要素は、電磁石の場合の磁界形成部119及び電圧印加部218を含む。これにより、光学素子130は、電気回路を含まない構成としうる。光学素子130は、
図8に示すように、薄く且つ軽量の板状又はフィルム状の光学部品とすることができる。
【0063】
従来技術においてレンズを液晶を用いて製造する場合、液晶に屈折力分布を持たせるために、例えば、位置に応じて水平及び垂直方向の配向規制力の異なる配向膜を用いたり、円環状の電極を用いて位置に応じて印加する電界の強さを変えたりすること等が行われている。このような方法では、特別な処理を行った配向膜、複雑な形状の電極等が必要となる。一方、本実施形態の方法によれば、液晶の界面には一様な垂直配向膜を配置し、電場及び磁場の印加により液晶分子の向きを制御することを可能にしている。また、本実施形態による光学素子130は、界面に位置する液晶分子の向きが垂直であるのに対し、界面から離れたxy面の中心付近に水平方向に配向している液晶分子が含まれている点で、界面の規制力により液晶の配向を制御する、すなわち、界面に位置する液晶分子を水平にすることで界面から離れた液晶分子を水平方向へ配向させる、方法を用いた従来の方法で製造した液晶レンズとは物としても異なっている。なお、界面の規制力を用いないで液晶分子を配向させる方法として、光物理プロセスを用いる方法が知られている(例えば、特開2015-055685号公報、及び、Janossy I. et al. Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1990, 179, 1.参照)。これは、液晶中にアントラキノンのような偏光の振動方向に平行に配向する色素を添加し、そこに、レーザー光を照射することにより配向させる方法である。レーザー光は光強度に分布を持ち、中心部分で光の強度が強く中心から離れるに従い弱い。そのため、液晶分子を基板に垂直に配向させておき、基板の法線方向からレーザー光を照射すると、レーザー光の中心部分は色素が基板に水平に配向し、それに誘導されて液晶分子も基板に水平に配向し、中心から離れるに従って、液晶が基板に垂直に配向したままの状態になる。このように、レーザー光の光強度に対応して液晶分子の配向を垂直から水平に変化させることにより屈折率が変化するので、液晶をレンズとして機能させることができる。しかしながら、この方法は、光の振動面に平行に配列する色素を使用することが必須であり、且つ、レーザーのような高出力の偏光した光を射出することが可能な光源を使用することも不可欠である。一方、本実施形態のレンズは、液晶化合物中に色素を含有しなくともよく、また、レーザー光を使用しなくてもよいなどの利点がある。
【0064】
以上説明したように本実施形態によれば、複雑な形状を有する電極、特殊な配向特性を有する配向膜等を用いること無く、比較的単純な製造方法で、正の屈折力を有する光学素子130を製造することができる。このようにして製造した光学素子130は、機能を発現するために、磁界及び/又は電圧等の印加を必要とせず、小型で軽量な構成となっている。
【0065】
<第4実施形態>
図10を参照して、第4実施形態に係る光学素子210の構成について説明する。光学素子210は、z方向に延びる中心軸線Aの周りで、光学軸の方向が方位角方向に変化するqプレートとして構成される。中心軸線Aは、光学素子210の軸対称性の中心となる仮想の線である。光学素子210は、
図1~3の光学素子10の構成と類似する部分を有する。光学素子10に含まれる構成要素に対応する構成要素がある場合、光学素子210の構成要素は、光学素子10の対応する構成要素の参照符号に200を加えた参照符号が付されている。
【0066】
図10に示すように、光学素子210は、液晶層211、平坦な第1及び第2の基板212、213、並びに、電圧印加部218を含んで構成される。液晶層211は、第1の基板212及び第2の基板213の間に充填される。第1及び第2の基板212、213は、それぞれ第1及び第2の透明電極214、215、並びに、第1及び第2の配向膜216、217を有する。
【0067】
液晶層211、第1及び第2の基板212、213、第1及び第2の透明電極214、215、第1及び第2の配向膜216、217、並びに、電圧印加部118は、それぞれ第1実施形態の液晶層11、第1及び第2の基板12、13、第1及び第2の透明電極14、15、第1及び第2の配向膜16、17、並びに、電圧印加部18と同様に構成されるので、具体的な説明を省略する。
【0068】
図10に示すように、電圧印加部218により電圧を印加した状態で、液晶層211内における液晶分子220の配向は、
図3の光学素子10の液晶分子20の配向とは異なる。具体的には、z方向から見たとき、液晶分子220は、中心軸線Aの回りに放射状に並ぶ。
図10に示すように、液晶分子220は水平方向(y方向)から見たとき、z方向に対して傾いて配向している。しかし、液晶分子220はz方向に対して垂直となるように水平方向に配向してもよい。液晶分子220のz方向及びxy面に対する傾きは、液晶層211の全体に渡って一様である。このため、光学素子210は、第1実施形態の光学素子10とは異なり、x方向及びy方向に屈折率分布を有さない。
【0069】
液晶化合物は、公知なように、複屈折性を有する。ネマチック液晶のような光学的に一軸性の相に偏光が入射すると、常光と異常光との成分に分解された二つの偏光が、液晶内を伝搬するように振る舞う。常光は、液晶の光学軸に垂直な方向に振動する偏光である。異常光は、液晶の光学軸に平行な方向に振動する偏光である。常光に対する屈折率noと異常光に対する屈折率neとの差により、液晶内を伝播する光の常光と異常光との間にリタデーション(位相遅れ)が発生する。液晶層211では、液晶分子が放射状に配向することにより、液晶の光学軸(高速軸)の方向が、方位角方向に変化する。液晶層211では、中心軸線Aの回りを周回する間に、光学軸が360度回転する。
【0070】
液晶層211によるリタデーションは、液晶層211の厚さ(z方向の大きさ)に依存して変化する。液晶層211は、適切に厚さを設定することにより、所定の波長の光に対して、リタデーションをπとすることができる。すなわち、光学素子210は、素子全体でリタデーションがπであり、中心軸線Aの回りで方位角方向に光学軸が回転する1/2波長板として機能する。光学軸の向きが、
α(r,φ)=qφ+α0
で方位角方向に変化する波長板は、qプレートと呼ばれる。本実施形態の光学素子210は、q値が1のqプレートとして機能する。qプレートは、偏光方向が一定の規則に従って空間的に変化するベクトルビームを発生させるために使用できる。
【0071】
以下に、
図11を参照して、直線偏光に対する光学素子210の作用を説明する。
図11において、矢印241は、光学素子210への入射光の進行方向を示す。矢印243は、破線で示される入射光の断面における入射光の偏光方向を示す。入射光は、一方向に直線偏光しているものとする。また、光学素子210の光学軸244は、中心の周りで方位角方向に一周する間に360度回転している。1/2波長板では、入射光の偏光方向から光学軸が角度θ傾いた場合、出射光の偏光方向は入射光の偏光方向に対し角度2θ傾く。そのため、出射光の偏光方向は、出射光の断面242に矢印245で示すように、方位角方向に一周する間に720度(2回転)回転する。このように、光学素子210を用いることにより、方位角に応じて偏光方向が回転するベクトルビームを得ることができる。
【0072】
なお、上述の説明では光学素子210は、リタデーションをπとしたが、光学素子210は、液晶層211の厚さの設計値を変えることにより、リタデーションを任意の大きさに設定することができる。例えば、リタデーションはπ/2とすることができる。リタデーションをπ/2とすると、光学素子210は、各方位角の位置で1/4波長板として機能する。このような光学素子210は、方位角方向に応じて、直線偏光を、直線偏光、楕円偏光及び円偏向の何れかに変換することができる。また、光学素子210は、電圧印加部218により印加される電圧を変えることによって、液晶分子のz方向に対する傾きを変更して、駆動中にリタデーションを調整することもできる。
【0073】
次に、
図12を参照して、光学素子210を生成する方法を説明する。
【0074】
まず、第1の透明電極214、第1の透明電極214に対向する第2の透明電極215、及び、第1の透明電極214と第2の透明電極215との間に設けられた液晶層211を有する液晶セルが用意される(ステップS301)。この工程は、
図4のフローチャートのステップS101と同様である。
【0075】
次に、この液晶セルに対して磁界を印加する(ステップS302)。この工程は、
図4のフローチャートのステップS102と同様である。磁界を印加するため、光学素子210を生成するに当たっては、
図13に示すような第1実施形態に係る磁界形成部19と同様の磁界形成部219が用いられる。磁界形成部219は、第1実施形態の磁界形成部19と同様に構成され、同様の位置に配置される。
【0076】
磁界を印加した状態で、第1の透明電極214と第2の透明電極215との間に電圧を印加する(ステップS303)。この工程は、
図4のフローチャートのステップS103と同様である。これによって、
図13に示すように、第1実施形態の光学素子10が有する液晶分子の配向と同様に配向した液晶分子を含む液晶層211が構成される。
【0077】
次に、磁場の印加を停止し磁界形成部219を取り除く。(ステップS304)。磁界の印加が停止すると、液晶層211中の液晶分子が磁界から受ける力が無くなる。磁界から受ける力が無くなると、液晶の有する弾性により、液晶層221の内部で液晶分子220が、
図10に示すように、z方向において隣り合う液晶分子と同じ方向に並んで配向する。また、xy面で見たときは、中心軸線Aを中心とする液晶分子220の放射状の配向が維持される。
【0078】
以上説明したように本実施形態によれば、複雑な形状を有する電極、特殊な配向特性を有する配向膜等を用いること無く、比較的単純な製造方法で、qプレートの機能を有する光学素子210を製造することができる。また、光学素子210は、電圧印加部218による電圧を調整することにより、リタデーションを調整することができる。さらに、光学素子210は、電圧印加部218による電圧の印加を停止することにより、液晶分子220がz方向に配向した元の状態に戻すことができる。
【0079】
<第5実施形態>
図14は第5実施形態に係る光学素子230の概略構成を示す側面図である。
図14の光学素子230は、第4実施形態に係る光学素子210と共通する構成要素を含む。第4実施形態に係る光学素子210と共通する構成要素には、同一の参照符号を付して、説明を省略する。本実施形態では、第4実施形態における光学素子210の液晶層211を、第3実施形態の液晶層111と同様の重合性化合物を含有する液晶層211とする。さらに、
図12のフローチャートのステップS304の後において、液晶層211の重合性化合物を重合させて液晶重合体層231とすることにより、
図14に示す板状又はフィルム状の光学素子230を製造することができる。
【0080】
図15のフローチャートを
図13及び
図14と共に参照して、光学素子230の製造方法を説明する。ステップS401~S404については、本実施形態では液晶層211が重合性化合物を含有することを除き、
図12のフローチャートのステップS301~S304と同じなので、説明を省略する。
【0081】
ステップS404で磁場の印加を停止した後、液晶セルに電界を印加した状態で、液晶層211の重合性化合物を重合させ、液晶重合体層231とする(ステップS405)。これにより、液晶層211に含まれる液晶化合物が、重合前の液晶分子の配向状態のまま固定される。このため、重合前の液晶層211の複屈折性が保持され、光学素子230はステップS404の状態と略変わらない光学軸の方向とリタデーションを有する。
【0082】
つぎに、ステップS405で重合性化合物を重合させた後、電圧の印加を停止する(ステップS406)。具体的には、
図13のスイッチ222がオフにされる。電圧の印加を停止しても、液晶分子220の配向が固定されているので、光学素子230の特性は変化しない。
【0083】
さらに、ステップS406の後、光学素子230から不要な構成要素を取り除く(ステップS407)。不要な構成要素は、電圧印加部218を含む。これにより、
図14に示したqプレートの機能を有する光学素子230が得られる。
【0084】
従来技術を用いてqプレートを液晶を用いて製造する場合、界面に放射状の規制力を持たせた配向膜を用い、この上に液晶を塗布して液晶層全体の液晶分子を放射状に配向させ、これを重合させる方法が行われている。この方法では、配向方向が位置により異なるため、配向膜に特別な処理が必要となる。一方、本実施形態の製造方法によれば、液晶の界面には一様な垂直配向膜を用い、電場及び磁場の印加によりバルクの液晶、即ち、界面に触れていない部分の液晶の配向を変えることを可能にしている。また、本発明のqプレートは、界面の液晶分子の向きが、バルクの液晶分子の向きと異なるという点で、従来技術による液晶を用いたqプレートとは異なった構成を有している。
【0085】
また、本実施形態における光学素子230の製造方法では、負の誘電率異方性を示す液晶層と垂直配向膜とを用い、電圧を印加しない状態で、液晶分子が基板に対して垂直方向を向くようにした。さらに、この製造法では、液晶分子が垂直方向を向いた状態から、磁場と電場を印加したことにより、液晶分子は磁界の影響を受けて、磁力線が垂直方向を向く位置を中心として放射方向に配向した。正の誘電率異方性を示す液晶層では、同様の方法で液晶分子を放射方向に配向させることは難しい。すなわち、負の誘電率異方性を示す液晶層は、正の誘電率異方性を示す液晶層を用いる場合よりも、液晶分子をこのような放射状の配列をさせるのに有利である。
【0086】
以上説明したように本実施形態によれば、複雑な形状を有する電極、特殊な配向特性を有する配向膜等を用いること無く、比較的単純な製造方法で、qプレートの機能を有する光学素子230を製造することができる。このようにして製造した光学素子230は、機能を発現するために、磁界及び/又は電圧等の印加を必要とせず、小型で軽量な構成となっている。
【0087】
[非重合性液晶化合物]
本発明の液晶層を構成する液晶組成物に使用可能な非重合性液晶化合物は、特に制限されることはない。非重合性液晶化合物は、例えば、以下の一般式(I)で表わされる。
【0088】
【化1】
(上記一般式(I)中、R
11は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は相互に非隣接の2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、
A
11及びA
12はそれぞれ独立して、
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH
2-又は相互に隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-又は-S-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい。)、及び
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立して、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよく、
Z
11は、単結合、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-OCF
2-、-CF
2O-、-CH=N-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表し、
Y
11は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は相互に非隣接の2個以上の-CH
2-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、また、アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、
m
11は1、2、3又は4を表すが、m
11が2、3又は4を表す場合、複数存在するA
11及びZ
11はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【0089】
本発明において、非重合性液晶化合物を単独で使用しても、あるいは2種以上混合して液晶組成物として使用してもよい。非重合性液晶化合物を2種以上混合して使用する場合には、種々の組み合わせが可能である。例えば、非重合性液晶化合物を誘電率異方性(Δε)に着目すると、誘電率異方性(Δε)が-2以上2以下の液晶化合物、誘電率異方性(Δε)が-2未満の液晶化合物及び誘電率異方性(Δε)が2以上の液晶化合物の3つに分類される。本発明の液晶層に使用される非重合性液晶化合物は、所望の誘電率異方性(Δε)又は所望の屈折率異方性(Δn)に応じて、誘電率異方性(Δε)が-2未満の液晶化合物、誘電率異方性(Δε)が-2以上2以下の液晶化合物、及び誘電率異方性(Δε)が2以上の液晶化合物からなる群から選択される少なくとも1種を選択することができる。以下、各液晶化合物の好ましい形態について説明する。
【0090】
<<誘電率異方性(Δε)が-2以上2以下の液晶化合物>>
上記誘電率異方性(Δε)が-2以上2以下の液晶化合物としては、以下の一般式(2)で表わされる液晶化合物が好ましい。
【0091】
【化2】
(上記一般式(2)中、R
21及びR
22はそれぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
M
21、M
22及びM
23はそれぞれ独立して、
(d) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(e) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、並びに
(f) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(d)、基(e)及び基(f)中の水素原子はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよく、
o
21は0、1又は2を表し、
L
21及びL
22はそれぞれ独立して単結合、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-OCF
2-、-CF
2O-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-を表し、L
22が複数存在する場合は、それらは同一でも、あるいは異なっていてもよく、M
23が複数存在する場合は、それらは同一でも、あるいは異なっていてもよい。但し、以下の一般式(4a)~(4c)で表わされる化合物を除く。)
【0092】
一般式(2)で表される化合物において、R21及びR22はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されたもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されたものも含む。)が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、炭素原子数2~5のアルケニル基又は炭素原子数3~6のアルケニルオキシ基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のアルコキシ基が特に好ましい。
【0093】
光学素子における液晶層の信頼性を重視する場合には、R21及びR22はともにアルキル基であることが好ましい。液晶層における液晶化合物の揮発性を低減させることを重視する場合にはアルコキシ基であることが好ましい。液晶層において、粘性の低下を重視する場合には、R21又はR22の少なくとも一方がアルケニル基であることが好ましい。
【0094】
上記一般式(2)で表わされる分子内に存在するハロゲン原子は、0、1、2又は3個が好ましく、0又は1個が好ましく、他の液晶分子との相溶性を重視する場合には1個が好ましい。
【0095】
R21及びR22は、それが結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1~5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基及び炭素原子数4~5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1~5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1~4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2~5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0096】
本明細書におけるアルケニル基としては、以下の式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0097】
【化3】
M
21、M
22及びM
23はそれぞれ独立して、トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH
2基又は相互に隣接していない2個のCH
2基が酸素原子に置換されているものを含む)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されているものを含む)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基が好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基又は1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0098】
液晶層のΔnを大きくすることが求められる場合には、M21、M22及びM23は芳香族であることが好ましい。液晶層の応答速度を改善するためには、M21、M22及びM23は脂肪族であることが好ましい。M21、M22及びM23は、それぞれ独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造を表すことがより好ましい。
【0099】
【化4】
(上記式中*は、炭素原子又は他原子との結合を表わす。)
トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表すことがさらに好ましい。
【0100】
o21は0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0101】
L21及びL22はそれぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-又は-CH2O-がより好ましく、単結合又は-CH2CH2-が更に好ましい。
【0102】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(2)で表される液晶化合物の含有量は、低温での溶解性、転移温度、電気的な信頼性、複屈折率、プロセス適合性、滴下痕、焼き付き、誘電率異方性などの求められる性能に応じて適宜調整する必要がある。
【0103】
本発明の液晶層に含まれる非重合性液晶化合物の総量に対する、式(2)で表される化合物の、好ましい含有量の下限値は1質量%であり、上限値は85質量%である。より好ましい含有量の下限値は3質量%であり、上限値は65質量%である。
【0104】
該組成物の粘度を低く保ち、応答速度が速い組成物が必要な場合は上記の下限値が高く上限値が高いことが好ましい。さらに、本発明に係る組成物のTN2を高く保ち、温度安定性の良い組成物が必要な場合は上記の下限値が高く上限値が高いことが好ましい。また、駆動電圧を低く保つために誘電率異方性を大きくしたいときは、上記の下限値を低く上限値が低いことが好ましい。
【0105】
本発明の液晶層を構成する液晶組成物は、一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種を含有することが好ましく、1種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましい。
【0106】
<<誘電率異方性(Δε)が-2以下の液晶化合物>>
上記誘電率異方性(Δε)が-2以下の液晶化合物は、以下の一般式(3a)、一般式(3b)又は一般式(3c)で表わされることが好ましい。
【0107】
【化5】
(上記一般式(3a)~(3c)中、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35及び、R
36はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されていてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
M
31、M
32、M
33、M
34、M
35、M
36、M
37、M
38及びM
39はそれぞれ独立して、
(d) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(g) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、並びに
(h) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、
上記の基(d)、基(g)又は基(h)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていてもよく、
L
31、L
32、L
33、L
34、L
35、L
36、L
37、L
38及びL
39はそれぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-OCF
2-、-CF
2O-又は-C≡C-を表し、M
32、M
33、M
35、M
36、M
38、M
39、L
31、L
33、L
34、L
36、L
37及び/又はL
39が複数存在する場合は、それらは同一でも、あるいは異なっていてもよく、
X
31、X
32、X
33、X
34、X
35、X
36、X
37及びX
38はそれぞれ独立して、水素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はフッ素原子を表すが、X
31及びX
32の何れか一つはフッ素原子を表し、X
33、X
34及びX
35の何れか一つはフッ素原子を表し、X
36、X
37及びX
38の何れか一つはフッ素原子を表すが、X
36及びX
37は同時にフッ素原子を表すことはなく、X
36及びX
38は同時にフッ素原子を表すことはなく、Gはメチレン基又は-O-を表し、
u、v、w、x、y及びzはそれぞれ独立して、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下である。)
【0108】
上記一般式(3a)で表される化合物を単独で含有してもよく、あるいは一般式(3a)、一般式(3b)及び一般式(3c)から選択される少なくとも1種又は2種以上の化合物を任意に組み合わせてもよい。
【0109】
本発明の液晶層に含まれる非重合性液晶化合物の総量に対する、一般式(3a)~(3c)で表される液晶化合物の好ましいそれぞれの含有量の下限値は、30質量%であり、上限値は95質量%である。より好ましい含有量の下限値は45%であり、上限値は80質量%である。
【0110】
上記一般式(3a)、一般式(3b)及び一般式(3c)で表される化合物において、R31、R32、R33、R34、R35及び、R36はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素数1~15の直鎖状アルキル基又は炭素数2~15のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されているもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されているものも含む。)が好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ基又は炭素数2~10アルケニル基がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基が特に好ましい。M31~M39はそれぞれ独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられているものも含む。)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられているものも含む)、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基で表す基(各々の基に含まれる水素原子がそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されているものも含む。)が好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基が特に好ましい。L31~L39はそれぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCO-、-COO-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CH2CH2-、-OCH2-又は-CH2O-がより好ましい。X31~X38はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、Gはメチレン基又は-O-を表し、u、v、w、x、y及びzはそれぞれ独立して、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下で表す。
【0111】
一般式(3a)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(3a-1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0112】
【化6】
上記一般式(3a-1)中、R
31及びR
32はそれぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L
3a、L
3b及びL
3cはそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-OCF
2-、-CF
2O-又は-C≡C-を表し、M
3a、M
3b及びM
3cはそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基、2,5-テトラヒドロピラニル基を表し、該1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよく、u
1及びv
1はそれぞれ独立して0又は1を表す。)
【0113】
<<誘電率異方性(Δε)が2以上の液晶化合物>>
上記誘電率異方性(Δε)が2以上の液晶化合物は、以下の一般式(4a)、一般式(4b)又は一般式(4c)で表わされることが好ましい。
【0114】
【化7】
(上記一般式(4a)~(4c)中、
R
41、R
42及びR
43は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数2~10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、-O-又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
M
41、M
42、M
43、M
44、M
45、M
46、M
47及びM
48はそれぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)、又は基(c)のいずれか1種を表わし、
(d) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(i) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は相互に隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、並びに
(j) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、
上記の基(d)、基(i)又は基(j)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよく、
L
41、L
42、L
43、L
44、L
45、L
46、L
47及びL
48は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-OCH
2-、-CH
2O-、-OCF
2-、-CF
2O-又は-C≡C-を表し、
p、q、r、s及びtは、それぞれ独立して、0、1又は2を表すが、q+r及びs+tは2以下であり、
M
42、M
44、M
45、M
47、M
48、L
41、L
43、L
45、L
46及び/又はL
48がそれぞれ複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
X
41、X
42、X
43、X
44、X
45、X
46及びX
47は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
Y
41、Y
42及びY
43は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、又はジフルオロメトキシ基を表す。)
本発明の液晶層を構成する液晶組成物は、一般式(4a)、一般式(4b)及び一般式(4c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有することが好ましい。前記液晶組成物が一般式(4a)、一般式(4b)及び一般式(4c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有する場合、1種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましい。本発明の液晶層を構成する液晶組成物全体の総量に対する、一般式(4a)、一般式(4b)及び一般式(4c)で表される化合物からなる群から選択される化合物の含有量の下限値は、5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることが好ましい。前記含有量の上限値は80質量%が好ましく、70質量%が好ましく、60質量%が好ましく、50質量%が更に好ましい。
【0115】
上記の一般式(1)、(2)、(3a)~(3c)及び(4a)~(4c)において、選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
【0116】
本発明の液晶層を構成する液晶組成物は、一般式(3a)、一般式(3b)及び一般式(3c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物、又は一般式(4a)、一般式(4b)及び一般式(4c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有することが好ましい。前記液晶組成物が、一般式(3a)、一般式(3b)及び一般式(3c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物、又は一般式(4a)、一般式(4b)及び一般式(4c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を含有する場合、2種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましい。本発明の液晶層を構成する液晶組成物全体の総量に対する、一般式(3a)、一般式(3b)及び一般式(3c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物、又は一般式(4a)、一般式(4b)及び一般式(4c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物の含有量の下限値は、5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることがより好ましい。前記含有量の上限値は、80質量%であることが好ましく、70質量%であることが好ましく、60質量%であることが好ましく、50質量%であることが好ましい。
【0117】
本発明の液晶組成物において、Δnは0.08~0.25の範囲であることが好ましい。
【0118】
本発明の液晶組成物に含まれる非重合性液晶化合物の総量に対しての、一般式(3a)、一般式(3b)、一般式(3c)及び一般式(2)で表される化合物の合計の、好ましい含有量の下限値は50質量%であり、上限値は95質量%である。より好ましい含有量の下限値は70質量%であり、上限値は90質量%である。
【0119】
本発明の液晶組成物に含まれる非重合性液晶化合物の総量に対しての、一般式(3a)及び一般式(2)で表される化合物の合計の、好ましい含有量の下限値は50質量%であり、上限値は95質量%である。より好ましい含有量の下限値は70質量%であり、上限値は90質量%である。
【0120】
本発明に係る液晶組成物は、分子内に過酸(-CO-OO-)構造等の酸素原子同士が結合した構造を持つ化合物を含有しないことが好ましい。
【0121】
液晶組成物の信頼性及び長期安定性を重視する場合にはカルボニル基を有する化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以下とすることが更に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0122】
UV照射による安定性を重視する場合、塩素原子が置換している化合物の含有量を前記組成物の総質量に対して15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることが好ましく、8質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましく、3質量%以下とすることが好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。
【0123】
[重合性液晶化合物]
少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物は、以下の一般式(5)で表わされることが好ましい。
【化8】
(上記一般式(5)中、P
51は重合性官能基を表し、Sp1は単結合又は炭素原子数2~18のスペーサー基を表し、m51は0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、R
51は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2~18のアルキル基を表すが、該アルキル基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子、CN、又は以下の一般式(5-a)により置換されていてもよく、このアルキル基中に存在する1つのCH
2基又は相互に隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていてもよい。
【化9】
(上記一般式(5-a)中、P
52は重合性官能基を表し、Sp2は、単結合又は炭素原子数1~18のスペーサー基を表し、m52は0又は1を表し、上記一般式(5-a)中の*は、炭素原子又は他の原子との結合を表わす。)で表される構造を表す。)
【0124】
上記一般式(5)において、Sp1及びSp2がそれぞれ独立して、アルキレン基を表し、(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていてもよく、この基中に存在する1つのCH2基又は相互に隣接していない2つ以上のCH2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていても良い。))
【0125】
上記一般式MGは、一般式(5-b)で表されることがより好ましい。
【化10】
(上記一般式(5-b)中、A
51、A
52及びA
53はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、テトラヒドロチオピラン-2,5-ジイル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基-、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、フェナントレン-2,7-ジイル基、9,10-ジヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a-オクタヒドロフェナントレン-2,7-ジイル基、1,4-ナフチレン基、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジセレノフェン-2,6-ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2-b]チオフェン-2,7-ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2-b]セレノフェン-2,7-ジイル基、又はフルオレン-2,7-ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、CN基、炭素原子数1~8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2~8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していてもよく、Z
50、Z
51、Z
52及びZ
53はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-、-OCOCH
2CH
2-、-CONH-、-NHCO-又は単結合を表し、n2は0、1又は2を表し、上記一般式(5-b)中の*は、炭素原子又は他の原子との結合を表わす。)
【0126】
重合性官能基P
51及びP
52は、それぞれ独立して、以下の一般式(P-1)~(P-7)から選択される基が好ましい。
【化11】
(上記一般式(P-1)~式(P-7)中、R
P1~R
P6はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は炭素原子数1~3のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表わし、n
P1~n
P5はそれぞれ独立して、1~3の整数を表わし、上記一般式(P-1)~(P-7)中の*は、炭素原子又は他の原子との結合を表わす。)
【0127】
より具体的には、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物は、以下の一般式(6)で表わされる化合物が好ましい。
【化12】
(上記一般式(6)中、Z
61は水素原子又はメチル基を表し、Z
62は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~18の炭化水素基、又は上記一般式(5-a)を表し、W
61は、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-を表し、v2は0~18の整数を表し、u2は0又は1を表し、A
61、B
61及びC
61はそれぞれ独立的に、1,4-フェニレン基、相互に隣接しないCH基が窒素で置換された1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1つ又は相互に隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、1,4-ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基を表すが、式中に存在する1,4-フェニレン基、又は2,6-ナフチレン基は炭素原子数1~7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていてもよく、Y
61及びY
62はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C≡C-、-CH=CH-、-CF=CF-、-(CH
2)
4-、-CH
2CH
2CH
2O-、-OCH
2CH
2CH
2-、-CH=CHCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-又は-OCOCH
2CH
2-を表し、Y
63は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-又は-CH=CHCOO-を表す。)
【0128】
本発明に用いられる、重合性官能基を1つ以上有する非液晶化合物は、重合性官能基を有する液晶化合物の配向性を乱さない限りにおいては特に限定はなく、公知慣用のものを用いることができる。
【0129】
例えば、UV硬化技術入門(加藤清視、中原正二著、高分子刊行会発行、1984年)、光・放射線硬化技術(大成社編集部編、大成社発行、1985年)、UV/EB硬化ハンドブック(加藤清視著、高分子刊行会発行、1985年)、紫外線硬化システム(加藤清視著、総合技術センター発行、1989年)、最新UV硬化技術(高簿一弘著、技術情報協会発行、1991年)、UV硬化技術の進歩(加藤清視監修、総合技術センター発行、1993年)新化学インデックス(化学工業日報社発行、2010年)、光硬化技術データブック(テクノネット社発行、2000年)、光硬化技術実用ガイド-UV/EB硬化技術の応用展開-(市村國宏、角岡正弘監修、テクノネット社発行、2002年)、最新UV硬化実用便覧(技術情報協会発行、2005年)、あるいは、独立行政法人物質・材料研究機構高分子データベース(PolyInfo)(http://mits.mins.go.jp)に記載されているような重合性化合物が挙げられる。
【0130】
重合性官能基を1つ以上有する非液晶化合物としては、一般式(7)
【化13】
(上記一般式(7)中、P
71は重合性官能基を表し、Sp3は炭素原子数1~18のアルキル基を表すが、この基中に存在する1つのCH
2基又は相互に隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、-O-、-S-、-NH-、-N(CH
3)-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-SCO-、-COS-又は-C≡C-により置き換えられていてもよく、l
71は0~5の整数を表し、R
71は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1~3のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていてもよく、あるいはR
71は一般式(7)のP
71を表す。)で表される化合物が好ましい。
【0131】
さらには、一般式(7)において、重合性官能基P
71が一般式(7-a)、一般式(7-b)、一般式(7-c)及び一般式(7-d)
【化14】
(上記一般式中、R
72、R
73、R
74、R
75及びR
76はそれぞれ独立的して、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表し、n
71は0又は1を表す。上記式中*は、炭素原子又は他の原子との結合を表わす。)で表される置換基からなる群より選ばれる置換基が好ましい。
【0132】
一般式(7)で表される化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0133】
一般式(7)の含有量は本発明の液晶層を構成する液晶組成物(の総量100質量%)に対して、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。また、一般式(5)のSp1のアルキル基の長さとSp2のアルキル基の長さは、同じ程度であるとリオトロピック液晶様性質が得られるため、好ましい。
【0134】
本発明において、重合性官能基を有する液晶化合物を重合させるために重合開始剤を用いることもできる。重合を光照射によって行う場合に使用する光重合開始剤としては公知慣用のものが使用でき、重合を熱によって行う場合に使用する熱重合開始剤としては公知慣用のものが使用できるが、これら重合開始剤は液晶組成物中に溶解するものが好ましい。これら重合開始剤の使用量は液晶組成物の総量100質量%に対して0~10質量%が好ましく、0.1~7.5質量%がより好ましく、0.5~5質量%が特に好ましい。これら重合開始剤は、単独で使用することもできるし、2種以上混合して使用することもできる。
【0135】
本発明において、重合禁止剤を使用してもよい。当該重合禁止剤としては、フェノール系化合物、キノン系化合物、アミン系化合物、チオエーテル系化合物、ニトロソ化合物、等が挙げられる。
【0136】
本発明において、汎用の添加剤を使用してもよい。例えば、レベリング剤、チキソ剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、表面処理剤等の添加剤を液晶の配向能を著しく低下させない程度添加することができる。
【0137】
本発明に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。本開示において、x方向、y方向、及びz方向は、説明の便宜上設けられたものであり、互いに入れ替えられてよい。
【0138】
本願の実施形態に示した液晶層に対する磁界及び電界の印加方法、配向膜の構成等は、例示に過ぎない。所望の液晶分子の配列を得るために、磁界形成部の配置、及び、透明電極の形状、配向膜の配向方向等は、種々の変形、変更が可能である。例えば、本願の実施形態において、磁界形成部は、第1及び第2の基板の一方の側のみに配置されていた。しかし、磁界形成部は第1及び第2の基板の一方の側のみではなく、液晶セルを挟んで第1の基板側と第2の基板側の双方に、それぞれ配置してよい。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、例えば、光学素子及びその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0140】
10,110,130,210,230 光学素子
11,111,211 液晶層
12,112,212 第1の基板
13,113,213 第2の基板
14,114,214 第1の透明電極
15,115,215 第2の透明電極
16,116,216 第1の配向膜
17,117,217 第2の配向膜
18,118,218 電圧印加部
19,119,219 磁界形成部
20,120,220 液晶分子
21,121,221 電圧源
22,122,222 スイッチ
23,223 磁界
24,124,224 電圧制御部
126 入射光
127 出射光
130 光学素子
131,231 液晶重合体層