IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧 ▶ JNC株式会社の特許一覧

特許7312403新規化合物及びそれを用いたセンサーチップ
<>
  • 特許-新規化合物及びそれを用いたセンサーチップ 図1
  • 特許-新規化合物及びそれを用いたセンサーチップ 図2
  • 特許-新規化合物及びそれを用いたセンサーチップ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】新規化合物及びそれを用いたセンサーチップ
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/22 20060101AFI20230713BHJP
【FI】
C07D487/22 CSP
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020030080
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134155
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】南 豪
(72)【発明者】
【氏名】中原 勝正
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊弘
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-526708(JP,A)
【文献】特表2011-518151(JP,A)
【文献】特表2007-532694(JP,A)
【文献】特表2007-505046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物:
【化1】

(式中、nは5から20の整数であり、mは1から10の整数である。X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表し、Rは、SH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、Rアルキル基、アルケニル基、及びククルビットウリル構造からなる群から選択される有機基を表す。)。
【請求項2】
前記化合物は無機材料と相互作用し、自己組織化単分子膜を形成することができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(2)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化2】

(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
【請求項4】
式(3)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化3】

(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
【請求項5】
式(4)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化4】

(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
【請求項6】
式(5)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化5】

(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
【請求項7】
式(6)表される、請求項1に記載の化合物:
【化6】

(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。)。
【請求項8】
無機物と、
前記無機物に固定化させた請求項1に記載の化合物と、
を含む、センサーチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の化学物質を検知するレセプターとなる新規化合物、およびそれを用いたセンサーチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の健康志向に伴い、化学物質を簡便にモニタリングする需要が増えてきている。食品に含まれる栄養分や、環境負荷物質を分析する為にはこれまで大型で高価な質量分析などの分析機器や、高価な分析試薬が必要であった。しかし、今後は迅速で簡便な分析手法が求められ、これにより、人類の暮らしはより快適になると予想される。
【0003】
そうした背景の中、金属などの無機物に自己組織化単分子膜(SAM)を形成させてレセプターとし、目的検知対象物質と相互作用させて電気、光といった外部信号として取り出す研究開発が進んできている。用いる相互作用としては共有結合などの化学反応、抗体-抗原反応、ホスト-ゲストによる超分子認識が知られている。
【0004】
これまでに報告された例としては、レセプターが特定の化学物質に特異的に結合することにより信号を取り出していたが、この手法では多品種の化合物に対して対応するレセプターを多品種で製造する必要があり、工業的には現実的ではないと考えられる。それに対して、ある程度の反応サイトの余裕を持ち、多品種の化学物質に対して応答はするが、応答強度が異なるレセプターを少品種だけ製造することの方が、開発速度が高まり、工業的にも理想的である。
【0005】
そういった要望の中でククルビット[n]ウリルは親水性及び疎水性を示す空隙の存在により多様な化合物に対して捕集能力を有している事が知られている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。ククルビット[n]ウリルは、空隙入り口にカルボニル基を有している為、電荷-極性相互作用、極性-極性相互作用、または水素結合によって多様なイオン性化合物、及び極性の大きい化合物を捕集できる点で、他の大環状化合物と異なる。したがってククルビット[n]ウリルはアミノ酸、核酸、金属イオン、有機金属イオン、違法薬物等に対して多様な捕集能力を持ち、さらには、捕集様態も捕集する化合物やククルビット[n]ウリルの環構造の大きさによって異なるため、非常に興味深い化合物である。
ククルビット[n]ウリルを用いた応答は主に溶液中での光学的な応答、核磁気共鳴に対する応答、等温滴定カロリメトリーに対する応答等が知られているが、これらの分析ではやはり比較的大きな分析機器が必要であった。今後簡便な分析の為には超分子的相互作用を有する化合物を金属などの無機物に担持させてチップ状にし、持ち歩けるような状態にするのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2007-500763号公報
【文献】特表2007-521487号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chemical-Reviews,2015年,115巻,12320頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、無機物に固定化させてセンサーチップにすることができる超分子的相互作用を有する新規な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ククルビット[n]ウリルに化学修飾を施すことにより新規な化合物であるククルビット[n]ウリル誘導体を合成し、金属上に固定化させることに成功し、本発明に至った。
【0010】
本発明は、以下の構成を有する。
[1] 式(1)で表される化合物:
【化1】
(式中、nは5から20の整数であり、mは1から10の整数である。X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表し、Rは、SH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、Rは有機基を表す。)。
[2] 前記化合物は無機材料と相互作用し、自己組織化単分子膜を形成することができる、[1]に記載の化合物。
[3] 式(2)で表される、[1]に記載の化合物:
【化2】
(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
[4] 式(3)で表される、[1]に記載の化合物:
【化3】
(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
[5] 式(4)で表される、[1]に記載の化合物:
【化4】
(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
[6] 式(5)で表される、[1]に記載の化合物:
【化5】
(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。)。
[7] 式(6)表される、[1]に記載の化合物:
【化6】
(式中、nは独立に5から20の整数であり、mは独立に1から10の整数である。Rは炭素数1~5のアルキル基を表す。)。
[8] 無機物と、
前記無機物に固定化させた[1]に記載の化合物と、
を含む、センサーチップ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規な化合物は、無機物に固定化させることにより、特定の化合物を検出するセンサーチップを得ることができる。また、当該センサーチップは、チップ状であるため、持ち歩くことできるようになることも期待され、簡便な分析を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、SAM処理済電極、未処理電極、及びCB[6]粉末のFT-IR測定の結果である。
図2図2は、SAM処理済電極、及び未処理電極の光電子収量分光法による測定の結果である。
図3図3の(A)は、未処理電極の接触角測定の際の写真であり、図3(B)は、SAM処理済電極の接触角測定の際の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の化合物は、式(1)の構造を有するものである。
【化7】
【0014】
式(1)中、nは5から20の整数であり、mは1から10の整数である。X及びYは独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表し、Rは、SH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基を表し、Rは炭素数1~5のアルキル基を表し、Rは有機基を表す。以下、具体的に説明する。
【0015】
式(1)で表される化合物は、ククルビットウリル構造(環状構造)を含む化合物である。nは、当該化合物を構成するグリコールウリル単位の数を表し、5~20の整数を表す。検査対象物との相互作用の強さや、入手容易性の観点から、nは5~12の整数が好ましく、5~10の整数がさらに好ましい。
【0016】
式(1)中、mはメチレン基単位の数を表し、mが大きければ、メチレンスペーサーの長さが長くなるものであり、1から20の整数を表す。検査対象物との相互作用の強さや、固定化のしやすさ、扱いやすさの観点から、mは2から18の整数が好ましく、3から15がさらに好ましい。なお、メチルスペーサーとは、ククルビットウリル部分(ククルビットウリル構造)と、金属等の無機物とを結ぶ連続したメチレン基のことを言う。
【0017】
式(1)中、X及びYは、独立に酸素、硫黄及びセレンからなる群から選ばれるカルコゲン原子を表す。式(1)中、複数のXが存在するが、すべてのXが同一のカルコゲン原子である必要はなく、互いに異なっていてもよい。なお、合成しやすさの観点から、Xとしては、硫黄原子及び酸素原子が好ましく、酸素原子が最も好ましい。
また、YはXと同一でも異なっていてもよく、好ましいYは、硫黄原子及び酸素原子であり、酸素原子が最も好ましい。
【0018】
Rはメチレンスペーサーの末端官能基である。RはSH、COOH、Si(OR、PO(OH)、SS-Rからなる群から選ばれる置換基であることが好ましい。Rに含まれるS原子、O原子、Si原子又はP原子が、無機物の表面と結合することにより、式(1)の化合物は、同じ配向性を有しながら、無機物の表面に固定化することができる。
【0019】
上記のうち、Si(ORのRは、アルコキシ基のアルキル基部分であり、炭素数1~5であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。
【0020】
また、SS-RのRは、有機基であれば特に限定されるものではない。Rの具体例としては、アルキル、アルケニル、ククルビットウリル構造等を挙げることができる。RがSS-Rの場合は、無機物の表面に固定する場合、SとSが切断され、ククルビットウリル構造を含む化合物の硫黄原子が、無機物の表面に固定する。なお、切断された-S-Rを含む化合物も無機物の表面に固定することもでき、この点から考えると、Rは、ククルビットウリル構造を含むことが好ましい。
【0021】
式(1)の化合物は、好ましくは、以下の式(2)乃至(6)で表される化合物とすることができる。
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
式(2)~(6)において、n及びmは式(1)と同様である。また、式(6)のRは炭素数1~5のアルキル基を表す。各式中に、mやRが複数ある場合は、mやRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(1)の化合物の特徴の一つとして、金属等の無機物と相互作用し、自己組織化単分子膜を形成することができる。ククルビットウリル構造は、ホスト分子として機能することが期待できるため、無機物とメチルスペーサーにより隔てたククルビットウリル部分が新しい機能を発揮できる可能性がある。
【0028】
式(1)の化合物の用途として、無機物の上に式(1)の化合物を固定化させたセンサーチップとして利用することができる。具体的には、式(1)の化合物を用いたセンサーチップは、カルノシン、アンセリン及びバレニン等のイミダゾールジペプチドの検出に利用することができる。
【実施例
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0030】
実施例1
ククルビット[6]ウリル(以下CB[6]と称す。)二量体の合成
(第1工程)ビスイミダゾリニウム塩内包CB[6]-モノヒドロキシ体の合成
【化13】
【0031】
当該合成は、参考文献:Zhao,N.;Lloyd,G.O.;Scherman,O.A.Chem.Commun.2012,48(25),3070-3072.に則り、以下のように合成した。
【0032】
大気下、100mLの二口ナスフラスコに還流冷却器を取り付け、CB[6](0.5g,0.5mmol)、3,3’-(オクタン-1,8-ジイル)ビス(1-エチル-イミダゾリニウム)ブロミド(232mg,0.5mmol)、水(50mL)を入れ、85℃へ昇温し、1時間攪拌した。ある程度溶解したのを確認した後、ここに(NH(114mg,0.5mmoL)を加えた。12時間攪拌した後、室温に戻し、ロータリーエバポレーターにより水を留去した。得られた固体を水を展開溶媒として逆相カラムクロマトグラフィー(樹脂:三菱ケミカル製、CHP 20P)を用いて分離した。10mLずつ分画し、LC/MSにより目的物が存在するフラクションを選択し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去して目的物である白色固体(収量:320mg,収率:43%)を得た。
【0033】
(第2工程)6,6’-ジスルファンジイルビス(ヘキサン-1-オル)の合成
【0034】
【化14】
【0035】
100mLの三口ナスフラスコに還流冷却器と滴下漏斗を取り付け、乾燥エタノール(25mL)、チオ尿素(1.25g,16.5mmol)、6-ブロモヘキサン-1-オル(2.71g,16.5mmol)を加え、70℃に昇温、30時間攪拌した。その後、50℃に降温し、水酸化ナトリウム(6g,150mmol)水溶液(18mL)を滴下し、大気解放して更に1日攪拌した。室温に戻した後、得られた褐色溶液をクロロホルム(45mL)、水(45mL)で分液操作を行い、水層をクロロホルムで抽出した。合わせた有機層を水(45mL)で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて濾過し、濾液の有機溶媒をロータリーエバポレーターで除いて目的物として褐色オイル(収量:1.11g,収率28%)で得た。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.24-1.71 (m, 16H, (CH) 2.68 (t, J = 5.0 Hz, 4H, CH), 3.65 (t, J = 9.3 Hz, 4H, CH).
【0036】
(第3工程)1,2’-ビス(6-ブロモへキシル)ジスルファンの合成
【化15】
【0037】
50mLの三口フラスコに還流冷却器と滴下漏斗を取り付け、四臭化炭素(3.01g,9.08mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)に6,6’-ジスルファンジイルビス(ヘキサン-1-オル)(1.10g,4.13mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)を加えた。10分間攪拌した後、トリフェニルホスフィン(2.81g,10.73mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を滴下して加え、40℃へ昇温した。この際、溶液の色が橙色から暗緑色へ変色するのが確認され、最後に懸濁液となった。2日間攪拌した後、懸濁液をクロロホルム(30mL)と水(30mL)を加えて分液操作を行い、水層をクロロホルム(20mL)で2回抽出して、有機層を水(20mL)で2回洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別した後に、有機溶媒をロータリーエバポレーターにより除去して得られた粗生成物(5.21g)をクロロホルム:ヘキサン=1:4を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。用いたシリカゲルは40gであった。溶媒を除去して目的化合物である淡黄色オイル(収量:862mg,収率:53%)を得た。
= 0.39. H NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.25-1.44 (m, 8H, (CH) 1.69 (quint, J = 8.0 Hz, 4H, CH) 1.88 (quint, J = 5.8 Hz, 4H, CH), 2.69 (t, J = 5.8 Hz, 4H, CH), 3.41 (t, J = 5.8 Hz, 4H, CH).
【0038】
(第4工程)CB[6]二量体の合成
【化16】
【0039】
30mLの二口フラスコに窒素雰囲気下で、第1工程で得られたビスイミダゾリニウム塩内包CB[6]-モノヒドロキシ体(100mg,0.07mmol)を、ジメチルスルホキシド(7mL)に溶解させ、10分間攪拌した後、水素化ナトリウム(5.42mg,0.14mmol,オイル中含量60%)を加え、0℃へ冷却した。15分間攪拌した後、1,2’-ビス(6-ブロモへキシル)ジスルファン(53.11mg,0.14mmol)を加え、室温に戻した。1日攪拌した後、得られた白橙色懸濁液を1日静置すると沈殿が析出してきたのでこれを濾過して白色固体の目的物(収量:39mg,収率:25%)を得た。
【0040】
実施例2
自己組織化単分子膜電極(SAM処理済電極)の作製
ポリエチレンナフタレート基板をマスクで覆って金を100nm蒸着し、適当なサイズに切断、UV-オゾン処理を10分間行った。これを実施例1で合成したCB[6]二量体のメタノール溶液(0.3mM)に終夜浸漬して、自己組織化単分子膜電極(SAM処理済電極)を得た。CB[6]二量体のメタノール溶液で処理していないものを未処理電極とした。
【0041】
[FT-IRの測定]
実施例2で得たSAM処理済電極のFT-IR測定を実施した。なお、未処理電極(金電極)及びCB[6]粉末についても測定した。SAM処理済電極及び未処理電極は、吸光度で評価し、CB[6]粉末は、透過率で評価した。結果を図1に示す。これらの結果から電極上にCB[6]誘導体が固定されていることがわかる。
【0042】
[SAM処理済電極の表面のイオン化ポテンシャルの評価(光電子収量分光法)]
実施例2で得られたSAM処理済電極のイオン化ポテンシャルを光電子収量分光法(PYS:住友重機械工業製)によって測定した。サンプルは以下のように作製した。
(1)UV-O洗浄を10分間施したインジウム-錫酸化物(ITO)基板上に金を100nm蒸着した。
(2)CB[6]誘導体のメタノール溶液(濃度:0.07質量%)に終夜浸漬した。
(3)比較対象として未修飾の金薄膜100nmについても評価した。
結果を図2に表す。イオン化ポテンシャルが異なるため、電極上にCB[6]誘導体が固定されていることが予想される。
【0043】
[接触角測定]
実施例2で得られたSAM処理済電極及び未処理電極の接触角を測定した。SAM処理済電極をメタノールで洗浄し、窒素下で乾燥させた。超純水をSAM処理済電極に滴下し、接触角を4回測定した。未処理電極についても、UV/O処理をした上で、メタノールで洗浄し、窒素下で乾燥させ、超純水を未処理電極に滴下し、接触角を4回測定した。結果は、SAM処理済電極の接触角の平均は、30.1°(最大値と最小値との差は1.6°)であり、未処理電極の接触角は、38.0°(最大値と最小値との差は1.9°)であった。このことから、SAM処理済電極と未処理電極とでは、表面状態が明らかに異なることがわかった。
[産業上利用可能性]
【0044】
本発明の新規な化合物は、無機物に固定化させることにより、特定の化合物を検出するセンサーチップを得ることができることが期待され、産業上利用可能性を有するものである。
図1
図2
図3