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特許7341409食品の力学的特性の評価方法及び食品の食感の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】食品の力学的特性の評価方法及び食品の食感の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/10 20060101AFI20230904BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20230904BHJP
【FI】
G01N33/10
A23L7/10 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019123091
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021007347
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖
(72)【発明者】
【氏名】田中 ゆうこ
(72)【発明者】
【氏名】田中 妙子
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-039430(JP,A)
【文献】特開2014-226099(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115894(WO,A1)
【文献】特開2013-126401(JP,A)
【文献】特開2009-201493(JP,A)
【文献】特開2011-240954(JP,A)
【文献】特開2005-221344(JP,A)
【文献】矢内 和博ほか,冷凍米飯の品質に及ぼす凍結、貯蔵および解凍条件の影響,日本食品科学工学会誌,2001年,第48, 第10号,p.777-786
【文献】岡留博司ほか,単一装置による米飯物性の多面的評価,日本食品科学工学雑誌,1996年,Vol.43, No.9,pp.1004-1011,DOI:10.3136/nskkk.43.1004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の方法1及び/又は方法2を含むの力学的特性の評価方法。
方法1:筒状の形状を有する本体部と前記本体部に被せられる押付蓋部材とを含んで構成される調製器具を用いて複数の米飯粒から米飯塊を成型する工程と、
米飯塊の3次元画像を取得する工程と、
取得された前記3次元画像から、米飯塊の粒子充填構造を計測する工程と、
米飯塊の3次元画像を取得する工程の前に、米飯塊を圧縮して所定の変形を加える工程と、を含み、
所定の変形を加える工程は、互いに対向する一対の板状部材と、前記一対の板状部材の間に配置されたバネ部材とを含んで構成される圧縮用器具を用いて行う米飯塊の充填構造の計測方法。
方法2:一対の測定用の米飯粒を所定の圧縮力で接合する工程と、
接合した前記一対の測定用の米飯粒を引き離すのに要する力を測定する工程と、を含む米飯粒間の付着力の計測方法。
【請求項2】
前記方法1の米飯塊の充填構造が、米飯塊の空間率、前記米飯塊を構成する米飯粒の配位数、及び米飯粒の空間的配置から選ばれる1つ以上の特性である、
請求項1に記載のの力学的特性の評価方法
【請求項3】
以下の方法2を含む米の力学的特性の評価方法。
方法2:一対の測定用の米飯粒を所定の圧縮力で接合する工程と、
接合した前記一対の測定用の米飯粒を引き離すのに要する力を測定する工程と、を含み、
定の圧縮力で接合する工程は、前記一対の測定用の米飯粒のうち、一方の測定用の米飯粒を他方の測定用の米飯粒に向かって移動する工程を含む米飯粒間の付着力の計測方法。
【請求項4】
前記方法2において、一対の測定用の米飯粒を所定の圧縮力で接合する工程の前に、米飯粒を固定する表面を有する一対の固定紙に複数のアンカー用の米飯粒を固定する工程と、
固定された前記複数のアンカー用の米飯粒に前記一対の測定用の米飯粒をそれぞれ固定する工程と、
をさらに含む、
請求項1又は3に記載のの力学的特性の評価方法。
【請求項5】
前記一対の測定用の米飯粒は、前記複数のアンカー用の米飯粒のそれぞれに接触するようにして固定されている、
請求項4に記載のの力学的特性の評価方法。
【請求項6】
前記アンカー用の米飯粒は、4つの米飯粒から構成されている、
請求項4又は5に記載のの力学的特性の評価方法。
【請求項7】
前記固定紙は、表面に凹凸形状を有している、
請求項4から6のいずれか1項に記載のの力学的特性の評価方法。
【請求項8】
さらに、方法3及び/又は方法4を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のの力学的特性の評価方法。
方法3:米飯塊を押圧し、押圧された米飯塊にかかる応力とひずみとを逐次計測し、変曲点応力を求め、米飯塊の硬さとする計測方法。
方法4:米飯塊を剪断し、米飯塊の応力及びひずみ曲線の傾きを、剪断した米飯塊断面の上から3~8mmの水平線上にある米飯粒の個数で除して、米飯塊の付着力の計測方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のの力学的特性の評価方法を用いた食品の食感の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の力学的特性の評価方法及び食品の食感の評価方法に関し、特に飯類の力学的特性の評価方法及び飯類の食感の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の口当たりや歯ごたえ等の食感を定量化して評価する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、ハードネス(硬さ)、スプリンジネス(弾力性)、ブリットルネス(脆さ)、チューイネス(咀嚼性)、スティッキネス(粘り)、クリスプネス(パリパリ感)等の評価指標を用いて食品の食感を評価する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-114218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の食感の評価方法には、特定の評価指標のみによって食感を評価するものがある。しかしながら、このような評価方法によれば、食感を多面的に評価することが困難であるため、食感の詳細を正確に表現しきれない場合があり、食感の客観的な評価方法としては信頼性の観点で改善の余地があった。また、従来の食感の評価方法によれば、特に、粒子充填構造をもつ食品の口当たりや歯ごたえ等の食感を適切かつ簡便に計測できない場合があった。
【0006】
本発明者らは、食感を評価する方法について鋭意研究を重ねた結果、食感と関連性のある食品の力学的特性を評価することによって、食感を、適切、簡便かつ客観的に評価できるとの知見を得た。
【0007】
本発明の目的は、食品の食感を、適切、簡便かつ客観的に評価するための食品の力学的特性を評価する評価方法及び食品の食感の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、下記[1]から[]のの力学的特性の評価方法、及び[]の食品の食感の評価方法を提供する。
[1]
以下の方法1及び/又は方法2を含むの力学的特性の評価方法。
方法1:筒状の形状を有する本体部と前記本体部に被せられる押付蓋部材とを含んで構成される調製器具を用いて複数の米飯粒から米飯塊を成型する工程と、
米飯塊の3次元画像を取得する工程と、
取得された前記3次元画像から、米飯塊の粒子充填構造を計測する工程と、
米飯塊の3次元画像を取得する工程の前に、米飯塊を圧縮して所定の変形を加える工程と、を含み、
所定の変形を加える工程は、互いに対向する一対の板状部材と、前記一対の板状部材の間に配置されたバネ部材とを含んで構成される圧縮用器具を用いて行う米飯塊の充填構造の計測方法。
方法2:一対の測定用の米飯粒を所定の圧縮力で接合する工程と、
接合した前記一対の測定用の米飯粒を引き離すのに要する力を測定する工程と、を含む米飯粒間の付着力の計測方法。
[2]
前記方法1の米飯塊の充填構造が、米飯塊の空間率、前記米飯塊を構成する米飯粒の配位数、及び米飯粒の空間的配置から選ばれる1つ以上の特性である、
前記[1]に記載のの力学的特性の評価方法

以下の方法2を含む米の力学的特性の評価方法。
方法2:一対の測定用の米飯粒を所定の圧縮力で接合する工程と、
接合した前記一対の測定用の米飯粒を引き離すのに要する力を測定する工程と、を含み、
定の圧縮力で接合する工程は、前記一対の測定用の米飯粒のうち、一方の測定用の米飯粒を他方の測定用の米飯粒に向かって移動する工程を含む米飯粒間の付着力の計測方法。

前記方法2において、一対の測定用の米飯粒を所定の圧縮力で接合する工程の前に、米飯粒を固定する表面を有する一対の固定紙に複数のアンカー用の米飯粒を固定する工程と、
固定された前記複数のアンカー用の米飯粒に前記一対の測定用の米飯粒をそれぞれ固定する工程と、
をさらに含む、
前記[1]又は[]に記載のの力学的特性の評価方法。

前記一対の測定用の米飯粒は、前記複数のアンカー用の米飯粒のそれぞれに接触するようにして固定されている、
前記[]に記載のの力学的特性の評価方法。

前記アンカー用の米飯粒は、4つの米飯粒から構成されている、
前記[]又は[]に記載のの力学的特性の評価方法。

前記固定紙は、表面に凹凸形状を有している、
前記[4]から[6]のいずれか1つに記載のの力学的特性の評価方法。

さらに、方法3及び/又は方法4を含む、前記[1]から[]のいずれか1つに記載のの力学的特性の評価方法。
方法3:米飯塊を押圧し、押圧された米飯塊にかかる応力とひずみとを逐次計測し、変曲点応力を求め、米飯塊の硬さとする計測方法。
方法4:米飯塊を剪断し、米飯塊の応力及びひずみ曲線の傾きを、剪断した米飯塊断面の上から3~8mmの水平線上にある米飯粒の個数で除して、米飯塊の付着力の計測方法。

前記[1]から[]のいずれか1つに記載のの力学的特性の評価方法を用いた食品の食感の評価方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、食品の食感を、適切、簡便かつ客観的に評価するための食品の力学的特性及び食品の食感の評価方法を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態で用いられる飯塊成型器具の構成の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態で用いられる飯塊圧縮用器具の構成の一例を示す斜視図である。
図3】飯粒の付着力の計測方法の一例を模式的に説明する図であり、(a)は、計測手段の一例を示す斜視図であり、(b)は、正面図である。
図4】飯塊硬さ計測機器の構成の一例を示する模式図である。
図5】米飯塊にかかる応力及びひずみの計測結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。また、本発明に係る力学的特性の評価の対象となる食品の一例として飯類(米飯)を例に挙げて説明するが、本評価方法が適用される対象物は、固体であるか半固体であるかによらず粒状の集合体であればよく、例えば、複数の粒状の及び/又は粉が集合した塊状の食品であり、例えば、複数の粒状の突起を有する表面を備えた菓子であってもよい。なお、飯類としては、米、麦、キビ亜科穀物等を炊いたものが挙げられ、米飯、麦飯の他、もち米を蒸したおこわ等も挙げられる。さらに、米に他の食品を混ぜて製造された、かて飯、雑穀飯、炊き込みご飯、混ぜご飯等が挙げられる。
【0012】
はじめに、本発明の一実施の形態に係る米飯の力学的特性の評価方法による評価の対象となる試料を作成するのに用いられる器具について説明する。この器具には、塊成型器具1(図1参照)、及び塊圧縮用器具2(図2)が含まれる。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0013】
(塊成型器具1)
図1は、塊成型器具1の構成の一例を示す斜視図である。塊成型器具1は、特定の形状を有する米飯塊等を成型するのに用いられる器具である。ここで、米飯塊とは、一定数以上の米飯の粒(以下、「米飯粒」ともいう。)により形成される所定の形状を有する塊状の集合体をいう。なお、米飯塊は、上面と下面とを有していればよい。また、円柱状であることが、力学的測定を行う上で好ましい。円柱としては、直径3~10cm、高さが2~6cmが好ましく、直径>高さであることが好ましい。塊成型器具1は、調製器具の一例である。
【0014】
図1に示すように、塊成型器具1は、米飯粒を収容する本体部11と、本体部11の上に被せられ、本体部11に収容された米飯粒を押し付ける押付蓋部材10と、を有して構成されている。
【0015】
本体部11は、一定の肉厚tを有する円筒状の形状を有している。換言すれすれば、本体部11の中央部には、この本体部11の中心軸方向において一端から他端にまで貫通する中空部110が形成されている。中空部110は、成型される米飯塊の形状や寸法に応じた形状を有している。好ましくは、中空部110は、円柱状の形状を有する。
【0016】
本体部11は、例えば、アクリル樹脂等の樹脂材で形成される。本体部11の直径と高さは、直径÷高さが1.5以上になることが好ましい。以下の表1に、直径4cm、高さ2cmの円柱状の米飯塊を得る場合の本体部11の寸法の一例をまとめる。なお、本体部11の寸法は、以下の表1に示すものに限定されない。
【表1】
【0017】
押付蓋部材10は、本体部11の中空部110に収容された米飯粒を押し付けて塊状にするための部材である。押付蓋部材10は、米飯と接触する底面が円柱状の形状を有する押付部101と、この押付部101と同軸上に位置する円板状の把持部100とを一体に有している。以下の表2に、押付蓋部材10の寸法の一例をまとめる。なお、押付蓋部材10の寸法は、以下の表2に示すものに限定されない。
【表2】
【0018】
(塊圧縮用器具2)
図2は、塊圧縮用器具2の構成の一例を示す斜視図である。塊圧縮用器具2は、米飯塊の全体に対して一定の圧縮状態を保持するとともに、米飯塊に対して所定の変形を加えるのに用いられる器具である。塊圧縮用器具2は、圧縮用器具の一例である。
【0019】
図2に示すように、塊圧縮用器具2は、一定の間隔を空けて互いに平行に配置された一対(2枚)の板状部材21a,21bと、この一対の板状部材21a,21bの間に配置されたバネ部材22を通したボルト23及びナット24a、24b及びワッシャー25と、を備えて構成されている。
【0020】
一対の板状部材21a,21bはともに、接触する米飯塊の面よりも広ければよい。また、素材は特に限定するものではないが、例えば、アクリル樹脂等の樹脂材で形成される。一対の板状部材21a,21bはそれぞれ、一定の厚み(例えば、(5±0.5)mm)を有している。また、一対の板状部材21a,21bは、例えば、平面視において1辺が(60±0.6)mmの長さを有する正方形状の形状を有している。一対の板状部材21a,21bは、ボルト23が貫通する穴を有しており、米飯塊がボルト23と接触しない位置に穴を有している。好ましくは、押圧された米飯塊がボルト23と接触しないことが好ましく、米板状部材の4隅にあることがさらに好ましい。また、穴の大きさは、ボルト24が摩擦しないことが好ましく、例えば、JIS規格M3ネジであれば、直径4.2mm程度である。
【0021】
ボルト23、ナット24a、24bは、適切な強度を有するものであれば、特に限定するものではなく、板状部材21a,bの大きさに応じて大きさを選択できる。例えば、板状部材21a,21bが、平面視において1辺が(60±0.6)mmの長さを有する正方形であれば、ボルト23、ナット24a、24bは、金属製のJIS規格 M3(ネジピッチ0.5mm)を用い、ボルト23の長さは、首下長さ30mmのものを用いることができる。ワッシャー25は、ボルト23、ナット24a、ナット24bの大きさに応じて、適宜選択できる。なお、ナット24aは、上方板状部材21aの上方(下方板状部材21bと反対の面側)に設置し、板状部材21a、21bの間隔を調整及び/又は固定するのに用いる。ナット24aは、例えば、蝶ナットである。ナット24bは、ボルト23を下方板部材21bに固定するために設置される。
【0022】
バネ部材22は、上方板状部材21aの自重による下方移動を抑制して、互いに対向する一対の板状部材21a,21bの間隔を一定に保持することにより、一対の板状部材21a,21bの間に形成されている押圧空間20に収容された試料に対して一定の圧縮状態を保持する圧力保持手段として機能する。好ましくは、バネ部材22は、板状部材21a,21bの4つの隅部に設けられる。
【0023】
米飯塊の圧縮は、ボルト23及びナット24aをしめることで行うことができる。また、上方板状部材21aの上面に接触して鉛直方向の下向きの方向(図2の矢印方向)に上方板状部材21aを押圧する押圧部(不図示)を用いて行ってもよい。押圧部を用いる場合、上方板状部材21aを押圧することで、米飯塊が所定の変形をするが、押圧後も上方板状部材21aと下方板状部材21bの間隔(押圧空間20)が維持され、米飯塊の変形が維持されるように、押圧後に上方板状部材21aとナット24aが接触するまで、ボルト23及びナット24aをしめることが好ましい。押圧部の形状は特定の形状に制限されるものではないが、上方板状部材21aを面が傾かないように押圧するため、例えば、円板状の形状を有することが好ましい。この時、押圧部を、圧縮・引張型レオメータの感圧部に継ぎ、圧力を測定しながら押圧してもよい。例えば、押圧部として、円板状プランジャー(直径40mm、高さ8mm)等を用いることができる。
【0024】
(食品の力学的特性の評価方法)
次に、本発明の一実施形態に係る食品の力学的特性の評価方法について説明する。この食品の力学的特性の評価方法は、以下の4つの計測方法を含む。
(1)塊の充填構造の計測方法
(2)粒の付着力の計測方法
(3)塊の硬さの計測方法
(4)塊の付着力の計測方法
以下、各計測方法についてそれぞれ詳細を説明する。
【0025】
(1)塊の充填構造の計測方法
本計測方法では、塊の特性として、塊の空間率、塊における1粒の粒に対しての配位数、及び圧密過程での粒の空間的配置から選ばれる特性を計測する。米飯の場合は、米飯塊の空間率、米飯塊における1粒の米飯粒に対しての配位数、及び圧密過程での米飯粒の空間的配置から選ばれる特性を計測する。
【0026】
具体的には、本計測方法では、上述した塊成型器具1(図1参照)を用いて調製した柱状(好ましくは円柱状)の米飯塊を試料にして、米飯塊での米飯粒の3次元充填構造を示す3次元画像をX線CT法で取得する。次に、この3次元画像から米飯塊の空間率、及び米飯塊における1粒の米飯粒に対しての配位数をそれぞれ計測する。
【0027】
米飯塊の空間率は、例えば、卓上型マイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-90CT 株式会社島津製作所製)で測定後、画像解析ソフトウェア(VGStudio MAX2.2 ボリュームグラフィックス社製)で3次元画像を作成し、空間率を算出することができる。なお、空間率は、米飯塊の中心部で測定することが、測定誤差が少なく、好ましい。
【0028】
また、米飯塊における1粒の米飯粒に対しての配位数は、米飯粒の一部に造影剤を塗布して米飯塊を成型し、卓上型マイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-90CT 株式会社島津製作所製)を用いて,円柱状米飯塊の断面画像データを取得し、画像解析ソフトウェア(VGStudio MAX2.2 ボリュームグラフィックス社)を用いて,米飯塊内の造影剤を塗布した米飯粒1粒に対する配位数を計測して求めることができる。
【0029】
圧密過程での米飯粒の空間的配置は、米飯粒の一部に造影剤を塗布して米飯塊を成型し、米飯塊圧縮用器具2を用い、板状部材21a,21bの距離が一定になるように、米飯塊を圧縮し、卓上型マイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-90CT 株式会社島津製作所製)を用いて,円柱状米飯塊の断面画像データを取得し、画像解析ソフトウェア(VGStudio MAX2.2 ボリュームグラフィックス社)を用いて,圧縮率が異なる米飯塊内の造影剤を塗布した米飯粒の動きの変化を図示して求めることができる。また、圧縮した米飯塊内の造影剤を塗布した米飯粒1粒に対する配位数、あるいは、米飯粒の付着面積を画像解析・計測ソフトウェア(Image-Pro Primer Ver.9.0 株式会社日本ローバー)で求めてもよい。板状部材21a,21bの距離が異なる複数の圧縮した米飯塊(例えば、20mm,15mm,10mm,5mm)で比較測定することが好ましい。
【0030】
(2)粒の付着力の計測方法
図3は、飯粒の付着力の計測方法の一例を模式的に説明する図であり、(a)は、計測手段の一例を示す斜視図であり、(b)は、正面図である。ここでは、粒の付着力の計測方法として、1粒間の米飯粒の付着力を計測する方法を説明する。図3各図に示すように、計測手段3は、アンカー用の米飯粒4B,4Cを固定することが可能な表面を有する一対の固定紙31a,31bを含んで構成されている。
【0031】
まず、この一対の固定紙31a,31bの互いに対向する面(すなわち、内側の面)にアンカー用の米飯粒4B,4Cを固定する。アンカー用の米飯粒4B,4Cとしては、それぞれ2行×2列の合計4つの米飯粒を用いてよい。
【0032】
なお、アンカー用の米飯粒4B,4Cの数は、必ずしも4つに限定されるものではない。アンカー用の米飯粒4B,4Cは、付着力の計測の対象となる測定用の米飯粒4Aa,4Abを特定の平面内に固定できればよく、例えば、3粒でよく、5粒以上でもよい。
【0033】
但し、上側のアンカー用の米飯粒4Cが形成する保持面(測定用の米飯粒4Abとの接触点により形成される平面)及び下側のアンカー用の米飯粒4Bが形成する保持面(測定用の米飯粒4Aaとの接触点により形成される平面)とが互いに平行な状態を保持するとともにアンカーの米飯粒の数を最小限にするために、アンカー用の米飯粒4B,4Cはそれぞれ4粒で構成することが好ましい。
【0034】
一対の固定紙31a,31bはそれぞれ、米飯粒を固定することが可能な微小な凹凸形状を有している。一対の固定紙31a,31bには、例えば、キムワイプS-200(登録商標、日本製紙クレシア(株)製)等の紙ワイパーを用いてよい。また、一対の固定紙31a,31bの寸法は、特に限定されないが、それぞれ、例えば、20×20mm平方に切り取ったものを用いてよい。
【0035】
米飯粒を2粒×2列で並べた一対(2つ)アンカー用の米飯粒4B,4Cにそれぞれ付着力測定用の1粒の米飯粒4Aa,4Abを接触させるようにして固定する。具体的には、1粒の米飯粒4Aa,4Abのうち下側の米飯粒4Aaを、下側の4つのアンカー用の米飯粒4Bを跨いでそれぞれの上に接触するようにして固定する。また、1粒の米飯粒4Aa,4Abのうち上側の米飯粒4Abを、上側の4つのアンカー用の米飯粒4Cを跨いでそれぞれの下に接触するようにして固定する。
【0036】
以上を換言すれば、米飯粒の付着力の計測方法では、それぞれに測定用の1つの米飯粒4Ab,4Aaが固定された、4つの粒からなるアンカー用の米飯粒4B,4Cを一対の固定紙31a,31bにそれぞれ固定し、測定用の1つの米飯粒4Ab,4Aaが互いに対向するように一対の固定紙31a,31bを配置する。
【0037】
次に、一対の固定紙31a,31bを互いに近づけて(図3(b)矢印参照)、一対の測定用の米飯粒4Aa,4Ab同士を所定の力で互いに接触させる。具体的には、単軸圧縮・引張型レオメータ(RE2-33005C、(株)山電製)(不図示)に、両面テープ等の粘着剤で上記の米飯粒4Ab,4Cが積層された一方の固定紙31aを貼り付けた円板状プランジャー(不図示)を装着し、試料台(不図示)上の対向する位置に上記の米飯粒4Aa,4Bが積層された他方の固定紙31bを貼り付ける。
【0038】
試料台を所定の圧縮速度で移動させて対向する米飯粒4Aa,4Ab同士を所定の圧縮力で接合させる。なお、試料台を移動させる方法を例に挙げて説明したが、一対の測定用の米飯粒4Aa,4Abのうちの一方を他方に向かって移動できればよく、必ずしも試料台を用いる方法に限定されるものではない。
【0039】
次に、上記の圧縮速度で試料台を反転させて接合した米飯粒4Aa,4Ab同士を引き離すのに要する力を「1粒の米飯粒の付着力」として計測する。なお、円板状プランジャーの寸法に特に制限はないが、米飯粒を均一に押圧するために、例えば、直径(55±5.0)mmを有するものを用いてよい。また、厚さは、(8.0±0.8)mmとしてよい。圧縮速度及び圧縮力の一例を以下の表3にまとめる。
【0040】
【表3】
【0041】
(3)塊の硬さの計測方法
図4は、塊硬さ計測機器の構成の一例を示す模式図である。塊の硬さの計測方法は、上述した塊成型器具1を用いて調製した円柱状の米飯塊40を試料として用いた単軸圧縮破断試験である。塊硬さ硬計測機器5は、荷重センサ及びプランジャー51を備える。プランジャーは、米飯塊の接触面が米飯塊より大きい面を有する板状プランジャーであることが好ましい。板状プランジャーとしては、円板状プランジャーを用いることができる。なお、荷重センサは、試料台50の内部あるいはプランジャー51の根元部等に設けられているが、図4において荷重センサは記載を省略した。
【0042】
まず、上述した単軸圧縮・引張型レオメータ(RE2-33005C、(株)山電製)に荷重センサ及びプランジャー51を装着する。
【0043】
次に、図4に示すように、試料台50に米飯塊40を載置する。次に、プランジャー51を上から下向きに所定の圧縮速度で移動させて、米飯塊40の上面を下向きに押圧する。また、米飯塊40にかかる応力とひずみとを逐次(所定のサンプリング周期)計測する。
【0044】
ここで、荷重センサには、一例として、定格容量200Nのロードセルを用いた。プランジャー51は、米飯塊40の上面と接する面の大きさが米飯塊40の上面の直径(具体的には、39mm程度。表2参照)よりも大きければよく、例えば、直径45mm以上のものを用いてよい。また、高さは、例えば、(8.0±0.8)mmとしてよい。単軸圧縮破断試験で用いた各種の条件の一例を以下の表4にまとめる。
【0045】
【表4】
【0046】
図5は、米飯塊40にかかる応力及びひずみの計測結果を示すグラフである。図5に示すように、米飯塊40の応力及びひずみ曲線の変曲点における応力を変曲点応力とし、変曲点におけるひずみを変曲点ひずみとする。また、この変曲点応力を「米飯塊の硬さ」と定義する。以上のようにして、米飯塊40の米飯粒同士の付着性及び米飯粒の硬さを反映した粒子集合体としての力学的特性を計測する。
【0047】
なお、プランジャー51と米飯塊40の接触面に生じる水平方向の摩擦を防ぐため、測定前にプランジャー51の米飯塊40との接触面に潤滑剤(例えば、食用グリース等)を塗布してもよい。
【0048】
(4)塊の付着力の計測方法
塊の硬さの計測方法は、定格容量20Nのロードセル及びステンレス鋼バネ線(KM41103、径1.0mm)を取り付けた剪断用プランジャー(不図示)を装着した単軸圧縮・引張型レオメータ(RE2-33005C、(株)山電製)を用いて圧縮速度(例えば、1mms-1)、最大ひずみ0.5、サンプリング周波数100Hzの条件で行う単軸圧縮破断試験である。なお、剪断用プランジャーは、特定の太さの鋼線であればよく、米飯塊を押し切っていく際に、飯類粒同士の接合点を引き離すものであることが好ましく、0.6~1.8mmが好ましい。鋼線の太さは、1.0±0.2mmがより好ましい。鋼線の太さが0.6mm以上であれば、米飯粒を切断する可能性は低くなり、1.8mm以下であれば、米飯粒を押しつぶす可能性が低くなる。
【0049】
米飯塊の応力及びひずみ曲線の傾きを、ステンレス鋼バネ線が剪断した米飯塊断面の上から3~8mm、好ましくは4~6mm、より好ましくは5mmの水平線上にある米飯粒の個数で除して付着力を定義する。
【0050】
(食品の食感の評価方法)
前述の食品の力学的特性の評価方法で得られたデータに基づき、食品の食感の評価を行うことができる。用いる食品の力学的特性の評価方法としては、塊の充填構造の計測方法、及び/又は粒の付着力の計測方法を用いることができ、さらに、塊の硬さの計測方法、及び/又は塊の付着力の計測方法も用いることができる。好ましくは、塊の充填構造の計測方法、粒の付着力の計測方法、塊の硬さの計測方法、及び塊の付着力の計測方法で得られたデータを用いて食品の食感の評価を行うことである。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変形、実施が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…米飯塊成型器具、10…押付蓋部材、100…把持部、101…押付部、11…本体部、110…中空部
2…米飯塊圧縮用器具、20…押圧空間、21a,21b…板状部材、22…バネ部材、23…ボルト、24a,24b…ナット、25…ワッシャー
3…計測手段、31a,31b…固定紙
4Aa,4Ab…米飯粒(測定用)、4B,4C…米飯粒(アンカー用)、40…米飯塊
5…塊硬さ計測機器、50…荷重センサ、51…プランジャー
図1
図2
図3
図4
図5