(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ヘリウム循環システム、極低温冷凍方法、および生体磁気計測装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20231016BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F25B9/00 A
A61B5/055 360
(21)【出願番号】P 2020051875
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】風見 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】梅野 高裕
(72)【発明者】
【氏名】高見 承司
(72)【発明者】
【氏名】岩本 建次
(72)【発明者】
【氏名】布袋 裕次郎
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特公昭61-57982(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/042684(WO,A1)
【文献】特開2017-9233(JP,A)
【文献】特表2014-527610(JP,A)
【文献】特許第6602456(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00 - 9/14
A61B 5/05 - 5/055
G01R 33/00 - 33/64
H10N 60/00 - 60/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス冷媒を冷却して液体冷媒にする冷凍機と、
前記液体冷媒を保持するデュワと、
前記デュワにて蒸発した前記ガス冷媒を回収する蒸発ガス回収部と、
前記冷凍機から前記デュワに前記液体冷媒を送る第一経路と、
前記デュワから前記冷凍機を介して前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る第二経路と、
前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に前記ガス冷媒を送る第三経路と、
前記デュワから前記冷凍機を介さず前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る第四経路と、
前記冷凍機の駆動時に、前記第一経路により前記冷凍機から前記デュワに前記液体冷媒を送りつつ、前記第三経路により前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に前記ガス冷媒を送る一方で、前記冷凍機の停止時に、前記第二経路により前記デュワから前記冷凍機を介して前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送りつつ、前記第四経路により前記デュワから前記冷凍機を介さず前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る制御部と、
を備える、ヘリウム循環システム。
【請求項2】
前記第二経路と前記第四経路との前記ガス冷媒の流量を調整する流量調整手段と、
を備える、請求項1に記載のヘリウム循環システム。
【請求項3】
前記冷凍機の温度を計測する温度計を備え、
前記制御部は、前記温度計が計測した温度に応じて前記流量調整手段を制御する、
請求項2に記載のヘリウム循環システム。
【請求項4】
前記第三経路に、前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に送る前記ガス冷媒の流量を制御する流量制御手段を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のヘリウム循環システム。
【請求項5】
ガス冷媒を冷却して液体冷媒にする冷凍機と、
前記液体冷媒を保持するデュワと、
前記デュワにて蒸発した前記ガス冷媒を回収する蒸発ガス回収部と、
前記冷凍機から前記デュワに前記液体冷媒を送る第一経路と、
前記デュワから前記冷凍機を介して前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る第二経路と、
前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に前記ガス冷媒を送る第三経路と、
前記デュワから前記冷凍機を介さず前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る第四経路と、
を備える、ヘリウム循環システムを用い、
前記冷凍機の駆動時に、前記第一経路により前記冷凍機から前記デュワに前記液体冷媒を送りつつ、前記第三経路により前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に前記ガス冷媒を送る一方で、前記冷凍機の停止時に、前記第二経路により前記デュワから前記冷凍機を介して前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送りつつ、前記第四経路により前記デュワから前記冷凍機を介さず前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る、極低温冷凍方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のヘリウム循環システムと、
前記ヘリウム循環システムの前記冷凍機から前記デュワに送られた前記液体冷媒により冷却される測定装置と、
を備える、生体磁気計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウム循環システム、極低温冷凍方法、および生体磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、冷媒配管の位置によって径を規定することで熱侵入を低減する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脳磁計や脊磁計などの生体磁気計測装置では、例えば、超電導量子干渉センサのような高感度磁気センサを用いることがあり、超電導状態を保つために冷媒として液体ヘリウムが使われる。あるいは、極低温での物性測定器においても冷媒として液体ヘリウムが使われる。液体ヘリウムは容易に気化するため、上記のような装置において計測を経済的かつ継続的に使用するには、極低温冷凍機を使ってヘリウム循環することが必要である。
【0004】
ここで、極低温冷凍機では、冷却部(コールドヘッド)および冷却部を収容する保温部(クライオスタット)は磁性を帯びている。また、極低温冷凍機であって、パルス管冷凍機では、動作時は機械的な振動を生じる。そして、磁性を帯びているものが振動すると、振動振幅に比例した磁場変動を周囲空間に生じるため、生体磁気計測装置などにおいて測定ノイズの原因になる。
【0005】
生体磁気計測装置では、このような問題の対策として、計測中は極低温冷凍機を停止させ、その間の冷媒を回収し、計測していないときに極低温冷凍機を駆動させて回収した冷媒を冷却する方法がある。
【0006】
しかし、極低温冷凍機を停止している間は、極低温冷凍機の温度が上昇するため、停止後の起動から再凝縮が始まるまでに時間がかかる。よって、長時間停止させるサイクルを例えば毎日行うような運用は難しい。このため、比較的小型の冷凍機を使ったシステムでは、経済的である反面、排熱能力が低くヘリウム循環サイクルに至るまでに長時間を要する。また、極低温冷凍機の停止時には、冷却部、保温部の温度が上昇するが、大きな温度振幅の繰り返しに晒されてサーマルショックにより破損のおそれがある。サーマルショックの振幅は、装置の信頼性を保つため低く抑制することが望まれている。例えば、線膨張係数は、一般的に液体窒素温度以下などの低温では小さいため冷却部の温度上昇を抑制したい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、冷媒を効率よく冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のヘリウム循環システムは、ガス冷媒を冷却して液体冷媒にする冷凍機と、前記液体冷媒を保持するデュワと、前記デュワにて蒸発した前記ガス冷媒を回収する蒸発ガス回収部と、前記冷凍機から前記デュワに前記液体冷媒を送る第一経路と、前記デュワから前記冷凍機を介して前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る第二経路と、前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に前記ガス冷媒を送る第三経路と、前記デュワから前記冷凍機を介さず前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る第四経路と、前記冷凍機の駆動時に、前記第一経路により前記冷凍機から前記デュワに前記液体冷媒を送りつつ、前記第三経路により前記蒸発ガス回収部から前記冷凍機に前記ガス冷媒を送る一方で、前記冷凍機の停止時に、前記第二経路により前記デュワから前記冷凍機を介して前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送りつつ、前記第四経路により前記デュワから前記冷凍機を介さず前記蒸発ガス回収部に前記ガス冷媒を送る制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷媒を効率よく冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、生体磁気計測装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、ヘリウム循環システムの一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時のフローチャートである。
【
図4】
図4は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時の動作図である。
【
図5】
図5は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時のフローチャートである。
【
図6】
図6は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、ヘリウム循環システム、極低温冷凍方法、および生体磁気計測装置の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、生体磁気計測装置の一例を示す概略構成図である。
【0013】
生体磁気計測装置100は、生体情報計測装置であって、脳機能測定装置(測定装置ともいう)101と、情報処置装置102とを備えている。
【0014】
脳機能測定装置101は、測定対象である被検者110の臓器である脳の脳磁図(MEG:Magneto-encephalography)信号を測定する脳磁計である。脳機能測定装置101は、被検者110の頭部が挿入されるデュワ1を有する。デュワ1は、被検者110の頭部のほぼ全域を取り囲むヘルメット型のセンサ収納型デュワである。デュワ1は、液体ヘリウムを用いた極低温環境の真空断熱装置である。デュワ1は、その内部に脳磁測定用の多数の磁気センサ2が配置されている。磁気センサ2は、超電導量子干渉素子(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)が用いられる。脳機能測定装置101は、磁気センサ2からの脳磁信号を収集する。脳機能測定装置101は、収集された生体信号を情報処置装置102に出力する。
【0015】
情報処置装置102は、複数の磁気センサ2からの脳磁信号の波形を、時間軸上に表示する。脳磁信号は、神経細胞の電気的な活動(シナプス伝達の際にニューロンの樹状突起で起きるイオン電荷の流れ)により生じた微小な磁場変動を表わす。
【0016】
図2は、ヘリウム循環システムの一例を示す概略構成図である。
【0017】
上述した脳機能測定装置101は、真空断熱装置であるデュワ1を極低温環境とするためのヘリウム循環システム10を含む。ヘリウム循環システム10は、極低温冷凍機(冷凍機)11と、デュワ1、蒸発ガス回収部(バッファタンク)13と、蒸発ガス回収管14と、保管ガス供給管15と、循環用配管16と、制御部19と、を備える。
【0018】
極低温冷凍機11は、パルス管冷凍機を構成するもので、冷却部21と、受部22と、保温部23と、移送管24と、駆動系循環部25と、温度計26と、を有する。
【0019】
冷却部21は、本体部21Aと、円筒状の第一シリンダ部21Bと、円筒状の第二シリンダ部21Cと、円板状の第一コールドステージ21Dと、円板状の第二コールドステージ21Eと、を備える。本体部21Aは、冷却部21の基部であり、最上部に配置される。第一シリンダ部21Bは、本体部21Aから下方に延びて設けられている。第二シリンダ部21Cは、第一シリンダ部21Bよりも下方に延びて設けられている。第一コールドステージ21Dは、第一シリンダ部21Bと第二シリンダ部21Cとの間に設けられている。第二コールドステージ21Eは、第二シリンダ部21Cの延びた下端に設けられている。
【0020】
受部22は、上端が開放し、下端に底22Aを有する皿状に形成されている。受部22は、冷却部21の直下に配置される。
【0021】
保温部23は、真空断熱をしたクライオスタットであり、例えば、ステンレスまたはガラス繊維強化樹脂により筒状に形成され、上端が開放し、下端に底23Aを有する。保温部23は、内部に冷却部21が収容され冷却部21の外周を間隔を空けて囲むように設けられる。保温部23は、上端が冷却部21の本体部21Aにより密閉される。また、受部22は、保温部23の内部に配置される。保温部23は、内部の温度を保つように機能する。
【0022】
移送管24は、上端24aが受部22の底22Aに接続され、受部22に連通して設けられている。移送管24は、受部22の底22Aから下方に延び、保温部23の内部を通って下端24bが下方に向けて設けられている。保温部23は、底23Aが移送管24の外周を間隔を空けて囲むように移送管24と共に下方に延びて形成されている。移送管24は、その下端24bが脳機能測定装置101のデュワ1に接続されている。移送管24は、冷却部21からデュワ1に液体冷媒を送る第一経路ともいう。
【0023】
駆動系循環部25は、コンプレッサである圧縮機25Aと、動作部であるバルブモータ25Bと、を有する。圧縮機25Aは、圧縮ガスを圧縮する。圧縮ガスは、例えばヘリウムガスである。圧縮機25Aで圧縮された圧縮ガスは、バルブモータ25Bに供給される。バルブモータ25Bは、冷却部21の本体部21Aに対し、圧縮ガスを間欠供給するように開閉を切り替える。駆動系循環部25は、バルブモータ25Bの切り替えにより圧縮機25Aと冷却部21との間で圧縮ガスが循環される。冷却部21は、この圧縮ガスの間欠供給により、起動し、第一コールドステージ21Dおよび第二コールドステージ21Eで冷熱を発生する。なお、圧縮機25Aは、水冷または空冷により排熱する。
【0024】
温度計26は、保温部27の内部であって冷却部21の温度を計測する。
【0025】
この極低温冷凍機11は、その駆動時に、保温部23の内部であって冷却部21にガス冷媒が供給される。ガス冷媒は、例えばヘリウムガスであり、第一コールドステージ21Dおよび第二コールドステージ21Eで発生する冷熱により冷却されることで液化されて液体冷媒である液体ヘリウムとなり、受部22の底22Aに至り滴下して纏められる。受部22の底22Aに纏められた液体ヘリウムは、移送管24を経て極低温冷凍機11の外部に送られ、脳機能測定装置101のデュワ1の内部のヘリウム槽に供給される。これにより、脳機能測定装置101のデュワ1の液体ヘリウムが保持される。デュワ1の内部の液体ヘリウムは外部からの熱侵入によって徐々に蒸発してヘリウムガス(蒸発ガスともいう)となる。
【0026】
蒸発ガス回収部13は、デュワ1で蒸発した蒸発ガスを回収し貯えて保管するための圧力容器である。
【0027】
蒸発ガス回収管14は、デュワ1と蒸発ガス回収部13との間を接続する配管である。蒸発ガス回収管14は、第一蒸発ガス回収管14Aと、第二蒸発ガス回収管14Bと、を有する。
【0028】
第一蒸発ガス回収管14Aは、一端14Aaがデュワ1に接続され、他端14Abが蒸発ガス回収部13に接続されている。第一蒸発ガス回収管14は、デュワ1から蒸発ガス回収部13に蒸発ガスを送るため、途中にコンプレッサであるポンプ14Acが設けられている。また、第一蒸発ガス回収管14Aは、蒸発ガスの送りを開閉するため、ポンプ14Acよりも一端14Aa側に第一開閉弁14Adが設けられている。第一開閉弁14Adは、制御部19により制御される。第一開閉弁14Adは、流量調整弁として構成されている。第一蒸発ガス回収管14Aは、デュワ1から蒸発ガス回収部13に直接蒸発ガスを送る第四経路ともいう。
【0029】
第二蒸発ガス回収管14Bは、第一蒸発ガス回収管14Aの途中と、冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。第二蒸発ガス回収管14Bは、一端14Baが第一蒸発ガス回収管14Aの一端14Aaと開閉弁14Adとの間に接続され、他端14Bbが保温部23に接続されている。本実施形態では、第二蒸発ガス回収管14Bは、他端14Bbが保管ガス供給管15の一部を介して保温部23に接続されている。第二蒸発ガス回収管14Bは、蒸発ガスの送りを開閉するため、途中に第二開閉弁14Bcが設けられている。第二開閉弁14Bcは、制御部19により制御される。第二開閉弁14Bcは、流量調整弁として構成されている。また、第二蒸発ガス回収管14Bは、第二開閉弁14Bcよりも他端14Bb側に排気弁(排気部)14Bdが設けられている。排気弁14Bdは、制御部19により制御される。排気弁14Bdは、第二蒸発ガス回収管14Bおよび保管ガス供給管15の一部を介して保温部23に接続されている。第二蒸発ガス回収管14Bは、デュワ1から冷却部21の移送管24および保温部23の内部および第一蒸発ガス回収管14Aの一部を介して蒸発ガス回収部13に蒸発ガスを送るための第二経路ともいう。
【0030】
保管ガス供給管15は、蒸発ガス回収部13と冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。保管ガス供給管15は、一端15aが蒸発ガス回収部13に接続され、他端15bが極低温冷凍機11の保温部23に接続されている。保管ガス供給管15は、蒸発ガス回収部13から冷却部21に蒸発ガス回収部13で保管された蒸発ガス(保管ガス)を送るため、途中にポンプ15cが設けられている。また、保管ガス供給管15は、ガス冷媒の送りを開閉するため、ポンプ15cよりも他端15b側に開閉弁15dが設けられている。開閉弁15dは、制御部19により制御される。また、保管ガス供給管15は、蒸発ガスの送りを開閉するため、ポンプ15cよりも一端15a側に開閉弁15eが設けられている。開閉弁15eは、制御部19により制御される。保管ガス供給管15は、蒸発ガス回収部13から冷却部21に蒸発ガスを送る第三経路ともいう。
【0031】
循環用配管16は、蒸発ガス回収管14の途中と保管ガス供給管15の途中とを接続する配管である。循環用配管16は、一端16aが蒸発ガス回収管14の開閉弁14Adと開閉弁14Bcとの間に接続され、他端16bが保管ガス供給管15の開閉弁15eとポンプ15cとの間に接続されている。循環用配管16は、デュワ1から冷却部21に直接蒸発ガスを送るバイパス経路ともいう。
【0032】
制御部19は、ヘリウム循環システム10を制御するもので、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置などを備えた演算装置である。制御部19は、極低温冷凍機11の圧縮機25Aと、蒸発ガス回収管14のポンプ14Acおよび各開閉弁14Ad,14Bcおよび排気弁14Bdと、保管ガス供給管15のポンプ15c、開閉弁15dおよび開閉弁15eと、の動作を制御する。また、制御部19は、極低温冷凍機11の温度計26により計測された温度を取得する。なお、蒸発ガス回収管14の流量調整弁としての各開閉弁14Ad,14Bcは、制御部19により制御されて開度を調整されることにより、蒸発ガス回収管14における蒸発ガスの流量を調整する流量調整手段を構成する。流量調整手段としては、マスフローコントローラであってもよい。また、保管ガス供給管15のポンプ15cは、制御部19により出力を制御されて冷媒の流量を制御する流量制御手段を構成する。
【0033】
ここで、ヘリウム循環システム10の動作を説明する。
図3は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時のフローチャートである。
図4は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時の動作図である。
図5は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時のフローチャートである。
図6は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時の動作図である。
【0034】
図3に示すように、極低温冷凍機11の駆動時において、制御部19は、蒸発ガス回収管14のポンプ14cを停止すると共に第一開閉弁14Adおよび第二開閉弁14Bcおよび排気弁14Bdを閉鎖する(ステップS1)。また、制御部19は、保管ガス供給管15のポンプ15cを駆動すると共に開閉弁15dおよび開閉弁15eを開放する(ステップS2)。そして、制御部19は、極低温冷凍機11の冷却部21を駆動する(ステップS3)。これにより、
図4に示すように、ヘリウム循環システム10は、保管ガス供給管15を介して蒸発ガス回収部13から冷却部21にガス冷媒を送ると共に、蒸発ガス回収管14の第一蒸発ガス回収管14Aの一部および循環用配管16を介してデュワ1から冷却部21に蒸発ガスを送り、冷却部21にて蒸発ガスを冷却して液体冷媒とし、デュワ1に送る。なお、ステップS1からS3の動作は同時に行ってもよい。
【0035】
また、極低温冷凍機11の駆動時において、制御部19は、保管ガス供給管15のポンプ15cの出力を制御することで、保管ガス供給管15を介して蒸発ガス回収部13から冷却部21に送る蒸発ガスの流量を制御する(ステップS4)。
【0036】
また、
図5に示すように、極低温冷凍機11の停止時において、制御部19は、極低温冷凍機11の冷却部21を停止する(ステップS11)。また、制御部19は、保管ガス供給管15のポンプ15cを停止すると共に開閉弁15dおよび開閉弁15eを閉鎖する(ステップS12)。また、制御部19は、蒸発ガス回収管14の第一開閉弁14Adおよび第二開閉弁14Bcを開放し排気弁14Bdを閉鎖してポンプ14cを駆動する(ステップS13)。これにより、
図6に示すように、ヘリウム循環システム10は、蒸発ガス回収管14の第一蒸発ガス回収管14Aおよび第二蒸発ガス回収管14Bによりデュワ1から極低温冷凍機11の移送管24および保温部23を介して蒸発ガス回収部13に蒸発ガスを送り、蒸発ガス回収部13で回収する。さらに、ヘリウム循環システム10は、蒸発ガス回収管14の第一蒸発ガス回収管14Aによりデュワ1から極低温冷凍機11を介さず蒸発ガス回収部13に直接蒸発ガスを送り、蒸発ガス回収部13で回収する。なお、ステップS11からS13の動作は同時に行ってもよい。
【0037】
また、極低温冷凍機11の停止時において、制御部19は、各開閉弁14Ad,14Bcの開度を調整することで、蒸発ガス回収管14によってデュワ1から極低温冷凍機11の移送管24および保温部23を介して蒸発ガス回収部13に送る蒸発ガスの流量と、デュワ1から極低温冷凍機11を介さず蒸発ガス回収部13に直接送る蒸発ガスの流量とを調整する(ステップS14)。また、ステップS14において、制御部19は、温度計26により計測された温度を取得し、この温度に応じて蒸発ガス回収部13に送る各蒸発ガスの流量を調整する。例えば、制御部19は、温度計26により計測された温度が所定温度以上の場合、極低温冷凍機11の移送管24および保温部23を介する蒸発ガスの流量が多くなるように調整して保温部23の内部の冷却部21の温度上昇を抑える。一方、制御部19は、温度計26により計測された温度が所定温度未満の場合、極低温冷凍機11を介するガス冷媒の流量が少なくなるように調整してデュワ1から第一蒸発ガス回収管14A側の温度上昇を抑える。
【0038】
本実施形態のヘリウム循環システム10では、例えば、午後5時から翌日午前9時までの脳機能測定装置101を使用しない時、
図3および
図4に示す動作を行って、冷却部21にてガス冷媒を冷却して液体冷媒とし、デュワ1に送る。また、本実施形態のヘリウム循環システム10では、例えば、午前9時から午後5時までの脳機能測定装置101を使用する時、
図5および
図6に示す動作を行って、デュワ1から蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送り、蒸発ガス回収部13で回収する。従って、本実施形態のヘリウム循環システム10は、脳機能測定装置101を使用する計測時に、極低温冷凍機11を停止させ、脳機能測定装置101への極低温冷凍機11の振動による影響を防ぎ、脳機能測定装置101を使用せず計測しない時に、極低温冷凍機11を駆動させ、デュワ1を極低温環境にできる。
【0039】
なお、本実施形態のヘリウム循環システム10では、制御部19において、温度計26で計測された冷却部21の温度を取得している。制御部19は、取得した温度が所定温度以上となった場合、排気部の排気弁14Bdを開放する。具体的に、極低温冷凍機11において、制御部19は、本制御以外において排気弁14Bdを閉鎖している(
図4および
図6参照)。そして、制御部19は、
図6に示すように冷却部21を停止しているとき、温度計26で計測された温度が所定温度以上である場合、排気弁14Bd開放する。所定温度とは、不純物(蒸発ガス中に含まれる微量の窒素、酸素、水など)の成分が気化し得る温度である。なお、冷却部21の停止とは圧縮された圧縮ガスが供給されていないことを意味し、冷却部21の駆動とは圧縮された圧縮ガスが供給されていることを意味する。また、制御部19は、温度計26で計測された温度が所定温度以上でない場合は、温度計26で計測された温度を継続して取得する。このヘリウム循環システム10によれば、不純物の成分が気化した場合、この不純物の成分を保温部23の外部に排出できる。この結果、ヘリウム循環システム10は、不純物が移送管24の中で再冷却により固化し、移送管24が閉塞することを防止できる。
【0040】
このように、本実施形態のヘリウム循環システム10は、ガス冷媒を冷却する極低温冷凍機11と、冷却された液体冷媒を保持するデュワ1と、デュワ1にて蒸発したガス冷媒を回収する蒸発ガス回収部13と、極低温冷凍機11からデュワ1に液体冷媒を送る移送管(第一経路)24と、デュワ1から極低温冷凍機11を介して蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送るための移送管24および保温部23および蒸発ガス回収管14(第二経路)と、蒸発ガス回収部13から極低温冷凍機11にガス冷媒を送る保管ガス供給管(第三経路)15と、デュワ1から極低温冷凍機11を介さず蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送る第二蒸発ガス回収管14A(第四経路)と、極低温冷凍機11の駆動時に、移送管24により極低温冷凍機11からデュワ1に液体冷媒を送りつつ、保管ガス供給管15により蒸発ガス回収部13から極低温冷凍機11にガス冷媒を送る一方で、極低温冷凍機11の停止時に、移送管24および保温部23および蒸発ガス回収管14によりデュワ1から極低温冷凍機11を介して蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送りつつ、第二蒸発ガス回収管14Aによりデュワ1から極低温冷凍機11を介さず蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送る制御部19と、を備える。
【0041】
また、本実施形態の極低温冷凍方法は、極低温冷凍機11の駆動時に、移送管24により極低温冷凍機11からデュワ1に液体冷媒を送りつつ、保管ガス供給管15により蒸発ガス回収部13から極低温冷凍機11にガス冷媒を送る一方で、極低温冷凍機11の停止時に、移送管24および保温部23および蒸発ガス回収管14によりデュワ1から極低温冷凍機11を介して蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送りつつ、第二蒸発ガス回収管14Aによりデュワ1から極低温冷凍機11を介さず蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送る。
【0042】
このヘリウム循環システム10および極低温冷凍方法によれば、極低温冷凍機11の停止時に、移送管24および保温部23および蒸発ガス回収管14によりデュワ1から極低温冷凍機11を介して蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送るため、デュワ1のガス冷媒は、極低温冷凍機11の冷却部21を冷却しつつ蒸発ガス回収部13に回収される。このように、停止している極低温冷凍機11は、ガス冷媒により冷却され温度上昇が抑制される。この結果、本実施形態のヘリウム循環システム10および極低温冷凍方法は、停止後に極低温冷凍機11の駆動からガス冷媒が再凝縮開始までの時間を短縮でき、ガス冷媒を効率よく冷却できる。また、停止時の温度上昇を抑制できることにより、サーマルショックを抑え、起動停止繰り返しの信頼性が向上する。
【0043】
また、本実施形態のヘリウム循環システム10は、極冷温冷凍機11の停止時に、極冷温冷凍機11を介さずデュワ1と蒸発ガス回収部13との間を接続する第一蒸発ガス回収管14A(第四経路)と、この第一蒸発ガス回収管14Aと移送管24および保温部23および蒸発ガス回収管14(第二経路)とのガス冷媒の流量を調整する流量調整手段である各開閉弁14Ad,14Bcと、を備える。
【0044】
このヘリウム循環システム10によれば、デュワ1から第一蒸発ガス回収管14A側と、極冷温冷凍機11との両方の温度上昇を調整できる。
【0045】
また、本実施形態のヘリウム循環システム10は、極冷温冷凍機11の冷却部21の温度を計測する温度計26を備え、制御部19は、温度計26が計測した温度に応じて流量調整手段である各開閉弁14Ad,14Bcを制御する。
【0046】
このヘリウム循環システム10によれば、温度計26が計測した温度に応じて、各開閉弁14Ad,14Bcを制御することで、温度に応じたガス冷媒の流量調整により、デュワ1と、極冷温冷凍機11との両方の温度上昇を調整できる。
【0047】
また、本実施形態のヘリウム循環システム10は、保管ガス供給管(第三経路)15に、蒸発ガス回収部13から極低温冷凍機11に送るガス冷媒の流量を制御する流量制御手段であるポンプ15cを備える。
【0048】
このヘリウム循環システム10によれば、蒸発ガス回収部13から極低温冷凍機11に送るガス冷媒の流量を制御することで、極低温冷凍機11でのガス冷媒の再凝縮量を制御できる。
【0049】
また、本実施形態の生体磁気計測装置100は、上述したヘリウム循環システム10を備えることで、停止時の極低温冷凍機11の冷却部21が、蒸発ガス回収部13に回収されるガス冷媒により冷却される。この結果、本実施形態の生体磁気計測装置100は、脳機能測定装置101のデュワ1に供給するガス冷媒が再凝縮するまでの股間を短縮でき、可動効率を向上できる。
【符号の説明】
【0050】
1 デュワ(第二経路)
10 ヘリウム循環システム
11 極低温冷凍機(冷凍機)
13 蒸発ガス回収部
14 蒸発ガス回収管(第二経路,第四経路)
14Ad,14Bc 開閉弁(流量調整手段)
15 保管ガス供給管(第三経路)
15c ポンプ(流量制御手段)
19 制御部
24 移送管(第一経路(第二経路))
26 温度計
100 生体磁気計測装置
101 脳機能測定装置(測定装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】