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特許7376046層状化合物の剥離層分散液及びそれを用いた透明基板
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  • 特許-層状化合物の剥離層分散液及びそれを用いた透明基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-30
(45)【発行日】2023-11-08
(54)【発明の名称】層状化合物の剥離層分散液及びそれを用いた透明基板
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20231031BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20231031BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20231031BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231031BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231031BHJP
【FI】
C01B33/141
C01B33/32
C09D17/00
C09D7/61
C09D201/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020568155
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001939
(87)【国際公開番号】W WO2020153352
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019008012
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 智宏
(72)【発明者】
【氏名】北川 裕丈
(72)【発明者】
【氏名】関口 和敏
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105684(JP,A)
【文献】特開2006-083025(JP,A)
【文献】特表2014-529319(JP,A)
【文献】特開2000-319013(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022431(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/006716(WO,A1)
【文献】MARINKOVIC, Bojan A. et al.,Lepidocrocite-like ferrititanate nanosheets and their full exfoliation with quaternary ammonium comp,Materials & Design,2015年,Vol.85,pp.197-204
【文献】KOOLI, Fethi,Exfoliation Properties of Acid-Activated Montmorillonites and Their Resulting Organoclays,Langmuir,2009年,Vol.25, No.2,pp.724-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/141
C01B 33/44
C09C 1/28
C09C 3/04
C09D 7/61
C09D 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)と、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)とを含み、平均厚さ0.7~40nm、平均長径100~600nm、平均短径50~300nm、及び平均短径と平均長径の比が1.0~10.0である板状粒子(C)が液状媒体に分散した分散液であって、該分散液中の該板状粒子(C)の動的光散乱法による平均粒子径が10~600nmである分散液。
【請求項2】
板状粒子(C)が、層状化合物(D)の層間剥離による剥離層物質である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
層状化合物(D)が、アイラアイトである、請求項2に記載の分散液。
【請求項4】
板状粒子(C)が、0.2質量%以下のNaイオン濃度を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項5】
分散液中のNaイオン濃度が100ppm以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項6】
分散液中の第4級アンモニウムイオン(A)の濃度が、10質量%以下である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項7】
分散液中のアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)の濃度が0.01~1質量%である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項8】
アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)が、ドデシル硫酸アンモニウムである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項9】
分散液中の板状粒子(C)の濃度が30質量%以下である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項10】
分散液が、板状粒子(C)の濃度が0.1質量%、光路長1cm、波長620nmにおいて、0.015以下の吸光度を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の分散液を含む塗布用組成物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の分散液中の板状粒子(C)を含む塗布膜。
【請求項13】
基板上に請求項12に記載の塗布膜を有し、該塗布膜の膜厚が500nmである時の全光線透過率が80%以上である、透明基板。
【請求項14】
下記(a)工程乃至(e)工程:
(a)工程:層状化合物(D)の水性分散液を製造する工程、
(b)工程:(a)工程で得られた水性分散液に、層状化合物(D)のイオン交換容量の等倍~三倍量となる、総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)を添加し、40~90℃で、12~48時間の加熱をする工程、
(c)工程:(b)工程で得られた液に純水を加え、液中のナトリウムイオン濃度が100ppm以下になるように、ナトリウムイオン含有液を系外に取り除く工程、
(d)工程:(c)工程で得られた液を乾燥させた乾燥粉を、濃度が0.01~1質量%のアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)水溶液中に分散させた後、さらに、アンモニアを添加して液中のpHを9.0~12.0に調整する工程、
(e)工程:(d)工程で得られた液を、40~90℃で、12~48時間の加熱を行い、分散液を得る工程、を含む
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の分散液の製造方法。
【請求項15】
(a)工程が、層状化合物(D)の粉砕によって粉砕された層状化合物(D1)を種粒子として珪酸塩水溶液に添加し、90~130℃で、6~72時間の水熱処理を行い、微細な層状化合物(D2)の濃度30質量%以下の水性分散液を製造する(a1)工程である、請求項14に記載の層状化合物(D)の分散液の製造方法。
【請求項16】
粉砕された層状化合物(D1)が、30~60nmの動的光散乱法による粒子径を有し、〔(2θ=6.9~8.4°までの回折ピークの積分強度の総和)/(2θ=5~40°までの回折ピークの積分強度の総和)〕×100で示される粉末X線回折による結晶化度が5~15%である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
微細な層状化合物(D2)が、平均長径250~750nm、平均短径200~550nm、平均短径と平均長径の比が1.0~2.0である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
(a1)工程の層状化合物(D)の粉砕が遊星ボールミルを用い、乾式で行われる、請求項15に記載の分散液の製造方法。
【請求項19】
(f)工程:(e)工程の後に、得られた分散液を有機溶媒で溶媒置換する工程をさらに含む、請求項14乃至請求項18のうちいずれか1項に記載の分散液の製造方法。
【請求項20】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の分散液を、基板に塗布し、40~300℃で加熱する、請求項13に記載の透明基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状化合物の層間剥離による剥離層物質から形成された板状粒子の分散液と、その分散液を用いた塗布膜及び透明基板に関する。
【背景技術】
【0002】
層状化合物は、構成する原子が横方向に連鎖して板状の分子(層)を形成し、これが残り一方向に積み重なった結晶構造を有している。そしてその層と層の間に、層同士を結びつける役割を果たす金属イオンが存在することで、層と金属イオンと層の間で強固な結合が形成され、それにより層と層間を持つ層状化合物が形成される。こうした層状化合物としては、粘土鉱物、マンガン酸塩、チタン酸塩、ニオブ酸塩等が挙げられる。また層状化合物は層間に様々なイオンや分子を可逆的に取り込むインターカレーションという性質を持っている。
【0003】
層状化合物は、その層間に取り込まれたイオンや分子の大きさに応じて層間が拡大し、また水等の液状媒体が介在することで層間が膨潤し、層間隔が数倍にも拡大する。層間が無限に膨潤してゆくと、層と金属イオンなどのゲスト物質と層の間で形成されていた結合が切断され、層を形成する板状物質(板状粒子)が剥離して液状媒体に分散した分散系が形成される。この板状物質(板状粒子)はナノシートと呼ばれ、これまでにナノシートの分散液(ゾル)を作成する方法が報告されている。
例えば、層間に第4級アンモニウム化合物をインターカレーションした層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体とシリコーンオイルとの混合物に、機械的せん断力及び/又は衝撃力を加えて、前記有機変性粘土鉱物の凝集体を剥離処理し、層状物質(板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物)がシリコーンオイルに分散させた油性ゾルが開示されている(特許文献1参照)。
またシリカ系多孔質膜と、シリカ系多孔質膜の表面を被覆する防汚層とを備え、防汚層が無機層状化合物に由来する複数のナノシートを有する防汚性反射防止膜が開示されている(特許文献2参照)。
さらに、ビニルアルコール系重合体と、層間に第4級アンモニウムイオンが導入された膨潤性層状珪酸塩からなる樹脂組成物、及びそれらを用いたガスバリア性フィルムが開示されている(特許文献3参照)。
また、層間に、第4級アンモニウムイオンとしてジデシルジメチルアンモニウムイオンや、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオンでインターカレーションを行って作成した層状化合物を、ペンタン溶剤中で超音波照射下に層間剥離を行う、剥離層分散液の作成が開示されている(非特許文献1参照)。
また、層間を、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオンでインターカレーションを行って、その後に層間を(1-ブチル-3-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4、5-ジヒドロイミダゾリウムクロライドでシラン処理を行い、層間剥離した剥離層分散液の作成が開示されている(非特許文献2参照)。
また、層状化合物の一種であるアイアライトの合成と、合成されたアイアライトのX線回折パターンについて開示されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-063330号公報
【文献】国際公開第2014/061606号
【文献】特開2001-316551号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】ケミストリー レターズ 2013年、42巻、第80~82頁
【文献】ケミストリー オブ マテリアルズ 2011年、23巻、第266~273頁
【文献】クレイズ アンド クレイ ミネラルズ 1991年、39巻(5)、第490~497頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は剥離剤を含有する層状化合物の水性媒体を加熱処理して得られた剥離層物質を、特定の陰イオン界面活性剤で被覆することにより、剥離層物質の安定な分散液を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は第1観点として、総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)と、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)とを含み、平均厚さ0.7~40nm、平均長径100~600nm、平均短径50~300nm、及び平均短径と平均長径の比が1.0~10.0である板状粒子(C)が液状媒体に分散した分散液であって、該分散液中の該板状粒子(C)の動的光散乱法による平均粒子径が10~600nmである分散液、
第2観点として、板状粒子(C)が、層状化合物(D)の層間剥離による剥離層物質である、第1観点に記載の分散液、
第3観点として、層状化合物(D)が、アイラアイトである第2観点に記載の分散液、
第4観点として、板状粒子(C)が、0.2質量%以下のNaイオン濃度を有する、第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載の分散液、
第5観点として、分散液中のNaイオン濃度が100ppm以下である、第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載の分散液、
第6観点として、分散液中の第4級アンモニウムイオン(A)の濃度が、10質量%以下である、第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の分散液、
第7観点として、分散液中のアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)の濃度が0.01~1質量%である、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載の分散液、
第8観点として、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)が、ドデシル硫酸アンモニウムである、第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の分散液、
第9観点として、分散液中の板状粒子(C)の濃度が30質量%以下である、第1観点乃至第8観点のいずれか一つに記載の分散液、
第10観点として、分散液が、板状粒子(C)の濃度が0.1質量%、光路長1cm、波長620nmにおいて、0.015以下の吸光度を有する、第1観点乃至第9観点のいずれか一つに記載の分散液、
第11観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の分散液を含む塗布用組成物、
第12観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の分散液中の板状粒子(C)を含む塗布膜、
第13観点として、基板上に第12観点に記載の塗布膜を有し、該塗布膜の膜厚が500nmである時の全光線透過率が80%以上である、透明基板、
第14観点として、下記(a)工程乃至(e)工程:
(a)工程:層状化合物(D)の水性分散液を製造する工程、
(b)工程:(a)工程で得られた水性分散液に、層状化合物(D)のイオン交換容量の等倍~三倍量となる、総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)を添加し、40~90℃で、12~48時間の加熱をする工程、
(c)工程:(b)工程で得られた液に純水を加え、液中のナトリウムイオン濃度が100ppm以下になるように、ナトリウムイオン含有液を系外に取り除く工程、
(d)工程:(c)工程で得られた液を乾燥させた乾燥粉を、濃度が0.01~1質量%のアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)水溶液中に分散させた後、さらに、アンモニアを添加して液中のpHを9.0~12.0に調整する工程、
(e)工程:(d)工程で得られた液を、40~90℃で、12~48時間の加熱を行い、分散液を得る工程、を含む第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の分散液の製造方法、
第15観点として、(a)工程が、層状化合物(D)の粉砕によって粉砕された層状化合物(D1)を種粒子として珪酸塩水溶液に添加し、90~130℃で、6~72時間の水熱処理を行い、微細な層状化合物(D2)の濃度30質量%以下の水性分散液を製造する(a1)工程である、第14観点に記載の層状化合物(D)の分散液の製造方法、
第16観点として、粉砕された層状化合物(D1)が、30~60nmの動的光散乱法による粒子径を有し、〔(2θ=6.9~8.4°までの回折ピークの積分強度の総和)/(2θ=5~40°までの回折ピークの積分強度の総和)〕×100で示される粉末X線回折による結晶化度が5~15%である、第15観点に記載の製造方法、
第17観点として、微細な層状化合物(D2)が、平均長径250~750nm、平均短径200~550nm、平均短径と平均長径の比が1.0~2.0である、第15観点に記載の製造方法、
第18観点として、(a1)工程の層状化合物(D)の粉砕が遊星ボールミルを用い、乾式で行われる、第15観点に記載の分散液の製造方法、
第19観点として、(f)工程:(e)工程の後に得られた分散液を有機溶媒で溶媒置換する工程をさらに含む、第14観点乃至第18観点のうちいずれか一つに記載の分散液の製造方法、及び
第20観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の分散液を、基板に塗布し、40~300℃で加熱する、第13観点に記載の透明基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、層状化合物の層間に剥離剤(特定の第4級アンモニウムイオン)がインターカレーションして層間を広げ膨潤した状態とし、層状化合物の層間剥離により生じた剥離層物質を特定の陰イオン界面活性剤で表面処理することにより、剥離層物質の再結合による層状化合物の形成を防ぎ、機械的なせん断力や衝撃力を加えずとも、剥離層物質が液状媒体に十分に分散した分散液を得ることができる。
また本発明にあっては、層状化合物の層間剥離時に機械的せん断力や超音波照射による衝撃力等の外力が加わらないため、剥離層物質の形状変化が生じ難く、板状結晶の形状を維持した状態で分散液を得ることができる。
そして、せん断装置などの大きな装置を用いずとも、剥離剤や陰イオン界面活性剤を加えて加熱処理することで、簡単な設備で分散液を製造することが可能である。
【0009】
また、原料となる層状化合物は、予めボールミル等の粉砕手段により粉砕された粒子径の小さな層状化合物を種粒子として、これを珪酸アルカリ水溶液中に添加し水熱反応を行うことで、シリカを主成分としてアルカリ金属をゲストとする微小な層状化合物が複製される。そして複製されたそれら微小な層状化合物を原料として、層間剥離によって微小な剥離層物質が板状粒子となった分散体が得られる。
本発明の分散液は微小な板状粒子が分散質となった分散液であり、高い分散性を維持しているため、分散液の透明性が高い。
【0010】
本発明では、微小な板状粒子がその形状を維持した状態で、しかも高い分散性を有する分散液を形成することができるため、それら分散液をナノシート液として基板上に塗布して塗布膜を形成することにより、透明性が高く、表面凹凸の低い透明基板が得られる。
また本発明において、上記板状粒子は、微小な板状粒子がその形状を維持した状態であるため、本発明の分散液を塗布した基材上において該粒子同士の密着性が高く、気密性の高い塗布膜が得られる。従って、本発明の分散液をプラスチックやガラス基板上に塗布し塗布膜を形成した場合に、水蒸気やガスを遮断する効果が高いガスバリア膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、合成例1で得られたアイラアイト(層剥離前)の透過型電子顕微鏡写真を示す図である(倍率は10万倍)。
図2図2は、実施例1において、アイラアイトのナノ粒子が層剥離したナノシート(板状粒子)の透過型電子顕微鏡写真を示す図である(倍率は10万倍)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)と、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)とを含み、平均厚さ0.7~40nm、又は0.7~20nm、平均長径100~600nm、平均短径50~300nm、及び平均短径と平均長径の比が1.0~10.0、又は1.0~5.0、又は1.0~2.0である板状粒子(C)が液状媒体に分散した分散液であって、該分散液中の板状粒子(C)の動的光散乱法による平均粒子径が10~600nm、又は10~100nm、又は25~45nmである、分散液である。
上記分散液において、板状粒子(C)は、液状媒体と第4級アンモニウムイオン(A)とアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)を含有する分散媒に分散した状態、前記(A)及び(B)の一方又は双方により少なくともその一部が被覆された或いは吸着してなる状態、板状粒子(C)同士の間に前記(A)及び(B)の一方又は双方が介在してなる状態のいずれの状態であってよい。
【0013】
前記板状粒子(C)は、0.2質量%以下のNaイオン濃度を有する粒子であることが好ましい。
また前記分散液中での板状粒子(C)の濃度は、30質量%以下、又は0.01~30質量%、0.1~30質量%とすることができる。
【0014】
前記板状粒子(C)の平均長径、平均短径は、透過型電子顕微鏡観察によって測定することができる。
また前記板状粒子(C)の平均厚さは、分散液を基板上に塗布した時の塗布面をAFM(原子間力顕微鏡)で観察することにより測定できる。AFMでの観察には、板状粒子の濃度が1質量%以下の分散液をマイカ基板上に滴下し乾燥させた試料を用いることができる。試料の乾燥は自然乾燥が好ましいが、加熱してもよい。その他、ラングミュア・ブロジェット法を用いて基板に塗布した試料をAFMの測定に用いることもできる。
さらに板状粒子(C)の平均粒子径は、分散液中の板状粒子(C)の動的光散乱法による平均粒子径として測定することができる。このとき、測定する際の分散液の濃度(板状粒子の濃度)は、30質量%以下とすることができる。
【0015】
上記板状粒子(C)は、層状化合物(D)の層間剥離による剥離層物質を用いることができる。層状化合物(D)は、例えば、層状ポリケイ酸塩、粘土鉱物、マンガン酸塩、チタン酸塩、ニオブ酸塩等が挙げられる。粘土鉱物としてはスメクタイト、バーミキュライト等が挙げられる。層状ポリケイ酸塩としてはカネマイト、マカタイト、ケニヤアイト、アイラアイト(Ileriteはアイアライト、アイライト、アイラーアイトとも呼ばれる。)等が挙げられる。
これら層状化合物(D)の中でも、アイラアイトを好ましく用いることができる。アイアライトは化学式NaO・8SiO・nHOを有し、平面上ケイ酸骨格を持ち、層間にシラノール基を有する。アイラアイトは天然には存在しないため、人工的に合成する。アイラアイトは、例えばコロイダルシリカと水酸化ナトリウムとを混合した水溶液(SiO/NaOモル比は例えば4.0)を密封容器に入れ、90~150℃程度の水熱反応を行うことにより、合成することができる。
層状化合物(D)は通常、濃度30質量%以下の濃度範囲で製造することができる。
【0016】
上記分散液中のNaイオンは、層状化合物(層状ケイ酸塩)の層間に存在するNaイオンを第4級アンモニウムイオン(A)でイオン交換した時に、層状化合物(層間)から放出されるNaイオンであり、そのままの状態では分散液中に多量存在することとなるが、後述に説明する方法で系外に排出される。分散液中では剥離層物質の再層化を防ぐため、Naイオンを低濃度にすることが望ましい。例えば、分散液中のNaイオン濃度を100ppm以下、例えば0.1~100ppm、又は1~100ppmとすることができる。
【0017】
上記第4級アンモニウムイオンは、層状化合物の層間を広げる剥離剤としての役割を有することから、かさ高い有機基を有することが好ましく、一方で溶解性が高いことが好ましい。そのため、本発明においては、総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)を用いる。
このような第4級アンモニウムイオン(A)としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等が挙げられる。特に、ジメチルジオクタデシルアンモニウムを好適に用いることができる。該アンモニウムイオンの対イオンとしては、塩素イオンや臭素イオンが挙げられる。
上記第4級アンモニウムイオン(A)の分散液中の濃度は、10質量%以下、又は0.001~10質量%、又は0.01~1.00質量%とすることができる。
【0018】
上記アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)は、疎水基と親水基から構成される界面活性剤のうち、親水基部分がアニオンとアンモニウムイオンの対で構成された化合物であり、基本的にナトリウムイオンやカリウムイオンを含んでいない化合物を用いることが好適である。また上記アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)は、例えば疎水基として炭素原子数が8乃至12程度の比較的長鎖のアルキル基を含む化合物であることが好ましく、また芳香環を含まない化合物であることが好ましい。
上記アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)としては、例えばオクタン酸アンモニウム、デカン酸アンモニウム、ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、ヘキサンスルホン酸アンモニウム、オクタンスルホン酸アンモニウム、デカンスルホン酸アンモニウム、ドデカンスルホン酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム(ドデシル硫酸アンモニウム)、ミリスチル硫酸アンモニウム、ラウリルリン酸アンモニウム、トリポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。中でもラウリル硫酸アンモニウム(ドデシル硫酸アンモニウム)を好ましく用いることができる。
上記アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)の分散液中の濃度は、0.01~1質量%とすることができる。
【0019】
本発明では、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)を必須として用いるものである。アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)を添加しなかったり、アンモニウムイオンに代えてナトリウムイオンを有する陰イオン界面活性剤や、カリウムイオンを有する陰イオン界面活性剤を用いた場合には、層間剥離が進行しない、若しくは、層間剥離した剥離層物質が再び層状構造を形成しやすくなるため、分散液の透明性が低下する(即ち、分散液の吸光度が低下しない。)という事態が生じ得る。
【0020】
本発明の分散液は透明性が高いことを特徴とし、例えば、板状粒子の濃度が0.1質量%の分散液にて、光路長1cm、波長620nmの条件において、その吸光度が0.1以下であり、特に0.015以下とすることができる。
【0021】
また、本発明の分散液は、板状粒子(C)の分散媒(液状媒体)を水などの水性媒体としてもよいし、有機溶媒とすることもできる。本発明の分散液を製造する際、水性媒体を有機溶媒に溶媒置換することができる。溶媒置換は蒸発法や限外濾過法で行うことができる。
上記有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、及びγ-ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で、または二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0022】
本発明では、板状粒子(C)をシラン化合物で被覆することができる。シラン化合物で被覆することにより、膜を形成した時にガスの透過性をコントロールすることができる。これらシラン化合物は下記式(1)及び式(2)から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を用いることができる。該シラン化合物としてこれらの加水分解縮合物を使用できる。
【化1】
【0023】
式(1)中、Rはアクリロキシ基、メタクリロキシ基、アリール基、アルキル基、アルケニル基、グリシドキシ基、又はそれら官能基を含む炭素原子数1~10のアルキル基、又はエポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、シアノ基を有する有機基を含み、且つ、Si原子にSi-C結合で結合しているものであり、aは1~3の整数を示す。
はアルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基からなる加水分解性基である。少なくとも1つのR(加水分解性基)は、板状粒子(C)の表面でM-O-Siの結合を形成し、板状粒子がアイアライト由来である場合、Mはアイラアイト中のSi原子を示す。
【0024】
式(2)中、Rはアルキル基であり、且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基からなる加水分解性基である。少なくとも1つのR(加水分解性基)は、板状粒子(C)の表面でM-O-Siの結合を形成し、板状粒子がアイアライト由来である場合、Mはアイラアイト中のSi原子を示す。Yは単結合、アルキレン基、アリーレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは0~3の整数を示し、cは0又は1の整数である。
【0025】
上記アルキル基は直鎖又は分枝を有する炭素原子数1~10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0026】
また環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数3~10の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0027】
アルキレン基としては、上記アルキル基に由来するアルキレン基を挙げることができる。例えばメチル基であればメチレン基、エチル基であればエチレン基、プロピル基であればプロピレン基が挙げられる。
【0028】
アルケニル基としては炭素原子数2~10のアルケニル基が挙げられ、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0029】
アリール基としては炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、例えばフェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロロフェニル基、m-クロロフェニル基、p-クロロフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-メルカプトフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-アミノフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基が挙げられる。
アリーレン基としては、上記アリール基に由来するアリーレン基を挙げることができる。
【0030】
エポキシ基を有する有機基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
アクリロイル基を有する有機基としては、アクリロイルメチル基、アクリロイルエチル基、アクリロイルプロピル基等が挙げられる。
【0032】
メタクリロイル基を有する有機基としては、メタクリロイルメチル基、メタクリロイルエチル基、メタクリロイルプロピル基等が挙げられる。
【0033】
メルカプト基を有する有機基としては、エチルメルカプト基、ブチルメルカプト基、ヘキシルメルカプト基、オクチルメルカプト基等が挙げられる。
【0034】
シアノ基を有する有機基としては、シアノエチル基、シアノプロピル基等が挙げられる。
【0035】
アルコキシ基としては例えば炭素原子数1~10のアルコキシ基、すなわち炭素原子数1~10の直鎖、分岐、環状のアルキル部分を有するアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基、1-メチル-n-ペンチロキシ基、2-メチル-n-ペンチロキシ基、3-メチル-n-ペンチロキシ基、4-メチル-n-ペンチロキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基及び1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基等が、また環状のアルコキシ基としてはシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、1-メチル-シクロプロポキシ基、2-メチル-シクロプロポキシ基、シクロペンチロキシ基、1-メチル-シクロブトキシ基、2-メチル-シクロブトキシ基、3-メチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロプロポキシ基、2,3-ジメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-シクロプロポキシ基、シクロヘキシロキシ基、1-メチル-シクロペンチロキシ基、2-メチル-シクロペンチロキシ基、3-メチル-シクロペンチロキシ基、1-エチル-シクロブトキシ基、2-エチル-シクロブトキシ基、3-エチル-シクロブトキシ基、1,2-ジメチル-シクロブトキシ基、1,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,2-ジメチル-シクロブトキシ基、2,3-ジメチル-シクロブトキシ基、2,4-ジメチル-シクロブトキシ基、3,3-ジメチル-シクロブトキシ基、1-n-プロピル-シクロプロポキシ基、2-n-プロピル-シクロプロポキシ基、1-i-プロピル-シクロプロポキシ基、2-i-プロピル-シクロプロポキシ基、1,2,2-トリメチル-シクロプロポキシ基、1,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、2,2,3-トリメチル-シクロプロポキシ基、1-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-1-メチル-シクロプロポキシ基、2-エチル-2-メチル-シクロプロポキシ基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロポキシ基等が挙げられる。
【0036】
アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては例えば炭素原子数2~20のアシルオキシ基が挙げられ、例えばメチルカルボニルオキシ基(アセトキシ基)、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3,3-ジメチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-エチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2,2-トリメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、及びトシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0037】
上記ハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0038】
式(1)で表されるケイ素含有化合物は、例えば、テトラメトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアセチキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシエチルエチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メトキシフェニルトリメトキシシラン、メトキシフェニルトリエトキシシラン、メトキシフェニルトリアセトキシシラン、メトキシフェニルトリクロロシラン、メトキシベンジルトリメトキシシラン、メトキシベンジルトリエトキシシラン、メトキシベンジルトリアセトキシシラン、メトキシベンジルトリクロロシラン、メトキシフェネチルトリメトキシシラン、メトキシフェネチルトリエトキシシラン、メトキシフェネチルトリアセトキシシラン、メトキシフェネチルトリクロロシラン、エトキシフェニルトリメトキシシラン、エトキシフェニルトリエトキシシラン、エトキシフェニルトリアセトキシシラン、エトキシフェニルトリクロロシラン、エトキシベンジルトリメトキシシラン、エトキシベンジルトリエトキシシラン、エトキシベンジルトリアセトキシシラン、エトキシベンジルトリクロロシラン、イソプロポキシフェニルトリメトキシシラン、イソプロポキシフェニルトリエトキシシラン、イソプロポキシフェニルトリアセトキシシラン、イソプロポキシフェニルトリクロロシラン、イソプロポキシベンジルトリメトキシシラン、イソプロポキシベンジルトリエトキシシラン、イソプロポキシベンジルトリアセトキシシラン、イソプロポキシベンジルトリクロロシラン、t-ブトキシフェニルトリメトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリエトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリアセトキシシラン、t-ブトキシフェニルトリクロロシラン、t-ブトキシベンジルトリメトキシシラン、t-ブトキシベンジルトリエトキシシラン、t-ブトキシベンジルトリアセトキシシラン、t-ブトキシシベンジルトリクロロシラン、メトキシナフチルトリメトキシシラン、メトキシナフチルトリエトキシシラン、メトキシナフチルトリアセトキシシラン、メトキシナフチルトリクロロシラン、エトキシナフチルトリメトキシシラン、エトキシナフチルトリエトキシシラン、エトキシナフチルトリアセトキシシラン、エトキシナフチルトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β-シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
式(2)で表されるケイ素含有化合物は、例えば、メチレンビストリメトキシシラン、メチレンビストリクロロシラン、メチレンビストリアセトキシシラン、エチレンビストリエトキシシラン、エチレンビストリクロロシラン、エチレンビストリアセトキシシラン、プロピレンビストリエトキシシラン、ブチレンビストリメトキシシラン、フェニレンビストリメトキシシラン、フェニレンビストリエトキシシラン、フェニレンビスメチルジエトキシシラン、フェニレンビスメチルジメトキシシラン、ナフチレンビストリメトキシシラン、ビストリメトキシジシラン、ビストリエトキシジシラン、ビスエチルジエトキシジシラン、ビスメチルジメトキシジシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0040】
加水分解性基であるアルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基がSi原子に結合したアルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、アシロキシシリル基、又はハロゲン化シリル基の加水分解には、これら加水分解性基の1モル当たり、0.5~100モル、好ましくは1~10モルの水を用いる。
また、加水分解し縮合させる際に触媒を用いることができ、こうした加水分解触媒としては硝酸が用いられる。また硝酸に加えて金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、又は無機塩基を併用することができる。加水分解触媒は、加水分解性基の1モル当たり、0.001~10モル、好ましくは0.001~1モルの量にて用いることができる。
加水分解と縮合を行う際の反応温度は、通常20~80℃である。
加水分解は完全に加水分解を行うことも、部分加水分解することでもよい。即ち、加水分解縮合物中に加水分解物やモノマーである上記シラン化合物が残存していてもよい。
【0041】
本発明の分散液は、上記分散液をそのまま塗布用組成物として用いることができる。また、添加剤として、レベリング性向上剤としてシリコーンオイル、アクリル系界面活性剤を添加することができる。これら添加剤は、板状粒子(C)の質量に対して1質量%以下の範囲で用いることが出来る。
【0042】
また塗布用組成物には、耐久性向上のために金属化合物を添加することができる。上記金属化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等のジルコニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。該金属化合物を添加する場合、その添加量は、板状粒子(C)の質量に対して0.0001~10質量%の範囲で用いることが出来る。
【0043】
前記分散液、或いは、塗布用組成物を塗布する基材としては通常用いられる基板が挙げあれ、例えばプラスチック、ガラス、セラミックス、シリコンウエハ、木材、紙等が挙げられる。
【0044】
前記塗布用組成物における固形分の割合は、例えば0.1~30質量%の範囲とすることができる。ここで、固形分とは、塗布用組成物の全成分から液状媒体(水、有機溶媒等)を除いたものをいう。
前記塗布用組成物はスピンコート法、ディッピング法、スクリーンコート法、ロールコート法により基材に塗布することが可能である。スピンコートする場合、回転数を例えば700~2000rpmに設定し、5~50秒間行われる。
前記塗布用組成物を基材に塗布後、常圧下、又は減圧下に溶媒を除去することができる。その時、必要に応じて基材の材質に合わせて加熱することが可能である。プラスチック、木材、紙等であれば、40~100℃の範囲で加熱することが可能であり。ガラス、セラミックス、シリコンウエハ等であれば、40~300℃の範囲で加熱し、任意に溶媒を除去することができる。
【0045】
前記塗布用組成物を基材に塗布する際、塗布膜の膜厚を制御する為に、塗布用組成物の粘度をコントロールすることが可能である。前記塗布用組成物の粘度としては1~1,000mPa・s、又は1~100mPa・sの範囲に設定することが出来る。
【0046】
分散液中の分散質(板状粒子(C))を含む塗布用組成物により基板上に形成された塗布膜は、膜厚が1nm~10μm、又は5nm~1000nm、又は5nm~600nm、又は5~500nmの範囲に設定することができる。
【0047】
基板上に形成された塗布膜は透明性が高く、例えば該塗布膜の膜厚500nmの時の全光線透過率が80%以上、通常は90%以上となる透明基板が得られる。
本発明の塗布用組成物を用いることで、例えば塗布膜を形成する前の基板の全光透過率が100としたとき、塗布膜形成後の基板の全光透過率の低下率を20%未満、さらには10%未満とすることができる。
【0048】
本発明では上記塗布膜をガスバリア膜として用いることができる。すなわち、前記塗布膜からなるガスバリア膜を提供することができる。ガスバリア膜は基材にとっての有害なガス、例えば水蒸気や、活性酸素、含硫黄ガス等を遮断することが可能となる膜である。例えばバリアするガスが水蒸気であるガスバリア膜を形成することができる。
【0049】
本発明は、前述の分散液の製造方法も対象とし、該製造方法は、下記(a)工程乃至(e)工程を含む。
(a)工程:層状化合物(D)の水性分散液を製造する工程、
(b)工程:(a)工程で得られた水性分散液に、層状化合物(D)のイオン交換容量の等倍~三倍量となる、総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)を添加し、40~90℃で、12~48時間の加熱をする工程、
(c)工程:(b)工程で得られた液に純水を加え、液中のナトリウムイオン濃度が100ppm以下になるように、ナトリウムイオン含有液を系外に取り除く工程、
(d)工程:(c)工程で得られた液を乾燥させた乾燥粉を、濃度が0.01~1質量%のアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)水溶液中に分散させた後、さらに、アンモニアを添加して液中のpHを9.0~12.0に調整する工程、
(e)工程:(d)工程で得られた液を、40~90℃で、12~48時間の加熱を行い、分散液を得る工程。
【0050】
上記(a)工程について、ここで用いる層状化合物(D)としてアイラアイトを例示して説明する。アイラアイトは天然に存在しない層状化合物であり、例えば、ケイ酸化合物水溶液を90~150℃の水熱反応を行うことにより合成することができる。ケイ酸化合物としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等の珪酸塩が挙げられる。上記ケイ酸化合物水溶液としては、SiO/MOモル比として3.5~4.0(ただしMはNa、K)、ケイ酸化合物の濃度が10~30質量%程度の、ケイ酸ナトリウム水溶液が好ましい。水熱条件は90~150℃、特に90~130℃が好ましく、1日~24日間、又は1日~12日間の静置加熱により、アイラアイトを合成することができる。
【0051】
水熱反応により得られた固体物質を分離して水洗し、乾燥してアイラアイトを回収することができる。水熱反応中は反応系を均一にするために反応初期に撹拌することもできるが、アイラアイトを粒子成長させるためには静置加熱が好ましい。
微細なアイラアイトは、アイラアイト自体を微細な種晶(種粒子)として、ケイ酸ナトリウム水溶液中に添加することによって合成することができる。
【0052】
(a)工程は、好ましい態様において、層状化合物(D)の粉砕によって粉砕された層状化合物(D1)を種粒子として珪酸塩水溶液に添加し、90~130℃で、6~72時間の水熱処理を行い、微細な層状化合物(D2)の濃度30質量%以下の水性分散液を製造する(a1)工程とすることができる。
【0053】
(a1)工程では、水熱反応の媒体から未反応のケイ酸ナトリウムを除去して、例えば40℃にて乾燥した微細な層状化合物(D2)の粉体を30質量%以下の濃度に溶解させたものを、(a)工程の層状化合物(D)の水性分散液として用いることができる。
【0054】
粉砕された層状化合物(D1)は、その動的光散乱法による粒子径が30~60nmであり、その〔(2θ=6.9~8.4°までの回折ピークの積分強度の総和)/(2θ=5~40°までの回折ピークの積分強度の総和)〕×100で示される粉末X線回折による結晶化度が5~15%であることが好ましい。
【0055】
種晶(種粒子)を加えて水熱反応により得られる(微細な)層状化合物(特にはアイラアイト)(D2)の粒子径は、平均長径250~750nm、平均短径200~550nm、平均短径と平均長径の比が1.0~2.0である。上記平均長径、平均短径は、透過型電子顕微鏡観察によって測定することができる。
また上記(D2)の動的光散乱法による平均粒子径は、100nm~600nmとすることができ、好ましくは200~400nmとすることができる。
【0056】
種晶(種粒子)に用いる層状化合物(D)(特にはアイラアイト)は、上記ケイ酸塩水溶液、若しくは上記ケイ酸塩水溶液に、未粉砕又は粉砕された層状化合物(D)を種晶(種粒子)として添加した懸濁液を90~150℃、特に90~130℃で、1日~24日間、特には110℃で1日~12日間程度の静置による水熱反応によって得られる。種晶(種粒子)に用いる層状化合物(D)を作製する際にケイ酸塩水溶液に添加する種晶は、粒子径に制限は無く、ケイ酸塩に対して0.1~10質量%、又は0.1~5質量%、または0.1~2質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0057】
微細な種晶、層状化合物(D1)(ここではアイラアイト(D1))は、層状化合物(D)(ここではアイラアイト(D))の粉砕によって得ることができ、その種晶を基にアイラアイトの水熱合成が行われ微細な層状化合物(アイラアイト)(D2)を得ることができる。粉砕は例えばボールミル粉砕により行うことができる。
【0058】
粉砕は例えば遊星型ボールミル粉砕装置を用いて行われる。遊星ボールミルは、硬質ボール(例えばジルコニアボール)とアイラアイトを入れた容器を、自転と公転とをさせることにより粉砕することができる。この遊星ボールミル粉砕は2段階の粉砕を行うことが可能であり、先に予備粉砕を行い、後から更に微粉砕を行うことで種晶としてのアイラアイト(D1)を得ることができる。粉砕は湿式でも乾式でも可能であるが、乾式粉砕を用いることが好ましい。
【0059】
上記種晶に用いるアイラアイトは別途入手したアイラアイトを用いることも、前バッチの一部を添加したり、反応容器に残存するものを用いて連続的にバッチ製造したりすることができる。
【0060】
上記(b)工程は、(a)工程で得られた層状化合物(D)の水性分散液に、層状化合物(D)のイオン交換容量の等倍~三倍量となる量にて、総炭素原子数15~45であり、且つ、炭素原子数10~20のアルキル基を1~2個有する第4級アンモニウムイオン(A)を添加し、40~90℃で、12~48時間の加熱をする工程である。
【0061】
上記(c)工程は(b)工程で得られた液に純水を加え、液中のナトリウムイオン濃度が100ppm以下になるように、ナトリウムイオン含有液を系外に取り除く工程である。前記(b)工程において、層状化合物(D)の層間に存在するナトリウムイオンが、第4級アンモニウムイオンに置換され、液中に遊離したナトリウムイオンを系外に取り除くことにより、ナトリウムイオンによる再置換を防ぎ、層間が第4級アンモニウムイオンで拡張され、層状化合物を層間剥離することができる。ナトリウムイオンを取り除く方法は限外濾過法や、デカンテーション法が挙げられる。
【0062】
(d)工程は(c)工程で得られた液を乾燥させた乾燥粉を、濃度が0.01~1質量%のアンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)水溶液中に分散させた後、さらに、液中のpHが9.0~12.0となるようにアンモニアを加える工程である。アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)の添加により、これが層間剥離により生じた剥離層物質を被覆する、或いは、該剥離層物質同士に介在し、続く(e)工程にて生じる層間剥離による剥離層物質が再度、層状化合物の形態に戻ることを抑制することができる。(d)工程ではpH9.0~12.0となる様にアンモニアによりpH調整を行うことができる。
【0063】
この(d)工程では、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)をアイラアイト表面への被覆を十分に行うために超音波照射下で行うことができる。
【0064】
(e)工程は(d)工程で得られた液を40~90℃で、12~48時間の加熱を行う工程である。
【0065】
さらに、(f)工程として、(e)工程の後に得られた水性分散液を有機溶媒で溶媒置換する工程を含めることができる。これにより、アイラアイトから層間剥離した板状粒子が有機溶媒に分散した分散液(ゾル)が得られる。
【0066】
こうして得られた本発明の分散液は高い分散性を有し、例えば室温で6ヶ月経過後においても沈殿を生じないといった分散安定性を有する。
【0067】
本発明では上記分散液を塗布用組成物に用いることができる。塗布用組成物を調製する際、該組成物のpHを7~12、又は7~11、又は9~12、又は9~11に調整することができる。
【0068】
本発明の塗布用組成物が適用される塗布物品としては、ディスプレイ、LCD表面、光学レンズ、メガネレンズ、太陽電池用表面基材、携帯電話、有機EL発行部材、照明ランプ、建築用窓ガラス、農業用フィルム、車両用透明部材等を挙げることができる。
【実施例
【0069】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0070】
(評価方法)
動的光散乱法:スペクトリス株式会社製 商品名ゼータサイザーナノSで測定した。
結晶化度:株式会社島津製作所製 粉末X線回折装置 XRD-6100で測定した値を用い、(2θ=6.9~8.4°までの回折ピークの積分強度の総和)/(2θ=5~40°までの回折ピークの積分強度の総和)〕×100より結晶化度を算出した。
吸光度:株式会社島津製作所製 紫外可視近赤外分光光度計 商品名UV-3600Plusで測定した。
透過型電子顕微鏡:日本電子株式会社製 商品名JEM-1010を使用した。
平均短径、平均長径:透過型電子顕微鏡 日本電子株式会社製 JEM-1010を用い、粒子200個を画像解析装置で測定した。
基板の透過率:日本電色工業株式会社製 ヘーズメーター 商品名NDH 5000を用い基板の全光線透過率を測定した。
平均厚さ:AFM(原子間力顕微鏡)、(株)島津製作所製、商品名SPM-9500J3を使用してコンタクトモードで測定した。カンチレバー(探針)はオリンパス(株)製の窒化シリコン(商品名:OMCL-TR800PSA-1)を使用した。
【0071】
(合成例1:アイラアイトの合成)
4号水ガラス(日本化学工業(株)製、SiO:NaO:HOモル比は3.9:1:39.0、SiO濃度は23.44質量%、NaO濃度は6.29質量%)50mlをステンレス鋼(SUS304)製密閉容器に封入し、110℃で12日間静置加熱してアイラアイトを水熱合成した。尚、生成物がアイラアイトであることはXRDにて確認した(PDFカードNo.00-048-0655)。
得られたアイラアイト2gを、遊星ボールミル(フリッチュ社製、商品名P-7型)の窒化ケイ素製容器(容量45ml)に直径5mmのジルコニア製粉砕ボール73gとともに装入し、回転速度220rpmで1時間の乾式粉砕を空気雰囲気で行った。続いて、直径5mmの粉砕ボールを直径3mmのジルコニア製粉砕ボール73gと入れ替えた後、回転速度を300rpmに変更して1時間の乾式粉砕を空気雰囲気で行った(このときの粉砕粒子の動的光散乱法による粒子径は41nm、結晶化度は10.6%であった)。
得られたアイラアイトの粉砕粒子0.32gを種晶(種粒子)として4号水ガラス50mlに添加し、これをSUS304製の密閉容器に封入して110℃で12時間静置加熱し、動的光散乱径の個数基準中位径が250nmのアイラアイトのナノ粒子が得られた。得られたアイラアイトは長径が456nm、短径が396nm、短径と長径の比が1.2であった。得られたアイラアイトの透過型電子顕微鏡写真を図1に示す(倍率10万倍)。尚、生成物がアイラアイトであることはXRDにて確認した(PDFカードNo.00-048-0655)。
【0072】
(実施例1:ナノシート分散液の製造、及び透明基板の製造)
合成例1で得られたアイラアイトナノ粒子0.3gと、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド0.73gを水30gに添加し、80℃で20時間の静置加熱をすることで、アイラアイトのシリケート層間のナトリウムイオンをジメチルジオクタデシルアンモニウムイオンで置換した(ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン濃度2.2質量%)。Naイオンを限外濾過により系外に除いた後、80℃で乾燥させることで、イオン交換したアイラアイト粉末を得た(イオン交換したアイラアイト粉末中のNaイオン濃度は605ppmであった)。
イオン交換したアイラアイト粉末0.03gを0.5質量%のドデシル硫酸アンモニウム溶液に加え30gとした(なお、このときの液の吸光度は、イオン交換したアイラアイトの濃度0.1質量%、光路長1cm、波長620nmで、2.334であった)。これにアンモニア水を加えてpHを9以上とした(このときの液の吸光度は、イオン交換したアイラアイトの濃度0.1質量%、光路長1cm、波長620nmで、0.120であった)。ここで得られた溶液を60℃で24時間の静置加熱することで、アイラアイトのナノ粒子が層剥離したナノシート(板状粒子)のコロイド溶液を得た(このときの分散液中のNa濃度は0.6ppm、ドデシル硫酸アンモニウムの濃度は0.5質量%、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン濃度は0.06質量%であった。)
得られた板状粒子は平均長径が302nm、平均短径が233nm、平均短径と平均長径の比が1.3、動的光散乱法による平均粒子径が34.3nm、平均厚さ1.1nmであり、得られた分散液の吸光度は、イオン交換したアイラアイトの濃度0.1質量%、光路長1cm、波長620nmで、0.007であった。得られた板状粒子の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す(倍率10万倍)。
分散液をPET(ポリエチレンテレフタレート)基板上に塗布し100℃で乾燥して塗布膜を形成し、透明基板を作成した。得られた透明基板の膜厚は600nmであり、全光線透過率は92.8%であった。
【0073】
(比較例1)
実施例1において、ドデシル硫酸アンモニウムを添加しなかった以外は実施例1と同様に操作した。
最終的に得られた分散液の吸光度は、イオン交換したアイラアイトの濃度0.1質量%、光路長1cm、波長620nmで、1.602であった。
【0074】
(比較例2)
実施例1において、ドデシル硫酸アンモニウムの代わりに、ドデシル硫酸ナトリウムを同量添加した以外は実施例1と同様に操作した。
最終的に得られた分散液の吸光度は、イオン交換したアイラアイトの濃度0.1質量%、光路長1cm、波長620nmで、0.020であった。
【0075】
(比較例3)
実施例1において、ドデシル硫酸アンモニウムの代わりに、ラウリン酸カリウムを同量添加した以外は実施例1と同様に操作した。
最終的に得られた分散液の吸光度は、イオン交換したアイラアイトの濃度0.1質量%、光路長1cm、波長620nmで、2.703であった。
【0076】
実施例1に示すように、アイラアイトの分散液であって、アンモニウムを有する陰イオン界面活性剤(B)を含有する本発明の分散液は透明性が高く、剥離層物質が液状媒体に十分安定に分散し、高い分散性を維持した分散液を得られたことが確認された。また該分散液を用いた塗布膜により、高い透明性を有する透明基板を得られることが確認された。
一方、アンモニウムイオンを有する陰イオン界面活性剤(B)を添加しなかった比較例1、アンモニウムイオンに代えてナトリウムイオンを有する陰イオン界面活性剤を使用した比較例2、或いはカリウムイオンを有する陰イオン界面活性剤を使用した比較例3にあっては、分散液の透明性が低下した。これら比較例の結果は、系内において層状化合物の層間剥離が進行していない、或いは、層間剥離した剥離層物質が再び層状構造を形成したことを示唆するものであった。
図1
図2