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  • 特許-異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-01
(45)【発行日】2023-11-10
(54)【発明の名称】異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/36 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
D02G3/36
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020503574
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007586
(87)【国際公開番号】W WO2019168038
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2018036778
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由高
(72)【発明者】
【氏名】野村 政宏
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0044561(US,A1)
【文献】特開2002-093969(JP,A)
【文献】特開2002-088171(JP,A)
【文献】特表2014-522109(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190930(WO,A1)
【文献】特開2000-068429(JP,A)
【文献】特開2004-225170(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178416(WO,A1)
【文献】特開2004-285522(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106498538(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0130598(KR,A)
【文献】国際公開第2011/048824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 3/36
D01D 10/00
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドル化された複数の熱可塑性樹脂の延伸ファイバを備え、
前記延伸ファイバの直径が200μm以下であり、
前記複数の熱可塑性樹脂の延伸ファイバが、ポリウレタン、アクリルポリマー、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合材によってバンドル化されており、
前記熱可塑性樹脂が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルフォン、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、異方熱伝導性樹脂部材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂を延伸して延伸ファイバを作製する工程と、
複数の前記延伸ファイバを、ポリウレタン、アクリルポリマー、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合材によってバンドル化する工程と、を備え、
前記延伸ファイバの直径が200μm以下であり、
前記熱可塑性樹脂が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルフォン、及びポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、異方熱伝導性樹脂部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方熱伝導性樹脂部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスにおいては、電子部品の高集積化、小型化、薄型化等に伴って、電子部品から発生する熱がその内部に蓄積され、電子デバイスの誤作動、寿命の低下等の信頼性の問題が生じやすくなっている。したがって、電子部品から発生する熱を適切な経路で効率的に外部へ逃がすことが重要となる。
【0003】
このような問題に対して、熱伝導性に優れ、かつ電気絶縁性を有する樹脂製の部材を電子部品とヒートシンクとの間に設けることが行われている。このようなシートとして、例えば特許文献1には、熱伝導性フィラー、繊維及び樹脂を含む熱伝導シートであって、繊維は面状に交絡しており、交絡した繊維は、熱伝導性フィラーを坦持してベースシートを形成しており、樹脂がベースシートに充填されていることを特徴とする熱伝導シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-87446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱は方向性なく等方的に伝導するため、特許文献1に記載されているような熱伝導性シートを用いた場合、熱を伝導させるべき方向(電子部品からヒートシンクへ向かう方向)のみならず、例えば電子デバイス中の他の電子部品の方向へも熱が伝導してしまう。この場合、熱に弱い電子部品が熱にさらされることになり、電子デバイスの信頼性が損なわれるおそれがある。しかし、樹脂は結晶構造のような規則的な構造をとりにくいため、樹脂製の部材において、熱伝導に異方性(指向性)を自在に与えることは難しい。
【0006】
そこで、本発明は、効率良く異方的に熱伝導させることが可能な樹脂部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、バンドル化された複数の熱可塑性樹脂の延伸ファイバを備える、異方熱伝導性樹脂部材である。
【0008】
この樹脂部材では、延伸ファイバが、高い配向性を有するファイバであるため、結晶性の低い熱可塑性樹脂で形成されているにもかかわらず、フォノン(熱伝導を担う準粒子)を延伸ファイバ内に閉じ込めやすくなる。したがって、この樹脂部材では、熱が一様に広がらずに延伸ファイバの延在方向に異方性(指向性)をもって伝導する。さらに、この樹脂部材では、複数の延伸ファイバがバンドル化されていることによって、熱伝導の経路(延伸ファイバ)の断面積が大きくなっているため、効率の良い熱伝導が可能となる。
【0009】
本発明の他の一側面は、熱可塑性樹脂を延伸して延伸ファイバを作製する工程と、複数の延伸ファイバをバンドル化する工程と、を備える、異方熱伝導性樹脂部材の製造方法である。
【0010】
この製造方法では、延伸により高い配向性を有するファイバを作製することで、結晶性の低い熱可塑性樹脂で形成されているにもかかわらず、フォノンをファイバ内に閉じ込めやすい延伸ファイバが得られる。したがって、この製造方法では、延伸ファイバの延在方向に異方性(指向性)をもって熱を伝導させる樹脂部材が得られる。さらに、この製造方法では、複数の延伸ファイバをバンドル化することによって、熱伝導の経路(延伸ファイバ)の断面積を大きくしているため、効率の良い熱伝導が可能な樹脂部材が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率良く異方的に熱伝導させることが可能な樹脂部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は一実施形態に係る樹脂部材を示す斜視図であり、(b)は延伸ファイバ内のフォノンの移動を示す模式図である。
図2】一実施形態に係る延伸ファイバ作製工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1(a)は、一実施形態に係る樹脂部材を示す斜視図である。図1(a)に示すように、樹脂部材1は、バンドル化された複数の延伸ファイバ(ファイバ素線とも呼ばれる)2を備え、ファイバ状に形成されている。
【0015】
複数の延伸ファイバ2同士は、例えば延伸ファイバ2同士を結合する結合材3によって、互いに略同一方向に延在するように束ねられている(バンドル化されている)。複数の延伸ファイバ2は、断面でみたときに、規則的に配列されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。延伸ファイバ2の断面形状は、例えば図1(a)に示すように略真円状であってよく、楕円状、多角形状等の定形であってもよく、不定形であってもよい。
【0016】
延伸ファイバ2は、熱可塑性樹脂が延伸されてなるファイバである。熱可塑性樹脂は、例えば、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン等であってよい。
【0017】
延伸ファイバ2の直径(最大径)は、フォノンの閉じ込めやすさとフォノンの入射の容易さとの両立の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは100μm以上である。延伸ファイバ2の直径(最大径)は、バンドル化するときのハンドリング性の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
【0018】
結合材3は、特に制限されるものでなく、例えば、ポリウレタン、アクリルポリマー、エポキシ樹脂等で構成されていてよい。
【0019】
図1(b)は、延伸ファイバ2におけるフォノンの移動を示す模式図である。この樹脂部材1では、延伸ファイバ2が、高い配向性を有するファイバであるため、結晶性の低い熱可塑性樹脂で形成されているにもかかわらず、図1(b)に示すように、フォノンPを延伸ファイバ2内に閉じ込めやすくなる。したがって、熱(フォノン)が延伸ファイバ2の延在方向に異方性(指向性)をもって伝導する。すなわち、この樹脂部材1は、延伸ファイバ2間ではフォノンが伝導しにくく、延伸ファイバ2の延在方向の一方向に異方的に熱を伝導可能な異方熱伝導性を有している。さらに、この樹脂部材1では、複数の延伸ファイバ2がバンドル化されていることによって、熱伝導の経路(延伸ファイバ2)の断面積が大きくなっているため、効率の良い熱伝導が可能となる。
【0020】
続いて、樹脂部材1の製造方法について説明する。この製造方法は、熱可塑性樹脂を延伸して延伸ファイバを作製する工程(延伸ファイバ作製工程)と、複数の延伸ファイバをバンドル化する工程(バンドル化工程)と、を備えている。
【0021】
図2は、一実施形態に係る延伸ファイバ作製工程を示す模式図である。延伸ファイバ作製工程では、まず、図2に示すように、熱可塑性樹脂4を、加熱炉5で加熱すると共に巻取り部6で巻き取る(引っ張る)ことによって巻取り方向(引張り方向)に延伸する。具体的には、まず、例えば直径5~50mmのロッド状に成形された熱可塑性樹脂4を加熱炉5に投入する。熱可塑性樹脂4は、加熱炉5内で加熱されると共に、加熱炉5の先に設置された巻取り部6によって巻き取られる(引っ張られる)ことによって延伸される。
【0022】
加熱炉5の温度は、熱可塑性樹脂4の軟化温度に応じて適宜設定され、熱可塑性樹脂4の延伸時に配向性を好適に付与する観点から、好ましくは、熱可塑性樹脂の熱変形温度以上融点未満の温度である。熱可塑性樹脂4の延伸は、例えば、延伸倍率が10~1000倍となるような条件で行われる。
【0023】
このようにして加熱炉5から出てきた延伸ファイバ2は、加熱炉5に投入前の熱可塑性樹脂4の径(ロッドの直径)よりも小径の細線状に形成されている。延伸ファイバ2は、加熱炉5と巻取り部6との間に適宜設けられたロール7に沿って、巻取り部6に巻き取られる。
【0024】
延伸ファイバ作製工程に続くバンドル化工程では、延伸ファイバ2を複数用意し、これらの複数の延伸ファイバ2を、結合材3を用いてバンドル化する。バンドル化する方法は、公知の方法であってよい。これにより、樹脂部材1が得られる。
【0025】
以上説明した及び樹脂部材1の製造方法では、延伸により高い配向性を有する延伸ファイバ2を作製することで、結晶性の低い熱可塑性樹脂で形成されているにもかかわらず、フォノンPをファイバ内に閉じ込めやすい延伸ファイバ2が得られる。したがって、この製造方法では、延伸ファイバ2の延在方向に異方性(指向性)をもって熱を伝導させる樹脂部材1が得られる。さらに、樹脂部材1の製造方法では、複数の延伸ファイバ2をバンドル化することによって、熱伝導の経路(延伸ファイバ2)の断面積を大きくしているため、効率の良い熱伝導が可能な樹脂部材1が得られる。
【符号の説明】
【0026】
1…樹脂部材、2…延伸ファイバ、4…熱可塑性樹脂。
図1
図2