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特許7441474触媒、イソブチルアルデヒドおよびメタクロレインの製造方法、メタクリル酸の製造方法、及びメタクリル酸エステルの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】触媒、イソブチルアルデヒドおよびメタクロレインの製造方法、メタクリル酸の製造方法、及びメタクリル酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/78 20060101AFI20240222BHJP
   B01J 21/10 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 23/04 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 23/06 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 23/12 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 27/236 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20240222BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240222BHJP
   C07C 45/29 20060101ALI20240222BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20240222BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20240222BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240222BHJP
【FI】
B01J23/78 Z
B01J21/10 Z
B01J23/02 Z
B01J23/04 Z
B01J23/06 Z
B01J23/10 Z
B01J23/12 Z
B01J23/50 Z
B01J27/236 Z
B01J29/70 Z
B01J37/08
C07C45/29
C07C47/02
C07C47/22 J
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022512653
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013989
(87)【国際公開番号】W WO2021201155
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020065205
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020150757
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】二宮 航
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】中坂 佑太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】山下 翔平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520097(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103506130(CN,A)
【文献】国際公開第2017/102811(WO,A1)
【文献】特開2014-161776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0002244(US,A1)
【文献】Nagao, Y. et al.,Rh/ZrP2O7 as an Efficient Automotive Catalyst for NOx Reduction under Slightly Lean Conditions,ACS Catalysis,5,米国,the American Chemical Society,2015年02月13日,1986-1994,10.1021/cs5020157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 45/29
C07C 47/02
C07C 47/22
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均電気陰性度が2.10以上2.65以下である触媒であって、
平均電気陰性度が2.10以上2.65以下の金属酸化物を含み、
前記触媒の酸量が0.25mmol/g以下であり、
前記金属酸化物の含有量が前記触媒の総質量に対して80質量%以上であり、
イソブタノールから、イソブチルアルデヒド、及びメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1種の脱水素化合物の製造に用いられる触媒。
【請求項2】
前記金属酸化物が、Al、Si、Zn、Ag、Ce、La、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物を含む請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物が、Zn、Al、Fe、Si、Zr、及びTiからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物を含む請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
一種以上のアルカリ金属を含む請求項1~のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
金属酸化物を焼成することを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
イソブタノールから脱水素化合物を製造する方法であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の触媒を用いて、イソブタノールから、イソブチルアルデヒド、及びメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1種の脱水素化合物を製造することを含む、脱水素化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の脱水素化合物の製造方法によって得られたイソブチルアルデヒド、及びメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1種からメタクリル酸を製造することを含む、メタクリル酸の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載のメタクリル酸の製造方法によってメタクリル酸を製造し、得られたメタクリル酸と炭素数1~20のアルコールからメタクリル酸エステルを製造することを含む、メタクリル酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、イソブチルアルデヒドおよびメタクロレインの製造方法、メタクリル酸の製造方法、及びメタクリル酸エステルの製造方法に関する。
本願は、2020年3月31日に、日本に出願された特願2020-65205号、及び2020年9月8日に、日本に出願された特願2020-150757号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
イソブチルアルデヒドは、ヘテロポリ酸を用いた酸化反応によってメタクロレイン及びメタクリル酸に誘導することが可能であり、メタクリル酸エステルの有用な中間体である(非特許文献1、及び2)。
【0003】
イソブチルアルデヒドの工業的な製造方法としては、プロピレンと一酸化炭素のヒドロホルミル化反応がある。しかし、この方法ではn-ブチルアルデヒドを製造する際の副生物としてイソブチルアルデヒドが製造されるため、イソブチルアルデヒドを任意の量で選択的に製造することはできない。
【0004】
イソブチルアルデヒドの製造方法としては、イソブタノール(以下、「イソブタノール」とも記す。)の脱水素反応によってイソブチルアルデヒドに変換する方法も知られている。非特許文献3には、Zn/ベントナイトを触媒に用いたイソブタノールの脱水素反応によって、イソブチルアルデヒドを合成できることが記載されている。また、原料となるイソブタノールはバイオマスから製造することも可能であり(特許文献1)、再生可能原料からのメタクリル酸エステルの合成も期待できる。
【0005】
また、特許文献2、3には、それぞれ脱水素触媒として、銅触媒や銅マグネシア触媒を用いることが提案されている。しかし、これらの触媒は、反応開始前に、水素を用いて還元処理を行う必要があった。水素は、爆発性範囲の広く(4~75体積%)、さらにステンレスなどの金属を脆化させることも知られ、取り扱いが難しいだけでなく、防爆構造、水素含有ガスの濃度管理、異常時に備えた安全機構などが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2011-505490号公報
【文献】特開2010-104938号公報
【文献】特開2016-79143号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Catalysis 195 (2000) 360-375
【文献】Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 152 (2000) 141-155
【文献】Journal of the Serbian Chemical Society 73,997-1009 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、イソブタノールの脱水素反応によってイソブチルアルデヒドを合成する方法については検討例が少なく、またイソブチルアルデヒドの選択率も十分ではない。また、水素による還元処理など煩雑な処理が必要であった。
【0009】
本発明は、水素による還元処理が不要で、イソブタノールから、イソブチルアルデヒドの酸化や二分子化を抑制しつつ、イソブチルアルデヒドやメタクロレインを高い選択率で製造できる脱水素用触媒、及び前記脱水素用触媒を用いた脱水素化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]平均電気陰性度が2.1以上2.8以下である触媒。
[2]平均電気陰性度が2.1以上2.8以下の金属酸化物を含む、[1]に記載の触媒。
[3]前記金属酸化物が、Al、Si、Zn、Ag、Ce、La、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物を含む[2]に記載のある触媒。
[4]前記金属酸化物が、Zn、Al、Fe、Si、Zr、及びTiからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物を含む[2]に記載の触媒。
[5]一種以上のアルカリ金属を含む[1]~[4]のいずれか一項に記載の触媒。
[6]前記触媒1gに対する酸量が0.3mmol/g以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の触媒。
[7]イソブタノールから、イソブチルアルデヒド、及びメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1種の脱水素化合物の製造に用いられる触媒である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の触媒。
[8]前記触媒の前記平均電気陰性度は、2.10以上2.75以下が好ましく、2.10以上2.70以下がより好ましく、2.10以上2.65以下がさらに好ましく、2.10以上2.60以下が殊更好ましく、2.10以上2.55以下が特に好ましく、2.10以上2.50以下が最も好ましい、[1]~[7]のいずれか一項に記載の触媒。
[9]前記触媒が金属酸化物を含み、前記金属酸化物の含有量は、触媒の総質量に対し、80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、85質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に殊更好ましく、97.5質量%以上100質量%以下であることが特に好ましく、99質量%以上100質量%以下であることが最も好ましい、[1]~[8]のいずれか一項に記載の触媒。
[10]前記触媒が金属酸化物、及びアルカリ金属を含み、前記アルカリ金属の含有量は、前記触媒中の金属の総質量に対し、1.0mol%以上9.0mol%以下が好ましく、2.0mol%以上8.5mol%以下がより好ましく、3.0mol%以上8.0mol%以下がさらに好ましく、4.0mol%以上7.5mol%以下が特に好ましく、5.0mol%以上7.0mol%以下が最も好ましい、[1]~[9]のいずれか一項に記載の触媒。
[11]前記触媒の酸量は、0mmol/g以上0.25mmol/g以下が好ましく、0mmol/g以上0.20mmol/g以下がより好ましく、0mmol/g以上0.15mmol/g以下がさらに好ましく、0mmol/g以上0.10mmol/g以下が特に好ましく、0mmol/g以上0.08mmol/g以下が最も好ましい、[1]~[10]のいずれか一項に記載の触媒。
[12]前記触媒の塩基量は、0mmol/g以上4.0mmol/g以下が好ましく、0.001mmol/g以上3.0mmol/g以下がより好ましく、0.01mmol/g以上2.0mmol/g以下がさらに好ましく、0.1mmol/g以上1.0mmol/g以下が特に好ましく、0.15mmol/g以上0.5mmol/g以下が最も好ましい、[1]~[11]のいずれか一項に記載の触媒。
[13]前記触媒のBET比表面積は、3m/g以上230m/g以下が好ましく、5m/g以上200m/g以下がより好ましく、10m/g以上180m/g以下がさらに好ましく、30m/g以上170m/g以下が特に好ましい、[1]~[12]のいずれか一項に記載の触媒。
【0011】
[14]金属酸化物を焼成することを含む、[1]~[13]のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
[15]焼成温度が200℃以上1000℃以下であることが好ましく、250℃以上950℃以下であることがより好ましく、300℃以上900℃以下であることがさらに好ましく、350℃以上850℃以下であることが殊更好ましく、400℃以上800℃以下であることが特に好ましく、450℃以上750℃以下であることが最も好ましい、[14]に記載の触媒の製造方法。
【0012】
[16]イソブタノールから脱水素化合物を製造する方法であって、
[1]~[13]のいずれか一項に記載の触媒を用いて、イソブタノールから、イソブチルアルデヒド、及びメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1種の脱水素化合物を製造することを含む、脱水素化合物の製造方法。
[17]前記脱水素化合物を製造することが、液相又は気相で行われる、[16]に記載の脱水素化合物の製造方法。
[18]前記脱水素化合物を製造することが気相で行われ、
温度が108℃以上600℃以下、圧力が0.05MPa以上1MPa以下でイソブタノールを含む原料ガスを気化させることを含む、[16]又は[17]に記載の脱水素化合物の製造方法。
[19]前記原料ガス中のイソブタノール濃度は、原料ガスの総体積に対して、0.1体積%以上100体積%以下が好ましく、1体積%以上50体積%以下がより好ましく、10体積%以上30体積%以下がより好ましい、[17]に記載の脱水素化合物の製造方法。
[20]前記原料ガスが水蒸気を含み、前記原料ガス中の水蒸気の濃度は、原料ガスの総体積に対して、2.5体積%以上80.0体積%以下が好ましく、5.0体積%以上75.0体積%以下がより好ましく、10.0体積%以上70.0体積%以下がさらに好ましく、15.0体積%以上65.0体積%以下が特に好ましく、20.0体積%以上60.0体積%以下が最も好ましい、[18]又は[19]に記載の脱水素化合物の製造方法。
[21]前記脱水素化合物を製造することにおいて、反応温度は、320℃以上600℃以下が好ましく、340℃以上580℃以下がより好ましく、360℃以上560℃以下がさらに好ましく、380℃以上540℃以下が特に好ましい、[16]~[20]のいずれか一項に記載の脱水素化合物の製造方法。
[22]反応器に供給したイソブタノールの送液量(単位:g/h)÷反応管に充填した触媒の質量(単位:g)で算出されるW/Fは、0.30以上8.0以下が好ましく、0.50以上4.5以下がより好ましく、0.6以上4.5以下がさらに好ましく、0.65以上2.0以下が特に好ましく、0.68以上1.0以下が最も好ましい、[16]~[21]のいずれか一項に記載の脱水素化合物の製造方法。
【0013】
[23][16]~[22]のいずれか一項に記載の脱水素化合物の製造方法によって得られたイソブチルアルデヒド、及びメタクロレインからなる群から選択される少なくとも1種からメタクリル酸を製造することを含む、メタクリル酸の製造方法。
[24]前記メタクリル酸を製造することが気相で行われる、[23]に記載のメタクリル酸の製造方法。
【0014】
[25][23]に記載のメタクリル酸の製造方法によってメタクリル酸を製造し、得られたメタクリル酸と炭素数1~20のアルコールからメタクリル酸エステルを製造することを含む、メタクリル酸エステルの製造方法。
[26]前記炭素数1~20のアルコールが、脂肪族アルコール、及び芳香族アルコールからなる群から選択される少なくとも1種である、[25]に記載のメタクリル酸エステルの製造方法。
[27]前記炭素数1~20のアルコールが、脂肪族アルコールであり、
前記脂肪族アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、及びイコサノールから選択される少なくとも一種である、[26]に記載のメタクリル酸エステルの製造方法。
[28]前記メタクリル酸エステルを製造することが、触媒の存在下において行われ、前記触媒が硫酸又はイオン交換樹脂である、[25]~[27]のいずれか一項に記載のメタクリル酸エステルの製造方法。
[29]前記触媒がイオン交換樹脂であり、メタクリル酸及び炭素数1~20のアルコールの通液量が、イオン交換樹脂量に対する質量比で、0.10倍以上10.0倍以下が好ましく、0.20倍以上5.0倍以下がより好ましい、[28]に記載のメタクリル酸エステルの製造方法。
[30]前記メタクリル酸エステルを製造することにおいて、反応温度が40℃以上130℃以下である、[25]~[29]のいずれか一項に記載のメタクリル酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水素による還元処理が不要で、イソブタノールから、イソブチルアルデヒドの酸化や二分子化を抑制しつつ、イソブチルアルデヒドやメタクロレインを高い選択率で製造できる脱水素用触媒、及び前記脱水素用触媒を用いた脱水素化合物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1~3のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図2】実施例5~7のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図3】実施例8~10のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図4】実施例11~13のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図5】実施例14~16のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図6】実施例8、及び17~19のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図7】実施例20~24のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図8A】実施例25~31、及び比較例1のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図8B】実施例25~31、及び比較例1のイソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と平均電気陰性度を示したグラフである。
図8C】実施例25~31、及び比較例1のイソブタノール(iBuOH)の転化率とイソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率を示したグラフである。
図9】実施例33~36のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図10】実施例37~40のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図11】実施例25、41、及び42のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図12】実施例1、43、及び44のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図13】実施例3、13、及び45のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図14】実施例46~50のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図15】実施例51~53、及び28のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図16】実施例5、54~56、及び8のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図17】実施例57、及び2のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図18】実施例58、22、及び59のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図19】実施例61~63のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図20】実施例53、及び64のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図21】実施例52、及び65~67のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図22】実施例67~71、52、及び79のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図23】実施例72~76のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図24】実施例77、74、及び69のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
図25】実施例75、及び78のイソブタノール(iBuOH)の転化率、イソブチルアルデヒド(iBAld)及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
(触媒)
第1実施形態の触媒(以下、「触媒(A)とも記す。」)は、イソブタノール(イソブタノール)の脱水素反応によってイソブチルアルデヒド(イソブチルアルデヒド)及び/またはメタクロレインを製造することができる触媒であり、水素による還元が不要な触媒である。
【0018】
触媒(A)は、平均電気陰性度が2.10以上2.80以下である。触媒の平均電気陰性度は、2.10以上2.75以下が好ましく、2.10以上2.70以下がより好ましく、2.10以上2.65以下がさらに好ましく、2.10以上2.60以下が殊更好ましく、2.10以上2.55以下が特に好ましく、2.10以上2.50以下が最も好ましい。平均電気陰性度が前記範囲内にある場合、イソブタノールの脱水反応を抑制しつつ、生成したイソブチルアルデヒドの2量化等も抑制し、効率的にイソブチルアルデヒドを製造する触媒が得られる。本発明において、化合物Pの平均電気陰性度は、以下のサンダーソンの式より定義される。
平均電気陰性度=(S ・S ・S 1/(p+q+r)
:元素Pのポーリングの電気陰性度
:元素Qのポーリングの電気陰性度
:元素Rのポーリングの電気陰性度
:元素Pの元素数
:元素Qの元素数
:元素Rの元素数
【0019】
触媒(A)の構成元素としては、イソブチルアルデヒド選択率を上げる観点から、Al、Si、Zn、Ti、Ag、Ce、La、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含む触媒が好ましく、Al、Zn、Ti、Ag、Ce、La、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含む触媒がより好ましく、Al、Zn、Ti、Ag、Ce、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含む触媒がさらに好ましく、Al、Zn、Ag、Ce、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含む触媒が殊更好ましく、Al、Zn、Ag、及びMgからからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含む触媒が特に好ましく、Al、Zn、及びAgからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含む触媒が最も好ましい。なお、前記金属は1種使用してもよいし、2種以上使用してもよい。
また、前記触媒に含まれる全金属酸化物の質量の和に対する、前記触媒に含まれる前記金属酸化物の含有量は、イソブチルアルデヒド選択率の向上の観点から、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に殊更好ましく、97.5質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以上であることが最も好ましい。触媒(A)を用いることで、水素による還元が不要で、イソブタノールから、脱水反応、及びイソブチルアルデヒドの酸化や二量化を抑制しつつ、イソブチルアルデヒドやメタクロレインを高い選択率で製造することができる。
【0020】
触媒(A)としては、Al、Si、Zn、Ag、Ce、La、及びMgからなる群から選ばれる一種以上の金属酸化物を含有させることが可能であれば特に限定されず、公知の方法を利用できる。例えば、共沈法、沈着法、含浸法、混練法、又はこれらを併用する方法によって、触媒(A)を容易に製造できる。触媒(A)の原料としては、特に限定されず、例えば、水酸化物、硝酸塩、酢酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。
触媒(A)は、使用前に焼成してもよい。イソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインの選択率向上の観点から、焼成温度は200℃以上1000℃以下であることが好ましく、250℃以上950℃以下であることがより好ましく、300℃以上900℃以下であることがさらに好ましく、350℃以上850℃以下であることが殊更好ましく、400℃以上800℃以下であることが特に好ましく、450℃以上750℃以下であることが最も好ましい。焼成を行う際、触媒中の硫酸イオンや酢酸イオン等を除去する観点から、空気もしくは酸素下が好ましい。焼成中の触媒の発熱を押さえるため、空気もしくは酸素を不活性ガスで希釈してもよい。不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、及びラドン等が挙げられる。
【0021】
[第2実施形態]
(触媒)
第2実施形態の触媒(以下、「触媒(B)」とも記す。)は、イソブタノール(イソブタノール)の脱水素反応によってイソブチルアルデヒド(イソブチルアルデヒド)及び/又はメタクロレインを製造するための触媒であり、水素による還元が不要な触媒である。
【0022】
触媒(B)は、平均電気陰性度が2.10以上2.80以下である。
触媒(B)は、Al、Si、Fe、Zr、及びTiからなる群から選ばれる一種以上の金属の酸化物と、一種以上のアルカリ金属を含む触媒である。触媒(B)を用いることで、水素による還元が不要で、イソブタノールから、脱水反応、及びイソブチルアルデヒドの酸化や二量化を抑制しつつ、イソブチルアルデヒドやメタクロレインを高い選択率で製造することができる。
アルカリ金属としては、Na、K、Rb、及びCs等が挙げられる。
【0023】
触媒(B)中のアルカリ金属の含有量の下限については、触媒中の金属原子の総量に対して、1.0mol%以上が好ましく、2.0mol%以上がより好ましく、3.0mol%以上がさらに好ましく、4.0mol%以上が特に好ましく、5.0mol%以上が最も好ましい。アルカリ金属の含有量が前記下限値以上であれば、脱水反応を抑制することができる。また、触媒(B)中のアルカリ金属の含有量の上限については、触媒中金属原子の総量に対して、9.0mol%以下が好ましく、8.5mol%以下がより好ましく、8.0mol%以下がさらに好ましく、7.5mol%以下が特に好ましく、7.0mol%以下が最も好ましい。アルカリ金属の含有量が前記上限値以下であれば、イソブチルアルデヒドの酸化や二量化を抑制することができる。
触媒が金属酸化物、及びアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属は、金属酸化物に担持されていることが好ましい。
[アルカリ金属の質量]/[金属酸化物の質量]で表される質量比は、1~10が好ましく、2~9がより好ましく、2.3~8がさらに好ましい。
【0024】
触媒(B)の酸量は、イソブチルアルデヒドやメタクロレインの選択率が向上する点から、0.25mmol/g以下が好ましく、0.20mmol/g以下がより好ましく、0.15mmol/g以下がさらに好ましく、0.10mmol/g以下が特に好ましく、0.08mmol/g以下が最も好ましい。なお、酸量は、プローブ分子としてNHを用いた昇温脱離法(TPD)によって測定される。
また、脱水素用触媒(2)の塩基量としては、イソブチルアルデヒドやメタクロレインの選択率が向上する点から、4.0mmol/g以下が好ましく、3.0mmol/g以下がより好ましく、2.0mmol/g以下がさらに好ましく、1.0mmol/g以下が特に好ましく、0.5mmol/g以下が最も好ましい。なお、塩基量は、プローブ分子としてCOを用いた昇温脱離法(TPD)によって測定される。
【0025】
触媒(B)の酸量を低下させる方法としては、例えば、金属酸化物にアルカリ金属を担持させる方法が挙げられる。アルカリ金属の担持量を増やすことにより、酸量は低下する傾向にある。
また、触媒(B)の塩基量を低下させる方法としては、例えば、金属酸化物にアルカリ金属を担持する際に、アルカリ金属の担持量を減らす方法が挙げられる。アルカリ金属の担持量を減らすことで塩基量が低下する傾向にある。なお、アルカリ金属は1種使用してもよいし2種以上使用してもよい。
【0026】
触媒(B)の製造方法としては、Al、Si、Fe、Zr、及びTiからなる群から選ばれる一種以上の金属を含む金属酸化物にアルカリ金属から選ばれる少なくとも1種以上の金属を含有させることが可能であれば特に限定されず、公知の方法を利用できる。例えば、共沈法、沈着法、含浸法、混練法、又はこれらを併用する方法によって、触媒(B)を容易に製造できる。触媒(B)の原料としては、特に限定されず、例えば、水酸化物、硝酸塩、酢酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。
触媒(B)は、使用前に焼成してもよい。イソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインの選択率向上の観点から、焼成温度は200℃以上1000℃以下であることが好ましく、250℃以上950℃以下であることがより好ましく、300℃以上900℃以下であることがさらに好ましく、350℃以上850℃以下であることが殊更好ましく、400℃以上800℃以下であることが特に好ましく、450℃以上750℃以下であることが最も好ましい。焼成を行う際、触媒中の硫酸イオンや酢酸イオン等を除去する観点から、空気もしくは酸素下が好ましい。焼成中の触媒の発熱を押さえるため、空気もしくは酸素を不活性ガスで希釈してもよい。不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、及びラドン等が挙げられる。
【0027】
(触媒の形状)
触媒(A)、及び(B)は、必要に応じて成形してもよい。例えば、気相固定床反応の場合は、反応器内の圧力損失やガスの拡散を考慮して触媒(A)、及び(B)の形状を決定することが好ましい。さらに、気相流動床反応及び液相反応のいずれにおいても、反応条件や物質移動を考慮し、触媒(A)、及び(B)の形状を決定することが好ましい。
【0028】
触媒(A)、及び(B)を成形する方法としては、例えば、打錠成形機、押出成形機、及び転動造粒機等の粉末用成形機を用いる方法が挙げられる。
触媒(A)、及び(B)を成形する場合の形状としては、球状、リング状、円柱状、及び星型状等の任意の形状を採用することができる。
【0029】
なお、成形した触媒(A)、及び(B)をすり潰して粉末として用いてもよい。必要に応じて、成形の際に触媒(A)、及び(B)に添加物を混合してもよい。
【0030】
(イソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインの製造方法)
第3実施形態のイソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインの製造方法は、イソブタノールを脱水素反応させてイソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインを製造する方法であって、触媒(A)、及び(B)のいずれか一方、または双方の存在下、イソブタノールを脱水素反応させてイソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインを製造する。第3実施形態のイソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインの製造方法は、目的物がイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの両方であってもよく、イソブチルアルデヒドのみであってもよく、メタクロレインのみであってもよい。なかでも、第3実施形態のイソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインの製造方法は、反応開始後の定常運転時において合計選択率が5%以上でイソブチルアルデヒド及びメタクロレインが製造される方法であることが好ましく、合計選択率が10%以上でイソブチルアルデヒド及びメタクロレインが製造される方法であることがさらに好ましい。また、第6実施形態の脱水素化合物の製造方法ではイソブチレンの生成は少ない方が好ましいために、第6実施形態の脱水素化合物の製造方法における定常運転時のイソブチレンの選択率は60%以下であることが好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
出発原料として使用するイソブタノールとしては、特に限定されず、環境保護の点から、バイオマス由来のイソブタノールが好ましい。出発原料のイソブタノールとして、化石由来のイソブタノールとバイオマス由来のイソブタノールとを混合して用いることもできる。
【0032】
「バイオマス由来のイソブタノール」とは、バイオマスの発酵性糖を用い、その発酵プロセスを経て得られた有機化合物から精製したイソブタノール、又はバイオマスの触媒化学変換、熱化学変換のいずれか1つ以上含むプロセスによって得られるイソブタノールである。バイオマスは、資源作物に由来するものと、廃棄物に由来するものに大きく分けられる。資源作物に由来するバイオマスとしては、例えば、食用作物、木材、及び草花等が挙げられ、それらの作物の未利用部分も使用できる。廃棄物に由来するバイオマスとしては、例えば、食品廃棄物、及び下水等の汚泥、家畜糞尿、及び廃紙等が挙げられる。
【0033】
イソブタノールの脱水素反応は、液相で行ってもよく、気相で行ってもよい。気相で反応を行う場合は、固定床、及び流動床等の形式を採用できる。以下、気相で反応を行う場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
例えば、蒸発器で原料を蒸発させることで、原料ガスとして反応器に供給できる。蒸発器としては、特に限定されず、例えば、ジャケット型、自然循環式水平管型、自然循環式浸管型、自然循環式垂直短管型、垂直長管上昇膜型、水平管下降膜型、強制循環式水平管型、強制循環式垂直管型、及びコイル型等が挙げられる。また、単に原料供給配管に加熱用コイルを巻き付け、原料供給配管内を移動する原料を反応器内に入る前に原料供給配管内で蒸発させて、気体状態で反応器内へ供給する方法も可能である。希釈ガス等の原料以外の成分を蒸発させて反応器内へ供給する場合も同様に、蒸発器は特に限定されない。
原料を気化させる際の条件は、特に限定されず、例えば、温度は108℃以上600℃以下、圧力としては絶対圧として0.05MPa以上1MPa以下とすることができる。
【0035】
原料ガスにおいては、イソブタノールを希釈ガスで希釈することによってイソブタノール濃度を調整できる。なお、原料ガスは、イソブタノールのみからなるガスであってもよい。
【0036】
希釈ガスとしては、イソブタノールの脱水素反応に影響を及ぼさないものであればよく、例えば、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、ラドン、アルゴン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、五酸化二窒素、及び水蒸気等が挙げられる。副反応が促進されない範囲であれば、水素を希釈ガスとして使用してもよい。原料ガスに含まれる希釈ガスは、1種でもよく、2種以上でもよい。原料ガス中には、水分が含まれていてもよい。
【0037】
原料ガス中のイソブタノール濃度の下限については、特に限定されないが、原料ガスの総体積に対して、0.1体積%以上が好ましい。なお、上限は特になく、100体積%以下である。
【0038】
反応器に水蒸気を供給する場合、原料ガス中の水蒸気濃度の下限については、原料ガスの総体積に対して、2.5体積%以上が好ましく、5.0体積%以上がより好ましく、10.0体積%以上がさらに好ましく、15.0体積%以上が特に好ましく、20.0体積%以上が最も好ましい。原料ガス中の水蒸気濃度の上限については、80.0体積%以下が好ましく、75.0体積%以下がより好ましく、70.0体積%以下がさらに好ましく、65.0体積%以下が特に好ましく、60.0体積%以下が最も好ましい。
【0039】
イソブタノールの脱水素反応の反応温度(反応中の触媒層における温度)の下限については、320℃以上が好ましく、340℃以上がより好ましく、360℃以上がさらに好ましく、380℃以上が特に好ましい。反応温度の上限については、600℃以下が好ましく、580℃以下がより好ましく、560℃以下がさらに好ましく、540℃以下が殊更好ましく、520℃以下が特に好ましく、500℃以下が最も好ましい。反応温度が適度に高ければ、イソブチルアルデヒドからメタクロレインへの逐次脱水素反応が促進される。また触媒量を増量させる必要性や原料ガスの供給速度を低下させる必要性が少なくなり、コストや生産性の点からも有利である。
【0040】
反応温度は、反応が定常状態になった後に確認できる反応器内の触媒層の温度のうち、最も低い温度とする。したがって、触媒層に温度分布がある場合は、測定点を増やしたり、触媒充填方向に連続的に温度を測定したりすることが好ましい。反応温度の制御方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0041】
イソブタノールの脱水素反応における反応圧力は、特に限定されないが、絶対圧として、0.050MPa以上が好ましい。
反応圧力の上限については、特に限定されないが、10.0MPa以下が好ましい。
反応圧力とは、反応器の入口の圧力に対して、圧力損失の影響を無視できる位置に設置した圧力センサーで測定される値である。
【0042】
[イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインからメタクリル酸の製造方法]
本発明のメタクリル酸の製造方法は、前記したイソブチルアルデヒドの製造方法によって製造したイソブチルアルデヒドを用いてメタクリル酸を製造する方法であり、イソブチルアルデヒドから高い選択率でメタクリル酸を製造できる。
【0043】
イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインからメタクリル酸の製造で使用する触媒としては、公知の触媒を利用でき、モリブデン及びリンからなるヘテロポリ酸やリン酸鉄を含有する触媒などが挙げられる。
【0044】
メタクリル酸を製造する反応器には、固定床で行うことができる。第二段酸化反応の触媒層は、特に限定されず、第二段酸化反応用の触媒のみの無希釈層でも、さらに不活性担体を含んだ希釈層でもよい。また、第二段酸化反応の触媒層は、単一層でもよく、複数の層からなる混合層でもよい。
【0045】
イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインからメタクリル酸の製造する反応で使用する分子状酸素源としては、空気を用いることが経済的であるが、必要に応じて純酸素で富化した空気等を使用することもできる。
【0046】
イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインからメタクリル酸の製造する反応の反応ガスは、イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインと分子状酸素以外に、水(水蒸気)を加えても良い。
【0047】
イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインからメタクリル酸の製造する反応の反応ガスは低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよいが、その量はできるだけ少ないことが好ましい。また、イソブチルアルデヒド及び/またはメタクロレインからメタクリル酸の製造する反応の反応ガスは窒素、及び炭酸ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
【0048】
[メタクリル酸エステルの製造方法]
本発明のメタクリル酸エステルの製造方法は、前記したメタクリル酸の製造方法によって製造したメタクリル酸を用いてメタクリル酸エステルを製造する方法である。
本発明のメタクリル酸エステルの製造方法は、前記したメタクリル酸の製造方法によってメタクリル酸を製造する工程と、メタクリル酸を炭素数1~20のアルコールとエステル化反応させることによりメタクリル酸エステルを製造する工程と、を含む。該方法によれば、イソブチルアルデヒド及び/又はメタクロレインから高い選択率でメタクリル酸エステルを製造できる。
【0049】
例えば、前記した製造方法によって製造されたメタクリル酸を、抽出、蒸留操作等によって回収し、酸触媒存在下、メタノールとエステル化反応させる。
炭素数1~20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、及びイコサノール等の脂肪族アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、等が挙げられる。
エステル化反応には、触媒を用いることが好ましい。用いる触媒としては、酸触媒であることが好ましく、なかでも、硫酸やイオン交換樹脂を使用できる。イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、例えば、ダイヤイオン(登録商標)、PK216、RCP12H(三菱化学社製)、レバチット(登録商標)、K2431(バイエル社製)、アンバーリスト(登録商標)15WET(ロームアンドハースジャパン社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
エステル化反応における反応流体の流れ方向は、鉛直上向き、鉛直下向きのどちらでもよく、適宜選択できる。エステル化反応の酸触媒として用いるイオン交換樹脂の膨潤が大きい場合は、反応流体の流れ方向は鉛直上向きが好ましい。反応流体が不均一相を形成する場合は、反応流体の流れ方向は鉛直下向きが好ましい。
【0051】
固定床型反応器にイオン交換樹脂を充填してエステル化反応を行う場合、メタクリル酸及び炭素数1~20のアルコールを含む原料の通液量は、イオン交換樹脂量に対する質量比で、0.10倍以上が好ましく、0.20倍以上がより好ましい。また、原料の通液量は、イオン交換樹脂量に対する質量比で、10.0倍以下が好ましく、5.0倍以下がより好ましい。
【0052】
酸触媒として強酸性陽イオン交換樹脂を使用する場合、エステル化反応の反応温度は、40℃以上、130℃以下が好ましい。反応温度が高いほど反応速度が速く、効率的に反応が実施できる。反応温度が低いほどイオン交換樹脂の劣化速度が遅くなり、エステル化反応を長時間連続的に実施できる。エステル化反応の反応温度は、化学平衡の観点から、適宜最適な温度に決定できる。
【0053】
原料組成は、化学平衡の観点から、メタクリル酸及び炭素数1~20のアルコールのいずれか一方の濃度を高くし、濃度の低い方の原料の転化率を高くすることによって、回収、精製工程のプロセスを簡略化できる。
【0054】
以上説明したように、本発明では、触媒(A)、及び(B)を用いることで、水素による還元処理が不要で、イソブタノールから、イソブチルアルデヒドの酸化や二分子化を抑制しつつ、イソブチルアルデヒドやメタクロレインを効率良く製造できる。
【実施例
【0055】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0056】
[転化率及び選択率]
原料ガス及び生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。イソブタノールの転化率、及び各生成物の選択率は、各々以下のように定義される。
イソブタノールの転化率(%)=(b/a)×100
W/F=反応器に供給したイソブタノールの送液量(単位:g/h)÷反応管に充填した触媒の質量(単位:g)
イソブチルアルデヒドの選択率(%)=(c/b)×100
メタクロレインの選択率(%)=(d/b)×100
イソ酪酸の選択率(%)=(e/b)×100
C4ブテン類の選択率(%)=(f/b)×100
プロピレンの選択率(%)=(g/b)×100
プロピオンアルデヒドの選択率(%)=(h/b)×100
ケトン類の選択率(%)=〔(i/b)+(j/b)〕×100
環状化合物の選択率(%)=〔(k/b)+(l/b)+(m/b)〕×100
COx(CO、及びCO)の選択率(%)=(n/b)×100
コークの選択率(%)=(o/b)×100
不明物の選択率(%)=100-イソブチルアルデヒドの選択率-メタクロレインの選択率-イソ酪酸の選択率-C4ブテン類の選択率-プロピレンの選択率-プロピオンアルデヒドの選択率-ケトン類の選択率-環状化合物の選択率-COxの選択率-コークの選択率
ただし、前記式中の記号は以下の意味を示す。
a:供給したイソブタノールのモル数/4
b:反応したイソブタノールのモル数/4
c:生成したイソブチルアルデヒドのモル数/4
d:生成したメタクロレインのモル数/4
e:生成したイソ酪酸のモル数/4
f:生成したC4ブテン類(イソブテン、1-ブテン、trans-2-ブテン、及びcis-2-ブテン)のモル数/4
g:生成したプロピレンのモル数/3
h:生成したプロピオンアルデヒドのモル数/3
i:生成した(2-メチル-3-ペンタノンのモル数/6+生成した3-メチル-2-ブタノンのモル数/5
j:生成したケトン類2(3-ペンタノン)のモル数/5
k:生成した環状化合物類1(メチルシクロペンテノン)のモル数/6
l:生成した環状化合物類2(ジメチルシクロペンタノン、及びジメチルシクロペンテノン)のモル数/7
m:生成した環状化合物類3(トリメチルシクロペンタノン、及びトリメチルシクロペンテノン)のモル数/8
n:生成した一酸化炭素と二酸化炭素のモル数/1
o:生成したコークのモル数/1
イソブチルアルデヒド+メタクロレイン収率=(イソブチルアルデヒド選択率+メタクロレイン選択率)×イソブタノールの転化率÷100
【0057】
[触媒の酸量の分析方法]
触媒の酸量は、BELCAT(MicrotracBEL製)で測定を行った。
触媒を測定セルにセットした後、Heを50cc/min流通させながら550℃、1時間前処理を行った。前処理後、セルを100℃まで冷却し、1.0体積%のNHと99.0体積%のHeの混合気体を50cc/分で1時間流通させることで、触媒上にNHを吸着させた。その後、キャリアとしてHeを30cc/min流通させながら安定化させ、10℃/分で800℃まで昇温させ、NHの脱離量を測定し、下記式から酸量を算出した。
触媒上の酸量(mmol/g)=NHの脱離量(mmol)÷測定セルにセットした触媒重量(g)
【0058】
[触媒の塩基量の分析方法]
触媒の塩基量は、BELCATII(MicrotracBEL製)で測定を行った。触媒を測定セルにセットした後、Heを50cc/min流通させながら550℃、1時間前処理を行った。前処理後、セルを50℃まで冷却し、2.9体積%のCOと97.1体積%のArの混合気体を50cc/分で1時間流通させることで、触媒上にCOを吸着させた。その後、キャリアとしてHeを30cc/min流通させながら安定化させ、10℃/分で800℃まで昇温させ、COの脱離量を測定し、下記式から塩基量を算出した。
触媒上の塩基量(mmol/g)=COの脱離量(mmol)÷測定セルにセットした触媒重量(g)
【0059】
[触媒のBET比表面積の分析方法]
測定用のセルにセットした触媒を300℃で一晩真空加熱した後、BELSORP-mini(MicrotracBEL製)で液体窒素温度(77K)における窒素ガスの吸着等温線を測定した。得られた窒素ガスの吸着等温線をBET法により解析し、BET比表面積(m/g)を算出した。
【0060】
[反応評価後のコーク析出量の評価方法]
反応後の触媒を反応管から抜き出し、均一な微粉末になるまで粉砕した。これを測定セルにセットした後、有機微量元素分析装置(ジェイサイエンスラボ製、Micro corder JM10)で炭素析出量を測定し、下記式からコーク析出量を算出した。
コーク析出量(C-mol)=触媒充填量×分析によって得られた炭素濃度(質量%)÷100÷12.01(g/mol)
【0061】
[実施例1]
(脱水素用触媒の調製)
70mLの蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)に硝酸ジルコニル2水和物1.9g(富士フィルム和光純薬(株)製)を加え、完全に溶解するまで撹拌し、A液とした。
600mLの蒸留水に硝酸鉄(III)9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)を45g加え、完全に溶解するまで撹拌し、B液とした。アンモニア水40mL(富士フィルム和光純薬(株)製)に蒸留水60mL加え、C液とした。
A液をB液に加え、30分間撹拌した。次いで、pHが約7に達するまでC液を滴下し、1時間撹拌した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって24時間吸引によって分離し、110℃で一晩乾燥した。得られた固体は乳鉢で粉砕し、500℃、2時間空気中で焼成した。
焼成後、再度乳鉢でさらに細かく粉砕し、複合酸化物であるZrO(7)-FeOxを得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。FeOxの含有率は93mol%であった。
【0062】
3.0mLの蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.60gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。乳鉢に分取した6.0gのZrO(7)-FeOx上に、硝酸カリウム水溶液を均一に滴下し、15分間かき混ぜた。25℃で24時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて40℃で2時間、60℃で2時間乾燥させ、乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。乾燥処理後、乳鉢ですり潰し、焼成炉で550℃、12時間空気中で焼成した。焼成後、再度乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのK(5)/ZrO(6.7)-FeOx(88.3)(触媒(略称):B-1、平均電気陰性度:2.55)を得た。
ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。また、触媒B-1の酸量は0.004mmol/g、塩基量は0.187mmol/gであり、BET比表面積は30m/gであった。
【0063】
(触媒性能評価)
縦型管状反応管内に触媒B-1の1.1gを充填し、触媒層を形成した。反応器においては、触媒層温度が所定温度になるように電気炉を用いて触媒層の温度を調節した。イソブタノール(富士フィルム和光純薬(株)製、比重0.80g/mL)と純水とを、シリンジポンプを用いてそれぞれ1.9mL/時、2.0mL/時の流量に調節し、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。希釈ガスとしての窒素ガスはマスフローメータを用いて流量1140mL(標準状態)/時として当該蒸発器内に供給し、蒸発したイソブタノールと共に反応器内に供給した。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度は11.4体積%、W/Fは0.70h-1であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は450℃であった。反応圧力を測定するための圧力計は蒸発器と反応器入口の間に設置した。なお、反応圧力は大気圧であった。
反応が定常状態に達した後、反応器出口側のガスを採取し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-8A)を用いてプロピレン、イソブチレン、1-ブテン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、CO、及びCOの定量を行った。また、反応器出口側から排出される反応ガスを氷冷したトラップに通して捕集し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-2014、内部標準:イソプロパノール)を用いてイソブタノール、イソブチルアルデヒド、イソ酪酸、2,4-ジメチル―3-ペンタノン、メタクロレイン、プロピオンアルデヒド、2-メチル-3-ペンタノン、3-メチル―2-ブタノン、3-ペンタノン、ジメチルシクロペンタノン、ジメチルシクロペンテノン、メチルシクロペンテノン、トリメチルシクロペンタノン、及びトリメチルシクロペンタンの定量を行った。
【0064】
[実施例2]
170mLの蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)に硝酸アルミニウム4.9g(富士フィルム和光純薬(株)製)を加え、完全に溶解するまで撹拌したものをA液とした以外は、実施例1と同様にして複合酸化物であるAl(7)-FeOxを得た。また、Al(7)-FeOxを用いる以外は、実施例1と同様にしてK(5)/Al(6.7)-FeOx(88.3)(触媒(略称):B-2、平均電気陰性度:2.56)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。また、触媒B-2の酸量は0.000mmol/g、塩基量は0.268mmol/gであった。
触媒B-1の代わりに触媒B-2を1.1g用いた以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評
価した。
【0065】
[実施例3]
γ-アルミナ(Strem Chemicals Inc製)を、前処理として、電気炉を用いて550℃、12時間空気中で焼成した。4.0mLの蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.60gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。乳鉢に分取した4.0gの前処理したアルミナ上に、硝酸カリウム水溶液を均一に滴下し、15分間かき混ぜた。25℃で24時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて40℃で2時間、60℃で2時間乾燥させ、乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。乾燥処理後、乳鉢ですり潰し、焼成炉で550℃、12時間空気中で焼成した。焼成後、再度乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2トン、15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmの粒径のK(5)/Al(触媒(略称):B-3、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒B-3の酸量は0.079mmol/g、塩基量は0.439mmol/gであり、BET比表面積は173m/gであった。Alの含有率は95mol%であった。
触媒B-1の代わりに触媒B-3を1.1g用いた以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。
【0066】
実施例1~3の反応条件及び評価結果を表1に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1及び図1に示すように、平均電気陰性度が2.1~2.8の範囲に入る触媒は、水素還元をすることなく、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインを生成した。
【0069】
[実施例5]
以下に示すこと以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。触媒B-1の代わりに触媒B-3を1.1g用いた。反応器に水を供給せずに、反応器に供給するイソブタノールの流量を1.9mL/時に調節し、反応温度を500℃とした。窒素ガスの流量を3660mL(標準状態)/時とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度は11.4体積%、W/Fは0.70h-1であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0070】
[実施例6]
ZrO(7)-FeOxの代わりに酸化チタン(富士フィルム和光純薬(株)製)6.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法でカリウムを担持させ、K(5)/TiO(触媒(略称):B-4、平均電気陰性度:2.59)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のTi原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒B-4の酸量は0.002mmol/g、塩基量は0.022mmol/gであり、BET比表面積は13m/gであった。TiOの含有率は95mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-4を1.1g用いた以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0071】
[実施例7]
BEA型ゼオライト(東ソー(株)製、SiO/Al=500、HSZ-980HOA)を、前処理として、電気炉を用いて550℃、12時間空気中で焼成した。100mLの蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)6.1gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。これに前処理したBEA型ゼオライトを加え、スターラーで70℃、3時間撹拌し、遠心分離によって固体分を回収した。この操作を3回繰り返した。次いで、回収した固体分を蒸留水で洗浄し、遠心分離で固体分を回収した。この洗浄操作を2回繰り返した。さらに、2-プロパノール(富士フィルム和光純薬(株)製)で固体分を洗浄し、遠心分離で固体分を回収した。
回収した固体分を、電気炉を用いて550℃、12時間空気中で焼成し、ゼオライトにカリウムを担持させたK-BEAを調製した。
【0072】
3.0mLの蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.65gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。乳鉢に分取した5.0gのK-BEA上に、硝酸カリウム水溶液を均一に滴下し、15分間かき混ぜた。25℃で24時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて40℃で2時間、60℃で2時間乾燥させ、乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。この操作を2回繰り返した。次いで、乳鉢ですり潰し、焼成炉で550℃、12時間空気中で焼成した。焼成後、再度乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2トン、15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのK(10)/K-BEA(触媒(略称):B-5、平均電気陰性度:2.78)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のSi原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒B-5の酸量は0.000mmol/g、塩基量は0.005mmol/gであった。
触媒B-3の代わりに触媒B-5を1.1g用いた以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0073】
実施例5~7の反応条件及び評価結果を表2に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2及び図2に示すように、アルミナ、酸化チタン、ゼオライトにアルカリ金属を担持させた触媒B-3~5を用いた実施例5~7でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0076】
[実施例8]
以下に示すこと以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。触媒B-1の代わりに触媒B-3を1.1g用いた。反応器に供給するイソブタノールと水の流量を、それぞれ1.9mL/時、1.0mL/時とし、窒素ガスの流量を2400mL(標準状態)/時とし、反応温度を500℃とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度は11.4体積%、水濃度は29.6体積%、W/Fは0.70h-1であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0077】
[実施例9]
触媒A-1を電気炉で700℃、12時間焼成した後、実施例1と同様の方法でカリウムを担持させ、脱水素用触媒としてK(5)/Al-700℃(触媒(略称):B-6、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。Alの含有率は95mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-6を1.1g用いた以外は、実施例7と同様にして触媒性能を評価した。
【0078】
[実施例10]
γ-アルミナ(Saint-Gobain製、SA63158)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でカリウムを担持させ、脱水素用触媒としてK(5)/SA63158(触媒(略称):B-7、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。γ-アルミナの含有率は95mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-7を1.0g用いた以外は、実施例7と同様にして触媒性能を評価した。
【0079】
実施例8~10の反応条件及び評価結果を表3に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
表3及び図3に示すように、種々のアルミナにアルカリ金属を担持させた触媒B-3、及び6~7を用いた実施例8~10でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0082】
[実施例11]
アルミナ担体として、触媒学会の参照触媒(JRC-ALO5)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でカリウムを担持させ、脱水素用触媒としてK(5)/AL05(触媒(略称):B-8、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。BET比表面積は197m/gであった。JRC-ALO5の含有率は95mol%であった。
触媒B-1の代わりに触媒B-8を1.0g用い、反応温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。
【0083】
[実施例12]
アルミナ担体として、触媒学会の参照触媒(JRC-ALO8)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でカリウムを担持させ、脱水素用触媒としてK(5)/AL08(触媒(略称):B-9、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。BET比表面積は158m/gであった。JRC-ALO8の含有率は95mol%であった。
触媒B-1の代わりに触媒B-9を1.0g用いた以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。
【0084】
[実施例13]
触媒B-9の代わりに触媒B-3を1.1g用いた以外は、実施例11と同様にして触媒性能を評価した。
【0085】
実施例11~13の反応条件及び評価結果を表4に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
表4及び図4に示すように、種々のアルミナにアルカリ金属を担持させた触媒B-3、及び8~9を用いた実施例11~13でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0088】
[実施例14]
γ-アルミナ(Strem Chemicals Inc製)を、前処理として、電気炉を用いて550℃、12時間空気中で焼成した。4.0mLの蒸留水に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.89gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。乳鉢に分取した6.0gの前処理したアルミナ上に、硝酸カリウム水溶液を均一に滴下し、15分間かき混ぜた。25℃で24時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて40℃で2時間、60℃で2時間乾燥させ、乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。乾燥処理後、乳鉢ですり潰し、焼成炉で550℃、12時間空気中で焼成した。焼成後、再度乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2トン、15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのK(7.5)/Al(触媒B-10)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒Lの酸量は0.040mmol/g、塩基量は0.590mmol/g、BET比表面積は159m/gであった。Alの含有率は92.5mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-10を1.1g用い、反応器に供給するイソブタノールの流量を1.9mL/時に調節し、反応温度を500℃とした。窒素ガスの流量を1140mL(標準状態)/時、触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度を28.8体積%、W/Fは0.70h-1とした以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。
【0089】
[実施例15]
γ-アルミナ(Strem Chemicals Inc製)を、前処理として、電気炉を用いて550℃、12時間空気中で焼成した。4.0mLの蒸留水に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.89gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。乳鉢に分取した6.0gの前処理したアルミナ上に、硝酸カリウム水溶液を均一に滴下し、15分間かき混ぜた。25℃で24時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて40℃で2時間、60℃で2時間乾燥させ、乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。乾燥処理後、乳鉢ですり潰し、焼成炉で850℃、12時間空気中で焼成した。焼成後、再度乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2トン、15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのK(7.5)/Al-850℃(触媒B-11)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。Alの含有率は92.5mol%であった。
触媒B-10の代わりに触媒B-11を1.1g用いた以外は、実施例14と同様にして触媒性能を評価した。
【0090】
[実施例16]
カリウム原料として酢酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.58gを使った以外は実施例14と同様の方法で、脱水素用触媒としてK(7.5)/Al(触媒B-12)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒Nの酸量は0.030mmol/g、塩基量は0.650mmol/g、BET比表面積は177m/gであった。Alの含有率は92.5mol%であった。
触媒B-10の代わりに触媒B-12を1.1g用いた以外は、実施例14と同様にして触媒性能を評価した。
【0091】
実施例14~16の反応条件及び評価結果を表5に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
表5及び図5に示すように、触媒調製においてカリウム担持後に焼成したり、カリウム前駆体を変更したりした実施例14~16でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0094】
[実施例17]
アルカリ金属の原料として硝酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.50gを使った以外は、実施例3と同様の方法で脱水素用触媒としてNa(5)/Al(触媒(略称):B-13、平均電気陰性度:2.49)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒B-13の酸量は0.111mmol/g、塩基量は0.373mmol/gであった。BET比表面積は170m/gであった。Alの含有率は95mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-13を1.1g用いた以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。
【0095】
[実施例18]
アルカリ金属の原料として硝酸ルビジウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.89gを使った以外は、実施例3と同様の方法で脱水素用触媒としてRb(5)/Al(触媒(略称):B-14、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒B-14の酸量は0.056mmol/g、塩基量は0.431mmol/gであった。BET比表面積は162m/gであった。Alの含有率は95mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-14を1.1g用いた以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。
【0096】
[実施例19]
アルカリ金属の原料として硝酸セシウム(富士フィルム和光純薬(株)製)1.1gを使った以外は実施例7と同様の方法で、脱水素用触媒としてCs(5)/Al(触媒(略称):B-15、平均電気陰性度:2.48)を調製した。ただし、カッコ内の数字は、触媒中のAl原子量に対する担持金属元素の割合(mol%)を示す。また、触媒B-15の酸量は0.046mmol/g、塩基量は0.437mmol/gであった。BET比表面積は157m/gであった。Alの含有率は95mol%であった。
触媒B-3の代わりに触媒B-15を1.1g用いた以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。
【0097】
実施例8、及び17~19の反応条件及び評価結果を表6に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図6に示す。
【0098】
【表6】
【0099】
表6及び図6に示すように、カリウム以外のアルカリ金属を担持した触媒B-3、及び13~15を用いた実施例8、及び17~19でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0100】
[実施例20]
酸化マグネシウム(富士フィルム和光純薬(株)製、酸量:0.000mmol/g、塩基量:0.030mmol/g、BET比表面積:8.0m/g、平均電気陰性度:2.12)を触媒(略称)A-2として1.1g用いたこと以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0101】
[実施例21]
触媒B-13(酸量:0.111mmol/g、塩基量:0.373mmol/g、BET比表面積:170m/g、平均電気陰性度:2.49)を0.5g用い、反応器に供給するイソブタノールの流量を、0.95mL/時とし、窒素ガスの流量を1800mL(標準状態)/時とした以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0102】
[実施例22]
触媒B-3(酸量:0.079mmol/g、塩基量:0.439mmol/g、BET比表面積:173m/g、平均電気陰性度:2.48)を1.1g用いた以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0103】
[実施例23]
触媒B-14(酸量:0.056mmol/g、塩基量:0.431mmol/g、BET比表面積:162m/g、平均電気陰性度:2.48)を1.1g用いた以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0104】
[実施例24]
触媒B-15(酸量:0.046mmol/g、塩基量:0.437mmol/g、BET比表面積:157m/g、平均電気陰性度:2.48)を1.1g用いた以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。
【0105】
実施例20~24の反応条件及び評価結果を表7A、及び7Bに示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図7に示す。
【0106】
【表7A】
【0107】
【表7B】
【0108】
表7A、表7B、及び図7に示すように、平均電気陰性度が2.1~2.8の範囲内に入る触媒A-2、B-3、及び14~15を用いれば、触媒を水素還元することなく、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0109】
[実施例25]
以下に示すこと以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒A-2(酸量:0.000mmol/g、塩基量:0.030mmol/g、BET比表面積:8.0m/g、平均電気陰性度:2.12)1.1gを充填し、触媒層を形成した。反応管に水を供給せず、イソブタノール(富士フィルム和光純薬(株)製、比重0.80g/mL)の流量を1.9mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を1080mL(標準状態)/時とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度は29.6体積%、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0110】
[実施例26]
酸化セリウム(富士フィルム和光純薬(株)製、酸量:0.004mmol/g、塩基量:0.004mmol/g、BET比表面積:5.0m/g、平均電気陰性度:2.37)を触媒A-3として1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0111】
[実施例27]
触媒B-3(酸量:0.079mmol/g、塩基量:0.439mmol/g、平均電気陰性度:2.48)を1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0112】
[実施例28]
酸化亜鉛(富士フィルム和光純薬(株)製、酸量:0.004mmol/g、塩基量:0.003mmol/g、BET比表面積:7.0m/g、平均電気陰性度:2.38)を触媒A-4として1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0113】
[実施例29]
酸化銀(富士フィルム和光純薬(株)製、平均電気陰性度:2.34)を触媒A-5として1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
[実施例30]
ハイドロタルサイト(富士フィルム和光純薬(株)製、酸量:0.242mmol/g、塩基量:0.172mmol/g、BET比表面積:197m/g、平均電気陰性度:2.49)を触媒A-6として1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
[実施例31]
酸化ランタン(富士フィルム和光純薬(株)製、酸量:0.000mmol/g、塩基量:0.006mmol/g、平均電気陰性度:2.18)を触媒A-7として1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0114】
[比較例1]
酸化ケイ素(富士シリシア(株)製、商品名:キャリアクトQ-10、酸量:0.008mmol/g、平均電気陰性度:2.82)を1.1g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0115】
実施例25~31、比較例1の反応条件及び評価結果を表8A~8Cに示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図8に示す。
【0116】
【表8A】
【0117】
【表8B】
【0118】
【表8C】
【0119】
表8A~8C、及び図8に示すように、平均電気陰性度が2.1~2.8の範囲にある触媒を用いた実施例25~31では、前記の範囲外にある触媒に比べ、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0120】
[実施例33~36]
触媒B-1を用い、反応温度を表9に示すとおりに変更した以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。
【0121】
実施例33~36の反応条件及び評価結果を表9に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図9に示す。
【0122】
【表9】
【0123】
表9及び図9に示すように、触媒B-1を用いた実施例33~36では、いずれの反応温度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0124】
[実施例37~39]
触媒B-3の使用量を表10に示すとおりに変更した以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。
【0125】
[実施例40]
触媒B-3を3.2g用い、イソブタノール及び水の流量をそれぞれ0.55mL/時、0.30mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させ、窒素ガスの流量を720mL(標準状態)/時とし、触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度及び水の濃度は、それぞれ10.9体積%、30.4体積%としたこと以外は、実施例37と同様にして触媒性能を評価した。
【0126】
実施例37~40の反応条件及び評価結果を表10に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図10に示す。
【0127】
【表10】
【0128】
表10及び図10に示すように、触媒B-3を用いた実施例37~40でも、いずれのW/Fの条件でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0129】
[実施例41]
触媒A-2を2.2g用いた以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0130】
[実施例42]
以下に示すこと以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒A-2の3.3gを充填し、触媒層を形成した。反応管に水を供給せず、イソブタノールの流量を0.92mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を540mL(標準状態)/時とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度は29.6体積%であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0131】
実施例25、41、及び42の反応条件及び評価結果を表11に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図11に示す。
【0132】
【表11】
【0133】
表11及び図11に示すように、触媒A-2を用いた実施例25、41、及び42でも、いずれのW/Fの条件でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0134】
[実施例43~44]
反応温度を表12に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。
【0135】
実施例1、43、及び44の反応条件及び評価結果を表12に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図12に示す。
【0136】
【表12】
【0137】
表12及び図12に示すように、触媒B-1を用いた実施例1、43、及び44では、いずれの反応温度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0138】
[実施例45]
反応温度を表13に示すとおりに変更した以外は、実施例3と同様にして触媒性能を評価した。
【0139】
実施例3、13、及び45の反応条件及び評価結果を表13に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図13に示す。
【0140】
【表13】
【0141】
表13及び図13に示すように、触媒Cを用いた実施例3、13、及び45でも、いずれの反応温度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0142】
[実施例46~50]
触媒A-2の代わりに触媒B-10を1.1g用い、反応温度を表14に示すとおりに変更した以外は、実施例25と同様にして触媒性能を評価した。
【0143】
実施例46~50の反応条件及び評価結果を表14A、及び14Bに示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図14に示す。
【0144】
【表14A】
【0145】
【表14B】
【0146】
表14A、及び14B及び図14に示すように、触媒Nを用いた実施例46~50でも、いずれの反応温度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0147】
[実施例51~53]
反応温度を表15に示すとおりに変更した以外は、実施例28と同様にして触媒性能を評価した。
【0148】
実施例28、及び51~53の反応条件及び評価結果を表15に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図15に示す。
【0149】
【表15】
【0150】
表15及び図15に示すように、触媒A-4を用いた実施例28、及び51~53でも、いずれの反応温度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0151】
[実施例54]
以下に示すこと以外は、実施例5と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒B-3の1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、0.50mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量は3000mL(標準状態)/時とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール及び水の濃度はそれぞれ11.4体積%、14.8体積%であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0152】
[実施例55]
以下に示すこと以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒B-3 1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、2.0mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を1140mL(標準状態)/時とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール及び水の濃度は11.4体積%、60.2体積%であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0153】
[実施例56]
以下に示すこと以外は、実施例8と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒B-3 1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、2.6mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を540mL(標準状態)/時とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール及び水の濃度は10.9体積%、76.4体積%であり、反応中の触媒層の温度(反応温度)は500℃であった。
【0154】
実施例5、8、及び54~56の反応条件及び評価結果を表16A、及び16Bに示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図16に示す。
【0155】
【表16A】
【0156】
【表16B】
【0157】
表16、表16B、及び図16に示すように、触媒B-3を用いた実施例5、8、及び54~56では、いずれの水濃度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0158】
[実施例57]
以下に示すこと以外は、実施例2と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒B-2の1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノールの流量をそれぞれ1.9mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を3660mL(標準状態)/時とした。また、反応温度を450℃とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール濃度は11.4体積%であった。
【0159】
実施例2、及び57の反応条件及び評価結果を表17に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図17に示す。
【0160】
【表17】
【0161】
表17及び図17に示すように、触媒B-2を用いた実施例2、及び57でも、いずれの水濃度でもイソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0162】
[実施例58]
γ-アルミナ(Strem Chemicals Inc製)を、前処理として、電気炉を用いて550℃、12時間空気中で焼成した。4.0mLの蒸留水に硝酸カリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)0.30gを溶解させ、硝酸カリウム水溶液を調製した。乳鉢に分取した6.0gの前処理したアルミナ上に、硝酸カリウム水溶液を均一に滴下し、15分間かき混ぜた。25℃で24時間乾燥させた後、真空乾燥機を用いて40℃で2時間、60℃で2時間乾燥させ、乾燥機を用いて110℃で24時間乾燥した。乾燥処理後、乳鉢ですり潰し、焼成炉で550℃、12時間空気中で焼成した。焼成後、再度乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2トン、15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのK(2.5)/Al(触媒(略称):B-16、酸量:0.167mmol/g、塩基量:0.230mmol/g、BET比表面積:183m/g、平均電気陰性度:2.51)を調製した。
触媒B-16(酸量:0.167mmol/g、塩基量:0.230mmol/g、BET比表面積:183m/g)を0.5g用い、イソブタノールを0.89mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を1740mL(標準状態)/時としたこと以外は、実施例5と同様に触媒性能を評価した。
【0163】
[実施例59]
触媒B-10(酸量:0.037mmol/g、塩基量:0.638mmol/g)0.5gを用いた以外は、実施例58と同様にして触媒性能を評価した。
【0164】
実施例22、58、及び59の反応条件及び評価結果を表18に示す。また、各例の触媒によるイソブタノールの転化率、イソブチルアルデヒド及びメタクロレイン(MAL)の選択率と収率を図18に示す。
【0165】
【表18】
【0166】
表18及び図18に示すように、酸、塩基量の異なる種々の触媒を用いた場合でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0167】
[実施例61]
以下に示すこと以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒B-1の1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、0.50mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。窒素ガスの流量を1620mL(標準状態)/時とした。また、反応温度を450℃とした。
触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール及び水の濃度は17.0体積%、23.0体積%であった。
【0168】
[実施例62]
以下に示すこと以外は、実施例1と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒B-1の1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、0.50mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。希釈ガスとして空気及び窒素ガスを用い、それらの流量をそれぞれ900mL(標準状態)/時、780mL(標準状態)/時として蒸発器内に供給し、蒸発したイソブタノールと共に反応器内に供給した。また、反応温度を450℃とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール、水及び酸素の濃度は16.7体積%、22.6体積%、6.8体積%であった。
【0169】
[実施例63]
反応管内に触媒B-1の1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、0.50mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。希釈ガスとして空気を用い、流量を1680mL(標準状態)/時として蒸発器内に供給し、蒸発したイソブタノールと共に反応器内に供給した。また、反応温度を450℃とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール、水及び酸素の濃度は16.8体積%、22.7体積%、12.8体積%であった。
実施例61~63の反応条件及び評価結果を表19に示す。
【0170】
【表19】
【0171】
表19に示すように、触媒B-1を用いた実施例61~63では、原料ガスの希釈ガスとして空気を用いた場合でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0172】
[実施例64]
以下に示すこと以外は、実施例53と同様にして触媒性能を評価した。反応管内に触媒A-4の1.1gを充填し、触媒層を形成した。イソブタノール及び水の流量をそれぞれ1.9mL/時、0.50mL/時とし、150℃に設定した蒸発器内に供給して蒸発させた。希釈ガスとして窒素ガスを用い、それらの流量を480mL(標準状態)/時として蒸発器内に供給し、蒸発したイソブタノールと共に反応器内に供給した。また、反応温度を450℃とした。触媒層に供給した原料ガス中のイソブタノール、水の濃度は29.5体積%、40.0体積%であった。
【0173】
表20に示すように、触媒A-4を用いた実施例53、及び64では、原料ガスの希釈ガスとして水を用いた場合でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0174】
【表20】
【0175】
[実施例65]
テトラエトシキシラン(富士フィルム和光純薬(株)製)5.8gにエタノール(富士フィルム和光純薬(株)製)19.7gと0.1mol/lの塩酸(富士フィルム和光純薬(株)製)を数滴加え、75℃で2時間攪拌しながらテトラエトシキシランを加水分解された。そこに硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)6.5gを加え、1時間攪拌した後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)を数滴加え、75℃で加熱しながら3時間攪拌を続け、ゲルを得た。得たゲルを110℃の乾燥機で12時間乾燥し、次いで500℃で12時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(75)-SiO(25)(触媒(略称):A-8、平均電気陰性度:2.48、酸量:0.094mmol/g、塩基量:0.002mmol/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は金属元素の含有率(mol%)を示す。
触媒A-8 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0176】
[実施例66]
硫酸チタン13.31gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)14.85gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)170gに加え、25℃で溶解された(チタンとアルミナの元素濃度が0.4mol/lとなる様、調製した)。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。
得られた沈殿物を遠心分離機で分離し、回収した。回収した沈殿物に蒸留水を加えスラリー状にし、遠心分離機で分離した。この操作を2回繰り返した。
沈殿物を回収し、乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(75)-TiO(25)(触媒(略称):A-9、平均電気陰性度:2.44、酸量:0.097mmol/g、塩基量:0.000mmol/g、BET比表面積:18m/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は金属元素の含有率(mol%)を示す。
触媒A-9 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0177】
[実施例67]
硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)12.5gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)29.7gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)330gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(75)-Al(25)(触媒(略称):A-10、平均電気陰性度:2.41、酸量:0.04mmol/g、塩基量:0.004mmol/g、BET比表面積:32m/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
触媒A-10 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0178】
【表21】
【0179】
表21に示すように、触媒A-4、及び8~10を用いた実施例52、及び65~67では、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0180】
[実施例68]
硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)28.09gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)7.43gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)250gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(25)-Al(75)(触媒(略称):A-11、平均電気陰性度:2.51、酸量:0.284mmol/g、塩基量:0.119mmol/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
触媒A-11 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0181】
[実施例69]
硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)37.83gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)30.0gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)630gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(40)-Al(60)(触媒(略称):A-12、平均電気陰性度:2.48、酸量:0.131mmol/g、塩基量:0.187mmol/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
触媒A-12 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0182】
[実施例70]
硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)56.74gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)30.0gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)500gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(50)-Al(50)(触媒(略称):A-13、平均電気陰性度:2.48、酸量:0.103mmol/g、塩基量:0.107mmol/g、BET比表面積:53m/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
触媒A-13 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0183】
[実施例71]
硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)12.61gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)20.0gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)250gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(66)-Al(33)(触媒(略称):A-14、平均電気陰性度:2.47、酸量:0.077mmol/g、塩基量:0.046mmol/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
触媒A-14 1.1gを用いた以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0184】
[実施例79]
硝酸マグネシウム・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)20.0gと、硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)14.63gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)300gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが9.0になるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、550℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのMgO(66)-Al(33)(触媒(略称):A-18、平均電気陰性度:2.27、酸量:0.12mmol/g、塩基量:0.13mmol/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
【0185】
【表22A】
【0186】
【表22B】
【0187】
表22A、及び22Bに示すように、触媒A-4、10、11~14、及び18を用いた実施例52、67~71、及び79では、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0188】
[実施例72~76]
触媒及び反応温度を表23A、及び23Bに示すとおりに変更した以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0189】
【表23A】
【0190】
【表23B】
【0191】
表23A、及び23Bに示すように、触媒A-10、及び11~14を用いた実施例72~76では、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0192】
[実施例77]
触媒A-12を使用し、反応温度を300℃としたこと以外は、実施例52と同様にして触媒性能を評価した。
【0193】
【表24】
【0194】
表24に示すように、触媒A-12を用いて、反応温度を300~400℃で反応した実施例69、74、及び77の場合でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【0195】
[実施例78]
硝酸アルミニウム・9水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)56.74gと、硝酸亜鉛・6水和物(富士フィルム和光純薬(株)製)30.0gを蒸留水(富士フィルム和光純薬(株)製)500gに加え、25℃で溶解された。この液を1時間攪拌させた後、アンモニア水(富士フィルム和光純薬(株)製)をpHが8.0にまるまで滴下し、さらに25℃で2時間攪拌した。得られた沈殿物を遠心分離機を用いて分離し、蒸留水で洗浄した。この操作を2回繰り返した。沈殿物を乾燥機で110℃、12時間乾燥した。得た固体を空気中、900℃で8時間焼成した。焼成後、乳鉢ですり潰し、錠剤成形器を用いて2.0トンで15分間プレスしてタブレット状に成形し、篩を用いて粒径300~850μmのZnO(50)-Al(50)(触媒(略称):A-16、平均電気陰性度:2.48、酸量:0.103mmol/g、塩基量:0.107mmol/g)を得た。ただし、カッコ内の数字は各成分の含有率(mol%)を示す。
触媒A-16 1.1gを用いた以外は、実施例75と同様にして触媒性能を評価した。
【0196】
【表25】
【0197】
表25に示すように、触媒A-16を用いて、反応温度を300~400℃で変更した場合でも、イソブチルアルデヒド及びメタクロレインの選択率が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明によれば、水素による還元処理が不要で、イソブタノールから、イソブチルアルデヒドの酸化や二分子化を抑制しつつ、イソブチルアルデヒドやメタクロレインを高い選択率で製造できる脱水素用触媒、及び前記脱水素用触媒を用いた脱水素化合物の製造方法を提供できる。
図1
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