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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10B 43/00 20230101AFI20240306BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240306BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240306BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H10B43/00
H01L29/78 371
H01L29/78 301H
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 618F
C23C16/42
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022526994
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019402
(87)【国際公開番号】W WO2021241449
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020094305
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正紘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 辰郎
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012822(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115330(WO,A1)
【文献】特開2017-168786(JP,A)
【文献】特開2014-175320(JP,A)
【文献】特開2005-197684(JP,A)
【文献】特開2007-287856(JP,A)
【文献】特開平02-213141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 43/00
H01L 21/336
H01L 29/786
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜に隣接して設けられた塩素含有半導体層と、
前記塩素含有半導体層に隣接して設けられた半導体領域と、
を有し、
前記塩素含有半導体層の塩素濃度が1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下であって、
前記絶縁膜および前記半導体領域のそれぞれが塩素フリーである半導体デバイス。
【請求項2】
前記塩素含有半導体層の塩素濃度が3.0×1020atoms/cm以上5.0×1021atoms/cm以下である請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記塩素含有半導体層の厚さが1モノレイヤー以上30Å以下である請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記塩素含有半導体層の厚さが2.5Å以上30Å以下である請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記塩素含有半導体層の厚さが3Å以上20Å以下である請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記塩素含有半導体層の厚さは、前記絶縁膜および前記半導体領域のそれぞれの厚さよりも薄い請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記基板上に絶縁膜が設けられ、
前記絶縁膜上に前記塩素含有半導体層が設けられ、
前記塩素含有半導体層上に前記半導体領域として半導体膜が設けられる請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
前記基板の表面は前記半導体領域を含み、
前記半導体領域上に前記塩素含有半導体層が設けられ、
前記塩素含有半導体層上に前記絶縁膜が設けられる請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、およびシリコン酸窒化膜のうち少なくともいずれかを含む請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記塩素含有半導体層および前記半導体領域における半導体は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、およびシリコンゲルマニウムスズのうち少なくともいずれかを含む請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項11】
基板上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられた塩素含有半導体層と、
前記塩素含有半導体層上に設けられた半導体領域としての半導体膜と、
を有し、
前記塩素含有半導体層の塩素濃度が1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下であって、
前記絶縁膜および前記半導体領域のそれぞれが塩素フリーである半導体デバイス。
【請求項12】
前記絶縁膜は、第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成された第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に形成された第3絶縁膜と、を有し、
前記第1絶縁膜はシリコン酸化膜を含み、前記第2絶縁膜はシリコン窒化膜を含み、前記第3絶縁膜はシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜を含む請求項または11に記載の半導体デバイス。
【請求項13】
前記塩素含有半導体層における半導体は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、およびシリコンゲルマニウムスズのうち少なくともいずれかを含む請求項12に記載の半導体デバイス。
【請求項14】
表面に半導体領域を含む基板の前記半導体領域上に設けられた塩素含有半導体層と、
前記塩素含有半導体層上に設けられた絶縁膜と、
を有し、
前記塩素含有半導体層の塩素濃度が1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下であって、
前記絶縁膜および前記半導体領域のそれぞれが塩素フリーである半導体デバイス。
【請求項15】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜を含む請求項7、8、11または14に記載の半導体デバイス。
【請求項16】
前記塩素含有半導体層および前記半導体領域における半導体は、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、およびシリコンゲルマニウムスズのうち少なくともいずれかを含む請求項15に記載の半導体デバイス。
【請求項17】
前記絶縁膜上に金属含有膜が設けられる請求項または14に記載の半導体デバイス。
【請求項18】
前記金属含有膜は、タングステン膜、ニッケル膜、およびコバルト膜のうち少なくともいずれかを含む請求項17に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスとして、基板上に設けられた絶縁膜上に、シード層を介してシリコン膜が形成された構造を有するものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-175320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、半導体デバイスの特性を向上させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
基板上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜に隣接して設けられた塩素含有半導体層と、
前記塩素含有半導体層に隣接して設けられた半導体領域と、
を有し、
前記塩素含有半導体層の塩素濃度が1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下である半導体デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、半導体デバイスの特性を向上させることができる技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様における半導体デバイスの断面部分拡大図である。
図2図2は、本開示の一態様の変形例における半導体デバイスの断面部分拡大図である。
図3図3(a)は本開示の一態様の実施例1における評価サンプルの断面部分拡大図であり、図3(b)は本開示の一態様の実施例2における評価サンプルの断面部分拡大図である。
図4図4は、本開示の一態様の実施例1における塩素濃度とダングリングボンド密度との関係を示すプロット図である。
図5図5は、本開示の一態様の実施例2における塩素濃度とFET移動度との関係を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について図1を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)半導体デバイスの構造
図1は、半導体デバイスの一つであるメモリデバイス300が備えるSONOS(Silicon-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)構造の断面部分拡大図である。
【0010】
メモリデバイス300は、基板としてのウエハ301を備えている。ウエハ301は、例えば、単結晶シリコン等のシリコン(Si)により構成される。ウエハ301を、Siウエハ、半導体ウエハ、Si基板、半導体基板等とも称する。ウエハ301上には、ブロック層として機能する絶縁膜(第1絶縁膜)としてのシリコン酸化膜(SiO膜)が設けられている。ブロック層としてのSiO膜上には、チャージトラップ層として機能する絶縁膜(第2絶縁膜)としてのシリコン窒化膜(SiN膜)が設けられている。チャージトラップ層としてのSiN膜上には、トンネル層として機能する絶縁膜(第3絶縁膜)としてのSiO膜が設けられている。トンネル層としての絶縁膜は、シリコン酸窒化膜(SiON膜)であってもよい。SiO膜またはSiON膜により構成されるトンネル層を、トンネル酸化膜とも称する。SiO膜、SiN膜、SiON膜は、それぞれ、実質的に塩素(Cl)を含まない膜であること、すなわち、Clフリーな膜であることが好ましい。SiO膜/SiN膜/SiO膜の積層構造を有する膜を、ONO膜とも称する。なお、本明細書では、SiON膜/SiN膜/SiO膜の積層構造を有する膜も、便宜上、ONO膜と称することとする。
【0011】
ONO膜の最表面におけるトンネル層としてのSiO膜上には、塩素含有半導体層として、Clを高濃度に含むCl含有Si層が設けられている。このように、トンネル層(絶縁膜)としてのSiO膜と、Cl含有Si層とは、隣接して設けられている。トンネル層がSiON膜である場合は、SiON膜と、Cl含有Si層とが、隣接して設けられることとなる。
【0012】
Cl含有Si層のCl濃度は、例えば、1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下、好ましくは、3.0×1020atoms/cm以上5.0×1021atoms/cm以下である。
【0013】
Cl含有Si層の厚さは、上述のトンネル層としてのSiO膜、および、後述するチャネル層としてのpoly-Si膜のそれぞれよりも薄いことが好ましい。トンネル層がSiON膜である場合も同様である。Cl含有Si層の厚さは、例えば、1モノレイヤー(以下、ML)以上30Å(3nm)以下、好ましくは2.5Å(0.25nm)以上30Å(3nm)以下、より好ましくは3Å(0.3nm)以上20Å(2nm)以下である。なお、1MLは単分子層または単原子層を意味する。
【0014】
Cl含有Si層の上には、チャネル層として機能する半導体領域として、Clを実質的に含まない、すなわち、Clフリーである多結晶シリコン膜(poly-Si膜)が設けられている。このように、チャネル層(半導体領域)としてのpoly-Si膜と、Cl含有Si層とは、隣接して設けられている。チャネル層としてのpoly-Si膜は、例えばリン(P)や硼素(B)などのドーパントを含まないノンドープpoly-Si膜により構成されている。なお、チャネル層としてのpoly-Si膜は、PやBなどのドーパントを含むドープトpoly-Si膜により構成するようにしてもよい。
【0015】
チャネル層としてのpoly-Si膜の、ウエハ301の主面内方向(延面方向)における両端には、ソース電極およびドレイン電極が、poly-Si膜を延面方向から挟むように設けられている。ソース電極およびドレイン電極のそれぞれは、例えば、PやBなどのドーパントがドープされたドープトpoly-Si膜等により構成されている。
【0016】
(2)半導体デバイスの製造方法
次に、メモリデバイス300を製造する方法の一例について説明する。
【0017】
(ONO膜形成)
ウエハ301上に、例えばCVD法によって、ブロック層としてのSiO膜と、チャージトラップ層としてのSiN膜と、トンネル層としてのSiO膜と、をこの順に形成する。トンネル層としてSiON膜を形成してもよいことは上述の通りである。
【0018】
ブロック層としてのSiO膜、および、トンネル層としてのSiO膜を形成する際は、それぞれ、加熱されたウエハ301の表面に対して、処理ガスとして、例えば、Si含有ガスと酸化ガスとを供給する。チャージトラップ層としてのSiN膜を形成する際は、加熱されたウエハ301の表面に対して、処理ガスとして、例えば、Si含有ガスと窒化ガスとを供給する。トンネル層としてのSiON膜を形成する際は、加熱されたウエハ301の表面に対して、例えば、Si含有ガスと酸化ガスと窒化ガスとを供給する。
【0019】
Si含有ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスや、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス等のアミノシラン系ガスや、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス、ジシラン(Si、略称:DS)ガス、トリシラン(Si、略称:TS)ガス等の水素化ケイ素ガスを用いることができる。
【0020】
酸化ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、二酸化炭素(COガス)等の酸素(O)含有ガスを用いることができる。
【0021】
窒化ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒素(N)及び水素(H)含有ガスである窒化水素ガスを用いることができる。
【0022】
SiO膜を形成する工程における処理条件としては、
Si含有ガス供給流量:0.1~5slm
酸化ガス供給流量:0.1~10slm
各ガス供給時間:1~300分
処理温度:350~700℃、好ましくは350~650℃
処理圧力:133~4000Pa、好ましくは667~2666Pa
が例示される。
【0023】
なお、処理温度とは、ウエハ301に対して処理が行われる際のウエハ301の温度のことであり、処理圧力とは、ウエハ301に対して処理が行われる際のウエハ301が存在する空間、すなわち、ウエハ301に対して処理が行われる処理室の内部の圧力のことである。
【0024】
SiN膜を形成する工程における処理条件としては、
Si含有ガス供給流量:0.1~5slm
窒化ガス供給流量:0.1~10slm
が例示される。他の処理条件は、SiO膜を形成する工程における処理条件と同様とすることができる。
【0025】
SiON膜を形成する工程における処理条件としては、
Si含有ガス供給流量:0.1~5slm
酸化ガス供給流量:0.1~10slm
窒化ガス供給流量:0.1~10slm
が例示される。他の処理条件は、SiO膜を形成する工程における処理条件と同様とすることができる。
【0026】
(Cl含有Si層形成)
ウエハ301上にONO膜を形成した後、ONO膜の最上層を構成するトンネル層としてのSiO膜上に、例えばCVD法によって、Clを高濃度に含むCl含有Si層を形成する。
【0027】
Cl含有Si層を形成する際は、加熱されたウエハ301に対して、処理ガスとして、例えば、上述のクロロシラン系ガスを供給する。また、処理ガスとして、上述のクロロシラン系ガスに上述の水素化ケイ素ガスを添加して供給することもできる。
【0028】
Cl含有Si層を形成する工程における処理条件としては、
クロロシラン系ガス供給流量:0.1~1slm
水素化ケイ素ガス供給流量:0~1slm
各ガス供給時間:0.5~2分
処理温度:350~450℃、好ましくは350~400℃
処理圧力:667~1333Pa
が例示される。
【0029】
また、Cl含有Si層は、以下に示す処理シーケンスのように、ウエハ301に対してクロロシラン系ガスを供給する工程と、ウエハ301に対して不活性ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより形成してもよい。不活性ガスとしては、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0030】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス)×n
【0031】
また、Cl含有Si層は、以下に示す処理シーケンスのように、ウエハ301に対してクロロシラン系ガスを供給する工程と、ウエハ301に対して不活性ガスを供給する工程と、ウエハ301に対して水素化ケイ素ガスを供給する工程と、ウエハ301に対して不活性ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより形成することもできる。
【0032】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス→水素化ケイ素ガス→不活性ガス)×n
【0033】
いずれの場合においても、不活性ガスを供給する工程における処理条件としては、
不活性ガス供給流量:0.5~20slm
不活性ガス供給時間:10~30秒
処理温度:350~450℃、好ましくは350~400℃
処理圧力:1~30Pa
が例示される。
【0034】
クロロシラン系ガスを供給する工程、および、水素化ケイ素ガスを供給する工程における処理条件は、いずれも、Cl含有Si層を形成する工程で示した上述の処理条件と同様とすることができる。
【0035】
(チャネル層、ソース電極およびドレイン電極形成)
ONO膜上にCl含有Si層を形成した後、Cl含有Si層上に、例えばCVD法によって、チャネル層としてpoly-Si膜を形成する。
【0036】
poly-Si膜を形成する際は、加熱されたウエハ301に対して、処理ガスとして、例えば、Clフリーである上述の水素化ケイ素ガスを供給する。
【0037】
チャネル層を形成する工程における処理条件としては、
水素化ケイ素ガス供給流量:0.1~5slm
水素化ケイ素ガス供給時間:1~300分
が例示される。他の処理条件は、SiO膜を形成する工程における処理条件と同様とすることができる。
【0038】
チャネル層を形成した後、Cl含有Si層上であって、チャネル層としてのpoly-Si膜の延面方向の両端に、ソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成する。
【0039】
これら一連の処理により、SONOS構造を備えるメモリデバイス300を製造することが可能となる。
【0040】
(3)本態様による効果
【0041】
(a)トンネル層としてのSiO膜と、チャネル層としてのpoly-Si膜と、の界面(以下、Si/SiO界面)に高濃度Cl含有Si層が形成されることで、Si/SiO界面におけるダングリングボンドを、Clによって終端させることが可能となる。また、このCl含有Si層内におけるダングリングボンドを、Clによって終端させることも可能となる。これにより、Si/SiO界面における界面準位密度を低減させることができ、デバイスの電気特性を向上させることが可能となる。
【0042】
(b)Cl含有Si層のCl濃度を、1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下とすることで、上述の効果を適正に高めることが可能となる。また、Cl含有Si層のCl濃度を、3.0×1020atoms/cm以上5.0×1021atoms/cm以下とすることで、上述の効果をより適正に高めることが可能となる。
【0043】
Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1020atoms/cm未満とすると、Si/SiO界面におけるダングリングボンドを十分にClで終端させることができず、界面準位密度を十分に低減させることができないことがある。結果として、デバイスの電気特性を向上させることができないことがある。Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1020atoms/cm以上とすることで、Si/SiO界面におけるダングリングボンドを十分にClで終端させ、界面準位密度を十分に低減させることができ、デバイスの電気特性を向上させることが可能となる。Cl含有Si層のCl濃度を3.0×1020atoms/cm以上とすることで、この効果をより高めることが可能となる。
【0044】
Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1022atoms/cmよりも高くすると、Si/SiO界面におけるダングリングボンド密度に対してCl濃度が過剰となり、Clがキャリア散乱原因となり、デバイスの電気特性を劣化させてしまうことがある。Cl含有Si層のCl濃度を1.0×1022atoms/cm以下とすることで、Si/SiO界面におけるダングリングボンド密度に対してCl濃度が過剰となることを抑制することができ、Clがキャリア散乱原因となることを抑制し、デバイスの電気特性の劣化を抑制することが可能となる。Cl含有Si層のCl濃度を5.0×1021atoms/cm以下とすることで、この効果をより高めることが可能となる。
【0045】
(c)Cl含有Si層の厚さを1ML以上30Å以下とすることで、上述の効果を高めることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを2.5Å以上30Å以下とすることで、上述の効果をより高めることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを3Å以上20Å以下とすることで、上述の効果を更に高めることが可能となる。
【0046】
Cl含有Si層の厚さを1ML未満とすると、Si/SiO界面に添加されるCl原子がSi/SiO界面におけるダングリングボンドを終端させるのに不十分となり、界面準位密度を十分に低減させることができないことがある。結果として、デバイスの電気特性を向上させることができないことがある。Cl含有Si層の厚さを1ML以上とすることで、Si/SiO界面に添加されるCl原子がSi/SiO界面におけるダングリングボンドを終端させるのに十分となり、界面準位密度を十分に低減させることができ、デバイスの電気特性を向上させることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを2.5Å以上とすることで、この効果をより高めることが可能となる。Cl含有Si層の厚さを3Å以上とすることで、この効果を更に高めることが可能となる。
【0047】
Cl含有Si層の厚さを30Åよりも厚くすると、Cl含有Si層よりも上層のpoly-Si膜にClが拡散しやすくなることがある。また、Si/SiO界面におけるCl量が過剰となることがある。これらにより、デバイスの電気特性を劣化させてしまうことがある。Cl含有Si層の厚さを30Å以下とすることで、Cl含有Si層よりも上層のpoly-Si膜へのClの拡散を抑制することができ、Si/SiO界面においてCl量が過剰となることを抑制することができ、デバイスの電気特性の劣化を抑制することが可能となる。Cl含有Si層の厚さを20Å以下とすることで、この効果をより高めることが可能となる。
【0048】
(d)Si/SiO界面に、Cl含有Si層という形でClを取り込むようにしており、これにより、Si/SiO界面だけに、ピンポイントで(局所的に)Clを添加することが可能となる。これにより、poly-Si膜やSiO膜へのClの拡散、混入を抑制することが可能となり、これらの膜へのCl混入に起因する膜特性の劣化、電気特性の劣化を抑制することが可能となる。
【0049】
(e)Si/SiO界面に、Cl含有Si層という形でClを取り込むようにしており、これにより、また、熱拡散、プラズマ拡散等他の手法では供給できないCl量を界面に導入できる。また、Si/SiO界面に添加されるCl原子は、Si/SiO界面におけるダングリングボンドを終端する原子(水素やフッ素)と比較して、界面以外への拡散、混入が抑制可能である。
【0050】
(f)Si/SiO界面に、Cl含有Si層という形でClを取り込むようにしており、これにより、Si/SiO界面にClを定着させることが可能となる。これにより、Si/SiO界面からこの界面に隣接する膜へのClの拡散を抑制することができ、また、Si/SiO界面におけるCl濃度の均一性を維持することが可能となる。
【0051】
(g)下記の処理シーケンスによりCl含有Si層を形成する際に、サイクル数(n)を調整することにより、Cl含有Si層のCl濃度および厚さのうち少なくともいずれかを精密に制御することが可能となる。これにより、Si/SiO界面におけるCl濃度およびCl量のうち少なくともいずれかを精密に制御することが可能となる。
【0052】
(クロロシラン系ガス→不活性ガス)×n
(クロロシラン系ガス→不活性ガス→水素化ケイ素ガス→不活性ガス)×n
【0053】
(h)上述の効果は、各膜や各層を形成する際のそれぞれにおいて、上述の各種シラン系ガス、各種酸化ガス、各種窒化ガス、各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0054】
(4)変形例
図2は、本態様における半導体デバイスの変形例であるトランジスタデバイス400が備えるMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造の断面部分拡大図である。
【0055】
トランジスタデバイス400は、基板としてのウエハ401を備えている。ウエハ401は、例えば、単結晶シリコン等のSiにより構成される。ウエハ401は、表面に所定の半導体領域を含む。ウエハ401の表面上には、塩素含有半導体層として、Clを高濃度に含むCl含有Si層が設けられている。このように、ウエハ401の表面に含まれる半導体領域と、塩素含有半導体層としてのCl含有Si層とは、隣接して設けられている。
【0056】
Cl含有Si層のCl濃度は、例えば、1.0×1020atoms/cm以上1.0×1022atoms/cm以下、好ましくは、3.0×1020atoms/cm以上5.0×1021atoms/cm以下である。
【0057】
Cl含有Si層の厚さは、後述のゲート絶縁膜よりも薄いことが好ましい。Cl含有Si層の厚さは、例えば、1ML以上30Å以下、好ましくは2.5Å以上30Å以下、より好ましくは3Å以上20Å以下である。
【0058】
Cl含有Si層の上、すなわち、ウエハ401上には、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜としてのSiO膜が設けられている。このように、ゲート絶縁膜(絶縁膜)としてのSiO膜と、塩素含有半導体層としてのCl含有Si層とは、隣接して設けられている。
【0059】
SiO膜上には、ゲート電極として機能する金属含有膜(メタル膜)が設けられている。メタル膜としては、例えば、タングステン膜(W膜)、ニッケル膜(Ni膜)、コバルト膜(Co膜)等を用いることができる。
【0060】
Cl含有Si層は、例えば上述の態様におけるCl含有Si層と同様に形成することができる。また、SiO膜は、例えば上述の態様におけるSiO膜と同様に形成することができる。
【0061】
メタル膜は、例えばCVD法により形成することができる。メタル膜として、例えば、W膜を形成する際は、加熱されたウエハ401に対して、処理ガスとして、例えば、六フッ化タングステン(WF)ガスや六塩化タングステン(WCl)ガス等のメタル含有ガスと、例えば、水素(H)ガスやモノシラン(SiH)ガス等の還元剤(還元ガス)と、を供給する。
【0062】
メタル膜を形成する工程における処理条件としては、
メタル含有ガス供給流量:0.1~5slm
還元ガス供給流量:0.1~10slm
ガス供給時間:1~300分
処理温度:100~450℃、好ましくは200~400℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは133~2666Pa
が例示される。
【0063】
本変形例においても、上述の態様と同様な効果が得られる。
【実施例
【0064】
(実施例1)
Si基板としてのウエハ上に、絶縁膜としてのClフリーなSiO膜を形成した。そして、SiO膜上に、塩素含有半導体層としてのCl含有Si層を、SiO膜と隣接するように形成した。そして、Cl含有Si層上に、半導体領域としての半導体膜であるClフリーなノンドープpoly-Si膜を、Cl含有Si層と隣接するように形成し、実施例1の評価サンプルを作製した。図3(a)に、実施例1における評価サンプルの断面部分拡大図を示す。評価サンプルが備える各膜や層を形成する際の処理手順、処理条件は、それぞれ、上述の態様の各工程における処理手順、処理条件と同様とした。評価サンプルとしては、Cl含有Si層におけるCl濃度を変化させたものを複数準備した。そして、それぞれの評価サンプルにおけるダングリングボンド密度を測定した。
【0065】
図4に、各評価サンプルの、ノンドープpoly-Si膜とSiO膜との界面(以下、Si/SiO界面)における、Cl濃度とダングリングボンド密度との関係、すなわち、ダングリングボンド密度のSi/SiO界面におけるCl濃度依存性を示す。図4の横軸はSi/SiO界面におけるCl濃度[atoms/cm]を、縦軸はSi/SiO界面におけるダングリングボンド密度[個/cm]をそれぞれ示している。図中の●印は各評価サンプルにおけるダングリングボンド密度の測定値をプロットしたものを示している。
【0066】
図4より、Si/SiO界面におけるCl濃度が高いほど、ダングリングボンド密度が低下していることが分かる。特に、Si/SiO界面におけるCl濃度を1.0×1020atoms/cm以上とすることにより、好ましくは3.0×1020atoms/cm以上とすることにより、ダングリングボンド密度を大幅に低減できることが分かる。
【0067】
(実施例2)
Si基板としてのウエハ上に、絶縁膜(ゲート絶縁膜)としてのClフリーなSiO膜を、熱酸化方法により形成した。ウエハとしては、Pが高濃度に添加されたn型低抵抗基板を用いた。そして、SiO膜上に、塩素含有半導体層としてのCl含有Si層を、SiO膜と隣接するように形成した。そして、Cl含有Si層上に、チャネル層として機能する半導体領域として、半導体膜であるClフリーなpoly-Si膜を、Cl含有Si層と隣接するように形成した。また、チャネル層としてpoly-Si膜の延面方向における両端に、ソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成し、実施例2の評価サンプル(FETデバイス)を作製した。図3(b)に、実施例2における評価サンプルの断面部分拡大図を示す。熱酸化膜であるSiO膜を除き、評価サンプルが備える各膜や層を形成する際の処理手順、処理条件は、上述の態様の各工程における処理手順、処理条件と同様とした。評価サンプルとしては、Cl含有Si層におけるCl濃度を変化させたものを複数準備した。そして、それぞれの評価サンプルにおける電界効果移動度(FET移動度)を測定した。
【0068】
図5に、各評価サンプルの、チャネル層としてのpoly-Si膜とゲート絶縁膜としてのSiO膜との界面(以下、Si/SiO界面)における、Cl濃度とFET移動度との関係、すなわち、電界効果移動度のSi/SiO界面におけるCl濃度依存性を示す。図5の横軸はSi/SiO界面におけるCl濃度[atoms/cm]を、縦軸はFET移動度[cm/Vsec]をそれぞれ示している。図中の●印は各評価サンプルにおけるFET移動度の測定値をプロットしたものを示している。
【0069】
図5より、Si/SiO界面におけるCl濃度が高いほど、高いFET移動度が得られていることが分かる。本件開示者等によれば、Si/SiO界面におけるCl濃度を1.0×1020atoms/cm以上とすることにより、好ましくは、3.0×1020atoms/cm以上とすることにより、FET移動度を向上させることが可能となることを確認しているが、図5より、Si/SiO界面におけるCl濃度を、特に、9.0×1020atoms/cm以上、好ましくは、1.0×1021atoms/cm以上とすることにより、FET移動度を更に向上させることが可能となることが分かる。
【0070】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0071】
例えば、上述の態様では、塩素含有半導体層および半導体領域における半導体が、それぞれ、Siを含む場合について説明した。しかしながら、塩素含有半導体層および半導体領域における半導体は、Siを含む場合に限らず、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、およびシリコンゲルマニウムスズ(SiGeSn)のうち少なくともいずれかを含んでいてもよい。すなわち、塩素含有半導体層および半導体領域における半導体は、SiやGe等の単元系材料だけでなく、SiGe等の二元混晶系材料や、SiGeSn等の三元混晶系材料等の多元混晶系材料を含んでいてもよい。また、他のチャネルと利用できる化合物系半導体、酸化物系半導体、2次元系半導体などチャネル層として有効な材料を用いる場合においても、本開示の手法を適用することができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0072】
300 メモリデバイス(半導体デバイス)
301 ウエハ(基板)
400 トランジスタデバイス(半導体デバイス)
401 ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5