(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】極低温冷凍機および生体磁気計測装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240312BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F25B9/00 G
A61B5/055 360
(21)【出願番号】P 2020051781
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊一
(72)【発明者】
【氏名】風見 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】梅野 高裕
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-108321(JP,A)
【文献】特開2017-009233(JP,A)
【文献】特開2003-214764(JP,A)
【文献】特表2014-527610(JP,A)
【文献】特開2016-070647(JP,A)
【文献】特開2004-233020(JP,A)
【文献】特許第5839734(JP,B2)
【文献】特開2010-046344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00 - 9/14
A61B 5/05 - 5/055
G01R 33/00 - 33/64
H10N 60/00 - 60/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を冷却する冷却部と、
前記冷却部で冷却された前記冷媒を纏める受部と、
前記受部に連通する移送管と、
前記受部と前記移送管との間に設けられて前記冷媒を貯める貯留部と、
を備え
、
前記貯留部は、前記受部の底に前記移送管の上端が延びて形成され、かつ、前記受部の底を前記移送管との接続部分に向けて下方に窄まるように形成されている、
極低温冷凍機。
【請求項2】
前記貯留部は、前記冷却部の直下に配置される、請求項
1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
前記冷却部および前記貯留部を収容する保温部と、
前記冷却部または前記貯留部の温度を計測する温度計と、
前記保温部に接続された排気部と、
前記温度計が計測した温度が所定温度以上となった場合に前記排気部を開放する制御部と、
を備える、請求項1
または2に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の極低温冷凍機と、
前記極低温冷凍機から送られた冷媒により冷却される測定装置と、
を備える、生体磁気計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機および生体磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、冷凍機で冷却された冷媒をクライオスタットに導入するトランスファーチューブを備える構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脳磁計や脊磁計などの生体磁気計測装置では、例えば、超電導量子干渉素子のような高感度磁気センサを用い、超電導状態を保つために冷媒として液体ヘリウムが使われる。あるいは、極低温での物性測定においても冷媒として液体ヘリウムが使われる。液体ヘリウムは容易に気化するため、上記のような装置において計測を経済的かつ継続的に使用するには、極低温冷凍機を使ってヘリウム循環することが必要である。
【0004】
ここで、極低温冷凍機では、低温を保持する保温部(クライオスタット)と、保温部から液体ヘリウムを送る移送管(トランスファーチューブ)を備える構成がある。この構成の極低温冷凍機では、長時間の運転でヘリウムを主成分とする循環ガス中に含まれる微量の不純物(窒素、酸素、水など)が冷却部の低温部分に吸着し固化される。この不純物は、冷却部の熱変換を阻害するため、再凝縮能力を低下させる。また循環系に微量の漏れなどがあると大気中から継続的に不純物が供給されることがあり、経時的に再凝縮能力を低下させる。一方、極低温冷凍機の運転を停止すると、冷却部の低温部分に固着した不純物の成分が、冷却部の温度上昇と共に液状化または気化して移送管に流れ込み、移送管の先が接続された生体磁気計測装置などのデュワにて再冷却されて固体となることで移送管を閉塞させるおそれがある。このため、ヘリウム循環の運転・停止を繰り返すような極低温冷凍機にあって、運用の信頼性を損なうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、冷媒に含まれる不純物の影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の極低温冷凍機は、冷媒を冷却する冷却部と、前記冷却部で冷却された前記冷媒を受ける受部と、前記受部に連通する移送管と、前記受部と前記移送管との間に設けられて前記冷媒を貯める貯留部と、を備え、前記貯留部は、前記受部の底に前記移送管の上端が延びて形成され、かつ、前記受部の底を前記移送管との接続部分に向けて下方に窄まるように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷媒に含まれる不純物の影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、生体磁気計測装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、ヘリウム循環システムの一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時のフローチャートである。
【
図4】
図4は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時の動作図である。
【
図5】
図5は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時のフローチャートである。
【
図6】
図6は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時の動作図である。
【
図8】
図8は、ヘリウム循環システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、極低温冷凍機および生体磁気計測装置の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、生体磁気計測装置の一例を示す概略構成図である。
【0011】
生体磁気計測装置100は、生体情報計測装置であって、脳機能測定装置(測定装置ともいう)101と、情報処置装置102とを備えている。
【0012】
脳機能測定装置101は、測定対象である被検者110の臓器である脳の脳磁図(MEG:Magneto-encephalography)信号を測定する脳磁計である。脳機能測定装置101は、被検者110の頭部が挿入されるデュワ1を有する。デュワ1は、被検者110の頭部のほぼ全域を取り囲むヘルメット型のセンサ収納型デュワである。デュワ1は、液体ヘリウムを用いた極低温環境の真空断熱装置である。デュワ1は、その内部に脳磁測定用の多数の磁気センサ2が配置されている。磁気センサ2は、超電導量子干渉素子(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)が用いられる。脳機能測定装置101は、磁気センサ2からの脳磁信号を収集する。脳機能測定装置101は、収集された生体信号を情報処置装置102に出力する。
【0013】
情報処置装置102は、複数の磁気センサ2からの脳磁信号の波形を、時間軸上に表示する。脳磁信号は、神経細胞の電気的な活動(シナプス伝達の際にニューロンの樹状突起で起きるイオン電荷の流れ)により誘起されるもので脳の電気活動により生じた微小な磁場変動を表わす。
【0014】
図2は、ヘリウム循環システムの例を示す概略構成図である。
【0015】
上述した脳機能測定装置101は、真空断熱装置であるデュワ1を極低温環境とするためのヘリウム循環システム10を含む。ヘリウム循環システム10は、極低温冷凍機11と、デュワ1、蒸発ガス回収部(バッファタンク)13と、蒸発ガス回収管14と、保管ガス供給管15と、循環用配管16と、制御部19と、を備える。
【0016】
極低温冷凍機11は、パルス管冷凍機を構成するもので、冷却部21と、受部22と、保温部23と、移送管24と、駆動系循環部25と、温度計26と、を有する。
【0017】
冷却部21は、本体部21Aと、円筒状の第一シリンダ部21Bと、円筒状の第二シリンダ部21Cと、円板状の第一コールドステージ21Dと、円板状の第二コールドステージ21Eと、を備える。本体部21Aは、冷却部21の基部であり、最上部に配置される。第一シリンダ部21Bは、本体部21Aから下方に延びて設けられている。第二シリンダ部21Cは、第一シリンダ部21Bよりも下方に延びて設けられている。第一コールドステージ21Dは、第一シリンダ部21Bと第二シリンダ部21Cとの間に設けられている。第二コールドステージ21Eは、第二シリンダ部21Cの延びた下端に設けられている。
【0018】
受部22は、上端が開放し、下端に底22Aを有する皿状に形成されている。受部22は、冷却部21の直下に配置される。
【0019】
保温部23は、真空断熱をしたクライオスタットであり、例えば、ステンレスまたはガラス繊維強化樹脂により筒状に形成され、上端が開放し、下端に底23Aを有する。保温部23は、内部に冷却部21が収容され冷却部21の外周を間隔を空けて囲むように設けられる。保温部23は、上端が冷却部21の本体部21Aにより密閉される。また、受部22は、保温部23の内部に配置される。保温部23は、内部の温度を保つように機能する。
【0020】
移送管24は、上端24aが受部22の底22Aに接続され、受部22に連通して設けられている。移送管24は、受部22の底22Aから下方に延び、保温部23の内部を通って下端24bが下方に向けて設けられている。保温部23は、底23Aが移送管24の外周を間隔を空けて囲むように移送管24と共に下方に延びて形成されている。移送管24は、その下端24bが脳機能測定装置101のデュワ1に接続されている。移送管24は、冷却部21からデュワ1に液体冷媒を送る第一経路ともいう。
【0021】
駆動系循環部25は、コンプレッサである圧縮機25Aと、動作部であるバルブモータ25Bと、を有する。圧縮機25Aは、圧縮ガスを圧縮する。圧縮ガスは、例えばヘリウムガスである。圧縮機25Aで圧縮された圧縮ガスは、バルブモータ25Bに供給される。バルブモータ25Bは、冷却部21の本体部21Aに対し、圧縮ガスを間欠供給するように開閉を切り替える。駆動系循環部25は、バルブモータ25Bの切り替えにより圧縮機25Aと冷却部21との間で圧縮ガスが循環される。冷却部21は、この圧縮ガスの間欠供給により、起動し、第一コールドステージ21Dおよび第二コールドステージ21Eで冷熱を発生する。なお、圧縮機25Aは、水冷または空冷により排熱する。
【0022】
温度計26は、保温部23の内部の温度を計測するもので、例えば、受部22や冷却部21における第二コールドステージ21Eなどの近傍の温度を計測する。すなわち、温度計26は、保温部23の内部において受部22(後述する貯留部27)や冷却部21の温度を計測する。
【0023】
この極低温冷凍機11は、その駆動時に、保温部23の内部であって冷却部21にガス冷媒が供給される。ガス冷媒は、例えばヘリウムガスであり、第一コールドステージ21Dおよび第二コールドステージ21Eで発生する冷熱により冷却されることで液化されて液体冷媒である液体ヘリウムとなり、受部22の底22Aに至り滴下して纏められる。受部22の底22Aに纏められた液体ヘリウムは、移送管24を経て保温部23の外部に送られ、脳機能測定装置101のデュワ1内部のヘリウム槽に供給される。これにより、脳機能測定装置101のデュワ1の液体ヘリウムが保持される。デュワ1の内部の液体ヘリウムは外部からの熱侵入によって徐々に蒸発してヘリウムガス(蒸発ガスともいう)となる。
【0024】
蒸発ガス回収部13は、デュワ1で蒸発した蒸発ガスを回収し貯えて保管するための圧力容器である。
【0025】
蒸発ガス回収管14は、デュワ1と蒸発ガス回収部13との間を接続する配管である。蒸発ガス回収管14は、第一蒸発ガス回収管14Aと、第二蒸発ガス回収管14Bと、を有する。
【0026】
第一蒸発ガス回収管14Aは、一端14Aaがデュワ1に接続され、他端14Abが蒸発ガス回収部13に接続されている。第一蒸発ガス回収管14は、デュワ1から蒸発ガス回収部13に蒸発ガスを送るため、途中にコンプレッサであるポンプ14Acが設けられている。また、第一蒸発ガス回収管14Aは、蒸発ガスの送りを開閉するため、ポンプ14Acよりも一端14Aa側に第一開閉弁14Adが設けられている。第一開閉弁14Adは、制御部19により制御される。第一蒸発ガス回収管14Aは、デュワ1から蒸発ガス回収部13に直接蒸発ガスを送る第二経路ともいう。
【0027】
第二蒸発ガス回収管14Bは、第一蒸発ガス回収管14Aの途中と、冷却部21の保温部23の内部との間を接続する配管である。第二蒸発ガス回収管14Bは、一端14Baが第二蒸発ガス回収管14Bの一端14Aaと開閉弁14Adとの間に接続され、他端14Bbが保温部23に接続されている。本実施形態では、第二蒸発ガス回収管14Bは、他端14Bbが保管ガス供給管15の一部を介して保温部23に接続されている。第二蒸発ガス回収管14Bは、蒸発ガスの送りを開閉するため、途中に第二開閉弁14Bcが設けられている。第二開閉弁14Bcは、制御部19により制御される。また、第二蒸発ガス回収管14Bは、第二開閉弁14Bcよりも他端14Bb側に排気弁(排気部)14Bdが設けられている。排気弁14Bdは、制御部19により制御される。排気弁14Bdは、第二蒸発ガス回収管14Bおよび保管ガス供給管15の一部を介して保温部23に接続されている。
【0028】
保管ガス供給管15は、蒸発ガス回収部13と冷却部21との間を接続する配管である。保管ガス供給管15は、一端15aが蒸発ガス回収部13に接続され、他端15bが極低温冷凍機11の冷却部21に接続されている。保管ガス供給管15は、蒸発ガス回収部13から冷却部21に蒸発ガス回収部13で保管された蒸発ガス(保管ガス)を送るため、途中にポンプ15cが設けられている。また、保管ガス供給管15は、蒸発ガスの送りを開閉するため、ポンプ15cよりも他端15b側に開閉弁15dが設けられている。開閉弁15dは、制御部19により制御される。また、保管ガス供給管15は、蒸発ガスの送りを開閉するため、ポンプ15cよりも一端15a側に開閉弁15eが設けられている。開閉弁15eは、制御部19により制御される。保管ガス供給管15は、蒸発ガス回収部13から冷却部21に蒸発ガスを送る第三経路ともいう。
【0029】
循環用配管16は、蒸発ガス回収管14の途中と保管ガス供給管15の途中とを接続する配管である。循環用配管16は、一端16aが蒸発ガス回収管14の開閉弁14Adと開閉弁14Bcとの間に接続され、他端16bが保管ガス供給管15の開閉弁15eとポンプ15cとの間に接続されている。循環用配管16は、デュワ1から冷却部21に直接蒸発ガスを送るバイパス経路ともいう。
【0030】
制御部19は、ヘリウム循環システム10を制御するもので、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置などを備えた演算装置である。制御部19は、極低温冷凍機11の圧縮機25Aと、蒸発ガス回収管14のポンプ14Acおよび各開閉弁14Ad,14Bcおよび排気弁14Bdと、保管ガス供給管15のポンプ15c、開閉弁15dおよび開閉弁15eと、の動作を制御する。また、制御部19は、極低温冷凍機11の温度計26により計測された温度を取得する。
【0031】
ここで、ヘリウム循環システム10の動作を説明する。
図3は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時のフローチャートである。
図4は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の駆動時の動作図である。
図5は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時のフローチャートである。
図6は、ヘリウム循環システムの極低温冷凍機の停止時の動作図である。
【0032】
図3に示すように、極低温冷凍機11の駆動時において、制御部19は、蒸発ガス回収管14のポンプ14cを停止すると共に第一開閉弁14Adおよび第二開閉弁14Bcおよび排気弁14Bdを閉鎖する(ステップS1)。また、制御部19は、保管ガス供給管15のポンプ15cを駆動すると共に開閉弁15dおよび開閉弁15eを開放する(ステップS2)。そして、制御部19は、極低温冷凍機11の冷却部21を駆動する(ステップS3)。これにより、
図4に示すように、ヘリウム循環システム10は、保管ガス供給管15を介して蒸発ガス回収部13から冷却部21にガス冷媒を送ると共に、蒸発ガス回収管14の第一蒸発ガス回収管14Aの一部および循環用配管16を介してデュワ1から冷却部21にガス冷媒を送り、冷却部21にてガス冷媒を冷却して液体冷媒とし、デュワ1に送る。なお、ステップS1からS3の動作は同時に行ってもよい。
【0033】
また、
図5に示すように、極低温冷凍機11の停止時において、制御部19は、極低温冷凍機11の冷却部21を停止する(ステップS11)。また、制御部19は、保管ガス供給管15のポンプ15cを停止すると共に開閉弁15dおよび開閉弁15eを閉鎖する(ステップS12)。また、制御部19は、蒸発ガス回収管14の第一開閉弁14Adを開放し第二開閉弁14Bcおよび排気弁14Bdを閉鎖してポンプ14cを駆動する(ステップS13)。これにより、
図6に示すように、ヘリウム循環システム10は、蒸発ガス回収管14の第一蒸発ガス回収管14Aを介してデュワ1から蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送り、蒸発ガス回収部13で回収する。なお、ステップS11からS13の動作は同時に行ってもよい。
【0034】
本実施形態のヘリウム循環システム10では、例えば、午後5時から翌日午前9時までの脳機能測定装置101を使用しない時、
図3および
図4に示す動作を行って、冷却部21にてガス冷媒を冷却して液体冷媒とし、デュワ1に送る。また、本実施形態のヘリウム循環システム10では、例えば、午前9時から午後5時までの脳機能測定装置101を使用する時、
図5および
図6に示す動作を行って、デュワ1から蒸発ガス回収部13にガス冷媒を送り、蒸発ガス回収部13で回収する。従って、本実施形態のヘリウム循環システム10は、脳機能測定装置101を使用する計測時に、極低温冷凍機11を停止させ、脳機能測定装置101への極低温冷凍機11の振動による影響を防ぎ、脳機能測定装置101を使用せず計測しない時に、極低温冷凍機11を駆動させ、デュワ1を極低温環境にできる。
【0035】
【0036】
極低温冷凍機11は、上述したように、ガス冷媒を冷却する冷却部21と、冷却部21で冷却された液体冷媒Rを纏める受部22と、受部22に連通する移送管24と、を備える。また、極低温冷凍機11は、受部22と移送管24との間に設けられて冷却部21で冷却された液体冷媒Rを貯める貯留部27を備える。
【0037】
貯留部27は、
図7に示すように、受部22の底22Aが、移送管24との接続部分に向けて下方に窄まるように形成され、かつ移送管24の上端24aが受部22の底22Aを上方に突き抜けて受部22の底22Aの上方に延びて形成されていることで、受部22で纏められた液体冷媒Rが移送管24の上端24aの位置まで貯まるように構成されている。
【0038】
このように、貯留部27は、受部22と移送管24との間で液体冷媒Rを貯めることができる。
【0039】
上述したように、極低温冷凍機11では、冷却部21などに吸着して固化した窒素、酸素、水などの不純物Sが温度上昇と共に液状化あるいは気化して移送管24に流れ込む可能性がある。本実施形態の極低温冷凍機11では、貯留部27を設けたことで、
図7に示すように、液体冷媒Rよりも比重が重い不純物Sは、貯留部27に貯まった液体冷媒Rの下側であって、貯留部27の底(受部22の底22A)に貯まり、移送管24の上端24aから離隔される。このため、本実施形態の極低温冷凍機11は、不純物Sを固化した状態で留めることで移送管24へ流れ込むことを防ぐ。そして、本実施形態の極低温冷凍機11は、液状化あるいは気化した不純物Sが移送管24の中または端部で再冷却により固化し、移送管24が閉塞することを防止できる。また、本実施形態の極低温冷凍機11は、不純物Sが冷却部21に固着したままとしないため、冷却部21の熱変換を阻害することなく、再凝縮能力の低下を防ぐ。この結果、本実施形態の極低温冷凍機11は、冷媒に含まれる不純物の影響を抑制できる。
【0040】
本実施形態の極低温冷凍機11では、貯留部27は、受部22の底22Aに移送管24の上端24aが延びて形成されているため、簡易に構成できる。なお、本実施形態の極低温冷凍機11では、貯留部27は、受部22の底22Aを移送管24との接続部分に向けて下方に窄まるように形成されているため、混入物Sが貯まる貯留部27の最も深い部分から移送管24の上端24aまでの距離を長くでき、混入物Sが移送管24へ流れ込むことをより防げる。
【0041】
また、本実施形態の極低温冷凍機11では、貯留部27は、冷却部21の直下に配置される。このため、本実施形態の極低温冷凍機11は、冷却部21に吸着して固化した不純物Sを確実に受けることができる。
【0042】
ところで、
図8は、極低温冷凍機の動作を示すフローチャートである。本実施形態の極低温冷凍機11では、制御部19において、温度計26で計測された冷却部21または貯留部27の温度を取得している。制御部19は、取得した温度が所定温度以上となった場合、排気部の排気弁14Bdを開放する。具体的に、
図8に示すように、極低温冷凍機11において、制御部19は、本制御以外において排気弁14Bdを閉鎖している(ステップS21:
図4および
図6参照)。そして、制御部19は、
図6に示すように冷却部21を停止しているとき(ステップS22:Yes)、温度計26で計測された温度が所定温度以上である場合(ステップS23:Yes)、排気弁14Bd開放する(ステップS24)。所定温度とは、不純物Sの成分が気化し得る温度である。なお、ステップS22において、冷却部21の停止とは圧縮された圧縮ガスが供給されていないことを意味し、冷却部21の駆動とは圧縮された圧縮ガスが供給されていることを意味する。そして、制御部19は、ステップS22において、冷却部21を駆動しているときは(ステップS22:No)、ステップS21に戻る。また、制御部19は、ステップS23において、温度計26で計測された温度が所定温度以上でない場合は(ステップS23:No)、温度計26で計測された温度を継続して取得する。
【0043】
このように、本実施形態の極低温冷凍機11は、冷却部21および貯留部27を収容する保温部23と、冷却部21または貯留部27の温度を計測する温度計26と、保温部23に接続された排気部である排気弁14Bdと、温度計26が計測した温度が所定温度以上となった場合に排気部26を開放する制御部19と、を備える。この極低温冷凍機11によれば、不純物Sの成分が気化した場合、この不純物Sの成分を保温部23の外部に排出できる。この結果、本実施形態の極低温冷凍機11は、不純物Sが移送管24の中で再冷却により固化し、移送管24が閉塞することを防止できる。なお、本実施形態において、制御部19は、上述したヘリウム循環システム10の制御部19を用いているが、極低温冷凍機11の上記制御を行う別の制御部を備えていてもよい。
【0044】
また、本実施形態の生体磁気計測装置100は、上述した極低温冷凍機11を備えて冷媒に含まれる不純物の影響を抑制できることから、脳機能測定装置101による測定を経済的かつ継続的に行える。
【0045】
なお、図には明示しないが、貯留部27は、受部22の外周であって冷却部21の第二コールドステージ21Eよりも下側に接続され、受部22の底22Aよりも移送管24の上端24aが上方に位置することで、受部22で纏められた液体冷媒Rが移送管24の上端24aの位置まで貯まるように構成されていてもよい。
【0046】
また、図には明示ないが、排気部である排気弁14Bdは、保温部23に直接接続されていてもよい。この場合、第二蒸発ガス回収管14Bと、開閉弁14Bcおよび排気弁14Bdは設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
11 極低温冷凍機
14Bd 排気部
19 制御部
21 冷却部
22 受部
22A 底
23 保温部
24 移送管
24a 上端
27 貯留部
26 温度計
100 生体磁気計測装置
101 脳機能測定装置(測定装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】