(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】シュードザイマ・アンタクティカの新規菌株
(51)【国際特許分類】
C12N 9/16 20060101AFI20240416BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240416BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C12N9/16 Z
C12P21/02 C
C12N1/19 ZNA
C12N15/55
(21)【出願番号】P 2022106237
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2018052952の分割
【原出願日】2018-03-20
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2017054264
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度農林水産省「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-02392
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-02393
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-02638
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-02639
【微生物の受託番号】NPMD NITE P-02640
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】北本 宏子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】鎗水 透
(72)【発明者】
【氏名】山下 結香
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴志
(72)【発明者】
【氏名】森田 友岳
(72)【発明者】
【氏名】小池 英明
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特許第4915593(JP,B2)
【文献】特許第5849297(JP,B2)
【文献】酵素の精製分離,分析化学,1959年,vol. 8, no. 6,pp. 398-403
【文献】平成24年度研究成果情報,2013年,vol. 29,pp. 42-43
【文献】AMB Express,2011年11月29日,vol. 1,article no. 44 (pp. 1-11)
【文献】Appl Microbiol Biotechnol,2013年06月08日,vol. 97, no. 7,pp. 2951-2959
【文献】PLOS ONE,2021年06月04日,vol. 16, no. 6,article no. e0252811 (pp. 1-11)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00-41/00
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化された生分解性プラスチック分解酵素を取得する方法であって、
前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を用意する工程、
前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液にエタノールを添加して、前記生分解性プラスチック分解酵素を安定化する又は沈殿させる工程、及び、
前記安定化した又は沈殿した生分解性プラスチック分解酵素を回収する工程、
を含
み、
前記生分解性プラスチック分解酵素が、酵母又は糸状菌の生分解性プラスチック分解酵素である、方法。
【請求項2】
前記エタノール添加工程の前に、前記生分解性プラスチック分解酵素を濃縮する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を用意する工程の前に、
シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株を用意する工程、
前記栄養要求性変異株に、遺伝子カセットを少なくとも1つ導入する工程、及び、
前記遺伝子カセットを導入した栄養要求性変異株を培養して、前記生分解性プラスチック分解酵素を生産する工程をさらに含み、
前記遺伝子カセットが、前記生分解性プラスチック分解酵素をコードする遺伝子、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1のプロモーター、及び、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子を含み、前記生分解性プラスチック分解酵素をコードする遺伝子が、前記プロモーターの下流に位置している、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュードザイマ・アンタクティカ(Pseudozyma antarctica)の新規菌株及び栄養要求性変異株、及び、それらの菌株に由来する目的のタンパク質を発現するP.アンタクティカの形質転換体及びそれを用いた目的のタンパク質の生産方法、並びに、安定化された生分解性プラスチック分解酵素を取得する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
葉面から取得できる多くの酵母が、生分解性プラスチック分解能力を有することが見出されている(特許文献1)。これらのうちシュードザイマ属の葉面酵母が優れており、中でもP.アンタクティカは、生分解性プラスチック分解能力が特に優れており、この酵母から生分解性プラスチック分解酵素PaEが、単離同定されている(非特許文献1)。そして、PaE生産能の高い菌株を用いて、PaEを大量生産する技術も開発されている(特許文献2)。さらに、P.アンタクティカに遺伝子導入し、異種タンパク質を製造することも試みられている(特許文献3)。
【0003】
また、外来の遺伝子を組換えた微生物を培養してタンパク質を生産する場合には、当該組換え微生物の漏洩を完全に抑えるための設備と生産、精製、及び廃液処理の工程が求められているため、慎重な取り扱いが必要であるとともに、特に規模が大きい場合に一般的に用いられる微生物除去のための濾過の工程では、微生物を完全除去したという証明が困難で、さらなる精製工程で除菌する必要がある。一方、宿主となる微生物自身の遺伝子を利用してクローニングしたセルフクローニング株を利用してタンパク質を生産する場合には、上記設備の設置や生産工程などで、その微生物は、組換え体としての管理は必要とされず、野生株と同等に扱うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4915593号
【文献】特許第5849297号
【文献】国際公開第2014/109360号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Shinozakiら,Appl.Microbiol.Biotechnol.(2013),Vol.97,pp.2951-2959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生分解性プラスチック分解能力を有する酵母の従来の培養方法では、当該酵母の培養液に対し高い通気量が必要とされ、通気量が少なくなると酵素生産性が低下するという問題があった。通気にかかるコストは、培養にかかる電気コストに占める割合が非常に大きく、かつ培養装置の容量を大きくした場合には通気量を増大させることには、技術的な限界がある。したがって、低通気量でも生分解性プラスチック分解酵素などのタンパク質を効率よく生産するP.アンタクティカの新規菌株が求められている。
【0007】
また、P.アンタクティカを外来遺伝子由来のタンパク質を製造する宿主として利用するために、抗生物質耐性遺伝子と目的のタンパク質を発現する遺伝子カセットを含むプラスミドを導入して、抗生物質を用いた培地上に生育する形質転換体を選択した場合、この従来の方法で取得した形質転換体を、当該抗生物質を含まない培地中で培養をすると、一度は導入されたプラスミドが培養中に菌体から抜け落ちる。この問題を解決するために、P.アンタクティカの染色体上に抗生物質耐性遺伝子と目的のタンパク質を発現する遺伝子カセットを挿入した場合は、抗生物質を含まない培地でも遺伝子が保持されることが期待できる。しかし、実際には培養後の細胞に挿入した遺伝子が見つからない場合が多かった。これは、従来の偽菌糸を形成するP.アンタクティカでは、遺伝子が導入された1細胞を単離することが難しいため、又は、P.アンタクティカが増殖する過程で当該導入遺伝子を含まない細胞の増殖が優勢になるためであると考えられた。このように、従来は、形質転換体から安定して外来遺伝子由来のタンパク質を生産することができなかった。P.アンタクティカのセルフクローニング株を作製するための栄養要求性変異株を作製する際にも同様であり、従来の菌株を親株として利用していた場合には、おそらく偽菌糸を形成して増殖する過程で、遺伝子の欠損を含まないゲノムを有する菌体の増殖が優勢となることで、野生型のゲノムを有する菌株しか得ることができなかった。したがって、導入した遺伝子又は変異のある遺伝子を安定して維持できるP.アンタクティカの新規菌株が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、タンパク質を効率よく発現し、かつ導入した遺伝子又は変異のある遺伝子を安定して維持できる(すなわち栄養要求性変異株及び形質転換体などの菌株の作製が可能である)P.アンタクティカの新規菌株を見出し、本発明を完成させた。そして、当該新規菌株の特性や変異株取得の培養条件を検討した結果、P.アンタクティカ以外のシュードザイマ属菌についても、従来実現されていなかった栄養要求性変異株及び形質転換体の作製が可能となった。また、一連の実験の過程で、生分解性プラスチック分解酵素を安定化する方法を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示すP.アンタクティカの新規菌株及びその栄養要求性変異株、及び、シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株、並びに、それらの菌株に由来し目的のタンパク質を発現するシュードザイマ属菌の形質転換体及びそれを用いた目的のタンパク質の生産方法、並びに、生分解性プラスチック分解酵素を安定化する方法を提供するものである。
〔1〕シュードザイマ・アンタクティカ(Pseudozyma antarctica)GB-4(0)株(受託番号NITE P-02392)。
〔2〕シュードザイマ・アンタクティカGB-4(0)株(受託番号NITE P-02392)の栄養要求性変異株。
〔3〕リジン要求性又はウラシル要求性である、前記〔2〕に記載の栄養要求性変異株。
〔4〕シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株であって、LYS2、LYS12、及び/又はLYS20の塩基配列の少なくとも一部に変異を有するか、又は、URA3及び/又はURA5の塩基配列の少なくとも一部に変異を有することを特徴とする、栄養要求性変異株。
〔5〕LYS12タンパク質のMet1~Glu195をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失を有するか、又は、URA3塩基配列の113番目のCの置換、867番目のCの置換、及び/又は614番目のTの欠失を有する、前記〔4〕に記載の栄養要求性変異株。
〔6〕前記シュードザイマ属菌が、偽菌糸を形成しないシュードザイマ属の菌株である、前記〔4〕又は〔5〕に記載の栄養要求性変異株。
〔7〕目的のタンパク質を発現するシュードザイマ属菌の形質転換体であって、
前記形質転換体が、栄養要求性変異株の形質転換体であり、
前記形質転換体が、遺伝子カセットを少なくとも1つ有し、
前記遺伝子カセットが、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1のプロモーター、及び、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子を含み、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子が、前記プロモーターの下流に位置していることを特徴とする、形質転換体。
〔8〕前記目的のタンパク質が、シュードザイマ属菌のタンパク質、又は、シュードザイマ属菌以外の生物のタンパク質である、前記〔7〕に記載の形質転換体。
〔9〕前記目的のタンパク質をコードする遺伝子で使用されているコドンが、シュードザイマ属菌が使用するコドンに最適化されている、前記〔7〕又は〔8〕に記載の形質転換体。
〔10〕シュードザイマ・アンタクティカGB-4(0)L1-S12株(受託番号NITE P-02393)、GB-4(0)PGB480株(受託番号NITE P-02638)、GB-4(0)PGB469株(受託番号NITE P-02639)、及びGB-4(0)PGB474株(受託番号NITE P-02640)からなる群から選択される、シュードザイマ・アンタクティカの形質転換体。
〔11〕目的のタンパク質を生産する方法であって、
シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株を用意する工程、
前記栄養要求性変異株に、遺伝子カセットを少なくとも1つ導入する工程、及び、
前記遺伝子カセットを導入した栄養要求性変異株を培養して、前記目的のタンパク質を生産する工程、
を含み、
前記遺伝子カセットが、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1のプロモーター、及び、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子を含み、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子が、前記プロモーターの下流に位置していることを特徴とする、方法。
〔12〕安定化された生分解性プラスチック分解酵素を取得する方法であって、
前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を用意する工程、
前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液にエタノールを添加して、前記生分解性プラスチック分解酵素を安定化する又は沈殿させる工程、及び、
前記安定化した又は沈殿した生分解性プラスチック分解酵素を回収する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
〔13〕前記エタノール添加工程の前に、前記生分解性プラスチック分解酵素を濃縮する工程をさらに含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記生分解性プラスチック分解酵素を、前記〔11〕に記載の方法に従って生産する工程をさらに含む、前記〔12〕又は〔13〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、P.アンタクティカの新規菌株により、安定な形質転換体又は安定な栄養要求性変異株の作製が可能となる。また、P.アンタクティカ以外のシュードザイマ属菌の栄養要求性変異株の作製も可能となる。そして、種々のシュードザイマ属菌の栄養要求性変異株により、抗生物質耐性遺伝子に頼らない形質転換体の作製又はセルフクローニング株の作製が可能となる。さらに、目的のタンパク質をコードする遺伝子、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1のプロモーター、及び、栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子を含む遺伝子カセットであって、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子が、前記プロモーターの下流に位置している遺伝子カセットを、シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株に導入することにより、目的のタンパク質を効率的に生産することができる。加えて、生分解性プラスチック分解酵素の精製にエタノールを使用することで、生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液の殺菌効果と共在する他のタンパク質の変性が期待でき、当該溶液中への形質転換体の混入を防止するとともに、当該溶液の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】低通気量でのP.アンタクティカによるPaE産生能を示す。
【
図2】シュードザイマ属菌の光学顕微鏡観察写真を示す。
【
図3】PaLYS12をマーカーとして用いるPaE高発現用カセットの構成を示す。
【
図4】非相同末端結合(NHEJ)を利用したP.アンタクティカ内でのPaURA3-PaCLE1遺伝子配列断片の作製スキームを示す。
【
図5】セルフクローニング株作製のための遺伝子断片の作製スキームを示す。
【
図6】ドナー株を作製するために使用した遺伝子カセット(PaCLE1とPaURA3が接続されたもの)を調製するためのプラスミドの構成を示す。
【
図7】レポーターアッセイ用の遺伝子配列の構築スキームを示す。
【
図8】PaEをレポーターに用いた各種プロモーターの評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のシュードザイマ・アンタクティカ(P.アンタクティカ)の新規菌株は、GB-4(0)株であり、これは本件特許出願の直前に初めて独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されたものである(受託番号NITE P-02392)。本明細書に記載の「シュードザイマ・アンタクティカ」とは、イネやムギなどのイネ科植物の葉面に生息し得るシュードザイマ属菌(酵母)の一種であり、生分解性プラスチック分解酵素などを産生し得るものである。前記P.アンタクティカGB-4(0)株は、寄託されるまでは本発明者らの管理下で保管されており、たとえ譲渡の申出があったとしても本発明者らはその申出に応じる意志はなかったし、実際に他人に譲渡されたこともなかった。
【0012】
ある態様では、本発明は、P.アンタクティカGB-4(0)株の栄養要求性変異株に関する。本明細書に記載の「栄養要求性変異株」とは、突然変異により栄養要求性に変化が生じた菌株のことをいう。また、本明細書に記載の「突然変異」又は「変異」とは、特定の遺伝子において、当該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列に変化が生じるように、1以上の塩基が欠失、置換、及び/又は付加されることをいう。
【0013】
本発明の栄養要求性変異株では、特定の栄養素(アミノ酸及び塩基など)を合成する酵素が機能していないため、当該栄養素が欠けている環境下では生育することができない。
前記栄養要求性変異株は、いずれの栄養に対する要求性が変化したものであってもよく、特に制限される必要はないが、例えば、リジン要求性又はウラシル要求性であってもよい。前記栄養要求性変異株がリジン要求性である場合には、当該変異株は、シュードザイマ属菌におけるリジンの生合成に関わる酵素をコードする遺伝子、例えば、LYS1、LYS2、LYS4、LYS9、LYS12、及び/又はLYS20の塩基配列の少なくとも一部に変異を有していてもよい。前記栄養要求性変異株がウラシル要求性である場合には、当該変異株は、シュードザイマ属菌におけるウラシルの生合成に関わる酵素をコードする遺伝子、例えば、URA3及び/又はURA5の塩基配列の少なくとも一部に変異を有していてもよい。P.アンタクティカのリジンの生合成に関わる酵素及びウラシルの生合成に関わる酵素をコードする遺伝子の塩基配列、並びにそれらの推定アミノ酸配列は、以下のとおりである。
【0014】
・LYS1の配列
ATGTCTGCCGCCGCCAACCGACAGCCCCTCTACCTCCGCTGCGAGATGAAGCCGGCCGAGCATCGTGCCGCGCTCACGCCCACCACCGCCAAGAAGCTCATCGAGGCCGGCTTCGACATCACCGTCGAGTCGGACCCGCAGCGCATCTTTGACGACAAGGAGTACGCCGACGTCGGCTGCACCATCGCCAAGCACAACACCTTCCACTCGCTCCCCAAGCACATCCCCATCATCGGCCTCAAGGAGCTCGAGGAGCCCGGTCCGGATCTGCCGCACACGCACATCCAGTTTGCGCACTGCTACAAGAAGCAGGCCGGCTGGGTCGACGTGCTCGGCCGCTTCAAGCGCGGCGGCGGAAAGCTCTACGATCTCGAGTTCCTCGAGGACAGCAACGGCCGTCGTGTCGCTGCGTTTGGCTGGCACGCCGGATTCGCCGGTGCGGCGCTCGGCCTGCTGGCGCTCGCCGAGCAGGTGCAGGGTGCCGAGCGCCGTCTGGGCCCGCAGAAGGCGTACCCGAACGAGCAGGCGCTCATCGCTCACGCCAAGCAGCAGATCGAGCACATCCGCAACTCGCGCGCCGACGGCAAGGTCAAGGCGCTCGTCGTGGGTGCGCTCGGCAGGTGCGGTCGGGGCGCCATCGACTTTTTCGAAAAGGCCGGCGTGGCGCCCGAAGACATTGTGCGCTGGGACATGAAGGAGACCTCGGCCAAGCACGGTCCGTACCAGGAGCTGCTCGACGTCGACATCTTTGTCAACTGCATCTACCTCACCTCCAAGATCCCGCCCTTCCTGGACGAGGCGACCATCCAAGCGGCGGGTGCCGAGCGCCGTCTCGGCGTGGTGGTGGACGTGTCGTGCGATACCACCAACCCCAACAACCCGCTGCCCATCTACAGCATCAACACCACCTTTGACAAGCCCACCGTCGACGTCGACACGGGTGCAGGCAACCCGGCGCTCAGCGTCATCTCGATCGACCACCTCCCCACGCTGCTCCCGCGCGAGAGCTCCGAGGGCTTCAGCAACGACCTCCTCCCCAGCCTGCTCCAGCTGCCCCTCGTGCTCGGCAAGGACACCACGCAGCTCGACACGCTCGAAGAGGGCAAGGGCGCCGTGTGGCAGCGCGCCGAAAAGCTCTTCCGACACCACCTCGCAGACGCAGAGAAGAACGGCGCCTGA(配列番号1)
・LYS1タンパク質の推定アミノ酸配列
MSAAANRQPLYLRCEMKPAEHRAALTPTTAKKLIEAGFDITVESDPQRIFDDKEYADVGCTIAKHNTFHSLPKHIPIIGLKELEEPGPDLPHTHIQFAHCYKKQAGWVDVLGRFKRGGGKLYDLEFLEDSNGRRVAAFGWHAGFAGAALGLLALAEQVQGAERRLGPQKAYPNEQALIAHAKQQIEHIRNSRADGKVKALVVGALGRCGRGAIDFFEKAGVAPEDIVRWDMKETSAKHGPYQELLDVDIFVNCIYLTSKIPPFLDEATIQAAGAERRLGVVVDVSCDTTNPNNPLPIYSINTTFDKPTVDVDTGAGNPALSVISIDHLPTLLPRESSEGFSNDLLPSLLQLPLVLGKDTTQLDTLEEGKGAVWQRAEKLFRHHLADAEKNGA(配列番号2)
【0015】
・LYS2の配列
ATGGCGTCTTCCTCAGCGTTGCAGGCGAGCTTGGATCGATGGTCGGCGCGGCTGACCTCGCTTCCAAGCATCGCACTGCCCACCGACTATCCACGACCTGCCACCTCGCAGCTCGTACAGGCACTCTCGTCGTCGACGCTCTCCTCGGCCACAAGAAAGGACCTCGTGCGTCTGGCTCTCCACCACGAGCTCGACCTGCATCCCGCCGAGCACGCTGATGATGACGAGGACAACGCGAGCCCGACGCCGTTCCACCTGCTCCTCGCCGCGTTCTGCGTGCTCCTTCACCGATACACAGGCGACACGGACCTCGTCATTGGCTCGTCCAACCCATACACGGGCGAGCCTCTCATCCTCAGGATCCCCATCGAGCCCAACGATCCCTTCTGGCAGATCGTCCGCCGCATACAGCAGGTCGAGAAGGAGGCGGCCGCCGATGCCGTGCCGTACGACGAGATCGTCAAGCGCGTCGAGGCCGAGCGTGCCGAGCGAGAGGGCCCGCTGCCCGAAGGCGTGCAGAGCGCACCCATCTTCCGCGTCCGCTTCTTCGACGAGACAGGCGGCAAGGCTCGCAACTTCATGCAGTCGACATCGCTCACCACCGACCTCACCGTCTTCCTCACCAAGCCCGGTGCCACACCCGGCGACGACTCGGCCAACGCGGCCACCCCTGCGGAATCGGCCACGCCTTCGTCCCACACGTTCCGCGACTCGTTGGTGCCCAACATCGCCGTGCACCTGTCGTACAACTCGCTGCTCTTCTCCTCGCAGCGCATGCAGCTCATCCTCGCCCAGCTCTCCCAGCTCATCTCCGTCGCTGCATCCAACCCAGCCGCCGCCGTCGGCAGCCTGCCCATCCGCACGCCGCAAGAGAACGCATTCCTGCCGGACCCCACCAAGGACCTCGAGTGGTGCGGATTCCGCGGCGCCATCACACAGATCTTTGAGCGCAACGCACGCGCGCACCCGGACCGCAGGTGCATCGTCGAGTCGCTTGCCGACGACTCGGGCTCGCTCGCCGAGCCCTCGGCTCCGGCAAGCCGCGTGCGCGAAATCACCTACGGCCAGCTCGACCGCGCCTCCAACGTGGTCGCTCACCATCTCCTCCAGGCAGGTGTCCAGCGCGAGGAGGTCGTTACGACCTACGCCCACCGTGGTGTCGACCTCGTCGTCGCTGTTCTCGGTACGCTCAAGGCCGGCGCGACATTCAGCGTGATCGACCCGGCGTACCCGCCTTCGCGCCAGAACATCTACCTCCAGGTCGCCAAGCCTCGCGCCCTGATCGTGCTGGCCAAGGCAGGCGTCCTGCAGCCCTCGGTGCGCAAGTGCATCCAGGACGAGCTCGAACTCCGCACCGAGGTCCCAGCGCTCGAGCTGCTCGATGACGGCTCCGTTCGGGGTGGCGCTGCGTCGCAAGGCGGTGCTGATGTGCTCGAACAGCAGCAGGCGCTGGCGGGCGAGAGCACCAACGTCGTGCTGGGTCCCGACAGCGTGGGTACGCTCTCGTTCACCTCCGGATCCACCGGCATTCCCAAGGGTGTCAAGGGACGCCACTTTTCGCTCACCCACTTCTTCCCCTGGATGGGCGAGCGCTTCGGCCTCGGAGCGCACGAGCGATTCACCATGCTTTCCGGTATCGCCCACGACCCCATCCAGCGCGACATCTTCACTCCGCTCTTCTTTGGCGCCGAGCTGCACATCCCCACATCCGAGGATATCGGTACGCCTGGCCGTCTCGCCGAGTGGATGGCGGCGACCAAGGCGACCGTCACGCACCTCACCCCCGCCATGGGTCAGCTGCTGAGTGCGCAGGCGACGGCGCTGATCCCTTCGCTTCGCAACGCCTTCTTTGTGGGTGACGTGCTCACCAAGCGCGACTGCACGCGTCTGCAGGCGCTTGCCGCCAACGTCTGCATCATCAACATGTACGGCACCACCGAGACGCAGCGTGCGGTGAGCTACTTTGCCATCCCTCCCGTCAGCACCTCGACCACCTTCCTGCAGACGCAGAAGGACATCATGCCCGCCGGACAAGGAATGATCAACGTCCAGCTGCTCGTCGTCAACCGCAACGAGCGCACCGCCACCTGCGCCGTGGGCGAAGTCGGAGAGATCTACGTCCGCAGCGGTGGCTTGGCCGAGGGTTACCTTGGACCCCCGGAGGTGACGGCTGAAAAGTTCATGCCCAACTTCCTCGCGCCCAACCTCAGCTTCCCCGATACCATCAAGGACAAGCCCGAGGGTCAGTTCTGGAAGGGTATCCGCGACCGCATGTACAAGACGGGTGACCTGGGTCGCTACCTCGCCGACGGCACCGTCGAGTGCACGGGCCGTGCCGACGACCAGATCAAGATCCGCGGCTTCCGCATCGAGCTCGGCGAGATCGACACGCACCTTTCGCGCCACCCGCACGTGCGCGAGAACGTGACGCTCGTACGTCGCGACAAGGACGAGGAGAAGGTGCTCGTTTCTTACTTTGTGCCCGGCGCCGGTGCTGCCGAGTTCGAGGAGCAGGTCACCGAGGACGACGAGGGCGCAGCGGCGGCAGGAGGCAAGGCCGCCCGCGACGCCATGCTCGTCAAGGGCATGCGCCGTTACCGCACGCTCATCAAGGACATCCGCGACCACCTCAAGCGGAAGCTGCCGGCCTACTCGGTGCCGACGCTGTTCGTTCCGCTGCACAAGATGCCGCTCAACCCCAACGGCAAGATCGACAAGCCTGCGCTGCCCTTCCCCGACACCGCCATGGTGGCCGCTGTGGGCTCGGGCAGCTCGTCCGGTGGCAAGAACGGTGCGGACGCTGCGGCTGCGCTGGCGGCTGCTTCGCCAACCGAGCGCTCCGTAACGGAGCTATGGTCGCGATTGCTGCCCAACGCACCCTCGCCGATCCCGCTCGACGAGAGCTTCTTCGACCTCGGAGGCCACTCGATCCTGGCCACGCGCCTGGTGTTCGAGATGCGCAAGCAGTTTGTCATCAACGTGCCTCTTGGAGTTGTCTTCGACGCTCCCACTGTTCGAGGTCTCGCCAAGGCTGTCGACCAGCTGCGCCAGGCCGATCTTGGCCTGGGTGCTTCGCAAGCCAACGGTTCGGCGGCCTCGGCCAAGCCGAGCGAGGAGGCGAACCTGGACGAGAACTACGGCGCCGACGTGGCAACGCTGACGCCGAGCCTGCCCGAGTCGTTTGCGGGTGACAAGGTCAAGACGGCTGCGGCAGGACCACGCACCGTGCTGGTGACGGGTGTCACTGGCTTCTTGGGCGCCTTTATCCTGTACGACTTGCTGACCAAGCGCGCGTCGAGCGTTGCCAAGGTGTACGCGCATGTGCGAGCCAAGGACGAGGCGAACGCGCTCGAGCGTCTGCGCGAGGGCTGCAAGGGCCGAGGCATCTGGGACGACAAGTGGGTGAGCGAGGGACGTCTCGAGGTGGTTCTGGGTGACCTGGCGGCACCGCAGCGCCTGGGCATGTCGGAGGCGGTGTACGCCAAGCTGGCGGACGAGGTGGACGACATCCTGCACAACGGTGCTCTCGTGCACTGGGTGTACCCCTACAGCAAGCTGCGTGCTGCCAATGTGGGCTCGACGATCTGTGCGATCAAGCTGTGCAACACGGGCAAGAAGGCCAAGACGCTCACGTTCGTGTCGAGTACCTCGGCGCTGGATACCGACCACTACATCCGACTGTCGGACTCGATCGTGCACGGTCAGGACCCTGCGCAGAATGGATCGGCGGAGCAGCTGCACGGTGTGCCCGAGACGGACGACATCGAGGCCAACAGCCGCGGCCTCACCACGGGCTACGGTCAGTCCAAGTGGGTGGCAGAGAAGCTCATCATGATCGCTGCGTCGCGCGGACTCAAGGCGTCGATCGTTCGACCGGGCTACGTCGTGGGTGACTCCACGACGGCGGTGACCAACACGGACGACTTCCTCTGGCGTCTCGTCAAGGGCTCGATCCAGCTGGGCTTGGTCCCCGATATGCACAACCCGATCAACATGGTGCCCGTCGACCATGTGGCGAGGATCGCCACGCTGGCTTGCCTCAACAATGCGCTGGAGCTCGACACGATCAACAAGACGCCTGGCACCAACGCCAAGGTGTTCCACGTGACCAACCACCCGAGCATCCGATTCAACGACATGCTCGGCCAGCTCAGCCGCTACGGCTGGAGGGTGGAAAAGACCGAGTACGTGCACTGGCGCGCGAGGCTCGAGGAGCACGTGCTCAGCACGGGCTCGGGCTCGGTCGAGGACAACGCGCTGTTCCCGCTGCTGCACTTTGTGCTGGACGACTTGCCGACGTCGACCAAGTCGCCTGAGCTGGACGACCGCCACACGCAGGCGATCCTCGACGCTGCCTCCGAGGGCAAAGCCCAAGGCACGGTCATGGGCGTCGACCGCTCGCTCGTTGGGACGTACCTCGCCTGGCTGCTGGCGGTTGGCTTCCTGCCTGCGCCGTCGCAGGCGGATGCGGAACCGCTGCAGCTTGCCAACATCGGCACAGAGATGAAGGCCATCGGCCGTGGATCCGCCAACTAG(配列番号3)
・LYS2タンパク質の推定アミノ酸配列
MASSSALQASLDRWSARLTSLPSIALPTDYPRPATSQLVQALSSSTLSSATRKDLVRLALHHELDLHPAEHADDDEDNASPTPFHLLLAAFCVLLHRYTGDTDLVIGSSNPYTGEPLILRIPIEPNDPFWQIVRRIQQVEKEAAADAVPYDEIVKRVEAERAEREGPLPEGVQSAPIFRVRFFDETGGKARNFMQSTSLTTDLTVFLTKPGATPGDDSANAATPAESATPSSHTFRDSLVPNIAVHLSYNSLLFSSQRMQLILAQLSQLISVAASNPAAAVGSLPIRTPQENAFLPDPTKDLEWCGFRGAITQIFERNARAHPDRRCIVESLADDSGSLAEPSAPASRVREITYGQLDRASNVVAHHLLQAGVQREEVVTTYAHRGVDLVVAVLGTLKAGATFSVIDPAYPPSRQNIYLQVAKPRALIVLAKAGVLQPSVRKCIQDELELRTEVPALELLDDGSVRGGAASQGGADVLEQQQALAGESTNVVLGPDSVGTLSFTSGSTGIPKGVKGRHFSLTHFFPWMGERFGLGAHERFTMLSGIAHDPIQRDIFTPLFFGAELHIPTSEDIGTPGRLAEWMAATKATVTHLTPAMGQLLSAQATALIPSLRNAFFVGDVLTKRDCTRLQALAANVCIINMYGTTETQRAVSYFAIPPVSTSTTFLQTQKDIMPAGQGMINVQLLVVNRNERTATCAVGEVGEIYVRSGGLAEGYLGPPEVTAEKFMPNFLAPNLSFPDTIKDKPEGQFWKGIRDRMYKTGDLGRYLADGTVECTGRADDQIKIRGFRIELGEIDTHLSRHPHVRENVTLVRRDKDEEKVLVSYFVPGAGAAEFEEQVTEDDEGAAAAGGKAARDAMLVKGMRRYRTLIKDIRDHLKRKLPAYSVPTLFVPLHKMPLNPNGKIDKPALPFPDTAMVAAVGSGSSSGGKNGADAAAALAAASPTERSVTELWSRLLPNAPSPIPLDESFFDLGGHSILATRLVFEMRKQFVINVPLGVVFDAPTVRGLAKAVDQLRQADLGLGASQANGSAASAKPSEEANLDENYGADVATLTPSLPESFAGDKVKTAAAGPRTVLVTGVTGFLGAFILYDLLTKRASSVAKVYAHVRAKDEANALERLREGCKGRGIWDDKWVSEGRLEVVLGDLAAPQRLGMSEAVYAKLADEVDDILHNGALVHWVYPYSKLRAANVGSTICAIKLCNTGKKAKTLTFVSSTSALDTDHYIRLSDSIVHGQDPAQNGSAEQLHGVPETDDIEANSRGLTTGYGQSKWVAEKLIMIAASRGLKASIVRPGYVVGDSTTAVTNTDDFLWRLVKGSIQLGLVPDMHNPINMVPVDHVARIATLACLNNALELDTINKTPGTNAKVFHVTNHPSIRFNDMLGQLSRYGWRVEKTEYVHWRARLEEHVLSTGSGSVEDNALFPLLHFVLDDLPTSTKSPELDDRHTQAILDAASEGKAQGTVMGVDRSLVGTYLAWLLAVGFLPAPSQADAEPLQLANIGTEMKAIGRGSAN(配列番号4)
【0016】
・LYS4の配列
ATGCGGCAGCAGCTGGCGGCTTCGGGGAAATGCCGAGATTGGGCTGCAGCCCACAACTCTCTTTTGAGCCACGTCCAAAGGCCCACTTTCAAATCGACACGAGAAGGCTTCTCCCTTCCTCCCATCCAAAGCACGACGCTTGCATTGCCGCTTCTCACCACTACCTCGCTCCGCATCGCCCAGCGTCGCATCATCATGAGGGCTGCAAACATGCTGCGCCTCGGCGCTTCCCGGCTCTCGACGCCGCTGCTTCGTCGCAGCCTCGCCACGCACGCTGCGGTCAACCCGGCTAGCGGCACGTACAACCTCGTCGAAAAGATCGTGCAGAAGTACGCCGTGGACCAAGCGCCAGGATCGCACGTCAAGTCGGGTGACTACGTCTCCATCCGCCCCGGCACCGTCATGACGCACGACAACACCGGGCCCGTCATCTCCAAGTTCGGCTCGATCGGCGCCACGTCGATCTACAACCCGGACCAGGTGGTGTTTGCGCTGGACCACGACGTGCAGAACAAGTCGGCCAAGAACCTGGAAAAGTACAGCAAGATCGAGAGCTTTGCGCGCAAGCATGGTATCGACTTTTACCCTGCCGGGCGCGGTATCGGCCACCAGGTGCTGGTCGAGGAGGGCTATGCTTTCCCGCAGACGCTGGCGGTGGCAAGTGACTCGCACTCCAACATGTACGGCGGTGTCGGCTGTCTCGGTACACCCATCGTGCGCACGGATGCGGCGGCGATCTGGGCGACCGGCCAGACATGGTGGCAGATCCCCGAGGTGGTCAAGGTCGAGCTCAAGGGTCAGCTGCCCAAGGGTGTCACTGGCAAGGATGTGATCGTGGCGCTCTGCGGCTACTTCAACCAAGACCAGGTGCTGAATGCTGCCATCGAGTTCCACGGCTCAGGTCTTTCTGCGCTCTCGATCGAGGAGAGGCTGGCGATTGCCAACATGACCACCGAATGGGGTGCGCTTGCTGGTCTCTTCCCCACGGACGACGTCACGCTCGGCTGGTACGAGAAGCAGATCCGCAAGCGCGACAAGCTCGAGTTCCAGATCGGCTCGTCGCCCTCGCCGTCCGGCTCACACCCGCGTCTGAACATGCACCGACTCGACGAGCTCTCGCGCACGCTCCTCCGCCCGGATGCCGACGCGCTCTACTCGAAGCACCTCACGCTCGACCTCGCCACGCTCGTCCCGCACGTGAGCGGGCCGAACTCGGTCAAGGTGTCGACGCCGCTCGACGAGCTGGCGCACCAGAACATCGCCATCAACAAGGCGTATCTCGTGTCGTGCGTCAACTCGCGCGCGTCCGATCTCAAGGCGGCCGCCGACGTCATCCGCGGCAAGAAGGTCGCCAAGGGCGTCGAGTTCTACGTGGCAGCCGCGAGCAGTGTGGTACAGCGCGAGGCAGAGGAGGCAGGTGACTGGGGCGCCCTGATGGCCGCAGGCGCCAAGCCGTTGCCTGCGGGATGCGGACCTTGCATCGGCCTCGGCGTGGGTCTGCTCGAGGACGGCGAGGTGGGCATCTCGGCGACCAACAGGAACTACAAGGGCAGGATGGGCAGTCCCAACGCCCAGGCGTACCTCGCCTCGCCCGCAGTGGTGGCGGCGTCGGCGATTGAGGGCAAGATCTGCGGTCCTTCGGATCTGGACCCTTCGTTGCTGCCTCCCTCGCGTGGCCTCAAGTACTCGATCTCGACCAGTGCCGATGCAGCCTCTGCGGCGTCATCCTCGGCCTCGACCGACGCAGCTGGTGTCGAAGTGCTTCCTTCGTTCCCCAAGTCTTTCTCGGGCCCCTTGATCTTTGCGCCGCAGGACAACCTCAACACCGACGGCATCTACCCGGGCAAGTACACGTACCAAGACGACATTACGCCCGACAAACAAGCCGAAGTGGTCATGGAGAACTACGACGCCACATTTGCCTCGACTGTTGCCTCGCTCCGCACCAGCAGCAGTGCAGGGGGTTCGGACGGCGTCAAGCTCGGACCTGTTTTGCTGGGTGGGTACAACTTTGGCACGGGCAGTTCGCGAGAGCAGGCAGCTACGGCTCTCAAGTACGCCGGTGTTCCACTCGTGCTCGCCGGTAGCTTCGGCGACATCTTCAAGCGCAACGCGATCAACAACGGTCTCATCTGCCTCGAGTCGCACGAGCTCGTCCAGGACCTCACCGCGCTCTACCTCGGATCCAGGGACGCCGTTCGAAACCAAAAGGCCATTCTGCTCGACCAGTCCAACGTGCAAATCAACTCGGCCACGGGCGAGATCAACCTCTCCTACACCGCTCCTGACGGATCCAAGGTCAACAAGAAGTACACCGCCAAGCCTGCAGGCATCGGCAAGAGCGTCCAGGAGATCTACACCGCTGGCGGCCTCGAAAAGTGGGTCAAGGAGCGCATCTGA(配列番号5)
・LYS4タンパク質の推定アミノ酸配列
MRQQLAASGKCRDWAAAHNSLLSHVQRPTFKSTREGFSLPPIQSTTLALPLLTTTSLRIAQRRIIMRAANMLRLGASRLSTPLLRRSLATHAAVNPASGTYNLVEKIVQKYAVDQAPGSHVKSGDYVSIRPGTVMTHDNTGPVISKFGSIGATSIYNPDQVVFALDHDVQNKSAKNLEKYSKIESFARKHGIDFYPAGRGIGHQVLVEEGYAFPQTLAVASDSHSNMYGGVGCLGTPIVRTDAAAIWATGQTWWQIPEVVKVELKGQLPKGVTGKDVIVALCGYFNQDQVLNAAIEFHGSGLSALSIEERLAIANMTTEWGALAGLFPTDDVTLGWYEKQIRKRDKLEFQIGSSPSPSGSHPRLNMHRLDELSRTLLRPDADALYSKHLTLDLATLVPHVSGPNSVKVSTPLDELAHQNIAINKAYLVSCVNSRASDLKAAADVIRGKKVAKGVEFYVAAASSVVQREAEEAGDWGALMAAGAKPLPAGCGPCIGLGVGLLEDGEVGISATNRNYKGRMGSPNAQAYLASPAVVAASAIEGKICGPSDLDPSLLPPSRGLKYSISTSADAASAASSSASTDAAGVEVLPSFPKSFSGPLIFAPQDNLNTDGIYPGKYTYQDDITPDKQAEVVMENYDATFASTVASLRTSSSAGGSDGVKLGPVLLGGYNFGTGSSREQAATALKYAGVPLVLAGSFGDIFKRNAINNGLICLESHELVQDLTALYLGSRDAVRNQKAILLDQSNVQINSATGEINLSYTAPDGSKVNKKYTAKPAGIGKSVQEIYTAGGLEKWVKERI(配列番号6)
【0017】
・LYS9の配列
ATGGGCGTCATCACTCACCCCAACATTCGCGATGGATGGTTTTACGAGACCAACTCGCAATGGCCCGGTCAGGCCATGAGCCTCCAGGTGCAGCGCATCCTCCACCACGAGAAGTCGCTCTTCCAGGATGTGCTCGTCTTCGAGTCCACCACCTTCGGCAACGTCCTCGTCCTTGACGGCGTTATCCAGTGCACCGAGCGTGACGAGTTCTCCTACCAGGAGATGATTGCCCACCTCCCCATCGCCTCGCACCCCAACCCCGAGCGCGTTCTCGTAATCGGCGGCGGTGACGGCGGTGTCCTCCGCGAGGTCGTCAAGCACGACTCGGTCAAGGAGGCCATTCTCTGCGACATTGACGAGGCTGTCCCCCGTGTCTCCCAGCAGTACCTTCCCAAGATGGCCGAGGGTCTCAACCACCCCAAGTCCAAGGTCATCATCGGCGACGGCTTCGCTTTCCTCAAGGACCCCAAGAACAAGGCCAGCTTCGACGTCATCATCACCGACTCCTCCGACCCGGTCGGCCCCGCAGAGGTGCTCTTCCAGCAGCCCTACTTCGCCCTGCTCAAGGAGGCCCTCAAGCCCGGAGGACACATCTCCACCCAGGCCGAGTGTGTCTGGATCCACCTCAACCTCATCGGCGAGCTCCGCCGCTCCACCAAGGAGCTCTTCCCCGTCGCCGACTACGCCTTCACCACCATCCCCACCTACCCCTCCGGTCAGATCGGCTTCGTCGTCTGCTCGCTCGACGCCAACCGCAACGTTCGCGAGCCCCTCCGCCAGGTGCCCGACTGCCGATACTACAACTCGGAGGTGCACAAGGCTTCCTTTATCGTCCCCGAGTTCGCTCGCAAGGTCATTGAGGAGGGTGCTCCCGCCCCTGGCCGTGTGATCCCCACTGGTGAGGGCAATGCCAAGGCTCAGCGTGCTCCCAAGAAGATCCTCCTCCTCGGCTCCGGCTACGTCGCCAAGCCCTTCGCCGAGTACGTCACCCGCTTCCCCGAGTACAGCCTCACCGTCGCCTCGGTCAAGATCGAGCACTCGCAGCGCCTCATCGAGGGCCTCCACAACGCCAACGCCACCTCGGTCGACGTCAACGACCCTGCCGCACTCTCGGCGCTGATCAAGGGCCACGACGTTGTCATCTCGCTCATCCCTTACATCTACCATGCCTCGGTCATCAAGGCCGCTTGCGAGCACAAGGTCAACGTAGTCACCACCTCGTACGTCTCGGACGCTATCCGCGAGCTCGAGCCCGAGATCAAGAAGGCCGGCATCACCGTCATGAACGAGATCGGTCTCGACCCCGGTCTCGACCACCTCTACGCCGTCAAGGCCATCGACGACGTGCACGCCGAGGGCGGAAAGATCAAGTCCTTCCTCTCCTACTGCGGTGGTCTGCCTGCCCCCGAGGCGGCCGACAACCCGCTCGGATACAAGTTCTCCTGGTCGTCGCGCGGTGTGCTTCTCGCACTCCGAAACACGGCCAAGTTCTGGCAGGACGGCAAGGAGCTCACTGTCTCGGGTCAGGAGCTCATGGCCGCTGCCCAGAGCTTCTACATCAACCCTGCCTTCGCCTTTGTCGCCTACCCCAACCGTGACTCGACTCCTTTCAAGCAGTGGTACAACATCCCCGAGGCCGAGACTGTGATCCGCGGTACGCTCCGATACCAGGGCTTCCCCGAGTTCATCCTCGCCCTCGTCAAGCTCGGCTTCCTCGACGAGGAGGCCAAGGACTTCCTTGCCTACGGTACCAAGGCCTCGTGGGCTGACGTCACCGCCAAGATGGTCGGTGCCGCCTCCGCTGCCGAGACCGACCTGATCGCTGCCATCAAGACCAAGGTCTCGTTCAAGTCGGCTCAGGAGGAGGAGACCATCATCCGCGGTCTGCGCTGGCTCGACCTCTTCTCCACCAAGGCCCACGTCACCGTGCGTGGCACCGCCCAGCAGGAGGCCGGCAAGGTGGCCGGCAACCCGCTCGACTCGCTCTGCGCTACCCTCGAGGAGAAGTGCGCCTACGCCCCCGGCGAGCGCGACATGGTCATGCTCCAGCACAAGTTCGAGATCGAGACTGCCAACGGCGAGCACAAGACCCTCACCTCGACGCTGCTCGACTACGGTATTCCCCACGGAACCTCGTCGATGGCTAAGCTCGTCGGTGTCCCTTGCGCCATTGCTACCCGCCTCATCCTCGAGGGCCACCCGGCTCTCACCAAGGTCGGTATCCTGGCTCCTTACACCAAGGACATCTGCGATCCCATCCGTCTCGAGCTCGAGAAGGAGGGCATTGCCCTCGAGGAGCGCTACGTCTAG(配列番号7)
・LYS9タンパク質の推定アミノ酸配列
MGVITHPNIRDGWFYETNSQWPGQAMSLQVQRILHHEKSLFQDVLVFESTTFGNVLVLDGVIQCTERDEFSYQEMIAHLPIASHPNPERVLVIGGGDGGVLREVVKHDSVKEAILCDIDEAVPRVSQQYLPKMAEGLNHPKSKVIIGDGFAFLKDPKNKASFDVIITDSSDPVGPAEVLFQQPYFALLKEALKPGGHISTQAECVWIHLNLIGELRRSTKELFPVADYAFTTIPTYPSGQIGFVVCSLDANRNVREPLRQVPDCRYYNSEVHKASFIVPEFARKVIEEGAPAPGRVIPTGEGNAKAQRAPKKILLLGSGYVAKPFAEYVTRFPEYSLTVASVKIEHSQRLIEGLHNANATSVDVNDPAALSALIKGHDVVISLIPYIYHASVIKAACEHKVNVVTTSYVSDAIRELEPEIKKAGITVMNEIGLDPGLDHLYAVKAIDDVHAEGGKIKSFLSYCGGLPAPEAADNPLGYKFSWSSRGVLLALRNTAKFWQDGKELTVSGQELMAAAQSFYINPAFAFVAYPNRDSTPFKQWYNIPEAETVIRGTLRYQGFPEFILALVKLGFLDEEAKDFLAYGTKASWADVTAKMVGAASAAETDLIAAIKTKVSFKSAQEEETIIRGLRWLDLFSTKAHVTVRGTAQQEAGKVAGNPLDSLCATLEEKCAYAPGERDMVMLQHKFEIETANGEHKTLTSTLLDYGIPHGTSSMAKLVGVPCAIATRLILEGHPALTKVGILAPYTKDICDPIRLELEKEGIALEERYV(配列番号8)
【0018】
・LYS12の配列(下線部はイントロン)
ATGACGTCGACCGCCGCCAAGATCCTCAAGAATGCCACTTCGGGCGTGCTGCGCCTGGGCATGATGCCCGCAGACGGCATTGGACGCGAGGTGCTCCCTTGCGCGCAGCGTGTGCTCCAGAACACGCCCGGCGCACCCAAGTTTGAGTTTGTGCACCTCGACGCTGGCTTCGAGCACTTCCAGAAGACCGGCTCGGCGCTTCCCGAGGAGACCGTGCGTGCACTCAAGGACGACTGCCACGGAGCCATGTTCGGCTCCGTCTCGAGCCCGTCGCACAAGGTCGAGGGCTACAGCTCGCCCATCGTCAAGCTCAGGAAGGAGCTCGACCTGTACGCCAACATTCGCCCCGTCATCGGCGTGCGCGGCACCAAGGACGACGACAAGTTCATCGACAGCGTCATCATTCGCGAGAACACCGAGTGCCTGGTAAGTAGCTGATCCGTCGTCGAGGAGAGCGAAAGATGAGATACTGACGCAGAACGGTCCCTCCCCAACTCGCTTCCACGCGAGCAGTACATCAAGTCCGAGACGAGCGAGAGCGGTCCGGACGGTCAGATTGCGCGCGCCATCCGCCAGATCACCGAGAAGGCTTCGACGCGCATCGGCAAGAAGGCGTTTGAAGTCGCGATTGCGCGCAAGGAGCTGCGCAAGGTGAACCAGCCGTCGTACGAGCCTACCGTGACGATCTGCCACAAGTCCAACGTGCTGAGCGTCACCGACGGTCTCTTCCGCACCTCGGTCCGCGGCGTGTACGAGAAGGACCAGAAGGCCAACGGAGGCGCCGGCCGATACGAGGGCGTCAAGCTCAACGAGCAGCTCGTCGACTCCATGGTCTACCGCCTCTTCCGCGAGCCCGAGGTGTTTGACGTGGTCGTGGCGCCCAACCTGTACGGTGACATTGTCTCGGATGCTGCCGCCGCCCTCGTGGGCTCCCTTGGCCTCGTCCCCTCCGTCAACGCCGGCGACAACTTCTTCATGGTAAGCCCCATCCTCCGTCTTCTCCTTCCTTCCAGCCCCGAGCGCCTACTTACATTTTGCCCCGCCTTGTTCTTCCCTTGTGCTGCGCATCGTAGGGCGAGCCGGTCCACGGTTCGGCGCCCGATATCGCGGGTCAGGGCAAGGCGAACCCGATCGCCTCGATCCGCTCCGCCGCCCTCATGCTCGAATACATGGGCTACACCGAGCCTGCGCTCAAGATCTACACGGCCGTCGACCAGGTCATCCGCGAGGGCAAGTACCTCACCCCAGACCTCGGCGGATCCGCCACCACCACCCAGTGCGAAGAGGCCATCCTCAAAAAGATCAACGCCTAG(配列番号9)
・LYS12タンパク質の推定アミノ酸配列
MTSTAAKILKNATSGVLRLGMMPADGIGREVLPCAQRVLQNTPGAPKFEFVHLDAGFEHFQKTGSALPEETVRALKDDCHGAMFGSVSSPSHKVEGYSSPIVKLRKELDLYANIRPVIGVRGTKDDDKFIDSVIIRENTECLYIKSETSESGPDGQIARAIRQITEKASTRIGKKAFEVAIARKELRKVNQPSYEPTVTICHKSNVLSVTDGLFRTSVRGVYEKDQKANGGAGRYEGVKLNEQLVDSMVYRLFREPEVFDVVVAPNLYGDIVSDAAAALVGSLGLVPSVNAGDNFFMGEPVHGSAPDIAGQGKANPIASIRSAALMLEYMGYTEPALKIYTAVDQVIREGKYLTPDLGGSATTTQCEEAILKKINA(配列番号10)
【0019】
・LYS20の配列
ATGTGTGATCACTCCGAACCCTCCGCTATCCAGCAGGTCAACGGCACCGCCCCCGACACCCATGTCGCCATCGACACCTCGGCCCCCAACACCAACGGCGCCGCCAACGGTGCCAACGGTGCCCTCGCCACGGCAGACAACGGAAACGTAGGCTCCGTACAGCCCTTCAACACGCGCTACTCGGACTTCCTCTCCAACGTATCCAACTTCAAGATCATCGAGTCCACCCTCCGCGAGGGCGAGCAGTTCGCCAACGCCTTCTTCGACACCGAGACCAAGATCAAGATCGCCAAGGCGCTCGACAAGTTCGGCGTCGACTGCATCGAGCTCACCTCCCCCGCCGCCTCCGAGCAGTCGCGCAAGGACTGCGAGGCCATCTGCAAGCTCGGCCTCAAGGCCAAAGTCATCACCCACATCCGCTGCCACATGGACGACGCCCGCATCGCCGTAGAGACGGGCGTCGACGGCGTCGACGTCGTCATGGGCACCTCCAAGTTCCTCCGCGAGTTCTCGCACGGCAAGGACATGACCTACATCACCAAGACCGCCATCGAGGTCATCCAGTTTGTCAAGTCCAAGGGCATCGAGATCCGCTTCTCCACCGAAGACTCCTTCCGCTCCGACCTCGTCGACCTGCTCAGCATCTACCAGGCCGTCGACAAGGTCGGCGTCAACCGCGTCGGCATCGCAGACACCGTCGGCGTCGCAAACCCAAGACAGGTCTACGACCTCGTCCGCACCCTCCGCGGCGTCGTCGGCTGCGACATCGAGTGCCACTTCCACAACGACACCGGCTGCGCCATCGCCAACGCCTACACCGCCCTCGAGGCCGGCGCCACCCACGTAGACACCTCGGTGCTCGGCATCGGCGAGCGCAACGGCATCCCCTCGCTCGGCGGCTTCATCGCACGCATGTACACCGCCGACCGCGAATACGTGATGAGCAAGTACAACCTCAAGGCGCTGCGCGAGGTCGAGAACCTCGTCGCCGAGGCGGTCCAGATCCAGGTGCCCTTCAACAACTACGTCACCGGCTACTGCGCCTTCACCCACAAGGCCGGCATCCACGCCAAGGCCATCCTCGCCAACCCGTCCACATACGAGATCATCCGCCCCGAGGACTTTGGCATGAGCCGCTACGTCTCCATCGGACACCGCCTCACCGGCTGGAACGCCGTCAAGTCGAGGTGCGAGCAGCTCGAGCTCAACCTCACCGAGGACCAGGTCAAGGAGGTCACCGCCAAGATCAAGCAGCTCGCAGACGTGCGCGAGCAGACCATGGAGGACGTCGACTCGATTCTCAGGAACTACGCGCGCGCCATCGAGAACGGCACCGCCTAA(配列番号11)
・LYS20タンパク質の推定アミノ酸配列
MCDHSEPSAIQQVNGTAPDTHVAIDTSAPNTNGAANGANGALATADNGNVGSVQPFNTRYSDFLSNVSNFKIIESTLREGEQFANAFFDTETKIKIAKALDKFGVDCIELTSPAASEQSRKDCEAICKLGLKAKVITHIRCHMDDARIAVETGVDGVDVVMGTSKFLREFSHGKDMTYITKTAIEVIQFVKSKGIEIRFSTEDSFRSDLVDLLSIYQAVDKVGVNRVGIADTVGVANPRQVYDLVRTLRGVVGCDIECHFHNDTGCAIANAYTALEAGATHVDTSVLGIGERNGIPSLGGFIARMYTADREYVMSKYNLKALREVENLVAEAVQIQVPFNNYVTGYCAFTHKAGIHAKAILANPSTYEIIRPEDFGMSRYVSIGHRLTGWNAVKSRCEQLELNLTEDQVKEVTAKIKQLADVREQTMEDVDSILRNYARAIENGTA(配列番号12)
【0020】
・URA3の配列(下線部はイントロン)
ATGTCGAGCATCACCCTCCAGACGTACGCATCACGCGCGGCCAAGCAGCCCAACGCCGCCGCCAAGGCGCTGCTCGAGTGCATCGAGCGCAAGCAGTCCAACCTGTGCGTCTCGGTCGACGTGACCAACAAGCAGGACCTGCTCGACGTGTGCGATGCCGTCGGCCCAGACGTGTGCCTGGTCAAGACGCACATCGACATTGTCGAGGATTTTGACATCGACCTCGTCCAGCAGCTCACCGCGCTCAGCCAGAAGCACGACTTTCTCATCTTCGAGGACCGCAAGTTTGCCGACATTGGTAAGTCCATGCGATCGTCCACTCGAAGTGCCTGTGCACCCCGCTGACACGAGCTTACCCTGGCGCATTTGCATCTACAGGCAACACGGCAAGCCTGCAGTACTCGTCGGGCGTGCACAAGATTGCGTCGTGGTCGCACATCACCAACGCGCATCTGGTGCCTGGACCGGGCGTCATCAGCGGTCTCGCCAAGGTGGGCCAACCACTCGGACGCGGCCTTCTGCTGCTCGCCGAGATGAGCTCGGCAGGCGCGCTCACCAAGGGTTCCTACACGCAGGCGTGTGTCGACGAGGCCAAGAAGGACACCACCGGCTTTGTCTGTGGCTTCATCGCCATGTCGCGCGTCGACGAGCGCGAGGGCCCCAACACGGAGCGCGACCTGCTCATCCTCACACCGGGCGTCGGCCTCGACGTCAAGGGCGATGCCATGGGCCAACAGTACCGCACGCCCGACCAGGTCATCCGTGAAAGCGGCTGCGACGTCATCATCGTCGGTAGGGGTATCTACGGCGCTCTCATGACCGAAGAGGGCAAGGCCGACAAGAAGGCGGCGTTCGACAAGGTCAGGCAACAGGGTTCGCGGTACAAGAAGGCGGGTTGGGAGGCCTACCTCGCCCGTCTTGGTCAGAAGTAG(配列番号13)
・URA3タンパク質の推定アミノ酸配列
MSSITLQTYASRAAKQPNAAAKALLECIERKQSNLCVSVDVTNKQDLLDVCDAVGPDVCLVKTHIDIVEDFDIDLVQQLTALSQKHDFLIFEDRKFADIGNTASLQYSSGVHKIASWSHITNAHLVPGPGVISGLAKVGQPLGRGLLLLAEMSSAGALTKGSYTQACVDEAKKDTTGFVCGFIAMSRVDEREGPNTERDLLILTPGVGLDVKGDAMGQQYRTPDQVIRESGCDVIIVGRGIYGALMTEEGKADKKAAFDKVRQQGSRYKKAGWEAYLARLGQK(配列番号14)
【0021】
前記遺伝子における変異部位は、当該遺伝子がコードしているタンパク質の機能を低下させるものである限り、特に限定はされないが、例えば、前記遺伝子における変異は、LYS12タンパク質のMet1~Glu195をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失であってもよく、又は、URA3の113番目のCの置換(例えばGへの置換)、867番目のCの置換(例えばTへの置換)、及び/又は614番目のTの欠失であってもよい。なお、本明細書においては、シュードザイマ属菌の遺伝子の名称は、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)で知られている遺伝子ホモログの名称をそのまま使用していることもある。そして、特にP.アンタクティカの遺伝子について言及する際には、当該遺伝子名の頭に「Pa」を付すこともある。例えば、S.セレヴィシエのLYS12又はURA3に相同性を示すP.アンタクティカの遺伝子を、それぞれ「LYS12」及び「URA3」と単純に呼ぶこともあるし、「PaLYS12」及び「PaURA3」と呼ぶこともある。
【0022】
ある態様では、本発明は、シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株に関しており、当該栄養要求性変異株は、LYS2、LYS12、及び/又はLYS20塩基配列の少なくとも一部に変異を有するか、又は、URA3及び/又はURA5塩基配列の少なくとも一部に変異を有する。前記遺伝子における変異の種類は、当該遺伝子がコードしているタンパク質の機能を低下させるものである限り、特に限定はされないが、例えば、LYS12タンパク質のMet1~Glu195をコードする遺伝子の少なくとも一部の欠失であるか、又は、URA3の113番目のCの置換(例えばGへの置換)、867番目のCの置換(例えばTへの置換)、及び/又は614番目のTの欠失であってもよい。前記栄養要求性変異株を作製する親株としては、例えばP.アンタクティカ、P.フロキュローサ(flocculosa)、P.ルグローサ(rugulosa)、P.アフィディス(aphidis)、及びP.ツクバエンシスなどのシュードザイマ属菌の種々の菌株を採用することができるが、偽菌糸を形成しないシュードザイマ属の菌株が好ましい。本明細書に記載の「偽菌糸」とは、菌の出芽によって生じた菌糸であって、娘細胞が母細胞と一端において密接しつつ細長い細胞に延長し、これらの末端からさらなる出芽によって新しい細長い細胞が生じるという工程が繰り返されて形成した長い糸状の構造のことをいう。前記親株は、特に好ましくは、P.アンタクティカGB-4(0)株、P.アンタクティカOMM62-2株(受託番号NITE P-02239)、P.フロキュローサ(flocculosa)JCM10321株、又はP.ツクバエンシス(tsukubaensis)JCM10324株である。
【0023】
前記シュードザイマ属菌又はP.アンタクティカGB-4(0)株から栄養要求性変異株を取得する方法としては、当技術分野で知られている種々の方法を、特に制限なく採用することができる。例えば、紫外線照射などによって突然変異を誘発したり、天然の環境で生じた変異株をスクリーニングしたりすることによって、前記栄養要求性変異株を取得してもよい。
【0024】
ある態様では、本発明は、目的のタンパク質を発現するシュードザイマ属菌の形質転換体に関している。前記形質転換体は、シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株に、前記目的のタンパク質を発現する遺伝子カセットを導入することで作製されるものであり、この遺伝子カセットを少なくとも1つ有している。前記遺伝子カセットは、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1のプロモーター、及び、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子を含んでおり、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子は、前記プロモーターの下流に位置している。前記シュードザイマ属菌のXYN1は、キシラナーゼをコードしている遺伝子であり、前記シュードザイマ属菌のFRE1は、鉄還元酵素(Ferric reductase)様タンパク質をコードしているS・セレヴィシエのFRE1と相同性が高い遺伝子である。また、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子は、当該栄養要求性相補遺伝子のプロモーターの下流に位置していてもいいし、他のプロモーターの下流に位置していてもよい。そして、前記遺伝子カセットは、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子の下流に、ターミネーター(例えば、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1などのターミネーター)を任意で含んでもよい。なお、前記遺伝子カセットを構成する遺伝子のすべてが、形質転換される前記栄養要求性変異株と同じ種に由来する場合、作製された形質転換体はセルフクローニング株になる。セルフクローニング株は、組換え体としての厳格な管理が要求されず、野生株と同等に扱うことができる。
【0025】
前記遺伝子カセットを複数有する形質転換体は、前記栄養要求性変異株に前記遺伝子カセットを導入する際に、たまたま複数の遺伝子カセットが導入されたことで作製されたものであってもいいし、前記遺伝子カセットを1つ有する形質転換体を一度作製した後に、同じ遺伝子カセットを繰り返し導入することによって作製されたものであってもよい。前記遺伝子カセットを複数有する形質転換体は、前記目的のタンパク質を、より大量に発現することが期待される。
【0026】
ある態様では、本発明は、目的のタンパク質を生産する方法に関しており、シュードザイマ属菌の栄養要求性変異株を用意する工程、前記栄養要求性変異株に、遺伝子カセットを少なくとも1つ導入する工程、及び、前記遺伝子カセットを導入した栄養要求性変異株を培養して、前記目的のタンパク質を生産する工程を含んでいる。前記遺伝子カセットは、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1のプロモーター、及び、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子を含み、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子が、前記プロモーターの下流に位置している。また、前記栄養要求性変異株の栄養要求性を相補する遺伝子は、当該栄養要求性相補遺伝子のプロモーターの下流に位置していてもいいし、他のプロモーターの下流に位置していてもよい。そして、前記遺伝子カセットは、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子の下流に、ターミネーター(例えば、シュードザイマ属菌のXYN1又はFRE1などのターミネーター)を任意で含んでもよい。
【0027】
本発明のシュードザイマ属菌の形質転換体に発現させる目的のタンパク質又は本発明の方法で生産する目的のタンパク質としては、種々のタンパク質を特に制限なく採用することができ、シュードザイマ属菌のタンパク質を採用してもよく、シュードザイマ属菌以外の生物のタンパク質を採用してもよい。前記シュードザイマ属菌のタンパク質は、例えば、生分解性プラスチック分解酵素であるクチナーゼ様酵素1(CLE1)(P.アンタクティカのCLE1を特に「PaE」又は「PaCLE1タンパク質」ともいう)、リパーゼA、又はリパーゼBであってもよい。前記シュードザイマ属菌以外の生物のタンパク質は、例えば、ルシフェラーゼ、異種の酵母や糸状菌の生分解性プラスチック分解酵素、又はアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の酵素だけでなく、抗体の抗原認識部位等の有用なタンパク質であってもよい。また、前記目的のタンパク質をコードする遺伝子で使用されているコドンとしては、前記形質転換体が利用することができるものである限り、種々のコドンを特に制限なく採用することができるが、当該コドンは、シュードザイマ属菌が高頻度で使用するコドンに最適化されていてもよく、及び/又は、望ましいGC含量を与えるように最適化されていてもよい。シュードザイマ属菌が高頻度で使用する前記コドンは、例えば、8%キシロース又は8%グルコース含有培地で培養したP.アンタクティカGB-4(0)株の全RNAをマイクロアレイで分析して得られた遺伝子発現プロファイルから、キシロースを含む培地で培養したときにだけ転写量が高くなる上位20位までの遺伝子を選び出し、それらの遺伝子におけるコドンの使用頻度を調べることで同定してもよい。前記GC含量は、例えば、45~75%であってもよく、好ましくは50~70%、より好ましくは55~67%である。前記コドン及び/又は前記GC含量を最適化することで、前記目的のタンパク質の発現効率を高めることができる。
【0028】
本発明のP.アンタクティカの形質転換体の具体的な例としては、P.アンタクティカGB-4(0)株のリジン要求性変異株であるL1株に由来するL1-S12株(受託番号NITE P-02393)が挙げられる。宿主である前記L1株では、PaLYS12塩基配列の前半(5’末端側)の672bpを含む7827bpが欠損し、細胞内のリジン生合成経路が機能しなくなっている。前記L1-S12株は、P.アンタクティカの生分解性プラスチック分解酵素であるPaE(PaCLE1タンパク質)をコードする遺伝子を、P.アンタクティカのキシラナーゼ遺伝子PaXYN1のプロモーター及びターミネーターの間に備え、かつPaLYS12のプロモーター及びターミネーターの間にPaLYS12が配置された配列が接続されている遺伝子カセットを前記L1株に導入し、遺伝子導入された細胞を選択した後、生分解性プラスチック分解酵素活性(PaE活性)を指標としてスクリーニングすることによって取得された、PaE高発現株である。なお、前記遺伝子カセットを構成するPaEをコードする遺伝子(PaCLE1)、PaXYN1のプロモーター及びターミネーター、PaLYS12、並びに、PaLYS12のプロモーター及びターミネーターは、いずれもP.アンタクティカに由来する遺伝子であるので、前記L1-S12株は、セルフクローニング株である。
【0029】
本発明のP.アンタクティカの形質転換体の別の具体的な例としては、P.アンタクティカGB-4(0)株のリジン要求性変異株であるL1株に由来するGB-4(0)PGB480株(受託番号NITE P-02638)及びGB-4(0)PGB474株(受託番号NITE P-02640)、並びに、P.アンタクティカGB-4(0)株のウラシル要求性変異株であるPGB371株に由来するGB-4(0)PGB469株(受託番号NITE P-02639)が挙げられる。これらの形質転換体に導入された遺伝子カセットは、P.アンタクティカに由来するDNA配列のみで構成されていたので、当該形質転換体は、セルフクローニング株である。
【0030】
ある態様では、本発明は、安定化された生分解性プラスチック分解酵素を取得する方法に関しており、前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を用意する工程、前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液にエタノールを添加して、前記生分解性プラスチック分解酵素を安定化する又は沈殿させる工程、及び、前記安定化した又は沈殿した生分解性プラスチック分解酵素を回収する工程を含んでいる。多くのタンパク質は、エタノールにより変性し、溶液中で沈殿を形成して失活するが、前記生分解性プラスチック分解酵素は、エタノールにより沈殿を形成して一時的に失活するものの、前記生分解性プラスチック分解酵素を水又は緩衝液中に再溶解すれば、当該酵素は再び活性を取り戻す。加えて、前記生分解性プラスチック分解酵素は、エタノール溶液中で安定に保存することができる。このように、エタノールを使用すれば、P.アンタクティカなどの酵母の培養液中に回収した生分解性プラスチック分解酵素を、効率よく精製及び濃縮し、かつ安定に保存することが可能となる。前記エタノールの添加後の終濃度は、前記生分解性プラスチック分解酵素の精製及び濃縮を目的とする場合、当該酵素が沈殿により回収できる限り特に制限されないが、例えば、約50%~約99%であってもよく、好ましくは約75%~約90%である。前記生分解性プラスチック分解酵素の沈殿は、遠心分離法又はろ過(ろ別)などによって回収して、沈殿の状態で保管してもよい。また、前記生分解性プラスチック分解酵素の活性を安定に保存することを目的とする場合は、当該酵素は沈殿してもしなくてもよく、前記エタノールの添加後の終濃度は、例えば、約1%~90%であってもよく、好ましくは約5%~70%、特に好ましくは約10%~50%である。沈殿を形成しないが安定化されている生分解性プラスチック分解酵素は、エタノールを添加した後の溶液としてそのまま回収して、溶液の状態で保管してもよい。
【0031】
前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液にエタノールを添加する工程は、終濃度が約10%~約90%(好ましくは約30~約80%、特に好ましくは約65%~約75%)となるようにエタノールを添加する工程、及び、終濃度が約50%~約99%(好ましくは約75%~約90%)となるようにエタノールを添加する工程を含んでもよい。一般に、エタノールには殺菌作用があり、特にエタノールの濃度を約65%~約75%とすれば、最も効果的にエタノールによる殺菌作用が奏されるので、前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液のエタノール濃度を、一時的に約65%~約75%などの殺菌作用が奏される範囲の濃度に調整して殺菌処理を施した後に、前記生分解性プラスチック分解酵素を沈殿により回収するための所定の濃度に調整することで、P.アンタクティカなどの酵母の培養液中に生産された生分解性プラスチック分解酵素を精製しつつ、当該培養溶液中に混入している可能性のある前記生分解性プラスチック分解酵素の産生菌体を殺すことができると期待できる。前記生分解性プラスチック分解酵素は、屋外の圃場で使用済みの生分解性プラスチック製農業用マルチフィルム等を分解するために使用される場合もあるので、遺伝子操作を受けた菌体を殺すことによって、当該菌体が自然界中に拡散することを防ぐことが期待できる。
【0032】
本発明の取得方法は、前記エタノール添加工程の前に、前記生分解性プラスチック分解酵素を濃縮する工程を含んでもよい。前記濃縮の手段としては、当技術分野で通常用いられる手段を特に制限されることなく使用することができ、例えば、前記濃縮工程は、前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を限外濾過に供する工程、前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液に硫酸アンモニウムを添加して沈殿を形成させ、当該沈殿を回収する工程、又は、前記生分解性プラスチック分解酵素を含む溶液を凍結乾燥に供する工程などを含んでもよく、これらの工程の任意の組み合わせを含んでもよい。生分解性プラスチック分解酵素を含む微生物培養液に対して、例えば終濃度が約90%になるまでエタノールを添加することは技術的には可能であるものの、大量のエタノールが必要となる。一方、エタノールを添加する前に限外濾過、硫酸アンモニウム、又は凍結乾燥などによって前記生分解性プラスチック分解酵素を濃縮しておけば、比較的少量のエタノールを使用すれば足りるので、エタノール添加操作が容易になる。前記硫酸アンモニウムの添加後の終濃度は、前記生分解性プラスチック分解酵素が沈殿により回収できる限り特に制限されないが、例えば、約40%飽和~約100%飽和であってもよく、好ましくは約50%飽和~約80%飽和である。
【0033】
本発明の取得方法は、前記生分解性プラスチック分解酵素を、本発明の目的のタンパク質を生産する方法に従って生産する工程をさらに含んでもよい。
【0034】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
〔実施例1〕P.アンタクティカの新規菌株
(1)P.アンタクティカGB-4(0)株の低通気量条件下でのタンパク質生産能
日本国茨城県産のイネのもみ殻(農業生物資源ジーンバンク、JP番号203119)から、生分解性プラスチックであるポリブチルサクシネート(PBS)マルチフィルム及びポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)マルチフィルムを分解する活性を有する菌、すなわち生分解性プラスチック分解酵素であるPaEを産生する菌として、P.アンタクティカGB-4(0)株(受託番号NITE P-02392)及びP.アンタクティカGB-4(1)W株(受託番号FERM P-22155)を単離した。
【0036】
これらの菌株を異なる通気量でジャー培養したときの培養液中のPaE活性を
図1に示す。10LPMの通気量で培養した場合、P.アンタクティカGB-4(0)株の培養液とP.アンタクティカGB-4(1)W株の培養液とは、ほぼ同等のPaE活性を示した。一方、2LPMの通気量で培養した場合、P.アンタクティカGB-4(1)W株の培養液中のPaE活性は、10LPMの通気量で培養した場合と比較して低下したが、P.アンタクティカGB-4(0)株の培養液中のPaE活性はほとんど変化しなかった。したがって、P.アンタクティカGB-4(0)株は、通気量の低い培養条件下でも、タンパク質を生産する能力が高いことがわかった。
【0037】
(2)P.アンタクティカGB-4(0)株の導入遺伝子保持能
P.アンタクティカGB-4(0)株及びP.アンタクティカT-34株に、ネオマイシン耐性遺伝子を含むプラスミド(pUXV1-neo)を導入して形質転換した。その形質転換効率(DNA1μgあたりの形質転換体数)を計算すると、P.アンタクティカT-34株では、1.4形質転換体/μgDNAであったのに対し、P.アンタクティカGB-4(0)株では、57.4形質転換体/μgDNAだった。したがって、P.アンタクティカGB-4(0)株は、形質転換効率が高いことがわかった。
【0038】
微分干渉装置が付いた光学顕微鏡で各菌体の形態を観察すると(詳細は後述の実施例3(6)を参照)、P.アンタクティカT-34株は、増殖中に偽菌糸を形成しているが(
図2F)、P.アンタクティカGB-4(0)株は、偽菌糸をほとんど形成せずに出芽して増殖した後に、娘細胞が母細胞から切り離されていることがわかった(
図2A)。偽菌糸を形成する菌株の場合は、増殖中に偽菌糸から連鎖した複数の細胞が生じ得る。そのため、遺伝子操作を行った後、選択培地に生育したコロニーには、連鎖した細胞由来の導入された遺伝子を保持している形質転換体と、当該遺伝子を保持していない非形質転換体が混在していると考えられる。これに対して、P.アンタクティカGB-4(0)株は偽菌糸をほとんど形成しないため、導入された遺伝子を保持した細胞だけが、選択培地上で増殖しやすいのではないかと考えられる。このように、P.アンタクティカGB-4(0)株は、タンパク質生産能が高く、かつ導入遺伝子保持能も優れているので、この菌株を所望のタンパク質生産のために利用することができる。また、P.アンタクティカGB-4(0)株を栄養要求性変異株の作製のために使用し、当該変異株を所望のタンパク質生産のために利用することもできる。
【0039】
〔実施例2〕P.アンタクティカのリジン要求性変異株の作製
(1)目的
P.アンタクティカの栄養素の合成遺伝子を破壊した栄養要求性変異株を作製する。この失われた栄養要求性を相補する遺伝子を遺伝子導入ベクターのマーカーとして利用することで、セルフクローニング株を選択することも可能となる。まずは、リジン要求性変異株を作製する。
【0040】
(2)材料
本実施例で使用した培地の組成は以下のとおりだった。
・YM培地
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 0.3質量%
モルトエキス(Difco Laboratories社製) 0.3質量%
ペプトン(Difco Laboratories社製) 0.5質量%
グルコース 1.0質量%
・SD培地
アミノ酸と(NH4)2SO4を含まないバクトイーストナイトロジェンべース(Difco Laboratories社製) 0.17質量%
グルコース 2.0質量%
(NH4)2SO4 0.5質量%
・SD w/o AA&AS培地
アミノ酸と(NH4)2SO4を含まないバクトイーストナイトロジェンべース(Difco Laboratories社製) 0.17質量%
グルコース 2.0質量%
・SD NaNO3培地
アミノ酸と(NH4)2SO4を含まないバクトイーストナイトロジェンべース(Difco Laboratories社製) 0.17質量%
NaNO3 0.2質量%
グルコース 2.0質量%
【0041】
本実施例で使用したプライマーの塩基配列は以下のとおりだった。
・Lys12-pro-618 F
5'-GACATATGAGTGGACAGGCGTGTTCCACAGACAG-3'(配列番号15)
・Lys12-ter+1782 R
5'-GAGAATTCCGAGAAGTTCACCTCCATGGACGAGC-3'(配列番号16)
・Lys20-21-618 F1
5'-TGTGGCAAAAAGCGGCCCAGCGCCA-3'(配列番号17)
・Lys20-21+1802 R4
5'-TCTGAAGCAGGTCAAGACTTTTGTT-3'(配列番号18)
・LYS2 pro F
5'-GATGTGGAGTCCATTGCTGTTGTCGAC-3'(配列番号19)
・LYS2 ter R
5'-CAAATCCCTTCTTTCGTCCCTCGGCT-3'(配列番号20)
【0042】
(3)紫外線照射による栄養要求性変異株の取得
P.アンタクティカGB-4(0)株を5mLのYM培地を含む試験管に接種し、30℃、160rpmで、24時間振とう培養した。この培養液1mLを30mLの冷滅菌水を含むシャーレに加え、スターラーで撹拌しながら、60秒間紫外線を照射した。遠心分離によって紫外線照射した菌体を全量回収し、5mLのYM培地に再懸濁した後、30℃、160rpmで、3時間の回復培養を行った。回復培養後の培養液1mLを回収し、菌体を滅菌水で2回洗浄した後、Wickerhamの合成培地に基づく最少培地(SD)から窒素源となる硫酸アンモニウムを除いた培地(SD w/o AA&AS培地)5mLを含む試験管に加え、30℃、160rpmで、4.5時間振とう培養し、窒素飢餓と細胞増殖の休止を促した。窒素飢餓処理した細胞を回収し、菌体を滅菌水で2回洗浄した後、SD培地の窒素源として硝酸ナトリウムを用いたSD NaNO3培地4mLで再懸濁した。これを30℃、160rpmで、3時間振とう培養し、栄養要求性ではない細胞の増殖を促した。この培養液に500μLのナイスタチン溶液(100μg/mL)を加え、さらに30℃、160rpmで、1時間振とう培養することで、栄養要求性ではない増殖中の細胞を死滅させた(ナイスタチン濃縮)。ナイスタチン濃縮処理液を冷滅菌水で103倍に希釈した後、50μLずつYM寒天培地(2質量%の寒天を含むYM培地)に塗布した。これを30℃で2日間静置培養すると、1枚のシャーレあたり約200個のコロニーが出現した。増殖してきた約3600個のコロニーについて、YM寒天培地上及びSD寒天培地(2質量%の寒天を含むSD培地)上にレプリカを作製した。その結果、YM寒天培地上では増殖できるがSD培地上では増殖できない3種の菌株を取得したので、これらを各種のアミノ酸を添加した最少培地へ移植した。そうすると、当該菌株は、いずれもリジンを加えた培地上でのみ生育を回復したことから、リジン要求性変異株であると考えられた。各菌株を、P.アンタクティカGB-4(0)-L1株、GB-4(0)-L8株、及びGB-4(0)-L14株と名付けた。
【0043】
(4)取得したリジン要求性変異株の変異遺伝子の同定
パン酵母S.セレヴィシエのリジン合成関連の遺伝子情報に基づき、P.アンタクティカGB-4(0)株のゲノム情報から、相同遺伝子PaLYS1、PaLYS2、PaLYS4、PaLYS9、PaLYS12、PaLYS20を見出した。P.アンタクティカGB-4(0)株のゲノムDNAからPCRで増幅させた各遺伝子を、取得した3種の菌株(L1株、L8株、及びL14株)に導入し、最小培地における増殖が回復するかどうか調べた。その結果、L1株は、PaLYS12遺伝子断片(Lys12-pro-618 F及びLys12-ter+1782 Rをプライマーとして使用)を導入した場合に増殖が回復したことから、PaLYS12変異株と同定された。L8株は、PaLYS20遺伝子断片(Lys20-21-618 F1及びLys20-21+1802 R4をプライマーとして使用)を導入した場合に増殖が回復したことから、PaLYS20変異株と同定された。L14株は、PaLYS2遺伝子断片(LYS2 pro F及びLYS2 ter Rをプライマーとして使用)を導入した場合に増殖が回復したことから、PaLYS2変異株と同定された。
【0044】
また、L1株のゲノム配列を解読し、親株であるGB-4(0)株のゲノム配列と比較した。その結果、L1株では、PaLYS1、PaLYS2、PaLYS4、PaLYS9、及びPaLYS20は健全であったが、PaLYS12塩基配列の前半(5’末端側)の以下に示す672bp(下線部はイントロン)及び当該遺伝子の上流側の配列を含む7827bpが欠損していることがわかった。
【0045】
ATGACGTCGACCGCCGCCAAGATCCTCAAGAATGCCACTTCGGGCGTGCTGCGCCTGGGCATGATGCCCGCAGACGGCATTGGACGCGAGGTGCTCCCTTGCGCGCAGCGTGTGCTCCAGAACACGCCCGGCGCACCCAAGTTTGAGTTTGTGCACCTCGACGCTGGCTTCGAGCACTTCCAGAAGACCGGCTCGGCGCTTCCCGAGGAGACCGTGCGTGCACTCAAGGACGACTGCCACGGAGCCATGTTCGGCTCCGTCTCGAGCCCGTCGCACAAGGTCGAGGGCTACAGCTCGCCCATCGTCAAGCTCAGGAAGGAGCTCGACCTGTACGCCAACATTCGCCCCGTCATCGGCGTGCGCGGCACCAAGGACGACGACAAGTTCATCGACAGCGTCATCATTCGCGAGAACACCGAGTGCCTGGTAAGTAGCTGATCCGTCGTCGAGGAGAGCGAAAGATGAGATACTGACGCAGAACGGTCCCTCCCCAACTCGCTTCCACGCGAGCAGTACATCAAGTCCGAGACGAGCGAGAGCGGTCCGGACGGTCAGATTGCGCGCGCCATCCGCCAGATCACCGAGAAGGCTTCGACGCGCATCGGCAAGAAGGCGTTTGAAGTCGCGATTGCGCGCAAGGAGCTGCGCAAGGTGAACCAGCCGTCGTACGAG(配列番号21)
【0046】
上記欠損部分の推定アミノ酸配列は以下のとおりである。
MTSTAAKILKNATSGVLRLGMMPADGIGREVLPCAQRVLQNTPGAPKFEFVHLDAGFEHFQKTGSALPEETVRALKDDCHGAMFGSVSSPSHKVEGYSSPIVKLRKELDLYANIRPVIGVRGTKDDDKFIDSVIIRENTECLYIKSETSESGPDGQIARAIRQITEKASTRIGKKAFEVAIARKELRKVNQPSYE(配列番号22)
【0047】
〔実施例3〕リジン要求性株を利用した生分解性プラスチック分解酵素PaE高生産セルフクローニング株の作製
(1)目的
前述のL1株を宿主として選択し、PaLYS12を遺伝子導入マーカーとして用いて、同種の細胞の遺伝子のみで構成したタンパク質高生産用カセットを導入し、セルフクローニングによるタンパク質高生産システムを構築する。P.アンタクティカでは、キシロース存在下でPaXYN1プロモーター制御下の遺伝子が強力に発現誘導されることがわかっている(国際公開第2014/109360号)。そこで、PaXYN1プロモーターの制御下でPaEを生産させるセルフクローニング株を作製する。
【0048】
(2)材料
本実施例で使用した培地の組成は以下のとおりだった。
・SDP寒天培地
アミノ酸と(NH4)2SO4を含まないバクトイーストナイトロジェンべース(Difco Laboratories社製) 0.17質量%
グルコース 2.0質量%
0.5M Na2HPO4溶液 5mL/L
寒天 2.0質量%
・XY培地
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 1質量%
キシロース 6質量%
・3xFMM(Fungal minimum medium)8%キシロース培地
NaNO3 0.2質量%
KH2PO4 0.06質量%
MgSO4・7H2O 0.06質量%
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 0.3質量%
キシロース 8.0質量%
・YPX培地
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 1質量%
バクトペプトン(Difco Laboratories社製) 2質量%
キシロース 8質量%
・3xFMM(Fungal minimum medium)-0.5%PBSAエマルジョン・8%キシロース寒天培地
NaNO3 0.2質量%
KH2PO4 0.06質量%
MgSO4・7H2O 0.06質量%
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 0.3質量%
PBSAエマルジョン* 0.5質量%
キシロース 8.0質量%
寒天 2質量%
*ビオノーレエマルジョンEM-301(PBSA)(昭和電工株式会社製)
【0049】
本実施例で使用したプライマーの塩基配列は以下のとおりだった。
・PLYS12 F-1
5'-ACGGCCAGTGAATTCGTACATATAGTTGGCCGCTGCATAT-3'(配列番号23)
・TLYS12-TXYN R
5'-AAAGAGAACGAGAAGTTCACCTCCATGGACGAGC-3'(配列番号24)
・PXYN F
5'-ACCGAGCTCGAATTCCACGCCACGTTCGATACCGAC-3'(配列番号25)
・PXYN-PaEG R
5'-AACTGCATCGTAAGGTTTGTTTGGCGTTTTGGG-3'(配列番号26)
・TXYN-PaEG F
5'-AGGGATAATCCGTCGTCACCGGCTTGCCTGTAT-3'(配列番号27)
・TXYN-TLYS12 R
5'-ACTTCTCGTTCTCTTTTTGCCAGGTGTTGGACT-3'(配列番号28)
・PaEG F
5'-ACCTTACGATGCAGTTCAAGTCGACCTTTGCCG-3'(配列番号29)
・PaEG R
5'-ACGACGGATTATCCCTGAAGAGCCTTGATACCG-3'(配列番号30)
・M13 F
5'-GTAAAACGACGGCCAG-3'(配列番号31)
・M13 R
5'-GGAAACAGCTATGACCATG-3'(配列番号32)
・LYS12 F-1000
5'-GTACATATAGTTGGCCGCTGCATAT-3'(配列番号33)
・PXYN-1513 F
5'-CACGCCACGTTCGATACCGAC-3'(配列番号34)
【0050】
(3)PaE高発現用遺伝子カセットの作製
P.アンタクティカGB-4(0)株のゲノムDNAを鋳型とし、表1に示すプライマーを用いて、リジン合成遺伝子PaLYS12及びそのプロモーター及びターミネーター、PaXYN1のプロモーター(PXYN)、PaXYN1のターミネーター(TXYN)、並びにPaEをコードする遺伝子であるPaCLE1のセルフクローニング用の遺伝子断片を増幅した。
【表1】
【0051】
PaLYS12(プロモーター及びターミネーターを含む)、PXYN、TXYN、及びPaCLE1の遺伝子配列は以下のとおりである。
・PaLYS12(プロモーター及びターミネーターを含む)(2781bp(構造遺伝子領域1313bp、プロモーター領域999bp、及びターミネーター領域469bp);下線部はイントロン)
CGTACATATAGTTGGCCGCTGCATATACACAACCTTGTGGCAGTCTCCCTCGTCTTCAACACTTACTCCGTACGATCCATGCCCGCGCTCACGAAAGTCATCGTAGATGACCAATGACTGAGATTGTTCAAGTGTGGTTGAGCATTACGCAAACGGAATGAGACTCACACATGTACGCGTGCTTCCTTCAACCTGATCAGCCTCTGCACCGTCGTCGTCCATCCCGGACTCTTGTGTTGCTCCGTGCTGCTGCAGTCGTAAGGGCCCAAGATCGACAACGGTGCGGTGCAACACCAAAACAGTTCCTTCCTTGGGCATCATGCAATTCATCGGTCACACTGTCAATCCCCAATCCTCGAACCGTCCTGTCGGACTGTCTGCAGTGGACAGGCGTGTTCCACAGACAGAACCCACAGGTGGCTGCGCGATGCCGCGAGTCTTCCACAAAAATTGAGGCGCAGTGGATATCCACGTCTCCTCCCACACGAAGACCGTCTGCATTTCGGCCCGATCTATAGACTCGAGACAAGATGGCATTACGAGCCGCCGTGTGAAGACGCTCAAAGTGCAAAGATCTTGTCCAGAAAAAAAAAAGGAAGGATGCGGGAGAGCACCAAAAAAAGACAAAAAGGAATGACCAGCCTGGGGCTCGAACCCAGAATCTCCTGATTAGCGGCTGTTCACGAAGAACAGAACGTCGTAGTCAGACGCCTTACCATTGGGCCAACCGGCCTTTGTTGAAAGCAGGCTAGAACATTGCATACATATAGACGTAGACCAGATCCAAAGAGTCATTTCGATCCGACCACCTCCGACGAGCTGGAAGACCTGAAAACCAGCCGTGACTCGCTTGGCGCGGGTGCATCGGCAGGGCAGGGAAGGGTGGACAAGGCACAAGGCGAGCCCGGGAAAATGCCGAAGCTGTCCAACCGATTGCCCCTTCTTCTTCCACCCCCACCTAGACCTCTTGCTTTGCTCGTCCCACCCACACAGTCCAAGATGACGTCGACCGCCGCCAAGATCCTCAAGAATGCCACTTCGGGCGTGCTGCGCCTGGGCATGATGCCCGCAGACGGCATTGGACGCGAGGTGCTCCCTTGCGCGCAGCGTGTGCTCCAGAACACGCCCGGCGCACCCAAGTTTGAGTTTGTGCACCTCGACGCTGGCTTCGAGCACTTCCAGAAGACCGGCTCGGCGCTTCCCGAGGAGACCGTGCGTGCACTCAAGGACGACTGCCACGGAGCCATGTTCGGCTCCGTCTCGAGCCCGTCGCACAAGGTCGAGGGCTACAGCTCGCCCATCGTCAAGCTCAGGAAGGAGCTCGACCTGTACGCCAACATTCGCCCCGTCATCGGCGTGCGCGGCACCAAGGACGACGACAAGTTCATCGACAGCGTCATCATTCGCGAGAACACCGAGTGCCTGGTAAGTAGCTGATCCGTCGTCGAGGAGAGCGAAAGATGAGATACTGACGCAGAACGGTCCCTCCCCAACTCGCTTCCACGCGAGCAGTACATCAAGTCCGAGACGAGCGAGAGCGGTCCGGACGGTCAGATTGCGCGCGCCATCCGCCAGATCACCGAGAAGGCTTCGACGCGCATCGGCAAGAAGGCGTTTGAAGTCGCGATTGCGCGCAAGGAGCTGCGCAAGGTGAACCAGCCGTCGTACGAGCCTACCGTGACGATCTGCCACAAGTCCAACGTGCTGAGCGTCACCGACGGTCTCTTCCGCACCTCGGTCCGCGGCGTGTACGAGAAGGACCAGAAGGCCAACGGAGGCGCCGGCCGATACGAGGGCGTCAAGCTCAACGAGCAGCTCGTCGACTCCATGGTCTACCGCCTCTTCCGCGAGCCCGAGGTGTTTGACGTGGTCGTGGCGCCCAACCTGTACGGTGACATTGTCTCGGATGCTGCCGCCGCCCTCGTGGGCTCCCTTGGCCTCGTCCCCTCCGTCAACGCCGGCGACAACTTCTTCATGGTAAGCCCCATCCTCCGTCTTCTCCTTCCTTCCAGCCCCGAGCGCCTACTTACATTTTGCCCCGCCTTGTTCTTCCCTTGTGCTGCGCATCGTAGGGCGAGCCGGTCCACGGTTCGGCGCCCGATATCGCGGGTCAGGGCAAGGCGAACCCGATCGCCTCGATCCGCTCCGCCGCCCTCATGCTCGAATACATGGGCTACACCGAGCCTGCGCTCAAGATCTACACGGCCGTCGACCAGGTCATCCGCGAGGGCAAGTACCTCACCCCAGACCTCGGCGGATCCGCCACCACCACCCAGTGCGAAGAGGCCATCCTCAAAAAGATCAACGCCTAGATCGTCACTCAGCCCTGAGGCACCAAAAATCTTCTCTTCGCCTTGTCTCTTCCATTTGGGAAATCAATCGCATGCCCACCTCACTCTTCGCGCCTCTGGATTCCAATGTTCCGATGCGGCTTGGCAAGTGCTCAACTGAGGACTGAGTTTTGTGAACTGGAATCGGATGCAAAATGAATGTTGGGCATTGCAGAGAGGGGCGACACATGATGCGATGACTCTGCTCGCTTCAACGGGGAGCGAGGACGCTATTTTTATTTACAGGCCAAGTCGGGAGGAAAGCTGATCTTGGCGAAAGGGGAAGACCTACTTGCGGATGGCGTAAGCGGTCTGGCGATCGGAGCCGGCCTGGCCGCGCTCGGTCAAGCCGAGACCGTATCGGCGCAGCCTGATGGCCTGGACGGTGATGAAGCCGCTGGTGGCAGCCGAGTCGAAGCCACCCTGCTCGTCCATGGAGGTGAACTTCTCG(配列番号35)
【0052】
・PXYN(1513bp)
GAATTCCACGCCACGTTCGATACCGACCAGCCACTCACAGCACACGCCAGCGTCGGTGGCAGCGACAATCTTGCGCGCGTCACCCGCCGAGGCGTTGAGCTCGACATCCACATCGACGTCTTTGCTGCGTCTTCTGGATCGAAGCTGGTGATGCGACAGATCATCACAATTCTCGCCCTCGGACCGTCTGCACCGCGGTCGAAAGCACCACCACCTGCAGAGTCACTCGATCGACCGCGCAAGGATGCGGACTACACGAGCACGGGCACGATCAAGATGCACTCGACCTCGCCGCGCGCATGGTGCCGCGTGTGCGGCGACTACAATCCGATCCACGTCTCGTCGCTGCTCGCGCGCCTGTTCGGCTTCCGCGGCAAGATCGCGCACGGCAACCATGTCGTAGCGCACCTGCTGCATCTGGTCTCGTCCGCTTCTGGGCCAGGTTCTGTGCGCGAGATTACCGACACTAGCAAGGGAAAGCGTTGGTGGATCGAGATGCACTTTAAGCGGCCTATGATTTTGCCACTTCAGCTCGAGGCACAGATCGCCGTCGACAATACAGGGGCGGAATGGAGGTGCAGCGGTGCTAAGGACGACAAGGTTTACGTTCAGGGTTCCATCGGCGCTCTGTAACATTGAGCTAAGGACGGTGCAGTGCATCGTGCAACCAAGCAGTGTTTCGTGTCGCAGTTCCGGAAGAATCACAGAACGGGACATGGCCCTCCGATTCTTCGCAGTGGTGTGACTGGTGAGTCCGACTGGATCTTGATCGCGGGAATCTATGGGGTGCAGTCGAGAAGCGAGCTTCGGCTGAGTGCTGTGCGGGGAGCCGATGCAGACCGGCGACGTTTCAGCCACGAGGCGTGTCACCTCGCGCTCATCTCGGCGTGGCGTCTTTGCGCATGGCTGAAGCTTTGGCTCTGACAACCAACCTAGTCGCTACAGCTTTGATGCGTGGTAACGAGGCAACCGCGAAGGATACCGAAGCATGACAGACAGCAGGGATGGCTCGGAGCCTAAGTTGATCGAAAAGGGTTGCAGTGCGAATCGCGTTTATGCACAACCCCGCTTCGCTTAGGCCATGCATCTGGAAGCGTAATGCTTGCACCGTGGCGCTCCAACGAACCGGTTTGGCGCTAACCATAATGGGCGTGTGGTTGTCAGGCAGCGCACGGACAGCCAGCGTGCGATACTGTGCACCAGGGTCGCCGGTGTCACATAGGTGCCTACTGCAGCATCGTGCCGCGATGGAAGCTCGGCGTGATTCAGCTGATCGTGGGCCAGGTCAGACTTGAACCCCAGCGGTTATCGCTGTAGCAGCACTACCGGCAGGTGGCCCTTGCAATGTACATGGTCCGGACACTACTTTGCCGGTCTCACTGTAATGCTGTACCCAGCATCAAGCTCTTGGAAGGTATAAAGGGACGACGTCGTCGTATCTGCTCGAGTACCTAGCCCAACGAACCCAAAGGAACCCATCGAACAGGACCCAAAACGCCAAACAAACCTTACG(配列番号36)
【0053】
・TXYN(300bp)
TCCGTCGTCACCGGCTTGCCTGTATGATGCATCGGGACCCGAGTCCACCATGCAATCCAGATACGAGTGTTGCTCTCTTCTTGGCTCACTTTACGCGTCTGTTTGAGTGGGGCGCGGGGAGGAAAAAAGGCTGAGTTCGCTGGGCCACGCGCGTGGAAGCAAGACTGCTGCTGAGCCCTTTTTCTCTTGCGCTGAGAGAGTCGCGGCGTGCGGCCCCTTTTTTTATTAATACTAATATTATAGACTCTGAAGGAAATCGCGCTCGTGGTCAGTCGAGTCCAACACCTGGCAAAAAGAGAA(配列番号37)
【0054】
・PaCLE1(675bp)
ATGCAGTTCAAGTCGACCTTTGCCGCCCTCGTCCTTGCCGCCGCTGGTCTCGTGCAGGCTGCTCCGCTCCAGGAGCGTGCTGGCTGTTCGTCGTACGTCATCATCAACACTCGCGGTACCAGCGAGCCTCAGGGTCCCTCGGTCGGCTTCCGGACCATGAACACCCGCATTCGCTCCGCCGTTTCGGGTGGCTCCGAATACGACACCGTCTACCCAGCCGGTATCGACCAGAACTCGGCCCAGGGTACTGCCAACATCGTGGCCCAGGTCAAGGCCGGTCTGGCCCGCAACCCCAACACGTGCTTCCTCCTCGAGGGCTACTCCCAGGGCGCCGCTGCCACCTGCAATGCCCTTCCTCAGCTTACTGGTGCGGCGTTCGACGCCGTCAAGGGTGTCATTCTTATCGGCAACCCCGAACACAAGCCCAACCTCGCTTGCAACGTCGATGGTAACGGTGGCAAGACCACCTTCAGCGCCAGAGGTATCTCGGCTGCTTTCACCCAGGGCGTCCCCTCCAACTGGGTCTCCAAGACGCTCGACATCTGCATCTACGGCGACGGAGTTTGCGACGTCAGCTCCGGATTCGGAATCACCCCCCAGCACCTTACCTACGGATACAACACCAACGTTCAGACCATGGGCGCCAACTTCGGTATCAAGGCTCTTCAGGGATAA(配列番号38)
【0055】
上記4種の遺伝子断片を、In-fusion HD cloning kit(クロンテック社)を用いて、EcoRIで切断したプラスミドpUC19に結合した。作製したプラスミドを、大腸菌DH5αにヒートショック法で導入し、これをアンピシリン含有LB寒天培地に播いて37℃で培養した。一晩で増殖してきたコロニーについて、上記遺伝子断片の作製に使用したプライマーセットを用いてコロニーPCRを行い、4種の遺伝子断片が正しく導入されているコロニーを選び出して、約5.3kbpの遺伝子断片含むプラスミドpPaLYS12X-PaEGを作製した。当該プラスミド中のPaEの高発現用カセットの構成を
図3に示す。PaEをコードする遺伝子PaCLE1は、キシラナーゼプロモーター及びターミネーターの間に位置しており、PaLYS12の塩基配列(2種のイントロンを含む)は、PaLYS12のプロモーター及びターミネーターの間に位置している。
【0056】
(4)リジン要求性変異株を用いたPaE高生産株の作製
上記プラスミドpPaLYS12X-PaEGを鋳型にし、M13 FとM13 Rをプライマーとして用いたPCRで遺伝子断片を増幅した。得られた遺伝子断片5μgを、GB-4(0)株のリジン要求性変異株であるL1株にエレクトロポーレーションにより導入し、リン酸2ナトリウムを含むSD(SDP)寒天培地上に塗布後、30℃で培養した。2日後に、プレート一枚当たり約20個の大きいコロニーが出現した(疑似陽性と思われる小コロニーは100個程度)。このうち80コロニーをランダムに新たなSDP寒天培地に釣菌した。釣菌した形質転換体についてそれぞれ、5mLのYX培地を含む試験管に1白金耳接種し、30℃、160rpmで、3日間振とう培養した。
【0057】
形質転換した各菌株について3回の培養を独立して繰り返し、培養上清のPaEの酵素活性(PaE活性)を調べた。PaE活性の測定は、従来の方法に従って行った。すなわち、20mMのTris-HClバッファー(pH6.8)に、吸光度(OD660)が約0.65となるようにPBSAエマルジョンを懸濁した。その水懸濁液1.9mLを口径13mmの試験管に入れ、上記培養上清を適宜希釈して100μL加え、30℃、180rpmで15分間振とうし、水懸濁液の吸光度を測定した。酵素活性の単位として、1分間当たりに吸光度を1.0減少させる酵素量を1Uと定義した。
【0058】
PaE活性値が高い複数の形質転換体を選抜し、これらの菌株とGB-4(0)株とをそれぞれフラスコ培養して、PaE活性及び乾燥菌体質量を比較した。具体的には、YM培地5mLを含む試験管に、選抜株又はGB-4(0)株を1白金耳植菌し、30℃、160rpm、24時間で前培養を行った。3xFMM-8%キシロース培地20mLを含む100mL容三角フラスコに前培養液を200μL接種し、30℃、140rpmで、96時間振とう培養を行った。各株について3回の培養を独立して繰り返し、各培養液上清液のPaE活性を測定した。また、培養後の各株の菌体を遠心分離により回収し、乾燥させて、その質量を計測した。これらの結果を表2に示す。
【表2】
【0059】
L1-S9株、L1-S12株、L1-S24株、L1-S33株、L1-S49株、及びL1-S76株の培養上清は、GB-4(0)株の培養上清よりもPaE活性が高かったので、これらの菌株は、PaE高発現用遺伝子断片導入株として使用することができる。特に、L1-S33株、L1-S49株、及びL1-S76株の培養上清は高いPaE活性を示し、L1-S12株の培養上清が最も高いPaE活性を示した。従来、カビなどの研究では、外来遺伝子の染色体中への挿入位置によって、当該遺伝子の発現量が異なる場合があることが知られているので、本実施例においても、各菌株間でPaE活性が異なった理由としては、本実施例で使用した遺伝子カセットの染色体への挿入位置が、菌株ごとに異なっていたためであろうと考えられる。
【0060】
(5)リジン要求性変異株を用いた別のPaE高生産株の作製
ベクター由来の配列を一切含まず、P.アンタクティカGB-4(0)株由来の配列のみを含む遺伝子導入用の遺伝子断片を、次の2通りの方法で作製した。
(i)上記項目(3)で作製したプラスミドpPaLYS12X-PaEGを大腸菌DH5αで増幅し、増幅したプラスミドを抽出して制限酵素EcoRIで処理した。この遺伝子断片をアガロースゲル電気泳動で分離し、PaEの高発現用カセットを含む5268bpの遺伝子断片のみを回収及び精製した。
(ii)上記項目(3)で作製したプラスミドpPaLYS12X-PaEGを鋳型にし、LYS12 F-1000とPXYN-1513 Fをプライマーとして用いたPCRで遺伝子断片を増幅した。増幅した遺伝子断片をアガロースゲル電気泳動で分離し、PaEの高発現用カセットを含む5262bpの遺伝子断片のみを回収及び精製した。
【0061】
上記(i)又は(ii)の方法で得られた遺伝子断片を、GB-4(0)株のリジン要求性変異株であるL1株に導入し、SDP寒天培地上に塗布後、30℃で培養した。当該培地上で良好な生育を示した株((i)183株及び(ii)130株)を、3xFMM-0.5%PBSAエマルジョン・8%キシロース寒天培地に接種し、30℃で2~3日培養後のハロの大きさを計測した。それぞれ3回実施し、ハロの直径とコロニーの直径の差([ハロの直径]-[コロニーの直径])の平均値が3.5以上である菌株を選抜した((i)115株及び(ii)76株)。
【0062】
選抜した菌株をYPX培地に移し、2mLディープウェルプレートで66時間培養して、その上清のPaE活性を評価した。PaE活性の測定は、上記(4)に記載の方法を一部改変(Tris-HClバッファーに代えて25mMのHEPESバッファー(pH7.3)を使用し、試験管に代えてマイクロプレートを使用)して実施した。PaE活性値が高い複数の形質転換体((i)4株及び(ii)8株)を選抜した。
【0063】
選抜した合計12株の形質転換体と、コントロールとしてL1株にLYS12遺伝子のみを導入した株(L1-Lys12-1)とを、YPX培地を20mL含む100mL容フラスコにそれぞれ200μLずつ接種し、30℃、200rpmで72時間回転振とう培養した。各株について3回の培養を独立して繰り返し、各培養液上清液のPaE活性を測定した。PaE活性の測定は、上記(4)に記載の方法を一部改変(Tris-HClバッファーに代えて25mMのHEPESバッファー(pH7.3)を使用)して実施した。また、培養後の各株の菌体を遠心分離により回収し、乾燥させて、その質量を計測した。これらの結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
遺伝子断片を上記(i)及び(ii)のどちらの方法で作製しても、当該遺伝子断片を導入した菌株の培養上清は、いずれもコントロールであるL1-Lys12-1株よりもPaE活性が高かったので、これらの菌株は、PaE高発現用遺伝子断片導入株として使用することができる。特に、L1-1-3株(GB-4(0)PGB474株)及びL1-2-107株(GB-4(0)PGB480株)の培養上清は、他の形質転換体と比較して高いPaE活性を示した。
【0066】
〔実施例4〕P.アンタクティカのウラシル要求性変異株の作製
(1)目的
野生型のS.セレヴィシエは、ピリミジン生合成経路の中間代謝物のアナログである5-フルオロオロチン酸(5-FOA)とウラシルを添加したSD寒天培地では生育できず、ウラシル生合成関連遺伝子(URA3)に変異を有するウラシル要求性変異株のみが生育することができる。この性質を利用して、効率的にS.セレヴィシエのウラシル要求性変異株を取得する方法が報告されている(Boeke JDら,Mol.Gen.Genet.(1984),197,345)。また、S.セレヴィシエのウラシル要求性株を宿主とし、ウラシル生合成遺伝子を遺伝子導入用のマーカー遺伝子として用いて形質転換した場合、当該マーカー遺伝子を形質転換体から除去することが可能である(Christine Guthrie編,Methods in enzymology,vol.194,Guide to yeast genetics and molecular biology,p.293-298)。そのため、形質転換及びマーカー遺伝子の除去を繰り返して、複数の遺伝子を同一個体の染色体上に導入することができる。一方、P.アンタクティカについては、ウラシル要求性変異株は未だ報告されていない。したがって、本実施例では、P.アンタクティカのウラシル要求性変異株の取得を試みた。このような変異株は、セルフクローニングなど有用な育種へ利用できる可能性がある。
【0067】
(2)材料
本実施例で使用した培地の組成は以下のとおりだった。
・YPD培地
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 1質量%
バクトペプトン(Difco Laboratories社製) 2質量%
グルコース 2質量%
・YM寒天培地
2.0質量%の寒天を含むYM培地
・SD寒天培地
2.0質量%の寒天を含むSD培地
・SD+U+FOA培地
アミノ酸と(NH4)2SO4を含まないバクトイーストナイトロジェンべース(BD bioscience社製) 0.17質量%
(NH4)2SO4 0.5質量%
グルコース 2質量%
ウラシル(Sigma-Aldrich社製) 1000mg/L
5’-フルオロオロチン酸(Wako社製) 1000mg/L
寒天 2質量%
【0068】
本実施例で使用したプライマーの塩基配列は以下のとおりだった。
・PaURA3-651
5'-CGAGCTGCGACACCTCGACGTAGCG-3'(配列番号39)
・PaURA3+1449c
5'-GTGGCCATTGGCCGTGACAACAGTA-3'(配列番号40)
・PaURA3-300
5'-GCTGCAGCTGCAGCTCTCCAAGCTG-3'(配列番号41)
・PaURA3+150
5'-GTGCGATGCCGTCGGCCCAGAC-3'(配列番号42)
【0069】
(3)P.アンタクティカのURA3相同配列(PaURA3)の抽出
P.アンタクティカGB-4(0)株のゲノム配列から、S.セレヴィシエ由来のUra3タンパク質と82%の相同性があるタンパク質をコードする遺伝子配列を抽出した。これをPaURA3と名付けた。PaURA3の塩基配列は前述のとおり(配列番号13)である。
【0070】
(4)紫外線(UV)の照射によるP.アンタクティカGB-4(0)株のウラシル要求性変異株の取得
1)PaURA3変異候補株の取得
P.アンタクティカGB-4(0)株を、2mLのYPD液体培地を含む試験管中で、30℃、150rpmで、一晩振とう培養した。菌体を遠心分離し、濁度(600nm)が1.0になるように液体の最小培地に懸濁し、この懸濁液のうち200μLをSD+U+FOA培地に塗布した。これにUVランプの光を3分間照射した後、30℃で5日間培養した。その結果、12個のコロニーが得られた。
【0071】
2)PaURA3変異株の選抜
上記1)で取得した12個のコロニーの増殖を、YM寒天培地又はSD寒天培地で観察した。これらの内1株(No.8)はどの培地でも増殖し、また別の1株(No.9)はどの培地でも増殖しなかったため、これら2株は目的の栄養要求性変異株では無いと判断した。他の株は、SD寒天培地上では増殖しない一方でYM寒天培地では増殖し、かつSD+U+FOA培地でも増殖したため、ウラシル要求性であることが期待された。
【0072】
ウラシル要求性を示した10株に対して、PaURA3遺伝子断片を導入し、SD寒天培地に塗布して形質転換体の出現を観察した。具体的には、YPD液体培地で培養したP.アンタクティカの細胞を、40質量%のポリエチレングリコール3350(Sigma-Aldrich社製)0.2Mの酢酸リチウム、及び0.1Mのジチオトレイトールを含む形質転換バッファーに懸濁した。PaURA3遺伝子断片は、PaURA3-651及びPaURA3+1449cをプライマーとして使用し、GB-4(0)株のゲノムDNAからPCRにより作製した。P.アンタクティカの細胞懸濁液に、一本鎖サケ精子DNA(ssDNA)(Sigma-Aldrich社製)及びPaURA3遺伝子断片を添加して、37℃で60分間静置した後に、SD寒天培地に塗布し、30℃で静置培養を行った。
【0073】
形質転換体が出現した場合、導入されたPaURA3によってウラシル要求性が相補されたと考えられるため、取得した変異株をPaURA3が機能しない変異体であるとみなすことができる。PaURA3遺伝子断片の導入の結果、3株(No.1、No.2、及びNo.7)は、形質転換体が安定して出現し、他のものは形質転換体が多くは現れなかったため、当該3株はPaURA3に変異を有するウラシル要求性変異株であることがわかった。中でもNo.2の株は、形質転換体であるコロニーの出現効率が良かったため、PGB045株と名付け、以降の研究に使用した。プライマーPaURA3-300又はPaURA3+150でPaURA3周辺の配列を解析した結果、PGB045株では、PaURA3遺伝子の867番目のCがTに変わっており、ストップコドンが生じていることがわかった。残りの7株については、PaURA3ではなくPaURA5の変異が推測される。
【0074】
(5)PaURA3自然変異株の取得
紫外線照射による変異株の作製においては、目的遺伝子以外の染色体部位にも変異が生じる可能性があり、その結果、酵素生産や増殖、ストレス耐性に悪影響を与える場合がある。一方、変異頻度が低い天然の環境から得たPaURA3変異株であれば、染色体上のPaURA3以外の部位は健全である可能性が高い。しかし、野生型のGB-4(0)株をSD+U+FOA培地上に塗布しただけでは、増殖するコロニーはなく、天然のPaURA3変異株は取得できない。そこで、自然変異株の選抜効率が高くなるように、培地の組成を調製した。
【0075】
2倍濃度のYM培地に、ウラシル及びFOAを、終濃度がそれぞれ(a)250mg/mL及び1000mg/mL、又は、(b)600mg/L及び2000mg/Lとなるように加えて、平板培地(YM+U+FOA)を作製した。P.アンタクティカGB-4(0)株を、5mLのYM培地中で30℃、160rpmで、24時間振とう培養し、その培養液50μLを、口径9cmの各YM+U+FOA寒天培地上に塗布したところ、培地(a)からは40個のコロニーが出現し、培地(b)からは10個のコロニーが出現した。培地(a)のコロニーのうち2つがSD培地で生育しないものであり、培地(b)のコロニーの全てがSD培地で生育しないものだった。
【0076】
PaURA3+1449c及びPaURA3-300をプライマーとして用いたPCRによりPaURA3遺伝子断片を調製し、YM+U+FOA培地上に出現したコロニー由来の細胞に形質転換した。その結果、培地(a)のコロニー由来の1株及び培地(b)のコロニー由来の2株が、形質転換後にSD培地上での増殖を回復した。PaURA3がウラシル要求性を相補したGB-4(0)株由来のこれら3株は、PaURA3変異株と考えられ、それぞれPGB371株、PGB373株、及びPGB378株と名付けた。
【0077】
プライマーPaURA3-300又はPaURA3+150でPaURA3周辺の配列を解析した結果、YM+U+FOA培地(a)から選抜したPGB371株では、PaURA3遺伝子の614番目の塩基Tが欠損することにより、フレームシフトが生じていた。YM+U+FOA培地(b)から選抜したPGB373及びPGB378では、PaURA3の113番目のCがGに変わっており、その結果、38番目のアミノ酸配列のセリンがトリプトファンに変化していることがわかった。PGB373及びPGB378は、GB-4(0)株を、YM液体培地を入れた1つの容器で培養後、同じ選択培地に塗布して取得したものであるので、変異が生じた1つの細胞に由来する子孫である可能性が考えられる。残りの7株(PGB372、374、375、376、377、379、380、381、及び382)については、PaURA3ではなくPaURA5の変異が推測される。
【0078】
(6)さらなるウラシル要求性変異株の取得
P.アンタクティカGB-4(0)株以外のシュードザイマ属菌についても、ウラシル要求性変異株の取得を試みた。まず、各種菌を5mLのYM培地中で30℃、160rpmで、24時間振とう培養し、YM培地で生育したときの形態を微分干渉装置が付いた光学顕微鏡で観察した。P.アンタクティカGB-4(0)株(
図2A)、P.アンタクティカOMM62-2株(受託番号NITE P-02239)(
図2B)、P.フロキュローサJCM10321株(
図2C)、及びP.ツクバエンシスJCM10324株(
図2I)は、偽菌糸を形成していなかったのに対して、P.アンタクティカJCM3941株(
図2D)、P.アンタクティカGB-4(1)W株(
図2E)、P.アンタクティカT-34株(
図2F)、P.ルグローサJCM10323株(
図2G)、及びP.アフィディスJCM10318株(
図2H)は、偽菌糸を形成していた。
【0079】
次に、上記YM培地での培養液50μLを、口径9cmのYM+U+FOA寒天培地(b;600mg/Lのウラシル及び2000mg/LのFOAを含む)の上に塗布した。そして、この培地(b)上で生育したコロニーの中から、SD培地上では生育しない菌株、すなわちウラシル要求性変異株を選別した。当該変異株の取得数を、親株の形態の観察結果と併せて以下の表4に示す。
【表4】
【0080】
表4に示されているように、P.アンタクティカGB-4(0)株以外のシュードザイマ属菌を使用した場合でも、ウラシル要求性変異株を取得することができた。特に、偽菌糸を形成しないシュードザイマ属の菌株は、偽菌糸を形成する菌株に比べて、ウラシル要求性変異株の取得効率が高かった。本実施例の(4)に記載の方法と同様にして、P.アンタクティカOMM62-2株から取得したウラシル要求性変異株にPaURA3を導入した。すなわち、PaURA3+1449c及びPaURA3-300をプライマーとして用いたPCRによりGB-4(0)株ゲノムDNAから増幅させたPaURA3遺伝子断片を、上記変異株に形質転換すると、6株中2株はSD培地上で生育するようになったので、当該2株はURA3に変異を有する自然変異株であることがわかった。
【0081】
また、偽菌糸を形成するP.アンタクティカT-34株では、今までウラシル要求性変異株を作製することができなかった。しかし、YM+U+FOA寒天培地(b)を用いた選抜により、頻度は低いものの、1株のウラシル要求性変異株を取得することができた。この株にGB-4(0)株ゲノムDNAから増幅させたPaURA3遺伝子断片を形質転換すると、SD培地上で生育するようになったことから、当該菌株はURA3に変異を有する自然変異株であることがわかった。さらに、P.ツクバエンシスJCM10324株のウラシル要求性を示した6株に、GB-4(0)株ゲノムDNAから増幅させたPaURA3遺伝子断片を形質転換すると、2株がSD培地上で生育するようになったので、当該2株はURA3に変異を有する自然変異株であることがわかった。
【0082】
このように、YM+U+FOA培地(b)を使用することで、様々なシュードザイマ属菌のウラシル要求性変異株を取得することができる。そして、取得されたウラシル要求性変異株の中から各菌のURA3相同遺伝子に変異が生じたものを選抜することも可能であり、選抜したURA3変異株のウラシル要求性を、GB-4(0)株ゲノムDNAから増幅させたPaURA3遺伝子断片で相補することもできる。従って、種々のシュードザイマ属菌について、URA3変異株を取得し、PaURA3を遺伝子導入マーカーに用いた外来遺伝子の導入による形質転換が可能であることが示された。
【0083】
〔実施例5〕ウラシル要求性を利用した生分解性プラスチック分解酵素PaE高生産セルフクローニング株の作製
(1)目的
P.アンタクティカGB-4(0)株のウラシル要求性変異株は、異種生物由来の遺伝子を使わない遺伝子操作(セルフクローニング)に使用することができる。本実施例では、生分解性プラスチック分解酵素PaEを大量生産するセルフクローニング株を作製する。
【0084】
(2)材料
本実施例で使用した培地の組成は以下のとおりだった。
・3xFMM-PBSAエマルジョン・8%キシロース平板培地(実施例3(2)に記載のとおり)
【0085】
本実施例で使用したプライマーの塩基配列は以下のとおりだった。
・PaCLE1-627
5'-GATTCGATACATGGCGTCTCTG-3'(配列番号43)
・PaURA3(+900-932)-PaCLE1+1426c
5'-GAGGCCTACCTCGCCCGTCTTGGTCAGAAGTAGCACTACCTGTTGCGTTCGTA-3'(配列番号44)
・PaURA3-300(実施例4(2)に記載のとおり)
・PaXYN1-609
5'-GGCTGAAGCTTTGGCTCTGACA-3'(配列番号45)
・PaCLE1+25c-PaXYN1-1c
5'-CGGCAAAGGTCGACTTGAACTGCATCGTAAGGTTTGTTTGGCGTTTTGGG-3'(配列番号46)
・PaCLE1+1
5'-ATGCAGTTCAAGTCGACCTTTGCCG-3'(配列番号47)
・PaURA3-200
5'-CCCATTTCTTCCGGTTCACGTGAGC-3'(配列番号48)
・PaURA3-100
5'-TTTGCCTTTGCATGACATTCGCACG-3'(配列番号49)
・SIu-PaCLE1-1575
5’-TCATCGATGAATTCGCGTACGATATGCAGCCAATC-3’(配列番号50)
・SIdc-PaCLE1+1426c
5’-CCAGTGTCGAAAACGCACTACCTGTTGCGTTCGTA-3'(配列番号51)
・HindIII-PaURA3-651
5’-CCGCCAGCTGAAGCTCGAGCTGCGACACCTCGA-3’(配列番号52)
・XbaI-PaURA3+1449c
5’-CGCCTTTTCGTCTAGGTGGCCATTGGCCGTGAC-3’(配列番号53)
・NdeIu-PaCLE1+176
5’-GACAATATGTCCATACCGCCGTTTCGGGTGGCTCC-3’(配列番号54)
・NdeIdc-PaCLE1+1426c
5’-TGAGAGTGCACCATACACTACCTGTTGCGTTCGTA-3’(配列番号55)
・PaCLE1-1574
5'-CGTACGATATGCAGCCAATCGC-3'(配列番号56)
・PaURA3-651(実施例4(2)に記載のとおり)
【0086】
(3)セルフクローニング用の遺伝子配列の作製
PaURA3を選抜マーカーに用いて、P.アンタクティカ由来の配列のみで構成されるPaE高発現用の遺伝子断片を導入するために、それぞれのプロモーター領域及びターミネーター領域を含んだPaURA3遺伝子とPaCLE1遺伝子とを、非相同末端結合(NHEJ)を利用した遺伝子導入法(Hoshidaら、Yeast(2014)、31、29-46)を応用して接続する。この方法に従えば、外部から導入した2種の遺伝子断片を生体内で接続させ、その接続された遺伝子断片を保有する菌株だけを培地上に生育させて回収することができる。
【0087】
まず、P.アンタクティカGB-4(0)株の染色体DNAから、PaCLE1-627及びPaURA3(+900-932)-PaCLE1+1426cをプライマーとして用いて、PaCLE1の遺伝子断片を増幅した。このPaCLE1遺伝子断片においては、PaCLE1遺伝子の3’末端側に、PaURA3の遺伝子配列の一部が逆向きに付加されている(
図4左上)。次に、P.アンタクティカGB-4(0)株の染色体DNAから、PaURA3-300及びPaURA3+899cをプライマーとして用いて、PaURA3の遺伝子断片を増幅した。このPaURA3遺伝子断片においては、PaURA3遺伝子の3’末端側の配列が欠けており(
図4右上)、このままではPaURA3として機能しない。これら2種の遺伝子断片を、PaURA3に変異を有するPGB050株に同時に導入し、導入細胞内での非相同末端結合(NHEJ)によって結合された両遺伝子断片を含む菌株、すなわち機能するPaURA3を有する菌株を(
図4)、SD培地に生育した形質転換体として取得した。PaCLE1とPaURA3の接続を、コロニーPCRによって評価し、接続が認められた形質転換体をPGB357と名付けた。
【0088】
(4)セルフクローニング株の作製
シュードザイマ属菌(酵母)では、キシロース存在下でPaXYN1プロモーター制御下の遺伝子が強力に発現誘導されることが知られている。そこで、ウラシル要求性を利用して、PaXYN1プロモーター制御下でPaEを生産するセルフクローニング株を作製することにした。このために、フュージョンPCRを行い、PaXYN1プロモーターとPaCLE1(PaEの構造遺伝子)を繋げた遺伝子カセットを作製する。
【0089】
まず、P.アンタクティカGB-4(0)株の染色体DNAから、PaXYN1-609及びPaCLE1+25c-PaXYN1-1cをプライマーとして用いて、PaXYN1プロモーター遺伝子を増幅した。次に、PGB357の染色体DNAから、PaURA3-300及びPaCLE1+1をプライマーとして用いて、PaCLE1及びPaURA3を含んだ遺伝子断片を増幅した。そして、これら2つの遺伝子断片を、フュージョンPCRによって接続した(
図5)。PaXYN1プロモーター側のプライマーとしては、PaXYN1-609を使用した。一方で、PaURA3側のプライマーとしては、PaURA3-300だけでなく、増幅するプロモーター配列がPaURA3-300よりも短いPaURA3-200又はPaURA3-100も使用して、プロモーターの長さの異なる3種の遺伝子断片を作製した(
図5)。これは、PaURA3のプロモーター配列を削り、発現を弱めることで、一度に複数の遺伝子断片が導入されないと十分な量のPaURA3が産生できず、選択培地上で増殖できない状況を作り出すことを意図したものである。そうすることで、複数の遺伝子断片が導入された形質転換体、すなわちPaEを大量に産生することのできる形質転換体を取得できることが期待される。作製した遺伝子カセットを、PGB045株(紫外線照射で取得したPaURA3変異株)及びPGB371株(PaURA3自然変異株)に導入し、形質転換体(セルフクローニング株)を取得した。
【0090】
(5)セルフクローニング株のPaE活性の評価
取得した形質転換体を、PBSAを含んだ平板培地(3xFMM-PBSAエマルジョン・8質量%キシロース)に塗布し、PBSAの分解を評価した。この平板培地は、従来用いていた2層の培地(3xFMM-PBSAエマルジョン・大豆油重層平板培地;要すれば後述の実施例7も参照)に比べて多くのPBSAエマルジョンを含むため、PBSAを分解して透明な領域(ハロ)を形成させるためには、より多くのPBSA分解酵素が必要となる。また、炭素源にキシロースを用いているので、PaXYN1プロモーター制御下の遺伝子を強力に発現誘導する。この培地上で上記形質転換体を30℃で培養すると、3日目には、ハロを形成する形質転換体が観察され、6日目にはハロがより明確に観察されるようになった。PaCLE1及びPaURA3の遺伝子配列を含むが、プロモーターの長さが異なる3種類の遺伝子断片のいずれかを導入した形質転換体について、コロニーを50個ずつ観察し、PBSAエマルジョンを分解して比較的明確なハロの形成が観察されたコロニーの数を数えた。PaURA3紫外線変異株であるPGB045株に遺伝子導入して取得した形質転換体についての結果を表5に示す。
【0091】
【0092】
表5に示されているように、当初の予測どおり、短いプロモーターを用いた断片を導入した方が、大きいハロを形成するコロニーの取得率が高い傾向があった。続いて、PaURA3-200を用いて増幅した断片を導入した2-50株と、PaURA3-100を用いた断片を導入した3-36株を選び、これらを30mLの3xFMM-8質量%キシロースを含む300mL容三角フラスコに植菌した。そして、24、48、及び72時間培養後に培養上清中のPaE活性を測定した。
【0093】
PaE活性の測定は、実施例3(4)に記載の方法と同様にして行った。その結果を表6に示す。
【表6】
【0094】
表6から理解できるように、親株と比較して、遺伝子導入株ではPaE活性が上昇していたので、PaEの生産性が向上しているものと考えられる。また、PaURA3自然変異株であるPGB371株に遺伝子導入して取得した形質転換体についても、PaURA3プロモーターを短くすることにより、導入した遺伝子の発現量が高い菌株が取得される傾向が高く、PGB045株を親株として用いた上述の実験結果と同様の実験結果が得られた。
【0095】
(6)別のセルフクローニング株の作製
(6-1)プラスミドの作製
EUROSCARFより提供されたpAG32プラスミド(
図6左)を、SacIによって処理して線状化した。また、P.アンタクティカGB-4(0)株の染色体DNAから、SIu-PaCLE1-1575及びSIdc-PaCLE1+1426cをプライマーとして用いたPCRによって、PaCLE1の遺伝子断片を増幅した。この遺伝子断片を、上記線状化pAG32にクローニングして、プラスミドpYT026(
図6中)を作製した。
【0096】
そして、P.アンタクティカGB-4(0)株の染色体DNAから、HindIII-PaURA3-651及びXbaI-PaURA3+1449cをプライマーとし用いたPCRによって、PaURA3の遺伝子断片を増幅した。この遺伝子断片を、制限酵素HindIII及びXbaIによって線状化したpYT026にクローニングして、プラスミドpYT108(
図6右)を作製した。このpYT108では、pYT026中に存在していた薬剤耐性遺伝子hphMX4が、P.アンタクティカ由来のPaURA3で置換されている。
【0097】
(6-2)遺伝子カセットのドナー株の作製
PaCLE1とPaURA3が接続された遺伝子カセット(PaCLE1-PaURA3c)を効率よく利用できるようにするため、PaCLE1-PaURA3cのドナー株を作製した。
すなわち、制限酵素EcoRVによってpYT108を線状化し、PaCLE1-1574及びPaURA3-651をプライマーとしたPCRによって、PaCLE1-PaURA3cを作製した。この遺伝子断片を、アガロースゲル電気泳動によって分離及び抽出して、PGB045株(紫外線照射で取得したPaURA3変異株)に導入し、形質転換体PGB459株を作製した。このPGB459株をドナー株として使用する。
【0098】
(6-3)セルフクローニング株の作製
P.アンタクティカGB4-(0)株の染色体DNAより、PaXYN1-609及びPaCLE1+25c-PaXYN1-1cをプライマーとして用いて、PaXYN1プロモーター遺伝子を増幅した。次に、PGB459株の染色体DNAより、PaCLE1+1及びPaURA3-651をプライマーとして用いて、PaCLE1-PaURA3c遺伝子断片を増幅した。そして、これら2つの遺伝子断片を、PaXYN1-609及びPaURA3-100をプライマーとして用いたフュージョンPCRによって接続した。このようにして作製されたPaXYN1プロモーター及びPaCLE1-PaURA3cを含む遺伝子カセットを、PGB371株(PaURA3自然変異株)に導入し、形質転換体(セルフクローニング株)を取得した。
【0099】
(6-4)セルフクローニング株のPaE活性の評価
取得した形質転換体を、PBSAを含んだ平板培地(3xFMM-PBSAエマルジョン・8質量%キシロース)に塗布し、PBSAの分解を評価した。その結果、ハロを形成する複数の形質転換体が観察され、このうち特にPGB469株は、他の形質転換体よりも大きいハロを示した。
【0100】
なお、S.セレヴィシエなどの他の酵母で示されているように、ウラシル要求性を指標とした遺伝子組換えでは、使用したURA3などのマーカー遺伝子を菌体から削除し、同じマーカー遺伝子を繰り返し使用して、1つの菌体に複数の発現カセットを導入することができる。P.アンタクティカの場合でも、この方法を利用することによって、より多くの発現カセットを有する菌株の作製が可能であると見込まれる。
【0101】
〔実施例6〕P.アンタクティカ培養液中の生分解性プラスチック分解酵素PaEの安定化と濃縮
(1)目的
遺伝子組み換えやセルフクローニング等でP.アンタクティカからPaE等の酵素を含む培養液を得た後でも、培養ろ液の状態では、保存、流通過程で目的酵素が安定に保たれている必要がある。また、製造工程で酵素生産菌であるP.アンタクティカが、完全に除去ができていない場合や、雑菌が混入すれば、取得した培養ろ液が腐敗する恐れもある。そのため、本実施例では、PaEの活性を極力安全かつ簡便な方法によって長期間安定に保つ方法を確立することを目的とする。また、組換え生物による環境汚染防止の観点から、培養液を(PaEの活性を保ちつつ)無菌化または完全に殺菌する方法を確立することを目的とする。さらに、製品流通コスト低減のため、PaE溶液の濃縮・コンパクト化を検討する。
【0102】
(2)PaEのエタノールによる沈殿特性
室温(約20℃)下で、PaEを含むP.アンタクティカの培養液とエタノールとを、体積比100:0(0%エタノール)、75:25(25%エタノール)、50:50(50%エタノール)、30:70(70%エタノール)、又は10:90(90%エタノール)で混合し、変性沈殿物が生じるかどうか調べた。上記培養液としては、L1-S12株の培養上清液をフィルターで濾過し、菌体を除去したろ液を用いた。すると、0%エタノール及び25%エタノールでは沈殿は生じなかったが、エタノール濃度50%以上では、エタノール濃度を上げるに従って多くの沈殿が生じた。この沈殿物を10,000×gで10分間遠心分離して回収し、エタノールと混合前の培養液の体積と同量の水で再溶解して、50%エタノール沈殿物再溶解液(試料A)、70%エタノール沈殿物再溶解液(試料B)、及び90%エタノール沈殿物再溶解液(試料C)を作製した。そして、上記培養ろ液及び試料A~CのPaE活性とタンパク質濃度を測定し、以下の式に従って、PaE活性の回収率(活性回収率)、タンパク質沈殿率、及び、比活性を計算した。
活性回収率=100×再溶解液の全PaE活性/培養液の全PaE活性
タンパク質沈殿率=100×再溶解液の総タンパク質量/培養ろ液の総タンパク質量 比活性=100×(再溶解液の全PaE活性/再溶解液の総タンパク質量)/(培養液の全PaE活性/培養ろ液の総タンパク質量)
=活性回収率×培養ろ液の総タンパク質量/再溶解液の総タンパク質量
なお、本実施例におけるPaE活性(U/mL)とは、30℃下で、25mMのTris/HClバッファー(pH9.0)中におけるPBSAエマルジョンの分解活性のことをいい、全PaE活性とは、前記PaE活性に試料の体積(mL)を乗じたものをいう。PaEのエタノールによる沈殿特性の試験結果を表7に示す。
【0103】
【0104】
表7に示されているように、エタノール濃度を上げると、活性回収率も、タンパク質回収率も増加し、90%エタノールではほぼ完全に活性が回収された。このことは、PaEは高濃度のエタノールによって一時的に変性・沈殿するが、当該沈殿を適切な溶媒によって再溶解すれば、その活性を回復することができることを示している。
【0105】
(3)PaEのエタノール耐性
室温(約20℃)下で、PaEを含むL1-S12株の培養ろ液とエタノールとを、体積比100:0(0%エタノール)、90:10(10%エタノール)、75:25(25%エタノール)、50:50(50%エタノール)、25:75(75%エタノール)、又は10:90(90%エタノール)で混合した。これらの混合液をそのまま室温に放置して、当該混合液中のPaE活性の経時的な変化を調べた。沈殿が生じたものについては、活性測定直前にタッチミキサーでよく撹拌して均質化した後にサンプリングした。その結果を表8に示す。
【0106】
【0107】
表8に示されているように、70日間室温で放置した後であっても、培養ろ液にエタノールを添加すると、混合液中のPaE活性は、無添加の場合と比較して顕著に安定に保たれていた。そして、特に長期間の保管時には、10~50%などの緩和なエタノール条件が好ましいと考えられる。なお、50%飽和硫安沈殿物、70%エタノール沈殿物、及び90%エタノール沈殿物の電気泳動の結果などを考慮すると、90%エタノールに溶解する画分には、P.アンタクティカの培養液に由来する大量のキシラナーゼが含まれていると考えられたが、実際にはこの画分からは、キシラナーゼ活性が検出されなかったので、当該キシラナーゼは、90%エタノール存在下で失活した可能性がある。このように、PaE以外のタンパク質は、エタノール処理によって不可逆的に変性又は沈殿した可能性が十分に考えられる。そうすると、エタノール処理を行うと、PaEを不安定にする原因となり得るプロテアーゼのような酵素を失活させたり、微生物の繁殖を抑制したりすることによって、PaEの安定化が可能になるものと考えられる。
【0108】
(4)硫安沈殿による濃縮後のエタノールの添加
PaEを含むL1-S12株の培養ろ液に、硫酸アンモニウムを50%飽和に達するまで添加した。生じた沈殿(50%飽和硫安沈殿物)を回収し、硫酸アンモニウム添加前の培養上清の体積と同量の水で再溶解して、50%飽和硫安沈殿物の再溶解液(試料D)を作製した。PaEは、試料D中に95.0%回収された(表9)。また、上記50%飽和硫安沈殿物を70%エタノールで懸濁し、不溶物を遠心して除去した後、エタノールをさらに加えてその濃度を90%とした。生じた沈殿を回収し、硫酸アンモニウム添加前の培養上清の体積と同量の水で再溶解して、50%飽和硫安沈殿物/70%エタノール可溶性/90%エタノール沈殿物の再溶解液(試料E)を作製した。PaEは、試料E中に90%以上回収された(表9)。そして、比活性は3.5倍近くに上昇したので(表9)、本方法によってPaEの精製度を上げることができた。
【0109】
【0110】
また、50%硫安沈殿物を70%エタノールで処理することで、即効的かつ強力な殺菌作用が奏されるので、上述の方法は、微生物繁殖による腐敗の防止や、組換え生物による環境汚染の防止に有効であると考えられる。P.アンタクティカの培養ろ液からPaEを回収するという目的だけを考えれば、当該培養ろ液に濃度が90%になるまでエタノールを直接添加してもよいが、硫安沈殿物を作製して試料の体積を減らしてからエタノールによる沈殿操作を行うことで、エタノールの使用量を少なくすることができる。
【0111】
〔実施例7〕ウラシル要求性変異株を用いたプロモーターの評価法の作製とP.アンタクティカの新規プロモーターの選定
(1)目的
シュードザイマ属酵母の遺伝子組換えを利用して、効率良いタンパク質の生産系を構築するためには、適切なプロモーター制御下で、目的のタンパク質の遺伝子を発現させる必要がある。本実施例では、シュードザイマ属酵母のプロモーター活性を評価する系を構築する。具体的には、PaEの遺伝子であるPaCLE1の上流に検討対象のプロモーター配列を挿入したレポーターアッセイ用の遺伝子カセットを作製する。一方で、P.アンタクティカGB-4(0)株のPaURA3変異株を親株に用いて、PaCLE1遺伝子を破壊した菌株を作製する。この菌株に、PaURA3をマーカーに用いて上記遺伝子カセットを導入し、PaEの生分解性プラスチック分解活性をプロモーター強度の指標とした評価系を構築する。
また、例えば、培地の成分や細胞の状態にかかわらず、安定して遺伝子を発現させるプロモーター制御下でタンパク質を生産させることができれば便利である。そのようなプロモーターを、P.アンタクティカGB-4(0)株で探索するため、複数の炭素源条件下でGB-4(0)株を培養し、その細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析を行って、安定的に発現している遺伝子を選定する。そして、PaEをレポーターに用いた評価系を用いて、P.アンタクティカにおいて安定的に発現するプロモーターの選抜を試みる。
【0112】
(2)材料
本実施例で使用したプライマーの塩基配列は以下のとおりだった。
・PvuII-PaCLE1+1968c
5'-GAACGCGGCCGCCAGTGTGTCTTGTCGTTGTACAC-3'(配列番号57)
・PvuII-PaCLE1+613
5'-TGAACGTTGGTGTTGTATCCCTGAAGCTTCGTACG-3'(配列番号58)
・EcoRV-PaCLE1+263c
5'-GAATTCATCGATGATGCCACGATGTTGGCAGTACCCT-3'(配列番号59)
・EcoRV-PaCLE1-1074
5'-ACTAGTGGATCTGATAACGTTGCCGATCCGCAGTCTC-3'(配列番号60)
・SalI-PaURA3-651
5'-TACGCTGCAGGTCGACGAGCTGCGACACCTCGACGTAGCG-3'(配列番号61)
・SacI-PaURA3+1449c
5'-TCATCGATGAATTCGGTGGCCATTGGCCGTGACAACAGTA-3'(配列番号62)
・EcoRI-PaCLE1-1574
5'-TATCATCGATGAATTCGTACGATATGCAGCCAATC-3'(配列番号63)
・EcoRI-PaCLE1+1426c
5'-AATGGCCACCGAATTCACTACCTGTTGCGTTCGTA-3'(配列番号64)
・PaCLE1-1574(実施例5(2)に記載のとおり)
・PaURA3-300(実施例4(2)に記載のとおり)
・PaFRE1-903
5'-GCCGGAGTGATTCATGATTCGA-3'(配列番号65)
・PaXYN1-609(実施例5(2)に記載のとおり)
・PaCLE1+25c-PaXYN1-1c(実施例5(2)に記載のとおり)
・PaCLE1+25c-PaFRE1-1c
5'-CGGCAAAGGTCGACTTGAACTGCATCTTGATCTATCGAGGCCCCGCACGA-3'(配列番号66)
・PaCLE1+25c-PaCTR1-1c
5'-CGGCAAAGGTCGACTTGAACTGCATGCCGGAGTGATTCATGATTCGAATC-3'(配列番号67)
・PaTDH3-1500
5'-CCATTGCAGGTCTCGACATCAC-3'(配列番号68)
・PaCLE1+25c-PaTDH3-1c
5'-CGGCAAAGGTCGACTTGAACTGCATTTTTGAGATGATGGATGGGGAGTGT-3'(配列番号69)
・PaCTR1-903
5'-CTTGATCTATCGAGGCCCCGCA-3'(配列番号70)
【0113】
本実施例で使用した培地の組成は以下のとおりだった。
・3xFMM-PBSAエマルジョン・大豆油重層平板培地の組成
上層(炭素源及びPBSAエマルジョン)
PBSAエマルジョン* 1.0質量%
大豆油(和光純薬) 1.0質量%
寒天 1.5質量%
*ビオノーレエマルジョンEM-301(PBSA)(昭和電工株式会社製)
下層(3xFMM培地、炭素源を除いた組成)
NaNO3 0.2質量%
KH2PO4 0.06質量%
MgSO4・7H2O 0.06質量%
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 0.3質量%
(作製方法)
上層の原料を、スターラーを入れた三角フラスコ内で溶解し、殺菌した。9cmシャーレに約15mLの下層平板培地を作り、固まった後に45℃のインキュベーター内に保存し、約5mLの上層を重層した。このとき、上層はスターラーで撹拌し、油が均一に混ざるようにした。
【0114】
・レポーターアッセイ用YPD培地
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 1質量%
ペプトン(Difco Laboratories社製) 2質量%
グルコース 8質量%
(寒天 2質量%)
・レポーターアッセイ用YPX培地
酵母エキス(Difco Laboratories社製) 1質量%
ペプトン(Difco Laboratories社製) 2質量%
キシロース 8質量%
(寒天 2質量%)
【0115】
(3)遺伝子破壊によるPaE非生産株の作製
P.アンタクティカ染色体上にある内在性のPaCLE1をnatMX4で破壊して(置き換えて)、PaE非産生株を作製する。このnatMX4は、S.セレヴィシエを用いた実験で最近使われるようになった、ノウルセオトリシン(clonNAT)耐性遺伝子である。PaCLE1破壊用のコンストラクトとして、PaCLE1の上流配列と下流配列の間にnatMX4を挟んだ遺伝子配列を作製するために、KOD FX酵素(東洋紡)を使ったPCRによって、GB-4(0)株の染色体DNAからPaCLE1周辺配列を増幅し、natMX4がクローニングされたプラスミド(pAG25:EUROSCARFから研究用に入手)に、In-Fusion HD cloning kitを使用してクローニングした。
【0116】
まず、PvuII-PaCLE1+1968cとPvuII-PaCLE1+613をプライマーとして用い、GB-4(0)株の染色体DNAを鋳型に用いたPCRで遺伝子断片を増幅し、取得した遺伝子断片をPvuIIで消化したpAG25にクローニングし、得られたプラスミドをpYT007と名付けた。さらに、pYT007をEcoRVで消化し、EcoRV-PaCLE1+263cとEcoRV-PaCLE1-1074をプライマーとしたPCRで取得した遺伝子断片をクローニングして、得られたプラスミドをpYT012と名付けた。NotIで消化したpYT012を、PGB045株にリチウム法で導入した。取得した形質転換体の中から、3xFMM-PBSAエマルジョン・大豆油重層平板培地上でPBSAの分解を示さない菌株を選別し、PGB050株と名付けた。
【0117】
(4)PaEを指標としたレポーターアッセイ用遺伝子配列の作製
まず、PaURA3を遺伝子導入のマーカーとして利用するために、pAG25のnatMX4をPaURA3と置換したプラスミドを用意する。クローニングするためのPaURA3断片は、SalI-PaURA3-651とSacI-PaURA3+1449cをプライマーとしたPCRで取得した。これを、SacI及びSalIで消化したpAG25にクローニングし、得られたプラスミドをpYT019と名付けた。
【0118】
次に、PaCLE1導入用のコンストラクトを作製する。P.アンタクティカGB-4(0)株の染色体DNAから、EcoRI-PaCLE1-1574とEcoRI-PaCLE1+1426cをプライマーとしたPCRでPaCLE1遺伝子断片を増幅した。この遺伝子断片をEcoRIで消化したpYT019にクローニングしてプラスミドを取得し、得られたプラスミドをpYT040と名付けた。
【0119】
(5)GB-4(0)株の恒常性プロモーターの選抜と、PaEを利用したレポーターアッセイによるプロモーターの評価
1)P.アンタクティカGB-4(0)株の培養物の発現解析による候補プロモーター配列の選定
GB-4(0)株を、8質量%のグルコース又はキシロースを含む50mLの液体培地(0.6質量%のNaNO3、0.06質量%のKH2PO4、0.06質量%のMgSO4・7H2O、0.3質量%の酵母エキス(Difco Laboratories社製))を含む500mL容三角フラスコに接種後、30℃、200rpmで24時間及び168時間培養した。この細胞からRNAを抽出し、GB-4(0)株のマイクロアレイ解析に供した。
【0120】
各培養条件でのマイクロアレイ解析結果に基づき、いずれの条件下で培養しても安定してRNA量の多いORFを探索した。このとき、GB-4(0)株ゲノム配列のアノテーション情報を参考にして、タンパク質の機能が推測されるORFでは、鉄還元酵素(Ferric reductase)様タンパク質をコードしているS.セレヴィシエのFRE1遺伝子と相同性が高いPaFRE1及びS.セレヴィシエの銅のトランスポーターであるCTR1の遺伝子と相同性が高いPaCTR1を見出し、これらのプロモーターに着目した。それぞれのプロモーター配列を、P.アンタクティカGB-4(0)株のゲノム配列から抽出し、お互いに比較した結果、各プロモーター配列は、GB-4(0)株のゲノム配列上では共通した領域であり、互いに逆の向きで利用されていることがわかった。また、S.セレヴィシエのグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼのアイソザイムであるTdh3の遺伝子のプロモーターは、S.セレヴィシエでは発現量が高く安定したプロモーターとしてよく利用されることから、当該TDH3に相同性が高いP.アンタクティカの遺伝子(PaTDH3)のプロモーターにも着目し、これらのプロモーターの機能を調べることにした。比較の対象としては、PaCLE1のプロモーター及びキシロース誘導性であることが公知の高発現なキシラナーゼ(PaXYN1)のプロモーターを採用した。
【0121】
2)レポーターアッセイ系の構築
GB-4(0)株のゲノムから、これらの着目した遺伝子断片を取得するために、KOD plusを用いたPCRを行った。具体的には、PaCLE1-1574とPaURA3-300をプライマーとして用いたPCRによって、pTY040からPaCLE1プロモーターを評価するための遺伝子断片を作製した(
図7右上)。
【0122】
PaXYN1、PaFRE1、PaCTR1、及びPaTDH3プロモーター評価用の遺伝子断片は、フュージョンPCRによって作製した。具体的には、GB-4(0)株の染色体DNAから、各プロモーター遺伝子を増幅した(
図7左上)。このときに使用したプライマーは、表10のとおりだった。なお、PaFRE1プロモーター及びPaCTR1プロモーターは、同じプライマーで増幅されるが、互いに向きの異なるプロモーターである。
【表10】
【0123】
次に、PaCLE1+1とPaURA3-300をプライマーとして、pTY040から、PaCLE1プロモーターを含まないPaCLE1の遺伝子断片を増幅した(
図7上段中央)。この遺伝子断片を、フュージョンPCRによってそれぞれのプロモーター遺伝子と接続した(
図7)。また、PaCLE1を含まずにマーカー遺伝子のみを含む対照用遺伝子断片を作製するため、PaURA3-300とPaURA3+1449cをプライマーとして、GB-4(0)株の染色体DNAから、PaURA3の遺伝子断片をPCRで増幅した。本試験例で使用したプライマーは、表11のとおりだった。
【表11】
【0124】
各遺伝子のプロモーター領域の配列は以下のとおりだった。
・PaFRE1のプロモーター領域の配列
GCCGGAGTGATTCATGATTCGAATCTGTCGATCGGGGCGAAGTCCAAGTGATGAGATGAGGCCGCGAATCGAGCGGGCGAGACGTGACGAGTTTACGATGGTGGCAAGAGACGAAGCGCAAAAGTCTCGTGGTGTCGCTATTGGGTATATAGTTGCCTCTGTTTGGTTGCTCGACAACGACCGGCGAGTTTAGTGCAGCGAAACAAGCTTGATTGTAGCTTTCCGTTGGTGCACGCAGCATTCGCCACTTTTCGTTCCATGCACTCCCACTGTCCGTACCCGCGCTCAAGCCTTTCAACACCAAGGCACAGTCGAGGCTACGGAGGCGACCGGCGCCTTTCGGCCTGATGCCAAGAAGTCTGGCTCGTCCCGACTCGGAGCGTTTTCCCCTTCCTCGCGCACCTCAACCGCACTGTTCCATGGCGTGTTTCTGACAGCTCACGGACCCTGAGCTCTACTGCGCTACCGAATTTCTGGTTTGGGCCTCGTCTAGCAAGCGAGGCGGCCCTGGAGCTCCTCGACACCATCCCCTCGGAGCCTTTTTTTTTCCACGACGTCGCTCGTTTGGCAAAGGCTCCGAGTCTCACGCTCGGAACGTGGCGCGTTACAAGACGAGCTTTGCTGTCGGTCTCGGCAAGGGAACAATGGTGTGGGATAACGCTTGCACAGGAAGGATCCGAACGAATCATGTCGACTGCTCAGCATGGAACCGTCAGGCAAACGCTTCTTGGCGTTGCAAGTACCGCTACAACAAAGCTTCACAGATTCTGAGCCCTCTTACTTTGTTTGCCACCACCCAACGAAGCAAGAGTTAATAAAGCTGGAGCACGATAGCTGCTCTCAAGAGCCCCGTCCCTCCGCCGAAACACCAGCCTCCTTCGTGCGGGGCCTCGATAGATCAAG(配列番号71)
【0125】
・PaCTR1のプロモーター領域の配列
CTTGATCTATCGAGGCCCCGCACGAAGGAGGCTGGTGTTTCGGCGGAGGGACGGGGCTCTTGAGAGCAGCTATCGTGCTCCAGCTTTATTAACTCTTGCTTCGTTGGGTGGTGGCAAACAAAGTAAGAGGGCTCAGAATCTGTGAAGCTTTGTTGTAGCGGTACTTGCAACGCCAAGAAGCGTTTGCCTGACGGTTCCATGCTGAGCAGTCGACATGATTCGTTCGGATCCTTCCTGTGCAAGCGTTATCCCACACCATTGTTCCCTTGCCGAGACCGACAGCAAAGCTCGTCTTGTAACGCGCCACGTTCCGAGCGTGAGACTCGGAGCCTTTGCCAAACGAGCGACGTCGTGGAAAAAAAAAGGCTCCGAGGGGATGGTGTCGAGGAGCTCCAGGGCCGCCTCGCTTGCTAGACGAGGCCCAAACCAGAAATTCGGTAGCGCAGTAGAGCTCAGGGTCCGTGAGCTGTCAGAAACACGCCATGGAACAGTGCGGTTGAGGTGCGCGAGGAAGGGGAAAACGCTCCGAGTCGGGACGAGCCAGACTTCTTGGCATCAGGCCGAAAGGCGCCGGTCGCCTCCGTAGCCTCGACTGTGCCTTGGTGTTGAAAGGCTTGAGCGCGGGTACGGACAGTGGGAGTGCATGGAACGAAAAGTGGCGAATGCTGCGTGCACCAACGGAAAGCTACAATCAAGCTTGTTTCGCTGCACTAAACTCGCCGGTCGTTGTCGAGCAACCAAACAGAGGCAACTATATACCCAATAGCGACACCACGAGACTTTTGCGCTTCGTCTCTTGCCACCATCGTAAACTCGTCACGTCTCGCCCGCTCGATTCGCGGCCTCATCTCATCACTTGGACTTCGCCCCGATCGACAGATTCGAATCATGAATCACTCCGGC(配列番号72)
【0126】
・PaTDH3のプロモーター領域の配列
CCATTGCAGGTCTCGACATCACGGCTTGGCACGACAGTTACATTGCCGGTAAAGCGGTGGTGTGCTGCATCGCTTGTCGCCTAAAGTGTGGGGTAGCACGCCATCGCGAGGTCCTCGTGGGGGGAGCTGTCGAGGCTTCGGGCCAACCTGTCAAGCTGTCGATCGGGCATGATCTGATTGAGAGAAAGACAAGTGTAGGCCGATCAGATCGCAAGAGGCTGTAATATATTGTTAGACCGAAGCACAATTGGATCCAAAACCGCGACCACCAAAGCCGCTTTCCCCCGCGATGGGTGTAGAAGGCCTGCCCGTATGCCCCCGAAGCATTCAGTCCATTCGGGTGCAGGAGAACTTCACGACATCGGGCTGATCCGCGCGTGAACGATAGAAAGCGAGGCTGAAGCTCGACTTGAAGCCTGACTGTTCGGCATAAACGGACAGGTGGTGCAGTCGCAGTTTGCTGGTCAAGCTCCGTGAATGCCTTTGCCAGTCGCCTCGGAAAGATCCTTCTGGCTTTCCGGATCGAACGACACAGCGACGGCCCTCCGCTTGCACCCGCATCTCCACCCGCACCCCGCACTAGGCTCATGCGCTCCTGCCCCTCTCTCTTTCACCCGCCAAATCGGAAGCAAACACACCCGGAGTCCCTACCGGATGTATTGCATTGTGTCGAGAATCCAAGGCGGCGGCGGCAGTGAGCGGGCTGAAGCGTGGTGACGCCAGTCAGCCTCCCCCTGCCTGTCTGCCGCTTTGCACTGTGTAGCCTCCTCCTTTTGCGACTGCTGCTCGGCTTCTCGCCCGACTACGCTTCACTCGGCCGTTGCTTACTGTGCTCAGATCTGATCGACTAGCACACCGCAGCATACCCAACAAATCAGCGCTCGGTGATAAGAAGAAAGTGCAGCCAAAAAAGGAGAGAGAAAGTCTCACCGAGAGAGAGTCACTGTTGCGCCGAGGAGAGAGCGAGCAGGCAGGGTCTTGCGAGGCGCAGCGCAACTGCACTGATCTTCAAGTGATAACGTTGCTCAGAGGCTCCACATGACCCTTGGAGTTCAAGTGCTGCGCGGCTTTTTTTGAAATGGGGATTAGATGTCTTTTTCAAAGCTGGACGCTCGGATCAGCTTGATTGGGCAGTGGAGCCAAGAGCGATCAGCCCGTGCATTTCCAAGAGCTTCTGCGGTGGGAGAGCGCAGAGAGAGTGGGCATTATTCAGAAGATCGATTGTTCACAGTCGAGAGGAGCAGGCGGACCTGCGCGGTCACCGCGGTGCTCTCCGGGCCCGTCAGCAGTCATCCTTTGGCTCGGCTCGCTCCGCCACTGGCTTTGCGCAGAGGCCAGCCAGCAGCACCAGCAGCAGCAGCGAGCAGTGTTGGGCGACGCAGACCCGCACCCTCCTGCAGGCGCAAAGCGATCAAAAGTGCGTGTCCGCTTCGTCTCTTCTTCCTTCTGCTCCACCATCGAATCTTCTTCGTGTCACACTCCCCATCCATCATCTCAAAA(配列番号73)
【0127】
上述のようにして作製した遺伝子断片を、それぞれPGB050株に導入し、3xFMM-PBSAエマルジョン・大豆油重層平板培地上でPBSAの分解を示す形質転換体を取得した。取得した形質転換体を使用して、各プロモーター配列の機能を評価した。具体的には、(1)形質転換していないGB-4(0)株、(2)PaXYN1プロモーター/PaE導入PGB050株、(3)PaCLE1プロモーター/PaE導入PGB050株、(4)PaTDH3プロモーター/PaE導入PGB050株、(5)PaCTR1プロモーター/PaE導入PGB050株、(6)PaFRE1プロモーター/PaE導入PGB050株、又は、(7)マーカー遺伝子のみを導入したPGB050株を、レポーターアッセイ用YPD培地(8質量%のグルコースを含む)又はレポーターアッセイ用YPX培地(8質量%のキシロースを含む)を2mL使用して、試験管で48時間振とう培養し、その培養上清のPaE活性を定量した。その結果を
図8に示す。いずれのプロモーターも、グルコース又はキシロース存在下で機能することが確認できたが、特にPaFRE1プロモーター(試料6)は、使用した糖に関わらず高いPaE活性を示したため、機能の高いプロモーターであることが期待できた。
【配列表】