(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】汚染検出計測システム、リソグラフィ装置、それらの方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240508BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2022540330
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020085105
(87)【国際公開番号】W WO2021136631
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ポロウスキー、ミカル、エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクセン、オーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ミュンデン、リャン、アラン
(72)【発明者】
【氏名】ニーンハイス、ハン-クワン
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-144648(JP,A)
【文献】特開2006-126205(JP,A)
【文献】特開2015-200632(JP,A)
【文献】特開2008-020374(JP,A)
【文献】特開平06-201601(JP,A)
【文献】特表2017-511880(JP,A)
【文献】特開2001-196431(JP,A)
【文献】特開平09-033443(JP,A)
【文献】特開平06-050903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射ビームを生成するように構成される放射源と、オブジェクトの表面に対してビームを向け、表面におけるビームの空間強度分布を調整するように構成される空間光変調器と、を備える照明システムと、
表面および表面付近の構造によって散乱された前記ビームの放射を受け取り、受け取られた放射に基づく検出信号を生成するように構成される検出器と、
検出信号を分析し、分析に基づいて表面上の欠陥位置を判定し、分析および調整に基づいてスプリアス信号および欠陥に対応する信号を識別するように構成されるコンパレータと、
を備え、
前記オブジェクトは、第1オブジェクトおよび当該第1オブジェクトの
上の近くに配置される第2オブジェクトを含み、
前記検出信号は、前記第2オブジェクト上の第1位置に照明された放射に基づく前記第1オブジェクト上の第1位置からの前記スプリアス信号と、前記第2オブジェクト上の前記第1位置と異なる第2位置からの前記欠陥に対応する信号を含み、
前記コンパレータは、前記空間光変調器が前記スプリアス信号および前記欠陥に対応する信号を変調するために使用する異なるパターンに基づいて、当該スプリアス信号および当該欠陥に対応する信号を識別するシステム。
【請求項2】
空間光変調器は、前記第2オブジェクトの表面上の第1位置におけるビームの照明強度が第1パターンによって変調され、前記第2オブジェクトの表面上の第2位置におけるビームの照明強度が第1パターンと異なる第2パターンによって変調されるように、更に空間強度分布を調整するように構成され、
分析することは、変調に基づいて検出信号を分析することを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1パターンの第1強度状態は前記ビームの第1波長と関連付けられ、第1パターンの第2強度状態は前記ビームの第1波長と異なる第2波長と関連付けられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
第1パターンの強度状態は前記ビームの第1波長と関連付けられ、第2パターンの強度状態は前記ビームの第1波長と異なる第2波長と関連付けられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
空間光変調器は、表面上の追加的な位置におけるビームの照明強度が対応する追加的なパターンによって変調されるように、更に空間強度分布を調整するように構成され、
第1パターン、第2パターン、追加的な各パターンは互いに異なり、
識別することは、スプリアス信号を、第1パターン、第2パターン、追加的な各パターンのうち、与えられた位置に非特徴的なパターンに関連付けることを含む、
請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
第1および第2パターンは、第1および第2周期パターンに対応し、
第1周期パターンの周波数および/または位相は、第2周期パターンの周波数および/または位相と異なり、
分析は周波数分析を含み、
周波数分析は、表面上の与えられた位置で使用される照明変調の周波数および/または位相を判定することを含み、
識別することは、スプリアス信号を、与えられた位置に非特徴的な周波数および/または位相に関連付けることを含み、
第1周期パターンの周波数および/または位相に基づく強度状態のシーケンスは、第1周期パターンの規則的な元シーケンスに対する変動を含み、および/または、第2周期パターンの周波数および/または位相に基づく強度状態のシーケンスは、第2周期パターンの規則的な元シーケンスに対する変動を含む、
請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
空間強度分布は周期的であり、第1、第2、第3状態のシーケンスで変化し、
第2状態は、第1および第3状態と異なり、
検出信号は、第1、第2、第3状態の変化に応じた強度変調を含み、
分析することは、強度変調を分析して、前記シーケンスでの変化に対して減衰した光学的応答を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含み、
識別することは、スプリアス信号を、前記シーケンスでの変化に対して減衰した光学的応答を示す表面上の位置に関連付けることを含み、
表面付近の構造によって散乱された放射は、表面から出射されるビームの部分から生成され、
前記オブジェクトの表面付近の構造によって散乱された放射は、表面から出射されるビームの部分から生成され、
出射される部分は、減衰したコントラストを含む周期的な空間強度分布を有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
放射源は、更にビームが異なる第1および第2波長を有するように調整するように構成され、
検出信号は、異なる第1および第2波長に基づく、受け取られた放射の波長情報を含み、
分析することは、波長情報を分析して、波長の調整に対する光学的応答における相違を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含み、
識別することは、スプリアス信号を、波長の調整に対する光学的応答における相違を示す表面上の位置に関連付けることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記波長の調整に対する光学的応答における相違は、第1波長に基づく受け取られた放射の減衰と、第2波長に基づく受け取られた放射の減衰の間の相違を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
照明システムは、ビームが異なる第1および第2偏光を有するように調整するように構成される偏光器を更に備え、
検出信号は、異なる第1および第2偏光に基づく、受け取られた放射の偏光情報を含み、
分析することは、偏光情報を分析して、偏光の調整に対する光学的応答における相違を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
識別することは、スプリアス信号を、前記偏光の調整に対する光学的応答における相違を示す表面上の位置に関連付けることを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
偏光の調整に対する光学的応答における相違は、第1偏光に基づく受け取られた放射の強度と、第2偏光に基づく受け取られた放射の強度の間の相違を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
空間光変調器は、非零の入射角で表面の部分を照明するために、更に空間強度分布を調整するように構成され、
検出器は、更に表面の部分で散乱された放射の光路に沿った放射を受け取るように構成され、
システムは、前記光路と表面付近の構造によって散乱された放射に対応する光路の間の相違に基づくスプリアス信号イベントの確率を低減するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
空間光変調器は、前記第2オブジェクトの表面上の第1位置におけるビームの照明強度が第1周波数で変調され、前記第2オブジェクトの表面上の第2位置におけるビームの照明強度が第2周波数で変調されるように、更に空間強度分布を一時的に調整するように構成され、
第2周波数は第1周波数と異なり、
システムは、検出信号の周波数分析に基づいて、検出の光学的解像度を向上させるように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
パターニングデバイスのパターンを照明するように構成される照明装置と、
基板上にパターンの像を投影するように構成される投影システムと、
放射ビームを生成するように構成される放射源と、オブジェクトの表面に対してビームを向け、表面におけるビームの空間強度分布を調整するように構成される空間光変調器と、を備える照明システムと、表面および表面付近の構造によって散乱された前記ビームの放射を受け取り、受け取られた放射に基づく検出信号を生成するように構成される検出器と、検出信号を分析し、分析に基づいて表面上の欠陥位置を判定し、分析および調整に基づいてスプリアス信号および欠陥に対応する信号を識別するように構成されるプロセッサと、を備える計測システムと、
を備え、
前記オブジェクトは、第1オブジェクトおよび当該第1オブジェクトの
上の近くに配置される第2オブジェクトを含み、
前記検出信号は、前記第2オブジェクト上の第1位置に照明された放射に基づく前記第1オブジェクト上の第1位置からの前記スプリアス信号と、前記第2オブジェクト上の前記第1位置と異なる第2位置からの前記欠陥に対応する信号を含み、
前記プロセッサは、前記空間光変調器が前記スプリアス信号および前記欠陥に対応する信号を変調するために使用する異なるパターンに基づいて、当該スプリアス信号および当該欠陥に対応する信号を識別するリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2019年12月31日に出願された米国仮出願62/955,883号、および、2020年11月19日に出願された米国仮出願63/115,809号の優先権を主張する。これらの優先出願の全体が参照によって本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示はリソグラフィシステム、例えば、リソグラフィ装置におけるレチクル上の汚染を検出するための検査システムに関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は基板上、通常は基板のターゲット部分の上に所望パターンを適用する装置である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用されうる。この場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスが、ICの各層に形成される回路パターンを生成するために使用されうる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの部分、一つのダイ、複数のダイを含む)の上に転写されうる。パターンの転写は、典型的には基板上に提供される放射感応性材料(レジスト)の層における結像による。一般的に単一の基板は、連続的にパターン形成される隣り合うターゲット部分のネットワークを含む。公知のリソグラフィ装置は、ターゲット部分上に全体パターンを一度に露光することで各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパ、および、放射ビームを通じてパターンを所定方向(「スキャン」方向)にスキャンすると同時に、このスキャン方向に平行または非平行にターゲット部分をスキャンすることで、各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナを含む。基板上にパターンをインプリントすることで、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0004】
他のリソグラフィシステムは、パターニングデバイスが設けられずに光ビームが二つのビームに分けられ、当該二つのビームが反射システムを用いて基板のターゲット部分で干渉される干渉リソグラフィシステムである。干渉によって、基板のターゲット部分に線が形成される。
【0005】
リソグラフィ動作の間、異なる処理ステップが基板上に順に形成される異なる層を要求しうる。層の順次形成は、典型的には、各パターン転写処理について、各層のための所望パターンに応じて、異なるレチクルを切り替えることによって実現される。典型的なリソグラフィシステムにおいて、レチクル上のパターンやレチクルからウェーハ上に転写されるパターンに関する許容誤差はナノメートル以下である。レチクル上の汚染粒子は、転写パターンに対する誤差を招きうる。従って、ナノメートル以下の精度でウェーハ上にパターンを正確に転写できる汚染のないレチクルを維持することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リソグラフィ装置の環境内では、例えば、レチクルの受渡し、ウェーハの受渡し、ガス流の制御、真空チャンバ壁の脱ガス、液体の供給(例えば、フォトレジストコーティング)、温度の変動、金属の積層、多数の駆動可能なコンポーネントの急速な動作、構造の損耗等の極めて動的なプロセスが起こる。このような動的なプロセスは、時間の経過に伴ってリソグラフィ装置内における汚染粒子の生成や蓄積を招く。
【0007】
このように、リソグラフィ装置において光学的に重要なコンポーネント上の汚染を検出するための検査技術の改善が必要である。
【0008】
いくつかの実施形態におけるシステムは、照明システム、検出器、コンパレータを備える。照明システムは、放射源および空間光変調器を備える。放射源は、放射ビームを生成するように構成される。空間光変調器は、オブジェクトの表面に対してビームを向け、表面におけるビームの空間強度分布を調整するように構成される。検出器は、表面および表面付近の構造によって散乱された放射を受け取り、受け取られた放射に基づく検出信号を生成するように構成される。コンパレータは、検出信号を受け取り、検出信号に基づく第1像を生成し、第1像および調整された空間強度分布に基づいて、スプリアス信号および表面上の異粒子の存在に対応する信号を識別するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態における方法は、放射ビームを生成することと、空間光変調器によってビームの空間強度分布を調整することと、表面および表面付近の構造によって散乱された放射を検出器で受け取ることと、検出器によって検出信号を生成することと、プロセッサで検出信号を受け取ることと、検出信号に基づく第1像を生成することと、プロセッサによって第1像および調整された空間強度分布に基づいて、スプリアス信号および表面上の異粒子の存在に対応する信号を識別することと、を備える。
【0010】
いくつかの実施形態におけるリソグラフィ装置は、照明装置、投影システム、計測システムを備える。計測システムは、照明システム、検出器、プロセッサを備える。照明システムは、放射源および空間光変調器を備える。照明装置は、パターニングデバイスのパターンを照明するように構成される。投影システムは、基板上にパターンの像を投影するように構成される。放射源は、放射ビームを生成するように構成される。空間光変調器は、オブジェクトの表面に対してビームを向け、表面におけるビームの空間強度分布を調整するように構成される。検出器は、表面および表面付近の構造によって散乱された放射を受け取り、受け取られた放射に基づく検出信号を生成するように構成される。プロセッサは、検出信号を受け取り、検出信号に基づく第1像を生成し、第1像および調整された空間強度分布に基づいて、スプリアス信号および表面上の異粒子の存在に対応する信号を識別するように構成される。
【0011】
本開示の更なる特徴は、様々な実施形態の構造および動作と共に、付随する図面を参照して以下で詳細に記述される。本開示は、ここで記述される具体的な実施形態に限定されないと理解される。このような実施形態は、例示のみを目的として提示される。追加的な実施形態は、ここに含まれる教示に基づいて当業者にとって明白である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここで援用されて明細書の一部を構成する付随する図面は本開示を例示し、更にその記述と共にここで記述される実施形態を当業者が製造および使用できるように本開示の原理を説明するために用いられる。
【0013】
図1Aは、いくつかの実施形態に係る反射型リソグラフィ装置の模式図である。
【0014】
図1Bは、いくつかの実施形態に係る透過型リソグラフィ装置の模式図である。
【0015】
図2は、いくつかの実施形態に係る反射型リソグラフィ装置の詳細な模式図である。
【0016】
図3は、いくつかの実施形態に係るリソグラフィセルの模式図である。
【0017】
図4、5A、5B、6は、いくつかの実施形態に係る計測システムの模式図である。
【0018】
図7は、放射の波長に対するいくつかの実施形態に係るペリクルの透過度のグラフである。
【0019】
図8は、いくつかの実施形態に係る計測システムにおいて使用されうる偏光器の配置を示す。
【0020】
図9は、いくつかの実施形態に係る計測システムの模式図である。
【0021】
図10は、いくつかの実施形態に係る計測システムの断面図である。
【0022】
本開示の特徴は、図面(同様の参照記号は一貫して対応する要素を表す)と併せて解釈される以下の詳細な記述からより明らかになる。図面における同様の参照番号は、特に断らない限り、同一、機能的に同様、および/または、構造的に同様の要素を示す。加えて、特に断らない限り、参照番号における最も左の数字は、当該参照番号が最初に現れる図を示す。特に断らない限り、本開示を通じて提供される図面は、実際の寸法に忠実なものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書は、本開示の特徴を備える一または複数の実施形態を開示する。開示される実施形態は、例として提供される。本開示の範囲は、開示される実施形態に限定されない。権利請求される特徴は、添付される特許請求の範囲によって特定される。
【0024】
記述される実施形態や、明細書における「一つの実施形態」「ある実施形態」「ある実施例」等への言及は、記述される実施形態が特定の特徴、構造、特質を含みうるが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、特質を含まなくてもよいということを表す。更に、このような言い回しは、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、特定の特徴、構造、特質がある実施形態に関して記述される場合、このような特徴、構造、特質を他の実施形態に関して有効にすることは、明示的に記述されているか否かによらず当業者の知識の範囲内であると理解される。
【0025】
「下」(例えば、beneath、below、lower)や「上」(例えば、above、on、upper)等の空間的に相対的な用語は、図示される一方の要素または特徴の他方の要素または特徴に対する関係の記述を容易にするために使用されうる。空間的に相対的な用語は図示される方向だけでなく、使用中または動作中のデバイスの異なる方向も包含する意図で用いられる。装置は異なる方向(90度回転された方向や他の方向)を向いていてもよく、それに合わせて同様に空間的に相対的な用語は解釈されうる。
【0026】
用語「約」は、特定の技術に基づいて変動しうる与えられた量の値を表す。特定の技術に基づいて、用語「約」は、例えば、値の10-30%(例えば、値の±10%、±20%、±30%)の範囲内で変動しうる与えられた量の値を表しうる。
【0027】
本開示の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、これらの任意の組合せとして実装されうる。本開示の実施形態は、一または複数のプロセッサによって読み込まれて実行されうる機械読取可能媒体に格納された指令として実装されてもよい。機械読取可能媒体は、装置(例えば、演算デバイス)によって読取可能な形で情報を格納または送信するための任意のメカニズムを含みうる。例えば、機械読取可能媒体は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイス、電気/光/音その他の形の伝送信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等を含みうる。更に、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、および/または、指令は、特定のアクションを実行するものとして記述されうる。しかし、このような記述は便宜的なものに過ぎず、このようなアクションは実際には演算デバイス、プロセッサ、コントローラ、その他のファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、指令等を実行する任意のデバイスによって引き起こされると理解されるべきである。用語「非一時的」は、一時的な伝送信号を唯一の例外として、データ、情報、指令等を格納するために使用されるコンピュータ読取可能媒体を特徴付けるために使用されうる。
【0028】
このような実施形態を詳細に記述する前に、本開示の実施形態が実施されうる環境例について説明する。
【0029】
リソグラフィシステムの例
【0030】
図1Aおよび1Bは、本開示の実施形態が実装されうるリソグラフィ装置100およびリソグラフィ装置100’それぞれの模式図である。リソグラフィ装置100およびリソグラフィ装置100’それぞれは次の要素を含む:放射ビームB(例えば、深紫外または極端紫外放射)を調整するように構成される照明システム(イルミネータ)IL;パターニングデバイス(例えば、マスク、レチクル、動的なパターニングデバイス)MAを支持するように構成され、当該パターニングデバイスMAを正確に配置するように構成される第1ポジショナPMに接続される支持構造(例えば、マスクテーブル)MT;基板(例えば、レジストがコーティングされたウェーハ)Wを保持するように構成され、基板Wを正確に配置するように構成される第2ポジショナPWに接続される基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT。リソグラフィ装置100および100’は、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに形成されたパターンを、基板Wのターゲット部分(例えば、一または複数のダイを含む)C上に投影するように構成される投影システムPSも有する。リソグラフィ装置100では、パターニングデバイスMAおよび投影システムPSは反射型である。リソグラフィ装置100’では、パターニングデバイスMAおよび投影システムPSは透過型である。
【0031】
照明システムILは、放射ビームBの方向付け、形成、制御等のための、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁気型、静電気型その他のタイプの光学コンポーネントや、それらの任意の組合せ等の各種の光学コンポーネントを含んでもよい。
【0032】
支持構造MTは、参照フレームに対するパターニングデバイスMAの方向、リソグラフィ装置100および100’の少なくとも一つのデザイン、パターニングデバイスMAが真空環境に保持されるか否か等の他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持するために、機械型、真空型、静電気型、その他のクランプ技術を利用してもよい。支持構造MTは、例えば、必要に応じて固定されまたは移動可能なフレームまたはテーブルでもよい。センサを使用することで、支持構造MTは、パターニングデバイスMAを例えば投影システムPSに対する所望の位置に確実に配置しうる。
【0033】
用語「パターニングデバイス」(MA)は、例えば基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するように、放射ビームBの断面にパターンを形成するために使用されうる任意のデバイスを指すものと広義に解釈されるべきである。放射ビームBに形成されるパターンは、集積回路を形成するためにターゲット部分Cに生成されるデバイスにおける特定の機能層に対応しうる。
【0034】
パターニングデバイスMAは、透過型(例えば
図1Bにおけるリソグラフィ装置100’)でもよいし、反射型(例えば
図1Aにおけるリソグラフィ装置100)でもよい。パターニングデバイスMAの例は、レチクル、マスク、プログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルを含む。マスクは、リソグラフィにおいて周知であり、バイナリ型、レベンソン型位相シフト、ハーフトーン型位相シフト、各種のハイブリッドマスクタイプ等のマスクタイプを含む。プログラマブルミラーアレイの一例は、入射ビームを異なる方向に反射するために個別に傾けられうる小ミラーのマトリックス配置を採用する。傾けられたミラーは、放射ビームBにパターン(小ミラーのマトリックスによって反射されたもの)を形成する、
【0035】
用語「投影システム」(PS)は、使用される露光放射や、基板W上での液浸液の使用または真空の使用等の他の要素にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁気型、静電型の光学システムや、それらの任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを包含しうる。他のガスが放射または電子を過剰に吸収してしまうため、EUVまたは電子ビーム放射のために真空環境が使用されうる。従って、真空壁および真空ポンプによって、真空環境がビーム経路全体に提供されてもよい。
【0036】
リソグラフィ装置100および/またはリソグラフィ装置100’は、2(デュアルステージ)またはそれより多い基板テーブルWT(および/または2以上のマスクテーブル)を有するタイプでもよい。このような「マルチステージ」装置では、追加的な基板テーブルWTが並列に使用されうる、または、一または複数の他の基板テーブルWTが露光のために使用されている間に、準備ステップが一または複数のテーブル上で実行されうる。いくつかの状況では、追加的なテーブルは基板テーブルWTでなくてもよい。
【0037】
リソグラフィ装置は、投影システムおよび基板の間の空間を満たすために、基板の少なくとも一部が水等の比較的高い屈折率を有する液体によって覆われうるタイプでもよい。液浸液は、リソグラフィ装置における他の空間、例えばマスクおよび投影システムの間の空間に適用されてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を高めるための周知技術である。用語「液浸」は、基板等の構造が液体中に沈まなくてはならないことを意味するのではなく、露光中に液体が投影システムおよび基板の間に存在することのみを意味する。
【0038】
図1Aおよび1Bにおいて、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば源SOがエキシマレーザの場合、源SOおよびリソグラフィ装置100、100’は物理的に異なる構成でもよい。このような場合、源SOはリソグラフィ装置100または100’の一部を形成するものではなく、例えば適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBD(
図1B)によって、放射ビームBは源SOからイルミネータILに渡される。例えば源SOが水銀ランプ等の他の場合では、源SOはリソグラフィ装置100、100’の一部でもよい。源SOおよびイルミネータILは、ビームデリバリシステムBDと共に、必要に応じて放射システムとも呼ばれる。
【0039】
イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタAD(
図1B)を含んでもよい。一般的に、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側半径範囲および/または内側半径範囲(一般的にσ-outer/σ-innerとそれぞれ呼ばれる)が調整されうる。加えて、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCO等の各種の他のコンポーネント(
図1B)を含んでもよい。イルミネータILは、放射ビームBが断面における所望の均一性および強度分布を有するように調整するために使用されてもよい。
【0040】
図1Aにおける放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射し、パターニングデバイスMAによってパターン形成される。リソグラフィ装置100では、放射ビームBがパターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射される。放射ビームBは、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射された後、基板Wのターゲット部分C上に放射ビームBを集光する投影システムPSを通過する。第2ポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、容量センサ)によって、基板テーブルWTは正確に駆動されうる(例えば、放射ビームBの経路における異なるターゲット部分Cに配置されるように)。同様に、第1ポジショナPMおよび他の位置センサIF1は、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に配置するために使用されうる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせされうる。
【0041】
図1Bにおける放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射し、パターニングデバイスMAによってパターン形成される。マスクMAを通過した放射ビームBは、基板Wのターゲット部分C上にビームを集光する投影システムPSを通過する。投影システムは、照明システム瞳IPUに対する瞳共役PPUを有する。放射の部分は、照明システム瞳IPUでの強度分布から発出され、マスクパターンでの回折によって影響されることなくマスクパターンを通過し、照明システム瞳IPUでの強度分布の像を生成する。
【0042】
投影システムPSは、基板W上にコーティングされたフォトレジスト層上に、マスクパターンMPの像MP’を投影する。ここで、像MP’は、強度分布からの放射によってマスクパターンMPから生成される回折ビームによって形成される。例えば、マスクパターンMPは、線および空間の配列を含んでもよい。零次回折と異なる配列での回折放射は、線に直交する方向における方向の変化を伴う逸れた回折ビームを生成する。非回折ビーム(すなわち、いわゆる零次回折ビーム)は、伝送方向における変化を伴わずにパターンを通過する。零次回折ビームは、投影システムPSの瞳共役PPUの上流において投影システムPSの上方レンズまたは上方レンズ群を通過し、瞳共役PPUに到達する。零次回折ビームと関連付けられる瞳共役PPUの平面における強度分布の部分は、照明システムILの照明システム瞳IPUにおける強度分布の像である。開口デバイスPDは、例えば、投影システムPSの瞳共役PPUを含む平面に実質的に配置される。
【0043】
投影システムPSは、レンズまたはレンズグループLによって、零次回折ビームだけでなく一次または一次および高次回折ビーム(不図示)も取得するように設けられる。いくつかの実施形態では、ダイポール照明による解像度向上効果を利用するために、線に直交する方向に延びる線パターンを結像するためのダイポール照明が使用されてもよい。例えば、一次回折ビームは、対応する零次回折ビームとウェーハWのレベルで干渉し、線パターンMPの像を可能な限り高い解像度およびプロセスウィンドウ(すなわち、許容可能な露光ドーズ偏差との組合せにおいて使用可能な焦点深度)で生成する。いくつかの実施形態では、照明システム瞳IPUと反対の象限に放射極(不図示)を提供することによって、非点収差が低減されうる。更に、いくつかの実施形態では、反対の象限における放射極と関連付けられる投影システムの瞳共役PPUにおいて零次ビームをブロックすることによって、非点収差が低減されうる。このことは、その全体が参照によって本書に援用される、2009年3月31日に発行された米国特許7,511,799B2において、より詳細に記述されている。
【0044】
第2ポジショナPWおよび位置センサIF(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、容量センサ)を利用することで、基板テーブルWTは正確に駆動されうる(例えば、異なるターゲット部分Cを放射ビームBの経路上に配置するように)。同様に、第1ポジショナPMおよび他の位置センサ(
図1Bでは不図示)が、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に配置するために使用されうる(例えば、マスクライブラリからの機械的な取出し後やスキャン中)。
【0045】
一般的に、マスクテーブルMTの移動は、第1ポジショナPMの一部を構成する長ストロークモジュール(粗動位置決め)および短ストロークモジュール(微動位置決め)を利用することで実現されうる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2ポジショナPWの一部を構成する長ストロークモジュールおよび短ストロークモジュールを利用して実現されうる。(スキャナではない)ステッパの場合、マスクテーブルMTは短ストロークアクチュエータのみに接続されてもよいし、固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせされてもよい。基板アライメントマークは図示のように専用のターゲット部分を占めるが、ターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい(スクライブラインアライメントマークとして知られている)。同様に、複数のダイがマスクMA上に提供される状況では、マスクアライメントマークはダイの間に配置されてもよい。
【0046】
マスクテーブルMTおよびパターニングデバイスMAは、真空内ロボットIVRがマスク等のパターニングデバイスを真空チャンバ内外で駆動するために使用されうる真空チャンバV内に置かれてもよい。あるいは、マスクテーブルMTおよびパターニングデバイスMAが真空チャンバ外に置かれる場合、真空外ロボットが真空内ロボットIVRと同様に様々な移送動作のために使用されうる。真空内および真空外ロボットは共に、移送ステーションの固定されたキネマティックマウントにペイロード(例えば、マスク)を円滑に移送するために較正される必要がある。
【0047】
リソグラフィ装置100および100’は、以下のモードの少なくとも一つにおいて使用されうる。
【0048】
1.ステップモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTが、放射ビームBに形成された全体パターンがターゲット部分C上に一度に投影される(すなわち、単一静的露光)間、実質的に静止状態に保たれる。そして、異なるターゲット部分Cが露光されるように、基板テーブルWTはXおよび/またはY方向にシフトされる。
【0049】
2.スキャンモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTが、放射ビームBに形成されたパターンがターゲット部分C上に投影される(すなわち、単一動的露光)間、同時にスキャンされる。支持構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの倍率および像反転特性によって決定されてもよい。
【0050】
3.他のモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTが、プログラマブルパターニングデバイスを保持しながら実質的に静止状態に保たれ、放射ビームBに形成されたパターンがターゲット部分C上に投影される間に基板テーブルWTが駆動またはスキャンされる。パルス放射源SOが用いられてもよく、プログラマブルパターニングデバイスが必要に応じて、基板テーブルWTの各移動後またはスキャン中の連続する放射パルスの間に更新されてもよい。この動作モードは、プログラマブルミラーアレイ等のプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用しうる。
【0051】
以上の使用モードの組合せおよび/または変形や、全く異なる使用モードが用いられてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、リソグラフィ装置がDUVおよび/またはEUV放射を生成してもよい。例えば、リソグラフィ装置100’は、DUV源を使用して動作するように構成されてもよい。他の例では、リソグラフィ装置100が、EUVリソグラフィのためのEUV放射のビームを生成するように構成される極端紫外(EUV)源を含む。一般的に、EUV源は放射システムにおいて構成され、対応する照明システムはEUV源のEUV放射ビームを調整するように構成される。
【0053】
図2は、ソースコレクタ装置SO、照明システムIL、投影システムPSを含むリソグラフィ装置100をより詳細に示す。ソースコレクタ装置SOは、ソースコレクタ装置SOの閉鎖構造220において真空環境が維持されるように、構成および調整される。EUV放射プラズマ210は、放電生成プラズマ源によって形成されうる。EUV放射は、電磁スペクトルのEUV範囲における放射を発するための極高温プラズマ210が生成されるガスまたは蒸気、例えばXeガス、Li蒸気、Sn蒸気によって生成されうる。極高温プラズマ210は、例えば、少なくとも部分的にイオン化されたプラズマをもたらす電気的な放電によって生成される。Xe、Li、Sn蒸気や、他の任意の適切なガスまたは蒸気の例えば10Pa程度の分圧が、放射の効率的な生成のために要求されうる。いくつかの実施形態では、EUV放射を生成するためにスズ(Sn)励起プラズマが提供される。
【0054】
高温プラズマ210が発した放射は、ソースチャンバ211における開口の内部または後方に位置するオプションのガスバリアまたは汚染トラップ230(汚染バリアまたはフォイルトラップとも呼ばれる)を介して、ソースチャンバ211からコレクタチャンバ212内に渡される。汚染トラップ230はチャネル構造を含んでもよい。また、汚染トラップ230は、ガスバリアまたはガスバリアおよびチャネル構造の組合せを含んでもよい。ここで更に例示される汚染トラップまたは汚染バリア230は、少なくともチャネル構造を含む。
【0055】
コレクタチャンバ212は、いわゆる斜入射型コレクタでもよい放射コレクタCOを含んでもよい。放射コレクタCOは、上流放射コレクタ側251および下流放射コレクタ側252を有する。コレクタCOを通過する放射は、格子スペクトルフィルタ240から反射されて、仮想ソース点IFに集光されてもよい。仮想ソース点IFは一般的に中間焦点と呼ばれ、ソースコレクタ装置は中間焦点IFが閉鎖構造220における開口219上または付近に位置するように設けられる。仮想ソース点IFは、放射プラズマ210の像である。格子スペクトルフィルタ240は、特に赤外線(IR)放射を抑えるために使用される。
【0056】
続いて、放射は、パターニングデバイスMAでの所望の放射ビーム221の角度分布、および、パターニングデバイスMAでの所望の放射強度の均一性を提供するために設けられるファセットフィールドミラーデバイス222およびファセット瞳ミラーデバイス224を含んでもよい照明システムILを通過する。支持構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAでの放射ビーム221の反射の際にパターン形成されたビーム226が形成され、投影システムPSによってパターン形成されたビーム226は反射要素228、229を介してウェーハステージまたは基板テーブルWTによって保持された基板W上に結像される。
【0057】
一般的に、図示されたものより多くの要素が照明光学ユニットILおよび投影システムPSに存在してもよい。リソグラフィ装置のタイプに応じて、格子スペクトルフィルタ240がオプションで存在してもよい。更に、
図2に示されたものより多くのミラーが存在してもよい。例えば、1と6の間の追加的な反射要素が、
図2に示されたものに加えて投影システムPSに存在してもよい。
【0058】
図2に例示されるコレクタ光学要素COは、コレクタ(またはコレクタミラー)の一例として、斜入射型リフレクタ253、254、255による入れ子状のコレクタとして示されている。斜入射型リフレクタ253、254、255は光軸Oの周りに軸対称に配置され、このタイプのコレクタ光学要素COは、しばしばDPP源と呼ばれる放電生成プラズマ源との組合せで使用されるのが好ましい。
【0059】
例示的なリソグラフィセル
【0060】
図3は、いくつかの実施形態に係るリソセルまたはクラスタとも呼ばれるリソグラフィセル300を示す。リソグラフィ装置100または100’は、リソグラフィセル300の一部を構成してもよい。また、リソグラフィセル300は、露光前および露光後のプロセスを基板に対して実行する一または複数の装置を含んでもよい。従来、これらは、レジスト層を形成するためのスピンコータSC、露光されたレジストを現像するためのデベロッパDE、冷却プレートCH、ベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、基板を入力/出力ポートI/O1、I/O2からピックアップし、それらを異なる処理装置の間で動かし、それらをリソグラフィ装置100または100’のローディングベイLBに搬送する。しばしばトラックとも総称されるこれらのデバイスは、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する監視制御システムSCSによってそれ自体が制御されるトラック制御ユニットTCUの制御下にある。このように、異なる装置がスループットおよび処理効率を最大化するために動作しうる。
【0061】
例示的な汚染検査装置
【0062】
いくつかの実施形態では、計測システムが、オブジェクトの清浄度を判定するためにオブジェクトを検査するために使用されうる。誤検出(またはフォルスポジティブ)を最小化しながら、表面(例えば、レチクルまたは基板の表面)上の望ましくない欠陥が正しく検出されるように、検査技術が実行されてもよい。検査技術は、光学的な検査を含んでもよい。
【0063】
「不完全」「欠陥」「傷」等の用語は、所定の許容誤差からの構造の偏差または非均一性を表す。例えば、平らな表面には、擦り傷、穴、くぼみ、異粒子、しみ等の欠陥が発生しうる。
【0064】
不完全の文脈において、「異粒子」「汚染粒子」「汚染」等の用語は、予期しない、非典型的な、望ましくない(以下、望ましくない)微粒子事象の発生を許容するように設計されていない、あるいは微粒子事象が発生している場合に装置の動作に悪影響を及ぼす領域内または表面上で発生する望ましくない微粒子事象を表す。異粒子のいくつかの例は、ダスト、浮遊フォトレジスト、その他のリソグラフィ装置内で除去された材料を含んでもよい。除去された材料の例は、鉄、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Ti等を含んでもよい。材料の除去は、例えば、基板上での金属配線の形成工程や、被駆動構造の摩擦や衝突によって起こりうる。汚染がリソグラフィ装置における繊細な部分(例えば、レチクルまたは基板)に達すると、リソグラフィプロセスにおける誤差の可能性を高めてしまう。本開示の実施形態は、リソグラフィ装置または処理の繊細な部分における欠陥を検出するための構造および機能を提供する。
【0065】
フォルスポジティブは、リソグラフィにとって有害である。例えば、フォルスポジティブ検出は、不必要なメンテナンスアクション(例えば、レチクル交換)を促すことで生産を遅延させ、完全に適合したレチクルの廃棄を推奨することさえある。本開示の実施形態は、インスタンスを低減またはフォルスポジティブを除去するための構造および機能を提供する。
【0066】
図4は、いくつかの実施形態に係る計測システム400の模式図である。いくつかの実施形態では、計測システム400はリソグラフィ装置において実装されてもよい。計測システム400は、照明システム402、検出器404、プロセッサ406を備えてもよい。照明システム402は、放射源408および空間光変調器410を備えてもよい。照明システム402は、一または複数の放射調整要素412(例えば、偏光器、波長フィルタ、集光要素、ビームスプリッタ、ビームコンバイナ等の任意のもの)を備えてもよい。計測システム400は、筐体414を備えてもよい。筐体414は、一または複数の区画を備えてもよい。筐体414は、ビューポートウィンドウ416および418を備えてもよい。計測システム400は、一または複数の追加的な照明システム424を備えてもよい。照明システム424は、構造および機能において照明システム402と実質的に同様でもよい。筐体414は、一または複数の追加的なビューポートウィンドウ426を備えてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、検出器404は、センサ要素420および集光要素422(例えば、対物レンズまたはレンズシステム)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、検出器404は、単一セル光検出器(複数でない場合は解像不能)でもよく、この場合のセンサ要素420は感光性ダイオードでもよい。いくつかの実施形態では、検出器404は、画像取得デバイスまたはマルチセル光検出器(例えば、光検出器の二次元アレイ)でもよい。センサ要素420は、電荷結合素子(CCD)または相補型金属-酸化物-半導体(CMOS)を備えてもよい。
【0068】
計測システム400の実施形態をより詳細に記述する前に、計測システム400を使用して検査されうるオブジェクト428の例を示す。いくつかの実施形態では、オブジェクト428は、連続的オブジェクトまたは複数部分オブジェクト(
図4は、複数部分の例の拡大図を示す)を備えてもよい。オブジェクト428が複数部分を含みうる実施形態では、オブジェクト428は、レチクル430の脇に配置されるペリクル432を有するレチクル430でもよい。レチクル430は、パターンフィーチャ434を備えてもよい。パターンフィーチャ434は、例えば、リソグラフィプロセスを通じて基板上に転写される製品およびアライメントマークパターンを備えてもよい。パターン転写の質は、欠陥440がレチクル430上、特にパターンフィーチャ434上に存在する場合に悪影響を受けうる。そこで、ペリクル432は、パターンフィーチャ434を有するレチクル430の面上に欠陥440が付着することを防止するように構成される透明プロテクタでもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、オブジェクト428は、表面436および438を備えてもよい。表面436は、表面438と反対のオブジェクト428の一方の側に配置される。表面436は、欠陥440(例えば、表面436上に配置されるように示されている欠陥440)に接触し、それがパターンフィーチャ434に到達するのを防止するように構成されてもよい。表面438は、レチクル430の背面(例えば、非フィーチャ側)でもよい。オブジェクト428は、ペリクル432およびレチクル430の間に間隙が存在するように設けられてもよい。間隙は、ミクロンからミリメートルの範囲でもよい。表面436およびパターンフィーチャ434の間の距離の結果、欠陥440はパターン転写において使用される照明に対して焦点が外れるため、表面436上の欠陥440がパターン転写に影響する可能性が低くなる。それでも、異粒子の数(カウント)が許容できないレベルに達するのを防止するために、ペリクル432の表面436を監視するのが望ましい。逆に、レチクル430の表面438上の異粒子も、異粒子がレチクル430およびレチクルテーブルの間に挟まれる場合に、異粒子がレチクル430にプリントされ、あるいはレチクル430の形状を歪めるため、またはレチクルおよびレチクルテーブルの間に挟まれた異粒子が、それらの表面にダメージを与えるため、またはレチクルテーブルに転写された異粒子が汚染の原因となり、同じステージに搭載される他のレチクルに汚染またはダメージを与える可能性があるため、リソグラフィに悪影響を及ぼしうる。
【0070】
いくつかの実施形態では、放射源408は、オブジェクト428を照明するための放射ビーム442を生成してもよい。放射ビーム442は、インコヒーレント放射を含んでもよい。放射ビーム442はコヒーレント源で生成されてもよいと理解されるべきである。放射ビーム442は、波長(例えば、中心波長を中心とする狭帯域幅)を有してもよい。放射ビーム442は、二つ以上の波長(例えば、複数の不連続な狭帯または連続帯)を有してもよい。一または複数の放射調整要素412(例えば、波長フィルタ)が、オブジェクト428を照明するために使用される波長を選択するために使用されうる。これらに加えてまたは代えて、放射源408は、二つ以上の波長の異なる部分を生成するための二つ以上の別々の放射源を備えてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、空間光変調器410は、オブジェクト428の表面436に対して放射ビーム442を向けてもよい。空間光変調器410は、表面436における放射ビーム442の空間強度分布を調整してもよい。つまり、オブジェクト428上に向けられる照明は、例えばフラッド照明と異なり、ピクセルレベルで選択可能としてもよい。空間光変調器410は、液晶変調器を備えてもよい。空間光変調器410は、照明指向要素(例えば、リフレクタ)および/または偏光器を備えてもよい。液晶は、偏光に基づいて動作してもよい。例えば、液晶デバイスのピクセル要素は、液晶ピクセル要素の偏光状態に基づいて、放射を全透過してもよいし、部分透過してもよいし、遮断してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、空間光変調器410は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を備えてもよい。DMDは、所望の位置に対して光を反射する機械的に駆動可能なマイクロミラーに基づいて動作してもよい。このように、DMDは、「完全オン」(ターゲットに対して反射する)または「完全オフ」(ターゲットに対して反射しない)の状態のみに制限されるように見える。しかし、DMDピクセル要素は、103-104 Hzのオーダーの周波数(すなわち、リフレッシュレート)でトグリングできる。対照的に、検出器404は、10-102 Hzのオーダーのサンプリングレートのみを使用してもよい。DMDの速度を利用することで、例えば、検出器404の一サンプリング周期の一部のみでターゲットを照明することによって、DMDの「部分オン」の状態を定義することが可能である。
【0073】
いくつかの実施形態では、空間光変調器410は、投影/照明システムを通じてオブジェクト面において要求された強度プロファイルを生成可能な、空間的に可変な透過プロファイルを有する光学要素(例えば、ピクセル要素)を利用してもよい。これらは、例えば、クロムオングラスパターン、望ましい透過プロファイルを有する写真フィルム等でもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、検出器404は、表面436および表面付近の構造(例えば、パターンフィーチャ434)によって散乱された、被検出放射444によって表される放射を受け取ってもよい。表面436で散乱される被検出放射444は、表面436上に存在する欠陥440によって散乱された放射を含んでもよい。検出器404は、受け取られた放射に基づく検出信号を生成してもよい。プロセッサ406は、検出信号を受け取って分析してもよい。プロセッサ406は、分析に基づいて、表面上の欠陥位置を判定してもよい。プロセッサ406は、検出信号に基づく第1像を生成してもよい。プロセッサ406は、分析および調整された空間強度分布に基づいて、スプリアス信号および表面436上の欠陥440の存在に対応する信号を識別してもよい。つまり、計測システム400は、次の二つのタイプの被検出放射を区別できる:(1)欠陥440と関連付けられる放射(例えば、異粒子の正しい検出)および(2)欠陥440以外の構造と関連付けられる放射(例えば、パターンフィーチャ434によって散乱された放射からのスプリアス信号によるフォルスポジティブ)。
【0075】
放射の検出の文脈において、「フォルス(誤)」「スプリアス」「ゴースト」「寄生」等の用語は、異粒子と相互作用しない放射と関連付けられる信号を記述するために使用されうる。例えば、スプリアス信号は、実際には欠陥が存在しないにも関わらず、その位置であたかも陽に欠陥が検出されたかのように見せかける被検出放射と関連付けられてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、プロセッサ406によって実行される識別処理は、欠陥440の存在(例えば、存在または不存在)を二値で判定する処理を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ406によって実行される識別処理は、潜在的な欠陥440の存在についての確度(例えば、百分率の確率)を判定する処理を含んでもよい。プロセッサ406は、検出信号に基づいて、欠陥440の位置および/またはサイズを判定してもよい。プロセッサ406は、計測システム400のユーザに対して、(例えば、コンピュータディスプレイ上で)検出結果を提示してもよい。検出結果は、例えば、欠陥440の存在、位置および/またはサイズ、取得画像、スペクトル分析等を含んでもよい。
【0077】
表面(例えば、表面436)の文脈において、用語「横(方向)」は、表面に沿う方向を表す。例えば、XおよびYの表記が、表面436上の横方向位置を表すための位置座標として使用されうる。他の例では、横方向は、計測システム400の光軸446に直交する方向でもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、計測装置400の横解像度は、光学要素自体(例えば、開口数(NA)、収差、補正限界、組立上の制約等)によって物理的に制限されうる。いくつかの実施形態では、集光要素422のNAは、監視面上に亘る平均が0.055でもよい。これらの条件は、特に欠陥440のサイズが検出側光学素子のエアリーディスクの半径より小さい場合、欠陥位置440の解明において困難をもたらしうる。計測システム400の回折限界より小さい径を有する欠陥440の存在およびサイズは判定できる一方で位置を判定できないのは不都合である。計測システム400の横解像度は、次のレイリー方程式によって近似されうる:
ro = 0.61λ/NA (1)
【0079】
方程式1において、roは解像度限界であり、λは放射ビーム442の波長であり、NAは計測装置400の開口数である。検出器404の横解像度rdは、「rd = 2w」によって近似されうる。ここで、wは検出器404の検出器要素(例えば、ピクセル)の幅である。いくつかの実施形態では、計測システム400の横解像度は、roおよびrdの低い方によって制限されうる。あるいは、極端な場合では、検出器404は横解像度を全く持たない(例えば、単一セル光検出器)。
【0080】
いくつかの実施形態では、用語「検出器要素」は、検出器の個々の放射感応性要素を表す。例えば、マルチセル検出器における検出器要素は、マルチセル検出器によって行われる検出に基づいて生成される画像の画素と関連付けられうる。
【0081】
いくつかの実施形態では、検出可能粒子の最小サイズが、計測システム400のノイズフロアによって制限されうる。計測システム400は、約5μm以上の異粒子のサイズを正しく特定および判定しうる。一方、欠陥440の横方向位置の判定は、より大きいオーダーの不確定性を伴い、前述のような横解像度限界のために高精度化が難しい。これに対して、本開示のいくつかの実施形態は、検出器404で受け取られた放射を調整するための高解像度照明システム(例えば、照明システム402)からの放射の特性(例えば、空間変調)を活用することで、検出の光学的解像度の向上を図る。
【0082】
図5Aは、いくつかの実施形態に係る計測システム500の模式図である。
図4を参照して記述されたいずれの構造および機能も、
図5Aを参照する実施形態に含まれてもよいと理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、照明システム424(
図4)が、
図5Aを参照する実施形態に含まれてもよい。特に断らない限り、
図4の要素と同様の参照番号(例えば、右から二つ分の数字が共通する参照番号)を有する
図5Aの要素は、同様の構造および機能を有してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、異粒子(例えば、欠陥540)の存在のために、計測システム500がレチクル530を検査するために使用されうる。計測システム500は、空間光変調器510および集光要素512を有する照明システムを備えてもよい。計測システムは、検出器504およびプロセッサ506を備えてもよい。検出器504は、センサ要素520および集光要素522を備えてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、空間光変調器510が、照明システムによって生成される放射ビーム542の空間強度分布を一時的に調整するように構成されてもよい。例えば、空間光変調器510は、放射ビーム542の与えられた領域を、多くの周波数のうち、例えばfA、fB、fCの周波数に変調してもよい。周波数は互いに異なっていてもよい。レチクル530の表面538上の座標(XA、YA)によって表される位置Aにおける放射ビーム542の照明強度は、周波数fAで変調されてもよい(例えば、正弦パターン、周期パターン等を介して)。表面538上の座標(XB、YB)によって表される位置Bにおける放射ビーム542の照明強度は、周波数fBで変調されてもよい。表面538上の座標(XC、YC)によって表される位置Cにおける放射ビーム542の照明強度は、周波数fCで変調されてもよい。位置A、B、Cは、互いに異なっていてもよい。放射ビーム542の強度変調は、例えば、次のように表されてもよい:
Ii(t) = DCi + Aicos(2πfit + φi) (2)
【0085】
方程式2において、インデックスiは表面538上の位置に関し(例えば、i = A、B、C)、DCiは位置iにおける定常強度オフセットであり、Aiは位置iにおける強度変調の振幅であり、fiは位置iにおける強度変調の周波数(例えば、fA)であり、φiは位置iにおける初期位相である。定常強度オフセットDCiおよび振幅Aiは、例えば、レチクル530の反射率における相違のために、位置によって異なりうる。
【0086】
「空間エンコーディング」「空間情報エンコーディング」等の用語は、空間における位置を被変調照明の顕著な特性に関連付けるために、被変調照明の特性を使用することを表す。
【0087】
いくつかの実施形態では、検出器504は、表面538で散乱された被検出放射544によって表される放射を受け取ってもよい。表面538で散乱された被検出放射544は、表面538上に存在する欠陥540によって散乱された放射を含んでもよい。検出器504は、受け取られた放射に基づく検出信号を生成してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、集光要素522のNAによって、計測システム500の横解像度が制限されうる(例えば、NAは約0.055である)。いくつかの実施形態では、検出器504は、計測システム500の横解像度を非常に制限する単一セル光検出器でもよい。しかし、単一セル光検出器は、サイズ、組立容易性および/またはコスト効率の観点が重視される場合では望ましくもある。
【0089】
乏しい横解像度を克服するため、いくつかの実施形態では、低解像度検出設定(例えば、検出された変調周波数の表面538上の座標へのマッピング)を使用する場合であっても、像を再構成するために異なる変調周波数(例えば、fA、fB、fC)での照明の空間変調が使用されうる。例えば、位置A、B、Cから散乱する放射は、それぞれ放射ビーム542を空間的に変調するために使用される変調周波数fA、fB、fCと関連付けられうる。続いて、被検出放射544は対応する変調周波数fA、fBおよび/またはfCを有してもよく、被検出放射544の一時的パターンは548内に例示されているように異なる正弦変調パターンの重畳でもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506は、検出信号を分析してもよい。分析は、変調に基づく分析(例えば、周波数分析)を含んでもよい。プロセッサ506は、例えば、被検出放射544に現れる変調周波数、各変調周波数に対応する振幅および/または位相等の被検出放射544の特性を判定してもよい。位置A、B、Cは識別可能な変調パラメータ(例えば、各変調周波数fA、fB、fCおよび/または位相)で照明されるため、プロセッサ506は、周波数分析によって判定される強度を各位置に割り当てることによって、位置A、B、Cを表す像を再構成できる。このように、各変調周波数fA、fB、fCに対応する強度が、再構成される像上の各位置A、B、Cにマッピングされうる。
【0091】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506によって実行される周波数分析が、フーリエまたはコサイン変換分析を含んでもよい。一時的強度プロファイル550は、被検出放射544の強度「I(t) = IA(t) + IB(t) + IC(t)」のプロットを表す。一時的強度プロファイル550の縦軸は検出された強度I(t)を表し、横軸は時間を表す。時間スケールは、利用可能な空間光変調器のリフレッシュレートに基づくものと理解されうる(例えば、典型的な最大値は数十kHzである)。グラフ552は、検出された強度I(t)にフーリエ変換(例えば、離散フーリエ変換(DFT))を適用した結果を表す。プロセッサ506の負荷を低減するために、例えば、高速フーリエ変換(FFT)、離散コサイン変換(DCT)、修正DCT(MDCT)等の、よりシンプルな変換が使用されてもよい。グラフ552の縦軸は、変調の振幅または強度を表す。グラフ552の横軸は、強度変調の周波数(例えば、kHzオーダー)を表す。周波数情報が表面538上にマッピングされるため、光散乱構造の位置が判定されうる。そして、プロセッサ506は、グラフ552からの強度の表面538の各位置A、B、C上へのマッピングに基づいて、表面538と関連付けられる像を生成してもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、前述の特徴を利用して、計測システム500が、その結像光学素子の回折限界を超える横解像度を実現できる。つまり、計測システム500は、検出信号の周波数分析に基づいて、検出の光学的解像度を向上させられる。横解像度は、空間光変調器510における調整可能要素(例えば、可変画素サイズ)のカスタマイズされたグルーピングの使用に基づいて、適応可能および/または不均一であってもよい。検出器の解像度を向上させるための空間的にエンコードされた照明の使用は、カメラ検出器(すなわち、単一セル検出器に限定されない)の使用を伴ってもよい。このように、粒子位置レポーティング精度を高めることによって、および/または、欠陥540の横方向サイズおよび形状を解明するためのシステムの能力を向上させることによって、計測システム500の信頼性が高められうる。
【0093】
典型的な検出器は離散的な露光(例えば、フレーム)を使用して動作すると理解されるべきである。露光は、フレーム毎の露光長、単位時間毎のフレーム数等のパラメータに依存する。そこで、いくつかの実施形態では、正弦照明パターンを受け取る検出器は、正弦パターンに従う離散的な一連の照明強度としてのパターンを検出してもよい。これは前述の内容、すなわち、レチクル530の表面538上の座標(XA、YA)によって表される位置Aにおける放射ビーム542の照明強度が、周波数fAで変調されてもよい(例えば、正弦パターンを介して)ということに関する。離散的な露光の文脈に鑑み、以上の内容は連続的な変調パターンに限定されないと理解されるべきである。
【0094】
いくつかの実施形態では、空間光変調器510を使用して照明パターンが離散化されうる。前出のDMDの例は、サンプリング周期(例えば、フレーム)中のミラー要素のオン/オフ状態の比率を調整することによって、検出の離散的な性質を考慮に入れる。
【0095】
離散的な露光(例えば、フレーム)の文脈において、パターンの順列は離散的な露光の異なる順序を含んでもよい。従って、例えば、周波数fAを有する正弦パターンに対応する照明強度のパターンは、周波数および/または位相を持たないように見える(同じ論理は他のパターンB、C等にも当てはまる)。しかし、パターンの順列は、周波数および/または位相を有する周期パターンの意味の範囲内にあると理解されるべきである。例えば、検出器側における露光のシリーズがパターンの順列から生成された場合、当該シリーズに逆順列が適用されることで周波数および/または位相を有する元のパターンが復元される。従って、用語「周期パターン」は、周波数および/または位相等の周期性に関する情報を伝達可能なパターンを表すと理解されるべきである。つまり、用語「周期パターン」は、一見すると周期または繰返しのないパターンの順列も表しうる。順列であっても、周期性情報を伝達できる。パターンの順列は、周期パターンの規則的な元シーケンスに対して変動する強度状態のシーケンスを有するものともいえる(元の規則的なシーケンスはサイン形状、コサイン形状等に従う)。更に、周期パターンは、完全な周期をカバーする必要はなく、繰り返される必要もないと理解されるべきである。例えば、コサインの半周期のみに対応するパターン(順列または他)も、周波数を伝達可能な周期パターンといえる。
【0096】
図5Bは、スプリアス信号の文脈における、いくつかの実施形態に係る計測システム500の模式図である。いくつかの実施形態では、
図5Aを参照して記述された空間エンコーディング機能が、異粒子信号およびスプリアス信号の検出を識別するために使用されうる。
図4および5Aを参照して記述されたいずれの構造および機能も、
図5Bを参照する実施形態に含まれてもよいと理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、照明システム424(
図4)が、
図5Aを参照する実施形態に含まれてもよい。特に断らない限り、
図4および5Aの要素と同様の参照番号(例えば、右から二つ分の数字が共通する参照番号)を有する
図5Bの要素は、同様の構造および機能を有してもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、計測システム500が、ペリクル532の表面536を検査するために使用されうる。オブジェクト528は、レチクル530およびペリクル532を備えてもよい。レチクル530およびペリクル532は、間隙531によって隔てられていてもよい。間隙531は、ミクロンからミリメートルの範囲でもよい。レチクル530は、パターンフィーチャ534を備えてもよい。パターンフィーチャ534は、間隙531に配置されてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、検出器504は、画像取得デバイスまたはマルチセル光検出器(例えば、光検出器の二次元アレイ)でもよい。センサ要素520は、電荷結合素子(CCD)または相補型金属-酸化物-半導体(CMOS)を含んでもよい。検出器504は、表面536で散乱された放射(つまり、被検出放射544)を受け取ってもよい。被検出放射544は、表面536上に存在する欠陥540や、スプリアス信号に繋がりうる他の望ましくない源によって散乱された放射を含んでもよい。検出器504は、受け取られた放射に基づく検出信号を生成してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、ペリクル532が透明でもよく、放射ビーム542の部分の透過を許容する。位置Aで透過した放射は、レチクル530上の位置A’に入射する。レチクル530上のパターンフィーチャ534は、位置A’の上または近くに配置されている。位置A’は、ペリクル532上の位置Bの直下または近くにある。そして、位置A’で散乱されて検出器504に向かう放射は、位置Bから散乱されて検出器504に向かう放射と同様の光路を有する。信号検出の観点では、位置A’で散乱された放射が検出器504で受け取られると、位置Bに異粒子が存在しているように見えてしまう。しかし、位置A’からの放射は異粒子から生成したものではないため、位置A’からの放射の検出はスプリアス信号に対応する。同様の関係は、位置CおよびB’にも当てはまる。
【0100】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506は、検出信号に基づいて表面536と関連付けられる第1像を生成してもよい。第1像は、ある時点で検出器504の一または複数の検出器要素で受け取られる放射に対応してもよい。プロセッサ506は、検出信号に基づいて表面536と関連付けられる一または複数の追加的な像を生成してもよい。一または複数の追加的な像は、第1像の時点と異なり、互いに異なる時点に対応する。複数の一連の像を生成することによって、検出器504の検出器要素は、検出信号において549内に示されるような一時的強度プロファイルに寄与する。549は、表面536上の位置A、B、Cに対応する検出器504の検出器要素によって生成される一時的強度プロファイル550a、550b、550cを示す。一時的強度プロファイル550a、550b、550cの横軸は検出された強度を表し、縦軸は時間を表す。
【0101】
いくつかの実施形態では、像を生成することは、検出器要素のサブセットのみが使用される状況を含んでもよいと理解されるべきである。例えば、プロセッサ506は、検出器504の「明るい」領域のみが考慮されるように、検出される光学エネルギーが閾値より小さい場合は検出器要素からの寄与を無視してもよい(例えば、処理負荷を低減するために)。いくつかの実施形態では、像が未だ生成されていない場合、像を分析するという概念は、検出信号を分析することを指すこともある(検出信号は像を生成するために使用される情報を含んでいる)。
【0102】
いくつかの実施形態では、異なる変調周波数(例えば、fA、fB、fC)での照明の空間変調が、欠陥540に起因する信号およびスプリアス信号を識別するために使用されうる(例えば、検出された変調周波数を表面536上の座標にマッピングすることによって)。例えば、位置A、B、Cから散乱する放射は、それぞれ放射ビーム542を空間的に変調するために使用される変調周波数fA、fB、fCと関連付けられうる。続いて、被検出放射544は対応する変調周波数fA、fBおよび/またはfCを有してもよく、被検出放射544の一時的パターンは549内に例示されているように異なる正弦変調パターンの重畳でもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、一時的強度プロファイル550aが、位置Aに対応する強度信号(例えば、I
A(t))を表してもよい。一時的強度プロファイル550bは、位置BおよびA’に対応する強度信号の重畳(例えば、I
B(t) + I
A'(t))を表してもよい。一時的強度プロファイル550cは、位置CおよびB’に対応する強度信号の重畳(例えば、I
C(t) + I
B'(t))を表してもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ506は、一時的強度プロファイル550a、550bおよび/または550cを表す検出信号に基づく周波数分析を実行してもよい。周波数分析は、
図5Aを参照して記述されたように実行されてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506によって実行される周波数分析が、検出信号のフーリエ分析またはコサイン変換分析を含んでもよい。例えば、グラフ552a、552b、552cは、位置A、B、Cに対応する検出された強度にフーリエ変換を適用した結果を、存在するスプリアス信号と共に表す。グラフ552a、552b、552cの縦軸は、変調の振幅または強度を表す。グラフ552a、552b、552cの横軸は、強度変調の周波数を表す。グラフ552aでは、スプリアス信号が存在しないため、周波数f
Aが単独で存在する。グラフ552bでは、位置A’から生じるスプリアス信号と関連付けられるf
Aと共に、周波数f
Bおよびf
Aが存在する。グラフ552cでは、位置B’から生じるスプリアス信号と関連付けられるf
Bと共に、周波数f
Cおよびf
Bが存在する。明確化のために
図5Aおよび5Bは三つの周波数のみを示すが、より多いまたは少ない数の周波数が使用されうると理解されるべきである。二つより多い周波数は、与えられた位置で重複してもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506は、検出器504の検出器要素と検査される表面上の位置の関係に依拠することで、与えられた周波数がスプリアス信号と関連付けられると判定してもよい。例えば、検出器要素は、照明の光学配置および計測システム500の検出ブランチに基づいて、位置Aからの放射を周波数fAにおいて受け取ることを期待する。同様に、他の検出器要素は位置Bからの放射を周波数fBにおいて受け取ることを期待し、更に他の検出器要素は位置Cからの放射を周波数fCにおいて受け取ることを期待する。与えられた検出器要素で検出される非特徴的な変調周波数が、プロセッサ506によってスプリアス信号と関連付けられるものと判定されてもよい。これに代えてまたは加えて、位置A、B、Cは識別可能な位相で照明される。プロセッサ506によって実行される識別処理は、スプリアス信号を位置に非特徴的な周波数および/または位相に関連付ける処理を含んでもよい。プロセッサ506は、コンパレータ(例えば、比較を実行するために一または複数の情報、量、値を分析するデバイス)でもよい。単一量のシナリオでは、第2の値が「null」またはノイズ(例えば零)であるという前提で比較が実行されると理解されるべきである。
【0106】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506によって実行される周波数分析は、グラフ552a、552bおよび/または552cにおける情報に基づく逆変換(例えば、逆フーリエ変換F-1)を実行することを含んでもよい。逆変換は、例えば、グラフ554a、554b、554c、556a、556b、556cに示されるような時間ドメインにおける興味のある信号を抽出するために、スプリアス信号を無視してもよい。グラフ554a、554b、554cでは、縦軸は各強度IA(t)、IB(t)、IC(t)(例えば、重畳されたスプリアス信号が周波数分析を介して除去されている)を表し、横軸は時間を表す。グラフ556a、556b、556cでは、縦軸はフィルタされた強度IA(t)、IB(t)、IC(t)の各位相を表し、横軸は時間を表す。このように、周波数分析は、基板上の与えられた位置を照明するために使用される変調の周波数、振幅および/または位相を判定するために使用されうる。逆変換は、少なくとも与えられた位置に非特徴的な変調パラメータ(例えば、周波数、位相等)の省略(興味のある信号のみを逆変換)に基づいて、表面536上の与えられた位置で照明を変調するために使用される波形を再構成するために使用されうる。計測システム500の信頼性が、誤検出を低減することによって高められる。
【0107】
いくつかの実施形態では、プロセッサ506が、グラフ552a、552b、552cにおいて興味のある信号(例えば、スプリアス信号が除かれたもの)に基づいて、表面536のフーリエ再構成像を生成してもよい。換言すれば、フーリエ再構成は、与えられた位置に非特徴的な周波数および/または位相を省略しながら、与えられた位置における照明変調の周波数および/または位相を再構成することを含んでもよい。
【0108】
図6は、いくつかの実施形態に係る計測システム600の模式図である。
図4、5A、5Bを参照して記述されたいずれの構造および機能も、
図6を参照する実施形態に含まれてもよいと理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、筐体414(
図4)が、
図6を参照する実施形態に含まれてもよい。特に断らない限り、
図4、5A、5Bの要素と同様の参照番号(例えば、右から二つ分の数字が共通する参照番号)を有する
図6の要素は、同様の構造および機能を有してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、異粒子(例えば、異粒子640)の存在のために、計測システム600がレチクル630を検査するために使用されうる。計測システム600は、空間光変調器610および集光要素612を有する照明システムを備えてもよい。計測システムは、検出器604およびプロセッサ606を備えてもよい。検出器604は、センサ要素620および集光要素622を備えてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、空間光変調器610が、照明システムによって生成される放射ビーム642の空間強度分布を調整するように構成されてもよい。放射ビーム642の空間強度分布は、周期的な空間強度分布611を含んでいてもよい。周期的な空間強度分布611は、レチクル630を備えるオブジェクトの表面638上に投影されてもよい。レチクル630は、パターンフィーチャ634を備えてもよい。パターンフィーチャ634は、レチクル630の表面638と反対の表面上に配置されてもよい。周期的な空間強度分布611は、一時的に調整されてもよい。例えば、周期的な空間強度分布611は、表面638またはその部分に亘ってスキャンされてもよい。いくつかの実施形態では、周期的な空間強度分布611の山および谷が表面638またはその部分に亘って移るように、周期的な空間強度分布611の位相が調整されてもよい。周期的な空間強度分布611は、例えば、正弦パターン、ステップ関数パターン、鋸歯パターン、三角パターンや、それらの任意の組合せを含んでもよい、
【0111】
いくつかの実施形態では、レチクル630は、透明でもよいし、部分的に透明でもよいし、放射ビーム642の部分が表面638を透過する(放射ビーム642’によって表される)特性を有してもよい。放射ビーム642’は、最初は周期的な空間強度分布611と等しい、発展する周期的な空間強度分布611’を含んでもよい。発展する周期的な空間強度分布611’の初期形状は、強度プロファイル551aとして示されている。放射ビーム642’がレチクル630内を進行するにつれて、発展する周期的な空間強度分布611’は、例えば、ぼやける(強度プロファイル551bに示される)および/またはDCのような強度に近づく(強度プロファイル551cに示される)等、発展する周期的な空間強度分布611’のコントラストが減少するように発展する。
【0112】
いくつかの実施形態では、放射ビーム642’が、表面付近の構造(例えば、パターンフィーチャ634)を照明してもよい。表面付近の構造は、被検出放射644’によって表されるように、検出器604に対して放射を散乱してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、検出器604が、表面638で散乱された放射(被検出放射644によって表される)および被検出放射644’を受け取ってもよい。表面636で散乱される被検出放射644は、表面638上に存在する異粒子640によって散乱される放射を含んでもよい。検出器604は、受け取られた放射に基づく検出信号を生成してもよい。周期的な空間強度分布が一時的に変化しているため、被検出放射644には対応する強度変調(例えば、フリッカ)が現れる一方で、レチクル630内を進行した結果としての減衰したコントラストのために、被検出放射644’には低減された強度変調が現れるまたは強度変調が現れない。換言すれば、表面付近の構造によって散乱されて検出器で受け取られる放射(被検出放射644’)は表面を通過したビームの部分から生成され(放射ビーム642’)、通過した部分は減衰したコントラストを有する周期的な空間強度分布(発展する周期的な空間強度分布611’)を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、プロセッサ606は、検出信号を受け取ってもよい。プロセッサ606は、検出信号に基づく第1像を生成してもよい。前述のように空間光変調器610を使用して周期的な空間強度分布611の状態が調整されてもよく、第1像は周期的な空間強度分布611の第1状態に対応してもよい。プロセッサ606は、検出信号に基づく第2像を生成してもよい。第2像は、周期的な空間強度分布611の第1状態と異なる第2状態に対応してもよい。プロセッサ606は、検出信号に基づく第3像を生成してもよい。第3像は、少なくとも第2状態と異なる(例えば、2πの位相シフトによって、第3位相は第1位相と同じになる)周期的な空間強度分布611の第3状態に対応してもよい。プロセッサ606は、分析のための画像(例えば、動画)を更に生成してもよい。プロセッサ606は、周期的な空間強度分布の状態の調整に対して減少した光学的応答を示す表面上の位置を判定するために、第1、第2、第3像を分析してもよい。減少した光学的応答は、強度の空間変動がぼやけてDCレベルに近づくため、フリッカのない信号と関連付けられうる。更に、DCオフセットが任意の像位置で信号のフリッカ部分から分離されうるため、異粒子640による実信号からスプリアス信号を効果的に除去できる。換言すれば、スプリアス部分はDCオフセットに寄与し、時間変動部分は異粒子640に起因する。そして、プロセッサ606は、減少した光学的応答を示す表面上の位置が異粒子640に起因するものではないスプリアス信号によるものと判定してもよい。このように、計測システム600の信頼性が、誤検出を低減することによって高められうる。
【0115】
本実施形態の複数波長能力を利用して、照明の波長が異粒子の検出精度を向上させるために使用されてもよい。複数の波長を生成するための構造および機能については、
図4の計測システム400およびオブジェクト428の透過性(ペリクル532(
図5)および/またはレチクル630(
図6)に関する記述を参照)を参照して前述した。
【0116】
図7は、いくつかの実施形態に係る、ペリクルの透過度(縦軸)および放射の波長(横軸)のグラフ700を示す。グラフ700は、ペリクル(例えば、
図5のペリクル532)中の放射の透過が波長に依存することを示す。グラフ700は、例えば360nmの波長における透過度が約0.003%であることを示す。換言すれば、360nmの波長を有する放射は、ペリクル中を通過すると333のファクターによって減衰される。同様に、440nmにおける透過度は0.135%であり、透過に対する対応する減衰ファクターは7.4である。放射が一度ペリクル内を透過した上で二回目の透過のためにペリクルに対して散乱される場合、360nmと440nmの間の透過強度の相違のファクターは約2000にもなる。対照的に、銀粒子(リソグラフィ装置における一般的な異粒子)が検出器404(
図4)に対して散乱する放射の反射率は、360nmから440nmに切り替えた場合に約10のファクターの波長依存性を示す。換言すれば、オブジェクトの表面における光学的応答における相違は、被検出放射の第1波長での第1量の減衰と、被検出放射の第2波長での第2量の減衰の間の相違でもある。ペリクル(例えば、2000)と異粒子(例えば、10)の間の減衰ファクターの大きいコントラストは、異粒子からスプリアス信号を識別するために使用されうる。他のタイプの異粒子材料は、銅、アルミニウム、金、パラジウムおよび/または白金を含んでもよい。各材料は、それぞれに特有の反射特性に応じて、スプリアス信号から識別されると理解されるべきである。
【0117】
いくつかの実施形態では、透過が波長に依存するため、光学的測定は、異粒子信号およびスプリアス信号を特定および識別するために、
図4を参照して後述される計測システムの複数波長能力を活用してもよい。しかし、これは限定する趣旨と解釈されるべきではなく、他の図に関して記述される任意の構造および機能が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、照明システム402は、放射ビーム442の波長を調整するように構成される。プロセッサ406によって生成される第1像は、放射ビーム442の第1波長に対応してもよい。プロセッサ406によって生成される第2像は、第1波長と異なる放射ビーム442の第2波長に対応してもよい。プロセッサ406は、放射ビーム442の波長の調整に対するオブジェクト428の光学的応答における相違を示す表面上の位置を判定するために、第1および第2像の分析を実行してもよい。プロセッサ406によって実行される識別処理(異粒子およびスプリアス信号の識別)は、分析に基づいてもよい。識別処理は、スプリアス信号を、異粒子に非特徴的な光学的応答における相違を示す表面上の位置に関連付ける処理を含んでもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、光学的測定が、異粒子信号およびスプリアス信号を特定および識別するために、計測システムの偏光能力を活用してもよい。
図8は、いくつかの実施形態に係る本計測システムにおいて使用されうる、非限定的な偏光器の配置を示す。
図4、5A、5B、6、7を参照して記述されたいずれの構造および機能も、
図8を参照する実施形態に含まれてもよいと理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、空間光変調器410(
図4)が、
図8を参照する実施形態に含まれてもよい。特に断らない限り、
図4、5A、5B、6、7の要素と同様の参照番号(例えば、右から二つ分の数字が共通する参照番号)を有する
図8の要素は、同様の構造および機能を有してもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、照明システム802は、放射源808aおよび808b、偏光器812a(例えば、P偏光器)、偏光器812b(例えば、S偏光器)、ビームコンバイナ813を備えてもよい。偏光器812aは、放射源808aの下流に配置されてもよい。偏光器812bは、放射源808bの下流に配置されてもよい。ビームコンバイナ813は、偏光器812aおよび812bの両方の下流に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、空間光変調器410(
図4)が、ビームコンバイナ813の下流に配置されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、照明システム802が、放射ビーム842を生成するために、放射源808aおよび808bの一方または両方を使用してもよい。放射源808aからの放射は、偏光器812aによって偏光されてもよい。放射源808bからの放射は、偏光器812bによって偏光されてもよい。偏光器812aおよび812bは、放射ビーム842が選択的偏光を有するように直交していてもよい。例えば、放射源808aは、第1偏光で放射ビーム842を偏光するために、単独で活性化されてもよい。逆に、放射源808bは、第1偏光と異なる第2偏光(例えば、直交偏光)で放射ビーム842を偏光するために、単独で活性化されてもよい。ビームコンバイナ813は、照明システム802が共通光路に沿って選択的偏光を提供できるように、放射源808aおよび808bの光路を結合してもよい。放射ビーム842は、放射ビーム842がオブジェクト428(
図4)を照明する前に空間的に変調されるように、空間光変調器410(
図4)に向けられてもよい。
図8の要素に対する空間光変調器410(
図4)の他の配置も適宜考えうる。空間光変調器410(
図4)は、例えば液晶デバイスとして実装される場合、偏光機能を提供してもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、放射源808aおよび808bは、複数の選択可能な波長を生成するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、放射源808aおよび808bは、同じ波長を生成するように構成されてもよい。いずれかの放射源808aおよび808bが単一波長に固定されている場合であっても、複数波長能力は
図8に示される配置の繰返しを通じて実現されうる。つまり、複数のビームコンバイナが、追加的な放射源および偏光器と併せて使用されうる。追加的な放射源は、追加的な波長を生成してもよい。更に、照明システム802が偏光放射および非偏光放射を選択的に生成できるように、一または複数の偏光器が省略されてもよい。
【0122】
非限定的な例としての
図4を再び参照して、いくつかの実施形態では、プロセッサ406が、検出信号に基づく第1および第2像を生成してもよい。第1像は、第1偏光に対応してもよい。第2像は、第1偏光と異なる第2偏光に対応してもよい。プロセッサ406は、放射ビーム442の偏光の調整に対する光学的応答における相違を示す表面上の位置を判定するために、第1および第2像の分析を実行してもよい。そして、プロセッサ406は、光学的応答における相違を示す表面上の位置が、欠陥440からではないスプリアス信号によるものと判定してもよい。このことは、欠陥440が偏光に依存する応答を示さない一方で、パターンフィーチャ434(表面436付近の構造)が偏光に依存する回折効率(例えば、反射される光量が偏光によって変化する)を有するために可能となる。パターンフィーチャ434によって散乱されて検出器404で検出される照明は、欠陥440由来と識別されうる。識別処理は、スプリアス信号を、光学的応答における相違を示す表面上の位置に関連付ける処理を含んでもよい。換言すれば、オブジェクトの表面での光学的応答における相違は、第1偏光で受け取られた放射の強度と、第2偏光で受け取られた放射の強度の間の相違でもよい。このように、計測システム400の信頼性が、誤検出を低減することによって高められる。
【0123】
図9は、いくつかの実施形態に係る計測システム900の模式図である。
図4、5A、5B、6、7、8を参照して記述されたいずれの構造および機能も、
図9を参照する実施形態に含まれてもよいと理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、空間光変調器410(
図4)が、
図9を参照する実施形態に含まれてもよい。特に断らない限り、
図4、5A、5B、6、7、8の要素と同様の参照番号(例えば、右から二つ分の数字が共通する参照番号)を有する
図9の要素は、同様の構造および機能を有してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、計測システム900は、照明システム902、検出器904、プロセッサ906を備える。照明システム902は、空間光変調器910を備えてもよい。照明システム902は、オブジェクト928を照明するための放射ビーム942を生成してもよい。オブジェクト928は、レチクル930の一方の側に配置されるペリクル932を有するレチクル930でもよい。レチクル930は、パターンフィーチャ934を備えてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、空間光変調器910は、オブジェクトの表面928(例えば、ペリクル932の表面)に対して放射ビーム942を向けてもよい。空間光変調器910は、非零の入射角で表面の部分を照明するために、放射ビーム942の空間強度分布を調整してもよい。非零の入射角は、約30-85度、約45-85度、約60-85度でもよく、80度より大きくてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、検出器904は、被検出放射944として示される、表面の照明された部分で散乱された放射に対応する光路947に沿う放射を受け取ってもよい。しかし、表面付近の構造によって散乱された放射(被検出放射944’として示される)は、光路947と異なる光路947’に沿って進行しうる。検出器904は、受け取られた放射に基づく検出信号を生成してもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、プロセッサ906が検出信号を受け取ってもよい。プロセッサ906は、検出信号に基づいて、スプリアス信号および表面上の異粒子940の存在に対応する信号を識別してもよい。識別処理は、異粒子940の存在から識別できずにスプリアス信号を検出してしまう確率に基づくエラー確率を伴いうる。そこで、識別処理は、光路947および947’の間の相違に基づいて、スプリアス信号の検出確率を低減する処理を含んでもよい。光路947および947’の間の大きな相違は、スプリアス信号の検出確率の大きな低減をもたらしうる。
【0128】
空間エンコーディングおよびピクセルレベルでの照明変調の概念を再び参照すると、時間の経過に伴って変化する異なる照明パターンで表面上の二つの位置が「エンコード」されうる一例として正弦変調パターンが提示された。しかし、正弦パターンは単なる一例に過ぎず、他のパターンが使用されうる。例えば、離散パターンやステップパターンが、いくつかの実施形態を参照して議論された。
【0129】
図10は、いくつかの実施形態に係る計測システム1000の断面図である。
図4、5A、5B、6、7、8、9を参照して記述されたいずれの構造および機能も、
図10を参照する実施形態に含まれてもよいと理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、空間光変調器410(
図4)が、
図10を参照する実施形態に含まれてもよい。特に断らない限り、
図4、5A、5B、6、7、8の要素と同様の参照番号(例えば、右から二つ分の数字が共通する参照番号)を有する
図10の要素は、同様の構造および機能を有してもよい。
【0130】
計測システム1000は、オブジェクト1028上の欠陥の特定および/または特徴付けのために使用されうる。オブジェクト1028は、例えば、保護ペリクル1032を有するレチクル1030でもよい。ペリクル1032の表面1036は、繰返し使用に伴う欠陥(例えば、擦り傷または表面に付着する汚染粒子)が形成されるリスクがある。レチクル1030の表面1038(例えば、背面)も、同様の欠陥が形成されるリスクに晒されている。従って、計測システム1000は、オブジェクト1028の方向を単に変えることによって、表面1036および/または1038(あるいはオブジェクト1028の任意の表面)を検査するために使用されうると理解されるべきである。
【0131】
単純化のために、計測システム1000の特定の要素(
図4、5A、5B、6、7、8、9において示されたものと重複する要素(例えば、放射源、検出器等)等)は図示されない。しかし、いくつかの実施形態では、
図4、5A、5B、6、7、8、9と同様に、このような要素が存在してもよいと理解されるべきである。空間光変調器を使用して、パターン(例えば、第1パターン、第2パターン、追加的なパターン等)に応じて、放射ビーム1042が変調されてもよい。いくつかのパターンの例は既に議論された(例えば、
図5Aおよび5Bに関する周期パターン)。
【0132】
いくつかの実施形態では、パターンがバイナリパターン(例えば、照明の一連のオンおよびオフ状態)でもよい。
図5Aおよび5Bにおいて周波数f
A、f
B、f
Cの異なる周期パターンが使用されたのと同様に、ペリクル1032の表面1036の各位置A、B、C、D等には、異なるバイナリパターンが割り当てられてもよい。例えば、空間光変調器(例えば、
図5Aの510)は、表面1036の位置Aでの放射ビーム1042の照明強度が第1パターン1042-Aによって変調されるように、放射ビーム1042の空間強度分布を調整してもよい。同様に、表面1036の位置Bは、第2パターン1042-Bによって変調された照明を受け取ってもよい。追加的な位置は、対応する追加的なパターンに応じて変調された照明を受け取ってもよい(例えば、表面1036の第n位置は、第nパターン1042―nに応じて変調された照明を受け取る)。変調パターンは、例えば、バイナリパターンでもよい。他のパターンも、本開示に基づいて当業者にとって明らかである。
【0133】
いくつかの実施形態では、被検出放射1044が下流の検出器で受け取られる放射である。一例として、表面1036の位置Dからの被検出放射1044が示されている。被検出放射1044は、位置Dにおける欠陥からの放射(例えば、第4パターン1042-Dと関連付けられる)およびスプリアス信号と関連付けられうる他の放射を含む混合放射を含んでもよい。例えば、第1パターン1042-Aでエンコードされた放射は位置Aに入射しうる。ペリクル1032が少なくとも半透明であるため、第1パターン1042-Aを有する放射は、部分的にペリクル1032を透過し、ペリクル1032およびレチクル1030の間で複数回に亘って反射する(位置A’からCを経てC’に至る矢印によって示されている)。レチクル1030は、位置Dに対して放射を散乱するパターンフィーチャ1034を備えてもよい。このような放射は、被検出放射1044が検出器で受け取られる際に検出されるスプリアス信号をもたらしうる。更に、第3パターン1042-Cを有する放射は表面1036の位置Cを通過し、パターンフィーチャ1034との相互作用のために位置C’から被検出放射1044の方向に散乱する。この結果、被検出放射は、第4パターン1042-D(すなわち、欠陥による「真の」信号と関連付けられる)と、スプリアス信号と関連付けられる第1および第3パターン1042-Aおよび1042-Cを含みうる。
【0134】
いくつかの実施形態では、被検出放射1044からの検出信号が、プロセッサ(例えば、
図5のプロセッサ506)によって分析されてもよい。プロセッサ506は、検出信号に基づいて、スプリアス信号および表面1036上の欠陥の存在に対応する信号を識別してもよい。検出信号の分析は、放射ビーム1042の変調に基づいてもよい。変調において例えばバイナリパターンが使用される場合、分析は表面1036上の与えられた位置で使用されるバイナリパターンの判定を伴ってもよい。検出信号は複数のバイナリパターンを有する照明の重畳に対応するため、判定は異なる変調パターンの与えられたピクセルにおける分解を伴ってもよい。表面1036上の変調パターンの空間分布を予め把握しておくことで、プロセッサは検出器のピクセルの表面1036上の対応する位置への関連付けまたはマッピングを行ってもよい。プロセッサは、スプリアス信号を「真の」信号から識別してもよい。識別処理は、スプリアス信号を与えられた位置に非特徴的なバイナリパターン関連付ける処理を含んでもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、利用可能な異なる変調パターンより多くの異なる位置が照明されてもよい。このシナリオでは、二つの同じバイナリパターンが表面上の近接位置で使用されないように、変調パターンが再利用されて表面1036に亘って分布してもよい。例えば、
図10は、異なるバイナリパターン1042-A~1042―nの左から右へのシーケンスを示す。全ての異なる変調パターンが少なくとも一回使用されると、新たなシーケンスが位置A2に対応する1042-Aで始まる。第n位置以降の位置は、更に追加的な位置と表されてもよい。より多いまたはより少ない異なる変調パターンが使用されてもよい。このように、位置およびスプリアス信号の識別精度が高められる。
【0136】
放射ビーム1042の異なる「ピクセル」を変調するために使用されるパターンは、測定および情報処理の速度を増加させるために更に最適化されうる。いくつかの実施形態では、テーブル1に示されるような線形独立なパターンの組が、第1から第nパターンとして使用されうる。テーブル1は、n=7の線形独立なパターンの組である。「0」は照明のオフ状態を表し、「1」は照明のオン状態を表す。
【表1】
【0137】
図10(8個の異なるパターンが使用されていた)とのコントラストは、識別可能な変調パターンを構成する際の選択可能性および非限定的な性質を示すために過ぎない。いくつかの実施形態では、テーブル1の7個の線形独立なバイナリパターンのそれぞれが、8個のオン/オフ状態のシーケンスを使用して構成されうる。いずれのパターンでも、オン状態の数はオフ状態の数と等しくてもよい。これは、テーブル1の例において、各パターンが合計8個のオン/オフ状態について、4個のオン状態および4個のオフ状態を有することを意味する。より多くの線形独立なパターンのセットが望ましい場合(例えば、n > 7)、より多くのオン/オフ状態が使用されうる(例えば、10個のオン/オフ状態)。例えば再利用されるパターンの位置の間の物理的な距離を更に離すのが望ましい状況では、線形独立なパターンの数は増えてもよい。例えば
図10では、位置AおよびA2が、それらの間の7個のパターンによって隔てられている。位置AおよびA2が十分に隔てられていない場合、位置A’からの迷走照明があたかも位置A2から来たかのように検出されてしまう可能性がある。このようなシナリオでは、第1パターン1042-Aが位置A2からも期待されているため、プロセッサがスプリアス信号を「真の」信号と間違って解釈してしまう可能性がある。線形独立なパターンは、バイナリパターンに限定されないと理解されるべきである(例えば、フーリエ変換と関連付けられる正弦パターンも線形独立たりえる)。「第1」「第2」「第3」等の接頭語は、恣意的なラベルに過ぎず、ここで開示される特定のシーケンスにパターンを限定するものと解釈されるべきではないと理解されるべきである。非限定的なリファレンスとしてのテーブル1を使用して、テーブル1におけるいずれのコードワードも「第1パターン」となりえる。残りのコードワードのうち、いずれも「第2パターン」となりえる。
【0138】
いくつかの実施形態では、バイナリパターンのセットが直交していてもよい。前述のフーリエ分析(正弦項の直交関係を伴う)と同様に、直交バイナリパターンを有することで、重畳されたパターンを分解するために要求される処理が簡素化される(処理量が減る)。結果的に、測定スピードが増加する。
【0139】
いくつかの実施形態では、テーブル1が「コードマトリックス」と表されうる。ここで、Cはマトリックス全体を表し、c
iは行インデックスi(i = A ... G)に対応する「コードワード」である。例えば「c
B = 10101001」は、マトリックスCからのコードワードである。これらのコードワードは、直交関係を使用して記述されてもよい。直交性の一例は、内積と類似する「Eq.1」に関して記述されうる:
【数1】
【0140】
ここで、vおよびuはマトリックスCからの任意の二つのコードワードであり、インデックスjはj番目のオン/オフ状態を表す。コードマトリックスCは、各コードワードが同じ平均値/c(オーバーライン付きのcを表す。以下「/」や「/」について同様)を有するように構成されてもよい。テーブル1として提供された例では、平均値は「/c = 0.5」である。「Eq.1」は、等しくないコードワードの任意のペアついて「0」となる。プロセッサは、検出された信号が「真の」および/またはスプリアス信号を含むか否かを判定するための演算を大幅に高速化するために、この特性を使用してもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、直交性に関する特徴を更に活用して、プロセッサが「真の」およびスプリアス信号を識別するために使用できるベクトルqを構成できる。ベクトルqは「Eq.2」によって与えられる。
【数2】
【0142】
ここで、Cはコードワードマトリックスであり、pは検出器の与えられたピクセルで検出された強度のシーケンスを表すベクトルである。ベクトルpにおける各要素は、強度を表す数値でもよい(例えば「0」は強度が検出されないことを表す)。平均ベクトル/pについては、各要素がベクトルpにおける強度値の平均になっている。マトリックス積の結果は、7個の要素(それぞれがマトリックスCにおける線形独立なコードワード)を有するベクトルqである。ベクトルqは、検出器の各ピクセルについて生成されてもよい。ベクトルqの各値は、効果的にもコードワード(例えば、ベクトルの形態における変調パターン)およびベクトルp(例えば、検出信号に基づくベクトル)のスカラー積の結果である。
【0143】
いくつかの実施形態では、位置B(第2パターン1042-Bによって照明される)における欠陥のみから散乱がある場合、対応するベクトルqは「q = (0, 0, b, 0, 0, 0, 0)」という形を取りうる。ここで、bは検出された強度に比例する正の値である。位置A’(第1パターン1042-Aによって照明される)のみから散乱がある場合、qは「q = (a, 0, 0, 0, 0, 0, 0)」という形を取りうる。ここで、aは位置A’からの放射による強度に比例する正の値である。どこからも散乱がない場合、qBは全て「0」である。位置BおよびA’の両方から散乱がある場合、「q = (a, 0, b, 0, 0, 0, 0)」である。このように、ベクトルqの結果を活用することによって、プロセッサは表面1036上のどの位置からのどの信号が存在するかを迅速に判定でき、「真の」信号およびスプリアス信号を識別できる。
【0144】
いくつかの実施形態では、分析を実行するプロセッサは、演算を低減して測定スピードを増加させるために、検出器のピクセル、考慮すべきコードワード、および/または、露光フレーム(例えば、コードワードの特定の要素)を分離してもよい。「q = (a, 0, b, 0, 0, 0, 0)」の例を使用すると、表面1036上の位置Bと関連付けられるピクセルに興味がある場合、プロセッサが「Eq.2」のマトリックス積の全体を実行する必要はない。むしろ、プロセッサは単純にベクトル積「(cB - /c)(p - /p)」を計算すれば、ベクトルqの他の要素を計算せずともbを得られる。
【0145】
いくつかの実施形態では、コードワードが完全オンおよび完全オフ状態以外の値(例えば「0, 0.5, 1」から選択される)を伴ってもよい。この場合、各コードワードは「0.5」の平均値を有するが、このことは「Eq.1」および「Eq.2」の適用可能性を維持するために望ましいことがある。この概念を更に進めると、コードシーケンスが値のスペクトルを含むために一般化されうる。例えば、「Eq.3」によって与えられるような二乗余弦関数が使用されうる:
【数3】
【0146】
ここで、cnmはコードマトリックスのn番目の行およびm番目の列に対応する単一要素を表し、Mはコードワード長である。これは、コードワードおよびマトリックスの非限定的な他の構成例である。周期パターン(例えば、余弦関数)がバイナリパターンに関する前述の分析と同様または類似の分析の際に使用されうるように、バイナリパターン(0および1)の概念が一般化されたと理解されるべきである。従って、いくつかの実施形態では、用語「コードワード」はバイナリパターンのみに限定されない。用語「コードワード」は、変調パターン一般(例えば、第1パターン、第2パターン等)を表すために使用されうる。
【0147】
いくつかの実施形態では、「Eq.3」から「0」以上「2」以下の値が得られる。値「2」は、照明の特定の強度(例えば、最大)に対応してもよい。「Eq.3」によって生成される各コードワードの対応する平均は「/c = 1」である。いくつかの実施形態では、第1パターンと関連付けられる照明強度の平均が、第2パターンと関連付けられる照明強度の平均と等しくてもよい。いくつかの実施形態では、追加的なパターンに対応する照明強度の平均が、第1および/または第2パターンの照明強度の平均と等しくてもよい。
【0148】
線形独立なパターンの他の構成例として、いくつかの実施形態では、このようなセットが、「Eq.3」と同様の概念に基づくが二乗正弦、二乗余弦、DCパターンのセットから選択するテーブル2に基づいて構成されてもよい。
【表2】
【0149】
インデックスmは1からMの値を取り、Mはコードワード長またはコードワードマトリックスにおける列の数である。テーブル2は、M×Mマトリックスを生成する。コードワードC1は、DC信号である。他のコードワードは、整数周期を含む二乗正弦および余弦である。行および/または列の順列が使用されてもよいと理解されるべきである。更に、より少ないコードワード(例えば、行のサブセット)が適切な場合もあり、N×M(N<M)のサイズのコードマトリックスが形成される。
【0150】
いくつかの実施形態では、テーブル2の二乗正弦/余弦を「Eq.3」と比較すると、テーブル2の値が「Eq.3」と比較して「1/2」のファクターによって正規化されていると解釈できる。ファクターは、計測システム1000の制約に基づいて選択されてもよい。例えば、ファクターは、コードワード毎に異なるように選択されてもよく、この場合は平均値/cがコードワード間で異なる。この相違は、例えば「Eq.2」を使用する場合に、ピクセル間のクロストーク(例えば、第2ピクセルにおいて放射が検出されるか否かによらず、単純に最適化されていないコードワードの構成に基づいて、第1ピクセルにおける変調が第2ピクセルにおける検出結果に影響しうる)に繋がりうる。同様に、二乗正弦/余弦のために整数周期を使用することで、どこでも一定の平均値/cを有するコードワードマトリックスの構成が可能になる。しかし、コードワードマトリックスに関する一定の平均値/cは、所望の結果(例えば、スプリアス信号の識別および欠陥の検出)を達成するために、必ずしも要求されるものではないと理解されるべきである。
【0151】
いくつかの実施形態では、例えば「Eq.4」に示されるように、「Eq.1」と同様の直交関係が「Eq.3」および/またはテーブル2によって生成されるコードワードのために実装されてもよい:
【数4】
【0152】
ここで、Cijはコードワードマトリックスのi番目の行と関連付けられる要素を表し、Ckjはコードワードマトリックスのk番目の行と関連付けられる要素を表す。合計インデックスjは、コードワードマトリックスの列を表す。「Eq.1」と同様に、等しくないコードワードが選択された場合の計算結果は「0」である。
【0153】
いくつかの実施形態では、コードワードにおいて負の値が存在しない(例えば、照明強度の取りうる最小値が「0」)限り、直交しない線形独立なコードワードが使用されうる。このシナリオでは、「Eq.2」が「Eq.5」の形に一般化されうる:
【数5】
【0154】
ここで、上付き文字Tは転置を示し、上付き文字+は擬似逆を示す。ベクトルqおよびpは、前述と同様である。プロセッサを使用して分析を実行するために、いくつかの実施形態では、ベクトルqの特定の要素が(CT)+の対応する行にベクトルpを乗算することで演算されてもよい。前述のクロストークの問題は、一般化された「Eq.5」の形を使用して緩和されうる。
【0155】
いくつかの実施形態では、同数の露光を使用して、異なるコードマトリックスが異なる波長において同時に適用されてもよい。例えば、典型的なDMDデバイスは、既に赤、緑、青の波長を使用する複雑な露光を実行できる。これは、他の波長および波長の組合せを含むように更に変形されてもよい。例えば、パターンの第1強度状態は第1波長と関連付けられ、パターンの第2強度状態は第1波長と異なる第2波長と関連付けられる。他の例では、第1パターンの強度状態が第1波長と関連付けられ、第2パターンの強度状態が第1波長と異なる第2波長と関連付けられる。更に他の例では、三つの7×8マトリックスを使用して、73=343個のユニークなコードワードが得られる。更に、変調パターン一般は、複数の波長を利用してもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、完全に単色の波長を生成することが実現不能または非現実的である(例えば、ハードウェアの制約によって)と理解されるべきである。従って、用語「第1波長」は、その波長を中心とする狭帯域を表してもよいと理解されるべきである。第2波長も同様に記述されうる。このシナリオでは、二つの異なる波長が、二つの異なる中心波長のそれぞれを表してもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、「異なる」と定義された波長が、計測システム1000の機能でもよい。例えば、第1波長(帯域および中心波長を有する)および第2波長(帯域および異なる中心波長を有する)は、計測システム1000が相違を認識できる場合に異なると認識されてもよい。逆に、計測システム1000が相違を認識できない程に重複している二つの波長帯域は、異なると認識されない場合もある。
【0158】
異粒子(例えば、欠陥440(
図4))の検出の文脈において具体的な実施形態が記述されたが、ここで記述された実施形態は微粒子の汚染検出に限定されない。いくつかの実施形態では、ここで記述された計測システムが、擦り傷、孔、くぼみ、異粒子、しみ等の欠点全般を検出してもよい。リソグラフィプロセスに悪影響を及ぼすリスクのある全てのタイプの欠点を検出するのが望ましい。
【0159】
いくつかの実施形態では、ここで記述される計測システムが、リソグラフィ装置等のより大きなシステム内に実装されてもよい。
【0160】
実施形態は、更に以下の項目を用いて記述されてもよい。
1.放射ビームを生成するように構成される放射源と、オブジェクトの表面に対してビームを向け、表面におけるビームの空間強度分布を調整するように構成される空間光変調器と、を備える照明システムと、
表面および表面付近の構造によって散乱された放射を受け取り、受け取られた放射に基づく検出信号を生成するように構成される検出器と、
検出信号を分析し、分析に基づいて表面上の欠陥位置を判定し、分析および調整に基づいてスプリアス信号および欠陥に対応する信号を識別するように構成されるコンパレータと、
を備えるシステム。
2.空間光変調器は、表面上の第1位置におけるビームの照明強度が第1パターンによって変調され、表面上の第2位置におけるビームの照明強度が第1パターンと異なる第2パターンによって変調されるように、更に空間強度分布を調整するように構成され、
第2位置は第1位置と異なり、
分析することは、変調に基づいて検出信号を分析することを含む、
項目1に記載のシステム。
3.第1および第2パターンは、第1および第2バイナリパターンに対応し、
分析は、表面上の与えられた位置で使用されるバイナリパターンの判定を含む、
項目2に記載のシステム。
4.識別することは、スプリアス信号を、与えられた位置に非特徴的なバイナリパターンに関連付けることを含む、項目3に記載のシステム。
5.第1および第2バイナリパターンのそれぞれは、オン状態と数が等しいオフ状態を含む、項目3に記載のシステム。
6.第1パターンの第1強度状態は第1波長と関連付けられ、第1パターンの第2強度状態は第1波長と異なる第2波長と関連付けられる、項目2に記載のシステム。
7.第1パターンの強度状態は第1波長と関連付けられ、第2パターンの強度状態は第1波長と異なる第2波長と関連付けられる、項目2に記載のシステム。
8.空間光変調器は、表面上の追加的な位置におけるビームの照明強度が対応する追加的なパターンによって変調されるように、更に空間強度分布を調整するように構成され、
第1パターン、第2パターン、追加的な各パターンは互いに異なり、
識別することは、スプリアス信号を、与えられた位置に非特徴的なパターンに関連付けることを含む、
項目2に記載のシステム。
9.第1パターン、第2パターン、追加的なパターンは、表面上の更なる追加的な位置で再利用され、
再利用される第1パターン、第2パターン、追加的なパターンは、二つの同じパターンが表面上の近接位置で使用されないように表面上に分布される、
項目8に記載のシステム。
10.第1パターンは第2パターンと線型独立である、項目2に記載のシステム。
11.第1パターンは第2パターンと直交する、項目2に記載のシステム。
12.第1および第2パターンは、第1および第2周期パターンに対応し、
第1周期パターンの周波数および/または位相は、第2周期パターンの周波数および/または位相と異なり、
分析は周波数分析を含む、
項目2に記載のシステム。
13.周波数分析は、表面上の与えられた位置で使用される照明変調の周波数および/または位相を判定することを含み、
識別することは、スプリアス信号を、与えられた位置に非特徴的な周波数および/または位相に関連付けることを含む、
項目12に記載のシステム。
14.第1周期パターンの強度状態のシーケンスは、第1周期パターンの規則的な元シーケンスに対する変動を含み、および/または、第2周期パターンの強度状態のシーケンスは、第2周期パターンの規則的な元シーケンスに対する変動を含む、項目12に記載のシステム。
15.第1および/または第2パターンは、二乗正弦および/またはコサイン関数に基づく、項目12に記載のシステム。
16.分析は、第1パターンおよび検出信号に基づくベクトルのスカラー積を含む、項目2に記載のシステム。
17.周波数分析はフーリエ分析を含む、項目12に記載のシステム。
18.フーリエ分析は、
検出信号のフーリエ変換と、
与えられた位置に非特徴的な少なくとも一つの変調パラメータの省略に基づく、与えられた位置における照明を変調するために使用される波形のフーリエ再構成と、
を含む項目17に記載のシステム。
19.空間強度分布は、調整に基づく周期的な空間強度分布の第1、第2、第3状態のシーケンスを含み、
第2状態は、第1および第3状態と異なり、
検出信号は、第1、第2、第3状態に基づく変調を含み、
分析することは、変調を分析して、調整に対して減衰した光学的応答を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
項目1に記載のシステム。
20.識別することは、スプリアス信号を、調整に対して減衰した光学的応答を示す表面上の位置に関連付けることを含む、項目19に記載のシステム。
21.表面付近の構造によって散乱された放射は、表面から出射されるビームの部分から生成され、
出射される部分は、減衰したコントラストを含む周期的な空間強度分布を有する、
項目19に記載のシステム。
22.放射源は、更にビームの波長を調整するように構成され、
ビームは、異なる第1および第2波長を有し、
検出信号は、異なる第1および第2波長に基づく、受け取られた放射の波長情報を含み、
分析することは、波長情報を分析して、波長の調整に対する光学的応答における相違を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
項目1に記載のシステム。
23.識別することは、スプリアス信号を、波長の調整に対する光学的応答における相違を示す表面上の位置に関連付けることを含む、項目22に記載のシステム。
24.波長の調整に対する光学的応答における相違は、第1波長に基づく受け取られた放射の減衰と、第2波長に基づく受け取られた放射の減衰の間の相違を含む、項目22に記載のシステム。
25.照明システムは、ビームの偏光を調整するように構成され、ビームの偏光を補正するように構成される偏光器を更に備え、
ビームは、異なる第1および第2偏光を有し、
検出信号は、異なる第1および第2偏光に基づく、受け取られた放射の偏光情報を含み、
分析することは、偏光情報を分析して、偏光の調整に対する光学的応答における相違を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
項目1に記載のシステム。
26.識別することは、スプリアス信号を、偏光の調整に対する光学的応答における相違を示す表面上の位置に関連付けることを含む、項目25に記載のシステム。
27.偏光の調整に対する光学的応答における相違は、第1偏光に基づく受け取られた放射の強度と、第2偏光に基づく受け取られた放射の強度の間の相違を含む、項目25に記載のシステム。
28.空間光変調器は、非零の入射角で表面の部分を照明するために、更に空間強度分布を調整するように構成され、
検出器は、更に表面の部分で散乱された放射の光路に沿った放射を受け取るように構成され、
システムは、前記光路と表面付近の構造によって散乱された放射に対応する光路の間の相違に基づくスプリアス信号イベントの確率を低減するように構成される、
項目1に記載のシステム。
29.空間光変調器はデジタルマイクロミラーデバイスを備える、項目1に記載のシステム。
30.空間光変調器は液晶変調器を備える、項目1に記載のシステム。
31.検出器は、電荷結合素子または相補型金属-酸化物-半導体を備える、項目1に記載のシステム。
32.空間光変調器は、表面上の第1位置におけるビームの照明強度が第1周波数で変調され、表面上の第2位置におけるビームの照明強度が第2周波数で変調されるように、更に空間強度分布を一時的に調整するように構成され、
第2位置は第1位置と異なり、
第2周波数は第1周波数と異なり、
システムは、検出信号の周波数分析に基づいて、検出の光学的解像度を向上させるように構成される、
項目1に記載のシステム。
33.放射ビームを生成することと、
オブジェクトの表面に対してビームを向けることと、
空間光変調器によってビームの空間強度分布を調整することと、
表面および表面付近の構造によって散乱された放射を検出器で受け取ることと、
検出器によって検出信号を生成することと、
プロセッサによって検出信号を分析することと、
分析に基づいて表面上の欠陥位置を判定することと、
プロセッサによって分析および調整に基づいてスプリアス信号および欠陥に対応する信号を識別することと、
を備える方法。
34.調整することは、表面上の第1位置におけるビームの照明強度が第1パターンによって変調され、表面上の第2位置におけるビームの照明強度が第2パターンによって変調されるように、空間光変調器によって空間強度分布を調整することを含み、
第2位置は第1位置と異なり、
分析することは、変調に基づいて検出信号を分析することを含む、
項目33に記載の方法。
35.空間強度分布は、調整に基づく周期的な空間強度分布の第1、第2、第3状態のシーケンスを含み、
第2状態は、第1および第3状態と異なり、
検出信号は、第1、第2、第3状態に基づく変調を含み、
分析することは、変調を分析して、調整に対して減衰した光学的応答を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
項目33に記載の方法。
36.方法は、ビームの波長を調整することを更に備え、
ビームは、異なる第1および第2波長を有し、
検出信号は、異なる第1および第2波長に基づく、受け取られた放射の波長情報を含み、
分析することは、波長情報を分析して、波長の調整に対する光学的応答における相違を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
項目33に記載の方法。
37.方法は、ビームの偏光を調整することを更に備え、
ビームは、異なる第1および第2偏光を有し、
検出信号は、異なる第1および第2偏光に基づく、受け取られた放射の偏光情報を含み、
分析することは、偏光情報を分析して、偏光の調整に対する光学的応答における相違を示す少なくとも表面上の位置を判定することを含む、
項目33に記載の方法。
38.調整することは、非零の入射角で表面の部分を照明するために、空間強度分布を調整することを含み、
受け取ることは、表面の部分で散乱された放射の光路に沿った放射を受け取ることを含み、
方法は、前記光路と表面付近の構造によって散乱された放射の光路の間の相違に基づくスプリアス信号イベントの確率を低減することを更に備える、
項目33に記載の方法。
39.調整することは、表面上の第1位置におけるビームの照明強度が第1周波数で変調され、表面上の第2位置におけるビームの照明強度が第2周波数で変調されるように、空間光変調器によって空間強度分布を一時的に調整することを含み、
第2位置は第1位置と異なり、
第2周波数は第1周波数と異なり、
方法は、検出信号の周波数分析に基づいて、検出の光学的解像度を向上させることを備える、
項目33に記載の方法。
40.パターニングデバイスのパターンを照明するように構成される照明装置と、
基板上にパターンの像を投影するように構成される投影システムと、
放射ビームを生成するように構成される放射源と、オブジェクトの表面に対してビームを向け、表面におけるビームの空間強度分布を調整するように構成される空間光変調器と、を備える照明システムと、表面および表面付近の構造によって散乱された放射を受け取り、受け取られた放射に基づく検出信号を生成するように構成される検出器と、検出信号を分析し、分析に基づいて表面上の欠陥位置を判定し、分析および調整に基づいてスプリアス信号および欠陥に対応する信号を識別するように構成されるプロセッサと、を備える計測システムと、
を備えるリソグラフィ装置。
【0161】
リソグラフィ装置の用途に関して集積回路の製造に具体的に言及したが、前述のリソグラフィ装置は他の用途に用いてもよい。例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造にリソグラフィ装置は利用可能である。このような代替的な用途の文脈において、「ウェーハ」または「ダイ」の用語は、当業者にとって、それぞれより概括的な「基板」または「ターゲット部分」の用語と同義に解釈されうる。ここでの基板は、露光の前または後において、例えば、トラックユニット(典型的に基板にレジスト層を適用して露光レジストを形成するツール)、計測ユニットおよび/または検査ユニット内で処理されるものでもよい。適用可能な場合、本開示はこのような他の基板処理ツールに適用されてもよい。更に、例えば複数層の集積回路を形成するために基板は複数回に亘って処理されてもよく、「基板」の用語は複数の処理された層を既に含む基板も包含する。
【0162】
本開示の実施形態の用途に関して光学リソグラフィに具体的に言及したが、本開示は文脈が許す限り光学リソグラフィに限定されず、インプリントリソグラフィ等の他の用途にも使用されうる。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスにおけるトポグラフィが基板上に形成されるパターンを定義する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層にプレスされてもよく、電磁放射、熱、圧力またはこれらの組合せを適用することによってレジストが硬化される。レジストが硬化された後にパターニングデバイスがレジストから取り除かれると、当該レジスト内にパターンが残される。
【0163】
ここでの表現または用語は限定しない例示を目的としており、本開示の用語または表現はここでの教示の下で当業者によって解釈されると理解される。
【0164】
「基板」の用語は、材料の層が上に加えられる材料を記述する。いくつかの実施形態では、基板自体がパターニングされてもよく、その上に加えられる材料はパターニングされてもよいし、パターニングされなくてもよい。
【0165】
本開示に係る装置および/またはシステムの用途に関して集積回路の製造に具体的に言及したが、このような装置および/またはシステムは他の多くの用途を有することが明示的に理解される。例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、液晶ディスプレイパネル、薄膜磁気ヘッド等の製造に本開示に係る装置および/またはシステムは利用可能である。このような代替的な用途の文脈において、「レチクル」「ウェーハ」「ダイ」の用語は、当業者にとって、それぞれより概括的な「マスク」「基板」「ターゲット部分」の用語によって置換可能と解釈される。
【0166】
本開示の具体的な実施形態を前述したが、本開示は記述されたものと異なる態様で実施されてもよい。本記述は本開示を限定する意図ではない。
【0167】
「発明の概要」および「要約書」ではなく、「発明を実施するための形態」が「特許請求の範囲」を解釈するために使用されることが意図されている。「発明の概要」および「要約書」は、発明者が想到した一または複数の本開示の実施例を記述するが、その全てを記述するものではないため、本開示および付随する「特許請求の範囲」をいかなる方法でも限定することを意図したものではない。
【0168】
特定の機能およびそれらの関係の実施形態を例示する機能ブロックを利用して本開示を前述した。これらの機能ブロックの境界は、記述の便宜を考慮して任意に定められている。特定の機能およびそれらの関係が適切に実現される限り、他の境界が定められてもよい。
【0169】
特定の実施形態の以上の記述は、他者が、当技術分野における知識を適用することによって、過度の実験や本開示の概念からの逸脱を伴わずに、このような特定の実施形態を様々な用途に合わせて容易に改変できる、および/または、適合させられるように、本開示の本質を完全に明らかにする。従って、このような適合および改変は、ここで提示された教示および示唆に基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲内にある。
【0170】
保護される主題の幅および範囲は、前述の例示的な実施形態によって限定されるべきでなく、特許請求の範囲およびそれらの均等物のみによって定義されるべきである。